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- 1 - 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会 脳科学委員会(第 37 回) 1. 日時 平成 29 年 2 月 1 日(水曜日)17 時 00 分~18 時 30 分 2. 場所 文部科学省 3 階 3F1 特別会議室 3. 出席者 (委 員) 樋口主査、岡部主査代理、合原委員、有信委員、安西委員、伊佐委員、 大隅委員、神庭委員、高橋委員、三品委員、水澤委員、室伏委員、世永委員、渡辺委員 (欠席 加藤委員、祖父江委員、辰井委員、津本委員、十一委員、) (事務局) 関研究振興局長、原ライフサイエンス課長、高谷研究振興戦略官、 村松ライフサイエンス課長補佐、佐久間ライフサイエンス課長補佐、松田学術調査官 4. 議事 (1)国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検討について (調査検討経過報告) (2)研究開発計画(案)の報告について (3)その他 5. 配付資料 資料1 国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検討について (調査検討経過報告) 資料2 研究開発計画(案) 資料3 脳科学研究戦略推進プログラム・脳機能ネットワークの全容解明プロジェク ト(平成29年度予算案) 参考資料1 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会脳科学委員会 委員名簿 参考資料2 第 8 期の脳科学委員会の活動状況について

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科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会

脳科学委員会(第 37回)

1. 日時 平成 29年 2月 1日(水曜日)17時 00分~18時 30分

2. 場所 文部科学省 3階 3F1特別会議室

3. 出席者

(委 員) 樋口主査、岡部主査代理、合原委員、有信委員、安西委員、伊佐委員、

大隅委員、神庭委員、高橋委員、三品委員、水澤委員、室伏委員、世永委員、渡辺委員

(欠席 加藤委員、祖父江委員、辰井委員、津本委員、十一委員、)

(事務局) 関研究振興局長、原ライフサイエンス課長、高谷研究振興戦略官、

村松ライフサイエンス課長補佐、佐久間ライフサイエンス課長補佐、松田学術調査官

4. 議事

(1)国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検討について

(調査検討経過報告)

(2)研究開発計画(案)の報告について

(3)その他

5. 配付資料

資料1 国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検討について

(調査検討経過報告)

資料2 研究開発計画(案)

資料3 脳科学研究戦略推進プログラム・脳機能ネットワークの全容解明プロジェク

ト(平成29年度予算案)

参考資料1 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会/学術分科会脳科学委員会

委員名簿

参考資料2 第 8期の脳科学委員会の活動状況について

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6. 議事内容

【樋口主査】 それでは、定刻でございますので、ただいまより第 37回の脳科学委員会

を開会させていただきます。

委員の皆様におかれましては、御多忙のところ、お集まりいただきましてまことにあり

がとうございます。

本日は、加藤委員、祖父江委員、辰井委員、津本委員、十一委員が御欠席という連絡を

頂いております。

また、合原委員は少し遅れて出席されるとの連絡を頂いております。

委員会の開催する要件の「委員の過半数の出席」には達しておりますので、成立をして

いるということを御報告申し上げます。

それでは、まず事務局の方から、人事異動について御報告をお願いしたいと思います。

【佐久間課長補佐】 前回の脳科学委員会から本日までの間に文部科学省の人事異動が

ございました。小松の後任として研究振興局長に関が着任しております。

【関局長】 昨年 12月 6日付で前任の小松弥生局長の後任として着任いたしました関で

ございます。先生方には、どうぞよろしくお願いいたします。

【佐久間課長補佐】 また、松岡の後任で、研究振興戦略官に髙谷が着任しております。

よろしくお願いします。

【髙谷戦略官】 髙谷でございます。よろしくお願いいたします。

【樋口主査】 ありがとうございました。それでは、本日の議事及び配付資料について

事務局の方からお願いいたします。

【佐久間課長補佐】 はい。本日の議題につきましては、議事次第にございますとおり、

2、議事で、国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検討について(調査検

討経過報告)、(2)研究開発計画(案)の報告について、(3)その他を予定しております。

また、本日の資料につきましては、座席表のほか、資料の 1から 3 と参考資料の 1と 2、

あと、委員のみの席上配付としてですが、以前の作業部会の報告書(中間とりまとめ)を

配付させていただいております。お手元の資料に不足等がございましたら事務局までお申

し付けください。

あと、済みませんが、議事次第のところで訂正させていただきたいのですけれども、議

事次第と配付資料の番号が合っていなかったところがございまして、議題 2が資料 3とい

うふうになっていますので、資料 3のところの番号を資料 2と改めさせていただきたいと

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思います。訂正をお願いしたいと思います。あと、配付資料の番号についても併せて訂正

させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

それから、もう一つ、議事の進行の方でもお願いがございまして、委員の先生でちょっ

と遅れられるということもございましたので、議題 2を先にお話しさせていただいて、続

きまして、議題 1、議題 3 の順番で報告させていただきたいと思います。よろしくお願い

いたします。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。

それでは、今の事務局からの説明にもありましたように、議事の 2の研究開発計画の方

を先にやらせていただくということでございます。その研究開発計画(案)について、事

務局の方から審議状況を説明していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【佐久間課長補佐】 このページでは資料 3というふうに振っている「研究開発計画(案)

見え消し版」というのを、まずお手元にお願いしたいと思います。

こちらの資料なのですけれども、何度か脳科学委員会では報告させていただいておりま

して、前回 36回の報告では、研究計画・評価分科会の昨年 11月 25 日の資料を配付させて

いただいておりました。今回、配付させていただいたのは、その後に脳科学委員会の委員

の皆様からいただいたコメントについて、担当する委員会の事務局と議論させていただい

て修正したもので、前回からは、そういう点で追加をされていることになります。

今回の委員会では、その委員の先生から頂いたコメントを主な変更点として報告させて

いただきたいと思います。

資料を開けていただきまして、4ページ目が、まず第 1章のところで、「未来社会を見据

えた先端基盤技術の強化」というところの項目なのですけれども、このうちの一番下の(2)

中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組の中の次のページ、5 ページ目に

なります。項目のエになりますけれども、こちらのところが、脳科学委員の先生からのコ

メントを前回からの変更で追加させていただいておりまして、この赤字のところなのです

けれども、修正させていただいております。

コメントの内容のところで追記をさせていただいておりますが、ヒューマン・エージェ

ント・インタラクションというところが記載から漏れておりましたので、そこについては

1月 27日の情報科学技術委員会の方で追加することで了解されておりますので、今後、追

加されていくと思われます。

続きまして、次の 6ページ目になります。こちらのイの項目のところにコメントが入っ

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ておりましたので、そこは追記させていただいております。

次はちょっと飛びまして、36ページ目、第 3章「健康・医療・ライフサイエンスに関す

る課題への対応」となっております。こ次の 37ページの下のところの 4ポツが疾病領域ご

との取組となっておりまして、次のページが該当します。こちらのページの(1)のアウト

プット指標や(2)の取組とか、そういうところが該当する項目になっております。改めて

項目を変更しているわけではございませんでしたので、ここに書いてあるということの御

説明だけをさせていただきたいと思います。

関係するところは以上になります。よろしくお願いします。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。前回、この会で意見を頂き、その後、

追加の意見もあって、それを今回、反映させた部分についての説明がございました。大き

な変更点ということではなさそうですけれども、ただいまの説明について何か御質問、御

意見がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【大隅委員】 済みません、38 ページの(1)中目標達成状況の評価のための指標のア

ウトプット指標のところにマル 1、マル 2 と精神・神経疾患の克服云々と書いてあって、

その下のアウトカムのところが、「次世代がん医療創生研究事業採択課題のうち」というふ

うにつながっているのは、これでよろしいのでしょうか。

【佐久間課長補佐】 一応こちらのところのアウトプット指標の方が今回、脳の項目が

書いてある項目になっておりますので、脳科学は上のアウトプット指標のところに書かせ

ていただくということで整理させていただいております。

【樋口主査】 これは、あれですね、アウトプットとアウトカム指標というのは余り連

携がないというか、関係がないと理解しておいていいわけですね。

【佐久間課長補佐】 はい。

【村松課長補佐】 樋口先生、ちょっと横から済みません。総括の補佐をしております

村松と申します。大きな項目が 4ポツ、37ページ目の一番下が大きな項目、大目標達成の

ために必要な中目標で、疾病領域ごとの取組という大きな柱のアウトプットとアウトカム

ということになっていまして、もちろんアウトプットとアウトカム、両方の指標を設定で

きればいいのですけれども、できない部分についてはどちらかだけということになってお

りまして、精神・神経疾患とがんがつながっているように見えるのですけれども、大きく

言うと、精神・神経疾患と感染症という大きな疾病ごとの取組というところの指標になっ

ています。やや誤解を招いてしまいましたけれども、そういうことでございます。

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【樋口主査】 大隅先生、よろしいでしょうか。

【大隅委員】 ちなみに、アウトプットとアウトカムというのは、どっちをどういうふ

うに理解したらよいのかを、大変不学なもので教えていただけたらありがたく思います。

【村松課長補佐】 アウトプット指標というのは、まさに研究すると出てくるものその

もので、アウトカムというのは、研究によって派生して出てくるような成果というか、そ

ういうものをそれぞれアウトプット、アウトカムと呼んでいますが、簡単に分類しづらい

場合もありますので、ちょっと機械的に切れるものではないのですけれども、概念的には

そのように整理をしております。

【大隅委員】 分かりました。

【樋口主査】 ほかにはよろしいですか。はい、ありがとうございました。

それでは、これに関しましては引き続き研究計画・評価分科会の方でも最終(案)に向

けての整理をされるということでございますので、また最終段階のところでの報告があろ

うかと思います。ありがとうございました。

それでは、次に移らせていただきます。合原先生はまだ見えていないようですが、やむ

を得ないですね。

前回の第 36回の脳科学委員会において、国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関

する懇談会の大まかな方針について、その報告をいただいたわけでございます。その 12

月 9日の脳科学委員会の後に、作業部会を 12月、1月と 2回開催してもらっておりますの

で、その審議の結果について、「国際連携を見据えた戦略的脳科学研究推進に関する調査検

討について」という資料で、作業部会の主査の岡部委員の方から説明をお願いしたいと思

います。よろしくお願いします。

【岡部委員】 それでは、お手元の資料をごらんになって、あと、こちらにスライドが

ありますので、こちらも見ながら少し話を聞いていただければと思います。

前回、初回の懇談会の結果を受けて、こちらの脳科学委員会でも、その初期段階の議論

の内容については御報告していますので、そこはなるべく今回のスライド及び手持ち資料

でも話はなるべく簡略化して、その後、付け加わったところを中心にお話をさせていただ

ければというふうに思っております。

作業部会設置の背景、これについては前回も御説明しました。学術会議のGサイエンス、

それから伊勢志摩サミット、それから 9月にアメリカで開催されましたハイレベル会合等

を受けまして国際連携というものが脳科学において重要であるということを受けて、この

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作業部会が設立されております。

これは実際にアメリカの国務省のホームページに掲載されている内容ですけれども、ア

メリカとしても、こういう国際連携が重要であるという認識に至っています。

こちらは作業部会設置の経緯の文章ですので、飛ばさせていただきたいと思います。

具体的な作業部会のメンバーはこのような方々で、きょう出席しておられます伊佐先生

に主査代理をお願いしております。

前回、こちらの、どういう論点整理をするかということはお話しいたしました。1 番目

に、世界における脳科学研究の現状と課題について、アメリカ、ヨーロッパ、それ以外の

国、そして日本を調べて、そのまとめを最後に申し上げるというふうにしてあります。2

番目が、この 1を受けて、国際情勢を踏まえて、我が国でどういう研究開発戦略を行うべ

きかということをまとめ、3 番目に、それをさらに受けて、脳科学研究を推進するための

連携の方針について述べる、そういう構成になっています。

今回特に、前回から議論が進みましたのは、このアメリカ、ヨーロッパ以外の国での現

状、それから、そういうことを受けて、開発戦略がどういう状態にあるのかということ、

最後に、一番重要である国際的な脳科学研究の推進体制を御報告したいと思っております。

次に行っていただいて、先ほど樋口先生からも御説明がありましたけれども、初回は、

作業部会の正式な発足までは懇談会という形でしたけれども、その後、正式に委嘱がされ

ましたので、12月末より第 1回、第 2回の作業部会をそれぞれ開催しております。第 2回

の作業部会では有識者からのヒアリングということで、特にがん領域では国際連携が進ん

でいる部分がありますので、その実際の体験に基づいて、がん研究センターの本田先生よ

りお話をいただきました。また、理化学研究所の革新知能統合研究センターについて、セ

ンター長の杉山先生からの御報告をいただいております。

実際の中身に進ませていただきます。アメリカとヨーロッパの大型の脳科学研究プロジ

ェクトについては、既に前回御報告したとおりです。アメリカのBRAIN Initiativeの方は、

どちらかというと技術開発に中心があって、国立の研究者の力をボトムアップのものを結

集して脳科学を推進していくという体制です。ヨーロッパのHuman Brain Projectに関して

は、当初、コンピュータサイエンスに重点が置かれていましたけれども、現在では、それ

ぞれの国の強みを生かしたような研究計画が再構築されているという状況にあると思いま

す。

次に、これは新しく用意した、アメリカの予算規模に関する資料です。アメリカのBRAIN

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Initiativeは現在、非常に予算規模が拡大しております。2017年の要求額としては、日本

円にして 400億円程度というふうになっていまして、脳研究に関する加速的な投資と、そ

れに見合うだけの研究成果が期待されているというふうに考えられます。

それ以外の国の現状ですけれども、中国、韓国、オーストラリア、カナダといった国々

では、かなり真剣に大型の脳科学研究を国家プロジェクトとして行うことが議論され、か

つ具体化されつつあります。

中国の場合には、中核となる脳研究に対して、飛行機の両翼になるものが、片方はAIを

中心としたようなコンピュータ、数理科学との連携で、もう一翼が臨床科学への出口とい

う形で研究を推進していくことが議論されていて、予算化もされつつあるということです。

15年計画というふうに言われています。

韓国の場合には、特徴としてはインフラ整備を行いたいということが 1つあって、人材

育成にも力を入れる計画だそうです。10 年計画で 2018 年開始というふうに言われていま

す。

オーストラリアに関しては、Australian Brain Allianceというものが組織されていて、

オーストラリアの特徴は、脳を変化していく組織であるというふうに捉えて、そういった

脳の可塑性ですとか学習であるとか、そういったことも含めた理解です。それから、年を

取るに従ってどういうふうに脳が変化していくか、そういう発達・老化も含めたようなプ

ロジェクトというふうに書かれています。

カナダに関しては、Brain Canadaという組織がかなり以前から実は存在していて、以前

からある研究体制を基盤にして、より組織的な予算を獲得して脳研究を推進していく、そ

ういうプロジェクトであるというふうに考えられます。

次のページからは、日本におけるこれまでの大型研究プログラムの達成目標等がまとめ

られた資料になりまして、これは前回もお出ししているものとほぼ同じものになりますの

で、簡単に進めたいと思います。

平成 8 年、9 年ごろから戦略的な脳研究の推進事業というものが行われて、その後、非

常に大きな出来事としては、現在の脳プロ等のプロジェクトが立ち上がったというのがあ

ります。この戦略的脳科学研究の方向性についての議論というものが行われた結果として

始まりました。さらに、革新脳と呼ばれるアメリカのBRAIN Initiative、ヨーロッパのHuman

Brain Projectに相当するようなプロジェクトが開始されています。それが平成 26年に当

たります。

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現在の脳科学の体制としては、こういうピラミッド状の構造があって、下にボトムアッ

プの基礎的な研究がありますけれども、それの社会への出口としては、精神・神経疾患の

克服とBMI等のリハビリテーションに活用されるような新しい脳の技術、それから社会的な

人間理解を目指すような脳研究というものの 3つの柱を立てて研究が進んでおります。

そして、戦略的に進められている現在のプロジェクト、融合脳、革新脳、BMI技術、それ

から意思決定のプロジェクトといったものも、この三角形の構造のそれぞれの部分を占め

るものとして配置されているということになります。

そういったような現在の日本の現状を踏まえて、各国の脳科学に関連する戦略的なプロ

ジェクトと日本の状況というものを比較したものが、この 13番の表になります。これはち

ょっと細かい表ですので、むしろお手元のものを見ていただいたほうがいいと思います。

日本で強みのある部分というのは、この青字で書かれているもの。それから、一方で、多

少弱いのではないかというふうに考えられるものがこの赤字の部分ということになります。

見ていただくと、例えば、個別の分野ですと、遺伝子操作技術の水準が高いですとか、

PETトレーサーの開発力がある、そういった様々な強みのある部分が存在している一方で、

心理系の研究者等がどれだけ参入しているかというと、それはほかの国に比べると多少弱

いのではないかといった議論があります。

それから、技術開発に関しては、日本のイメージング技術とか国内メーカーが強いです

から長所でもあるのですけれども、一方で、例えばベンチャー企業が非常にユニークなも

のを開発していくといった部分では、それが産業化されるときに弱みがあるのではないか

といったような議論もあります。

全てこの表をお話しする時間がありませんので、先生方はここをごらんいただいて何か

コメントがあれば頂ければというふうに思っています。

次のスライドで、国際情勢を踏まえて、各国の強み、弱み、特に日本の強み、弱みを踏

まえた上でどういった形で日本の神経科学を進めていくべきかというのが、この次からの

議論になります。強み、弱みはここに非常に簡単にまとめさせていただきました。例えば、

霊長類のモデル動物に強みがある。それから、BMI技術に関しても強みがある。それからイ

メージング装置に関しても全国的な波及という意味では強みがありますし、顕微鏡のメー

カーが強いということもあります。

弱みについてもここに書かれたような問題点であるということで、ここに一言でまとめ

ると、今後、日本で推進すべき研究としては、究極的な目標はヒトの脳の理解と精神・神

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経疾患の克服を目指すわけですけれども、そのために国内で非常に高い技術を持っている

伝統的な領域の制約を超えて、より新たな価値で統合させたような独立性のある研究をし

ていくというのが重要であるということになります。ただ、これは非常に抽象的な言葉で

すので、具体例として下に挙げたようなものが実際には重要な項目になるというふうに考

えられます。

1 つは、ヒトではない霊長類、サルを中心とした研究をいかにヒトの研究にうまくつな

げていくかということ。2 番目が、いろいろな先端技術というのは、どうしてもモデル動

物ですとか、マウスのレベルで開発されることが多いので、そういったものを霊長類の研

究にどれだけ効率的につなげられるかというような枠組み。それから 3番目が、これは数

理科学に関連したものになりますけれども、動的に変化するようなモデルというものをう

まく作って、それが最適化を繰り返していくことによって発展していくといったような、

そういった形の計算技術が開発される必要がある。最後に、そういったような数理科学を

うまく使うための多次元の時系列データベースを、基礎脳研究、臨床脳研究に限らず蓄積

していく必要があるということになります。最終的にこういったものを分子・細胞神経科

学とシステム神経科学を結ぶような研究というものが生まれるべきであるというふうに考

えられています。

以上の重要と思われるポイントをさらにポリッシュアップしてまとめますと、ここに挙

げた 4つの課題というものが重要であるということになります。これは繰り返しになりま

すけれども、1番目が、ヒトにつながるような霊長類研究。2番目が要素技術をどれだけ効

率よくヒトの研究につながるような霊長類モデルに持っていくかということ。3 番目が、

脳型のアルゴリズム・モデルの創成で、4 番目がデータ整備・集約化ということになりま

す。実際の細かい文言は、この資料の方をごらんください。

以上のことを踏まえて、3 番目の最後の項目として、では、実際に国際的な脳科学研究

の推進体制はどのように組み上げるかということが問題になります。

それについてまとめたのがこちらの表です。この縦方向の 4つの項目というのが、先ほ

どの推進すべき研究内容にそれぞれ対応しています。それぞれの内容について、これは国

際連携ということになりますので、推進体制としては、その連携先をどういう国を対象と

して考えるかということが重要になります。例えば、2 番目の技術的なことに関しては、

やはりアメリカが、BRAIN Initiative、非常に技術に力を入れていますので、そういうと

ころと連携すべきであろうといことになりますし、1 番目の霊長類研究をヒト研究につな

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げていくということに関しては、アメリカの、例えば、Human Connectome Projectという

ものが、ヒトの脳の線維連絡に関しては豊富なデータを持っていますので、そういうとこ

ろと連携していくべきだということになります。

あるいは、4 番目のバイオリソース・データに関して、これは臨床のデータ、それから

リソースというものが重要になりますので、例えば、イギリスで行われていますバイオバ

ンクといったものとの連携をとっていき、そういったような国際的な、戦略的な連携をも

とにして、この国際的脳科学研究の推進体制を組み上げることになると思います。

そういったことを考えた上で、現状分析としてですけれども、どういうところが現状と

して、要素的な内容として取り上げられて、かつ、それがどのような問題を持っているか

ということを考える必要があります。

1 つは、様々な技術の高度化や、マウス、サル、さらにヒトへという種間移行をどうや

って進めていくのか、それをどういうふうに支援していくのかということが重要です。

2 番目に、基礎研究、臨床研究、いずれにおいても、データ共有をどういう形でしてい

くかということは、なかなか個別には難しいところがあり、例えば、コフォート研究をし

て、そのデータがあっても、それを他とどうリンクするかというのは議論が進んでいない

ところがありますので、そういうことを考えていく必要があります。

最後に、リソースを蓄積する場合についても、蓄積されたリソースをどうやって複数の

研究で共有していくかということは、今後考えていく必要がある問題というふうになりま

す。

では、そういうことをうまく克服するためにどのような組織を考えたらいいのかという

ことで、やはり、中核になるような何らかのセンターが必要であろうということは議論の

上で出てきております。この中核となるようなセンターというものは、実質的な、フィジ

カルにこういうものが必要だということ、それがバーチャルなものでもいいのかというこ

とは、さらに今後検討を進めていく必要がありますけれども、1 つ、重要なこととして、

既に走っているこの革新脳プロジェクトとこのセンターがうまく連携している必要がある

ということが、1つ挙げられます。

もう一つ重要なことは、このセンターで行われる様々な研究支援やデータベース等の解

析、これが国内のいろいろなバイオマーカーの開発ですとか、バイオサンプルの集積ネッ

トワークと連携している必要があります。さらに、この国内で行われている推進事業が国

外で行われている、例えば、イギリスのバイオバンクですとか、アメリカ等のHuman

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Connectomeのプロジェクト、そういったものときちんと連携がとれて、データの共有やリ

ソースの交換というものができる体制にあるということも必要であるというふうに議論が

されました。

その問題点を実際に解決するためには様々なことを考慮する必要があって、例えば、窓

口となる研究機関というものは実際、どこが担うべきか。そこが担うとすれば、そこをど

う整備していくのかという議論をする必要があります。2 番目に、データ共有化をするに

しても、それを行うためにはインフラが必要で、例えば、学術情報ネットワークのような

ものを使う必要があるのかといったようなことも議論されています。最後に、人材育成と

いう面では、こういったプロジェクトを担当する研究者のキャリアをどうやって認知する

のか、キャリアアップの可能性をどう担保するのかという必要もあります。

次に、この国際連携をするためのデータ、リソースの共有に関しての内容になります。

データ、リソース共有に関しては、実際に重要とされている研究項目が、例えば、数理科

学やAIを用いた大規模データの解析であるとか、あるいは、臨床データやリソースを蓄積

していくといったことが目の前になっていますので、それに関して具体的な連携の上でリ

ソースをどう共有するか、データをどういうふうに蓄積するかといったことを具体的な課

題として考えていく必要があります。

これまで日本で既に開発されているような技術ですとか、あるいはデータベース、そう

いったものをいかに効率よく使っていくかということも重要になるというふうに考えられ

ます。

これはさらに、そういう共有プラットフォームですとか、データ共有をどのような形で

進めていくかということを文章の形でまとめたものになりますので、委員の先生方にはご

らんいただければと思います。

最後に人材育成ということで、多少、問題点をまとめさせていただきました。これは、

脳研究全体の人材育成ということではなくて、むしろそういうデータサイエンスですとか

数理科学の分野の人材と脳科学の分野の人材を、どううまく交流させて、かつ脳科学の分

野にそういうデータサイエンスの人を巻き込んで、さらに育成していくか、そういう観点

から書かれています。

若手をじっくり育てるというのも重要ですけれども、今回の戦略的な研究という観点か

ら考えると、ある程度、中堅の研究者に脳科学に参入してもらうということがない限り、

なかなかそれは進まないというふうに考えられますので、そういう、ある程度、実績のあ

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る人にいかに脳科学の分野に目を向けていただいて、共同研究といった形の枠組みを作っ

ていくかということを今後検討すべきであると、そういうことが作業部会では議論されて

おります。

以上になります。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。それでは、ただいま説明していただき

ました内容について、これからディスカッションをしていただきたいと思います。どんな

ところからの御意見でも結構でございますので、自由に御発言いただければと思います。

いかがでしょうか。はい、どうぞ、渡辺委員。

【渡辺委員】 13ページのところに、日本の弱みで心理系研究者の参入が弱いというの

があって、私も全くそのとおりだと思うんですが、その参入を促すために具体的に何か考

えていらっしゃいますか。

【岡部委員】 これはまだ具体的にどうすればいいという話は余り出ておりませんで、

多分、ここに出していただいた数理科学の分野の人材の参入と同じだと思うんです。大学

院生ぐらいのところから育てていくというのが多分、正統な考えだと思うんですけれども、

こういう 10年ぐらいのプロジェクトでそういうことをやっていても、なかなかそれだと追

いつかないというふうに考えられます。ですから、やはり、心理系の研究者で、ある程度

の実績がある方で、かつ脳科学ともアフィニティーのある人をいかにうまく引っ張り込ん

で国際連携の中で活躍していただくか、そこを考える必要があるのではないかというふう

に思います。

【渡辺委員】 私が見たところ、1 つは、余り情報が伝わっていないような気がするん

ですね、心理系の研究者に。それが 1つ非常に大きな問題で、どういう大きなプロジェク

トが進んでいるかというのは、どこかを見れば分かるというのはそのとおりなのですけれ

ども、もうちょっと積極的に広報活動というのか、心理系の人に情報が行き渡るようにし

てほしいというのと、やはり、私が見たところ、心理系の研究者はシャイなんです、メデ

ィカル系の方に比べて。それなので、シャイなところを少し何とかすることも必要だと思

っています。

【樋口主査】 では、どうぞ、大隅委員。

【大隅委員】 その件に関して少し、大変手前みそで恐縮ではあるのですけれども、一

応、昨年 7月に立ち上げました私が領域代表している新学術領域は、人文社会系の方々に

もたくさん入っていただくということで、また、神経系の新学術領域が集まります、今は、

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何と言うのでしたか、次世代脳ネットワークという、12月などに全体が集まるような会と

かもありますので、もう少しそういったチャネルも使ったりすると、いろいろな情報が少

しずつ上がるのではないかなというふうに期待しております。

【樋口主査】 はい、ほかにはいかがでしょうか。これは大体いつごろまでをめどに、

この分科会が行われる予定になっていますか。

【岡部委員】 一応、ここで脳科学委員会自体の任期が切れますので、作業部会もそれ

に連動しているのですけれども、実際、検討の内容についてはもうちょっと深堀りをして、

今回お示ししたような問題点も含めて解決策を提示するという必要もありますので、4 月

以降、再度、作業部会を立てていただいて、そちらで引き続き、少なくとも数か月は検討

ができればと思っています。

【樋口主査】 いかがでしょうか。具体的なというところに進むのにはこれからだとい

うことのようでございますが、全体の骨子といいますか、方針といいますか、そういった

点で何か足りない部分がある、あるいは、こういう点をもう少し強化すべきという御意見

がございましたら。もし、今すぐにはないようでしたら、今の岡部委員からのお話にもあ

りましたように、次の期においても引き続き、もう少し深堀りをして具体的なところにま

で踏み込んだ形のものに作り上げていくということになると思いますので、次期において

も引き続き検討を続けていただきたいと思います。

よろしいですか。はい、ありがとうございました。

それでは、次の議題が「その他」というふうになっております。今も話が出ましたが、

本日の脳科学委員会で第 8期が終了することになります。委員の皆様におかれましては、

社会への貢献を見据えた今後の脳科学研究の推進方策について等をこれまで御審議をいた

だいてきたわけでございますが、きょうは、今期最後ということもありますし、いつもに

比べると多少、時間的に余裕があるので、「今後の脳科学研究の推進について」ということ

に関して、皆様の忌憚のない御意見、特に政策的な観点から御意見を頂戴できればと考え

ております。どんなところからの御意見でも結構、どういうことに関してでも結構でござ

いますので、脳科学研究を推進していく上で、日頃、委員の皆様がお考え、お感じになっ

ているところを出していただければと思う次第でございます。

それに先立って、平成 29年度の予算案のことと、それから、第 8 期の脳科学委員会の活

動の全般的な状況について、事務局の方から少し説明をお願いした上で、委員の皆様から

の御意見を頂戴したいと思います。

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では、事務局、よろしくお願いいたします。

【佐久間課長補佐】 ありがとうございます。まず、資料 2「科学技術予算のポイント」

という表題の資料を見ていただきたいと思います。

こちらの資料の 1ページ目が今回の科学技術関係予算案になっております。関係するの

が次の 2ページ目のところになります。こちらの真ん中ぐらいの赤い枠で、「国際社会の先

駆けとなる健康長寿社会の実現」ということで、こちらの関係で今回、AMED関係がこちら

に入っておりまして、昨年よりは 4億円増の 603億円、これがAMED全体になっております。

4 ページ目になりますけれども、こちらがさらに細かく書いてある資料になります。真

ん中ぐらいのところに書いてありますのが、今回、脳プロ、革新脳の関係の予算になって

おります。昨年よりはちょっと少なくなっておりまして、57億 5,500万円という数字にな

っております。

こちらの詳細につきましては、次の 5ページ目の横の赤い表になっておりまして、29年

度のプログラムになっております。こちらは何回かお話しいただいているかもしれません

けれども、一応説明させていただきますと、真ん中のところが 29年度に行うプログラムに

なっており、上の方が「脳プロ」というふうに書いてあります。今回、29年度のところに

ついては、真ん中のところの赤い枠なのですけが、環境適応脳ということで、「行動選択・

環境適応を支える種を超えた脳機能原理の抽出と解明」の中の、今回、一部だけなのです

けれども、柔軟な環境適応を可能とする意思決定・行動選択の神経システムの研究を実施

するということになっております。

あと、今年から始めている融合脳の拡充のところで、すぐ上のところの赤い文字なので

すけれども、「認知症等の革新的治療法を指向したシーズ探索および実証的研究」、これは

昨年から始めているところの研究になっております。以上が今回、予算でついているとこ

ろになっております。

次のページ、最後のページなんですけれども、全体像になっておりまして、ちょうど真

ん中の 29年度の蒼いところが予定になっております。今回やっている環境適応脳は下から

3 分の 1 ぐらいのところになっておりまして、あとは、融合脳の課題が入っております。

上のBMI技術と霊長類モデルにつきましては 29年度までの実施になっております。あとは

革新脳が実施されているということになっております。

参考資料 2をごらんいただきたいと思います。こちらにつきましては、今期、第 8期の

脳科学委員会の活動状況になっております。最初のページの項目が 27年から 10回にわた

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って審議をさせていただいており、最初の 4回ぐらいまで、昨年度の 10月ぐらいまでが、

委員の先生方のお手元に配付させていただいております中間とりまとめの審議を中心に活

動させていただきました。

次のページのところ、ちょっと中途半端になってしまっているのですけれども、頭のと

ころからが昨年、平成28年6月なのですけれども、そこからは国際連携の話になっており、

これは 5月のサミット等の絡みでそういう議題が入っており、10月ぐらいのところからは

作業部会を設置するというようなお話をさせていただき、本日の会議につながっており、

脳科学委員会としてはこれで計 10回、開催をさせていただきました。

あとは、その下に書いてあるとおり戦略推進の作業部会を 3回、国際連携の作業部会は

2回開いておりまして、議論をいただいたところになっております。

以上が第 8期の活動状況になっております。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。

それでは、委員の皆様方から、今の報告された内容に関してでも結構ですし、あるいは、

これからの脳科学研究を推進していく上での方法の問題であるとか、考え方であるとか、

何でも結構でございます、御意見を頂戴してまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。

どなたからでも結構です。どうぞ、伊佐委員。

【伊佐委員】 ずっとこの間ですね、脳科学研究戦略推進プログラム等の支援をしてい

ただいて、今回、予算が大幅増額はなかったということで、その中で、環境適応脳も立ち

上がったばかりということで、少し、一部だけ片羽根飛行みたいなことになっているので

すけれども、今後はやはり、もうちょっと枠を広げて連携研究が進めていただければなと

思っております。きょう、そういった行動選択、環境適応を支える種を超えたという部分

に関しては、何らかの形で、いろいろな分野の研究者が参画できるような、幅広めのプロ

ジェクトを立てていただければと思っております。

一方で、終わっていくプロジェクト、BMI技術とか霊長類モデルですね。霊長類モデルの

方については、当時のことを思うと、ある程度、過渡的な状況もあって、その後、革新脳

が立ち上がってきたということで、普及体制の整備ということはそれなりに進んできてい

るのかなとは思うのですけれども、BMI技術については 10年やってきて、現状をちゃんと

分析して、そのまま同じ形で続けるかどうかというのはやはり議論が必要かと思いますけ

れども、いろいろな新しい幅が広がってきたような分野ではありますので、今後どうして

進めていけばいいかということについて、やはり、次期の脳科学委員会になるのかとは思

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いますけれども、検討をしていく必要があるのではないかというふうに思います。

【樋口主査】 ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。岡部委員、どう

ぞ。

【岡部委員】 今、伊佐先生が言われた、今まで脳プロで走ってきたものもあって、そ

の中で成果が出ていて、今度、それが終わった後、次をどう考えるのかというのは非常に

重要なことだと思うんです。BMIは、確かにそういう意味では、日本で割にユニークな研究

が生まれつつあって、その中の一部のものは、かなり社会応用にも行っているような部分

だと思うんです。ただ、じゃあ、それをそのまま続けていくのが本当にいいのか、それと

もかなり大幅なコンセプトの変更みたいなことを考えて、そういうものを次に考えていく

べきなのかというのは、かなり慎重に考える必要があると思うので、私自身もその分野は

専門ではありませんので、この脳科学委員会で何かそういうところで、少しきちんとした

議論ができればいいのかなと思っています。

【樋口主査】 はい、どうぞ、神庭委員。

【神庭委員】 きょうは、樋口先生もそうですけれども、臨床の精神科医の立場から、

振り返って、まとまらないのですけれども、感想のようなことを述べたいと思います。

僕は、脳プロの課題のD、E、Fあたりから審査、事後評価等々関わってまいりまして、そ

の当時の日本の弱みというのは、臨床研究が弱いという点で、基礎の神経科学は世界に冠

たるレベルにあるが、ヒトを対象とした研究が弱いのではないかということで、ここを非

常にサポートしてくださったと思います。臨床研究をする倫理的な検討、あるいは、フィ

ールド、全国のネットワークができてきたりしたということで、かなりの成果が上がって

きたというふうに思っています。

ただ、どうしても新しい技術革新がないと、脳のことがさらに一層分かるということは

なかなか期待できなくて、今の技術では、例えば、脳波で分かることは限界があるし、そ

れがfMRIになって、さらにまた分かることがある。でも、それにも限界があるということ

で示されるように、1 つの革新的な技術が開発されないと臨床研究も壁にぶつかるという

ことで革新脳が始まって、この辺、大変うまくつながっていると思います。

最近の臨床研究について、詳しく調べたわけではありませんが、全国をざっと見てみま

すと、このレベルをさらに維持していき、新たな革新技術が出たとき、あるいは、脳の機

能、構造が明らかにされたときに直ちに臨床の研究に移れる足腰が、やや弱ってきている

かなというふうに思っておりまして、引き続き、臨床研究、すぐにはアウトプットや成果

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につながらないかもしれませんが、せっかくできた日本のバックグラウンド、一定程度は

高くなったと思いますので、それが落ちないように、引き続きそれを支える仕組みが欲し

いなと思っています。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。はい、ど

うぞ、合原委員。

【合原委員】 この委員会でも何度か申し上げているのですけれども、こうやって全体

像の一覧表を見ると、20年前に脳を創るという分野を世界に先駆けて日本で提唱したので

すけれども、その研究がほとんどなくなっているということを改めて感じます。1 つは、

甘利先生がやっておられるような数理脳科学、その分野が欠けてきている。それから、さ

らに欠けているのは、ハードウェアの分野です。これは、欧米はかなり力を入れて予算も

割いているのです。例えば、ニューロモルフィックハードウェアなどの分野が非常に活発

に研究されているわけです。

これは、歴史的に見ると、南雲仁一先生が 1962年に、実は世界で初めて、そういうニュ

ーロンの電子回路モデルを、非線形性をきちんとトンネルダイオードで実現して実装した

と、そういう歴史的にはすばらしい研究があるのですけれども、それ以降、プロジェクト

としては余り大きなプロジェクトが日本では走っていなくて、ここはすごく気になってい

ます。

他方で、ポテンシャルとしてはいまだに高くて、日本中を探すとポツポツとこの分野で、

研究者がいます。これはアナログの集積回路を使うので、ちょっとアート的な要素があっ

て誰でもできるというわけではないのです。デジタルの集積回路とはそこが違うので、そ

ういう人たちをうまく統合して日本全体として作っていければという感じがしています。

それから、もう一つ最近の動きで日本がリードしかけているのは、量子ニューラルネッ

トワークです。これは、実はD-Waveという会社がカナダにあって、これは量子アニーリン

グという効果を使って、もう製品になっていて、NASAとかGoogleが買って、今いろいろ実

験をしています。それに対して内閣府のImPACTプロジェクトで、山本喜久先生がリーダー

となって今、量子ニューラルネットワークを作っているのです。これはもう既に実機がで

きていて、NTTで 2000ニューロンの量子ニューラルネットワークが実装されています。ス

タンフォードで 100ニューロンの量子ニューラルネットワークが実装されています。両方

の仕事が同時に去年の 11月 4日の『サイエンス』に載って、今、世界的に割と大きな注目

を集めていて、ここは日本が世界をリードできるところです。歴史的にも日本で始まった

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分野ですので、やはり、このハードウェア研究というのは、もう一度注目してもいいかな

という感じが、ここ数年ずっとしています。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。はい、ど

うぞ、水澤委員。

【水澤委員】 先ほど精神科の領域の方からもお話がありましたけれども、神経内科と

いう領域の方で少し述べさせていただければと思います。

結論から言いますと、神経疾患領域というのは、言葉で言いますと「認知症等」という

ところで代表されて、ほかの病名は出てこないのですけれども、認知症も含めまして、メ

カニズムから言いますと、いわゆる神経変性疾患と言われる疾患がありまして、それが神

経難病の中の多くを占めています。難病というと希少疾患ということが結構入ってきます

ので、認知症の場合、数が多いということで外れてしまうことが多いのですけれども、メ

カニズムとしてはその神経変性と。

それに関しましては、遺伝性の疾患の解明が進んで、遺伝子が分かってきたということ

で、かなりメカニズムは分かってきました。すなわち、原因遺伝子が分かれば根源が分か

りますので、あと、ずっとそのカスケードを、代謝の変化をずっと追っていって、最終的

に神経細胞が死んで変性が起きて症状が出るというところまで全容を解明すれば答えが出

るということになると思います。実際は、遺伝子はたくさんわかったのですけれども、全

容解明を目指していても、例えば、新しい研究の方が流行的にはやってまいりますと、そ

っちに行かないと研究費がもらえないといったことがありまして、十分に既にわかった遺

伝子、遺伝性疾患の原因、そういったものの研究がなかなか進んでいないというのが現状

かなというふうに思っています。

今、申し上げましたように、神経難病と言われるところにそういう疾患が多く含まれて

いますので、是非、その「認知症等」というだけではなくて、具体的に、例えば神経難病、

神経変性疾患といったものも含めて、研究テーマとして活性化していっていただくと非常

にいいのではないかなというふうに思います。これは、根源の原因が分かっていますので、

そこに時間と努力、お金を掛けますと必ず答えが出てくるというふうに思われます。1 疾

患、2 疾患でもいいですけれども、完璧にそれが分かって、ほんとに根本的治療法ができ

るということがありますと、ほかへの波及効果は非常に大きいのではないかと期待されま

すので、幾つか選ばなければいけないかもしれませんけれども、是非、神経難病、あるい

は神経変性疾患というものを、項目としても入れていただくと大変いいのではないかと思

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います。

以上です。

【樋口主査】 はい、ありがとうございます。ほかにはいかがですか。はい、どうぞ。

【伊佐委員】 先ほど神庭先生から、新しい技術の開発ということがありまして、ここ

で学術会議のマスタープランのことを少し御紹介させていただきたいと思います。

この間、学術会議で神経科学分科会等、岡部先生、あと、脳とこころの分科会、今回は

さらにそういった神経科学だけではなくて、基礎医学のほかの分野、生理学とか薬理学、

あるいは機能医科学とか、あと、解剖学が主体の細胞形態医科学とか、やはりみんながイ

メージング技術の開発というのは、今後の脳科学だけではなくて医学、生命科学全体の発

展に非常に重要であるということです。

例えばMRIに関しては、もはや国内に作っているメーカーはないのですけれども、外国の

主要な国にはそういう新しい高磁場のMRIの開発と、それを一緒にスペシフィックに作って

いくような物理学者と、神経科学者、その結果として出てくる膨大なデータを処理するデ

ータサイエンティストが一緒に働くようなイメージングセンターというのがあって、先進

的な技術開発から研究への一気通貫でやっている。それが、日本だとなかなかそういう集

約して同作業ができないので、何かと外国でできたものを後からもらって追いかけている

ようなところがあって、やはりそういう状況を何とかしたいと思っています。

それは、イメージングといっても、非侵襲の脳のイメージングもあれば、顕微鏡等につ

いても同様な問題がありまして、そういったイメージングセンターをどこかにちゃんと設

置して、具体的には大学共同利用機関とか、幾つかのそれに関連した機関で連携して、そ

れを全体としてまた支えると、そういったネットワークを作りたいというプロポーズを、

基礎医学と臨床系と脳とこころが団結して提出して、一応、学術会議からのマスタープラ

ンとしては認められています。

それで、今度はロードマップにどうやって乗せていくかという問題になるのですけれど

も、そういった問題意識を共有していただいて、多分、脳科学だけではない、さらに広が

りがある問題だと思いますので、そういった脳科学の今後の進展の中心を担うようなイメ

ージングを、やはり日本でもちゃんとやっていくという体制について御理解いただいて、

また今後の脳科学委員会でも審議していただければありがたいと思います。岡部先生から

何か追加があれば。

【樋口主査】 はい、どうぞ。

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【岡部委員】 今、伊佐先生から御説明があったとおりで、学術会議の方で話している

内容と、あくまで研究者が自主的にこういうものがあればいいという、そういう形のプラ

ンニングですので、それとこういう脳科学委員会での話をどういうふうにうまくかみ合わ

せていくかということが非常に重要だと思うんです。ただ、そういうイメージングを中心

にしたような中核的なものというんでしょうか、そういうものが存在しているということ

は確かに重要なことだと思います。

アメリカを見ても、ヨーロッパを見ても、やはりかなり集約的な、人が集まってある特

定のプランに従って研究をして、そのプロダクトが、その国の研究者コミュニティ全体に

利用できるような形で広まっていく、そういうプランニングをどこの国も最近非常に力を

入れてやっています。最初は、やはりAllen Instituteとかジャネリアファームとかができ

たときは、みんな少し、ほんとにそんなことをしてうまくいくのかなという目で見ていた

と思うんです。ただ、実際にそういう研究機関が 5年、10年たってどういうプロダクトを

出してきているのかと見ると、そういうものができなければ生産されなかったようなデー

タセットであるとか、あるいは、データセットをもとにした解析ということができつつあ

るように思います。

ですから、日本も、やはりそれを真剣に考える必要があって、それは、ただお金を掛け

ればできるというものではなくて、本当に研究者がそれを自主的にやりたいと思っている

ということが大事だと思うんです。何をやりたいと我々が思っているのかをきちんとディ

スカッションして、意見表出するというのは、やはり学術会議みたいなところできちんと

検討するのが重要なことだと思っていますので、今回そういう形で案がまとまっていると

いうのは非常にいいことだと思います。

さらに言うと、そういう集約的なものを作って、脳に関するかなり大きなデータセット

が出たときに、それが本当に社会的というか、サイエンスとして認知されるためには、や

はり数理科学とか、あるいはコンピュータサイエンスとか、何かそこと組み合わせて、脳

のビッグピクチャーというんですか、そういうものを提示できないと、やはりそこは意味

がないと思うので、こういうものができるときに、やはりそういった理論をやっている人

が、ちゃんとかみ合って物が進んでいくということが重要だと思っています。

ですから、先ほど合原先生が言われた、この図からそういう部分がどんどんなくなって

きているというのは、私も何か逆行している気が非常にしていて、むしろどんどんそうい

うものが入って、出てくるビッグデータ等ときちんと対峙する、そういう仕組みができれ

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ばいいんじゃないかというふうに思います。

【樋口主査】 はい、どうぞ、渡辺委員、その後、室伏委員。

【渡辺委員】 内容については、毎回言うことなんですが、脳科学をバイオロジカルサ

イエンスとして見たときに、余りにも進化の無視がひどいと思います。毎回、私は言って

いるのですが、やはりもうちょっと進化ということを考えていただきたいし、多分、委員

の中に進化生物学の方を入れると、随分違ってくるのではないかと思います。

それから、もう一つは、やり方なのですが、前にこの会議で一度問題になったことがあ

ると思いますが、プロジェクトを作りながら同時にその評価を並行してやりますね。スピ

ーディにやるためにはそうなんだということも大変よく分かるし、機構上の説明もいただ

いて、それは一応わかったのですが、やはり普通に考えると、ちょっと特殊なやり方だと

思うんです。普通は、計画を立てて、立てた人と別の人がそれを評価してというのが普通

なので、同じ人が同時進行的にやっていくのは、やはりちょっと僕は違和感があります。

一度ここで議論になったのを覚えていますけれど。

【樋口主査】 はい、それでは室伏委員。

【室伏委員】 ありがとうございます。いろいろ皆様の御意見を伺っていて、この脳科

学研究のプログラムというのはかなり成果を上げてきておりますし、それから、これから

どういうことが必要なのかということを、こういった科学者の中で発信していくというこ

とはとてもよく分かるのですが、やはり、科学者の中だけではなくて、一般の国民ですと

か、企業とか、そういった、研究そのものにはそれほど関係ないというふうに思われるよ

うな方々への発信というのも、非常に大事だと思っているのです。

今、様々な分野でこういった予算をつけてくれればもっと進むのにとか、こういうこと

をやりたいから大型の予算が欲しいという話があちらこちらから出ていますけれども、何

といっても日本が今、大変厳しい財政状況にあるので、ただそういった方向だけに働きか

けてもだめだろうという気が、最近しております。ですから、研究の価値を認めて、では、

支援しましょうという、そういう世論といいますか、そういうものが形成されるような形

での情報発信というのが非常に大事なのではないかと思っております。これまでにいろい

ろな成果が上がっているものを、何とか今後、日本の強みとして伸ばしていくためには、

発信の仕方を、今後もう少し考えていったらよいのではないかというふうに思っています。

ありがとうございました。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。どうぞ。

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【高橋委員】 皆様とは違う立場として 2つほど申し上げたいと思います。

1 つは、今、渡辺委員がおっしゃった体制の問題で、私もずっと、当事者が評価者にも

なるという体制には違和感を持ってきました。どういうふうにすればいいのか、そこまで

はちょっと分からないのですけれども、渡辺委員がその御指摘をしてくださったこと、大

変心強く思いました。何らかやはりそこは分けるのが世界の常識だと思いますので、期が

改まった折りには、是非そういうことも考えていただきたいと思います。

それから、このプロジェクト全体の表というか、グラフを見て、最後に社会に貢献する

脳科学の実現というのが目標として掲げられているのですけれども、率直な感想を言わせ

ていただけると、そこには随分距離があるなというのが、ここまでの議論を聞いてきた上

での感想です。

社会に貢献するというところをもっと意識するならば、例えば、私が今パッと思いつく

のは、今、社会がすごく困っていることの一つに薬物依存症対策というのがあると思うん

です。これは脳と非常に関わる話だとは思うのですけれども、脳科学の最新成果が日本の

薬物依存症対策にいい影響を及ぼすような状況が、まだないように私は思っていまして、

そういう方面での貢献というのも考えるべきものではないかと。そこは、いわゆる理科系

の研究とは違う研究が必要になるでしょうし、出てくるアウトプット、あるいはアウトカ

ムも、いわゆる研究成果とは違ったものになると想像されますけれども、社会に対する貢

献というのは非常に大きなものになり得ると思います。ですから、そういう方面の研究プ

ロジェクトを考えてみるというような柔軟性といいましょうか、それも期待したい。

特に人文科学、社会科学系の方にもっと入ってほしいというお話も出ていました。それ

は非常に大事なことだと思いますけれども、常にこっちがメインで、加わってよねという

視線があることが、また気になっていまして、そうではないのではないか。脳科学という

のをやるためには、両方対等なイコールな立場での協働というのが必要とされているので

はないか。そういう姿勢でいないと、先ほど、渡辺委員がおっしゃった、シャイだからこ

ちらから情報提供することが大事だという御指摘もありましたが、シャイにならざるを得

ない雰囲気というか、上から目線で、「あなたたちも来てよね」という問題点もあるのでは

ないかと感じました。なので、どうしても理系メインになって、お医者様メインになって

いることに対する対策というか、そういうことも考えていく必要があるのではないかと思

いました。勝手なことを申し上げて済みません。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。はい、どうぞ。

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【有信委員】 今の御意見に近いといいますか、基本的には賛成なのですけれども、合

原委員からも出ていましたけれども、ここで議論されているのとは違うところで様々な研

究が進んでいて、一方でICTとの連携が必要だということも指摘はされています。併せて、

AIの研究に様々なお金が投じられていますが、AIの中で、例えば、ディープラーニングで、

具体的に何でそういう結果が出るのかということ自身は、実はよく分かっていない。ただ、

そういう結果が出ているというような様々な研究が行われています。一方で、認知科学と

か自然言語処理とか音声認識だの、画像認識だの、様々なそういう研究が、実は、多分、

全く素人の言い方で申し訳ないのですが、関連してくるところがあると思うんです。それ

が何でこの中に取り込めないかというと、限られた予算の中でやれることには限りがある

と、こういう発想でやるので、どうしてもそういうものを包含していかれない部分がある

と思うんです。

ですから、先ほど御意見がありましたように、全体を巻き込んでいくときには、それぞ

れの研究には、またそれぞれの目的に応じたファンディングがなされていて、その研究が

進んでいる部分をどういうふうにまとめていくかという、そのまとめ方を少し考えていく

必要があるような気がします。

全く勝手な言い分ですけれども、それぞれ 1つの領域のファンディングの中で、あれも

やろう、これもやろうという提案をしてもどだい無理な話なので、それぞれのところは、

またそれぞれの目的でファンディングがなされていたり、研究が進んでいたりするやつを、

どう俯瞰的に整理をしてうまく結び付けていくかということを、どこかで考えないといけ

ない。

例えば、脳科学であれば、脳科学の観点でできるだけ広くそういうものをうまく包含し

ていくような、あるいは、そこで得られた知識をどういうふうにそこに取り込んでいくか、

あるいは、協力できる部分は協力をしていくかということを、多分考える必要があるので

はないかという気がします。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。はい、どうぞ、安西委員。

【安西委員】 1 つだけ申し上げておければと思います。皆様の御意見はいろいろその

とおりだと思いますが、特にこれから精神・神経疾患の研究を、やはり日本として重点的

にやっていくのだとしたときに、精神・神経疾患へのアプローチには、もちろん分子レベ

ル、遺伝子レベルからいろいろなレベルのアプローチがあって、それを組み合わせて、ど

ういうふうに、本当に社会で悩んでいるような、今、日本で本当に課題であります認知症

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をはじめとする精神疾患にどう対応するのか、その構図が描けていないように思うのです。

その 1つの大きなポイントというのは、アメリカに比べてでありますけれども、特に認

知神経科学の現状がほとんどここで語られることがないように思います。そういうことも

含めていろいろなアプローチが組み合わさらないと、先ほど言われた社会的な問題も含め

て、恐らく、認知症の問題というのは解決していかないのではないかというふうに見てお

ります。それをこの脳科学委員会でもって、本当はきちんとした構図を描いて、基本的な

ところからアプローチしていただけるとありがたいと思っております。

【樋口主査】 はい、ありがとうございました。はい、どうぞ。

【合原委員】 先ほど渡辺先生と高橋さんがおっしゃった体制のことなのですけれども、

別の側面でちょっと気になっていることがあって、もうちょっとロングタームで見たとき

に、脳科学もそうですし、あと「京」とかポスト「京」に関しても同じ感じを持つのです

けれども、何となくやや金太郎飴的な印象があるんです。もちろん、きわめて優れた研究

者がいるのは分かるのですけれども、同じ人たちが長いことやっているような感じのとこ

ろがあります。もちろん、その人たちはレベルが高いので継続性という意味では重要です

けれども、それだけだとやはりだんだんdecayしていくので、新規性をどうやって入れるか

というところがポイントです。偉い人たちの弟子ではなくて、何というかな、そのままだ

と芽が出にくいのだけれども頑張っている人たちっているんですよ。その人たちというの

は、すごく予算を取るにも苦労しているわけです。だから、継続性と新規性のうまいトレ

ードオフを作ると、より強力な体制ができるかなと、こういうことを常々感じています。

【樋口主査】 私は主査なので、ふだん余り発言をしていないのですが、一言だけ、感

想的なことも含めて述べさせていただきます。

私は脳プロのところから評価委員をやらせていただいて、随分長い期間、やってまいり

まして、AMEDになってもAMEDの中での文科系のところの評価委員も随分やらせていただき

ました。

それで感じることは、脳プロのときから始まったこういったトップダウン型のプロジェ

クト研究というのは、当初はなかなか皆さんの中、研究者の中で理解されていないところ

があって、それはそういうプロジェクトなのだろうけれども、自分はその中の一つのとこ

ろの研究をこれまでどおりやって進めていくよと、そういうスタイルの方が最初は圧倒的

に多かったようです。これが 5年たち 10年たって随分意識が変わったというふうに、それ

は非常にいい意味で変わったと思います。それで、プロジェクト型できちんとした、何を

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求めて、何を解明して、何を作り出すかということを明確にしたチームが含まれていくと

いうことにみんな慣れてきて、それなりの成果が出始めているという、非常にすばらしい

ことだなと思って見ているのです。

その一方で、やはり、そこから漏れてしまう部分というのがありはしないか。どういう

ことかと言うと、先ほどの技術の開発とか、ベーシックなところでのかなりいろいろなユ

ニークな発想だとか、そういったものは、本来は、それはボトムアップだから科研費でや

るんだよという考え方は、基本的にはそれでいいのかもしれません。しかし、このトップ

ダウン型のプロジェクト研究の中にそういうものが反映されて持ち込まれていかないと、

なかなかプロジェクト型の研究自体も、何かその中でクローズな感じになって発展性がな

くなるのではないかという懸念を多少持つのです。そこはどういうふうな形をとっていく

のが良いかについてはこれから検討していく課題ではないかというふうに思っております。

もう 1点は、先ほど来、出ている、プレーヤーと評価者の関係、これは実は物すごく難

しい問題で、もう今まで散々そのことについてはいろいろなところで議論がされてきまし

た。極端なことを言うと、例えば、プレーヤーは評価者に加わらないということになると、

評価者の構成が、今度はものすごくいびつになるのです。例えば、私なんかが代表的な例

ですが、要するに、研究に直接タッチしていない者が本当に最先端のところの評価ができ

るかというと、これまた非常に問題になってくるところがあります。だから、物すごく難

しいし、その研究に関しての最先端を走っている人が、やはりどこかで評価も、それは自

分の評価をするのは論外ですが、そうではなくて他人の評価をする中にはプレーヤーが入

っていく必要があるのではないかというふうに思います。

ただ、恐らく、一番問題になるのはプランナーとプレーヤーの関係なのだろうと思いま

す。それは実際、技術的に解決することは可能なのだろうと思うので、そこは知恵出しを

していく。ただ、それもやはりプレーヤーがあって、初めて次のプランというのが創出さ

れるわけですから、全くそれを抜きにしてプランが立てられるのかということになると、

これもまた難しい問題だと思うんです。ただ、ここは本当に知恵を絞ってやっていかない

と、日本のこれからの研究というのがちょっと怪しくなるのではないかという懸念、心配

をしています。感想でございますが、言わせていただきました。

ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、三品委員。

【三品委員】 かなり具体的なお話になると思います。脳プロでBMI技術というのがござ

います。これは、昨秋の成果報告会のときに公開シンポジウムというのをやらせていただ

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きました。これは社会への発信を目指したということなんですけれど、BMI技術自身は実際

に疾患の克服に向けてかなり具体的な成果を上げておりますし、それから実用化へ向かっ

て進んでおります。そういうこともあって公開シンポジウムということなんですけれど、

マスコミの方でも幾つか取り上げていただいて関心が高かったということで、意を強くし

ております。

このBMI技術自身がうまくいった 1 つの理由は、1 つはATRという情報を扱っている基礎

的な研究がセンターにあって、共同研究者はみんな臨床なんです。今、精神疾患は分から

ない、分からないという話が続いていますけれども、その中で実際にDecNefという具体的

な治療法を提案して、かなり困難ですけれども、そういうものを提示してきた。リハビリ

あるいは代替に関しては臨床が中心になって、ロボティクスとか情報解読とか、基礎研究

のチームが組み合わさることによって、かなりうまく進んだ。これは実用化ということを

具体的に社会に貢献するということをはっきりとした目標に持っていることが大きな要因

だと思われます。そういう面で評価されるということですので、本当の意味で機能するよ

うな研究、そういうことが要求されます。例えば、バイオマーカー、fMRIにしても、基礎

研究ですけれども、かなりシビアに評価される。それを基盤にして治療するというわけで

すから、ただバイオマーカーだったらいいということでは許されないわけです。治療に役

に立つという、ある種の厳しさを持ってやった。これは 1つの成功例ではないかと思いま

す。

先ほどから御議論があるように、そういうスタイルはうまく使うことにしても、BMI技術

は発足以来 10年近くたちますから、脳プロが走ったことによってそれだけ発展したわけで

すから、次、新しい項目立てで、新技術をもとにして展開を図るというのは非常に妥当な

議論ではないかというふうに思います。脳の情報解読とか人工知能とか、そういうものも

含めたようなものは、1つ考えられるのではないかと思います。

それから、また具体的ですけれども、霊長類モデルに関しても、パーキンソン病の動物

モデルとか、免疫不全のマーモセットとか具体的な成果として出てまいりました。パーキ

ンソン病のモデルはもう少ししたら論文になると思うんですけれども、初めて霊長類での

変性疾患の前駆症状とか、かなり初期の症状とかを追いかけるモデルになるというふうに

思います。

ところが、まだまだ自由自在に遺伝子編集を使えるというところには至っておりません。

様々な技術革新が必要ということです。これに関しては、やはり革新脳のエンジンとして

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技術革新、技術開発は続けていく必要はあるのではないかと思われます。恐らく、マーモ

セットモデルを作る、いかにスピード感を持って作るかということは革新脳の成果にも直

結してまいります。これは非常に地道ですけれど、手間暇かかって、時間がかかってモデ

ルを作るというのでは、やはり革新脳の発展自身、あるいはそれが認知症の疾患モデル、

ヒトに近い疾患モデルを作るという意味でも、ここが律速といいますか、鍵になるところ

です。この霊長類モデルもあと 1年で終わるのですけれども、革新脳を推進するエンジン

として考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

それから、以前も申し上げましたけれども、脳プロの課題Gで情報基盤としてのデータベ

ースということで、線条体を中心としたリン酸化データベースを作りあげました。御存じ

のように、線条体は情動とか、様々な精神疾患とも関係しておりますし、それから、先ほ

どお話が出ました薬物依存というのも報酬とかに関連していて非常に関係の深い領野です。

せっかくいいデータベースができまして、創薬とも関係してくるというので、こういう成

果として上がったものをさらに大きく発展させるような考えもあってもいいのではないか

というふうに思います。

技術革新に関しては、革新脳で少しそういう技術革新を中心にしたようなパーツがある

ので、ある程度、推進されているというふうに思いますけれども、確かに、新しい技術を

使う、あるいは、逆に、あるプログラムが走ることによって技術革新を促す、そういう方

向も考えられるのではないかというふうに思います。

非常に卑近な話で申し訳ございませんけれども、私の感想です。

【有信委員】 済みません、評価のことでちょっといいですか。

【樋口主査】 はい、どうぞ。

【有信委員】 評価の点に関して幾つか議論が出ていましたけれども、文部科学省の研

究開発評価指針の改訂を一度やったことがあって、そのときの基本的な考え方は、今度ま

た改訂されますけれども、やはり、評価というのは自己点検評価、研究をやっている人が

一番よく分かっているので、自己点検評価が一番の基本であると。外部評価という観点で、

その自己点検評価が正当に行われていることを検証するというのが外部評価の視点になる

ということで、今、御意見として出ているのは、恐らく、自己点検評価の正当性をどこで

きちんと保障しているか、そこの部分が欠けているのではないかと、こういう御指摘だっ

たと思うんです。

ですから、やはり、自分たちが自分たちのやっていることを点検評価するのは基本だと

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思います。あとは、それの正当性をどこかできちんと保障しておくという仕掛けを、どこ

かで作るということだと思います。そうでないと、今まで御指摘があったように、評価委

員会の設定がなかなか難しかったり、評価される人が二重、三重に評価をされたりと、こ

ういうことになりますので、その視点できちんと構造的に評価をする仕組みを確立する必

要があると思います。

【樋口主査】 ありがとうございました。ほぼ予定の時間がいっぱい、いっぱいでござ

いますが、さらに特別ここで発言しておきたいことがございましたら、よろしいでしょう

か。ありがとうございました。貴重な御意見をたくさん頂きました。

【原課長】 済みません、1点だけよろしいでしょうか。

【樋口主査】 はい、どうぞ。

【原課長】 様々な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。なかなかす

ぐに答えが出る課題ばかりではありませんので、次期の脳科学委員会の先生方とも相談し

ながら、よりよきものになるようにということで進めていかれればと思っております。

それから、評価の関係でございますけれども、この脳科学委員会の立て付けとしては、

その上部委員会であります研究計画・評価分科会、ここが研究の計画を作って、その計画

どおり文科省なり、AMEDがきちんとやっているかということを評価していただくといった

ような仕組みになってございます。現行、そういう仕組みになっている上でどういう評価

がいいのかというのは、また議論が必要だと思います。

今いろいろ御指摘がありましたけれども、個々の課題については、AMEDが、例えば、外

部評価をするといったようなこと、それから、この脳科学委員会では、そういうAMEDなり

文科省の評価の仕組みなり、あるいは、全体のプログラムの立て方といったものが、きち

んと脳科学委員会で議論された方針に従ってやっているかといったようなことを、チェッ

クしていただくというような構成になっております。こういうやり方がいいかどうかとい

うのは、また次回、御議論いただければと思っております。現状ではこのような形になっ

ているということでございます。

以上でございます。

【樋口主査】 ありがとうございました。本日、予定しておりました議題は以上でござ

います。それで、本日の委員会をもって、先ほど申し上げましたように、今期、第 8期の

脳科学委員会はこれが最終回ということでございます。委員の皆様におかれましては、大

変活発な御議論をいただきましてありがとうございました。

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事務局の方から、御挨拶をお願いしたいと思います。

【関局長】 どうもありがとうございました。きょうが 8期の最後の委員会ということ

で一言御礼を申し上げたいと思います。

この 2年間、本当にありがとうございました。改めて感謝を申し上げたいと思います。2

年前の 4月にはAMEDが発足するということで、新たな医療分野の研究開発体制もできると

いうような、ライフサイエンスの分野では大きな転換もあったわけでございますけれども、

文部科学省におきましては、この脳科学の分野におきまして、融合脳など、新しい事業を

開始するということであります。きょうも御報告をいただきました国際連携の作業部会、

こういったことにも取り組むということで、この間、先生方には、それぞれの様々な観点

からの御意見、御議論をいただいてきたわけでございます。大変御尽力をいただいたこと

につきまして、感謝を申し上げたいと思います。

先ほど課長からも申し上げましたように、きょう御議論いただきましたことも含めまし

て、また次の脳科学委員会の方にしっかり引き継いでいきまして、引き続き、有識者の皆

様からの様々な御意見を頂いて、この施策の推進、立案をしていくことが大変重要である

と思っておりますので、引き続き、先生方には御指導、御助言を頂ければと思っておりま

すので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【樋口主査】 ありがとうございました。それでは最後に事務局の方から連絡事項につ

いて、御説明をお願いしたいと思います。

【佐久間課長補佐】 本日の議事録につきましては、事務局で案を作成して委員の皆様

にお諮りをし、主査に御確認をいただいた上で公表していきたいと思っております。あと、

配付資料につきましては、机上に置いておいていただければ、後日、事務局の方から郵送

させていただきますので、よろしくお願いします。

以上でございます。

【樋口主査】 それでは、本日の脳科学委員会をこれで閉会とさせていただきます。ど

うもありがとうございました。

── 了 ──