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使22 世界報道写真展 写真観 外国語学部 中国語学科 4年 島田 周太

世界報道写真展 私 写真観 - 神奈川大学human.kanagawa-u.ac.jp/gakkai/student/pdf/i14/140107.pdf · 【最も印象に残った写真】 世界報道写真展ということで、ある程度どんな

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  • の世界の美しいときや感動するときを記録してお

    くことで、落ち込んだ時も「この世の中も捨てた

    ものじゃないな。」と思えたり、明日を生きるた

    めの力になったりするのだ。

    そして、私にとって日常を撮影するということ

    は、常に狩人のような気持ちでいられる行為でも

    ある。獲物を探し求めるという本能的な衝動を、

    マンモスを狩るのではなく、現代らしく写真撮影

    で充たすことが出来るのだ。収穫した獲物を家に

    帰って眺め、編集することで、大きな達成感が得

    られるのである。これは魚釣りに行って、釣れた

    魚を捌いて食べることと似ている。

    このように、私にとっての写真とは、人生を豊

    かにする大切な要素である。

    【報道写真展に行く事になったきっかけ】

    報道写真には今まであまり興味がなかった。関

    心があるのは、自然や風景の写真(自然に近いほ

    ど、狩人気分になれるから)である。写真に文章

    を添えて空想の物語を作ったりすることは好きだ

    が、現実に起こった事件や、環境問題等のシリア

    スな内容には触れて来なかった。しかし、今まで

    関わってこなかった分野にこそ、刺激的な獲物が

    潜んでいるのではないかと直感し、行くことを決

    めた。

    【報道写真展について】

    1956年から開催されている報道写真の展示

    会。毎年開催されており、主に前年に撮影した写

    真を展示しているので、今の時代を考えるのに最

    適な展示会であると思う。

    今年の大賞受賞作は、トルコのアンカラで開か

    れた写真展で、警察官が駐トルコ大使を射殺した

    事件を捉えた作品だ。

    【私の写真観】

    今回の報道写真展の感想に入る前に、鑑賞者で

    ある私の写真観についてお話しする。

    私は写真を撮ることも見ることも好きだ。かと

    いって撮影するために出掛けるということは少な

    く、何気ない日常を撮ることが多い。それ故に、

    日ごろから一眼レフを持ち歩くようにしている。

    荷物は増えるし、重さだって軽くはない。しかし、

    いつどんな時に、心に響く瞬間に出会えるか分

    からない。どの瞬間も、似たようなものはあった

    としても、全く同じ状況で、同じことが再び起こ

    るなんてことは無い。感動する瞬間に出会えたの

    に、これを記録しないなんてもったいないではな

    いか。こんな考えだから、重さなんて気にならな

    いのだ。いつでも撮影できれば何気ない日常の中

    に紛れ込んだ最高の瞬間を残すことが出来る。こ

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    世界報道写真展と私の写真観

    外国語学部 中国語学科 4年 島田 周太

  • 【最も印象に残った写真】

    世界報道写真展ということで、ある程度どんな

    ものかを想像していた。しかし、展示されていた

    数多くの写真は、規模も内容も想像のはるか頭上

    を飛び回るような、期待以上の衝撃を与えてくれ

    た。今回はその中で最も印象に残っている写真を

    紹介したいと思う。

    自然の部の単写真で1位を獲得したフランシ

    ス・ペレフランシス氏(スペイン)氏の、漁網に

    絡まってしまったウミガメの写真である。なんら

    かの形で海に流れてしまった網が、泳いでいる何

    の罪もないウミガメに引っ掛かってしまったよう

    だ。この写真は、我々人類に環境問題について考

    えさせる力があると感じた。(選んだ理由は、私

    が動物好きだからということもある。)

    世の中では、テレビ番組や、記事等で環境問題

    のテーマが多く取り上げられている。しかし、ど

    んなにこの問題が注目されていたとしても、日本

    という比較的清潔で、管理された国家に居る以上、

    実害を受けている人々はきっと少ないだろう。例

    え、「自然が汚れているんだ。」という知識があっ

    たとしても、どうも他人事のように思えてしまう

    のではないだろうか。だが、この写真を見れば、

    愛らしいウミガメの命が脅かされているという現

    実から、より具体的に深刻な状況を実感出来るだ

    ろう。最低限の生活が保障されている日本で暮ら

    す人間とは違い、日々過酷な生存競争にさらされ

    ている彼ら動物たちにとって、このように何かに

    絡まってしまうことはすなわち、死に直結する。

    ウミガメの他にも、鳥がプラスチックを飲み込ん

    でしまったり、油まみれになって飛べなくなって

    いる姿は、マスメディアを通じて何度となく見た

    ことがある。漠然と地球の環境が悪化していると

    いうイメージで環境汚染を捉えるのではなく、人

    と同じく、命を持った動物たちが、こういった致

    命的な危険にさらされていることを知ることで、

    この問題について深く考えるきっかけになればい

    いと思う。

    【展示会全体を見た感想】

    このほかにも皆さんの記憶に新しいであろう、

    トルコで起きたロシア大使の射殺事件を捉えた写

    真や、爆破テロの凄惨な現場の写真、密漁で角だ

    けを採られて絶命しているサイの写真など、グロ

    テスクな写真が複数あった。ネガティブな印象の

    写真だけではなく、楽しい気持ちになる写真だっ

    てある。良くも悪くも、刺激的な写真が多い。刺

    激を活かすも殺すも、鑑賞者次第である。しかし、

    どれもがまぎれもない現実であり今を生きる人々

    が向き合っていくべきことだと、私は考えている。

    幸せな瞬間も、目をそむけたくなるような現実

    も、私たちにまざまざと見せつけてくれる。世界

    報道写真展にはそんな役割があると感じた。

    この写真展を通して、私の写真に対する考え方

    にも変化があった。写真にメッセージを込めたい

    という気持ちになったのだ。今までは、なんだか

    不思議な写真が撮れればいいと考えていた。だが、

    それだけでは自己満足で終わってしまうかもしれ

    ない。卒業後、私は写真関係の仕事をする。仕事

    での撮影でも、見た人の脳がフル回転して、この

    世界を少しでも豊かに、面白くしていければ大満

    足である。

    保護された環境の中で、平和ボケはしたくない

    という人、脳の思考を加速させる養分が欲しい人、

    この世界をもっと豊かに生きたいと考えている人

    は是非、世界報道写真展に足を運んでもらいたい。

    世界報道写真展と私の写真観

    参考文献

    http://www.asahi.com/event/wpph/about.html

    Francis Perez(フランシス・ペレス)2016 年 6 月 8 日スペイン領 カナリア諸島

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