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放射線科 外山芳弘
アウトライン
• 外傷画像診断総論
• 頭部外傷画像診断
• 総論
• 各論
人口動態統計の概況不慮の事故 死亡割合(平成28年)
交通事故
14%
転倒・転落
21%
不慮の溺死及び溺水
20%
不慮の窒息
25%
煙、火及び火炎へ
の曝露
2%
有害物質による不
慮の中毒及び有害
物質暴露
1%
その他の不慮
の事故
17%
香川県の交通事故状況(平成28年)
事故件数 6790件 (全国4位)
死亡者数 61人 (全国3位)
JATEC診療手順
Primary survey生理学的徴候の評価と蘇生
Secondary survey解剖学的損傷の評価と根本治療
A:気道確保B:呼吸管理C:循環維持と止血D:中枢神経障害の評価E:体温管理
Teritary survey見落としやすい損傷を念頭に再評価
超音波(FAST)
胸腹部Xp
頭部CT
外傷パンスキャンCT
切迫するDGCS≦8急激な意識レベル低下脳ヘルニア徴候
外傷パンスキャンCT
再構成5mmスライス/200枚前後
短時間で必要な情報を得る必要がある
外傷パンスキャンCT読影
1st step FACT
2-3分で大まかな全身の損傷状況の把握
2nd step
活動性出血や緊急処置を要する損傷の検索
3rd step細かな所見を見逃さないように時間をかけて丁寧に評価
初療医による読影
読影依頼可
短時間で読影を終了させ、必要な治療を行うまでの時間を浪費しないこと!
Focused Assessment with CT for Trauma
①頭部:粗大な血腫② 大動脈弓部〜峡部:大動脈損傷③胸部:肺挫傷④ 肺底部:血気胸、心嚢血腫⑤ 膀胱直腸窩/ダグラス窩:血腫、液体貯留⑥ 骨盤骨折、脊椎損傷⑦上腹部臓器損傷
①
②③
⑤
⑥
④
⑦
***
外傷パンスキャンCT読影
1st step FACT
2-3分で大まかな全身の損傷状況の把握
2nd step
活動性出血や緊急処置を要する損傷の検索
3rd step細かな所見を見逃さないように時間をかけて丁寧に評価
全身の血腫探し活動性出血の有無
腸管損傷脊椎損傷、骨折
外傷時損傷部位
日本外傷データバンクhttps://www.jtcr-jatec.org/traumabank/index.htm
Japan Trauma Data Bank Report 2016 (2011-2015)
頭部外傷の臨床的特徴
• 重症外傷例の死因の過半数を占める
• 感覚器障害や高次脳機能障害等の後遺症はQOLを
著しく低下させる
• 初療時に一見軽症でも重篤化する可能性がある
わずかな見落としが
患者の予後を大きく左右する
頭部外傷のCT適応
• 来院時意識傷害、失見当識、健忘、GCS≦14、
その他の神経学的徴候
• 以下のいずれか
• 受傷後の意識障害、失見当識、健忘の病歴
• 頻回の嘔吐、頭痛
• てんかん発作
• 陥没骨折の疑い
• 高齢者
• 凝固系異常
• 脳外科手術の既往
日本神経外傷学会編 重症頭部外傷治療・管理のガイドライン
小児軽症頭部外傷のCT適応
Kuppermann N, et al. Lancet 2009;374 :1160-70.
GCS=14意識変容興奮、傾眠同じ質問の繰り返し会話の反応が鈍い頭蓋骨骨折の触知
CTを推奨13.9%
1つでもYes
ciTBI 4.4%
皮下出血(前頭部以外)意識消失≧5秒高エネルギー外傷親から見て「いつもと違う」
32.6%
1つでもYes
ciTBI 0.9%
全てNo 53.5%該当ciTBI0.02%
CTは推奨されない
症状・所見の変化所見は複数か、単一か?生後3ヶ月未満医師の裁量親の希望
ciTBI 重要な外傷性脳損傷
全てNo
頭部CTの読影方法
3D画像
50歳代男性。飲酒後、階段より転落。
頭部CTの読影方法
脳条件WW60 WL25
軟部条件WW200 WL25
骨条件WW2000 WL400
複数条件(脳、軟部、骨、3D)
複数方向(軸位断、冠状断、矢状断)、
での観察が必須(私見)!!
50歳代男性。飲酒後、階段より転落。
頭部外傷分類
日本外傷学会、日本脳神経外傷学会 :頭部外傷分類,2008. http://www.jast-hp.org/zouki/toubu.html
• 頭部外傷を臨床徴候と急性期CT所見を元に分類
① 頭蓋骨損傷
② 局所性脳損傷
③ びまん性脳損傷
• それぞれで重症度を評価
• 軽症 観察入院
• 中等症 厳重管理、予防的処置
• 重症 外科的処置など集中治療
速やかに脳外科医に相談
頭部外傷分類 ①頭蓋骨損傷
軽症 中等症 重症
線状骨折 骨折線が血管溝と交差しない静脈洞を超えない
以下のいずれか血管溝と交差する静脈洞部を超える
陥没骨折 1cm以下の陥没非開放性
1cm以下外界と交通髄液漏出なし
いずれかを満たす1cmを超える陥没開放性(髄液瘻)静脈洞圧迫による還流障害
頭蓋底骨折 頭蓋底骨折髄液瘻の有無を問わず
頭蓋底骨折多量耳出血あるいは鼻出血
日本外傷学会、日本脳神経外傷学会 :頭部外傷分類,2008. http://www.jast-hp.org/zouki/toubu.html
骨折の診断
右後頭骨骨折
縫合線
骨折線
縫合線
骨折線*
*
*
*
**
**
後頭骨骨折
頭蓋底骨折
気脳症=頭蓋底骨折
頭蓋底骨折
50歳代男性。自転車に乗っていて車と接触転倒。頭痛と左足痛あり。
頭蓋底骨折
頭部外傷分類 ②局所性脳損傷
軽症 中等症 重症
脳挫傷
急性硬膜外血腫
急性硬膜下血腫
脳内血腫
GCS14,15
脳ヘルニア徴候(-)
Mass effect(-)
GCS9-13
脳ヘルニア徴候(-)
Mass effect(-)
GCS3-8
脳ヘルニア徴候(+)
Mass effect(+)
以上のいずれか
脳ヘルニア徴候:意識障害を伴う瞳孔不同、片麻痺、Cushing徴候のいずれか
Mass effect:モンロー孔レベルで正中構造の5mm以上の偏位あるいは
中脳レベルで脳底槽(迂回槽、四丘体槽)の圧排消失
日本外傷学会、日本脳神経外傷学会 :頭部外傷分類,2008. http://www.jast-hp.org/zouki/toubu.html
脳ヘルニア
脳組織が本来の区画から隣
接する区画へ機械的に偏位
する病態
• 大脳鎌下ヘルニア
• テント切痕ヘルニア
• 小脳扁桃ヘルニア
テント切痕(鉤)ヘルニアのCT所見
• 鉤回陥入、脳底槽消失、脳幹変形• 中脳周囲槽(迂回槽、四丘体槽)の消失• 中脳出血、PCA領域梗塞
画像上で手術を考慮するCT所見
• 急性硬膜外血腫:厚さ1-2cm以上、血腫量20-30ml
• 急性硬膜下血腫:厚さ1cm以上
• 脳内血腫、脳挫傷:直径3cm以上、広範な浮腫
脳底槽や中脳周囲槽の消失
日本神経外傷学会編 重症頭部外傷治療・管理のガイドライン第2版医学書院2007
頭部外傷分類 ②局所性脳損傷
急性硬膜外血腫
• 骨膜と硬膜の間に形成される血腫
• 頭蓋内板に沿って走行する動脈の裂
傷により発生
• 高吸収域と低吸収域の混在する血
腫は活動性出血の可能性有り
40分後CT
6時間後CT
急性硬膜下血腫
• 硬膜下腔を中心とした血腫
• 架橋静脈破綻や脳挫傷から進展
• 死亡率36-74%
硬膜外血腫と硬膜下血腫の違い
硬膜下血腫
• 硬膜反転部を越えない
• 縫合は越える
硬膜外血腫
• 硬膜反転部を越える
• 縫合は越えない
縫合線
硬膜
脳挫傷
• 脳実質内における出血、浮腫、虚血性変
化の混在像
• 骨縁隣接部位に好発
– 前頭葉、側頭葉底面
– 半球間裂、脳梁
頭部外傷分類 ③びまん性脳損傷
軽症 中等症 重症
びまん性脳損傷(狭義)
意識消失なし一過性神経症候軽症脳しんとう
6時間以内に回復する意識消失回復後一過性神経徴候古典的脳しんとう
6時間以上遷延する意識消失脳幹徴候を示す場合は最重症
くも膜下出血 脳表のみ 脳底槽の一部 脳底槽全体
びまん性脳腫脹 1次性でGCS14,15軽度脳腫脹
1次性でGCS9-13脳ヘルニア徴候なし脳腫脹あるが脳底槽は描出
1次性でGCS3-8脳ヘルニア徴候あり脳底槽の圧排消失
2次性脳損傷
日本外傷学会、日本脳神経外傷学会 :頭部外傷分類,2008. http://www.jast-hp.org/zouki/toubu.html
外傷性くも膜下出血
• 穿通枝破綻や挫傷出血の波及
• 脳溝や脳槽に沿った高吸収域
• 広範な出血例や脳底槽に認められる
場合は重篤な経過を取りやすい
びまん性脳腫脹
• 脳全般におよぶ急激な腫脹
• うっ血、血管性浮腫、細胞性浮腫によ
り発生
• 組織圧上昇による末梢循環障害
• 皮髄境界消失、脳溝消失、脳室狭小
化、pseudo-SAH
• 予後:死亡率は87%
Terson’s症候群
Watanabe Sung, ActaOphthalmol. 2011: 89: 544–547Anhar Hassan, et al. Neurocrit Care (2011) 15:554–558
• 意識レベル不良(GCS<8)やSAH
重症(Fisher>3)に合併
• 予後不良のサイン
• 死亡率60-90%(OR4.8)
• 両側性の場合は特に不良
病態生理:
1)SAHが視神経鞘を介して眼球内に到達
2)急激な頭蓋内圧上昇→視神経鞘を介した眼球内静脈圧上昇
→網膜血管破綻
Sakamoto M, et al. Jpn J Ophthalmol 2010;54:135–139
Terson’s症候群
穿通外傷は原則として全例が手術適応となる
(重症と判断)
重症頭部外傷治療・管理のガイドライン
まとめ
• 外傷CTでは時間を意識した読影が必要
• 頭部CTは多方向、複数条件での観察が必須
• 手術適応、予後に関連する所見に注意する