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e-OHTAMA, LTD. CISPR 25 (ed. 2) e・オータマ 2016 11 18 目次 1 はじめに 1 2 共通事項 2 2.1 .................... 2 2.2 グランド ・プレーン .............. 2 2.3 ..................... 2 2.4 .................... 3 2.5 インピーダンス ......... 3 2.6 EUT .................. 4 2.7 ロード ・シミュレータ ............. 4 2.8 EUT ................ 4 2.9 ..................... 4 3 測定法 5 3.1 ..................... 5 3.2 プローブ ................ 6 3.3 ALSE .................... 6 3.4 TEM セル .................. 6 3.5 ストリップライン .............. 7 4 CISPR 25 ed. 4 での改訂 8 4.1 AC される ..................... 8 4.2 HV LV あいだ ....... 9 4.2.1 エミッション セットアップを ................. 9 4.2.2 HV–LV ......... 10 4.3 アンテナ ........... 10 4.4 ALSE ............ 10 4.5 ................ 10 5 補足 10 5.1 プローブ 10 5.1.1 プローブ ....... 10 5.1.2 ハーネス ........... 10 5.1.3 ロード・シミュレータ インピーダンス ................. 11 5.1.4 EUT ワイヤ ....... 12 6 参考資料 13 1 はじめに 多く されており、それ らが するノイズがそ ラジオ えるこ がある。 ラジオ あったが 、 、キーレ スエント リー イモ ライザ、 GPS め 、多 デバイスが いられ るように っており、それら る。 CISPR 25 に、 けられる する ノイズ めている。こ ECE Regulation No. 10 (ECE R10) [3][4] OEM ( メーカー ) エミッション ベース して され 、 いられている。 CISPR 25 ed. 2 (2002) ed. 3 (2008) けてそ アンテナ する をテスト・ベンチ セル して する一 むが 、 についてそ る。 CISPR 25 ed. 3 (2008) づくが 、まだ CISPR 25 ed. 2 (2002) いられて 1: CISPR 25 ALSE 1

CISPR 25の概要 (ed. 2)—§版のAV 検波の使用も認められている。だが、繰り返し周波 数が低いノイズに対しては特に、これらはかなり異なった値を

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e-OHTAMA, LTD.

CISPR 25の概要 (ed. 2)

株式会社 e・オータマ 佐藤智典

2016 年 11 月 18 日

目 次1 はじめに 1

2 共通事項 22.1 試験場所 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22.2 グランド・プレーン . . . . . . . . . . . . . . 22.3 測定器 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22.4 電源電圧 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 32.5 電源のインピーダンスの管理 . . . . . . . . . 32.6 EUT の配置 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42.7 ロード・シミュレータ . . . . . . . . . . . . . 42.8 EUT の動作条件 . . . . . . . . . . . . . . . . 42.9 限度値 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

3 測定法 53.1 電圧法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 53.2 電流プローブ法 . . . . . . . . . . . . . . . . 63.3 ALSE 法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 63.4 TEMセル法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 63.5 ストリップライン法 . . . . . . . . . . . . . . 7

4 CISPR 25 ed. 4 での改訂 84.1 高圧直流電源や AC 電源に接続される装置の測

定方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 84.2 HVと LVのあいだの結合の評価 . . . . . . . 9

4.2.1 エミッション測定のセットアップを用いた評価 . . . . . . . . . . . . . . . . . 9

4.2.2 HV–LV 間結合の測定 . . . . . . . . . 104.3 車両上のアンテナでの測定 . . . . . . . . . . . 104.4 ALSEの特性の検証方法 . . . . . . . . . . . . 104.5 その他の変更点 . . . . . . . . . . . . . . . . 10

5 補足 105.1 測定結果の変動要因の例 — 電流プローブ法の場合 10

5.1.1 電流プローブの位置の影響 . . . . . . . 105.1.2 ハーネス長の影響 . . . . . . . . . . . 105.1.3 ロード・シミュレータのインピーダンス

の影響 . . . . . . . . . . . . . . . . . 115.1.4 EUTの接地ワイヤの影響 . . . . . . . 12

6 参考資料 13

1 はじめに

自動車には多くの電装品が搭載されており、それ

らが発生するノイズがその自動車上のラジオなど

に妨害を与えることがある。伝統的にはラジオなど

の放送受信への干渉が主な問題であったが、現代の

自動車では、キーレスエントリーやイモビライザ、

GPS などを含め、多様な無線デバイスが用いられるようになっており、それらへの干渉も懸念となる。

CISPR 25 は、同一の車両上の受信機の保護を目的に、車両に取り付けられる電装品が発生する

ノイズの評価方法を定めている。この規格は ECERegulation No. 10 (ECE R10)[3][4] や OEM 規格(自動車メーカー規格)などでエミッションの測定方法のベースとして参照され、広く用いられている。

CISPR 25の ed. 2 (2002)や ed. 3 (2008)は、試験対象品を車両に取り付けてその車両上のアンテナ

で測定する方法、及び試験対象品をテスト・ベンチ

上や試験用セル内に配置して測定する一連の測定法

を含むが、本稿では後者の一連の測定法についてそ

の概要を述べる。

本稿での説明は主に CISPR 25 ed. 3 (2008)に基づくが、まだ CISPR 25 ed. 2 (2002)も用いられて

図 1: CISPR 25 ALSE法での測定

1

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いる†1ため、CISPR 25 ed. 2 (2002) についてもある程度は触れるようにする。また、CISPR 25 ed. 4(2016)については、ある程度まで §4で述べるようにする。

なお、規格についての正確な情報は、該当する規

格そのもの [1][2] を参照していただきたい。

2 共通事項

2.1 試験場所

通常、電圧法や電流プローブ法などでの試験は、

外部からの放送などのノイズを防ぐために、シール

ド・ルーム内で行なう。

ALSE法については、単なるシールド・ルームでは壁などでの電磁波の反射が試験に著しい悪影響

を与えることから、ALSE (absorber-lined shieldedenclosure)と呼ばれる、反射を抑えるためにその壁と天井を電波吸収体†2†3で覆ったシールド・ルーム

が用いられる (図 1)。

2.2 グランド・プレーン

テスト・ベンチ上での試験では、非導電性の試験

台の上にグランド・プレーンとして金属板†4を敷き、

その上に試験対象となるシステムを配置する。グラ

ンド・プレーンは、巾広の金属のストラップを用い

てシールド・ルームの壁か床に接続する。†5

グランド・プレーンの大きさは、電圧法などの場

合は 1 000 mm× 400 mm 以上、ALSE法の場合は2 000 mm× 1 000 mm 以上とし、EUTがその外周から 100 mm 以上内側に収まるよう、必要に応じてさらに大きいものを用いる。

†1 例えば ECE R10.05[3][4] は CISPR 25 ed. 2 (2002) を参照している。

†2 70 ~ 2 500 MHz で反射減衰量が 6 dB 以上のもの。†3 CISPR 25 ed. 4 (2006)[2] で ALSEの特性の評価方法が含められたもののの、これは参考扱いとなっており、現時点では要求とはなっていない。

†4 厚さ 0.5 mm 以上の、銅、黄銅、あるいは亜鉛めっき鋼板。†5 長さと幅の比率が 7:1 以下のストラップを、300 mm 以下の間隔で取り付ける。グランド・プレーンと壁や床とのあいだの直流抵抗は 2.5 mΩ 以下でなければならない。この接続方法の違いが ALSE法での測定結果に大きな影響を与える場合があることが知られているが、これについては本稿では議論しない。

2.3 測定器

エミッションの測定のための測定器としては、規

定された特性の帯域幅フィルタや検波器などを備え

た、CISPR 16-1-1 に適合したテスト・レシーバかスペクトラム・アナライザが用いられる。†6

検波器としては尖頭値 (PK)、準尖頭値 (QP)、及び平均値 (AV) †7が用いられるが、その適用に関し

ては規格の版による違いがある:

• CISPR 25 ed. 2 (2002) まで

– 広帯域ノイズには広帯域限度 (PK、または QP)を、狭帯域ノイズには狭帯域限度(PK) を適用する

– PK と AV の差が 6 dB 以上のものは広帯域ノイズ、6 dB 未満のものは狭帯域ノイズと判断する

• CISPR 25 ed. 3 (2008)

– ノイズの性質と無関係に、AV 及び PK、または AV 及び QP の限度を適用する†8

いずれの場合も、PKでの測定値が QPや AVの限度に入る場合、QPや AVでの測定の省略が認められる。同様に、QPでの測定値が AVの限度に入る場合、AVでの測定の省略が認められる。†9†10

周波数掃引を行なう場合の最大周波数ステップと

最小ドウェル・タイム、あるいは最大掃引速度は、†6 一般的なスペクトラム・アナライザの多くは CISPR 16-1-1には適合していない。また、CISPR 25 ed. 3 (2008) では、スペクトラム・アナライザでの測定は、広帯域エミッションの繰り返し周波数が 20 Hz を超える場合にのみ認められる。

†7 CISPR 25 ed. 3 (2008) から参照されている CISPR 16-1-1:2006+A1:2006+A2:2007 で規定されている AV 検波はいわゆる “CISPR-AV”であるが、CISPR 25 ed. 3 (2008)では、旧版の AV 検波の使用も認められている。だが、繰り返し周波数が低いノイズに対しては特に、これらはかなり異なった値を示すことがある。

†8 全ての周波数範囲について全ての検波での限度が規定されているわけではない。一部の検波の限度のみが規定されている場合には、その限度のみを適用する。

†9 これは、検波器の特性上、測定のばらつきによる若干の逆転の可能性を除き、PKでの測定値 ≥ QPでの測定値 ≥ AVでの測定値 となるためである。†10 QP 検波器は特に応答が遅く、最小のドウェル・タイムは

1 秒とされている。30 ~ 1 000 MHz では、レシーバでの掃引の周波数ステップは最大 50 kHz (レシーバの 120 kHz の測定帯域幅の約 1/2) となるので、その周波数範囲全体を QPで掃引すると 1回の掃引に最低でも 5時間以上を要することになる。QPの限度を適用する場合、ノイズに変動がない (あるいは変動の周期が 1秒よりも大幅に短い)ならば、先に PKでの掃引を行ない、それが QP 限度を超えた周波数についてのみ改めて QPで測定を行なうようにすれば、測定時間を相当節約できる場合が多い。

2

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用いるべき測定帯域幅とともに、周波数範囲と検波

毎に規定されている。†11

2.4 電源電圧

車両の 12 Vや 24 Vのバッテリに接続されることになる電源のコンポーネント試験における供給電圧

は、テスト・プランで電源電圧が指定されていない場

合、CISPR 25 ed. 2 (2002)の場合は 13.5±0.5 Vや27±1 V、CISPR 25 ed. 3 (2008)の場合は 13±1 Vや 26 ± 2 V とする。

2.5 電源のインピーダンスの管理

試験に際して電源のインピーダンスを管理するた

めに、そして電圧法においては電源線上の測定すべ

き高周波成分のみを取り出して測定器に送るために、

AN (artificial network) †12と呼ばれるものが用いら

れる。

12 Vや 24 Vなどの直流電源に使用する ANは、5 µH/50 Ω AN、あるいは単に 5 µH AN と呼ばれるもので、図 2に示すような構成の、測定ポートを50 Ω で終端した時に図 3に示すようなインピーダンス特性を示すものである。

AN の測定ポートは、電圧法でその線の測定を行なう時には同軸ケーブルを介して測定器の 50 Ω の入力に接続するが、その他の時には 50 Ω の終端器(AN 内蔵のもの、あるいは外付けの同軸終端器)で終端する。

ANは、ALSE法など、100 MHz (108 MHz) を超える周波数での測定を行なう場合にも用いられ

るが、そのような高い周波数についてはインピーダ

ンスが規定されていないことに注意することが望ま

しい。

ANは、実際の設置に際しての電源リターン線 (バッテリのマイナス側への接続) の長さに応じて、次のような形で用いられる:

†11 規格で示されているドウェル・タイム (各周波数での観測を行なう時間)や掃引速度は下限や上限であり、実際の測定に際しては、ノイズの性質 (主にノイズの変動の周期)に応じた調整が必要となる場合がある。これは試験時間に影響するので、動作に伴うノイズの変動が予期される場合、可能であればその周期が短くなるような動作条件を選んだ方が良いだろう。†12 LISN (line impedance stabilization network) とも呼ばれる

ÿÿ

ÿÿÿ

1 µF

0.1 µF

A P

B B

1 000 Ω

5 µH

ÿÿ

50 ΩEUT

図 2: 5 µH/50 Ω AN の構成

| Z |

(ohm

s)

Frequency (MHz)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

0.1 1 10 100

図 3: 5 µH/50 Ω AN のインピーダンス (理論値)

• ローカルでの接地—電源リターン線が 200 mm以下の場合†13

ANを 1台だけ用い、給電線 (バッテリのプラス側への接続) のみを ANを介して接続し、電源リターン線はグランド・プレーンを介して接

続する

• 遠隔での接地— 電源リターン線が 200 mmよりも長い場合

ANを 2台用い、給電線と電源リターン線の双方を ANを介して接続する

AN の金属の筐体はグランド・プレーンに直接接続する。また、電源のマイナス側の線は、ANを用いない場合は勿論、ANを用いる場合にもその電源側でグランド・プレーンに接続する。

それぞれの場合の接続のイメージは、電圧法の場

合について、図 6と図 7に示す。CISPR 25 ed. 3では、電圧法以外では ANは EUTにではなくロード・シミュレータに接続するような図となっている

が、基本的な考え方は電圧法の場合と同様である。

†13 自動車上の電装品の配線で伝統的に行なわれているように、電源リターンをワイヤで戻す代わりに装置の近くで車体に落とすような場合。

3

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2.6 EUT の配置

EUT (被試験装置; DUT と呼ばれることもある)は、低誘電率 (εr ≤ 1.4) の絶縁材†14を用いて、グ

ランド・プレーンから (50± 5) mm の高さに置く。EUT の筐体は、それが実際の設置に際して車体

に接続される場合のみ、短いワイヤでグランド・プ

レーンに接続する。

2.7 ロード・シミュレータ

ロード・シミュレータは、EUTを動作させる役割に加え、その位置でのハーネスの終端インピーダン

スを管理する役割を持つ。†15ロード・シミュレータ

としては、実際のデバイスそのもの、あるいは実際

のデバイスを追加の回路と組み合わせたものが用い

られることも、実際のデバイスとは全く異なるもの

(例えば単なる終端抵抗)が用いられることもある。試験に際して、ロード・シミュレータはグランド・

プレーン上に直接置き、それが金属の筐体に入れら

れている場合にはそれをグランド・プレーンに接続

する。

EUTを動作させるために、ロード・シミュレータとは別に周辺装置が必要となることもある。この

ような周辺装置は決められた位置に置かれたロー

ド・シミュレータやフィルタなどを介して接続し、

接続する周辺機器やそのインピーダンス、それと接

続するための配線などが測定結果に悪影響を与えな

いようにすべきである。また、そのような周辺装置

をシールド・ルームの外に置く場合、導体をシール

ド・ルームの壁の貫通穴を通して引き出すのではな

く、光ファイバで接続する、シールド・ルームの壁

の位置に取り付けたフィルタを介して接続するなど

の手段を用いることが望ましい。

試験に際して、ロード・シミュレータや周辺機器

からのノイズが試験に悪影響を与えることも珍しく

ない。†16†17ロード・シミュレータや周辺機器から

†14 密な材料は誘電率が高いため、発泡材 (例えば発泡ポリスチレン) が用いられる。†15 ロード・シミュレータの試験への影響については、§5.1.3も参照されたい。なお、TEMセル法 (§3.4) の場合は、ハーネスの終端インピーダンスはハーネスを TEM セルから引き出す箇所に取り付ける低域通過フィルタで管理される。†16 CISPR 25 では、それらのノイズが限度値よりも 6 dB 以上低いことが要求されている。†17 ノイズがどちらからのものであるかを一方の電源を切ることで判別できることもあるが、EUT の電源を切ると周辺機器からのノイズの出方が変わる (例えば通信が止まってノイズが消

ノイズが出るかも知れない場合には、このリスクの

低減のため、それらをしっかりとシールドし、出入

りする全ての線を厳重にフィルタしておくことが望

ましい。

2.8 EUT の動作条件

EUTは、意図された使用方法の範囲内で、エミッションが最大となるような条件で動作させる。

一般には、ノイズを発生するかも知れない全ての

部分を動作させ、また適切な負荷をかけることが必

要となるであろう。だが、負荷が軽い時や間欠的に

動作させた時の方がエミッションが高くなるような

場合もあり、全ての部分を最大負荷で連続動作させ

ることが可能であるとしても、その条件だけを考え

れば良いとは限らない。

どの条件が最悪となりそうかが明確ではない場合

や同時に動作しない機能がある場合などは、様々な

動作条件を含む動作シーケンスを組む、複数の動作

条件での測定を行なう、あるいは適切な動作条件の

決定のために予備測定を行なうなどの対応が必要と

なるかも知れない。

2.9 限度値

CISPR 25では、測定法、及び周波数帯毎に、該当するそれぞれの検波に対してクラス 1~5の 5段階の限度値が規定されている (図 4, 図 5)。この限度を用いる場合、コンポーネントの製造業者と顧客

は、どの周波数帯についてどの限度に適合すべきか

をその中から選択して取り決めることになる。

クラス 1は最も緩く、クラス 5は最も厳しくなっており、そのコンポーネントが搭載される車両上で

の使用が想定されるそれぞれの周波数帯について、

例えば、実際の車両上でそのコンポーネントが無線

受信機への干渉を起こしにくい、かつ/もしくは比較的高いレベルの干渉が許容できる場合には低いク

ラスを、実際の車両上でそのコンポーネントが無線

受信機への干渉を起こしやすい、かつ/もしくは低いレベルの干渉が期待される場合には高いクラスを

選択できると考えられる。

える、など) 場合などもあり、常にそれで判別できるとは限らない。また、限度値を超えているのが EUT 以外からと思われるノイズのみであるとしても、一般にはそれを除外して合格と判定することは認められない。

4

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20

40

60

80

100

120

1 10 100 10000.1

CISPR 25:2008 ALSE method, Peak limits

Frequency (MHz)

Em

issi

on li

mits

(dB

µV

/m)

Class 1

Class 2

Class 3

Class 4

Class 5

LW MW SW

FM

TV

Ban

d I

TV

Ban

d III

DA

B II

I

TV

Ban

d IV

/VD

TT

V

DA

B L

ban

d

SD

AR

S

CB

VH

F

VH

F

VH

F

Ana

logu

e U

HF

RK

E

RK

E

Ana

logu

e U

HF

GS

M 1

000

EG

SM

/GS

M 9

00

GP

S L

1 ci

vil

GS

M 1

800

(PC

N)

GS

M 1

900

3G /

IMT

200

03G

/ IM

T 2

000

3G /

IMT

200

0B

luet

ooth

/802

.11

図 4: 限度値の例 (CISPR 25 ed. 3 (2008) ALSE 法 尖頭値限度)

−20

0

20

40

60

80

100

1 10 1000.1

CISPR 25:2008 Current−probe method, Class 1 and 5 limits

Frequency (MHz)

Em

issi

on li

mits

(dB

µA

)

Class 1, PK

Class 5, PK

Class 1, AV

Class 5, AV

Class 1, QP

Class 5, QP

図 5: 限度値の例 (CISPR 25 ed. 3 (2008) 電流法、クラス 1とクラス 5の各検波の限度)

だが、OEM規格では、CISPR 25 で示されているものとは異なる、かなり厳しい限度値が規定され

ていることも多い。

また、ECE R10.05[3][4] では、充電モード以外に

ついては、30~ 1 000 MHzについてのみ、QP (広帯域限度)と AV (狭帯域限度)のかなり緩い限度値のみが規定されている。†18

†18 ECE R10.05 のこの限度は明らかに AM ラジオを保護せず、またその緩い限度はその車両上の FMラジオの保護のためにも充分ではなさそうである。ECE R10.05 のこのエミッション限度は、その車両上の受信機ではなく、近隣の受信機の保護を意図したものと考えられる。“REESS充電モード” (電気自動車などを外部の電源から充電している状態) については 0.15 ~30 MHz の伝導エミッション限度の規定もあるが、これも同様で、またこの測定では CISPR 25 は用いられない。

3 測定法

CISPR 25 ed. 3 (2008) では、テスト・ベンチ上や試験用セル内でのコンポーネント測定法として、

以下のものが述べられている: †19

• 電圧法:

0.15 ~ 108 MHz

• 電流プローブ法:

0.15 ~ 108 MHz

• ALSE 法:

0.15 ~ 2 500 MHzCISPR 25 ed. 2 (2002) では 0.15 ~ 960 MHz

• TEM セル法:

0.15 ~ 245 MHz

• ストリップライン法 (参考):

0.15 ~ 960 MHzCISPR 25 ed. 2 (2002) には含まれない

3.1 電圧法

電圧法では、EUTへの給電線のみ (ローカルでの接地の場合)、あるいは給電線と電源リターン線のそれぞれ (遠隔での接地の場合) の上のノイズ†20を、

AN を用いて測定する (図 6, 図 7)。

200 +200

-0

CISPR 25 ed.2 (2002)

EUT

50

CISPR 25 ed.3 (2008)

図 6: 電圧法のセットアップ (ローカルでの接地)

†19 ALSE法、TEMセル法、及びストリップライン法のセットアップは、それぞれイミュニティ試験で用いられる ISO 11452-2、ISO-11452-3、及び ISO 11452-5[5] と良く似ている。†20 グランド・プレーンと測定対象の線のあいだに現れる電圧で、コモン・モードとノーマル・モードの双方の成分を含む。

5

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200 +200

-0

CISPR 25 ed.2 (2002)

EUT

50

CISPR 25 ed.3 (2008)

図 7: 電圧法のセットアップ (遠隔での接地)

3.2 電流プローブ法

電流プローブ法では、ハーネス全体 (CISPR 25ed. 3 (2008) の場合)、あるいは制御/信号リード全体 (CISPR 25 ed. 2 (2002) の場合) に電流プローブを取り付け、その束を流れる電流を測定する (図8)。†21†22

図 8に示すように電流プローブの位置が複数指定されているが、§5.1.1で述べるように、その位置によって一部の周波数での測定結果が大きく異なった

ものとなることがある。

900

1700 +300-0

EUT CISPR 25 ed.2 (2002)

CISPR 25 ed.3 (2008)EUT

EUT

d

50

1500

CISPR 25 ed.2

CISPR 25 ed.3

図 8: 電流プローブ法のセットアップ

†21 電流プローブをハーネス全体に取り付けた場合はノーマル・モードの電流は相殺され、結果に現れないが、干渉の主な原因となるのはハーネス上のコモン・モード・ノイズであり、通常、この形で測定すれば充分と考えられる。†22 OEM 規格などで、ハーネス内のワイヤを個別に測定するように求められることがあるかも知れない。このようにした場合、ワイヤを流れる信号やその高周波成分が測定周波数範囲内に入った場合、それもそのまま測定されることになる。従って、このような測定法で測られるエミッションを低く抑える必要がある場合、基本設計からの配慮が必要となるだろう。

3.3 ALSE法

ALSE 法では、ALSE (absorber-lined shieldedenclosure; 電波暗室) 内で、EUTやハーネスから空間に放射される電磁界を受信アンテナを用いて測

定する。

EUTは、グランド・プレーンの前縁から 200 mm、高さ 50 mmの位置に置く。ハーネスは、グランド・プレーンの前縁から 100 mm、高さ 50 mm の位置に、1.5 mがグランド・プレーンの前縁と平行となるように引く。受信アンテナは、ハーネスから 1 mの距離に、1 000 MHz 以下ではハーネスの中心の正面に、1 000 MHz 以上では EUTの正面に置く (図9~図 11)。†23

典型的には受信アンテナとしては次のようなもの

が用いられ、30 MHz以下については垂直偏波のみ、30 MHz 以上については垂直偏波と水平偏波での測定が行なわれる:

• 0.15 ~ 30 MHz

1 mアクティブ・モノポール・アンテナ

• 30 ~ 300 MHz

バイコニカル・アンテナ

• 200 ~ 1 000 MHz

対数周期アンテナ (LPDA) †24

• 1 000 MHz ~

ホーン・アンテナ (ダブルリッジド・ウェーブガイド・ホーン・アンテナ)

3.4 TEMセル法

TEM セル法では、EUTを TEM セル内に配置し、TEMセルの同軸コネクタに現れる電圧を測定する (図 12, 図 13)。†23 一般に、低い周波数ではハーネスからの放射が支配的と考えられるが、周波数が高くなると EUTからの放射の寄与が高くなるとともに使用される受信アンテナの指向性が鋭くなる傾向があり、受信アンテナをハーネスの中央に向けて置いたのでは適切な評価を行なえなくなる可能性が高まる。このため、この規格では、1 GHz を区切りとして受信アンテナの位置を変えるようになっている。受信アンテナを EUTの正面に置いた場合、ハーネスの大部分が受信アンテナの視野から外れる可能性が高いが、1 GHz 以上の周波数では、ハーネスは EUTから 10 cm程度までの部分が視野に入っていれば充分と考えられる。†24 200~300 MHzがオーバーラップしているが、これはバイコニカル・アンテナと対数周期アンテナの双方で重複して測定を行なうことを意味するわけではない。これらのアンテナを用いる場合、通常、200 MHzか 300 MHz でアンテナの切り替えが行なわれる。

6

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EUT

900

50

100

200

1500

1000

1 m

90

図 9: ALSE法のセットアップ (~ 30 MHz)

90

EUT

900

50

100

1000

100

200

1500

図 10: ALSE法のセットアップ (30 ~ 1 000 MHz)

100

90

EUT

900

50

100

200

1500 1000

図 11: ALSE法のセットアップ (1 000 MHz ~)

測定可能な周波数の上限は TEM セルの大き

さから決まり、セルの高さが 600 mm の場合は

200 MHz、1 200 mm の場合は 100 MHz となる。

EUTからの線は、§2.5で述べた ANと似たインピーダンス特性を持つ低域通過フィルタを、あるい

はそれが信号線の特性のために適切でない場合には

これと異なる適切なフィルタを通して引き出す。こ

のフィルタは、状況に応じて、TEMセルのコネクタ・パネルに取り付けるか、あるいはその外に置い

て同軸ケーブルで接続することになるだろう。

このフィルタは 30 MHz から最大測定周波数までで 40 dB 以上の減衰を持たなければならず、その最小減衰量の例を図 14に示す。このフィルタは他の測定法でのロード・シミュレータと同様に RF境界を作るものとなり、ハーネスの終端インピーダ

ンスを管理し、そこから先に接続された装置や配線

の試験の結果への影響を低減するとともに、外部か

らのノイズの侵入を低減する。

EUT

図 12: TEMセル法のセットアップ

b / 24L

b / 6

W

EUT

b

図 13: TEMセル内の EUTとハーネスの配置

3.5 ストリップライン法

この測定法は参考扱いとして示されているもので

ある。

7

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1 10 100 10000

10

20

30

40

50

Frequency (MHz)

Atte

nuat

ion

(dB

)

図 14: 低域通過フィルタの最小減衰量の例

図 15: TEM セルの例 (写真は Teseq 社提供)

この測定法では、通常は図 16のようにテスト・ハーネスをストリップライン内に引いてストリップ

ラインの同軸コネクタに現れる電圧を測定する形と

なり、この方法では 0.15 ~ 400 MHz の周波数範囲が測定可能と考えられる。

ストリップラインの高さの 1/3以下の寸法の EUTは、ストリップラインの中に入れ、ハーネス上のノ

イズのみではなくそれ自身からの放射を含めての測

定を行なうこともできる。

−0200

+50

−0200

+50

50

25004300

150

740

1500

1000

EUT

(

図 16: ストリップライン法のセットアップ (寸法は 50 Ωストリップラインのもの)

図 17: ストリップラインの例 (写真は Teseq 社提供)

4 CISPR 25 ed. 4 での改訂

2016 年 10 月に発行された CISPR 25 ed. 4(2016)[2] での最も大きな変化は、電気自動車 (EV)やハイブリッド電気自動車 (HEV)で用いられる装置に関連した記述の追加である。また、参考扱いと

してではあるものの ALSE の特性の評価方法が含められるなど、その他の変更も行なわれている。

ここではこの改訂版のいくつかのポイントについ

て述べる。この規格に関する正確な情報は規格その

もの [2] を参照していただきたい。

4.1 高圧直流電源やAC電源に接続される装置の測定方法

CISPR 25 ed. 4 Annex I では、EVのインバータや充電システムのように、高圧直流電源 (例えばDC 300~500 V のバッテリ) や AC 電源 (例えばAC 100 V や AC 230 V の商用電源)に接続される装置の測定方法が述べられている。

このような装置の電圧法、電流プローブ法、及び

ALSE法でのセットアップの例を、それぞれ図 18、図 19、及び図 20に示す。基本的なポイントは、

• 高圧 (HV)直流電源ラインは高圧直流電源用のANである HV-AN (high voltage AN) を介して接続する。必要な場合、実際の使用状況での

コモン・モードやディファレンシャル・モード

のインピーダンスを模擬するためのインピーダ

ンス整合回路網を HV-AN と EUT のあいだに接続することもできる。

HV-AN は従来から低圧 (LV)直流電源ライン用として用いられている 5 µH/50 Ω AN (§2.5)

8

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と同様の回路構成やインピーダンスを持つが、

一般に、高圧直流電源ラインはシールドされ

る場合があることから、通常の AN と異なりシールドを処理できるような構造のものが用い

られる。

• AC電源ラインはAC電源用の AMN (artificialmains networks) を介して接続する。

この AMN は CISPR 16-1-2 で規定された50 µH/50 Ω AMN で、商用電源に接続される機器のエミッション測定のために伝統的に用

いられているものである。

• AN、HV-AN、AMNの測定器に接続されていない RF ポートは全て 50 Ω で終端する

• 低圧 (LV)、高圧 (HV)、及び AC のハーネスの間隔は、それぞれ 100+100

−0 mm とする

• ほとんどの場合、ハーネス長は 1 700 +300−0 mm、

グランド・プレーンの前縁と平行な部分の長さ

は 1 500 ± 75 mm とする

-0+100

100 -0+100

100

ÿÿÿÿ

-0200

+200

1500

50 5

AMN

HV

AC line

ÿÿ

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿHV AN

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿ

ÿÿ ÿ ÿ

AN

LV

EUT

HVAC

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

((

ÿÿ

ÿÿÿÿÿ

ÿÿ

((

ÿÿÿÿÿ ÿ

ÿÿÿÿ

-0+300

図 18: 高圧直流電源と AC電源に接続される装置の電圧法でのセットアップの例

4.2 HVと LVのあいだの結合の評価

CISPR 25 ed. 4 Annex Iでは、EUTの高圧 (HV)側から低圧 (LV)側への結合 (漏洩)の程度の評価の方法も述べられている。†25

この評価の方法は、概ね次に述べるような形と

なる。

†25 この評価の目的は、他の装置が HV側に注入したノイズがその EUT を介して LV 側に漏洩して干渉問題を引き起こす可能性を評価することと考えられる。

-0+100

100 -0+100

100

ÿÿÿÿ

50 5

AC line

ÿÿ

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿ

1500

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

ÿÿÿÿ

ÿÿ

AMN

AN

ÿÿÿÿ

HV AN

EUT

HV

LVAC

HV

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

((

ÿÿ

ÿÿÿÿÿ

ÿÿ

((

ÿÿÿÿÿ ÿ

ÿÿÿÿ

-0+300

図 19: 高圧直流電源と AC電源に接続される装置の電流プローブ法でのセットアップの例

-0+100

100 -0+100

100

50 5

100 1

200

100

1000

1500

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

AC line

ÿÿ

AN

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

HV AN

ÿÿÿÿ

ÿÿÿÿ

AMN

EUT

AC

HV

HV

LV

ÿÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

ÿÿÿÿÿÿÿ

ÿÿ

((

((

ÿ ÿÿÿÿ ÿ

ÿÿÿÿ

-0+300

図 20: 高圧直流電源とAC電源に接続される装置のALSE法でのセットアップの例

4.2.1 エミッション測定のセットアップを用いた

評価

1. HV-AN とインピーダンス整合回路網 (もしあれば)、もしくは EUT のあいだに注入デバイス (電流注入プローブかコンデンサ) を取り付けて、その HV-ANのRFポートで測定された信号レベルが HV ラインに対するいずれかの限度と等しくなる大きさの 30~108 MHz の信号を注入し、

2. 電圧法 (図 18)、電流プローブ法 (図 19)、あるいは ALSE法 (図 20)でのエミッションの測定を HV ラインにそれぞれの周波数の先ほどと同じ振幅の信号を注入しながら行ない、先に選

択した HV ラインに対する限度と同一のクラスの通常のエミッション限度を超えないことを

確認する

3. この測定は、HVの双方のポートからの注入に

9

e-OHTAMA, LTD.

対して、また電圧法と電流プローブ法の場合に

は LV の双方のポート (もしあれば) について行なう

4.2.2 HV–LV間結合の測定

ネットワーク・アナライザを用いて、EUTの HVポートから LV ポートへの結合 (減衰) を直接測定する。

この測定は、HV の双方のポートからの注入に対して、また電圧法と電流プローブ法の場合には LVの双方のポート (もしあれば) について行なう。

4.3 車両上のアンテナでの測定

CISPR 25 ed. 4 §5.3 では車両に充電ケーブルを接続して充電を行なっている状態でのエミッション

を車両に取り付けたアンテナで測定する方法につい

て述べられているが、これについては本稿では述べ

ない。†26

なお、EVのインバータのように車載の高圧バッテリに接続される装置からのエミッションの車両上

のアンテナでの測定に関しては、従来からの測定法

から特に変わることはない。

4.4 ALSEの特性の検証方法

ALSEの特性の検証方法が Annex J (informative)で述べられているが、これについては本稿では述べ

ない。

4.5 その他の変更点

従来からの測定法については本質的な変更はない

ものの、様々な変更が行なわれている。

†26 これは ECE R10.05[3] で “REESS charging mode” と呼ばれている状態で、車両のセットアップも ECE R10.05 のものを踏襲している。だが、ECE R10.05 では車両外の受信器への妨害が評価されるのに対して、CISPR 25 ed. 4 §5.3 では車両に取り付けたアンテナでその車両上の受信器への妨害が評価される。

5 補足

5.1 測定結果の変動要因の例 — 電流プローブ法の場合

電流プローブ法の場合について、測定結果に顕著

な影響を与える可能性がある、試験対象品側に起因

する要因のいくつかの例を示す。

このうち、電流プローブの位置は電流プローブ法

に特有のものであるが、それ以外の要因は他の測定

法での測定にも影響を与えることが予期される。†27

5.1.1 電流プローブの位置の影響

図 8に示したように、この規格では電流プローブの取り付け位置を変えて測定を繰り返すように述べ

られており、これはハーネスが非常に長い†28ことか

ら生じる可能性がある測定レベルの変動を緩和する

ためと考えられる。

この影響を推定したもの†29を図 21と図 22に示すが、図 21の条件では、電流プローブを d = 500 mmに置いて測定した場合、40 MHz 近傍での測定結果が著しく低くなりそうなことがわかるだろう。

なお、図 21の推定では、どの周波数についても電流プローブの位置を d = 1450 mm (ロード・シミュレータから 50 mm)とした時が最大となっているが、これはこの推定で EUT側のインピーダンスを 50 Ω、ロード・シミュレータ側を短絡 (0 Ω) としているためであり、常にそうなるわけではない。†30

5.1.2 ハーネス長の影響

ハーネス長の違いの影響を上と同様の方法で推定

したものを図 23に示す。

†27 ALSE法においては、ハーネスの長さや配置、ロード・シミュレータの配置やインピーダンスの変化などが放射パターンの変化も引き起こすことも予期される。[6] この測定は受信アンテナの位置は固定で行なわれることから、放射パターンの僅かな変化が測定結果の大きな変動をもたらす可能性が考えられる。†28 100 MHzでの波長 λは 3 m (自由空間中での値)、λ/4は

0.75 m となる。†29 ハーネスを無損失伝送線路とみなした理想化したモデルによる単純な推定であり、正確なものではない。また、実際のハーネスでは信号の伝搬速度が若干遅くなる場合があるが、その影響も考慮していない。†30 図 24 の赤の点線で示されるように、ロード・シミュレータ側のインピーダンスが高い場合、ロード・シミュレータから50 mm の位置でのレベルは著しく低くなることが予期される。

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Frequency (MHz)

Em

issio

n L

evel

ハーネス長 L = 1500 mm、EUTのインピーダンスを 50 Ω、ロード・シミュレータ側は短絡としての推定

図 21: 電流プローブの位置の影響 (CISPR 25 ed. 2(2002))

Frequency (MHz)

Em

issio

n L

evel

ハーネス長 L = 1700 mm、EUTのインピーダンスを 50 Ω、ロード・シミュレータ側は短絡としての推定

図 22: 電流プローブの位置の影響 (CISPR 25 ed. 3(2008))

プローブの位置を変えて測定を繰り返せばその影

響は緩和されるものの、この図で見られるように、

ハーネス長も測定結果にかなりの影響を与える可能

性がある。従って、規格で定められたハーネス長を

守る†31とともに、再現性が重要な場合には、同一の

試験では常に同じ長さのハーネスを用いることが、

可能であれば同一のハーネスを用いることが望まし

いだろう。

5.1.3 ロード・シミュレータのインピーダンスの

影響

しばしば見過ごされているように見受けられるが、

§2.7でも述べたように、ロード・シミュレータはテスト・ハーネスの終端のインピーダンスを管理する

†31 試験によって異なる長さのハーネスが規定されている場合にはそれぞれの長さのものを用意すべきであり、異なる長さのもので代用したり長いハーネスを折り畳んで使用したりすべきではない。

Frequency (MHz)

Em

issio

n L

evel

電流プローブ位置 d = 500 mm、EUTのインピーダンスを50 Ω、ロード・シミュレータ側は短絡としての推定

図 23: ハーネス長の影響

役割を持ち、その特性が試験結果に著しい影響を与

えることが予期される。

電流プローブ法はハーネスを流れるコモン・モー

ド電流を測定するものであるので、ロード・シミュ

レータのグランド・プレーンに対するインピーダン

スが高い場合、電流の流れが妨げられ、低い周波数

での測定結果は著しく低いものとなる。

この影響を推定したものを図 24に示すが、ロード・シミュレータ側を開放 (高インピーダンス) とした時には、電流プローブをどの位置にしても低い

周波数のレベルが著しく低くなるであろうことがわ

かるだろう。

測定を適切に行なうためには、ロード・シミュレー

タがノーマル・モード・インピーダンス†32のみでな

く、全測定周波数にわたるコモン・モード・インピー

ダンス†33を適切に管理することが非常に重要とな

る。†34

また、ロード・シミュレータの先に長いハーネス

や周辺装置が接続される場合も、ロード・シミュレー

タで充分に減結合が行なわれていれば、そこから先

に接続されるハーネスや装置が試験の結果に悪影響

を与えにくくなると期待される。だが、減結合が適

切に行なわれていない場合は、その先に接続された

†32 ハーネス内の線と線のあいだのインピーダンスで、しばしば回路の動作に影響するため、回路設計者はこれは考慮していることが多い。†33 ハーネスとグランド・プレーンとのあいだのインピーダンスで、回路の動作に影響しないことも多く、あまり意識されないことがある。†34 ALSE 法のように高い周波数までの測定を行なう場合には、ロード・シミュレータはその最大の周波数までのインピーダンスを管理することが望ましい。通常は AN のインピーダンスは100 MHz までについてのみ管理されており、それよりも高い周波数でのインピーダンスは不明であるので、このような高い周波数まででの測定で AN をハーネスの終端に用いることは好ましくないかも知れない。

11

e-OHTAMA, LTD.

ハーネスや装置も試験の結果に大きな影響を与える

可能性がある。

Em

issio

n L

evel

Frequency (MHz)

ハーネス長 L = 1500 mm、EUTのインピーダンスを 50 Ωとし、ロード・シミュレータ側を短絡とした場合 (青)と開放と

した場合 (赤)の推定;d = 500 mm (実線), 1000 mm (破線), 1450 mm (点線)

図 24: ロード・シミュレータのインピーダンスの影響

5.1.3.1 例: 周辺装置として CANトランシーバ

とコンピュータを用いる場合

対向器として CANトランシーバ (変換器)とコンピュータ (PC)を用いたセットについて、CANのハーネス上のノイズを測定する場合を考える。

この場合、CANトランシーバをロード・シミュレータとして考え、規格に忠実に配置したとしても、

CANのラインのコモン・モード・インピーダンスが制御されていない (RF境界としての役割を適切に果たしていない)場合には、図 25に示すように、CANトランシーバ、それと PCとを接続するケーブル、そして PCやその状態 (例えば、それが低インピーダンスとなっているか、それとも高インピー

ダンスとなっているか、など)が、測定結果に予期できない影響を与える可能性が考えられる。

だが、図 26に示すように、CANトランシーバの手前で CANのラインのコモン・モード・インピーダンスを制御し、またそこから先のラインを減結合

した場合には、その先の部分の影響が著しく軽減さ

れることが期待される。

5.1.4 EUTの接地ワイヤの影響

CISPR 25では、実際の使用に際して接地されるEUT もグランド・プレーンから 50 mm の高さに置かれ、接地ワイヤでグランド・プレーンに接続さ

れる。

120EUT

PC

CAN

USB (2 m)ÿÿÿÿÿÿÿÿ ÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

Em

issio

n L

evel

Frequency (MHz)

ハーネス長 L = 1500 mm、EUT 側インピーダンスを 50 Ωとし、CANトランシーバの CAN 側と PC 側のあいだのインピーダンスが低いと仮定し、PC 端を短絡 (青)とした場合と開

放 (赤)とした場合の推定;d = 500 mm (実線), 1000 mm (破線), 1450 mm (点線)

図 25: CANのコモン・モード・インピーダンスが制御されていない場合

EUT

4.7 nF

60 60

0.01 mH

PC

CAN

USB (2 m)ÿÿÿÿÿÿÿÿ ÿÿÿÿÿÿÿÿÿ

Em

issio

n L

evel

Frequency (MHz)

ハーネス長 L = 1500 mm、EUT 側インピーダンスを 50 Ω、テスト・ハーネス端を 120 Ω/2 + 4.7 nF での終端とし、PC端を短絡 (青)とした場合と開放 (赤)とした場合の推定;d = 500 mm (実線), 1000 mm (破線), 1450 mm (点線)

図 26: CANを分割終端してコモン・モード・インピーダンスを制御した場合

この接地ワイヤはインダクタンスを与え、一方

EUT とグランド・プレーンとのあいだにはキャパシタンスが生じるので、これが並列共振回路となっ

て共振周波数近傍で著しいインピーダンスを生じ、

試験の結果に影響を与える可能性が考えられる。

図 27はこの影響を推定したもので、EUTとグランド・プレーンとのあいだのキャパシタンスを 20 pF、接地ワイヤのインダクタンスを 200 nH †35と仮定

†35 5 cm の間隔で置かれた 20 cm 角の平板のあいだのキャパシタンスは、エッジ効果を含めて 20 pF 程度となると推定され

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した時、その共振周波数となる 80 MHz 付近でのエミッションの著しい低下が推定されている。

実際の測定でこの共振周波数が測定周波数範囲内

に入るかどうかは微妙かも知れず、それが測定周波

数範囲内に入ったとしても著しい影響を受ける可能

性があるのはその近傍のごく限られた周波数範囲の

みで、比較的影響は小さそうである。だが、できる

限り短い接地ワイヤを用い、また再現性が重要な場

合には同一の長さの接地ワイヤを同じような形で取

り付けることは、この問題の軽減の役に立ちそうで

ある。

1 10 100

Freqyency (MHz)

Em

issio

n L

evel

Z:

0 Ω

Z:

20

pF /

/ 1

00

nH

Z:

20

pF /

/ 2

00

nH

1

0.1

0.01

ハーネス長 L = 1500 mm、電流プローブ位置 d = 1000 mm、EUT 側インピーダンスを 50 Ω、ロード・シミュレータ側を短絡とし、EUTとグランド・プレーンの接続のインピーダンスを

変えた場合の影響

図 27: EUTの接地ワイヤの影響

6 参考資料[1] CISPR 25 ed. 2 (2002) & ed. 3 (2008), Ve-

hicles, boats and internal combustion engines –Radio disturbance characteristics – Limits andmethods of measurement for the protection ofon-board receivers, IEC, 2002 & 2008

[2] CISPR 25 ed. 4 (2016), Vehicles, boats andinternal combustion engines – Radio distur-bance characteristics – Limits and methods ofmeasurement for the protection of on-board re-ceivers, IEC, 2016

[3] ECE Regulation No. 10 Revision 5, Uniformprovisions concerning the approval of vehicleswith regard to electromagnetic compatibility,United Nations, 2014http://www.unece.org/trans/main/wp29

/wp29regs1-20.html

る。200 nH は、しばしば用いられる 1 nH/mm としての概算で 20 cm のワイヤに相当する。

[4] ECE Regulation No. 10.05 の概要, 株式会社 e・オータマ, 2014–2015,http://www.emc-ohtama.jp/emc/reference.html

[5] ISO 11452シリーズの概要, 株式会社 e・オータマ, 2014–2016,http://www.emc-ohtama.jp/emc/reference.html

[6] Test harness length in CISPR 25 ALSEmethod and electric field pattern at 1 m dis-tance, T. Sato, 2016http://t-sato.in.coocan.jp/compliance/cispr25-alse-field-pattern/

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