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Page 13 エネルギア総研レビュー No.54 層では,前の層から重みを付されたデータを受け取 り,全ての入力を足し合わせたものを活性化関数で 変換し,次の層へ渡す。 (3)深層学習 深層学習は,ニューラルネットワークを拡張した もので,ディープニューラルネットワーク(DNN) と呼ばれ,高精度の分析や活用を可能にした手法で ある。DNNは,図3に示すように中間層(隠れ層) を2層以上に多層化したニューラルネットワークと なる。ニューラルネットワークを起源とする深層学 習には,畳み込みニューラルネットワーク(CNN) や再帰型ニューラルネットワーク(RNN)があり, 主として前者は画像認識に,後者は自然言語処理に 利用される。 3 深層学習の応用例 深層学習は幅広い産業で適用されており,その応 用は多岐にわたるが,代表として,画像認識(顔画 像から性別や年齢を推定等),音声認識(声からの 健康やストレスの検出等),音声合成(特定の人物 の発声を真似る等),テキスト処理(議事録からの 要旨作成等),翻訳,価格の予測(電力取引価格の 予測等)などが挙げられる。 4 おわりに 当グループでは,研究・開発へのAI活用を目指し, AIに関する基礎的技術の知見取得・蓄積を目的に, CNNを用いた画像認識を,当所技術グループと協 同で取り組んでおり,成果についてはまたあらため て紹介したい。 用語解説 1 はじめに 現在は第三次人工知能ブームとされ,様々な分野 で人工知能(AI)の活用への期待が高まっている。 このブームは,深層学習の登場が背景にある。深層 学習の登場は,学習するために十分なデータが用意 しやすくなったことと,ハードウェア等の進歩によ る計算速度の向上がタイミングよく重なったためと いわれている。深層学習の登場により,音声認識や 画像認識等の分野で,従来手法ではなしえなかった 大幅な性能改善が実現した。 2 人工知能と深層学習の関係 「深層学習」と「人工知能」の関係を図1に示す。 (1)機械学習 機械学習とは,明確な定義はないが,「データか ら規則性や判断基準を学習し,それに基づき未知の ものを予測,判断する技術」を指す場合が多い。機 械学習は,表1に示すように,「教師あり学習」「教 師なし学習」「強化学習」の3つに大きく分類される。 (2)ニューラルネットワーク 機械学習の1手法であるニューラルネットワーク (NN)は,脳機能に見られるいくつかの特性を計算 機上のシミュレーションによって表現することを目 指した数学モデルであり,図2に示すように,入力層, 中間層(隠れ層),出力層の3層から成り立つ。中間 深層学習 エネルギア総合研究所 企画グループ 中村 昭史 図1 人工知能・機械学習・深層学習の関係 図2 NN 図3 DNN [参考文献] 総務省,ICTスキル総合習得プログラム 講座3-5 http://www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_3_5.pdf表1 機械学習の分類

深層学習 - energia.co.jp · 深層学習は幅広い産業で適用されており,その応 用は多岐にわたるが,代表として,画像認識(顔画 像から性別や年齢を推定等),音声認識(声からの

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層では,前の層から重みを付されたデータを受け取り,全ての入力を足し合わせたものを活性化関数で変換し,次の層へ渡す。

(3)深層学習 深層学習は,ニューラルネットワークを拡張したもので,ディープニューラルネットワーク(DNN)と呼ばれ,高精度の分析や活用を可能にした手法である。DNNは,図3に示すように中間層(隠れ層)を2層以上に多層化したニューラルネットワークとなる。ニューラルネットワークを起源とする深層学習には,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)や再帰型ニューラルネットワーク(RNN)があり,主として前者は画像認識に,後者は自然言語処理に利用される。

3 深層学習の応用例

 深層学習は幅広い産業で適用されており,その応用は多岐にわたるが,代表として,画像認識(顔画像から性別や年齢を推定等),音声認識(声からの健康やストレスの検出等),音声合成(特定の人物の発声を真似る等),テキスト処理(議事録からの要旨作成等),翻訳,価格の予測(電力取引価格の予測等)などが挙げられる。

4 おわりに

 当グループでは,研究・開発へのAI活用を目指し,AIに関する基礎的技術の知見取得・蓄積を目的に,CNNを用いた画像認識を,当所技術グループと協同で取り組んでおり,成果についてはまたあらためて紹介したい。

用語解説

1 はじめに

 現在は第三次人工知能ブームとされ,様々な分野で人工知能(AI)の活用への期待が高まっている。このブームは,深層学習の登場が背景にある。深層学習の登場は,学習するために十分なデータが用意しやすくなったことと,ハードウェア等の進歩による計算速度の向上がタイミングよく重なったためといわれている。深層学習の登場により,音声認識や画像認識等の分野で,従来手法ではなしえなかった大幅な性能改善が実現した。

2 人工知能と深層学習の関係

 「深層学習」と「人工知能」の関係を図1に示す。

(1)機械学習 機械学習とは,明確な定義はないが,「データから規則性や判断基準を学習し,それに基づき未知のものを予測,判断する技術」を指す場合が多い。機械学習は,表1に示すように,「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに大きく分類される。

(2)ニューラルネットワーク 機械学習の1手法であるニューラルネットワーク

(NN)は,脳機能に見られるいくつかの特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデルであり,図2に示すように,入力層,中間層(隠れ層),出力層の3層から成り立つ。中間

深層学習

エネルギア総合研究所 企画グループ 中村 昭史

図1 人工知能・機械学習・深層学習の関係

図2 NN 図3 DNN

[参考文献]総務省,ICTスキル総合習得プログラム 講座3-5

(http://www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_3_5.pdf)

表1 機械学習の分類