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私たちは、一緒に - Tohoku University Official ... · でもなく、最近は、インドをはじめとする南アジ ア、中南米、アフリカまで、特許審査の調和等の

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21世紀は「知」の時代

 2003年、我が国は知的財産基本法を制定しました。これを契機に特許をはじめとする知的財産権の重要性を認識し、知的財産権を重要な柱とすえて国づくりを進めるという意味で、知財立国が宣言されました。 一方、日本に特許制度が創設されてから130年以上が経過しており、特許は広く日本全体の中で認知されたものとなっています。しかし、知財立国を推進していく上では、特許をはじめとする知的財産権の活用が重要となりますが、特に、特許の活用という観点からみると、改善すべきことが多々あったということができます。

 特許の創造、保護、活用のサイクルをうまく回していくことが重要であり、これら三つの要素は相互に関係しています。そのために特許庁の役割はますます大きくなってきているといえます。

イノベーションとグローバリゼーション

 特許庁においてはこの二つの言葉は重要なキーワードです。さまざまな分野での研究開発が盛んに行われ、その成果が特許として保護される。そして、企業の生産活動が活発化し、我々の生活をより良いものとしていく。我々の生活が変わること、それがイノベーションであり、そのプロセスに特許庁は大きく関わっています。

 また、特許をはじめとする知的財産権の分野はもっとも国際化がすすんだ分野といえます。日米欧の先進国から、中国、韓国、アセアンはいうまでもなく、最近は、インドをはじめとする南アジア、中南米、アフリカまで、特許審査の調和等のため、グローバルに特許庁の特許審査官は活躍しています。

特許審査官に求められること

 特許の審査を行う上では、当然、技術的な素養が求められます。そして、特許法に基づいた公正な手続を行う必要があります。技術と法律という二つの道具をうまく使いこなしていくことがまず

重要です。その上で、特許は経済活動の中の生き物であることを認識し、特許の活用という点も考慮する必要があります。そのためには、出願人、発明者の話にも、よく耳を傾けることが重要です。 これにより、特許庁の品質ポリシーが定める、強く・広く・役に立つ特許権の設定が可能になります。 加えて、今後益々グローバル化が進展しますから、グローバルにも活躍できる人材が求められます。 特許庁で我々と一緒に仕事をしてみたいと思う多くの皆さんが特許庁を目指してくれることを期待します。

私たちは、一緒に

「挑戦する」仲間を

求めています。

世界最速・最高品質の

特許審査の実現に向けて

特許技監

小柳 正之

経歴昭和₅₈年 ₄ 月� 入庁(審査第四部無機化学)昭和₆₂年 ₄ 月� 審査官昇任� (審査第四部無機化学(応用無機材料))平成 ₁年₁₀月� 資源エネルギー庁� 原子力発電安全管理課� 事故防災班長平成 ₃年₁₀月� 審査第四部審査官(医療)平成 ₄年 ₇月� 外務省国際連合局社会協力課長補佐平成 ₅年 ₈月� 外務省経済局国際機関第二課長補佐平成 ₇年 ₄月� 総務部秘書課長補佐平成 ₉年 ₂月� 総務部総務課企画班長平成₁₀年 ₇ 月� 審判部審判官昇任(第 ₃部門)平成₁₀年₁₀月� 審判部審判官(第₃₂部門)平成₁₁年 ₄ 月� 審判部審判官(第 ₂部門)平成₁₁年 ₇ 月� 日本貿易振興会� ニューヨーク・センター知的財産部長平成₁₄年 ₇ 月� 審判部上級審判官(第 ₄部門)平成₁₅年 ₄ 月� 審判部上級審判官(第₂₁部門)平成₁₆年 ₄ 月� 特許審査第三部� 応用有機材料技術担当室長平成₁₈年 ₄ 月� 特許審査第三部審査監理官(生命工学)平成₁₉年 ₇ 月� 総務部国際課長平成₂₁年 ₇ 月� 特許審査第三部上席審査長(医療)平成₂₃年 ₁ 月� 特許審査第三部首席審査長(無機化学)平成₂₃年 ₇ 月� 特許審査第一部調整課長平成₂₄年 ₇ 月� 特許審査第三部長平成₂₇年 ₇ 月� 現職

2 3Japan�Patent�Office Japan�Patent�Office

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各省庁●経済産業省 ●原子力規制庁●人事院   ●防衛装備庁●内閣官房●外務省●文部科学省

海外●世界知的所有権機関(WIPO)●経済協力開発機構(OECD)●在ジュネーブ国際機関日本政府代表部●在外日本国大使館●在外日本国総領事館●交流協会  台北●日本貿易振興機構(JETRO)  ニューヨーク  デュッセルドルフ  バンコク/ソウル  北京/ニューデリー    ほか

出向等

●調整課(審査推進室、審査基準室) ●意匠課

審査第一部~第四部

●審判課(特許侵害業務室)○第1部門~第38部門

○審査・審判業務を中心に行う部署●審査・審判周辺業務その他の業務を行う部署

審 判 部

●審査業務課(方式審査室、登録室)●出願課(国際出願室、国際意匠・商標出願室、特許行政 サービス室)●商標課

審査業務部

●秘書課 ●総務課(制度審議室、情報技術統括室) ●会計課 ●企画調査課 ●普及支援課 ●国際政策課 ●国際協力課      

総 務 部

経済産業省

特許庁

独立行政法人等●工業所有権情報・研修館(INPIT)●発明推進協会(JIPII)●知的財産研究所(IIP)●工業所有権協力センター (IPCC)●国際協力機構(JICA)●日本特許情報機構(Japio)●産業技術総合研究所(AIST)              ほか

裁判所●知的財産高等裁判所●東京地方裁判所●大阪地方裁判所

大学●京都大学  ●一橋大学 ●名古屋大学 ●東北大学 ●大阪大学  ●山口大学 ●政策研究大学院大学

長  官

特許技監

○計測 ○ナノ物理 ○分析診断 ○応用光学 ○光デバイス ○事務機器○自然資源 ○アミューズメント ○住環境 ○情報・交通意匠 ○環境・基盤意匠 ○生活・流通意匠

○自動制御 ○動力機械 ○運輸 ○生産機械 ○搬送 ○繊維包装機械 ○一般機械 ○生活機器 ○熱機器 ○医療機器 

○無機化学 ○素材加工 ○金属電気化学 ○医療 ○生命工学 ○環境化学○有機化学 ○化学応用 ○高分子 ○プラスチック工学 

○電子商取引 ○インターフェイス ○情報処理○伝送システム ○電力システム ○デジタル通信○映像システム ○電気機器 ○電子デバイス

…主に物理、光学、社会基盤関係、意匠

…主に機械関係

…主に化学関係

…主に電気、通信、情報関係

審査第一部

審査第二部

審査第三部

審査第四部

特許に守られた様々な技術 特許庁内外での様々な業務 特許制度は、新たな技術などに対して独占権を与えて保護することにより、新たな創作意欲や研究開発を促進するとともに、出願された技術情報を一般公開することで、重複研究を防ぎ、新たな研究のヒントを与えることなどを目的としています。 特許審査官は、世界各国の出願人から受け付けた発明について、技術的観点、法律的観点などから厳正に審査し、独占的な権利を付与するか否かを判断することを通して、特許制度の一翼を担い、日本の技術開発を支え、産業の発達に寄与しています。

Japan�Patent�Office

ロボット(提供:ソフトバンク(株))

曲がる有機ELディスプレイ(提供:富士フイルム(株))

スマートウォッチ(提供:ソニーモバイルコミュニケーションズ(株))

ヒトiPS細胞(提供:京都大学iPS細胞研究所(CiRA))

ドローン(提供:(株)デンソー)

ゲーム機(提供:(株)ソニー・インタラクティブエンタテインメント)ⒸSony�Interactive�Entertainment�Inc.�All�rights�reserved.�Design�and�specifications�are�subject�to�change�without�notice. 自動運転自動車(提供:日産自動車(株))

研究開発(創造)

権利取得(保護)

コスト回収(活用)

出願

産業財産権

利益

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Japan�Patent�Office 特許庁のキャリアイメージ

特許庁のキャリアイメージ審査・審判業務を中心とした様々な経験を通じて、キャリアアップを図ることができます。◦採用後は約2か月間の研修の修了を経て、審査官補に任用されます。◦審査官になるための研修や試験と一定期間(学業等の経験に応じて2~4年)の勤務を経て、 審査官に昇任します。

◦審査官昇任後は、強力な独占権である特許権の付与という重大な職務に従事するほか、行政官として特許庁の内外で特許制度を取り巻く様々な業務に携わります。◦様々な業務を経験し、上級審を担当する審判官や、各部署を統括する管理職へと昇進していきます。

審査官、審判官として

行政官として

松山 紗希 (→p12)平成27年入庁(2年目)

松岡 徹 (→p15)平成15年入庁(14年目)

鹿戸 俊介 (→p21)平成13年入庁(16年目)

船越 亮 (→p24)平成13年入庁(16年目)

中野 宏和 (→p23)平成8年入庁(21年目)

近藤 利充 (→p13)平成19年入庁(10年目)

葛原 怜士郎 (→p20)平成23年入庁(6年目)

山本 俊介 (→p22)平成23年入庁(6年目)

髙橋 宣博 (→p16)平成5年入庁(24年目)

須藤 康洋 (→p19)昭和63年入庁(29年目)

野仲 松男 (→p25)平成4年入庁(25年目)

山本 健晴 (→p14)平成16年入庁(13年目)

松浦 安紀子 (→p24)平成15年入庁(14年目)

上田 真誠 (→p23)平成15年入庁(14年目)

光本 美奈子 (→p17)平成5年入庁(24年目)

桂 正憲 (→p27)平成元年入庁(28年目)

吉田 美彦 (→p26)平成5年入庁(24年目)

 審判官・管理職 等

 部課・外部組織 管理職 等

 審 査 官  審査官補

 部課・外部組織 係長・課長補佐 等

6 7Japan�Patent�Office Japan�Patent�Office

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 発明内容の正確な理解が、特許審査の第一歩。出願書類をしっかり読み、発明のポイントや背景を把握、理解します。技術的な専門知識はもちろん、新しいアイデア等技術の新しい切り口を見抜く目も求められます。

発明内容の理解1 庁内外の検索システムを用いて、特許文献や学術論文等のデータベースから過去に類似の技術がないか調査します。外国文献も対象ですから、英語等の語学力が求められます。実務を重ねながら検索スキルの向上に努めています。

先行技術調査2 特許審査官は、出願された発明と、発見された先行技術文献との対比を行い、特許性の判断を行います。そして、特許性があると判断した場合は特許査定を、特許性が無いと判断した場合は拒絶理由通知を行います。出願人は、拒絶理由通知に対し意見・補正等の応答を行い、これに対し、再度特許審査官は審査を行い、最終的に、特許査定、または拒絶査定を行います。特許となった出願には、特許証が交付されます。 出願人・第三者の双方が納得する審査を行うためには、技術・法律の両専門知識に加え、高度な論理的思考が必要とされます。また、拒絶理由通知等は書面で行われるため、論述能力も必要とされます。

出願人・代理人特許審査官

特許性の判断・出願人とのやり取り3

特許 拒絶

もし、審査結果に不服があるときは

審査官の使う検索システム 審査官は、国内外の特許文献・非特許文献を検索できる独自の検索システムを用いて、効率的かつ漏れのない先行技術調査を行っています。 左図は検索画面です。審査官は、技術で分けられた分類記号や、任意の検索ワードを用いて文献を絞り込みます。 下図は検索画面で絞り込んだ文献を表示した画面です。例えば、左側に文章を、右側に図面を表示することが可能であり、効率的に文献を把握することができます。

審 査

再審査

意見・補正の検討

拒絶理由通知書

手続補正書・意見書

審判請求を行うことができます。審判請求後は審判で審理が行われます。審判の業務については、p18 へ

Japan�Patent�Office

審査部の紹介特許審査の流れ

審査部の紹介

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Japan�Patent�Office

充実した研修による審査官の育成 審査官には、技術、法律に関する高度な知識が求められます。 そのため、入庁から審査官に昇任するまでの審査官補の期間には、法律や審査実務の知識を学ぶための法令により定められた研修や指導審査官による実務指導などの体系的な育成プログラムを通じて、審査官としての基礎知識を習得することができます。 また、審査業務等に必要なスキルを向上させるための研修(語学研修、法律研修等)も充実しています。

【審査官補コース研修(約2か月)】法令・条約、審査実務の初歩的な知識の習得

法定 【審査官コース研修(前期:約2か月 後期:約1か月)】法令・条約、審査実務の専門知識の習得

 用

審査官昇任

指導審査官による実務指導

審査官補(約2~4年間)

その他の研修制度審査官として、更なるスキルアップに対応した研修制度が充実しています。【留学制度】海外の大学に、年間20名以上の審査官が留学し、知的財産法や先端技術を学んでいます。【法律研修】大学法学部への派遣聴講、法律専門家による講演により、法律の知識を磨きます。【技術研修】研究者を招へいしての講演、学会参加、企業インターンにより、技術の習得範囲を広げます。【語学研修】英語、中国語、独語、仏語、韓国語などを習得します。

成長を感じる日々 法律や審査に関する知識を身につけるために、審査官になるまで様々な研修を受講しました。私は、法律に関して門外漢だったため、特に法律の研修について不安がありました。しかし、研修では、法律ができるまでの経緯や背景の説明に加え、演習等を交えた実践的なものもあり、理解しやすく、法律への興味を掻き立てられました。また、難解な点についても、指導審査官や先輩審査官からの手厚いサポートもあり、一つ一つ理解を深めることができました。不慣れで大変な面もありましたが、研修を通じて、新しい知識が増え、日々成長を感じられました。今でも、研修で身に着けた知識が審査を支える礎になっています。

学びがいのある職場 業務では、外国語文献の読解や他国の審査官との意見交換等、語学力が求められる場面が多くあります。特許庁では、語学研修プログラムが充実しているため、入庁後に十分な語学力を身につけることができます。私は入庁から5年目の時に、英会話のレッスンを行う語学研修を受講しました。語学研修での英語の研鑽の傍ら、他国の審査官と英語で意見交換を行う実践的な機会を得ました。ぎこちない英語ながらも、他国の審査官と率直な意見を交わせる面白さを経験したことで、英語への意欲が高まり、その後の語学学習の励みになりました。このように、特許庁では、語学力を身に着けるための環境が整えられています。こうした環境の整った職場で皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。

充実した研修プログラム グローバル時代に国際舞台で必要なこと

企業インターン等の研修で技術知識を習得できる環境(技術研修)

相手を知ること-留学時代の経験から 入庁からの十数年を振り返って、特許審査官としての専門性のみならず行政官としての幅広い視野を養う上で、特に貴重な経験を積めたのは留学時代でした。 2012年7月から2年間、米国ニューヨークのフォーダム大学ロースクールに留学する機会を得ました。ロースクールで米国の知的財産法を学ぶだけでなく、学内外のセミナーに参加して、多くの有識者や実務者と意見交換を行いました。ニューヨークは「人種のるつぼ」と呼ばれるだけあって、留学中に知り合った人々の国籍は20を超えました。母国語も違えば、様々な人種、宗教、慣習を持った人たち。ものの考え方や話し方も人それぞれで、最初は戸惑いを感じることもありましたが、様々なコミュニケーションを通じて、特に大切なのは「相手を知ること」だと分かりました。留学時代の経験が仕事に活きる 現在は、特許審査の国際的取組を担当し、外国特許庁との交渉や審査協力を行っています。実際に、東南アジアの特許庁で現地の特許審査官たちと一緒にプロジェクトを進めていますが、日本の常識では上手くいかないこともあります。そのような時に、留学時代の経験から、まずは相手の考えていることをじっくり聞いて相手を知ることから始めました。そうすることで、信頼を得て、円滑にプロジェクトを進めることができました。 経済のグローバル化が進む昨今、特許庁において国際舞台で活躍できる場面は確実に増えています。皆さんもこの世界に飛び込んでみませんか。

不安から自信へ 特許庁に入庁して、はや4年が過ぎました。入庁時から現在の部署に配属され、動画像処理を担当しています。大学での専門も動画像処理だったのか?と聞かれると、そうではありません。音声信号処理が専門でした。 入庁時、現在の部署への配属を告げられ、不安を覚えました。動画像処理の知識などなかったからです。知識のない技術を担当することへの不安がありました。 しかしながら、入庁時から様々な講演、国内外の学会派遣、技術セミナー等の技術研修に参加し、知識を得る機会に恵まれました。加えて、企業インターンに参加することもできました。企業の研究開発現場で、実際に研究開発を行う研修です。 企業インターンでは、基礎研究から製品の性能評価まで、最先端の技術開発を行いました。実際に研究開発を行うことで、最先端の知識を得るだけではなく、数多くの試行錯誤を経て発明は生まれるということを経験として理解することもできました。 企業インターン等の技術研修で得た知識・経験は特許審査にも役立ち、入庁時に覚えた不安は自信に変わっていきました。大事なことは、門をたたくこと 皆さんが特許庁に入庁されるとき、専門外の技術を担当する可能性もあると思います。しかしながら、特許庁には、企業インターン等の技術研修に参加し、技術に関する知識・経験が得られる環境が十分あります。心配する必要はありません。恐れずに特許庁に来てください。特許審査という、特許庁でしか経験できない特別な世界が、あなたを待っています。

鬼塚 由佳 Onizuka, Y.平成24年入庁審査第四部審査官(伝送システム)

加藤 範久 Kato, N.平成15年入庁審査第一部調整課審査企画室 審査企画班長

山﨑 雄介 Yamazaki, Y.平成24年入庁審査第四部審査官(映像システム)

充実した研修による審査官の育成

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学び続けられる職場

 私は入庁後、自動車の安全技術や制御技術の特許審査を担当してきましたが、平成28年10月から医療機器技術を担当しています。我が国産業を支え、また今後も注目され得るこうした分野を担当でき、日々勉強して技術にキャッチアップする必要もあり、個人的にも知的好奇心が満たされ充実しています。

指導審査官から知の伝達

 入庁から3年間の審査官補時代に、合計6名の指導審査官から指導を頂きました。技術、法令基準、判断、起案といった通常の審査業務に加えて、知財裁判の傍聴や特許庁生活の助言まで様々なことを学ばせていただきました。指導審査官自身も審査業務で忙しい中、どの方も、いつでも相談できる雰囲気を作ってくれて、丁寧に指導していただきました。 私も審査官5年目に指導審査官として審査官補を受け持ちました。かつての自分の姿を審査官補に重ねつつ、当時の指導審査官から受けた指導内容のメモを見返して、審査官補自身の気付きにつながる質問を投げかけるよう心掛けました。指導する立場になり改めて、知識や判断力はもとより、相手が理解できる説明をする能力の大切さを実感しました。

海外特許庁への派遣を経て

 平成25年に2ヶ月間、海外特許庁へ派遣の機会を頂きました。派遣先の欧州特許庁は、当時より品質管理に関する体制や諸施策を強化しており、日本国特許庁と様々な面で協力関係にある特許庁です。派遣の主な目的は、日本と欧州での審査結果の比較に関する共同分析でした。欧州審査官とフェイストゥフェイスで連日共同作業を行ったことで、この分析が互いの先行技術調査・審査の実態把握、質の向上に有用との認識が共有できました。今回の共同分析スキームはそれ以降も継続されており、個人的にも嬉しく思います。また、私から担当分野の欧州審査官に対して同分野における日本独自の特許分類の説明を行ったところ、「明日から早速使ってみたい。」との好反応も得られ、私自身、日本の審査手法のよさも再確認できました。 日常の特許審査業務では、インターネット等を介して海外特許庁の審査書類を参照することが常ですが、帰国後は、欧州カウンターパートの名前を審査書類に見つけると嬉しさを感じると共に、より信頼して審査に活用できました。また逆に、自分の審査結果が、出願人のみならずライバルたる海外審査官にも見られていることをより意識して、一層質の高い審査結果が発信できるよう、取り組んでいます。

毎日の審査業務の中で

 私は今、事務機器という部署でトナーを使ったコピー機やプリンタに関する技術の審査を行っています。大学では農業土木を専攻しており、入庁時には、法律はもちろんのこと、担当する技術の知識もほぼない状態で、初めは不安でたまりませんでした。そんな私でしたが、大学で学んだ理系の知識をバックグラウンドとして活かしながら、特許庁での充実した研修制度や、指導審査官をはじめとする部署内の皆様のあたたかいご指導により、初めて触れる技術分野であっても審査業務に携わることができています。 新たな技術分野に飛び込むということは、一日一日が勉強だと思っています。出願書類の内容、先行技術調査で目にする文献、出願人・代理人からの意見など、私にとっては、すべての業務が中身の詰まったテキストです。また、技術に関する専門知識の習得には、庁内の研修だけでなく、学会や関連企業等での技術研修も豊富に提供されるので、実際に製品に触れ、技術者の方のお話を伺うという貴重な機会を得ることもできます。このように、審査官補の毎日は学ぶことで溢れています。

指導審査官による心強いサポート

 審査官補は、豊富な知識をもつ指導審査官の指導に基づいて審査を行います。指導審査官から、審査官補が発明を正しく理解しているか、先行技術調査の範囲や特許性の判断は適切か、といった審査実務に関わること全般について丁寧な指導を受けられるので、審査実務能力を身につけることができます。一人で審査をしていると、判断に迷ったり不安になったりすることも多くありますが、指導審査官に相談すると、必ずより良い方向へ導いてもらえるので、安心して審査を進めることができます。また、指導審査官の審査官や行政官としての経験は幅広く、今後の自分のキャリアパスを考えるうえで大変参考になりますし、時には業務以外の話をすることもあり、特許庁での生活において仕事に限らず様々な場面で心強いサポートを受けています。私が指導を受けてきた先輩の皆様は、私の目指す審査官の姿そのものです。 審査官補2年目として、まだまだ未熟な点も多いですが、これから世の中にどのような新しい技術が生まれようとしているのか、それによって人々の生活の質がいかに向上していくのかを想像しながら、自分の仕事の責任の大きさをかみ締めつつ、一つ一つの案件に取り組んでいます。若手を取り巻く充実した育成環境の中で、一緒に一人前の審査官を目指しませんか。

充実した育成環境に支えられ審査官の業務 相手に伝えること

Japan�Patent�Office

審査官からのメッセージ

松山 紗希 Matsuyama, S.平成27年入庁審査第一部審査官補(事務機器)

近藤 利充 Kondo, T.平成19年入庁審査第二部審査官(医療機器)

経歴平成27年�4�月�入庁(審査第一部事務機器)

経歴平成19年4月�� 入庁(特許審査第二部運輸)平成22年4月�� 審査官昇任平成24年7月�� 特許審査第一部調整課品質管理室係長平成25年7月�� 審査第二部自動制御平成27年10月�審査第二部審査調査室平成28年10月�審査第二部医療機器

審査官からのメッセージ

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海外特許庁との交流

 特許庁では、日本企業等が海外でスムーズに知的財産権を取得できる環境を整備するために海外の特許庁と交流しています。その相手国は、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国からアジア、中南米などの審査体制がまだ十分に整備されていない新興国まで多岐にわたっています。

新興国への審査協力

 現在、私は審査官として特許の審査を行うとともに、「国際研修指導教官」として新興国の特許庁の審査官に対して審査能力向上のための実務指導を行っています。 この国際研修指導教官の仕事には、新興国への派遣による現地での審査実務指導、新興国から日本に研修を受けに来た審査官に対する講義や審査実務演習の講師、新興国審査官向けの研修テキストの作成などがあります。 私もこれらの仕事に携わり、インド派遣とフィリピン派遣を経験しました。

インド、フィリピンへの派遣を通じて

 インド派遣では、約100名の新人審査官に対して英語で講義を行いました。このような経験は初めてで緊張しました。さらに、直前のスケジュール変更や、講義で使う資料が不足するといった予期せぬトラブルも発生しましたが、なんとか無事乗り切ることができました。終わってみれば、貴重な体験であり、今後の自信にもなりました。 フィリピン派遣では、20名ほどの審査官を相手にした講義を行いました。少人数であったため、グループディスカッションや討論結果の発表などを通じて研修生が積極的に参加する形で講義を行うことができました。その中で、ほとんどの審査官が日本の審査手法をよく理解しており、これまでに行ってきた審査協力の成果を実感できました。 一言で新興国への審査協力といっても、それぞれの特許庁のレベルやニーズによって指導内容は異なり、それに合わせた研修資料を作成することが必要となってきます。それでも、派遣先での審査実務指導や日本での審査実務演習では海外特許庁の審査官と面と向かって議論したり説明したりすることで彼らに対する親近感がわきますし、研修終了後に彼らから笑顔で感謝されたり、派遣先の特許庁のホームページなどに自分の行った審査実務指導について紹介されるとやりがいを感じます。 このように特許庁では、審査官としての経験をいかして海外特許庁に対して貢献できる機会があります。特許庁に興味を持たれた皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。

いつもの帰り道に

 私は現在、特許庁で生命工学審査官を務めるとともに、客員准教授として東京大学大学院で知的財産の授業を担当しています。 ふと、10年以上たずさわっている特許について、改めてどうだったかなと思うことがあります。それは、その授業で学生から何気ない質問を受けたり、自分で講義をしたりしている途中に思うことです。自分が普段仕事でよく使っているはずの法律や事柄だとしても、特許についてはあまり知らない学生に伝えようとすると、新しい発見があります。毎回授業が終わった後の帰り道、電車の中でぼんやり窓の外を眺めながら、もっとこう説明すればよかった、もっとこういう視点を伝えればよかった、と次々と改善点を思いついてしまいます。

審査官として、行政官として

 私は入庁してから特許審査官として様々な技術分野を担当するとともに、特許をはじめとした知的財産行政に関わる部署にも異動させていただきました。審査官として新しい技術に特許を付与するという特許法に基づく審査実務を担当し、実務について十分に専門性を持ちつつ、同時に行政官として特許の審査に用いている特許法や特許審査実務のガイドラインの改訂を担当する機会を得たこと、さらに知的財産を活用した日本経済の発展という大きな視点に立った仕事をさせていただいたことは、とりわけ幸運だったと思います。企業や大学の先生方と知的財産行政に関して意見交換をする際に、審査官としての知見があるということでどれだけ助けられたか知れません。また、どの異動先でも楽しい同僚と、特許の技術について議論したり、知的財産のあり方について悩んだりする中で、日々新しい発見をし、学ぶことの連続でした。

日本のこれからのために

 そして、今度は、新たに大学の教員として、多くは将来の理系の研究者として日本や世界の科学技術の発展に寄与されるであろう学生に、特許や知的財産についての基礎知識をお伝えする立場となりました。今回も、審査官としての技術分野の専門知識と、行政官として知的財産を通じた経済成長に取り組んだ視点とに大いに助けられると共に、冒頭述べたように、教えることは教わることだと感じ、毎日が新たな発見の連続です。 皆さんも、新しい発見に満ちた職場で、一緒に働きませんか?

審査官の経験を活かした海外特許庁への貢献 新たなる発見に満ちた職場へようこそ

Japan�Patent�Office

山本 健晴 Yamamoto, T.平成16年入庁審査第二部審査官(動力機械)

松岡 徹 Matsuoka, T.平成15年入庁審査第三部審査官(生命工学) 東京大学大学院�新領域創成科学研究科�メディカル情報生命専攻�バイオイノベーション政策分野�客員准教授

経歴平成16年4月�入庁(特許審査第二部一般機械)平成20年4月�審査官昇任平成21年4月�総務部企画調査課 調査係長平成22年7月�留学(スタンフォード大学)平成23年7月�特許審査第二部生産機械(特殊加工)平成25年1月�総務部総務課 課長補佐平成26年1月�現職

経歴平成15年4月� �入庁(特許審査第三部高分子)平成19年4月� �審査官昇任(特許審査第三部金属電気化学)平成20年7月� �特許審査第一部調整課審査基準室�係長       品質監理室�係長平成21年7月� �特許審査第三部金属電気化学平成22年9月� �留学(ユニバーシティカレッジロンドン)平成23年9月� �特許審査第三部金属電気化学平成23年10月�経済産業省経済産業政策局知的財産政策室�課長補佐平成26年1月� �審査第三部生命工学平成26年6月� �総務部総務課制度審議室�室長補佐平成28年1月� �審査第三部生命工学平成28年4月� �東京大学大学院�新領域創成科学研究科�       メディカル情報生命専攻       バイオイノベーション政策分野�客員准教授

審査官からのメッセージ

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責任の重さとやりがい

 中小企業の経営者の方に、壁一面に飾られている、特許を取得した“あかし”である特許証を見せていただいたことがあります。金メダルを獲得したかのように、一番目立つ場所に大切に飾られていました。特許をはじめとする知的財産を経営に生かしていただくために、経営者向けの教材の開発に携わっていたときです。そこで、様々な企業が存続をかけて知的財産を戦略的に活用している事例を学び、特許になる発明か判断する審査官の責任の重さとやりがいを改めて認識しました。

成長する機会

 審査官は挑戦し学び続けることが必要です。審査を担当する技術が進歩していくことはもちろん、別の技術分野に担当が変わることもあります。私はテレビ技術、携帯電話の通信方式、半導体の回路構成など異なる技術分野の審査を経験しました。第一線の開発者に技術の開発動向を説明していただく機会や学会に参加する機会などによって、変化に対応することができます。充実したサポートを利用しながら、時代に合わせて知識や経験の幅を広げることができるのです。 同僚の審査官は頼りになる存在です。審査の経験が豊富な審査官、担当する技術分野が異なる審査官、法律に詳しい審査官、いろいろな能力を持つ審査官が周りにいます。同僚の審査官と特許になる発明なのか議論することで、発明の本質を深く理解し、審査官は成長していきます。

多くの活躍できる場

 得られた能力を使って活躍できる場も多くあります。私はスイスにある世界知的所有権機関(知的財産を扱う国連の専門機関)、企業や独立行政法人でも働く機会を与えていただきました。特許の国際的な出願制度の普及、企業における知的財産に関する運用体制の整備、知的財産を活用できる人材の育成に情熱を持って取り組みました。多様な国の方や企業の方と一緒になって課題に挑んでいると、私の話を真剣に聞いてくれていることが分かります。他の組織でも本当の仲間として迎えていただけたのは、審査官として培った知的財産の知識や判断力のおかげです。 特許制度を軸とした多彩な仕事を経験し、審査官の信頼される判断こそが特許制度を支えていることを強く実感しました。今は審査のマネジメントを担っています。私たちの一つ一つの信頼される判断が、日本でイノベーションが促進されるための基盤を創っていることをいつも忘れずに。

一人ひとりの力の集結

 私は今、スマートフォンや電気自動車など昨今成長著しい革新分野で注目されているリチウムイオン電池や燃料電池をはじめ、合金などに関する特許出願を審査する審査室に所属しています。 日々、特許出願の処理方針について担当の審査官と話し合い、若手を含め技術分野の担当期間が短い審査官の審査環境を整備し、関連部署と連携して業務の効率化を図ることで、年間約7000件の新しい出願に対応しています。時に難解で膨大な特許出願について一定の質を維持しながら審査をすすめるため、担当審査官が少しでも心地よく審査できるようにサポートすることを目指しています。 この審査室では、グループ長を務めるベテラン審査官らが中心となり、電池、金属いずれの分野においても審査結果がばらつきのないものとなるよう、協議や先行技術調査のための環境整備を進めてくれています。特に、電池関連技術は、近年の出願件数が急増している上に技術内容も多様化しており、国際的な競争も激しい技術分野であることから、学会への積極的な参加、企業の方々との意見交換、先端技術分野の専門家による研修を通じて、技術動向のキャッチアップに努めています。審査官一人ひとりが、『特許制度は、産業の発達に寄与するものである』との認識のもとに適正な審査を迅速に行うことを意識して、審査室としてのアウトプットを提供することが、出願人のニーズに応える上で最も大切であると感じています。そして、個々の審査官がそのような意識を抱くためには、一人一人を大事にし、執務環境を大切にする職場であることが不可欠であると思っています。

人を育てる職場

 私はこの筆をとるにあたり、「スペシャリストかつジェネラリストを目指したい」と入庁した当時を思い出しました。あれから20年超、審査の経験はもとより、多岐にわたる業務や管理職としての経験のいずれもが、入庁時に抱いていた理想像に向けて少しずつ私を成長させてくれたものと確信しております。 特許庁での仕事は、特許の審査と知財の保護を通じた社会貢献につながるものです。的確な審査を行うためには、先輩方の指導に加え、数々の法律研修や技術研修等、自己研鑚の場を活用して、日々成長することが大切です。審査は審査官一人ひとりが行うものですが、周囲にはいつも協議、相談できる頼りになる同僚がいます。 このような特許庁での仕事に興味を抱いた皆さんと、ぜひ一緒に仕事をしたいと思っています。

審査官として成長し貢献する 個々の力が最大限発揮される職場を目指して

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髙橋 宣博 Takahashi, N.平成5年入庁審査第四部テレビジョン技術担当室長(映像システム)

光本 美奈子 Mitsumoto, M.平成5年入庁審査第三部審査監理官(金属電気化学)

経歴平成5年4月� � �入庁(審査第五部映像機器)平成9年4月� � �審査官昇任平成10年7月� �総務部国際課地域政策第一係長平成11年7月� �審査第五部計算機応用平成11年11月�行政官短期在外研究員(ジョージ・ワシントン大学客員研究員)平成12年5月� �審査第五部計算機応用平成15年1月� �総務部国際課企画班長平成17年1月� �特許審査第四部伝送システム平成18年9月� �世界知的所有権機関(WIPO)PCT対外法務関係部�カウンセラー平成21年11月�審判官昇任(審判部第20部門)平成23年4月� �スズキ株式会社�知的財産部�企画担当部長(官民人事交流)平成26年4月� �審査第四部データネットワーク技術担当室長(デジタル通信)平成26年10月�独立行政法人工業所有権情報・研修館�活用促進部長平成27年4月� �独立行政法人工業所有権情報・研修館�知財人材部長平成28年10月�現職

経歴平成5年4月� � �入庁(特許審査第四部生命工学)平成9年4月� � �審査官昇任平成11年1月� �特許審査第一部調整課審査基準室平成12年7月� �留学(ハーバード大学)平成13年7月� �特許審査第三部生命工学(2回育児休業取得)平成19年4月� �審判官昇任(審判部第22部門)平成21年4月� �特許審査第三部生命工学(~平成25年6月まで秘書課職員相談室員併任)平成23年7月� �主任上席審査官(特許審査第三部環境化学、医療)平成26年7月� �技術担当室長(審査第三部医療 医薬品製剤、バイオ医薬)平成28年7月� �現職(平成28年10月より、調整課品質管理代表委員併任)

審査官からのメッセージ

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審判部の紹介

拒絶の妥当性判断(拒絶査定不服審判)

 通常、行政処分に不服がある場合は訴えを裁判所に提起しますが、特許法等では、審査結果の妥当性を判断するための手段として「審判」の制度を整備しています。 審判では、審判合議体が、職権による調査も行ったうえで審査官がした拒絶査定が妥当であったか否かを審理し、審決を行います。

※審判合議体:審査は審査官が単独で行いますが、審判では、3人又は5人の審判官による合議体で審理を行います。

特許の有効性の判断(無効審判)

 本来、権利にはならない発明に対して特許が与えられた場合、その特許を無効とし、はじめからなかったものとする手段として、「無効審判」の制度があります。 無効審判では、審判請求人と特許権者の双方が主張、立証をつくし、両当事者に納得感のある審理・審決を行うため、原則、口頭審理を行っています。

※口頭審理:権利化された特許権の有効性を争う無効審判の中で、当事者が直接主張を行う審理の方法です。

(特許庁審判廷)

※写真では、中央の3人が合議体の審判官で、右側が特許の権利者、左側が無効を訴える審判請求人です。

審査の上級審1

紛争の早期解決2

無効理由の主張・立証

主張・立証に対する反論

審判請求人

特許権者

審判合議体

拒絶査定への不服

拒絶査定の妥当性の判断

※写真は合議の様子です。

審判請求人

審判合議体

最高裁判所

知的財産高等裁判所

司法

審判の審理結果に不服があるときは

特許庁審判部

審判は第一審としての機能を担っているため、審理結果に不服がある場合は、知的財産高等裁判所で争われます。

専門技術官庁の最終判断を担っています慎重に公正に

 私は審査官としての経験を積んだ後、現在、審判官として審判事件などを審理しています。 審判官が扱う審判事件には、主に拒絶査定不服審判と特許無効審判があります。いずれも、いったん出された行政処分の見直しであり、審理の結果(審決の結論)によっては事件の当事者や利害関係人などに大きな影響を与えますから、迅速さが求められる中にあっても、常に慎重かつ公正な審理を心がけています。

合議は知的格闘技?

 審理は三人又は五人の審判官による合議で進められます。具体的には、事件毎に主任を置き、その主任の説明や起案に対し他の審判官が多面的な視点から自らの考えを余すところなく述べた上で、審決を行います。しかし、審決には結論だけを記載すればよいわけではなく、その結論を導いた理由の記載も求められます。しかも、その理由は証拠に基づく客観的・合理的な事実認定、その事実の法令への適用といった緻密かつ論理的な説明でなければなりません。 合議によっては、結論や理由について意見が一致しないことが起こります。各々、自らが正しいと思うところをロジカルに述べ合いつつも、最後には合議体としての統一した判断を出さなければならないわけですから、このような場合の合議は真剣勝負そのもので、気がついたら開始から数時間経っていたということもざらです。しかし、侃々諤々の議論の末自分の意見が採用されたときの達成感は一入です。

責任感、そして誇り

 審決に対する不服の訴えは、知的財産高等裁判所に提起されます。また、無効審判で行われる口頭審理は、民事訴訟の口頭弁論によく似た審理形態をとります。これらは、審判が準司法機関であるとか、第一審の地方裁判所的存在であると言われるゆえんです。仮に、審決が判決で取り消されるようなことが仮に頻繁に起こるようなことになれば、そのような事態は知的財産行政に対する信頼を損なうことにつながりかねません。 専門技術官庁の最終判断を担うという誇りとともに、その仕事の重みを体現できる場所で働けるよろこびをかみしめながら、日々勤しんでいます。

須藤 康洋 Suto, Y.昭和63年入庁審判部審判長(第24部門長)

昭和63年4月�� 入庁(審査第二部応用光学)平成4年4月� � �審査官昇任平成6年10月�� 総務部特許情報管理課計画係長平成7年10月� �審査第四部審査官(塑性加工)平成9年2月�� � 外務省出向(在ケニア日本国大使館)平成12年10月�総務部電子計算機業務課調査班長平成13年10月�審判官昇任(審判部第25部門)平成15年10月�特許審査第三部審査官(プラスチック工学)平成19年4月�� 特許審査第三部上席審査官(環境化学)平成20年4月�� 裁判所調査官(知的財産高等裁判所)平成23年4月�� 審判部上級審判官(訟務室)平成24年4月�� 審判部上級審判官(第24部門)平成26年1月�� 審判長昇任平成28年4月�� 審判部審判長(訟務室)平成28年10月�審判部審判長(第24部門)平成29年1月�現職

厳正な審理を行う審判 審判は、審査の見直しに位置づけられ、地方裁判所に代わって第一審としての機能を有する審判部が民事訴訟法等で定められた厳正な手続きで審理するものです。 審査官として一定のキャリア(一般的に10数年)を積み、法律で定められた研修を終了した後、審判官に昇任します。 また、審判の主な役割は大きく分けて次の2種類です。

審判部の紹介

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国際舞台で活躍する審査官 企業活動がグローバル化した今日、日本のみならず海外での円滑な特許取得へのニーズが高まっています。 審査官は、日本企業のグローバルな事業展開を支えるべく、日本で特許付与された発明が海外でも安定した権利として円滑に保護されるよう、国際ルール作りや途上国支援などにも携わります。

国際ルール作りに向けた国際交渉 グローバルな事業展開には、グローバルな特許取得が欠かせません。国際的な特許制度の調和を目指して、国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)や、世界貿易機関(WTO)における多国間交渉、五大特許庁(日米欧中韓)会合、アジア太平洋経済協力(APEC)の知的財産権専門家会合、米国等との二国間交渉などの場に職員が参加し、厳しい交渉を行い、議論をリードしています。

途上国支援 二国間交渉やEPA(経済連携協定)交渉を通じて、途上国での知的財産権保護強化を求めるとともに、審査協力、機械化協力、人材育成を積極的に推進しています。 1996年から、主にアジア太平洋地域より、のべ5100名を超える研修生を受け入れるとともに、各国への審査実務指導等のための専門家派遣を行っています。

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審査以外の業務紹介

ユーザーの声を活かした施策立案 日本全体の活力を上げることを目的とした地方創生に対する期待の高まりや、企業活動のグローバル化に伴う企業の知的財産戦略の多様化など、日本の社会環境は日々変化しています。今後日本が持続的に発展するために、特許庁は知的財産の観点から、社会環境の変化に即した施策立案が求められています。 審査官は、ユーザーの声を汲み取って、このような施策立案を行う業務にも携わります。

出張面接審査 特許庁では、出願人・代理人と審査官との間でコミュニケーションを取り充実した審査を行う施策として、直接対面で審査を行う「面接審査」を実施しています。「出張面接審査」は、全国各地に審査官が出張して面接審査を行い、遠隔地の出願人に対しても所在地付近での面接審査の機会を提供することで、地方創生を支援する施策です。

テレビ面接審査 「出張面接審査」と同様に、遠隔地の出願人に対して面接審査の機会を提供するため、「テレビ面接審査」も実施しています。「テレビ面接審査」では、特許庁のWEB会議システムを利用して、出願人所有のPCからの参加が可能です。

地域拠点特許推進プログラム 「地域拠点特許推進プログラム」は、平成28年11月から開始している、地域の中小企業やベンチャー企業、研究施設等が集まるリサーチパークや大学等といった「地域拠点」を対象にした、特許権の取得と活用を支援する施策です。今後イノベーションの中核を担うべき地域拠点が特許制度を活用して発展していけるよう、出張面接審査を通じて特許の権利取得を推進するとともに、特許セミナーを通じて、地域拠点全体における特許の権利取得・活用に関する知識習得を支援します。

ニーズに応え、施策を企画する 特許庁では、日本企業が特許制度を活用して持続的に発展できるよう、様々な施策を実施するとともに、全国で普及活動を行っています。近年、特に注力しているのは、出張面接審査といった地方創生に関する施策です。ユーザーニーズをもとに新たな施策を企画し、さらに施策の運用・改善まで行うことが私の主な仕事です。ある時、地方の中小企業の方から「特許出願の権利化と合わせて、権利の有効な活用方法のアドバイスをもらえないか」という相談を受けました。このようなニーズをもとに試行錯誤し、新たな施策として「地域拠点特許推進プログラム」を企画の上開始しました。

審査官の専門性を活かす 施策の企画・運用に加え、個人で出願している方の相談対応、出張面接審査を行う際の審査時期の調整など、幅広いユーザーと審査官の架け橋となって支援を行うことも私の重要な仕事です。また、震災の際には、出願人の方が手続きを滞りなく行えるよう支援しました。 ユーザーの声を聞いて、新たな施策を企画したり、出願人を支援することは、審査官としての専門知識を持った特許庁職員でなければできません。また、ニーズに沿った施策の企画や支援によって、出願人から感謝の声をいただくことも多くあり、とてもやりがいを感じています。 このように、特許庁は、審査実務だけでなく、審査官としての専門性を活かしたクリエイティブな業務にもチャレンジすることができる職場だと思います。皆様が特許庁という職場で活躍する日をお待ちしています。

審査官としての知識と経験をベースとし、あらゆる可能性を探ります。 企業などユーザーの皆様の活動に国境はありませんが、特許制度や運用は国毎に異なるため、それらを少しでも調和し、ユーザーの皆様の負担を減らして利便性向上を図ること、それが私の仕事の主な部分です。 普段からユーザーの皆様の声を幅広く把握し、何を海外庁との間で実現していくかを日々上司と議論しつつ検討しています。特に、私の担当である特許制度を調和するための先進国間会合や、五大特許庁の会合に挑むにあたっては、海外庁が何を考え、どのような交渉となるかなど、あらゆる可能性を想定し、長期的に見て最も利益が得られる途を検討することが必要です。 そのような業務を適切に行うにあたっては、各国の制度内容に加え、制度設立の背景や運用実態等、審査官として得た知識や経験が重要な基礎となっています。

チームの信頼関係により成果を生むことができます。 2016年の五大特許庁長官会合は日本で開催しました。大規模な会合を主催する際は、普段の業務に加え、参加する海外庁・ユーザー団体の方々、会場の担当者等の関係外部との調整をしつつ会合準備を進める必要があるため、膨大な作業が発生します。数ヶ月掛け、他の業務と並行してチームで一つ一つ課題をクリアしていきます。その際にはチームメンバー個々の強い責任感とお互いの信頼関係が重要です。「いつも皆さん楽しそうですね。」そんなことを課内の方からも言われるくらい、明るく楽しくお互いをサポートしつつチームで準備を進めた結果、最大限の成果を出すことができたと思います。 皆さんも是非そんなチームの一員になって下さい。

葛原 怜士郎Kuzuhara, R.平成23年入庁審査第一部調整課企画調査班 企画第二係長

鹿戸 俊介Shikato, S.平成13年入庁総務部国際政策課多国間政策第一班長

審査以外の業務紹介

幅広いユーザーニーズに応える ユーザーの利便性向上のために

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時代に即した法整備 特許法・特許制度をはじめとした産業財産権法・制度や審査基準は、時代のニーズに応じて改正や見直しが必要となります。 これまでも、ビジネスのIT化やバイオテクノロジーの発展により、特許保護に関する様々なニーズが生まれ、特許保護の在り方の検討や見直しを行ってきました。また、国際協調の観点から、産業財産権法・制度の見直しが必要となることもあります。 審査官は、制度の在り方や審査基準を見直し、検討する業務にも携わります。

産業財産権法・制度の改正 日本の産業を支える柱の一つが、特許法・特許制度をはじめとした産業財産権法・制度です。 特許庁では、産業界の有識者や実務家等から構成される産業構造審議会知的財産分科会の答申で示された方向性などを踏まえ、必要な法・制度の改正を行っています。

審査基準の改訂 特許庁が策定している特許・実用新案審査基準は、特許審査が適切かつ公平に行われるように、「特許法」における審査に関する規定を適用する際の一般的な指針をまとめたものです。 特許庁では、その審査基準の検討を、有識者やユーザー等からのご意見も踏まえながら、タイムリーに行っています。

出向先で活躍する職員 特許庁外の組織に出向し、知的財産制度に関する様々な課題に対して幅広い視点で取り組むチャンスもあります。なお、出向先の全容についてはp5をご参照ください。

山本 俊介Yamamoto, S.平成23年入庁審査第一部調整課審査基準室 国際基準係長

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欧州の現場にて 現在、日本貿易振興機構(JETRO)(ドイツ)デュッセルドルフ事務所で知的財産部長として知財の側面から在欧日系企業の支援や制度調査などを行っています。担当地域は欧州全域です。 欧州には、国家とは別に、欧州連合(EU)が組織され、多層で複雑なシステムが形成されています。知財制度も各国に加えて、広域制度が整えられつつありますが、特許、意匠、商標それぞれに状況が異なっています。さらに、英国からBREXIT(EUからの英国脱退問題)の衝撃が走り欧州の社会システムが不透明感を増す一方で、インダストリー4.0に代表される次世代イノベーション政策が進められ、知財制度との関係にも目が離せません。 このような中で、欧州知財関係者とも活発に意見交換を行い水面下の情報収集にも取り組みつつ、欧州の戦略を読み解き、有益な情報のタイムリーな把握と発信に努めています。世界からの期待に答える 欧州で知財関係者に会った時、『審査官』と自己紹介することで相手との距離が急に縮まったと思うことがしばしばあります。これは、特許庁『審査官』という職業がグローバルに信頼を得ている証です。 同時にその期待の大きさを感じる瞬間でもあります。我々は審査官として極めて専門性の高い業務をコアとしつつ、他の特許庁内の業務を始め、他省庁、大学、海外など様々な機会が与えられています。幅の広さと深さをもった知見に基づいたバランスある判断が常に求められます。あらゆることに興味を持ち学び続けてください。やりがいのある舞台がみなさんを待っています。

『審査官』というパスポートを持って

日本とミャンマーのつながり 私は今、(独)国際協力機構(JICA)の長期専門家としてミャンマーの知財制度構築支援に携わっています。 今後の経済発展が見込まれ、世界有数の親日国であるミャンマーに対して日本企業等は大きな関心をもっています。しかし、ミャンマーでは多くの分野で法律をはじめとする日本企業等が適切にビジネスを行っていくための環境整備が十分になされていないのが現状です。 知財はそれらの分野の一つで、ミャンマーには知財の法制度が存在せず、日本の特許庁に相当する組織もありません。特許庁は法律に従い特許権等の登録を行う組織ですが、公平で透明、かつ迅速に権利登録が行われることが、日本企業等の進出、及びミャンマーの経済発展にとって重要です。そこでJICAでは、ミャンマーの知財制度整備のための協力を行っています。

特許庁の経験を新興国へ 現在の主な業務の一つは、ミャンマーの特許庁を設立するにあたっての助言をすることです。ミャンマーが現在検討している特許法、意匠法、商標法に基づく組織、業務や審査等について日本の特許庁と協力をしながら助言を行っています。また、裁判所、警察や税関との対話も行っています。 日本の特許庁は多くの出願を効率良く審査し、数々の施策を考え、実施してきた経験があります。これらの経験の共有について新興国からの期待は大きいですし、経験の共有を通じて企業の進出を後押しすることができます。特許庁での特許審査官、行政官としての経験は国際協力の場でも生かすことができます。

新興国で知財制度の整備に貢献

中野 宏和 Nakano, H.平成8年入庁独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)デュッセルドルフ事務所知的財産部長

上田 真誠 Ueda, M.平成15年入庁ミャンマー教育省(独立行政法人国際協力機構 長期専門家)

審査以外の業務紹介

世界の中での日本の審査基準 審査基準室の業務の中心は、審査実務における判断の指針を示した審査基準を庁内外に情報発信することです。その中で私は、主に国際出願の審査実務に係る施策の検討や、各国特許庁の審査実務の比較研究といった、国際関連の業務を担当しています。 国際案件は各国の様々な考え方に直面しますし、国内の審査実務との関係も十分検討する必要があり難しい面もありますが、庁内の様々な経験、知見を持った方々と議論を重ねることで、国際舞台での日本国特許庁の立ち位置や対処方針を練り上げていく過程は、ダイナミックで楽しくもあります。

新たな技術領域の発明に対する審査基準 いまや家庭内の家電製品を外出先からスマートフォンを介して操作できることは当たり前の時代となり、プロの囲碁棋士を破る人工知能が現れ、自動車の自動運転技術も実用化に近づいています。このようなIoT、AIに代表される新たな技術領域の発明に対する審査基準の適用を分かりやすく周知することを目的として、審査の事例集を作成・公表しました。 事例集の作成に当たっては、この技術分野の権利取得を狙うユーザにとって有用性の高いものとするために、私の専門分野である情報通信分野の審査実務経験をフル活用しました。公表した事例集についてはユーザから好評の声をいただいています。自分の仕事が対外的に大きな意義を持つことを実感するとともに、学生時代に学んだ技術の知識と審査官としての実務経験を合わせた価値ある仕事ができたことを嬉しく思います。

法律と運用を見つめ直す

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新しい発見の連続の中で 日本の科学技術の発展を、審査官として支えていきたいと思い特許庁の門を叩いた25年前。以後、審査・審判の実務に加え、国際機関での勤務や、2度にわたる法律改正、内閣官房での日本の知財政策の立案、外部機関への出向、国際交渉担当など、自分では想像もしていなかった本当に様々な業務を経験させていただき、常に新しい発見の連続でした。 しかし、多くを学べば学ぶほど、まだまだ学ばなければいけないことが沢山あることを知る毎日です。これからも日本の産業発展を支える審査官・行政官として、勉強を重ねて精進していきたいと思います。

■1992~1998 審査第五部情報処理 審査官 入庁以来、審査・審判では、一貫して情報技術分野を担当してきました。その後、審査以外の様々な業務を経験しましたが、いつも自分の基礎を形作っているのは、審査官としての誇りと経験だと思っています。

■1998~2000 WIPO PCT情報システム課 WIPOでは、リリース直後の電子出願ソフトPCT-EASYを担当し、各種日本語システムの技術サポートも行いました。初めての海外生活で苦労もしましたが、現地(ジュネーブ)で三人目の子供も生まれ、今も続く多くの友人ができました。

■2001~2002 工業所有権制度改正審議室 室長補佐 審議室では、ソフトウェア特許に対応するための特許法改正を担当し、発明の実施行為の定義や間接侵害規定の見直しを行いました。名前しか知らなかった有名な先生方にお会いする機会も数多くあり、その後、法律を本格的に勉強しようと思うきっかけとなりました。

■2003~2005 ワシントン大学ロースクール 1年目はIP�LL.M.(知財法学修士)コースの学生として、2年目は客員研究員として、米国の知財法制を学びました。シアトルの法律事務所での長期研修の機会も得ることができ、人生で最も勉強したと思える充実した二年間でした。

■2005~2007 内閣官房知的財産戦略推進事務局 参事官補佐 内閣官房では、知財本部の事務局として、省庁の枠を超えた日本全体の知財戦略の立案作業に関わる機会を得ました。小泉首相(当時)のもと首相官邸で行われる知財本部会合の準備を緊張しながら行ったことも、良い思い出です。

■2007~2008 審判部審判官 審判では、3人合議体の審判長や先輩審判官から多くのことを学ぶことができ、入庁16年目にして改めて審査・審判業務の奥の深さを知りました。審決取消訴訟の主任指定代理人として裁判所に出頭し、勝ちも負けも味わったことは、大変貴重な経験となりました。

■2008~2010 調整課 企画調査班長

 調整課の企画調査班では、数年後に迫った特許審査迅速化目標(一次審査通知までの期間を11月に短縮)の達成に向けた追い込みの時期で、毎日そのことばかり考えていました。なお、この野心的な目標は、特許庁一丸となった取組により、2013年度末に見事に達成されています。

■2010~2012 情報システム室 企画調査官(国際担当) 情報システム室では、国際担当として、2年半の間に16回の海外出張と各種国際会議の議長等を経験しました。このとき米国と共同で提案したグローバルドシエ(各国の審査情報の共有・活用システム)は、現在の五大特許庁の主要プロジェクトの一つになっています。

■2012~2013 審判企画室長 審判企画室では、審判部の審理処理計画や、審判制度の改善に携わり、このとき担当した審議会での議論が、翌年の特許異議申立制度の導入のための法改正につながりました。

■2013~2015 一般財団法人工業所有権協力センター 調査部長 工業所有権協力センター(IPCC)は、特許庁の審査業務を支える登録調査機関(先行技術調査の外注先)の一つです。IPCCでは、業務の効率化や品質の向上に取り組むとともに、特許検索競技大会等の公益目的事業も担当しました。特許庁の審査業務を外から見つめる良い機会になりました。

■2016~ 現職 国際政策課では、国際的な知財制度の調和や日本の審査結果の国際発信に向けて、取り組んでいます。忙しい中にも、明るい前向きな雰囲気の職場づくりを目指し、課員の皆さんと一緒に楽しく日々の業務を行っています。

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キャリアを振り返って

着実な研修の実施のために 私は現在、工業所有権情報・研修館(INPIT)にて、審査官(補)などを対象とする研修の実施に関する業務に従事しています。具体的には、特許庁の関係各課と協同した研修のシラバスやスケジュールの決定、講師との調整、研修生の対応、当日の司会進行などを一手に担当しています。例えば、審査官コース研修は、審査官昇任のための要件として政令で定められた法定研修であり、それだけにその重要性は甚大です。高度な知識が要求される審査官の育成を、充実した研修制度により支えているという自負を持ちつつ、より良質の研修を提供するべく奮闘する毎日です。

審査官として、母として、 現在担当している研修のうちの多くは、自分が審査官(補)としてこれまでに受講してきたものになります。後輩を育てる業務に携われることは大きな喜びです。また、特許庁側に対しては、研修内容に関する改善提案も積極的に行っており、これは審査官としての実務経験が役立っていると実感する部分です。 私には幼い子供がいますが、理解のある上司や同僚に恵まれ、家庭との両立が無理なく実現できていることをありがたく感じています。また、母親としての経験は、各方面に目配りが必要な現在の業務に活かされていると確信しています。特許庁は、子育て中の女性にも活躍の機会が与えられる、やりがいに満ちた職場です。

これまでのキャリアプロセス 現在、大阪大学にて医療分野の知財戦略を任されています。審査官として産業発展に貢献していくという、特許庁での一般的なキャリアイメージからは、かなり異なる職務内容ですが、実際のところ、特許庁では審査官を基軸とした多様なキャリアがあります。 私の場合、過去に、審査官業務に並行して行政官として企業の知財マネジメントを支援したり、またフランスのOECDへ出向し、国際的なシーンでの企画立案も経験してきました。もっとも特許庁を離れると、技術知識・法律知識、そして行政センスも持つ審査官に対する社会からの大きな期待を感じます。ですからやはり、審査官としてしっかり日々研鑽を重ねていくことは大前提と言えるでしょう。

現在の業務内容 私のミッションは、医療イノベーションの知財戦略の構築です。医療イノベーションを成功へと導く知財戦略の構築は簡単ではありません。医療分野は人命に関わるため、厳密な試験と評価が必要であり、非臨床・臨床研究(人を対象とした研究)から市販(事業)へと進めていくためには、大学と企業との共創が必要となります。他方、大学は公的側面を有していますので、個の企業利益を促すのではなく、社会全体への利益創出を見据えた視点も疎かにできません。 大学の研究成果を社会還元する際に、如何に知財を活用して、経済的・社会的価値の最大化を実現していくのか、ハードルはとても高いですが、着実に邁進していきます。

松浦 安紀子 Matsuura, A.平成15年入庁独立行政法人工業所有権情報・研修館研修部長代理

船越 亮 Funakoshi, R.平成13年入庁大阪大学大学院医学系研究科メディカル/ヘルスケア知財戦略室室長・特任准教授

野仲 松男Nonaka, M.平成4年入庁総務部国際政策課長

キャリアを振り返って

特許庁に広がるキャリアの多様性

これからの人材を育てる

24 25Japan�Patent�Office Japan�Patent�Office

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特許庁の情報システム開発を担って 私は、これまで審査・審判実務を行うとともに情報システム開発を中心に特許行政に携わってきました。 入庁した当時(平成5年)は、世界に先駆け、工業所有権手続を紙から電子的業務に切り替えるペーパーレス計画を推進中でした。外部ユーザの期待と協力を得て、新しいことにチャレンジしているという関係者の一体感のなか、先輩職員やシステム開発業者とともに、外部ユーザ向けシステムや、職員向けシステムに関するシステム開発の下積み経験を得ることができました。 その後、システム開発部署を離れ、特許審査・審判実務を経験しました。自分が関わった情報システムを、利用者の立場となって触れることで、情報システムが日常業務に不可欠な道具であることを、改めて思い知らされました。また、システム開発時に気がつかない、利用者の立場からの気づきを得ることができました。 現在は、再びシステム開発室でシステム開発をとりまとめる室長として、これまでの人脈と経験を活かして陣頭指揮をとっております。 特許庁の情報システムが、多くの庁外へのサービスや庁内の業務等を支えていることを踏まえると、今後の特許行政の進歩には、ますます情報システムの力が不可欠であると考えています。また、企業の知的財産戦略のグローバル化に伴い、そのインフラ支援を行うため、海外の特許庁ともIT化に関して連携する機会も増えています。その中心的役割を担うシステム開発部署は、多くの人と関わりながら、様々な経験と達成感を得ることのできる部署であり、多様な人材が必要だと感じています。

■1993~1996 総務部電子計算機業務課 入庁時に、システム開発室に配属されました。新人でしたが、システム開発室の抱える数多くの情報システムの調整を行いました。情報システムの故障対応から予算要求まで、幅広い業務を、諸先輩の指導を受けながら行いました。 当時のシステム開発部署は大所帯で100人ほど先輩職員が在籍しておりました。調整担当ということで、数多くの先輩と仕事をともにすることができ、この時の先輩方とのつながりが、今でも円滑な業務には欠かせません。

■1996~1997 総務部総務課調整班計画係長 昇任して、総務課調整班へ異動となり、初代の計画係長となりました。 当時は、法改正に伴う料金変更により、特許特別会計の歳入が今後どのように変化するか不透明な中、歳出については、ペーパーレスシステムの拡大の機運が進み、システム開発を含む今後の歳出の増大が見込まれる中で、将来を見越して、特許特別会計の収支、予算の全体調整をするという業務に携わりました。 総務課は経済産業省本省の職員が多い、審査室や情報システム部門とは雰囲気の異なる部署で、重要な業務も数多くありましたが、上司や周りの方に恵まれて業務を遂行できました。また、特許庁のみならず経済産業省の仕事の仕方を学んで、自分の仕事に対する姿勢が変わる有意義な経験となりました。

■1997~2001 総務部電子計算機業務課 システム計画係長/事務システム第1係長/第3係長 英国の留学を経験した後、システム計画係長として、ペーパー

レスシステム全般のハードウェアの導入や、庁内のOA化推進に携わった後に、電子出願に関するシステム開発などに携わりました。当時は、パソコン電子出願の稼働後ということもあり、制度ユーザからパソコンを利用するに際しての様々な要望が寄せられ、関係各者との調整や、ユーザ説明会に行脚するという貴重な経験をさせていただきました。

■2003~2006 審査業務部情報システム課長補佐 特実、意匠、商標の検索システム全般を担当し、法区分ごとに検索システムに必要な要件が異なる中、横並びで各システムをみることができたことで、意匠、商標などの特許以外の業務の面白みを知りました。また、特許の検索システムの開発を入札で行う際には、発注者として高度な専門知識が必要であったことや、当時の入札制度もあり、困難を伴う業務でしたが、システムを安定稼働させるために尽力しました。

■2006~2009 特許審査第四部、審判28部門 審査官、審判官として、充実した日々を過ごしました。

■2009~2011 総務部総務課長補佐(システム調整班長) 新たなペーパーレスシステムの開発計画に基づき、具体的な開発を行うための企画を行う業務を担当していました。システム開発段階に進むため、関係課室からの要望を選別して、開発業者が応札できる開発規模にまとめる、という重要な業務を任されましたが、システムの発注者として、関係部署の協力を得られるよう業務を円滑に進めることの重要性を学んだ密度の濃い期間でした。

■2013~現在 総務課企画調査官、システム開発室長 2013年に新たなペーパーレスシステムの改訂計画が策定されたことや知的財産を取り巻く環境が急速に変化する中で、複数のシステムのリリースが続いていますが、これまでの経験を踏まえて、予め関係部署との協力を得ながら安定稼働を行うことのできるシステム開発を行えるよう日々奮闘しています。

キャリアを振り返って

 特許審査・審判実務では、一貫して情報通信分野を担当し、国内外企業のさまざまな重要発明と対峙しました。また、この間、特許審査迅速化の計画策定や特許法改正等、知財立国実現に向けた幅広い施策立案にも携わりました。現在、世界的に第四次産業革命が進行中であり、我が国企業には、これまでに無い高度な知財戦略が求められています。我が国の強みを知財で守り、グローバルビジネスを支援する、特許庁の果たすべき役割は今後ますます大きくなっていくと言えるでしょう。その中で、特許審査官には、世界をリードする審査実務と、技術的専門性に裏打ちされた施策立案能力の両面で期待が集まっています。

■1989~2002 審査第五部通信 審査官

 入庁後数年間は、先輩審査官についてひたすら修行する日々でした。通信技術が変革期を迎えており、技術研修に加えて昼休みの自主勉強会にも参加して技術を学び、携帯電話やインターネット関連の発明と格闘しました。審査官昇任後は、総務課や調整課などに併任する機会を得て、法改正や施策立案、予算要求などにも関わり、その中で特許審査の意義を改めて自覚しました。1999年には、欧州特許庁(ハーグ、ミュンヘン)に5ヶ月間派遣され、特許審査の国際競争・協調を強く意識しました。

■2002~2003 審判部審判官

 拒絶査定不服審判、審決取消訴訟、判定などの事件を担当しました。上級審として、審査官の仕事をレビューして特許庁としての最終判断を下し、司法の場でその妥当性を争う。緻密な判断が求められ、緊張感と充実感を味わいました。

■2003~2005 調整課 企画調査班長

 政府が策定した知的財産推進計画の下で、特許審査迅速化法の制定、審査迅速化目標(10年間で審査待ち期間を11月に短縮する目標)の策定、任期付審査官を含む審査体制の整備などの施策の策定・実施に携わりました。平成25年度末に目標が達成されたときは、目標数値を設定した者として、感無量。関係者全員の努力に対して感謝の念で一杯でした。

■2007~2009 (財)知的財産研究所 研究第2部長

 知的財産政策を専門に扱う我が国唯一のシンクタンクで、調査研究に携わり、知財法の学者や実務家の方々と、これまで特許制度が果たしてきた役割や、特許制度の今後のあるべき姿など、制度の本質に迫る課題について議論しました。意外と思われるかもしれませんが、特許制度の本質に迫る経済学的な研究はこれまで十分になされてきておりません。今後の研究が待たれる領域です。

■2009~2011 (独)産業技術総合研究所 知的財産部長

 産総研発足から10年が経過し、産学官連携・技術移転の強化に向けて知財活動をステップアップさせる必要がありました。そこで、研究所の組織再編の一環として、TLOを内部化するとともに、新たな知財ポリシーを策定しました。震災直後のつくば、不安が残る状況の中で、知財ポリシーを理事会で承認していただいた時のことを鮮明に覚えています。

■2012~2013 企画調査課長

 小泉首相(当時)の知財立国宣言から10年、新たな「知的財産政策に関する基本方針」や日本経済再生に向けた「日本再興戦略」が閣議決定されるに際し、特許庁の調整役として対応しました。また、知的財産分科会の事務局として、特許庁の今後の中長期の施策のとりまとめに携わりました。

■2014~2016 審査第四部 上席審査長

 審査第四部の上席審査長として、通信部門を統括しました。審査のスピードに加え、品質においても世界最高を目指し、また、先進国との協調、新興国・途上国への支援など、グローバルな取組にも精力的に取り組みました。シンガポール特許庁への審査官の国際派遣は、先駆的な取組の1つとなりました。

■2016~現職

 審査第一部~第四部に係る施策の総合調整を担当しています。我が国政府において、特許審査官の果たす役割が益々大きくなっています。霞ヶ関でも他に類を見ない、1700人の特許審査官=技術専門家集団の力の凄さを改めて感じています。

Japan�Patent�Office

吉田 美彦Yoshida,Y.平成5年入庁総務部 総務課 システム開発室長

桂 正憲Katsura, M.平成元年入庁審査第一部 調整課長

キャリアを振り返って

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Message from New Staff 平成28年入庁特許審査官補からのメッセージ

特許庁を選んだ理由◦特許庁を選んだのは、ものづくりを支える仕事ができるからです。大学時代、研究・開発の道に進む人たちを見て、私はそういった人たちの仕事の手助けをする側になりたいと考えていました。さらに、雰囲気も良く、自分のペースで審査を進められるなど、大変働きやすそうだと思ったのも志望動機の一つです(実際にそのような職場だと実感しております)。

◦今までに学んだ知識を活かし、日本の優れた技術を守ることができる審査の仕事、先端技術や法律を学ぶことのできる環境に魅力を感じました。また、説明会でお話した女性審査官の方々から、自分のペースで仕事が調整できるため、家庭と両立して、仕事を続けやすい職場だと聞いたことも理由の一つです。

◦今まで学んできた知識をもとに、法律や新たな科学技術を学んで専門性を高めることができるうえ、日々新しい発明に触れることのできる特許審査という仕事にとても魅力を感じました。さらに、行政官として知財施策の策定・実施に携わり研究開発の進展を手助けできる点にも惹かれ、特許庁を志望しました。

◦世界各国の出願人から受け付けた発明について、技術・法律の観点から審査を行う中で、日々学びを得ながら活かせる仕事は、好奇心が強い性格の自分に向いていると考えたのがきっかけです。審査官として審査を行うだけでなく行政官として知財行政に携わることができる等、業務の幅が広いのも魅力でした。

職場の雰囲気◦執務室は落ち着いた雰囲気で、じっくり審査に取り組むことができる環境だと思います。また、仕事中は皆さん真剣な表情を浮かべていますが、入庁年次によらず相談しやすい雰囲気であることも特徴です。お昼休みには、先輩や同期と一緒に楽しくランチを食べています。

◦私の審査室には幅広い年次の方々がいらっしゃいますが、わからないことや困ったことがあればいつでも誰にでも相談できる、非常にオープンでフレンドリーな雰囲気です。執務室は一人一人が集中して審査業務に取り組める環境が整っており、人にも環境にも恵まれているなと実感する毎日です。

◦普段は皆静かですが、ひとたび協議が始まると、役職の上下を抜きにした熱い議論が交わされる、風通しの良い職場です。また、フレックス・時短勤務・育児休暇など、仕事と家庭を両立するための制度が充実しており、ワークライフバランスの点では霞ヶ関で最も先進的な職場の一つかと思います。

◦審査は基本的に審査官が一人で行いますが、職場では、文献調査の範囲を教え合ったり、審査内容について協議をしたりと、常にどこからか会話が聞こえてきます。査定という行政処分を一人で行う責任感ある仕事の中に、メンバー同士が協力し合う温かみの感じられる職場です。

やりがい◦特許が付与された技術によって、私たちの暮らしがより豊かになり、時には世界のあり方をも変えることがあるので、特許は適切に付与されなければなりません。そのため、審査官は、特許出願の内容を技術的にも法律的にもしっかりと検討する必要があり、責任は大きいですが、やりがいを感じます。

◦学生時代に学んだ理系の知識を礎にして、新しく魅力溢れる技術を勉強することで、自分自身が成長できること、出願人とコミュニケーションを取り、よりよい特許権を付与することで、その特許技術を使った製品の普及を促し、国民の生活を豊かにできることが特許審査のやりがいです。

◦産業界の発展に寄与すべく、出願人にとって有意義な特許権を付与できるよう心がけて審査の仕事をしていますが、そのためにどのような判断をし、どのように文章に表すかを考え抜いた末に、出願人とうまく意思疎通がとれ、円滑な権利付与が達成できた時に、大きなやりがいを感じます。

◦法律に従って科学技術を審査するという職人的な面がある一方で、出願人との意思疎通が欠かせないところが審査官の仕事の面白い点です。特に、審査の過程で出願人としっかりコミュニケーションが取れ、出願人が納得する形で特許査定できたときに最も達成感を感じます。

特許庁を目指す方へのメッセージ◦就職先の選択は、人生において大きな分岐点となります。多様な可能性を模索し、将来、自分のどのような強みを仕事に活かしたいのか、じっくり考えてみて下さい。技術系の感性を活かし知財立国の一翼を担う、そんな審査官の仕事に魅力を感じて頂けた皆さんと、一緒に働けることを楽しみにしています。

◦特許庁に入庁する前は、特許や法律に関する知識がない人がほとんどです。でも、入庁後すぐに審査業務に必要な知識を学ぶコース研修が始まり、学生時代同様、皆と協力しながら一緒に勉強をしていくため、心配はいりません。最先端技術だけではなく法律や語学など、日々新しいことを吸収できる職場です。

◦就職活動では心配なことも多いと思います。実際の職場を見る機会はなかなかないので、少しでも気になったら是非足を運んでみてください。私も個別業務説明会に参加し、一対一で特許審査官の方とお話する中で、不安を解消することができました。特許庁で皆さんにお会いできることを楽しみにしています。

◦審査官は、最新技術を迅速・的確に保護するという使命感をもって特許審査に取り組む中で、日々、新しい技術に加え、法律の知識も身につけ専門行政官としての成長を感じながら、我が国の産業の発達に貢献できる充実した仕事です。興味を持たれた方は、特許庁でぜひ一緒に働きましょう!

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特許庁の職員になるためには

特許審査官になるためには、人事院の実施する国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験・院卒者試験)技術系区分※に合格する必要があります。当該試験の合格者の中から当庁で面接試験を実施して採用者を決定します。※�技術系区分とは、総合職試験(大卒程度試験)においては、「政治・国際」「法律」「経済」「人間科学」「教養」以外の区分、総合職試験(院卒者試験)においては、「行政」「人間科学」「法務」以外の区分をいいます。

国家公務員採用総合職試験についてのお問い合わせ

人事院各地方事務局(事務所)

官庁訪問及び業務内容等のお問い合わせ

特許庁審査第一部調整課Tel 03-3581-1101 (内)3119(採用HP)http://www.jpo.go.jp/oshirase/saiyo/sinsakan/index.html

採用後の処遇(平成29年4月1日現在)

【給与】

 総合職試験(大卒程度試験)�合格の場合(一例)  行政(一)2-1の場合 �  (大卒)219,240円  行政(一)2-9の場合 �  (院卒)246,960円 総合職試験(院卒者試験)� 合格の場合(一例)  行政(一)2-11の場合�  (院卒)251,280円  行政(一)2-23の場合�(博士卒)275,160円※上記に加え、本府省業務調整手当があわせて支給。 また、このほか次のような諸手当が支給。

 扶養手当 扶養親族のある者に、      配偶者月額10,000円等 住居手当 借家(賃貸のアパート等)に      住んでいる者等に、月額最高27,000円 通勤手当 交通機関を利用している者等に、      1箇月当たり最高55,000円 期末手当・勤勉手当(いわゆるボーナス)      1年間に俸給等の約4.3月分

【勤務時間・休暇】

勤務時間は1日7時間45分、原則として土・日曜日及び祝日等の休日は休みです。

休暇には、年20日の年次休暇(4月1日採用の場合、採用の年は15日。残日数は20日を限度として翌年に繰越し)のほか、病気休暇、特別休暇(夏季・結婚・出産・忌引・ボランティア等)、介護休暇があります。

採用実績

  平成26年度 平成27年度 平成28年度

総合職(技術系区分) 39(10) 34(8) 39(13)

( )内は女性の数

特許審査官は、出願された発明について迅速的確に審査を行います。審査にあたっては、担当する技術分野が多岐にわたることが珍しくありませんし、技術の知識に加え、法律等の知識も必要となります。また、近年のグローバル化に伴い、外国文献調査が増えており、語学力もますます重要になっています。特許庁では、こうした幅広い見識に加え、強力な独占権を設定することに対する責任感、新しい技術トレンドを常にキャッチアップしようとする向上心にあふれる人材を求めています。

Japan�Patent�Office

採用情報 経済産業省 特許庁■ 本庁舎  〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3  TEL�03-3581-1101(代表)

文部科学省日本郵政公社

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経済産業省

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A-

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JTビル(審判部)

経済産業省別館(審判部)

●丸ノ内線・千代田線・日比谷線/霞ケ関駅(出口A-13番)より徒歩7分●丸ノ内線・千代田線/国会議事堂前駅(出口3番)より徒歩5分●銀座線/虎ノ門駅(出口5番)より徒歩4分●南北線・銀座線/溜池山王駅(出口8番)より徒歩5分

■ 六本木仮庁舎  〒106-6220 東京都港区六本木3-2-1 住友不動産六本木グランドタワー15階~20階

出口1

東京メトロ南北線

六本木一丁目駅

中央改札口を出て

右手のエスカレーターをのぼり、

2階から出口1方面へ

六本木グランドタワー方向入口

六本木グランドタワー

六本木一丁目駅からのアクセスホテルオークラ東京

ANAインターコンチネンタルホテル東京

5番出口 南北線

日比谷線

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スペイン大使館

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首都高速

六本木

六本木一丁目

六本木仮本庁舎

至溜池山王駅

●南北線/六本木一丁目駅�直結●日比谷線・大江戸線/六本木駅(出口5番)より徒歩5分●銀座線・南北線・丸ノ内線/溜池山王駅(国会議事堂前駅)(出口13番)より徒歩8分●日比谷線/神谷町駅(出口2番)より徒歩10分

(参考)平成29年度総合職試験のスケジュール

※詳しい試験日程は人事院HPを、官庁訪問のスケジュールは特許庁HPを 参照してください。

Q. 大卒、院卒(修士卒、博士卒)で入庁後の処遇の違いはありますか?A . 院卒(修士卒、博士卒)の場合は、大学院で研究に従事した期間を考慮して、審査官昇任時期、給与等の処遇が決定されます。審査官昇任時期については、大卒では入庁  5年目に審査官に昇任するのが一般的ですが、修士卒は4年目、博士卒は3年目に、審査官に昇任することができます。

Q. 男性でも育児休業を取得できますか?A . もちろん取得できます。復帰後もスムーズに審査業務を再開している審査官が多数います。

3/31~4/10

6/30

受験申込(インターネット)

最終合格発表

1次試験 2次試験(面接等)

4/30

官庁訪問

(筆記)5/28 5/30

 ~6/16

30 31Japan Patent Office Japan Patent Office

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