学生実験のための  イオン・トラップ装置

東工大理  小畑滋希,  中野健一,  柴田利明

1 第 68  回年次大会@広島大学 2013/03/27

内容  1.  学生実験の概要と目的  2.  イオン・トラップとは  3.  イオン・トラップの原理  4.  イオン・トラップ装置とその特徴  5.  実験装置とセットアップ  6.  比電荷の測定  7.  まとめ

1.  学生実験の概要と目的

²  概要  •  東京工業大学 理学部 物理学科  3  年生 後期  •  2  人  1  組で  4  組が同時にイオン・トラップ実験を行う  装置は  4  台  •  4  日間  (約  12  時間)  •  半年間で約  40  人が実験を行う    ²  目的  1.  イオン・トラップの原理を学ぶ  2.  イオン・トラップ装置の組み立て  

–  装置の構造と電気回路の特性の理解  3.  トラップされる粒子の比電荷の測定  

–  測定手法と精度の考察  

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2.  イオン・トラップとは

•  荷電粒子を電磁場中に三次元的に閉じ込める  •  1953  年に  W.  Paul  が考案  •  H.  Dehmelt  が原子物理の精密実験を行った  

–  原子のエネルギー準位  •  電子の  g  因子の測定  

•  イオン・トラップ法の開発により  1989  年ノーベル物理学賞        (W.  Paul,  H.  Dehmelt)  

²  従来、真空中でひとつの粒子やひとつの原子のトラップが行われてきたが、学生実験では空気中で目で見えるほどの直径数十ミクロンもの粒子のトラップを目指す

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6kVp-p

2kHz

3.  イオン・トラップの原理

•  電磁場による荷電粒子の閉じ込め  –  荷電粒子の位置のずれに対して、復元力を加える  

1)  時間的に変動する電場  ⇒  ポール・トラップ  (本実験では、この方法を採用する)  

2)  静電場と静磁場  ⇒  ペニング・トラップ  

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変動する電場中にトラップされる粒子  イオン・トラップ装置の電極の形  2013/03/27

z

r

Z

r0z0

Z

r0

B

z0 V0

ポール・トラップ型の実験装置

電気ポテンシャル

•  平均を考えると、  r,  z  方向共に安定

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r (mm)-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

z (mm)

-10-8-6-4-20246810

(V)

\

-2000-1500-1000

-5000

500100015002000

r (mm)-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

z (mm)

-10-8-6-4-20246810

(V)

\

-2000-1500-1000

-5000

500100015002000

r方向:    安定  z方向:  不安定

r方向:  不安定  z方向:    安定

� =

V0

2r20(r2 � 2z2) cos⌦t

半周期後

4.  イオン・トラップ装置とその特徴

イオン・トラップ装置  •  物理学科柴田研究室の卒業研究

の実験テーマとして  1993  年に初めて製作  

•  1996  年から  3  年生の学生実験に使用されている  

•  最近の改良点  –  円筒形電極から回転双曲面型

電極に変更  –  トラップされる粒子を NaCl  液滴

から鉄粉に変更  

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装置の特徴  •  簡単に組み立て可能  •  目で見える直径数十ミクロンもの

荷電粒子をトラップできる  •  空気中でトラップできる  •  低電圧・低周波数  (10  Vp-­‐p,  1  Hz)  

の電場をかけて、トラップされている粒子を  4  mm  ほど振動させることができる  

•  安定して長時間のトラップができる

イオン・トラップ装置

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  キャップ電極  (上) キャップ電極  (下) リング電極

イオン・トラップ装置

5.  実験装置とセットアップ

•  イオン・トラップ装置  •  低電圧直流電源  •  高圧インバーター  •  発振回路  •  CockcroI-­‐Walton回路  •  鉄粉  

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•  ファンクションジェネレーター  (低電圧・低周波数)  

•  超高輝度LED  •  PC  •  ビデオカメラ  •  オシロスコープ  

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ファンクション  ジェネレーター  

(低電圧・低周波数)

高圧インバーター

低電圧直流電源

発振回路

低電圧直流電源

CockcroI-­‐Walton  回路

DC  -­‐1.6  V  50  mA

AC  900  Vp-­‐p  17  kHz

DC  2.8  kV

DC  9  V  80  mA

p. 6平成 23 年度後期 高学年学生実験「イオントラップ」

イオントラップ実験装置イオントラップ実験装置

ファンクションジェネレーター

接地

高圧インバーター

オシロスコープ

~ 1 kHz~ 5 kV

PP

~ 1 Hz~ 10 V

PP

微粒子入射

イオントラップ電極イオン・トラップ装置

低電圧直流電源

超高輝度LED

PC

ビデオカメラ

キャップ電極

リング電極

DC  3.0  V

AC  5  kVp-­‐p  2  kHz

AC  10Vp-­‐p  1  Hz  

　

　

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イオン・トラップ装置

低電圧直流電源

CockcroI  –  Walton  回路

発振回路

ファンクションジェネレーター  (低電圧・低周波数)

PC

ビデオカメラ

鉄粉

6.  比電荷の測定

•  リング電極に加えるトラップ電圧の他に、低電圧・低周波数の電圧  (10  Vp-­‐p,  1  Hz)  をキャップ電極に加える  (操作電場)  

•  荷電粒子はそれに伴い、約  2  mm  の振幅で振動する  •  トラップ電場による力、操作電場による力、空気抵抗を考える  

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V = V0 cos!tq · V

2z0

�m!2zz �k

dz

dt

E =V

2z0

2z010  Vp-­‐p  1  Hz

•  運動方程式  

•  十分時間が経った場合

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•  未知数は比電荷  q/m  と空気抵抗  k  の  2  個  •  3つの異なる操作電場の振動数 ω  の値で振幅  A  を測定して、比電荷  

q/m  を導出する  

z(t) = A sin(!t+ �)

md2z

dt2= �m!2

zz +qV0

2z0cos!t� k

dz

dt

A =1p

(!2z � !2)2 + (k!/m)2

· q

m· V0

2z0

トラップ電場  による力

操作電場による力 空気抵抗

(1)

(2)

(3)

•  操作電圧の周波数  0.5,  1.0,  1.5  Hz  の  3  種類で測定した結果

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　 •  実験によって得られた比電荷の測定値の例  

 •  トラップされた粒子の電荷を計算すると  

•  これは素電荷 の                                              倍である                    •  一方、直径  30  ±  20  μm  の鉄粉の比電荷の計算値  (2.8  kV  帯電の場合)    

 •  実験値は、誤差の範囲で直径  30  ±  20  μm  の粒子がトラップされた場合の

計算値と一致  

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4.7⇥ 10�12(C)

e = 1.6⇥ 10�19(C) 3.0⇥ 107

(4.2± 3.0)⇥ 10�2(C/kg)

(3.8± 0.8)⇥ 10�2(C/kg)

7.  まとめ

•  イオン・トラップ実験は東京工業大学 理学部 物理学科  3年生の学生実験のテーマのひとつである。  

 •  我々のイオン・トラップ装置はポール・トラップを採用しており、

回転双曲面型の電極をもつ。    •  装置は簡単に組み立て可能で、目に見える直径数十ミクロン

もの粒子を空気中でトラップできる。    •  トラップさせる電場の他に、低電圧・低周波数の電場を加えて、

粒子を振動させることができる。    •  その振幅を測ることにより、トラップされた粒子の比電荷を測

定することができる。  

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Backup  Slides

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実験内容:  1日目

•  イオン・トラップ装置の組み立てと  &  セットアップ  •  高電圧印加テスト  &  印加電圧の測定  •  トラップ粒子発生装置の準備  •  ビデオカメラの用意  •  トラップテスト  

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実験内容:  2日目

•  トラップ条件の計算  •  トラップテスト  •  トラップされる粒子の運動制御  •  異なる電荷の同時トラップ

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実験内容:  3日目

•  比電荷の測定

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実験内容:  4日目

•  ディスカッション  •  異なる帯電電圧での比電荷の測定

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イオン・トラップ装置の歴史

•  柴田研究室の卒業実験テーマとして製作・改良  •  小林秀幸,  1993  (H5)  年度  •  小林秀幸,  物理教育  44  (1996)  385  •  和田雄一郎,  1996  (H8)  年度  •  城野潤平,  2000  (H12)  年度  •  石倉徹也,  2006  (H18)  年度  

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改良を重ねたイオン・トラップ装置 2013/03/27

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電極の写真

　

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鉄粉の大きさ

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φ  =  50  μm

イオン・トラップ装置の寸法

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mm-30 -20 -10 0 10 20 30

mm

-30

-20

-10

0

10

20

30

Iontrap (Assembled)

30q

19.65

9.8

10.1

10.1

60.10

1117.6941

2.5

7.77817

5.37477

6.77205

ここまで  Backup  Slides

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