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第86回日本精神神経学会総会 シンポジウムⅢ 「学会罷定医と精神保健指定医 一精神科卒後研修との関連において-」 若手精神科医にとっての指定医「資格」 I! III-∴>:fJ 精神神経学雑誌第92. 巻第9骨別刷 平成2年9月25・日発行 PSYCHIATRIAETNEUROLOGIAJAPONICA Annus92,Numeru89,1990

第86回日本精神神経学会総会 シンポジウムⅢ 「学 …repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/3427/1/...第86回日本精神神経学会総会 シンポジウムⅢ

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第86回日本精神神経学会総会

シンポジウムⅢ

「学会罷定医と精神保健指定医

一精神科卒後研修との関連において-」

若手精神科医にとっての指定医「資格」

I! III-∴>:fJ

精神神経学雑誌第92. 巻第9骨別刷

平成2年9月25・日発行

PSYCHIATRIAETNEUROLOGIAJAPONICA

Annus92,Numeru89,1990

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610 精神経路(1990) 92巻9骨

若手精神科医にとっての指定医「資格」

岩井圭司(兵庫県立光風病院)

非指定医・研修医交流会では,指定医問題に関連して若手精神科医の勤務実態を把握して本シン

204060100

、′10 14 9 3 .3 %

~- 2 5 0 0 .0 %

… ~ 5 0 1 6 . 1 %

人 1蝣蝣蝣'.- 十 円

- 10 0

0 I 0 .0 %

0 0 .0 %

1 00 ' 0 0 .0 %

不 明 0 0. 0 %

I lo・t

2 8 .6 %

~ 2 5

… ~ 5 0

1 7 . 1 %

2 14 .3 %

B 大 学 ~ 7 5

蝣10 0

3 2 1 .4 %

1 7. 1 %

10 0 -

不 明

2 14 . 3 %

1 7 . 1%

- m 6 2 3. 1 %

- 2 1 5 1 9 .2 %

堯… ~ 5 0 7 2 6. 9 %

C 大 学 ~ 7 5 6 23 . 1 %

- 1 0 0 、7 %

10 0 - 0 .0 %

不 H>j 】 0 0 .0 %

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蝣"蝣 蝣1 0 0 3 .7 %

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不 明 0 0 . 0 %

1 0 0 0 . 0 %

-2 5 1 1 6 .7 %

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E 火 羊 -7 5 】 6 6. 7 %

∴ 10 0 0 0 . 0 %

10 0 - 0 0 一0 %

不 日月 1 、 1 6. 7 %

1 0 7 4 3 .8 %

-2 5 3 18 . 8 %

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F 大 学 2 12 . 5 %

.‥:・:・: ・1 0 0 0 0 . 0 %

10 0 - 一3 %

不 明 1 6 . 3 %

1 0 10 0 %

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i -5 0 0 0 . 0 %

そ の 他 M ・7 5 0 0 . 0 %

ヒ二‥∃ 1 0 0 0 0 . 0 %

10 0 - 0 0 . 0 %

不 明 0 0 . 0 %

~ 1 〔 3 9 37 .1 %

11 10 . 5 %

i - 5 0 2 2 2 1. 0 %

計 - 7 5 2 3 2 1. 9 %

蝣1 0 0 4 3 . 8 %

10 0 - 3 2 . 9 %

不 明 】 3 i 2 . 9 %

=モ三=!IジJ=こ…=1lZ蝣< -蝣:

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図1勤務の実態(1)受け持ち入院患者数

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第86回総会シンポジウム:「学会認定医と精神保健指定医」

ポジウムで発表するためにアンケートを実施し

た.ここでは,そのアンケートの集計結果を中心

に報告する.

このアンケートは1990年1月から2月にかけ

て実施・回収された. 協力者からの回答の返送

は,わたしたちが当初予想していたよりもはるか

に迅速で,この間題に対する若手精神科医の関心

の高さを示した.

I. アンケート回答者のプロフィール

今回のアンケサト調査に協力を得られたのは6

大学の精神科(医局)とその関連病院に勤務す

る,精神科医歴6年未満の若手精神科医105名

(6大学のいずれにも属さない者1名を含む)で

全員が精神保健指定医の資格を有していない者

611

(つまり非指定医)である. 6大学はすべて国立

大学で,いわゆる新設医大を含んでいない.

回答者の精神科医としての経験年数は,1年未

満のもの22名,1年以上2年未満のもの17名,

以下3年未満22名,4年未満25名,5年未満12

名,6年未満7名となっている. 全体の1/3(35

名)が国立総合病院(大学病院を含む)に,やは

り約1/3(39名)が私立単科精神病院に勤務して

いる.

Ⅱ.非指定医の勤務の実態(図1-4)

今回のアンケート回答者をサンプルとして,指

定医資格をもたない若手精神科医の勤務実態を見

てみよう.このアンケートは,精神保健法施行後

約1年半を経過した時点で実施・回収されたもの

十 1 '!蝣 % 、 二 i;'. 紘 ~ 3 年 % ~ 4 年 % ~ 5 # % ~ 6 咋 〃ノ/〟

話……担 当 な し 0 0 .0 1 5 .9 0 0 . 0 1 4 . 0 U (I. II 0 . 0 .0

r.'fl准 1Li L 0 0 .0 1 r-> 0 1 4 . 5 0 0 . 0 0 0 . 0 () 0 .0

…:…iJ 全 指 導 1 3 5 9 .1 5 2 9 .4 0 0 .0 1 4 1 0 3 2 5 . 0 0 ll.ll

:. 部 分 指 導 2 9 .1 1 ○.9 2 9 . 1 1 4 .0 0 0 . 0 2 2 8 . 6

そ の 他 3 13 .6 0 V .I' 1 4 .5 1 4 . 0 0 0 . 0 1 14 . 3

〕 無 制 限 4 18 . 2 9 5 2 .9 1 8 8 1 .8 LU 8 4 .0 9 7 5 . 0 4 5 7 . 1

図2勤務の実態(2)病棟診療経験年数別

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612 精神経誌(1990) 9急巻9. 号

~ I 拝 % ~ 2 年 % ~ 3 年 ・ % ~ 4 年 % ~ 5 .早 ' % .~ 6 年 %

担 当 .を し 5 . 2 2 ∴7 1 5 ..9 0 0 . 0 0 a o ¢ a o 0 0 . 0

公 子 的 の み 10 ′ 4 5 .,5 4 2 3 . 5 2 9 . 5 1 4 . 0 ^ ¢. { 飢 0. 1 1 4 . 3

再 診 の み ?・ 9. 1 1 5 . 9 o 9 . 5 ・J ′8 . 0 、 2 . 1 6 . 7 1 1 4 . 3

判 断 な し 0 0..0 0 0 . 0 0 0 . 0 0 0 . 0 0 0 . 0 0 0 . 0

そ の 他 1 4 .,5 0 0 .、0 0 、 0 . 0 1 4 . 0 1 8 . 3 0 0 . 0

\ 無 削 限 4 1 8 ..2 l l 6 4 . 7 1 7 8 1 . 0 2 1 8 4 . 0 9 J5 . 0 5 7 1 . 4

図3勤務の実態(3)外来診療経験年数別

なので,個々の病院でのノ非据定医の業務は一応園、

定化されたものに,なっていたと一考えて差し支えな

いと思う.

まず,医師1人当た9,′の受け持ち入院患者数

(図1)であるが,A大挙のように医師1人当た

りの受け持ち入院患者数の少ないところと,E大

学のように非常に多いところがある. これはA大

学では若手医師の多くが~大学病院と総合病院に勤

務しており,E大学では車科(特に私立単科)精

神病院に勤務する者が多いこと、の反映である. 、全

体としては,・回答者の約70%は受け持ち患者数

が50人以下であり,現在の我国の精神医療の現

状を考えるとき,非指定医の多くは比較的医師数

が多い病院に勤務していると考えられる.

それでは,非指定医の日常業務の範囲について

見てみよ5V.

まず,経験年数との関連で見ると,病棟診療

(図2,)でも外来診療(図3)でも,経験年数が

増すほど制限なく診療に従事している(指定医と

同じ業務を行っている)非指定医が多くなること

がわかる′. 一方,経験年数1年未満の医師はその

殆どが-,大学病院という病床数に比して医師数が

非常に多い環境で,上級医師のある程度明確な指

導のもと車こ診療を行っていることが多い. そこで

経験年数が1年未満の者を除いたうえで,病院の

設立主体別に非指定医たちの日常業務の範囲を見

てみることにする. 病棟診療で制限なく診療に従

事する非指定医の割合は,私立病院で最も高く,

公立病院がそれに次ぎ,. 国立病院で最も低い(図

91

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

図5精神保触法施行後の変化(1)設立主体別

613

経験年数が増すにつれて医師としての技量も高

まり,それゆえにより大きな裁量と責任を任され

ていくのは当然のことであろう. しかし,指導医

が多く,研修態勢が比較的整っている国立病院

(とくに大学病院)以外でその傾向が顕著なこと

は,つまり,現実には若手医師への指導や保健法

の厳麿な順守よりも日常臨床業務をなんとかこな

すことが優先されがちであることを示しているの

ではないだろうか.それでは,そういった病院(特に私立病院)で

は精神保健法をノ、ナから無視してかかっているの

だろうか? 「制限なく」日常の診療をこなして

いる,という非指定医は精神保健法によって指定

医の判断が必要とされる場合にはどのように対処

しているのだろうか? 順を追って考えていくこ

とにする.

班. 精神保健法施行後の変化(図6)

精神保健法の施行前後で,前節で見てきたよう

な非指定医の勤務形態に変化があったのかどうか

を病院の設立主体別に見ると,私立,公立,国立

の順で変化をみている(影響を被っている)とい

うことがわかる(図5).指導医と指導態勢が比

較的整っていやすい国立病院(とくに大学病院)

では,それほど実際上の変化はなかったようだ.

また,これを医師1人当たりの受け持ち入院患者

数で見た場合には,それが多い病院ほど(-医師

数の少ない病院ほど)変化を受けている(図6)

ことがわかる.

Ⅳ. 指定医の判断が必要な場合

への対処(図7-8)

精神保健法を厳密に順守しようとすれば,指定

医の判断が必要とされる場合には可及的(火急

的?)速やかに指定医を呼ばなければならない.

しかし,それがいつも可能であるとは限らず,現

実には指定医の"追認''を後から受けるというこ

とも多いようであり,その傾向はやはり私立病院

で頭著である(図7). また,医師1人当たりの

受け持ち入院患者数が増えるにつれ,その割合も

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精神経誌(1990) 92巻9号

~ 1 0 % - 2 5 % ~ 5 0 % 一~ 7 5 % 蝣100 %

変 化 あ り 2 5 . 1 9 . 1 7 3 1 . 10 4 3 . 5 5 0 . 0

無 回 答 h i 2 5 . 6 9 . 1 3 13 . 6 .) 8 . 7 0 0 .0

:、:. 変 化 な し 2 7 6 9 . 2 8 1 . 8 12 5 4 . 5 ll 4 7 .8 5 0 . 0

図6精神保健法施行後の変化(2)受け持ち患者数別

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

I

図7指定医の判断が必要な場合(1)設立主体別

増えていく傾向がある(図8).

したがって,保健法k順守しようとしても受け

持ち患者が多くなればなるだけ,「指定医の追認」

という書面上だけの``っじつま合わせ"にならざ

るを得ない現実があると考えられる. しかし,そ

れらの病院とて「法改正の影響を被っている」と

言う以上,現状では法を「守ろうとして守り切れ

ない」状況が確かにあるのである. その元凶が奈

辺にあるのかこそが問われるべきではないのだろ

うか.

決して「非指定医のやりたい放題にやらせてい

る」病院が多いわけでは無さそうである.

Ⅴ. 指定医制度の診療上

への影響(図9-13)

以上からも,指定医制度が非指定医や各病院に

診療上かなりの影響を与えていることがわかる

が,当の非指定医たちはこのことをどのように評

615

価しているのだろうか.

まず,全体で約半数の非指定医が,「この制度

は日常診療にマイナスの影響を与えている」と希

えており,ここでも私立病院に勤務する者に否定

的な見解が多い(図9). 同様に,医師1人あた

りの受け持ち患者数が多くなるほどこの制度が

「マイナスの影響をもたらしている」と考えてい

る(図10). また,精神科医としての経験年数が

高くなるほど否定的な見解が増える傾向がある

(図11). その理由としては,「診療上必要な行為

(例えば隔離や身体拘束)ができないでは主治医

としての責任が果せない」「主治医以外の医師が

介入することは治療関係上マイナス」「経験の浅

い医師がそのために患者の人権を侵害するとは考

えられない」等が挙げられている.さて,ここまでで,「指定医制度が導入された

ことによって,一方的に"罪"指定医とされた者

が被る影響」について論じて来た. ここからは,

「"非''指定医が指定医資格をとろうとするときに

生じる問題」に視点を移していこう.

非指定医の指定医制度-の評価には,指定医資

格取得に対する病院側(経営者,管理者,責任

者,上司)の方針も影響している(図12). 病院

側の意向を,「取得するのは好ましくない」「指定

医資格は不要」「取得するのが好ましいがとくに

対策は講じない」「取得に対策を講じる」に分類

してみた場合,「取得に対策を講じ」てもらった

非指定医が最も否定的な見解を現行の指定医制度

に向けた. また,指定医資格取得のための症例が

「揃いにくい」と感じている者にも,その傾向が

見られる(図13).

これは,指定医資格を取得しようとしたときに

臨床上好ましからざる影響が出てしまう,ないし

は好ましからざることをしないでは症例が揃わな

いということを,非指定医自身が実感しているこ

とを示しているように思われる.

Ⅵ. 指定医資格を取ろうとす

ると一一(図14-19)

指定医資格取得のために要件をみたす症例を全

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616

精神経誌(1990) 92巻9号

蝣10 % ~ 2 5 % -5 0 % ~ 7 5 g % 「 蝣1 0 0 %

o ' 蝣? 9 2 3 . 1 0 0 . 0 4 1 8 .2 .) J.7 2 5 . 0

時 に 1 5 3 8 . 5 1 9 . 1 1 4 .5 1 4 .3 0 0 . 0

.I+- そ の 他 3 7 . 7 3 2 7 . 3 0 0 .0 0 0 .0 1 2 5 . 0

撫 [H IS ・) 5 . 1 0 0 - 0 .0 0 . 0 1 4 .3 0 . 0

蝣in it 10 25 . 6 7 6 3 . 6 1 7 7 7 .3 19 J2 .6 2 50 . 0

図8指定医の判断が必要な場合(2)受け持ち患者数別

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

[茸 立 % 公 立 % 私 立 % 全 %

影 響 な し 1 5 4 1 . 7 訂 1 3 3. 3 1 3 2 8 . 9 3 6 3 4 . 3

m O # 8 2 2 . 2 5 20 . 8 7 15 . 6 20 19 . 0

…………】マ イ ナ ス 1 3 3 6 . 1 、11 4 5. 8 2 5 5 5 . 6 4 9 4 6 . 7

図9指定医制度の診療上-の影響(1)設立主体別

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618 精神経誌(1990) 92巻9号

~ 10 % -2 5 % -5 0 % -7 5 % 10 0 %

群 …j 影 響 な し 15 3 8. 5 36 .4 3 1.8 7 3 0.4 1 2 5. 0

無 回 答 10 2 5. 6 18 . 2 13 . 6 3 1 3. 0 2 5 0. 0

…………マ イ ナ ス 14 3 5. 9 4 5 .5 1 2 54 . 5 13 5 6、5 1 2 5. 0

図10指定医制度の診療上-の影響(2)受け持ち患者数別

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

十 l 'V - ,蝣 ~ 2 年 % ~ 3 年 % 一 蝣! '(蝣"蝣 % ~ 5 年 % ~ 6 年 %

甘 JIj ∵ 8 3 6 .4 7 4 1 . 2 ll 5 0 . 0 8 3 2 .0 0 0 . 0 2 12 8 .6

妄坊 ∃無 凶 答 2 2 . 7 3 1 7 . 6 2 V . I 4 1 6 .0 5 4 . 7 1 1 4 .3

‥、‥ーマ イ ナ ス 9 4 0一9 7 4 1 .2 9 4 0 . 9 1 3 5 2 .0 7 5 8 . 】 4 5 7 .1

図11指定医制度の診療上-の影響(3)経験年数別

619

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精神経誌(1990) 92巻9号

戟 得不 好 % 不 必 要 % 望 ま しい % 対策 あ り % 無 回 答 %

き影響 な し 1 1 00 2 33 . 3 1 6 3 7 .2 4 1 9 .0 1 3 3 8 .2無 回 答 0 0 .0 1 16 . 7 7 16 .3 」 3 1 4 .3 9 2 6 .5

…………くマ イナ ス 0 (U > 3 5 0 , 0 2 0 I'i.'蝣) 1 4 6 6 . ll 3 5 .3

図12指定医制度の診療上への影響(4)病院の方針別

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

密~=,き~[TJ"iT-「~古流)T~"22菩賢二二進重二二衰:4(1

図13指定医制度の診療上-の影響(5)

指定医資格のための"難易度"との関連

て経験するのに困難を感じている者は全体の7割

を超え,しかもそれは出身大学(医局)によって

それほどの"較差"を認めない(図14). nで述

べたように,各大学(医局)によって勤務する病

院の形態には"較差"があったが,指定医資格取

得のために規定の症例を集めることはいずれの場

合にも現状では非常に困難なことなのである.

経験しにくい症例の第1位はよく言われるよう

に,児童・思春期症例で,全回答者の48.6%が

「経験しにくい」と答えた. 次いで分裂病措置症

例(39.0%),以下,噌癖・中毒性疾患(21.9

%),痴呆(16.2%),症状性・器質性疾患(15.2

%),感情病(6.7%)と続く.

児童・思春期症例について見てみよう. 国立病

院では比較的得やすく,公立や私立の病院では少

し得にくいようだ(図15). 精神科病床数の多い

大規模病院の方が得にくい傾向がある(図16).

精神科医としての経験が比較的浅いうちは得やす

621

く,経験を積むにつれてむしろ得にくくなる(図

17).

児童・思春期症例と同様の傾向が症状性・器質

性疾患にも見られる. 一方,分裂病措置症例と中

毒性疾患はその逆の傾向を示した.

とすれば,経験を積み,現行の医局主導型の転

勤を重ねていけば規定の症例は全部経験出来るの

だろうか? 答えは"香",である(図18).

そして,経験年数につれてこの指定医制度が

「非指定医の臨床能力上妥当」だとする意見が減

少していき,替わって「不当・要改善」とする意

見が増加してくる(図19).

非指定医たちは経験を積んでいっても資格取得

の見通しが立てられずに,制度-の批判的見解を

高める,しかもそこを何とかして資格を得ようと

すれば臨床上好ましくない影響が生じる,それど

ころか指定医制度自体が治療関係を損なうことも

ある--.こんな指定医資格制度は,病院設立者

や患者にとっても好ましくない制度と言わざるを

得ない.

Ⅶ. 苦忍定医問題への若干の言及

精神保健指定医と学会認定医はその性格も目的

も異なる. しかし,以上本稿のなかで指摘してき

たかなりの部分は,学会認定医問題にもそのまま

当てはまるように思われる.

すなわち,達成が困難な"課題"が与えられた

ときには必ず現場に混乱が生じる. そのなかで何

とか課題を達成しようとした者はどこかで無理・

弊害を生じるか,あるいは一部の"選ばれた"者

だけが「資格」を得るかのどちらかにならざるを

得ないのである.一方,現状のように卒後研修態勢が不備なまま

でも簡単に取得できるような認定医制度が導入さ

れた場合,それは謂ばお稽古事の"お免状"的な

ものにしかなり得ず,わたしたち精神科医のギル

ド的利益の保護装置であるに留まることだろう.

認定医制度と卒後研修は一応は別個の問題であ

る.しかし,もしそれが何らかの意義と利益を伴

うものだとしたら,卒後研修はそれを意識せずし

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622

A大学 無GO 答 0 0.0%

一部可能 10 66.7%

B大学

………全て可能 3 21.4%

無掴答、0 0.0%

…………上 部可能 11 78.6%

:0.全て可能 6 23.1%Si群{ー

C大1とN 無LhJ 答0.0%

引 一部可能2中 6.9%

D大学

告全て可能 6 22、2%

無回答 ー1 3.7%

障-{i一l-部可能I

20 74.1%

H 全て可能 2 33.3%

E大'.,'. 無lql答 0 0.0%

棉r=..,r…i…「一部可能 4 66一7%

㌃~…芋全て可能 6 37.5%

F大学 ㍊ 無回答 1 6.3%

「湖可能 956.3%

全 数

※】

ltt 全て可能 28 16.7%

無回答 2 1.9%

割 一部可能75 71.4%

精神経誌(1990) 92巻9号

図14 「指定医資格取得の症例はそろうか?」出身大学(医局)別

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第86回総会シ'/ポジクム:「学会認定医と精神保健指定医」

では行われ得ない. その意味では理想的な認定医

制度とは,その資格を敢得しようとするうえで,

わたしたち白身の精神科医としての技畳を向上さ

せるものでなくてはならないと-弄えるだろ、う. 、し

かるにその理想の実現には,前擬条件として率後

研修環境の充実,ひいては精神医療全体の改革が

不可欠であろう. それなくしては,砂上の楼閣で

ある.

そ∵"."il∴1こiv. JK'i".・蝣二・然(v)∴.こ、十I

資格者を同時に生み出す. そのことを,どうか知

っておいていただきたい.

最後になりましたが,アンケートの作成と回答にご協力くだ

さった,東北大学,東京大学,京都大学,神戸大学,岡山大

蝣一蝣f¥tCMii-し、即、'nニ手摺声柑医.'i;.*i.J∴It∴1*-^恥I*-'ユ

623

図15 「児童. 思春期症例が得にくい」 (1〉設立主体別

1

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鼠16 「児童. 思春期症例が得にくい」 (2)病院の規模(病床数)刺

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624 精神経話(1990) 92巻9号

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図17 「児童・思春期症例が矧こくい」 (3)経験年数別

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第86回総会シンポジウム: 「学会認定医と精神保健指定医」

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図18 「指定医資格取得の症例はそろうか?」 (2)経験年数別

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精神経誌(1990) 98番9号

~ 1 年 % ~ .2 年 % ~ 3 年 % ~ 4 年 % ~ 5 年 % ~ 6 年 %

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図19指定医制度-の評価