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The Monthly Lecture Meeting 第 10 回 月例発表会 第 1 巻 10 号 同志社大学生命医科学部 医療情報システム研究室 Published by the Medical Information System Laboratory OF Doshisha University, Kyotanabe, Japan Vol.1 No.10 14 .February 2012

第10回 月例発表会 - Doshishais.doshisha.ac.jp/text/mlm/mlm010.pdfquestions 具合の悪い箇所 はどこですか?耳 鼻 のど その他 耳にはどのような 症状がありますか?耳が痛い

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The Monthly Lecture Meeting

第 10回 月例発表会

第1 巻 10 号

同志社大学生命医科学部

医療情報システム研究室

Published by the Medical Information System Laboratory

OF Doshisha University, Kyotanabe, Japan

Vol.1 No.10 14 .February 2012

Medical Information System Laboratory

The Monthly Lecture MeetingContents

Linked Dataを用いた問診票アプリケーションの構築

丸尾 亜希 . . . 1

角膜内皮細胞画像の特徴量自動抽出アルゴリズムの検討

布川 将来人 . . . 3

SVMと学習データ選択による医療データのクラス分類アルゴリズムの検討

大堀 裕一 . . . 5

クラウドを利用した光トポグラフィデータ解析システムの構築

大山 亮 . . . 7

Smith Waterman法の GPGPUによる高速化の検討

杉野 嘉紀 . . . 9

対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における

専門家の正常・異常判断基準抽出システムの構築

上堀 聖史 . . . 11

広域分散ファイルシステムを用いた画像保存通信システム

藤井 亮助 . . . 13

情動刺激に対する EEGによる脳波の検討

林 貴之 . . . 15

音環境が数字記憶課題の成績と脳血流変化に及ぼす影響の検討

星野 雄地 . . . 17

対話型遺伝的アルゴリズムにおける有効探索領域の縮小方法の検討

山里 真由 . . . 19

PVTと GO/NOGO Taskにおける

視覚刺激と聴覚刺激に対する脳血流変化の違いの検討

福島 亜梨花 . . . 21

刺激提示ソフトウェア“ Presentation ”を用いた

Psychomotor Vigilance Taskにおける測定精度調査

加藤 真輝 . . . 23

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op��,-.��,:YZc��Linked Data/��opp>�Web��[\ Q[³§�×�+,Í*/ÚG�2,*]¦�p, 2) :

部位具合の悪い箇所はどこですか?

主語 述語 目的語

耳Fig. 1 Example of triple3.2 "#��^_

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_�C�A¯+,Í*/�.,:

医師が作成した

質問項目が表示

病院

患者問診票アプリケーション

PANDA-D 表示される質問

にタッチして回答問診票の完成

医師

行政

提供

提供

問診票作成ツール

Linked Data形式

のデータ

医療機関

データの

取得

Fig. 2 S hemati diagram of proposal system3.3 ¶·¸����!��PANDA-DÛ<�����`�q= Qtuvw*m�¹º/×�+,

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�ò�H�opQtuvw��³�/ Fig. 4�` ��,:

部位

耳 鼻 のど

耳が痛い

聞こえにくい 耳だれ

聞こえにくい めまい Fig. 3 The onstru tion drawing of questions具合の悪い箇所

はどこですか?

耳 鼻 のど

その他

耳にはどのような

症状がありますか?

耳が痛い 耳だれ

聞こえにくい その他

このような症状

がありますか?

耳鳴り めまい

聞こえにくい その他Fig. 4 Question item

3.4 PANDA-D�����!�� Q PANDA-D�A¯£��8¦��]Y§�

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②名前・年齢

など基本情報を

入力

ni

④選択したもの

を一覧に出力

①STARTボタンを

タッチする③該当する選択

肢にタッチFig. 5 Operating pro edure4 7O+:,Û-.

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KOPQ1) Tom Heath Christian Bizer and Tim Berners-Lee.Linked data-the story so far. International Journaion Semanti Web & Information Systems,Vol5,Issue3,pp.1-22, 2009.2) RSTU, VWXY, ZS[\, ]^_, `ab, cdef,g^hi. jklXmnop Linked Open Dataqrsdtuvwxyz-LODAC Museum{|s. }X~�x�������������pp.409-416, 2011.

002

角膜内皮細胞画像の特徴量自動抽出アルゴリズムの検討

医療情報システム研究室  1E081051 布川 将来人

1 はじめに

近年,高齢化による角膜内皮細胞の減少,コンタクト

レンズや角膜移植手術などの普及による角膜損傷によっ

て,失明に至るケースが増加してきている.その主な原

因としてほとんど再生しない角膜内皮細胞と呼ばれる細

胞が損傷することにより,角膜の透明性を保つことがで

きなくなることがあげられる.

そこで,再生医療において培養した人口角膜内皮細胞

を移植することで角膜の治療を行う研究が進められて

いる 1) .角膜内皮細胞を培養するうえで,細胞密度や

形状がその細胞が正常に培養できているかの指標となる

ため,細胞画像から細胞数,大きさ,形状といった特徴

を計測することが重要になってくる.現在,細胞解析の

為に様々なソフトウェアが開発されているが,それらは

非効率な手作業が必要なものや,画像処理の知識が必要

なものなど,研究者の負担が大きいことが問題となって

いる.

そこで本研究では,細胞画像から細胞密度,形状と

いった特徴量を,画像処理の知識を必要とせずに自動で

計測可能なシステムの構築を目的としている.

本稿では,木構造の組み合わせ最適化手法である遺伝

的プログラミング(Genetic Programming:GP)2) を用

いて自動で画像処理フィルタ組み合わせることで,細胞

画像から細胞領域を抽出し,抽出した細胞領域から特徴

量を計測するアルゴリズムの検討を行う.

2 提案アルゴリズム

本稿では,角膜内皮細胞画像から細胞の特徴量を自動

で抽出すことを目的とし,下記に示す処理によって特徴

の抽出を行う.

step1 細胞画像から細胞領域を抽出

step2 細胞領域から特徴量を抽出

step1では,目的の画像処理を行う画像処理フィルタを

構築することによって,細胞領域を抽出する.step2で

は,step1で抽出した細胞領域に対して,ラベリング処

理を用いることによって細胞の数,大きさ,形状といっ

た特徴量を抽出する.

2.1 遺伝的プログラミングを用いた画像処理フィルタ

の構築

本稿では画像処理を既知の画像処理フィルタの組み合

わせ最適化問題として捉え,最適化問題の解を求めるこ

とで,目的の画像処理を行うことが可能な画像処理フィ

ルタを構築する 3) .フィルタの構築には,原画像と処理

目的に応じて適切に処理をした目標画像を学習画像セッ

トとして使用する.入力画像として原画像を与えたとき

に出力画像が目標画像と近似するように,フィルタの並

びを最適化することで Fig. 1のような木構造状フィル

タを作成する.作成した木構造状フィルタの終端ノード

に原画像を入力し,各ノードに対応した既知のフィルタ

の処理を順に行っていくことで出力画像が作成される.

このフィルタの最適な組み合わせの探索に,GPを用

いる.GPとは木構造状の組み合わせを最適化する自動

プログラミング手法であり,この GP を用いることに

よって,使用者は画像処理の知識なしに,必要な画像処

理フィルタを自動で構築することが可能である.

また,作成した木構造状フィルタの評価指標として式

(1)の評価関数を用いる.この評価関数では,出力画像

O(x, y)と目標画像 T (x, y)の各ピクセル値の差分によっ

て評価値を決定する.最大値を 1.0とし,Wxは画像の

横サイズ,Wy は画像の縦サイズ,Vmax は最大階調値

(255),kは学習画像セットのセット数を示す.

Fig. 1 Tree structural Image transformation

評価値 =1

k

K∑k=1

{1−

∑Wxx=1

∑Wy

y=1 |O(x, y)− T (x, y)|Wx ∗Wy ∗ Vmax

}(1)

2.2 細胞領域からの特徴量抽出

本研究では,細胞領域の画像から細胞数,細胞の大き

さを抽出する為に,ラベリング処理を用いる.ラベリン

グ処理とは,同じ連結成分に属するすべての画素に同じ

ラベルを割り当てる処理である.この処理を用いること

によって,画像内における異なる連結領域の数を計測す

ることができる.細胞領域に対してラベリングを行い,

連結領域の数を細胞数,領域内で連結している画素数を

細胞の大きさとする.

また,細胞の形状を計測するにあたって,角膜内皮細

胞では六角形の細胞がより正常な細胞と判断される為,

それぞれの細胞が六角形であるかを判断する.形状の判

断基準として,細胞が 3つ以上隣接している点を頂点と

考え,この頂点が 6つ存在する領域を六角形とする.こ

003

の判断基準を適用する方法として,細胞分割部分に隣接

している領域数をラベリングを用いて計測し,3つ以上

の領域が隣接している分割部分を頂点とする.そして,

それぞれの領域が隣接している頂点の数を計測し,6つ

の頂点に隣接している領域を六角形として計測する.

3 実験

3.1 実験概要

本実験では,提案アルゴリズムを用いて角膜内皮細胞

画像から細胞の特徴量を抽出する事を目的とする.

まず,角膜内皮細胞画像からの細胞領域を抽出する

フィルタを自動で構築し,構築したフィルタによって細

胞領域を抽出できるかどうかの検討を行う.また,構築

したフィルタを未知の画像(同一検体)に適応し,フィ

ルタの汎用性を確認する.次に,細胞領域を抽出した画

像から,2.2節で述べた手法を用いて特徴量として細胞

数,六角形細胞数,細胞の大きさの抽出を行う.

本実験で用いる対象画像を Fig. 2に,フィルタを構

築する際に用いる学習画像セットを Fig. 3に示す.Fig.

2はサルの培養角膜内皮細胞を位相差顕微鏡によって解

像度 150dpi,倍率 50倍で撮影された画像であり,Fig.

3 の原画像は,Fig. 2 からサイズ 100 × 100 で切り出

した画像である.また汎用性の確認に用いる未知画像と

は,Fig. 2から学習画像とは別の部分を切り出した画像

である.

Fig. 2 Cultured corneal

endothelial cell image

原画像 目標画像

Fig. 3 An original and its

target image

3.2 実験結果

3.2.1 細胞画像からの細胞領域抽出

実験によって構築したフィルタを原画像に適用した結

果を Fig. 4に,構築したフィルタを未知画像(同一検

体)に対して適用した結果を Fig. 5に示す.Fig. 4に

おける一致度とは 2.1節の式 (1)によって計算した値で

ある.

Fig. 4では目標画像に対して出力画像で計測できた細

胞数が僅かに多かった.これは,細胞の一部で過分割が

発生してしまった為だと考えられる.この結果から目視

でも確認できるように,僅かな誤差で原画像から細胞領

域の抽出を行うことができたと考えられる.また,Fig.

5でも一部で過分割が発生しているものの,ほとんどの

細胞領域を抽出できていると考えられる.

目標画像 出力画像

細胞数:53 細胞数:54

一致度:0.87

Fig. 4 Otuput result

未知画像1 未知画像3未知画像2

出力画像1 出力画像2 出力画像3

Fig. 5 Result of a new image

3.2.2 細胞領域からの特徴量抽出

Fig. 4,Fig. 5から特徴量を抽出した結果を Table. 1

に示す.Table. 1において,numは画像内の細胞の数,

6Eは六角形と認識した細胞数,AVEは細胞サイズの平均

値 (pixel),Maxは最大値 (pixel),Minは最小値 (pixel),

SDは標準偏差,ECDは細胞密度 (細胞数/mm2)を示

す.また,Table. 1における細胞数は,形状や大きさを

抽出するため,領域が完全に含まれている細胞のみを計

測した結果である.

Table. 1 Feature values of extracted images

パラメータ 出力画像 未知画像 1 未知画像 2 未知画像 3

num 30 20 24 296E   19 9 13 12AVE 124 195 149 130Max   178 306 223 216Min   54 80 82 66SD   117 224 164 129ECD 470 374 435 470

Table. 1に示すように,細胞の状態を判断するうえで

重要になってくる細胞密度や形状などを提案アルゴリズ

ムを用いることで自動で抽出できることが確認できた.

4 まとめ

本稿では角膜内皮細胞画像から特徴量を自動で抽出す

る事を目的とし,細胞画像に対して,遺伝的プログラミ

ングを用いて構築した画像処理フィルタを用いることに

よってほとんどの細胞領域を抽出することができ,自動

で特徴量抽出を行うことができた.今後,より正確な細

胞領域の抽出,その他の特徴量の検討,抽出した特徴量

データから細胞状態を判断できるようなアルゴリズムの

検討を行っていく必要がある.

参考文献

1) 小泉範子. 霊長類を用いた角膜内皮再生医療の開発. 日本眼科学会, 2008.

2) J.Koza. Genetic programming,on the programming of com-puters by means of natural selection. MIT Press, 1992.

3) AOKI S. Automatic construction of tree-structural imagetransformation using genetic programming. InternationalConference of Image Processing, Kobe, Japan, 1999, pp.529–533, 1999.

004

SVMと学習データ選択による医療データのクラス分類アルゴリズムの検討

医療情報システム研究室  1E081054 大堀 裕一

1 はじめに

近年,医療画像診断装置により医療診断の効率が向上

し,大量の医療データが存在する.例えば,腫瘍のある

特徴量が大きいと悪性であり,小さいと良性である 2つ

のクラスを持ったデータがある.ある患者の癌を診断す

る際には,このようなデータをもとに悪性であるか良性

であるか分類を行う.しかし,完全なクラス分離が困難

な場合,どのクラスに属するかを正確に分類することは

困難である.そこで研究目的としては,クラス分離が困

難なデータに対しても分類を可能とする手法を提案し,

今まで専門家が診断の際のクラスの判断に使用していな

かったデータも,判断の対象とすることである.

 本稿では,従来の 2 値分類学習法ではクラスの分離

が困難な問題を分離可能とする提案手法について述べた

後,提案手法を用いた実験とその結果を示す.

2 パターン認識

2.1 パターン認識とは

クラスが既知であるデータから未知のデータのクラス

を判断するという考え方は,パターン認識手法と呼ばれ

る.パターン認識手法とは,対象とするデータがクラス

と呼ばれるいくつかのグループに分類可能であるとき,

データを学習することによって未知のデータの属するク

ラスを推測する学習アルゴリズムである.学習に用いる

データを学習データという.

2.2 SVM

本研究では,識別能力に優れているSVM(Support Vec-

tor Machine)をパターン認識手法として用いる.SVM

の識別線から最も近いデータをサポートベクトル,識別

線からサポートベクトルまでの距離をマージンという.

SVMにおける学習とは,マージンが最大となるような

線形識別線を計算する事に相当する.SVMは汎化能力

に優れており,カーネルトリックによって非線形に拡張

することが可能である 1) .SVMの図を Fig.1に示す.

サポートベクトル

マージン

未知データは

識別線

クラス

Fig. 1 SVM

3 提案手法

3.1 提案手法の概要

提案手法では,結果を視覚化するため 2次元データで

行う.Fig.2のような学習データの分布の場合,完全な

クラスの分離が困難である.そこで,悪性と良性のデー

タが重複した領域は,クラスの判断が不可能な領域と

して,判断可能領域と判断不可能領域に分ける手法を提

案する.これは,提案した領域に分離できるように学習

データの組み合わせを選択することで実現する.Fig.3

は悪性のデータを選択した例である.するとクラスの分

離が不可能であったデータが,Fig.3のように悪性の領

域と,どちらかわからない領域に分離することができる.

学習データ選択の方法としてはデータの組み合わせ最適

化問題と捉え,最適化アルゴリズムによって行った.

 また,例のように 2クラスを持つデータには多数の特

徴量が存在する.クラスにあまり関係していない特徴量

で提案手法を行うより,関係性のあるもので行った方が

有効であると考えたため,データの中でクラスに最も関

係している特徴量を 2つ選択し,提案手法を行った.

悪性良性

判断不可能領域

判断可能領域

Fig. 2 An example of

learning data

悪性

良性

Fig. 3 Concept of pro-

posed algorithm

3.2 提案手法の実現

3.2.1 特徴パラメータの選択

2つのクラスの分布の違いが大きいパラメータほど,

クラスとの関係性が大きいと考えらえる.そこでパラ

メータの中から2つを選び,その全ての組み合わせにお

いて,それぞれのクラスの重心を求め,クラスの重心間

のマハラノビス距離 2) が最大となったパラメータの組

み合わせを選択した.マハラノビス距離とは相関に基づ

いた距離であり,小さいほどデータの分布の類似度が高

い.マハラノビス距離の式を以下に示す.

d =√(Ga −Gb)TS−1(Ga −Gb) (1)

005

ただし,Ga,Gbはクラスの重心ベクトル,S−1は共分

散行列の逆行列である.

3.2.2 最適化問題の定式化

n個のデータが与えられているとする.設計変数を学

習データの組み合わせとして,選択するデータを 1,選

択しないデータを 0でデータ長の 2値ビット配列で表

す.n個の中から k個が選択されたとき,学習データ数

は k個となる.

 与えられた学習データのクラスと,SVMによる分類

が異なれば誤識別となる.学習データ数が k個のとき,

学習データに対する誤識別率をErrとする.そこで,学

習データは全て正確に識別するという制約条件で,学習

データ数を最大化する.制約条件を満たさない場合,ペ

ナルティとして減じる.

max  k −α ∗ Err (2)

subject to  Err = 0 (3)

ただし,αはペナルティ係数である.

4 実験

4.1 実験概要

今回の実験の目的は,良性と悪性のクラスに最も関係

していると考えられるパラメータを 2つ選択し,クラス

の分離が不可能なデータを,提案手法を用いて悪性の領

域と,どちらかわからない領域に分けられるかを確認す

ることである.最適化アルゴリズムには,組み合わせ最

適化問題に適した遺伝的アルゴリズム 3) を用いた.ま

た SVMに関しては線形カーネルと 2次元多項式カーネ

ルを使用した.

4.2 実験環境

データセットは,UCI Machine Learning Repository

のデータである 10個のパラメータ,良性,悪性 2個のク

ラスからなる breast cancer4) のデータを用い,596個

のデータの中から 400個を対象データとした.特徴量を

Table.1に示す.

Table. 1 Feature of breast cancer特徴量

1   radius2   texture3   perimeter4   area5   smoothness6 compactness7   concavity8   concave points9 symmetry10   fractal dimension

4.3 実験結果

4.3.1 特徴量選択の結果

Table.1に示した全てのパラメータの組み合わせにお

いてマハラノビス距離を求めた結果,textureと concave

pointsの場合に最大値 6.39を示したため,この 2つを

実験に用いた.また,全組み合わせにおいての平均値は

3.71,標準偏差は 2.66となった.

4.4 提案手法による実験結果

Fig.4に実験に用いたデータ,Fig.5,6に実験結果を示

す.線形 SVMの場合,学習データ数は 276個,2次元

多項式 SVMの場合,学習データ数は 323個となった.

良性悪性

texture (gray-scale value)

Concave points(10^2×%)

Fig. 4 Breast cancer data

良性悪性

texture (gray-scale value)

Concave points(10^2×%)

Fig. 5 Linear SVM

良性悪性

texture (gray-scale value)

Concave points(10^2×%)

Fig. 6 Polynomial SVM

5 まとめ

本稿では,SVMでは完全な分離が困難な 2クラスデー

タに対して,一方のクラスのデータを選択し,判断可能

領域と不可能領域に分ける手法を提案した.学習データ

の組み合わせを設計変数とし,誤識別が 0という制約条

件で学習データ数を最大化する最適化問題とすることで

実現した.クラスと最も関係性の高い特徴量を選択し,

実験を行った結果,提案した領域に分けることができた.

参考文献1) 阿久津達也,”バイオインフォマティクスの数理とアルゴリズム”,共立出版,2007

2) 杉山一成,奥村学,”半教師有りクラスタリングを用いたWeb 検索結果における人名の曖昧性解消”,言語処理学会論文誌 自然言語処理, Vol.16, No.5, pp.23-49, 2009

3) 棟朝雅春,”遺伝的アルゴリズム:その理論と先端的手法”,森北出版,2008

4) UCI Machine Learning Repository,http://archive.ics.uci.edu/ml/datasets.html

006

クラウドを利用した光トポグラフィデータ解析システムの構築

医療情報システム研究室  1E081057 大山 亮

1 序論

近年,医療機器の高性能化により医療データの量は膨

大なものになりつつある.それにより,膨大なデータの

保管場所の確保や管理に多大な費用がかかることや膨大

なデータを処理するためのシステム及びそのシステムを

十分なパフォーマンスで動かすことのできるコンピュー

タが必要になることが問題となっている.2010年より医

療データの外部保存が可能になったこともあり 1) ,こ

れらの問題の解決のために医療分野におけるクラウドの

実用化が進んでいる 2) .

これらの問題は医者等の医療従事者に限ったものでは

なく,医療機器を用いた研究を行う研究者においても膨

大なデータ処理の問題は付き纏う.そこで本研究では医

療機器の 1つである光トポグラフィ装置におけるデータ

解析の問題を考え,クラウドを利用したシステム構築に

よりその解決を図った.

2 研究概要

2.1 研究目的

本研究では,Microsoft社が提供するクラウドサービ

スであるWindows Azure Platformを用いて,光トポグ

ラフィデータの解析システムを webサービスとして構

築することを目的とする.研究の概要を Fig. 1に示す.

光トポグラフィ装置とは脳研究や脳検査に利用される

多チャンネル計測装置である.例えば,ETG7100(日

立メディコ)では全部で 116個のチャンネルを持つ.さ

らに,各チャンネルから得られるデータは複数種類存在

し,それぞれの時系列データが csvファイルで出力され

る.よって最大で数百種類もの多量の時系列データが得

られることになるが,それにより以下のような問題が考

えられる.

• 汎用的な解析ソフトでデータ解析を行うと手間が非常に大きい

• 解析に複数の PC を用いる時等,全てのデータを適切に管理するのが大変である

Fig. 1 Research outline

• 解析者の PC の処理性能が低いと多量のデータ解析に時間がかかる

これらの問題を解決しデータ解析の効率を向上させる

ためのサービスを,クラウドコンピューティングを利用

することで提供する.次節でクラウドコンピューティン

グについての説明を述べる.

2.2 クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングは,ネットワークを通じ

てシステムをサービスとして利用する形態を指すもの

としてよく用いられる.このシステムとはソフトウェア

でもハードウェアでも有りえ,ネットワークさえあれば

OSやブラウザに依ること無く必要なサービスを利用す

ることができる 3) .クラウドコンピューティングのメ

リットとして以下の点が挙げられる.

• データ量が増大してもユーザが保管場所について考える必要がない

• ネットワークさえあれば,どこにいてもどの PC からでもサービスを利用できる

• 処理性能がユーザの PCに依存せず,スケーラビリティの確保が容易

これらのメリットを活かすことで光トポグラフィの

データ解析における問題を解決できると考えられる.次

節で構築する提案システムの概要について述べる.

2.3 提案システム概要

提案するシステムの概要を Fig. 2に示す.ユーザは

解析システムをWebサービスという形で,ネットワー

クを通じてWebブラウザ上で利用する.ユーザは光ト

ポグラフィデータである csvファイルをアップロードす

ることで,そのデータの解析が可能になる.アップロー

ドされたデータはデータベースに保管され,一度アップ

ロードすれば以後はそのデータが手元に無くても利用す

ることが可能になる.解析システムには光トポグラフィ

データの解析に特化した解析機能が備わっており,それ

らを利用することで解析の負担が大きく軽減されると考

Database

Network

Web browserAnalysisSystem

File(.csv)

Analysis

Commands

AnalysisResultWeb browser

Fig. 2 Schematic diagram of proposal system

007

Fig. 3 Example of a screen interface

える.次章で以上の概要に基づいて構築を行ったシステ

ムの仕様について述べる.

3 提案システムの利用

システムを利用するためのインタフェース画面の例を

Fig. 3に示す.上部ボタンからそれぞれ,データの編集,

データのグラフ化,データの解析処理のための画面を呼

び出すことができる.

データの編集画面では,csvファイルのアップロード

や編集・削除,ファイルの検索などができる.データの

グラフ化画面では,選択したデータのグラフを描画する

ことができる.1つのチャンネルのグラフ化に加え,ま

とまった部位毎の一括でのグラフ化も可能となっている.

複数のデータを同一のグラフ上に描画し比較を行うこと

もできる.データの解析処理画面では,選択したデータ

に対し様々な解析処理を行うことができる.実装した解

析機能の詳細をTable. 1に示す.NIRSの解析を行う上

で一般的に行われる処理を実装した.

4 性能確認実験

web上のシステム構築において考慮しなければならな

い点としてスケーラビリティの問題がある.Windows

Azureでは,インスタンスというプログラムを実行する

仮想マシンの数を容易に変更することができ,それによ

り高いスケーラビリティを実現できるとされている.

スケーラビリティの確認のためベンチマークを用いて

同時接続数を増やしていったときの処理時間の推移につ

Table. 1 Details of analysis capabilities

解析機能名      機能説明

グラフ化 指定した時系列データをグラフ化し,グラフを

画面に出力する.

平均値・積分値算出 指定した時系列データの平均値・積分値を算出

する.

ベースライン処理 データの基準を合わせる処理で,処理後のデー

タやそのグラフを出力する.

検定 指定したデータ間に有意差があるかの検定を行

い,検定結果を出力する.

Fig. 4 Investigation of performance

いて調査を行った.処理には 100 個のチャンネルをグ

ラフ化するというプログラムを使い,同時接続数は 1,

2,4,8,16,32と増加させた.この調査を,Windows

Azureのインスタンス数が 1,2,4,8のときの合計 4

パターンで行った.また,各パターンの試行回数は 100

回でその平均値をとった.調査の結果を Fig. 4に示す.

横軸が同時接続数,縦軸が 1回の処理にかかる時間 [ms]

となっている.凡例の Iはインスタンス数を示す.

Fig. 4から次のことがわかった.同時接続数がインス

タンス数以下の場合処理時間は変化しない.一方,同時

接続数がインスタンス数より大きくなると処理時間は増

加する.また,インスタンス数が大きくなるほど増加率

は小さくなる.このことから,インスタンス数に応じて

分散して処理が行われており,インスタンス数を大きく

することで容易にスケーラビリティの確保が可能である

ことが確認できた.

5 結論

本研究ではクラウドを利用して光トポグラフィデー

タを解析するためのシステム構築を行った.光トポグラ

フィデータの量が多いことによる問題として,データ解

析に手間がかかる,データの適切な管理が大変である,

PCの処理性能によっては解析処理に時間がかかる,と

いう点が挙げられた.これらの問題に対し,光トポグラ

フィデータに特化した解析機能を実装する,クラウド上

で一元的なデータ管理を行う,クラウド上の仮想マシン

で処理を行う,という方法で解決を図った.Webサー

ビスを実用する際にはスケーラビリティの問題を考えな

ければならないが,インスタンス数を調整することで大

規模アクセスにも耐えられることが実験からわかった.

以上から光トポグラフィデータの解析における問題を解

消するシステムを構築することができたのではないかと

考える.

参考文献

1) 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第 4.1 版. 厚生労働省,2010.

2) 木村映善. 診療情報の外部保存手段としてのストレージクラウドに関する検討. 電子情報通信学会, Vol. 109, No. 217, pp. 35–40, 2009-09-30.

3) 北原宗律. クラウドにおけるデータ保全とプライバシー問題. 経済科学研究, Vol. 15, No. 1, pp. 77–94, 2011-09-30.

 

008

Smith Waterman法のGPGPUによる高速化の検討医療情報システム研究室  1E081063 杉野 嘉紀

1 はじめにバイオインフォマティクスの分野において,DNAの

塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列の解析のために類似部分の探索が行われている.その類似部分の探索に文字列検索アルゴリズムの 1つである Smith Waterman法 1) が用いられている.DNAを対象とする場合完全に一致するものを探索するだけでなく変異についても考慮する必要があるが,Smith Waterman法は不一致や空白も考慮して類似部分の探索が可能なアルゴリズムであり DNA探索に適している.しかし,DNAの塩基配列が格納されているデータベースのデータ数は膨大であり探索には多くの時間を要するという問題がある.また,Smith Waterman法を用いた応用的な研究としては時系列データの類似部分抽出に用いる研究がある 2) .  Smith Waterman法の高速化に関する研究には,並列性が高いことから多数のコアを持つ GPU(GraphicsProcessing Unit)を用いたものがある.しかし,GPGPU(General-Purpose computations on Graphics Process-ing Units)と呼ばれる汎用計算でのGPUを利用を行う際,CPU(Central Processing Unit)とは異なるGPU特有の構造に起因する性能向上の制約があることを考慮しプログラムを実装する必要がある.また性能を向上させる手法がいくつか知られているが,対象問題によってそれぞれの有効性が異なる. 本研究では,Smith Waterman法の GPGPUによる高速化についての検討を行った.

2 Smith Waterman法2.1 概要

Smith Waterman法は配列の類似度を調べる相同性検索手法の1つであり,バイオインフォマティクスの分野においてDNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列の探索などに用いられている.Smith Waterman法には不一致や空白も考慮して類似部分の探索が可能という特徴があり,変異についても考慮する必要があるこれらの問題に適している.この手法を用いることで 2つの文字列において最も類似度が高い部分文字列の組の抽出が可能である.Fig. 1に抽出例を示す.

Fig. 1 Extraction of similar parts

2.2 並列性Smith Waterman法において,Fig. 2のようなスコアテーブルを用いて部分文字列の類似度を表すスコアを求める過程がある.スコアは対応する部分文字列の組を持ち,その値は対応する文字列が類似しているほど大きな値を取る.スコアを計算をする際にテーブル上の左上,左及び上に位置する値を用いるために,Fig. 2に矢印で示すような依存関係がある.従って対角線上にある値は並列に計算可能であり,高い並列性を持つ.

Fig. 2 Score calculation using the score table

3 GPUを用いた Smith Waterman法の実装3.1 GPUの概要

GPUは画像処理を行うために特化した専用プロセッサであり,PC内のビデオカードやゲームコンソールなどに搭載されている.GPUは CPUに比べ多くの演算コアを持つため並列に処理させることで高い性能が得られる.しかし,GPUはCPUとは構造が異なるので,汎用計算に用いる際にはその構造を考慮する必要がある.

3.2 実装GPUを汎用計算に用いることを目的とした統合開発環境に NVIDIA社の CUDA(Compute Unified DeviceArchitecture)がある.本研究ではこれを用い以下のような 4通りの実装を行った.

• GPU-SW1:GPUを用いて 2.2節で示した対角線上の値を並列に計算する Smith Waterman法プログラムである.スコアテーブルはグローバルメモリに配置する.

• GPU-SW2:GPU-SW1を改変したプログラムである.プログラムはグローバルメモリに配置された値にアクセスし処理を行うが,離れている領域にアクセスする場合は隣接している領域にアクセスする場合に比べ時間を要する.従って,隣接する領域に連続

009

してアクセスするように変更することで性能の向上が期待できる.このプログラムでは隣接する領域に連続してアクセス可能なようにスコアテーブルのグローバルメモリ上での配置を変更した.

• GPU-SW3:GPU-SW1を改変したプログラムである.GPUにはシェアードメモリと呼ばれるグローバルメモリに比べ高速小容量なメモリがある.このメモリ上に利用頻度の高いデータを格納することでグローバルメモリへのアクセスを削減した.

• GPU-SW4:GPU-SW1を改変したプログラムである.GPUはチップ内のリソースの殆どを演算に割り当てており制御部分が少なく,分岐処理能力は低いという特徴を持つ.プログラムにはループ処理が含まれるが,そのループのたびに分岐処理が生じる.そこで,このプログラムでは一度のループでの処理を増やすことによりループ回数を削減することで分岐処理の回数を削減した.

4 評価実験4.1 実験概要

GPUを用いた Smith Waterman法プログラムに対する実装方法の評価を行い,その結果から性能向上の制約となる部分について調査を行う. 実験環境を Table. 1に示す.

Table. 1 machine specification

パラメータ 値OS Mac OS X 10.6.8

CPU Core 2Duoメモリ 4GBGPU GeForce 320M

グローバルメモリ 253MB開発環境 CUDA 4.0

英字 26文字からランダムに生成した文字列の組を対象に,プログラムの評価を行った.512,1024,2048,4096文字からなる文字列の組に対し,3.2節で示した 4種類のプログラムのスコアを全て求めるのに要する時間の比較を行った.

4.2 実験結果それぞれの文字数における各実装での処理時間を Fig.

3に示す.全ての文字数においてGPU-SW2及びGPU-SW3はGPU-SW1に比べ計算時間が短いのに対し,GPU-SW4はGPU-SW1との計算時間の差はあまり見られなかった.また,GPU-SW1 を基準とした速度向上率をTable. 2 に示す.この結果から GPU-SW2及び GPU-

SW3は文字数が増えるにつれGPU-SW1に対する速度が向上していることがわかる.

Fig. 3 Execution time for score calculation

Table. 2 Speedup compared with the GPU-SW1

GPU-SW2 GPU-SW3 GPU-SW4

512文字 1.3 1.2 1.0

1024文字 1.4 1.3 1.0

2048文字 2.2 1.3 1.0

4096文字 2.2 1.4 1.0

4.3 考察Fig. 3の結果から,GPU-SW4は GPU-SW1との計算時間の差はあまり見られないのに対し GPU-SW2及びGPU-SW3はGPU-SW1に比べ計算時間が短いことがわかる.GPU-SW4は分岐命令の削減を行ったものでありGPU-SW2及びGPU-SW3はグローバルメモリへのアクセスの高速化及び削減を図ったものであることから,分岐命令よりもグローバルメモリへのアクセスが性能向上の制約になっていると考えられる.

5 まとめ本研究では,文字列検索アルゴリズムの 1 つである

Smith Waterman法を対象とし,GPUを用いた実装方法について検討を行った.統合開発環境 CUDAを用いてGPUを利用した Smith Waterman法の実装を行った場合,グローバルメモリへのアクセスが性能向上の制約となりうるという結果を得た.

参考文献1) T.F.Smith and M.S.Waterman. ”Identification of

Common Molecular Subsequences”. Journal ofMolecular Biology, Vol. 147, pp. 195–197, 1981.

2) 廣安知之, 西井琢真, 吉見真聡, 三木光範, 横内久猛.”相同性検索を用いた 2つの時系列データからの類似部分抽出手法とDTWによる類似部分の評価”. 情報処理学会研究報告. MPS, 数理モデル化と問題解決研究報告, pp. 1–6, 2010.

010

対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における専門家の正常・異常判断基準抽出システムの構築

医療情報システム研究室  1E081077 上堀 聖史

1 はじめに近年,病気や機能不全に陥った組織や臓器を再生する

再生医療が発展しており,角膜における再生医療もそのうちの 1つである.角膜は上皮層,ボーマン膜,実質層,デスメ膜,および内皮層の 5 層から構成され,内皮層に存在する角膜内皮細胞は,角膜の透明性維持に必須である 1) .医療では,組織や細胞の状態を確認する方法として,専門家による画像診断が多く用いられている.その際,専門家は主観的な判断により,組織や細胞の状態を判断しているが,主観的判断では状態の境界は不明瞭であると考えられる.例えば,角膜内皮細胞においては,六角形の同程度の大きさの細胞が規則的に敷き詰められていれば正常と判断し,大小不同の不整形の細胞が並んでいれば,正常ではないと判断すると思われる.しかし,どちらとも言えないような特徴をもつ場合,判断も曖昧であると考えられる.本研究では,角膜内皮細胞における状態の判断基準を

抽出することを目的としている.そのため,状態判断に用いる疑似角膜内皮細胞画像,および最適化手法の 1つである対話型遺伝的アルゴリズム (interactive GeneticAlgorithm:iGA)を用いたシステムを生成した.このシステムは,専門家の判断に依存して疑似角膜内皮細胞画像のもつ特徴が変化し,結果,専門家の判断に即した特徴をもつ疑似角膜内皮細胞画像を生成する.本稿では,疑似角膜内皮細胞画像の生成,本システム概要,およびシステムの評価について述べる.2 疑似角膜内皮細胞画像本システムでは,様々な特徴をもつ角膜内皮細胞画像

が必要とされる.実画像は有限であるため,あらゆる特徴を網羅するのは困難であると考えられる.そのため,角膜内皮細胞の疑似画像を,離散ボロノイ図を用いて生成した.本章では,離散ボロノイ図,および生成結果について述べる.2.1 離散ボロノイ図ボロノイ図とは,平面上に与えられた点集合の中で,

平面上の点が点集合の中のどの点に最も近いかによって平面上の領域をいくつかの小領域に分割した図である 2)

.平面上に与えられた点集合を母点といい,母点の数は分割される領域数に相当する.ボロノイ図でできた領域をボロノイ領域,領域の境界線をボロノイ線という.離散ボロノイ図は,ディジタル画像において作成可能なボ

(a) Actual image (b) Pseudo image

Fig. 1 Images of corneal endothelial cells

ロノイ図である.上記の原理のように,ディジタル画像中のピクセルが,どの母点に最も近いかにより領域を分割し生成する.2.2 生成結果生成した疑似角膜内皮細胞画像の結果を Fig. 1の (b)に示す.Fig. 1 の (a) が実画像である.画像サイズを500 × 500で生成したものを,一部切り取った画像である.六角形が並ぶようなボロノイ図が生成するよう母点を配置し,その座標よりランダムで変動させた.これは,正常とされる角膜内皮細胞が,六角形が並列した構造をとることを考慮したためである.また,現状では細胞の色は考慮していないため,疑似画像はグレースケール画像で生成した.3 対話型遺伝的アルゴリズム対話型進化計算法 (Interactive Evolutionary Compu-

tation:IEC) の一つである iGAは,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)の処理のうち,評価の部分を人間が行う事で解探索を行う.人間の印象や好みのような数式化できない問題を,人間の感性を用いて評価できるという特徴がある.専門家の判断基準も同様に数式化できない問題であり,本手法が適したものであると考えられる.本研究では,iGAのうち,トーナメント方式による一対比較を用いた対話型遺伝的アルゴリズム (Paired Com-parison interactive Genetic Algorithm:PC-iGA)を用いた 3) .トーナメント方式によるPC-iGAでは,始めに解候補数に応じたトーナメント木を作成し,一般的なトーナメント方式同様,勝ち,負けを判定する.このとき決定した勝敗に基づいて遺伝的操作を適用する.PC-iGAでは,一回戦から決勝戦まで,次戦で対戦する解候補同士を親として交叉し,生成された子個体に突然変異を行う.この解候補を,各親個体の敗者となった個体と置き換える.これらの処理を決勝まで行い,1世代とする.優勝した個体は,エリート個体として次世代に引き継ぐ.決勝で敗者となった個体は,優勝した個体に突然変異を

011

Fig. 2 Flowchart of the PC-iGA

Fig. 3 User interface of the proposed system

行った個体に置き換わる.設計変数は,疑似画像における六角形生成母点の座標からの変動の倍率である.座標は -31~31までランダム値で変動し,倍率は -1~1の実数値をとる.Fig. 2は,PC-iGAのフローチャートを示している.

4 提案システム4.1 概要

Fig. 3に,前章で述べたアルゴリズムを用いたシステムのインターフェースを示す.本システムの画像は,生成した疑似角膜内皮細胞画像である.Fig. 3の右端の画像は,前世代までのエリート個体であり,左端および中央の画像が一対比較の対象となる画像である.始めにスタートボタンを押すと画像が表示され,ユーザは,どちらか一方の画像を選択する.例えば,正常な状態の判断基準を抽出するという目的の場合,ユーザは画像を比較し,正常な状態に近いと判断した画像を左右のボタンを押すことで選択する.その後,スタートボタンを押すと,トーナメント木における次戦の画像が表示される.決勝戦を終えて 1世代が終わると,エリート個体が右端に表示される.以上のように,ユーザは,スタートボタンと左右どちらかのボタンを押す操作を交互に繰り返す.この操作を行っていくことで,個体のもつ特徴が,ユーザの判断基準に即したものに近似していく.

4.2 予備評価実験本システムにより,判断基準が抽出可能であることを

確認する.方法として,判断基準が領域面積の標準偏差が小さいものであると定めた上で,インターフェースに

Fig. 4 Elite individuals for 5 generations

Table. 1 Standard Deviations(SD) of region area onelite individuals

Generations 1th 2th 3th 4th 5th

SD [pixel] 317 220 140 115 114

表示された一対の個体のうち,領域面積の標準偏差が小さい個体を常に選択する.Fig. 4に,以上の方法の下で,5世代を 1試行行った結果,各世代に生成されたエリート個体を示す.また,各世代でのエリート個体の領域面積の標準偏差を Table. 1に示す.

Table. 1において,世代の進行に伴い,エリート個体での領域面積の標準偏差が小さい値となっている.この結果により,本システムは,領域面積の標準偏差という判断基準を抽出したと考えられる.

5 まとめ角膜内皮細胞の状態判断基準を抽出するため,iGAを用いたシステムを提案し,その性能評価を行った.領域面積の標準偏差を判断基準とし,判断基準の抽出の可否を予備評価実験として試みた.結果,本システムが正常に判断基準を抽出できたことを示した.システムに用いる画像は疑似角膜内皮細胞画像を用い,画像は離散ボロノイ図で生成した.本システムでは,現時点では角膜内皮細胞の面積のばらつき,形状にのみ限定されている.今後,他のパラメータを考慮したシステムを生成し,専門家による実験を行うことを課題としている.

参考文献1) Kazuo TSUBOTA and Shin HATO. Corneal disease and

regenerative medicine. TRENDS IN THE SCIENCES,Vol. 15, No. 7, pp. 8–13, 2010.

2) 神田毅, 杉原厚吉. 最小 2乗法によるボロノイ図あてはめ.数理解析研究所講究録, Vol. 1297, pp. 125–135, 2002.

3) 渡辺芳信, 吉川大弘, 古橋武. 一対比較に基づく対話型遺伝的アルゴリズム. 情報処理学会研究報告, Vol. 82, No. 2,pp. 69–72, 2007.

012

広域分散ファイルシステムを用いた画像保存通信システム医療情報システム研究室  1E081006 藤井 亮助

1 はじめに近年,実験技術の進歩により,研究機関で扱うデータ

数が増大し,データの管理方法が問題となっている.例えば,細胞の培養実験において,培養薬品や培養回数などの様々な条件下での細胞の様子を観察するため,一度の実験で数百枚を超える細胞画像が撮影されている.こうした膨大なデータ量の単一サーバ管理では,記憶容量の問題があるため,複数のサーバに分散して保存するのが一般的である.しかし,複数のサーバに保存された多数のファイルの中から,ファイル名などの少ない情報を手掛かりに目的のファイルを探し出す事は非効率である. そこで本研究では,分散保存されたファイルに対して様々なメタ情報からの検索を行い,検索効率を向上させるシステムを提案する.現在,画像ファイルと同時にメタ情報が付記されたXMLファイルが出力される撮影機器が多く存在する.提案システムでは,2層のサーバを構築し,ファイル保存サーバに画像ファイルを保存する一方,検索サーバにファイル保存先情報とXMLを管理する.利用する際には,検索サーバ内で検索を行い,目的のファイルをファイル保存サーバから取得できる.さらに,本稿では一般のユーザにとっても利用しやすいシステムを構築するため,GUI(Graphical User Interface)による実装も行った.

2 提案システム2.1 システム概要本研究では,ファイルのメタ情報からの検索を可能に

し,検索効率を向上させるシステムを提案する.提案システムの概略図を Fig. 1に示す.

Fig. 1 The schematic view of a proposal system

 本システムのサーバ構成は,実体ファイルの保存を行うファイル保存サーバと,分散保存されている実体ファ

イルに対して,保存先やメタデータの情報を手掛かりにファイル検索を行う検索サーバの 2 層からなる.検索サーバには,複数のファイル保存サーバに分散保存されている実体ファイルの保存先やファイル名などのメタ情報を全て保持している.ファイルを取得したい場合,検索サーバから条件に合うファイルを探し出すことにより,各ファイル保存サーバに直接アクセスすることなく目的ファイルを探し出すことができる.また,「撮影部位」「使用薬品」などのメタ情報をユーザの任意で追加することによって,より効率的な検索を目指す. 本研究では,ファイル保存サーバと検索サーバの管理,およびメタ情報の追加を行うため,広域分散ファイルシステムGfarmとそのGfarmの独自機能であるXML拡張属性を利用する.

2.2 広域分散ファイルシステムGfarm

2.2.1 Gfarmの概要Gfarm1) は,グリッド向けファイルシステムとして研究開発が進められ,I/Oサーバとメタデータサーバの2 層のサーバから構成される分散ファイルシステムである.メタデータサーバは,実際のデータの所在などのメタ情報を管理を行い,I/Oサーバは実際のデータの格納先となるサーバである.Gfarmにデータが保存される際,I/Oサーバに分散して保存され,そのデータのメタ情報をメタデータサーバが保持する.また,検索時は,メタデータサーバに保持しているメタ情報を利用して,必要とする画像ファイルを検索する.

2.2.2 XML拡張属性メタデータサーバはデータの保存先の管理だけでなく,XML形式のデータを保存データと関連付けて格納するメカニズムを有している.この機能は XML拡張属性と呼ばれ,他の分散ファイルシステムにはないGfarmの独自機能である.XML拡張属性により,ユーザは保存するデータに検索情報となるキーワードを追加することができ,膨大なデータからでも高速な検索を可能とする.

3 システムの実装3.1 システム構成本実装システムでは,ファイル保存サーバ,および検索サーバをそれぞれGfarm I/Oサーバ,およびGfarmメタデータサーバとして実装を行った.I/Oサーバは実体ファイルを保持し,メタデータサーバはメタ情報を保

013

持する.検索を行う際は,メタデータサーバ内で検索が行われる. また,本システムの実装では,一般ユーザにとって利用しやすいようWebブラウザを利用したGUI上での実装を行った.ユーザはWebサーバに対してアクセスを行い,Webサーバがファイルの保存,検索,取得,およびメタデータ情報の追加を行う実装となる.

3.2 実装環境本実装システムに使用したサーバは,Gfarmメタデー

タサーバ× 1 台,Gfarm I/Oサーバ× 2 台,Web サーバ× 1 台である.各サーバの仕様を Table. 1に示す.

Table. 1 Specification of a server

Web サーバ メタデータサーバ I/O サーバ

CPU 2.3 GHz 2.3 GHz 2.3GHzMemory 4 GB 2 GB 2 GB

OS OS X lion Debian6.0 Debian6.0gfarmv2 2.5.1 2.5.1 2.5.1gfarm2fs 1.2.4 1.2.4 1.2.4

3.3 実装システムの機能実装システムでは,GUI上から以下の 3 点を行うこ

とができる.

• メタ情報の追加メタ情報の追加を行うインタフェースを Fig. 2に示す.ユーザは,入力項目から「撮影部位」「撮影日時」「使用薬品」等の情報を実体ファイルのメタ情報として入力する.その後,入力情報を基にXMLファイルが作成される.

Fig. 2 Interface of adding meta-data

• ファイル保存ファイル保存時に使用するインタフェースを Fig.3 に示す.ファイル保存時には,保存したいファイルとメタ情報として関連付けたい XMLを選択する.選択されたファイルは I/Oサーバに保存され,XMLがメタデータサーバに登録される.

Fig. 3 Interface of saving files

• ファイル検索・取得ファイル検索・取得時に使用するインタフェースをFig. 4に示す.検索キーワードを指定すると,メタデータサーバへアクセスを行い,検索キーワードとメタデータサーバに保持されている情報が適合するファイル名の一覧がWebブラウザに表示される.ファイル取得時には,ファイル名一覧からファイルを指定し,ファイルを取得することができる.

Fig. 4 Interface of searching and getting files

4 まとめ研究機関の膨大なデータは,複数のサーバに分散保存されている場合がある.しかし,複数のサーバに保存されている多数のデータの中から,目的ファイルを検索することは困難である. そこで,様々なメタ情報からの検索を可能にし,またメタ情報をユーザの任意で追加できるシステムを提案した.提案システムは,ファイル保存サーバと検索サーバの 2 層のサーバから構成される.また本稿では,一般ユーザにとって利用しやすいシステムを構築するため,GUIでの実装を行った.

参考文献1) Osamu Tatebe, Kohei Hiraga, and Noriyuki Soda.

Gfarm grid file system. New Generation Comput-ing, Vol. 28, pp. 257–275, 2010. 10.1007/s00354-009-0089-5.

014

情動刺激に対するEEGによる脳波の検討医療情報システム研究室  1E081013 林 貴之

1 はじめに人間の情動に関する研究は,以前から注目されている.

情動とは,感情と感情に伴う身体的変化,自律神経変化,心理変化のすべてを含む過程である.この情動の脳内処理は,前頭部の左右で違うとされており,Davidsonのモデルによると,快情動は左前頭部の賦活に,不快情動は右前頭部の賦活に関係する 1) .この左右の違いについて脳波計 (Electroencephalograph:EEG)を用いて研究が行われており,左右のα帯域パワー値を用いて検討されている.本研究では,快,不快,中性の 3 種類の画像を用いて被験者に情動想起させ,その際のα帯域パワー値について検討した.

2 脳波2.1 脳波とは脳波とは,脳から生じる電気活動である.人の脳内に

は約 140億個の神経細胞が存在するといわれている 2)

.神経細胞は,本体の細胞体,信号受信を行い分岐し周囲に伸びる多数の樹状突起,信号出力を行う軸索からなる.神経信号が送られる際には,電位が発生する.これを測定するのが EEGである 3) .

2.2 EEGを用いた情動の研究情動についての研究のひとつとして,前頭部脳波の左

右差が挙げられる.この分野の研究では,様々な感情喚起刺激が用いられており,特定の情動を喚起するような文を読ませて情動を喚起させる方法であるVelten法,画像呈示による想起などが挙げられる.このように様々な情動喚起刺激を用いて,前頭部脳波の左右差についての検討が行われている.本実験では,その中でも画像呈示における情動喚起刺激を行った.

3 実験概要3.1 実験目的本実験の目的は,視覚情動刺激である 3種類 (快,不

快,中性)の画像を呈示し,被験者が視覚刺激を行った際のα帯域パワー値を検討することである.

3.2 実験設計21歳,22歳男性健常者 2名を被験者とし,視覚情動

刺激の実験を行った.Fig. 1にタスクシーケンスを示す.• タスク (10秒)

快,不快,中性の画像をランダムに 1枚づつディスプレイを用いて被験者に呈示した.各画像 10枚

刺激画像

 呈示

12 秒

黒画面

注視

10 秒

黒画面

注視

1セット

刺激画像

 呈示 … 刺激画像

 呈示

30 セット

Fig. 1 Task sequence

づつ (計 30枚)を呈示した.

• レスト (12秒)

開眼状態で,何も考えずに黒い画面を注視してもらった.

• アンケート

画像評価に用いられる Self Assessment Maniki(SAM) を用いて,画像に対する誘発性,覚醒および支配性について評価してもらった.

3.3 計測機器本実験では,増幅器としてデジテックス研究所のPoly-

mate AP1000を使用した.電極の設置方法は,国際 10-20 法に従い,基準電極を耳朶,接地電極を Fpz にし,F3,F4で計測を行った.Fig. 2に計測部位を色づけした図についてに示す.

NASION

INION

Fig. 2 Measurement position

また,サンプリング周波数は 200[Hz]で,High passfilter を 0.5[Hz],Low pass filter を 30[Hz] に設定し,単極誘導で脳内電位を導出した.

4 実験結果測定した脳波を高速フーリエ変換 (FFT)して,周波数ごとのパワースペクトルを求めた.さらに,画像呈示時におけるα帯域パワー値の増減について検討を行うた

015

めに,各測定部位のα波帯域 (8~13Hz)パワー値を算出した.被験者Aの快画像提示時におけるα帯域パワー値を Fig. 3に,不快画像提示時におけるα帯域パワー値を Fig. 4に示す.

Fig. 3 Comparison of α power (subject A:pleasant)

Fig. 4 Comparison of α power (subject A:unpleas-ant)

また,被験者 Bの画像呈示時におけるα帯域パワー値を Fig. 5に,不快画像提示時におけるα帯域パワー値を Fig. 6に示す.また,体動によるアーチファクトのため,画像番号 4は検討から外した.

Fig. 5 Comparison of α power (subject B:pleasant)

5 考察Fig. 3に示すとおり,快画像呈示時において,F4より

も F3の方がα帯域パワー値が低くなった.よって,快

Fig. 6 Comparison of α power (subject B:unpleas-ant)

情動を想起したと考えられる.また,特に減少の見られた画像番号 9および 10は画像評価において最も覚醒度が高い画像であった.これは,被験者にとって画像に対する覚醒度が高ければ,α帯域パワー値が減衰につながり,左前頭部が活性していると考えることができる.また,Fig. 4に示すとおり,不快画像呈示時においては,F4よりも F3の方がα帯域パワー値が低い結果となったので,不快情動を想起したとはいえない.理由として人により画像に対する情動が違い,被験者 Aにおいては不快画像を呈示しても,不快に感じなかった可能性が考えられる.また,被験者 Bにおいては Fig. 5より,F4よりも F3の方がα帯域パワー値が低くなったため,快情動を想起したと考えられる.

6 おわりに本実験では,視覚情動刺激を行った際のα帯域パワー値を検討した.実験結果は,快画像呈示時に F3においてα帯域パワー値が減少したので,先行研究より,被験者が快情動を想起したと考えられる.また,不快画像呈示時においても,F3が減少した結果となった.被験者が少ないので,多くの被験者で実験を行い,検討を行う必要がある.また,同じ実験設計で fNIRSを用いて実験を行い,その際の,脳血流量を測定することが今後の課題である.参考文献1) Davidson RJ, Schwartz GE, Saron C, Bennett J,

Goleman DJ. Frontal versus parietal eeg asymme-try during positive and negative affect. Psychophys-iology, Vol. 16, pp. 202–203, 1979.

2) 市川忠彦. 脳波の旅への誘い. 星和書店, 2004.

3) 末永和栄. 最新脳波標準. メディカルシステム研修所, 2010.

016

音環境が数字記憶課題の成績と脳血流変化に及ぼす影響の検討

医療情報システム研究室  1E081016 星野 雄地

1 はじめに

現代社会において多くの人がオフィスワークや学習と

いった知的作業に携わっている.作業者は,作業環境か

ら心身のストレスや精神的疲労を受けており,その増加

や蓄積は作業者の健康を損ねたり仕事や学習の効率を悪

化させたりすることが懸念される.このことから知的作

業において最適な作業環境を提供することの意味合いが

高まっている.

 作業環境が作業者に影響を与える要因のひとつとして

音が挙げられる.例えば,集団作業や集団学習における

BGM(Back-Ground Music)や騒音(雑音)などの音

響的な要因は音環境として考えられ,音環境が作業と脳

活動に影響を及ぼすことが報告されている 1) .そこで,

本研究では脳の生理的変化のひとつである脳血流変化

に着目し実験を行った.脳血流変化を計測できる fNIRS

(functional Near-Infrared Spectroscopy)を用いて計測

を行い,音環境により作業成績が影響を受け,脳血流変

化に差異が生じるか検討した.

2 fNIRS

fNIRS とは,近赤外光を用い,無侵襲で大脳皮質に

おける血液量の時間的変化を計測する脳機能イメージ

ング装置である.本研究で fNIRSを用いる理由として,

fNIRSは,脳の構造情報が可視化できない点や,計測領

域が大脳皮質表面に限定される点では fMRI(functional

Magnetic Resonance Imaging)に及ばないが,体動の

制限が少なく計測時に発生する音が小さいことからより

自然な状態で実験を行うことができるからである.

3 研究目的

本研究の目的は,音環境により数字記憶課題の成績と

脳血流変化に差異があるか調査し,関係性を検討するこ

とである.

 近年,音環境がクレペリン加算作業や音読作業,数字

記憶課題といった作業成績に与える影響について多くの

研究が行われている 2) .さらに,これらの研究では作

業成績と合わせて生理的指標の変化を交えた検討が行わ

れており,音環境が作業成績と生理的指標に変化をもた

らすことが報告されている 3) .そのなかで,fNIRSの

計測を用いて生理的指標である脳血流変化を計測し,音

環境が及ぼす作業成績の変化と脳血流変化との関係性を

検討することは有意だと考えられる.

4 実験

本実験では作業として数字記憶課題を選択し,音環境

により数字記憶課題の成績が変化することを確認する.

数字記憶課題とは Fig. 1に示すように画面に円形表示

される 8つの数字を記憶保持し,数秒後に記憶したもの

を入力する課題である.使用する音環境は,静音,モー

ツァルト「2台のピアノのためのソナタ K.448 第1楽

章」(以下モーツァルト),ホワイトノイズの 3種類とし

た.なお,すべての音環境に fNIRSの動作音を含んでい

る.本実験では先行研究を参考に実験を設計し 1) ,実

際に音環境下で作業成績が低下する際の脳血流変化を

ETG-7100(Hitachi medical Co.,Japan)を用いて計測

し,音環境が脳血流変化に与える影響について考察した.

0 2

34 5

6 7

8

rest: 30(s) memorize: 3(s) enter: ~7(s)

repeat 50(times)

rest: 30~50(s)

rest: 30(s) task: 50(questions) adout 300~500(s) rest: 30~50(s)

sound pretensionsilence silence

start stop

8 2 7 5

Fig. 1 Flow of the memorizing numerical string task

4.1 被験者と実験環境

被験者は,事前に本実験の趣旨,方法,課題等につい

て十分に説明し,実験に関する同意が得られた成人男性

8名(平均年齢:22± 1歳,利き腕:右)である.実験

は温度 20.3~24.6℃,湿度 32~62% の環境下で,14時

~17時の時間帯に行った.本実験における音環境の A

特性音圧レベルを Table. 1に示す.

Table. 1 Sound environments音環境 音圧レベル (dB)

静音 46±3

モーツァルト 65±8

ホワイトノイズ 65±0.5

4.2 実験設計

実験設計は先行研究を参考に,イベントデザインで設

計した.本実験では作業時に音を提示し,安静時は静音

状態を保つようにした.作業成績として,数字記憶課題

における正答文字数を音環境ごとに測定した.脳波電極

配置の国際基準である国際 10-20法に従い fNIRSのプ

ローブを装着した被験者に,以下の流れで Fig. 1に示

す課題を行った.

017

1. 安静:30秒間画面を注視しながら指を動かす.

2. 作業:3秒間円形表示される 8つの数字を記憶す

る.次に,入力画面が表示されるまでの 1秒間記

憶を保持する.その後表示される入力画面で記憶

した数字を入力する.この作業を 50回繰り返す.

3. 安静:30秒間画面を注視しながら指を動かす.

この設計で静音下と有音下 (2種類)の計 3パターン

計測を行う.また,音の提示順序はカウンターバランス

をとるため,被験者ごとにランダムで提示した.

4.3 計測データ

本研究ではOxy-Hb(OxyHemoglobin)の計測結果に

対しデータ処理,グラフ化,検討を行った.データ処理は

ローパスフィルタ 1.0(Hz),ハイパスフィルタ 0.01(Hz)

及び移動加算平均処理 10(s),血流変化の比較を行いや

すくするため,課題開始時のOxy-Hb濃度変化値が 0に

なるように処理を行った.

 検討部位は記憶や認知に関する処理を司るとされてい

る前頭部の左下部,音の聴取に関わる側頭部の一次聴覚

野領域付近とした.

4.4 実験結果

4.4.1 数字記憶課題

数字記憶課題の 3 音環境における平均正答文字数を

Fig. 2に示す.音環境の違いにより平均正答文字数が影

響を受けたか確認するために,被験者 8名の平均正答文

字数を用いて二元配置分散分析を行った.その結果,音

環境の要因は 5% 水準で有意 (F(2,14)=5.42,p<.05)で

あった.

whitenoisemozart

*:F(2,14)=5.42,p<.05

:SE(n=8)

5.5

6.0

6.5

7.0

7.5

Avera

ge

the

num

ber

of

c

orr

ect answ

ers

silence

Fig. 2 Task score

4.4.2 脳血流変化

前頭部脳血流変化を示す Fig. 3左側の折れ線グラフ

において,静音の場合,立ち上がりのあと一定量を保つ

のに対し,ホワイトノイズとモーツァルトの場合,立ち

上がりのあと減少していく結果となった.Fig. 3右側の

棒グラフに示すように脳血流変化の平均値に対して多重

比較検定を行った結果,静音とモーツァルトの脳血流変

化に 5% の有意水準で差が認められた.

 側頭部脳血流変化を示す Fig. 4では静音に比べ,ホ

ワイトノイズとモーツァルトで脳血流変化が見られた.

*

ΔO

xy-H

b [m

M*m

m]

silence mozart whitenoisetime[s]

:SE(n=24)

ΔO

xy-H

b a

ve

rag

e [m

M*m

m]silence

mozart

whitenoise

Fig. 3 Grand average waveform of frontal and

∆Oxy-Hb time averages

silence

mozart

whitenoise

ΔO

xy-H

b [m

M*m

m]

time[s] time[s]

ΔO

xy-H

b [m

M*m

m]

Fig. 4 Grand average waveform of temporal

4.5 考察

数字記憶課題の成績を示すFig. 2より,音環境が数字

記憶課題の成績に影響を及ぼすことが確認された.Fig.

3に示す前頭部の脳血流変化では,有音に比べ静音の方

が血流が下がりにくく,平均値においても有意に大きい

ことから,音が作業成績を低下させるとともに,脳血流

変化を抑えたと考えられる.このことから,前頭部の脳

血流変化と音環境による作業成績の変化には関係性があ

ることが考えられる.

 側頭部の脳血流変化を示す Fig. 4では,静音に比べ

モーツァルトやホワイトノイズといった音のある環境下

で血流変化が見受けられることから,聴覚領域が音に反

応し,脳血流変化をもたらしたと考えられる.

 実験結果より,音環境が作業成績に影響を及ぼすとと

もに,前頭部及び左右側頭部の脳血流変化にも影響を及

ぼす結果が得られたことから,音環境が及ぼす課題の成

績と脳血流の変化に関係性があることが示唆される.

5 まとめ

本研究では,音環境が作業成績と脳血流変化に及ぼす

影響の関係性に着目し,実験を行った.知的作業と見立

て数字記憶課題を行い,同時に fNIRSを用いて脳血流

変化を計測した.実験結果より,前頭部の脳血流変化は

音による作業成績の低下と関係性があることが示唆され

た.一方,側頭部においても,音環境と脳血流変化との

関係性が見受けられた.

参考文献

1) 後藤卓司, 中山実. 数字記憶課題における脳波への音環境の影響. 電子情報通信学会技術研究報告. 教育工学, Vol. 103, No. 135, pp. 31–36,2003-06-14.

2) 相馬洋平, 松永哲雄, 曽我仁, 内山尚志, 福本一朗. 音楽環境の違いによる作業効率に関する人間工学的基礎研究. 電子情報通信学会技術研究報告, Vol.105, No. 304, pp. 43–46, 2005.

3) 岩城護, 新川慎吾, 木竜徹. タイプ作業における音環境の生体影響と作業効率の変化. 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. 108, No. 52, pp. 19–24,2008.

018

対話型遺伝的アルゴリズムにおける有効探索領域の縮小方法の検討

医療情報システム研究室  1E081081 山里 真由

1 はじめに

近年,インターネットの普及により,オンラインショッ

ピングの利用が広がっており,オンラインでの商品推薦

の重要度が増しつつある.商品推薦とは,ユーザの嗜

好に合った商品を推薦するシステムであり,利用するメ

リットは 2点ある.1つは,ユーザが自分の嗜好に沿っ

た商品を容易に見つけられること.2点目は,ユーザの

嗜好に沿う商品を推薦するため,ベンダーが効率良く売

り上げを向上できる点である.ユーザ個人が持つ感性モ

デルを用いて最適化を行う手法の 1つに対話型遺伝的ア

ルゴリズム 1) があり,本稿では対話型遺伝的アルゴリ

ズムを利用した探索手法について検討を行った.

2 対話型遺伝的アルゴリズムと提案手法

2.1 対話型遺伝的アルゴリズムの概要

 進化計算手法とは,生物の進化を模倣した計算技法

であり,その進化計算手法を用いて最適化を行う手法を対

話型進化という.対話型遺伝的アルゴリズム (interactive

Genetic Algorithm: iGA)はその一種であり,進化計算

手法に遺伝的アルゴリズムを用いたものである.iGAで

は,ユーザが評価した個体に対して,選択,交叉など

の遺伝的操作を繰り返し行うことにより,ユーザの評価

を子個体の生成に反映していく.iGAの流れを Fig.1に

示す.

Fig. 1 A flowchart representing a process of iGA

iGAでは,交叉手法としてブレンド交叉 (BLX-α)2)

を用いることが多い.BLX-αは,親個体の実数ベクト

ルの各変数の区間 di を両側に αdiだけ拡張した区間か

ら一様乱数に従ってランダムに子個体を生成する.Fig.2

に BLX-αによる子個体生成の例を示す.

desing Vriable 1

De

sig

n V

aria

ble

2

reserching area

parents

children

reseching point

Fig. 2 Making New Individuals Using BLX-α

BLX-αの問題点の 1つは,ユーザが評価しない個体

の近傍から子個体を生成する可能性があることである.

2.2 提案手法

この問題点を改善するために,本稿では,ユーザの

「嫌い」な領域を有効探索領域から除外し,有効探索領

域を縮小させる手法を検討した.その手法の概要をFig.3

に示す.

desing Vriable 1

De

sig

n V

aria

ble

2

dislike points

and

removed area

dislike point

parents

children

reseching point

Fig. 3 Design Space and Dislike Area

この手法では,提示された個体の中からユーザが「嫌

い」と感じた個体を選択し,その情報は世代を超えて蓄

積される.それらの個体の近傍は,子個体を生成しない

領域となり,探索領域から除外され,残った有効探索領

域からランダムに親個体が選出される.子個体を生成す

る際は,選出された親個体の区間 diを両側に αdiだけ

拡張した区間から一様乱数に従ってランダムに子個体が

生成される.また,除外領域を決定する際にはユーザが

「嫌い」と判断した個体が持つ設計変数の値から,前後

に一定の幅を持たせた領域を除外領域とした.

3 数値実験

3.1 実験概要

本実験では,2種類のシステムを構築し,それらを用

いて,ユーザの「嫌い」を適切に抽出し有効探索領域か

ら除外できたか否かを検討した.用いた 2種類のシステ

ムを次に示す.

1. ユーザの「嫌い」な領域を抽出し,有効探索範囲

019

から除外していく iGAシステム.以後,提案シス

テムとする.

2. BLX-αを用いた既存の iGAシステム.以後,既

存システムとする.

実験では,あらかじめ 2種類のシステムの初期個体を

同一にした.また,2種類のシステムによる最終世代を

提示する確認システムを用い,最終世代の中に被験者の

「嫌い」な個体が含まれているかどうかを確認した.そ

の際,同数の最終世代個体をランダムに提示する.

各被験者は 2種類のシステムを実行し,その後に確認

システムを実行した.本実験における被験者は,20代

男性 5名である.2種類のシステムの実験順序はカウン

タバンランスをとった.

3.2 実験インターフェース

本実験では,対象商品を時計とし,設計変数は時計の

色とデザインとした.色は RGB表色系を用い,デザイ

ンは 3種類のパターンを用意した.用意した時計のデザ

インのパターンを以下に示す.

• 時計の枠と数字の色が変化するもの

• 枠と数字の色は白で固定され,文字盤の背景色が変化するもの

• 枠と数字の色は黒で固定され,文字盤の背景色が変化するもの

Fig.4に実験インターフェースを示す.

Fig. 4 Experimental Interface

3.3 実験パラメータ

本実験において用いたパラメータを Table.1に示す.

なお,提案システムにおいては,「嫌い」と判断された点

に対して,各設計変数の最小値から最大値の距離に対し

て 1/50の長さを前後に割り当て,除外領域とした.

Table. 1 System ParametersParameter   ValuePopulation Size 25Generation Size 10Crossover Rate 0.1Geen Size 4Mutation Rate 0.2

(a) Using ProposalMethod

(b) Using ExistingMethod

Fig. 5 Last Individuals(Subject E)

3.4 実験結果

提案システムと既存システムによって生成された最終

世代の一例を Fig.5に示す.これら 2つの最終世代は,

一人の被験者の結果である.どちらの最終世代も類似し

た特徴を持つ個体に収束する傾向が見られ,各被験者に

おいてユーザの嗜好を反映することができたと考えら

れる.

次に,提案システムによってユーザの「嫌い」領域を

適切に除外できたかどうかを検討した.確認システム

で「嫌い」と判断された個体の総数を 1とし,その中に

含まれる提案手法によって生成された個体の割合を求め

た.この値を RATE-pとし,Table.2に被験者毎の値

を示す.RATE-pの値が低い程,提案手法において適切

にユーザの「嫌い」な領域を除外できたと言える.

Table. 2 The Rate Of Individuals Made By Proposal

MethodTest Subjects RATE-p [% ]

A 33B 50C 75D 0E 0

このように,被験者 5人中 4人において割合は 50%

もしくは,それを下回っていた.この結果は,ユーザの

「嫌い」な領域を適切に除外出来ていたことを意味する

と考えられる.

3.5 まとめ

本稿では,ユーザの嗜好に沿った探索を行うため,有

効探索領域の縮小を提案し,検証実験を行った.その結

果,5人中 4人において適切な有効探索領域の縮小を行

う事が確認できた.

参考文献

1) H.Takagi. “interactive evolutionary computation: Fu-sion of the capabilities of ec optimization and humanevaluation”. Proceeding of the IEEE, Vol. 89, pp. 1275–1296, 2001.

2) L.J Eshleman and J.D Schaffer. “real-coded genetic al-gorithms and interval-schemata”. Foundations of Ge-netic Algorithms, Vol. 2, pp. 187–202, 1993.

020

PVTとGO/NOGO Taskにおける視覚刺激と聴覚刺激に対する脳血流変化の違いの検討

医療情報システム研究室  1E081010 福島 亜梨花

1 序論

Psychomotor Vigilance Task(PVT)と GO/NOGO

Taskは注意の持続性を計測する課題で,被験者が呈示

された刺激に対し反応する課題である 1) .これらの呈

示刺激には視覚刺激と聴覚刺激の 2種類があるが,これ

らの刺激の違いが反応に及ぼす影響は明らかにされてい

なので,課題実行時の反応時間 (Reaction Time:RT)と

脳血流変化を視覚刺激と聴覚刺激間で比較・検討する.

 

2 Psychomotor Vigilance Task(PVT)

PVTとは,ランダムな時間で呈示される刺激に対し

被験者が反応する時間 (Reaction Time:RT)を計測する

課題である (Fig. 1)1) .また,PVTはサーカディアン

リズムや恒常性,睡眠などに影響され,同一被験者間で

もその状態によって反応時間に違いが出てくる.

+

できるだけ早くスペースキーを押す

画面に点がランダムで表示される

Fig. 1 Example of PVT with visual stimulus

3 GO/NOGO Task

GO/NOGO Taskとは,GO信号または NOGO信号

の刺激を呈示し,GO信号に対しては反応を,NOGO信

号には反応を示さないでもらい,その際の反応時間を測

定する課題 (Fig. 2)である 1) .また,GO/NOGO Task

は PVTと異なり,刺激が呈示されてから刺激内容を判

断し反応するため,PVTよりも思考力を必要とする.

できるだけ早くスペースキーを押す

GO信号(ランダム)

どのキーも押してはならない

NOGO信号(ランダム)

+

-

Fig. 2 Example of GO/NOGO Task with visual stim-

ulus

4 実験概要

4.1 実験目的

PVTおよびGO/NOGO Task時の反応時間と脳血流

変化を視覚刺激時と聴覚刺激時で比較し,これらの課題

を研究に使用する際に注意すべきことを明らかにする.

4.2 実験設計

21歳から 23歳の男性被験者 5名に対し,Fig. 3のよ

うな実験を行った.被験者には,各課題での視覚刺激,

聴覚刺激の課題の計 4つの課題をそれぞれ 2回ずつ行っ

てもらった.なお,カウンタバランスのため 1回目 4つ

の課題の順序は被験者毎にランダムで行った.しかし,

各課題 1回目を行った順序と逆の順序で 2回目の課題を

行った.これは時間経過によって発生する疲労を考慮し

たためである.

 個々の課題はブロックデザインとし,被験者が目を閉

じて安静にする時間 30秒 (レスト時間),課題実行時間

120秒 (タスク時間),その後目を閉じて安静にする時間

30秒を 1つの課題として設計した.これらの課題の反応

として,被験者はコンピュータのエンターキーを押す.

PVTには聴覚刺激には 1000Hz正弦波,視覚刺激には

コンピュータ画面中央の「+」を用いた.

 また,GO/NOGO Taskには聴覚刺激としてGO信号

には 1000Hz正弦波,NOGO信号には 2000Hz正弦波,

視覚刺激としてGO信号には画面中央の「+」,NOGO

信号には「-」を用いた.

同じタスク

時間[s]

時間[s]

目を閉じて

安静状態

30[s]

目を閉じて

安静状態

30[s]

刺激提示時間

120[s]

P視 P視P聴 P聴G聴 G聴 G視G視

P:PVT

G:GO/NOGO Task

聴:聴覚刺激

視:視覚刺激

休憩

300[s]

Fig. 3 Task Design

4.3 測定機器

今回の実験では被験者の自由度が大きく,非侵襲であ

る fNIRS(functional  Near-Infrared Spectroscopy)装

置 (ETG-7100:日立メディコ製)を使用した.fNIRSは被

験者の頭皮上から近赤外光を照射し,脳血流変化 (酸素

021

Table. 1 Reaction time(PVT)

パラメータ 視覚刺激 聴覚刺激

平均反応時間 [s] 0.289 0.259

10% fastRT[s] 0.230 0.213

10% lastRT[s] 0.448 0.405

エラー率 [%] 1.79 1.58

Table. 2 Reaction time(GO/NOGO Task)

パラメータ 視覚刺激 聴覚刺激

平均反応時間 [s] 0.327 0.297

10% fastRT[s] 0.266 0.228

10% lastRT[s] 0.471 0.494

エラー率 [%] 6.57 3.90

化・脱酸素化ヘモグロビン濃度)を測定する機器である.

なお,脳の測定部位は前頭部,左右両側頭部で,fNIRS

の設置方法は国際 10-20法に従った.今回の実験では,

脳内の神経活動があった際に上昇するとされる酸素化ヘ

モグロビン濃度に注目した.

5 実験結果

5.1 反応時間

先行研究 1) で用いられる平均反応時間 (平均 RT),

全反応時間のうち 1 割にあたる最も速い反応時間の平

均 (10% fastRT),1割の最も遅い反応時間の平均 (10

% lastRT),エラー率の 4種類のパラメータを比較した.

なお,反応時間が 0.5秒を超えていたものはエラーとす

る.1つの課題につき試行回数が 30~50回と異なるの

で,被験者毎に 1回目,2回目のパラメータを平均し,

各課題毎に被験者 5 名のパラメータを平均した結果を

Table. 1,Table. 2に示した. PVTでは 10% fastRT

が t検定で 5%での有意差が認められ,視覚刺激の方が

遅いことが分かった.一方,GO/NOGO Taskでは平均

反応時間と 10% fastRTにおいて 5%で有意差が認め

られ,視覚刺激の方が遅いことが分かった.

5.2 脳血流変化

5.2.1 データの検討方法

レスト時間とタスク時間,次に,視覚刺激と聴覚刺激

のタスク時間の酸素化ヘモグロビン濃度平均を被験者毎

に算出し,t検定を用いて有意水準 5%で比較した.

5.2.2 PVT

左右側頭部下部前方に視覚刺激,聴覚刺激共に,レス

ト時間とタスク時間の酸素化ヘモグロビン濃度平均に有

意差が見られた.

5.2.3 GO/NOGO Task

前頭部下部,左右両側頭部下部でレスト時間とタスク

時間の酸素化ヘモグロビン濃度平均に有意差が見られ,

特に左側頭部の下側頭回付近では視覚刺激と聴覚刺激時

の有意差があり,酸素化ヘモグロビン濃度平均は被験者

5名とも視覚刺激の方が大きかった.しかし,聴覚刺激

の酸素化ヘモグロビン濃度平均にそのような部位は見ら

れなかった.

6 考察

6.1 PVT

左右側頭部下部前方に両刺激とも有意差が見られたこ

とから,PVTは主にこの部位で神経活動が行われてい

るものと考える.また,10% fastRTは視覚刺激の方が

有意に遅かったが,酸素化ヘモグロビン濃度平均に視覚

刺激と聴覚刺激の特徴的な差が見られなかった.これは,

PVTが酸素化ヘモグロビン濃度が神経活動によって有

意に上昇するほどの思考力を要しない課題であるためと

考えられる.以上より,fNIRSにおいての視覚刺激,聴

覚刺激の比較は難しいものと思われる.

6.2 GO/NOGO Task

下側頭回は視覚に関連する腹側皮質視覚路の高次領域

であり,視覚対象の特徴を認識する部分とされている.

視覚刺激時の酸素化ヘモグロビン濃度平均が有意に大き

かったことから,視覚刺激の GO信号,NOGO信号の

識別を行っている部位であると考える.しかし,聴覚刺

激の結果ではそのような部位が確認できなかったため,

視覚刺激の信号の識別が脳活動に強い負荷をかけ,視覚

刺激の平均反応時間と 10% fastRTを遅くする一因と

考えられる.

7 結論

本研究では,PVT,GO/NOGO Task時の反応時間

と脳血流量を視覚刺激と聴覚刺激間で比較・検討した.

  PVTでは,主に左右両側頭部前方で神経活動が行わ

れていると考えられるが,視覚刺激や聴覚刺激の比較は

難しい.これは,PVTが fNIRSで視覚刺激と聴覚刺激

の比較を行えるほど神経活動が活性化しない課題である

からと思われる.

  GO/NOGO Taskでは左側頭部の下側頭回付近では

GO信号,NOGO信号の識別を行うため,酸素化ヘモ

グロビン濃度平均に視覚刺激の方が有意に大きかった

と考える.この識別が視覚刺激時の平均反応時間と 10

% fastRTを遅くする一因と推測された.

参考文献

1) Sarah Laxhmi Chellappa, Roland Steiner, Peter Blattner, Pe-ter Oelhafen, Thomas Go tz, and Christian Cajochen. ”non-visual effects of light on melatonin, alertness and cognitiveperformance: Can blue-enriched light keep us alert?”. PLoSONE,Volume 6,Issue 1, 2011.

022

刺激提示ソフトウェア“ Presentation ”を用いたPsychomotor Vigilance Taskにおける測定精度調査

医療情報システム研究室  1E081023 加藤 真輝

1 はじめに

近年,fNIRS(functional Near-Infrared Spectroscopy)

などの脳機能計測装置を用いて視覚実験や聴覚実験を行

う際に,コンピュータで画像や音を提示するプログラム

を作成することがしばしば行われている.その開発環境

ソフトウェアの一つとして Presentationが挙げられる.

Presentationでは同時に複数の音や画像を提示すること

が可能であり,ログファイルにそれらの発生時刻や被験

者の反応時間を記録できることから,視覚実験や聴覚実

験を行う際に多く利用されている.

しかし,Presentationはコンピュータ上で動作を行うた

め,CPUのスケジューリングや割り込み処理,あるい

は仮想メモリなどの影響により,遅延した動作を行う可

能性がある 1) .そのため,ログファイルに記録された

値を計測データとしてそのまま利用することには疑問が

生じる.また,Presentatinは詳しい仕様書が公表され

ておらず,計測データの検証も十分に行われていない.

そこで,本研究では,聴覚における PVT(Psychomotor

Vigilance Task)に焦点を当て,得られたログファイル

に記録された値の有用性を検討する.

2 Presentation

PresentationはNeurobehavioral社が開発を行ってい

る刺激提示用ソフトウェアである.プログラムでは,ま

ず音を発生させる sound文や画像を表示させる picture

文などの各イベントを定義する.次に一回に実行したい

各イベント群を Trial文により実行する.その後,Pre-

sentationでは各イベントに対応する時刻がログファイ

ルに記録される.Presentationを用いて被験者の反応時

間を計測する実験を行う場合には,ログファイルに記録

される時刻の精度が重要である.しかし,Presentation

はコンピュータ上で動作しているため,様々な遅延の要

因が考えられる.これらの遅延の可能性から,ログファ

イルに記録された時刻をそのまま測定データとして扱う

には疑問が生じる.そこで本研究においては,聴覚にお

ける PVTに焦点を当て下記の実験を行い調査する.2.1 聴覚における PVT

PVTは,被験者の周囲に対する注意力や警戒心に対

する覚醒状態を fNIRS装置などの計測機器で測定する

ときに用いられるタスクの一種である.測定では,聴覚

刺激がランダムの時間間隔で繰り返し被験者に与えら

れ,被験者はその刺激に対し可能な限り素早く反応し,

被験者の反応時間を計測する 2) .

3 実験

本実験の目的はPresentationを用いて聴覚のPVTプ

ログラムを実行する場合に,得られたログファイルに記

録された値の有用性を検討することである.そのために

は,音の発生時間に関してログファイルに記録された値

の誤差を調査することが必要であると考え,実験1,2

に分け検討を行った.実験 1では,音の発生のみのプロ

グラムを実行した場合の音の発生時刻の検討を行う.実

験 2では,PVTの実験により近づけるため,音の発生

後キーボードを入力したら音が止まるようなプログラム

を実行した場合の音の発生時刻の検討を行う.最後に実

験 3として,PVT実験での反応時間を検証した.尚,実

験 1,2ではコンピュータから出力される音の電気信号

をデジタルオシロスコープを用いて取得し,その波形か

ら音の正確な発生時刻を計測した.尚,コンピュータと

オシロスコープの接続には 3.5mmモノラルプラグを用

いた.3.1 使用機器

実験に使用した機器の仕様を Table.1,Table.2 に示

し,オシロスコープの設定を Table.3に示す.

Table. 1 Computer specsProcessor Intel Core i5-2500K

Memory 3.91 GB

Audio Intel High Definition Audio

OS Microsoft Windows 7 Enterprise

Table. 2 Oscilloscope specs(TDS2012B)Frequency band 100MHz

Vertical accuracy ± 3%

Accuracy the time axis 50ppm

Sampling rate 1.0GS/s

Scalability USB

Table. 3 Oscilloscope settingsMeasurement time 2500ms

Trigger position 140ms

Vertical axis 50mV/div

Time axis 250ms/div

3.2 実験 1

実験 1では Presentationにより,音の発生のみのプロ

グラムを実行した場合の音の発生間隔に関して,ログ

ファイルの記録値とオシロスコープの計測値の比較を行

う.音の発生間隔は 200msで,音は連続して 13回発生

させた.同様の操作を計 10回行った.

023

3.2.1 実験結果

オシロスコープから得られた波形のグラフの一例を

Fig. 1に示す.Fig. 1において大きく電圧が上昇してい

る 13ヶ所の位置において音が発生している.また,音の

発生間隔に関して,オシロスコープの計測値と Presen-

tationによるログファイルの記録値を比較したグラフを

Fig. 2に示す.縦軸は 10 回の操作全ての音の発生間隔

である 120回分のデータの加算平均値を表す.

Fig. 1 Waveform measured by oscilloscope

Fig. 2 Comparison of sound interval

3.3 実験 2

実験 2では PVTの実験により近づけるため,音の発

生後キーボードを入力したら音が止まるようなプログラ

ムを実行する.音の発生間隔はキーボードを押すタイミ

ングによって異なるので,ログファイルにおける音の発

生間隔の記録値からオシロスコープにおける音の発生間

隔の計測値を引いた差を検討する.音はキーボードを入

力した 300ms後に発生し,繰り返し 6回行った.同様

の操作を計 10回行った.Fig. 3に実験のイメージ図を

示す.

Fig. 3 Image of experiment

3.3.1 実験結果

オシロスコープから得られた波形のグラフの一例を

Fig. 4に示す.Fig. 4より,音の発生時には電圧が上昇

し,キーボード入力時には音は停止し電圧は大きく減少

していることがわかる.また,ログファイルにおける音

の発生間隔の記録値からオシロスコープにおける音の

発生間隔の計測値を引いた誤差を 10回の操作全て計 50

回分の平均値で表すと 0.28msとなり,この標準偏差は

5.41msとなった.

Fig. 4 Waveform measured by oscilloscope

3.4 実験 3

本実験の目的は,Presentationを用いて聴覚 PVTを

行った際のログファイルに記録された被験者の反応時間

を取得することである.3.5 実験設計

本実験では,実験 2 で用いた音をランダムの時間間

隔 (3 秒~6 秒) で再生する聴覚 PVT のプログラムを

Presentaionを用いて実行し,ログファイルを取得する.

使用機器は実験 1,2で使用したコンピュータと同じも

ので,被験者は男性 2名である.

3.6 実験結果

ログファイルに記録されたイベントの発生時刻から 2

人の被験者の反応時間をそれぞれ算出し,それらを被験

者ごとに加算平均すると,231.6msと 248.7msとなった.4 考察

実験 1,2の結果から,どちらの音の発生間隔におい

てもほとんど差は認められない.そのため,実験 3の結

果より被験者の反応時間が 2名とも平均 240ms前後で

あることから,音の発生時刻に関する誤差は測定結果に

ほとんど影響は与えないと考えられる.しかし,PVT

のプログラムで反応時間を計測する場合にはキーボード

の応答時刻も考慮しなければならないため,キーボード

の応答による計測誤差も検討する必要がある.

5 まとめ

本研究では,聴覚における PVTに対し音の発生時刻

に関して焦点を当て,得られたログファイルに記録され

た値の有用性を検討した.実験では,ログファイルに記

録された値の誤差をデジタルオシロスコープを用いて調

査した.PVTの反応時間から,音の発生時刻に関する誤

差は測定結果にほとんど影響は与えないと結論に至る.

今後,キーボードの入力時刻も調査することが可能なら

ば,PVTの測定結果の精度はさらに上がるであろう.

参考文献

1) 大久保英嗣,オぺレーティングシステム (新世代工学シリーズ),オーム社,1999

2) Sarah Laxhmi Chellappal, Roland Steiner, PeterBlattner, Peter Oelhafen, Thomas Gotz, ChristianCajochen. Non-Visual Effects of Light on Melatonin,Alertness and Cognitive Performance: Can Blue-Enriched Light Keep Us Alert. PLoS ONE, Vol.6,Issue1, e16429, 2011

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