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名プロデューサー、Marti Frederiksenとタッグを組み 本場アメリカで新バンド結成! 王道かつストレートなヘヴィ・ロックで勝負する トとしてのアプローチは意図的に変えてます? バンドはバンドだと思ってるんですよね。ソロ・ギタリストとしてやり始めたのはJoe Satrianiもそうだけど、自分がギターを始めた頃に活躍していた人の影響も受けて、 ギターだけでしか表現できない世界に興味がありましたからね。その一方でバンド でしか表現できない世界もあるので、欲張るわけじゃないけど、分けて考えてます ね。バンドのときはバンドのギタリスト、ソロでは自分のギターを追求する感じです ね。バンドのギタリストとして誰が好きかと言われたら、RUSHのAlex Lifeson、 KING'S XのTy Tabor、Zakk Wyldeに会ったときにも感動しましたからね(笑)。 こういう世界に入って、いろいろ対談させてもらう機会があったから。正直、歌があ る音楽で弾くときと、そうじゃないときではギターの役割が全然違いますからね。 歌があるときはリズム・プレイに徹する……まあ、SIAM SHADEはごちゃ混ぜで したけどね(笑)。 -なるほど。BREAKING ARROWSでは完全にリズム・プレイに徹してますよね。 そうですね。基本的にプロデューサーのMarti FrederiksenとBREAKING ARROWSのアルバムを作るときに、王道のロック・サウンドを今の形で作ろうと いう話をして。必要なものは残して、必要じゃないものは削除していく。僕に必要と されていたのはリフだったので、そっちに特化しました。曲自体が全部ギター・リフ からできたものばかりですからね。 -それはDAITAさんとプロデューサーとの話し合いの中で、そういう方向性になった んですか? 2010年から共同作業をしたんですけど、その当時なかったサウンドに作ろうと思っ たんですよ。小細工なしというか、マンパワーだけというか、その人が持ってるエネ ルギーを明確かつストレートに注入する作品にしたくて。そこから生まれてくる音も 一貫したものだったし、より自然体なプレイやアイデアを重要視しましたね。 -2002年にSIAM SHADE解散以降(※今年再結成ライヴ・ツアーを発表)、ソロ 活動、氷室京介さんのツアー・ギタリストなど、様々な経験をされてきて、自分の中 でこういう音楽をやりたいという強い願望はあったんですか? 当然今までやってきたプレイ・スタイルがあるので、その中の1つとしてヘヴィな サウンドのロックをやりたいと思って。だから、そのヘヴィなサウンドに乗るヴォー DAITA (Gt) インタビュアー:荒金 良介 -今回BREAKING ARROWSの1stアルバムが完成しましたが、これはDAITAさん が10代の頃から抱いていた夢だったそうですね? 個人的にギターを弾き始めたときにも、海外で活躍されてる日本のアーティストが たくさんいましたからね。当然、僕も洋楽を聴いて育っているので、本場の人と肩を 並べてやれるようなプレイヤーになりたい、いつかチャレンジしてみたいと思ってま したね。ただ、バンドを作ってどうこうよりも、純粋にアーティストとして行ってみ たかった。僕が聴いてた音楽は向こうのものが主流だったし、当時はLAのサウンド が一世を風靡してましたからね。西海岸で生まれてくるロックのサウンドは乾いて たし、ギター、ベース、ドラムの音も本当にかっこ良かったですからね。そういう人 たちが作る音に近づきたくて。 -やはり80年代のLAメタルとか、その辺ですか? 僕の世代的にはそうですね。VAN HALEN、MOTLEY CRUE、ハード・ロック/ ヘヴィ・メタルが全盛の時代でしたからね。ギター・サウンド主流のヘヴィ・ロック 全般を聴いてましたね。で、90年代になると、自分もプロとして本場に行くんです けど、そのときにかかってきた音楽がSOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINS、 KING'S Xで、その辺の音楽も聴いてましたからね。 -90年代に初めてアメリカに行ったときは、SIAM SHADEの時ですか? 1996年頃かな。SIAM SHADEの初めての海外レコーディングでアメリカに行った んですよ。本場のサウンドを作ろうと思って、David Biancoというエンジニアの人 で、ちょうどOZZY OSBOURNEの『Ozzmosis』をやっていた時期だったので、 Zakk Wyldeがどういう音で録っていたのかみたいな話も聞いて。 -へぇー、そうなんですね。 向こうの地を踏んで、本場のエンジニアから刺激をもらって、やっぱりこういう環境 でやってみたいなあと。好きなバンドがたくさん活動してる場所だから、当然興味 は沸きますよね。 -DAITAさんは現在ソロでも活動されてますが、バンドとソロではやはりギタリス カルを探して、ヘヴィなサウンドを好むバックのメンバーを探したんですよ。でもこ うしなきゃいけないというものは全くなくて。逆に何ができるかな、どうなっちゃう かわからない、というワクワク感から始めたので。自分という軸はありつつ、いいア イデアを出せるようにいろいろ準備しました。 -自分の強いエゴを押し出すというより、チームとして何ができるかみたいな? 超一流のMartiというプロデューサーに大きな舵は預けつつも、僕も日本でキャリ アがあり、プロデュースをやった経験もあるので、自分の中ではWプロデュースみ たいな感覚でした。自分もプロデューサーの視点に立ちながら、プレイヤーとして の立ち振る舞いをすることが楽曲を生み出す上で必要だなと。だから、無駄なもの を一切削ぎ落して、いままで作ったことがない楽曲にトライしたので、必要とされる アイデアを捻り出した感じですね。 -曲作りはどういう形で行ったんですか? 作品に関して言えば、僕とプロデューサーのMarti、あと、ヴォーカルのNik Frost と3人で書き始めたんですよ。あまり人数が多いとアイデアがまとまらなくなるので、 それがベストじゃないかと。 -一般的なプロデューサーのイメージだと、バンドが提示した楽曲に対して、味付 けやアドバイスをするスタンスだと思うんですが。このバンドに関しては内部まで ガッツリ関わってるんですね。 初めはNikと一緒にデモを何曲か作ってたんですけど、彼(Marti)のテンションを 上げる曲があったのか、“俺も書きたい!”と言い出して。 -そうでしたか(笑)。 あのクラスのプロデューサーがそこまで言ってくれることもないだろうし、忙しい中 で時間も割くわけだから、結局彼の家で合宿状態で曲を作ることになって。 -そこは予想外でした? 予想外ですね(笑)。でも僕は多分言ってくるんじゃないかなと思ってました。彼は ソングライターとしての才能も素晴らしいし、僕は一緒にやりたかったくらいで、逆 になんでこっちまかせなんだろうなと思ってたから。まあ、いろんな経験をいろんな 現場でさせてもらいました。 -Martiは曲のどのポイントでテンションが上がったんですかね? 僕のギターに何かを感じてくれたみたいで、アメリカ人のプレイヤーとは違うエッセ ンスがあるから、面白いと言ってくれましたね。“同じフレーズでもDAITAが弾くと 違うんだよね”って。“普段、Steven Tylerと一緒にこういう曲を作っているんだ けど、うまくいかないんだよね”と言ってて(笑)。僕のようにどんどんフレーズが浮 かんでくる、アイデアマンみたいな人材が必要だ、とも言ってくれましたからね。僕 はギタリストだけじゃなくて、そういう側面もあるので、そこが良かったんじゃない かな。お互いにティーンネイジャーに戻った感覚で曲を作りましたよ。こっちもワク ワクしてやれましたね。Martiとはめちゃくちゃ歳も離れているわけでもないし、彼 も今はカントリーのプロデュースとか幅広くやってますけど、もともとヘヴィなロッ ク・サウンドが好きな人ですからね。それでアメリカでも王道で潔いヘヴィ・ロック で勝負している新しいバンドがいないんだね、という話からこのプロジェクトが生 まれたから。 -それで今作では王道のヘヴィ・ロックをやろうと? 幅広い人に聴いてるもらうために作ろうというテーマで始めているので、パッと聴 いて楽曲の中にスッと入れるストレートさがコンセプトにありましたね。 -それはやり易かったですか、それとも難しい作業でした? 本来は難しいはずなんですけど、個人的にもそういう作業が好きだから、あまり考 えずにアイデアをどんどん提案できたので、フレキシブルにやれましたね。 -今作は80年代のバッドボーイズ・ロックンロール、90年代のグランジの空気も 取り入れつつ、今のモダン・ロックとして仕上がってますよね。 70年代、80年代というよりも、自分がどっぷり聴いてきた80年代、90年代のサウ ンドを自分なりのフィルターを通して、新しい形で作品として発表できればいいなと。 以前、アメリカに行ったときにSOUNDGARDEN、STONE TEMPLE PILOTS、 ALICE IN CHAINSがラジオでパワープレイでかかってて、その音楽がすごく風土 にマッチしてたんですよ。主張があるギターにビッグなベースとドラムがあって、豪 快な歌いっぷりのヴォーカルがいる。アメリカがマーケットなので、アメリカでどう 響くか、何が求めているのか……今はないからこういうサウンドが必要なんじゃな いか。そこは自然な流れでしたね。ただ、今回は聴いてすぐ自分だとわかる作品で はないので、自分のキャリアをど返しして、むしろパッと聴きでわからないものじゃ ないと、自分がやる意味がないと思いましたからね。 -そこまでこだわる理由は? 音楽の全体を聴いて欲しかったし、曲がそれを欲していたという感じですかね。そ れはプロデューサーのMartiを信用していたし、曲作りから一緒にやったことも大 きいですね。ギター・リフに自分なりの初期衝動を込めたつもりです。 -全曲スムーズに進んだ感じですか? そうですね。ヴォーカルのNikを活かすための楽曲も考えたし、当然彼のアイデア を聞きましたからね。あと、地元じゃないとわからないこともあるので、それはコ ミュニケーションを取りながら進めました。面白いんですけど、フレーズの中にベン ド系のフレーズが多いんだなって。ギターで言うとピッキング・ハーモニクスよりも ベンド、コードよりも単音リフだったり、それはメインに置きましたね。コードにする と、ヘヴィになり過ぎるから。それと東海岸、中部、西海岸だけでもメロディが違う らしくて。その3つの要素を1曲の中に入れたりして、それは刺激的でしたね。でか い国ならではだなって。メロディやサウンドのテイストもそうだけど、シンプルでス トレートな音楽の中にそういうミクスチャー感も取り入れていく。それができるプ ロデューサーだから、良かったですね。 -メロディのグラデーションも楽しめると。 そうですね。基本的に歌の音楽だから、聴いた人が歌を口ずさめることを前提でや りましたね。僕は日本の文化で育っているから、わからない部分もあったけど、いろ いろ発見がありました。日本人だったらこういうメロディだと、物足りないかもしれ ないけど、ワンセンテンスで持っていけるところが英語にはあるから。 -それでレコーディングはLAでやったんですか? はい、全部そうですね。日本でやっていた作業もあるんですけど、基本的には向こ うでやりましたね。ギター録りはMartiが一緒に仕事をやってるBUCKCHERRY のKeith Nelson(Gt)の家にあるスタジオでやって。彼はヴィンテージをいっぱ い持っていたけど、僕はヴィンテージを使わないので、自分の機材でやりました。 で、録っていた時期にちょうど震災が起きて、今回の日本盤ボーナス・トラックの曲 はヴォーカルのオーディションのために作ったものなんですよ。日本でリリースする ことが決まったときにMartiの意向もあって、日本用に収録することになって。 -「Never Stop Dreaming」ですよね。今作の楽曲と比べても、すごくポップで 個人的には大好きです。 あっ、そうですか?良かったです(笑)。この曲だけ僕がプロデュースしてるんです よ。こういうメロディも歌えるヴォーカルを探さなきゃと思っていたから。これもバ ンドのカラーとして、ちょっと見せられたのは良かったですね。 -ちなみにレコーディングは、いつ頃から行っていたんですか? 2011年3月の頭からですね。そこから渡米してましたからね。 -不安はなかったですか? ありましたね。それでチャリティ活動をやったり、SIAM SHADEもその年から期 間限定で復活させましたからね。まあ、作品を作ることも僕の使命だし、その役割 をちゃんと終わらせなきゃいけないという気持ちもあったので……そういう思いも 詰まってます。「Never Stop Dreaming」はまさに日本への応援歌みたいな曲 で、歌詞もそういう方向性で書いたので、時間を経ちましたけど、聴いてもらえたら 嬉しいですね。 -なるほど。それで今作の中でも「Come Back Baby」、「Broken Mona Lisa」 はブルージーな色合いが強く出てますよね。 そうですね。日本のバラードとはまた違って、向こうのコブシ感というか、それが出て るんじゃないですかね。また違うエッセンスを感じてもらえればいいなって。特に 「Broken Mona Lisa」は僕がプログレ好きなので、ドラマティックな楽曲も1曲 欲しかったんですよ。このアルバムに相応しい形で、そういう空気感の曲も作れた から、自分でも気に入ってます。 -「Broken Mona Lisa」は歌声は爽やかですが、ギターのリフはどこかBADLANDS 時代のJake E.Leeを彷彿とさせる渋い音色で、そのギャップが面白かったです。 まあ、BADLANDSも通ってるし、Jake E.Leeは超リスペクトしてますからねぇ。 これも一緒にジャムりながら、歌の良さを引き出すためにこういうフィーリングが必 要だったんですよね。キャッチーなものをいっぱい作ろうと思っていたけど、違う エッセンスも欲しくなるので、そこはMartiにも理解してもらって。こういう曲があっ てもいいんじゃないかと(笑)。 -では、今後の予定はどうなってるんですか? ライヴは定期的にやっているので、このリリースのタイミングで向こうに行ってやろ うと思ってます。ただ、メンバーみんな忙しいので、スケジュールを合わせるのが 大変なんですけどね(笑)。日本でも単体でライヴをやろうと思っているんですけ ど、僕の存在をそんなに知らない人たちに聴いてもらった方が先入観なく入って もらえると思うから。フェスみたいな場がいいなと思っていたら、ちょうど今年の SUMMER SONICに出ることが決まったので、そこが初お披露目ライヴになりま すね。 -今後もアメリカに行くことが増えそうですか? そうですね。今年から向こうに拠点を移して、既に日本と半々ぐらいの生活になって るんですよ。そこでまた新しい出会いもあるし、創作活動にも影響するような環境 だと思うので、ソロ活動を含めて、いろいろと変化は出てくるでしょうね。まだこの CDの反応がわからないので、地に足を着けて活動していきたいですね。 SIAM SHADEのDAITA(Gt)がアメリカで結成した新バンドがデビュー・ アルバムをリリース。アメリカでバンドを組むことは彼の長年の夢だったそ うだ。2010年に渡米して以降、じっくりと時間を掛けてDAITA自らが選ん だメンバーで結成したBREAKING ARROWSは“インターナショナルな 音楽観を持った新しいヘヴィ・ロックを追究する”というコンセプトのもと 誕生。往年のヘヴィ・ロックへの強いリスペクトを感じさせる重厚なサウン ドと、DAITAが日本での活動で培ってきたキャッチーなメロディ・センス が融合し、非常にスケールのある楽曲を生み出した。Nik Frostのちょい ハスキーで憂いのあるヴォーカルがそのレンジを更に広げ、力強くポジティ ヴにリスナーへ届けてくれる。 沖 さやこ BREAKING ARROWS Breaking Arrows 2013.7.31 ON SALE!! LABEL : SONY MUSIC JAPAN GENRE : MODERN ROCK, HEAVY ROCK FOR FANS OF : NICKELBACK, DAUGHTRY, SIAM SHADE

breaking arrows cs4 - gekirock...名プロデューサー、Marti Frederiksenとタッグを組み 本場アメリカで新バンド結成!王道かつストレートなヘヴィ・ロックで勝負する

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Page 1: breaking arrows cs4 - gekirock...名プロデューサー、Marti Frederiksenとタッグを組み 本場アメリカで新バンド結成!王道かつストレートなヘヴィ・ロックで勝負する

名プロデューサー、Marti Frederiksenとタッグを組み本場アメリカで新バンド結成!

王道かつストレートなヘヴィ・ロックで勝負する

トとしてのアプローチは意図的に変えてます?

バンドはバンドだと思ってるんですよね。ソロ・ギタリストとしてやり始めたのはJoe Satrianiもそうだけど、自分がギターを始めた頃に活躍していた人の影響も受けて、ギターだけでしか表現できない世界に興味がありましたからね。その一方でバンドでしか表現できない世界もあるので、欲張るわけじゃないけど、分けて考えてますね。バンドのときはバンドのギタリスト、ソロでは自分のギターを追求する感じですね。バンドのギタリストとして誰が好きかと言われたら、RUSHのAlex Lifeson、KING'S XのTy Tabor、Zakk Wyldeに会ったときにも感動しましたからね(笑)。こういう世界に入って、いろいろ対談させてもらう機会があったから。正直、歌がある音楽で弾くときと、そうじゃないときではギターの役割が全然違いますからね。歌があるときはリズム・プレイに徹する……まあ、SIAM SHADEはごちゃ混ぜでしたけどね(笑)。

-なるほど。BREAKING ARROWSでは完全にリズム・プレイに徹してますよね。

そうですね。基本的にプロデューサーのMarti FrederiksenとBREAKING ARROWSのアルバムを作るときに、王道のロック・サウンドを今の形で作ろうという話をして。必要なものは残して、必要じゃないものは削除していく。僕に必要とされていたのはリフだったので、そっちに特化しました。曲自体が全部ギター・リフからできたものばかりですからね。

-それはDAITAさんとプロデューサーとの話し合いの中で、そういう方向性になったんですか?

2010年から共同作業をしたんですけど、その当時なかったサウンドに作ろうと思ったんですよ。小細工なしというか、マンパワーだけというか、その人が持ってるエネルギーを明確かつストレートに注入する作品にしたくて。そこから生まれてくる音も一貫したものだったし、より自然体なプレイやアイデアを重要視しましたね。

-2002年にSIAM SHADE解散以降(※今年再結成ライヴ・ツアーを発表)、ソロ活動、氷室京介さんのツアー・ギタリストなど、様々な経験をされてきて、自分の中でこういう音楽をやりたいという強い願望はあったんですか?

当然今までやってきたプレイ・スタイルがあるので、その中の1つとしてヘヴィなサウンドのロックをやりたいと思って。だから、そのヘヴィなサウンドに乗るヴォー

DAITA (Gt) インタビュアー:荒金 良介

-今回BREAKING ARROWSの1stアルバムが完成しましたが、これはDAITAさんが10代の頃から抱いていた夢だったそうですね?

個人的にギターを弾き始めたときにも、海外で活躍されてる日本のアーティストがたくさんいましたからね。当然、僕も洋楽を聴いて育っているので、本場の人と肩を並べてやれるようなプレイヤーになりたい、いつかチャレンジしてみたいと思ってましたね。ただ、バンドを作ってどうこうよりも、純粋にアーティストとして行ってみたかった。僕が聴いてた音楽は向こうのものが主流だったし、当時はLAのサウンドが一世を風靡してましたからね。西海岸で生まれてくるロックのサウンドは乾いてたし、ギター、ベース、ドラムの音も本当にかっこ良かったですからね。そういう人たちが作る音に近づきたくて。

-やはり80年代のLAメタルとか、その辺ですか?

僕の世代的にはそうですね。VAN HALEN、MOTLEY CRUE、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルが全盛の時代でしたからね。ギター・サウンド主流のヘヴィ・ロック全般を聴いてましたね。で、90年代になると、自分もプロとして本場に行くんですけど、そのときにかかってきた音楽がSOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINS、KING'S Xで、その辺の音楽も聴いてましたからね。

-90年代に初めてアメリカに行ったときは、SIAM SHADEの時ですか?

1996年頃かな。SIAM SHADEの初めての海外レコーディングでアメリカに行ったんですよ。本場のサウンドを作ろうと思って、David Biancoというエンジニアの人で、ちょうどOZZY OSBOURNEの『Ozzmosis』をやっていた時期だったので、Zakk Wyldeがどういう音で録っていたのかみたいな話も聞いて。

-へぇー、そうなんですね。

向こうの地を踏んで、本場のエンジニアから刺激をもらって、やっぱりこういう環境でやってみたいなあと。好きなバンドがたくさん活動してる場所だから、当然興味は沸きますよね。

-DAITAさんは現在ソロでも活動されてますが、バンドとソロではやはりギタリス

カルを探して、ヘヴィなサウンドを好むバックのメンバーを探したんですよ。でもこうしなきゃいけないというものは全くなくて。逆に何ができるかな、どうなっちゃうかわからない、というワクワク感から始めたので。自分という軸はありつつ、いいアイデアを出せるようにいろいろ準備しました。

-自分の強いエゴを押し出すというより、チームとして何ができるかみたいな?

超一流のMartiというプロデューサーに大きな舵は預けつつも、僕も日本でキャリアがあり、プロデュースをやった経験もあるので、自分の中ではWプロデュースみたいな感覚でした。自分もプロデューサーの視点に立ちながら、プレイヤーとしての立ち振る舞いをすることが楽曲を生み出す上で必要だなと。だから、無駄なものを一切削ぎ落して、いままで作ったことがない楽曲にトライしたので、必要とされるアイデアを捻り出した感じですね。

-曲作りはどういう形で行ったんですか?

作品に関して言えば、僕とプロデューサーのMarti、あと、ヴォーカルのNik Frostと3人で書き始めたんですよ。あまり人数が多いとアイデアがまとまらなくなるので、それがベストじゃないかと。

-一般的なプロデューサーのイメージだと、バンドが提示した楽曲に対して、味付けやアドバイスをするスタンスだと思うんですが。このバンドに関しては内部までガッツリ関わってるんですね。

初めはNikと一緒にデモを何曲か作ってたんですけど、彼(Marti)のテンションを上げる曲があったのか、“俺も書きたい!”と言い出して。

-そうでしたか(笑)。

あのクラスのプロデューサーがそこまで言ってくれることもないだろうし、忙しい中で時間も割くわけだから、結局彼の家で合宿状態で曲を作ることになって。

-そこは予想外でした?

予想外ですね(笑)。でも僕は多分言ってくるんじゃないかなと思ってました。彼はソングライターとしての才能も素晴らしいし、僕は一緒にやりたかったくらいで、逆になんでこっちまかせなんだろうなと思ってたから。まあ、いろんな経験をいろんな現場でさせてもらいました。

-Martiは曲のどのポイントでテンションが上がったんですかね?

僕のギターに何かを感じてくれたみたいで、アメリカ人のプレイヤーとは違うエッセンスがあるから、面白いと言ってくれましたね。“同じフレーズでもDAITAが弾くと違うんだよね”って。“普段、Steven Tylerと一緒にこういう曲を作っているんだけど、うまくいかないんだよね”と言ってて(笑)。僕のようにどんどんフレーズが浮かんでくる、アイデアマンみたいな人材が必要だ、とも言ってくれましたからね。僕はギタリストだけじゃなくて、そういう側面もあるので、そこが良かったんじゃないかな。お互いにティーンネイジャーに戻った感覚で曲を作りましたよ。こっちもワクワクしてやれましたね。Martiとはめちゃくちゃ歳も離れているわけでもないし、彼も今はカントリーのプロデュースとか幅広くやってますけど、もともとヘヴィなロック・サウンドが好きな人ですからね。それでアメリカでも王道で潔いヘヴィ・ロックで勝負している新しいバンドがいないんだね、という話からこのプロジェクトが生まれたから。

-それで今作では王道のヘヴィ・ロックをやろうと?

幅広い人に聴いてるもらうために作ろうというテーマで始めているので、パッと聴いて楽曲の中にスッと入れるストレートさがコンセプトにありましたね。

-それはやり易かったですか、それとも難しい作業でした?

本来は難しいはずなんですけど、個人的にもそういう作業が好きだから、あまり考えずにアイデアをどんどん提案できたので、フレキシブルにやれましたね。

-今作は80年代のバッドボーイズ・ロックンロール、90年代のグランジの空気も取り入れつつ、今のモダン・ロックとして仕上がってますよね。

70年代、80年代というよりも、自分がどっぷり聴いてきた80年代、90年代のサウンドを自分なりのフィルターを通して、新しい形で作品として発表できればいいなと。以前、アメリカに行ったときにSOUNDGARDEN、STONE TEMPLE PILOTS、ALICE IN CHAINSがラジオでパワープレイでかかってて、その音楽がすごく風土にマッチしてたんですよ。主張があるギターにビッグなベースとドラムがあって、豪快な歌いっぷりのヴォーカルがいる。アメリカがマーケットなので、アメリカでどう響くか、何が求めているのか……今はないからこういうサウンドが必要なんじゃないか。そこは自然な流れでしたね。ただ、今回は聴いてすぐ自分だとわかる作品ではないので、自分のキャリアをど返しして、むしろパッと聴きでわからないものじゃないと、自分がやる意味がないと思いましたからね。

-そこまでこだわる理由は?

音楽の全体を聴いて欲しかったし、曲がそれを欲していたという感じですかね。それはプロデューサーのMartiを信用していたし、曲作りから一緒にやったことも大きいですね。ギター・リフに自分なりの初期衝動を込めたつもりです。

-全曲スムーズに進んだ感じですか?

そうですね。ヴォーカルのNikを活かすための楽曲も考えたし、当然彼のアイデアを聞きましたからね。あと、地元じゃないとわからないこともあるので、それはコミュニケーションを取りながら進めました。面白いんですけど、フレーズの中にベンド系のフレーズが多いんだなって。ギターで言うとピッキング・ハーモニクスよりもベンド、コードよりも単音リフだったり、それはメインに置きましたね。コードにする

と、ヘヴィになり過ぎるから。それと東海岸、中部、西海岸だけでもメロディが違うらしくて。その3つの要素を1曲の中に入れたりして、それは刺激的でしたね。でかい国ならではだなって。メロディやサウンドのテイストもそうだけど、シンプルでストレートな音楽の中にそういうミクスチャー感も取り入れていく。それができるプロデューサーだから、良かったですね。

-メロディのグラデーションも楽しめると。

そうですね。基本的に歌の音楽だから、聴いた人が歌を口ずさめることを前提でやりましたね。僕は日本の文化で育っているから、わからない部分もあったけど、いろいろ発見がありました。日本人だったらこういうメロディだと、物足りないかもしれないけど、ワンセンテンスで持っていけるところが英語にはあるから。

-それでレコーディングはLAでやったんですか?

はい、全部そうですね。日本でやっていた作業もあるんですけど、基本的には向こうでやりましたね。ギター録りはMartiが一緒に仕事をやってるBUCKCHERRYのKeith Nelson(Gt)の家にあるスタジオでやって。彼はヴィンテージをいっぱい持っていたけど、僕はヴィンテージを使わないので、自分の機材でやりました。で、録っていた時期にちょうど震災が起きて、今回の日本盤ボーナス・トラックの曲はヴォーカルのオーディションのために作ったものなんですよ。日本でリリースすることが決まったときにMartiの意向もあって、日本用に収録することになって。

-「Never Stop Dreaming」ですよね。今作の楽曲と比べても、すごくポップで個人的には大好きです。

あっ、そうですか?良かったです(笑)。この曲だけ僕がプロデュースしてるんですよ。こういうメロディも歌えるヴォーカルを探さなきゃと思っていたから。これもバンドのカラーとして、ちょっと見せられたのは良かったですね。

-ちなみにレコーディングは、いつ頃から行っていたんですか?

2011年3月の頭からですね。そこから渡米してましたからね。

-不安はなかったですか?

ありましたね。それでチャリティ活動をやったり、SIAM SHADEもその年から期間限定で復活させましたからね。まあ、作品を作ることも僕の使命だし、その役割をちゃんと終わらせなきゃいけないという気持ちもあったので……そういう思いも詰まってます。「Never Stop Dreaming」はまさに日本への応援歌みたいな曲で、歌詞もそういう方向性で書いたので、時間を経ちましたけど、聴いてもらえたら嬉しいですね。

-なるほど。それで今作の中でも「Come Back Baby」、「Broken Mona Lisa」はブルージーな色合いが強く出てますよね。

そうですね。日本のバラードとはまた違って、向こうのコブシ感というか、それが出てるんじゃないですかね。また違うエッセンスを感じてもらえればいいなって。特に「Broken Mona Lisa」は僕がプログレ好きなので、ドラマティックな楽曲も1曲欲しかったんですよ。このアルバムに相応しい形で、そういう空気感の曲も作れたから、自分でも気に入ってます。

-「Broken Mona Lisa」は歌声は爽やかですが、ギターのリフはどこかBADLANDS時代のJake E.Leeを彷彿とさせる渋い音色で、そのギャップが面白かったです。

まあ、BADLANDSも通ってるし、Jake E.Leeは超リスペクトしてますからねぇ。これも一緒にジャムりながら、歌の良さを引き出すためにこういうフィーリングが必要だったんですよね。キャッチーなものをいっぱい作ろうと思っていたけど、違うエッセンスも欲しくなるので、そこはMartiにも理解してもらって。こういう曲があってもいいんじゃないかと(笑)。

-では、今後の予定はどうなってるんですか?

ライヴは定期的にやっているので、このリリースのタイミングで向こうに行ってやろうと思ってます。ただ、メンバーみんな忙しいので、スケジュールを合わせるのが大変なんですけどね(笑)。日本でも単体でライヴをやろうと思っているんですけど、僕の存在をそんなに知らない人たちに聴いてもらった方が先入観なく入ってもらえると思うから。フェスみたいな場がいいなと思っていたら、ちょうど今年のSUMMER SONICに出ることが決まったので、そこが初お披露目ライヴになりますね。

-今後もアメリカに行くことが増えそうですか?

そうですね。今年から向こうに拠点を移して、既に日本と半々ぐらいの生活になってるんですよ。そこでまた新しい出会いもあるし、創作活動にも影響するような環境だと思うので、ソロ活動を含めて、いろいろと変化は出てくるでしょうね。まだこのCDの反応がわからないので、地に足を着けて活動していきたいですね。

SIAM SHADEのDAITA(Gt)がアメリカで結成した新バンドがデビュー・

アルバムをリリース。アメリカでバンドを組むことは彼の長年の夢だったそ

うだ。2010年に渡米して以降、じっくりと時間を掛けてDAITA自らが選ん

だメンバーで結成したBREAKING ARROWSは“インターナショナルな

音楽観を持った新しいヘヴィ・ロックを追究する”というコンセプトのもと

誕生。往年のヘヴィ・ロックへの強いリスペクトを感じさせる重厚なサウン

ドと、DAITAが日本での活動で培ってきたキャッチーなメロディ・センス

が融合し、非常にスケールのある楽曲を生み出した。Nik Frostのちょい

ハスキーで憂いのあるヴォーカルがそのレンジを更に広げ、力強くポジティ

ヴにリスナーへ届けてくれる。 沖 さやこ

BREAKING ARROWSBreaking Arrows2013.7.31 ON SALE!!

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