2
Department of Japanese Painting [26年度卒業制作・修了制作優秀作品] A 塚原千晶 「地図を見ていてはたどり着けない」  W360×H200、W40×H200×2点 シナベニヤ 銀箔 墨汁 顔料 岩絵具 パステル (26年度修了制作優秀作品) B 宮本万智 「familia」 W450×H450×D200 ドレス 布 アルミ線 アクリル 箔 水干 (26年度修了制作優秀作品) C 泉桐子 「hiding peanuts」 W390×H162×D3 和紙 岩絵具 (26年度卒業制作優秀作品) D 小久保希 「1人でいるのにずっと五月蝿い」 W368×H183 高知麻紙 墨 岩絵の具 水干絵の具 (26年度卒業制作優秀作品) E 橋本晶子  「ルーム」  サイズ可変 墨 アクリル 鉛筆 MDF(26年度修了制作優秀作品) F 櫻 井 美 佳  「だいすき。」 W534×H175 雲肌麻紙 岩絵の具 アクリル絵の具 パステル クレヨン (26年度修了制作優秀作品) A B C D E F 教員・研究室スタッフ 専 任 教員: 内田あぐり( 主 任 教 授 )  尾 長良範   西 田 俊 英   三 浦 耐 子  山本 直 彰 客員教授: 川﨑麻児 北澤憲昭 土屋禮一 非常勤講師: 荒井経 荒木亨子 岩田壮平 柏原由佳 加藤良造 熊澤未来子 酒井祐二 助手: 佐藤希 萩谷但馬 教 務 補 助員: 古 石 紫 織   椎 名 絢 nihonga 2015 Department of Japanese Painting 2015 発行  武蔵野美術大学日本画学科研究室 187-8505 東京都小平市小川町1-736 042-342-6050(直通) 武蔵野美術大学日本画学科研究室ホームページ http://www.musabi.ac.jp/nihonga/ 撮影 加藤貴文(院生作品) 三本松 淳(学生作品) 発行日 2015年6月7日 河鍋暁斎 「下絵 山姥と金太郎」

A D B E F nihonga · 絵画実習Ⅵ [自主制作、展示ゼミ] 3年次 3年次からは各自の主体性を重視した自主制作となります。 それぞれがテーマやイメージを探したり、表現方法に挑戦したりと、この時

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Page 1: A D B E F nihonga · 絵画実習Ⅵ [自主制作、展示ゼミ] 3年次 3年次からは各自の主体性を重視した自主制作となります。 それぞれがテーマやイメージを探したり、表現方法に挑戦したりと、この時

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[26年度卒業制作・修了制作優秀作品]

A 塚原千晶 「地図を見ていてはたどり着けない」         W360×H200、W40×H200×2点シナベニヤ 銀箔 墨汁 顔料 岩絵具 パステル (26年度修了制作優秀作品)

B 宮本万智 「familia」W450×H450×D200ドレス 布 アルミ線 アクリル 箔 水干 (26年度修了制作優秀作品)

C 泉桐子 「hiding peanuts」 W390×H162×D3 和紙 岩絵具 (26年度卒業制作優秀作品)

D 小久保希 「1人でいるのにずっと五月蝿い」W368×H183高知麻紙 墨 岩絵の具 水干絵の具 (26年度卒業制作優秀作品)

E 橋本晶子  「ルーム」 サイズ可変 墨 アクリル 鉛筆 MDF (26年度修了制作優秀作品)

F 櫻井美佳 「だいすき。」W534×H175雲肌麻紙 岩絵の具 アクリル絵の具 パステル クレヨン (26年度修了制作優秀作品)

A

B

C

D

E F

教員・研究室スタッフ

専任教員: 内田あぐり(主任教授) 尾長良範 西田俊英 三浦耐子 山本直彰客員教授: 川﨑麻児 北澤憲昭 土屋禮一非常勤講師: 荒井経 荒木亨子 岩田壮平 柏原由佳 加藤良造 熊澤未来子 酒井祐二助手: 佐藤希 萩谷但馬教務補助員: 古石紫織 椎名絢

武蔵野美術大学日本画学科 

nihonga2 0 1 5

Department of Japanese Painting 2015

発行  武蔵野美術大学日本画学科研究室    187-8505 東京都小平市小川町1-736    042-342-6050(直通)    武蔵野美術大学日本画学科研究室ホームページ    http://www.musabi.ac. jp/nihonga/撮影 加藤貴文(院生作品) 三本松 淳(学生作品)発行日 2015年6月7日

河鍋暁斎 「下絵 山姥と金太郎」

Page 2: A D B E F nihonga · 絵画実習Ⅵ [自主制作、展示ゼミ] 3年次 3年次からは各自の主体性を重視した自主制作となります。 それぞれがテーマやイメージを探したり、表現方法に挑戦したりと、この時

大学院造形研究科修士課程の教育■ 美術専攻日本画コース

各自、自由に課題を計画し制作を行う。発表を含めた、より実践的な活動を

通して作家としての意識を高める。また、各教員によるゼミを開講する。

[学内外での研究発表展、学内修了制作展、学外修了制作展 / 佐藤美術館]

和紙ゼミ

ロサンゼルス在住のアートセンター・カレッジ・オブ・デザイン教授、池崎義男氏による手漉

き和紙の講義と実習です。

和紙の原料である楮を煮ることから始まり、各自大小の手漉き和紙の制作工程を学びます。

又、世界の手漉き紙の紹介と講義があります。

筆製作指導

筆職人、清晨堂阿部信治氏による日本画の筆の製作工程に関する講義です。ここでは、学生が実

際の原料で各自筆作りを学びます。

箔古典技法指導

箔師である遠藤典男氏による箔についての説明と基本から応用までの技法に関する講義です。

裏打ち指導

装潢師である遠藤三右衛門氏による裏打ち指導です。大作及び絹本への裏打ち指導を行います。

特別講義

国内外で活躍する作家、他大学教員、研究者などを招きアトリエ指導と共にレクチャーやワーク

ショップを実施しています。又、日本画学科客員教授によるゼミ講義、非常勤講師によるレク

チャーもあります。

課外講座

国内外で活躍する作家や美術家、研究者を招聘し、日本画学科主催として学内外へ向けて講座を

広く公開するものです。客員教授による課外講座も開催します。

4年生による展示実習

学部4年生有志による12号館地下展示ゼミを毎年開催しています。これは学生たちが自主的

に展覧会の運営、企画、広報などに携わり、担当教員と相談をしながら毎年5月に開催するもの

です。会期中に学外の美術館学芸員、美術評論家、及び学内他学科の教員をゲストに招いて、公開

講評会を行います。

古美術研究旅行

日本各地に点在する神社仏閣を訪れ、様々な障壁画や仏像、古美術の研究を行います。これまで

に京都や奈良のほか、那智や高野山、琵琶湖湖北などでも研修を実施しました。京都・奈良旅行

では武蔵野美術大学奈良寮に宿泊します。

風景写生旅行

学部3年生の授業の一環で、伊豆や日光、城ヶ島等に旅行します。周辺の風景スケッチを時間を

かけて行います。

アートプログラム青梅への参加

例年開催される、アートプログラム青梅へ参加しています。東京造形大学、明星大学、名古屋造形

大学、武蔵野美術大学(彫刻学科、日本画学科)の学生たち有志により青梅市内の空き店舗や商

店、神社などへ作品を展示することで、通常の ギャラリーや美術館への展示とは異なる空間へ

の試みとして開催しています。また地域とのコミュニケーションを持つことで、社会への関わり

を深く学ぶもので す。参加学生は学部4年生、大学院生を中心としています。

国際交流プロジェクト

武蔵野美術大学の国際交流プロジェクトにより、海外の大学やアートセンターと共催で日本画

学科独自の交流プロジェクトを開催しています。これは、海外の美大生やアーティストと共に展

覧会やワークショップを作りながら、日本画の学生たちが海外の文化を知り、アーティストたち

と広く交流するために行われるものです。アメリカのロサンズルス、メキシコのオアハカ、ブラ

ジルのサンパウロなどのアートセンターで、これまで開催してきました。

特別講義・課外授業など日本画学科カリキュラム

日本画学科とは

東洋画の長い伝統を受け継ぎ、外来の文化の影響を吸収しつつ形成され、発展してきた日本画。

その独自の造形思想と優れた材料・技法は、世界の美術の中で個性的な位置を占めています。本学科の目的は、伝統に基づく技法、

造形や美意識、表現など、日本画の基礎を習得するとともに、個性豊かな新しい表現を 展開し、創造する力を育てることです。

1年次用具の説明、絵具の溶き方など日本画の最も初歩的な基礎技法を学びながら、

植物写生を行います。墨による鉄線描から制作に入り、次いで風景写生制作

へと進みます。人体デッサンでは把握力を強め、また古典模写により日本画

における線描を学びます。また他学科との授業交換により、様々な表現方法

を学び基 礎表現力を身に付けます。

日本画基礎Ⅰ [ 日本画材料の説明、植物、墨 ]

日本画基礎Ⅱ [ 野外・風景、古典模写 ]

造形基礎・選択[絹本ほか ]

絵画基礎Ⅰ [人体デッサン ]

日本画基礎Ⅲ [人体制作 ]

造形総合科目Ⅰ類 (各自、他学科の授業を選択します)

1

2年次動きが速く、形を捉えることが難しい動物制作を行うことによって、忍耐強

い観察力を養います。次に、人体デッサン及び人体制作で造形としての表現

力を体得してゆき、古典模写によって日本画の線、空間に対する認識を深め

ます。特別講義箔指導では、金銀箔、砂子、切金等の伝統技法を学び、日本

画独特の造形思考を実践して習得します。

日本画基礎Ⅳ [ 鳥獣魚デッサン、動物制作 ]

日本画基礎Ⅴ [ 意匠と造形、箔指導 ]

日本画基礎Ⅵ [ 表現と発想 ]

絵画基礎Ⅲ [ 古典研究、裏打指導 ]

絵画基礎Ⅱ [ 人体デッサン ]

日本画基礎Ⅶ [ 進級制作、コンクール ]

2

絵画実習Ⅰ [ 古典研究、自主制作 ]

絵画実習Ⅱ [ 身体性とドローイング ]

絵画実習Ⅲ [ 風景デッサン、風景制作 ]

絵画実習Ⅳ [ 自主制作、コンクール ]

絵画実習Ⅴ [ 自主制作 ]

絵画実習Ⅵ [ 自主制作、展示ゼミ ]

3年次3年次からは各自の主体性を重視した自主制作となります。

それぞれがテーマやイメージを探したり、表現方法に挑戦したりと、この時

期は失敗を恐れずに、積極的に自身の制作に取り組みます。古典研究や写生

旅行、12号館地下展示へ向けての展示ゼミも行います。

3

絵画実習Ⅶ [ 自主制作 ]

絵画実習Ⅷ [ 自主制作、卒業制作前提講義 ]

卒業制作

[ 学内卒業制作展、東京五美術大学連合卒業制作展 ]

4年次自由なテーマによる百号制作では大きな画面と取り組み、卒業制作への大切

なステップとします。卒業制作は発想下絵(エスキース)の段階から充分に

準備し、構想を練り個別の指導を行います。4年間の成果を確認する重要な

課題であると同時に、生涯の方向を決定する最初の道標として人生の基点と

なる作品制作となります。

作品は、全学的規模で開かれる卒業制作展に出品されます。

4

「絵の始まり 絵の終わりー下絵と本画の物語」武蔵野美術大学美術館展覧会から

「素描と下絵」 

表紙の絵は河鍋暁斎の下絵「山姥と金太郎」です。暁斎は幕末から明治時代に

活躍した画家で、浮世絵や狩野派の画塾で学び、「反骨の画家」とも言われて

暁斎独自の画風を確立しました。本画や素描、下絵、絵日記、春画、身近で使

う工芸品をデザインするなど、画家のみならずデザイナーとしても実力を発揮

していました。暁斎は多くの日本画を描きましたが、その傍らで素描や下絵も

たくさん描き、海外では日本画よりも素描や下絵のほうに評価が高いと言われ

るほどです。「山姥と金太郎」は「山姥図」という本画の為に描いた下絵です。

初めに描いた下絵の上に、工夫したい部分にさらに紙を貼ってその上に描いて

います。最初に描いた線描のフォルムがうっすら透けて、絵を作る為の試行錯

誤のプロセスを垣間見ることができます。素描や下絵はきれいに描こうとする

ものではなく、作品を生む苦悩とも言える痕跡がのこり、本来は人に見せるた

めのものでもありません。ですから、見る人は画家の肉声が伝わる作品に魅了

されてしまうのです。また、そのプロセスはコラージュ手法やドローイングと

いう、現代に通じる絵画表現にも似ています。暁斎の下絵は的確な素描力に裏

打ちされていますが、それは対象を見ることと多くの素描から生まれると言っ

ても過言ではないでしょう。暁斎は幼い頃から素描や写生にいそしみ、生涯に

わたり素描やスケッチが大好きな画家だったと言われています。この世界に存

在しているあらゆる生きもの、自然、人間を慈しみながら活き活きと素描する

ことを大切にして、墨と毛筆というシンプルな素材で、暁斎の筆触や息づかい

を生々しく表しています。こうしてみると、素描と下絵はともに表裏一体であ

り、一枚の絵画を描くためになくてはならない大切な助走とも言えます。

 日本画学科の授業では、学部、大学院を通しての様々なカリキュラムの中で

素描やデッサン、ドローイングをすることを大切にしています。それは絵を描

く者にとって一番素朴な表現行為であり、それらを蓄え、反芻することで自由

な絵画表現へと展開していくのです。

 「画を以て専門とする者は、目に見える物品、何にまれ、彼にまれ、其の形

を写生なし得るを以て画をかく者とこそすれ」̶(河鍋暁斎)

 これは暁斎が弟子たちに常に教えていた言葉です。私たちは暁斎の素描と下

絵を見ることで、多くを学ぶことが出来るでしょう。それは今日の新しい日本

画・絵画表現の始まりとなる可能性を秘めているのです。

日本画学科 主任教授

                                内田あぐり■ 博士(後期)課程の研究領域

表現を改めて問い直し、より論理的に表現をみつめる。

立体、空間造形など様々な表現も視野にいれた自己の

表現の可能性を探る。