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知識ゼロからものづくりを学ぶ 機械設計エンジニアの基礎知識 · 2015-08-19 · 以上のように、一人前の設計者になるためには非常に多くの知識を必要とします。但し、これだけの知識を全て見

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機械設計エンジニアの基礎知識

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【 目 次 】

1. 設計者になるにあたっての心構え ..................................................................................................... 2

1-1. 設計とは ................................................................................................................................ 2

1-2. 設計者になるために ................................................................................................................ 2

2. 機械設計に必要な知識と勉強法 ...................................................................................................... 3

3. 機械設計に資格は必要か?............................................................................................................ 5

3-1. 機械設計に資格は必要? ........................................................................................................ 5

3-2. 資格があれば転職に有利なのか? ............................................................................................ 5

3-3. 機械設計に関する資格とは ....................................................................................................... 5

4. 設計者へのステップ ....................................................................................................................... 6

5. 機械設計のプロセス ....................................................................................................................... 7

6. 企画作成及び構想設計 .................................................................................................................. 8

7. 基本設計および詳細設計 ............................................................................................................... 9

7-1. 基本設計 ............................................................................................................................... 9

7-2. デザインレビュー(Design Review) ............................................................................................. 10

7-3. 詳細設計 .............................................................................................................................. 10

7-4. 部品表作成 .......................................................................................................................... 11

8. 試作及び評価試験 ....................................................................................................................... 12

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1. 設計者になるにあたっての心構え

1-1. 設計とは

設計とは何でしょうか?

Wiki には「必要とする機能を具現化し検討した結果を建築物や工業製品、情報システム等を造るために仕様(設

計図書)や設計図・設計書等を作る作業である。」と書かれています。

言い換えると、設計とは 「アイディアを製品化すること」です。

つまり、「どれだけ世の中が必要としている製品を作れるのか」 が設計者として最も重要な役目となります。しかし、

世の中が必要としている製品を作ったとしても、値段が高すぎる製品では売れません。従って、適切なコストで目指

す機能・仕様を満足できるように設計する必要があります。

また、適切なタイミングで製品化する必要が出てきます。「発売したけど他社に遅れをとって売れませんでした」 で

は意味がありません。決められた開発期間内に素早く製品化する必要が出てきます。

さらに、自動車や家電製品のように同じ製品を何台も作る場合は大量生産を可能とする設計にしなければなりませ

ん。大量に生産する場合、安定した材料の仕入れを可能とし、同じ品質の物を生産できる体制を整える必要があり

ます。当然、設計図が品質に大きく影響を及ぼしてきます。

従って、設計するためには様々な知識が必要となってきます。製図や力学等の機械設計に関する一般的な知識

から、材料、加工、品質管理に至るまで幅広い知識が要求されます。

これらの知識は大学で学ぶ機械工学がベースとなります。但し、機械工学を学んでいなくても大丈夫です。実際の

設計現場では文系の方が設計している場面にもよく出会います。機械設計は大学で学ぶ知識を必要とする場面も

出てきますが、社会人としての心構えやセンスの方が重要です。

1-2. 設計者になるために

機械設計は勉強のみでできるようになるものではありません。実際に設計業務を行いながら身につけて行くもので

す。私は製造業の設計者を経験していますが、実際の設計経験を積む過程で様々な知識を習得してきました。

機能を満足させるために世の中で実績のない新しい製造方法にチャレンジしたこともあります。金型や加工等など

製造に関する知識は設計者になってから身につけました。会社で必要性とされていたため、関係する資格も取得

しました。特許や実用新案などを出すこともできました。その多くの知識は実務経験の中で身につけたものです。

知識は設計の力となります。設計について勉強することは良いことです。しかし、知識を身につけただけでは設計

は出来ません。実際に身につけた知識を活用して設計してみることです。従って、「勉強してから設計者になるぞ」

ではなく、設計者のたまごから初めて、並行して知識を身に付けることをオススメ致します。

しかし、全く何の知識のない状態からスタートすることは不安だと思います。

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そこで、私がこれまでに得た知識や経験を公開することで皆様のお役に立てたらと思いこのテキストを作成しており

ます。

2. 機械設計に必要な知識と勉強法

機械設計には、さまざまな種類があります。小さな精密部品の設計から工場設備など巨大な製品の設計、特注で

一品物の設計から大量生産される設計など。しかし、基本的に必要となる知識はどれも同じです。以下で解説する

基礎知識は、さまざまな製品の設計のベースとなるでしょう。

学問的には 「機械工学の 4大力学」 と言われている以下を押さえておく必要があります。

・材料力学

・流体力学

・熱力学

・機械力学

壊れない製品を作るためには、「材料力学」や「機械力学」の知識が必要となります。自動車のマニホールド、ター

ビン、バルブなどのように水や空気などの流体が流れる製品の設計には「流体力学」、エンジンなど熱が発生する

製品には「熱力学」の知識が必要となります。

これに合わせて

・製図

・機械要素

は必須の知識となります。

製図は設計の仕様を図にしたものです。様々な人が見ることになるため、誰でも共通の認識として読めるように書き

方に一定のルールが存在します。そのルールを覚えて図面を書く必要があります。

また、機械は「機械要素」の集合体です。機械要素とは軸、軸受け、ボルト、歯車などの JIS などで規格のある標準

的な部品のことです。これらの部品はさまざまな製品で今日利用されています。

設計した図面から実物を作らなければなりません。図面はできたけど実際に作れないと意味がありません。実際に

作れる製品を設計するためには、加工、材料の知識が必要となります。

・加工

・材料

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加工には切削加工や成形加工などさまざまな加工法があります。どのような加工方法があるのか知っておく必要が

あります。

また、設計した製品の性能を満たすために材料の選定が必要です。大量生産の場合安定して仕入れが可能な材

料を選ぶ必要があります。そして、材料にはそれぞれ特性があります。最近では軽くて丈夫な材質も多く出てきて

おります。性能を十分に発揮できる材料を選ぶ必要があります。使用する材料の機械的な特性にはどのようなもの

があるのか専門家レベルでなくても知っておく必要があります。

材料の機械特性などを学ぶには、金属材料やプラスチックについて学びます。

・金属材料

・プラスチック

家電や自動車など大量生産される製品は、工場で生産されます。設計した製品が安定して生産できなければ絵に

書いた餅です。ここでは、組立や生産に関する知識も必要となってきます。

・組立

・生産

しかし、加工や生産などについては専門家になる必要はありません。会社には専門家の人がちゃんといます。その

方たちと会話ができるレベルの知識で十分です。

そして、近年では ITを活用した設計が急速に進んでいます。パソコンで図面が作れるCADやシミュレーションが行

える CAEなどの道具を活用した設計が取り入れられております。

以上のように、一人前の設計者になるためには非常に多くの知識を必要とします。但し、これだけの知識を全て見

に付ける必要はありません。必要に応じて身につけていくことになります。

ベテラン設計者になると、これらの知識を幅広く理解しています。ベテラン設計者の指導の元で学んでいくことにな

ります。ただし、一般的な知識を教えてもらえるとは思わない方が良いです。実際の設計業務に入ると教えてもらっ

たり教えたりする時間の確保が中々できないものです。知識が必要になれば、まずは自分で勉強する姿勢が大切

となります。

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そして最後に必要なのは知識ではなく、コミュニケーションです。

「設計の質はコミュニケーションの質である」と私は思います。設計は自分だけではなく、関連部署との連携が必ず

必要です。また自社で保有していない技術の場合、他社と連携してモノづくりをすることもあります。そこには必ずコ

ミュニケーションが必要となります。技術者の方はコミュニケーションが苦手な方が多いと思いますが、これも設計者

として成長していく過程で克服していくことにしましょう。

3. 機械設計に資格は必要か?

3-1. 機械設計に資格は必要?

「私はこれから設計者を目指して機械設計技術者の資格を取ります」 という方がいます。就職で機械設計の資格

が有利になるかどうかは分かりませんが、私の周囲の設計者でこの資格も持っている人はいません。

また、CAD 利用技術者試験というものがありますが、この資格を持っている CAD オペレーターも私の周りにはごく

少数です。この事実から税理士や弁護士のように資格が有利になる職業ではなさそうです。

資格を取ることが目的であれば、とらなくても良いと思います。それよりむしろ CAD の操作を覚えたほうが有益です。

しかし、機械設計に関する知識を身につけることを目的に、資格を取るのであれば良いと思います。

どのような目的で資格を取るのかが重要です。「就職に有利になりそうだから」という理由であればあまり意味がな

いものと思われます。

3-2. 資格があれば転職に有利なのか?

頑張って資格を取得したけれども

「英語の TOEIC 900点ですが、英語がしゃべれません」という人になってしまいます。

機械設計技術者の資格を持っていても設計ができると評価してはくれません。

転職の場合、最も重要視されるのは実績です。どのような設計ができるのか面接官は必ず確認します。資格を持っ

ていると、経歴書の見栄えが良くなる程度と捕らえておくべきです。

3-3. 機械設計に関する資格とは

機械設計に関する資格には以下があります。

・技術士(機械部門)

・機械設計技術者(1級 2級 3級) ※ 2級以上は実務経験が必要です。

・CAD利用技術者試験 (1級 2級)

技術士は非常に難易度が高い資格となります。

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4. 設計者へのステップ

一人前の設計者になるためには 「知識」 と 「経験」 が必要です。これはどのような職業でも同じです。経験を

積む過程で多くの失敗を経験します。その失敗が経験となり一人前の設計者として育っていきます。

製造業の設計部門や設計会社に入社すると、まず任される仕事が「製図」です。

一般的にはトレーサーと呼ばれる仕事です。トレーサーとは元の図面がありそれを書き写す作業のことです。先輩

の設計者が設計した結果を図面にするのが主な業務になります。3Dの場合はモデリングです。モデリングを行う人

をモデラーといいます。設計で決まった形状を立体化します。この作業の過程で図面の書き方や CADの操作を身

につけて行きます。

図面の書き方を覚えると、実際に設計の一部を任せられるようになります。計画図や組立図から必要な情報を取り

出して部品の設計を行います。寸法を入れたり公差を検討したりします。これらのスキルは1年も経験すれば十分

にこなせていく内容です。

設計を覚えるコツは先輩の設計者のまねをすることです。図面の書き方や3D モデルの作り方もまねします。3D モ

デルであれば作成履歴を確認することができます。図面であれば、寸法の配置の仕方、公差の入れ方などまねし

ます。分からないことはどんどん質問して自分のスキルにしていきます。

また設計した製品の多くは製品化するまでに試作品を作って評価試験を行います。評価試験は設計者の仕事で

す。設計した製品の性能や仕様を確認します。製品によって様々な試験が行われます。

評価試験で問題がなければ、生産に向けた準備に入ります。家電製品など一般消費者向けのものであればカタロ

グや取扱説明者などの作成を行います。

工場向けに組立手順書や品質検査手順書など、さまざまな技術資料作成が必要となります。外部の会社から購入

部品があれば、受入検査基準書などを作成し、購入先の業者との調整が出てきます。実際に生産が始まると組立

工場に足を運んで、組立に問題が発生していないか確認します。

以上のように、先輩の設計者の元で設計業務の一連の流れを経験することになります。一連の流れを経験するな

かで知識を身につけ、経験を積んでいきます。

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通常、このような設計工程を何度も経験しながら、設計業務が身に付いていくこととなります。

設計者の業務のうち図面を書くことは一部であり、それ以外の幅広い業務とそれに関する知識を必要とします。

しかし、それ以外の業務で経験した内容が、実際に設計する際に必要となってきます。

このような経験を積んでいるとあるとき、設計を任せられる時が必ず来ます。私で大丈夫かなと不安ながらも設計す

ることになります。断片的に任せられてきた設計を繋ぎあわせて自力で設計をすることになります。

以上のように設計とは図面を書き、3Dモデルを作ることだけではありません。

設計は無から有を作り出すことです。製品の企画からアイディアをねり、それを具現化するのが設計です。そして、

それが実際の製品として商品化できるように加工や組立など安定して製造できるようにする必要があります。

以上のように一人前の設計者となるためには幅広い知識と経験が必要となってきます。

5. 機械設計のプロセス

商品の企画を考え、販売に至るまでの機械設計の全体プロセスは、以下のようになります。

設計という視点だけですと、「構想設計」・「基本設計」・「詳細設計」の大きく3つのプロセスに分かれます。

また、それぞれの設計が完了した後には DR(デザインレビュー)とよばれる設計結果の審査が行われます。

上図の機械設計プロセスは一般的なプロセスです。例えば注文が入ってから設計・組立を行うような受注生産とな

る機械装置の場合、先に販売してから設計がスタートするものもあります。

また、自動車の場合は、設計後に行う試作を、1次試作、2次試作と何度か同じ工程を繰り返す設計プロセスもあり

ます。従って、あくまでも一般的なプロセスとして理解してください。

一般的な機械設計のプロセスの場合、まずどのような商品を開発するのか企画が出され、その企画に従って構想

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設計、基本設計、詳細設計が行われます。設計完了したものを実際に試作して評価試験を実施します。評価試験

で問題が発生しなければ生産の準備にとりかかるという流れとなります。

設計の仕事をはじめたら、自分が今、どの段階の仕事をしているのか全体を把握しながら仕事を進める必要があり

ます。

6. 企画作成及び構想設計

新しい製品を設計・開発するにあたり、まず行われるのが企画の作成です。

大企業であれば 「商品企画部」 という部署があり、企画の専門家がマーケットのニーズを調査、消費者のニーズ

を把握、競合となる他社の状況を調査・分析、関連する特許の調査などを行い、対象となる顧客ニーズにマッチし

た商品コンセプトを練り上げていきます。また、具体的なデザインや目標性能、販売価格、利益目標、投資額など

を明確にしていきます。

これは飲食店などの経営と同じです。

例えば、ラーメン店をオープンするのであれば、出店地の競合を調査したり、地域によって味の好みがあるため、そ

の地域の人に好まれる味を調査します。そして、どのようなコンセプトのラーメンを作るのか決めていきます。

「魚介ベースのスープであっさり系のラーメンで女性をターゲットにしよう」「細麺を使って分厚いチャーシューを特

徴としたラーメンにしよう」 など商品のコンセプトを練り企画を作成していきます。

また、お店を出すために必要な資金がいくら必要で、1人あたりの客単価がいくらで、1日100名のお客さんが来て

くれると想定して、投資したお金は2年で元が取れるなどの計画を立てていきます。

自動車や家電製品など一般消費者向けの製品の場合、もう少し複雑だと思いますが同様のことを行います。また、

一品物の機械装置などの場合、お客さんの要望を聞いて機械の仕様を決めていきます。従って、どのような製品

であれ商品を開発する前に、必ずターゲットとなるお客さんの要望を調べます。

お客さんの要望などを含む商品コンセプトがはっきりした段階からが設計者の仕事です。

コンセプトに基づき、具体的な製品の構造を決めていきます。例えば先ほど例のラーメンであれば、「麺は自家製」、

「小麦は国内産」、「スープに入れる材料はアジと昆布と・・・」のようにコンセプトに基づきラーメンの構造を具体的し

てきます。

製品設計の場合ですと、「材質はアルミ合金」、「この部品は購入部品を使って・・・」と要求される内容に対して適

切な材質、適切な部品の選定をしていきます。鉛筆を使って具体的な形状、構造、機能を紙に描き検討します。こ

れをポンチ絵といいます。一般的にはポンチ絵を使って、具体的な絵や図にして、他の人に理解できるようにして

いきます。

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機能が定まらないときは、複数の案を作成します。関係者を集めて意見を求め、アイディアを出し合います。複数

のアイディアの中で有力な候補は3次元 CAD を使ってざっくりと立体化する場合もあります。パソコンの画面内でく

るくる回したり、動く部品がある場合、動かしてみて構想するとより具体化させることができます。

これらの作業は設計のプロセスの中で最も重要なプロセスとなります。開発・設計する商品の成功がここにかかって

いるといっても過言ではありません。

以上のように設計の基礎となる仕様を決めることを構想設計といい、この段階では製品の構造、性能、費用などを

決めていく設計作業となります。

7. 基本設計および詳細設計

7-1. 基本設計

構想設計で概略の仕様が決定すると、次は基本設計です。基本設計では、構造を具体化させるために、CAD を

使って設計を進めていきます。デザインが入る部品であれば、デザインから構造に必要なスペースが決まります。

決められたスペース内で、各部品の設計を行います。部品の具体的な寸法を決めたり、部品のつなぎ方を決めた

りしていきます。部品同士がぶつかり合わないように、干渉をチェックしながら設計を進めていきます。電子部品が

入る場合は、基板の設計者と配置スペースの取り決めを行います。

決められた性能が得られるように材料の選定を行います。近年は、軽量でコストが安く、かつ強度が保てるような樹

脂材料が金属の代替として利用されるケースが増えてきております。

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次に、決めた材料で強度が確保できるかどうか、強度計算をおこないます。その際に、解析ソフトを使って強度のシ

ミュレーションを行うケースもあります。(実物をつくる前に、シミュレーション技術を使って、製品の性能を評価する

ことを、「バーチャル試作」といいます。)

なお、実物を作る前の設計初期段階において、強度の確保などを早期に行うことは、設計変更や無駄な設計時間

を減らすことにつながります。

7-2. デザインレビュー(Design Review)

基本設計が完了したら、デザインレビューを実施します。デザインレビューは英語で「Design Review」です。頭文字

をとって通常は DR(ディーアール)と言われます。

DR とは、設計審査のことです。あなたが設計した結果を、社内の関係者に説明します。機能、安全性、操作性、生

産性などを評価するために、各部署の経験豊富な専門家を集めて審査を行います。問題の抽出を行い、問題があ

れば改善して、次の詳細設計へ進めて行く非常に重要なステップとなります。

7-3. 詳細設計

基本設計が完了し、DRを通過すると次は詳細設計です。

詳細設計ではさらに具体的な構造や寸法を決めていきます。寸法は生産時の品質が保てるように、許される最大

値及び最小値となる寸法公差を設定します。

また、形状については、形状の許容値として幾何公差を設定します。

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切削加工する場合は、加工面の凸凹の許せる度合いを指定するために表面性状の記号を図面に入れていきま

す。

詳細設計は、安定した生産できるように、設計情報を加えるプロセスとなります。そして、設計図が完了したら、協力

会社へ図面と1ロットあたりの個数などを添えて見積りをもらいます。ロットとは「一回あたりの注文時の数量」のこと

です。当然、1回で多く購入した方が生産する手間が少なくなるため安くなります。

7-4. 部品表作成

部品表とは、製品を組み立てるために必要な全部品を一覧表にしたものです。表には、図面番号、部品名称、購

入先、材質、数量など、その部品に関する情報が入ります。一般的に全ての組立図及び部品図には図面番号が

ふられます。その製品をつくるために必要な部品と数量が部品表を見ることで把握できます。

設計変更が発生した場合は部品表も更新されます。モノづくりにおいてこの部品表は非常に重要な役割をもって

います。部品表は別名 BOM (Bills of materials)と呼ばれます。 そして、設計で使われる BOMのことを E-BOM

(Engineering Bill Of Materials)といいます。

詳細設計が完了したら、試作品を作成します。試作品で要求する仕様を満たしているか、さまざまな評価試験を実

施します。

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8. 試作及び評価試験

詳細設計が完了すると、設計した図面を元に試作品を製作します。

試作品は 「プロトタイプ」 とも呼ばれ、量産する前に評価試験を行うために製作されるものです。試作品では仕様

どおりに設計がきちんと行われているのかチェックしていきます。

部品が干渉しないか、狙ったどおりの動作が行われるか、強度に問題がないかなど、製品が使用される環境を想

定してさまざまな評価試験が行われます。

試作品は評価試験を行うために製作されるものであるため、大量生産するときとは異なった製作方法で実物を製

作します。例えば、家電や日用品等のプラスチック製品の場合は、プラスチック金型という金属の型にプラスチック

に圧力をかけて注入して生産が行われます。

しかし、試作品の場合は金型を用いずに、プラスチックを削り出して製作したり、近年では3Dプリンターなど少量製

作に適した製作方法で作成します。但し、試作品であっても試作品の数量が多く必要であったり、実際の生産方法

と同じ製作でなければ評価試験ができない場合などは、簡易金型と呼ばれるコストの安い金型で製作するケースも

あります。

少量の試作品製作に適した製作方法として、

・金属及び樹脂による切削加工

・板金加工

などがあります。

従来は切削加工など、NC 機械や旋盤などの切削機械による試作品の製作が主な方法でした。しかし、近年の製

品のライフサイクルの短命化により、設計期間が大幅に短くなり、その影響で試作品の製作も短期間に行う必要性

が出てきました。

そこで設計した3Dデータから直接に試作品が作れるラピッドプロトタイピング(RP)と呼ばれる試作品の製作方法が

用いられるようになりました。(ラピッドプロトタイピングとは敏速(rapid)に試作(prototyping)するという意味)

ラピッドプロトタイピング(RP)には、様々な方式のものがあり、

光造形/インクジェット造形/粉末焼結造形/粉末石膏造形/シート積層 などがあります。

最近ではこれらを総称して3Dプリンターとも呼ばれております。

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以上のように、試作の工程で設計の不具合や問題点を抽出し改善を行います。改善する場合、基本設計や詳細

設計に戻って再検討を行います。普通は1回の試作で全ての試験を満足することはなく、設計変更が何度か行わ

れることになります。全ての試験に合格すれば、設計審査であるDR(デザインレビュー)を行い、生産の準備に入っ

ていきます。

また、実際に生産に入る前に「量産試作」を行うケースもあります。量産試作とは量産前に量産と同じ設備や生産

方法で少量の生産を行い、安定した品質のものが生産できるか評価を行うものです。

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