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(旧 CRH・ACTH研究会) 間脳・下垂体・副腎系研究会 第24回 ※本研究会は日本内分泌学会・内分泌代謝科専門医認定更新単位付与の対象です。研究参加者には3単位が付与されます。 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 会議室 (4F) 〒105-0014 東京都港区芝2丁目6番1号 会 場 井樋 慶一(東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野) 当番世話人 平成25年3月23日(土) 10:00~18:10 日 時 共 催 間脳・下垂体・副腎系研究会 三菱化学メディエンス株式会社 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 プログラム・抄録集

第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会...(旧 CRH・ACTH研究会 ) 間脳・下垂体・副腎系研究会 第24回 ※本研究会は日本内分泌学会・内分泌代謝科専門医認定更新単位付与の対象です。研究参加者には3単位が付与されます。ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

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Page 1: 第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会...(旧 CRH・ACTH研究会 ) 間脳・下垂体・副腎系研究会 第24回 ※本研究会は日本内分泌学会・内分泌代謝科専門医認定更新単位付与の対象です。研究参加者には3単位が付与されます。ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

(旧 CRH・ACTH研究会) 間脳・下垂体・副腎系研究会第24回

※本研究会は日本内分泌学会・内分泌代謝科専門医認定更新単位付与の対象です。研究参加者には3単位が付与されます。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 会議室(4F)〒105-0014 東京都港区芝2丁目6番1号

会 場

井樋 慶一(東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野)当番世話人

平成25年3月23日(土) 10:00~18:10日 時

共 催

間脳・下垂体・副腎系研究会三菱化学メディエンス株式会社

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

プログラム・抄録集

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浜松町交番

金杉橋南

吉野屋 ARTCOFFEE

浜松町二丁目

東京モノレール浜松町駅

ファミリーマート都営三田線芝公園駅A1出口

芝東照宮

ローソン

芝園橋

A1

A1 A3

東京グランドホテル

セレスティンホテル

日本電気本社ビル

JR浜松町駅

JR田町駅

東京女子学園高校

芝小学校

戸板女子短期大学

都営大江戸線・浅草線大門駅

都営浅草線・三田線三田駅

第一京浜

港勤労福祉会館

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

交通のご案内

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 案内図

浜松町駅からの道順浜松町駅南口より金杉橋口の階段を下ります。ART COFFEEのあるT字路を右折し、吉野家のある交差点(浜松町二丁目交差点)を渡り左折します。第一京浜金杉橋南交差点を右折し、東京グランドホテルの先となります。

浜松町駅南口より徒歩8分

田町駅からの道順田町駅西口より第一京浜を右折し、港勤労福祉会館のある交差点を渡り左折します。日本電気本社ビル、セレスティンホテルを左手に直進。芝園橋交差点を右折しローソンの先となります。

田町駅西口より徒歩8分

芝公園駅からの道順芝公園駅A1出口より階段にて地上へお上がりください。芝園橋交差点を右折し、ローソンの先となります。

都営三田線芝公園駅A1出口より徒歩1分

大門駅からの道順大江戸線大門駅A1・A3出口より第一京浜を田町駅方面へ向かいます。第一京浜金杉橋南交差点を右折し、東京グランドホテルの先となります。

都営大江戸線大門駅A1・A3出口より徒歩10分

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 本社ビル

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会プログラム

10:00~10:05 開会の辞 当番世話人:井樋慶一(東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野)

10:05~10:35 【セッション1】分泌調節と作用座長: 根本崇宏(日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学)

10:35~11:15 【セッション2】受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜(帝京大学ちば総合医療センター)

11:15~11:55 【セッション3】副腎 座長:方波見卓行(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 代謝・内分泌内科)

11:55~12:15 ブレイク

12:15~13:00 【セッション4】ランチョンセミナー 座長:橋本浩三(特定医療法人仁生会 細木病院)

13:00~13:10 ブレイク

13:10~14:25 【セッション5】シンポジウムI HPA系基礎研究の目指すべき方向性 座長:芝﨑 保(日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学)

          岩崎泰正(高知大学 臨床医学部門) 14:25~14:55 【セッション6】クッシング病 座長:大塚文男(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 総合内科学分野)

14:55~15:35 【セッション7】下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充(高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科)

15:35~16:05 【セッション8】異所性ACTH症候群 1 座長:柳瀬敏彦(福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科)

16:05~16:20 コーヒーブレイク

16:20~16:50 【セッション9】異所性ACTH症候群 2 座長:東條克能(東京慈恵会医科大学医学部 糖尿病・代謝・内分泌内科)

16:50~18:05 【セッション10】シンポジウムⅡ クッシング症候群の診断と治療の進歩 座長:山田正三(虎の門病院 間脳下垂体外科)       

島津 章(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)

18:05~18:10 閉会の辞 当番世話人:井樋慶一

・口演時間は下記の通りです。会の円滑な進行のために時間厳守をお願い致します。  一般演題………口演時間 6分、討論4分  シンポジウム…口演時間20分、討論5分・該当セッションの 30分前までにPC受付にて発表データを登録し、発表前には次演者席に必ずご着席ください。

日  程

口演者へのお願い

1

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第 24回 間脳・下垂体・副腎系研究会 目次

開会の辞 10:00-10:05

当番世話人:井樋慶一(東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野)

【セッション 1】 分泌調節と作用 10:05-10:35

座長:根本崇宏(日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学)

「ニコチンの酸化作用に対するUrocortin Iの心筋細胞における抗酸化作用」

池田惠一 1)、藤岡宏樹 1)、馬目佳信 1)、東條克能 2)

1)東京慈恵会医科大学総合医科学研究センターDNA医学研究所分子細胞生物学

研究部、2)東京慈恵会医科大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科

「ストレス性疲労に対するステロイドとアスコルビン酸の回復効果」

井口和明、和田健吾、冨岡若菜、相澤優衣、永島崇志、山本博之、

海野けい子、武田厚司

静岡県立大学薬学部生物薬品化学分野

「高脂肪食誘導肥満抵抗ラットでのストレス負荷後のHPA軸の変化」

根本崇宏、芝﨑 保

日本医科大学大学院医学研究科生体統御科学

【セッション 2】 受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 10:35-11:15

座長:片上秀喜(帝京大学ちば総合医療センター)

「メラノコルチン2受容体欠損マウスにおける下垂体遺伝子発現の検討」

亀田 啓 1)、中垣 整 1)、永井 聡 2)、近藤琢磨 1)、三好秀明 1)、渥美達也 1)、

千田 大 3)、岩倉洋一郎 4)、清水 力 5)

1)北海道大学病院内科Ⅱ、2)NTT東日本札幌病院、3)埼玉医科大学医学部、4)東京

理科大学生命医科学研究所実験動物学研究部門、5)北海道大学病院検査輸血部

2

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「間葉系幹細胞由来のSF-1/Ad4BP誘導性ステロイド産生細胞のアルドステロン産生

について」

柳瀬敏彦、田中智子、野見山 崇

福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科

「ヒトメラノーマHMV-II細胞におけるCRF及びurocortin-1によるtyrosinase-related

protein 1遺伝子発現作用機序についての検討」

綿貫 裕 1)、高安 忍 1)、蔭山和則 1)、岩崎泰正 2)、須田俊宏 3)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座、2)高知大学臨床医学部門、3)青森労災病院

「視床下部CRF遺伝子発現調節におけるFosB蛋白の関与について-in vitroの検討-」

蔭山和則 1)、山形 聡 1)、岩崎泰正 2)、井樋慶一 3)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座、2)高知大学臨床医学部門、3)東北大学大学

院情報科学研究科

【セッション 3】 副腎 11:15-11:55

座長:方波見卓行(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 代謝・内分泌内科)

「片側副腎腫瘤摘除により糖尿病の改善が得られたAIMAHの1例」

西山 充 1)、次田 誠 1)、中山修一 1)、岡崎瑞穂 1)、田口崇文 1)、岩﨑泰正 2)、

辛島 尚 3)、執印太郎 3)、寺田典生 1)

1)高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科、2)高知大学保健管理センター、

3)高知大学医学部泌尿器科

「AIMAHの臨床内分泌学的特徴とRNA-seq解析から捉えた分子病態」

鈴木佐和子 1)、田中知明 1)、横手幸太郎 1)、龍野一郎 2)

1)千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座、2)東邦大学医療センター佐倉病

院糖尿病内分泌代謝センター

「経時的変化をとらえた抗リン脂質抗体症候群による副腎梗塞・原発性副腎不全の一例」

橋本瑛理子 1)、方波見卓行 1)、松原史明 1)、大重聡彦 2)、石井 聡 1)、田中 逸 2)

1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院代謝・内分泌内科、2)聖マリアンナ医科大

学代謝・内分泌内科

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「副腎偶発腫より発見されたSF-1発現に乏しい Oncocytoma の一例」

月山秀一 1)、方波見卓行 2)、浅井志高 1)、永井義夫 1)、石井 聡 2)、船津美恵子 3)、

小泉宏隆 3)、笹野公伸 4)、太田明雄 1)、佐々木要輔 1)、田中 逸 1)

1)聖マリアンナ医科大学病院代謝・内分泌内科、2)聖マリアンナ医科大学横浜市西

部病院、3)聖マリアンナ医科大学診断病理学、4)東北大学大学院医学系研究科病理

診断分野

(ブレイク) 11:55-12:15

【セッション 4】 ランチョンセミナー 12:15-13:00

座長:橋本浩三(特定医療法人仁生会 細木病院)

「キスペプチン研究から明らかになった生殖の中枢機構」

前多敬一郎 1)、上野山賀久 2)、束村博子 2)

1)東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻動物育種繁殖学

2)名古屋大学大学院生命農学研究科・生殖科学

(ブレイク) 13:00-13:10

【セッション 5】 シンポジウム I HPA系基礎研究の目指すべき方向性 13:10-14:25

座長:芝﨑 保(日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学)

岩崎泰正(高知大学 臨床医学部門)

「MC2R KOマウスの作成、解析、今後の展望」

千田 大

埼玉医科大学医学部

「蛍光イメージングによるHPA軸の可視化への挑戦」

上田陽一

産業医科大学医学部第1生理学教室

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「CRFニューロン調節メカニズム解明を目指した遺伝子改変動物の作成と応用」

井樋慶一

東北大学大学院情報科学研究科情報生物学分野

【セッション 6】 クッシング病 14:25-14:55

座長:大塚文男(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 総合内科学分野)

「長期寛解維持後に再発したCushing病の1例」

柿沢圭亮 1)、大石敏弘 1)、芝田尚子 1)、飯野和美 1)、酒井直人 2)、山田正三 3)、

沖 隆 1)

1)浜松医科大学内分泌代謝内科、2)浜松医科大学脳神経外科、3)虎の門病院間脳下垂

体外科

「下垂体腫瘍の経過観察中、ACTH基礎値が一度だけ高値を示したことをきっかけに診

断し得たサブクリニカルクッシング病の一例」

篠原雅幸 1)、西岡達矢 1)、熊谷千鶴 1)、橋本浩三 1)、溝渕 光 2)

1)特定医療法人仁生会細木病院糖尿・内分泌内科、2)医療法人防治会いずみの病院

脳神経外科

「過去1年間に当科においてMet PETにて局在診断し、治療を行ったCushing病の4症

例」

工藤正孝 1)、森本 玲 1)、小野美澄 1)、岩倉芳倫 1)、祢津昌広 1)、松田 謙 1)、

齋藤綾子 1)、菅原 明 2)、伊藤貞嘉 1)、池田秀敏 3)、佐藤文俊 1)

1) 東北大学大学院医学系研究科医学部腎・高血圧・内分泌分野、2)東北大学大学院

医学系研究科分子内分泌学分野、3)総合南東北病院下垂体疾患研究所

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【セッション 7】 下垂体機能低下症ほか 14:55-15:35

座長:西山 充(高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科)

「左眼瞼下垂を契機に診断された若年胃癌のトルコ鞍部転移の一例」

稲垣兼一 1)、当真貴志雄 1)、中村絵里 1)、越智可奈子 1)、塚本尚子 1)、三好智子 1)、

三村由香里 1)、小倉俊郎 1)、大塚文男 2)、槇野博史 1)

1)岡山大学病院内分泌センター/腎臓・糖尿病・内分泌内科、2)岡山大学病院総合

内科

「ラトケ嚢胞術後に続発性副腎不全を発症したがその後ACTH分泌能が緩徐に回復して

きた1例」

村上正憲 1)、鈴木紗加 1)、竹川幸男 1)、宇根直子 1)、立石裕子 1)、岩嶋富美子 1)、

堀内敏行 1)、小川佳宏 2)

1) 公益財団法人東京都保険医療公社豊島病院内分泌代謝内科、2)東京医科歯科大学

医学部附属病院

「可逆的な下垂体前葉機能低下を来した、鞍上部病変を含む中枢神経原発悪性リンパ腫」

山形 聡 1)、二川原 健 1)、照井 健 1)、蔭山和則 1)、関 康史 2)、小野昌美 2)、

三木伸泰 2)、市原淳弘 2)、天野耕作 3)、玉澤直樹 1)

1)弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学、2)東京女子医科大学高血圧・内分

泌内科、3)東京女子医科大学脳神経外科

「原発性胆汁性肝硬変にACTH単独欠損症を併発した1例」

亀井信二、中嶋久美子、吉岡 啓、木下智絵、平田有里恵、田邉昭仁、下田将司、

俵本和仁、小原健司、阿武孝敏、柱本 満、宗 友厚、加来浩平

川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学教室

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【セッション 8】 異所性 ACTH症候群 1 15:35-16:05

座長:柳瀬敏彦(福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科)

「剖検を行った前立腺小細胞癌による異所性ACTH症候群の一例」

吉田昌則 1)、伊藤 徹 2)、市野 学 2)、佐竹立成 3)、氏平伸子 3)、上田晴美 1)、

宮田美咲 1)、福岡一貴 1)

1)名古屋掖済会病院糖尿病・内分泌内科、2)名古屋掖済会病院泌尿器科、

3)名古屋掖済会病院病理診断科

「クッシング徴候を呈したACTHとGHRH同時産生の膵神経内分泌腫瘍(PNET)」

田所梨枝 1)、橋詰真衣 1)、村井謙允 1)、杉澤千穂 1)、遠藤 慶 1)、飯坂 徹 1)、

齊木 亮 1)、佐藤尚太郎 1)、高橋育克 1)、大塚史子 1)、片上秀喜 2)、谷山松雄 1)

1)昭和大学藤が丘病院内科内分泌代謝科、2)帝京大学ちば総合医療センター内科臨

床研究部

「膵神経内分泌癌による異所性ACTH症候群の1例」

周東佑樹 1)、杉原 仁 1)、小林俊介 1)、高野綾子 1)、長峯朋子 1)、仲村優子 1)、

武市奈緒美 1)、高谷磨紀代 1)、佐藤友紀 1)、竹光秀司 1)、真山大輔 1)、長尾元嗣 1)、

石崎 晃 1)、原田太郎 1)、稲垣恭子 1)、近藤俊輔 2)、片上秀喜 3)、及川眞一 1)

1)日本医科大学医学部内分泌糖尿病代謝内科、2)国立がん研究センター肝胆膵内科、

3)帝京大学ちば総合医療センター内科・臨床研究部

(コーヒーブレイク) 16:05-16:20

【セッション 9】 異所性 ACTH症候群 2 16:20-16:50

座長:東條克能(東京慈恵会医科大学医学部 糖尿病・代謝・内分泌内科)

「原発巣不明の周期性Cushing症候群の1例」

辻本和峰、吉本貴宣、安東 環、大木葉宣昭、西尾勇一郎、早川惠理、南 勲、

三原正朋、杉山 徹、泉山 肇、小川佳宏

東京医科歯科大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・代謝内科

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「咽頭下垂体より発生した異所性ACTH産生下垂体腺腫の1例」

福原紀章 1)、井下尚子 2)、堀口健太郎 1)、西岡 宏 1)、山田正三 1)

1)虎の門病院間脳下垂体外科、2)がん研究所

「多発肝転移を伴う肺原発神経内分泌腫瘍による異所性ACTH産生腫瘍に対するエベロ

リムスの治療効果」

垣田真以子 1)、難波多挙 1)、村田 敬 2)、安井久晃 3)、植田洋平 1)、中谷理恵子 1)、

中尾佳奈子 1)、立木美香 1)、臼井 健 1)、田上哲也 1)、成瀬光栄 4)、島津 章 4)

1)国立病院機構京都医療センター内分泌・代謝内科、2)国立病院機構京都医療セン

ター糖尿病センター、3)国立病院機構京都医療センター腫瘍内科、4)国立病院機構

京都医療センター臨床研究センター

【セッション 10】 シンポジウム II クッシング症候群の診断と治療の進歩 16:50-18:05

座長:山田正三(虎の門病院 間脳下垂体外科)

島津 章(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)

「クッシング病診断と薬物療法の進歩」

蔭山和則 1)、須田俊宏 2)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座

2)青森労災病院

「Cushing症候群の診断と治療」

沖 隆、飯野和美

浜松医科大学第二内科内分泌代謝内科

「クッシング病の手術療法 -Current Concept-」

有田和徳 1)、藤尾信吾 1)、富永 篤 2)

1)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科脳神経外科学教室

2)広島大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経外科学

閉会の辞 18:05-18:10

当番世話人:井樋慶一

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会(旧 CRH・ACTH研究会)

シンポジウムⅠ・Ⅱ抄録

【セッション5】シンポジウムⅠHPA系基礎研究の目指すべき方向性 座長:芝﨑 保・岩崎泰正

【セッション10】シンポジウムⅡクッシング症候群の診断と治療の進歩

座長:山田正三・島津 章

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【セッション 5】 シンポジウム I HPA系基礎研究の目指すべき方向性 座長:芝﨑 保,岩崎泰正

MC2R KOマウスの作成、解析、今後の展望

千田 大

埼玉医科大学医学部

CRH システムは、ストレス応答に中心的な役割を果たし、視床下部・下

垂体・副腎軸(HPA 軸)を介したネガティブフィードバックによる制御を受

ける。我々の研究グループは、 ACTH 受容体 (MC2R)遺伝子改変マウス(MC2R

KO)を作成、解析してきた。MC2R KO マウスは、MC2R のヒト遺伝子疾患であ

る家族性グルココルチコイド欠損症と同様に、副腎不全を呈することを報

告した (PNAS 2007)。MC2R KO マウスでは、低グルココルチコイドによって

免疫細胞数が定常状態で亢進し (BBRC 2010)、出産後の乳腺の発達障害が起

こっていた(Endocrinology 2011)。また、グルココルチコイドによるネガ

ティブフィードバックが起こらないため、視床下部 CRH 発現が亢進し、視

床下部性の性周期異常(発情休止期延長)が起こっていた( Endocrinology

2010)。MC2R KO マウスは、CRH 発現亢進によって、引き起こされるストレ

ス関連病態を反映する動物モデルとして有用である可能性があると考えて

いる。これまで MC2R KO マウスの解析を進めてきた中で興味深い表現系を

見出して来る事が出来たが、一方で、この動物モデルの限界も見えて来た。

今後の HPA 系研究の課題と HPA 系の研究を進めて行くための方法論につい

ても議論したい。

11

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【セッション 5】 シンポジウム I HPA系基礎研究の目指すべき方向性 座長:芝﨑 保,岩崎泰正

蛍光イメージングによる HPA軸の可視化への挑戦

上田陽一

産業医科大学医学部第1生理学教室

種々のストレスによって視床下部・下垂体・副腎( HPA)軸が活性化され

ることはよく知られている。一般に、HPA軸の活性化の末梢の指標としては

血中ACTHおよび副腎皮質ホルモン濃度が測定される。中枢神経系において

は、視床下部室傍核における CRH遺伝子の発現変化やニューロン活動の指標

として汎用されている c-fos遺伝子の発現変化がmRNA検出のための in situ

ハイブリダイゼーション法やタンパクに対する抗体を用いた免疫組織化学

的染色法によって検出される。

最近我々は、蛍光タンパク遺伝子をバゾプレッシン遺伝子や c-fos遺伝子

に導入した融合遺伝子を用いて作出したトランスジェニックラットを用い

て種々のストレス刺激によって活性化したニューロンを可視化することを

試みてきた。具体的には、1)バゾプレッシン -eGFPトランスジェニックラ

ットにおいて両側副腎摘除、エンドトキシンショック、拘束、疼痛刺激な

どによって室傍核小細胞群の CRH含有ニューロンに eGFP緑色蛍光が増加す

ること、2)c-fos-mRFP1トランスジェニックラットにおいて疼痛刺激後に

室傍核小細胞群にmRFP1赤色蛍光が多数観察されること、を明らかにした。

なお、2)において、mRFP1赤色蛍光と免疫組織化学的染色法で可視化した

Fosタンパクの発現パターンを比較した結果、それぞれのピークの発現数は

類似していたが、時間経過に若干の差異を認めた。

これらの蛍光タンパクを導入した遺伝子改変動物は、今後生細胞のまま

whole bodyで観察することも可能であり、ストレス研究における有用なモ

デル動物となることが期待される。

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【セッション 5】 シンポジウム I HPA系基礎研究の目指すべき方向性 座長:芝﨑 保,岩崎泰正

CRFニューロン調節メカニズム解明を目指した遺伝子改変動物の

作成と応用

井樋慶一

東北大学大学院情報科学研究科情報生物学分野

視床下部 -下垂体 -副腎系調節の要は視床下部室傍核( PVN)の CRFニュー

ロンである.脳内の様々な領域からの神経性入力のほか,糖質コルチコイ

ドやサイトカインなどの液性調節因子が CRFニューロンの調節に与ってい

る.このようにして,生体のストレスレベルに応じた CRFの合成と分泌がお

こなわれる.これまで CRFニューロンの調節メカニズムは様々な実験手法で

明らかにされてきた.しかしながら,CRFニューロンを蛍光可視化し,生き

たままの状態で観察することができるトランスジェニック動物は未だ開発

されていなかった.そこで我々は,相同組換えにより CRF遺伝子座にVenus

(強化型黄色蛍光タンパク質)遺伝子をノックインしたマウス(CRF-Venus)

を開発した.脳室内コルヒチン投与下において, PVNではVenus発現ニュー

ロンの大半でCRF免疫活性が認められた.また,バゾプレシン,オキシトシ

ンニューロンにはVenus発現は認められなかった.このマウスの PVNを含む

急性スライスを用い,電気生理学的に CRFニューロンへのグルタミン酸作動

性ニューロン,GABA作動性ニューロンの入力が観察された.次に,同様の

分子生物学的手法を用い,CRF遺伝子座に Creリコンビナーゼ遺伝子をノッ

クインしたマウス(CRF-iCre)を開発した.このマウスを GFPレポーターマ

ウスと交配した結果, CRFニューロン選択的にCreによる組換えがおこり,

脳室内コルヒチン投与下で PVNの GFP陽性ニューロンの大部分で CRF免疫活

性が認められた.これらのマウスはCRFニューロンの調節メカニズムを研究

するための重要なツールとなることが期待される.

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【セッション 10】 シンポジウム II クッシング症候群の診断と治療の進歩 座長:山田正三,島津 章

クッシング病診断と薬物療法の進歩

蔭山和則 1)、須田俊宏 2)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座

2)青森労災病院

クッシング病の日本の診断ガイドラインは、厚生労働科学研究費補助金

難治性疾患克服研究事業 間脳下垂体機能障害に関する調査研究班によっ

て 2003 年に制定され、以降改訂を経て今日に至っている。クッシング病診

断や異所性 ACTH 症候群からの鑑別診断は未だこの分野における重要課題

である。本シンポジウムでは、最近のクッシング病診断ガイドラインにお

けるエビデンスを提示して、その有用性とピットフォールについて議論を

深めたい。コルチゾール測定値標準化後、DEX 抑制試験によるサブクリニ

カルクッシング病診断の感度・特異度はやや低下したが、クッシング病で

は変わりがなかった。クッシング病の確定診断ガイドラインは特異度が高

いものであるが、一部の異所性 ACTH 症候群とのデータ上のオーバーラップ

は依然避けられず、クッシング病診断には注意が必要と思われる。更に、

偽性クッシング症候群との鑑別や診断に影響する薬剤を念頭に入れる必要

がある。

クッシング病の薬物療法として、下垂体腫瘍に直接作用して ACTH 分泌

を抑制する可能性があるものとしてドーパミン作動薬等があるが、寛解率

は高くはなく、薬物治療が第一選択とはなりにくい。現状では、高コルチ

ゾール血症のコントロールのためには、副腎に対する副腎皮質ステロイド

合成阻害薬等が有効な手段となる。将来有効な可能性のある治療薬として、

新規ソマトスタチンアナログ、レチノイン酸、分子標的薬物療法をあげ、

その現状について議論したいと考える。

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【セッション 10】 シンポジウム II クッシング症候群の診断と治療の進歩 座長:山田正三,島津 章

Cushing症候群の診断と治療

沖 隆、飯野和美

浜松医科大学第二内科内分泌代謝内科

ACTH非依存性Cushing症候群は、満月様顔貌・中心性肥満等典型的な症状

(Cushing兆候)を呈する例に加え、典型的症状は呈さないものの CT等で副

腎腫瘍を認め診断に至るサブクリニカル Cushing症候群の例が認められる。

いずれにしても、内分泌検索において、コルチゾール日内変動の消失(夜

間コルチゾール≧5 µg/dL)と少量(1 mg)デキサメタゾン抑制試験( DST)

でコルチゾールが抑制されなければ、ほぼ診断に至る。米国ガイドライン

において、1 mg DSTのコルチゾールカットオフ値として 1.8 µg/dLが用いら

れているが、日本におけるカットオフ値としての 3 µg/dLとの整合性につい

ては検討が必要と考えられる。画像診断においては、腺腫、癌腫、 ACTH非

依存性大結節性過形成( AIMAH)、原発性色素性結節性副腎異形性( PPNAD)

はそれぞれ典型的像を呈するため鑑別は可能である。ただ、AIMAHでは、AVP

に対するコルチゾール増加反応を認めることが多く、 PPNADについては DST

でコルチゾールの奇異上昇を認めることがあり、内分泌検査の際、検討す

る。治療については、腺腫の場合は手術療法、癌腫の場合は手術に加えて

ミトタンのアジュバント療法や EPD/M(エトポシド、シスプラチン、ドキソ

ルビシン、ミトタン)による化学療法の追加が必要となる。両側性病変は、

顕性Cushing症候群の場合に両側副腎摘出を、サブクリニカルの場合に片側

摘出を行う。

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【セッション 10】 シンポジウム II クッシング症候群の診断と治療の進歩 座長:山田正三,島津 章

クッシング病の手術療法 -Current Concept-

有田和徳 1)、藤尾信吾 1)、富永 篤 2)

1)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科脳神経外科学教室

2)広島大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経外科学

クッシング病は有用な薬物療法に乏しく、治療の第一選択は手術療法である。しか

し、内分泌動態として周期性を示すものがあること、鑑別すべき異所性 ACTH産生腫瘍

と内分泌動態が重なるものがあることなどにより、その診断は必ずしも容易ではない。

また、クッシング病では直径 5mm以下の極微小腺腫が多く、MRI検査での下垂体腫瘍検

出率は 40-70%程度であり、腫瘍の局在が明らかでないこともある。これらのことが、

クッシング病の外科的手術を困難にしているが、最近はより分解能の高い 3T-MRIでの

画像検査や海綿静脈洞サンプリングで腫瘍の局在診断はより容易になってきた。

手術法は経鼻経蝶形骨洞手術が主流である。

他の機能性下垂体腺腫と同様に、クッシング病の手術において、下垂体機能を温存

しながら、ホルモン過剰分泌を確実に制御するためには、腫瘍を被膜外に摘出するこ

とが重要である。一旦腫瘍被膜面を確保できたら、これに沿って剥離を進め、腫瘍を

被膜外に摘出する。境界が不鮮明な場合は無理をせず、腫瘍の中抜きを行った後に腫

瘍被膜を確保する。下垂体表面から腫瘍の局在が判別できない極微小腺腫の場合には、

下垂体に切開を加え、腫瘍を探索する必要がある。また、内視鏡の導入は海面静脈洞方

向の観察を容易にし、手術の根治性を高めている。これらの手術手技の向上によって、

手術によるクッシング病の寛解率は過去 20年間で向上しており、現在は 70~90%とな

っている。一方、再発率は未だ高く、10~25%程度とされている。クッシング病の再発

では、臨床症状が顕著な割りに再発巣は微小であるため、再寛解に持ち込むことは容

易ではない。

クッシング病はその頻度が少ないこと、周術期管理、術後管理の点で困難な部分が

多いこと、手術非寛解症例の予後が悪いこと等を考慮すれば、high volume center で

の手術が望ましい。

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会(旧 CRH・ACTH研究会)

ランチョンセミナー抄録

【セッション4】ランチョンセミナー 座長:橋本浩三

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【セッション 4】 ランチョンセミナー 座長:橋本浩三

キスペプチン研究から明らかになった生殖の中枢機構

前多敬一郎 1)、上野山賀久 2)、束村博子 2)

1)東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻動物育種繁殖学

2)名古屋大学大学院生命農学研究科・生殖科学

キスペプチンは、ヒトでは 54個のアミノ酸からなるペプチドで、オーファン GPCR

(G タンパク共役型受容体)であった GPR54 の内因性リガンドとして 2001 年にヒト

胎盤から発見された。そのペプチドをコードする遺伝子は 1996 年にすでに発見され

ていた KISS1であった。同遺伝子は in vitroで腫瘍(メラノーマ)転移を抑制する

と考えられていたことから、このペプチドは当初は metastinと名付けられた。その

後 2003 年に、GPR54 を欠損するヒトの家系では、性成熟が見られないことが米国と

フランスで相次いで発見された。さらに、このペプチドの投与が GnRH 分泌を強く促

進することなどから、生殖機能の制御において重要な役割を果たしていることが示さ

れるにいたった。2008 年の国際会議で、生殖との関連を想起させる名称として、キ

スペプチンが正式な名称として採用された。

脳の性分化や性成熟、そして卵胞発育や排卵、精子形成など、すべての生殖活動の

タイミングは視床下部で産生され、下垂体門脈血中に放出される性腺刺激ホルモン放

出ホルモン(GnRH)の分泌によって制御されている。GnRH の分泌には 2 つのモード

があり、一つは、成熟卵胞から分泌される大量のエストロジェンにより誘起されるサ

ージ状の分泌である。もう一つが卵胞発育や精子形成を促進し、性ステロイドにより

負のフィードバック制御を受けるパルス状分泌である。脳内キスペプチンニューロン

の 2つの大きな細胞集団のうち、前腹側室周囲核の集団はサージ状分泌(エストロジ

ェンの正のフィードバックの標的)に関わると考えられている。視床下部弓状核のキ

スペプチンニューロンは、同時にニューロキニン Bとダイノルフィンを発現している

ため、KNDy(キャンディー)ニューロンと呼ばれており、パルス状分泌を発生する本

体であるとの考え方があるが、いまだに証明はされていない。

本講演では、これまでに生理学的実験や遺伝子改変モデルなどを用いて得られた知

見を紹介し、生殖を支配する中枢メカニズムの最新情報を提供したい。

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会(旧 CRH・ACTH研究会)

一般演題抄録

【セッション1】分泌調節と作用 座長:根本崇宏

【セッション2】受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜

【セッション3】副腎 座長:方波見卓行

【セッション6】クッシング病 座長:大塚文男

【セッション7】下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充

【セッション8】異所性ACTH症候群1 座長:柳瀬敏彦

【セッション9】異所性ACTH症候群2 座長:東條克能

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【セッション 1】 分泌調節と作用 座長: 根本崇宏

ニコチンの酸化作用に対する Urocortin I の心筋細胞における抗

酸化作用

池田惠一 1)、藤岡宏樹 1)、馬目佳信 1 )、東條克能 2)

1)東京慈恵会医科大学総合医科学研究センターDNA医学研究所分子細胞

生物学研究部、 2 )東京慈恵会医科大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科

【目的】ニコチンは、タバコに含まれる有害成分の一つであるが、その細

胞障害作用の機序として、酸化ストレスの関与が明らかになっている。心

筋細胞で合成・分泌されるウロコルチン (Ucn) I は、神経細胞や血管系の

細胞で抗酸化ストレス作用を有することが知られており、今回の研究では

Ucn I がニコチンの有害作用に対し抑制的に作用する否かについて検討し

た。【方法】 HL-1 心筋細胞 (Prof. Claycomb WC, LSU, より恵与)は、96-well

plate および glass bottom dish にニコチンおよび Ucn I を添加し、HL-1

心筋細胞における Reactive oxygen species (ROS)の産生を検討した。ROS

の評価は、2’, 7’-Dichlorodihydrofluorescin diacetate (DCFH-DA)から

2’ , 7’ -Dichlorodihydrofluorescein (DCF)への変換量の測定を用い、さ

らに dihydroethidium による imaging により確認した。【結果】 HL-1 心筋

細胞において、ニコチンは、DCFH-DA から DCF への変換、すなわち ROS の産

生を有意に増加させた。しかし、Ucn I の添加は、単独で HL-1 心筋細胞の ROS

の産生を減少させただけでなく、ニコチン添加による ROS の産生も有意に

抑制した。【結論】Ucn I は、心筋細胞に対してニコチンによる酸化作用を

抑制することが示され、喫煙における心筋保護作用ついて今後検討する必

要がある。

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【セッション 1】 分泌調節と作用 座長: 根本崇宏

ストレス性疲労に対するステロイドとアスコルビン酸の回復効果

井口和明、和田健吾、冨岡若菜、相澤優衣、永島崇志、山本博之、

海野けい子、武田厚司

静岡県立大学薬学部生物薬品化学分野

【目的】ストレス性疲労においてはグルココルチコイド等の HPA ホルモン

活性の低下と変調がみられる。これに対してホルモン補充療法的にステロ

イドの投与で改善が見られるかを、マウス疲労モデルにより検討した。ま

た、すでに疲労回復促進効果の認められたアスコルビン酸についても、そ

の機序を検討した。【方法】ストレス性疲労モデルマウスは、ddY 系マウス

( 7 週齢、オス)を用いて、水で湿らせたペーパータオルを床に敷いたケ

ージで 2 日間単独飼育し作製した。疲労度は暗期( 20~8 時)自発運動量

により評価した。ステロイド( 0.2 mM Prednisolone)は飲水に溶解し、回

復期に自由摂取させた。アスコルビン酸( 1 mg/kg/day)は、負荷および回

復期に、腹腔投与した。回復2日後、断頭し、HPA ホルモン(視床下部 CRH、

下垂体 ACTH、血漿 Corticosterone)を特異 EIA 系により測定した。また、

副腎を採取し、その Corticosterone 分泌能を調べた。【結果・考察】ステ

ロイド投与群では、非投与群に比べ、ストレス負荷後低下した自発運動量

の有意(15~20%)な回復が観察され、ストレス性疲労に対するステロイド

の有効性が認められた。このとき HPA ホルモンはステロイド投与により、

いずれも低下する傾向であり、 HPA ホルモンの抑制がみられた。また、副

腎の萎縮も認められた。さらに、副腎初代培養により、ステロイド投与に

より ACTH に対する Corticosterone 分泌能が増加していた。これらのこと

からステロイド投与によるストレス性疲労の回復促進には、副腎の ACTH

反応性増加が関係していることが示唆された。アスコルビン酸投与群では、

自発運動量の有意な増加に対し、ステロイド投与と同様に HPA ホルモンの

低下が認められたことから、アスコルビン酸の疲労回復促進効果には HPA

系の関与することが示唆された。

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【セッション 1】 分泌調節と作用 座長: 根本崇宏

高脂肪食誘導肥満抵抗ラットでのストレス負荷後の HPA 軸の変化

根本崇宏、芝﨑 保

日本医科大学大学院医学研究科生体統御科学

【背景】ラットに高脂肪食 (HFD)を負荷すると肥満を呈する群と肥満に抵抗

性を示す群が生じる。HFD 誘導性肥満ラットで血中コルチコステロンの基

礎値が高値を示すとの報告があり、この機序には視床下部のレプチン抵抗

性による NPY の発現・分泌量の亢進が関与する可能性が示されている。し

かし、肥満抵抗性ラットにおける血中コルチコステロンの基礎値およびス

トレス負荷後の変化は明らかにされていない。そこで、通常食摂餌 (SC)群、

HFD 負荷肥満(Ob)群、HFD 負荷肥満抵抗 (ObR)群を用いた拘束ストレス負荷

前後の神経内分泌学的検討を行った。【方法】4 週間の HFD 負荷で体重が SC

群よりも有意に増加した群を Ob 群、体重の増加と摂餌量が抑制された群を

ObR 群とし、SC 群との 3 群間に拘束ストレス負荷を 30, 90, 120 分間負荷し、

負荷直後の血中コルチコステロン濃度の測定および視床下部下垂体におけ

る種々の遺伝子発現量の解析を行った。【結果】ObR 群の HFD 負荷最終日の

体重当たりの摂餌量は Ob 群や SC 群に比べ有意に減少していた。拘束スト

レス負荷前の Ob 群の血中レプチン濃度および血中コルチコステロン濃度、

視床下部の CRF および NPY および下垂体の POMC の mRNA 発現量は SC 群より

有意に高かったが、ObR 群のそれらは SC 群に比し統計学的な差を示さなか

った。Ob 群および ObR 群の拘束ストレス負荷 30~120 分後の血中コスチコ

ステロン濃度および視床下部の CRF や下垂体の POMC の mRNA 発現量は SC

群に比べ有意な高値を示した。Ob 群の血中コルチコステロン濃度は 30 分を

頂値として 90 および 120 分では低下したが、ObR 群のそれらは 120 分まで

高値を維持し続けた。【結語】高脂肪食は ObR に対してもストレス負荷後の

HPA 軸の活性化を持続させることが示された。

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【セッション 2】 受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜

メラノコルチン2受容体欠損マウスにおける下垂体遺伝子発現の

検討

亀田 啓 1)、中垣 整 1)、永井 聡 2 )、近藤琢磨 1)、三好秀明 1)、

渥美達也 1)、千田 大 3)、岩倉洋一郎 4)、清水 力 5)

1)北海道大学病院内科Ⅱ、2)NTT東日本札幌病院、3)埼玉医科大学医学部、

4)東京理科大学生命医科学研究所実験動物学研究部門、5)北海道大学病院検

査輸血部

【背景】副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)は副腎皮質におけるステロイドホル

モン合成を刺激するが、その受容体であるメラノコルチン2受容体 (MC2R)

は副腎皮質以外の臓器にも発現が報告されておりステロイド合成刺激以外

の作用が想定されている。【目的】MC2R 欠損マウスを用いて ACTH 作用不全

状態における全身臓器の変化について検討する。【方法】 18 週齢雄の MC2R

ホモ欠損マウス5匹と野生型マウス5匹から下垂体を採取し、 DNA マイク

ロアレイ解析によって遺伝子発現を網羅的に解析した。解析結果はリアル

タイム PCR で検証を行った。【結果】DNA マイクロアレイ解析の結果、MC2R

欠損マウス下垂体においてボンベシン様ペプチドであるニューロメジン

B(NMB)が 12.8倍、ガストリン放出ペプチド (GRP)が 4.4倍と発現増加を認め

た。リアルタイム PCR 法によっても NMB、GRP 共に MC2R 欠損マウスで発現の

増加が確認できた。【考察】ボンベシン様ペプチドは細胞増殖、エネルギー

代謝、不安情動行動などに関連することが報告されている。ACTH を含めた

HPA 系との関連は明らかでないため、細胞実験等を追加し検討を進める予

定である。

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【セッション 2】 受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜

間葉系幹細胞由来の SF-1/Ad4BP誘導性ステロイド産生細胞のアル

ドステロン産生について

柳瀬敏彦、田中智子、野見山 崇

福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科

間葉系幹細胞は主に骨髄や脂肪組織中に存在し多分化能を有する。

SF-1/Ad4BP はステロイド合成を調節する転写因子で、副腎、性腺、下垂体

の発生・分化におけるマスターレギュレーターである。我々はこれまでの

研究で、間葉系幹細胞にウイルスベクターを用いて SF-1/Ad4BP を遺伝子導

入し、ACTH・LH 応答性を有するステロイド産生細胞へ形質転換することを

明らかにした。この SF-1/Ad4BP 誘導性ステロイド産生細胞は、培地中に副

腎ステロイドと性腺ステロイドを分泌し、アルドステロン分泌も検出され

たが、アルドステロン合成酵素 CYP11B2 の発現は qRT-PCR レベルでは検出

されなかった。間葉系幹細胞は内因性にアンジオテンシン II 受容体 1 型

(AT1) を発現しているため、SF-1/Ad4BP 誘導性ステロイド産生細胞をアン

ジオテンシン II (AngII) にて刺激した結果、培地中のアルドステロン、

コルチゾール、テストステロン濃度が増加した。SF-1/Ad4BP の遺伝子導入

のみでは CYP11B2 mRNA の発現量に変化を認めなかったが、AngII 刺激によ

って CYP11B2 の発現誘導を認めた。AngII によるアルドステロン産生亢進

は AT1 阻害薬によってキャンセルされた。これらの結果より、 SF-1/Ad4BP

誘導性ステロイド産生細胞は、AngII-AngII 受容体経路によりステロイド

産生が調節されている可能性が示唆された。

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【セッション 2】 受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜

ヒトメラノーマ HMV-II 細胞における CRF 及び urocortin-1 による

tyrosinase-related protein 1 遺伝子発現作用機序についての検討

綿貫 裕 1)、高安 忍 1)、蔭山和則 1 )、岩崎泰正 2)、須田俊宏 3)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座、 2)高知大学臨床医学部門、 3)青森

労災病院

【目的】中枢神経系においてストレス反応の中心的役割を果たしている

corticotropin-releasing factor (CRF) やそのファミリーペプチドである

urocortin 1 (Ucn1) は、ヒト皮膚組織での発現を認め、CRF 受容体を介して、皮

膚 の ス ト レ ス 応 答 に 関 わ る こ と が 今 ま で に 報 告 さ れ て い る 。

Tyrosinase-related protein 1 (TRP1) は、皮膚の色素産生に関わる主要な酵

素である。 今回、我々は、ヒトメラノーマ HMV-II 細胞を用いて、CRF 及び Ucn

による TRP1 の遺伝子発現への影響について検討した。【方法】ヒトメラノー

マ HMV-II 細胞を培養し、CRF 、Ucn と CRF 受容体の発現について RT-PCR によ

り 検 討 し た 。 次 に 、 CRF 又 は Ucn を 添 加 し て 、 TRP1 遺 伝 子 5 ’

-promoter-luciferase fusion gene (TRP1luc) 導入により TRP1 の転写活性、

及び real time-PCR 法により Nurr-1/Nur77 mRNA レベルの変化について検討

した。更に、Nurr-1/Nur77 と・-melanocyte-stimulating hormone によって

誘導されるメラノサイト特異的転写因子である microphthalmia-associated

transcription factor の添加による TRP1 の転写活性作用について調べた。

【結果】ヒトメラノーマ HMV-II細胞で CRF、Ucn1、Ucn2及び CRF1型受容体 mRNA

の発現を認めた。CRF 及び Ucn は、TRP1 の転写活性を刺激し、Nurr-1/Nur77

mRNA レベルを増加させた。更に、Nurr-1/Nur77 と microphthalmia-associated

transcription factor の同時添加によって、TRP1 の転写活性は相加的に増加

し た 。 【 考 察 】 CRF や Ucn1 は 、 ヒ ト メ ラ ノ ー マ HMV-II 細 胞 で 、 ・

-melanocyte-stimulating hormone の刺激からは非依存的に、Nurr-1/Nur77

の産生を介して、TRP1 遺伝子の発現に関与している可能性が示唆された。

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【セッション 2】 受容体・ステロイド産生・遺伝子調節 座長:片上秀喜

視床下部CRF遺伝子発現調節における FosB蛋白の関与について

-in vitro の検討-

蔭山和則 1)、山形 聡 1)、岩崎泰正 2 )、井樋慶一 3)

1)弘前大学医学部内分泌代謝内科学講座、 2)高知大学臨床医学部門、 3)東北

大学大学院情報科学研究科

【目的】 Corticotropin-releasing factor (CRF)は、ストレス反応における

視床下部―下垂体―副腎系の主要な調節因子である。神経細胞では細胞興

奮時に種々の誘導型転写因子が一過性に発現し、多彩な標的遺伝子の転写

を調節している。視床下部室傍核の CRF ニューロンにおいて、FosB の発現が

確認されていて、ラット in vivo の検討では、FosB のストレス応答への関

与が示唆されている。しかし、FosB 蛋白が CRF 遺伝子発現調節に及ぼすそ

の詳細なメカニズムは明らかでない。本研究では、視床下部 4B 細胞を用い

て、視床下部における FosBによる CRF発現調節への関与について検討した。

【方法】視床下部 4B 細胞を培養し、FosB 又は cJun を細胞内に導入して、

RT-PCR 法により CRF mRNA レベルの変化について検討した 。 Adenylate

cyclase activator である forskolin 、 protein kinase C activator の

phorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) 又 は calcium ionophore の

A23187 を添加して、RT-PCR 法により FosB mRNA レベルの変化について検討

した。更に、FosB siRNA を細胞に導入し、FosB をノックダウンさせて、CRF

mRNA レベルの変化に与える影響について検討した。【結果】4B 細胞へ FosB

導入によって CRF mRNA 発現レベルの増加を認めた。Forskolin、PMA 又は

A23187 添加後 2 時間で 、それぞれ FosB mRNA レベルの増加を認めた 。

Forskolin、PMA 及び A23187 で増加反応を示した CRF mRNA レベルは、FosB

のノックダウンによって抑制された。【考察】 CRF mRNA 発現の増加におけ

る FosB の関与が示唆された。Fos 蛋白をコードする遺伝子は immediate

early gene に属するが、FosB/DeltaFosB は細胞内半減期が非常に長いこと

が知られている。ストレス時の CRF 発現調節のために、FosB は直接又は間

接的に関与しているものと推察された。

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【セッション3】 副腎 座長:方波見卓行

片側副腎腫瘤摘除により糖尿病の改善が得られた AIMAH の1例

西山 充 1)、次田 誠 1)、中山修一 1 )、岡崎瑞穂 1)、田口崇文 1)、

岩﨑泰正 2)、辛島 尚 3)、執印太郎 3 )、寺田典生 1)

1)高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科、 2 )高知大学保健管理センター、

3)高知大学医学部泌尿器科

【症例】 64 歳の女性。57 歳時より 2 型糖尿病に対してインスリン療法を開

始された。平成 22 年 9 月両側副腎腫瘤を指摘され、精査のため同 10 月当科

紹介となる 。身体的にクッシング徴候は見られなかったが、早朝 ACTH

2.2pg/ml と低値、眠前コルチゾール 12.6μ g/dl と高値であり、DEX(1mg)抑

制試験ではコルチゾール 12.7μg/dl と抑制見られなかった。腹部 CT・MRI

では両側副腎に複数の結節性病変(左側優位)が認められ、副腎皮質シン

チグラフィーでは両側腫瘤への取り込みが見られ、ACTH 非依存性大結節性

副腎皮質過形成 (AIMAH)によるサブクリニカルクッシング症候群と診断し

た。糖尿病については尿中 CPR 66μ g/日と基準値内であったが、血糖コン

トロールのためインスリン 74 単位/日必要であった。糖尿病合併症も見ら

れることから、副腎腫瘤摘除をすすめたが御本人が承諾されず退院となる。

外来でも HbA1c 8~ 9%と血糖高値の状態が続くため、御本人を説得して平

成 24 年 3 月左側副腎腫瘤摘除を実施した。その後、コルチゾール低下に伴

いインスリン 50 単位/日まで減量しており、HbA1c 6%台と改善傾向にある。

【考察】 AIMAH の治療はコルチゾール分泌能や合併症の存在により、両側

副腎腫瘤摘除または優位側の片側腫瘤摘除が考慮される。本例では優位側

の副腎腫瘤摘除により血糖値の改善が認められた。治療経過とともに文献

的考察を加えて報告する。

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【セッション 3】 副腎 座長:方波見卓行

AIMAH の臨床内分泌学的特徴と RNA-seq 解析から捉えた分子病態

鈴木佐和子 1)、田中知明 1 )、横手幸太郎 1)、龍野一郎 2)

1)千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座、2 )東邦大学医療センター

佐倉病院糖尿病内分泌代謝センター

【緒言】近年、Subclinical Cushing‘s syndrome(SCS)を呈する AIMAH 症

例が Incidentaloma として発見される機会が増加しているが、高血圧・代

謝疾患を合併することから臨床的にどう取り扱うか課題となる。その成因

やコルチゾール自律分泌の背景には、ACTH 受容体や Gsαの活性型変異など

の PKA/cAMP シグナル異常や副腎皮質細胞における異所性受容体発現の関

与が報告されているが、その機序は必ずしも明らかではない。そこで、AIMAH

の臨床的特徴にと分子病態を明らかにする目的で、次世代型シークエンサ

ーを用いた摘出腫瘍組織における網羅的遺伝子発現解析を施行したので、

文献的考察を含めて報告する。【方法】過去 10 年間に当院に入院し両側副

腎皮質の大結節を認めた症例 38 例の臨床的特徴を詳細に検討した。またス

テロイドマッピングを施行し SCS を合併した AIMAH 症例における ACTH 負

荷前後のステロイド代謝産物の産生を検証した。更に、 AIMAH(SCS)、 副腎

腺腫(SCS)、副腎腺腫 (非機能性)、正常副腎を用いて RNA-seq による Refseq

gene の発現プロファイルと IPA 解析によるシグナル経路の検討を行った。

【結果】 AIMAH 38 例中、28 例が SCS であった。SCS を合併した AIMAH では副

腎腺腫と比較して有意に高血圧・低レニン・低カリウム血症が増加し、その

機序として DOC や 18-OHDOC 等の weak mineral corticoid 過剰産生を認め

た。RNA-seq 解析では、AIMAH は多彩な異所性受容体発現に加えて、CYP11A1

や CYP17 の遺伝子発現低下に加えてコレステロール合成が低下していた。

Pathway 解析では、癌増殖と副腎分化に重要な WNT シグナル関連遺伝子群の

有意な増加を認めた。【結論】これらの結果は、腫瘍増殖シグナルと副腎皮

質機能分化制御の接点で作用する WNT シグナルの異常が、ACTH 非依存性多

結節形成の成因と AIMAH 特異的な副腎酵素発現パターンの病態に関与する

可能性を示唆している。

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【セッション3】 副腎 座長:方波見卓行

経時的変化をとらえた抗リン脂質抗体症候群による副腎梗塞・原

発性副腎不全の一例

橋本瑛理子 1)、方波見卓行 1)、松原史明 1)、大重聡彦 2)、石井 聡 1)、

田中 逸 2)

1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院代謝・内分泌内科、2)聖マリアンナ

医科大学代謝・内分泌内科

【症例】 35 歳,男性.2010 年 5 月上旬,左上腹部痛を自覚し、当院受診。腸炎

を疑われ入院.1 週間で退院したが易疲労感 ,倦怠感 ,体重減少 ,手指色素沈

着出現 ,8 月再診 .外来での血中 ACTH は 1090pg/ml,cortisol は 2.6μg/dl,

副腎不全を疑い当科入院 .【既往歴】32 歳:下肢深部静脈血栓症 ,右肺下葉

梗塞【身体所見】 BMI 20.2kg/m2,血圧 103/51mmHg,脈拍 76/分・整 ,体温

36.1℃ ,舌先端 ,手指・足指 ,右母指球 ,アキレス腱部 ,足底部皮溝 ,腹部に色

素 沈 着 あ り . 【 検 査 所 見 】 WBC3100/ μ l(Eosino4.1%),Na140mEq/l,K

4.1mEq/l,FPG 88mg/dl,抗 CL-β 2GP1 抗体陽性 ,LA 陽性 ,内分泌学的検

査 :ACTH 1110 pg/ml,cortisol 2.9 μ g/dl,DHEA-S 21 μ g/dl.迅速・連続

ACTH 負荷試験;cortisol 無反応.腹部造影 CT:左副腎は 5 月の CT で腫大、強

く造影されたが,その 16 週の後には縮小傾向を示し ,造影剤増強効果も減

弱した .右副腎は一貫して同定できず ,来院時すてに萎縮していたと考えら

れた.【臨床経過】上記の結果から抗リン脂質抗体症候群(APS)による副腎

梗塞・原発性副腎不全と診断し,ヒドロコルチゾン(20mg/day)の投与を開始,

症状の消失と ACTH 低下を得た.デキサメサゾン 0.5mg に変更し,尿中遊離

コルチゾールを測定したが依然として感度未満であり,現在もなお副腎か

らのコルチゾール自律分泌はないと考えられる.【考察】APS による副腎不

全は通常出血や出血後梗塞に起因し,副腎梗塞による発症は少ない.本例

は画像検査の経時的変化から梗塞を主因として副腎不全に至った稀な1例

と考えられ,文献的考察も含め報告する.

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【セッション 3】 副腎 座長:方波見卓行

副腎偶発腫より発見された SF-1発現に乏しい Oncocytoma の一例

月山秀一 1)、方波見卓行 2)、浅井志高 1)、永井義夫 1)、石井 聡 2)、

船津美恵子 3)、小泉宏隆 3)、笹野公伸 4)、太田明雄 1)、佐々木要輔 1)、

田中 逸 1) 1)聖マリアンナ医科大学病院代謝・内分泌内科、2)聖マリアンナ医科大学横

浜市西部病院、3)聖マリアンナ医科大学診断病理学、4)東北大学大学院医学

系研究科病理診断分野

症例: 30 歳代,女性. 主訴:腹痛. 既往歴:特記事項なし.現病歴:平成 24年 1 月に腹痛があり ,近医受診 .超音波検査で左副腎に約 4cm 大の腫瘤を指摘され ,他院泌尿器科を紹介受診 .CT 上左副腎腫瘍を認め ,当院紹介となった入院時現症 :BMI 21kg/m2,血圧 101/61mmHg,体温 36.3℃.頭頸部・胸腹部に特記すべき異常所見はなく ,明らかな Cushing 徴候や発汗過多などの褐色細胞腫を疑う所見も認めららなかった . 入 院 時 主 要 検 査 所 見 : 尿 潜 血 (2+), 尿 蛋 白 (-). 血 算 :WBC 6400/ μL(Seg.68.5%,Lymph.25.0%,Mono.5.3%,Eosino.0.6%,Baso.0.6%),Hb13.2g/dL,PLT 27.8 万 /μ L. 生化学 :TP 7.7g/dL,Alb 4.7mg/dL,LDH 166IU/L,AST 17IU/L,ALT 10IU/L,γ -GTP 17IU/L,Cr 0.45mg/dL,Na 141mEq/L,K 3.4mEq/L,CRP <0.03mg/dL,血糖 97mg/dL,HbA1c 4.8%(JDS).内分泌検査 :ホルモン基礎値では ACTH 早朝 8.6pg/mL・夜間 3.8pg/mL と,Cortisol(F)早朝 9.5μg/dL・夜間 1.4μ g/dL と日内変動は保たれ ,UFC 50.3μ g/day,DHEA-S 213μ g/dL と正常範囲 .PAC 82pg/mL,PRA 0.7ng/mL/hr(ARR 117)と低レニン血症を認めた.全尿中メタネフリンは 0.21mg/dayと極軽度高値だったが ,血中・尿中 catecholamine(CA)や代謝産物は正常範囲内であった .CRH 負荷 ,Decamethasone 抑制試験(1・8mg)カプトプリル負荷試験に異常はなかった . 画像検査 :CT ; 左副腎に 4.1×3.2cm,辺縁整 ,内部均一 ,造影早期からエンハンスされる類円形腫瘤を認めた .明らかな出血・壊死を疑う所見は認めなかった. 123I-MIBG シンチグラフィ ;腫瘤への明らかな核種の集積なし .入院後経過 :CT所見からは脂質含有に乏しい副腎腺腫を最も疑ったが ,腫瘤内部の CT 値 (非造影下)は 34HU と高く ,髄質腫瘍や副腎皮質癌も否定できなかった .MRI 検査を予定していたが ,閉所恐怖症の為行えなかった .同年 4 月,腹腔鏡下左副腎腫瘍摘出術を施行 .摘出腫瘤病理所見 :肉眼所見 ;4.5×2.5cm,黄白色 ,肉眼的に明らかな出血・壊死像なし. HE 染色;明瞭な被膜を有し ,内部は好酸性顆粒状細胞質と大型核や多形核を有する腺腫細胞増生を認める腫瘤 .Weiss criteria は 9 項目中 2 項目陽性 .免疫組織科 学 的 検 査 で は ミ ト コ ン ド リ ア 染 色 (MIT) 陽 性 ,SF-1 染 色 は ほ ぼ 陰性,ChromograninA 染色 陰性,ステロイド合成酵素では scc,c17 が一部陽性で ,その他は陰性 .MIB-1 index は 3~10%と一部で高値を示した .最終的に scc,c17 が一部陽性と転移性 oncocytic tumor は否定的であることから極めて稀な SF-1 をほぼ発現しない副腎 Oncocytoma と診断した .考察 :Oncocytoma(OCT)は唾液腺,甲状腺,腎などに好発することが知られているが ,副腎原発は比較的少ない .OCT の好酸性細胞質は多数のミトコンドリアを反映した結果と考えられており ,本症例でも MIT染色は陽性で ,既報の結果と一致した .しかし ,多くの副腎 OCT で陽性となる SF-1染色は ,ほぼ陰性であり ,SF-1 発現が高度に低下した低分化副腎皮質細胞に由来する OCTとも考えられ興味深かった .また,副腎 OCTは多くが良性と報告がされているが,元来淡明細胞に乏しいなどの理由から Weiss criteria による良悪性の鑑別が困難であることが特徴として知られており, 本症例においても MIB-1 indexが高値を示していることから ,注意深い経過観察が必要と考えた.

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【セッション 6】 クッシング病 座長:大塚文男

長期寛解維持後に再発した Cushing 病の 1 例

柿沢圭亮 1)、大石敏弘 1)、芝田尚子 1 )、飯野和美 1)、酒井直人 2)、

山田正三 3)、沖 隆 1)

1)浜松医科大学内分泌代謝内科、 2)浜松医科大学脳神経外科、 3)虎の門病院

間脳下垂体外科

【症例】52 歳女性。2008 年 6 月に体重増加 ,顔面浮腫を主訴として近医を受

診し、ACTH 産生下垂体 microadenoma が疑われ、当院に紹介受診された。精査

にて確定診断に至り、同年 8 月に経蝶形骨洞下垂体手術を施行され、その後、

ACTH,F は共に測定感度以下で推移し、ヒドロコルチゾン (HC)の内服が 2011

年 3 月までの 31 ヶ月間必要であった (HC 中止時 ACTH 31.4 pg/ml、F 3.1μ

g/dl)。2011 年 12 月 ACTH,F が共に高値となり、頭部 MRI にて術前と同部位

に microadenoma を認めたため、再発を疑い、当科再入院となった。【経過】

明らかな Cushing 徴候は認めなかったが、ACTH 基礎値 161 pg/ml,F 基礎値

22.2μ g/dl,UFC 290μ g/日と高値であり、深夜 F 16.6μg/dl と日内変動の

消失を認めたことより、Cushing 病の再発と診断した。経蝶形骨洞下垂体手

術を施行したが、腫瘍摘出には至らなかった。メチラポン 1500mg/日,サ

ンドスタチン LAR 20mg/月により病勢をコントロールした上で、再手術を

施行し、頭部 MRI や病理学的に摘出が確認された。しかし、術後の F 基礎値

が高値で遷延したため、サンドスタチン LAR 20mg/月を再開した。現在、病

勢はコントロールされている。【考察】過去の報告によると、Cushing 病の

術後再発例は、再治療に難渋し予後が不良となる傾向がある。術後の治癒基

準に囚われ過ぎずに、長期間に渡り注意深い経過観察を続けることで、本症

例のような再発例を見逃さないことが重要と思われる。

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【セッション 6】 クッシング病 座長:大塚文男

下垂体腫瘍の経過観察中、 ACTH 基礎値が一度だけ高値を示したこ

とをきっかけに診断し得たサブクリニカルクッシング病の一例

篠原雅幸 1)、西岡達矢 1)、熊谷千鶴 1 )、橋本浩三 1)、溝渕 光 2)

1)特定医療法人仁生会細木病院糖尿・内分泌内科、2)医療法人防治会いずみ

の病院脳神経外科

【症例】平成 20 年頭痛を主訴に近医受診した際、MRI で下垂体 lt. lobe に

7mm 大の腫瘍を指摘されたが無症候性のため経過観察されていた。平成 22

年頃より高血圧を指摘され加療されていた 。平成 24 年 8 月に検診で

HbA1c(JDS)6.2%と高値を指摘されたが 75gOGTT で血糖は正常パターンであ

った。平成 24 年 10 月の検査で ACTH106pg/ml と初めて高値を認めたため精

査目的として当院紹介、入院となった。入院時現症ではクッシング病に特

異的な徴候は認めなかった。入院時朝 8 時の ACTH40.3pg/ml、cortiso10.7

μg/dl と正常ながら、夜 11 時の ACTH56.5pg/ml、cortisol11.1μ g/dl と日

内変動の消失を認めた。CRH 負荷試験では良好な反応を示した。また、デキ

サメサゾン 0.5mg抑制試験で ACTH29.2pg/ml、cortiso5.9μg/dlと抑制され

なかった。デキサメサゾン 8mg 抑制試験では cortisol 前値 10.7μ g/dl か

ら 1.8μ g/dl へと半分以下への抑制を認めた。DDAVP 試験では ACTH 前値

20.7pg/ml から 30 分後頂値 96.4pg/ml と奇異反応を認めた。以上よりサブ

クリニカルクッシング病と診断し、経蝶形骨洞下垂体腫瘍摘出術を行った。

手術後の組織診断により ACTH 産生腺腫が証明された。【考察】本症例では

下垂体腫瘍を認めたものの ACTH の基礎値は正常であり、身体的徴候も無く

経過していたため、当初はサブクリニカルクッシング病と診断されていな

かった。非機能性と思われる下垂体微小腺腫をフォローする際には、サブ

クリニカルクッシング病の可能性も念頭にホルモン検査を行うことが必要

と考えられた。

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【セッション 6】 クッシング病 座長:大塚文男

過去 1 年間に当科において Met PET にて局在診断し、治療を行った

Cushing 病の 4 症例

工藤正孝 1)、森本 玲 1)、小野美澄 1)、岩倉芳倫 1)、祢津昌広 1)、松田 謙 1)、

齋藤綾子 1)、菅原 明 2)、伊藤貞嘉 1)、池田秀敏 3)、佐藤文俊 1) 1) 東北大学大学院医学系研究科医学部腎・高血圧・内分泌分野、 2)東北大

学大学院医学系研究科分子内分泌学分野、 3)総合南東北病院下垂体疾患研究

【はじめに】近年 Cushing 病の腺腫の局在診断における Met PET/3.0T-MRI の有

効性について報告されている(Ikeda H. et al ; J Neurosurg 112: 750-755,2010)。

今回は過去 1 年間に、Met PET/3.0T-MRI を施行され局在診断し、治療を行った顕

性 Cushing 病の 4 症例について報告する。【症例】症例 1: 59 歳女性。主訴は高

血圧およびに顔面の浮腫。ACTH 68.8 pg/ml, Cortisol17.8μg/dl。症例 2: 48 歳

男性。胸腰椎の多発骨折の精査中に疑われ紹介。ACTH 71.0 pg/ml, Cortisol15.9

μg/dl。症例 3: 45歳女性。高血圧・糖尿病で加療中、満月様顔貌をみとめ、径 20mm

の左副腎腫瘍をみとめたがアドステロール副腎シンチで対側の右副腎の取り込

み抑制も認めず、ACTH 40.5 pg/ml, Cortisol14.3μg/dl と ACTH の抑制も認め

ず副腎性クッシング症候群としては非典型的として当科紹介。症例 4: 66 歳女

性。糖尿病の加療中血糖コントロール不良となり、浮腫や満月様顔貌が出現。

ACTH 167 pg/ml, Cortisol 22.8 μg/dl。【結果】デキサメサゾン抑制検査につ

いては、0.5mgでは全例コルチゾールは抑制不十分、8mg では症例 2,3は前値の半

分以下に抑制され、症例 1、4 では抑制不十分であったが、12 ㎎まで増量すると抑

制を認めた。CRH負荷/DDAVP 負荷に関しては、症例 1のみ低~無反応で、その他の

症例では ACTH は十分反応を認めた。3.0T-MRI による dynamic study では症例 3

では microadenoma の存在を疑う所見を認めたが、症例 1,2,4 では明らかな腺腫

を疑う所見を認めなかった。続いて Met PET/3.0T-MRI を施行したところ、全例

においてトルコ鞍内に SUV max 2~3 程度の部分的な集積が確認され、同部位に

微小腺腫の存在が疑われた。症例 3 では左副腎腫瘍を指摘されているが、その他

胸・腹部に異所性 ACTH 産生腫瘍を疑う所見を全例において認めず、クッシング

病と診断し、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術を施行した。病理学的な検討では、

全例において摘出された腺腫は ACTH の染色が確認されたが、特に CRH 負荷

/DDAVP負荷に対して低~無反応を示した症例 1では ACTH陽性腫瘍細胞の多くで

Crooke 変性を認めた。術後経過については、症例 1,2,3では術後コルチゾールが

感度以下に低下し寛解と判定され、ステロイド補充療法を行い現在漸減中であ

る。症例 4 では術後も完全寛解には至らず、現在はメチラポンの内服にてコル

チゾールのコントロールを行っているが、再手術等の他の後療法が適応である

か検討中である。【まとめ】4 症例中 3 例においては MRI のみでの下垂体腺腫の

局在を指摘できなかった。しかし MET-PET fusion 3T-MRI 画像を用いた場合に、

腺腫の視覚化により Cushing 病の診断が可能となっており、改めてその有用性

が確認できた。

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【セッション 7】 下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充

左眼瞼下垂を契機に診断された若年胃癌のトルコ鞍部転移の一例

稲垣兼一 1)、当真貴志雄 1 )、中村絵里 1)、越智可奈子 1)、塚本尚子 1)、

三好智子 1)、三村由香里 1 )、小倉俊郎 1)、大塚文男 2)、槇野博史 1)

1)岡山大学病院内分泌センター/腎臓・糖尿病・内分泌内科、2 )岡山大学病

院総合内科

症例は 29 歳・男性。3 か月前より頭痛・複視・背部痛・黒色便を自覚していた

が放置していた。さらに左眼瞼下垂が出現し徐々に頭痛・背部痛が増悪した

ため、前医受診したところ頭部 CT で下垂体腫瘍を認め当院脳神経外科に紹

介となった。初診時、眼球運動障害と動眼神経麻痺を呈しており、下垂体

MRI では斜台を中心に鞍上部から蝶形骨洞内にかけて骨破壊を伴い進展す

る 30 ㎜大の腫瘍(T1・T2 強調で低信号、不均一に造影効果あり )を認めた。内

分泌内科転科後、悪性リンパ腫や転移性下垂体腫瘍などを鑑別に全身精査

を行った。胸腹部 CT で脊椎・大腿骨に多発骨溶解像と胃壁肥厚、胃門部の

リンパ節腫大を認めた。黒色便の既往から上部消化管内視鏡検査を行った

ところ、胃体下部大弯前壁に 40 ㎜大の潰瘍性病変を認め、生検結果は胃癌

(粘液癌)であった。また下垂体腫瘍生検の結果も胃癌の組織像を認め胃

癌の下垂体転移と多発骨転移と診断した。下垂体機能低下症に対し少量の

補充療法を行いながら、消化器内科で下垂体腫瘍に対して放射線照射と全

身化学療法を施行中である。癌の下垂体転移は約 1.8%~20%と報告は様々

であり、原発巣は肺癌と乳癌が半数以上を占める。胃癌の下垂体転移は非常

に稀であり、本症例は頭痛と脳神経症状を伴い、下垂体腫瘍を契機に胃癌

が発見された興味深いケースであったため、文献的な考察を含めて報告す

る。

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【セッション 7】 下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充

ラトケ嚢胞術後に続発性副腎不全を発症したがその後 ACTH分泌能

が緩徐に回復してきた 1 例

村上正憲 1)、鈴木紗加 1)、竹川幸男 1)、宇根直子 1)、立石裕子 1)、

岩嶋富美子 1)、堀内敏行 1)、小川佳宏 2)

1)公益財団法人東京都保険医療公社豊島病院内分泌代謝内科、2)東京医科歯

科大学医学部附属病院

<症例>76 歳女性。既往歴はなし。<現病歴>当院脳神経外科より、内分泌

学的機能評価目的で当科に紹介された。6 年前、視野障害を機にラトケ嚢胞

の診断となり同科にて開頭腫瘍摘出術が行われた。術後、内分泌学的精査は

行われなかったが、慢性的な疲労感に対し水溶性コルチゾンやレボチロキシ

ンの内服が試みられていた。しかし 6 年間で約 30kg の体重減少が出現し、

さらに感染を機に約 2 か月間嘔気・食欲不振が出現したため精査必要と考え

られ当科紹介となり、精査目的で入院となった。<入院時所見>身長 145.7

cm、体重 48.1 kg、BMI 22.6、体温 36.2 ℃、血圧 113/61 mmHg、脈拍 84 /min

であり、足関節から足背にかけて色素沈着を認めた以外は特記すべき身体所

見はなかった。血液検査では血算、電解質に異常を認めなかった。<内分泌

学的精査>ホルモン基礎値においては、ACTH が 43.5 pg/ml、F は感度以下で

あり、GH は 0.1 ng/ml,ソマトメジン C 16 ng/ml と低値を示した。LH は感度

以下、FSH は 0.3 mIU/ml と低値だった。またレボチロキシンを一旦中止して

TSH の計測を行ったところ感度以下であった。CRH 負荷試験にて ACTH は反応

(頂値 30分で 271 pg/ml)、Fは低反応(頂値 30 分で 1.8 μg/dl)。その他、GRH、

LHRH, TRH 負荷試験ではいずれも低反応(GH の頂値 90 分で 3.73 ng/ml、LH

の頂値 60 分で 0.14 mIU/ml、FSH の頂値 90 分で 1.04 mIU/ml, TSH の頂値 60

分で 0.017 mIU/ml)、ACTH を除いて汎下垂体前葉機能低下症を呈した。原発

性副腎不全の可能性を考慮して連続 ACTH 負荷試験を施行したところ、コー

トロシンの筋注により尿中コルチゾールは 122μg/日まで回復を認めた。<

入院後経過>副腎不全に対し水溶性コルチゾン 20μg/日を開始したところ、

2週間のうちに症状改善を認めた。レボチロキシンの補充も追って開始し、

加療継続している。<考察>ACTH が明らかな高値になく、連続 ACTH 試験で

の反応もあるため、副腎皮質抗体やクオンティフェロンが陰性であり原発性

副腎不全の可能性は低かった。術後に汎下垂体機能低下症を呈した後、ACTH

分泌能のみが回復してきた過程を観察している可能性、或いは視床下部性に

CRH分泌能が低下しており、下垂体機能については ACTH分泌能以外が障害さ

れている場合を考えた。下垂体機能低下症からの回復を示唆する点で特異な

症例であり、術後の内分泌学的評価の重要性を認識する上で貴重な症例と考

えられた。

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【セッション 7】 下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充

可逆的な下垂体前葉機能低下を来した、鞍上部病変を含む中枢神

経原発悪性リンパ腫

山形 聡 1)、二川原 健 1)、照井 健 1)、蔭山和則 1)、関 康史 2)、

小野昌美 2)、三木伸泰 2)、市原淳弘 2 )、天野耕作 3)、玉澤直樹 1)

1)弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学、 2)東京女子医科大学高血

圧・内分泌内科、 3 )東京女子医科大学脳神経外科

20歳代男性。2011 年 4月左上下肢の脱力を自覚。近医脳外科の MRIで右頭頂葉

に浸潤性に発育する病変を指摘された。悪性リンパ腫が疑われたが脱力の進

行が急速であったため、生検を経ずに同院でステロイドが投与された。脱力

は軽快し病変は縮小した。その後東京女子医大脳外科で 2 回生検が行われた

が、確診に至らなかった。2012 年 5 月、鞍上部および松果体部に新たな病変が

指摘された。 6 月には口渇多飲多尿が出現した。3 回目の生検が行われ、

diffuse large B cell lymphoma と診断された。Th12 レベルの脊髄にも病変が

指摘され、播種と考えられた。同院内分泌内科で汎下垂体機能低下症および尿

崩症と診断され、hydrocortisone, levothyroxine および DDAVP の補充療法が

開始された。7 月から 10 月にかけて弘前大学脳外科でメトトレキセート大量

療法(MTX 6000 mg + VCR 1 mg)3 クール、および全脳全脊髄照射(40 + 39.6 Gy)

が行われ、いずれの病変も画像上は消失した。その後当科で内分泌学的再評価

を行った。治療前の 6 月には高 PRL 血症、ACTH 遅延反応、コルチゾール・TSH・

LH・FSH・GH の低値低反応といった著しい視床下部障害パターンが認められて

いたのに対し、治療後の 11 月には TSH・LH・FSH・GH の障害が残るものの、PRL は

正常化し、ACTH・コルチゾールの反応は著明に改善していた。DDAVP は離脱不

能で、尿崩症は遷延しているものと考えられた。視床下部下垂体障害の原因と

して中枢神経原発悪性リンパ腫(PCSNL)は比較的稀である。その場合の視床下

部下垂体障害は、前葉後葉機能ともに通常不可逆的とされている。本症例は

部分的ではあるが前葉機能が回復しており、稀なケースと考えられる。今後

本症例は全脳照射による遅発合併症として再び汎下垂体機能低下症に移行す

ると予想されるが、経時的な内分泌検査により適切な量の補充療法を加えて

いくことが望ましいと考えられた。

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【セッション 7】 下垂体機能低下症ほか 座長:西山 充

原発性胆汁性肝硬変に ACTH単独欠損症を併発した 1例

亀井信二、中嶋久美子、吉岡 啓、木下智絵、平田有里恵、田邉昭仁、

下田将司、俵本和仁、小原健司、阿武孝敏、柱本 満、宗 友厚、加来浩平

川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学教室

【背景】ACTH 単独欠損症は橋本病などの自己免疫疾患を時に併発することが知られている。今回我々は、原発性胆汁性肝硬変(PBC:primary biliary cirrhosis)の治療経過中に出現した食思低下と低 Na 血症を契機に ACTH 単独欠損症が判明した 1 例を経験した。検索し得た限りでは、両者の合併例は過去に 2 例の報告があるのみで、極めて貴重と考えられるため、若干の文献的考察を加え報告する。【症例】55 歳、女性【現病歴】2007 年に近医 A で PBC と診断され、ウルソデオキシコール酸 600mg/日の内服で治療さ

れていた。2008年に食思低下が出現、他院で低 Na血症の指摘を受けるも、摂食不良が原因とされ経過観察されていた。2012 年 10 月に嘔気、嘔吐、全身倦怠感が出現、近医 A で対症療法を受けるも改善なく、同年 11 月 16 日に近医 B に入院。点滴治療にても症状が改善せず、低 Na 血症、低血糖、低血圧などから副腎不全を疑われ精査加療目的で当院へ転院となった。【既往歴・家族歴】出産時の大量出血などの既往なし。2007 年子宮腺筋症で子宮全摘。家族に自己免疫疾患歴なし。【臨床経過】入院時、倦怠感を訴えるも嘔

気はなし。身長 147.2cm、体重 45.3kg、BMI 20.9。血圧 116/62mmHg、脈拍 80/分・整、体温36.5℃。意識は清明であり、胸腹部診察所見に異常なし。腋毛、恥毛の脱落あり、頭髪も薄い。下肢に浮腫なし。口腔内に色素沈着なし。皮膚は色白だが、眼球結膜含め黄疸なし。血清 Na 134、K 4.5、Cl 100mEq/L、血清浸透圧 276mOsm/kg、PPG 60mg/dl、スポット尿 Na 133 mEq/L、尿浸透圧 609mOsm/kg。基礎値は ACTH 1.0pg/mL 未満、F 0.2μg/dL、DHEA-S 2μg/dL 未満。TSH 8.18μIU/mL、FT3 3.16pg/mL、FT4 0.54ng/dL で軽度の原発

性甲状腺機能低下症が疑われ、抗 TPO 抗体 103.5、抗 Tg 抗体 163.9IU/mL と共に強陽性で橋本病と診断。他の下垂体前葉ホルモン基礎値は基準値内。末梢血検査にて好酸球増多(11%)あり。IgG4 42.9mg/dL、抗下垂体抗体陰性。MRI では下垂体は萎縮あり empty sella様。下垂体茎の腫大はなし。一方 PBC 関連では、AST 33、ALT 13U/L、T-Bil 0.3mg/dL と肝機能異常なし。PBC の疾患マーカーである抗ミトコンドリア M2 49.2 と陽性で IgM 98.3mg/dL。 以上の経過から PBC にを続発性副腎不全を併発したものと判断、ステロイ

ド補充療法を開始。CRH 負荷試験にて ACTH~F の無反応を確認し、ACTH 単独欠損症と診断した。補充療法開始後は全身倦怠感、食思低下などの症状は著明に改善し、最終的にヒドロコーチゾン 15mg/日(7.5, 5.0, 2.5)で第 14 病日に軽快退院。また甲状腺機能はグルココルチコイド補充に伴い徐々に euthyroidに回復した。PBCに対してもウルソデオキシコール酸 600mg/日を継続。【考察】一部の遺伝性のものを除き、ACTH 単独欠損症の原因は不明であるが、後天的な発症の場合には自己免疫機序が想定されている。

様々な自己免疫疾患の併発も知られており、特に当症例の如く橋本病の合併が多いとされる。一方、PBC は自己免疫機序による胆管炎が特徴で、肝・胆道系の自己免疫疾患と位置付けられ、やはり橋本病の併発が多いことも特徴とされる。ACTH 単独欠損症と PBCの併発例は、検索する限りでは本邦からの 2 例の報告をみるのみであり、極めて稀と考えられた。このうち 1 例は当症例と同様、ACTH 単独欠損症、橋本病、PBC の 3 疾患の併発である。多腺性自己免疫症候群の範疇に相当する可能性もあるが、従来の分類では 3 疾患併発は含まれていない。また成人発症 ACTH 単独欠損症としては、女性である点、画像

上 empty sella 様の下垂体萎縮を認めた点、は非典型的と云えるかも知れない。今後も注意深い経過観察が必要と考えられた。

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【セッション 8】 異所性 ACTH 症候群 1 座長:柳瀬敏彦

剖検を行った前立腺小細胞癌による異所性 ACTH 症候群の一例

吉田昌則 1)、伊藤 徹 2)、市野 学 2)、佐竹立成 3)、氏平伸子 3)、

上田晴美 1)、宮田美咲 1)、福岡一貴 1)

1)名古屋掖済会病院糖尿病・内分泌内科、 2)名古屋掖済会病院泌尿器科、

3)名古屋掖済会病院病理診断科

【症例】 68 才男性【現病歴】腰痛、下肢浮腫、低 K にて入院。入院直後にカ

リニ肺炎を発症も ST合剤 , m-PSL pulse で改善。Na 129, K 3.3, Cl 92, HbA1c

7.0%, ACTH 176.0pg/ml, F 49.7μ g/dl, AVP 19.9pg/ml. 23 時 ACTH 186.0,

F 52.4, UFC 4930μ g/day. DST1mg:F 56.5, 8mg:F 49.5 と抑制なし。ACTH

は CRH 負荷に無反応。Octreotide で上昇。CT: 70×50mm の前立腺腫瘍と複数

の外腸骨リンパ節腫大、腰椎転移。前立腺生検 :CD56, TTF-1, synaptophysin,

chromogranin A 陽性、PSA 陰性の小細胞癌。免染 :ACTH 陽性細胞を確認。AVP

は陰性も経過より産生の可能性あり。【経過】Metyrapone(MET)を開始、最大

5g/day まで増量。CPT-11 +CDDP 療法にて原発巣とリンパ節が縮小。 5 コー

ス終了後、MET を中止できた。6 コース終了後 ACTH 146.0, F 6.0, AVP 6.6.

23 時 F 2.5, DST1mg: F 1.5 と内分泌的には寛解。以後小康状態を保つも、

9 コース目施行中、ACTH 134.0, F 31.5 と急増、肺炎, DIC を発症、MET 再開。

肺炎は改善も死亡された。剖検を施行。前立腺癌は左葉から発生したと考え

られたが、壊死が目立った。右葉は腫瘍が残存。肺、肝、膀胱、骨髄、右腎、両副

腎、大動脈周囲と膵周囲のリンパ節に転移。【考察】小細胞癌は前立腺癌全

体の 0.5-2%程度と低頻度で、ホルモン療法が無無効で、化療奏効率も低い

ことが知られている。 ACTH 産生性小細胞癌は、極めて稀で十数例の報告を

認めるのみである。急速に進行し、化療も無効で予後不良とされるが、本症

例は化療が一旦は奏功し、 MET が中止できた。原発巣の前立腺左葉の壊死

は、初期の化療が有効であったことを示す。徐々に化療の効果が低下し、

転移巣の進展を防止できなかったと考える。副腎に転移は認めたが、正常

皮質も残存し、十分高F血症を来し得ると考えた。

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【セッション 8】 異所性 ACTH 症候群 1 座長:柳瀬敏彦

クッシング徴候を呈した ACTH と GHRH 同時産生の膵神経内分泌腫

瘍(PNET)

田所梨枝 1)、橋詰真衣 1)、村井謙允 1 )、杉澤千穂 1)、遠藤 慶 1)、

飯坂 徹 1)、齊木 亮 1)、佐藤尚太郎 1)、高橋育克 1)、大塚史子 1)、

片上秀喜 2)、谷山松雄 1)

1)昭和大学藤が丘病院内科内分泌代謝科、2)帝京大学ちば総合医療センター

内科臨床研究部

61 歳女性.2009 年 9 月腹痛を自覚 .前医で膵臓に径 6cm 大の腫瘤を指摘され ,

膵生検の結果 ,膵原発の非機能性高分化型膵神経内分泌腫瘍 (G2, Ki67

Index: 11.5%)と診断された.遠隔リンパ節転移のため手術適応はなく,オ

クトレオチド LAR 20 ㎎ /月が開始され ,以降 ,継続している.2011 年 3 月 ,糖

尿病(HbA1c 9.9%, NGSP 値)のコントロール目的で当院へ紹介入院した.

血中 ACTH 192.9pg/mL,コルチゾール (F) 10.4ug/dL と高値を示したが、

GH(1.0ng/mL)と IGF-1(85ng/mL)は正常であった。2011年 4月 ,外来通院中に

舌の色素沈着を,同年 5 月頃から満月様願貌をきたし,クッシング症候群を

疑われ,同年 9 月血中 ACTH249.1pg/mL,F 17.6ug/dL,GH11.6ng/mL, IGF-1

148ng/mL(基 準 値 :37~ 150ng/mL),当 科 に 再 入 院 し た .MEN の 家 族 歴 な

し .ACTH と GHRH の同時産生膵内分泌癌を疑い ,血中濃度を測定したとこ

ろ,POMC 前駆体タンパクであるγ 1-MSH-1 443.4pg/mL(基準値<20pg/dL),γ

3-MSH 429.3pg/mL(基準値 <15.0pg/mL),γ 3-MSH/ACTH-Ⅰモル比 3.3(基準値

<0.5)はいずれも高値で,サイズ排除型 HPLC では大分子部位にそれぞれの

活性を示した.さらに,内分泌負荷試験では Dex8mg 負荷試験でのコルチゾ

ール抑制反応は欠如し, CRH 刺激試験での ACTH 増加反応を認めず,異所性

ACTH 産生症候群(EAS)と診断した.一方,血中 GHRH も 9230.4pg/mL(基準値

4-14pg/mL)と高値を示した.さらに,TRH 刺激試験では GH の奇異性増加反応

を認めた。下垂体 MRI は正常像を示した.そして,膵生検組織において ,POMC

関連タンパクである,ACTH,γ1-MSH IHC,γ3-MSH の免疫染色ならびに GHRH

の免疫染色はいずれも強陽性を示した .以上より,ACTH と GHRH 同時産生の

PNET による EAS と診断した.ACTH と GHRH を同時産生した膵 NEC は極めて稀

である .また ,血中 ACTH,POMC 関連タンパクと GHRH 濃度は本 PNET の有用な

腫瘍マーカーである.

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【セッション 8】 異所性 ACTH 症候群 1 座長:柳瀬敏彦

膵神経内分泌癌による異所性 ACTH 症候群の 1 例

周東佑樹 1)、杉原 仁 1)、小林俊介 1 )、高野綾子 1)、長峯朋子 1)、

仲村優子 1)、武市奈緒美 1 )、高谷磨紀代 1)、佐藤友紀 1)、竹光秀司 1)、

真山大輔 1)、長尾元嗣 1)、石崎 晃 1 )、原田太郎 1)、稲垣恭子 1)、

近藤俊輔 2)、片上秀喜 3)、及川眞一 1 )

1)日本医科大学医学部内分泌糖尿病代謝内科、2)国立がん研究センター肝胆

膵内科、 3)帝京大学ちば総合医療センター内科・臨床研究部

異所性 ACTH 症候群の頻度はクッシング症候群の原因の中では1割前後と

少なく、膵腫瘍による症例はまれである。今回、膵神経内分泌癌による異

所性 ACTH 症候群に遭遇し、血中 POMC 関連ペプチドを解析したので報告す

る。 61 歳の男性。糖尿病と診断され通院加療していたところ両側下腿浮

腫、易怒性、腰痛が出現した。ACTH (348pg/ml)、Cortisol (53.8μg/dl)とも

に高値を示し ACTH依存性クッシング症候群が疑われ入院した。Cortisol の

日内変動は消失し、Cortisol は 0.5mg、8.0mg のデキサメサゾンにより抑制

されず、CRH 試験、DDAVP 試験、メチラポン試験では ACTH の増加反応はなか

った。頭部 MRI にて下垂体病変は認めず、異所性 ACTH 症候群と診断した。腹

部 CT にて膵腫瘍を認め、超音波内視鏡下穿刺生検施行したところ、組織診

で CD56(+)、synaptophysin(+)、chromogtaninA(+)から神経内分泌腫瘍と診

断し、免疫染色で ACTH が陽性であった。Ki-67 は局所的に 50~70%の陽性率

であり、mitosis も 10 個 /HPF 以上と高い箇所を認め G3 の膵神経内分泌癌

(ACTH producing tumor)と診断した。画像上直径約 10cm の腫瘤で、PET にて

傍大動脈リンパ節の腫大を認めたが、遠隔転移はなかった。腫瘤内に上腸

間膜動脈、腹腔動脈が穿通しており外科的治療は困難と判断し、化学療法

CDDP+ETOP を開始した。末梢血中の POMC 関連ペプチドを測定したところγ

1-MSH、γ 3-MSH の高値、γ 3-MSH /ACTH モル比の高値を認め、異所性 ACTH

症候群に一致する所見であった。現在、高 Cortisol 血症はメチラポンを用

いてコントロールし、化学療法に対する ACTH、腫瘍の反応を観察中である。

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【セッション 9】 異所性 ACTH 症候群 2 座長:東條克能

原発巣不明の周期性 Cushing 症候群の 1 例

辻本和峰、吉本貴宣、安東 環、大木葉宣昭、西尾勇一郎、早川惠理、

南 勲、三原正朋、杉山 徹、泉山 肇、小川佳宏

東京医科歯科大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・代謝内科

【症例】 70 歳、女性。【主訴】全身倦怠感、下腿浮腫。【現病歴】 2012 年 2

月頃より数週間の周期でふらつき、四肢の脱力感が出現し他院で高血圧症、

低 K 血症(2.4mEq/l)を指摘され精査目的に入院。ACTH 86.1pg/ml、コルチゾ

ール 40.0μg/dl 高値と、尿中遊離コルチゾール高値 (457.2μg/day)でコル

チゾール日内変動消失より ACTH 依存性 Cushing 症候群が疑われた。その際

8mg デキサメタゾン抑制試験でコルチゾール値の抑制 (+)、CRH 試験で ACTH

頂値 1.54 倍まで上昇し Cushing 病が疑われたが、海綿静脈洞サンプリング

で ACTH の step up(-)であり診断・治療に難渋したため当院紹介となった。

当院入院後の観察にて ACTH/F 値は約 1 週間の周期で増減を繰り返し、下腿

浮 腫と色素沈着も連動して増悪 ・消 退 を 繰り返したことから周期性

Cushing 症候群と診断した。ACTH 上昇期に施行した CRH 試験にて ACTH の反

応(-)、下垂体 MRI で腫瘍病変(-)であり総合的に異所性 ACTH 症候群が疑わ

れた。気管支鏡検査、上部消化管内視鏡検査および、胸腹部造影 CT を施行し

たが原発巣は確定しなかったためメチラポン 1000mg+デキサメタゾン

0.5mg にて高コルチゾール血症のコントロールを行い退院となった。今後

オクトレオチドシンチで原発巣検索予定である。【考察】本症例に限らず周

期性 Cushing 症候群、特に異所性 ACTH 症候群の場合はその局在診断に難渋

することが多い。周期性 Cushing 症候群の局在診断に有用な検査とその治

療法に関して文献的報告を加え報告する。

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【セッション 9】 異所性 ACTH 症候群 2 座長:東條克能

咽頭下垂体より発生した異所性 ACTH 産生下垂体腺腫の 1 例

福原紀章 1)、井下尚子 2)、堀口健太郎 1)、西岡 宏 1)、山田正三 1)

1)虎の門病院間脳下垂体外科、 2 )がん研究所

【序論】蝶形骨洞内から上咽頭にかけて発生し、トルコ鞍内とは交通のな

かった異所性のサイレント ACTH 下垂体腺腫の 1 例を経験したので発生母

地の考察を含めて報告する。【症例】 48 歳男性。1 年前から進行する鼻閉感

を主訴に鼻腔腫瘍を診断された。他院での腫瘍生検で ACTH 産生下垂体腺腫

と診断されたため当院を紹介受診した。身体所見上、クッシング病を示唆

する所見はなかったが、内分泌学的には夜間の ACTH が 29.0 pg/ml、コル

チゾールが 7.9 μ g/ml と高値を示し、デキサメタゾン 0.5mg での抑制も不

十分であった。経鼻的手術を施行したところ、腫瘍は鼻中隔粘膜下から蝶形

骨洞内と上咽頭に存在したが、鞍底の骨と粘膜は保たれており鞍内との交

通はみられなかった。腫瘍は全摘出され、術後 ACTH、コルチゾールは低下、

デキサメタゾン 0.5mg で抑制が認められるようになった。腫瘍は免疫組織

学的に ACTH 陽性、MIB1 index は 1%、電顕所見からも silent corticotroph

adenoma subtype 2 と診断された。【考察】下垂体前葉が発生する過程で、

Rathke 嚢の一部が咽頭組織内に遺残し、形成された咽頭下垂体を発生母地

として異所性腺腫が生じることがあるとされている。本例でも咽頭下垂体

が形成される蝶形骨洞底部で骨欠損があり、そこから蝶形骨洞内外にわた

って腫瘍が存在していた。咽頭下垂体に由来した異所性サイレント ACTH

腺腫と考えられた。

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【セッション 9】 異所性 ACTH 症候群 2 座長:東條克能

多発肝転移を伴う肺原発神経内分泌腫瘍による異所性 ACTH産生腫

瘍に対するエベロリムスの治療効果

垣田真以子 1)、難波多挙 1 )、村田 敬 2)、安井久晃 3)、植田洋平 1)、

中谷理恵子 1)、中尾佳奈子 1)、立木美香 1)、臼井 健 1)、田上哲也 1)、

成瀬光栄 4)、島津 章 4) 1)国立病院機構京都医療センター内分泌・代謝内科、2)国立病院機構京都医

療センター糖尿病センター、 3 )国立病院機構京都医療センター腫瘍内科、 4)国立病院機構京都医療センター臨床研究センター

【症例】79 歳女性。約 20 年前から 2 型糖尿病にて内服加療しており、HbA1c は 7%前後で経過していた。2 年前に肺腫瘍に対して右下葉切除術が施行され、病理学的に neuroendocrine tumor: NET (atypical carcinoid)と診断された。その後、

再発・転移なく経過していたが、約 1 年前から血糖コントロールの悪化を認めるようになり、同時期に肝臓内に多発する病変を認め生検にて NET の肝転移と診断された。肝転移巣に対してオクトレオチドが開始されるも転移病変は増大傾向を示し、エベロリムスによる治療へ変更となった。エベロリムス開始後、転移巣の進行は抑えられていたが著明な高血糖が持続し、HbA1c(NGSP) 10.6%と悪化を認めたため、インスリン強化療法が導入された。しかし、その後も血糖コ

ントロールは難航し、両下肢浮腫や肝機能障害の出現も認めたことからエベロリムスは開始約3ヶ月後に中止となった。中止後も高血糖や肝機能障害を認め、低カリウム血症や体液貯留も増悪し、数週間で進行性に全身状態が悪化した。 この頃より身体所見では満月様顔貌を認めるようになり、内分泌学的検査を実施したところ ACTH 242pg/ml・コルチゾール(F) 64.4μg/dlとともに著明高値で、日内変動は消失しており、1mg デキサメサゾン抑制試験においても ACTH・F とも

に抑制を認めなかった。過去の切除肺と肝生検の組織において ACTH 免疫染色陽性を確認し、肺原発 NET の肝転移による異所性 ACTH 産生腫瘍と診断した。速やかにメチラポンを開始とし、1.5g/日まで増量とした。治療開始後 3 週間で F は 22μg/dl まで改善を示し、低カリウム血症や肝機能障害、浮腫についても著明な改善を認めた。内因性インスリン分泌能はほぼ枯渇状態と考えられたが、インスリンにて血糖コントロールも制御内となったため、エベロリムスを少量よ

り再開とした。エベロリムス再開1ヵ月で ACTH は 151pg/ml まで低下を認めた。【考察】Cushing 症候群の約 3.6%を占める異所性 ACTH 産生腫瘍の原因として、肺癌に次いで NET(carcinoid)によるものが多いとされている。NETの進行は比較的緩徐ではあるが、放置すると転移や再発を繰り返す場合もあり、早期に診断・治療を行うことが重要である。治療は原発巣治療が原則となるが、手術不能例については 11β-hydroxylase 阻害薬のメチラポンや 3β-hydroxylase 阻害薬のト

リロスタンを用いて血中コルチゾールをコントロールする。薬物療法に抵抗性を示すことも多く、高コルチゾール血症のコントロールに難渋した報告も多い。本症例においては、メチラポンにて高コルチゾール血症の著明な改善を認め、さらにエベロリムス再開後には血中 ACTH の低下を確認することができた。異所性 ACTH 産生 NET に対するエベロリムス投与に関する報告はなく、エベロリムスがホルモン過剰の是正に対しても有効である可能性を示す貴重な症例と考えら

れた。

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会(旧 CRH・ACTH研究会)

間脳・下垂体・副腎系研究会会則

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平成24年3月31日改訂

平成23年9月 4日改訂

平成22年3月13日改訂

平成20年3月29日改訂

平成19年3月17日改訂

間脳・下垂体・副腎系研究会会則

第1条(名称)

本研究会は、「間脳・下垂体・副腎系研究会」と称する(以下「本研究会」という)。

第2条(目的)

本研究会の主旨は、CRF、ACTH関連ペプチドおよびコルチゾールに関する

基礎及び臨床医学の研究を通じ、専門知識の増進・普及と技術の交流に貢献する

事を目的とする。

第3条(事業)

本研究会は、前条の目的を達成するために次の事業を行う。

1.本研究会学術集会の開催(年1回)

2.学術集会記録集の発行(以下「記録集」という)

3.その他本研究会の目的を達成するための必要な事業

第4条(会員)

本研究会の会員資格者は、CRF、ACTHおよび関連ペプチドに関する基礎

及び臨床研究を行っている者及びその指導に当たる者とする。

第5条(会費)

1.本研究会の会員は所属、住所、電子メールアドレスを登録し、年会費を納め

るものとする。

2.年会費の額は役員会において決定し、施行細則に記載する。

第6条(役員)

1.本研究会には、次の役員を置く。

世話人:7名程度、幹事:若干名、監事:1名

1)世話人のうちから、「代表世話人」を1名選出し、世話人会・役員会の

運営を総括する。

2)世話人のうちから、任期1年間の「当番世話人」を1名選出し、学術

集会長として学術集会の企画・開催・運営及び記録集の作成を担当する。

2.役員は世話人会で推薦し、役員会にて決定する。

3.役員の任期は2年とし、再任は妨げない。但し満 6 5歳になった場合、そ

の年度末で退任となり、以降は再任されない。

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第7条(役員の職務)

1.代表世話人は、学術集会の開催毎に役員会を開催し、会計報告、役員改選、

その他本研究会の運営に関わる事項について決議する。

2.当番世話人は、学術集会の開催場所・日時・演題等の選出について、世話

人会を開催し、ここに提案し、決議する。また、当番世話人は、記録集の

作成、監修を行う。

3.幹事は、学術集会のプログラムの企画立案等、研究会の運営を補佐する。

4.監事は、本研究会の会計、資産、会務を監査する。

第8条(記録集の作成)

1.学術集会に発表された演題の内容を記録集「ACTH RELATED

PEPTIDES」にまとめて発行する。なお、本記録集は口演者及び会参

加者等に配布する。

2.本記録集は、国立国会図書館、科学技術振興事業団、化学情報協会及び

要求のある大学図書館等に寄贈する。

3. 著作権は本研究会に属するものとし、執筆依頼時に執筆者からその承諾

を得る。

第9条(学術集会の共催)

学術集会は、他団体及び企業と共催することができる。

第10条(学術集会開催場所)

学術集会の開催場所は、原則として東京都内とする。また、開催時期は、原則と

して3月とする。

第11条(学術集会支給規定)

学術集会開催における、謝礼、交通費、宿泊費等の費用の支給については、役員

会において決定し、施行細則に記載する。

第12条(名誉顧問)

本研究会には、名誉顧問を置く事ができる。

第13条(会計)

1.本研究会の会計年度は、学術集会の開催日に始まり、次回開催前日に終わる。

2.本研究会の経費は本研究会会員の年会費等を以ってこれに当てる。

第14条(事務局)

本研究会の事務局は、代表世話人の所属施設に設置する。

なお、共催する団体に事務業務の代行を依頼することができる。

第15条(会則の変更)

本研究会会則の変更については、役員会にて承認を得ることとする。

この会則は、平成24年4月1日より施行する。

第16条(細則)

本研究会会則の細則は、役員会にて承認を得て別途定める。

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施行細則

第1条(年会費)

1)本研究会会員の年会費は 3,000円とする。なお、本会費は学術集会参加費

を兼ねることとする。

2)会の発展と人材育成を目的に、学部学生並びに大学院修士課程の学生

の年会費は無料、大学院博士課程の学生と初期研修医は 1,000円とする。 第2条(名誉顧問)

名誉顧問は世話人を務めた者より本研究会への貢献が著しい者から推挙され

る。なお、名誉顧問は役員会の承認を得るものとする。

第3条(共催団体・企業)

共催を要望・依頼する団体・企業は、本研究会の目的に沿ったものであるか、

世話人会で討議し決定するものとする。共催の団体・企業が決定後、この団体・

企業と学術集会の運営・費用負担等についても討議し決定するものとする。な

お、この会議での決定事項等を議事録に作成し保管するものとする。

第4条(支給規定)

学術集会開催における各経費の支給基準を、次の各号のとおり規定する。

1)謝礼の支給対象者は、研究会会員以外の国内招待のみ研究会経費として

認めるものとする。従って、外国招待は研究会経費からは支払わないも

のとし、これを企画する当番世話人がその費用の算段を行うこととする。

2)交通費の支給対象者は、研究会会員以外の招待講演者とする。その支給金

額は、出発地から会場最寄り駅までの新幹線、航空機代の旅費についての

み実費とする。なお、グリーン料金・Jクラス/スーパーシート等の料金は

支給しないものとする。

3)宿泊費の支給対象者は、研究会会員以外の招待講演者のみとする。

第5条(記録集の作成及び配布)

記録集の作成は事務局が主管する。

1)記録集への掲載資料については、学術集会での発表者より当番世話人また

は、代表世話人等が入手し作成、監修を行なう。

2)企業・団体への広告等の募集は基本的に当番世話人または、代表世話人等

が行う。

3)記録集の印刷・配付については当番世話人または、代表世話人等で行なう。

4)機関リポジトリ等での公開希望があった場合には、代表世話人が対応し、

当研究会記録集掲載論文であることを明記すること、内容は改変しない

ことを条件に公開を許諾する。

以上

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(旧 CRH・ACTH研究会)間脳・下垂体・副腎系研究会第24回

間脳・下垂体・副腎系研究会 世話人会

【代表世話人】  芝﨑  保(日本医科大学大学院 医学研究科 生体統御科学)

【当番世話人】  井樋 慶一(東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野)

【世話人】

(順不同、五十音順)

  岩崎 泰正(高知大学 臨床医学部門)

  沖   隆(浜松医科大学 第二内科内分泌代謝内科)

  髙栁 涼一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学分野)

  寺本  明(東京労災病院 病院長)

  柳瀬 敏彦(福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科)

  山田 正三(虎の門病院 間脳下垂体外科)

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第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会 プログラム抄録集

当番世話人:東北大学 大学院情報科学研究科 情報生物学分野 井樋 慶一

共   催:間脳・下垂体・副腎系研究会

      三菱化学メディエンス株式会社

      ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

平成25年3月7日作成  平成25年3月23日発行

第24回 間脳・下垂体・副腎系研究会

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