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85 内分泌器官とは、導管をもたず、細胞の分泌物は周囲の組織液を経て血中に放出されるのを特徴とする腺組 織である。毛細血管が豊富に分布する。 ・分泌物=ホルモン: 特定の細胞から分泌、血行性に遠隔に存在する標的器官・細胞(target organcell)まで分配され、 それら細胞の受容体に結合し、極微量で生物学的活性を発現する物質。 ・化学的特徴によるホルモンの分類 a. ペプチド分泌系(ペプチドホルモン):視床下部、下垂体、上皮小体、胸腺、膵島、胎盤他 b. ステロイド分泌系(ステロイドホルモン):副腎皮質、性腺他 c. アミン分泌系(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン等):副腎髄質 d. ヨード化アミノ酸誘導体分泌:甲状腺 実習内容: 内分泌器系 (1) 下垂体, 膵内分泌部 SBO 1. ホルモンによる恒常性維持機構について説明できる. 2. 各種ホルモンを分泌する内分泌臓器について説明できる. 3. 視床下部─下垂体(前葉・後葉)の組織構築・機能・分泌調節機構を説明でき る. 4. 膵内分泌部の組織構築・機能・分泌調節機構を説明できる. 5. 組織標本で鑑別同定できる. キーワード 副腎皮質、副腎髄質、腺性下垂体、下垂体後葉、下垂体門脈、神経内分泌、 視床下部下垂体系、ランゲルハンス島

a. b. c. d. - Kurume Ub. ステロイド分泌系(ステロイドホルモン):副腎皮質、性腺他 c. アミン分泌系(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン等):副腎髄質

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内分泌器官とは、導管をもたず、細胞の分泌物は周囲の組織液を経て血中に放出されるのを特徴とする腺組

織である。毛細血管が豊富に分布する。

・分泌物=ホルモン:

特定の細胞から分泌、血行性に遠隔に存在する標的器官・細胞(target organ・cell)まで分配され、

それら細胞の受容体に結合し、極微量で生物学的活性を発現する物質。

・化学的特徴によるホルモンの分類

a. ペプチド分泌系(ペプチドホルモン):視床下部、下垂体、上皮小体、胸腺、膵島、胎盤他

b. ステロイド分泌系(ステロイドホルモン):副腎皮質、性腺他

c. アミン分泌系(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン等):副腎髄質

d. ヨード化アミノ酸誘導体分泌:甲状腺

実習内容: 内分泌器系 (1) 下垂体, 膵内分泌部

SBO 1. ホルモンによる恒常性維持機構について説明できる. 2. 各種ホルモンを分泌する内分泌臓器について説明できる. 3. 視床下部─下垂体(前葉・後葉)の組織構築・機能・分泌調節機構を説明でき

る. 4. 膵内分泌部の組織構築・機能・分泌調節機構を説明できる. 5. 組織標本で鑑別同定できる.

キーワード 副腎皮質、副腎髄質、腺性下垂体、下垂体後葉、下垂体門脈、神経内分泌、 視床下部下垂体系、ランゲルハンス島

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(図はいずれも「人体の正常構造と機能Ⅶ」より)

下垂体 hypophysis, pituitary (gland), Hypophyse

1.下垂体の位置、発生、区分 (図1, 2, 3 表1)

蝶型骨トルコ鞍に納まる。

腺性下垂体 adenohypophysis ←口腔天蓋粘膜(上皮が腺細胞に分化) ラトケ嚢

神経性下垂体 neurohypophysis ←脳の視床下部

2.腺性下垂体(前葉) 1. 基本構築

前葉細胞(腺細胞)

基質:細網組織 血管(++) ←上下垂体動脈の枝が分枝

(但し、Ⅴも参照のこと)

2. 腺細胞

・H&E 染色: (1) 色素好性細胞

・ 酸好性(α)細胞

・ 塩基好性(β)細胞

(2) 色素嫌性細胞

・腺細胞の分類は、分泌される前葉ホルモンに基づいて行われる:(表2, 3)

(1) GH 細胞(成長ホルモン産生細胞)

(2) LTH 細胞(乳腺刺激ホルモン産生細胞)

(3) ACTH 細胞(副腎皮質刺激ホルモン産生細胞)

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(4) TSH 細胞(甲状腺刺激ホルモン産生細胞)

(5) GTH 細胞(性腺刺激ホルモン産生細胞)

① FSH 細胞(卵胞刺激ホルモン産生細胞)

② LH 細胞(黄体化ホルモン産生細胞)

=ICSH 細胞(間細胞刺激ホルモン産生細胞)‥‥‥男性の場合

付)星状細胞

・支持細胞である。

・しばしば濾胞を形成。

・免疫系における樹状細胞との共通性が指摘されている。

3.中間部 濾胞を形成、単層立方上皮(色素嫌性細胞、色素好性細胞)‥‥‥ヒト

MSH (Intermedin) の産生 ‥‥‥動物

Proopiomelanocortin (POMC) の産生 ‥‥‥動物

4.神経性下垂体(後葉) 1. 構築

・視床下部由来の無髄神経線維

・グリア細胞の特殊型=後葉細胞 pituicyte

・血管(主として、下下垂体動脈の枝が分枝)

2. 後葉ホルモン

・オキシトシン oxytocin とバゾップレシン vasopressin

・キャリア・タンパクは、ニューロフィジン

・視床下部の視索上核・室傍核由来

・神経分泌 neurosecretion

・Herring 小体

光顕:アルデヒドフクシンに好染(紫)

クロムヘマトキシリンに好染(青黒)

電顕:100〜200nm/D の果粒が集積した巨大な軸索瘤の構造

5.下垂体門脈系 1. 構築 (図 4, 5)

上下垂体動脈→正中隆起部で毛細血管網(一次毛細血管網)→下垂体門脈→下垂体前葉で再び毛

細血管網(二次毛細血管網)

2. 機能上の意義 (表 4)

「視床下部による下垂体前葉細胞のホルモン調節」

放出ホルモン(RH)、抑制ホルモン(IH)

(1) GHRH

(2) TRH

(3) CRH

(4) LHRH

(5) GHIH = somatostatin

(6) PRIH = dopamine

など。

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図1

図2 図3

表1

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下垂体後葉から分泌されるホルモン 1.オキシトシン oxytosin : 射乳、子宮収縮(分娩時) 2.バゾプレッシン(ADH): 血圧調節(腎集合管における水の再吸収を促進)

表3

表2

色素嫌性

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図4

表4

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図5

図6

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6.膵内分泌部 endocrine pancreas

膵外分泌部中に島状に分布する膵島は内分泌器として、以下のホルモンを分泌する。

膵島(ランゲルハンス島)pancreatic islets (Islets of Langerhans)

発生学的には外分泌部と同じ由来である。

A 細胞、B 細胞、D 細胞よりなる。

1. A cell: グルカゴン glucagon

2. B cell: インスリン insulin

3. D cell: ソマトスタチン somatostatin

発展事項 1.膵外分泌部と内分泌部の違いを整理する。

2.膵島で分泌されるホルモンおよび消化管ホルモンについて整理する。