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bFGF製剤による創傷治癒の最新知見―再生医療における治療の展望―
bFGF(basic Fibroblast Growth Factor)製
剤(一般名:トラフェルミン,商品名:フィブラス
ト ®スプレー)は,線維芽細胞増殖作用,血管新生
作用,肉芽形成促進作用を有する創傷治癒促進剤
であり,褥瘡や難治性潰瘍,熱傷創などに対する
効果が報告され,QOWH(Quality of Wound
Healing:創傷治癒の質)向上への寄与が期待され
ている。
ここでは,第37回日本創傷治癒学会における
基礎・臨床両面の報告から,bFGF製剤の最新知
見を探るとともに,治療抵抗性末梢動脈疾患
(PAD)に対する再生医療への応用をテーマに開
かれたランチョンセミナーの内容を紹介する。
座長:東邦大学病理学講座教授 石井 壽晴先生演者:日本医科大学大学院器官機能病態内科学分野准教授/日本医科大学付属病院再生医療科部長 宮本 正章先生
ランチョンセミナー1
(2006年4月作成)06X
●効能・効果、用法・用量、禁忌、使用上の注意等詳細は、添付文書をご参照ください。
褥瘡・皮膚潰瘍治療剤 指定医薬品・処方せん医薬品(注)
トラフェルミン(遺伝子組換え)製剤 薬価基準収載
(注)注意―医師等の処方せんにより使用すること
2008年6月作成FGF111-08F-10-MT1
治療抵抗性末梢動脈疾患(PAD)に対する再生医療を応用した総合的治療戦略
東邦大学病理学講座准教授 赤坂 喜清先生 (第37回日本創傷治癒学会学会賞 受賞)
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」S6-02
Basic fibroblast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序
東京医科大学八王子医療センター形成外科教授 菅又 章先生
主題演題3-1 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-01
人工真皮とbFGFを用いた爪床欠損の治療
東京都立広尾病院形成外科 藤原 修先生
主題演題3-2 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-06
新鮮Ⅱ度熱傷創に対するbFGF製剤初期投与の効果
カレスサッポロ時計台記念病院形成外科・創傷治癒センター 小浦場 祥夫先生
主題演題4 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S4-04
bFGF製剤使用による小児深達性Ⅱ度熱傷の瘢痕肥厚化予防
関西医科大学形成外科学講座助教 覚道 奈津子先生 (第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞 受賞)
主題演題5-2 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S5-06
ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響
札幌医科大学皮膚科准教授 小野 一郎先生
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」基調講演
難治性潰瘍治療のための分子生物学的戦略と再生治療への展望
第37回日本創傷治癒学会 記録集
bFGF製剤による創傷治癒の最新知見―再生医療における治療の展望―
第37回日本創傷治癒学会学会賞・研究奨励賞
第37回日本創傷治癒学会学会賞
第37回日本創傷治癒学会学会賞・研究奨励賞
線維芽細胞では生存シグナル伝達キナーゼAktに異なる活
性がみられる,②この過程でAktの活性化が消失した線維
芽細胞ではアポトーシスが誘導される―と考えられた。
図1.NF-1細胞とGF-2細胞におけるAkt-1蛋白の発現量
経過時間 48時間目 96時間目
bFGF - + - +
Akt-1
β-アクチン
※画像解析ソフトを用いてバンドの濃度・面積を数値化
NF-1 GF-2
48時間目 96時間目
- + - +
200
100
0
300(%) (%)
Akt-1/β-アクチン
200
100
0
300
図2.bFGFを投与した縫合創では有意にAkt-1蛋白の発現が減少
Akt-1
β-アクチン
対照創 bFGF投与創
対照創(n=5) bFGF投与創(n=5) * p<0.05 vs. 対照創
110
70
30
0
150
Akt-1/β-アクチン
*
(%)
※画像解析ソフトを用いてバンドの濃度・面積を数値化
東邦大学病理学講座准教授の赤坂喜清先生は,今学会において「Basic fibro-blast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序」の研究成果により,第37回日本創傷治癒学会学会賞を受賞された。
第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞関西医科大学形成外科学講座助教の覚道奈津子先生は,今学会において「ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響」の研究成果により,第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞を受賞された。
bFGF(basic Fibroblast Growth Factor)製
剤(一般名:トラフェルミン,商品名:フィブラス
ト ®スプレー)は,線維芽細胞増殖作用,血管新生
作用,肉芽形成促進作用を有する創傷治癒促進剤
であり,褥瘡や難治性潰瘍,熱傷創などに対する
効果が報告され,QOWH(Quality of Wound
Healing:創傷治癒の質)向上への寄与が期待され
ている。
ここでは,第37回日本創傷治癒学会における
基礎・臨床両面の報告から,bFGF製剤の最新知
見を探るとともに,治療抵抗性末梢動脈疾患
(PAD)に対する再生医療への応用をテーマに開
かれたランチョンセミナーの内容を紹介する。
2007年12月6日(木)・7日(金) 横浜ロイヤルパークホテル
セラピーメディカル)を設立し,マゴットセラピーシステムの普
及を目指している。
これらのストラテジーにより,前医で下肢切断の適応,もし
くは治療法がないと診断された治療抵抗性PADの下肢症例
64例中56例(87.5%)において,下肢切断を回避し,自力歩
行による退院が可能となった。そして今後とも,形成外科を
はじめとした他科と連携して,治療抵抗性PAD患者に対す
る診療体制を整えることが重要であると考える。1)Shigematsu H et al: Thera Res 13: 4099-4109,1992
3
(TcPO2)による虚血の評価とともに,感染制御,血流改善,
創傷治癒促進,疼痛管理,術後管理を治療方針の5つの柱
とし,これらを同時に行うことを重視している。
治療抵抗性PADの治療戦略の1つとして,患者の骨髄液
を採取し,骨髄細胞を分離・濃縮して下肢骨格筋に注射す
る自己骨髄幹細胞移植(BMCI)による血管新生療法がある。
われわれの施設において,先進医療の承認のもとに
FontaineⅣ度34例を含む38例(下肢症例のみ)に施行した
結果,自立歩行で退院しえた有効例は31例(88.6%),2年以
内の患肢大切断は4例(11.4%),3例が他病死であった。
一方で現在,徐放化bFGFハイドロゲル筋注による血管新
生療法の多施設共同臨床研究が進行している。これは,創
傷治癒過程において血管新生・肉芽形成促進作用が報告さ
れているbFGF製剤をゼラチンハイドロゲルに添加して徐放
化し,対象虚血部位に筋注するもので,いわば注射のみで血
管新生を図る治療法である。本治療法とBMCIを比較検討
した結果,いずれも加療後4週間の経過中に有害事象を認
めず,疼痛,6分間歩行,TcPO2なども両群ともに有意な改
善を認めた(図2)。血中bFGFはいずれの時点においても
検出されなかったことから,本治療法は他臓器への影響が少
なく,かつ有効な血管新生療法の1つの手段となる可能性が
あると示唆された。
また,医療用無菌ウジの壊死組織除去・殺菌・肉芽形成促
進作用を臨床応用したマゴットセラピーを32例に施行した結
果,有効率は多剤耐性菌による複合感染例を含め87.5%を
示した。われわれはバイオベンチャー企業(株式会社バイオ
2
座長 東邦大学病理学講座教授
石井 壽晴先生
末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)とは,
末梢動脈が狭窄・閉塞し,四肢末梢に循環障害を来した病
態を指す。重症かつ治療抵抗性のPADでは,下肢大切断
〔大�切断(AKA)もしくは下�切断(BKA)〕のみならず心血
管イベント発症のリスクが高まることが知られている。われ
われの施設では,重症かつ治療抵抗性のPAD患者に対し,
再生医療を応用した総合的治療戦略を講ずることにより
86.7%の症例において下肢切断を回避し,自立歩行による
退院を可能にしたので報告する。
PADは間歇性跛行,安静時疼痛などの下肢症状を特徴と
し,臨床分類は主にFontaine分類が用いられる。本邦にお
ける1992年の報告では,FontaineⅡ度(間歇性跛行)が
72.0%を占めたが1),最近ではより重篤なⅢ度(安静時疼痛),
Ⅳ度(潰瘍・壊疽)患者の増加が懸念されている。PADは虚
血性心疾患,脳梗塞の合併頻度が高く,重症下肢虚血を有
する症例の5年生存率は約40%と報告されている(図1)。
したがって,PADの診療に際しては,局所症状のみにとらわ
れることなく全身血管病の一部分症として認識し,いわば
「木を見て森を見る」姿勢が求められる。
われわれの施設では,治療抵抗性PAD患者に対し,下肢
切断の回避に努め,疼痛を除き,自立歩行で帰宅することを
エンドポイントとしてきた。そのためには,足関節/上腕血圧
比(ABI),99mTc-tetrofosminシンチグラフィ,経皮酸素分圧
治療抵抗性PADに新たな展望を開くbFGF筋注による血管新生療法
今回,われわれは爪床の外傷性欠損に対して人工真皮と
bFGF製剤を用いて爪の再生を試み,どの程度の欠損まで
爪の再生が可能であるのかを検討した。また,爪母部での欠
損であっても爪の再生が可能であるかについても検討した。
処置としては,まず,爪床欠損部を洗浄したのちに人工真
皮を貼付して周囲を縫合,3~5日後にシリコン膜を除去し
てbFGF製剤を噴霧後,ワセリン基剤の軟膏を塗布してポリ
エチレンフィルムで覆う閉鎖療法を行い,週2~3回の頻度
で創が閉鎖するまで同様の処置を行った。
こうした処置により,小範囲の爪床欠損であれば爪の変形
をほとんど生じなかった。爪床の欠損や挫滅の程度が大き
くなるにつれ,爪変形と爪長の短縮が生じやすくなるが,爪
床全欠損であっても爪母が温存されていれば爪長の短縮は
残すものの爪の再生は可能であった(図1)。
一方,爪母部�奪性損傷例や横切断例といった欠損例に
ついても,爪母が残っていれば理論的には爪の再生は可能
である。しかし,爪は爪母から水平方向に再生されるため,
人工真皮を貼付しただけでは良好な爪の再生は期待できな
い。こうした場合,何らかの皮弁で指腹を再建し,爪床全欠
損の状態にすることで,良好な爪の再建が可能であると推察
され,この考えに基づき,臨床的治療を行った。
爪母部�奪性損傷例に対しては,逆行性指動脈皮弁によ
り露出末梢骨の掌側を覆って爪床全欠損の状態にし,末節
骨背側に人工真皮を貼付し,bFGF製剤を投与することで良
好な爪の再生が可能であった。また,爪母部横切断例につ
いても,尺側の神経血管柄付き島状前進皮弁(step-advance
method)で指腹の軟部組織を再建し,背側に人工真皮を貼
付し,bFGF製剤を投与することで良好な爪の再生を認めた
(図2)。
以上のことから,爪母さえ残っていれば爪床全欠損であっ
ても人工真皮とbFGF製剤により爪は再生され,爪母部切断
例においても何らかの皮弁で指腹を再建し,病態を爪床全
欠損の状態にさせることで人工真皮とbFGF製剤により良好
な爪の再建が可能であった。
図1.PAD患者の生存率(TASCⅡ)
対照群(非PAD)
間歇性跛行群 重症下肢虚血群
40
0
80
20
60
100
生存率
観察期間
(年)
(%)
5 10 15
(Dormandy J: 22th World Congress of the International Union of Angiology, 2006)
図2.TcPO2による虚血の評価
40
20
0
60
80
bFGF
投与前
29.0±12.8
投与4週後
53.8±7.4
mmHg
p<0.05 31.3±17.9
p<0.05
40
20
0
60
80
BMCI
投与前
13.1±15.4
投与4週後
mmHg
(Takagi G et al: Abstracts From Scientific Sessions: Circulation 114: II_446-II_447, 2006)
図1.爪床2/3を欠損した左母指に人工真皮とbFGF製剤を使用
初診時 4日後
3週後 5週後 7週後
図2.爪母部を切断した右中指に指腹を神経血管柄付き島状前進皮弁で再建後,人工真皮とbFGF製剤を使用
初診時 5日後 2週後
3か月後4週後
ランチョンセミナー1
治療抵抗性末梢動脈疾患(PAD)に対する再生医療を応用した総合的治療戦略
演者 日本医科大学大学院器官機能病態内科学分野准教授日本医科大学付属病院再生医療科部長
宮本 正章先生 主題演題3-1 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-01
人工真皮とbFGFを用いた爪床欠損の治療
東京医科大学八王子医療センター形成外科教授
菅又 章先生
治療戦略の組み合わせと他科との連携により治療抵抗性PADに対する診療体制の構築を
人工真皮とbFGF製剤を用いることで爪母部欠損例でも爪の再生は可能
セラピーメディカル)を設立し,マゴットセラピーシステムの普
及を目指している。
これらのストラテジーにより,前医で下肢切断の適応,もし
くは治療法がないと診断された治療抵抗性PADの下肢症例
64例中56例(87.5%)において,下肢切断を回避し,自力歩
行による退院が可能となった。そして今後とも,形成外科を
はじめとした他科と連携して,治療抵抗性PAD患者に対す
る診療体制を整えることが重要であると考える。1)Shigematsu H et al: Thera Res 13: 4099-4109,1992
3
(TcPO2)による虚血の評価とともに,感染制御,血流改善,
創傷治癒促進,疼痛管理,術後管理を治療方針の5つの柱
とし,これらを同時に行うことを重視している。
治療抵抗性PADの治療戦略の1つとして,患者の骨髄液
を採取し,骨髄細胞を分離・濃縮して下肢骨格筋に注射す
る自己骨髄幹細胞移植(BMCI)による血管新生療法がある。
われわれの施設において,先進医療の承認のもとに
FontaineⅣ度34例を含む38例(下肢症例のみ)に施行した
結果,自立歩行で退院しえた有効例は31例(88.6%),2年以
内の患肢大切断は4例(11.4%),3例が他病死であった。
一方で現在,徐放化bFGFハイドロゲル筋注による血管新
生療法の多施設共同臨床研究が進行している。これは,創
傷治癒過程において血管新生・肉芽形成促進作用が報告さ
れているbFGF製剤をゼラチンハイドロゲルに添加して徐放
化し,対象虚血部位に筋注するもので,いわば注射のみで血
管新生を図る治療法である。本治療法とBMCIを比較検討
した結果,いずれも加療後4週間の経過中に有害事象を認
めず,疼痛,6分間歩行,TcPO2なども両群ともに有意な改
善を認めた(図2)。血中bFGFはいずれの時点においても
検出されなかったことから,本治療法は他臓器への影響が少
なく,かつ有効な血管新生療法の1つの手段となる可能性が
あると示唆された。
また,医療用無菌ウジの壊死組織除去・殺菌・肉芽形成促
進作用を臨床応用したマゴットセラピーを32例に施行した結
果,有効率は多剤耐性菌による複合感染例を含め87.5%を
示した。われわれはバイオベンチャー企業(株式会社バイオ
2
座長 東邦大学病理学講座教授
石井 壽晴先生
末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)とは,
末梢動脈が狭窄・閉塞し,四肢末梢に循環障害を来した病
態を指す。重症かつ治療抵抗性のPADでは,下肢大切断
〔大�切断(AKA)もしくは下�切断(BKA)〕のみならず心血
管イベント発症のリスクが高まることが知られている。われ
われの施設では,重症かつ治療抵抗性のPAD患者に対し,
再生医療を応用した総合的治療戦略を講ずることにより
86.7%の症例において下肢切断を回避し,自立歩行による
退院を可能にしたので報告する。
PADは間歇性跛行,安静時疼痛などの下肢症状を特徴と
し,臨床分類は主にFontaine分類が用いられる。本邦にお
ける1992年の報告では,FontaineⅡ度(間歇性跛行)が
72.0%を占めたが1),最近ではより重篤なⅢ度(安静時疼痛),
Ⅳ度(潰瘍・壊疽)患者の増加が懸念されている。PADは虚
血性心疾患,脳梗塞の合併頻度が高く,重症下肢虚血を有
する症例の5年生存率は約40%と報告されている(図1)。
したがって,PADの診療に際しては,局所症状のみにとらわ
れることなく全身血管病の一部分症として認識し,いわば
「木を見て森を見る」姿勢が求められる。
われわれの施設では,治療抵抗性PAD患者に対し,下肢
切断の回避に努め,疼痛を除き,自立歩行で帰宅することを
エンドポイントとしてきた。そのためには,足関節/上腕血圧
比(ABI),99mTc-tetrofosminシンチグラフィ,経皮酸素分圧
治療抵抗性PADに新たな展望を開くbFGF筋注による血管新生療法
今回,われわれは爪床の外傷性欠損に対して人工真皮と
bFGF製剤を用いて爪の再生を試み,どの程度の欠損まで
爪の再生が可能であるのかを検討した。また,爪母部での欠
損であっても爪の再生が可能であるかについても検討した。
処置としては,まず,爪床欠損部を洗浄したのちに人工真
皮を貼付して周囲を縫合,3~5日後にシリコン膜を除去し
てbFGF製剤を噴霧後,ワセリン基剤の軟膏を塗布してポリ
エチレンフィルムで覆う閉鎖療法を行い,週2~3回の頻度
で創が閉鎖するまで同様の処置を行った。
こうした処置により,小範囲の爪床欠損であれば爪の変形
をほとんど生じなかった。爪床の欠損や挫滅の程度が大き
くなるにつれ,爪変形と爪長の短縮が生じやすくなるが,爪
床全欠損であっても爪母が温存されていれば爪長の短縮は
残すものの爪の再生は可能であった(図1)。
一方,爪母部�奪性損傷例や横切断例といった欠損例に
ついても,爪母が残っていれば理論的には爪の再生は可能
である。しかし,爪は爪母から水平方向に再生されるため,
人工真皮を貼付しただけでは良好な爪の再生は期待できな
い。こうした場合,何らかの皮弁で指腹を再建し,爪床全欠
損の状態にすることで,良好な爪の再建が可能であると推察
され,この考えに基づき,臨床的治療を行った。
爪母部�奪性損傷例に対しては,逆行性指動脈皮弁によ
り露出末梢骨の掌側を覆って爪床全欠損の状態にし,末節
骨背側に人工真皮を貼付し,bFGF製剤を投与することで良
好な爪の再生が可能であった。また,爪母部横切断例につ
いても,尺側の神経血管柄付き島状前進皮弁(step-advance
method)で指腹の軟部組織を再建し,背側に人工真皮を貼
付し,bFGF製剤を投与することで良好な爪の再生を認めた
(図2)。
以上のことから,爪母さえ残っていれば爪床全欠損であっ
ても人工真皮とbFGF製剤により爪は再生され,爪母部切断
例においても何らかの皮弁で指腹を再建し,病態を爪床全
欠損の状態にさせることで人工真皮とbFGF製剤により良好
な爪の再建が可能であった。
図1.PAD患者の生存率(TASCⅡ)
対照群(非PAD)
間歇性跛行群 重症下肢虚血群
40
0
80
20
60
100
生存率
観察期間
(年)
(%)
5 10 15
(Dormandy J: 22th World Congress of the International Union of Angiology, 2006)
図2.TcPO2による虚血の評価
40
20
0
60
80
bFGF
投与前
29.0±12.8
投与4週後
53.8±7.4
mmHg
p<0.05 31.3±17.9
p<0.05
40
20
0
60
80
BMCI
投与前
13.1±15.4
投与4週後
mmHg
(Takagi G et al: Abstracts From Scientific Sessions: Circulation 114: II_446-II_447, 2006)
図1.爪床2/3を欠損した左母指に人工真皮とbFGF製剤を使用
初診時 4日後
3週後 5週後 7週後
図2.爪母部を切断した右中指に指腹を神経血管柄付き島状前進皮弁で再建後,人工真皮とbFGF製剤を使用
初診時 5日後 2週後
3か月後4週後
ランチョンセミナー1
治療抵抗性末梢動脈疾患(PAD)に対する再生医療を応用した総合的治療戦略
演者 日本医科大学大学院器官機能病態内科学分野准教授日本医科大学付属病院再生医療科部長
宮本 正章先生 主題演題3-1 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-01
人工真皮とbFGFを用いた爪床欠損の治療
東京医科大学八王子医療センター形成外科教授
菅又 章先生
治療戦略の組み合わせと他科との連携により治療抵抗性PADに対する診療体制の構築を
人工真皮とbFGF製剤を用いることで爪母部欠損例でも爪の再生は可能
鍋物にて受傷した3歳女児,熱湯にて受傷した2歳男児に,
いずれも軟膏療法と併用して受傷翌日からbFGF製剤を投
与した結果,治癒まで1か月前後を要したにもかかわらず,6
か月後にはほとんどのDDB領域が肥厚性瘢痕化することは
なかった(図1)。熱湯にて受傷し,他院に1週間外来通院し
たのち,当院にてbFGF製剤を投与した2歳女児についても,
DDB領域に軽い色素沈着を残すのみで肥厚性瘢痕はほぼ
抑制された(図2)。
最近の基礎研究から,小児DDBにbFGF製剤を早期使用
することによって,肥厚性瘢痕が著明に抑制される背景を示
唆する報告として,切創の真皮内にbFGFを注射すると,
bFGFに誘導される線維芽細胞のアポトーシスにより創の過
剰な肉芽形成が抑制され,瘢痕化を抑えた治癒を促進する
54
われわれは,新鮮Ⅱ度熱傷創の受傷早期深度判定の補助
手段として,創面の拡大像をリアルタイムに観察できるビデオ
マイクロスコープ(Hi-Scope®)を用いている。Hi-Scope®所見
により,創面をType 1(真皮乳頭残存),Type 2(真皮毛細血
管血流あり),Type 3(真皮毛細血管攣縮もしくは血流停滞),
Type 4(凝固変性)に分類している(図1)。
Type 3症例は深達性Ⅱ度熱傷(DDB)に移行する可能性
が高いが,培養表皮移植術により浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)同
様に治癒に導くことができる。しかし,培養表皮移植術を実
施できる施設は限られているため,こうした症例に対する
bFGF製剤の受傷後早期投与の効果を検討した。
対象は受傷後48時間以内に受診したⅡ度熱傷創患者のう
ち,pin prick testが陰性でHi-Scope®所見がType 3の症例と
した。水疱を除去し,受傷後48時間以内にbFGF製剤を5
回噴霧後に白色ワセリン塗布,シリコンガーゼで保護した
bFGF製剤投与群10例と,bFGF製剤を用いずに処置した対
照群10例において,これらの処置を上皮化まで連日施行し,
上皮化までの日数を比較検討した。その結果,上皮化に要
した平均日数は,bFGF製剤投与群16.2日,対照群22.4日で
あり,bFGF製剤投与により上皮化までの日数が有意(p<0.05)に短縮された(図2)。
Jacksonらによれば,DDBは真皮毛細血管の攣縮,血流
障害によって真皮表層が虚血に陥ることで完成するとされて
いるため1),虚血が可逆的な段階で治療介入することにより,
早期治癒または瘢痕防止につながると考えられる。われわ
れは凍結保存同種培養表皮移植を行った採皮創において,
滲出液中にbFGFのみが有意に増加することを認めている。
このことは新鮮Ⅱ度熱傷創においてbFGF製剤が有効であ
る可能性を示唆している。
今回,Ⅱ度Type 3熱傷創の上皮化に要した日数はbFGF製
剤投与群で16.2日と凍結保存同種培養表皮術の平均7.2日に
は及ばないものの,従来治療の22.4日に対し有意に治癒期間
が短縮した。以上のことから,培養表皮移植術を施行できない
施設においてはbFGF製剤の投与は有用であると考えられた。1)Jackson DM: J Trauma 9: 839-862,1969
東京都立広尾病院形成外科医長 副島一孝先生東京女子医科大学形成外科主任教授 野�幹弘先生
bFGF製剤は,DDBに対する早期投与において,肥厚性
瘢痕抑制作用と上皮化促進作用が確認されており,創傷治
癒の質(QOWH)の向上の可能性が注目されている。今回は,
小児における体幹・上肢の比較的広範囲のⅡ度熱傷で,受
傷早期からbFGF製剤を投与した3症例の経過を供覧すると
ともに,最近のbFGFに関する報告を参考に,QOWHの向
上の機序についても若干の考察を加えたい。
われわれは,多分化能を有する間葉系幹細胞である脂肪
由来幹細胞(ASCs)に着目して組織再生を試みている1)。今
回,線維芽細胞や骨髄由来間葉系幹細胞などに影響を与え
る増殖因子とされているFGF-2(bFGF)が,ASCsにおける
増殖と脂肪分化に与える影響について検討した。
ASCsをDMEM培地で7日間増殖させ(増殖期),その後
14日間脂肪分化培地にて培養し(脂肪分化期),期間別の
bFGF(10ng/mL)添加,無添加によって分類した(Group
1:増殖期・脂肪分化期ともにbFGF無添加,Group 2:増殖
期のみにbFGFを添加,Group 3:脂肪分化期のみにbFGF
という報告がある1)。
また,bFGFは幹細胞の未分化状態の維持・増殖に最も重
要な因子であること2),分化した筋線維芽細胞を線維芽細胞
に脱分化させる作用があることが知られている3)。さらに,I
型コラーゲン存在下にケラチノサイトの遊走を刺激する,
bFGFの上皮化促進作用4),強力な血管新生因子としての作
用,過剰な肉芽形成を抑制する作用などが指摘されている。
Ⅱ度熱傷創に対する早期からのbFGF製剤の投与は,こう
した種々の機序を介したQOWHの向上が期待できると考え
られる。1)Akasaka Y et al: J Pathol 203: 710-720,20042)Xu RH et al: Nat Methods 2: 185-190,20053)Maltseva O et al: Invest Ophthalmol Vis Sci 42: 2490-2495,
20014)Sogabe Y et al: Wound Repair Regen 14: 457-462,2006
図1.Hi-Scope®所見と上皮化日数
Type 1 : 真皮乳頭残存
5.3±1.5日 Type 2 : 真皮毛細血管血流(+)
10.0±1.2日
Type 3 : 血管攣縮 血流停滞 22.4±7.2日
Type 4 : 凝固変性 36.5±7.8日 (mean ±S.D.)
(磯野伸雄ほか: Hi-Scopeを用いた熱傷深度判定法: 熱傷 24: 11-18, 1998)
図2.上皮化に要した日数
20
10日数
(日)
bFGF製剤投与群 (n=10)
bFGF製剤非投与群 (n=10)
p<0.05 mean±S.D.
16.2±4.1 22.4±7.2
図1.3歳女児熱傷例にbFGF製剤を投与 図2.2歳女児熱傷例にbFGF製剤を投与
主題演題3-2 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-06
新鮮Ⅱ度熱傷創に対するbFGF製剤初期投与の効果
東京都立広尾病院形成外科
藤原 修先生
bFGF製剤投与により従来治療に比べて上皮化までの日数が有意に短縮
主題演題4 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S4-04
bFGF製剤使用による小児深達性Ⅱ度熱傷の瘢痕肥厚化予防
カレスサッポロ時計台記念病院形成外科・創傷治癒センター
小浦場 祥夫先生
QOWHの向上を期待できるbFGF製剤
主題演題5-2 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S5-06
ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響
関西医科大学形成外科学講座助教
覚道 奈津子先生(第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞 受賞) bFGFはASCsの増殖と脂肪分化に関与
受傷日 受傷1週間後
受傷6か月後
受傷6か月後
鍋物にて受傷した3歳女児,熱湯にて受傷した2歳男児に,
いずれも軟膏療法と併用して受傷翌日からbFGF製剤を投
与した結果,治癒まで1か月前後を要したにもかかわらず,6
か月後にはほとんどのDDB領域が肥厚性瘢痕化することは
なかった(図1)。熱湯にて受傷し,他院に1週間外来通院し
たのち,当院にてbFGF製剤を投与した2歳女児についても,
DDB領域に軽い色素沈着を残すのみで肥厚性瘢痕はほぼ
抑制された(図2)。
最近の基礎研究から,小児DDBにbFGF製剤を早期使用
することによって,肥厚性瘢痕が著明に抑制される背景を示
唆する報告として,切創の真皮内にbFGFを注射すると,
bFGFに誘導される線維芽細胞のアポトーシスにより創の過
剰な肉芽形成が抑制され,瘢痕化を抑えた治癒を促進する
54
われわれは,新鮮Ⅱ度熱傷創の受傷早期深度判定の補助
手段として,創面の拡大像をリアルタイムに観察できるビデオ
マイクロスコープ(Hi-Scope®)を用いている。Hi-Scope®所見
により,創面をType 1(真皮乳頭残存),Type 2(真皮毛細血
管血流あり),Type 3(真皮毛細血管攣縮もしくは血流停滞),
Type 4(凝固変性)に分類している(図1)。
Type 3症例は深達性Ⅱ度熱傷(DDB)に移行する可能性
が高いが,培養表皮移植術により浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)同
様に治癒に導くことができる。しかし,培養表皮移植術を実
施できる施設は限られているため,こうした症例に対する
bFGF製剤の受傷後早期投与の効果を検討した。
対象は受傷後48時間以内に受診したⅡ度熱傷創患者のう
ち,pin prick testが陰性でHi-Scope®所見がType 3の症例と
した。水疱を除去し,受傷後48時間以内にbFGF製剤を5
回噴霧後に白色ワセリン塗布,シリコンガーゼで保護した
bFGF製剤投与群10例と,bFGF製剤を用いずに処置した対
照群10例において,これらの処置を上皮化まで連日施行し,
上皮化までの日数を比較検討した。その結果,上皮化に要
した平均日数は,bFGF製剤投与群16.2日,対照群22.4日で
あり,bFGF製剤投与により上皮化までの日数が有意(p<0.05)に短縮された(図2)。
Jacksonらによれば,DDBは真皮毛細血管の攣縮,血流
障害によって真皮表層が虚血に陥ることで完成するとされて
いるため1),虚血が可逆的な段階で治療介入することにより,
早期治癒または瘢痕防止につながると考えられる。われわ
れは凍結保存同種培養表皮移植を行った採皮創において,
滲出液中にbFGFのみが有意に増加することを認めている。
このことは新鮮Ⅱ度熱傷創においてbFGF製剤が有効であ
る可能性を示唆している。
今回,Ⅱ度Type 3熱傷創の上皮化に要した日数はbFGF製
剤投与群で16.2日と凍結保存同種培養表皮術の平均7.2日に
は及ばないものの,従来治療の22.4日に対し有意に治癒期間
が短縮した。以上のことから,培養表皮移植術を施行できない
施設においてはbFGF製剤の投与は有用であると考えられた。1)Jackson DM: J Trauma 9: 839-862,1969
東京都立広尾病院形成外科医長 副島一孝先生東京女子医科大学形成外科主任教授 野�幹弘先生
bFGF製剤は,DDBに対する早期投与において,肥厚性
瘢痕抑制作用と上皮化促進作用が確認されており,創傷治
癒の質(QOWH)の向上の可能性が注目されている。今回は,
小児における体幹・上肢の比較的広範囲のⅡ度熱傷で,受
傷早期からbFGF製剤を投与した3症例の経過を供覧すると
ともに,最近のbFGFに関する報告を参考に,QOWHの向
上の機序についても若干の考察を加えたい。
われわれは,多分化能を有する間葉系幹細胞である脂肪
由来幹細胞(ASCs)に着目して組織再生を試みている1)。今
回,線維芽細胞や骨髄由来間葉系幹細胞などに影響を与え
る増殖因子とされているFGF-2(bFGF)が,ASCsにおける
増殖と脂肪分化に与える影響について検討した。
ASCsをDMEM培地で7日間増殖させ(増殖期),その後
14日間脂肪分化培地にて培養し(脂肪分化期),期間別の
bFGF(10ng/mL)添加,無添加によって分類した(Group
1:増殖期・脂肪分化期ともにbFGF無添加,Group 2:増殖
期のみにbFGFを添加,Group 3:脂肪分化期のみにbFGF
という報告がある1)。
また,bFGFは幹細胞の未分化状態の維持・増殖に最も重
要な因子であること2),分化した筋線維芽細胞を線維芽細胞
に脱分化させる作用があることが知られている3)。さらに,I
型コラーゲン存在下にケラチノサイトの遊走を刺激する,
bFGFの上皮化促進作用4),強力な血管新生因子としての作
用,過剰な肉芽形成を抑制する作用などが指摘されている。
Ⅱ度熱傷創に対する早期からのbFGF製剤の投与は,こう
した種々の機序を介したQOWHの向上が期待できると考え
られる。1)Akasaka Y et al: J Pathol 203: 710-720,20042)Xu RH et al: Nat Methods 2: 185-190,20053)Maltseva O et al: Invest Ophthalmol Vis Sci 42: 2490-2495,
20014)Sogabe Y et al: Wound Repair Regen 14: 457-462,2006
図1.Hi-Scope®所見と上皮化日数
Type 1 : 真皮乳頭残存
5.3±1.5日 Type 2 : 真皮毛細血管血流(+)
10.0±1.2日
Type 3 : 血管攣縮 血流停滞 22.4±7.2日
Type 4 : 凝固変性 36.5±7.8日 (mean ±S.D.)
(磯野伸雄ほか: Hi-Scopeを用いた熱傷深度判定法: 熱傷 24: 11-18, 1998)
図2.上皮化に要した日数
20
10日数
(日)
bFGF製剤投与群 (n=10)
bFGF製剤非投与群 (n=10)
p<0.05 mean±S.D.
16.2±4.1 22.4±7.2
図1.3歳女児熱傷例にbFGF製剤を投与 図2.2歳女児熱傷例にbFGF製剤を投与
主題演題3-2 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-06
新鮮Ⅱ度熱傷創に対するbFGF製剤初期投与の効果
東京都立広尾病院形成外科
藤原 修先生
bFGF製剤投与により従来治療に比べて上皮化までの日数が有意に短縮
主題演題4 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S4-04
bFGF製剤使用による小児深達性Ⅱ度熱傷の瘢痕肥厚化予防
カレスサッポロ時計台記念病院形成外科・創傷治癒センター
小浦場 祥夫先生
QOWHの向上を期待できるbFGF製剤
主題演題5-2 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S5-06
ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響
関西医科大学形成外科学講座助教
覚道 奈津子先生(第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞 受賞) bFGFはASCsの増殖と脂肪分化に関与
受傷日 受傷1週間後
受傷6か月後
受傷6か月後
76
近年,創傷治癒の分子生物学的側面が明らかになるととも
に,細胞増殖因子製剤が使用できるようになった。細胞増殖
因子であるbFGF製剤と被覆材を併用することで,短期間で
良好な肉芽や創底を形成し,比較的大きな創であっても閉
鎖・治癒が可能である。今回は難治性潰瘍に対する分子生
物学的戦略について述べるとともに,われわれが手がけた遺
伝子導入による皮膚再生治療の試みについても報告する。
Wnt-3(細胞間シグナル遺伝子)を発現させたうえでラットに
移植したところ,胎生期と同様に毛�脂腺系が発生すること
が明らかになった(図2)。本研究は幹細胞を使用しなくても
morphogen刺激と制御などにより皮膚付属器の形成が可能
であることを示した点で画期的であり,将来の創傷治療の概
念を大きく変えうると考えている。今後の皮膚再生治療につ
いては,コストとベネフィットを含めて十分に検討を行い,臨
床応用に向けた努力を継続して,将来の難治性潰瘍治療に
貢献したい。
な潰瘍の場合は移植後2週目にmesh skin graftによるover
graftingを行う(図1)。われわれの検討によれば,糖尿病や
膠原病,血管障害に続発する下�潰瘍に対しては,被覆材
に加えてbFGF製剤の併用を積極的に考慮すべきとする結
果を得ている。これにより,迅速な創の閉鎖のみならず,治
癒後の瘢痕化を軽減し,創の収縮をも制御できる可能性が
ある。
また,われわれは皮膚組織再生についての新たな試みに
取り組んでいる。従来,毛�脂腺系は胎生期に作り出され,
その後は再生しないとされてきた。しかし,コラーゲンスポン
ジにbFGFを添加し,遺伝子導入でBMP-2(骨形成因子),
難治性潰瘍の背景には,加齢や基礎疾患,低栄養,炎症
性サイトカインの過剰産生,細胞増殖因子・サイトカインの減
少などが存在し,正常な創傷治癒機構が破綻した病態と考
えられる。こうした場合,単に創を湿潤環境に保つのみでは
不十分であり,全身状態の改善に加えて創傷治癒を促進す
る薬剤の投与が効果的である。
具体的には,壊死組織を除去して創部にbFGF製剤を噴
霧したのち,bFGF製剤を噴霧した人工真皮を貼付固定し,
以後は同様の治療を完全に上皮化するまで継続する。大き
正常創傷治癒過程における線維芽細胞のアポトーシスの
機序を解明することは,肥厚性瘢痕の病態ならびに抑制の
機序を解明するうえできわめて重要と考えられている。われ
われはこれまでにbFGF投与創における筋線維芽細胞のア
ポトーシス増加と創収縮の抑制を報告してきたが,今回は
bFGFの直接的なアポトーシス誘導能をin vitro,in vivoで解析した。
ラット縫合創の肉芽組織から4種類の線維芽細胞(GF-1,2,
3,4),正常皮膚から2種類の線維芽細胞(NF-1,2)を樹立し
た。これらの線維芽細胞をトランスフォーミング増殖因子
(TGF)-�1で培養し,その後bFGFのみを添加した結果,GF-
2,3において48時間目と96時間目caspase-3の活性化による
アポトーシスの増加が確認された。このことから,bFGFは肉
芽組織由来の線維芽細胞に対し,強いアポトーシス誘導能を
有することが示唆された。アポトーシスはJNKなどを介した細
胞死シグナルによって誘導される一方,Akt,ERKなどを介し
た生存シグナルの積極的な関与により抑制される。そこで,
Akt蛋白の発現性を上述の実験系において解析した結果,
bFGF添加後,NF-1ではAkt-1蛋白発現が増加していたが,
GF-2においてはその発現が減少していた(図1)。
bFGF添加後のAktの活性化について,リン酸化を指標に
解析したところ,NF-1では経時的にリン酸化が認められるの
に対し,GF-2では消失していた。なお,bFGF添加後のERK
についてはNF-1,GF-2のいずれにおいてもリン酸化が認め
られた。この結果を受けて,実際のラット縫合創において検
討したところ,bFGF投与創では対照に比較して有意にAkt-1
蛋白の発現が減少していた(図2)。
以上の結果から,①TGF-�1で処理し,bFGFを投与した
を添加,Group 4:増殖期・脂肪分化期ともにbFGF添加)。
MTT Assayによる増殖作用の検討では,増殖期において
bFGF添加群の細胞増殖が促進しており,脂肪分化期14日目
では,増殖期にbFGFを添加したGroup 2,4で細胞増殖が
促進していた。また,脂肪分化度についてはOil red O染色,
GPDH活性測定,脂肪分化マーカー(PPAR�,C/EBP�,
GLUT4)発現測定にて検討した。Oil red O染色ではGroup2,
4の脂肪分化が促進し,GPDH活性はGroup2,4において促
進,PPAR�,GLUT4は,Group1に比べGroup2でより多く発
現していた(図1)。
脂肪分化の誘導および脂肪分化特異的遺伝子の発現は,
PPAR�とC/EBP�の発現維持によって引き起こされること
が知られている。そこで,増殖期のbFGF添加群,無添加群
におけるPPAR�・C/EBP�の発現を調べたところ,脂肪分
化誘導を行わなくても,bFGF添加によりASCsのPPAR�発
現が促進していた。なお,C/EBP�の発現促進は認められな
かった。
以上の結果より,bFGFはASCsの増殖のみならず脂肪分
化も促進することが示唆された(図2)。ASCsの再生医療応
用において,脂肪分化誘導の前にbFGFを用いることにより
効率的に脂肪分化が行われる可能性が考えられる。1)Kakudo N et al: J Biomed Mater Res A 84: 191-197,2008
図1.bFGF製剤と人工真皮の併用により治療した下�潰瘍 図2.bFGFを添加したBMP-2+Wnt-3遺伝子治療により再生した毛嚢脂腺系組織(治療後16週目)
図1.脂肪分化期(14日目)におけるGPDH活性と,PPARγ,GLUT4の発現
対照群 Group 1 Group 2
対照群 Group 1 Group 2 Group 3 Group 4
対照群 Group 1Group 2
* *
6
10
4
2
0
8
12
PPARγ発現
600
1000
400
200
0
800
1200
(U/mg protein)
GPDH活性
100
140
80
60
40
20
0
120
160
GLUT4発現
( * p<0.05)
(Kakudo N et al: Biochem Biophys Res Commun 359: 239-244, 2007)
図2.増殖期bFGF添加群における脂肪分化度
増殖期(7日間) 脂肪分化期(14日間) 脂肪分化
基礎媒体(DMEM, 10% FBS, 1% 抗生物質/抗真菌薬)
誘発媒体(DMEM, 10% FBS 0.5mM BMX, 1μM デキサメタゾン, 10μM インスリン, 200μM インドメタシン, 1% 抗生物質/1% 抗真菌薬)
対照群
Group 1
Group 2 bFGF
Group 3 bFGF
Group 4
-
+
+++
+
++bFGF bFGF
(Kakudo N et al: Biochem Biophys Res Commun 359: 239-244, 2007より作図)
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」基調講演
難治性潰瘍治療のための分子生物学的戦略と再生治療への展望
札幌医科大学皮膚科准教授
小野 一郎先生難治性潰瘍治療の到達点と将来展望
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」S6-02
Basic fibroblast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序
東邦大学病理学講座准教授
赤坂 喜清先生(第37回日本創傷治癒学会学会賞 受賞)
bFGFによるアポトーシスにAktが関与
治療前 壊死組織除去
2週後
4か月後
300μm
76
近年,創傷治癒の分子生物学的側面が明らかになるととも
に,細胞増殖因子製剤が使用できるようになった。細胞増殖
因子であるbFGF製剤と被覆材を併用することで,短期間で
良好な肉芽や創底を形成し,比較的大きな創であっても閉
鎖・治癒が可能である。今回は難治性潰瘍に対する分子生
物学的戦略について述べるとともに,われわれが手がけた遺
伝子導入による皮膚再生治療の試みについても報告する。
Wnt-3(細胞間シグナル遺伝子)を発現させたうえでラットに
移植したところ,胎生期と同様に毛�脂腺系が発生すること
が明らかになった(図2)。本研究は幹細胞を使用しなくても
morphogen刺激と制御などにより皮膚付属器の形成が可能
であることを示した点で画期的であり,将来の創傷治療の概
念を大きく変えうると考えている。今後の皮膚再生治療につ
いては,コストとベネフィットを含めて十分に検討を行い,臨
床応用に向けた努力を継続して,将来の難治性潰瘍治療に
貢献したい。
な潰瘍の場合は移植後2週目にmesh skin graftによるover
graftingを行う(図1)。われわれの検討によれば,糖尿病や
膠原病,血管障害に続発する下�潰瘍に対しては,被覆材
に加えてbFGF製剤の併用を積極的に考慮すべきとする結
果を得ている。これにより,迅速な創の閉鎖のみならず,治
癒後の瘢痕化を軽減し,創の収縮をも制御できる可能性が
ある。
また,われわれは皮膚組織再生についての新たな試みに
取り組んでいる。従来,毛�脂腺系は胎生期に作り出され,
その後は再生しないとされてきた。しかし,コラーゲンスポン
ジにbFGFを添加し,遺伝子導入でBMP-2(骨形成因子),
難治性潰瘍の背景には,加齢や基礎疾患,低栄養,炎症
性サイトカインの過剰産生,細胞増殖因子・サイトカインの減
少などが存在し,正常な創傷治癒機構が破綻した病態と考
えられる。こうした場合,単に創を湿潤環境に保つのみでは
不十分であり,全身状態の改善に加えて創傷治癒を促進す
る薬剤の投与が効果的である。
具体的には,壊死組織を除去して創部にbFGF製剤を噴
霧したのち,bFGF製剤を噴霧した人工真皮を貼付固定し,
以後は同様の治療を完全に上皮化するまで継続する。大き
正常創傷治癒過程における線維芽細胞のアポトーシスの
機序を解明することは,肥厚性瘢痕の病態ならびに抑制の
機序を解明するうえできわめて重要と考えられている。われ
われはこれまでにbFGF投与創における筋線維芽細胞のア
ポトーシス増加と創収縮の抑制を報告してきたが,今回は
bFGFの直接的なアポトーシス誘導能をin vitro,in vivoで解析した。
ラット縫合創の肉芽組織から4種類の線維芽細胞(GF-1,2,
3,4),正常皮膚から2種類の線維芽細胞(NF-1,2)を樹立し
た。これらの線維芽細胞をトランスフォーミング増殖因子
(TGF)-�1で培養し,その後bFGFのみを添加した結果,GF-
2,3において48時間目と96時間目caspase-3の活性化による
アポトーシスの増加が確認された。このことから,bFGFは肉
芽組織由来の線維芽細胞に対し,強いアポトーシス誘導能を
有することが示唆された。アポトーシスはJNKなどを介した細
胞死シグナルによって誘導される一方,Akt,ERKなどを介し
た生存シグナルの積極的な関与により抑制される。そこで,
Akt蛋白の発現性を上述の実験系において解析した結果,
bFGF添加後,NF-1ではAkt-1蛋白発現が増加していたが,
GF-2においてはその発現が減少していた(図1)。
bFGF添加後のAktの活性化について,リン酸化を指標に
解析したところ,NF-1では経時的にリン酸化が認められるの
に対し,GF-2では消失していた。なお,bFGF添加後のERK
についてはNF-1,GF-2のいずれにおいてもリン酸化が認め
られた。この結果を受けて,実際のラット縫合創において検
討したところ,bFGF投与創では対照に比較して有意にAkt-1
蛋白の発現が減少していた(図2)。
以上の結果から,①TGF-�1で処理し,bFGFを投与した
を添加,Group 4:増殖期・脂肪分化期ともにbFGF添加)。
MTT Assayによる増殖作用の検討では,増殖期において
bFGF添加群の細胞増殖が促進しており,脂肪分化期14日目
では,増殖期にbFGFを添加したGroup 2,4で細胞増殖が
促進していた。また,脂肪分化度についてはOil red O染色,
GPDH活性測定,脂肪分化マーカー(PPAR�,C/EBP�,
GLUT4)発現測定にて検討した。Oil red O染色ではGroup2,
4の脂肪分化が促進し,GPDH活性はGroup2,4において促
進,PPAR�,GLUT4は,Group1に比べGroup2でより多く発
現していた(図1)。
脂肪分化の誘導および脂肪分化特異的遺伝子の発現は,
PPAR�とC/EBP�の発現維持によって引き起こされること
が知られている。そこで,増殖期のbFGF添加群,無添加群
におけるPPAR�・C/EBP�の発現を調べたところ,脂肪分
化誘導を行わなくても,bFGF添加によりASCsのPPAR�発
現が促進していた。なお,C/EBP�の発現促進は認められな
かった。
以上の結果より,bFGFはASCsの増殖のみならず脂肪分
化も促進することが示唆された(図2)。ASCsの再生医療応
用において,脂肪分化誘導の前にbFGFを用いることにより
効率的に脂肪分化が行われる可能性が考えられる。1)Kakudo N et al: J Biomed Mater Res A 84: 191-197,2008
図1.bFGF製剤と人工真皮の併用により治療した下�潰瘍 図2.bFGFを添加したBMP-2+Wnt-3遺伝子治療により再生した毛嚢脂腺系組織(治療後16週目)
図1.脂肪分化期(14日目)におけるGPDH活性と,PPARγ,GLUT4の発現
対照群 Group 1 Group 2
対照群 Group 1 Group 2 Group 3 Group 4
対照群 Group 1Group 2
* *
6
10
4
2
0
8
12
PPARγ発現
600
1000
400
200
0
800
1200
(U/mg protein)
GPDH活性
100
140
80
60
40
20
0
120
160
GLUT4発現
( * p<0.05)
(Kakudo N et al: Biochem Biophys Res Commun 359: 239-244, 2007)
図2.増殖期bFGF添加群における脂肪分化度
増殖期(7日間) 脂肪分化期(14日間) 脂肪分化
基礎媒体(DMEM, 10% FBS, 1% 抗生物質/抗真菌薬)
誘発媒体(DMEM, 10% FBS 0.5mM BMX, 1μM デキサメタゾン, 10μM インスリン, 200μM インドメタシン, 1% 抗生物質/1% 抗真菌薬)
対照群
Group 1
Group 2 bFGF
Group 3 bFGF
Group 4
-
+
+++
+
++bFGF bFGF
(Kakudo N et al: Biochem Biophys Res Commun 359: 239-244, 2007より作図)
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」基調講演
難治性潰瘍治療のための分子生物学的戦略と再生治療への展望
札幌医科大学皮膚科准教授
小野 一郎先生難治性潰瘍治療の到達点と将来展望
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」S6-02
Basic fibroblast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序
東邦大学病理学講座准教授
赤坂 喜清先生(第37回日本創傷治癒学会学会賞 受賞)
bFGFによるアポトーシスにAktが関与
治療前 壊死組織除去
2週後
4か月後
300μm
bFGF製剤による創傷治癒の最新知見―再生医療における治療の展望―
bFGF(basic Fibroblast Growth Factor)製
剤(一般名:トラフェルミン,商品名:フィブラス
ト ®スプレー)は,線維芽細胞増殖作用,血管新生
作用,肉芽形成促進作用を有する創傷治癒促進剤
であり,褥瘡や難治性潰瘍,熱傷創などに対する
効果が報告され,QOWH(Quality of Wound
Healing:創傷治癒の質)向上への寄与が期待され
ている。
ここでは,第37回日本創傷治癒学会における
基礎・臨床両面の報告から,bFGF製剤の最新知
見を探るとともに,治療抵抗性末梢動脈疾患
(PAD)に対する再生医療への応用をテーマに開
かれたランチョンセミナーの内容を紹介する。
座長:東邦大学病理学講座教授 石井 壽晴先生演者:日本医科大学大学院器官機能病態内科学分野准教授/日本医科大学付属病院再生医療科部長 宮本 正章先生
ランチョンセミナー1
(2006年4月作成)06X
●効能・効果、用法・用量、禁忌、使用上の注意等詳細は、添付文書をご参照ください。
褥瘡・皮膚潰瘍治療剤 指定医薬品・処方せん医薬品(注)
トラフェルミン(遺伝子組換え)製剤 薬価基準収載
(注)注意―医師等の処方せんにより使用すること
2008年6月作成FGF111-08F-10-MT1
治療抵抗性末梢動脈疾患(PAD)に対する再生医療を応用した総合的治療戦略
東邦大学病理学講座准教授 赤坂 喜清先生 (第37回日本創傷治癒学会学会賞 受賞)
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」S6-02
Basic fibroblast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序
東京医科大学八王子医療センター形成外科教授 菅又 章先生
主題演題3-1 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-01
人工真皮とbFGFを用いた爪床欠損の治療
東京都立広尾病院形成外科 藤原 修先生
主題演題3-2 「新しい創傷管理(縫合材料含む)」S3-06
新鮮Ⅱ度熱傷創に対するbFGF製剤初期投与の効果
カレスサッポロ時計台記念病院形成外科・創傷治癒センター 小浦場 祥夫先生
主題演題4 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S4-04
bFGF製剤使用による小児深達性Ⅱ度熱傷の瘢痕肥厚化予防
関西医科大学形成外科学講座助教 覚道 奈津子先生 (第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞 受賞)
主題演題5-2 「再生医療のUpdate(Stem cell・分子生物学的アプローチ)」S5-06
ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響
札幌医科大学皮膚科准教授 小野 一郎先生
主題演題6-1 「難治性潰瘍のトピックス」基調講演
難治性潰瘍治療のための分子生物学的戦略と再生治療への展望
第37回日本創傷治癒学会 記録集
bFGF製剤による創傷治癒の最新知見―再生医療における治療の展望―
第37回日本創傷治癒学会学会賞・研究奨励賞
第37回日本創傷治癒学会学会賞
第37回日本創傷治癒学会学会賞・研究奨励賞
線維芽細胞では生存シグナル伝達キナーゼAktに異なる活
性がみられる,②この過程でAktの活性化が消失した線維
芽細胞ではアポトーシスが誘導される―と考えられた。
図1.NF-1細胞とGF-2細胞におけるAkt-1蛋白の発現量
経過時間 48時間目 96時間目
bFGF - + - +
Akt-1
β-アクチン
※画像解析ソフトを用いてバンドの濃度・面積を数値化
NF-1 GF-2
48時間目 96時間目
- + - +
200
100
0
300(%) (%)
Akt-1/β-アクチン
200
100
0
300
図2.bFGFを投与した縫合創では有意にAkt-1蛋白の発現が減少
Akt-1
β-アクチン
対照創 bFGF投与創
対照創(n=5) bFGF投与創(n=5) * p<0.05 vs. 対照創
110
70
30
0
150
Akt-1/β-アクチン
*
(%)
※画像解析ソフトを用いてバンドの濃度・面積を数値化
東邦大学病理学講座准教授の赤坂喜清先生は,今学会において「Basic fibro-blast growth factorによる線維芽細胞アポトーシス誘導の機序」の研究成果により,第37回日本創傷治癒学会学会賞を受賞された。
第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞関西医科大学形成外科学講座助教の覚道奈津子先生は,今学会において「ヒト脂肪組織由来幹細胞におけるFGF-2の脂肪分化に与える影響」の研究成果により,第37回日本創傷治癒学会研究奨励賞を受賞された。
bFGF(basic Fibroblast Growth Factor)製
剤(一般名:トラフェルミン,商品名:フィブラス
ト ®スプレー)は,線維芽細胞増殖作用,血管新生
作用,肉芽形成促進作用を有する創傷治癒促進剤
であり,褥瘡や難治性潰瘍,熱傷創などに対する
効果が報告され,QOWH(Quality of Wound
Healing:創傷治癒の質)向上への寄与が期待され
ている。
ここでは,第37回日本創傷治癒学会における
基礎・臨床両面の報告から,bFGF製剤の最新知
見を探るとともに,治療抵抗性末梢動脈疾患
(PAD)に対する再生医療への応用をテーマに開
かれたランチョンセミナーの内容を紹介する。
2007年12月6日(木)・7日(金) 横浜ロイヤルパークホテル