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1 税理士試験 財務諸表論 計算対策<第3講> 【チェック欄】 1回目 2回目 3回目 問題1 【チェック欄】 分冊 1回目 2回目 3回目 Chapter4 問題1 Chapter7 問題1 問題2 棚卸資産 項 目 勘定科目等 表示科目 表示区分 備考 商品 繰越商品 商品 流動資産 売上原価 仕入 売上原価 評価損 通常の販売目的 商品評価損 売上原価 製造に不可避 製造原価 臨時、かつ、多額 特別損失 重要な会計方針に係る事項に関する注記 ・商品は先入先出法による原価法(貸借対照表は収益性の低下に基づく簿価切 下げの方法により算定)により評価している。

税理士試験 財務諸表論 計算対策<第3講> · 理論・ミニテスト<第2講> 「企業会計は、企業の( ① )及び( ② )に関して、ア真実な報告を提供するもので

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1

税理士試験 財務諸表論 計算対策<第3講>

【チェック欄】

1回目 2回目 3回目

問題1

【チェック欄】

分冊 1回目 2回目 3回目

Ⅰ Chapter4 問題1

Ⅱ Chapter7 問題1

問題2

棚卸資産

項 目 勘定科目等 表示科目 表示区分 備考

商品 繰越商品 商品 流動資産

売上原価 仕入 売上原価

評価損 通常の販売目的 商品評価損 売上原価

製造に不可避 製造原価

臨時、かつ、多額 特別損失

重要な会計方針に係る事項に関する注記

・商品は先入先出法による原価法(貸借対照表は収益性の低下に基づく簿価切

下げの方法により算定)により評価している。

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問題1(商品販売) 目標5分 ランクB<63③抜粋>

次の資料に基づき、当期における貸借対照表と損益計算書を完成しなさい。

【資料1】決算整理前残高試算表

決算整理前残高試算表 (単位:千円)

勘定科目 金 額 勘定科目 金 額

繰 越 商 品 390,518 売 上 7,846,150

仕 入 6,236,357

【資料2】決算整理の未済事項及び参考資料

1 商品及び仕入高に関する事項

(1) 決算整理前残高試算表に記載されている繰越商品の金額は、前期末残高である。

(2) 商品の期末残高の内訳は次のとおりである。商品は移動平均法に基づく原価法(収

益性の低下による簿価切下げの方法)により評価しており、帳簿棚卸高に記載の単価

は移動平均法による適正に計算されている。

帳簿棚卸高 実地棚卸高

数量 単価 数量 差異の内訳等

H商品 7,605個 10,800円 7,565個 下記(3)参照

Ⅰ商品 13,020個 8,050円 12,980個 下記(4)参照

J商品 5,340個 15,700円 5,340個 下記(5)参照

K商品 9,195個 13,400円 9,375個 下記(6)参照

(3) H商品の棚卸差異は、原因が不明であったため、売上原価処理を行う。

(4) Ⅰ商品の棚卸差異は、見本品として店舗内に展示しているために生じたものである

ことが判明したため販売費及び一般管理費(広告宣伝費)に振替計上する。

(5)J商品のうち 370個は品質が劣化していることが判明した。当該商品の処分見込額は

1個当たり 1,700円である。当該簿価切下げ額は売上原価に計上する。

(6) K商品の棚卸差異は、仕入の計上が洩れていたものであることが判明したため、仕

入の追加計上を行う。なお、追加計上分の商品代金は、期末日現在未払であり、1個

当たりの単価は 13,400円である。

(7) 仕入割引 8,213千円が仕入から控除されている。

(8) 当期末の商品について、収益性の低下はなかった。

【解答欄】

貸借対照表(単位:千円) 損益計算書(単位:千円)

資産の部 売 上 高 ( )

流動資産 売上原価 ( )

商 品 ( ) 売上総利益 ( )

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問題1(解答)

貸借対照表(単位:千円) 損益計算書(単位:千円)

資産の部 売 上 高 ( 7,846,150)

流動資産 売上原価 ( 6,246,704)

商 品 ( 390,474) 売上総利益 ( 1,599,446)

【解説】

帳簿 期末 実地 差異の内訳

BS

数量 単価 帳簿 数量

H商品 7,605個 10,800 82,134 7,566個 減耗損 432 81,702

I商品 13,020個 8,050 104,811 12,980個 見本品 322 104,489

J商品 5,340個 15,700 83,838 5,340個 評価損 5,180 78,658

K商品 9,195個 13,400 125,625 9,375個 125,625

計 396,408 計 390,474

H:商品減耗損(売原) 432/繰越商品 432

Ⅰ:見本品費(販管費) 322/仕 入 322

J:商品評価損(売原)5,180/繰越商品 5,180

※(15,700-1,700)×370個=5,180

k:仕入 2,412/買掛金 2,412

※(9,375個-9,195個)×13,400=2,412

仕入 8,213/仕入割引 8,213

売上原価:TB繰商 390,518+TB仕入 6,236,357+計上もれ 2,412+仕割 8,213-期末帳簿

396,408+減耗 432+評価損 5,180=6,246,704

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理論・ミニテスト<第2講>

「企業会計は、企業の( ① )及び( ② )に関して、ア真実な報告を提供するもので

なければならない。

企業会計は、すべての取引につき、イ正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成

しなければならない。

ウ資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特にエ資本剰余金と利益剰余金とを混同しては

ならない。

企業会計は、( ③ )によって( ④ )に対し、必要な会計事実を明瞭に表示し、企

業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

企業会計は、( ⑤ )及び( ⑥ )を毎期継続して適用し、( ⑦ )これを変更し

てはならない。

企業会計は、企業の財政に( ⑧ )を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適

当に( ⑨ )な会計処理をしなければならない。」

問1 空欄に該当する語句を答えなさい。

問2 真実性の原則にいう真実は、どのような真実性かその理由とともに述べなさい。

問3 正規の簿記の原則が要請する財務諸表の作成方法と連動する利益計算方法を示せ。

問4 下線部アとイの「資本」の意味を簡潔に指摘し、前段で想定される「資本と利益」

を「アと期間利益」と捉えるべき根拠を述べなさい。

問5 当期の①財務諸表の修正を要する後発事象と②要しない後発事象の名称を示せ。

問6 継続性の原則の前提と会計処理の継続適用が要求される理由を2つ指摘しなさい。

問7 過度の保守主義とならないための前提条件を述べなさい。

問8 単一性の原則の要請を指摘しなさい。

問9 重要性の判断基準を2つ示しなさい。

【解答欄】

問1 ①( ) ②( ) ③( ) ④( ) ⑤

( ) ⑥( ) ⑦( ) ⑧( ) ⑨( )

問2 (

問3 財務諸表の作成方法( ) 連動する利益計算方法( )

問4 資本概念( ) 必要性( )

問5 ①( ) ②( )

問6 ( )( )

問7 ( )

問8 ( )( )

問9 ( )( )

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理論・ミニテスト<第2講>解答・解説

問1 ①(財政状態) ②(経営成績) ③(財務諸表) ④(利害関係者) ⑤(そ

の処理の原則) ⑥(手続) ⑦(みだりに) ⑧(不利な影響) ⑨(健全)

問2 (相対的真実である。企業会計では複数の会計処理が認められ、見積りの介入が

避けられないことから絶対的真実ではなく、相対的真実が求められる。)

問3 財務諸表の作成方法(誘導法) 連動する利益計算方法(損益法)

問4 資本概念(期首株主資本) 必要性(適正な期間損益計算を行うため)

問5 ①(修正後発事象) ②(開示後発事象)

問6 (利益操作の排除)(期間比較性の確保)

問7 (認められた方法の範囲内であること)

問8 (実質一元)(形式多元)

問9 (科目)(金額)

【解説】

問1

<第2講>参照会計基準等参照

問2

<第2講>第4節参照

問3

<第2講>第5節参照

問4

<第2講>第6節参照

問5

<第2講>第9節参照

問6

<第2講>第 10 節参照

問7

<第2講>第 11 節参照

問8

<第2講>第 11 節参照

問9

<第2講>第 12 節参照

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理論のアプローチ

①理論は考え方のつながり。基礎的な考え方を大事に

②無理に覚えず、重要句を中心に考え方をたどる

③アウトプット(言う、書く、問題を解く、まとめる等)を重視する

④会計基準はそのつど(レジュメの学習、問題を解いた後)参照するのが最も効果的

財務会計の基礎<第1講~第2講>

<会計の目的>

会計の目的は、投資家の意思決定に資するために、①投資のポジションと②成果を測定

して開示することにある。

<会計情報の基本的特性>

会計情報が有する最も基本的な質的特性を意思決定有用性という。

<財務諸表の構成要素>

①貸借対照表の構成要素⇒資産-負債=純資産(>株主資本)

②損益計算書の構成要素⇒収益-費用=純利益(回収余剰)

<資本と利益>

資本と利益の区別には、①取引の区別と②剰余金の区別がある。

<認識と測定>

認識は、いつを意味し、測定はいくらを意味する。

<リスクからの解放>

リスクからの解放とは、投資にあたって期待された成果が事実として確定すること。

リスクからの解放に応じて、純利益(収益-費用)を認識する。

<投資の期待に応じた会計処理(評価と配分)>

金融投資は時価の変動を期待した投資であり、時価で評価し、評価差額は損益とする。

事業投資は、使用や販売によるキャッシュの獲得を期待した投資であり、通常は取得原

価で評価し、取得原価を各期に費用として配分する。

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第3講 資産と負債

【内容】

第1節 貸借対照表完全性の原則と総額主義

第2節 貸借対照表の区分と配列方法

第3節 投資のポジションと資産概念

第4節 静態論と動態論の資産概念

<研究>動態論の資産負債と財務諸表の関係

第5節 収益費用アプローチと資産負債アプローチ

<基礎概念>資産概念

第6節 測定指標の種類と選択

第7節 取得原価基準

<研究>資本維持

第8節 費用配分の原則

<基礎概念>取得原価と費用配分

第9節 時価と割引価値

第 10 節 負債の定義と分類

【理論チェック欄】

重要度 1回目 2回目 3回目

正誤問題 ☆☆ 講義中

基準穴埋め問題 ☆☆

要点穴埋め問題 ☆

スピードマスター<テーマ3> ☆☆☆

スピードマスター<テーマ4>

問題1~4

☆☆☆

オリジナルまとめ ☆☆☆

ミニテスト№3<次回配布> ☆☆☆

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第1節 貸借対照表完全性の原則と総額主義の原則

【要点3-1】貸借対照表完全性の原則と総額主義の原則 ランクAB

貸借対照表完全性の原則とは、貸借対照表にすべての資産、負債及び純資産の記載を要

求する原則である。重要性の原則の適用による簿外資産や簿外負債は、正規の簿記の原則

に従った処理として認められるが、架空資産や架空負債の計上は認められない。

総額主義の原則とは、資産と負債及び純資産の相殺を禁ずる考え方をいい、企業の財政

規模を示すために要求される。

1.貸借対照表完全性の原則の意義(企業会計原則 第三 一)

貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資

産、負債及び資本(⇒純資産)を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正し

く表示するものでなければならない。

貸借対照表完全性の原則は、企業の財政状態を明らかにするため、すべての資産、負債

及び純資産を貸借対照表に記載することを要求する原則である。

重要性の原則の適用により生ずる簿外資産や簿外負債は、正規の簿記の原則に従った処

理として認められるが、架空資産や架空負債の計上は認められない。

2.総額主義の原則(企業会計原則 第三 一 B)

資産、負債及び資本は、総額によって記載することを原則とし、資産の項目と負債又は

資本(⇒純資産)の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸借対照表から

除去してはならない。

貸借対照表の総額主義とは、資産と負債及び純資産の相殺禁止を要求する考え方であり、

総額主義によれば企業の財政規模を示すことができる。

総額主義の例外には、繰延税金資産と繰延税金負債の相殺表示がある。

<問題 3-1(正誤)>①正規の簿記の原則に従って処理された場合に生ずる簿外資産や簿

外負債は貸借対照表に記載しないことができる。( )

②貸借対照表完全性の原則によれば、簿外資産、簿外負債、架空資産、架空負債が認めら

れることはない。( )

③償却済の有形固定資産は、正規の簿記の原則に従って簿外資産として処理することがで

きるが、架空資産が認められることはない。( )

④貸借対照表における総額主義とは、資産と負債及び純資産の相殺を禁ずる考え方であり、

企業の財政的な規模を示す観点から要請される。

⑤貸借対照表において、ある銀行に預入する当座預金と別の銀行に対する当座借越との相

殺表示は、総額主義の原則に反していない。( )

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第2節 貸借対照表の区分と配列方法

【要点3-2】貸借対照表の区分と配列方法 ランクAB

貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に区分する。

貸借対照表項目の配列方法には、企業の支払能力を示す流動性配列法と企業の財務健全

性を示す固定性配列法がある。流動性配列法が原則的方法であるが、業種によっては固定

性配列法が採用されることもある。資産は流動資産と固定資産に区分されるが、区分基準

には正常営業循環基準と1年基準がある。

1.貸借対照表の区分(企業会計原則 第三 二、純資産基準4)

貸借対照表は、資産の部、負債の部、純資産の部に区分する。

2.貸借対照表項目の配列方法(企業会計原則第三 三)

貸借対照表項目の配列方法には、流動性配列法(原則)と固定性配列法がある。

流動性配列法(流動⇒固定)は、企業の財務流動性(短期的支払能力)を示す。

固定性配列法(固定⇒流動)は、企業の財務健全性(※)を示す。

※固定性配列法は、固定設備を自己資本や長期借入金で賄えているかの判断に役立つ。

固定設備が巨額な特定の業種(電力・ガス会社等)で採用される。

※繰延資産は換金価値がないため、いずれの配列方法でも 後に記載する。

3.流動固定の区分基準(企業会計原則 第三 四 (一)、注 16)

正常営業循環基準とは、営業循環過程内の資産や負債(売掛金等)を流動項目とし、そ

れ以外を固定項目とする基準である。

1年基準とは、貸借対照表日の翌日から1年以内に期限が到来する資産や負債を流動項

目とし、それ以外を固定項目とする基準である。

<問題 3-2(正誤)>①貸借対照表項目の配列は、支払能力などを判断するのに便利な流

動性配列法によらなければならない。( )

②商品等の棚卸資産は、営業循環基準により流動資産とされるが、売掛金、貸付金、未収

金などの債権には、支払能力を示す観点から 1 年基準が適用される。( )

③恒常在庫品として保有する原材料は、固定資産の部に記載する。( )

④残存耐用年数が 1 年以下の固定資産は、流動資産の部に記載する。( )

⑤受取手形、売掛金など企業の主な目的である営業取引から生じた債権の一部が更生債権

となった場合は、すべて流動資産の区分から除外する必要がある。( )

⑥前払費用や未収収益は、1年基準に基づき、流動資産又は固定資産に分類される。( )

⑦現行の会計制度では、資産は流動資産、固定資産及び繰延資産に分類されている。この

分類は、会計の目的を適正な期間損益計算におく考え方を基礎としたものである。( )

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第3節 投資のポジションと資産概念

【要点3-3】投資のポジションと資産概念 ランク特AA

貸借対照表は、一定時点の投資のポジションを示す財務諸表である。

資産とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源をい

い、経済的資源とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいう。

1.貸借対照表の位置づけ

貸借対照表

負 債

資金の運用形態→ 資 産 ←資金の調達源泉

純資産

<財政状態から投資のポジションへ>(概念フレームワーク第1章(1))

「投資のポジション」に類似する用語として、従来、「財政状態」が用いられている。

「財政状態」は、多義的に用いられているため、新たに抽象的な概念レベルで使用する用

語として、「投資のポジション」を用いている。

2.資産の定義(概念フレームワーク第3章4、(2))

資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を

いう。経済的資源とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいう。

3.資産概念の検討

「過去の取引または事象の結果として」とは、事実として資産が生ずることを意味する。

「報告主体」は、典型的には企業を指すが、連結財務諸表での企業集団を含む。

「支配」は自由に使用・収益できる状態を指し、法的な所有(使用・収益・処分)と異な

る。

※ファイナンス・リース(賃貸借)を売買処理する場合を想定するとよい。

<問題 3-3(正誤)>①資産を「将来経済便益」、つまり、「将来にキャッシュ・フローを

生み出す潜在力」と定義したとき、キャッシュ・フローを生み出す可能性が十分である場

合、自己創設のれんがこの定義を満たすとする考えがある。( )

②企業資本の循環過程で回収されたかあるいは現在回収過程や投下待機過程にある資産を

貨幣性資産と定義し、投下された状態で将来費用となる資産を費用性資産と定義した場合、

出資金や子会社株式はそのいずれにも属さない資産といえる。( )

③期末に資産負債を実地調査することにより貸借対照表を作成する場合、資産負債の貸借

対照表能力・評価の基準は、貸借対照表を作成する目的によって規定される。( )

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第4節 動態論と静態論の資産概念

【要点3-4】静態論と動態論の資産概念 ランクAB

静態論は、債権者保護を目的とし、債権者に対する支払能力の表示を重視するため、財

産計算に主眼が置かれ、資産は売却価値を有する財産に限定される。

動態論は、投資家保護を目的とし、投資家に対する収益力の表示を重視するため、損益

計算に主眼が置かれ、資産は損益計算を行う上での未解消の借方項目とされる。

1.静態論

静態論は、債権者保護を目的とし、債権者に対する支払能力(債務弁済能力)の表示を

重視する。このため、財産計算に主眼が置かれ、資産は売却価値を有する財産に限定され

る。

(注)静態論は静的貸借対照表論、動態論は動的貸借対照表論とも呼ばれ、貸借対照表の

あり方⇒会計全般に関する考え方を意味する。

2.動態論

動態論は、投資家保護を目的とし、投資家に対する収益力の表示を重視する。このため、

損益計算に主眼が置かれ、資産は損益計算を行う上での未解消の借方項目である。

期中:(借)備 品500 (貸)現 金500

決算:(借)減価償却費100 (貸)備 品100

備品⇒支出500-費用100=用400(支出未費用、前払の費用、収益力要因)

3.静態論と動態論の比較

静態論 動態論

会計の目的 債権者保護 投資家保護

計算の重点と中心FS 財産計算・貸借対照表 損益計算・損益計算書

BSの役割 支払能力の表示 未解消項目の一覧表

期間利益の計算 <財産法>期末財産-期首財産 <損益法>収益-費用

BSの作成方法 棚卸法 誘導法

資産負債の意味 資産:換金価値がある財産

負債:確定債務

資産:未解決の借方項目

負債:未解決の貸方項目

資産の評価 売却時価 取得原価

<問題 3-4(正誤)>①静態論では、換金可能性を有する財貨と権利のみが資産とされる

ので繰延資産のような計算擬制的項目が資産として計上されることはない。( )

②静態論の下では、負債は法的な債務に限定されるため、引当金は計上されない。( )

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<研究>動態論の資産負債と財務諸表の関係

1.動態論の資産と負債

動態論では、貸借対照表を当期の損益計算と次期の損益計算とをつなぐ連結環と位置づ

ける(下記2①参照)。

資産は、支払手段、支出未収入、収益未収入及び支出未費用からなるものとされる。

負債は、収入未支出、収入未収益、費用未支出からなるものとされる。

<動態論の資産>

項 目 具 体 例 測定指標

①支払手段 現金 収入額・収入予定額

<貨幣性資産> ②支出・未収入 立替金、貸付金

③収益・未収入 売掛金、受取手形

④支出・未費用 有形固定資産、棚卸資産 支出額<費用性資産>

<動態論の負債>

項 目 具 体 例 測定指標

①収入・未支出 借入金 収入予定額

②収入・未収益 前受収益、前受金 収入額

③費用・未支出 買掛金、引当金 支出予定額・見積額

2.貸借対照表と損益計算書の関係の見方

①損益計算書を中心にみた場合の貸借対照表(動態論)

損益計算書を中心にみた場合、貸借対照表は次期に繰り越す金額の一覧表であり、期間

損益計算を行うための連結環としての意味を持つ。

<損益計算書>――――――→<損益計算書>

貸借対照表

②貸借対照表を中心にみた場合の損益計算書

貸借対照表を中心に考えた場合、損益計算書は会社の一定期間における資本の変動の原

因を示す利益の明細書という役割がある。

貸借対照表――――――――→貸借対照表

<損益計算書>

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第5節 収益費用アプローチと資産負債アプローチ

【要点3-5】収益費用アプローチと資産負債アプローチ ランクAA

会計の中心に収益と費用を置き、両者の差額で利益(純利益)を算定する考え方を収益

費用アプローチといい、収益力の把握に重点が置かれる。会計の中心に資産と負債を置き、

両者の差額である純資産の変動額で利益(包括利益)を計算する考え方を資産負債アプロ

ーチといい、企業価値の把握に重点が置かれる。

1.利益の計算方法

企業会計における利益観には、資産と負債の差額である純資産の変動額でこれを計算す

る資産負債アプローチと期間収益と期間費用との差額で利益を計算する収益費用アプロー

チがある。

①資産負債アプローチ:期末財産-期首財産=利益(包括利益)

②収益費用アプローチ:収 益-費 用=利益(純 利 益)

2.収益費用アプローチと資産負債アプローチの比較

収益費用アプローチ

(収益費用中心観)

資産負債アプローチ

(資産負債中心観)

中心概念 収益と費用 資産と負債

会計目的 収益力<企業の効率性の把握> 企業価値の把握

主要課題 利益計算 純資産(企業価値)計算

利益計算方法 収益-費用<純利益> 期末純資産-期首純資産<包括利益>

損益計算書 収益と費用の差額で利益計算 利益の構成要素である収益・費用を示す

貸借対照表 連結環(未解決項目収容の場) 企業価値を表示

繰延資産・引当金 計上 非計上

<資産負債アプローチの意味(参考)>

1.理論的なアプローチ

資産を公正価値で評価し、その変動額は損益とする。国際会計基準の志向といわれる。

2.定義・内容面でのアプローチ

概念フレームワークは、いわば定義面(内容面)のみの資産負債アプローチであり、測

定面に及ばず、定義(内容)を定める役割がある。測定面では混合アプローチをとる。

<問題 3-5(正誤)>①収益費用中心観での中心的な課題が投資家の保護であるのに対し

て、資産負債中心観での中心的な課題は、債権者の保護にある。( )

②資産負債中心観では、富のプラス要因たる資産とマイナス要因たる負債の差額としての

純資産が も重視される会計対象であり、主要課題は純資産の計算にある。( )

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<基礎概念>資産概念

<静態論>

かつて資産は換金価値(売却価値)があるものに限られていました。利害関係者の中心

を債権者が占め、その主たる関心である企業の支払能力をみるのに相応しいのが換金価値

だったからです。どれだけ換金価値がある財産を持っているのか。どれだけ法的な支払義

務を負っているのか。それらが分かれば企業が清算したとしたときに返済できる金額もわ

かるハズ。ここでの貸借対照表に計上される資産も換金価値があるものに限られ、負債は

法的な債務に限定されます。このような財産計算を重視する会計の考え方が静態論です。

<動態論>

株式市場が発達するにつれ、利害関係者の比重は「債権者」から市場で証券を売買する

「投資者」へと移行し、その主な関心も企業の収益力に移っていきます。そこでの会計の

重点は、企業が利益を獲得する力である収益力を反映した期間損益計算におかれ、資産は

換金価値のある財産に限られません。動態論の下での資産は、当期の損益計算を行った上

での未解決項目(支出したのに費用となっていない「支出未費用」項目等)といえます。

より具体的には、支払手段としての現金、過去に支出があって将来の収入を待つ項目とし

ての支出未収入(貸付金等)、過去に収益が計上され将来の収入を待つ項目としての収益未

収入(売掛金等)、過去に支出があって将来の費用となるべき項目としての支出未費用(建

物等)の4つの類型からなると説明されます。

貸借対照表は、当期と次期の損益計算書をつなぐ架け橋(連結環)と位置づけられます

が、このような損益計算を重視する会計の考え方が動態論です。

動態論の下で資産性を持つ繰延資産は、静態論の下では資産性を持たず、そのためにそ

れ以外の真正資産に対して、擬制資産や会計的資産と呼ばれることもあります。

<資産負債アプローチ>

時は更に流れ、経済のうちに商品などの実物資産より、株式などの金融資産の比重が高

まるにつれ、振り子は再び資産や負債を重視する考え方に移りつつあります。現在の資産

や負債を重視する考え方は、それまでの損益計算を重視する考え方である収益費用観(収

益費用アプローチ)に対して、資産負債観(資産負債アプローチ)と呼ばれます。そこで

の資産は経済的資源とされ、単なる換金価値ではなく、「キャッシュ・フローを生み出す能

力」が資産の本質と考えられています。

静態論の下での資産が即時売却価値を有するもののみであったのに対して、資産負債ア

プローチの下での資産概念では、売却価値はなくても、将来のキャッシュ・フローを生み

出す力があるものには資産性がある点が大きく異なっています。

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第6節 測定指標の種類と選択

【要点3-6】測定指標の種類と選択 ランクAC

資産の測定指標には、過去の購買市場での取得原価、現在の購買市場での再調達原価、

現在の売却市場での正味売却価額、将来の売却市場における割引現在価値がある。

1.測定のタイミングによる測定指標

資産の測定指標は、取引が行われる①市場と②取引のタイミングにより区別される。

①市場には、その資産を購入する場合の購買市場(卸売市場)とその資産を売却する場

合の売却市場(小売市場)とがあり、②取引のタイミングには過去、現在、未来がある。

これらの組合せによる測定指標は次のとおりである。

①市場\②時期 過 去 現 在 未 来

購買市場 取得原価 再調達原価 -

売却市場 - 正味売却価額 割引現在価値

2.測定指標の種類

測定指標のそれぞれの意味と具体的に適用される例は、次のとおりである。

属 性 内 容 適用例

取得原価 過去の購買市場の価格 棚卸資産、固定資産

市場価格(※1) 現在の単一市場の価格 売買目的有価証券

再調達原価 現在の購買市場の価格 (棚卸資産)

正味売却価額(※2) 現在の売却市場の価格 棚卸資産、固定資産

割引現在価値 将来の売却市場の価格 固定資産

※1)株式市場のように購買市場と売却市場が分離しない単一の市場での価格

※2)正味実現可能価額ともいう。

※3)一般に取得原価<再調達原価<正味売却価額の関係がある。

3.測定指標の選択

わが国の制度会計では、投資に対する期待に応じて異なる測定指標をとる(混合測定)。

金融投資に係る金融資産は時価で評価し、評価差額は当期の損益とする。

事業投資に係る事業用資産は取得原価で評価し、これを費用配分する。

事業用資産を取得原価で評価する考え方を取得原価基準といい、事業用資産の取得原価

を各期に費用配分すべき考え方を費用配分の原則という。

<問題 3-6(正誤)>現行の制度会計では、資産の種類で測定属性が使分けられているが、

この中には適正な期間損益計算の見地からしか説明できないものがある。( )

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第7節 取得原価基準

【要点 3-7】取得原価基準 ランクAA

資産を取得原価で評価する考え方を取得原価基準という。取得原価基準は、実行可能性・

検証性に優れ、受託責任(会計責任)の明示に役立つ。また、未実現利益を排除するため

実現主義と整合的であり、投下資本の回収余剰計算としての損益計算を可能にする。しか

し、物価変動時には資産の評価額が時価とかけ離れ、同一価格水準での損益計算ができず、

特に物価上昇時には損益計算に保有損益が混入し、名目資本の維持しか図ることができな

い。

1.取得原価基準

資産の評価を取得原価による考え方を取得原価基準(主義)という。

2.取得原価基準の採用根拠

①客観性・確実性を持ち、受託責任や会計責任の明示に役立つ

取得原価は、第三者との取引金額であり、客観性があり、検証が容易い。このため株主

に対する財産の管理運用責任である受託責任やその報告責任である会計責任を明示する。

②未実現利益が排除され、実現主義と整合性を持つ

取得原価主義では資産の保有期間中は原価で評価するため評価替えによる評価益(未実

現利益)が計上されず、収益の認識基準としての実現主義と整合的である。

③回収余剰計算としての損益計算に役立つ

損益計算は投資額の回収計算であり、費用は投資額(取得原価)を基礎に計算されるた

め、取得原価基準は、投資額を上回る回収余剰としての利益計算に役立つ。

3.取得原価基準の欠点

①貸借対照表価額が時価と乖離する

資産を取得原価で評価すれば、物価変動時に評価額が期末時価とかけ離れる。

②同一価格水準の損益計算ができない

収益は売却時の時価を反映するが、費用は過去の取得原価に基づくため、物価変動時に

同一価格水準での損益計算ができず、物価上昇時には損益計算に保有利益が混入する。

③名目資本の維持しかできない

取得原価主義では、名目資本の維持しか果たすことができない。

<問題 3-7(正誤)>①原価主義の論拠には計算の客観性と確実性がある。現在の企業取

引は市場取引を前提としているため、計算の客観性(したがって、検証可能性)を保証で

き、また、過去の取引価格は取り消されることのない実際の取引価格であり、見積の要素

を含まないため、計算の確実性を確保することができる。( )

②原価は将来に回収されるべき投資額を示すため、資産の再取得に必要な額を表す。( )

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<研究>資本維持

1.資本維持

資本維持とは、利益計算の起点となる資本(維持すべき資本)をどうするかの問題をい

う。

今日の企業会計では、名目資本維持は果たしているが実質資本ないし実体資本維持を果

たすことはできない。

期首株主資本

期首株主資本

純利益

2.資本維持の種類

①名目資本維持とは、物価変動を加味しない名目資本(貨幣額)による資本維持をいう。

現行では、名目資本維持しか果たせていない。

②実質資本維持とは、一般物価の変動を加味した資本維持をいう。

③実体資本維持とは、個別物価の変動を加味した資本維持をいう。

(実物)

<設例>物価変動による資本維持が図れないケース

例)仕入@100 売上@200

会計処理

①出資 現 金100 資 本 金100

②仕入 仕 入100 現 金100

③売上 現 金200 売 上200 損益100 繰利100 ⇒ 配当

④仕入 仕 入100 現 金100

物価が倍

⑤売上 現 金400 売 上400 損益300 繰利300 ⇒ 配当?

仕 入 ? 現 金 ?

<損益計算>売上400-売上原価100=300

100→保有利得(物価変動による損益)

200→操業利益(本来の売却損益)

物価変動を加味しない利益300を全部配当すると値上り後の商品@200を買えない。

物価変動を加味せずに損益計算を行うと保有利得が損益計算に混入し、物価変動を加味

した資本維持を果たすことができない(従来の企業活動を継続してできない)。

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第8節 費用配分の原則

【要点3-8】費用配分の原則 ランクAA

費用配分の原則とは、費用性資産の取得原価を当期の費用と資産とに配分すべき考え方

をいう。

1.費用配分の原則の意義

資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分し

なければならない。

費用配分の原則は、費用性資産の取得原価を費用と資産に配分すべき考え方を意味する。

具体的な配分額(費用)を発生主義の原則により決定する。

<当期と翌期でみた場合>取得原価を当期の費用と資産とに配分する。

取得原価

費用

資産

<資産の利用期間でみた場合>取得原価を各事業年度に費用として配分する。

取得原価

費用 費用 費用 費用

2.配分の意味

用 語 内 容 具体例

原価配分(費用配分) 取得原価の配分 減価償却

費用配分 支出の配分 減価償却+引当金等

配分 収入と支出の配分 会計(事業投資)全般

<問題 3-8(正誤)>①全ての資産は、貨幣性資産と費用性資産に二分される。( )

②資産を貨幣性資産と費用性資産とに区分した場合、おおむね貨幣性資産は、収入額を元

に評価し、費用性資産は支出額を元に評価することになる。( )

③費用配分とは、費用性資産の取得原価を費消原価と未費消原価とに分割する手続きをい

う。期間損益計算において、費消原価は、たとえ期間収益(実現収益)との間に合理的な

対応関係が認められなくても、期間費用となる。( )

④減価償却の基礎にある費用配分の原則は、継続企業の公準を前提に導き出される。( )

⑤資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分し

なければならない。有形固定資産は、定額法、定率法、級数法、個別法、及び生産高比例

法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分する。( )

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<基礎概念>取得原価と費用配分

<取得原価>

資産をその取得に要した支出額、すなわち取得原価で評価する考え方が取得原価基準で

す。

取得原価は第三者との取引金額である取得原価を基礎としているためその金額に客観性

があり、受託責任や会計責任を明示す上で有効といえます。また、取得原価基準によれば、

資産を時価で評価することによる評価益(未実現利益)が計上されることはありません。

この意味で取得原価基準は収益の認識基準としての実現主義と整合的です。未実現の利益

を計上せず、処分可能利益の算出に適う資産評価の基準が取得原価基準です。

取得原価(取得価額)の決定等が問題になる例として、有価証券、償却原価法、子会社

株式・関連会社株式、棚卸資産、有形固定資産、のれんなどがあります。

<費用配分>

企業活動は多様です。企業は利益獲得の為に様々な努力をし、その努力が成果として表

れます。成果としての収益、たとえば売上収益の発生形態はそれほど複雑ではありません

が、努力としての費用の発生形態は実に様々です。商品販売の例では、売上原価、販売費、

一般管理費その他様々な形で費用は生じます。費用は支出額で測定されますが、その支出

形態は多様であり、費用化の過程も一様ではないのです。多様な形態を持つ支出のうち、

事業用資産の取得原価を当期の費用と次期以降の費用に割り振るのが費用配分であり、適

正な費用配分を要求するのが費用配分の原則です。

企業会計原則 貸借対照表原則五は、次のように述べます。

「資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分し

なければならない。」

費用配分のあり方は、棚卸資産のように数量で確認できる事もあれば、多くの有形固定

資産のように数量では確認できず、いわば想像上(価値上などといわれます。)でしか把握

できない事もあります。資産の種類が多様である以上、費用配分のあり方も多様にならざ

るを得ません。会計で「配分」が重視されるのも多様な支出をどのように費用として期間

帰属させるかが利益計算に大きな影響を与えるためでしょう。費用配分の問題は今日でも

会計の中心的課題であり続けています。

費用配分が問題となる具体的例としては、棚卸資産、有形固定資産、取替法、減耗償却、

繰延資産、資産除去費用の費用配分などがあります。

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第9節 時価と割引価値

【要点3-9】時価と割引価値 ランクAB

時価には、単一市場における時価である市場価額と複数市場における購買市場での再調

達原価と売却市場における正味売却価額がある。

割引現在価値とは、将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて計算したものであ

る。割引現在価値は、資産の定義に即した測定指標といえるが、将来CFの測定と割引率

の選択に著しい不確実性を伴う。

1.時価主義

①意義

時価主義とは、資産の評価を時価による考え方である。

金融商品では、時価会計と呼ぶ場合が多い。

時価主義には、恣意性が介入しやすく、未実現利益が計上される。

②損益認識との関係

時価主義は、損益の認識基準としての発生主義と結びつく。

資産の評価 収益の認識

原価・実現主義 原価主義 実現主義

時価・発生主義 時価主義 発生主義

2.割引価値

①意義

割引価値(割引現在価値)とは、将来CFを一定の割引率で割り引いた金額をいう。

割引価値は、CF獲得能力としての資産の本質と整合的な測定指標である。

②欠点

将来キャッシュ・フローの測定が不確実であり(客観的でない)、割引率の選択に恣意性

が介入する余地がある。

割引価値は、事業(企業)の測定指標としては意味を持つが、個別資産(事業用資産)

では意味を持たない。

<問題 3-9(正誤)>①資産を「将来経済便益」、つまり、「将来のCFを生み出す潜在力」

と定義したとき、資産の測定が特定の測定属性には結びつかないとする見解以外に将来C

Fの割引価値がこれと も整合的であるとする見解もある。( )

②資産は、将来、企業にCFをもたらす能力(用役潜在力)を有しているため、資産の測

定属性としては、正味実現可能価額の採用に合理性が認められる。( )

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第 10 節 負債の定義と分類

【要点3-10】負債の定義と分類 ランクBB

負債とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源を引

き渡す義務をいう。負債は企業の支払能力を示す観点から流動資産と固定資産とに分類さ

れる。また、負債はその性格により債務(確定債務と条件付債務)と非債務に分類される。

1.負債の定義(概念フレームワーク第3章5)

負債とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源を放

棄し、引き渡す義務、またはその同等物をいう。

2.負債の分類

①流動・固定分類

負債は貸借対照表上、企業の支払能力を示す観点から流動負債と固定負債に分類される。

②属性別分類

負債はその性格により債務と非債務に分類される。

債務は確定債務と条件付債務に分類される。

債務 確定債務 支払手形、買掛金、借入金、未払金など

条件付債務 製品保証引当金、退職給付引当金など 負債性引当金

非債務(純会計的負債) 修繕引当金など

3.流動・固定の分類基準

正常営業循環基準とは、営業循環過程内にある項目(買掛金等)を流動項目とし、それ

以外を固定項目とする基準である。

1年基準とは、貸借対照表日の翌日から1年以内に期限が到来する項目を流動項目とし、

それ以外を固定項目とする基準である。

<問題 3-10(正誤)>①いわゆる静的貸借対照表では、負債性引当金を貸借対照表に計上

する余地はない。( )

②資産を「債務弁済手段」と定義する見解に基づけば、負債は「法的債務」と定義され、

修繕引当金は負債に含まれることになる。( )

※③ヘッジ会計を適用した場合にヘッジ手段であるデリバティブを時価評価することによ

り認識された貸方の評価差額は、負債を「過去の取引又は事象の結果として報告主体が支

配している経済的資源を放棄もしくは引き渡す義務」と定義すれば負債には該当しないが、

負債に繰延収益を含んで定義すれば負債に該当する。( )

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チェック問題解答<第3講>

<3-1>①○

②×(正規の簿記の原則に従って処理された簿外資産・負債は認められる。)

③×(償却済みの資産は簿外資産として計上できない。)

④○

⑤×(当座預金と当座借越の相殺は認められない。)

<3-2>①×(原則として流動性配列法によるが固定性配列法も認められる。)

②×(売掛金は正常営業循環基準により流動資産とされる。)

③×(恒常在庫品として保有する棚卸資産は、流動資産の部に記載する。)

④×(残存期間が1年以下の車両は固定資産の部に記載する。)

⑤×(更生債権には1年基準が適用される。)

⑥×(未収収益に一年基準は適用されず、すべてが流動資産に分類される。)

⑦×(流動・固定分類は、支払能力の表示を重視したものである。)

<3-3>①○

②○

③○

<3-4>①○

②○

<3-5>①×(資産負債中心観の中心的な利害関係者は投資家である。)

②○

<3-6>○

<3-7>①○

②×(資産の再取得に必要な金額との関連はない。)

<3-8>①×(例えば土地はいずれにも該当しない。)

②○

③×(当期の収益との間の対応関係が必要である。)

④○

⑤×(個別法は有形固定資産の費用配分方法ではない。)

<3-9>①○

②×(正味売却価額は現在売却時のCFを表す金額であり、合理性はない。)

<3-10>①○

②×(静態論のもとで修繕引当金は負債に該当しない。)

③○

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参照会計基準等<第3講>

1.貸借対照表の本質(企業会計原則 第三 一) 貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資

産、負債及び資本(⇒純資産)を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正し

く表示するものでなければならない。ただし、正規の簿記の原則に従って処理された場合

に生じた簿外資産及び簿外負債は、貸借対照表の記載外におくことができる。

2.総額主義の原則(企業会計原則 第三 一 B)

資産、負債及び資本(⇒純資産)は、総額によって記載することを原則とし、資産の項

目と負債又は資本(⇒純資産)の項目とを相殺することによって、その全部又は一部を貸

借対照表から除去してはならない。

3.貸借対照表の区分(企業会計原則 第三 二)

貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本(⇒純資産)の部の三区分に分ち、さらに

資産の部を流動資産、固定資産及び繰延資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分

しなければならない。

4.項目の配列の方法(企業会計原則 第三 三)

資産及び負債の項目の配列は、原則として、流動性配列法によるものとする。

5.取得原価基準(企業会計原則 第三 五)

貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の取得原価を基礎として計

上しなければならない。

6.費用配分の原則(企業会計原則 第三 五)

資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分し

なければならない。有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率等の一

定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当

該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度

に配分しなければならない。

7.資産の定義(概念フレームワーク第3章4、(2))

資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を

いい、経済的資源とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいう。

8.負債の定義(概念フレームワーク第3章5)

負債とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源を放

棄し、引き渡す義務、またはその同等物をいう。

9.認識と測定(概念フレームワーク第4章1、2)

財務諸表における認識とは、構成要素を財務諸表の本体に計上することをいう。

財務諸表における測定とは、財務諸表に計上される諸項目に貨幣額を割り当てることを

いう。

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10.取得原価(概念フレームワーク第4章8)

取得原価とは、資産取得の際に支払われた現金もしくは現金同等物の金額、または取得

のために犠牲にされた財やサービスの公正な金額をいう。

11.市場価格(概念フレームワーク第4章 11)

市場価格とは、特定の資産について、流通市場で成立されている価格をいう。

12.再調達原価(概念フレームワーク第4章 15)

再調達原価とは、購買市場と売却市場とが区別される場合において、購買市場(当該資

産を購入し直す場合に参加する市場)で成立している価格をいう。

13.正味実現可能価額(概念フレームワーク第4章 17)

正味実現可能価額とは、購買市場と売却市場とが区別される場合において、売却市場(当

該資産を売却処分する場合に参加する市場)で成立している価格から見積販売経理(アフ

ター・コストを含む。)を控除したものをいう。

14.割引価値(概念フレームワーク第4章 19)

割引価値とは、資産の利用から得られる将来キャッシュ・フローの見積額を、何らかの

割引率によって測定時点まで割り引いた測定値をいう。

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基準穴埋め問題<第3講>

1.貸借対照表の本質

貸借対照表は、企業の( 1 )を明らかにするため、( 2 )におけるすべての資産、

負債及び資本(⇒純資産)を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正しく表

示するものでなければならない。ただし、( 3 )に従って処理された場合に生じた簿外

資産及び簿外負債は、貸借対照表の記載外におくことができる。

2.総額主義の原則(企業会計原則 第三 一 B)

資産、負債及び資本(⇒純資産)は、( 4 )によって記載することを原則とし、資産

の項目と負債又は資本(⇒純資産)の項目とを相殺することによって、その全部又は一部

を貸借対照表から除去してはならない。

3.貸借対照表の区分

貸借対照表は、資産の部、負債の部及び資本(⇒純資産)の部の三区分に分ち、さらに

資産の部を流動資産、固定資産及び繰延資産に、負債の部を流動負債及び固定負債に区分

しなければならない。

4.項目の配列の方法

資産及び負債の項目の配列は、原則として、( 5 )によるものとする。

5.取得原価基準

貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、当該資産の( 6 )を基礎として

計上しなければならない。

6.費用配分の原則

資産の( 6 )は、資産の種類に応じた( 7 )によって、各事業年度に配分しな

ければならない。有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率等の一定

の減価償却の方法によって、その( 6 )を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当

該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その( 6 )を各事業年

度に配分しなければならない。

7.資産の定義

資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が( 8 )している( 9 )

をいう。( 9 )とは、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいう。

8.負債の定義

負債とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源を放

棄し、引き渡す( 10 )、またはその同等物をいう。

9.認識と測定

財務諸表における認識とは、構成要素を財務諸表の本体に( 11 )することをいう。

財務諸表における測定とは、財務諸表に計上される諸項目に貨幣額を割り当てることを

いう。

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10.取得原価

取得原価とは、資産取得の際に支払われた現金もしくは現金同等物の金額、または取得

のために犠牲にされた財やサービスの公正な金額をいう。

11.市場価格

市場価格とは、特定の資産について、流通市場で成立されている価格をいう。

12.再調達原価

再調達原価とは、( 12 )市場と( 13 )市場とが区別される場合において、( 12 )

市場(当該資産を購入し直す場合に参加する市場)で成立している価格をいう。

13.正味実現可能価額

正味実現可能価額とは、( 12 )市場と( 13 )市場とが区別される場合において、

( 13 )市場(当該資産を売却処分する場合に参加する市場)で成立している価格から

見積販売経理(アフター・コストを含む。)を控除したものをいう。

14.割引価値

割引価値とは、資産の利用から得られる( 14 )の見積額を、何らかの( 15 )に

よって測定時点まで割り引いた測定値をいう。

【解答欄】

1 2 3 4 5

6 7 8 9 10

11 12 13 14 15

【解答】

1.1財政状態 2貸借対照表日 3正規の簿記の原則

2.4総額

3.-

4.5流動性配列法

5.6取得原価

6.7費用配分の原則

7.8支配 9経済的資源

8.10 義務

9.11 計上

10.-

11.-

12.12 購買 13 売却

13.

14.14 将来キャッシュ・フロー 15 割引率

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穴埋め問題<第3講>

【3-1】貸借対照表完全性の原則と総額主義

貸借対照表完全性の原則とは、資産、負債及び純資産のすべてを貸借対照表に記載すべ

きことを要求する原則である。重要性の原則の適用による簿外資産及び簿外負債は、

( 1 )に従った処理として認められるが、架空資産及び架空負債は認められない。

総額主義の原則とは、資産と負債及び純資産の( 2 )を禁ずる考え方をいい、企業

の( 3 )を示すために要求されている。

【3-2】貸借対照表の表示区分と配列方法

貸借対照表は、資産の部、負債の部及び純資産の部に区分する。

貸借対照表項目の配列方法には、企業の( 4 )を示す流動性配列法と企業の( 5 )

を示す固定性配列法がある。流動性配列法が原則的方法であるが、業種によっては固定性

配列法が採用されることもある。資産は流動資産と固定資産に区分されるが、区分基準に

は、( 6 )と1年基準がある。

【3-3】投資のポジションと資産概念

貸借対照表は、一定時点の投資の( 7 )を示す財務諸表である。

貸借対照表に記載される資産とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が

( 8 )している( 9 )をいい、( 9 )とは、( 10 )の獲得に貢献する便益

の源泉をいう。

【3-4】静態論と動態論の資産概念

静態論は、( 11 )保護を目的とし、( 11 )に対する( 12 )の表示を重視する

考え方である。そこでは( 13 )計算に主眼が置かれ、資産は( 14 )を有する財産

に限定されるため、繰延資産が計上される余地はない。

動態論は、( 15 )保護を目的とし、( 15 )に対する( 16 )の表示を重視する

考え方である。そこでは( 17 )計算に主眼が置かれ、資産は損益計算を行う上での未

解消の借方項目とされ、繰延資産が資産性を有することとなる。

【3-5】収益費用アプローチと資産負債アプローチ

会計の中心に収益と費用を置き、両者の差額で( 18 )を算定する考え方を収益費用

アプローチといい、( 19 )の把握に重点が置かれる。会計の中心に資産と負債を置き、

両者の差額である純資産の( 20 )で( 21 )を計算する考え方を資産負債アプロー

チといい、( 22 )の把握に重点が置かれる。

【3-6】測定指標の種類と選択

資産の測定指標には、過去の購買市場での( 23 )、現在の購買市場での( 24 )、

現在の売却市場での( 25 )、将来の売却市場における( 26 )がある。

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【3-7】取得原価基準

資産を取得原価で評価する考え方を取得原価基準という。取得原価基準は、実行可能性

や検証性に優れ、受託責任(会計責任)の明示に役立つ。また、( 27 )を排除するため

( 28 )と表裏一体の関係にあり、投下資本の回収余剰計算としての損益計算を可能に

する。しかし、物価変動時には資産の評価額が時価とかけ離れ、( 29 )での損益計算を

行うことができない。物価上昇時には損益計算に( 30 )が混入し、( 31 )の維持し

か図ることができない。

【3-8】費用配分の原則

費用配分の原則とは、費用性資産の( 32 )を当期の費用と資産とに配分すべき考え

方をいう。

【3-9】時価と割引価値

時価には単一市場における時価である市場価額と複数市場における購買市場での再調達

原価と売却市場における正味売却価額がある。

割引現在価値は( 33 )を現在価値に割り引いて計算したものである。割引現在価値

は、資産の定義に も即した測定指標といえるが、( 33 )の測定と( 34 )の選択に

著しい不確実性を伴う。

【3-10】負債の定義と測定

負債とは、過去の取引または事象の結果として報告主体が支配している経済的資源を放

棄しもしくは引き渡す( 35 )またはその同等物をいう。負債は企業の支払能力を示す

観点から流動資産と固定資産とに分類される。また、負債はその性格により債務(確定債

務と条件付債務)と非債務に分類される。

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【解答欄】

1 2 3 4 5

6 7 8 9 10

11 12 13 14 15

16 17 18 19 20

21 22 23 24 25

26 27 28 29 30

31 32 33 34 35

【解答】

【3-1】 1正規の簿記の原則 2相殺 3財政規模

【3-2】 4支払能力 5財務健全性 6正常営業循環基準

【3-3】 7ポジション 8支配 9経済的資源 10 キャッシュ

【3-4】 11 債権者 12 支払能力 13 財産 14 売却価値 15 投資家 16 収益力 17

損益

【3-5】 18 純利益 19 収益力 20 変動額 21 包括利益 22 企業価値

【3-6】 23 取得原価 24 再調達原価 25 正味売却価額 26 割引価値

【3-7】 27 未実現利益 28 実現主義 29 同一価格水準 30 保有損益 31 名目資本

【3-8】 32 取得原価

【3-9】 33 将来キャッシュ・フロー 34 割引率

【3-10】 35 義務

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まとめ<第3講>

【3-1】貸借対照表完全性の原則と総額主義

【3-2】貸借対照表の表示区分と配列方法

【3-3】投資のポジションと資産概念

【3-4】静態論と動態論の資産概念

【3-5】収益費用アプローチと資産負債アプローチ

【3-6】測定指標の種類と選択

【3-7】取得原価基準

【3-8】費用配分の原則

【3-9】時価と割引価値

【3-10】負債の定義と測定

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まとめ<第3講>参考

【3-1】貸借対照表完全性の原則と総額主義

貸借対照表完全性の原則⇒すべての資産、負債、純資産の記載を要求

重要性原則の適用による簿外資産・負債は可、架空資産・負債は不可

重要性の原則⇒資産と負債・純資産の相殺禁止⇒財政規模

【3-2】貸借対照表の表示区分と配列方法

貸借対照表の区分⇒資産の部、負債の部、純資産の部

配列方法⇒原則:流動性配列法<支払能力>、例外:固定性配列法<財務流動性>

流動・固定の区分基準⇒正常営業循環基準、1年基準

【3-3】投資のポジションと資産概念

貸借対照表⇒投資のポジション

資産=経済的資源=キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉

【3-4】静態論と動態論の資産概念

静態論⇒債権者保護、支払能力、財産計算、資産=売却価値、繰延資産の計上は不可

動態論⇒投資者保護、収益力、損益計算、資産=未解決の借方項目、繰延資産の計上可

【3-5】収益費用アプローチと資産負債アプローチ

収益費用観⇒収益費用が中心、収益-費用=利益(純利益)

資産負債観⇒資産負債が中心、純資産の変動額=利益(包括利益)

【3-6】測定指標の種類と選択

取得原価(過去の購買市場)、再調達原価(現在の購買市場)、正味売却価額(現在の売却

市場)、割引現在価値(将来の売却市場)

【3-7】取得原価基準

取得原価基準=資産を取得原価で評価する考え方

◎実行可能性→受託・会計責任

未実現利益の排除し、実現主義と整合的、回収余剰としての損益計算が可能

×物価変動時に評価額が時価と離れ、同一価格水準での損益計算ができない

物価上昇時に保有利得が混入し、名目資本の維持しか図れない

【3-8】費用配分の原則

費用配分の原則=費用性資産の取得原価を費用と資産に配分すること

【3-9】時価と割引価値

時価=市場価格、再調達原価、正味売却価額

割引価値=将来CFの割引…資産の定義に即するが、CFと割引率が不確実

【3-10】負債の定義と測定

負債=経済的資源を引き渡す義務

流動負債と固定負債、債務(確定債務と条件付債務)と非債務