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経済産業省の最近の情報政策
平成26年8⽉21⽇(⽊)経済産業省
商務情報政策局情報処理振興課⻑
野⼝ 聡
1
⽬次1.我が国における情報技術・情報産業の変遷と
経済産業省の主な情報政策の流れ2.⽇本再興戦略 改訂20143.ITベンチャーの起業⽀援4.企業の攻めのIT投資の促進
2
1.我が国における情報技術・情報産業の変遷と経済産業省の主な情報政策の流れ
我が国における情報技術・情報産業の変遷
3
メインフレーム全盛期
オープンシステム転換期
インターネット急成長期
IT浸透期
1980年代 1990年代 2000年代 2010年代
⽶国IBMに国産メーカーが対抗
国内動向
処理の形態
⽶国IBMが時代を牽引
海外動向 クラウドの拡⼤⽶国のIT⾰命を受けた
インターネットの急拡⼤
ホストコンピュータによる集中処理
汎⽤サーバによる分散処理(クライアントサーバシステム、Webコンピューティング)
クラウドコンピューティングによる集中処理
クライアント 専⽤端末 パーソナルコンピュータ (Windows 95等)
ワークステーションシンクライアント
タブレット
ネットワーク
専⽤線VAN(電話回線)
ISDN等のデジタルネットワーク
ブロードバンド⻑(ADSL・光)モバイル通信
固定・モバイルの超⾼速な
シームレス接続
トピック
・ハードウェアとソフトウェアの分離
・マイクロソフト・アップル等の台頭
・ウィンテル時代(Windows/Intel)
・個⼈のパソコン利⽤が進む(Windows95)
・グーグル等の台頭・オフィス・家庭におけるWeb活⽤の拡⼤
・携帯電話の爆発的な普及・パソコンのコモディティ化
・フェイスブック、LINE等のSNSの普及
・アマゾン、楽天などのネット販売の拡⼤
システムインテグレータの誕⽣(独⽴系の台頭)
⽶国メインフレーム企業のリストラ等
スマホ、タブレットの普及(iPhone、iPad等)
⽇本のT戦略の誕⽣基盤整備→利活⽤促進
我が国における情報産業の主なプレーヤー
4
○我が国の情報産業の太宗を占める情報ソフトウエア産業には、メーカ系・ユーザー系・独⽴系などが存在。○メインフレームを開発していたメーカがシステムインテグレータを実施。ユーザー会社がIT部⾨を切り離す形でユーザ系
が⽣まれるとともに、90年代にシステム外注が増加して、独⽴系ベンダーが誕⽣。○2000年代以降のインターネットの普及に伴い、インターネット付随サービスが急成⻑。Webを活⽤したBtoCビジネ
スや、クラウドプラットホームを活⽤したBtoBビジネスが拡⼤。
メーカー系
⽇本IBM 富⼠通
NEC ⽇⽴
独⽴系
NTTデータ 富⼠ソフト
⼤塚商会 ITホールディングス(TIS等)
ユーザー系
野村総研 ⽇本総研
新⽇鉄住⾦ソリューションズ
国内ITベンチャーソフトバンク 楽天
サイバーエージェント
世界のネットベンチャー
ミクシィ
DeNA グリー
⽇本ユニシス
CTCSCSK
外資系マイクロソフト インテル
アドビ オラクル
グーグル フェイスブック
アマゾン アップル
組込ソフト
イーソル
セントラル情報センター
ルネサス
コア
パッケージソフトベンダー
PCA
⾖蔵
サイボウズ
オービック
情報サービス業とインターネット付随サービス業について
5
○受託開発を⾏う情報システム業に代表される情報サービス業は約100万⼈強に対し、新興のインターネット付随サービス業(現在のITベンチャー)に属する者は5万⼈強。
○企業数でみると、ITベンチャーは約5割、昔のベンチャーである独⽴系は約4割、計9割はベンチャー。
◆情報システム&IT業界の上場企業の構成⽐(全体約330社)
◆情報サービス業とインターネット付随サービス業の総⼈数(約106万⼈※補注)構成⽐
ITベンチャー企業約52%
独⽴系システム会社約38%
ユーザー系システム会社約7%強
メーカー系システム会社約2%強
外資系システム会社約0.6%強
情報サービス業 約94%強情報ソフトウェア業 約71%強
(受託開発・組込ソフト・パッケージソフト・ゲームソフト)情報処理・提供サービス業
約23%強インターネット付随サービス業(ITベンチャー)約5%強【出典】経済産業省 平成25年度特定サービス動態調査
【出典】よくわかる情報システム&IT業界(⽇本実業出版社)
※補注 他業種の状況・輸送⽤機械器具製造業 97万⼈・情報通信機械器具製造業 23万⼈・電気機械器具製造業 49万⼈・電⼦部品・デバイス製造業 45万⼈
(平成22年度 経済産業省「⼯業統計調査」より)
⽇本のIT戦略の歴史
6
【歴史の流れ】○⽶国におけるIT⾰命(98年頃〜01年頃)等を受けて、我が国では2000年にIT基本法を策定。○これに基づき、2001年に、IT戦略本部が設置され、また、はじめてのIT戦略(e-Japan戦略)が策定された。○初期のIT基盤整備から、直近では、ITの利活⽤、ITによる構造改⾰等へと戦略の⽬標が変化。
1990年代 2000年代 2010年代
★⽶国におけるIT⾰命
e-
Japan
戦略
e-
Japan戦略Ⅱ
IT新改⾰戦略
世界最先端IT国家創造
宣⾔
i-
Japan戦略2015
⽇本再興戦略
IT基本法 I
T戦略
本部創設
2000 2001 2003 2009
新たな情報通信技術戦略
20132010
IT基盤整備
IT利活⽤重視
ITによる構造改⾰⼒
追求
誰もがデジタル技術の恩恵を享受
世界最⾼⽔準のIT利活⽤社会の実現
新たな国⺠本位の社会の確⽴
2006 ★2014
経済産業省の主な情報政策の流れ
7
1980年代
【情報政策の歴史】・1960〜70年代には、国産コンピュータ開発等、⽶国等へのキャッチアップ政策。その後、各種技術開発政策を実施。・1980年代以降、地域情報化など経済社会の情報化の視点が加わり、90年代後半には電⼦商取引等を推進。・2000年代は、インターネット⾰命を契機として、基盤整備と並⾏して、各セクターでのIT利活⽤の取り組みを推進。・2010年代は、クラウドなど最新の技術動向を踏まえた、IT利活⽤の⼀層の推進
2010年代1990年代 2000年代
情報産業の強化・
⽀援
1970年代
経済・
社会の情報化促進
国産コンピュータ開発
IPAによるソフトウェア開発・⼈材育成事業
第5世代プロジェクト等
電⼦商取引の推進(エレクトリック・コマース)
(BtoB、BtoC)
受発注のEDI化
Σ、TRONプロジェクト等
情報⼤航海2007-
2008-グリーンIT
組込システム2009-
★2014★⽶国におけるIT⾰命
2012-IT
融合
クラウドの普及・促進
地域情報化 電⼦政府
中⼩企業SaaS
医療等産業のIT化・⾼次化
8
2.⽇本再興戦略 改訂2014
「⽇本再興戦略」改訂2014
9
注目
Ⅱ.改訂戦略における鍵となる施策1.⽇本の「稼ぐ⼒」を取り戻す(1) 企業が変わる
(⽣産性の向上)⽇本企業の⽣産性は欧⽶企業に⽐して低く、特にサービス業をはじめとする⾮製造業分
野の低⽣産性は深刻で、これが⽇本経済全体の⾜を引っ張っている状況にある。また、グローバルな市場で戦っている産業・企業には、市場環境の変化への対応が遅れ、苦戦を強いられているケースも多い。第2次安倍内閣発⾜後のマクロ環境の改善により企業業績は回復しつつあるものの、競合
するグローバル企業との⽐較では、未だ⼗分とは⾔い難い。サービス分野を含めて⽣産性の底上げを⾏い、我が国企業が厳しい国際競争に打ち勝って⾏くためには、⼤胆な事業再編を通じた選択と集中を断⾏し、将来性のある新規事業への進出や海外展開を促進することや情報化による経営⾰新を進めることで、グローバル・スタンダードの収益⽔準・⽣産性を達成していくことが求められている。企業の「稼ぐ⼒」の向上は、これからが正念場である。
この鍵となるのが、「ベンチャー」の加速である。
10
「⽇本再興戦略」改訂2014(抜粋)
3.ITベンチャーの起業⽀援
11
起業家⽀援充実の必要性
○我が国経済の持続的な成⻑のためには、既存産業の新陳代謝を促進し、常にイノベーションを起こしていくことが重要。その⼤きな役割を担うのが、起業家(創業・ベンチャー)であり、⽇本再興戦略にも「ベンチャーの加速」が掲げられている。
○起業家(創業・ベンチャー)は、新たな成⻑分野を切り拓く存在であり、地域を含めた我が国経済のエンジンそのもの。そこから次世代の主要企業が誕⽣し、雇⽤を創出しながら、新たな経済成⻑を牽引することが期待される。特に、ITベンチャーは、社会を⾰新する新たなイノベーションをもたらす重要な存在。
○我が国は過去三度のベンチャーブームを経験。現在、第四次ベンチャーブームの兆しが鮮明になりつつある。この動きをうまく活⽤しつつ、成果を⽣み出すことが必要。
12
【⽀援環境】商法改正によるストックオプション制度の本格導⼊(1997年)、エンジェル
税制の創設(1997年、2007年に所得控除制度を拡充)、中⼩機構によるファンド事業開始や⼤学等技術移転⽀援法の制定(1998年)など、産官学⼀体型のベンチャー⽀援策の整備が進⾏。
【時代背景】バブル崩壊により廃業率や完全失業率が上昇し、経済停滞の中で、政府
の積極的な⽀援の下、多数のベンチャー企業が設⽴。特に、⽶国を中⼼とした世界的なIT関連需要の増⼤により、IT関連企業
が多く設⽴。(例:楽天、ザインエレクトロニクス、DeNAなど)2000年に⼊り、⽶国中央銀⾏の⾦融引締めなどにより、ネット関連銘柄
が⼤幅に値を下げ、2000年末には世界的にIT需要が冷え込み、多くのIT関連企業が失速。
これまでのベンチャーブームの変遷第⼀次ベンチャーブーム(1970年代)
【時代背景】素材産業中⼼の⼤量⽣産・⼤量消費産業から加⼯組⽴型産業(⾃動⾞や
電機)への転換期。その周辺に研究開発型の製造技術系ベンチャーが多く設⽴。(例:⽇本電
産、キーエンス、コナミなど)1973年末の第⼀次⽯油ショックにより沈静化。
【⽀援環境】証券や銀⾏系のベンチャーキャピタルなど、⽇本初の⺠間ベンチャーキャピタルが
設⽴。中⼩企業とは異なるベンチャー企業の産業界への位置づけが明確化。1975
年、(財)ベンチャー・エンタープライズ・センター(VEC)設⽴。
第⼆次ベンチャーブーム(1982年〜1986年)【時代背景】「重厚⻑⼤」型の製造業中⼼の産業構造から、新素材やバイオなどの「軽
薄短⼩」型産業や流通・サービス業を中⼼とした第三次産業への構造転換が加速。 (例:エイチアイエス、ソフトバンク、フォーバルなど)プラザ合意後の円⾼が⽇本経済を直撃し、1986年にベンチャー企業の倒
産が相次ぎ、沈静化。
【⽀援環境】1980年から⻑期的な⾦融緩和期に⼊り資⾦調達環境が⼤きく改善。
1982年、⽇本初の投資事業組合(ジャフコ1号)を組成。1983年、店頭登録基準の⼤幅緩和により、銀⾏系や証券系、外資系のベンチャーキャピタルの設⽴ラッシュ。
【時代背景】⾦融緩和策等により、2002年から2008年まで戦後最⻑期の好景気が続く。
「ナスダックジャパン」など新興企業向けの株式市場が開設により資⾦調達⼿段が拡充。多くのITベンチャーが設⽴・上場。 (例:サイバーエージェント、カカクコム、ミクシィ、グリーなど)2006年当初のライブドア事件を機に、市場の信⽤不安やIPO審査基準が厳
格化し、ベンチャー企業の資⾦調達意欲が低下。2008年のリーマンショックが追い打ちをかけ、沈静化。
【⽀援環境】⼤学発ベンチャー1,000社計画の策定(2001年)、中⼩企業挑戦⽀援法
(1円起業の特例)の制定(2002年)、ドリームゲートプロジェクトのスタート(2003年)、LLP法の制定(2005年)、産業⾰新機構の設⽴(2009年)、会社法改正による最低資本⾦規制の撤廃など、⽀援環境整備が進展。
2000年〜2010年頃までの動き 第三次ベンチャーブーム(1993年〜2000年)
13
起業家⽀援の現状
我が国は⽶英と⽐較し開業率が低く、起業促進が中期的な政策課題となっている。1990年中盤以降、組織法制の改正や⽀援制度、税制の創設など、ハード⾯を中⼼として創業・ベンチャー⽀援環境は強化され、⼀定程度の成果はみられるが、「ベンチャー創造の好循環(エコシステム)」の実現には⾄っていない。
ベンチャー⽀援策の検討をより⼀層加速させるため、2014年4⽉、⼤⾂私的懇談会「ベンチャー有識者会議」において、⽀援に係る課題とその対応策がとりまとめられたところ。
1994 独禁法ガイドラインの改正(VC投資先への役員派遣に関する規制撤廃)1995 中⼩企業創造活動促進法の制定(研究開発型企業に対する⾦融⽀援)1997 商法改正(ストックオプション制度の本格導⼊)
エンジェル税制の創設(個⼈投資家への優遇措置)1998 中⼩企業基盤整備機構によるベンチャーファンド事業スタート
⼤学等技術移転促進法の制定(TLO活動の⽀援)1999 中⼩企業基本法の改正(政策体系の再構築)
中⼩企業技術⾰新制度の創設(⽇本版SBIR制度の導⼊)産業活⼒再⽣特別措置法の改正(⽇本版バイドールの導⼊)
2001 ⼤学発ベンチャー1,000社構想(平沼プラン)商法改正(ストックオプションの規制緩和、種類株式の種類を拡⼤)
2002 中⼩企業挑戦⽀援法の制定(1円起業の特例)、新創業融資制度の創設2003 ドリームゲートプロジェクトのスタート2005 有限責任事業組合(LLP)法の制定2006 新会社法の施⾏(最低資本⾦規制の撤廃、合同会社(LLC)の導⼊)2008 エンジェル税制の抜本的拡充(所得控除制度の追加)2009 産業⾰新機構の設⽴2010 中⼩機構による債務保証制度の運⽤開始
これまでは・・・、制度や⽀援策(予算・税制など)を中⼼とした環境整備を推進
創業・ベンチャー企業数は⼀定程度増加
14
1.社会を動かす⼤胆な制度改⾰の推進
(1)年⾦基⾦によるベンチャー投資枠の創設
(2)ベンチャーへの思い切った税制措置等
(3)政府調達改⾰によるベンチャー調達枠の創設
(4)DARPA型研究開発⽀援スキーム等の創設
(5)企業実証特例・グレーゾーン解消制度による障壁突破
(6)公的セクターの経営資源の解放(電⼒関連データ等)
2.挑戦するベンチャーを⽀える意識改⾰・起業家教育
(1)初等教育からの起業家教育の充実
(2)⼤学・⼤学院の起業家教育ネットワークへの参加倍増
(3)ベンチャー⽀援⼈材10倍計画
(4)ダイバーシティを活かす起業家⽀援
(5)グローバル・ベンチャー⼈材の育成
(6)再チャレンジの促進
3.⼤企業も含めた⽇本経済全体でのベンチャー創造
(1)ベンチャーとの連携先進企業100選
(2)出⼝戦略としてのM&A促進
(3)スピンオフ、カーブアウトなどを促進するガバナンスの強化
(4)クラウドファンディングによる新たな起業⽀援モデルの構築等
<参考>「ベンチャー有識者会議」とりまとめについて
1.挑戦する⼈が少ない 2.リスクマネーが少ない3.グローバル化できていない 4.⼤企業とベンチャーの連携不⾜5.技術開発型ベンチャー・地域発ベンチャーが少ない 6.⾏政によるベンチャー⽀援の課題
ベンチャー創造の好循環の実現に向けて(対応策)
⽇本のベンチャーの課題
15
(課題:飛躍的成長に向けた連携・資金の不足)
【政策の方向性】・大企業との連携促進(自前主義からの脱却)・出口戦略としてのM&A促進・成長のための資金供給
等
ベンチャー政策の全体像
Startup Financing Cycle
○⽶国においてはベンチャーの起業に関するエコシステムが確⽴している⼀⽅、⽇本においてはベンチャーのスタートアップに関して依然、各ステージに課題が存在。
○また、ITベンチャーに対しては、少額の出資、⼈物本位での投資判断、再挑戦の促進等、その特徴を踏まえた⽀援が必要。
(課題3:ベンチャーの起業・活躍の基盤としてのデータ利用環境の整備)
【政策の方向性】・政府、独法、公共企業等の保有するデータのオープンデータ化促進 ・データ活用コンテスト・データプラットフォーマー構築 ・企業等のデータを活用した取組の推進
(課題1:起業人材の不足)
【政策の方向性】・大学との連携によるITベンチャー人材の育成・起業促進
・未踏事業の拡充 等
スタートアップ段階ITベンチャーについてはその特徴を踏まえた支援が必要
成長段階成長フェーズに到達したITベンチャーには、一般的なベンチャーと同様の支援により成長を促進
(課題2:スタートアップ支援の不足)
【政策の方向性】・スタートアップアクセラレーターによるITベンチャーに対する支援の促進
(人材育成、人的ネットワークの提供、ビジネスサポートの提供、早期からの出資 等)
・政府調達によるベンチャー製品の積極採用・ITベンチャーの海外展開支援
等ITベンチャーのみならず、ベンチャー全体の共通課題
16
⼤学発ベンチャー企業が技術に関する知識を得るために最も頼りにしている社外の⼈物の起業経験
技術的知⾒と起業経験を併せ持つ⼈材の不⾜
「⼤学発ベンチャーに関する追跡調査」実施報告書(2011年5⽉)
【⽇本】 【Y Combinator】セミナーには交流サイト最⼤⼿フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが出席するなど⼈脈も折り紙つき
マーク・ザッカーバーグ
ドゥルー・ヒューストン
Yコン訓練⽣・卒業⽣
etc…
(出典 ⽇本経済新聞より抜粋)
○⽇本では、起業経験を持つ先輩ベンチャーや優れた経営者らと、ベンチャー企業とのつながりが少なく、事業化にあたって実戦的なアドバイスやメンタリングを受けることが難しい。
⽇本においてはベンチャーを⽀援する⼈的ネットワークが不⾜
スタートアップ⽀援組織の不⾜ (⼈的ネットワーク)
○シリコンバレーでは、IT関連企業や⼈材が密集しており、またそうしたリソースを活⽤してスタートアップアクセラレータがつながりの場やサポートを多く提供している。
17
(参考)シリコンバレーにおける代表的なスタートアップアクセラレータ
「Y Combinator」 概要
カリフォルニア州マウンテンビューのスタートアップアクセラレータ。2005年に数万ドルで設⽴後、2010年までに投資したスタートアップの評価額が47億ドルを超えた。毎年40社〜60社のスタートアップ企業に対して、少額な資⾦提供(2万ドル前後)をするとともに、3ヶ⽉間集
中的に起業家を育成するプログラムを年に2回提供。世界各国から1,000社を超える応募が集まるとされる。 ⽀援内容
①資⾦提供 企業に11,000ドル、創業メンバー⼀⼈当たり3,000ドルを⽀給。(資⾦提供と引き替えに株式の2〜10%の株式を受け取ると⾔われる)また、YCスタートアップに対しては追加の審査を⾏わず、⼀律に15万ドルの投資を⾏うファンドが存在。
②育成プログラムの提供・ 何度でもパートナー(専⾨家)との個別⾯談(法律相談も含む)が可能。
パートナーには、プログラマー、起業家、卒業⽣、教授等。また、パートナーの他に、弁護⼠やWebサイトの作成サポートメンバーも存在する。
・ 参加者全員が参加するイベントの開催
投資実績例
オンラインストレージサービス ソーシャルニュースサイト WEBサイト編集アプリSequoia Capital,Accel Partnersが出資 Conde Nsatが買収 Synthasiteが買収
○「Y Combinator」は、シリコンバレーのエコシステムにおいて、スタートアップフェーズにおける⽀援機能を有し、ベンチャーを成功に牽引するエンジンとしての役割を担っている。
18
ITベンチャー促進の意義
ITによるビジネスデザイン刷新の例(⾳楽販売)
IT関連技術を活⽤しビジネスモデルを構築、⾳楽販売のビジネス形態を⼤きく変⾰ iTunesストアの売上は年間約160億ドルとも推定(2013年)
各種のIT関連技術を活⽤し、新たなビジネスモデルを構築•⾳声圧縮技術•著作権管理技術•通信技術 等
⾳楽を収録した媒体の販売 インターネットを通じた⾳楽データの配信
Apple社は技術の取得のために企業を多数買収(例)2010年、発話解析・認識技術を開発していた
Siri社(2007年設⽴)を買収、⾃社の製品に技術を活⽤、今後⾞載端末への活⽤も予定
○産業のサービス化が進む中、ビジネスデザイン(=仕組み)に付随する付加価値が増⼤。ビジネスデザインのイノベーションは、⾰新的なITの活⽤によって実現される。
○スマートデバイスやセンサーによって世界中のあらゆる「ヒト」「モノ」「サービス」がインターネットとつながる中、画期的なビジネスデザインを⽣み出したIT企業が世界市場を席巻する状況が発⽣。
○⾰新的なITベンチャーを⽣み出すことで、我が国産業の⾼付加価値化、競争⼒強化を図っていくことが必要。
19
ITベンチャーの例
⽶国
⽇本
マイクロソフト
アップル
グーグル
フェイスブック
ソフトバンク
楽天
DeNA
グリー
サイバーエージェント
ミクシィ
20
・1981年創業。 Windowsで世界にパソコンを普及させた⽴役者。・近年はクラウド(Azure)、ゲーム機(XBox)、タブレット(Surface)等を提供。
・1976年創業。 Macintoshで⾼性能コンピュータを世に送り出した。・近年はiPod、iPhone、iPad等の⾰新的な商品とiTunes等のソフトを提供。
・1998年創業。 検索エンジンGoogleでインターネットの世界を席巻。・近年はGmail等の多彩なサービス、クラウド、ロボット、⾃動⾞等に幅広く参⼊。・2004年創業。 SNSサービスFacebookで10億⼈以上のユーザーを獲得。・近年は実名制を活かした効果的なマーケティング・広告により収益を拡⼤。
・1981年創業。 ソフトウェア販売から携帯電話・固定通信・プロバイダー等、多彩なサービスを提供。ロボットPepperで脚光。
・1997年創業。 楽天市場を⽇本最⼤の仮想モールに育てる。・近年は⾦融事業等、多⾓化を推進。・1998年創業。 ネット広告を中⼼にインターネットを使ったサービスを提供。・近年はAmebaを軸としたブログ・ゲームサービスを提供。・2000年創業。 SNSサービスmixiにより、⽇本にSNSを定着させる。・近年はスマホゲーム業に参⼊し業態転換を図っている。・1999年創業。 インターネットオークションを中⼼にサービスを展開。・近年は携帯ゲーム業を実施。
・2004年創業。 携帯ゲーム業で多くのユーザを獲得。
ITベンチャーの特徴
○技術・装置ではなく、才能をもった「⼈」がイノベーションを⽣み出す。
⼈への投資が重要
スタートアップ時の起業⽀援を強⼒に⾏い、⼩額でも多数の資⾦供給により、可能性を持つ多くの⼈にチャンスを与え、挑戦の数を増やしていくことが重要
○⾮IT分野と⽐較し、起業の必要資⾦が少なく、事業化が容易。※必要資⾦例:ソフトウェア開発 490万円、喫茶店 3240万円
(出典:業種別スタートアップガイド:J-Net21))
○起業・廃業のトライアンドエラーを繰り返し、その中から、急成⻑するものが現れてくる。※シリコンバレーでは、年間1万7300社が起業し、年間1万2800社が廃業。※Facebookは2004年設⽴後、2012年の時価総額は1150億ドルに
21
IT起業⼈材の発掘・育成に関するこれまでの取組と課題
25歳未満の若年層の「個⼈」を対象PM制度の導⼊
産学界のトップで活躍の⽅を登⽤PMの独⾃の観点で⼈材を発掘・育成
未踏IT⼈材発掘・育成事業とは、いままで⾒たこともない「未踏的な」アイディア・技術をもつ「突出した⼈材」を、優れた能⼒と実績を持つプロジェクトマネージャー(PM)のもとで発掘・育成する事業
2014年度未踏PM
⽵内 郁雄 ⽒早稲⽥⼤学教授東京⼤学名誉教授
夏野 剛 ⽒慶應義塾⼤学⼤学院客員教授
等
プログラム⾔語(Ruby)の開発・⽇本提案により国際標準化・世界で数⼗万⼈が使⽤
未踏事業後の事業例 ⾼精度なパーソナルニュースキュレーションサービスの開発
2012年度採択福島 良典 ⽒
2000年度採択まつもとゆきひろ ⽒
・「Gunosy」としてサービス提供
○天才的なIT⼈材を発掘、育成する取組として、2000年以降(独)情報処理推進機構において「未踏⼈材育成事業」を実施。
○これまでに1,600⼈の⼈材を発掘・育成。160件が会社設⽴・事業化。○発掘・育成した⼈材による起業を増加させるためには、⼤学との連携や、⼈材育成フェーズから起業
⽀援フェーズへの連続的な⽀援体制等の新たな取組が必要。
22
未踏事業の概要
【⼈材】○独⾃性・⾰新性に優れた若い潜在的な逸材
<効果>・ベンチャー起業、新たなサービス・製品、グローバルIT市場の開拓、埋れた逸材に対する啓発・モチベーション向上・・・等
【発掘】・育成を受け持つクリエータを選定
【育成】・内容/計画策定等の課題の付与・直接の個別指導等による進捗管理・成果の評価
【IPA】
○企画・運営○未踏コミュニティの形成
【第⼀線級プロジェクトマネージャー(PM)】○第⼀線級のビジネス事業者・研究者から構成
【実践】・約9ヶ⽉間の独創的なソフトウェア開発テーマを実践。
【公募/応募】
【⽀援】・プロジェクト費⽀援/管理(上限230万円/件/年)
【招聘】・第⼀線級PMの招聘
【実施サポート】
突出した能⼒を、産学の⼀線級⼈材の⽬利き、指導を通じて発掘/育成する。
実施スキーム
★2000年の事業開始以降、のべ1,602⼈の未踏IT⼈材を発掘・育成★特許出願・技術許諾件数:212件、会社設⽴・事業化:163件 23
スタートアップアクセラレータの育成
ITベンチャー
起業家個⼈に着⽬し、新たなビジネスモデルを創造することが期待されるITベンチャーを⽀援・育成
(スタートアップアクセラレータの役割)シード時点での経営者育成起業成功者による次の起業⼈材の発掘国内外の起業成功者等とのネットワークの提供(失敗経験も含めた)経営ノウハウの伝授販路開拓の⽀援 等
起業家個⼈の資質を評価し、早期から出資
事業化の⽀援(⼈材育成、⼈的ネットワークの提供、ビジネスサポート、販路開拓等)
スタートアップアクセラレータ
24
産学官連携の「ITスタートアップ⼤学協議会」(仮称)
先進的取組例
地域のベンチャー企業や⾃治体と連携し、イノベーションに挑戦する精神と技術⼒を持つ創業意識の⾼い若⼿⼈材を育成。
地域や企業の抱える課題やニーズを把握の上、テーマを設定・選択。テクノロジベンチャーへの発展を意識しながらテーマに関連して、新製品、新サービスにつながる研究・開発を実施。活動を通じて、ベンチャー創業活動の擬似体験。
学⽣当たりの⼤学発ベンチャー数は全国1位(23社/1000⼈)
会津⼤学
○先進的な⼤学の取組をベストプラクティスとして共有・横展開
○ITの活⽤による新しいビジネスモデルの創出を⽬指す⼈材を育成する⼤学での取組の拡⼤促進を検討。
「⼤学地域貢献度調査」⽇経グローカル(2014年1⽉)
25
4.企業の攻めのIT投資の促進
26
我が国のIT投資の現状(業種別比較)製造業に⽐べ、サービス業は従来のシステム運⽤にとどまっている企業の割合が⾼い。⇒「攻めのIT投資」によるビジネス⾰新が進んでいないのではないか?
⽇本の産業別のTFP⽔準と新システムの構築等の現状
30
35
40
45
50
55
60
40 60 80 100 120
卸売業
⾦融業・保険業
出典:経済産業省「平成24年情報処理実態調査」JIPデータベースから作成
⼀般機械
輸送機械
運輸業・郵便業⼩売業その他の⾮製造業
電気・ガス・熱供給・⽔道業
TFP⽔準(⽶国=100)
新たなシステム構築⼜はシステムの再構築に
取り組んでいる企業の割合︵%︶
新規システム構築等に取り組む企業の割合が⾼い業種はTFPが⾼い傾向にある
円の⼤きさはGDPの規模を表す
我が国のIT投資の現状(業種別⽐較)
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攻めのIT投資が進まない原因① ー企業の意識(経営層)-
出典:⼀般社団法⼈ 電⼦情報技術産業協会(JEITA)「ITを活⽤した経営に対する⽇⽶企業の相違分析」調査結果(2013年10⽉)
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攻めのIT投資
新たな技術/製品/サービス利⽤
ITを活⽤したビジネスモデル変⾰
ITによる製品/サービス開発強化
ITによる顧客⾏動/市場の分析強化
事業内容/製品ライン拡⼤による
法規制対応のため
市場や顧客の変化への迅速な対応
利益が増えているから
売上が増えているから
会社規模が拡⼤したため
未IT化業務プロセスのIT化のため
定期的なシステム更新サイクル
ITによる業務効率化/コスト削減
プライベートクラウドの導⼊のため
モバイルテクノロジーへの投資
⽶国⽇本
守りのIT投資
IT予算を増額する企業における、増額予算の⽤途
⽶国は「製品やサービス開発強化」「ビジネスモデル変⾰」が上位である⼀⽅、⽇本は「ITによる業務効率化/コスト削減」に主眼が置かれている状況。
IT関連技術の動向に対する理解も、⽶国と⽐較すると⼤きく劣後。
新規IT技術についての認識(2013)
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攻めのIT投資が進まない原因② -企業の意識(IT部⾨の位置付け)-
現状では、企業内のIT部⾨は「守りのIT」が担当業務だと社内で認識されている。 IT部⾨は主体的にビジネスに関与する組織と認識されていない。 ユーザ企業が社内にIT技術者を⼗分に確保していない状況も、⽇本において攻めのIT投資が
進みにくい要因となっている可能性。
28.5 %
75.2 %
71.5 %
24.8 %
0%
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20%
30%
40%
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100%
米国 日本ITサービス企業 ユーザ企業
出典:⽶国労働省 労働統計局統計資料、NASCOMM、アジア情報化レポート、IPA IT⼈材⽩書2010 等
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安定稼働のための運用・管理
セキュリティ体制の維持・運用
利用部門のニーズに応じた構築・刷新
全社的IT戦略・施策の統括
業務プロセス標準化の旗振り
PCなどの管理
ビジネスにおけるIT活用の目利き
最新ITを用いた新ビジネスの提案
経営戦略の推進
PCなどの使い方に関する相談相手
ステークホルダーの取りまとめ
ITの最新動向に関する相談相手
その他
利用部門がIT部門に期
待する業務(n=916)IT部門が注力する業務
(n=509)
社内の利⽤部⾨がIT部⾨に期待する業務とIT部⾨が注⼒する業務 ⽇⽶のIT技術者の分布状況
出典:⽇経コンピュータ(2014.1/23)
請負⼈ 39.6%⾨番 21.6%抵抗勢⼒ 14.8%参謀 11.7%パートナー 11.2%先導者 1.1%
利⽤部⾨がIT部⾨に抱くイメージ
(n=912)
攻めのIT
出典:⽇経コンピュータ(2014.1/23)
守りのIT
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攻めのIT投資の促進策
①攻めのIT投資評価指標の策定 ②攻めのIT導⼊ガイドの策定
・有識者委員会により「攻めのIT投資」に関する客観的な評価指標を策定し、公表。
・⼤企業については、IR情報におけるIT投資情報の掲載を促進。
投資家等の外部からの評価により、IT投資の⽅向性を「攻め」に変化させる。
・中⼩企業の付加価値向上等に資する取組⼿法や具体的なクラウドサービス等について提⽰する「攻めのIT導⼊ガイド」を策定。
※中⼩企業が⽬指すべきIT経営の⽅向性等について定める「攻めのIT導⼊指針」も別途作成し、ものづくり補助⾦等とセットで中⼩企業のIT経営を促進。
ITコーディネータ(全国約6300⼈)等を通じて中⼩における「攻めのIT投資」を促進。
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サービス業におけるIT活⽤事例
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⼩売業は来店客数の増加が重要な課題⇒ 顧客別のクーポンを発⾏し、来店のリピート率を向上
スーパー、ドラッグストアなどの店頭のレジで、消費者⼀⼈⼀⼈の購買履歴に応じたクーポンを発⾏。 通常のクーポン使⽤率(1%程度)から⼤幅に使⽤率を向上(25%程度)、追加購⼊や再度の来店を促進。
サービス業のIT活⽤事例①(⼩売業)
*
*個⼈を特定し得る情報は含まれない
清算時にレジでクーポン発券
過去の購買履歴
対象商品(⾦額)の購買
イオングループ、イトーヨーカドー、ライフ、ツルハドラッグ等 ⼤⼿37チェーンが導⼊(全世帯カバー率=93.4%)
購買⾏動データ(Big Data)の蓄積→分析→個々の消費者に最適なメッセージを発券→再来店促進
主な蓄積データ:・週間7,400万⼈分の購買データ・消費者の過去2年分の購買履歴
【サンプル券⾯】
データ分析したクーポンの利⽤率:25%程度通常のクーポン使⽤率: 1%程度
消費者が“いま買ったもの”や、“これまでに買ったもの(過去の購買履歴)から
データ分析する
カタリナ マーケティング ジャパンがソリューションを提供
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サービス業のIT活⽤事例② (宿泊サービス業)宿泊業は接客等で多忙なため、情報の⼊出⼒や共有が困難
⇒ モバイル等の端末を活⽤し、顧客個別のニーズに応えるサービスを提供 ⾃社に適した情報共有、業務効率化、蓄積したデータの分析・活⽤等を実現。クラウドプラットフォームを利⽤し、
⾃社の社員でシステムを構築。低コストで円滑な機能追加が可能。
株式会社 陣屋所在地 神奈川県秦野市事業内容 旅館・レストラン・ブライダルの運営創業 ⼤正7年(1918年)従業員数 40名
⽇々の業務に必要な全ての機能を陣屋コネクト上で⼀元管理 最新のお客様情報と予約情報を随時更新
⇒情報の共有によりスタッフのマーケティング意識を向上、宿泊客の満⾜度向上のための接客にも注⼒
⇒2009年導⼊後、4年間で売上増加 2.9億円 ⇒4.6億円 (+60%)EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が改善 -6,000万円 ⇒ +7,000万円
⾃社でカスタマイズが可能なプラットフォーム上に各種の機能を配置
タブレット端末も活⽤
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