12
Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善 Application Note B1500-9 ±40 V3値パルスを出力可能なHV-SPGU 100万回の書き込み/消去サイクル寿命試験を1時間以 内で実行可能 迅速なスタートアップを実現する20以上のフラッシュ メモリ・テスト・アプリケーションを用意 新種の不揮発性メモリのテストに対応するALWG機能

Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

  • Upload
    others

  • View
    20

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

Application Note B1500-9

±40 Vの3値パルスを出力可能なHV-SPGU

100万回の書き込み/消去サイクル寿命試験を1時間以内で実行可能

迅速なスタートアップを実現する20以上のフラッシュメモリ・テスト・アプリケーションを用意

新種の不揮発性メモリのテストに対応するALWG機能

Page 2: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

2

高分解能電圧設定多値フラッシュメモリ・セル技術の特性評価における高い測定再現性を可能にする 0.4 mVの高分解能かつ安定した出力レベルと高品質な出力波形を実現。

高速オープン・ドレイン半導体出力切り替えNORフラシュ・セルの消去サイクルで必要なオープン・ドレイン状態を作り出すために使用するパルス切り替えには 100 μs以内で対応します。そのため、書き込み/消去寿命試験の合計所要時間が短縮されます。図 2に示す HV-SPGU出力の簡略図を参照してください。

B1500Aフラッシュメモリ・テストの主な特徴B1500Aフラッシュ・テスト・ソリューションの主な特徴は以下のとおりです。

高電圧パルス出力機能NANDフラッシュメモリ・セル・テストに対応する± 40 V(最大 80 V振幅)の高電圧出力と最小 20 ns1

から 400 msまでの可変の立ち上がり、立ち下がり時間を設定可能(図1を参照)。

1. 最小立ち上がりおよび立ち下がり時間 は |Vamp| ≦ 10 V 時 は 20 ns、10 V < |Vamp| ≦ 20 V 時 は30 nsec。どちらも 50Ω負荷。Vamp:パルスの振幅。

はじめにMP3ミュージック・プレイヤやデジタル・カメラ記憶媒体が普及し、近い将来さらに小型のハード・ディスク・ドライブの置きかえが見込まれるなか、フラッシュメモリ市場が急速に成長しています。市場の成長に伴って必要となるのは、マルチビットやマルチレベル・セル(MLC)、そして電荷トラップ・フラッシュメモリなどの新技術によりメモリ・セル面積を縮小し、メモリ・サイズを増やすことです。このような高密度の NANDフラッシュメモリ・プロセスでの書き込み/消去の特性評価は、測定に新たな課題をもたらします。その課題とは、極めて正確な電圧パルスを生成すること、そして任意の波形を作り出すことなどです。

Agilent B1500A半導体デバイス・アナライザに新しく加わった Agilent B1525A高電圧半導体パルス・ジェネレータ・ユニット(HV-SPGU)は、このような高度な不揮発性メモリ技 術に求められる書き込み/消去テストに精度および柔軟性を提供します。さらに、B1500Aと HV-SPGUは書き込み/消去サイクル寿命試験のスループットを大幅に改善します。

このアプリケーション・ノートでは、不揮発性メモリの評価に必要なこれら全ての要件と課題に対する B1500Aの実現と解決方法を説明します。

図 1.振幅 80 Vの大電圧パルスを出力可能

図 2.2チャンネルを搭載した B1525A HV-SPGUモジュール

(各チャンネルは出力パスに高速半導体スイッチを使用)

PG/ALWG

タイミング・ジェネレータ

B1525A HV-SPGU

高速半導体スイッチ

Ch 1

出力

出力リレー

Ch 2

出力

Page 3: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

3

3値パルスHV-SPGU は各モジュール毎に 2チャンネルの PGUを持ち、それぞれ 2値レベルまたは 3値レベルのパルスを出力できます(図 3)。NANDフラッシュメモリ・セルの試験では3値パルスが必要で、従来は PGUを 2チャンネル切り替えて使っていました。HV-SPGUは、各 SPGUチャンネル毎に高速 3値パルス列を出力でき、NAND寿命試験のスループットを大幅に改善します。

フラッシュメモリ・テスト・アプリケーション・ライブラリEasyEXPERTメモリ・テスト・アプリケーション・ライブラリには、HV-SPGUを使用した NORおよびNAND型のフラッシュメモリ・セル評価用の 20のアプリケーション・テスト定義が新たに追加されています。新しいテスト定義は以下のとおりです。

– 書き込み/消去寿命試験

– 消去および Vth測定

– 書き込みおよび Vth測定

– 消去動作後のデータ保持力テスト

– 書き込み動作後のデータ保持力テスト

– Vthの消去時間依存性

– Vthの書き込み時間依存性

– 消去済みセルのワード・ディスターブ・テスト

– 書き込み済みセルのワード・ディスターブ・テスト

– 消去動作後の NORフラッシュ・データ・ディスターブ・テスト

– 書き込み後の NORフラッシュ・データ・ディスターブ・テスト

上記のテスト定義は、EasyEXPERTグラフィカル・ユーザ ・インタフェース(GUI、図 4を参照)から選択します。テスト・パラメータを設定した後は、簡単なマウスのクリック操作でテストを実行することができます。

図 3.振幅 80 Vで 3値パルスを出力可能な HV-SPGU

図 4.EasyEXPERTフラッシュメモリ・テストの設定画面例

Page 4: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

4

B1500A寿命試験このセクションでは、B1500Aによるフラッシュメモリ・セル・テストの流れと、テストの改善内容について説明します。

B1500Aでの寿命試験の実行図 5に、フラッシュメモリ・セル書き込み/消去サイクル寿命試験の標準的な流れを示します。テストではまず、ストレスを加えない状態のメモリ・セルの書き込み後と消去後の Vthを測定して測定の基準を設定します。次に、そのセルで書き込み/消去回数を対数的に増加させながら書き込み/消去バースト・サイクルを実行し、各バースト・サイクル完了後に書き込みと消去状態のVthを測定します。バースト・サイクルの回数は、テストの入力パラメータで指定します。各書き込み/消去バースト・サイクルの終了後、書き込み/消去サイクルの回数に対応した書き込みと消去状態の Vthがグラフに表示されます。このグラフから、Vthの変化をリアルタイムに確認することができます。ユーザが指定した全てのバースト・サイクルが終了すると、Vth劣化の最終結果を示すグラフが表示されます。図 6に、B1500Aで書き込み・消去サイクルを 100万回実行して測定した NANDフラッシュメモリ・セルの Vthシフトの例を示します。

市場向け仕様では書き込み・消去寿命が 1万回に制限されているような場合でも、開発フェーズでのメモリ・セルの特性評価は、一般的に、より長期のサイクルにわたって行われます(例えば、図 6では 100万サイクルの例となります)。

図 6.書き込み/消去寿命試験によって表示された Vthシフト例

図 5.フラッシュメモリ・セルの書き込み/消去寿命試験のフロー

テスト開始

テスト終了

はい

いいえ

書き込み/消去状態の初期Vthを測定

書き込み/消去バースト・サイクルを実行

書き込み

消去

書き込み/消去状態のVthを測定

指定サイクル・リミットに到達?

Nthバーストの書き込み/消去サイクル回数を設定

書き込み/消去後のVthの変化をグラフ表示

Page 5: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

5

テスト進行状況のモニタリング図 7は、NORフラッシュメモリの寿命試験実行中の B1500Aディスプレイを示します。B1500Aディレスプレイ中の各ウインドウは、書き込み・消去寿命試験サイクルの進行状況、書き込み・消去状態での Vth測定グラフ、そして書き込み/消去サイクルの進行に沿った Vthシフトを示しています。

テストの設定B1500Aのフラッシュメモリ・アプリケーション・テスト・ライブラリは、Agilent 16440A SMU/PGUセレクタをサポートします。このセレクタが、Vth測定の際には SMU側に、メモリ・セルの書き込みおよび消去を行う際には HV-SPGU 側に切り替わります。 図 8は、16440Aを使用した NORフラッシュメモリ・テストの接続略図です。16440Aスイッチはフラッシュメモリ・セル・テストに必要な以下の二つ の 重 要 な 機 能、(1)SMU とHV-SPGUの切り替え機能、そして(2)パルスを高品位に通す広い周波数帯域とリークの少ない DC特性の相反する性能を高度にバランスさせた機能、の両方を同時に提供します。

この例からわかるように、フラッシュメモリ・セルテストは B1500Aで提供するライブラリを使うことで、テスト・プログラムを新たに開発すること無しにすぐに開始できます。

図 7.B1500A書き込み/消去寿命試験の画面ショット

1. 進行状況モニタ(書き込み/消去サイクルの完了%表示)2. 最後に書き込まれたセルでの Vth測定3. 最後に消去されたセルでの Vth測定4. Vthシフトの推移

Sub

SPGU2:Out-2SPGU1:Out-1

Digital-IOB1500A

GateDrain

Source

ウェハ・プローバ

SMU2

SMU1

SMU3

SMU4

Ctrl-out

Ctrl-in16445A

Power

PGUSMUPGUSMU

Ch2

Ch1

Ctrl-in

Ctrl-out

Ctrl-in

Ctrl-out

16440A

PGUSMU

PGUSMU

Ch3

Ch4

Drain

Gate

Sub

Source‡ Sub

‡ Gate

‡ Drain

‡ Source

SPGUモジュール2

SPGUモジュール1

SMU4

SMU3

SMU2

SMU1

SPGU4:Out-2SPGU3:Out-1

Tri-ax

BNC

SMA

D-Sub

ケーブルの種類SMU入力

出力PGU入力

16440A

図 8.NORフラッシュメモリ・セルの接続略図

Page 6: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

6

NANDフラッシュ・テスト要件NANDフラッシュメモリ・セルのテストには、電圧振幅の大きなパルスと素早い立ち上がり/立ち下がり時間が不可欠です。B1525A HV-SPGUは、高インピーダンス負荷への± 40 V(80 Vの最大振幅)のパルス出力性能(図 2を参照)と、パルスの立ち上がり/立ち下がり時間を 8 nsから 400 msの間で可変できる機能でこのニーズに対応します。一方、フラッシュメモリ・セルをテストする際にはパルスのオーバーシュートも大きな問題となります。そこで、B1500Aにはこの問題に対処するためのソリューションが用意されています。B1525A HV-SPGUが登場する前は、立ち上がり/立ち下がり時間が設定可能な高電圧パルスを出力できるソリューションは限られていました。その一例は、4156Cの 41501Bエクスパンダに入る 2チャンネル PGUです。ただし、41501B PGUの最小パルスは 1 μsに制限されます。フラッシュメモリ・セルの書き込み/消去特性評価は、印加される電圧に大きく依存します。これはつまり、書き込み/消去パルスのオーバーシュートはフラッシュ・セルの特性評価に悪影響を及ぼすことを意味します。NANDフラッシュ評価には最大± 40 Vの電圧振幅が必要なことから、パルスのオーバーシュートを排除するのは容易なことではありません。フラッシュメモリ・セルにパルスを印加する場合は、その入力インピーダンスは極めて大きく(本質的にオープン)、50Ω系のシステムではインピーダンスの不整合を起こします。 SMU/HV-SPGUスイッチを併用した場合には、この不整合によって、理想的な 50Ωの負荷状態では起こらないはずのオーバーシュートが発生します。フラッシュメモリ・セル・テストにおける高インピーダンス負荷の状況下でのパルスのオーバーシュートを防ぐには、パルスの立ち上がり/立ち下がり時間を増大することが基本的な解決方法になります。図 9に、NANDフラッシュメモリ・セル・テストでの標準的な書き込み/消去パルス設定を示します。この場合、1チャンネルで高電圧および 3値パルスによってメモリセルの書き込み、消去を行う必要があります。

上がりまたは立ち下がり時間では目立たなくなり、60 nsのパルス遷移時間設定ではほとんどなくなっています(四角い枠のなかに示した Y軸の拡大図を参照してください。)。図 10に示されるように、16440A SMU/PGUセレクタのように帯域幅が制限されたコンポーネントを介してパルス信号が送られる場合に生じるオーバーシュートは、パルスの遷移時間を増やすことによってほとんど排除することができます。

16440A SMU/PGUスイッチによるパルス波形図10は、16440Aから1.5 mの3軸ケーブルを介して 1 MΩのオシロスコープに入力されるパルス波形の例です。立ち上がりと立ち下がり時間は 14 nsから 60 nsまで変化させています。立ち上がり時間が 14 nsのパルスはかなりのオーバーシュートを示していますが、パルスの遷移時間を増やすことで、オーバーシュートは明らかに低減します。オーバーシュートは 40 nsの立ち

図 9.NANDフラッシュメモリ・セルの書き込み/消去パルス・シーケンス

図 10.16440Aを介した 200 ns/20 Vパルスから 1 MΩ(オープン)負荷への立ち上がり

および立ち下がり時間の変動がオーバーシュートに与える影響を示す例

ゲート

ドレイン

ソース

サブ

書き込み

NANDセル・テスト

消去

40 V

Page 7: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

7

16440A SMU/PGUスイッチは、フラッシュメモリ・テストの高速パルス(立ち上がり/立ち下がり時間が 20 nsのパルスの場合、5%未満のオーバーシュート)と正確な DC測定(100 Vで 100 fA未満のリーク)の両方を提供する、もっともコストパフォーマンスに優れたソリューションです。

NORフラッシュメモリ・セル・テスト図 11に、NORフラッシュメモリ・セルの標準的な書き込み/消去パルスを示します。通常、メモリ・セルを消去するにはドレイン接続をオープンまたは高インピーダンス状態に設定する必要があります。HV-SPGUはこのニーズに、高速半導体リレーで対応します。B1500Aには 2チャンネルを搭載したHV-SPGUモジュールを最大 5枚装備することが可能です(図 12)。この例では 3チャンネルを使用しているため、2枚の B1525A HV-SPGUモジュールが必要となります。

高速ハードウェアによるフラッシュメモリ・セル書き込み/消去寿命試験の大幅な時間短縮以下の 2つのHV-SPGU機能によって、テスト時間が大幅に短縮されます。

1. HV-SPGUは外部コンピュータによるテスト・シーケンス制御を使わずに内部で書き込み/消去パターンを生成します。そのため、Agilent 81110Aや 41501B PGUを使用した以前のソリューションでフラッシュメモリ・セルの書き込み/消去テスト・サイクルを遅くしていたオーバーヘッド時間がなくなります。

2. 図 2の HV-SPGU機能図に示されているように、内蔵の高速半導体スイッチを使用して DUTに対するオープン状態を作り出すことができます。このスイッチはファームウェア(マシン)レベルで制御され、フラッシュメモリ・セルの書き込みまたは消去に使用するパルス・ストリームに同期します。クローズ状態からオープン状態(またはその逆)への遷移時間は100 μs未満です。

NORフラッシュメモリ・セルで約 2ミリ秒の書き込み/消去サイクルを100万回繰り返すという寿命試験を行った場合、概算ではこの寿命試験は2,000秒以内で完了することになります(2 ms× 106)。この計算にはもちろん、書き込み/消去サイクル間の Vth測定時間は含まれていません。

図 12.HV-SPGUモジュールに搭載された 2つの独立したチャンネル

PGU1 PGU1

PGU2 PGUオープン

PGU3 PGU3

半導体スイッチ

12 V

12 V

7 V

SMU4

ゲート

ドレイン

ソース

サブ

書き込み

NORセル・テスト

消去

図 11.NORフラッシュメモリ・セルの書き込み/消去パルス・

シーケンス

Page 8: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

8

寿命試験時間の短縮フラッシュメモリ・セルでの寿命試験の所要時間は、書き込み/消去負荷サイクルをどれだけ短時間で実行できるかによって大きく変わります。

以下の例では、100万回の書き込み/消去サイクル寿命試験に必要なテスト時間を、4156Cベースのフラッシュメモリ・ソリューションと B1500Aの場合とで比較しています。

図 13は、4156Cを使用した場合の書き込み/消去のパルス列です。この場合、ドレインとゲートに対してはAgilent 41501B SMU/PGUエクスパンダ内蔵の 2つの PGUを使用し(4156Cで使用できるのは、2つの PGUチャンネルを搭載した 1 枚の PGU モジュールのみです)、1つの SMUをソース・パルスとして割り当てています。消去パルスはミリ秒単位なので、0.5 msの最小 SMUパルスをパルス・ジェネレータの代わりに使用できます。オープン・ドレイン状態は、4156Cでは 16440Aの半導体リレーを使用して実装されます。4156Cの場合、書き込み・消去パルスと消去サイクルでのオープン・ドレイン状態はそれぞれアプリケーション・ソフトウェア・レベルで制御しなければならないため、各書き込み・消去パルスを作成するのに約 250 msかかります。4156Cとは対照的に、B1500Aはすべてのパルス列をファームウェア・レベルで制御します。そのため、半導体リレーの制御を除き、あらゆるパルス列を 100ナノ秒未満で制御することが可能となります。

表 1には、テスト時間の比較をまとめてあります。この表では、NANDとNOR両方のフラッシュメモリ・セルを対象とした 100万回の書き込み・消去寿命試験の所要時間を、4156Cを使用した場合と B1500Aを使用した場合とで比較しています。この例での書き込み/消去サイクル時間は、NANDでは 2ミリ秒、NORでは 25ミリ秒を使用しています。この値はかなりの余裕を持たした値で、B1500AとHV-SPGUのソリューションを使用した場合には、サイクル時間が大抵の場合は 5分の 1程度になるか、あるいはテストの所要時間が 1時間未満に短縮されるはずです。

このアプリケーション・ノートの最後に記載している Agilentの Webページに、B1500Aと 4156Cのテスト時間を比較したビデオが用意されています。

図 13.4156C+ 41501B PGU+ 16440Aを使用した NORフラッシュ・

セル書き込み/消去パルス・シーケンス

PGU1 PGU1

PGU2 16440Aオープン

SMU3 SMU3

半導体スイッチ

12 V

12 V

7 V

SMU4

ゲート

ドレイン

ソース

サブ

書き込み

NORセル・テスト

消去

表 1.NORおよび NANDフラッシュ書き込み/消去寿命試験で 4156Cまたは B1500Aを使用した場合のテスト時間の比較

NAND NOR

4156C+ 41501B PGU 5日間 4日間B1500A+ HV-SPGU 1.7時間 6時間

Page 9: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

9

HV-SPGUのその他の特徴以降のセクションでは、B1525A HV-SPGUのその他の重要な機能を取り上げます。

MLCフラッシュメモリ・テストのニーズに対応したパルス分解能、精度、再現性の改善従来のフラッシュメモリ・セルでも書き込み、消去を行うためのパルス電圧は正確でなければなりませんが、マルチレベル・セル(MLC)フラッシュメモリが正しいデータ・ビットにアクセスすることを保証するためには、それにも増して電圧精度の高いパルスが求められます。 B1500Aはこのニーズに、大幅に改善された電圧分解能で対応します。

HV-SPGU が 導 入 さ れ る 以 前 は、B1500Aがサポートするもっとも精度の高いパルス・ジェネレータはAgilent 81110Aパルス・パターン・ジェネレータでした。81110Aの出力電圧設定分解能は 100 mVです。一方、B1500Aの HV-SPGUの出力パルス設定分解能は 0.4 mVで、これはすなわち、パフォーマンスが 100倍以上改善されていることを示します。さらに、HV-SPGUの出力電圧の精度と安定性も 81110Aに比べ改善されています。HV-SPGUの高分解能、高精度、そして高安定性はMLCフラッシュメモリ・セルの正確かつ再現可能な特性評価を確実にすることになります。

3値パルス出力機能NANDフラッシュメモリ・セルへの書き込み・消去は、図 3に示した出力の極性を入れ替えた 3値パルスが必要となります。41501BのPGUをはじめとする他のパルス・ジェネレータとは異なり、HV-SPGUに搭載された 2チャンネルはそれぞれ個別に 3値パルスを生成できます。さらに、この 3値パルスのレベルは HV-SPGUの -40 Vから +40 Vまでの出力範囲内で自由に選択することができます。繰り返しになりますが、41501Bの PGUでは図 3に示す 3値パルスを出力することはできません。

チャンネル間での正確なパルス・タイミングもう 1つの重要なパルス・ジェネレータの機能は、複数のチャンネルで正確かつ同期した書き込み・消去パルス幅を作成できるということです。これは、パルス幅の桁数が大幅に異なる場合にも当てはまります。パルス幅の桁数が異なる原因となっているのは、通常、書き込みパルスの幅はマイクロ秒単位である一方、消去パルスの幅はミリ秒単位だからです。

図 14は、オシロスコープがモニタした「標準的」な書き込み/消去パルス・シーケンスを示します。2つの異なるHV-SPGUチャンネルによって生成された波形は、マイクロ秒からミリ秒までの 3値の書き込みパルスと消去パルスからなります。出力チャンネル 1での最初のパルス幅は 1 μs、2番目のパルス幅は 1 msです。一方、出力チャンネル 2での最初のパルス幅は 800 nsで、2番目のパルス幅は 800 μsとなっています。この図から、2つのチャンネルでの書き込みパルスと消去パルスの幅にかなりの差があるとしても、両方のパルスが正常に同期化されることが簡単に見て取れます。

図 14.極端にパルス幅の違う 3値パルスの同期出力例

Page 10: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

10

新種のメモリ・デバイスに対応する複雑な波形合成機能HV-SPGUに新しく用意された任意線形波形機能(ALWG)では、新種の不揮発性メモリ技術の特性評価に必要となる複雑なパルス・シーケンスを作成することが可能です。ALWGの波形は波形パターンとその組み合わせによって構成されます(図 15を参照)。それぞれの波形パターンは線分からなり、ポイント間の時間は 10 nsの分解能で 10 nsから 671.08863 msの範囲で指定できます。保管された波形パターンの出力順序と繰り返しについても任意に指定できるため、目的の出力シーケンスを作成することが可能となります。

各 ALWGパターンを作成するには、ALWGパターン・エディタの GUI(図16)を使用するか、あるいはスプレッドシートに作成された表からデータをコピーします。

パルス状態

50 ns

時間

パターン 1

繰り返し

パターン 2

繰り返し

図 15.順序付けと複数の繰り返しが可能な ALWG波形

図 16.数値およびグラフで波形を作成できる ALWGパターン・エディタ GUI

Page 11: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

11

図 17.異なる ALWGパターンの順序付けが可能なことを示すオシロスコープのモニタ

図 17は、ALWGエディタで作成した波形をオシロスコープでモニタした例です。この図に示されているように、ALWGエディタで作成したすべてのパターンは、組み合わせることも繰り返すこともできます。そのため、複雑な波形でも簡単に合成できます。

ALWG機能によって書き込み/消去寿命試験の時間が短縮される例として挙げられるのは、MLCフラッシュメモリです。MLC技術には 4値より多い電圧レベルをもったパルスが必要ですが、ALWG機能を使用すれば、余分なオーバーヘッドなしで実現することができます。また、1つの大きなパルスの代わりに小さな複数の階段状パルスを生成するというアプリケーションもあります。その目的は、デバイスを損傷する恐れのある急激な突入電流を防ぐこと、あるいはフラッシュメモリ・セルの消去シーケンスにより生じたダメージを緩和することです。

まとめB1525A HV-SPGU を備えた新しいAgilent B1500Aは、最先端のフラッシュメモリ・セル技術に完全に対応するソリューションを提供します。

± 40 Vの出力に対応可能な HV-SPGUは、最新 NANDフラッシュ・テストのニーズに対応します。

HV-SPGUの 0.4 mV出力設定分解能が、MLCフラッシュメモリなどの電圧に敏感なデバイスでの特性評価を可能にします。

SPGUチャンネルの半導体スイッチは超高速な切り替え動作により書き込み・消去サイクルの時間を短縮することから、NORフラッシュの寿命試験時間を大幅に短縮します。HV-SPGUごとに 2つの独立したチャンネル(それぞれが 3値パルスに対応)を搭載したB1500Aは、NAND、NORフラッシュメモリ双方の書き込み/消去パルス・ストリームの高速化、そしてコストパフォーマンスの向上を同時に実現します。

ALWG機能により、新種のフラッシュ・セル技術の特性評価に必要な複雑な波形の作成が可能になります。

注記:フラッシュメモリ・テストのビデオは以下の URLから入手できます。

www.agilent.co.jp/find/B1500A

B1500Aフラッシュ・テストのデモ・ビデオ

B1500Aと 4156Cフラッシュ・テスト比較のデモ・ビデオ

Page 12: Agilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特 …literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-8654JAJP.pdfAgilent B1500Aによる フラッシュメモリ・セル 特性評価の改善

Remove all doubt

アジレント・テクノロジーでは、柔軟性の高い高品質な校正サービスと、お客様のニーズに応じた修理サービスを提供することで、お使いの測定機器を最高標準に保つお手伝いをしています。お預かりした機器をお約束どおりのパ フォーマンスにすることはもちろん、そのサービスをお約束した期日までに確実にお届けします。熟練した技術者、最新の校正試験プログラム、自動化された故障診断、純正部品によるサポートなど、アジレント・テクノロジーの校正・修理サービスは、いつも安心で信頼できる測定結果をお客様に提供します。

また、お客様それぞれの技術的なご要望やビジネスのご要望に応じて、

●アプリケーション・サポート ●システム・インテグレーション ●導入時のスタート・アップ・サービス ●教育サービス など、専門的なテストおよび測定サービスも提供しております。

世界各地の経験豊富なアジレント・テクノロジーのエンジニアが、お客様の生産性の向上、設備投資の回収率の最大化、測定器 のメインテナンスをサポートいたします。

詳しくは:

www.agilent.com/find/removealldoubt

電子計測UPDATE

www.agilent.com/find/emailupdates

Agilentからの最新情報を記載した電子メールを無料でお送りします。

www.agilent.com/find/agilentdirect

測定器ソリューションを迅速に選択して、使用できます。

アジレント・テクノロジー株式会社本社 〒 192-8510 東京都八王子市高倉町 9-1

計測お客様窓口受付時間 9:00-19:00 (土・日・祭日を除く)FAX、E-mail、Webは 24時間受け付けています。TEL ■■ 0120-421-345 (042-656-7832)FAX ■■ 0120-421-678 (042-656-7840)Email [email protected]

電子計測ホームページ www.agilent.co.jp

● 記載事項は変更になる場合があります。 ご発注の際はご確認ください。

Copyright 2008 アジレント・テクノロジー株式会社

July 10, 20085989-8654JAJP

DOC-H