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1 1 12年間の長期包括的アウトソーシングで 効率的で質の高い電子自治体の確立目指す 12年間の長期包括的アウトソーシングで 効率的で質の高い電子自治体の確立目指す 戦国大名の武田氏がその基盤を築いたことで知られる“甲斐の府中”こと、山梨県甲府市。江戸期には 幕府の直轄地として栄え、当時の城跡や宿場町の面影の残る町並みが市民や観光客に愛されています。ま た変化に富んだ地形や寒暖の差が大きい気候といった地理的な特性を生かした、ぶどうや桃などの産地と しても知られています。 このほどNECは、平成19年度(2007年度)から段階的に稼動する基幹業務システムなどの構築運用に おける包括的アウトソーシングを受託しました。甲府市は業務アプリケーションやハードウエアなどを自 前で所有せず、システムが適切に稼動し利活用が図られることをサービスと捉え、そのサービスを調達し て対価を支払う包括的アウトソーシング契約を締結しました。その契約期間が12年におよぶ長期間である こと、また調達方法やモニタリングの独自性に、全国の自治体が注目しています。 業務システムの分散化と複雑化により 積み重なる運用コストの負担 甲府市副市長 CIO 首藤 祐司 甲府市役所はこのほど、住民情報や税務、国 保・年金、介護・福祉などの基幹業務系、および 財務、人事給与、文書管理などの内部情報系の甲 府市の大半のシステムについて包括的アウトソー シングにより、NECをはじめとする企業グループ に委託しました。このアウトソーシングでは、計 画と構築に2年間(平成19年度~20年度)、運用 に10年間(平成21年度~30年度)という、自治体 では前例のない長期包括的アウトソーシング契約 となります。契約額は約46.9億円。同市の試算に よると、この取り組みによる経費節減効果は、人 的コストも含めると、従来の想定運用経費に比べ 最大約38.5%にのぼると見込んでいます。 包括的アウトソーシングの内容は、甲府市が平 成18年(2006年)10月に発表した「こうふDO (ダウンサイジング・アウトソーシング)計画」 にまとめられています。同計画書では、自治体情 報システムを取り巻く現状を踏まえ、対象となる 48の業務範囲(基幹、情報、インフラ)を決定 し、それぞれのサービスをどのように調達し、ま た提供されたサービスに対するモニタリングや評 価をいかにして行うかという指針を細かく明記し ています。12年という契約期間についても、シス テムのライフサイクルを10年単位で見ることで現 場の負担や調達コストを減らすために設定されま した。しかし、これらの結論に至るには、同市情 甲府市役所 企画部 行政システム改革室 情報政策課 係長 土屋 光秋 氏 アウトソーシング アウトソーシング 官庁・自治体 甲府市役所 様 局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、 市としてシステム調達の在り方そのものを検討 局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、 市としてシステム調達の在り方そのものを検討 局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、 市としてシステム調達の在り方そのものを検討 局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、 市としてシステム調達の在り方そのものを検討 事業環境・ 課題・ 導入の目的 2007

甲府市役所 様 - NEC(Japan) · 甲府市役所 企画部 行政システム改革室 情報政策課 係長 土屋 光秋 氏 官庁・自治体 アウトソーシング アウトソーシング

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11

12年間の長期包括的アウトソーシングで

効率的で質の高い電子自治体の確立目指す

12年間の長期包括的アウトソーシングで

効率的で質の高い電子自治体の確立目指す

 戦国大名の武田氏がその基盤を築いたことで知られる“甲斐の府中”こと、山梨県甲府市。江戸期には

幕府の直轄地として栄え、当時の城跡や宿場町の面影の残る町並みが市民や観光客に愛されています。ま

た変化に富んだ地形や寒暖の差が大きい気候といった地理的な特性を生かした、ぶどうや桃などの産地と

しても知られています。

 このほどNECは、平成19年度(2007年度)から段階的に稼動する基幹業務システムなどの構築運用に

おける包括的アウトソーシングを受託しました。甲府市は業務アプリケーションやハードウエアなどを自

前で所有せず、システムが適切に稼動し利活用が図られることをサービスと捉え、そのサービスを調達し

て対価を支払う包括的アウトソーシング契約を締結しました。その契約期間が12年におよぶ長期間である

こと、また調達方法やモニタリングの独自性に、全国の自治体が注目しています。

業務システムの分散化と複雑化により

積み重なる運用コストの負担

●●●●△△△△

甲府市副市長

CIO

首藤 祐司 氏

Legendary Serviceを実現するために最先端テクノロジーを追求し、お客様に最適なIT環境を提供できるように注力しています

 甲府市役所はこのほど、住民情報や税務、国

保・年金、介護・福祉などの基幹業務系、および

財務、人事給与、文書管理などの内部情報系の甲

府市の大半のシステムについて包括的アウトソー

シングにより、NECをはじめとする企業グループ

に委託しました。このアウトソーシングでは、計

画と構築に2年間(平成19年度~20年度)、運用

に10年間(平成21年度~30年度)という、自治体

では前例のない長期包括的アウトソーシング契約

となります。契約額は約46.9億円。同市の試算に

よると、この取り組みによる経費節減効果は、人

的コストも含めると、従来の想定運用経費に比べ

最大約38.5%にのぼると見込んでいます。

 包括的アウトソーシングの内容は、甲府市が平

成18年(2006年)10月に発表した「こうふDO

(ダウンサイジング・アウトソーシング)計画」

にまとめられています。同計画書では、自治体情

報システムを取り巻く現状を踏まえ、対象となる

48の業務範囲(基幹、情報、インフラ)を決定

し、それぞれのサービスをどのように調達し、ま

た提供されたサービスに対するモニタリングや評

価をいかにして行うかという指針を細かく明記し

ています。12年という契約期間についても、シス

テムのライフサイクルを10年単位で見ることで現

場の負担や調達コストを減らすために設定されま

した。しかし、これらの結論に至るには、同市情

甲府市役所

企画部

行政システム改革室 

情報政策課

係長

土屋 光秋 氏

アウトソーシング アウトソーシング官庁・自治体

甲府市役所 様

局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、市としてシステム調達の在り方そのものを検討局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、市としてシステム調達の在り方そのものを検討局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、市としてシステム調達の在り方そのものを検討局所的なシステムの改修案件に対応する負担の増加、市としてシステム調達の在り方そのものを検討

事業環境・課題・

導入の目的

2007

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2

報政策課をはじめとする担当課による約5年にもお

よぶ地道な検討があったのです。

 甲府市では、昭和63年(1988年)から平成元年

(1989年)にかけて基幹業務を中心にホストコン

ピュータを導入し、その後一部オープン化したも

のの、5年ほど前から全体的なシステムの見直しと

再構築を検討することになりました。というの

も、当初のホストコンピュータでの業務を徐々に

クライアントサーバ方式やWEB方式へ移行させ

る中で庁内のシステムが分散し、改修コストやメ

ンテナンス労力の面での非効率が目立ってきたた

めです。当時の状況について甲府市の首藤 祐司副

市長兼CIO(最高情報責任者)は次のように振り返

ります。

 「法制度が改正されたり、ソフトウェアがバー

ジョンアップするたびに局所的な改修案件が繰り

返され、全体として複雑化するシステムの“おも

り”にコストがかかりすぎていました。同時に、

システムを運用する職員側の負担も増大していま

した。市としては、その分の労力を市民サポート

の拡充にあてたいところです。そこで行財政改革

の視点からITシステムも含めて役所全体の業務の

在り方について見直し、効率化をはかる必要があ

ると考えたのです」。

 こうした問題意識の下、平成15年(2003年)に

甲府市は3ヶ年の「甲府市地域情報化計画」を策

定(平成19年度に改訂)、この中にシステム調達

のダウンサイジングおよびアウトソーシングとい

う検討課題を組み入れました。さらに平成16年

(2004年)2月に策定された「甲府市システム調達

ガイドライン」では、アウトソーシングによる具

体的なシステム調達の手順や手続きについて方向

性を示しました。

 情報政策課の土屋光秋係長は、同ガイドライン

について次のように説明します。「市にとって

も、事業者にとっても一番よい形のアウトソーシ

ングとはどういうことかを考えました。市が要求

するシステムの機能には、様々なレベルがありま

す。そこで業務を遂行する上で必須の機能、事業

者の方針に合わせられる機能、将来的なオプショ

ンとして有効な機能などに分類し、総合評価を採

り入れたプロポーザル方式で一番希望に近いパッ

ケージの提案を採択するという方針を決めまし

た」。

 折しも平成18年(2006年)3月に甲府市・中道

町・上九一色村が合併することが決まり、これを

きっかけとして平成18年からいよいよアウトソー

シング計画を実行することになりました。約1年に

わたって事業計画を策定し、最終的な基本計画に

落とし込んだものが、先述の平成18年10月に発表

された「こうふDO(ダウンサイジング・アウト

ソーシング)計画」なのです。」

 「こうふDO計画」の策定と併せて、情報政策

課では各原課(業務を主管する担当課)との調整

を進めながら、平成19年(2007年)以降に構築す

るシステムの要求定義を行っていきました。土屋

氏は、「各原課の現状の事務処理についてヒアリ

ングを行い、求める機能やアウトプット(帳票)

について整理しました。そして本来あるべき効率

的な業務の姿について議論しながら、調達仕様書

にまとめていきました。当初は、やり方が変わる

のでは、と抵抗感を示す課も少なくありませんで

した。しかし根気強くプロジェクトの意義を説明

しながら、こうした業務改善の負担を軽減するた

め合理的、効率的に取り組みを進め原課と二人三

脚で業務プロセスそのものを見なおす作業を進め

甲府市役所 様

●●●●△△△△●●●●△△△△

将来的な市民サービスの在り方まで

考慮したNECの提案を評価

シ ス テ ム

概 要

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イメージ

ステム概要・

導入効果・

将来展望

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2007

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3

ました」と苦労を語ります。

「こうふDO計画」の事業スキームでは、48の

業務範囲にわたる調達対象を「基幹業務系」「内

部情報系」「インフラ系」の三分野に分割し、甲

府市がそれぞれのサービス事業者を選定します。

選定された事業者は、同市が示す仕様に定められ

たシステムサービスを提供すると同時に、セル

フ・モニタリングなどによってサービス品質を維

持していくことが求められます。

 事業者の選定にあたっては、首藤副市長および

識者で構成される選考委員会が担当し、総合評価

型プロポーザル方式で事業者の提案を受け、技術

やコストなどの総合評価と提案システムのデモ評

価によって決定しました。その結果、基幹業務系

および内部情報系の調達についてNECを代表企業と

し、地元企業であるYSK e-comなどで構成する企業

グループが選ばれました。

 選考委員の一人でもあった首藤副市長は次のよ

うに語ります。「これは私自身の印象ですが、NEC

の提案は単にITシステムを構築することを目的と

するのではなく、それが稼動すればどのように市

民サービスの向上が実現するのか明確なイメージ

があったように思います。甲府市の立場に立っ

て、我々が自治体として何を目指そうとしている

のかという本質的な部分をよく考えていると感じ

ました」。土屋氏も、「12年間の包括アウトソー

シングは事業者側としてもリスクがあるはず。こ

の先お互いに何があるか分からない中で、『具体

的にどこまでやる』という形で明確なコミットメ

ントがあった点も安心感につながりました」と評

価してくださいました。

●●●●△△△△

PBXの導入実績やアフターフォロー体制が

NECを選定した決め手に

甲府市役所 様

図1 CRMシステム全体イメージノエビア様の将来的なシステムイメージ。基幹系を中心としたデータだけでなく、コールセンターに寄せられる電話の声やメールなど、より定性的な情報を有効活用したCRMの確立を目指しています。

事業スキームの概要

2007

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4

PMOによる監査と評価でプロジェクトを

継続的にマネジメント

「STAGE」システム概要図

qqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqq現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認将来の展望

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 アウトソーシングはシステムが稼動してからが

本番です。こうふDO計画の大きなポイントの一

つは、そのマネジメント体制の確立です。NECを

含む各事業者およびプロジェクト全体に対するマ

ネジメントは、首藤副市長(兼CIO)を補佐する

形でPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィ

ス)を設立して行うことになっています。PMO

は、(冒頭の須藤教授をはじめ)学識経験者やコ

ンサルタントといった識者で構成される専門の組

織です。その役割は、IT調達における事業者選

定、事業者との交渉、締結したSLA(サービス品

質保証制度)に基づいてプロジェクトの監査など

を行うほか、3年ごとに支払い対価の見直しもは

かると共に、甲府市の情報政策の司令塔であり、

縦割りになりがちな行政組織における横軸の役割

が期待されています。

 事業者側もセルフ・モニタリングを行い、効果

測定のためのデータを市に提供します。土屋氏は

その内容について、「市が作成したフォーマット

に沿って、SLAを遵守しているかどうかという技術

的な評価と、情報投資に対するコスト評価を行っ

てもらいます。特に技術評価のフォーマットにつ

いては、SLAの内容、そのベースになっている考え

方、適用事例の三つを明記し、市と事業者の間で

解釈のずれが生じないように工夫しました」と説

明します。

 また土屋氏は、PMOによるマネジメントのノウハ

ウや考え方を、情報政策課をはじめとする役所内

にも蓄積し、今後のITガバナンスを担う人材の

育成にもつなげたいと考えているようです。「上

から『これをやれ』と言われて『よくわからない

が命令なのでやる』といった“司令官と兵隊”と

いうような関係では、今後のITマネジメントは急

激に変化を遂げている社会情勢にとても追いつき

ません。当市のように人口20万人ほどの規模の役

所では、“スーパー司令官”に相当する高度で著

名なIT人材を継続的に確保することも難しいと思

将来の展望

甲府市役所 様

システム概要・

導入効果・

将来展望

現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認

 事業者側もセルフ・モニタリングを行い、効果

測定のためのデータを市に提供します。土屋氏は

その内容について、「市が作成したフォーマット

に沿って、SLAを遵守しているかどうかという技

術的な評価と、情報投資に対するコスト評価を行

ってもらいます。特に技術評価のフォーマットに

ついては、SLAの内容、そのベースになっている

考え方、適用事例の三つを明記し、市と事業者の

間で解釈のずれが生じないように工夫しました」

と説明します。

 また土屋氏は、PMOによるマネジメントのノウハ

ウや考え方を、情報政策課をはじめとする役所内

にも蓄積し、今後のITガバナンスを担う人材の

育成にもつなげたいと考えているようです。「上

から『これをやれ』と言われて『よくわからない

が命令なのでやる』といった“司令官と兵隊”と

いうような関係では、今後のITマネジメントは急

激に変化を遂げている社会情勢にとても追いつき

ません。当市のように人口20万人ほどの規模の役

所では、“スーパー司令官”に相当する高度で著

名なIT人材を継続的に確保することも難しいと思

います。MITのピーター・センゲ教授の提唱するラ

  

2007

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1 2年後は今から[創造]できる

「STAGE」システム概要図

qqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqq現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認将来の展望

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 首藤副市長はここまでの取り組みを振り返り、

次のように手応えを語ります。「当初は前例のな

いプロジェクトに対して不安感もありました。し

かし今回、システムの構築ということだけでな

く、職員が役所の業務の仕組みについてイチから

考え直すという経験ができました。職員自身の訓

練としても重要だったと思います」。加えて、

「市長を含むトップの役割としては、やると決め

た姿勢をぶれることなく貫くことです。全国の市

町村も注目しているので『甲府モデル』を成功さ

せたい」と本番稼動に向けた意気込みを見せまし

た。

 土屋氏は、こうしたトップの姿勢に「背中を後

押しされる思いで心強い」としながら、情報政策

課として次のように抱負を語ります。「我々情報

システム部門の役割は、現場の業務内容を理解

し、その流れをスムーズにつないでいくこと。例

えば介護福祉のように様々な要素が複雑に絡む業

務においては、データが複数の組織をまたぐこと

になります。その場合、システム側で各業務主管

をつなげて彼らの業務をフォローしていく必要が

あるのです。2年後にアウトソーシングの運用が始

まっても、常にアンテナを高くして、次の次の一

手まで考えながら、マネジメントの方向性を軌道

将来の展望

甲府市役所 様

ステム概要・

導入効果・

将来展望

現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認

います。MITのピーター・センゲ教授の提唱する

ラーニング・オーガニゼーションを目指し12年間

という長期スパンの中で、組織をまたいで常に現

場との一体感をもって取り組む姿勢をじっくり育

てていきたいと思います。」(土屋氏)。

 プロジェクトは現在、要求定義をほぼ終えつつ

あります。今後は、データ移行とパッケージの適

用という構築段階に入り、約2年後に迫った本番

稼動と運用に向けて着々と駒を進めています。

CIOとPMOの位置づけ

2007

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1 2年後は今から[創造]できる

「STAGE」システム概要図

qqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqqq現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認将来の展望

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修正していくことになると思います」。

こうふDO基本計画書の表紙には、次のような一

文があります。

“12年前に今を[想像]できなくても、12年後は

今から[創造]できる”

その真意について、最後に土屋氏は次のように説

明してくださいました。「10年前は単発的に改修

が発生して先が見えないという状態でした。何か

あってから後追いで手当てしていたのでいつも苦

しかった。しかし今のスタンスは、“ひとつ先、

ふたつ先のTobeを考え、そのTobeを達成するべく

環境条件を整える”です。少しでも先回りして矛

盾に手を回そうとしています。その結果、半年先

になるか1年後になるかは分かりませんが、リス

クは確実に軽減できるはず。常に少し先の将来を

設計し続けていくことによって、今まで見えな

かったものが輪郭を徐々に現してくるようになり

ます。それが私たちが考えるBPM(ビジネス・プ

ロセス・マネジメント)なのです」(土屋氏)。

甲府市の包括的アウトソーシングは、こうした情

熱をもって取り組む人々によって支えられていま

す。NECはこれまでのアウトソーシング事業で

培った効率的なシステム構築や運用のノウハウを

生かし、甲府市様と一緒に「12年後の未来」を創

造していきます。

将来の展望

甲府市役所 様

ステム概要・

導入効果・

将来展望

現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認現場との一体感をもって進める情報政策課含む担当課の業務についても再確認

CIOとPMOの位置づけ

2007

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7

移行バージョン

市政や地元経済に配慮したコンセプトと

パッケージの柔軟性を生かしたシステムで

甲府市の信頼を獲得

SEが語る事例 SEの視点から - システム構築のポイントSEの視点から - システム構築のポイント

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●●●●△△△△市政への理解と地元配慮による工夫をこらした

プロジェクト提案を評価

甲府市役所 様

 もともと甲府市様では NEC のホストコンピュータを

使っていました。その後、 徐々にオープン化する過程

で、 システムが分散して全体の運用コストがかさむと

いう悩みをもっていました。加えて、 国が提唱する「電

子自治体」 に取り組もうとすると、 個別に細かい改修

を行う必要があるため、 将来的にもコストがかかるこ

とが明らかでした。さらに本来の市役所職員の業務

の在り方を見直し、 より住民サービスに近いところで

行政マンとしての力を発揮していきたいという要望も

ありました。そこで「餅は餅屋」の発想で、 情報システ

ムの構築や運用を包括的にアウトソーシングすること

で、 これらの課題を解決しようという結論に至ったの

です。

 もちろん、 こうした悩みを抱えているのは甲府市様

だけではないと思います。各自治体の指向性は大き

く異ならない中で、実際に思い切った解決策を推進す

る「エネルギー」が伴うか伴わないかが、 成否を決め

る大きなポイントになったのではないでしょうか。甲府

市様のように構築と運用で 12 年間という包括的アウ

トソーシングを自ら立案し、 実践していくケースは、 今

までにない先進的な取り組みだといえます。

 今回、NEC として甲府市様に提案した内容のポイン

トは大きく 3 つあります。1 つ目は、 長年 NEC が甲府

市様の基幹システムを手がける中で、 役所の現状を

いかに理解しているかという優位性が挙げられます。

同市が平成 18 年 (2006 年) 10 月に発表した 「こうふ

DO計画」(※詳細は本文参照)の本質をとらえ、 それ

を成功させるためにパートナーとして何ができるか訴

えました。特に今回のプロジェクトの場合は、 再構築

したシステムのサービスの品質をいかに長期にわ

たって同じ水準で継続し、 改善していけるかという

BPM(ビジネス ・ プロセス ・ マネジメント)の可否が重

要なポイントとなっています。

 2 つ目は、 甲府市様の提案依頼書 (RFP) に対して

具体的な成果目標を掲げ、 「ここまで実現することが

できます」 とコミットしたという点。例えばコスト低減目

標では、NECのパッケージやノウハウを利用し、 メン

テナンスコスト20%以上を必達目標としました。通常

は、 こうした具体的な目標のコミットメントについては

提案する側としては “言葉をにごす” ところですが、

NEC は甲府市様の現状を知っているから言えるとい

う自信がありました。

2007

NEC公共ソリューション事業部事業推進部マネージャー 

松本健一 

NEC公共ソリューション事業部 第四営業部長

唐沢直之

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8

 3つ目は、システムそのものの品質だけでなく、

さらなる付加価値として地元パートナー企業であ

るYSK e-comとの協力体制を強調して提案した点で

す。12年間という長いスパンの中で、地元の経済

効果につながるスキームを具体的に提案していま

す。

 今回、甲府市様のシステムは、NECの地方公共団

体向けパッケージシステム「GPRIME(ジープライ

ム)」とグループウェア「StarOffice(スターオ

フィス21)」で構成されています。パッケージの

良さというのは、継続的に一定の品質を提供する

という点とそれぞれの自治体に合わせたベストソ

リューションの提供という面での柔軟性です。シ

ステムを構築して年数が経過すると、法令の改正

などによる改修要件が発生するので、その時にい

かに柔軟に対応して陳腐化の度合いを防ぐかが重

要となります。

 NECでは平成6年(1994年)から自治体向けの

パッケージ製品を手がけており、これまでの実績

や経験からそのベストプラクティスをGPRIMEに反

映させています。GPRIMEの特長は安易なカスタマ

イズによることなく多くの自治体のニーズ、ウォ

ンツに対応出来るパラメータの数が多いことで

す。プログラム自体を変更しなくてもパラメータ

を選択して簡単にチューニングできるため、お客

様のプログラム改修の負担を軽減することが可能

となっています。また近年は、国が掲げる「次世

代地域情報プラットフォーム」(※)の仕様にも

準拠し、全国の地方公共団体向けのパッケージも

整備しているところです。

----------------------------------

(※)次世代地域情報プラットフォーム

自治体の情報システムを含む、地域のあらゆる情

報システムを連携させる共通基盤のこと。総務省

主催の「地域における情報化の推進に関する検討

会」の中で提言され、2005年10月に設立された

「全国地域情報化推進協会」で標準仕様の作成を

行っている

----------------------------------

 甲府市様では今後数年の間に新庁舎を建て替え

る計画があり、一時的に庁舎や職員が分散するこ

とによる通信面や管理面での課題も控えていま

す。しかし今回の提案では、「ターミナルサーバ

方式」を採用し、パッケージを稼働させる環境に

ついて運用のしやすさを重視しました。これは端

末側に仕組みをもたせず、サーバから画面の差分

を送信するだけなので通信の負担も少ないのが特

長です。また、メンテナンスもサーバで集中管理

するため、セキュリティなどのアップデートも一

気に行うことができます。

 12年という長期間においては、合併なども考え

られます。場合によっては、人口20万人から一気

に人口30万人規模の中核都市になる可能性もある

のです。もちろん、そうした状況にも適応し得る

システムとなっています。このほか、12年後の情

報政策部門の在り方についても考え、データウェ

アハウス(DWH)などを活用し、市役所内のデータ

を積極的に利用し、市政に生かしていくための環

境づくりも想定しています。

 これまで申し上げた提案のポイントは、一つひ

とつ個別に挙げれば甲府市様が初めてではなく、

色々なところで実績のある技術に基づいていま

す。しかし、今回包括的アウトソーシングによる

全体最適化という形で、これらすべてを一気通貫

でやっていくのは、初めての試みとなります。ア

ウトソーシングによって全体最適を目指す「甲府

方式」は、行財政改革の中で試行錯誤している自

治体にとっては、今後の一つの有力な選択肢とな

り得るでしょう。

ベストプラクティスに基づく柔軟な

パッケージ「GPRIME」で運用しやすさを実現

2007

甲府市役所 様

Page 9: 甲府市役所 様 - NEC(Japan) · 甲府市役所 企画部 行政システム改革室 情報政策課 係長 土屋 光秋 氏 官庁・自治体 アウトソーシング アウトソーシング

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甲府市役所

新市制移行 平成18(2006)年3月1日

合併自治体 甲府市・中道町・上九一色村

特  色 甲府盆地の北に位置。市域の3分の2を山岳森林が占め、自然に恵まれる。

約480年前、武田氏が館を築き、城下町を設けたのがまちの始まり。

甲州ぶどう、ワイン、水晶のほか、宝石・貴金属加工が世界的に有名。 00年より特例市。

面  積 212.41km2

人  口 約20万人(平成19年8月1日現在)

URL http://www.city.kofu.yamanashi.jp/

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エクストラネットの充実により、顧客・スタッフ・ピープルスタッフ様

の緊密な関係を構築

エクストラネットの充実により、顧客・スタッフ・ピープルスタッフ様

の緊密な関係を構築将 来 の

展 望

Web勤怠システムを核に

エクストラネット上での活用機能を拡大

戦略実現に向け、NECの技術支援に期待

甲府市役所 様

2007