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感染症と抗菌薬について兵庫県立柏原病院 薬剤部
主な感染症とその原因菌
髄膜炎インフルエンザ菌、肺炎
球菌など
副鼻腔炎、咽頭炎ウイルス、インフルエンザ菌、肺炎球菌など
肺炎インフルエンザ菌、肺炎球菌、化膿レンサ球菌など
心内膜炎ブドウ球菌など
腹腔内感染大腸菌、嫌気性菌、腸
球菌など泌尿器系大腸菌など
皮膚軟部組織ブドウ球菌、レンサ
球菌など
抗菌薬って? よく聞く「抗生物質」とは厳密に言うと異なる
抗生物質:病原微生物を殺す作用を持つ薬の中で「微生物が作った化学物質」1928年、アオカビの培養液に殺菌作用があることが分かる→「ペニシリン」の発見
抗菌薬:人工合成された病原微生物に対抗する化学物質と抗生物質の総称
抗菌薬
人工合成された化学物質
抗生物質
微生物が作った化学物質
抗菌薬ってどんな種類があるの? ペニシリン系 セフェム系 β-ラクタム系 カルバペネム系 アミノグリコシド系 キノロン系 マクロライド系 テトラサイクリン系 グリコペプチド系
・ペニシリンの発見以後、様々な「系統」の抗菌薬が創薬され現在に至る。・抗菌薬によって得意とする細菌や臓器が異なるため、正しく診断したうえで最も適した抗菌薬を使用することが大切である。
抗菌薬の作用メカニズムとは? 細菌の細胞壁の合成阻害
細菌の細胞壁を破壊する※ヒトをはじめとする動物細胞には細胞壁が存在しないため、細菌に対して高い選択性を示す→副作用が少ないため、臨床の場で汎用されやすい(βラクタム系等)
細胞膜の透過性障害細胞膜を介した細胞内外の物質のやり取りを障害する
タンパク合成阻害細菌が生きていくために大切なタンパク質を作らせない
DNA合成阻害細菌のDNAを作らせない
上記のように抗菌効果を発揮するには様々な方法があり、抗菌薬によって有する作用メカニズムは異なる。
抗菌薬を服用する際の注意点とは?
抗菌薬は、必ず「決められた時間」に「決められた量」を「決められた日数」服用すること。(医師から別途指示があった場合を除く)
熱が下がった、痛みがなくなった等により自己判断で中止・減量すると、治癒が遅くなったり、「耐性菌」が出現する可能性がある。
多くの抗菌薬に共通する主な副作用①抗菌薬関連下痢症:整腸剤とセットで処方されることが多い。クロストリジウム・ディフィシルが原因の下痢の場合はバンコマイシン経口やメトロニダゾール経口で治療する。
②肝障害、③腎障害、④アレルギー など
風邪は抗菌薬では治せない? かぜ症状群の原因微生物は、80~90%がウイルスといわれている。
ウイルス感染症には抗菌薬を投与しても効果なし ウイルスが原因であれば、対症療法薬の他、安静・水分補給・栄養補給により、自然に治癒する。
ただし、患者背景によっては細菌の「二次感染予防」を目的として抗菌薬を処方することもある。
適切な感染症治療の進め方とは
患者背景を理解する年齢や基礎疾患、曝露
どの臓器の感染か感染症の重症度が把握できる、どの菌が原因か予測ができる
原因となる菌は原因菌の推定→原因菌の同定
どの抗菌薬を使うかEmpiric therapy → Definitive therapy
適切な経過観察
抗菌薬は使い方を誤ると実は厄介である
理由1:副作用アレルギー様症状、薬剤熱、肝機能障害、腎機能障害、胃腸障害など
理由2:正常な菌(無害な菌)まで殺してしまうことがある腸内の正常細菌群のバランスが崩れ、有害な菌と交代してしまう(クロストリジウム・ディフィシル等)
理由3:耐性菌が出現する可能性がある抗菌薬の投与により大部分の菌が死滅しても、生き残った僅かな菌がその抗菌薬に対する耐性を獲得し、その菌が増殖することで抗菌薬が効きにくくなる。
それが繰り返されることで「多剤耐性菌」となってしまう。(MRSA、多剤耐性緑膿菌等)
柏原病院での抗菌薬管理体制
「特定抗菌薬」を使用する際にはICT(感染制御チー ム)に届出を行う
種々の抗菌薬の中で、特に耐性菌を誘導するような広域スペクトルを有する抗菌薬を「特定抗菌薬」とし、それらを不必要な長期投与や不適切なEmpiric therapyなどから防ぐため適切な管理を行う。その一つに、「届出制」を導入しており、使用する医師は使用目的、診断名、検査提出状況等をICTに届け出る。→特定抗菌薬使用届
特定抗菌薬使用届
ICT会議にて「特定抗菌薬」が適切に使用されているかチェックしている月2回のICT会議で神戸大学医学部附属病院の荒川Drを中心に「特定抗菌薬」の使用状況をチェックし、必要に応じて介入している。
薬剤部独自で他の抗菌薬の使用状況をチェックしている「特定抗菌薬」以外の抗菌薬に関しても、薬剤部独自で使用状況をチェックし、必要に応じて介入する取り組みを行っている。
柏原病院での抗菌薬管理体制
薬剤部独自の取り組み
薬剤部独自の取り組み
抗菌薬が適切かつ安全に使用されるよう、薬剤部はICTと協働してこれからも貢献します。
※当院採用の抗菌薬の一部
ご清聴ありがとうございました。