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大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
4.超微細結晶粒金属材料 (1) 金属材料の強化原理
Table 3.1 材料の強化機構
加工硬化(転位強化) 加工によって転位密度を高める
結晶粒微細化強化 結晶粒を微細化する
固溶強化 置換型または侵入型固溶原子を導入する
析出強化 主に時効熱処理によって微細な第二相析出物を分散させる
分散強化 酸化物・介在物などの粒子を分散させる
複合強化 異なる材料を複合化する
(i) 加工硬化(転位強化) Bailey-Hirschの式
!
" = # µ b $ (4.1) α: 0.5程度の値の定数 μ: 剛性率 b: バーガースベクトルの大きさ (ii) 固溶強化 Friedel limit:
!
"m =2 Fm( )
3
2
b3
#
$ %
& %
'
( %
) %
c
µ
*
+ , -
. /
1
2
0 2 µ 13
2 c
(4.2) Labusch limit:
!
"m =Fm4c2w
8 b7TL
#
$ %
&
' (
1
3
=Fm4c2w
4 µ b9
#
$ %
&
' (
1
3
(4.3) w :転位と溶質原子の相互作用の及ぶ範囲を示すパラメーター、5b 程度
! "c
L
~L !2
L0
(a) Friedel limit (b) Labusch limit
Fig.4.1 固溶強化におけるフリーデル限界(a)とラバッシュ限界(b)
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
(iii) 析出強化
! a = µ "2
3f r
b
#
$ % %
&
' ( (
1
2
(4.4) (3.30) (iv) 分散強化 Orowanの式
!
"OR =µ b
L0
#0.7µ b f
r (4.5) (v) 結晶粒微細化強化 Hall-Petchの式
!
"y = "0 + k d#1
2 (4.6)
Fig.4.2 多結晶体と粒界
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
(2) Hall-Petchの関係:dislocation pile-up model ホール・ペッチの式はあくまで経験的な式であるが、それを理論的に説明しようという
試みがいくつかなされている。ここではそのうちの転位の堆積モデルを示す。変形初期に、
外部せん断応力 τ のもとで粒内の転位源(例えばフランク・リード(Frank-Read)源)から発生した n 本の同符号の刃状転位は、Fig.4.3のように結晶粒界に堆積する。
grainboundary
dislocationsource
!
!
0 x1 x2 x3 xn-1
L
slip plane
Fig.4.3 結晶粒界における転位の堆積
各々の転位には、外部せん断応力に加えて、他の転位からの反発力が作用している。単位長
さの先頭の転位が外部応力と他の転位から受ける力 f0 は、
!
f0 = " n # b (4.7) と求められる。すなわち、堆積の先頭転位には外力をn倍した集中応力が作用している。(同
時に、転位は結晶粒界から同じ大きさで逆向きの反作用力(back stress)を受けている)先頭の転位にかかる集中応力 n τ が、隣の結晶粒内に新たな転位源を作る(あるいは転位源を活性化させる)だけの臨界値 に達すれば、多結晶体は巨視的な降伏を起こす。すなわち、この場合の降伏条件として、
!
n " = "c (4.8) と書くことができる。 ところで、Fig.4.2におけるn本の転位の堆積距離 L は、
!
L =nµ b
1" #( ) $ % (4.9) と表される(らせん転位の場合は (1-ν) の項がなくなる)。平均粒径 d の多結晶体における L の最大値はおおよそ
!
L "d
2 (4.10) と見積もることができるから、(4.8)~(4.10)式より n と L を消去して、
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
!
" =2 "c µ b
1# $( ) %
& ' (
) * +
1
2
d#1
2
(4.11) のように、変形応力が粒径の -1/2 乗に比例するという式(ホール・ペッチの関係)が得ら
れる。 (3) 結晶粒界の別の役割:拘束効果 ある応力状態のもとで、結晶中の各すべり系の活動のしやすさには優劣がある。Fig.4.4に示すように、単結晶の場合にはそうした優劣のもと、主すべり系が優先的に活動し、それに
応じた形状変化がもたらされる。しかし、多結晶体中の結晶は隣接粒に囲まれており、単結
晶のような勝手な変形をしたのでは、粒界部に空隙や重なりを生じてしまう(Fig.4.4右)。 !
!
primary
slip system
single crystal
!"#
$%
polycrystal Fig.4.4
実際の多結晶体においては、粒界部での変位の連続性を満足するように、個々の結晶粒の変
形が生じている。これを結晶粒界の拘束効果(constraint effect)という。 粒界の拘束を満足させるためには、単一のすべり系の活動のみでは無理であることが直感
的にも明らかである。ひずみには6個の独立成分があることから、結晶を任意の形に変形さ
せるためには、6個の塑性ひずみ成分が任意にとれなければならない。しかし、すべり変形
は体積変化を伴わないことから、 体積不変条件:
!
"11 + "22 + "33 = 0 (4.12) を満たす必要があり、独立な塑性ひずみ成分は5個となる。従って、結晶を任意の形に変形
させるためには、少なくとも5個の独立なすべり系が必要となる。これを、フォンミーゼス
の条件(von Mises' condition)という。
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
(4) Hall-Petchプロット
Fig.4.5 種々の金属の Hall-Petchプロットとその外挿
図のプロット点(実験点)から分かるように、従来の結晶粒微細化の限界(得られる最小
平均粒径)は、おおむね 10μmであった。
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
(5) 変形・再結晶による結晶粒微細化
Fig.4.6 変形・回復・再結晶・粒成長に伴う組織変化の模式図
Fig.4.7 変形組織(a)と再結晶途中組織(b)
再結晶の駆動力:
!
"G = µ b2 # (4.13)
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
Fig.4.8 再結晶の核生成
再結晶における臨界核半径?
大学院「先進構造材料特論」 04
2010 年度 担当:辻
(6) 溶接構造用鋼(厚板)の制御圧延(Controlled Rolling)による結晶粒微細化
Fig.4.9 制御圧延における結晶粒微細化原理の模式図
・Nb, Tiなど微量添加元素(強炭窒化物形成元素)によるオーステナイトの再結晶の抑制 ・ 加工組織からのフェライト変態による核生成頻度の上昇 ・ 大過冷(急速冷却)による駆動力増大を通じた、臨界核半径減少、核生成頻度増大 ・ 炭窒化物による合との粒成長の抑制
臨界核半径:
!
r *=2"
#G (4.14)
核生成頻度
!
I = A exp "#G
k T
$
% &
'
( ) exp "
QD
k T
$
% &
'
( ) (4.15)
最小平均粒径5μm → 高強度+高靭性