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Proceedings of the Twenty-Sixth RAMP Symposium Hosei University, Tokyo, October 16-17, 2014 動的な交通ネットワーク流問題 Dynamic Network Traffic Flow Problems 赤松 隆 1和田 健太郎 2Takashi Akamatsu and Kentaro Wada 概要 本稿では,21 世紀以降,交通分野で研究が進展している動的な交通ネットワーク流の記述・ 制御モデルについて解説する.これらのモデルは,従来の 時間軸を完全に捨象した静的モデルの 抱える本質的課題渋滞現象を表現できないの解決を目的としている.動的モデルの概念自体は, 静的モデルの自然な拡張として表現されるが,渋滞現象の記述にともなう解析上の困難から,その数 理特性や解法に関して不明な点が多く残されている.本稿では,そのうち構造が比較的明瞭なモデル に対象を限定した上で,そのモデルを簡潔に説明し,関連する未解決問題の一端を紹介する. キーワード 交通ネットワーク分析,交通渋滞,動的交通均衡配分,動的システム最適配分 1. はじめに 交通計画分野における定量的分析で用いられる多くのモデルは,古くから数理計画理論との つながりが深い.その筆頭に挙げられるのが,Wardrop [29] が提唱した利用者均衡配分 * 1 であ る.このモデルと数理計画理論とのつながりは,1950 年代後半の Beckmann et al. [5] の研究 にはじまる.そこでは,当時最新の数理計画理論であった Kuhn-Tucker [12] 理論の応用によっ て,均衡条件と等価な非線形計画問題が提示された.そして,このモデルの解法研究は, ’60 ’70 年代の数理計画分野における凸計画法・ネットワーク計画法の発展と並行して進展し,’70 年代前半には,現実の大規模道路網でも利用可能な計算法が実用化されている.’80 年代には, 交通分野の研究者 [25, 6] によって,このモデルにおける交通流の相互作用条件を一般化した 問題が有限次元の変分不等式問題として表現されることが示された.そして,これを契機とし て,数理計画分野でも変分不等式問題に対するアルゴリズム研究が活性化し,両分野相互の理 論が大きく進展している.さらにその後も,このモデルは様々な側面からの拡張がなされ,理 論・応用の両面で大きく発展したが [24, 33, 17],それら拡張モデルの特性の解析や効率的な数 値解法の開発等に数理計画理論の活用は欠かせないものとなっている. 1 東北大学大学院情報科学研究科,〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉 Graduate School of Information Sciences, Tohoku University, Aramaki Aoba, Aobaku, Sendai 980-8579, Japan 2 東京大学生産技術研究所,〒153-8505 東京都目黒区駒場 Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Komaba, Meguroku, Tokyo 153-8505, Japan E-mail address: [email protected] E-mail address: [email protected] * 1 ほぼ同じ頃に独立に提唱された Nash 均衡 [18] を(連続実数とみなせる)多数のプレイヤーがいる場合に拡張した均衡概念. 31

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Proceedings of the Twenty-Sixth RAMP SymposiumHosei University, Tokyo, October 16-17, 2014

動的な交通ネットワーク流問題Dynamic Network Traffic Flow Problems

赤松 隆1∗和田 健太郎2†

Takashi Akamatsu and Kentaro Wada

概要 本稿では,21 世紀以降,交通分野で研究が進展している動的な交通ネットワーク流の記述・制御モデルについて解説する.これらのモデルは,従来の “時間軸” を完全に捨象した静的モデルの抱える本質的課題—渋滞現象を表現できない—の解決を目的としている.動的モデルの概念自体は,静的モデルの自然な拡張として表現されるが,渋滞現象の記述にともなう解析上の困難から,その数理特性や解法に関して不明な点が多く残されている.本稿では,そのうち構造が比較的明瞭なモデルに対象を限定した上で,そのモデルを簡潔に説明し,関連する未解決問題の一端を紹介する.

キーワード 交通ネットワーク分析,交通渋滞,動的交通均衡配分,動的システム最適配分

1. はじめに

交通計画分野における定量的分析で用いられる多くのモデルは,古くから数理計画理論とのつながりが深い.その筆頭に挙げられるのが,Wardrop [29]が提唱した利用者均衡配分*1である.このモデルと数理計画理論とのつながりは,1950年代後半の Beckmann et al. [5]の研究にはじまる.そこでは,当時最新の数理計画理論であった Kuhn-Tucker [12]理論の応用によって,均衡条件と等価な非線形計画問題が提示された.そして,このモデルの解法研究は,’60 ∼’70年代の数理計画分野における凸計画法・ネットワーク計画法の発展と並行して進展し,’70

年代前半には,現実の大規模道路網でも利用可能な計算法が実用化されている.’80年代には,交通分野の研究者 [25, 6]によって,このモデルにおける交通流の相互作用条件を一般化した問題が有限次元の変分不等式問題として表現されることが示された.そして,これを契機として,数理計画分野でも変分不等式問題に対するアルゴリズム研究が活性化し,両分野相互の理論が大きく進展している.さらにその後も,このモデルは様々な側面からの拡張がなされ,理論・応用の両面で大きく発展したが [24, 33, 17],それら拡張モデルの特性の解析や効率的な数値解法の開発等に数理計画理論の活用は欠かせないものとなっている.

1 東北大学大学院情報科学研究科,〒980-8579仙台市青葉区荒巻字青葉Graduate School of Information Sciences, Tohoku University, Aramaki Aoba, Aobaku, Sendai 980-8579, Japan

2 東京大学生産技術研究所,〒153-8505東京都目黒区駒場Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Komaba, Meguroku, Tokyo 153-8505, Japan

∗ E-mail address: [email protected]

† E-mail address: [email protected]

*1 ほぼ同じ頃に独立に提唱された Nash均衡 [18]を(連続実数とみなせる)多数のプレイヤーがいる場合に拡張した均衡概念.

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このように,1950年代に生まれた利用者均衡モデルは,数理計画や経済学等の関連分野と相互に意義のあるフィードバック関係を持ちながら発展し,’90年代半ばには体系化された交通ネットワーク理論がほぼ完成した.そして,現在では,中・長期的な交通計画策定の際に欠かせない標準的な道具立てとして実用化されている.ただし,これまでに完成した理論は,あくまでも “時間軸”を完全に捨象して得られた静的モデルに立脚したものである.そのため,ある程度までの「混雑」は表現できても,時々刻々と状態の変化する「渋滞」を正しく表現することはできない.すなわち,きめ細かな需要管理施策や ITS (Intelligent Transportation Systems)

の評価といった現代的な交通計画上の課題に対応することは難しいという課題が残された.そのような課題を受け,交通分野では,21世紀以降,交通渋滞を明示的に扱った交通流の

“時空間ダイナミクス”の理論研究が進展している.その基礎は,Lighthill-Whitham-Richards

[15, 22]によって提案された道路交通流の Kinematic Wave(KW)理論である.この理論に関する研究は,長らく顕著な発展は見られなかったが,’90年代半ば以降の多くの研究によって理論が再構築され,近年,変分問題としての理論的基礎付けが示された [9, 10].その結果,巨視的観点から交通流をモデル化した KW理論と微視的観点から車両走行をモデル化した車両追従理論の統合といった理論の体系化が著しく進展している.また,これと並行して,交通流の時空間分析法をネットワーク・モデルに導入した動的ネットワーク配分モデル,あるいは,その様な動的な交通流モデルに基づく制御モデルも多数研究されている.本稿の目的は,このような交通ネットワーク流の予測と制御に関する問題を,交通流理論に関する予備知識を要求しない範囲で,解説することである.先にも述べたように,’90年代までの静的な交通ネットワーク流モデルの理論と解法は,交通分野と数理計画分野で相互に良い連携関係を持ちつつ発展してきた.しかし,’90年代以降の交通分野での動的な交通ネットワーク流モデルに関する研究は,本来は数理計画理論との繋がりが大いにあるにも関わらず,数理計画分野ではあまり知られていないようである.これらの新たなモデル群は,現時点ではその数理特性や解法に関して不明な点が多く残されており,数理計画分野の研究者の活躍が大いに期待される研究対象である.本稿は,そのような分野間連携のきっかけを提供することを意図している.ただし,解決が待たれる問題群を包括的・体系的にレビューすることは限られた紙面では困難である.そこで,本稿では,構造が比較的簡明な少数のモデルに対象を限定した上で,そのモデルを簡潔に説明し,関連する未解決問題の一端を紹介する.本稿の構成は,以下のとおりである.まず,第 2章では,本稿で紹介する交通ネットワーク

流の状態記述・制御モデルの「基本モジュール」となる概念・基本モデルを定義・説明する.第 3章では,交通ネットワーク流の状態記述モデルとして,まず静的な利用者均衡配分を概説した後,動的な均衡配分問題を対比的に述べる.第 4章では,交通ネットワーク流の制御問題として,静的なシステム最適配分問題(最小費用流問題)から始め,幾つかの典型的な動的制御問題(動的システム最適配分,動的な交通需要管理,交通信号制御)を紹介する.

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2. 交通ネットワーク流モデルの基本モジュール

交通ネットワーク上で観測される交通流は,(1)利用者の自由な「選択行動」と (2)交通施設の持つ物理的・交通工学的な「性能条件」が,「相互作用」した結果生じる現象である.(1)の「選択行動」とは,個々の利用者が,目的地・交通機関・経路・出発時刻といった交通移動にともなう多段階の選択肢集合から一連の選択肢を選ぶ行動であり,「需要サイドの条件」である.(2)の物理的な「性能条件」とは,道路交通であれば,ネットワーク上の各道路区間の物理的な条件によって決まる交通量・交通密度・所要時間といった状態変数間の関係であり,「供給サイドの条件」である.そこで,本章では,3章以降の準備として,需要サイドの基本条件となる「最短経路問題」,供給サイドの条件を表現するいくつかの「交通流モデル」をまとめておく.2.1. 最短経路問題本稿で対象とする交通ネットワークは,ノードの集合 N,方向付きリンクの集合 Lから構

成される.集合 N の各要素(ノード)は i と表し,集合 L の各要素(リンク)はその上流側ノード iと下流側ノード jの組 (i, j)で区別される.また交通トリップの起終点(OD)ペア(o, d)の集合をWと書く.ネットワークの構造は,ノード・リンク接続行列 Aで表現される.いま,ネットワーク上の各リンクのコスト c ≡ [cij] ∈ R|L|+ が定数として与えられており,また,x ≡ [xij] ∈ {0, 1}|L| を,リンクフローを表す変数ベクトルとする.このとき,1起点・多終点の最短経路問題(およびその双対問題)は以下の線形計画問題として表される [1]:

[Primal] minx≥0. cTx s.t. Ax = −b, [Dual] maxτ,τo=0. bTτ s.t. −ATτ ≤ c. (2.1)

ここで,b ∈ R|N| は起点に対応する行が −終点数,終点に対応する行が +1,それ以外は 0となるベクトル,τ ∈ R|N|+ の要素 τi はノード i でのフロー保存則(i.e., Aix = −bi)に対するLagrange乗数であり,起点からノード iまでの最短費用を表す.以上の最短経路問題の最適性条件は,次の相補性条件として与えられる:

0 ≤ x ⊥ c +ATτ ≥ 0. (2.2)

これは,各ノードへの最短費用 τi が,以下のベルマン方程式を満たすことを意味している.

τ j = mini∈NI( j).{τi + cij} ∀ j ∈ N \ {o}. (2.3)

ここで,NI( j)は,ノード jを終点とするリンクの上流側ノードの集合である.2.2. 交通流モデル2.2.1. 道路交通流に関する基本的事項道路上の交通状態をマクロに表す状態量は,交通量 q [台/時],密度 k [台/km],(空間)平均

速度 v [km/時]*2である.このうち,交通量 qを密度 k の関数 Q(k)として表す “Fundamental

*2 ある瞬間に道路区間に存在する車両の平均速度である.またその定義より,v = q/kが成り立つ.

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臨界密度

渋滞流領域自由流領域

q

µ

k

v

図 1 Fundamental Diagram

2

累積交通量

時刻

到着曲線

出発曲線

交通容量

待ち行列台数遅れ時間

t

µ

D(t)

A(t)

E(t)d(t)

図 2 累積図

Diagram”(FD)は道路の物理的特性を表しており特に重要である.FD は,経験的に凹関数(図 1)になることが知られており,ある密度(臨界密度)で交通量は最大値 µ(交通容量)をとる.また,図 1から判るように,ある交通量に対して 2つの密度状態が実現しうる.このうち臨界密度より密度が小さい領域を “自由流領域”,大きい領域を “渋滞流領域”と呼ぶ.

FDの原点から (k, q)への傾きが平均速度 vであることから,FDの自由流領域は交通量(あるいは密度)の増加に伴う速度の低下を表していることが判る.すなわち,リンク長を平均速度で除せば,交通量 qに関して単調増加なリンク旅行時間関数 c(q)が得られる.このようなコスト関数は,次章の静的な交通問題や最小費用流問題 [1]でしばしば用いられるものである.しかし,交通量(“フロー”)のみで表される旅行時間では渋滞現象を表現することができない.一方,FDの渋滞流領域については,「交通量の減少に伴う速度の低下(!?)」という奇妙な関

係が読み取れる.当然これは誤った解釈であり,正しい解釈を得るためには “渋滞”とは何かという点を述べる必要がある.交通工学的に渋滞とは以下のように定義される現象である:ある道路区間を通過しようとする車の台数(交通需要)がその区間の交通容量を超過し,その超過地点(ボトルネック)から上流へ滞留する現象.この定義より,先の関係の正しい解釈は,「待ち行列の上流への延伸に伴う交通量・速度の低下」である.つまり,渋滞時の旅行時間を評価するためには,“フロー”だけでなく,“ストック”(待ち行列)を考慮しなければならない.2.2.2. Point queueモデル

Point queue(PQ)モデルは,渋滞現象を最も簡潔に(待ち行列の物理的長さを無視して)表現するモデルである.いま,リンク終端にあるボトルネックへ時刻 tまでに到着した累積台数を A(t),出発する累積台数を D(t)と書く.このとき,時刻 tの待ち行列台数 E(t)は,

E(t) = A(t) −D(t) (or e(t) = λ(t) − µ(t)) (2.4)

と与えられる(図 2).括弧内は時間微分表現であり,流入交通流率 λ(t) ≡ A(t),流出交通流率 µ(t) ≡ D(t)を用いて待ち行列の時間変化 e(t) ≡ dE(t)/dtを表現している.PQモデルでは,この流出交通流率 µ(t)は次のように与えられる:

µ(t) =

⎧⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎩µ if E(t) > 0

min .[λ(t), µ] if E(t) = 0. (2.5)

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すなわち,待ち行列が存在するとき,あるいは,流入交通流率が交通容量を上回るとき,流出交通流率は容量に制限される.さらに,PQモデルでは,First-In-First-Out(FIFO)原則が成立するため,待ち行列遅れ d(t)は累積到着/出発曲線の水平距離として表される:d(t) = E(t)/µ.遅れ時間の式と (2.4),(2.5)を合わせることにより,待ち行列遅れ d(t)が満たすべき条件は,

以下の相補性条件として与えられる(詳細は [3]を参照):

0 ≤ d(t) ⊥ d(t) − ((λ(t)/µ) − 1) ≥ 0 (d(t) ≡ dd(t)/dt). (2.6)

2.2.3. Kinematic waveモデル交通流の時空間ダイナミクス(physical queue)を一次元上の波の運動として表現する Kine-

matic Wace(KW)理論は,(1)車両数の保存則と (2)(凹関数)FDの仮定,から構成される.具体的には,(1), (2)から導かれる偏微分方程式を境界条件(e.g., 初期条件)の下で解くことにより時空間上の全ての地点の交通量・密度を求めるものである(詳細は [8]を参照).ただしここでは,このモデルで表現される渋滞メカニズムの直感的理解が容易な,KWモデルの時空間離散化(Gudunov)スキームである Cell Transmission Model(CTM)[7]を紹介する.

CTMでは,区分線形近似した FDを仮定する.ここでは,最も単純な三角形の FD(図 3)を仮定し,Forward Wave(FW)速度(自由流側の傾き)を u,Backward Wave(BW)速度(渋滞流側の傾き)を −w,最大密度を kと書く.また,CTMでは,道路区間を長さ ∆x (= u∆t)を持つセルに分割する.ここで,∆tは離散的な時間刻みである.交通量・密度に対応する状態変数は,時刻 t ∼ t+∆tの間に位置 xを上流端とするセルに流入する車両台数 y(t, x) (= q(t, x)∆t)

と,時刻 tに区間 x ∼ x + ∆xに存在する車両台数 n(t, x) (= k(t, x)∆x)である.これらの状態変数は,以下の式で示す (1)車両数の保存則を満たさなければならない:

n(t + ∆t, x) = n(t, x) + y(t, x) − y(t, x + ∆x). (2.7)

一方,セル間を移動する車両台数 y(t, x) は (2) の FD により決定される.FD の自由流領域側を含む “送り出し関数” S(k) ≡ min .{uk, µ},渋滞流領域側を含む “受け入れ関数”

R(k) ≡ min .{µ,w(k − k)}を k ∈ [0, k]で定義する.このとき,セル間移動台数は,

y(t, x) = Q(k(t))∆t = min .{S(k(t, x − ∆x)),R(k(t, x))}∆t

= min .{n(t,x − ∆x), µ∆t, δ[n − n(t, x)]} (δ ≡ w/v, n ≡ k∆x) (2.8)

と表すことができる.ここで nはセル内に入ることができる最大の車両台数を表す.式 (2.8)

の第 3項は下流側が受け入れ可能な台数を表しており,待ち行列の延伸メカニズムを表している.一方,第 1, 2項は上流側から流すことが可能な台数であり,PQモデルに一致する.ここでは,さらに,KWモデルが変分問題に帰着することを,CTM (2.7), (2.8)を変形することにより直感的に示そう.そのために,まず,時刻 tまでに地点 xを通過した累積台数N(t, x)を導入する.累積台数と CTMの変数の関係は以下の通りである:y(t, x) = N(t+∆t, x)−N(t, x),n(t, x) = N(t, x) −N(t, x + ∆x).これらの関係を (2.8)に代入すると,CTMは累積台数 N(t, x)

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送り出し関数

受け入れ関数

q

µ

k

k

u −w

R(k)

S(k)

図 3 三角形の Fundamental Diagram

Space (downstream)

Time t

x

∆t

∆x = u

∆t

∆x

図 4 時空間図上の因果関係と座標系

のみの状態方程式に帰着する:

N(t + ∆t, x) = min .{N(t, x − ∆x), (1 − δ)N(t, x) + δ(n +N(t, x + ∆x))}. (2.9)

ここで,保存則 (2.7)は自動的に満たされることに注意されたい.図 4(左)はこの式を時空間上の因果関係として表したものである.この図より,地点 xの累積台数はその上流,下流からそれぞれ FW,BW速度で到達する情報により決定されることが判る.しかし,この座標系では,格子点上の関係として状態方程式が表現できていない.この問題を解決するためには,FWと BWに沿って座標系・格子点を定義すればよい(図 4(右)).このとき,式 (2.9)は,

N(t + ∆t, x) = min .{N(t − ∆x/v, x − ∆x),n +N(t − ∆x/w, x + ∆x)} (2.10)

となる [19].ここで,注目すべきは,状態方程式 (2.10)が式 (2.3)で示したベルマン方程式と同型になることである.従って,時空間上の各格子点をノード i = (t, x),各格子点間の関係をリンク (i, j),そのリンクコスト cij をリンクの傾きが FW 速度なら cij = 0,BW 速度ならcij = nとおけば,累積台数 N(t, x)を求める問題は,時空間上の境界条件から地点 (t, x)までの(多起点 1終点)最短経路問題 (2.1)に帰着する.なお,このコストは,リンクに沿って移動した際に観測できる車両数の上限を表している.以上の KWモデルの変分問題としての基礎付けのフォーマルな記述および発展的な議論は文献 [9, 10, 14]を参照されたい.

3. 交通均衡問題

本章では,2 章で独立にその基本を示した需要・供給サイドの条件の「相互作用」を扱う.この「相互作用」およびその結果として生じる状態のモデリングについては様々な考え方がありうる.なかでも,定義が最も簡潔で多くの交通ネットワーク・モデルのベンチマークとなっている概念が「利用者均衡状態」である.ここでは,利用者の選択行動をネットワーク上の経路選択のみに限定(i.e.,目的地,交通機関,出発時刻等の他の選択条件を固定)した上で,まず,この概念に基づいた静的な交通ネットワーク流モデル(「利用者均衡配分」)を述べる.次に,その自然な拡張として定義される動的な利用者均衡配分を紹介する.

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The Twenty-Sixth RAMP Symposium3.1. 静的な利用者均衡問題3.1.1. Wardropの利用者均衡配分原則交通ネットワーク上での利用者の経路選択行動を表現する最も単純な原則は,「各利用者は,自分の交通費用(e.g., 所要時間)が最小となる経路を選択する」*3である.この原則に基づいた「最短(最小費用)経路配分」では,各起終点(ODペア)ごとに,その最小費用経路のみに全ての OD交通量が流れることとなる.一方,交通ネットワーク上の施設の性能条件から,多くの利用者が選択する経路では,その通過所要時間が増加するであろう.すると,その交通費用条件を観察した合理的な利用者は,現在自分が選択している経路よりも交通費用が小さい経路に選択を変更するだろう.このような需要サイドと供給サイドの相互作用を繰り返せば,最終的に「利用者の誰もが自分の選択を単独で変更するインセンティブを持たなくなった状態」に到達することが期待される.その落ち着いた定常状態が,利用者均衡状態である.この均衡状態は,利用者の行動を経路選択のみに限定した場合には,以下の「Wardropの利用者均衡配分原則」として表現できる:実際に利用されている全ての経路の所要時間はみな等しく,その(均衡)所要時間は,利用されていない経路の所要時間より小さいか,せいぜい等しい.これは,個々の利用者の行動を明示的な状態変数として表現するなら,標準的なゲーム理論における Nash均衡と同値な均衡概念である.ただし,交通ネットワーク・モデルが対象とする状況は,非常に多数のプレイヤーが同一戦略をとる population game [23]である.そのため,各経路 rを選択する利用者数 fr と各経路の所要時間 Cr のみを状態変数とすれば十分である.このとき,Wardropの利用者均衡原則は以下の様に書ける:

⎧⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎩Cr(f) = uod if fr > 0

Cr(f) ≥ uod if fr = 0∀r ∈ R, ∀(o, d) ∈W. (3.1)

ここで,Cr(f)は,経路交通量パターンが fのときの経路 rの旅行時間,uod は ODペア (o, d)

の均衡(最小)経路旅行時間である.

静的な交通ネットワーク配分モデルでは,各リンク旅行時間 cは,リンク交通量 xと cの関係を表現する関数によって与えられ(2.2.1節),経路旅行時間 Cは,リンク旅行時間 cと Cが満たすべき関係式 C = ∆Tcから決定される.ここで,∆はネットワークの経路・リンク接続行列である.また,各リンクの交通量 xは,経路交通量 fと xが満たすべき関係式 x = ∆fから決定される.経路選択のみを考慮した利用者均衡配分では,OD交通量パターン qは与件(定数)であり,経路交通量 fと qは保存則 Ef = qを満たす.ここで,Eは経路・ODペア接続行列である.静的な利用者均衡配分は,以上の全ての関係式を満たした状態として定義される.3.1.2. 利用者均衡配分の数理的表現と基本特性利用者均衡配分は,(3.1)から推測できるように,以下の相補性問題:

*3 この極端な(完全情報かつ均質な)仮定を緩和し,利用者の異質性(あるいは観測の不完全性)を考慮したより現実的なモデルもランダム効用理論(例えば,[26]を参照)に基づき多数開発されている.

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Find (f,u) such that 0 ≤ f ⊥ C(f) − u ≥ 0, 0 ≤ u ⊥ Ef − q ≥ 0

あるいは以下の変分不等式問題と等価である.

Find f∗ ∈ Kf such that C(f∗) · (f − f∗) ≥ 0, ∀f ∈ Kf ≡ {f : Ef = q, f ≥ 0}. (3.2)

また,この問題はリンク交通量 xに関する以下の変分不等式問題としても表現できる:

Find x∗ ∈ K such that c(x∗) · (x − x∗) ≥ 0, ∀x ∈ K ≡ {x : x = ∆f,Ef = q, f ≥ 0}. (3.3)

さらに,リンクコスト関数 c(x) : R|L|+ → R|L|+ の Jacobianが対称であれば,∇z(x) = c(x)を満たすベクトル場 c(x)のポテンシャル z(x)が存在し,利用者均衡状態での交通量パターン xは,以下の凸計画問題の解として与えられる:

minx. z ≡!

xc(x)dx s.t. x ∈ K (3.4)

これらの等価表現から,利用者均衡状態の様々な基本特性が明らかにされている.特に,均衡解の存在および一意性については,コスト関数 c(x)が連続な一価関数で以下の単調性条件:

(c(x) − c(y)) · (x − y) > 0, ∀x ! y ∈ R|L| (3.5)

を満たすなら,均衡解は必ず存在し,均衡リンク交通量パターン x∗ および均衡リンクコストc∗ は一意に決まる.また,その均衡解が Lyapunov安定であることが示されている [25].均衡解の数値解法については,変分不等式・相補性問題の理論およびグラフ論的な問題構造を活用した多数のアルゴリズムが開発されている.リンクコスト関数が良い条件を持つ基本的モデルに対しては,数十万リンクの大規模ネットワークでも十分実用に耐える効率的なアルゴリズムが利用可能となっており,ほぼ完成の域に達していると言える [21, 33, 17].3.2. 動的な利用者均衡問題

3.1節で述べた利用者均衡配分は一定の時間帯の定常状態を記述する静的モデルである.それに対して,’90年代以降,動的配分と呼ばれる動的な交通ネットワーク流モデルが現れてきた.このような背景には,2.2.1節でも示したように,静的モデルが抱える本質的な問題—渋滞現象を適切に表現できない—がある.動的配分は,この問題点の解消を図るものである.3.2.1. 動的な利用者均衡配分原則静的な利用者均衡配分の動的モデルへの自然な拡張として,動的な利用者均衡 (DUE)配分

を考えることができる.その均衡概念の基本的な定義は,「利用者の誰もが自分の選択している選択を単独で変更するインセンティブを持たない状態」であり,静的な利用者均衡配分と同じである.ただし,動的配分では,時々刻々の交通流を記述するため,時刻別に状態を定義する必要がある.そこで,利用者行動を経路選択のみに限定したうえで,より具体的に DUEの定義を与えると,「

· 任· 意· の· 時· 刻· に· お· い· て,同一の起終点を持つ利用者間では,実際に利用され

ている経路の旅行時間はみな等しく,その旅行時間は,利用されていない経路の旅行時間より小さいか,せいぜい等しい状態」である.これは,静的な利用者均衡配分の (3.2)と同様,以

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下の変分不等式問題として表現できる:

Find f∗ ∈ Kf such that! T

0 C∗(t) · (f(t) − f∗(t))dt ≥ 0, ∀f ∈ Kf (3.6)

ここで C∗(t)は,経路交通量パターン f∗ の下で,時刻 tに出発する車両の経路旅行時間を表す.ここで注意すべきことは,DUE配分における経路旅行時間 C(t)の定義である.すなわち,

DUE配分において,C(t)は,時刻 tに実現している(i.e.,リアルタイムに観測される)経路旅行時間ではなく,時刻 tに出発した利用者が実際に経験する(i.e.,事後的にも正しい)旅行時間と定義されている.つまり,DUEとは,利用者が真の旅行時間を把握しており,どの利用者も「他の経路を選択した方が良かった . . .」と事後的に後悔することがない状態である.3.2.2. DUE配分の数理解析上の困難

DUEの特性の把握や解を計算するためには,変分不等式問題 (3.6)に現れる経路旅行時間関数 Cの数学的特性を解析する必要がある.これと同様の解析は,静的配分ではリンク性能関数の単調性条件 (3.5)の確認に帰着していた.すなわち,静的配分では経路変数とリンク変数に簡単な線形関係があるため,経路変数型の問題 (3.2)をより簡明なリンク変数型の問題 (3.3)

に変換することができ,その問題の特性を決定するリンク性能関数の特性を調べれば良かった.しかし,(3.6)のように定式化された DUE配分では,同様の手法は利用できない.この事実は,ある経路上で利用者が実際に経験する旅行時間を具体的に表現すれば容易に理解できる.そのために,終点 0から上流に向かって N 個のボトルネック i = 1, . . . ,N が並ぶ一本の経路上を通行する利用者の旅行時間とボトルネック通過時刻の関係を考えよう.いま,ti はボトルネック地点 iへの到着時刻,di(ti)は時刻 ti に到着した利用者の渋滞待ち時間,mi

は隣接する地点 iと i − 1の間の自由走行時間とすると,以下の関係式が成立する:

ti−1 − ti = di(ti) +mi ∀i ∈ N . (3.7a)

そして,時刻 ti に地点 iに到着した利用者が終点に到着するまでに経験する旅行時間 πi(ti)と各ボトルネックでの渋滞待ち時間および通過時刻の間の関係は,以下のように表される:

πi(ti) − πi−1(ti−1) = di(ti) +mi, π0(t) = 0 ∀t ∈ T , ∀i ∈ N . (3.7b)

動的配分では,この再帰的方程式中の渋滞待ち時間 di(ti)は,2.2節で定義された交通流モデルにより決定され,時刻 ti と状態変数に依存した関数である.従って,この方程式は,経路旅行時間 πi(ti)に関する複雑なネスト構造,状態変数に依存した時間遅れを持つ連立差分方程式系である.しかも,一般的なネットワークでは,このような複雑な旅行時間構造を持つ経路が多数存在し,それらが各ボトルネック上で相互干渉している.そのような複雑な方程式系から経路旅行時間関数の数学的特性を把握することは極めて難しい.実際,動的配分に関する多くの従来研究では,この壁に阻まれ,モデルの特性を数理的に明確に把握するには至っていない.3.2.3. 時空間経路の解析に適合した座標系上記の困難の原因は,DUE問題を Euler座標系で記述している点にある.Euler座標系によ

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る定式化は,位置の固定されたボトルネックでの状態を個別に表現する交通流モデルの観点からは自然である.しかし,DUE配分で求められる旅行時間—利用者の時空間経路を追い,その経路上での状態変数を操作する—を表現するためには不適切であろう.このような時空間経路上での変数をより簡明に扱うには,Lagrange的な座標系での定式化が自然である.この考えに基づいて定式化を進めるにあたって,DUEの基本特性に関する以下の観察が有用である:「DUE状態ならば,起点を同時に出発した利用者は,終点までに利用される各ノードへ同一時刻に到着する.また,異なる 2時点 s1 < s2 に起点を出発する利用者は,終点までに利用される各ノードへ起点出発時刻順に到着する」.これらの特性と交通流の FIFO原則から,時刻 sに起点を出発する利用者が経験する旅行時間は,時刻 sより後ろに出発する利用者の影響を受けないことが判る.つまり,起点出発時刻 sに対応する DUEフロー・パターンは,時刻 s以前に起点を出発するフローに関する情報のみから決定される.従って,1起点・多終点ネットワークにおける,DUE配分は,起点出発時刻別に問題を分解し,出発時刻 sに関して前向きに逐次計算できると結論できる.また,同様に,多起点・1終点ネットワークでは,終点到着時刻別に分解できる [13, 33].3.2.4. 新たな定式化と残された課題以上の準備の下で,DUE配分問題を定式化しよう.ただし,説明の煩雑化を避けるために,

ネットワークの各リンク (i, j)毎に容量 µi j のボトルネックがあり,その渋滞状況を PQモデルで表現する場合を考える.まず,起点を時刻 sに出発する利用者がノード iへ最も早く到着する(均衡)時刻を τi(s)と書く.そして,この利用者がリンク (i, j)を通過する際の渋滞待ち時間を cij(s) ≡ dij(τi(s)),この利用者に対応したリンク (i, j)の流入率を以下のように表す:

xij(s) ≡ dAij(τi(s))/ds = λi j(τi(s))∆τi(s).

ここで,Aij(t) はリンク (i, j) の累積到着台数,λi j(t) は Euler 座標系での流入率,∆τi(s) ≡dτi(s)/ds.このように起点出発時刻別に定義された 3 種類の変数 τi(s) ∈ R|N|, c(s) ∈ R|L|,x(s) ∈ R|L| を用いると,DUE配分問題は以下に示す 3つの条件として表現できる.まず,渋滞待ち時間は,dと cの関係式(∆cij(s) ≡ dcij(s)/ds = di j(τi(s)) · ∆τi(s))および,

2.2.2節で示した渋滞待ち時間モデルが満たすべき方程式 (2.6)から,

0 ≤ c(s) ⊥ ∆c(s) −M−1x(s) + ∆τ(s) ≥ 0 ∀s ∈ S (3.8)

と与えられる.ここで,M ≡ diag[µi j]i j∈L である.次に,利用者の経路選択に関する DUE条件(i.e.,選択されている経路は,利用者が経験する旅行時間が最小の経路のみ)は,

0 ≤ x(s) ⊥ c(s) +m +ATτ(s) ≥ 0 ∀s ∈ S (3.9)

と表現できる.ここで,Sは DUE配分の対象時間帯を表す.この条件 (3.9)は,出発時刻別に問題・変数が定義されている点を除けば,静的な最短経路配分の定式化と同形式である.最後に,各リンクでの FIFOおよび各ノードでのフロー保存則は,

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Ax(s) = −b(s) ∀s ∈ S (3.10)

に帰着する.ここで,b(s) ∈ R|N| は,起点 [終点] に対応する行が時刻 s に起点を出発する−総[+個別]OD交通流率,それ以外は 0である.この条件式 (3.10)は,静的なフロー保存則に起点出発時刻ラベル sを付加しただけの形式であるが,x(s)の定義から,(フロー保存則のみならず)各リンクでの流入・流出における FIFO条件をも保証している.これは,Lagrange

的な変数系(出発時刻別の利用者に対応した状態変数系)のご利益であり,通常の Euler座標系で定義されたフロー変数では,このような簡明な表現は得られないことに注意しよう.以上の様に,1起点・多終点/多起点・1終点の DUE配分では,比較的簡明な定式化が可能

であることが明らかにされ,その事実を活用した応用等も研究されている [2, 4].しかし,まだ多くの重要な課題が未解決である.まず,均衡解の特性については,解の存在(及び,そのための条件)は明らかにされているが,一意性および安定性については未だ証明されていない.数値解法についても,従来研究によって様々な方法が提案されているが,均衡解への大域的収束が理論的に保証されたアルゴリズムは開発されていない.さらに,多起点・多終点ネットワークにおける DUE配分問題,出発時刻選択も内生化した DUE配分問題といった拡張モデルについても,同様の課題が残されている(そのレビューは文献 [32, 11]を参照).

4. 交通制御問題

以上で見てきた交通均衡状態は,個々の利用者の観点からはこれ以上改善しようのない状態である.では,利用者の自由に任せて実現する交通状態は社会的に望ましい状態なのであろうか?交通渋滞/混雑中の道路は外部不経済が生じており,「市場の失敗」が起こる典型的な状況である.従って,何らかの施策・制御によって,より望ましい状態へと交通状態を導く必要がある.本章では,そのための,典型的な動的制御問題をいくつか紹介する.4.1. 静的なシステム最適配分問題動的な問題を示す前に,静的なシステム最適配分問題について概説する.システム最適配分問題とは,最も効率的にネットワークを利用している交通状態を求めるものであり,ネットワーク全体で費やされる交通費用の総和 TCを最小化する問題として与えられる:

minx≥0. TC ≡ c(x)Tx s.t. Ax = −b. (4.1)

この問題は容量制約なし最小費用流問題であり,制約条件は交通量の非負制約およびフロー保存則である.ここで,目的関数を以下のように変形する:

TC = c(x)Tx =!

i j∈Lcij(xij)xij =" xij

0 [cij(x) + x · dcij(x)/dx]dx. (4.2)

この目的関数の積分の中身をコストとみなせば,システム最適配分問題は均衡状態の等価最適化問題 (3.4) と全く同型であることが判る.すなわち,システム最適状態は,通常の費用に,追加的な費用 xij · dcij(xij)/dxij を課される状況下での利用者均衡状態と見ることもできる.

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この新たなコストは,自分が交通流に加わったことによる利用者全体の費用の増加分(“負の外部性”)を表しており,この外部性を個人が認識しないがために,利用者均衡状態とシステム最適状態の間に乖離が生じている.そして,この負の外部性に等しい料金を課すことにより需要を調整し,均衡状態(利用者の自由な選択の結果)として効率的な状態を実現しようとするのが混雑料金施策の根本にある考え方(の 1つ)である(より発展的な話題は [30]を参照).4.2. 動的なシステム最適配分問題動的システム最適(DSO)配分問題は,その概念自体は,前節の静的なシステム最適配分問題の単純な拡張である.しかし,動的均衡問題同様,DSOの特性解明や計算法の開発は,静的な場合と比べて格段に難しい.以下では,CTMに基づく DSO問題の定式化 [31]を示し,その難しさや課題を具体的に述べる.

CTMの各セル内において費やされる総旅行時間は,時々刻々の存在台数 n(t, x)に時間単位∆tを掛け合わせたものの和に他ならない.いま,ネットワーク上の各リンク (i, j)の中の各セルの位置を xl = l∆x (l = 1, . . . , li j),時刻 t (t = 1, . . . ,T)の各セルの存在台数を nij(t, xl)とすれば,ネットワーク全体の総遅れ時間 TCは次のように与えられる*4:

TC ≡ !i j∈L!T

t=1!li j

x=1nij(t, xl)∆t. (4.3)

一方,制約条件は,フロー保存則 (2.7)およびセル間のフローを決める FD (2.8):

yij(t, xl) = min .{nij(t,xl−1), µi j∆t, δ[nij − nij(t, xl)]} ∀t, ∀l, ∀i j ∈ L,

である.式 (2.8)は非線形制約であり,この問題の許容領域は一般に非凸集合となる.そのため,DSO問題は非凸計画問題となり,その大域最適解を得ることが困難な問題となっている.この困難性の回避のために,多くの研究では,制約 (2.8)を以下のように “緩和”した:

yij(t, xl) ≤ nij(t,xl−1), yij(t, xl) ≤ µi j∆t, yij(t, xl) ≤ δ[nij − nij(t, xl)] (4.4)

制約に置き換えた線形計画問題を用いて DSO 状態を分析している.しかし,この問題では,制約 (4.4)の 1つは等式になることを保証できず,CTMではあり得ない時点・位置で車両が停止する “holding”問題が生じる.この問題に対しても,数値解法的に解決をはかる研究 [20]などがあるが,原問題の定式化レベルでの根本的な解決には至っていない.そのため,DSO状態の解の特性や外部性の構造は極めて限定的な状況(e.g.,単一ボトルネック)でしか分かっておらず,静的配分では理論的な関係づけがなされているシステム最適配分や最適混雑料金と均衡状態との関係も,動的配分ではほとんど明らかにされていない(詳細な議論は [35]を参照).4.3. 動的な交通需要管理問題:混雑料金制度と通行権取引制度前節で述べたように,動的配分での最適混雑料金の理論はほとんど確立していない.しか

*4 CTMによってネットワーク交通流を扱う際には,交差点における分合流モデルを組み込む必要がある.ただし,そのモデルの要素および DSO問題への導入の問題点はほぼ変わらないため,ここでは省略している(文献 [31]を参照).

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し,仮にそのような理論が確立したとしても,その理論が有効に機能することを保証することは難しい.これは,混雑料金制を実施する際に道路管理者は,最適な料金レベルを計算する必要があるが,そのために必要な利用者情報(e.g.,需要関数)を正確に把握することはほぼ不可能だからである(静的モデルでも同様の議論が成立する).すなわち,誤った情報を基に混雑料金を設定すれば,それは,死荷重損失を生み,制度導入が,かえって経済厚生状態を悪化させる可能性もある.この問題は,利用者が持つ私的情報を,道路管理者が把握できないために生じるものであり,経済学では一般に「情報の非対称性」と呼ばれる問題である.この情報の非対称性を解消する新たな需要管理施策として,赤松ら [36, 34]は,“ボトルネック通行権取引制度” を提案している.これは,渋滞が頻発しているボトルネックを対象として,a)その地点を特定の時刻のみ通行できる権利(“ボトルネック通行権”)を道路管理者が設定・発行し,b)その時刻別の通行権を道路管理者が自由に売買取引できる市場(“通行権取引市場”)を創設する,という制度である.この制度下では,時刻別通行権の発行枚数が,当該ボトルネックへの到着交通流率になる.従って,その発行枚数を交通容量以下に設定すれば,渋滞の発生を完全に抑制できる.さらに,混雑料金に対応する通行権価格は市場取引の結果として決まるため,情報の非対称性の問題は解消される.この制度導入後の均衡状態は,前章で示した均衡条件 (3.8)–(3.10)を修正することで表すことができる:まず,フロー保存則 (3.10)はそのまま成立する.DUE条件 (3.9)は,渋滞による遅れ c(s)がなくなる代わりに通行権を購入する費用 p(s)が必要となるため,

0 ≤ x(s) ⊥ p(s) +m +ATτ(s) ≥ 0 ∀s ∈ S (4.5)

と表される.また,渋滞遅れに関する式 (3.8)は通行権取引市場の市場均衡(清算)条件:

0 ≤ p(s) ⊥M1 − x(s) ≥ 0 ∀s ∈ S (4.6)

に置き換えることができる.さらに,以上の均衡条件 (3.10),(4.5),(4.6)は,下記の最適化問題と等価である:

minx≥0. TC ≡!

mTx(s)ds s.t. Ax(s) = −b(s), x(s) ≤M1, ∀s ∈ S. (4.7)

これは,渋滞が発生しない条件下で,ネットワーク全体で費やされる総交通費用*5を最小化する問題である.これにより,通行権取引制度導入後の均衡状態が社会的に最適であることが判る.また,この問題は,目的関数は自由旅行時間 mのみを含み,制約条件はフロー保存則および容量制約条件という,線形コストを持つ最小費用流問題そのものである(通行権価格は容量制約に対する Lagrange乗数である).そのため,その均衡解の特性の把握は容易であり,より一般的な状況(i.e.,出発時刻選択を含む問題,多起点多終点ネットワーク)においても,この望ましい性質が成立することが示されている [34].また,近年では,通行権取引市場の具体

*5 通行権価格は,利用者から道路管理者への単なる所得移転であるため,社会的には費用ではない.

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Time

SpaceL

0 T

0

o

ダミーノード

境界条件

評価地点

信号地点

ダミーリンク

図 5 対象時空間における VTネットワーク

全赤

主道路

交差道路

信号パターン

図 6 信号制約ネットワーク

的なメカニズムの設計など,その実現のための理論的な解析が行われている [27, 28].4.4. 動的な容量調整問題:交通信号制御以上で見てきた問題は,交通需要やフロー・パターンそのものを制御するものであった.ただし,一般に需要の調整には多くの時間を要すると考えられ,より短期的には,決定的なボトルネックを解消する “供給側”(容量)の制御もまた必要である.本節では,都市部の道路ネットワークにおけるボトルネックであり,その性能を決定づける信号群の制御問題を紹介する.道路区間において連続する信号群の系統制御に関する研究は古くから存在するが,渋滞の延伸による隣接交差点間の相互作用を考慮した研究が現れたのはごく最近である.Lo [16] は,CTMに基づく信号パラメータ最適化問題(混合整数計画問題)を示しているが,DSO問題同様,CTMの非線形制約 (2.8)に起因する問題を解決できていない.また,系統制御パラメータである,共通サイクル長,スプリット(青時間比率),オフセット(隣接交差点間の青開始時刻のずれ)の関係(i.e., if-then条件)を時空間図上で表現するために問題が複雑化している.ここでは,以上の課題を抱える系統信号制御問題が,(1)変分理論(VT)により交通流の時空間進展を記述する,(2)最低限の信号制御制約を満たす “オン・オフ”パターンを最適化する,という方針により,構造の明確なネットワーク設計問題として表現できることを示す [37].

2.2.3節で示した,KWモデルの変分問題の枠組みにおいて,信号パターンは時空間図上の(VT)ネットワークのリンクとして表現することができる(図 5).このコストは,信号リンクに沿って速度 0で留まる際に観測できる車両数の上限であるため,赤現示のとき cij = 0,青現示のとき cij = µ∆tである.さらに,信号現示を表す 0-1離散変数 sij を導入すると,信号リンクのコストは cij = µ∆t · sij と表現することができる.この最短経路問題を使って,信号パターンを与件とした道路区間上の遅れ時間(実際の区間流出時刻と自由走行した場合の流出時刻の差)を評価しよう.この遅れは,図 2の累積図と全く同様の図によって表現できる.すなわち,総遅れ時間は 2つの累積曲線に囲まれた領域の面積である.ここで,上流端への到着曲線(交通需要)は与件であるため,結局,総遅れ時間を求めるには,下流端の累積出発曲線のみ求めればよい.つまり,VTネットワークの下流端の各ノードを終点とする最短経路問題を解けばよい(ここでは,ダミーノード/リンクを導入す

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ることで 1起点多終点問題(図 5)に変換している):

D(s) ≡ −maxN,No=0. bTN s.t. −ATo No ≤ c, −AT

s Ns ≤ µ∆t · s. (4.8)

ここで,N ∈ RNVT+ は累積台数ベクトル,下付き添字 s, oは,それぞれ,信号リンク,それ以

外のリンクに関わる部分のみを抜き出した行列・ベクトルを表している.

信号制御パターンが最低限満たすべき制約は,(1)主・交差道路が同時に青にならない,(2)

信号切り替り時に車両を一掃するための全赤時間が存在する,である.この信号パターンは,図 6に示す信号制約ネットワークにおけるフロー・パターンとして表現できる.信号制約ネットワークは,基本的には VTネットワークにおける主道路と交差道路の信号リンク・ノードを並行に並べたものであり,主・交差道路のノード同士は全赤時間分だけズレて繋がっている.そして,フローが通過した信号リンクが青現示を表す.なお,このネットワークでフローが満たすべき条件はフロー保存則のみであり,また,このフローパターン(ダミーリンクを除いて)と VTネットワークの信号パターンは 1対 1対応している.以上で特定化した目的関数 D(s)および制約条件を組み合せれば,遅れ時間を最小化する系

統信号制御問題は次の一段階の混合整数計画問題として定式化される:

maxs,N,No=0.!R

r=0(br)TN s.t. − (Aro)

TNro ≤ cr, −(Ar

s)TNr

s ≤ µ∆t · sr, r = 0, 1, . . . ,R (4.9)

Arsr = −br, r = 1, . . . ,R. (4.10)

ここで,rは道路番号を表し,0が主道路,r = 1, . . .Rが交差道路である.制約 (4.10)は信号制約ネットワークにおけるフロー保存則を表しており,そのフローベクトル sr は主道路と道路 rの信号パターン s0(の一部), sr を含む.この問題は,総遅れ時間が最小化するように VTネットワークを設計する問題であり,その設計パターンは信号制約ネットワークにおけるフローパターンによって決まるという構造を持っている.ここで注目すべきは,CTMのような非線形制約は含まれていない点である.このような定式化は,交通流の変分問題の目的関数が,系統信号制御問題の目的関数に一致することから得られるものであり,その拡張や構造を活用した効率的な解法の構築が期待される.

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