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比治山大学現代文化学部紀要,第12 号, 2 5 Bu l .HijiyamaUniv.No.12 2005 伝統的工芸品産業の経済学的考察 一一「伝産法」による指定の現状と問題点一一 139 An Ec onomic Study on the DENTO-TEKI KOGEIHIN SANGYO* はじめに 佐中忠司 τadashi SANAKA いわゆる高度経済成長の展開,都市の過密化がすすむなかで,農村地域の過疎化や地方からの人口 流出が絶えることなく続いた。重化学工業を機軸とした産業構造への大転換,地場産業や地域の伝統 産業などに急速な衰退が進んだ。産業構造のゆがみ,公害問題,都市問題など,高度成長に伴うさま ざまなひずみも表面化する O 地方における経済力,市民生活のあり方や質は一変した。近代化・軽便 さを象徴する大量消費,使い捨てムードの支配的な機械文明に埋没する日常となった。生活の内実は, 人間性の乏しい,潤いのない空疎な側面も否定しがたい。部分的とはいえ,伝統的工芸品産業や地域 の経済を建て直そうという気運も,一方では高まりつつある o こうした動きの現われとして,伝統的なものへの回帰,手仕事への関心,本物指向もみられるよう になってくる。しかし,資金不足,後継者の確保難,原材料の入手難などの問題を抱える地場産業や 伝統的工芸品産業の多くが,社会的な存立基盤すら喪失しかねない状況で,産業そのものとしても予 断の許されない混迷した局面に直面しつつある o このような背景の下で, 1974 (昭和49)5 月には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律J (略 称「伝産法J) が制定され,政府による全国的な振興策がスタートした。これに呼応した地方公共団 体の側においても,地元の伝統的工芸品産業の振興への関心がある程度高揚し,都道府県によっては 独自の基準を設けて伝統的工芸品の指定や伝統工芸土の認定などに努力を重ねているところもみうけ られる O 本稿の目的は,まず,こうした伝統的工芸品産業の社会経済的な概要とその公的な振興策をめぐる 過去と現在,それらと関連する若干の経済学的側面を考察することである O すなわち,伝統的工芸品 産業振興の問題点についてまず法制面を検討し,国による指定や助成措置の大要,今日までの産業動 向や指定品目や地域別の実態を明らかにする O さらに,家内工業論やマニュファクチュア論の立場か ら,あらためてこれらの問題の経済学的検討をこころみる O そして,最後に,伝統的工芸品産業振興 の意義について触れながら,とりあえずのまとめとしたい。 なお,これらの考察は,全体としては,いずれ予定している文房四方,特に毛筆産業の歴史や現代 を視野においた社会経済的な調査分析のための予備的取り組みのひとつである O * DENTO-TEKI KOGEIHIN SANGYO is the craftworks governmentally designated as ]apanese Traditional Handicrafts.

An Economic Study on the DENTO-TEKI KOGEIHIN SANGYO*harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hijiyama-u/file/6272/... · 工芸品の産業の振興を図り,国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに,地域経済の発展に寄与し,

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比治山大学現代文化学部紀要,第12号, 2∞5 Bul. Hijiyama Univ. No.12, 2005

伝統的工芸品産業の経済学的考察

一一「伝産法」による指定の現状と問題点一一

139

An Economic Study on the DENTO-TEKI KOGEIHIN SANGYO*

はじめに

佐 中忠司

τadashi SANAKA

いわゆる高度経済成長の展開,都市の過密化がすすむなかで,農村地域の過疎化や地方からの人口

流出が絶えることなく続いた。重化学工業を機軸とした産業構造への大転換,地場産業や地域の伝統

産業などに急速な衰退が進んだ。産業構造のゆがみ,公害問題,都市問題など,高度成長に伴うさま

ざまなひずみも表面化する O 地方における経済力,市民生活のあり方や質は一変した。近代化・軽便

さを象徴する大量消費,使い捨てムードの支配的な機械文明に埋没する日常となった。生活の内実は,

人間性の乏しい,潤いのない空疎な側面も否定しがたい。部分的とはいえ,伝統的工芸品産業や地域

の経済を建て直そうという気運も,一方では高まりつつあるo

こうした動きの現われとして,伝統的なものへの回帰,手仕事への関心,本物指向もみられるよう

になってくる。しかし,資金不足,後継者の確保難,原材料の入手難などの問題を抱える地場産業や

伝統的工芸品産業の多くが,社会的な存立基盤すら喪失しかねない状況で,産業そのものとしても予

断の許されない混迷した局面に直面しつつあるo

このような背景の下で, 1974 (昭和49)年5月には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律J(略

称「伝産法J)が制定され,政府による全国的な振興策がスタートした。これに呼応した地方公共団

体の側においても,地元の伝統的工芸品産業の振興への関心がある程度高揚し,都道府県によっては

独自の基準を設けて伝統的工芸品の指定や伝統工芸土の認定などに努力を重ねているところもみうけ

られる O

本稿の目的は,まず,こうした伝統的工芸品産業の社会経済的な概要とその公的な振興策をめぐる

過去と現在,それらと関連する若干の経済学的側面を考察することである O すなわち,伝統的工芸品

産業振興の問題点についてまず法制面を検討し,国による指定や助成措置の大要,今日までの産業動

向や指定品目や地域別の実態を明らかにする O さらに,家内工業論やマニュファクチュア論の立場か

ら,あらためてこれらの問題の経済学的検討をこころみる O そして,最後に,伝統的工芸品産業振興

の意義について触れながら,とりあえずのまとめとしたい。

なお,これらの考察は,全体としては,いずれ予定している文房四方,特に毛筆産業の歴史や現代

を視野においた社会経済的な調査分析のための予備的取り組みのひとつである O

* DENTO-TEKI KOGEIHIN SANGYO is the craftworks governmentally designated as ]apanese Traditional Handicrafts.

140 佐中忠司

I 伝統的工芸品産業とは

「伝統的工芸品Jという呼称、は,通常一般の「伝統工芸」などの呼び方とは区別して「伝統的工芸

品産業の振興に関する法律jで定められた,ステイタスをあらわすいわば格付けされた排他的に用い

られる行政的用語としてのニュアンスが強い。 ここにいう「的jとは,法律上規定される以下のよ

うな意味合いを示唆しているo すなわち,工芸品製造の過程で,原材料や技術・技法の主要な部分が,

昔から現在まで基本的に維持・継承されていること。さらに,その持ち味が生かされながら今日的な

産業環境にも適合する改良も加えられ,時代の動向にも即応しているというような含みがある o r伝統的工芸品J指定の要件は,主として手作りの日常的生活用品で,伝統的な技術・技法や原材料を活

用して行われるもので ある程度の産地がまとまっていることなどである O

戦後,何かにつけて効率化・国際化,情報化のめまぐるしい変化の激しい経済社会において,こう

した歴史的特質を宿命とする伝統的工芸品産業を取り巻く環境諸条件には,いっそうその厳しさが加速

されている。現時点では,伝統的工芸品産業の指定状況は,次表に示されたような段階にいたっているo

現在の「伝産業J界の現勢

項 目 2∞2(平成14)年 参考

従事者数 11.1万人 29万人(昭和54年・ピーク)

企業数 18,326企業 34,043企業(昭和54年・ピーク)

生産額 2,740億円 5,4∞億円(昭和58年・ピーク)

30歳未満の従事者の比率 8.1% 28.6% (昭和49年)

(経済産業大臣指定伝統的工芸品のみ・「伝産法」施行後の統計による)

(出所)2∞1(平成13)年2月,経済産業省「伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する

法律案について(報道発表)J添付資料。

また,伝統的工芸品生産の先行きに対して次のような希望的観測も,一部には,指摘されており,

各方面での努力に期待が寄せられてもいる。

-ゆとりと豊かさをもたらす質の高い製品を求めるニーズの高まり

.地域独自の文化を見直そうとする風潮の高まり

「和Jの暮らしゃ「ものづくりJに対する再評価

-欧米における「和Jの生活様式に対する関心の高まり

.循環型経済社会を体現している産業であるという評価

E 伝統的工芸品産業振興の法制的側面

(向上)

「伝産法Jは,正式には「伝統的工芸品産業の振興に関する法律jという名称、で,上述のように

1974 (昭和49)年5月25日に公布(法律第57号)された。その後1992(平成 4)年についで,さらに

最近では, 2001 (平成13)年に一部改正(法律第33号)がみられた。

その主な内容としては,一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的

伝統的工芸品産業の経済学的考察 141

工芸品の産業の振興を図り,国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに,地域経済の発展に寄与し,

国民経済の健全な発展に資すること(第 1条)がうたわれている。工芸品の伝統的な産地の組合等か

らの申請に基づき,指定要件が満されていれば,経済産業大臣によって「伝統的工芸品jとしての指

定がなされる O 指定を受けた産地では,振興計画等を作成し,経済産業大臣の認定を受ける。その振

興計画に基づく事業等の遂行に必要な経費の一部が,国や都道府県等によって助成されることになるo

「伝産法Jによる指定は もともとこうした伝統的工芸品の産地全体の振興を図ろうとする公的な助

成策であるところに特徴があるo

(1) r伝産法jの概要

「伝産法Jの規定では,その要件として 5点が明記されている O

(1) 主として日常的生活の用に供されるものであること o

(2) その製造過程の主要部分が手工業的であること o

(3) 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること O

(4) 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ,製造されるもので

あること。

(5) 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い,又はその製造に従事して

いるものであること。

(第2条)。

一般的な解説情報などによれば,これらの規定内容に関しては,さらに次のような具体的なとらえ

方が可能であると伝えられている。すなわち,

1.主として日常生活で使われるものとは:

冠婚葬祭や節句などのように,一生あるいは年に数回の行事でも,生活に密着し一般家庭で使われる場合は,

「日常生活jに含まれる。

2.製造過程の主要部分が手作りとは:

すべて手作りでなくても差し支えない。しかし,製品の品質,形態,デザインなど,製品の特長や持ち味を継承

する工程は「手作り」が条件で,持ち味が損なわれない範囲では補助的工程に機械を導入することは可能である。

3.伝統的技術または技法によって製造されるとは:

伝統的とは,およそ100年間以上の継続を意味する。工芸品の技術,技法は, 100年間以上,多くの作り手の試

行錯誤や改良を経て初めて確立するとの考え方である。とはいえ,伝統的技術,技法は,昔の方法そのままでな

くとも,根本的な変化や製品の特長を損ねるほどのものでなければ,改善や発展は差し支えないとされている。

4.伝統的に使用されてきた原材料とは:

1∞年間以上の継続を意味し,長い間吟味された,人と自然にやさしい材料が想定されるが,既に枯渇したもの

や入手が極めて困難な原材料などのぱあいは,持ち味を変えない範囲での同種の原材料への転換は認められる。

5.一定の地域で産地を形成とは:

一定の地域で,ある程度の規模の製造者があり,地域産業として成立していることが必要であり,ある程度の

規模とは, 10企業以上または30人以上が想定されている。個々の企業だけでなく,産地全体の取り組みに向け

た振興策とされている。

142 佐中忠司

都道府県知事等から経済産業局を経て経済産業省の担当課に提出し,大臣の諮問機関である産業構

造審議会の意見を徴して,経済産業大臣が伝統的工芸品として指定する o r伝統的工芸品Jとして指

定を受けた工芸品は,その名称、とともに,次の3つの内容が経済産業省告示(官報に掲載)として公

表される。

1. 伝統的な技術または技法

2. 伝統的に使用されてきた原材料

3. 当該伝統的工芸品の製造される地域

経済産業大臣は,伝統的工芸品産業の振興に関する基本的な指針を示すこととされているが,その

際,以下の 6つの事項を踏まえるべきことが明示されている。

(1) 伝統的工芸品産業の振興の基本的な方向

(2) 従事者の後継者の確保及び育成に関する事項

(3) 伝統的な技術又は技法の継承及び改善に関する事項

(4) 伝統的工芸品の需要の開拓に関する事項

(5) 伝統的工芸品又は伝統的な技術者若しくは技法を活用した商品の開発及び製造に関

する事項

(6) その他伝統的工芸品産業の振興に関する重要事項

(第3条)

伝統的工芸品産業の指定の申出をする組合等は,その指定を受けた後は,振興事業の推進母体とし

て積極的な役割を果たすことが期待されているo 当該組合等の製造業者は 伝統的工芸品産業に関す

る振興計画を作成し,国,地方公共団体等の助成措置(補助金,金融,税制措置等)を受けることが

できる O その際に求められる記載事項は,次の 9つに及ぶ。

(1) 従事者の後継者の確保及び育成並びに従事者の研修に関する事項

(2) 技術又は技法の継承及び改善その他品質の維持及び改善に関する事項

(3) 原材料の確保及び原材料についての研究に関する事項

(4) 需要の開拓に関する事項

(5) 作業場その他作業環境の改善に関する事項

(6) 原材料の共同購入,製品の共同販売その他事業の共同化に関する事項

(7) 品質の表示,消費者への適正な情報の提供等に関する事項

(8) 老齢者である従事者,技術に熟練した従事者その他の従業者の福利厚生に関する事項

(9) その他伝統的工芸品産業の振興を図るために必要な事項

(第6条)

振興計画は, 5---8年という中長期にわたり産地振興の基本となる計画である o 伝統的技術・技法

の維持発展を中心としつつ,近代化を視野に入れ 長期的な展望に耐えうる計画を立てることが求め

伝統的工芸品産業の経済学的考察 143

られているo

具体的には,事業の名称,内容,効果,所要資金,事業予定期間,資金調達計画等の計画期間全体

についての記載とともに,産地の現況,生産の現状と見通し,原材料確保の現状と見通し等,振興計

画の基礎となったデータを併せて記載する。振興計画実施にあたっての必要経費は自らが調達するこ

とが原則であるが,次の 5つの事業に対してはその経費の一部が国および地方公共団体より補助金と

して交付されることとなっている。

①後継者育成事業跡継ぎがいないという産地の切実な悩みを解決するため,指定工芸品

産地で実施する後継者研修事業に対する補助

②技術・技法の記録 伝統的工芸品の技術や技法についての資料の収集や記録フィルムや記

収集・保存事業 録文献をつくることに対する補助

伝統的工芸品の製作に使う原材料を安定確保するために,実態調査を

③原材料対策事業 行ったり,圏内だけでなく海外からも入手が可能かどうか現地調査を

行ったり,代替可能な原材料開発のための研究に対する補助

④需要開拓事業伝統的技術や技法による新商品などの開発や,新しい需要の開拓,動

向をつかむための展示会などを開催することに対する補助

⑤意匠開発事業伝統的工芸品のデザイン開発や,その新しいデザインに対する求評会,

その求評会の成果についての検討会に対する補助

さらに,製造業者等は,活性化事業 (r活性化計画jの作成に関する事項など)にも細かく 7つの

規定が明示されている O

(1) 従事者の研修に関する事業

(2) 技術又は技法の改善その他品質の改善に関する事業

(3) 原材料についての研究に関する事業

(4) 需要の開拓に関する事業

(5) 原材料の共同購入 製品の共同販売その他事業の共同化に関する事業

(6) 消費者への適正な情報の提供に関する事業

(7) 新商品の開発又は製造に関する事業

(第 9条)

経済産業大臣により指定を受けた伝統的工芸品は,個々の商品に「伝統的工芸品として指定されて

いるものであることJを表示することができる。一般消費者にとっては,伝統的工芸品と精巧な類似

品,その識別はかなり困難といえる O それだけに,伝統的工芸品の普及啓蒙のため, r伝統証紙J等

を貼付けて識別のめやすを提供することが,消費者保護の観点からも重要となる。伝統的工芸品産業

144 佐中忠司

振興協会(伝産協会)が実施する伝統的工芸品の表示事業がそれで,統一された「伝統証紙J,消費

者が伝統的工芸品を安心して購入できるようにするためのマーク,が添付されるo

「伝統証紙Jには次の 3つの事項が明示されているo

①「経済産業大臣指定伝統的工芸品Jの文字

②「伝統的工芸品の名称」

③「特定製造協同組合等の名称J

(2) r伝産法jの一部改定

伝統的工芸品産業をめぐる近時の状況やその背景を受けるかたちで, 2∞O(平成12)年7月,通商産

業大臣から伝統的工芸品産業審議会に対して f21世紀の伝統的工芸品産業施策のあり方jについての

諮問が行われた。それに対して,伝統的工芸品産業を次のように位置付けた法改正の必要性を含めた

提言があり,今回の「伝産法」の改正が実現した。 (f伝産法Jの改正2001(平成13)年4月公布,施行),

伝統的工芸品産業審議会による伝統的工芸品産業の位置づけ:

-豊かさと潤いに満ちた国民生活の実現に貢献する産業

-我が国産業の「顔jとして我が国のものづくり文化を象徴する産業

.地域の振興に貢献する産業

-環境に優しい産業

改正された「伝産法Jの主な内容はどのようなものであろうか。 近時の業界の実状を反映したか

たちの新しい「伝産法jは,対象となりうる団体をこれまでの協同組合だけでなく工芸家協会のよう

な任意団体(*)にも拡げるなど,弾力的な運用ができるようになった。この点に最も重要な変化が

認められる o f指定申請Jを始め,振興計画の推進や下記のような補助事業についても,任意団体に

よる取り組みが可能とされ,いずれも計画を作成し経済産業大臣の認定を受けると,国及び地方公共

団体から補助を受けることができるo

(* )この場合の任意団体とは,当該伝統的工芸品を製造する事業者を代表するグループを意味するとされている。

報じられたその主な内容は,次のようになっている(一覧表に主要なポイントも整理)。

①共同振興計画…伝統的工芸品の需要開拓のために,製造協同組合等と百貨庖や商社等の販売事業者や販売協同組

合等が共同して,アンテナショップの開設,市場調査の実施, P Rカタログの作成等を行う事業を支援

する制度である。

②活性化計画…伝統的工芸品を製造する個々の事業者やそのグループが伝統的技術・技法を活用した新商品の開発

を行ったり,製造する事業を支援する制度である。

③連携活性化計画…伝統的工芸品を製造する個々の事業者やそのグループ,又は製造協同組合が,他の伝統的工芸

品産地の事業者やそのグループ,又は製造協同組合と連携して需要開拓,新商品開発等の活性化を行う

事業を支援する制度である。

伝統的工芸品産業の経済学的考察 145

④支援計画…後継者の確保・育成,消費者との交流その他の伝統的工芸品産業の振興に関する事業を支援する制度

である。具体的には下記の事業が実施されている。

1 )人材育成センタ一事業

若者の気質を踏まえたカレッジ形態による人材育成・交流支援を推進する施設として,下記の 3か

所が建設され地域の人材確保・育成の中心的役割を担っている。

飛騨高山伝統産業支援センター(岐阜県)

高岡伝統産業支援センター(富山県)

京都伝統工芸産業支援センター(京都府)

2)産地プロデューサ一事業

自ら産地に入り込んで産地の事業者とともに,新商品の企画,従事者の研修,販路開拓等の計画作

りから事業実施までを指導する「産地プロデューサーJを活用して,更なる活性化を図る事業を支

援する制度もある。

今次の改正点のポイント:

改正前 改正のポイント 期待される効果

〔製造者側〕 〔製造者側〕

振興計画・共同振興計画 振興計画・共同振興計画

産地全体での取り組みの充実

作成・実施の主体を製造協同組合 作成・実施の主体を任意団体にま

等のみに限定 で拡大

〔販売者側〕 〔販売者側〕 〔販売者側)

共同振興計画 共同振興計画

より一層効果的な需要開拓

作成・実施の主体を販売協同組合 作成・実施の主体に販売事業者

等に限定 (流通・小売業者)を追加

〔活用計画〕 現行「発展計画」の 〔活性化計画〕

新商品の開発・製造を支援 発展的解消

〈支援措置〉 〈活性化計画〉創設 利用しやすい支援制度でより一層

0産業基盤整備基金の出資 個々の事業者や少数グループを支援 の産業の活性化

。中小企業信用保険法の特例 〈連携活性化計画〉創設

0増加試験研究税制 産地関連携支援 個々の事業者や少数グループの意

欲的な取り組みを支援

産地関連携による意欲的な取り組

(産地からの要望) みの支援

(出所)通商産業省.2∞I年2月6日報道発表時の資料から作成(再整理)。

146 佐 中忠司

これらの改定された諸点からも明らかなように,近時における伝統的産業の振興における地域や全

国的な環境条件の変化を認め,指定の条件を若干緩和,より対象の範囲を拡大する方向で,それら所

期の効果を期待しようとしているo ところで,およそ100年超の長期にわたるわが国における近代

化・技術革新の激流を凌ぎつつ,現在に生き延ぴたもののみをその対象とする振興策であるo その振

興策が,近代化・技術革新,国際化・情報化の流れの外で,超然としたかたちで追及されなければな

らないという根本的な制約をまぬかれえないところに大きな矛盾が潜んでいることを,見逃してはな

らない。ここに,大きな壁が立ちはだ、かっているといえよう o

E 伝統的工芸品の指定の概要

(1)伝統的工芸品経営の推移

2005年現在,伝統的工芸品208品目が登録されている O 戦後における,特に政府による指定以降,

その生産高,事業所数,従業員数等の推移を概観してみよう。

1975 (昭和50)年伝統的工芸品の中央政府による指定制度のスタート以降,現在ちょうど30年が経

過しているo 公表された資料等によれば,その指定件数の大半 (113品目)は,当初の 5年間に集中

している O と同時に 2∞0年代に若干の件数の伸びが認められるo おそらく 上述の「伝産法jの改

正,特にその指定対象事業者の認定条件にかかわる緩和にもとづく,申請件数の増加に起因したもの

であろうと推測される。

伝統的工芸品産業の指定件数 (1975-2∞5)

70年代後半 I 80年代前半 | 初年代後半 | ω年代前半 I 90年代後半 | ∞年代後半

数一計

件一味

定一動

指一件

29

142

23

165

12

187

21

208

(出所)r全国伝統的工芸品総覧J2∞l年再版,他により集計。

伝統的工芸品産業の指定件数(1975ー2∞5)

2田

200

150

1∞

o

伝統的工芸品産業の指定実績 (1975-2005)

(出所)向上表から作成。

伝統的工芸品産業の経済学的考察 147

伝統的工芸品産業における生産額の推移

鉱四

日四

4.!Dl

3,(XXl

2,IXX)

1,1XX1

(出所)伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案[予算関連法案]参考資料(2∞I年2月6日),他から作成。

(注)経済産業大臣指定伝統的工芸品のみ (r伝産法J施行以降の統計)。

中央政府の指定にかかわる伝統的工芸品の生産額についてはどうなっているのか。その指定制度創

設後約10年間(1983年をピーク)をへて,その後の低迷とくに「バブル経済崩壊J以降は右肩下がり

の一方的減少傾向をたと守っているo 大局的にみれば 第 1次石油ショック直後(1974年)からほぼい

わゆるバブル経済の前後(1991年)までの上昇期と,それ以降の下降期に大別できるであろう o (以

下,付表一 lも合わせて参照のこと o )

同関連の企業数は, 70年代が最大で,その後は一貫した減少傾向が否めない。 1979年のピーク 3万

4∞0事業所から2002年の l万8000社台と,約 l万5∞0事業所(減少率約46%)つまり全体の半数近く

に迫るものが,業界から脱落している勘定である O

伝統的工芸品産業における企業数の推移

企業数

35

30

25

20

15

1974年 1979年 1983年 1987年 1991年 1995年 1998年 2002年

(出所)向上。

148 佐 中忠司

この間の事業所当りの生産額を算出してみると, 1130万円台から1880万円台 (1991年のピーク)の

間を浮沈し,やはりバブル崩壊後の2002年1495万円へと一貫した減少傾向がみてとれる。家内工業的

な経営とはいえ,この額はいかにも厳しいものを感じさせるといえよう o

同様に,一事業所当りの従事者数の推移はどうであろうか。*1970年代の29万人を頂点(1979年)

として,以後年々減少, 2002年には11万人台に落ち込んでいる。この間約6割 (58.1%)のマイナス,

1980年代以降連続して30歳未満の従事者数が落ち込んでいることが注目されるo つまり,従事者中30

歳未満のものの占める割合が最高28.6%(1974年)であったものが,この間に, 8.1%台 (2002年)へ,

絶対数で約 9割 (88.1%)ものマイナスである。この主因としては,この業界における後継者確保の

厳しさ,とりわけ若者層の激減にあることがあらためて確認されるo こうした従事者数の推移と上述

の企業数の動向は,この間ほぼその軌をいつにしているo

* r伝産法Jなどによれば, r技術に熟練した従事者J.rその他の従業者Jとの若干の用語法上のニュアンスの相

違が読みとれる。本稿では,熟練を積んだ手工業者を「従事者J.その他の関係者をも含めた「従業者J.事業

経営者の側面が意識されたばあいは「事業者jと呼び,一応の区別を試みる。ただし,参考資料等の呼称、に従

うばあいなどは,必ずしも原則通りとは限らない。

バブル経済崩壊後の減少傾向は,生産総額についても,事業所当りについても,同様の傾向がよみ

とれるo この業界からの関係者の撤退,流出に拍車がかかっているようにみられるo

伝統的工芸品産業における従事者数の推移

35

25

三O才未満の吏口(%)

うち、三O才未満

従事者数(万人)

a

m

15

10

。1974年 1979年 1錦 3年 1987年 1991年 1鈎 5年 1998年 2∞2年

(出所)向上。

伝統的工芸品産業の経済学的考察 149

(2) 伝統的工芸品の経営規模の推移(全体的平均像)

1事業所当り生産額(万円)

z(xx)

11m

11m

1400

1200

1<XXl

1m

600

400

200

。1974年 1979年 1983年 1987年 1991年 1995年 1998年 2∞2年

(出所)向上。

同じく 1従事者当りの年間生産額を計算してみると,そこからはさらに業界の厳しさとも言うべ

きものが浮上してくる。すなわち, 137万円(1974年)から260万円(1995年)の間にとどまっていて,

近年240万円台で推移していることになる。これでは,通常の学卒サラリーマンの初任給にも匹適し

ない額で,そこから原材料や諸経費を控除して,その後に個人所得として収入できるものがどれほど

残る計算になるであろうか。この面からのみみても,後継者としての若者の心を引き付け,比較的長

期にわたる下積み的生活や技術獲得の苦労を乗り越えてこの世界にとどまらせようとする魅力に乏し

いというのが偽らざる現実であろう O

1従事者当り生産額(万円)

300

1974年 1979年 1983年 1987年 1991年 1995年 1998年 2002年

(出所)向上。

l事業所当りの従事者数は, 6 ~ 8人程度で推移しているが,やはり90年代に入ってその数にも絶

対的な減少傾向がうかがえる O いわゆるバブル経済の崩壊,長期の景気低迷,全国的な沈滞ムードの

中で,この分野においても人員の縮小が続いているようにみえる。こうした事実からも,この業界に

おける事業経営は,文字通り零細な個人経営規模のものが少なくないということと,それもだんだん

と先細りの感が否めないというのが率直なところである O

150 佐中忠司

1事業所当り従事者数(人)

。1974年 1979年 1983年 1987年 1991年 1995年 1998年 2∞2年

(出所)向上。

(3) 伝統的工芸品の経営規模(個別的平均像)

伝統的工芸品の品目別にみた経営規模等の数値のえられる『全国伝統的工芸品総覧j2001年再版に

よれば,この段階で中央政府指定の対象とされているものは203品目である。指定外のものも含めて

全体では, 1241品目, 25443企業,約14万人の従事者という伝統的工芸品産業関連の数値が記されてい

るところから,中央指定の対象とされているものは,全体の l割 6分程度ということになる。(なお,

以下の本項で扱う数値は,都府県の実態調査報告をもとに中央で集計されたものであり,たとえば関連

の生産額など経済産業省の時系列的資料等にみえるものとはかなり相違しているo 単純な比較は困難

である。)

事業者数,従事者数,生産額によせて,さらに品目別の仔細な分析を行ってみよう(付表-2,参

照。以下同じ)0品目別にみた企業数は, 4400余事業の陶磁器・瓦が最も多く,以下漆器,織物,染

色品,仏壇・仏具の順であるo 品目別にみた従事者数の最も多いのは,織物,陶磁器・瓦,染色品,

漆器,仏壇・仏具等の順であるo 品目別にみた年生産額は,陶磁器・瓦の1463億円余を筆頭に,織物,

漆器,染色品,金工品等の順であるo

つぎに,品目別に,それぞれ企業当りの従事者,生産額などの平均的な様子を浮き彫りとしてみよ

うo 1企業当りにみた従事者数は,企業の規模を示す重要な指標のひとつと考えられるが,全体の平

均値は6.1人である。最大はひも・糸・刺繍他28.7人,ついで文具の10.1人,それ以下はすべてー桁で

郷土玩具・人形,和楽器・神祇調度・慶弔用品,織物と続く。若干の例外を除けば, 10人未満の極め

て小規模な零細家内工業的な色彩がここに示されている O

また 1企業当りの年生産額を見ると,全体の平均値が, 33∞万円で 1億円余にある和楽器・神

祇調度・慶弔用品を別格にして, 6千万円クラスの扇子,団扇・和傘・提灯,郷土玩具・人形,以外

はすべて 5千万円には及んでいない。

ここで合わせて,従事者当りの生産額についても見ておくと,全体平均では540万円となるが,金

工品,和楽器・神祇調度・慶弔用品それぞれの 1千万円余を別とすれば,いずれもその額は数百万円

にとどまる。最低は,約40万円のひも・糸・刺繍他であるo

(4) 伝統的工芸品の全国的指定概況

伝統的工芸品の2005年時点における地域別,品目別 (208品目)の地域的,品目別様子を以下(付

表-3の(1),(2),も参照)に,概観する。

伝統的工芸品産業の経済学的考察 151

地域的には,関東,近畿,中部方面がおおく,北海道は皆無である。それに対して,沖縄に相当数

のものがあることが注目されるo 中園地方は,東北,九州に次ぐ17件の指定である。品目別にみると

織物,陶磁器,漆器,木工品,仏壇・仏具等の指定件数が目立つ。その指定制度そもそものあり方か

らも当然のことではあるが,わが国の古くからの伝統を実物の形で保存する営み 庶民に親しまれて

きた伝統的・文化的価値の高い工芸品が見受けられる。こうした貴重な工芸文化が,地方からだんだ

んとその姿を消す傾向にあるとすれば,極めて遺憾なことであるo 今のうちに,行政はじめ関係者の

一層の努力や配慮がいま緊急に求められているといえよう o

沖縄'

九州

四国i中国

近畿

中部

関東

東北

北海道。

伝統的工芸品の指定(地域別,件数)

10 20 30 40 50

伝統的工芸品の指定(品目数別,件数)

5 10 15 20 25 30 上側.中園地方、下側:全国

(出所)経済産業省発表の関連資料より作成。総数208件 2∞5年8月現在。

60

35

152 佐中忠司

N 伝統的工芸品産業に関する経済学的考察

(1 ) 家内工業,マニュファクチュアの経営史的側面

伝統的工芸品は,手工業をその技術的な基礎としている。また,マニュファクチュア (manufacture)

的な規模の拡大や下請け的分業による,コスト削減,経営合理化に成功しているものもあるo わが国

の産業発展の過程で果たしてきた中小零細企業の役割や特徴を把握する上で,国際的にも歴史的にも

重要な役割を果たしてきた,家内工業やマニュファクチュアの特徴,経済的意義について,まず,そ

の基本点を整理しておこう。(付表-4,参照)。伝統的工芸品(traditionalhandicrafts)は,歴史的に

は自家消費のための家内仕事から発生し 技術的には手工業(handicraft)と呼ばれる道具を主たる生

産手段とした生産様式を特徴としている o その技術の向上と製品の商品化により,やがて家内工業

(household industry)として発達してくるo そこに,親方(foreman)が職人(artisan)を雇い入れて経

営する手工業制が成立するo

こうした家内工業を流通過程から社会経済的に連結して 重要な役割を演じるようになるのが問屋

であるo 問屋は,有力な初期商人資本として,都市の手工業者や農家の副業による製品を買い取り,

流通させることで市場の拡大に寄与する。これが,一般に,問屋制家内工業 (homeindustry under a

whole saler's controI)と呼ばれているものである O

そうした影響力を拡大しつつあった商人資本家は,やがて農村の経済に深く浸透して,資金,原材

料,道具等を提供して生産させ,さらにそれらの製品を買い上げる方法で,家内工業の担い手,直接

的生産者とのつながりを強化,支配するものも現れてくる O

(2) 経済産業の近代化・機械化と伝統的工芸品

1868年に成立した明治政府は,士農工商の身分の平等化を図る一方,先進諸外国の資本主義的発展

に伍するべく,富国強兵を目ざして産業・経済の近代化を強力に推進した。殖産興業の遂行や1880年

代後半の企業勃興等を経て,紡績・鉄道・鉱山の 3業種を中心に 機械制大工業が民間において本格

的に展開する。日本資本主義の確立過程が展開されて,鉱業をはじめ造船,製鉄などの重工業の発展

と,輸出産業である製糸業,織物業,陶磁器業などが日本経済の中核を占めることとなる。綿糸,生

糸,織物,陶磁器などの産地では,内外の競争に押されて生産拡大のためにマニュファクチュア化や

生産技術の機械化を迫られる O

産業近代化のために外国人技術者も多く招かれた。ドイツのワグネル (GottfriedWagner, 1831-

1892)博士は,ヨーロッパの工芸技術を紹介するとともに,各地で工芸品の改良に尽力した。 1873

(明治 6)年に,ウィーンで開催された万国博覧会には,陶磁器,漆器,銅器,七宝などの伝統工芸

品が出品されて好評を博したと伝えられる O これらを契機として伝統工芸品産業振興の機運も高まっ

た。また,この時代は洋服,洋傘,靴,帽子,机,椅子,洋紙,洋食器など,欧米の生活用品が都市

部で普及しはじめた。

明治時代も後期になると,紡績,造船,機械製造などが著しい発展を遂げる O 近代工業の発展は,

農村にも深刻な影響を与えた。生糸の輸出に直結した養蚕業等には発達がみられたが,藍の生産等は

安価な化学染料の輸入品におされたりして後退する O 大正期になると生活様式も変化を見せ,農村で

はなお旧来の生活様式が続く一方で,都市部では,電灯,ガス,洋服,ガラス器,洋食器などが普及

するようになった。大正の末から昭和の初めにかけて,欧米風のモダンな生活が紹介され,また構成

派,アール・デコ (artdeco)など海外の工芸・デザイン運動の動きが,日本の工芸にも影響を与えた。

この時代の伝統工芸品産業に対する政府の政策は,主に輸出振興の一環として行われたものであるo

政府は,産業技術の発展を目的として,内国勧業博覧会や共進会の開催につとめ,機械,農産物のほ

伝統的工芸品産業の経済学的考察 153

か,織物,陶磁器,漆器,家具などの伝統工芸品も多く出品されたのであるo

さらに,東京美術学校や京都市染色学校などのような各種の教育機関が,政府や地方庁によって設

立され,伝統工芸品産業の技術の保存,奨励が図られた。 1927(昭和 2)年仙台に工芸指導所が設立

されたが,この頃,各府県でも工芸指導所や工業試験場などの設立,工芸品の工業化を図ろうとする

動きが目立ち,工芸作家たちの運動もあって,帝展(現日展)の中に美術工芸部が設置される。一方,

産業の機械化の進む中にあって,地方の特色ある手工業技術の持つ素朴で健康的な美を評価しようと

する民芸(民衆的工芸)運動も起こり, 1934 (昭和 9)年に柳宗悦,浜田庄司らによって日本民芸協

会が設立され, 1936 (昭和11)年には,日本民芸館が開設されている。

(3) 伝統的工芸品産業の現代的経営

明治期のわが国産業革命前後までは,民間の事業では,機械制工業の発展はほとんど皆無であった。

その後も多くの工業は,手工業やマニュファクチュア形態のものが大半であった。とくに伝統的工芸

品の産業は,既述のように依然として伝統的な技術や製造工程を道守,今日それを根拠として伝統的

工芸品としての認知をえ,その存在価値が保たれている。

第2次世界大戦によって荒廃したわが国の産業・経済は,朝鮮戦争をへて再建,その後世界にもま

れな高度経済成長型の産業高度化が進み,それに続くその後の構造不況,バブル経済の崩壊,平成大

不況等の荒波に洗われているo 情報化・国際化・環境問題など今日的な政治・国際関係の混迷や厳し

い経済状況の試練の中におかれて,伝統的工芸品産業が直面している販路の維持・拡大,後継者不足

や原材料の確保難など多くの問題が山積しているo これらに伴う地域経済,生活様式,雇用環境など

の変化との関係を抜きにしては 現今の伝統的工芸品産業の動向は考えられない。そうしたものの基

本的な視点としては 次のような諸点が指摘されなければならないであろう o

a.産業構造の転換,地域経済条件の悪化

(経済社会構造の変化)…エネルギー革命,技術革新,工業材料革命やマス・メディアの発達等によ

り,新製品の大量生産,大量消費の経済へと経済社会の構造が変化した。経済成長の進展につれ,

農業などの第 l次産業の比率は低下し,原材料の供給を農林業に大きく依存してきた伝統的工芸

品産業のこうした基盤が掘り崩されてしまった。

(地域経済・農村経済の変化)…漆,木材,竹材,コウゾやミツマタなどの和紙原料,生糸などの原

材料は,一部を除いて,その供給が農林業の中に深く組み込まれていた。だが,戦後の農村経済

の疲弊に伴う必要な原材料の確保にも支障が生じるようになった。所得水準の向上とあいまって,

規格化,標準化された新製品,低価格の生活用品が大量に供給・消費されるようになった。その

結果として,価格,量産性の面において,伝統的工芸品は,代替的な近代工業製品に圧倒され,

そのシェアを低下させていった。

b.立地・環境の変化

(操業難や立地状況の変化)…都市化,道路,土木建設,宅地化などの推進により,木材,竹材,石

材,陶土などの採取が困難となり,事業そのものの立地にも支障が生じるようになったo たとえば,

陶磁器の登り窯などは,窯周辺の宅地化が進んだりして,閉鎖せざるを得なくなった例もある O

c.技術・労働環境の変容

(技術の継承,就労形態、の変化)…雇用環境の変化は大きい。産業の重化学工業化に伴う労働力の農

林業から製造工業や都市サービス産業への移動は,主として農山村の低廉な労働力をその基礎と

していた伝統的工芸品産業の人手不足を余儀なくした。また,就学年限の長期化や就学率の高度

化が進むにつれて,若いときから長期間の修行を必要とする手工業にもとづく「徒弟制度jの存

154 佐中忠司

立基盤が瓦解してゆく。この徒弟制度ともいうべきいわば前近代的就業形態は,戦後育ちの若者

たちにはなかなか通用し難い職業訓練のシステムでもあるo 同時に,高度経済成長下では,比較

的単純で必ずしも特例の熟練を要しない若年労働の就業機会が増大する傾向にあったために,若

者の労働観も大きく変化している O

伝統的工芸品産業では,手仕事中心の地味な仕事である上にかなり長期の見習い期間にも耐え

なければならない。職場は小規模な事業所が多く,給与,休日,福利厚生などの雇用条件も十分

には整備されていないのが普通であるo 若者にとっては,生涯の仕事場として傍目にもあまり魅

力的とは映らないために,敬遠されがちの傾向にあったともいえよう O

d.消費生活,市民意識の多様化

(住居環境の変化)…戦後の都市化,住宅環境,借家・マンション生活などの居住環境の変化にとも

なう家庭生活のあり方や生活習慣も激変した。特に核家族化の進行によって,親から子,子から

孫へと代々伝えられた伝統的な様式,生活意識・慣習が忘れ去られ,伝統的なものへの愛着や継

承の意識も希薄化の傾向にある。

(生活様式・生活用品の変化)…わが国の伝統的な生活様式は,農林業主体であった過去の社会状況

を反映して,季節感を尊重し,五節供やお正月を始めとする季節ごとの行事,夏祭りや秋祭りに

代表される豊作祈願の祭礼などさまざまなものが残されてきた。しかしながら,このような伝統

的な行事・生活文化も,生活様式の洋風化,都市化が進む中で,荒廃,衰退していく。さらに,

戦後のマス・メディア等の発達により,都会から農村のすみずみに至るまで,プラスチック製等

の食器や容器,化粧合板やスチール製の家具,電気洗濯機,テレビなどの家電製品等が洪水のよ

うに押しよせている O 日本人の消費生活は 風土や季節感の乏Lい皮相的なものに流されがちと

なった。

(伝統的工芸品そのものに対する関心の薄れ)…国民の生活用品に対する意識も,戦前は,倹約を尊

んで物を長く大切に使うという生活意識が支配的であった。戦後は一変 使い捨ての風潮がむし

ろ格好よいもののようにさえもてはやされ,商品選択の基準も価格,日新しさや実用本位,流行

などの側面が重視されがちとなった。一見して地味なデザインが多い伝統的工芸品は,長く使い

こむことによって味が出てくるという特徴も,その真価を発揮するという場面が廃れ,激しいコ

マーシャリズムにも災いされ続けている。こうして,消費者の伝統的工芸品に対する関心は急速

に薄れて,一部の趣味的な扱いに限定されてしまったものも少なくない。

V 伝統的工芸品産業と内発型地域開発

伝統的工芸品と呼ばれる生活用具などの分野には 単純な家内工業としての生産者から問屋制家内

工における生産者へと移行,現在でも単なる手工業者にとどまらず問屋としての有機的な社会経済的

関係を律しているものも部分的にはあるo いわゆる社会的分業が問屋制を介して確立した初期の資本

主義的関係ともいうべき経営実態で それなりに生産力の向上や市場の拡大に成功しているものもあ

るD さらに,分散・点在して作業していた手工業者(直接的労働力)をーか所(工場)に集めて計画

的に労働させる,すなわち分業による協業を通じて生産力を高める方法が発展して,マニュファクチ

ユア(工場制手工業)へ移行しているものもあるであろう o

ところが,その反面で手工業的な伝統にとどまらざるをえない Cf伝産法Jの規定的条件)限りは,

近代的な機械化等とはいささか無縁な存在となるo ここでは,生産の合理化,高度化への道は当初か

らもっぱら手工業に依拠する伝統的工芸品生産にかせられた技術上のみならず経済産業政策上の抜き

がたい柳(かせ)がはめられていることになる。他方では,現今の世情からいえば,民営化,規制緩

伝統的工芸品産業の経済学的考察 155

和の呼び声高い市場原理最優先,産業経済の高度化,合理化等,内外共に「民Jという名の大企業,

大商社,ゼネコン等の論理が横行しまさに文字通りの奔流となっている感が強い。経済大国,効率や

国際競争力の確保にのみ心を奪われて,貴重な伝統文化の担い手たちの生活と経営を省みようとする

精神的ならびに物質的な余裕を,どこかに置き忘れてしまったかのようであるo

日本近代化の歴史過程を一世紀以上にわたって生き延び,営々と築きあげてきた貴重な日本文化と

伝統の担い手である伝統的工芸品やその担い手たちの優れた技術・技法を維持発展させ,後世に伝え

ていくことの責任はだれがどう取るべきなのか。単に関係業者やその家族,一部の地方自治体行政に

事実上任せきりで 国家的・国民的な対策がなおざりにされるようなことがあってはならない。これ

までに概観してきた全体的状況からすれば,従事者,事業数,年生産額等どの指標をとりあげてみて

も,伝統的工芸品の直面している状況は極めて厳しく,このままでは将来性に光明はなかなかみえに

くくなっているo

地域経済の振興,高齢化社会の活力,伝統的文化の再生,コミュニテイの形成等は,地域活性化の

ために必須の課題である O 大型の公共事業,道路建設や採算性を無視したいわゆるハコ物行政,企業

誘致等に地域の活性化や振興を一方的に託するといったパターンが全国的に目につく o これまでの安

易な地域開発の視座は,結果的に大幅な財政負担をみずから背負い込み,逆に地域の経済力を削ぐ方

向にもつながりかねないものが少なくなかった。真に地域住民のための地域振興には,全国各地にい

まなお根付いてその命脈をたもっている伝統的工芸品生産を含む地場産業や中小企業等の活力をいか

に再生,促進するかということ,ここにひとつの鍵があるo 近代化・合理化の奔流の外に置かれてき

た伝統的工芸品産業は,逆にいえば,内外の大企業や商社等大手によって汲みつくされようとしつつ

ある地域の活力をそれなりに墨守してきたという証でもある口これを弁証法的に発想転換させ,地域

の歴史を見直す視点をしっかりと確立する必要がある O 地方に定着した庶民生活・文化,教育,人間

性復活を総合的に結合した地域経済対策,そのための柱のーっとしての伝統的工芸品を含む地場産業

や農林業の復興を基本に据える,いわゆる内発型地域開発への発想の切り替えである O

むすぴ

国土の均衡ある面的な発展,それを支える各地の地場産業の確立,そのための官民挙げての取り組

みの必要性,とりわけ国の行政,文化・教育政策,地域・経済政策のあり方の基本を再検討すべきで

ある O そのなかの重要な柱のーっとしての伝統的工芸品の保存・育成策の位置づけの見直しが必要で

ある O これを単なるささやかな産業経済政策の玲(らち)内に押しとどめたのでは,地域振興もさる

ことながら伝統工芸品産業そのものの存立基盤をも掘り崩しかねない心配がある O 伝統的工芸品産業

のこうした深刻な事態が放置されたままで推移するとすれば,国の内外,後世の人々からも,およそ

文化国家とは無縁な「エコノミック・アニマルJ,それゆえの文化・工芸上のパンダリズム

( vandalism)の誇りをまぬかれないであろう。世紀をわたって保ち続けられてきた貴重な伝統的工芸

品とその技術,その保護育成のために,官民を挙げて抜本的な施策がいまこそ求められている O この

ことを再度,強調してむすびとする。

参考文献:

伝統的工芸品産業振興協会 f伝統的工芸品産業の振興に関する法律関係法令通達集J1976.2.

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品関係産地組合・団体等名簿J1976.3.

伝統的工芸品産業振興協会『全国伝統的工芸品一覧J1977. 1 (改訂版1978.3).

156 佐中忠司

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品J(1 ~ 2), 1977.6.

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品産業振興協会のご案内J1977.

伝統的工芸品産業振興協会 f伝統的工芸品産業の振興に関する法律関係法令集j(改訂版.), 1978.2.

吉田光邦 f伝統的工芸品産業の問題j伝統的工芸品産業振興協会, 1979.3.

伝統的工芸品産業振興協会『全国伝統的工芸品総覧J各昭和54,58年,平成 7,11,14度版(1979.9,

1983.10, 1996. 3 , 2∞o. 3 , 2003. 3 ) .

中小企業診断協会『今日の伝統的工芸品産業j同友館, 1979.10.

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品技術事典』グラフイツク社, 1980.1.

下平尾勲 f伝統的工芸品産業の課題 j伝統的工芸品産業振興協会, 1984.2.

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品の本j各平成 7,8,13,15年版(1995.3,1996. 2 , 2001. 9 ,

2003.7) ,同友館.

伝統的工芸品産業振興協会『伝統的工芸品への招待』大蔵省印刷局, 1996.11.

伝統的工芸品産業振興協会『現代に生きる伝統工芸jぎょうせい, 1998.9.

伝統的工芸品産業振興協会『全国伝統的工芸品総覧jぎょうせい, 2003.12.

佐中 忠司(地域文化政策学科)

(2005. 10. 17 受理)

付表

ー1

伝統

的工

芸品

産業

の推

移(1974-2002

年)

伝統

的工

芸品

産業

の推

移(

生産

額司

事業

所数

,従

事者

数)

年1974年

1979

年1983年

1987

年1991

年1995

年1998年

2∞2年

生産

額(億円)

3,844

4,837

5,406

4,626

4,928

3,902

2,784

2,740

企業

数(事業所)

33,909

34,043

30,338

28,710

26,211

21,293

18,187

18,326

従事

者数

(万人)

28

29

24.2

23.7

19.9

15

1 1.5

11.1

うち,

30歳

未満

(万

人)

8

3.7

3

2.6

2.2

1.3

1.2

0.9

30歳

未満

の割

合(

%)

28.6

12.8

12.4

11

11

8.7

10.4

8.1

(出所)伝統的工芸品産業の振興に関する法律の一部を改正する法律案[予算関連法案]参考資料

(2001年2月6日),他により作成。

(注)経済産業大臣指定伝統的工芸品

(206件)のみ,

r伝産法J施行後の統計。資料の関係で,その後の追加指定分は含まれていない。

伝統

的工

芸品

産業

の推

移(

事業

所当

り生

産額

,従

事者

当り

生産

額,

事業

所当

り従

事者

)

年1974

年1979年

1983年

1987

年1991

年1995

年1998年

2002

l事

業所

当り

生産

額(

万円

)1133.6

1420.8

1781.9

1611.2

1880.1

1832.5

1530.7

1495.1

l従

事者

当り

生産

額(

万円

)137.3

166.8

223.4

195.2

247.6

260.1

242.8

246.8

1事

業所

当り

従事

者(

人)

8.3

8.5

8.0

8.3

7.6

7.0

6.3

6.1

(出所)向上資料にもとづき算出。

和 裁 S H 榊 b 冊 糠 3 翰 柏 崎 特 思 品 川 湘 ]-ω 吋

付表

一2

業種

別伝

統的

工芸

品の

概況

品目

数企

業数

従事

者数

年生

産額

平均

従事

者平

均生

産額

平均

生産

(企業)

E

(人)

W(百万円)

P

企業当り

W/

E企業当り

P/E

従事者当りp/wl

織物

31

2908

26071

119722

9.0

41.2

4.6

染色品

11

1849

13702

61564

7 .4

33.3

4.5

ひも

・糸

・刺

繍他

4

171

4916

2025

28.7

11.8

0.4

陶磁

器・

瓦29

4445

25126

146316

5.7

32.9

5.8

漆器

23

3084

12953

81149

4.2

26.3

6.3

木工品

19

542

1855

11311

3 .4

20.9

6.1

竹工品

6

180

921

5659

5.1

31.4

6.1

金工品

12

1162

3927

42722

3 .4

36.8

10.9

仏壇

・仏

具16

1308

6103

25631

4.7

19.6

4.2

和紙

9

214

1267

9513

5.9

44.5

7.5

文具

8

340

3436

11689

10.1

34.4

3.4

石工

品・

甲骨

皮製

品7

703

2979

25255

4.2

35.9

8.5

郷土

玩具

・人

形6

362

3540

23129

9.8

63.9

6.5

扇子

・団

扇・

和傘

・提

灯6

268

1937

17492

7.2

65.3

9.0

和楽

器・

神祇

調度

・慶

弔用

品1

8

78

850

9.8

106.3

10.9

その

他の

工芸

品6

458

1405

12115

3.1

26.5

8.6

工芸

用具

・材

料3

227

1029

6056

4.5

26.7

5.9

以上

の小

計197

18229

111245

602198

6.1

33.0

5.4

三ロ』

計203

18,326

111707

......

6.1

... ...

... ...

(出所)r全

国伝

統的

工芸

品総

覧J2001

年再版,

24ページより抜粋。

(注)2001

年現在。

203品目中,

6品目

(97企

業)については生産額不明のために内訳から除外。平均等は新たに算出(単位:人,百万円)。

一 戸 印 ∞ 舟 号 、 担 割

伝統的工芸品産業の経済学的考察 159

付表-3 (1) 伝統的工芸品

品目別全国内訳(1) 208品目 (2∞5年 8月現在)

織物 染色品

久米島紬,宮古上布,読谷山花織,読谷山ミンサー, 京鹿の子絞,京友禅,京小紋,京黒紋付染(京都府)

琉球緋,首里織,与那国織,喜知嘉の芭蕉布, 有松・鳴海絞,名古屋友禅,名古屋黒紋付染(愛知県)

八重山ミンサー,八重山上布(沖縄県) 東京染小紋,東京手描友禅(東京都)

塩沢紬,本塩沢,小千谷縮,小千谷紬,十日町緋, 加賀友禅(石川県)

十日町明石ちぢみ(新潟県) 琉球ぴんがた(沖縄県)

村山大島紬,本場黄八丈,多摩織(東京都)

伊勢崎耕,桐生織(群馬県) その他繊維製品

結城紬(茨城県/栃木県),置賜紬(山形県) 京繍,京くみひも(京都府)

羽越しな布(山形県/新潟県),信州紬(長野県) 伊賀くみひも(三重県),加賀繍(石川県)

牛首紬(石川県),近江上布(滋賀県),西陣織

(京都府),弓浜緋(鳥取県),阿波正藍しじら織

(徳島県),博多織(福岡県)久留米緋(福岡県)

本場大島紬(鹿児島県/宮崎県)

陶磁器 陶磁器(続き)

赤津焼,瀬戸染付焼,常滑焼(愛知県) 美濃焼(岐阜県),九谷焼(石川県)

四日市高古焼,伊賀焼(三重県) 越前焼(福井県),信楽焼(滋賀県)

丹波立杭焼,出石焼(兵庫県) 京焼・清水焼(京都府),石見焼(島根県)

小石原焼,上野焼(福岡県) 備前焼(岡山県),萩焼(山口県)

三川内焼,波佐見焼(長崎県) 大谷焼(徳島県),砥部焼(愛媛県)

小代焼,天草陶磁器(熊本県) 伊万里・有田焼(佐賀県),唐津焼(佐賀県)

大堀相馬焼(福島県),会津本郷焼(福島県) 薩摩焼(鹿児島県),壷屋焼(沖縄県)

笠間焼(茨城県),益子焼(栃木県)

漆 器 木工品

輪島塗,山中漆器,金沢漆器(石川県) 樺細工,大館曲げわっぱ,秋田杉桶樽(秋田県)

秀衡塗,浄法寺塗(岩手県) 大阪欄間,大阪唐木指物,大阪泉州桐箪笥(大阪府)

鎌倉彫,小田原漆器(神奈川県) 松本家具,南木曽ろくろ細工(長野県)

村上木彫堆朱,新潟漆器(新潟県) 岩谷堂箪笥(岩手県),奥会津編み組細工(福島県)

越前漆器,若狭塗(福井県) 春日部桐箪笥(埼玉県),江戸指物(東京都)

津軽塗(青森県),鳴子漆器(宮城県) 箱根寄木細工(神奈川県) 加茂桐箪笥(新潟県)

川連漆器(秋田県),会津塗(福島県) 井波彫刻(富山県),一位一万彫(岐阜県)

木曽漆器(長野県),飛騨春慶(岐阜県) 名古屋桐箪笥(愛知県),京指物(京都府)

高岡漆器(富山県),京漆器(京都府) 豊岡杷柳細工(兵庫県),紀州箪笥(和歌山県)

紀州漆器(和歌山県),大内塗(山口県) 宮島細工(広島県)

香川漆器(香川県),琉球漆器(沖縄県)

(出所)経済産業大臣指定の伝統的工芸品 (2005年 8月現在,予定を含む)を組み替えて表示。

(注)指定品目数の多い府県を先頭に示す。

160 佐中忠司

付表-3(2) 伝統的工芸品

品目別全国内訳(2) 208品目 (2005年 8月現在),前表に続く

工品 金工品

江戸和竿(東京都),駿河竹千筋細工(静岡県) 燕鎚起銅器,越後与板打刃物(新潟県)

大阪金剛簾(大阪府),高山茶峯(奈良県) 堺打刃物,大阪浪華錫器(大阪府)

勝山竹細工(岡山県) 別府竹細工(大分県) 南部鉄器(岩手県),山形鋳物(山形県)

都城大弓(宮崎県) 東京銀器(東京都),信州打刃物(長野県)

高岡銅器(富山県),越前打刃物(福井県)

播州三木打刃物(兵庫県),土佐打刃物(高知県)

肥後象がん(熊本県)

壇・仏具 和紙

新潟・白根仏壇,三条仏壇,長問仏壇(新潟県) 因州和紙,石州和紙(島根県)

名古屋仏壇,三河仏壇(愛知県) 内山紙(長野県),美濃和紙(岐阜県)

金沢仏壇,七尾仏壇(石川県) 越中和紙(富山県),越前和紙(福井県)

京仏壇,京仏具(京都府) 阿波和紙(徳島県),大洲和紙(愛媛県)

山形仏壇(山形県),飯山仏壇(長野県) 土佐和紙(高知県)

彦根仏壇(滋賀県),大阪仏壇(大阪府)

広島仏壇(広島県),八女福島仏壇(福岡県)

川辺仏壇(鹿児島県)

文具 石工品・貴石細工

熊野筆,川尻筆(広島県) 真壁石燈寵(茨城県)

雄勝硯(宮城県),豊橋筆(愛知県) 甲州水晶貴石細工(山梨県)

鈴鹿墨(三重県),播州そろばん(兵庫県) 岡崎石工品(愛知県)

奈良筆(奈良県),雲州そろばん(島根県) 若狭めのう細工(福井県)

赤間硯(山口県) 京石工芸品(京都府)

出雲石燈ろう(島根県/鳥取県)

人形 その他工芸品

駿河雛具,駿河雛人形(静岡県) 京扇子,京うちわ,京表具(京都府)

宮城伝統こけし(宮城県) 江戸からかみ,江戸切子(東京都)

江戸木目込人形(埼玉県/東京都) 甲州印伝,甲州手彫印章(山梨県)

京人形(京都府) 天童将棋駒(山形県),房州うちわ(千葉県)

博多人形(福岡県) 尾張七宝(愛知県),岐阜提灯(岐阜県)

播州毛鈎(兵庫県),福山琴(広島県)

丸亀うちわ(香川県),八女提灯(福岡県)

工芸用具・材料

伊勢形紙(三重県),庄川挽物木地(害山県)

金沢箔(石川県)

(出所)向上。

付表

ー4

家内

工業

とマ

ニュ

ファ

クチ

ュア

の比

較(

図解

)

(家工

業)

(マ

ニュ

ファ

クチ

ュア

)内

家内

工業

問屋

制家

内工

業資

本制

家内

工業

工場

制手

工業

(分散マニュファクチュア)

(マニュファクチュア)

技神f

手工

業手

工業

手工

業手

工業

労働

手段

自分

の道

具自

分の

道具

自分

の道

具工

場の

道具

と自

分の

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生原

材料

自家

産自

家産

・問

屋経

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事業

主=

資本

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貸(

含半

工場

主=

資本

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製品)

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自分

の家

自分

の家

自分

の家

(労

働,

家族

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労働

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,ー

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)

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働(

自己

労働

)家

内労

働(

自己

労働

)家

内労

働(

事業

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付随

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工場

労働

(従

事者

=他

人労

働)

程工

程の

一部

=社

会的

分業

の一

環)

(工場内,分業+協業)

(社

会性

)自

給の

ため

の生

産労

働資

本(

商人

資本

)制

的家

内労

働近

代的

家内

労働

(=

機械

制大

工資

本主

義的

賃金

労働

業)

の〈

外業

部〉

とし

て編

成さ

ることも

流商

品生

産余

剰=

販売

用商

品の

生産

販売

用商

品の

生産

事業

主(

資本

家の

下請

け生

産)

工場

主=

資本

家に

よる

商品

生産

通第

1次

取得

直接

的生

産者

(手

工業

者)

問屋

=商

人資

本(

買占

め)

事業

主(

資本

家に

よる

買取

り)

工場

主=

資本

家(

本来

的取

得)

小商

品生

産(

自家

用)

小商

品生

産(

販売

用商

品)

資本

制的

商品

生産

(補

完的

)資

本制

的商

品生

産(

手工

業技

術に

依拠

した

産業

資本

の生

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態)

経済

的特

質自

家用

から

販売

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生産

手工

業者

は,

前貸

制度

を介

した

下請

け制

を介

した

実質

的事

業主

工場

主(

=資

本)

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労働

の関

問屋

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請(

特定

問屋

に隷

属)

=資

本家

(製

造問

屋)

対賃

労働

関係

小農

の小

家族

経営

小経

営事

業主

を介

した

分業

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業工

場内

の分

業と

協業

独立

自営

農民

等の

小生

産者

の自

問屋

に対

して

実質

的賃

労働

者事

業主

に対

して

実質

的賃

金労

働者

賃金

労働

備考

己労

販売

差額

加工

賃(

販売

差額

)加

工賃

(下

請け

代金

)賃

金労

働(

賃金

)

(出所)r岩

波日本史辞典J1999

年,r経

済学辞典

j岩波書庖,第

3版2∞

0年,

r大月経済学辞典J1979年,他を参照して作成。

「 叫 常 思 い 門 川 附 位 闘 精 3 論 部 品 W D d 峠 湘 同 市 山 一 戸