24 尿特集

~ガイドラインを中心に~ 自然治癒力を引き出すオゾン療法 ...24 き出す治療法です。体に備わっている自然治癒力を引 自然治癒力は加齢に伴い低下し

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Page 1: ~ガイドラインを中心に~ 自然治癒力を引き出すオゾン療法 ...24 き出す治療法です。体に備わっている自然治癒力を引 自然治癒力は加齢に伴い低下し

24

体に備わっている自然治癒力を引

き出す治療法です。

自然治癒力は加齢に伴い低下し

ます。たとえば、転んで擦り傷が

生じた際、子供であれば短期間で

きれいに治癒していきます。私は

整形外科医でもありますので、子

供たちの驚くべき自然治癒力を、

何度も目の当たりにしてきまし

た。ひどい骨折であっても、どこ

を痛めたのかわからないくらい

に、短期間できれいに治っていく

のです。ところが、ご高齢の方で

はなかなか傷が治らない、骨癒合

が進まない、というケースがしば

しば認められます。オゾン療法は、

「体を子供に近づけることで、自

然治癒力を引き出す治療法」と言

ってもいいかもしれません。

この自然治癒力を高めるという

効果は、オゾン療法には細胞のミ

トコンドリアを活性化し、「酸素

利用率を高める」作用があること

により得られます。加齢および加

齢性疾患は、主に酸素利用率(N

AD/NADH比)の低下によっ

て生じます。オゾン療法はNAD

河合 隆志

フェリシティークリニック名古屋

院長

自然治癒力を引き出すオゾン療法

~ガイドラインを中心に~

はじめに

老化の主な原因である酸化スト

レスは、活性酸素によるいわば「体

のサビ」であり、がん、糖尿病、

高血圧をはじめさまざまな疾患に

関わります。オゾン療法は、全身

の細胞を活性化し酸化ストレスを

消去する抗酸化力を高め、元々人

特集

オゾン療法(血液クレンジング療法)

によるがん治療

Page 2: ~ガイドラインを中心に~ 自然治癒力を引き出すオゾン療法 ...24 き出す治療法です。体に備わっている自然治癒力を引 自然治癒力は加齢に伴い低下し

特 集 オゾン療法(血液クレンジング療法)によるがん治療

25 統合医療でがんに克つ

HをNADに変えることでNAD

/NADH比を正常化し、酸素利

用率を改善するのです。

オゾン療法の特徴は、「オゾン

は薬物として作用するのではな

く、体を活性化するスイッチとし

て作用する」ことにあります。こ

こが従来の治療法と最も異なる部

分であり、私自身は非常にナチュ

ラルな治療法であると捉えていま

げに果たす役割も大きいと思われ

ます。患者さんと相談のうえ、高

濃度ビタミンC点滴の前にオゾン

療法(大量自家血オゾン療法:M

AH)を施行するケースが増えて

きています。

また当院では、肩こり、腰痛、

関節痛をはじめ、整形外科疾患に

もオゾン療法を積極的に適用して

います。これは、オゾン療法の国

際学会であるInternational

Scientific Comm

ittee of Ozone

Therapy

(ISCO3

)が制定したガ

イドライン(マドリッド宣言)に

おいて、整形外科疾患に対するエ

ビデンスレベルが高いことを受け

ています。大量自家血オゾン療法

だけでなく、傍脊柱筋や関節内へ

オゾンガスを直接注入する整形オ

ゾン療法も行っています。

オゾン療法の基本原理

オゾンには、治療濃度、非有効

濃度、毒性濃度があります。濃度

5~10

µg/N㎖以下でも、広範な

安全域で治療効果が認められてい

ます。大量自家血オゾン療法など

の全身治療については、1回の治

療につき用量500~4000

µg、濃度10~40

µg/N㎖の投与が

安全かつ有効と考えられていま

す。濃度の単位であるµg/N㎖は、

気圧と室温を考慮しています。µg

/N㎖の〝N〟は、標準化ミリリ

ットルを表しており、標準室温(0

℃)および気圧(1バール≒1気

圧)条件下であることを意味して

います。

総オゾン用量(µg)は、オゾン

す。抗

がん剤や放射線治療の効果を

強化し、副作用を軽減させること

も報告されており、いわゆる標準

治療と併用して行うと良いと考え

られます。また自然治癒力を高め

るというオゾン療法の性質を考え

れば、がん患者さんの体力の底上

表 1 オゾンの治療用量と作用機序

低用量:これらの用量は免疫調節作用を有し、免疫系が著しく損なわれて

いることが疑われる疾患において使用される。例として、がん患者、高齢

患者および衰弱性の患者などが挙げられる。

中用量:これらは免疫調整性で、抗酸化酵素防御系を刺激する。糖尿病、

アテローム性動脈硬化症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、パーキンソン病、

アルツハイマー病および老年認知症などの慢性変性疾患に最も有用である。

高用量:これらは関節リウマチやループスなどの自己免疫疾患において生

じる機序に対する抑制作用を有する。潰瘍または感染性損傷に特に用いら

れ、オゾン化オイルおよびオゾン水の調整にも使用される。

『オゾン療法に関するマドリッド宣言』(第 2 版 2015 年)より引用改変

表 2 オゾン濃度および用量のガイドライン

方法 オゾン 高用量 中用量 低用量

大 量 自 家 血

オ ゾ ン 療 法

(MAH)

濃度(µg/Nml) 30-40 20-30 10-20

ガス量(ml) 50-100

総用量(µg) 1500-4000 1000-3000 500-2000

傍脊柱

濃度(µg/Nml) 20 15 10

ガス量(ml) 5-20

総用量(µg) 100-400 75-300 50-200

関節内

濃度(µg/Nml) 15-20 10 5

ガス量(ml) 1-2(指関節)/5-20(他関節)

総用量(µg) 15-40/75-400 10-20/50-200 5-10/25-100

※必ず低用量から始め徐々に増やしていく。ただし感染性潰瘍または損傷においては例外で、この逆が適用される。

『オゾン療法に関するマドリッド宣言』(第 2 版 2015 年)より引用改変

Page 3: ~ガイドラインを中心に~ 自然治癒力を引き出すオゾン療法 ...24 き出す治療法です。体に備わっている自然治癒力を引 自然治癒力は加齢に伴い低下し

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濃度(µg/N㎖)にガス量(㎖)

を乗じて求めた値に等しくなりま

す。用量は、体重ではなく患者さ

んの用量依存反応によって決めら

れます。

治療用量と作用機序(表1)、

用量のガイドライン(表2)を示

します。

適応疾患

エビデンスレベルごとの適応疾

患を表3に示します。

います。6カ月後からαリポ酸点

滴、1年後から月に1回のオゾン

療法も併用しています。オゾン療

法を行う際は、オゾン療法→高濃

度ビタミンC点滴→αリポ酸点滴

という流れです。「日常的に疲労

感はどうしてもあるが、オゾン療

法を併用するようになってから疲

れが取れやすくなった。体力も少

しついてきたように思う」と仰っ

ています。

治療開始前、CTにて左肺の原

発巣に加え両側のびまん性多発肺

転移、脳転移、骨盤転移を認め、

SpO2

も91%まで低下していま

した。がんセンターでの抗がん剤

治療と、当院でのオゾン療法、高

濃度ビタミンCおよびαリポ酸点

滴併用にて、2年10カ月経過した

現在、びまん性肺転移も原発巣を

残しほぼ消失、他転移巣も縮小を

認め、SpO2

も正常化し元気に

過ごされています。

他覚的にも、抗がん剤の副作用

軽減およびADL改善を認めてい

ます。がん患者さんに対し、オゾ

当院の症例

①72歳女性 

肺がん(腺がん)ス

テージ

手術適応がなく、がんセンター

にて抗がん剤治療を受けられてい

る患者さんです。当院でも並行し

てオゾン療法(大量自家血オゾン

療法)、高濃度ビタミンC点滴お

よびαリポ酸点滴を行っていま

す。ビタミンC点滴に関しては当

初75g週2回、9カ月後から週1

回、1年後から月1~2回行って

表 3 エビデンスレベルごとの適応疾患

レベル A「十分な科学的根拠がある」

脊椎疾患(椎間板ヘルニア、脊椎分離症など)

レベル B「科学的根拠がある」

a) 整形外科的疾患および限局性変形性関節症

b) 筋骨格系および軟部組織の疼痛性障害

c) 膝蓋軟骨軟化症、変形性膝関節症

d) 腱障害(テニス肘、ジャンパー膝、肩部痛および回旋筋腱板

の障害)

e) ド・ケルバン腱鞘炎

f) 手根管症候群

g) 糖尿病および糖尿病性足病変

h) 慢性疲労症候群および線維筋痛症

i) 突発性感音難聴、メニエール病

j) 進行虚血疾患、下肢動脈虚血

k) 加齢性黄斑変性症(萎縮型)

l) 齲歯病変

m) 骨髄炎、胸膜肺気腫、瘻孔を伴う潰瘍、感染性創傷、褥瘡、

慢性潰瘍、熱傷

n) 抗生物質または化学療法耐性細菌、ウイルス、真菌による急

性および慢性感染性疾患(肝炎、HIV-AIDS、ヘルペスおよび帯状

疱疹感染、パピローマウイルス感染、爪真菌症およびカンジダ症、

ジアルジア症およびクリプトスポリジウム症)、バルトリン腺炎お

よび膣カンジダ症、足部白癬

レベル C「科学的根拠がある」

a) がん関連疲労

b) 喘息

a) 自己免疫疾患:多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、

慢性炎症性腸疾患

b) 肺疾患:肺気腫、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症および

急性呼吸窮迫症候群

c) 皮膚疾患:乾癬、湿疹およびアトピー性皮膚炎

(27ページに続く)

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特 集 オゾン療法(血液クレンジング療法)によるがん治療

27 統合医療でがんに克つ

ン療法による補助療法は有用であ

ると考えています。

②53歳男性 

CRPS

タイプⅠ

(複合性局所疼痛症候群)疑い

明らかな外傷などの誘因なく左

前腕以遠の痛み・しびれが生じた

患者さんです。ただ痛みが出る前

の4カ月間ほど、非常に多忙な状

況であり、力仕事も多かったとい

うことです。週4~5回行ってい

た趣味のボクシングも、痛みのた

め全くできなくなっていました。

近医にてNSAID、プレガバリ

ンを処方されるも無効であり、レ

ントゲンおよび神経伝導速度検査

では異常を認めず、様子を見まし

ょうと言われていました。しかし

症状は増悪傾向にあり、当院を受

診されました。

MRI、血液検査も異常ありま

せんでしたが、局所の明らかな知

覚低下と異痛症(触覚を痛覚と認

識)、痛みに伴う握力低下も認め、

CRPS

タイプⅠ疑いと考えま

した。デュロキセチンの内服を開

始しましたが改善なく、相談のう

え、オゾン療法(大量自家血オゾ

ン療法)を開始しました。

1回目のオゾン療法を行った3

週後には、痛みの強さが当初の2

割にまで減少し、ボクシングもマ

イペースで再開できました。計3

回のオゾン療法を行い、3カ月後

には痛み・しびれはほぼ消失、握

力も正常まで回復しました。ボク

シングもいつも通り行えていま

す。CRPSは、前述のガイドラ

インにおいて適応疾患として挙げ

られてはいませんが、オゾン療法

は自然治癒力を高める、そしてエ

ビデンスの蓄積がある、副作用の

ない安全な治療法です。治療抵抗

性の整形外科疾患、慢性痛の患者

さんに対しても試みる価値がある

と考えています。

d) 敗血症:重度の敗血症および多臓器不全、壊死性筋膜炎、腹

膜炎、熱傷、上顎感染症、化膿性中耳炎、扁桃炎、前頭洞炎、膀

胱炎

e) 呼吸器系疾患:結核、気管支炎、呼吸不全、副鼻腔炎、胸膜

肺気腫

f) 消化管疾患:胆石症および消化性潰瘍、胃腸出血

g) 眼科領域:眼乾燥症候群、糖尿病性網膜症、眼内炎、脈絡膜疾患、

加齢性黄斑変性症、色素性網膜炎、慢性緑内障

h) 神経系疾患:エタノール禁断症状

i) 疼痛:中足骨痛、片頭痛

j) 妊娠:胎盤不全、子癇前症、卵管癒着による不妊症

k) 血管系疾患:虚血性心疾患

l) がん転移(補助療法として、あるいは化学療法または放射線

療法の副作用抑制のため):治療抵抗性出血性放射線性直腸炎、前

立腺肥大症

m) レイノー症候群

n) 慢性腎不全

o) 肝疾患:A 型、B 型、C 型肝炎

p) 浮腫性線維硬化性皮下脂肪層炎

q) 甲状腺結節

r) 老年認知症、アルツハイマー病

『オゾン療法に関するマドリッド宣言』(第 2 版 2015 年)より引用改変

(26ページより続く)

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