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低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 平成23年3月 産業構造審議会産業技術分科会

低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 · プロジェクト事後評価報告書. 平成23年3月. 産業構造審議会産業技術分科会

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Page 1: 低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 · プロジェクト事後評価報告書. 平成23年3月. 産業構造審議会産業技術分科会

低品位炭改質技術研究開発

プロジェクト事後評価報告書

平成23年3月

産業構造審議会産業技術分科会

評 価 小 委 員 会

第2回事後評価検討会 原子力発電プラントフレキシブルメンテナンスシステム開発

資 料 1

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はじめに

研究開発の評価は、研究開発活動の効率化・活性化、優れた成果の獲得や社会・経済

への還元等を図るとともに、国民に対して説明責任を果たすために、極めて重要な活動

であり、このため、経済産業省では、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成

20年10月31日、内閣総理大臣決定)等に沿った適切な評価を実施すべく「経済産

業省技術評価指針」(平成21年3月31日改正)を定め、これに基づいて研究開発の

評価を実施している。

経済産業省において実施している低品位炭改質技術研究開発は、世界の石炭埋蔵量の

およそ半分を占めるものの、水分含有量が多い、自然発火性等があるため利用が困難な

低品位炭を油スラリー中で効率的に脱水改質することにより瀝青炭並の利用可能な資

源に転換する技術の開発であり、インドネシア・カリマンタン島に600t/日の実証プラ

ントを設置し、商業化技術の開発・実証を行うため、平成18年度から平成21年度ま

で実施したものである。

今回の評価は、この低品位炭改質技術研究開発の事後評価であり、実際の評価に際し

ては、省外の有識者からなる低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価検討会

(座長:石谷 久 東京大学名誉教授)を開催した。

今般、当該検討会における検討結果が評価報告書の原案として産業構造審議会産業技

術分科会評価小委員会(小委員長:平澤 泠 東京大学名誉教授)に付議され、内容を

審議し、了承された。

本書は、これらの評価結果を取りまとめたものである。

平成23年3月

産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会

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産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会

委 員 名 簿

委員長 平澤 泠 東京大学 名誉教授

池村 淑道 長浜バイオ大学バイオサイエンス学部 教授

大島 まり 東京大学大学院情報学環 教授

東京大学生産技術研究所 教授

太田 健一郎 横浜国立大学大学院工学研究院 教授

菊池 純一 青山学院大学法学部長・大学院法学研究科長

小林 直人 早稲田大学研究戦略センター 教授

鈴木 潤 政策研究大学院大学 教授

冨田 房男 北海道大学名誉 教授

中小路 久美代 株式会社SRA先端技術研究所リサーチディレクター

森 俊介 東京理科大学理工学部経営工学科 教授

吉本 陽子 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

経済・社会政策部 主任研究員

(委員敬称略、五十音順)

事務局:経済産業省産業技術環境局技術評価室

第7

回評

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低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価検討会

委員名簿

座長 石谷 久 東京大学名誉教授

委員 内山 洋司 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 リスク工学専攻教授

高見 佳宏 電気事業連合会 技術開発部長

東嶋 和子 サイエンス・ジャーナリスト

村岡 元司 株式会社NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサル

ティング本部パートナー

森 俊介 東京理科大学 理工学部経営工学科 教授

(敬称略、五十音順)

事務局:経済産業省資源エネルギー庁石炭課

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低品位炭改質技術研究開発プロジェクトの評価に係る省内関係者

【事後評価時】

資源エネルギー庁 資源・燃料部 石炭課長 橋口 昌道(事業担当課長)

産業技術環境局 産業技術政策課 技術評価室長 秦 茂則

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低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価

審 議 経 過

○第1回事後評価検討会(平成22年12月15日)

・評価の方法等について

・プロジェクトの概要について

・評価の進め方について

○第2回事後評価検討会(平成23年1月20日)

・評価報告書(案)について

○産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会(平成23年3月2日)

・評価報告書(案)について

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目 次

はじめに

産業構造審議会産業技術分科会評価小委員会 委員名簿

低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価検討会 委員名簿

低品位炭改質技術研究開発プロジェクトの評価に係る省内関係者

低品位炭改質技術研究開発プロジェクト事後評価 審議経過

ページ

事後評価報告書概要 ……………………………………………………… ⅰ

第1章 評価の実施方法

1.評価目的 …………………………………………………………………… 1

2.評価者 ……………………………………………………………………… 1

3.評価対象 …………………………………………………………………… 1

4.評価方法 …………………………………………………………………… 1

5.プロジェクト評価における標準的な評価項目・評価基準 …………… 2

第2章 プロジェクトの概要

1.事業の目的・政策的位置付け …………………………………………… 6

2.研究開発等の目標 ………………………………………………………… 12

3.成果、目標の達成度 ……………………………………………………… 16

4.事業化、波及効果について ……………………………………………… 46

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等 ………………… 49

第3章 評価

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性 ………………………………… 55

2.研究開発等の目標の妥当性 ……………………………………………… 57

3.成果、目標の達成度の妥当性 …………………………………………… 58

4.事業化、波及効果についての妥当性 …………………………………… 59

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性 ……… 60

6.総合評価 …………………………………………………………………… 61

7.今後の研究開発の方向等に関する提言 ………………………………… 63

第4章 評点法による評点結果 …………………………………………………… 66

参考資料 低品位炭改質技術開発の概要

参考 今後の研究開発の方向等に関する提言に対する対処方針

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事後評価報告書概要

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事後評価報告書概要

プロジェクト名 低品位炭改質技術研究開発プロジェクト

上位施策名 石油・天然ガス・石炭の安定供給確保

事業担当課 資源エネルギー庁 資源・燃料部 石炭課

プロジェクトの目的・概要

アジア地域を中心とした経済発展により石炭需要の増加が見込まれ、世界の石炭需給はよりタ

イト化する見通し。一方、世界の石炭埋蔵量のおよそ半分は水分含有量が多い、自然発火性等が

あるため利用が困難な低品位炭が占めており、この有効活用は喫緊の課題。本プロジェクトは低

品位炭を油スラリー中で効率的に脱水改質することにより、瀝青炭並に利用可能な資源に転換す

る技術の開発であり、インドネシア・カリマンタン島に600t/日の実証プラントを設置し、商業

化技術の開発・実証を行う。

予算額等(補助率1/2) (単位:千円)

開始年度 終了年度 中間評価時期 事後評価時期 事業実施主体

平成18年度

平成21年度

- 平成22年度

(財)石炭エネル

ギーセンター

(株)神戸製鋼所

H19FY 予算額 H20FY 予算額 H21FY 予算額 総 算額 総執行額

945,000 849,500 958,316 3,737,816 3,736,808

目標・指標及び成果・達成度

(1) 全体目標に対する成果・達成度

低品位炭を油中スラリー中で脱水改質することにより瀝青炭並の利用可能な資源に転換する

技術の商業化実証を目標とする。個別技術の目標に対する成果の達成度は、以下のとおりであり、

プロジェクト全体の目標は概ね達成された。

個 技術 目標・指標 成果 達成度

大型化技術

の確立

80%負荷率以上での運転及び

データ取得

80%以上の運転は延べ12時間に

とどまっているが、商業機設計

・操業のための主要な条件は判

明した。(10月以降の自主操業に

より80%以上運転は延べ64時間

となり、データを補強拡充し

た。)

一部達成

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大型化技術

の確立 1000時間連続運転 連続運転は最長156時間にとど

まったが、運転中断は機械的ト

ラブルに起因するもので、プロ

セスとしての安定性は実証され

た。(10月以降の自主操業によ

り、連続運転は321時間を達成

し、機械設備面の安定性も実証 )

一部達成

経済性把握

商業機改質コスト $15/トン

(石炭費は除く)

より高水分の原料褐炭に変更

(当初35%から60%へ)した影響

もあり改質コストは$20/tを

超えたが、現状の市場価格を前

提に経済性があることが示され

た。

一部達成

市場性把握

製品品質

6000kcal/kg以上

全水分10%以下

原炭水分60%であっても左記達

成可能なことが示された。

達成

5000トン規模での海上輸送

実績

船積量は1755トンであったが、

DPから日本の発電所貯炭ヤード

まで、全ての工程を通じて、適

切な管理により十分出荷可能な

ことが示された。

一部達成

商業機での利用実績(混炭率

20%以上)

20%混炭での実炉試験で十分使

用可能なことが示された。

達成

(2) 目標及び計画の変更の有無

対象となる低品位炭を水分含有量35%のものから同60%のものに変更

<共通指標>

論文数 論文の

被引用度数 特許等件数

(出願を含む) 特許権の実施件数

ライセンス供与数

取得ライセンス料

国際標準への寄与

1 0 11 0 0 0 -

評価概要

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

政策的には上位のクリーンコール施策との整合性が確保されており、低品位炭の品位を向上さ

せることによるエネルギー安定供給源の確保やエネルギー価格の安定、環境負荷の低減等の目的

は、資源に乏しい我が国の現状に鑑みて妥当である。また、世界的にエネルギー需要が拡大する

と予想される中、特に増大が見込まれる途上国のエネルギー需要に資する技術開発は時宜を得た

ものであり、世界全体のエネルギー安全保障上きわめて重要。

一方、今後の実用化、商業化について必ずしも具体的な計画が提示されていない点が懸念され

ることから、今後国がその進展をモニター、フォローアップしてその実現を確実にすることが望

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ましい。

2.研究開発等の目標の妥当性

商業化実現のため、大型機での技術確立、経済性把握、市場性把握の3つの観点について、そ

れぞれ目標値を定量的に設定することにより目標水準を明確にしている点は高く評価できる。

一方、市場に無い燃料を作るという新しい分野への挑戦であったため、適切なビジネスモデル

を確定できず、そのため目標値の根拠が不明確なものとなり、目標値の妥当性の評価が分かれた。

技術開発においてはそのプロセス自体も重要なノウハウとなるが、結果のみを評価するとオンオ

フの評価となってそのプロセスなどが評価できないことになるため、事前にキーとなる技術要素

をそれぞれ抽出してその目標、確認などの具体的指標を検討することが望ましい。

3.成果、目標の達成度の妥当性

商業化のための改質コストの見通しが得られたことは高く評価できる。一部未達成の数値はあ

るものの論文発表、特許の出願等も行われており、概ね当初の目標を達成したと考えられる。ま

た、エンジニアリング的に見て重要課題は解決しており、今後は更なる調整、再設計などをする

ことにより実現可能と考えられる。

一方、当初の設定目標を数字上は達成できず、一部達成にとどまっているものが多い点は否め

ない。結果論であるが、目標を高く設定し過ぎた感がある。

4.事業化、波及効果についての妥当性

微粉炭燃焼炉への補助燃料としての市場性から考えて、事業化に関しては妥当と考えられる。

また、低品位炭をガス化炉の原料として使用する際に、従来の乾燥手法では対応できない場合に

は本技術を活用できる可能性もある。我が国クリーンコール技術による石炭資源の高効率利用の

促進が期待できるなど、波及効果は十分ある。

一方、具体的な事業化の方向性が明確ではなく、どのように商業化を進めていくのか、マーケ

ット開拓を行っていくのかといった点について、今回の結果からはそこまでの展望は明確にはう

かがえない。

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

事業実施中の石炭価格高騰に伴う市場状況の変化から、当初のターゲットである水分35%含

有褐炭を60%含有のものに変更したことは状況の変化に柔軟に対応した適切なマネジメント

を行ったといえる。また、全体の開発体制・組織は、途上国を相手とするために、現地法人の設

立、政府間協議、運営委員会活動など、インドネシアの実情に対応した適切な体制と見られる。

一方、途中の計画変更に対し、迅速な対応が十分ではなかったこと、目標を十分に達成できな

かったことは、体制に弱い面があったと考えられる。

6.総合評価

いくつかの評価項目において目標に達していないところも見られるが、技術開発である以上、

種々のトラブルの発生、その対応によるスケジュールの遅れは不可避である。その中で、最終的

に実現の可能性が確認されたということ、実施者が今なお継続的研究を行って商業化を目指して

いることから、目的は概ね達成されたと評価される。本技術は経済性に優れている石炭資源の安

定供給、有効利用と環境負荷低減を目指したもので、低品位炭の改質という地味な技術であるが、

その早期実用化が世界的に求められており、極めて大きな波及効果が期待できるものである。日

本の誇るクリーンコール技術にも中期的には大きな貢献が期待できるものであり、本研究開発の

意義は高く、また、実用化・事業化に関して大きく前進したものと評価できる。

商業化を視野に入れる限り、まだ未達成の課題が残るため、残された課題をクリアしつつ、

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従来以上にマーケットを意識した活動が望まれ、また、現在実施している自主運転の中で成

果を再確認する必要がある。

7.今後の研究開発の方向等に関する提言

○このようなシステム実証の最終的な目的は、経済的に競争力のあるシステムを実現し普及させ

ることである。国としては、この後の経緯をモニターしてその実現までをフォローアップするこ

とが必要と思われる。

○今後再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電源多様化が想定される中、火力発電技術はエネル

ギーセキュリティ面、負荷調整機能などの系統安定化の面からも優れており、特に石炭火力は経

済性に優れることから今後ますます重要性が増すと考えられる。今後とも国際競争力が激化して

いる中、エネルギーの有効活用と環境負荷の低減につながる明確な目標を持った技術開発を実施

していくことが望まれる。

○クリーンコール技術は中長期的に石炭に頼らざるを得ない途上国に対して有用度の高い技術

である。今後、石炭火力のクリーン化、次いでガス化炉など高効率炉への移行、DMEなどの原

燃料としての貢献も期待できることから低品位炭利用技術の積極的な海外市場へのアピールを

することが重要である。

○基礎研究、パイロットプラントから実用プラントへ事業支援をシフトしていくことが望まれ

る。特にこれからの市場は国外が多くなると予想されることから、海外市場を開拓するための制

度的な支援を含めての検討が必要になると考えられる。

評点結果

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第1章 評価の実施方法

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1

第1章 評価の実施方法

本プロジェクト評価は、「経済産業省技術評価指針」(平成21年3月31日改定、以下

「評価指針」という。)に基づき、以下のとおり行われた。

1.評価目的

評価指針においては、評価の基本的考え方として、評価実施する目的として

(1)より良い政策・施策への反映

(2)より効率的・効果的な研究開発の実施

(3)国民への技術に関する施策・事業等の開示

(4)資源の重点的・効率的配分への反映

を定めるとともに、評価の実施にあたっては、

(1)透明性の確保

(2)中立性の確保

(3)継続性の確保

(4)実効性の確保

を基本理念としている。

プロジェクト評価とは、評価指針における評価類型の一つとして位置付けられ、

プロジェクトそのものについて、同評価指針に基づき、事業の目的・政策的位置付

けの妥当性、研究開発等の目標の妥当性、成果、目標の達成度の妥当性、事業化、

波及効果についての妥当性、研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の

妥当性の評価項目について、評価を実施するものである。

その評価結果は、本プロジェクトの実施、運営等の改善や技術開発の効果、効率

性の改善、更には予算等の資源配分に反映させることになるものである。

2.評価者

評価を実施するにあたり、評価指針に定められた「評価を行う場合には、被評価

者に直接利害を有しない中立的な者である外部評価者の導入等により、中立性の確

保に努めること」との規定に基づき、外部の有識者・専門家で構成する検討会を設

置し、評価を行うこととした。

これに基づき、評価検討会を設置し、プロジェクトの目的や研究内容に即した専

門家や経済・社会ニーズについて指摘できる有識者等から評価検討会委員名簿にあ

る6名が選任された。

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なお、本評価検討会の事務局については、指針に基づき経済産業省資源エネルギ

ー庁石炭課が担当した。

3.評価対象

低品位炭改質技術研究開発(実施期間:平成18年度から平成21年度)を評価対

象として、研究開発実施者((財)石炭エネルギーセンター、(株)神戸製鋼所)から提出

されたプロジェクトの内容・成果等に関する資料及び説明に基づき評価した。

4.評価方法

第1回評価検討会においては、研究開発実施者からの資料提供、説明及び質疑応答、

並びに委員による意見交換が行われた。

第2回評価検討会においては、それらを踏まえて「プロジェクト評価における標準的

評価項目・評価基準」、今後の研究開発の方向等に関する提言等及び要素技術について

評価を実施し、併せて4段階評点法による評価を行い、評価報告書(案)を審議、確定し

た。

また、評価の透明性の確保の観点から、知的財産保護、個人情報で支障が生じると認

められる場合等を除き、評価検討会を公開として実施した。

5.プロジェクト評価における標準的な評価項目・評価基準

評価検討会においては、経済産業省産業技術環境局技術評価室において平成21年6

月1日に策定した「経済産業省技術評価指針に基づく標準的評価項目・評価基準につい

て」のプロジェクト評価(中間・事後評価)に沿った評価項目・評価基準とした。

1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

(1)事業目的は妥当で、政策的位置付けは明確か。

・事業の政策的意義(上位の施策との関連付け等)

・事業の科学的・技術的意義(新規性・先進性・独創性・革新性・先導性等)

・社会的・経済的意義(実用性等)

(2)国の事業として妥当であるか、国の関与が必要とされる事業か。

・国民や社会のニーズに合っているか。

・官民の役割分担は適切か。

2.研究開発等の目標の妥当性

(1)研究開発等の目標は適切かつ妥当か。

・目的達成のために具体的かつ明確な研究開発等の目標及び目標水準を設定し

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3

ているか。特に、中間評価の場合、中間評価時点で、達成すべき水準(基準

値)が設定されているか。

・目標達成度を測定・判断するための適切な指標が設定されているか。

3.成果、目標の達成度の妥当性

(1)成果は妥当か。

・得られた成果は何か。

・設定された目標以外に得られた成果はあるか。

・共通指標である、論文の発表、特許の出願、国際標準の形成、プロトタイプ

の作製等があったか。

(2)目標の達成度は妥当か。

・設定された目標の達成度(指標により測定し、中間及び事後評価時点の達成

すべき水準(基準値)との比較)はどうか。

4.事業化、波及効果についての妥当性

(1)事業化については妥当か。

・事業化の見通し(事業化に向けてのシナリオ、事業化に関する問題点及び解決

方策の明確化等)は立っているか。

(2)波及効果は妥当か。

・成果に基づいた波及効果を生じたか、期待できるか。

・当初想定していなかった波及効果を生じたか、期待できるか。

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

(1)研究開発計画は適切かつ妥当か。

・事業の目標を達成するために本計画は適切であったか(想定された課題への

対応の妥当性)。

・採択スケジュール等は妥当であったか。

・選別過程は適切であったか。

・採択された実施者は妥当であったか。

(2)研究開発実施者の実施体制・運営は適切かつ妥当か。

・適切な研究開発チーム構成での実施体制になっているか、いたか。

・全体を統括するプロジェクトリーダー等が選任され、十分に活躍できる環境

が整備されているか、いたか。

・目標達成及び効率的実施のために必要な、実施者間の連携/競争が十分に行

われる体制となっているか、いたか。

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・成果の利用主体に対して、成果を普及し関与を求める取組を積極的に実施し

ているか、いたか。

(3)資金配分は妥当か。

・資金の過不足はなかったか。

・資金の内部配分は妥当か。

(4)費用対効果等は妥当か。

・投入された資源量に見合った効果が生じたか、期待できるか。

・必要な効果がより少ない資源量で得られるものが他にないか。

(5)変化への対応は妥当か。

・社会経済情勢等周辺の状況変化に柔軟に対応しているか(新たな課題への対

応の妥当性)。

・代替手段との比較を適切に行ったか。

6.総合評価

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5

第2章 プロジェクトの概要

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6

1.事業の目的・政策的位置付け

1-1 事業目的

石炭は、他の化石燃料に比べて豊富で130年以上の可採年数があり、しかも特定地域

に偏在しないという特長を有する。また、経済的にも優位性を有しており、世界の第1

次エネルギーの約3割をまかなっている重要なエネルギー資源である。世界の石炭需要

は、2030年までに2006年の1.5 倍に拡大する見通しであり、特に、経済成長の著しい中

国などアジアの需要増加が大きいと見られている。

日本においても第1次エネルギーの約2割強を石炭に依存しており、石炭は石油に次ぐ

エネルギー源となっている。現在、日本の石炭の需要は、燃料用炭が約9000万トン、製

鉄等原料用炭を含めると約1億8000万トンであるが、その殆ど全量が輸入によりまかな

われている。現在、わが国は世界一の石炭輸入国であり、地域としては豪州(59%)、

インドネシア(18%)等への依存度が大きいが、需要増加の著しいアジア・太平洋圏にお

いて、将来にわたって安定的な供給を確保することが重要である。

一方、石炭は、石炭化の進んだ順に、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭等に分類され

るが、現在、主に生産・使用されているのは、発熱量が高く、輸送・貯蔵時の安定性も

優れている瀝青炭である。特に、日本の発電設備は瀝青炭燃焼を前提に、安定性と効率

を徹底的に追求しながら今日に至っている。

しかし、石炭資源のうち瀝青炭は約半分に過ぎないため、今後、褐炭や亜瀝青炭(低

品位炭と総称される)の有効活用が重要になる。特に、日本で主力となっている高効率

の微粉炭焚き発電設備において、瀝青炭の代替として低品位炭を問題なく使用できるよ

うな改質技術の開発が求められている。

また、日本にとって豪州に次ぐ供給国であるインドネシアにおいては、埋蔵量のうち

瀝青炭の占める比率は15%で大半の石炭が低品位炭である。また、インドネシアは石油、

天然ガスの生産・輸出国であったが2004年から石油輸入国に転じたことや、電力需要が

増大していることから、2006年に策定された新たなエネルギー政策では石炭を主要エネ

ルギー源とすることとした。このため、瀝青炭、亜瀝青炭を従来通りに輸出用とする一

方、国内では大量に埋蔵されている褐炭等の低品位炭を利用していくこととなるため、

低品位炭の有効利用は日本、インドネシア両国にとって共通の課題である。

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図1-1 世界の石炭埋蔵量

世界の石炭需要予測 (億トン/年)

6.318.8

44.3

2.9

15.9

16.2

29

26.5

29.5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1980年度 2006年度 2030年度

その他地域

他アジア

中国38.2

61.2

90.0

米国IEO 2009

図1-2 世界の石炭需要見通し

図1-3 インドネシアのエネルギー供給と石炭生産・需要見通し

瀝青炭・亜瀝青炭・褐炭

の可採埋蔵量比

エネルギー白書

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8

さらに、石炭を燃焼する際には石炭灰や硫黄酸化物が発生する。これらは最大限の再

利用が図られているものの、灰分や硫黄分の低い石炭の利用が望まれている。たとえば

インドネシアの褐炭資源の中には低灰分・低硫黄のものが多く賦存しており、これらの

活用が環境負荷の低減にもつながる。

これらへの対応として、インドネシア等の未利用低品位炭資源の有効活用を目的とし

た、低コスト・低環境負荷の低品位炭脱水改質技術の商業化を促進するため、本事業を

実施するものである。

本事業は、平成18年度より平成21年度までの4年間にわたり、インドネシア共和国南

カリマンタン州において日産600トンの改質炭製造設備の設計、建設、試験操業を実施

し、これにより商業機に対してスケールアップ率10以下の低リスク対応可能な商業化技

術の蓄積を行う計画である。具体的には連続運転試験による耐久性確認、所要製品仕様

の達成と、そのための設計技術、保全技術の確立、及び経済性評価による商業機採算性

の成立を目標とする。

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1-2 政策的位置付け

資源に乏しい我が国にとって、石炭は極めて安定供給性に優れた重要なエネルギーで

あるが、石炭から発生するCO2削減のためにCCT技術の適用や更なる高効率化に向けた技

術開発の取り組みが進められている。本事業は、これまで高水分、低発熱量、自然発火

性等のため利用が限定され、その発電効率も低い低品位炭を改質し高品位化することに

より、市場性のある新たな石炭資源として有効活用を図る技術を開発することを目的と

している。

本事業で実施する技術は油中での処理を特長とする我が国独自の新規技術であり、こ

れまでの基礎試験等の技術開発により、商業化可能な技術、経済性、市場性を有する先

進的な技術である。本技術は、国家的に重要な産業技術のロードマップを俯瞰する事を

目的として経済産業省が策定した「技術戦略ロードマップ2010」や「エネルギーイ

ノベーションプログラム基本計画」において、「化石燃料の安定供給確保と有効かつク

リーンな利用に寄与する技術」の「石炭のクリーン利用技術」として位置付けられてい

る(図1-1)。

また、平成21年の総合エネルギー資源調査会鉱業分科会クリーンコール部会の報告に

おいて、低品位炭の活用や産炭国との関係強化が提言されており、本事業の目的はこれ

らに合致している。平成22年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、石炭

の安定供給確保のため産炭国の未利用な低品位炭について石炭ガス化や改質技術等に

よる有効利用を進め、産炭国のエネルギー需要の緩和と将来的には我が国への新たな石

炭供給源を目指すとされている。

本技術の確立、実用化により、これまで未利用あるいは限定的な利用に留まっていた

低品位炭が高品位炭と同等のものとして活用できることは、世界の石炭需給の緩和に貢

献するとともに、我が国におけるエネルギー資源の安定供給確保や低品位炭資源を有す

る産炭国との強固な相互依存関係の構築が可能となり、さらに石炭利用効率の向上によ

りCO2削減等の地球環境問題へも資する等、社会的、経済的意義も十分に大きい。

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図1-1 経済産業省「技術戦略マップ2010;化石燃料の安定供給確保と

有効かつクリーンな利用」に向けた導入シオリオ

本事業の技術

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11

1-3 国の関与の必要性

我が国の中核エネルギーの一つである石炭は、今後も電力を中心に需要が伸びると思

われるが、その石炭の殆どは高品位の輸入炭である。世界の石炭資源の半分を占める低

品位炭が輸入可能となれば、我が国のエネルギー政策上意義が大きい。また、低品位炭

には高品位炭には見られない低灰分、低硫黄の物があり、このような低品位炭をベース

とした改質炭を有効利用できると、我が国内で顕在化しつつある捨て灰地の枯渇問題に

対しても、その延命作用が期待でき意義が大きい。すなわち当事業の実施は我が国にと

って資源、環境の両面で大きい意味を持つ。

2005年4月に開催された日本-インドネシア石炭政策対話において、インドネシア側

から同国に豊富に賦存する低品位炭の有効利用を図るため日本で開発された低品位炭

改質法の実用化への技術協力について強く要請がなされたこと、2006年11月の甘利経済

産業大臣とプルノモ・エネルギー鉱物資源大臣間における共同声明にて両国が低品位炭

改質技術の開発に取り組むことで合意したこと、2007年8月の日尼EPA締結時の共同

声明にて低品位炭改質技術の開発に協力することで合意したこと等、日イ政府間での協

議を重ねて本事業を開始することとなった。

本事業は改質技術の商業化達成・促進を目的としており、開発費の大きい実証プラン

トによる事業を行うことから、民間企業だけで推進するのには限界がある。一方、本事

業の実施によりインドネシアにおいて自然発火性や低発熱量等の問題からほとんど利

用されなかった低品位炭の利用が可能となり、同国の高品位炭の供給、輸出量が増すこ

とにより石炭需給が安定するため、公共性が認められるものとなる。また低品位炭有効

利用というインドネシア国のエネルギー政策に基づく強い要請への支援という観点か

らも、国と国との間の技術開発として位置付けて推進すべきものであり、国の関与が妥

当である。

また、中国、インドを中心とするアジア地域において、経済成長に伴うエネルギー需

要の増加、それに伴う需給の逼迫感が増大している状況の中で、低品位炭を活用したア

ジア地域全体でのエネルギー源の多様化、ならびに安定供給の推進を図ることは、国と

して主体的に進めていく分野であり、国の事業として実施することは妥当である。

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2.研究開発目標

2-1 研究開発目標

2-1-1 全体の目標設定

(1)UBC*プロセスの原理と製品の特長

*)UBCとはUpgraded Brown Coalの略で、本事業の低品位炭改質技術をいう。

UBCプロセスは褐炭の水分を除去し(脱水)、成型するもので、脱水には油中スラ

リー脱水の技術を用いている。脱水された褐炭は、一般炭と同様のハンドリングが可能

となるように成型され、UBC製品となる。(図2-1、2-2参照)

原料の褐炭を5mm以下に粉砕し、少量のアスファルトを加え、熱媒体となる軽質油と

共に攪拌混合して泥状の流体(スラリー)をつくり、これを加熱することで、褐炭中の

水分を蒸発させて除去する。処理条件が140~150℃、3気圧程度という比較的穏やかな

条件での脱水処理が可能であり、しかも、水分60%程度の褐炭でも効率的に処理が可能

である。また、加熱時の熱源として蒸発した水蒸気の熱を再利用し、エネルギー効率を

上げている。

尚、熱媒体用の軽質油は99%以上回収し、プロセス内で再利用される。

図2-1 UBCプロセスの概要

粉砕機

原料褐炭

攪拌 層

蒸発器

気液分離槽

油スラリー化

アスファルト

回収蒸気 圧縮機

排水

スラリー脱水

遠心分離機

軽質油

循環ガス 成型機

UBC製品 (改質褐炭)

UBC製品ヤード

油回収 成型、貯炭

乾燥機

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図2-2 脱水過程の模式図

脱水された褐炭の粉は、軽質油と分離回収後に成型されてUBC製品となり、瀝青炭

と同様のコールチェーンに乗せることが可能になる。

UBC製品は、低発熱量の褐炭を原料にしながら、瀝青炭と同等の発熱量を持ってお

り、高効率微粉炭焚ボイラーでも充分使用可能である。利用価値の殆ど無い水分60%程

度の褐炭であってもUBC製品の発熱量は維持することが可能であり、UBCの特長の

一つである。

また、日本をはじめとする各国の発電所において容易に使用できるよう、ハンドリン

グ性を向上し、通常の石炭と同様の輸送(海上および構内)が可能となっている。特に、

油分による処理により褐炭のもつ自然発熱性を抑制し、撥水性を持たせている。(表2

-1参照)

表2-1 原料褐炭とUBC製品および瀝青炭の性状比較

褐炭(原料) UBC製品 参)瀝青炭

水分 35% 60% 8~10% 10%前後

発熱量 4,200kcal/

kg

2,300kcal/

kg 6,000kcal/kg 6,300kcal/kg

用途 山元発電、

近隣向出荷 (山元発電) 国際市場向 国際市場向

輸送 自然発熱傾向大 撥水、成型、

安定化 安定

灰 4% 8% 4%、 8% 12~13%

硫黄 0.2% 0.3% 0.2%、0.3% 0.5~0.8%

脱水 +安定化

脱水後の軽質油 (アスファルト分が UBC粉に吸着され、 色が薄くなっている)

水蒸気 脱水前の アスファルト 添加軽質油

水蒸

アスファルトが UBC粉の細孔内に 選択的に吸着される。

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(1) 開発段階における実証設備(DP)の位置づけ

本技術は褐炭液化プロセスの事前処理としてのスラリー脱水技術を応用したもので、

1990年代より褐炭の改質への適用の研究を開始した。ビーカーサイズでの実験に始まり、

その後、ベンチスケールユニット(BSU)によりプロセスの安定性を確認した。更に2000

年代に入り、パイロットプラント(PP)により大型化のためのエンジニアリングデータを

取得してきた。

今回の実証段階は商業化に向けた最後の開発段階であり、実証プラントは商業機の10

分の1以上の規模となるよう600t/d規模とし、これにより、商業段階でのスケールアッ

プリスクのミニマイズを図ることとした。

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

褐炭液化事前処理

パイロットプラント

基礎研究15L A/C

プロセス開発(BSU)

0.1t/d、バッチ式

プロセス開発(2)(PP)

3t/d、連続式、屋内

大規模実証 (DP)

600t/d、連続式、屋外

商業機

3000~5000t/d

設計・建設 運転     適宜運転

協議中

協議中

図2-3 UBCの開発経緯

(2) 開発目標の設定

商業化の実現のために必要な下記の項目を確認・実証する。

1. 【技術の確立】商業用大型機の設計・操業技術を確立する。

商業機の規模としては3000~5000t/d程度を想定している。(現在未着手の褐炭

鉱区の開発となる場合は段階的な操業拡張を要望されることもあり、3000tを最

小単位として新たに検討に加えた。)

2. 【経済性把握】FS 精度を向上し、商業機の経済性を確認する。

DPの操業を通じて原単位等の精度を向上するとともに、この間に得られた設計

データに基づいてプラント建設費を把握する。これらを踏まえた経済性計算を

行い、商業機の採算性を確認・評価する。

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3. 【市場性把握】試験出荷により利用性を確認する。

サンプル製品を製造し、実機での製品燃焼およびハンドリングへの適合性を確

認する。

更に、以上の開発目標を達成するために、各々について以下の定量的目標を設定した。

表2-2 定量的目標

項目 目標値 設定理由

大型化

技術の

確立

80%負荷率以上での運転お

よびデータ取得

スケールアップのための設計・操業条件を確認し、

エンジニアリングデータを取得する。

1000時間連続運転 運転保全技術を確立し実証するために、長期連続運

転を行う。連続時間数は目処として設定。

経済性

把握

商業機改質コスト $15/ト

ン(石炭費は除く)

瀝青炭と熱量等価の販売を前提に、採算性が十分確

保できると想定されるレベルとした。

市場性

把握

製品品質 6000kcal/kg以

上・全水分10%以下

日本の発電所で使用されている豪州瀝青炭(5730~

6900kcal/kg、水分6~18.5%)と同程度とする。

5000トン規模での海上輸

送実績

バラ積み船による輸送、揚地でのハンドリング、ボ

イラーでの使用評価のために十分な量とする。

商業機での利用実績(混炭

率20%以上)

灰付着性、粉砕時の発火の可能性等を勘案し、目標

混炭率を設定した。

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3.成果、目標の達成度

3-1 成果

3-1-1 全体成果

平成18~21年度にかけ実証プラント(DP)の建設・運転を行う当初計画に対し、平

成21年度の機器破損の影響により、平成22年9月末まで半年間の期間延長を行った。

また、平成22年7~8月の大雨の影響および4月、6月の改造工事等により若干スケジュ

ールが遅延したが、同年10月以降は自主事業として実証運転等を継続して実施してい

る。

H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度

設計・建設試運転・運転

(自主運転)

高負荷運転連続運転製品評価

成型機破損トラブルにより6~9月

にかけて停止7~8月の記録的豪雨により原炭

供給減少

※ 1 事業計画変更により、平成 22 年 3 月末より同年 9 月末まで期間を延長した。

※ 2 平成 22 年 10 月より㈱神戸製鋼所自主事業として継続中である。

図3-1 プロジェクトスケジュール

図3-2 実証プラント(DP)の竣工(平成20年12月)

3t/dパイロ

600t/d実

600t/d実証プラント

(サツイ)

3t/dパイロットプラント (パリマナン)

※1

※2

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DPの操業は平成20年11月より開始し、平成20年度中は各機器の基本性能の確認に

重点を置いて操業したため、運転時間は合計164時間、石炭供給量は合計1784トンに

止まった。平成21年4月から平成22年9月の1.5年間は、成型機の稼動不安定、能力不

足、破損事故等の対応に追われながらも、運転時間合計2,145時間、石炭供給量は合

計25,327トンとなった。平成22年5月以降、成型機の増設と改造により運転が安定し、

7-8月にはバルク出荷用に約4,000tを生産した。

平成22年10月以降も自主運転により、高負荷運転・連続運転の目標達成に向けて操

業継続中である。11月21日までの運転により、最長連続運転14日=321時間、高負荷80

%運転累計80時間(内連続運転48時間)を達成している。(詳細については表3-1、

3-2、および図3-3を参照)

表3-1 大型実証プラント操業実績 年度

Run Date石炭運転時間 hr

石炭供給量 ton

負荷%

運転目標 運転成果と主なトラブル

1 '08年11月7~11日 1.7 10 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、ドライヤー機械トラブル

2 '08年11月26~30日 13.2 134 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、デカンタ潤滑油トラブル

3 '08年12月9~19日 19.1 183 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、成型工程調整不良

4 '09年1月15~20日 28.5 278 30-50 基本性能確認+負荷アップ 石炭供給50%負荷。成型工程調整不良

5 '09年2月2~10日 27.5 350 30-60 基本性能確認+負荷アップ 石炭供給60%負荷、蒸気ボイラートラブル

6 '09年3月2~5日 24.6 290 30 基本性能確認+負荷アップ 成型機を含む30%負荷連続運転確認

7 '09年3月12~14日 28.8 296 30 プロセス性能確認 30%負荷での蒸気コンプレッサ連結運転

8 '09年3月24~28日 20.7 270 30-60 ブリケット仕様確認 ブリケット仕様確認

9 '09年4月15~4月29日 39.4 574 30 50 63 C-201連結運転手法の確立 石炭供給63%負荷、BM-502粉の安定供給。

10 '09年6月9~6月21日 37.6 563 50-63BM-502改造効果確認、C-201連続24時間運転

C-201連続運転。BM-502ロールタイヤ破損。

11 '09年9月 9~9月15日 25.1 375 50BM-502改造効果確認、生炭ブレンド試験

生炭ブレンドによりブリケット強度向上。BM-502タイヤのズレ発生。

12 '09年10月5~11月28日 259.6 3,011 30-50生炭ブレンド、運転条件最適化、製品評価試験用サンプル(75トン)の製造・出荷

製品サンプル(75トン)製造・出荷。400sec.バグフィルターフレキ破損。

13'09年12月27~ '10年1月20日

335.5 3,368 30製品評価試験用サンプル(1500トン)の製造・出荷

製品サンプル(1500トン)の製造・出荷

14 '10年3月16~4月8日 104 1,294 50-30新設BM-501立上げ。BM-502改造効果の確認。 アーモンド型ブリケットの評価

BM-501安定運転困難。

15 '10年5月3~5月15日 134 1,544 30-50500sec.UBC加湿化、及び、成型機の改造効果の確認

BM-502のブリケット強度改善。加湿の効果確認。

16 '10年5月19~6月12日 300.7 4,01130-50、

80製品安定化の為のパイル手法確立、高負荷トライアル運転

80%負荷運転時にD-301のショックロード・トリップ。

17 '10年7月7~8月15日 634.8 7,193 30-40ブリケット空冷設備運転。製品評価試験用サンプル(4000トン)の製造・

約3900トンのUBCを製造。D-301バイパス運転。

18 '10年9月9~9月28日 273.9 3,394 30-50 高負荷/連続運転 C-201軸振動トラブル等により中断。

18-③

'10年10月4日~11月3日 492.0 7,965 30-80

高負荷/連続運転 連続運転12日(約280時間、10/22-11/3)。内、80%負荷×47時間保持。循環ガス系条件設定ミスで中断。

18-④

'10年11月7日~21日 328.3 6,27750-63、

80

高負荷/連続運転 連続運転14日、321時間(11/7-11/20)。内、63%負荷×100時間保持。D-301トラブルにより停止。80%負荷は5時間。

H20

H21

H21 繰 越

H22

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表3-2 DPの主な補修・改造工事

'09年5-6月 成型機ホッパー等供給部改造(運転安定化)製品冷却コンベア速度可変化・散水増強(製品安定化)

'09年6-9月 成型機ロールタイヤ破損復旧工事(日本にて再製作し据付)'09年12月 沈漬冷却機設置工事(高負荷運転時用)'10年2-3月 2号成型機設置工事(成型能力不足対応。補助事業予算外で実施)'10年4月 成型機および周辺改造(成型強度向上、品質安定化)'10年6月 製品冷却コンベア増設、パイルヤード整備(サンプル製造・出荷準備)

主な改造・補修等実績

図3-3 DP累計運転時間と石炭供給量の推移

DPの原料褐炭は、隣接する鉱区のA炭(全水分約35%)を用いた。一方、平成20

年の石炭価格高騰と前後して、水分30%台の褐炭については、インド、中国およびイ

ンドネシア国内向に市場が形成されてきた。このため、改質のニーズのより大きい高

水分の褐炭として、南スマトラのB炭(水分約60%)を対象に本技術の適用可能性を

検討することとした。

まず、サンプル炭1tを入手し、オートクレーブおよびBSUによる試験を平成21

年6月から9月にかけて実施した。この結果、本技術が適用可能であるとの結果を得た

ため、平成22年2月にはサンプル炭40tを入手してPPによる試験を実施し、延べ8日

間の運転によりプロセスデータ等を採取した。これらの結果について、表3-3に概

27,111 t

41,353 t

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

Sep

-08

Dec

-08

Mar

-09

Jun-

09

Sep

-09

Dec

-09

Mar

-10

Jun-

10

Sep

-10

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000累積石炭使用量

累積運転時間

出荷用サンプル製造

製品パイル手法確立出荷用サン

プル製造

成型機破損トラブル

ton hr

成型機増設(予算外)

高負荷・連続操業

→2010.10月~  自主事業

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要をまとめた。今回の商業機FSの前提となる建設・操業のコスト概算のためには、十

分なデータが採取できた。

なお、DPでのA炭を原料とした製品の性状は表3-4の通り、水分8.3%(目標10%

以下)、発熱量6,052kcal(目標6,000kcal)となった。また、PPでのB炭を原料とし

た製品の性状についても同表に記載した通り、ほぼ同等の水分、発熱量となった。

表3-3 水分60%褐炭への適用性評価

セクション 結果

#100 粉砕 表面水が多いため粉砕機の選定に留意する必要が示唆された。

#200 脱水 原料褐炭の水分(60.5%)に対し、95%以上の脱水率を確認した。

#300 固液分離 デカンター後の粉の含油率が高い傾向があり、回収率を上げるために

設計の最適化が必要。 #400 油分回収

#500 成型 成型性は良好。強度はA炭の製品並み。

#550 貯炭

全般 PP試験炭の「代表性」の確認

表3-4 原料褐炭およびUBC製品の性状

分析

DPによる製品性状

(原料:A炭)

PP試験結果

(原料:B炭)

原炭 UBC製品 原炭 UBC製品

水分 [%]到着ベース 32.5 8.3 60.5 7.3

灰分 [%]到着ベース 4.0 4.0 3.6 6.1

揮発分 [%]到着ベース 32.7 44.5 20.1 48.3

固定炭素 [%]到着ベース 30.8 43.2 15.8 38.0

元素

分析

炭素 [%]無水無灰ベース 72.72 73.41 69.0 72.8

水素 [%]無水無灰ベース 5.05 5.09 4.9 5.1

窒素 [%]無水無灰ベース 1.20 1.06 0.9 1.1

硫黄 [%]無水無灰ベース 0.40 0.16 0.26 0.18

酸素 [%]無水無灰ベース 20.63 20.28 25.0 20.7

高位

発熱量

[kcal/kg]

到着ベース 4,349 6,052 2,328 5,998

(1) 大型化技術の確立

80%以上の高負荷運転については平成22年10月以降の自主操業においても鋭意推

進中であり、11月21日までに延べ64時間実施した(表3-5参照)。この間、重要な

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設計・操業条件を把握することができた。具体的には、①回収蒸気への飛沫混入防止

方法見直しによるプロセスの安定性向上、②遠心分離器周辺の設計最適化、油分乾燥

機の循環ガス圧力条件の最適化等の成果を得ることができた。

マテリアルバランスの問題から蒸気供給量が不足する傾向が判明しているが、引続

き高負荷での運転による設計・操業データの取得を進める予定である。

表3-5 高負荷(80%以上)運転実績

一方、連続運転については、平成22年9月末までの最長連続運転時間は156時間であ

った。平成22年10月以降の自主操業において引続き推進中であり、11月7日より20日

まで14日間、321時間の連続運転を行った(表3-6参照)。操業中断の原因は、プ

ロセスに起因するものではなく、プロセスの安定性については確認することができた。

今後も機器設備面での安定性を実証していく予定である。

表3-6 連続運転実績

Run 時期 負荷 連続運転時間 備考(停止理由等)

Run13 ‘09年12月27~1月20

30% 109hr、

07hr、119hr

設備点検等で都度中断

Run15 ‘10年5月10~15日 30% 119hr 発電機トラブル

Run16 ‘10年6月4~12日 30-80% (192hr*) 予定改修工事実施

(*途中短時間の停止3回あり)

Run17 ‘10年7月10~17日 30-38% 156hr 設備メンテナンスのため中断

Run18 ‘10年10月5~10日 47-63% 116hr 機器トラブルのため中断

10月27~11月2日 47-80% 160hr 機器トラブルのため中断

‘10年11月7~20日 50-63、80% 321hr 機器トラブルのため停止

Run 時期 負荷 運転時間 備考

Run12 ‘09年10月30日 80% 4hr

Run16 ‘10年6月8~12日 80% 8hr デカンタの制御不良のため配管を改善。

Run18 ‘10年11月1日~11

月3日

80%

47hr

操業条件設定ミスのため停止。蒸気回収

時の粉混入のためコンプレッサーの上

流設備を手直し。

11月20日 80% 1hr 計器トラブルのため停止

11月21日 80% 4hr 機器トラブルのため停止

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21

(2)市場性把握(製品利用性評価)

(2)-①ハンドリング性評価

UBCは、輸出船積みから荷揚げ、貯炭からボイラーに至る過程において、通常の石

炭と共通の設備によりハンドリングできることを目標としており、粉じん対策と自然

発熱に留意が必要である。

粉じんについては、一般に石炭のハンドリング時における発塵対策として、水また

は界面活性剤水溶液の散布が行われている。UBCは撥水性が高く,水を散布(または噴

霧)しても濡れないため、界面活性剤水溶液の散布による発塵対策について検討、実施

した。DPにおける実機試験に先立ち、日本メーカー(複数)の3種類の界面活性剤を

用いた基礎試験を行った。対象試料を微粉砕し、界面活性剤水溶液の表面に散布して沈

降時間を測定する「濡れ性試験」の結果、UBCに対しても有効であること、濃度が高い

ほど効果が大きいことが確認された。

実機レベルで界面活性剤水溶液を散布して発塵を抑制するには,UBCに対し効率的に

水溶液を散布させる必要がある。貯炭中のパイルに水溶液を散布してもパイル表面のみ

が濡れ,パイル内部に水溶液が浸透しないためUBC全体を効率的に濡らすことはできな

い。石炭をコンベヤで搬送する際に界面活性剤水溶液を散布する方法が一般的に採用さ

れており,コンベヤを用いた界面活性剤水溶液の散布試験を行った。さらに,その持続

効果についても検討を行った。尚、これらの実験にあたっては、効果を明確化するため

に露天で長期間放置した微粉の多いUBCを用いた。また、界面活性剤は近隣の石炭会社

で使用されている日本メーカーA社の製品を用いた。

カメラ

カメラ

ダンピング時の発塵

振動コンベア ベルトコンベア

0.3W*6.3mL*30m/min

界面活性剤水溶液散

図 3-4 界面活性剤散布試験の概要

コンベヤ速度

0.5m/sec

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22

この結果、以下のことが明らかとなった。

・ UBC は撥水性があり単独では水となじまないが,界面活性剤を加えることにより親

水性となり水になじむ。

・ 界面活性剤水溶液を効率的に UBCに散布することにより、UBCを濡らすことができ、

発塵が抑制できる。

・ 散布方法は、ベルト上もしくはスクリーン上などで積層が少ない場所、またはベル

トからの落下部分などが効果的である。

・ 界面活性剤濃度および散布量は、通常の石炭用のメーカー推奨条件で十分効果が認

められた。

・ 界面活性剤水溶液を散布した UBC は保管(貯炭・輸送)中に水分が蒸発し再び発塵

するようになるが、水のみの散布で発塵が抑制できる。

表3-7 界面活性剤散布試験結果

No 薬剤水溶

液濃度

[wt%]

水溶液散布

箇所

水溶液散

布量

薬剤散布量 効果

(散布後のUBCをホッ

パに投入する際の発

塵状況) (wt% vs

UBC)

(ppm vs

UBC)

A 0.35 2箇所 1.6 55 大

発塵はほとんど無い

B 0.35 1箇所 0.8 28(半量) 中

発塵はある程度抑制

された。

C 0.35 2箇所 0.8 28(半量)

D 0(水) 2箇所 1.6 0

これらの事前実験を踏まえて、平成22年10月にばら積みUBCのテスト出荷を行った。

出荷先は新潟県糸魚川市の独立系発電事業会社「S社」で、出力50MWのCFBボイラ

ーを運転している。UBCプラントからボイラーに至るまでのスケジュールと物流ルー

トを図3-5、3-6に示す。

散布前UBCの発塵 散布後のUBC投入

写真 実験における界面活性剤散布効果

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①UBCデモプラント(インドネシア)

②現地港

③バージ

④本船

⑤サミット明星パワー(日本)

2010年9月 2010年10月 2010年11月

DPで保管9/24-10/2現地港へ移送界面活性剤散布

9/26-10/17現地港で保管

10/18-10/20バージへ積み込み界面活性剤散布

10/19-21バンジャルマシン沖へ移送

10/21-23本船へ積替え

サミット明星パワーで保管

11/15- 燃焼試験開始

10/24-11/8日本へ移送

11/9サミット明星パワーへ荷揚げ

IPP事業者

S社(新潟県糸

魚川市)

糸魚川市姫川港で

荷揚げ、S社に

 搬送し、貯炭。

プラント

バージ輸送 (自走式×1、タグ式×1)約36時間 (サツイ川→Taboneo)

バージポート

本船積み替え(於 Taboneo Anchorage)

① ②

糸魚川市 姫川港

南カリマンタン

連続式アンローダー

能力1,000t/h

IPP事業者S社

循環流動層ボイラー

図3-6 ハンドリング ルート

図3-5 ハンドリング試験スケジュール

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発塵については、プラント出荷時とバージ積前の2度にわたり界面活性剤を散布し、バ

ージ出荷までは発塵を十分抑制することができた。バージから本船への積替時には界面

活性剤が乾燥しており、沖合いでの積み替えのため散水も困難であったために、荷役時

のバケットクレーンの操作を工夫して可能な範囲で発塵を抑制した。

本船輸送については国際海事機構の規定に則り行い、特段の問題は生じなかった。ガ

ス計測は規定よりも頻度を上げて1日2回実施し、また、特別に温度計を船倉内のUBCに

設置して自然発熱について十分モニターしながら輸送した。計測の結果、積みこみから

数日経過後に、温度上昇と酸素量減少、一酸化炭素濃度増加が観測された。部分的には

60℃程度まで温度上昇したが、酸素濃度が殆どゼロになり温度は安定傾向となった。

(図3-7、3-8参照)

20

30

40

50

60

70

80

23.10

.10

24.10

.10

25.10

.10

26.10

.10

27.10

.10

28.10

.10

29.10

.10

30.10

.10

31.10

.10

01.11

.10

02.11

.10

04.11

.10

05.11

.10 日付

℃ 全平均

最大値

最小値

図 3-7 海上輸送中の温度測定結果

0

5

10

15

20

25

23-O

ct

24-O

ct

25-O

ct

26-O

ct

27-O

ct

27-O

ct

29-O

ct

30-O

ct

31-O

ct

1-Nov

2-Nov

3-Nov

4-Nov

5-Nov 日付

0

200

400

600

800

1000

PPMO2 (%)

CH4 (%)

CO2(%)

CO (PPM)

図 3-8海上輸送中のHold内ガス濃度測定結果

CO計測上限=1000 PPM

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25

荷揚げは連続式アンローダーにて行われた。実績の時間あたり荷役量は400~500tで

あり、事業用発電所での荷役効率と比べて遜色ない効率である。荷役中の発塵について

も、出荷時の界面活性剤の効果で、船倉内の散水により十分抑制することが出来た。但

し、貯炭後数日後には界面活性剤は乾燥しており、更に船内での重機使用による粉化も

加わり、貯炭ヤードにおいては粉塵が容易に発生しうる。従って、乾燥を避けるように

常時散水を行い、適宜界面活性剤を追加散布する必要がある。

揚げ地での貯炭についても温度のモニタリングを実施している。荷揚げから10日経過

時点で部分的な温度がみられたが、散水・配置替え・填圧等、通常の石炭と同様の対策

によりコントロール可能である。尚、貯炭期間は3ヶ月程度の予定であり、長期貯炭に

対応するためシートによる覆いをしている。(図3-9 参照)

以上、現地の工場出荷から客先での貯炭運炭まで約2ヶ月にわたり、大型船での出荷

と同様の工程を経てハンドリング性を評価した結果、適切な管理により問題なくハンド

リング可能な事を確認することができた。

20

30

40

50

60

70

80

2010

/11/

13 朝

2010

/11/

15 朝

2010

/11/

16 朝

2010

/11/

17 朝

2010

/11/

18 朝

2010

/11/

19 朝

2010

/11/

19 夕

2010

/11/

20 夕

2010

/11/

21 夕

2010

/11/

23 朝

2010

/11/

24 朝

2010

/11/

25 朝

2010

/11/

26 朝

2010

/11/

27 朝 0.

0

日付

℃平均

最高地点

図3-9 貯炭場温度推移

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写真 バラ積み出荷試験の実施状況

本船Gloriosa(10KT型バルク船)に

横付けしたUBCバージ

荷役は10月21~23日に行われた。

左 バージ内のUBC荷役

状況

右 船積み終了後の熱

電対(温度計)設

置作業

左 糸魚川(姫川港)

連続式アンローダー

右 本船内荷役状況

左 屋内仮貯炭場

右 屋外貯炭ヤード

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(2)-②燃焼性評価

UBCは褐炭を油中脱水したもので、燃料比(燃料中の固定炭素分/揮発分)が低く(約

0.9)、灰の溶融点も1200℃程度と低い。このような性状のUBCについて、火力発電用燃

料としての製品評価を行うために実規模のボイラ(実缶)を用いた燃焼試験を実施する

必要がある。

まず、事前に、実証試験設備で製造したUBCの小規模での粉砕及び燃焼試験を行い、

粉砕性、燃焼性について評価・検討した。微粉炭ボイラで使用されるのと同じ形式の粉

砕機(ローラーミル)による粉砕試験を行い、粉砕挙動を確認した。また、微粉炭燃焼

炉による燃焼試験を行い、UBC混炭率及び2段燃焼率が燃焼性に与える影響について把握

した。混炭の相手となる瀝青炭には豪州の瀝青炭を用いた。それぞれの性状分析値につ

いては表3-8の通りである。

表3-8 工業分析・元素分析比較

瀝青炭瀝青炭

粉砕性については、UBC混炭試料の粉砕の動力原単位は、国内の石炭火力で通常使用

されている石炭を粉砕した際の動力原単位の範囲内であること、およびUBCの混炭率が

高くなるほど減少することが確認された。尚、粉砕粒度については混炭率の影響は殆ど

見られなかった。また、ミル振動(ミルの上下方向の振動)は、UBC混炭率の増加とと

もに若干大きくなったが、国内の微粉炭火力で使用されている瀝青炭の範囲内には収ま

っていることが確認できた。

燃焼性については、灰中未燃分濃度は、UBC混炭率が増加することで急激に低下する

ことがわかった。未燃焼率についても、UBC混炭率が増加することで低下しており、UBC

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を混炭することで燃焼性が向上していることが確認できた。これは、UBCが瀝青炭に比

べて揮発分が多く、燃え切り性に優れているからであると考えられる。排ガス特性につ

いては、UBCの混炭率が増加するとNOxが低下した。一方、SOxについてはあまり変化が

無かったが、燃料中の含有量に大きな差が無かったためと考えられる。

(図3-10~3-13参照)

図3-10 UBC粉砕性 図3-11 UBC燃焼性

図3-12 排ガスNOx濃度 図3-13 排ガスSOx濃度

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実缶燃焼試験は、㈱神戸製鋼所加古川製鉄所の微粉炭焚ボイラ(自家発電用)を用

いて行った。実缶燃焼試験で用いた微粉炭焚ボイラを図3-14に示す。実缶燃焼試

験は2段階に分けて行った。まず、石炭の乾燥粉砕から炉内吹込みまでの状況を確認

するために、単体ミル試験を行った。この試験では、豪州の瀝青炭にUBCを5,10,15,20

%(重量ベース)になるように混炭した石炭(UBCブレンド炭)を微粉炭焚ボイラの4

つあるうちの1つのミルにのみ供給した。UBCブレンド炭は各混炭率で約160t製造し、

燃焼試験は概ね12時間連続で行われた。混炭は重機(ホイルローダ)を用いて行った。

単体ミル試験では、実缶燃焼試験に向けた予備試験として、UBCブレンド炭の粉砕

時のミルの各種操業結果を瀝青炭粉砕時の結果と比較し、UBCブレンド炭の水分含有

量と給炭可能量についてのデータを取得した。

<自家発電設備仕様>出力 145MW蒸発量 450t/h蒸気条件 17.1MPa×569/541℃ボイラ燃料 石炭(微粉炭)、COG運転開始 1996年

図3-14 ㈱神戸製鋼所加古川製鉄所の微粉炭焚ボイラ(自家発電用)

UBCミルの運転状況を図3-15に示す。試験中ミル出口温度は75℃、ミル入口温

度は200~210℃で運転を行うことが出来た。表3-9にはUBC各混炭率におけるミル

運転状況に関する一覧表を示す。表3-8に示すようにミル振動、ミルモーター電流、

ミルテーブル差圧については瀝青炭専焼時に比べて大きな変化はなかった。

給炭量に関しては、ミル入口温度200℃で概ね13t/hであり、他のミルで供給されて

いる瀝青炭も同じく13t/h程度であった。また、UBC15%混炭試験から設備側の問題で

負荷を下げた運転(発電量145→125MW)を余儀なくされたが、UBC20%混炭時には使用

しているNo.4ミルの給炭量を増加させ、その他のミルは給炭量を落とすことで負荷を

維持するという方法で、UBCブレンド炭の供給負荷確認試験を行った結果、石炭中水

分含有量10%、ミル入口温度210℃において給炭量14.5t/hでの操業が可能であること

を確認した。これによって4ミルすべてにUBCブレンド炭を供給した場合には145MWの

発電が可能であることが把握できた。

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図3-15 ミル入口熱風温度、ミル出口温度、発電量のトレンド

(※No.4ミルの給炭量増加操業)

表3-9 UBC混炭率とNo.4ミル運転状態の一覧表(実験中の値)

UBC混炭率 0% 5% 10% 15% 20%

実施日 ‘10/1/28 ‘10/1/29 ‘10/2/3 ‘10/2/5 ‘10/2/8

発電機電力MW 144.4 143.8 143.7 123.9 125.0

水分含有率% - 8.3~10.6 8.0~10.4 9.1~10.7 9.7~10.8

給炭量t/h 13.0 12.9 13.0 11.5 14.5

ミル振動μm 24.0 22.2 25.2 23.4 24.9

ミルモータ電流A 53.3 53.4 53.1 51.4 54.9

ミルテ-ブル差圧kPa 1.91 1.91 1.92 1.73 2.06

単体ミル試験によって、UBCブレンド炭の乾燥粉砕から炉内吹込みまでの状況を確

認できたため、次に全ミルを用いた実缶燃焼試験を行った。UBC混炭率20%は、灰付着

性、粉砕時の発火の可能性等を勘案して設定した。UBC20%(重量ベース)混炭条件

における商業機利用時の発電状況、石炭粉砕ミルの挙動、燃焼排ガスの性状、燃焼性、

炉内灰付着状況について確認した。

実缶燃焼試験を実施した加古川製鉄所の微粉炭焚ボイラ(自家発電用)は、図3-

14に示したものである。蒸発量450t/h、定格発電量145MWの微粉炭焚きボイラ(三

菱重工製)であり、1996年に運転を開始している。燃料の石炭は構内の石炭ヤードか

ら25tダンプで運搬され、受入ホッパーに供給される。受け入れた石炭はベルトコン

ベアで各ミルの直上にある石炭バンカーに移送され、バンカー底部から石炭供給機で

石炭粉砕ミルに定量供給される。当ボイラが保有する石炭粉砕ミル(竪型ローラーミ

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ル)は4台であり、ミルで粉砕・乾燥された微粉炭は一次空気によって、火炉の四隅

に四段に設置されているバーナーに気流輸送されて燃焼される。また、副生ガスであ

るCOG用のバーナーも設置されており、余剰が生じた場合に混焼できるようになって

いる。燃焼試験で確認すべき項目(ミルの挙動変化、炉内燃焼状況など)を試験フロ

ー図(図3-16)に示した。

燃焼試験で使用した燃料は、これまでの試験と同様に豪州の瀝青炭にUBCを20%(重

量ベース)になるように混炭したブレンド炭である。実缶燃焼試験では、予め混炭し

た状態でUBCブレンド炭を原料ヤードに7500t貯炭し、使用量に応じて当ボイラに運搬

した。使用した瀝青炭、UBC、UBCブレンド炭の分析結果を表3-10に示す。混炭時

に強い雨が降ったため、UBCブレンド炭においては石炭中水分量が上昇した。その他

の項目は、概ね比例配分による予想と一致した。

実缶燃焼試験は4/12~22の11日間(内、全ミル使用は7日)連続(24時間連続)で

行った。試験日程(実績)を表3-11にまとめた。4/12にUBCブレンド炭のボイラ

への供給を開始し、1日に概ね1基ずつUBCブレンド炭を供給するミルを増やして、4/16

に全ミル(4基)にUBCブレンド炭を供給して4/22まで燃焼試験を行った。試験において

は、炉内燃焼挙動を把握するために、2箇所の炉内観察窓を用いて炉内温度・ガスを

測定した。また、灰付着プローブを用いて灰の付着状況を調べ、飛灰、炉底灰をサン

プリングして分析を行った。電気集塵機(EP)の入口・出口で煤塵濃度測定を行い、

集塵率を求めた。

図3-16 実験燃焼試験フローと確認項目

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表3-10 瀝青炭、UBC、UBCブレンド炭(20%)の各種分析結果

銘柄 瀝青炭 UBC UBCブレンド炭

工業分析

水分 % 10.57 8.83 12.55

灰分 wt%-DB 12.86 6.26 11.53

揮発分 wt%-DB 35.60 48.94 37.60

固定炭素 wt%-DB 51.54 44.80 50.88

組成分析

C %-DB 72.70 68.71 72.18

H %-DB 5.04 5.01 5.07

O %-DB 7.14 18.95 8.99

S %-DB 0.64 0.24 0.56

N %-DB 1.62 0.83 1.70

発熱量

総発熱量 kcal/kg-DB 7094 6465 7034

真発熱量 kcal/kg-WB 6038 5594 5837

溶融性(酸化雰囲気)

軟化点 ℃ 1056 1183 1313

溶融点 ℃ 1480 1220 1416

溶流点 ℃ >1550 1273 1421

HGI 56 81 62

表3-11 試験日程(実績)

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実缶燃焼試験結果について、表3-12に主要プロセス値の1日平均値を示す。比

較のために瀝青炭で操業した4/7の数値も表中に示した。石炭中水分量は貯炭中から

試験終了までの期間に強い雨が何度か降ったことで、最大16%を超えており、全ミル

試験中も15%を下回ることはなく推移した。この石炭中水分量は石炭粉砕ミルの設備

仕様を大きく超えており、その結果、給炭量の低下を余儀なくされた。

しかし、4/17よりミル入口温度を上げたことで発電量は徐々に回復し、最終日の

4/22には116MWとなった。このときの全ミルへの給炭量は49.8t/hであり、ミル1基あ

たり12.5t/hの給炭量で操業できた。石炭水分はほとんど変わっていないことから、

発電量が向上したのはミル入口温度を上げたことと操業上、給炭量を適正化できたた

めと考えられる。今回得られた操業データから、石炭中水分量が12%以下であれば定

格発電量145MWの操業が可能であるという見込みを得ることが出来た。

UBCブレンド炭使用におけるミル運転状態についても表3-12 に示している。

UBCブレンド炭使用時のミルモーター電流、テーブル差圧、一次空気量の状況につい

ては、上述した通り、石炭中水分が高いため給炭量が低下し、ミルモーター電流は低

下している。定格の給炭量が出ていた4/7の電流値と比べると、発電量に対して電流

値は若干高めのようであったが、問題となるような状況ではなかった。また、テーブ

ル差圧は給炭量低下に伴う一次空気流量の減少によって低下しているが、こちらの方

もミル運転状況に問題はなかった。

ミル振動については、瀝青炭使用時と変化は見られず、有意な振動は実缶燃焼試験

中の11日間を通じて一度も発生しなかった。逆に、瀝青炭使用時に振動の大きかった

がミルが、UBCブレンド炭使用によって振動が低下し、他のミルと同程度となった。

UBCブレンド炭のHGIは表3-10 に示すとおり62程度であり、粉砕しやすくなった

ことがひとつの理由と考えられる。

排ガス性状については、負荷の低下と共に脱硫前SOx、脱硝前NOx濃度は低下した。

SOx濃度に関しては石炭中全S分で排出量が決まるので、負荷下げとともに低下したと

考えられる。UBC中の全S分は瀝青炭のそれに比べて低い場合が多いので、定格であっ

ても混炭することでS含有量が低下してSOx濃度は低下することが期待できる。

低負荷時には一次空気量を一定量以上確保するように運転されることになっており、

排ガス中酸素濃度は上昇する。NOxに関しては、瀝青炭専焼での低負荷運転時の場合

は炉内燃焼場の酸素分圧が上昇するため、排ガス中NOx濃度が上昇する傾向が見られ

た。一方、UBCブレンド炭燃焼時には排ガス中酸素濃度は上昇しているが、NOx濃度は

むしろ低下している。このことから、UBCをブレンドすることでNOxの生成が抑制され

ることが予想できた。

電気集塵機(EP)入口・出口の煤塵濃度測定は、瀝青炭専焼時の4/7とUBCブレンド

炭燃焼時の4/17に行った。結果を表3-12の下段に示す。UBCブレンド炭燃焼時は

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瀝青炭専焼時に比べて負荷が70%程度であったが、集塵率はどちらも99.6%で変わりな

かった。飛灰性状についても確認したが、今回の混炭割合では電気集塵機の集塵性能

に影響を与えることはないことがわかった。

運搬性(コンベア、バンカー部の付着・堆積)については、バンカー排出部で一時

的な石炭の棚吊りが確認されたが、UBCの影響ではなく、降雨による石炭中水分増加

の影響と判断された。水分量を管理すれば20%以上も可能と思われる。

表3-12 瀝青炭(4/7)とUBC20%ブレンド炭(4/17-4/22)使用時の主要プロセス値

およびミル運転状態、排ガス性状の一覧表

4/7 4/17 4/18 4/19 4/21 4/22

給炭量 t/h 55.1 39.6 41.6 42.8 45.4 49.8

石炭中水分 % 12.7 15.9 16.3 15.1 15.4 -

発電量 MW 144 97 102 106 112 116

蒸気流量 t/h 449 283 301 312 335 348

蒸気温度 ℃ 566 567 567 567 567 567

モーター電流 A 54 50 51 51 52 52

1次空気流量 kNm3/h 22.8 20.0 20.3 20.6 21.0 21.3

テーブル差圧 kPa 1.89 1.57 1.61 1.66 1.70 1.74

ミル入口温度 ℃ 222 217 223 222 219 224

ミル出口温度 ℃ 75 66 66 66 65 65

ミル振動 μm 22 16 16 16 16 16

炉出口酸素濃度 % 2.9 3.8 3.6 3.5 3.2 3.1

脱硝前NOx濃度 ppm 109 89 85 93 91 94

脱硫前SOx濃度 ppm 453 373 388 386 390 390

電気集塵機による集塵率 % 99.6 99.6 - - - -

※ 4/20はCOG混焼のため表には示していない。

次に、飛灰中の未燃カーボンを分析して、未燃率について調べた。未燃率Uc* [-]

は下式で定義される。

ここで、Ash:混炭後の灰組成[wt%]、Uc :灰中未燃カーボン[wt%]である。

図3-17に示す通り、UBC混炭割合が増加することによって飛灰中未燃カーボン

は減少し、未燃率も減少した。このことから、UBCの混炭によって燃料の燃焼性は向

上していると評価できる。

Page 48: 低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 · プロジェクト事後評価報告書. 平成23年3月. 産業構造審議会産業技術分科会

35

図3-17 飛灰中の未燃カーボンと未燃率

既設の観測窓から水管を模擬した灰付着プローブを炉内へ100分間挿入し、瀝青炭

専焼時およびUBC混炭燃焼時の水管への灰付着量について測定した。図3-18に灰

付着プローブの概略図と測定状況の写真を示す。プローブ温度はボイラ水管の温度

(約450℃)になるように冷却水量を調整した。図3-19に管に付着した灰の状況

を示す。UBCプレンド炭燃焼時の灰付着状況は瀝青炭専焼時と比べて大きな差はなく、

付着重量は急増していないことが確認できた。また、付着灰の一部は焼結していたが、

溶融スラグは形成されておらずデスラガーで容易に除去できると予想された。

図3-18 灰付着プローブの概略図と測定状況

UBC混炭割合に対する給炭量当たりの灰付着量の測定結果を図3-20に示す。図

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36

には単体ミル試験時の結果も参考として示した。測定の結果、UBCブレンド炭(20%)

燃焼時の灰付着量はやや増加する結果となったといえる。また、付着灰をSEM観察し

た結果から、UBCの混炭割合が増加するとバーナー近傍において溶融する灰粒子が多

くなったことが把握できた。このことは、灰組成分析値を用いた熱力学平衡計算の結

果、火炉内での灰中液相割合が増加することからも裏付けられる。しかし、最近の研

究では、灰の液相割合が60%程度までであれば、水管への灰付着率(衝突した灰が付

着する確率)が瀝青炭専焼時とほぼ同じレベルであり、それ以上の液相割合になると

灰付着量が急激に増加することが報告されている。図3-21に熱力学平衡計算で得

られたUBC混炭割合と灰の液相割合の関係について示す。UBC混炭割合20%、炉内温度

1300℃における灰の液相割合は60%台であり、したがって、給炭量当たりの灰付着量

はやや増加したものの、実缶燃焼試験時の灰付着挙動は想定した範囲内であったと考

えられる。

図3-19 プローブの灰付着状況 図3-20 給炭量当たりの灰付着量

図3-21 熱力学平衡計算で得られたUBC混炭割合と灰の液相割合の関係

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37

実缶燃焼試験結果について、混炭割合20%における石炭運搬性、粉砕性、炉内灰付着

性、NOx・SOx排出性、灰性状(灰中未燃分)の観点から評価を実施した。それらの評価

結果について表 に示す。今回使用した豪州瀝青炭との混炭では、混炭割合20%で問題

なく操業できることを確認できた。また、混炭する相手炭の性状によって混炭割合は変

化し、20%以上混炭の可能性もあると予想された。今回の実缶燃焼試験によって商業機

での利用実績が得ることができた。

表3-13 混炭割合の評価結果

評価項目 混炭割合の評価 備 考

運搬性

(コンベア、バン

カー部の付着・堆

積)

20%混炭で問題なし バンカー排出部で一時的な石炭の棚吊り

が確認されたが、UBCの影響ではなく、降

雨による石炭中水分増加の影響と考えら

れる。水分量を管理すれば20%以上も可能

と思われる。

粉砕性

(竪型ローラー

ミル)

20%混炭で問題なし ミル振動は瀝青炭使用時と同等以下であ

り、ミル電流他の状況も問題なく粉砕で

きた。

NOx排出性 20%混炭で問題なし

(20%以上も可能)

UBCは燃料比が小さく、N分含有量も少な

いため、混炭するほどNOx排出量は減少す

る。

SOx排出性 20%混炭で問題なし

(20%以上も可能)

UBC中の全S分は瀝青炭のそれに比べて低

い場合が多いので、SOx濃度は低下するこ

とが期待できる。

電気集塵機(EP)

による集塵率

20%混炭で問題なし 20%混炭までのEP集塵率は99.6%で瀝青炭

使用時と同じであった。

炉内灰付着 20%混炭で問題なし

(相手炭性状によって

は20%以上も可能)

バーナー部のスラッギング、SH部のファ

ウリングともに操業に影響するレベルで

はなかった。UBC混炭割合は混炭する相手

炭の灰性状を鑑みる必要があるので、灰

組成から求める灰の液相割合によって混

炭割合を決定することを推奨する。

灰性状

(灰中未燃分)

20%混炭で問題なし

(20%以上も可能)

UBCの混炭割合を増やすと燃焼性が向上

し、未燃分は低下する。UBC20%混炭時の

飛灰、炉底灰の灰中未燃分はともに5%未

満。

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38

(3)経済性評価

(3)-① 商業プラントの概念設計

DPの設計、建設、運転を通じて、3,000~5,000t/d程度の規模での商業化実現に向

けてのスケールアップ技術、長時間連続運転によるプラントの操業・保全技術の確立、

原単位等の把握、製品利用性の評価が実施されている。これらを掌握し、本プロセスを

利用した安定操作性、安全性、環境調和性能が期待できる商業プラントの概念設計を実

施した。改質対象石炭については、現在の市場環境においては改質しないと利用価値の

無い水分60%を含んだ褐炭とした。場所については、同国で褐炭資源が最も多く賦存し

ているスマトラ島内陸部を想定した。又、商業機プラントの設備規模は、炭鉱開発が段

階的に進む状況を想定して最小の商業生産規模と目される製品ブリケット生産量ベー

スで100万トン/年とした。

上記条件に基づき商業化プラント設計により得られたPFD及び物質収支、プラント

配置図を図3-22、3-23に示す。

Stream No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

Name Raw CoalWasteWater

GroundCoal

Coal SlurryDewatered

SlurryWasteWater

Recycle Oil UBC Cake Recycle Oil Fine UBC Recycle OilWasteWater

Recycle Oil Make Up Oil Fine Coal WTR VaporUBC

Product

Temp [℃] 25.0 45.0 25.0 58.8 135.0 45.0 45.0 135.0 135.0 200.0 45.0 45.0 82.5 25.0 30.0 120.0 120.0

Press [kPaG] 0.0 0.0 0.0 300.0 200.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

Dry Coal [ton/h] 120.3 0.0 117.9 149.1 149.1 0.0 0.0 117.9 31.2 117.9 0.0 0.0 31.2 0.0 2.5 0.0 120.3

Water [ton/h] 180.5 98.2 78.6 78.6 4.0 74.6 0.0 4.0 0.0 1.5 0.0 2.6 0.0 0.0 3.7 1.5 3.6

Heavy Oil [ton/h] 0.0 0.0 0.0 0.7 0.7 0.0 0.0 0.5 0.3 0.1 0.4 0.0 0.7 0.1 0.0 0.0 0.1

Light Oil [ton/h] 0.0 0.0 0.0 252.1 182.2 0.0 70.0 141.6 40.6 0.5 141.0 0.0 252.1 0.5 0.0 0.0 0.5

Total [ton/h] 300.8 98.2 196.4 480.5 336.0 74.6 70.0 263.9 72.1 120.0 141.4 2.6 284.1 0.7 6.2 1.5 124.6

#200Slurry

Dewatering

#300Coal-Oil

Separation

#400Coal-Oil

Separation

#100Raw CoalHandling

RawCoal

Make up Oil

Water

BriquttedUBC

Coal or Slurry

Oil

Waste Water: Flow No.

#500Briquetting

2

1 3 4 5

6714

13

9

8

11 12

10

16

15

17

図3-22 PFDおよび物質収支

図3-23

プラント配置図

(16ha)

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以上の商業プラントの概念設計に基づき、水分60%を含む褐炭の改質プラントの建設費を概算

した。また、現在の大型実証プラントの原炭に近い、水分35%を含む褐炭の建設費についても、

参考のため検討した。

一定の製品生産規模を実現するためには、水分60%の褐炭を原料とする場合は、水分35%の褐

炭に比べ、原料供給量が1.6倍、脱水量が2.8倍となる。このため、主に原料粉砕から脱水の各工

程を中心に能力の増強が必要となる。

これらの検討結果について、表3-14に示す。

表3-14 UBC商業プラント建設費

褐炭水分 原料供給量 製品生産量 建設費

35% 4,600 T/d 1.5 MMT/y 3,000 T/d 1.0 MMT/d US$ 130 MM

60% 7,220 T/d 2.5 MMT/y 3,000 T/d 1.0 MMT/d US$ 150 MM

前提為替レート 90円/$ 電気および蒸気の供給設備は含まない。

また。基本ケースのUBC生産100万トン/年の商業機プラント建設費(水分60%)の内訳

を図3-24に示す。

図3―24 UBC商業プラント(水分60%ベース)の建設費内訳

100Sec.

200Sec.

300Sec.

400Sec.

500Sec.

550Sec.

600Sec.

UtillityFire Fighting

100Sec.

200Sec.

300Sec.

400Sec.

500Sec.

550Sec.

600Sec.

Utillity

Fire Fighting

経済性評価にあたっては、内部収益率(ROIによるIRR)および株主収益率(ROE)を指標とす

ることとし、その算定の前提として図3-25および表3-15、3-16の条件に基づくこと

とした。

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40

Feed Lignite TM=60%

(60% Moisture)

Su lfu r :0 .29%

Ash : 10 .4%

Moisture : 8%

UBC Commercial Plant Study Balance

Steam

UBC Commercial Plant

3,000t/d

Power

Oil 18t/d

Coal 7,220t/d 3,000t/dUBC Br iquetteQual i t ies;

Boiler & Generator

CV: 6000 kcal/kg

図3-25 水分60%褐炭を原料とする商業プラントの収支条件

表3-15 商業プラント経済性計算の前提条件

プラント建設期間 30ヶ月

原料炭価格(UBCプラント渡し) US$10-15/t

UBC製品出荷コスト(FOBポイントまで) US$8/t

プラント稼働率 90%

減価償却期間 20年

自己資本比率 30%

借入金の金利(ソフトローンを想定) 2%

借入金返却期間 15年

法人税 25%

表3-16 商業プラントUBC製品の品質条件

UBC 参考)豪州炭

発熱量(受取ベース総量) kcal/kg 6,000 6,322

灰分(受取ベース) % 10.4 13.5

硫黄分(受取ベース) % 0.3 0.8

全水分(受取ベース) % 8.0 10.0

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41

石炭の経済性は、FOB価格、海上運賃、品質(発熱量、灰分など)によって総合的に評価さ

れるが、最も主要な評価要素はFOB価格である。UBC製品は、基本的には市場において瀝青

炭と熱量等価での総合することになるため、FOBコスト競争力が重要である。FOB価格は山

元コスト(採掘・選炭。歩留)と内陸輸送コスト(立地とインフラ条件に依存)から成り立つが、

UBC製品の場合は、プラントでの加工コストを加えることになる。UBC製品のコストを左右す

る主な要因としては、原料褐炭の価格・品質(特に水分)が、大きな割合を占める。

一方、UBCの販売価格は一般炭(瀝青炭)の価格に連動する。一般炭の市況価格は、2008年に

FOBでU$200/t(豪州の標準的炭種)近くまで急騰したが、その後は概ねU$80~100/t

程度で堅調に推移しており、現在はU$95/tレベルである。

UBCの製品価格は、豪州一般炭との熱量差(豪州一般炭:UBC=6,322:6,000)を

考慮すると、ベンチマーク価格に対して約5%低い価格が相当と評価できる。従って、現状のUBC

の市場価格はU$90/tレベルである。

これらを勘案し、原料褐炭の価格と水分についてケースを設定し、採算性を検討した。

その結果について、表3-17にまとめた。また、図3-26、3-27のグラフに、各ケー

スにおける価格と採算性の相関を示す。

表3-17 UBC商業機の採算性

注* 変動加工費:電気・蒸気用燃料として褐炭石炭を用いるため、褐炭の価格により

コストが変動する。

褐炭水分(TM) 60% 35%

褐炭価格(工場渡し) U$10/t U$15$/t U$15/t

建設コスト U$150MM 同左 U$130MM

製造

コスト

製品

トン

当たり

原料代 U$24/t U$36/t U$23/t

変動加工費*

固定費

減価償却費

11

13

(改質コスト計) (22) (24) (19)

計 46 60 42

他 輸送費

保険・固定資産税

ライセンス料他

総コスト(除金融費用) 58 72 54

UBC

販売価格

採算性

価格 IRR% ROE% IRR% ROE% IRR% ROE%

U$ 100/t 25 43 18 31 27 51

U$90/t 20 36 13 22 23 43

U$80/t 16 28 9 13 19 34

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42

図3-26 ケース毎の販売価格とIRRの相関

ROE

0

10

20

30

40

50

60

70

$50 $60 $70 $80 $90 $100 $110 $120

出荷価格

TM60% @$10/t

TM60% @15$/t

TM35% @15$/t

図3―27 ケース毎の販売価格とROEの相関

今回の大型実証プラント運転から得られた原単位及びプラント建設コスト見通しに基づき、採

算性を検討した結果、60% 水分の褐炭においても、商業プロジェクトとしての採算性があると

判断出来る。特に、高水分の褐炭資源は採掘条件の良い(剥土比が低い)ものが未開発のままあ

り、このような褐炭資源を原料として選定することによって、採算性のあるUBC製造事業が成

立すると言える。

3-1-2 特許出願状況等 本事業における特許、論文、投稿、発表実績を表3-18に示す。また、その詳細を表3-

19に示す。

表3-18 特許、論文等件数

論 文 投 稿 発 表 特 許

1 4

18

(新聞発表除

く)

11

(事業期間内)

表3-19 論文、投稿、発表、特許リスト

題目・メディア等

論文 Energy & Fuel誌「Ash Deposition Behavier of

Upgraded Brown Coal and Bituminous Coal」

H22.9

投稿 JCOAL Journal Vol.5「改質褐炭(UBC)プロジェク H18.9

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43

ト」

日本エネルギー学会誌Vol.85 No.9「低品位炭改質

技術開発プロジェクト-UBCプロセスの開発・実証

-」

H18.9

化学装置 Vol.48 No.10「改質褐炭技術の開発動向」 H18.10

動力Vol.57「低品位炭の品質改善」 H19.5

発表 資源・素材学会2006秋季大会「低品位炭の改質技術

-UBCプロセスの開発、実証-」

H18.9

Coaltrans Japan 2006「Introduction of UBC

Project」

H18.9

新聞各紙「改質褐炭 大型実証設備の建設着工につ

いて」

H19.5

第44回石炭科学会議「インドネシアにおける改質褐

炭プロセスの実証」

H19.10

The Institute for Briquetting and Agglomeraation

30th Biennial Technical Conference

「Development of Upgraded Brown Coal Process」

H19.10

Investing in Coal Upgrading and New Coal

Technology Conference 「Introduction of UBC

Project」

H19.11

日本エネルギー学会リサイクル、バイオマス、ガス

化合同シンポジウム「低品位石炭の油中脱水による

改質」

H19.11

日本エネルギー学会関西支部第52回研究発表会

「Introduction of UBC Project」

H19.7

石炭・炭素資源利用技術第148委員会「改質炭プロセ

スの開発」

H20.2

14th Coaltrans Asia「Demonstration of

UBC(Upgraded Brown Coal) Process in Indonesia」

H20.6

日本機械学会関西支部エネルギー懇話会「微粉炭ボ

イラ利用に向けた改質褐炭の燃焼特性評価」

H20.7

第45回石炭科学会議「改質褐炭の燃焼特性に関する

研究」、「改質褐炭の燃焼特性と速度論」

H20.10

新聞各紙「改質褐炭大型実証プラント竣工」 H20.12

6th Mediterranean Combustion Symposium

「Characterization of Ash Deposition Behaviours

of UBC and Bituminous coal」

H21.6

化学工学会第41回秋季大会「改質褐炭と瀝青炭の灰

付着性の評価」

H21.9

Association of Power Plant Chemistry of Indonesia

2009 Conference「UBC (Upgraded Brown Coal)

H21.12

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44

-Effective Utilization of Low Rank Coal-」

The 33Rd International Symposium on Combustion

「Combustion Characteristic of UBC and

Bituminous coal」

H22.8

第47回石炭科学会議「改質褐炭の基礎燃焼挙動」 H22.9

FRC International Pacific Rim Combustion Symposium

「Ash deposition behavior of UBC in Pulverized Coal

Combustion Boiler」

H22.9

Coaltrans 2nd Upgrading Coal Forum「Upgrading the

Future」

H22.9

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45

特許 件名、出願番号および登録の状況

発明の名称 出願番号 出願時期 状況多孔質炭を原料とする固形燃料及びその製造方法

H06323364 H06.12 登録済

改質低品位炭及びその製造方法並びに石炭-水スラリー

H11102735 H11.4 公開済

成型炭の製造方法 2001-261612 H13.8 登録済低品位炭を原料とする固形燃料の製造方法および製造装置

2003-378504 H15.11 登録済

低品位炭を原料とする固形燃料の製造装置および製造方法

2004-078644 H16.3 登録済

低品位炭を燃料とする固形燃料の製造装置および製造方法

2004-014691 H16.1 登録済

低品位炭を原料とする固形燃料の製造方法および製造装置

2005-276247 H17.9 公開済

低品位炭を原料とする固形燃料の製造方法および製造装置

2005-337129 H17.11 登録済

固形燃料の製造方法および製造装置 2006-335991 H18.12 公開済固形燃料の製造方法および製造装置 2006-335996 H18.12 公開済間接加熱乾燥装置、被乾燥物の間接加熱乾燥方法、ならびに固形燃料の製造方法および製造装置

2007-269278 H19.10 公開済

固形燃料の製造装置および製造方法 2008-001946 H20.1 登録済固形燃料の製造装置および製造方法 2008-141985 H20.5 公開済固形燃料の製造方法および製造装置 2008-143100 H20.5 公開済固形燃料の製造方法及び該製造方法により作製された固形燃料

2008-262513 H20.10 登録済

石炭の改質方法 2008-140914 H20.5 登録済改質褐炭プロセスにおける蒸気圧縮機の蒸気温度制御方法

2008-216778 H20.8 公開済

外孔質炭を原料とする成型固形燃料の製造方法

2009-230424 H21.10 登録済

固形燃料の製造方法及び該製造方法により作製された固形燃料

2010-167295 H22.7 公開済

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46

3-2 目標の達成度

表3-19 目標に対する成果・達成度の一覧表

項目 目標値 成果 達成度

大型化

技術の

確立

80%負荷率以上での

運転およびデータ

取得

80%以上の運転は延べ12時間にとどまってい

るが、商業機設計・操業のための主要な条件

は判明した。(10月以降の自主操業により80%

以上運転は延べ64時間となり、データを補強

拡充した。)

一部達成

1000時間連続運転 連続運転は最長156時間にとどまったが、運転

中断は機械的トラブルに起因するもので、プ

ロセスとしての安定性は実証された。(10月以

降の自主操業により、連続運転は321時間を達

成し、機械設備面の安定性も実証。)

一部達成

経済性

把握

商業機改質コスト

$15/トン(石炭費は

除く)

より高水分の原料褐炭に変更(当初35%から

60%へ)した影響もあり改質コストは$20/t

を超えたが、現状の市場価格を前提に経済性

があることが示された。

一部達成

市場性

把握

製品品質

6000kcal/kg以上

全水分10%以下

原炭水分60%であっても左記達成可能なこと

が示された。

達成

5000トン規模での

海上輸送実績

船積量は1755トンであったが、DPから日本の

発電所貯炭ヤードまで、全ての工程を通じて、

適切な管理により十分出荷可能なことが示さ

れた。

一部達成

商業機での利用実

績(混炭率20%以上)

20%混炭での実炉試験で十分使用可能なこと

が示された。

達成

4.事業化、波及効果について

4-1 事業化の見通し

① 市場の変化への対応

中国、インドを始めとする新興国のエネルギー需要の増大に伴い、石炭需要は増大を続けてい

る。従い、市場での石炭需給の動向により褐炭を瀝青炭並の品質に改質し安定化させたUBC製品

への需要も増大するものと考えられる。

一方、かかる状況下で開発着手当初にUBCプロセスによる改質の対象と見込んでいた従来輸出・

外販が困難であった水分30%レベルの褐炭も改質することなく輸出販売することが可能な状況

となっている。先に述べた新興国での旺盛なエネルギー需要の伸びを背景に中期的にもこの状況

には変化がないものと考えられる。このような状況の中で、山元からは現在の市場の中でも改質

しない限り利用できない水分が50%を超える高水分の褐炭を対象にUBCプロセスを導入したいと

する引合いを受けている。

UBCプロセスは、60%程度の水分を含有する褐炭の改質にも適用されることがこれまでの研究開

発により確認されており、このような市場ニーズの変化にも対応が可能である。(表3-4 参

照)

現在、このレベルの水分含有量を持つインドネシアの褐炭鉱山で商業機を建設、操業すること

を山元とともに検討中である。

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② 事業方式

② - 1 立地と製品出荷

水分が除去され製品の熱量が増加するとともに、自然発火性が抑制され且つ長距離輸送に耐え

うる強度を持つというUBC製品の特性から、プラントは褐炭鉱山に立地させるのが合理的である。

製品の出荷は以下の二つの形態が考えられる。

a) UBC製品単独出荷

UBC製品単独で出荷する場合で経済性評価の観点からはベースケースとなる。

b) 褐炭との混炭出荷

現在の市場では水分35%、熱量4,000Kcal/kg程度の褐炭の場合25%程度の価格ペナルティー

を受けて値引きの対象となっている。一方5,000kcal以上の石炭製品であれば価格ペナルティー

はなく瀝青炭と熱量等価で販売できるので、出荷前にUBC製品と褐炭を混合することにより、原

炭の価格ペナルティーをなくした上での出荷量の増大を図ることが可能である。この際にUBC製

品の配合量を調整することで山元にとっての出荷量と価格の最適ミックスを行なうことが可能

になる。

② – 2 プロジェクト構築方式

想定されるプロジェクトの形態としては、褐炭鉱山保有者がUBCプラントを導入し市場で製品

の販売を行なう形態(マーチャント)及び需要家が褐炭鉱山の権益を入手しUBCプラントを建設

することにより品位を向上させた上製品をで引き取る形態(キャプティブ)、或いは、その組み

合わせが考えられる。 現在、インドネシアで構築中の商業機案件は褐炭鉱山保有者と製品の一

部をオフテークする需要家の組み合わせによるプロジェクトである。

UBCPlant

褐炭採掘 UBC製造 UBC出荷 輸送 需要家

UBCPlant

褐炭採掘

UBC製造

混炭品出荷 輸送 需要家

混炭ヤード

混炭

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炭鉱の買収価格は、市場での価格の高い方から、瀝青炭 > 亜瀝青炭 > 外販可能褐炭となる。

現在これら利用可能な石炭を産出する炭鉱の買収価格は高騰しており、また、そもそも市場に炭

鉱権益の売り物が出てこない状況にある。一方、外販が不可能なレベルの褐炭鉱山は安価である

ことから、超低品位褐炭鉱山買収費用プラスUBCプラント建設費用の合計を投資金額として考え

る形のプロジェクトの構築が可能である。

プロジェクトのイメージ

海外発電需要家

海外製鉄・その他産業

需要家

山元発電所

ガス化事業

褐炭鉱山+

UBC Plant

出資及びUBCオフテイク

国際石炭市場

UBC販売 UBC山元事業

(キャプティブ)

(マーチャント)

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4-2 波及効果

① 地域振興と我が国エネルギーセキュリティーへの寄与

UBCの導入により、これまで第一次産品しか生産してこなかった産炭地に工業が生まれ、雇用

の創出など地域経済の振興に貢献することが可能となる。更に、従来利用できなかった品位の石

炭を産炭国から我が国に輸出し利用することによって我が国のエネルギーソースの拡大に寄与

できる。

② UBC製品利用範囲の拡大

現在UBCの需要家としては、発電プラントを想定している。 しかしながら、今後の利用技術

の開発により、製鉄用炭材(コークス或いはPCI炭の代替)や産業プラントの燃料(鉄鉱石ペレ

ットプラント燃料など)としての使用も期待できる。 これらについては既に検討を開始してい

る。

③ UBC技術適用範囲の拡大

石炭ガス化には揮発分が多く含まれている褐炭が適しているといわれている。また、石炭ガス

化プロセスによっては、特に高水分の褐炭を原料とする場合には、原料炭中の水分を除去する工

程が必要となる。既存技術での予備乾燥では対応できない場合あるいはそれよりも技術的、経済

的に有利な場合にはUBC技術を適用することが考えられる。この適用に関しては既にガス化事業

者からの問合せを受け、検討を開始している。

温暖化ガス削減対策として期待の持たれているIGCCとCCSの組み合わせによるプロジェクトの場

合にはIGCC排ガスのCO2分離の手間を省くために酸素吹きで行なうケースが想定されるが、酸素

を多く含んでいる褐炭の石炭ガス化での活用が期待されており、その前処理としてのUBCプロセ

スによる脱水には関心が持たれている。

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等

5-1 研究開発計画

本事業は平成18年度から平成21年度の4年間で、製品生産量600t/dの実証プラント(DP)

を建設、運転し、商業化技術の確立、経済性評価と製品の市場性を評価する計画だったが、平成

21年6月に発生した機器破損の影響により、平成22年9月末まで期間を延長した。また、平成22

年7-8月の大雨の影響やプラント改造工事等により、プラント運転計画の一部が事業期間内に実

施できなかったが、DP運転や支援研究等から得られたデータによる商業化プラント設計や経済

性評価、UBC製品による燃焼試験等を当初計画通りに行った結果、設定された目標をほぼ達成

した。

全体計画を表5-1に示す。

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表5-1 研究開発計画

実施項目/年

18 19 20 21 22

DP建設

DP運転研究

市場性把握

(製品評価)

経済性評価

FS

支援研究

予算 (補助金、百万円)

965 945 849.5 958

5-2 研究開発実施者の実施体制・運営

本事業は日本とインドネシアの共同研究として行われた。実施体制の概要を図5-1に示す。

本事業の基本合意書は、財団法人石炭エネルギーセンター(JCOAL)とインドネシア共和国エネ

ルギー鉱物資源省研究開発庁との間で締結され、JCOALと研究開発庁の石炭・鉱物研究機関であ

る鉱物石炭技術研究センター(tekMIRA)が実施機関として年度毎に実施計画書を取り交わし、事

業を推進した。また、日本側は本技術の開発者で基本特許を有する株式会社神戸製鋼所が事業に

参加した。本事業におけるプラントの建設、運転等については、インドネシア国の法規によりイ

ンドネシア現地法人であることが必要とされるため、インドネシアにおける事業運営母体として

PT.Upgraded Brown Coal Indonesia(PT.UBCI)社を設立し、インドネシアにおける事業運営を

行った。さらに、600t/dプラントでは大量の低品位炭を使用するため、プラントを低品位炭の生

産地域に建設し運転することが必要であることから、低品位炭鉱区を所有、生産しているPT.Bumi

Resource社、PT.Arutmin社の協力を得た。

本事業では日本側のJCOAL事業化推進部長およびインドネシア側tekMIRA所長が両者の代表と

して事業を統括し、さらに神戸製鋼所、PT.UBCIの専任担当者がプロジェクトリーダーとして事

業を運営した。事業運営では、事前に日本側、インドネシア側の役割分担を基本協定書に明記し

て事業に臨み、各年度の事業は年度当初に日イ両者間での協議による実施計画書を取り交わして

実施した。またJCOAL、tekMIRA、神戸製鋼所、PT.UBCIによる協議を適宜実施し、お互いの意思

疎通を図り効率的な事業運営に努めた。

また、低品位炭はこれまで市場性がなくインドネシアにおける石炭生産のロイヤルティや課税

措置が明確ではないことから、本事業の目標である技術の商業化実現を促進するため、日イの事

業関係者、関連政府機関からなる運営委員会を設置し、低品位炭改質事業商業化実施時に想定さ

れる課題等の検討、改質技術実用化促進のための政府への提言の取りまとめを行った。さらに、

低品位炭資源を保有する石炭会社、エネルギー・石炭担当の政府機関、需要家の電力会社等に対

設計・製作

運転研究

燃焼試験(基礎→実缶)

Ki

経済性検討

プラント運転条件・成型性検討

試運転

自然発火・ハンドリング性検討

運転停止

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し、セミナー、国際会議などを通じて技術の優位性、有効性の紹介、普及を図った。さらに、日

本国内においては、事業の計画、内容、目標等について助言、検討、審議するための有識者によ

る「低品位炭改質事業推進委員会」を設置し、本事業について第三者による外部検討、評価を行

った。

METI

JCOAL

エネルギー鉱物資源省

研究開発庁(ARDEMR)

鉱物石炭技術研究開発センター(tekMIRA)

【日本】 【インドネシア】

MOU (基本協定書)

Government Talk(EPA, Coal Dialog)

PT. UBCIインドネシアでの事業運営母体

ID(実施計画書)

運営委員会

Advisory Committee

PT. BumiPT. Arutmin

神戸製鋼所

プラント用地、ユーティリティ供給、 運転員派遣他

METI

JCOAL

エネルギー鉱物資源省

研究開発庁(ARDEMR)

鉱物石炭技術研究開発センター(tekMIRA)

【日本】 【インドネシア】

MOU (基本協定書)

Government Talk(EPA, Coal Dialog)

PT. UBCIインドネシアでの事業運営母体

ID(実施計画書)

運営委員会

Advisory Committee

PT. BumiPT. Arutmin

神戸製鋼所

プラント用地、ユーティリティ供給、 運転員派遣他

図5-1 事業実施体制

表5-2 低品位炭改質事業推進委員会

氏 名 所 属(平成21年度時点)

委員長 宝田 恭之 群馬大学大学院工学研究科 環境プロセス工学

専攻 教授

委員 平島 剛 九州大学大学院工学研究院 地球資源システム

工学部門 教授

委員 木村 直和 電源開発株式会社 技術開発センター 所長

委員 矢内 俊一 (独)新エネルギー・産業技術開発機構 省エネル

ギー技術開発部 主幹

委員 小野崎 正樹 (財)エネルギー総合工学研究所 プロジェクト

試験研究部 部長

低品位炭改質技術

推進委員会

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5-3 資金配分

DP設計・建設、DP運転、製品評価試験、経済性評価/FS、支援研究の各段階において適

切に資金を分配し、事業の円滑な推進に努めた。主目的であるDPの運転研究(建設を含む)に

全体の91%を使用し、商業化を確立するための製品評価、経済性評価に4%を、DPの運転研

究を補完・支援する研究に5%を使用した。

表5-3 資金度配分(補助金ベース)

(単位:百万円)

年度 平

18年度 19年度 20年度 21年度 合計

低品位炭改質技術開

DP建設 893 897 681 0 2471

DP運転研究 0 0 162 753 915

製品評価 0 0 0 86 86

経済性評価/FS 0 0 7 5100 58

支援研究 72 48 0 68 188

合計 965 945 850 958 3718

5-4 費用対効果

わが国にとってインドネシアは、豪州に次いで第2の石炭供給国であるが、同国の石炭埋蔵量

に高品位の瀝青炭の占める比率は15%にすぎず、大半の石炭が低品位炭である。インドネシア政

府は、今後増大する自国内のエネルギー消費に対応すると共に、一定の規模での石炭の輸出を継

続するとの方針であり、今後、この政策の実現のためには低品位炭活用のための技術が非常に重

要である。インドネシア政府の長期見通しによれば、2025年には、年間3,000万トン規模の改質

炭を生産することとされているが、その経済価値は年間約2500億円程度になるとみられる。

一方、日本の発電会社は、現在年間9,000万トンの石炭を輸入しているが、UBCを20%の混炭比

率で使用できるため、1,800万トンの代替使用が可能になり、その輸入金額は年間約2000億円と

なる。効果としては、燃料供給の多様化が進むことに加えて、燃料の低灰分化による環境負荷低

減あるいは灰処分費用の削減効果も期待される。一般的な瀝青炭との灰分の差が5%程度ある場合、

年間90万トンの灰発生量が削減できるため、年間50~100億円程度の費用削減効果が期待できる。

また、豪州と比較した場合、インドネシアは海上輸送距離が短く、それによる海上輸送費用の

削減が可能となる。現在、トン当たりの運賃はインドネシアのほうが5~7ドル程度低く、これに

よる運賃削減効果は年間80~110億円程度が期待される。

石炭の改質技術としてはUBC以外にも複数の技術が実用化に向けた開発が進めているが、特

に50%を超えるような高水分の褐炭を対象にできる点、長距離・長期間の輸送に耐えられる点で、

他の技術よりも優位にある。また、UBC技術は、その製品を既存の発電設備において直ちに使

用できる点で非常に優れており、その普及は円滑に進むものと期待できる。

5-5 変化への対応

本事業開始時は石炭需給も比較的安定し、石炭価格はFOB基準で50$/トン程度であったが、2007

年以降、原油価格の高騰と中国、インド等のエネルギー需要の急増により、石炭の市場価格も急

激に上昇した。このため、事業開始時に市場性が無かった褐炭等の低品位炭も取引が行われるよ

うになったため、当初商業化対象としていた水分35~40%の低品位炭も改質することなく輸出販

売が可能な状況となっている。

このため、水分50%以上の高水分の褐炭を商業化の対象に変更して検討を行った。また、イン

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ドネシアにおいても石油価格の上昇と経済発展の影響による材料費や労務費などが上昇したこ

とから、商業プラントの設備・建設費や運転コストが上昇したが、現状の市場等からは商業化の

採算性は十分なものと判断されたこと、中国、インド等の旺盛な需要の増加は今後も続くと想定

されることから、対象を高水分褐炭に変更しても本技術への重要性に変わりはなく、計画通りに

本事業を推進した。

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第3章 評価

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1.事業の目的・政策的位置付けの妥当性

政策的には上位のクリーンコール施策との整合性が確保されており、低品位炭の品位

を向上させることによるエネルギー安定供給源の確保やエネルギー価格の安定、環境負

荷の低減等の目的は、資源に乏しい我が国の現状に鑑みて妥当である。また、世界的に

エネルギー需要が拡大すると予想される中、特に増大が見込まれる途上国のエネルギー

需要に資する技術開発は時宜を得たものであり、世界全体のエネルギー安全保障上きわ

めて重要。

一方、今後の実用化、商業化について必ずしも具体的な計画が提示されていない点が

懸念されることから、今後国がその進展をモニター、フォローアップしてその実現を確

実にすることが望ましい。

【肯定的意見】

・低品位炭を有効活用するという目的は我が国のみならず世界全体のエネルギー安全保障上きわめて

重要であり、これはひいては我が国のエネルギー安全保障にも貢献するという意味で有意義である。

特に途上国のエネルギー需要は今後増大の一途をたどり、これが世界のエネルギー需給を逼迫するこ

とが懸念されており、途上国のエネルギー資源有効活用に資する技術開発、供与は今後重要な課題で

あり、その意味で本事業は時宜を得たものと言える。また本技術開発は率直にいえば非常に高度な先

端技術と言うよりも既に知られた技術を組み合わせて所期の目的を果たすことを目指す現実的な技

術の実証的開発と位置づけられるが、これを信頼性、経済性のあるシステムとして実現できれば途上

国などに広く普及させることも可能となり上記目的に資するという意味で重要である。所謂ハイテク

ばかりでなく、今後更に拡大が予想されるエネルギー需要に対して途上国を含む世界的な要請を満た

す技術を目指すという点も評価出来る。

・世界的に石炭需要は急増していく傾向にあり、我が国が海外で資源として豊富な低品位炭の開発権

益を確保しておくことは重要な政策と判断される。本事業は、我が国の技術力によって目的を達成す

るものであり、大きな政策的意義があると判断される。特に、インドネシアは、我が国にとって、輸

送距離が比較的短いことから、資源の安英供給の確保と輸送コストの低減の点からも重要な国である。

国は、技術的な支援にとどまらず、安定供給が確保できるようにインドネシアとの信頼関係を強化し

ていくべきである。

・近年における国際的なエネルギー資源の需給逼迫、価格高騰の中、他の化石燃料と比べて供給安定

性や経済性に優れている石炭資源は「エネルギー基本計画」において将来に渡って不可欠なエネルギ

ーとされており、本技術開発は産炭国のエネルギー需給の緩和に貢献することで日本の石炭安定供給

を確保し、更に将来的には日本における低品位炭の有効利用に資することにもなることから重要な事

業である。また、本技術は、特にアジア諸国を中心とする海外での技術展開により地球規模での環境

保全効果も期待されており、技術開発の早期進展、早期実用化のためには国の関与が不可欠である。

・今後世界的に需給が逼迫すると予測される石炭資源について、その半分を占める低品位炭の有効活

用は世界と日本にとって重要である。また、我が国の資源安定供給に資する点でも政策上の重要課題

・低品位炭の品位を向上させることによるエネルギー安定供給源の確保やエネルギー価格の安定、環

境負荷の低減等の目的は資源に乏しい我が国の現状に鑑みて妥当であるといえる。政策的には上位計

画との整合性も確保されている。 技術的にも、我が国独自の技術の商業化を推進する点で独創性は

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あるといえる。但し、技術そのものは、それほど高度に革新的なものであるとは考えられない。低コ

スト資源の確保、資源国との友好関係構築の観点から、国の事業として推進することは妥当であると

いえる。また、補助率は1/2ということで、民間事業者も一定のリスクを負担しており、役割分担に

も大きな問題はないものと考えられる。

・石炭資源は豊富であり途上国が中期的に依存せざるを得ないエネルギー資源である。しかし炭質に

きわめて幅が広い。低質炭の高効率利用は我が国以上に途上国のエネルギー問題に大きく貢献するも

のである。この意味で、日本国内の石炭市場だけでなく世界に広がる潜在性のある技術開発である。

他方、国内については微粉炭の補助燃料の位置づけでは市場が小さく、民間主導の開発ではスタート

がしづらいため、国の事業として行うことが妥当であったと考えられる。

【問題点・改善すべき点】

・石炭は将来、エネルギー資源の太宗を占めるものとして不可欠と認識されているが、CO2排出とい

う点では課題も多く、低品位炭の活用としてガス化、CCS等の技術が期待されている。他方で短期的

には、低価格の石炭利用の増加が見込まれる途上国などで高コストのガス化CCS等が実現する可能性

は少なく、その間にも低品位炭の改質、高効率化は喫緊の課題として重要であり、当技術は量的に拡

大の見込まれる石炭火力高効率化に直接、資するものとして評価出来る。技術開発には当然リスクを

伴い、また経済性や環境条件に大きく依存するものであるので、同時に長期的視点からはガス化CCS

などの技術を確保しておくことも必要であって、短期的視点と長期的視点から適切な技術を常に評価

しながらその実現、技術開発を見直すことも必要である。上記のように本技術開発は必ずしも先端的

、革新的ではなく、既知の知見に基づいて実証的に経済性のあるシステム実現を図るというタイプと

見られるが、こういった技術開発でも当然開発リスクがあり国費の支援によってリスクを部分的に負

担して実現の目途をつけるところまで進めることは有意義と思われる。理想的には当初の期限内に完

全に実証規模のシステム実現という目的を完了することが望ましいが、各種の技術的問題により予定

が遅れて完全に目標を達成したとは言い難い状況と見られる。しかしながらこういった課題を明らか

にしてその解決、当初目標達成のための実証試験継続を現在、担当社が自発的に進めており今後民間

レベルでその実現を図ることを表明している。このようなリスクそのものが民間単独の技術開発をた

めらわせるものであるが、国の支援により技術開発が開始され、民間企業の責任でこの開発を引き継

いで上記のように今後、全世界的に必要とされるシステム開発が進められる段階に至った点は高く評

価できる。今後更にその進展を国がモニター、フォローアップしてその実現を確実にすることが望ま

しい。

・本事業は、石炭の需給緩和にも貢献できると期待されているが、一方で供給過剰になると石炭価格

が暴落して、事業の採算性に大きな影響を与える可能性もある。インドネシアでの国内市場も合わせ

て創出するなど、できるだけ安価な価格で取引が行われる市場形成を政策的に進めていくことも重要

になる。それは、日本へ輸出されるUBC価格の安定化にもつながると考えられる。

・昨今の国際競争の激しさを勘案すると、プロジェクトの評価の視点として、国内産業の育成や輸出

商品・輸出サービスの育成に伴う雇用創出効果や我が国産業への波及効果等の点も評価に加えるべき

ではないかと考えられる。さらに、今後の実用化・商業化について、必ずしも具体的な計画が提示さ

れていない点が懸念される。

・世界市場を視野に入れるべき技術であるが、やや日本国内の微粉炭燃焼の補助燃料という目的が前

面に出すぎている印象もある。これは、まず国内で実績を固めたのち諸外国の市場への浸透という順

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序からやむを得ないことではあるものの、本プロジェクトの潜在性はより強調されてよいと思われる

2.研究開発等の目標の妥当性

商業化実現のため、大型機での技術確立、経済性把握、市場性把握の3つの観点につ

いて、それぞれ目標値を定量的に設定することにより目標水準を明確にしている点は高

く評価できる。

一方、市場に無い燃料を作るという新しい分野への挑戦であったため、適切なビジネ

スモデルを確定できず、そのため目標値の根拠が不明確なものとなり、目標値の妥当性

の評価が分かれた。技術開発においてはそのプロセス自体も重要なノウハウとなるが、

結果のみを評価するとオンオフの評価となってそのプロセスなどが評価できないこと

になるため、事前にキーとなる技術要素をそれぞれ抽出してその目標、確認などの具体

的指標を検討することが望ましい。

【肯定的意見】

・経済性などを具体的に評価することはこの種の技術の開発目的から見てきわめて重要である。

・本事業は、これまで利用価値の無かった高含水率の褐炭をUBCプロセスによって利用できるように

する技術開発であり、事業化の目標は明確である。3t/dのパイロットプラントでの実績を基に、6

00t/dのDPにより技術を実証していく意義は大である。開発の目標値を、大型化技術の確立、経済

性把握、市場性把握に分けて、それぞれ目標値を定量的に設定しており、研究開発の目標水準を明確

にしている。

・経済性把握に対しては採算性を十分確保できるレベルを基準に、また、市場性把握に対しては現在

使用される瀝青炭の性質を基準に目標を設定する等、定量的かつその目標の根拠が明確である。

・商業化実現のために、大型機での技術確立、経済性把握、市場性把握の3つの観点から、定量的目

標を設定している点は高く評価できる。

・技術の確立、経済性の把握、市場性の把握という視点に問題があるとは考えられない。

いずれについても、数値目標を提示しており、目標設定は適切であると考えられる。

・コスト、規模等について微粉炭補助燃料として実績を確立するとする目標設定は妥当である。

【問題点・改善すべき点】

・技術開発である以上、事前にキーとなる技術要素をそれぞれ抽出してその目標、確認などの具体的

指標を検討することが望ましい。結果のみを評価するとオンオフの評価となってそのプロセスなどが

評価出来ないことになるが、技術開発においてはそのプロセス自体も重要なノウハウとなる。また、

経済評価における各種の前提条件などが現実的であるか、技術的に妥当なものであるかについてはそ

の根拠をもう少し明確にし、特に技術的条件に対しては現実の状況に対応した評価なども併せて示す

ことが望ましい。

・機器は損や現地での豪雨が原因で、当初の目標を計画期間内に達成できていないが、計画終了後も

自主事業として実証運転等を継続しており、それらが終了した時点で最終的な評価を行うことが大切

になる。・

・大型化技術の確立に対して数値目標が設定されているが根拠が明確ではないため、目標の根拠を明

確にするべきではないか。またハンドリング性の評価については目標5000tに対し1755tの

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実績により将来海上輸送を引き受ける船会社があると判断できるとし(一部)達成と結論づけている

ことから、目標が過大であったのではないか。

・市場性把握といった場合、確立した技術のマーケット規模やマーケット特性等の把握であると誤解

を与える恐れが懸念される。また、確立した技術をどのようなマーケットで、どのようにビジネス展

開していくのか、来年度以降の具体的なプロジェクト計画等についても何らかの目標設定があった方

が望ましいのではないか?

・石炭燃焼としては、今後ガス化炉が本命であり、微粉炭燃焼炉はむしろリプレース対象の既存炉に

含まれる。既存炉は数は多いため貢献も大きいものの、将来をにらんでガス化炉にどのように対応す

るかは当初から視野に入れるべきであったように思われる。

3.成果、目標の達成度の妥当性

商業化のための改質コストの見通しが得られたことは高く評価できる。一部未達成の

数値はあるものの論文発表、特許の出願等も行われており、概ね当初の目標を達成した

と考えられる。また、エンジニアリング的に見て重要課題は解決しており、今後は更な

る調整、再設計などをすることにより実現可能と考えられる。

一方、当初の設定目標を数字上は達成できず、一部達成にとどまっているものが多い

点は否めない。結果論であるが、目標を高く設定し過ぎた感がある。

【肯定的意見】

・前述のように結果は目標に必ずしも完全に達成したとは言えないが、エンジニアリングのセンスか

ら見て重要課題は解決して今後はさらなる調整、再設計などで実現可能と判断している。実際に国費

の開発プロジェクト終了後にも引き続き民間独自に継続してその達成を目指していることから国費

で進めるべき当初のステップを越えたものと判断出来る。

・本事業の実施により、商用化していく上で必要となる改質コストの見通しが得られたことは評価に

値する。

・設定された目標は必ずしも達成したとはいえないものの、今回報告がなされた事項を裏付けるべく

、現在、自主運転により高負荷・連続運転試験を継続していることから、補助事業としての成果とし

ては概ね達成したと考える。

・大型化技術の確立について、①80%付加率以上での運転は70時間であるが、必要な条件は判明

しているので今後の向上を期待する、②連続運転は目標1000時間に対し、321時間であるが概

ね安定性は実証されており、今後の向上を期待する、③その他ハンドリング性、混炭での燃焼性等を

実証した。経済性について改質コストの目標、15$/tに対し19$/t、市場性について、海上輸

送実績は5000tに対し、1755tであったが、市場性は把握できた。原炭水分60%でも目標

達成可能であることが示されたので、市場性はあると思われる。以上の点で一部未達成の数値はある

ものの、概ね初期の目標を達成した。

・ 自己努力での改善を含めると技術を確立するという当初の目標については、最低限、クリアした

と考えられる。論文発表、特許の出願等は行われている。

・コスト、規模等について当初の目的に至っていない箇所もあるものの、今後これらが解決できるだ

けの実績と見通しはおおむね達成できたと考えられる。

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【問題点・改善すべき点】

・技術課題の詳細をもう少し定性的に示して、これまでの技術開発課題と達成度、更に残された課題

の特性とその解決可能性をより具体的、定量的に示すことが望ましい。

・どのようなプラント開発にも言えることではあるが、パイロットから実証、そして商用プラントへ

とスケールアップするにつれ、予期できないトラブルが発生する。スケールアップによるプラントの

信頼性は、連続運転時間で評価されることができる。今回、達成した321時間の連続運転時間は、

目標値の1、000時間を下まわっており、今後の運転継続によって目標を達成することが必要とな

る。結果論ではあるが、目標を高く設定しすぎた感がある。運転継続されているDPプラントの結果

によっては、妥当性は高い評価となる。

・大型化技術の確立について、「商業機設計・操業のための主要な条件は判明した」とあるが、潤滑

油性状が平衡に達するまでに必要な時間を基に設定された目標である100時間に対し、80%以上の運

転を延べ70時間実施することで、スケールアップデータを取得できたといえるのか。設計上の大きな

課題抽出はできたと考える根拠が必要ではないか。また、商業化に耐える耐久性を有しているかを判

断する目安として設定された目標1000時間連続運転に対し連続運転は321時間にとどまっているが、

プロセスとしての安定性は概ね実証されたといえるのか。

・一部達成に留まっているものが多過ぎる。

・コスト、運転時間、ハンドリング等、当初の設定目標を期間内に数字上は達成できていない点は否

めない。

4.事業化、波及効果についての妥当性

微粉炭燃焼炉への補助燃料としての市場性から考えて、事業化に関しては妥当と考え

られる。また、低品位炭をガス化炉の原料として使用する際に、従来の乾燥手法では対

応できない場合には本技術を活用できる可能性もある。我が国クリーンコール技術によ

る石炭資源の高効率利用の促進が期待できるなど、波及効果は十分ある。

一方、具体的な事業化の方向性が明確ではなく、どのように商業化を進めていくのか、

マーケット開拓を行っていくのかといった点について、今回の結果からはそこまでの展

望は明確にはうかがえない。

【肯定的意見】

・前述のように事業化への方向に既に担当企業が判断している旨を表明しており、今後に更に課題が

あるにしてもその解決に対する方針を示している。そう言った意味で現時点では十分実用化への可能

性を示したものと見られる。

・事業開始時に比べて石炭価格が高騰しており、経済的に見て事業化の見通しが立てやすい状況にな

っている。今回の実証プラントの検閲により商用プラント建設に向けたシナリオは作られており、今

後は官民が一体となって実際にプラントを建設する必要がある。

・インドネシア国内の褐炭鉱山にて商用機建設・操業について同国資源会社と共同で検討を進めてい

ることから、同技術の事業化については妥当であると考える。また、水分の多い褐炭を石炭ガス化に

使用する際に、従来の予備乾燥では対応できない場合や経済性で有利な場合には当該のUBC技術を活

用できる可能性もあり波及効果については妥当であると考える。

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・DP、PPの成果をあわせて、60%褐炭にも本技術が適用できることが確認された。事業化をイ

ンドネシアと共同で検討しているとのことなので、順調に進めていただけるよう期待する。

・商業機の建設を検討中とのことで、成果の刈り取りの可能性が示唆されている。

・微粉炭燃焼炉への補助燃料として市場は確保されており、事業化に関してはおおむね妥当と考えら

れる。波及効果として、途上国を中心とする石炭依存国での省エネ・環境改善をめざし、低品質炭の

ガス化炉利用など我が国のクリーンコール技術による石炭資源の高効率利用の促進が期待できる。

【問題点・改善すべき点】

・前述の通り技術として基礎的、革新性のあるものではなく、システムとして実現してこれを実社会

に応用することでその目的を達成する。従ってここで得られた成果はこの目的には十分意義があるが

、他のシステムで応用すること、或いは単独の技術として波及することは考えにくい。従って当該シ

ステムそのものが順調に初期の目標を達成出来るような結果が望ましいが、技術的課題が残されてい

るので、その外部からのフォローアップが望ましいと考えられる。

・波及効果として、今後は本UBCプロセスがインドネシア以外にある褐炭についても適用できるよ

うになることが望まれる。国は、プラント建設資金の補助だけにとどまらず、開発メーカが海外で事

業化しやすい環境を整備する支援を実施していくことが望まれる。

・一般的な記述が多く、具体性が見えない。質疑応答における回答も一般的で、どの程度の実用化の

可能性があるかが見極められない。守秘義務制約等はあろうかと思われるが、どのように商業化を進

めていくのか、マーケット開拓を行っていくのかが見えない。

・今後の市場展開の方向性をより明確化する必要があるように思われる。例えば、本事業からもっと

も近い世界市場をどこに見るかなどが重要である。本事業成果に対する期待は大きいものの、今回の

結果からは、そこまでの展望は明確にはうかがえない。

5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等の妥当性

事業実施中の石炭価格高騰に伴う市場状況の変化から、当初のターゲットである水分

35%含有褐炭を60%含有のものに変更したことは状況の変化に柔軟に対応した適

切なマネジメントを行ったといえる。また、全体の開発体制・組織は、途上国を相手と

するために、現地法人の設立、政府間協議、運営委員会活動など、インドネシアの実情

に対応した適切な体制と見られる。

一方、途中の計画変更に対し、迅速な対応が十分ではなかったこと、目標を十分に達

成できなかったことは、体制に弱い面があったと考えられる。

【肯定的意見】

・事業実施中に石炭価格が高騰し、開発目標を60%程度という高含水率の褐炭に変更したことは、

状況の変化に柔軟に対応したといえる。

・当初は水分30%の褐炭をターゲットに開発を行ったが、市場状況の変化から60%褐炭をターゲットに

変更し技術の開発を行っており、変化への対応は妥当であると考える。

・実施期間を繰越すなど、事態に応じた対応が行われたと考えられる。

・全体の開発体制、組織は途上国を相手とするためにその国の実情に対応した適切な体制と見られる

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・推進体制については、現地法人の設立、日イ者間の協議、運営委員会活動や第三者による外部評価

等、体制整備と運営を的確に実施してきたと判断できる。

・インドネシア国の関係機関と取り交わす実施計画書(毎年度策定)に基づき研究を実施し、更に本

事業の計画内容や目標設定について有識者による委員会において外部検討・評価を受けるなど透明性

を重視した体制を構築・実施しており、マネジメント・体制については妥当であると考える。

・日本と現地の協力体制についても、特に問題は見られない。石炭市場価格の変化も十分に吸収でき

る成果であり、今後実用段階に入ればさらに有効性が期待できる。

【問題点・改善すべき点】

・技術的な課題で計画がかなり遅れているが、詳細、その対応、特に技術的な対処方針とその見込み、

などが必ずしも外部に明確に示されていない印象を受ける。評価委員会など第3者の意見などを添え

て外部、特に国に対してその経緯を丁寧に説明することが望ましい。

・途中の計画変更に対して、当初の目標を達成するため迅速な対応が求められたが、目標を十分に達

成できなかったことは、体制に弱い面があったと考えられる。

・設計・建設、試運転、運転等の全体計画に関する当初計画と実態との比較がなされていないため、

当初計画の妥当性を判断することが難しい。資金配分についても、どの業務にどれだけの費用が投入

されたかの情報が不足しているため、資金配分の妥当性を判断することが難しい。

・マネジメント体制については特に問題点は指摘できない。

6.総合評価

いくつかの評価項目において目標に達していないところも見られるが、技術開発であ

る以上、種々のトラブルの発生、その対応によるスケジュールの遅れは不可避である。

その中で、最終的に実現の可能性が確認されたということ、実施者が今なお継続的研究

を行って商業化を目指していることから、目的は概ね達成されたと評価される。本技術

は経済性に優れている石炭資源の安定供給、有効利用と環境負荷低減を目指したもの

で、低品位炭の改質という地味な技術であるが、その早期実用化が世界的に求められて

おり、極めて大きな波及効果が期待できるものである。日本の誇るクリーンコール技術

にも中期的には大きな貢献が期待できるものであり、本研究開発の意義は高く、また、

実用化・事業化に関して大きく前進したものと評価できる。

商業化を視野に入れる限り、まだ未達成の課題が残るため、残された課題をクリアし

つつ、従来以上にマーケットを意識した活動が望まれる。また、現在実施している自主

運転の中で成果を再確認する必要がある。

【肯定的意見】

・全体としてその目的、推進体制、技術開発事業は予定通り進んでおり、それなりの成果を得て、実

証事業の初期の目的を達成、実現に目途をつけたと言える。いくつかの評価項目においては当初の目

標に達していないところが見られるが、技術開発である以上、開発途上での技術的障害の発生やその

対応による当初スケジュールからの遅れは不可避であり、それを解決して実プラントを実現すること

が目的であるので、最終的に実現の可能性が確認されたということ、その判断により以後受託企業が

独自に商業化を目指すということで目的は達成されたと評価される。またあまり高度ではない技術で

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あっても経済性が確認されればその効果はきわめて大きく、世界的なエネルギー資源需給の緩和に貢

献出来、その意味での意義は大きい。

・資源の利用拡大に向けた事業として高く評価できるが、成果が目標を十分に達成できていないため、

事業として「良かった」と評価する。

・本事業は経済性に優れている石炭資源の有効利用と環境負荷低減を目指したものであり、エネルギ

ー政策の見地から国民や社会のニーズに沿ったものである。また、国際的にも資源保全や環境対策に

関する革新的技術の開発・導入の気運が高まっている中、低品位炭改質技術の早期実用化が求められ

ており、官民一体となって積極的に推進すべきであると判断できる。

・きわめて大きな意義のある事業で、敬意を表します。低品位炭の脱水技術の商業化を確立した点で

波及効果は大きいとみこまれます。ただ、プロジェクト期間中のみを評価すると、未達の目標もあり

、方向性としては優れた成果を出しているものの、今後の事業化の点で不確実性を感じられます。是

非、貴重な成果を事業化できるよう期待します。

・研究開発の目的は明確で、選定された技術も我が国特有のもので、将来的に期待が持てる。

・本事業は低品質炭の改質という地味な技術課題ではあるが、インドネシアのみならず世界的に見れ

ば極めて大きな波及効果が期待できるものである。日本国内では微粉炭の補助燃料にとどまるものの

、今後、日本の誇るクリーンコール技術は中期的には大きな貢献を期待できるものである。その意味

で、本事業の意義は極めて高く、また実用化・事業化が視野に入ったものと評価できる。

【問題点・改善すべき点】

・当初予定されない技術的障害は、本技術開発から見て必ずしも本質的課題でないとされているが、

全体のスケジュールが遅れて結果として当初目標が未達となったことは事実である。従ってこれらの

経緯を明らかにし、またその影響、解決可能性や全体の事業達成に与える影響などに関する技術的評

価やその根拠を、理解しやすい形で事業を実施した国、或いは第3者に適切な形で示すことが必要と

思われる。個別には既に報告がなされていると思われるが、最終報告には特にこういった経緯を明確

に示すことが望ましい。

・まだ、運転は継続されており、その結果をもって再評価する必要がある。

・成果は概ね得られたものの、目標との乖離が大きいため現在実施している自主運転の中で成果を確

認して頂きたい。

実証プラント等にトラブルはつきものであると考えられることから、全体的に余裕を持ったスケジュ

ーリングが望まれる。 商業化を視野に入れる限り、従来以上にマーケットを意識した活動が望まれ

る。

・石炭燃焼は微粉炭燃焼から間もなくガス化への移行が見える段階である。低品質炭を広範囲な燃焼

炉に適用できるよう改質できる点は、今後もっと世界にアピールされることを期待する。

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7.今後の研究開発の方向等に関する提言

・このようなシステム実証の最終的な目的は、経済的に競争力のあるシステムを実現し

普及させることである。国としては、この後の経緯をモニターしてその実現までをフォ

ローアップすることが必要と思われる。

・今後再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電源多様化が想定される中、火力発電技術

はエネルギーセキュリティ面、負荷調整機能などの系統安定化の面からも優れており、

特に石炭火力は経済性に優れることから今後ますます重要性が増すと考えられる。今後

とも国際競争力が激化している中、エネルギーの有効活用と環境負荷の低減につながる

明確な目標を持った技術開発を実施していくことが望まれる。

・クリーンコール技術は中長期的に石炭に頼らざるを得ない途上国に対して有用度の高

い技術である。今後、石炭火力のクリーン化、次いでガス化炉など高効率炉への移行、

DMEなどの原燃料としての貢献も期待できることから低品位炭利用技術の積極的な

海外市場へのアピールをすることが重要である。

・基礎研究、パイロットプラントから実用プラントへ事業支援をシフトしていくことが

望まれる。特にこれからの市場は国外が多くなると予想されることから、海外市場を開

拓するための制度的な支援を含めての検討が必要になると考えられる。

【各委員の提言】

・当初の目標が未達で、実規模のプラント実証という事業の目的自体が必ずしも完了しない形で終了

しているが、そのシステムの実現可能性は確認されたと判断されているので、技術開発としての目的

はそれなりに達成したと考えられる。しかしながらこういった現実的なシステム実証の最終的な目的

は経済的に競争力のある実システムを実現し、世界に広く普及させることにあるので、これが実現出

来なければ意味がない。国の事業は未達で終了したが、この成果を元に受託企業が自主的に実証試験

を継続、さらに事業化を検討する段階に達したというのはその点では高く評価される。但し、国とし

てはその後の経緯を丁寧にモニターしてその実現に至るまでをフォローアップして最終的にこのシ

ステムが実現することを確認することが必要と思われる。今回の技術開発事業の取りまとめにおいて

はその経緯と対応を技術的観点から丁寧に評価し、今後の技術的見通しとその根拠を明示すること、

並びに今後の技術開発計画をモニター、フォローアップの必要性を明示して、これを実現するよう努

力することが望ましい。

・本事業も含めて、経済産業省の施策ではこれまでエネルギー関連の研究開発事業に対して、プラン

トの建設と運転の経済的支援を実施してきている。しかし、支援してきた事業が実際に商用化したケ

ースはほとんどなく、費用対効果は必ずしも良いとはいえない。今後、我が国の産業の発展を考える

と、基礎研究・パイロットプラントから実際の実用プラントへ事業支援をシフトしていくことが望ま

れる。特に、これからの市場は国外が多くなると予想されることから、海外市場を開拓する技術以外

の制度的な支援を含めての検討が必要になると考えられる。また、事業が総花的であり整理する必要

がある。現在、実施されている事業がすべて商用化するとは思えない。少なくとも国内の市場はそれ

ほど大きなものではない。今後は、国内外の市場を見極めて戦略的かつ重点的な技術戦略を構築して

いくべきである。

・今後、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電源の多様化が想定される中、電力を効率的かつ安定

的に供給するために発電技術や送配電技術の高度化を図ることは重要である。中でも火力発電技術は

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エネルギーセキュリティ面や負荷調整機能などの系統安定化の面からも優れており、特に石炭火力発

電は他の化石燃料と比べ可採期間が長く経済性に優れることから、今後ますます重要性は増す技術で

ある。一方、石炭火力発電はCO2排出量が多いため、地球温暖化防止の観点から引き続きCO2排出原単

位の低減を図る必要がある。そのため、今後ともエネルギーの有効活用と環境負荷の低減につながる

技術開発が継続して行われることを希望する。

・国際競争が激化している中、開発のための開発ではなく、出口を明確に意識した研究開発が望まれ

る。このため、評価の視点の中にも、より具体的で明確な商業化プラン等を求めることが望まれる。

・クリーンコール技術は、電力需要が成長する他方原子力発電所の拡大に制約の大きく中期的に石炭

に頼らざるを得ない途上国に対して特に有用度の高い技術である。本事業では、低硫黄・低灰分であ

りながら発熱量の点からこれまで利用の低かったインドネシア炭を用いるため、ユーザーに対してエ

ネルギーだけでなく環境面でも寄与するところが大きい。事業としてはまず我が国の微粉炭補助燃料

としてスタートすることは妥当であるが、今後、途上国における石炭火力のクリーン化、次いでガス

化炉など高効率炉への移行、あるいは-現在はやや注目度が下がっているものの-DMEなどの原燃料

としての貢献も期待できる。その意味で、微粉炭燃料の補助から先に進んだ積極的な海外市場へのア

ピールをすることが重要であろう。

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第4章 評点法による評点結果

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第4章 評点法による評点結果

「低品位炭改質技術研究開発」に係るプロジェクト評価の実施に併せて、以下に基づき、本評

価検討会委員による「評点法による評価」を実施した。その結果は「3.評点結果」のとおりで

ある。

1.趣 旨

評点法による評価については、産業技術審議会評価部会の下で平成11年度に評価を行った研究

開発事業(39プロジェクト)について「試行」を行い、本格的導入の是非について評価部会にお

いて検討を行ってきたところである。その結果、第9回評価部会(平成12年5月12日開催)におい

て、評価手法としての評点法について、

(1)数値での提示は評価結果の全体的傾向の把握に有効である、

(2)個々のプロジェクト毎に評価者は異なっても相対評価はある程度可能である、

との判断がなされ、これを受けて今後のプロジェクト評価において評点法による評価を行ってい

くことが確認されている。

また、平成21年3月31日に改定された「経済産業省技術評価指針」においても、プロジェクト

評価の実施に当たって、評点法の活用による評価の定量化を行うことが規定されている。

これらを踏まえ、プロジェクトの中間・事後評価においては、

(1)評価結果をできる限りわかりやすく提示すること、

(2)プロジェクト間の相対評価がある程度可能となるようにすること、

を目的として、評価委員全員による評点法による評価を実施することとする。

本評点法は、各評価委員の概括的な判断に基づき点数による評価を行うもので、評価報告書を

取りまとめる際の議論の参考に供するとともに、それ自体評価報告書を補足する資料とする。ま

た、評点法は研究開発制度評価にも活用する。

2.評価方法

・各項目ごとに4段階(A(優)、B(良)、C(可)、D(不可)<a,b,c,dも同様>)で評価

する。

・4段階はそれぞれ、A(a)=3点、B(b)=2点、C(c)=1点、D(d)=0点に該当する。

・評価シートの記入に際しては、評価シートの《判定基準》に示された基準を参照し、該当と

思われる段階に○を付ける。

・大項目(A,B,C,D)及び小項目(a,b,c,d)は、それぞれ別に評点を付ける。

・総合評価は、各項目の評点とは別に、プロジェクト全体に総合点を付ける。

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3.評点結果

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参 考 資 料

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低品位炭改質技術研究開発 の概要について

経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石炭課

財団法人石炭エネルギーセンター

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2

目 次

1.プロジェクトの概要 2.目的・政策的位置付け 3.目標 4.成果、目標の達成度 5.事業化、波及効果 6.研究開発マネジメント・体制等

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1.事業の概要

概 要

実施期間

予算総額

実 施 者

プロジェクト リーダー

平成18 年度~平成21 年度 (4.5年間;*平成22年9月まで繰越)

37.175億円(補助金ベース;補助率1/2)

財団法人石炭エネルギーセンター

株式会社神戸製鋼所

事業:竹川 東明((財)石炭エネルギーセンター 理事 技術:柏木 健男((株)神戸製鋼所資源エンジニアリング事業部門 石炭エネルギー本部 技術部長)

本事業は、石炭資源の半分を有しながら高水分、低発熱量で自然発火性があるために殆ど利用されていない褐炭等の低品位炭を、脱水改質し瀝青炭同等の石炭に改善する技術の商業化を確立するものである。 インドネシア共和国南カリマンタン州に製品基準で600t/d規模の実証プラント(DP)を建設し、平成22年9月までに延べ2309時間の運転研究を実施し、商業機設計・操業のための主要条件やデータを得た。また、製品炭の発電所 実機ボイラーでの燃焼試験により、商業炉で十分使用可能なことを確認する とともに、製品量100万t/年規模の商業機の経済性を検討し、水分60%の褐炭でも十分に採算性があることを確認した。これらのDP規模での成果をもとに、商業機計画を推進中である。

平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度

予算(億円) 9.65 9.45 8.495 9.58

3

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エネルギー資源とそれらの比較

エネルギー政策の基本(3E)

①エネルギーの安定供給確保 (energy security)

他の化石燃料に比べ、可採年数が長く、賦存地域も分散していて供給安定性が高い。 ②経済効率性 (economic efficiency)

石炭は、原油、LNGに比べ価格は低位で安定。

③環境への適合 (environment)

石炭は単位当たりのCO2発生量が、他の化石燃料に比べ多いことから、クリーンな利用が求められる。

⇒ ・資源のライフサイクルで考えることが必要。

・グローバルな視点で考えることが必要。

・技術開発の進展などを含めた中長期的な視点で考えることが必要。

[燃料価格(CIF)の推移 ]

出典:日本エネルギー経済研究所

出典:「BP統計2009」

[地域別資源埋蔵量]

41.0

11.3

34.0

33.0

10.0 7.9

3.9

9.8 4.0

5.64.8

29.8

3.3 8.3

31.4

59.9

0.2

1.8

0%

20%

40%

60%

80%

100%

石油 天然ガス 石炭

アジア・太平洋

北米

中南米

アフリカ

ヨーロッパ&ユーラシア

中東0

2

4

6

8

10

12

'96 '98 '00 '02 '04 '06 '08 '10

原油 一般炭 LNG円/1,000kcal

出典: 「気候変動に関する国際連合枠組条約」に基づく日本国政府報告書

[熱量当たりのCO2発生量]

0

20

40

60

80

100

120

石 炭 石 油 LNG

(g-C

/10

00kc

al)

石 炭 石 油 LNG

0

20

40

60

80

100

120

石 炭 石 油 LNG

(g-C

/10

00kc

al)

石 炭 石 油 LNG

5   :  4  :  3

2.事業の目的・政策的位置付け

4

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世界のエネルギー資源に占める石炭の役割

[世界のエネルギー需要見通し ]

出典:IEA, “World Energy Outlook 2009”

27% 29%

1.5倍

[主要国の一次エネルギー構成比(2007年)]

出典: IEA, "World Energy Outlook 2009"& "Energy Balances of OECD Countries (2009 Edition)"

66%

41%

24%

22%

19%

26%

18%

27%

24%

45%

35%

34%

23%

16%

25%

23%

39%

21%

9%

13%

14%

11%

8%

6%

0.9%

1.5%

0.5%

6%

32.6%

31.5%

39%

18% 3%

6%

0.8%

0.7%

2.1%

1.8%

2.2%

0.2%

1.2%

2%

4%

1%

10%

7%

27%

10% 0.6%

0.4%

0.8%

0.9%

0.8%

0.6%

0.3%

0.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

中国

インド

米国

日本

EU

ドイツ

イギリス

世界計

石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 バイオマス他 その他再生可能エネルギー

2.事業の目的・政策的位置付け

5

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6

日本のエネルギー需給に占める石炭の役割

[日本の一次エネルギー需要 ]

○ 我が国は、1970年代の石油危機後、石油代替エネルギーとして、石炭、天然ガス、原子力をバランス良く導入することに努力。

○ 日本の一次エネルギー消費の中で、石炭は20%超を占める。

○ 日本の石炭火力発電は、発電電力量の約4分の1を占め、重要な電源の一つ。

[日本の電源構成(発電電力量)]

6.38

12.42

14.38

15.92 16.47

19.66

22.00

22.76 22.75 22.70

0

5

10

15

20

25

65 70 75 80 85 90 95 00 05 06

(1018J)

年度

69.9%

21.3%

64.7%

18.0%

56.0%

16.8%

10.7%

21.2%

16.5%

11.7%

44.1%

9.6%

55.9%

29.3%

71.6%

17.5%

55.4%

20.0%

53.6%

16.5%

11.5%

12.3%

49.0%

18.5%

13.8%

12.6%

3.4%

3.1%

新エネルギー・地熱等 水力 原子力 天然ガス 石炭 石油

出典:総合エネルギー統計

0

2000

4000

6000

8000

10000

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006

(億kWh)

(年度)

水力 9.1%

石炭 24.7%

石油 7.9%

LNG 26.0%

LPG 0.3%

地熱 0.3%

原子力 30.6%

新エネ 0.6%

出典:資源エネルギー庁「電源開発の概要」から作成

2.事業の目的・政策的位置付け

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石炭埋蔵量(2008年) 日本の石炭輸入先(2009年実績)

出典:IEA Coal Information 出典:財務省 貿易統計

米国 2,383億トン

28.9%

ロシア 1,570億トン

19.0% 中国

1,145億トン 13.9%

豪州 762億トン

9.2%

インド 586億トン

7.1%

ウクライナ 339億トン

4.1%

カザフスタン 313億トン

3.8%

南アフリカ 304億トン

3.7% その他

858億トン 10.4%

可採埋蔵量 8,260億トン

日本 186百万トン

19.8%

韓国 100百万トン

10.6% 台湾

66百万トン 7.1%

インド 60百万トン

6.4% ドイツ 46百万トン

4.9%

中国 46百万トン

4.9%

英国 44百万トン

4.7%

米国 31百万トン

3.3%

ロシア 26百万トン

2.8%

フランス 21百万トン

2.3%

その他 312百万トン

33.3% 石炭輸入量

9億3,700万トン

石炭消費量(2008年) 世界の石炭輸入量(2008年)

中国 27.6億トン

47.5%

米国 9.6億トン

16.5%

インド 5.5億トン

9.4%

日本 1.9億トン

3.2%

南アフリカ 1.8億トン

3.0%

ロシア 1.7億トン

3.0%

韓国 1.0億トン

1.8%

ポーランド 0.8億トン

1.4%

カザフスタン 0.8億トン

1.3%

豪州 0.7億トン

1.3%

その他 6.8億トン

11.7%

石炭消費量 58.1億トン

石炭の埋蔵量、消費量及び貿易量

○日本は石炭の世界最大の輸入国。国内消費量の99%以上を輸入に依存している。

-世界の石炭輸入量は9億t(日本はその20%を輸入)

-世界の石炭輸入量は生産量全体の15%(基本的に地産地消資源)

○日本は豪州とインドネシアに石炭輸入の80%を依存。

○近年、世界的に電力用一般炭の需要が急増、特に中国とインドの輸入量が拡大中。石炭需給の逼迫が見込まれる。

7

豪州 63%

インドネシア 19%

カナダ 6%

ロシア 5%

中国4% 米国2%

ベトナム1% その他0%

石炭輸入量(日本) 1億6,356万トン

○石炭の埋蔵量 世界トップ5 1 米国 2 ロシア 3 中国 4 豪州 5 インド ○石炭の消費量 世界トップ3 1 中国 28億t 2 米国 10億t 3 インド 6億t

全体の78%

全体の73%

2.事業の目的・政策的位置付け

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30.429.63.467.222.611.8202.2100.266.7

243.6

53.7

53.4

1.2

(92.8%)(66.4%)(5.7%)(93.7%)(27.2%)(13.1%)

(87.5%)(41.5%)(27.4%)

(75.4%)

(2.1%)

(5.4%)

(0.3%)

32.8

2,549.2

44.658.871.783.190.2

231.2241.4243.6

323.0451.6

980.8

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

中 

米 

イン

豪 

南 

ロシ

イン

ドネ

シア

ポー

ラン

カザ

フス

タン

コロ

ンビ

ウク

ライ

ベト

ナム

カナ

上段:生産量

中段:輸出量

下段:生産量に占める輸出率

(百万トン)

輸出量

出典:IEA, “Coal Information 2008”

主要石炭生産国の生産量(褐炭を除く)と輸出量(2007年見込み)

主要生産国の輸出と自国消費比率

○3大生産国である、中国、米国、インドは共に自国消費割合が高い。 ○ それに対し、輸出割合が高いのは豪州、インドネシア。

2.事業の目的・政策的位置付け

8

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低品位炭の有効利用

○エネルギー需給緩和のための低品位炭の液化・ガス化技術の開発・導入 -産炭国のエネルギー需給構造に合わせた液化・ガス化技術の開発 -低品位炭ガス化によるメタン、DME等は、将来的に我が国へのクリーンエネルギー供給に貢献可能 ○未利用資源の有効利用のための低品位炭の改質技術の開発・導入 -輸送や燃焼効率改善のための脱水・乾燥等改質技術の開発等

低品位炭

発電用 一般炭

産炭国

CO2 回収・貯留

メタノール DME

FT 合成油など

既存の LNG 製造設備

で液化

LNG

ガス化 液体燃料 製造

SNG 製造

大量消費国

既存のLNG輸送インフラに合流

CO2 回収・貯留

山元発電

国内需要を賄うとと もに、海外へも輸出

改質、高効率乾燥による発電効率向上

2.事業の目的・政策的位置付け

9

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低品位炭改質技術開発 (UBC) 【H18-21】

微量金属元素除去技術

二酸化炭素削減のための石炭発電・燃焼

革新的ゼロエミッション石炭火力発電プロジェクト(FS)【H20-24】

電力事業向け; ・発電効率向上 ・CCSによる

CO2削減

工業用ボイラー 中小発電向け; ・熱の有効利用 ・制御等による

効率向上 ・中長期には、

CO2回収型燃

焼方式

多目的石炭ガス製造技術開発(EAGLE) 【H19-21】

酸素燃焼国際共同実証事業【H20-28】

革新的ゼロエミッション石炭火力発電プロジェクト(基盤研究事業) 【H20-24】

クリー

ンコー

ル技

資源安定供給のための石炭利用

自然発火性や

水分が多いこと

で利用が限られ

ている低品位炭

等の有効利用: ・ガス化 ・固体化 ・スラリー化

石炭部分水素化熱分解技術

石炭ガス化技術

石炭液化技術

低品位炭改質技術

微粉炭火力発電技術

石炭ガス化発電技術

石炭ガス化燃料電池複合発電 (IGFC)

常圧・加圧流動床燃焼技術 (AFBC・PFBC)

先進超々臨界圧火力発電 (A-USC)

石炭ガス化複合発電 (IGCC)

酸素流動床燃焼技術(Oxy-FBC)

産業用ボイラー効率化技術

次世代石炭ガス化複合発電 (A-IGCC)

石炭地下ガス化技術

常圧流動床ガス化技術

石炭高度燃焼技術

石炭部分水素化熱分解技術開発(ECOPRO) 【H15-20】

対 象 技術分野 技 術 事 業 事業概要 IGCCからCCSまでのトータルシステム検討

発電効率向上と多目的な石炭ガス化技術開発

CO2回収が容易な酸素による燃焼発電技術の実証

IGCC (含CO2回収型)による更なる高効率発電技術を目指した先進基盤技術開発

低品位炭を油中で脱水し、ブリケット化することで安定化する技術開発

ガス化反応に加え、部分水素化熱分解反応により高効率でCH4を含む合成ガスを製造する技術の開発

無触媒石炭乾留ガス改質技術開発【H18-21】

石炭乾留ガス改質技術 コークス炉からのガスをタールを含む高温のまま改質し、合成ガスを製造する技術開発

CO2分離回収(Pre Combustion)

CO2分離回収技術

ケミカルルーピング燃焼技術

合成ガス利用技術

環境対策

石炭灰・スラグ有効 利用技術

排煙処理技術

セメント・コンクリート分野等利用技術

SOx・NOx・煤塵処理技術

CO2対策技術 環境対策技術 (既述記載を除く)

褐炭の含有水分の蒸発潜熱を効果的に回収するシステムの開発

低品位炭からクリーンな代替天然ガス(SNG)への高効率的な転換システムの開発

ガスタービン燃焼前にCO2を分離回収する技術の開発

戦略的石炭ガス化・燃焼技術開発(微量金属元素高度除去) 【H19-22】

燃焼排ガス中微量金属元素等の高度除去技術の開発、分析手法標準化

低品位炭からのクリーンメタン製造技術研究 【H22-25】

高効率褐炭乾燥システム 研究 【H22-23】

革新的CO2回収型石炭ガス化技術開発 【H22-25】

産炭国石炭開発・利用協力事業 【H22-25】

未利用炭有効資源化技術開発【H22-23】

産炭国における低品位炭の改質技術の実証

低品位炭を常圧でガス化する技術の開発

終了

終了

ガイドライン作成を実施

民間企業による実用化

世界動向 を調査

国内での 調査を実施 民間企業による実用化

今後の研究課題

褐炭スラリー化技術

褐炭ブリケット化技術

褐炭乾燥技術

石炭直接液化技術

DME製造技術

SNG製造技術

今後の研究課題

酸素燃焼発電技術 (Oxy-fuel)

実施中

CO2分離回収(Post Combustion) 民間企業による大型実証

施策の構造

2.事業の目的・政策的位置付け

10

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2.事業の目的・政策的位置付け

目的 • 近年、アジア地域を中心とした経済発展により石炭需要の増加が見込まれることから、世

界の石炭需要はよりタイト化する見通しである。

• 我が国は、世界最大の石炭輸入国であり、国内石炭需要量のほとんどを海外からの輸入

に依存していることから、国際規模での石炭の安定供給を図ることは重要な課題となって

いる。

• 現在主に生産・利用されている瀝青炭は、高発熱量で輸送・貯蔵時の安定性に優れている

が石炭資源の半分程度であることから、今後、残りの半分を占める低品位炭(水分含有量

が多い、自然発火性がある等から利用は限定)の有効活用は重要。

• インドネシアはアジア・太平洋地域の石炭輸出国としては、豪州に次いで石炭輸出量が多

いが、国内でも石炭は主要なエネルギー源として今後の需要は増加するものと予想されて

いる。

• インドネシアの石炭資源は、80%以上が低品位炭であることから、その有効利用は、日本、

インドネシア両国にとって、重要な共通課題であると同時に、安定的なエネルギー確保、地

球環境問題へ貢献する。

• 低品位炭を油スラリー中で脱水することによりその熱量を瀝青炭並に改善、さらに自然発

火性を抑制し、利用可能な資源に転換する技術である低品位炭改質技術(UBC)につい

て、600t/日の実証プラントにより、商業化技術の開発・実証を行うことを目的とする。

11

Page 93: 低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 · プロジェクト事後評価報告書. 平成23年3月. 産業構造審議会産業技術分科会

2.事業の目的・政策的位置付け

政策的位置付け

• 本事業で開発する低品位炭改質技術(UBC)は、経済産業省が策定した「エネルギーイノベーションプログラム基本計画」及び「技術戦略マップ2010」において、「化石燃料の安定供給確保と有効かつクリーンな利用」技術として位置づけられている。

• また、平成21年度の総合エネルギー資源調査会鉱業分科会クリーンコール部会において、低品位炭の活用や産炭国との関係強化が提言され、さらに、平成22年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、石炭の安定供給確保のため産炭国の未利用な低品位炭について改質技術等による有効利用を進め、産炭国のエネルギー需給の緩和に貢献し、将来的には我が国への新たな石炭供給源とすることを目指す、と位置づけられている。

12

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UBCプロセスの原理 • 褐炭を油スラリー化して加熱、褐炭中の水分を蒸発除去し、高発熱量化する。 • 比較的穏やかな温度・圧力条件のため、高スペックの機器が不要であり、石炭が化

学変化をおこさないため有害な排水等も生成しない。 • 脱水時の蒸気の熱を再利用する省エネルギーのプロセスである。

3.目標

13

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UBCプロセスの原理(2) • 粉砕された褐炭は熱媒の油の中で加熱され、褐炭の水分が蒸発し、脱水される。 • 熱の伝導度が高いため、水分60%を超える褐炭でも効率的に脱水処理できる。 • 油中に少量混入されたアスファルトは褐炭の細孔内に選択的に吸着され、細孔を

塞ぐ。このため、褐炭の表面積が小さくなり、自然発熱(低温酸化)が抑制される。

3.目標

油中脱水+安定化

アスファルトが石炭細孔内に選択的に吸着

表面の付着水、内部の吸着水を蒸発させて除去

油中脱水+安定化

アスファルトが石炭細孔内に選択的に吸着

表面の付着水、内部の吸着水を蒸発させて除去

油中脱水+安定化

アスファルトが石炭細孔内に選択的に吸着

油中脱水+安定化

アスファルトが石炭細孔内に選択的に吸着

表面の付着水、内部の吸着水を蒸発させて除去

水蒸気

脱水後の熱媒(アスファルト分が

UBC粉に吸着され

ている)

脱水前の熱媒(アスファルト添加

軽質油)

14

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UBC製品の特徴 • 水分60%の市場価値のない褐炭も、瀝青炭同等の発熱量を持つ改質炭になる。 • 輸送・貯炭時の安定性が向上し、広範な市場への輸出が可能である。 • 低灰分、低硫黄の褐炭の特長を生かし、利用(燃焼)時の環境負荷が小さい。

褐炭(原料) UBC製品 参)瀝青炭

水分 35% 60% 8~10% 10%前後

熱量 4,200kcal/kg 2,300kcal/kg 6,000kcal/kg 6,300kcal/kg

用途 山元発電、近隣向出荷 (山元発電) 燃料用(国際

市場向) 燃料用(国際市場向)

輸送 自然発熱傾向大 撥水、成型、 安定化 安定

灰 4% 8% 4% 8% 12~13%

硫黄 0.2% 0.3% 0.2%

0.3% 0.5~0.8%

3.目標

15

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技術開発段階における実証プラント(DP)の位置づけ • 1980年代より褐炭液化の一環でスラリー脱水技術を研究、1993年に褐炭改質へ

の適用の研究に着手した。その後、BSUにより基本技術を確立し、PPにより実用化に向けた設計・操業の技術を取得してきた。

• 実証段階は商業化に向けた最終の開発段階であり、DPは商業機の10分の1以下のスケールアップ比率となるよう、600t/d規模とした。

3.目標

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

褐炭液化事前処理

パイロットプラント

基礎研究15L A/C

プロセス開発(BSU)

0.1t/d、バッチ式

プロセス開発(2)(PP)

3t/d、連続式、屋内

大規模実証 (DP)

600t/d、連続式、屋外

商業機

3000~5000t/d

設計・建設 運転     適宜運転

16

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実証プラント(DP)の事業目標 商業化の実現のために必要な下記の項目を確認・実証する。 1. 【技術の確立】大型機*の設計・操業技術を確立する。(*5000t/d程度を想定) 2. 【経済性把握】FS精度の向上する。(原単位の精度向上、プラント建設費の把握) 3. 【市場性把握】試験出荷により利用性を確認する。(バルクサンプル製造と利用)

定量的目標値 上記の目標の完遂のため、各々について定量的目標を設定した。

項目 目標値 設定理由

大型化技術の確立

80%負荷率以上での運

転およびデータ取得 スケールアップのための設計・操業条件を確認し、エンジニアリングデータを取得する。

1000時間連続運転

運転保全技術を確立し実証するために、長期連続運転を行う。連続時間数は目処として設定。

経済性把握

商業機改質コスト $15/トン(石炭費は除く)

瀝青炭と熱量等価の販売を前提に、採算性が十分確保できると想定されるレベルとした。

市場性把握

製品品質 6000kcal/kg以上・全水分10%以下

日本の発電所で使用されている豪州瀝青炭(5730~6900kcal/kg、水分6~18.5%)と同程度とする。

5000トン規模での海上

輸送実績 バラ積み船による輸送、揚地でのハンドリング、ボイラーでの使用評価のために十分な量とする。

商業機での利用実績(混炭率20%以上)

灰付着性、粉砕時の発火の可能性等を勘案し、目標混炭率を設定した。

3.目標

17

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プロジェクト実行スケジュール • H18~21年度にかけ実証プラント(DP)の建設・運転を行う当初計画に対し、H21年

度の機器破損の影響により、H22年9月末まで半年間の期間延長を行った。 • また、H22年7-8月の大雨の影響等により更にスケジュールが遅延したが、同年10

月以降は自主事業として運転を継続中である。

H21年度事業計画を変更し、期間をH22年9月末まで延長した。 ※1

※2 H21年度事業終了後、㈱神戸製鋼所による自主事業として開発を継続中である。

H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度

設計・建設 ※1試運転・運転

(自主運転)   ※2

高負荷運転連続運転製品評価

成型機破損トラブルにより6~9月

にかけて停止7~8月の記録的豪雨により原炭

供給減少

4.成果、目標の達成度

18

Page 100: 低品位炭改質技術研究開発 プロジェクト事後評価報告書 · プロジェクト事後評価報告書. 平成23年3月. 産業構造審議会産業技術分科会

実証プラントの建設 • 実証プラント(DP)は商業機の10分の1以下のスケールアップ比率となるよう、

600t/d規模とした。(商業機は3000~5000t/dを想定) • 原料褐炭の入手が可能、かつ工事が容易なインドネシア南カリマンタン州サツイ地

区に立地し、H19年5月現地着工、H20年12月竣工した。

4.成果、目標の達成度

カリマンタンス

マトラ

3t/dパイロットプラント(パリマナン)

600t/d実証プラント

19

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実証プラント(DP)の運転結果(1) • H22年5月以降、成型機の増設と改造により運転が安定し、7-8月にはバルク出荷

用に約4,000tを生産した。 • H22年10月以降、自主運転により高負荷・連続運転試験を継続中である。

4.成果、目標の達成度

27,111 t

41,353 t

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

Sep

-08

Dec

-08

Mar

-09

Jun-

09

Sep

-09

Dec

-09

Mar

-10

Jun-

10

Sep

-10

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000累積石炭使用量

累積運転時間

出荷用サンプル製造

製品パイル手法確立出荷用サン

プル製造

成型機破損トラブル

ton hr

成型機増設(予算外)

高負荷・連続操業

→2010.10月~  自主事業

20

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実証プラント(DP)の運転詳細 年度

Run Date石炭運転時間 hr

石炭供給量 ton

負荷%

運転目標 運転成果と主なトラブル

1 '08年11月7~11日 1.7 10 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、ドライヤー機械トラブル

2 '08年11月26~30日 13.2 134 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、デカンタ潤滑油トラブル

3 '08年12月9~19日 19.1 183 30 基本性能確認 石炭供給30%負荷、成型工程調整不良

4 '09年1月15~20日 28.5 278 30-50 基本性能確認+負荷アップ 石炭供給50%負荷。成型工程調整不良

5 '09年2月2~10日 27.5 350 30-60 基本性能確認+負荷アップ 石炭供給60%負荷、蒸気ボイラートラブル

6 '09年3月2~5日 24.6 290 30 基本性能確認+負荷アップ 成型機を含む30%負荷連続運転確認

7 '09年3月12~14日 28.8 296 30 プロセス性能確認 30%負荷での蒸気コンプレッサ連結運転

8 '09年3月24~28日 20.7 270 30-60 ブリケット仕様確認 ブリケット仕様確認

9 '09年4月15~4月29日 39.4 574 30 50 63 C-201連結運転手法の確立 石炭供給63%負荷、BM-502粉の安定供給。

10 '09年6月9~6月21日 37.6 563 50-63BM-502改造効果確認、C-201連続24時間運転

C-201連続運転。BM-502ロールタイヤ破損。

11 '09年9月 9~9月15日 25.1 375 50BM-502改造効果確認、生炭ブレンド試験

生炭ブレンドによりブリケット強度向上。BM-502タイヤのズレ発生。

12 '09年10月5~11月28日 259.6 3,011 30-50生炭ブレンド、運転条件最適化、製品評価試験用サンプル(75トン)の製造・出荷

製品サンプル(75トン)製造・出荷。400sec.バグフィルターフレキ破損。

13'09年12月27~ '10年1月20日

335.5 3,368 30製品評価試験用サンプル(1500トン)の製造・出荷

製品サンプル(1500トン)の製造・出荷

14 '10年3月16~4月8日 104 1,294 50-30新設BM-501立上げ。BM-502改造効果の確認。 アーモンド型ブリケットの評価

BM-501安定運転困難。

15 '10年5月3~5月15日 134 1,544 30-50500sec.UBC加湿化、及び、成型機の改造効果の確認

BM-502のブリケット強度改善。加湿の効果確認。

16 '10年5月19~6月12日 300.7 4,01130-50、

80製品安定化の為のパイル手法確立、高負荷トライアル運転

80%負荷運転時にD-301のショックロード・トリップ。

17 '10年7月7~8月15日 634.8 7,193 30-40ブリケット空冷設備運転。製品評価試験用サンプル(4000トン)の製造・

約3900トンのUBCを製造。D-301バイパス運転。

18 '10年9月9~9月28日 273.9 3,394 30-50 高負荷/連続運転 C-201軸振動トラブル等により中断。

18-③

'10年10月4日~11月3日 492.0 7,965 30-80

高負荷/連続運転 連続運転12日(約280時間、10/22-11/3)。内、80%負荷×47時間保持。循環ガス系条件設定ミスで中断。

18-④

'10年11月7日~21日 328.3 6,27750-63、

80

高負荷/連続運転 連続運転14日、321時間(11/7-11/20)。内、63%負荷×100時間保持。D-301トラブルにより停止。80%負荷は5時間。

H20

H21

H21 繰 越

H22

4.成果、目標の達成度

21

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UBC製品性状 • DPでの操業の結果、UBC製品の水分は8.3%(目標 10%以下)、発熱量は

6,052kcal (目標 6,000kcal)を達成した。尚、原炭はA炭(水分32.5%)である。 • また、水分60.5%のB炭を原料に、別途PP(パイロットプラント)で行ったテストの結

果についても、水分、発熱量は概ね同程度となった。

分析 DP操業結果 (A炭) PP試験結果 (B炭)

原炭 UBC製品 原炭 UBC製品

水分 到着ベース [%] 32.5 8.3 60.5 7.3

灰分 到着ベース [%] 4.0 4.0 3.6 6.1

揮発分 到着ベース [%] 32.7 44.5 20.1 48.3

固定炭素 到着ベース [%] 30.8 43.2 15.8 38.0

元素分析

炭素 無水無灰ベース [%] 72.72 73.41 69.0 72.8

水素 無水無灰ベース [%] 5.05 5.09 4.9 5.1

窒素 無水無灰ベース [%] 1.20 1.06 0.9 1.1

硫黄 無水無灰ベース [%] 0.40 0.16 0.26 0.18

酸素 無水無灰ベース [%] 20.63 20.28 25.0 20.7

高位発熱量 到着ベース [kcal/kg] 4,349 6,052 2,328 5,998

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大型化技術の確立(1)

<80%負荷率以上での運転:スケールアップデータ取得> • 80%以上の運転は延べ70時間にとどまっているが、商業機設計・操業のための主

要な条件は判明している。 • 10月以降の操業によりデータを補強拡充し、万全を期す。

Run 時期 負荷 運転時間 備考

Run12 ‘09年10月 80% 4hr

Run16 ‘10年6月8~12日 80% 8hr デカンタの制御不良のため配管を改善。

Run18 ‘10年11月1日~11月3日

80% 47hr 操業条件設定ミスのため停止。蒸気回収時 のスラリー飛沫混入のため、コンプレッサー の上流設備を手直し。

‘ 10年11月20日 80% 1hr 計器トラブルのため停止

‘10年11月21日 80% 4hr 機器トラブルのため停止

<成果> ・回収蒸気への飛沫混入対策によるプロセス安定化 ・遠心分離機周辺の設計最適化 ・油分乾燥機の循環ガス圧力条件最適化 等

4.成果、目標の達成度

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大型化技術の確立(2)

<1000時間連続運転:運転保全技術の確立と実証> • 連続運転は最長321時間にとどまったが、運転中断は機械的トラブルに起因するも

ので、プロセスとしての安定性は概ね実証されている。 • 10月以降の操業により、プロセスと機器両方の安定性を実証する。

Run 時期 負荷 連続運転時間 備考(停止理由等)

Run13 ‘09年12月27~1月20日

30% 109hr、 107hr、119hr

設備点検等で都度中断

Run15 ‘10年5月10~15日 30% 119hr 発電機トラブル

Run16 ‘10年6月4~12日 30-80% (192hr*) 予定改修工事実施 (*途中短時間の停止3回あり)

Run17 ‘10年7月10~17日 30-38% 156hr 設備メンテナンスのため中断

Run18 ‘10年10月5~10日 47-63% 116hr 機器トラブルのため中断

‘10月27~11月2日 47-80% 160hr 機器トラブルのため中断

‘10年11月7~20日 50-63、80% 321hr 機器トラブルのため停止

4.成果、目標の達成度

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ハンドリング性の評価(1)

①UBCデモプラント(インドネシア)

②現地港

③バージ

④本船

⑤サミット明星パワー(日本)

2010年9月 2010年10月 2010年11月

DPで保管9/24-10/2現地港へ移送界面活性剤散布

9/26-10/17現地港で保管

10/18-10/20バージへ積み込み界面活性剤散布

10/19-21バンジャルマシン沖へ移送

10/21-23本船へ積替え

サミット明星パワーで保管

11/15- 燃焼試験開始

10/24-11/8日本へ移送

11/9サミット明星パワーへ荷揚げ

IPP事業者

S社(新潟県糸

魚川市)

11/9

糸魚川市姫川港で

荷揚げ、S社に搬送

し、貯炭。

• バルク(ばら積み)貨物としてプラントから出荷し、船積み、航海、荷揚げ、客先での貯炭・運炭まで、約2ヶ月にわたり問題なくハンドリングできる事を確認。

• 予定数量を下回ったが、大型船での出荷と同じ工程を経て、ハンドリング性が実証された。

4.成果、目標の達成度

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ハンドリング性の評価(2)

’10.10.21-23 本船積荷役

左 本船に横付けしたバージ 中 バージ上のUBCをつかむ グラブバケット 右 本船船倉内に積みこまれ たUBC

’10.11.9 本船揚荷役

左 連続式アンローダによる 荷役(糸魚川市 姫川港) 中 船倉内のUBC揚荷役状 況 右 長期貯炭に備えるUBC

’10.10.18-20 バージ積込み 左 バージにUBCを積み込む

ダンプカー 右 バージ上でUBCを山積み するホイルローダー

4.成果、目標の達成度

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燃焼性の評価(1) • 自家発電用微粉炭ボイラー(兵庫県加古川市)にて、豪州瀝青炭との混炭(UBC

20%)で使用し、問題なく使用可能なことが実証された。

使用工程と 評価項目

4.成果、目標の達成度

<自家発電設備仕様>出力 145MW蒸発量 450t/h蒸気条件 17.1MPa×569/541℃ボイラ燃料 石炭(微粉炭)、COG運転開始 1996年

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燃焼性の評価(2) • 貯炭中の豪雨による水分超過の影響を除けば、発電出力は問題なく達成できた。 • 粉砕特性、燃焼性、排ガス特性、集塵特性等については全く問題が無かった。

(4月7日まで瀝青炭100%操業) 4/7 4/17 4/18 4/19 4/21 4/22

給炭量 t / h 55.1 39.6 41.6 42.8 45.4 49.8

石炭中水分 % 12.7 15.9 16.3 15.1 15.4 -

発電出力 MW 144 97 102 106 112 116

蒸気量 t / h 449 283 301 312 335 348

蒸気温度 ℃ 566 567 567 567 567 567

モーター電流 A 54 50 51 51 52 52

1次空気流量 kNm3/h 22.8 20.0 20.3 20.6 21.0 21.3

テーブル差圧 kPa 1.89 1.57 1.61 1.66 1.70 1.74

ミル入口温度 ℃ 222 217 223 222 219 224

ミル出口温度 ℃ 75 66 66 66 65 65

ミル振動 μm 22 16 16 16 16 16

灰中未燃焼炭素分 % 3.3 2.0 - - - -

脱硝前NOx濃度 ppm 109 89 85 93 91 94

脱硫前SOx濃度 ppm 453 373 388 386 390 390

電気集塵機による集塵率 % 99.6 99.6 - - - -

4.成果、目標の達成度

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燃焼性の評価(3) • ボイラー内の灰の付着性については、ボイラー内2箇所に試験装置を設置して観測

した結果、操業に影響を与えるレベルではなかった。 • 混炭比率をあげる場合、燃焼温度と灰の成分組成を用いて灰の液相(溶融)割合を

計算することにより、予め灰の付着性を予想することが可能。

ボイラー内の灰付着試験

今回の条件に基づく 灰の液相割合試算

4.成果、目標の達成度

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経済性の評価(1)

<商業機建設コスト想定> • 今回のDP(水分35%褐炭)の操業データを基に、まず35%水分を対象とした建設

コストを想定し、60%水分の褐炭によるPPでの実験データにより見直しを加えた。 • 規模は、炭鉱開発が段階的に進む状況を想定して、最小の商業生産規模と目され

る製品ブリケット生産量ベースで100万トン/年とした。

褐炭水分 原料供給量 製品生産量 建設費

35% 4,600 T/d 1.5 MMT/y 3,000 T/d 1.0 MMT/d US$ 130 MM

60% 7,220 T/d 2.5 MMT/y 3,000 T/d 1.0 MMT/d US$ 150 MM

Feed Lignite TM=60%

(60% Moisture)

Su lfur :0 .29%

Ash : 10 .4%

Moisture : 8%

UBC Commercial Plant Study Balance

Steam

UBC Commercial Plant

3,000t/d

Power

Oil 18t/d

Coal 7,220t/d 3,000t/dUBC Br iquetteQual i t ies;

Boiler & Generator

CV: 6000 kcal/kg

商業機レイアウト(16ha) 商業機物質収支

4.成果、目標の達成度

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経済性の評価(2)

<商業機経済性想定> • DP運転から得られた原単位により採算性を検討した結果、60% 水分の褐炭にお

いても経済性がある。(高水分褐炭の場合、採掘条件の良い資源も未開発)

褐炭水分(TM) 60% 35%

褐炭価格(工場渡し) U$10/t U$15$/t U$15/t

建設コスト U$150MM 同左 U$130MM

製造コスト (製品トン あたり)

原料代 U$24/t U$36/t U$23/t

変動加工費* 固定費 減価償却費

11 3 8

13 3 8

9 3 7

改質コスト計 (22) (24) (19)

計 46 60 42

製品輸送費 8 8 8

保険・資産税・ライセンス料他 4 4 4

総コスト(除金融費用) 58 72 54

UBC 販売価格と 採算性

価格 IRR% ROE% IRR% ROE% IRR% ROE%

U$ 100/t 25 43 18 31 27 51

U$90/t 20 36 13 22 23 43

U$80/t 16 28 9 13 19 34

4.成果、目標の達成度

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目標の達成度 4.成果、目標の達成度

本事業での開発目標(大型化技術の確立、経済性把握、市場性把握)を全て達成した。

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項目 目標値 成果 達成度

大型化 技術の 確立

80%負荷率以上での 運転およびデータ取 得

80%以上の運転は延べ12時間にとどまっているが、 商業機設計・操業のための主要な条件は判明した。 (10月以降の自主操業により80%以上運転は延べ64時間となり、データを補強拡充した)

一部達成

1000時間連続運転 連続運転は156時間にとどまったが、運転中断は機械

的トラブルに起因するもので、プロセスとしての安定性は実証された。 (10月以降の自主操業により、連続運転は321時間を達成し、機械設備面の安定性も実証)

一部達成

経済性 把握

商業機改質コスト $15/トン (石炭費は除く)

より高水分の原料褐炭に変更(当初35%から60% へ)した影響もあり改質コストは$20/tを超えたが、 現状の市場価格を前提に経済性があることが示され た。

一部達成

市場性把握

製品品質 6000kcal/kg以上 全水分10%以下

原炭水分60%であっても左記達成可能なことが示さ れた。

達成

5000トン規模での 海上輸送実績

船積量は1755トンであったが、DPから日本の発電所 貯炭ヤードまで、全ての工程を通じて、適切な管理 により十分出荷可能なことが示された。

一部達成

商業機での利用実績 (混炭率20%以上)

20%混炭での実炉試験で十分使用可能なことが示さ れた。

達成

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• 製品出荷形態 (混炭も選択肢)

• プロジェクト形態 (案件に応じた多様性)

褐炭採掘 UBC製造 UBC 単独出荷

輸送

混炭 ヤード

UBC Plant

需要家

UBC 混炭出荷

海外発電需要家

海外製鉄・その他産業

需要家

山元発電所

ガス化事業

褐炭鉱山+

UBC Plant

出資及びUBCオフテイク

国際石炭市場

UBC販売 UBC山元事業

(キャプティブ)

(マーチャント)

5.事業化、波及効果 当初想定していた水分30%よりも、劣質な水分60%褐炭にも本技術が適用できるこ

とを確認し、この褐炭の山元での事業化について、インドネシアの資源会社等と共同で検討を進めている。

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• 本事業は日本とインドネシアの共同研究として実施され、基本協定書(MOU)を(財)石炭エネルギーセンター (JCOAL)とインドネシア国エネルギー鉱物資源省研究開発庁が締結し、JCOALと研究開発庁傘下の鉱物石炭技術研究開発センター(tekMIRA)が実施機関として年度毎に実施計画書を取り交わして事業を推進した。 • 日本側は本技術の開発者の㈱神戸製鋼所がJCOALの分室として事業に参加した。また、プラント建設、運転等については、インドネシア国の法規により現地法人であることが必要なため、インドネシアにおける事業運営母体として、PT. Upgraded Brown Coal Indonesia (PT.UBCI)を設立し 事業運営を行った。また、JCOAL事業化推進部長およびインドネシア側のtekMIRA 所長が両社の代表として事業を統括し、神戸製鋼所の専任担当者がプロジェクトリーダーとして事業を運営した。 •事業運営では、両国の役割分担をMOUに明記し、各年度の事業は両国関係者間で適宜協議を行い、効率的な運営に努めた。また、日本側においては、本事業の計画内容、目標設定等について有識者による委員会において外部検討、評価を行った。

6.研究開発マネジメント・体制等

METI

JCOAL

エネルギー鉱物資源省

研究開発庁(ARDEMR)

鉱物石炭技術研究開発センター(tekMIRA)

【日本】 【インドネシア】

MOU (基本協定書)

Government Talk(EPA, Coal Dialog)

PT. UBCIインドネシアでの事業運営母体

ID(実施計画書)

運営委員会

Advisory Committee

PT. BumiPT. Arutmin

神戸製鋼所

プラント用地、ユーティリティ供給、 運転員派遣他

METI

JCOAL

エネルギー鉱物資源省

研究開発庁(ARDEMR)

鉱物石炭技術研究開発センター(tekMIRA)

【日本】 【インドネシア】

MOU (基本協定書)

Government Talk(EPA, Coal Dialog)

PT. UBCIインドネシアでの事業運営母体

ID(実施計画書)

運営委員会

Advisory Committee

PT. BumiPT. Arutmin

神戸製鋼所

プラント用地、ユーティリティ供給、 運転員派遣他

低品位炭改質技術推進委員会

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参考資料

「低品位炭改質技術研究開発」プロジェクト評価(事後)

今後の研究開発の方向等に関する提言に対する対処方針

提 言 対 処 方 針

○本技術の商業化に向けた国の取組

このようなシステム実証の最終的な目的は、経済的に競争力

のあるシステムを実現し普及させることである。国としては、こ

の後の経緯をモニターしてその実現までをフォローアップする

ことが必要と思われる。

○クリーンコール技術開発の更なる推進

今後再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電源多様化が想

定される中、火力発電技術はエネルギーセキュリティ面、負荷

調整機能などの系統安定化の面からも優れており、特に石炭

火力は経済性に優れることから今後ますます重要性が増すと

考えられる。今後とも国際競争力が激化している中、エネルギ

ーの有効活用と環境負荷の低減につながる明確な目標を持

った技術開発を実施していくことが望まれる。

○クリーンコール技術の海外展開

クリーンコール技術は中長期的に石炭に頼らざるを得ない途

○本技術の普及についてモニターするとともに、産炭国との政策対話の場を

も活用し、商業化に向けて、フォローアップする方針である。

○世界的な、特にアジアを中心とする石炭需要の増大に対応することは喫緊

の課題である。日本は石炭の有効活用と環境負荷の低減に資する技術の

リーダーであり、クリーンコール技術の開発を更に推進するべく支援してま

いりたい。

○世界の石炭埋蔵量のおよそ半分は低品位炭であり、その有効活用を積極

的に進めるため、産炭国との政策対話、クリーンコール技術セミナー等を

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上国に対して有用度の高い技術である。今後、石炭火力のク

リーン化、次いでガス化炉など高効率炉への移行、DMEなど

の原燃料としての貢献も期待できることから低品位炭利用技

術の積極的な海外市場へのアピールをすることが重要であ

る。

○海外市場開拓のための支援

基礎研究、パイロットプラントから実用プラントへ事業支援をシ

フトしていくことが望まれる。特にこれからの市場は国外が多く

なると予想されることから、海外市場を開拓するための制度的

な支援を含めての検討が必要になると考えられる。

通じて、我が国の優れたクリーンコール技術を紹介し、その普及に努めて

いるところである。石炭の世界的安定供給のため、石炭需要の増大する地

域等海外市場に積極的にアピールしてまいりたい。

○プラント輸出は国としても積極的に支援しているものであり、金融面など、

技術以外の部分についても支援しているところである。設備などのハード

面のみならず、その効率的な運用も含むソフト面での支援も重要である。

本技術の適用は石炭の安定供給確保に資するのみならず、CO2排出削

減効果も期待できることから、制度的な支援も含め積極的に対応してまい

りたい。