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空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 A High-speed Locomotion Mechanism Using Pneumatic Hollow-shaft Actuators for In-pipe Robots 東北大学大学院 情報科学研究科 応用情報科学専攻 田所・昆陽研究室 山本 知生 6回廃炉人材育成セミナー 平成2832

空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

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Page 1: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

空気圧アクチュエータを用いた配管内高速推進ロボットの開発

A High-speed Locomotion Mechanism

Using Pneumatic Hollow-shaft Actuators for In-pipe Robots

東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻田所・昆陽研究室

山本知生

第6回廃炉人材育成セミナー平成28年3月2日

Page 2: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

本研究の提案:空圧駆動配管内高速推進機構

新しい空気圧アクチュエータ 「スライド・インチワーム運動」による配管内推進

小径・柔軟・シンプルな構造 素早いアクチュエータ動作による高速推進 印加圧力の差によって推進動作の切り替えを実現 高放射線環境下や水中でも動作可能

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空気圧アクチュエータによって構成された索状ロボット

Page 3: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

アウトライン3

1. 研究の背景と目的

2. 配管内高速推進機構の提案2.1 柔軟空気圧アクチュエータの提案2.2 スライド・インチワーム運動による配管内推進

3. 廃炉作業における運用イメージ

4. 結論と今後の展望

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研究の背景

なぜ配管内部の検査は難しいのか

現在の検査方法: 工業用スコープカメラ- 時間・コスト・労働力が必要- 垂直管や多数の曲管が存在する配管の

検査が困難- 放射線環境下での作業員への影響

®Olympus corp.

ロボットによる検査の効率化が期待

- 地中や高所,狭隘空間に設置されている(e.g. 国内ガス管の総延長 25万3177 km)

- 小径な配管が多く存在(e.g. 直径100 mm未満のガス管:11万3507 km,

直径50 mm未満のガス管:1万1027 km)

- 人間が近づけないことも

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ロボットを用いた配管検査

モータ駆動型

(Se-gon Roh et al., 2008)

従来提案されてきた配管検査ロボット

(Tatsuya Kishi et al., 2013)

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(金谷泰隆 et al., 2014) (Hirozumi Takeshima et al., 2013)

繊毛振動駆動型 空気圧駆動型

配管検査ロボットに要求される性能

従来の推進機構では要求事項を同時に満たすことが困難

小径性 高速性

垂直管走行性 曲管走行性

防爆性 小径性 高速性

垂直管走行性 曲管走行性

防爆性 小径性 高速性

垂直管走行性 曲管走行性

防爆性

耐放射線性

小径性 高速性 垂直管走行性 曲管走行性 防爆性

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本研究の目的

小径性,高速性,垂直・曲管走行性,防爆性を兼ね備えた配管検査ロボットの開発

- 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発- 索状ロボットを構成し,高速な推進動作を生成して推進

アプローチ

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50 mm 以下の配管を100 mm/s の高速で推進可能なロボットの実現を目指す.

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アウトライン7

1. 研究の背景と目的

2. 配管内高速推進機構の提案2.1 柔軟空気圧アクチュエータの提案2.2 スライド・インチワーム運動による配管内推進

3. 廃炉作業における運用イメージ

4. 結論と今後の展望

Page 8: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

提案アクチュエータの動作

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- 小径・柔軟・シンプルな構造- 高速で長ストロークな動作- 多様な動きを印加圧力の差によってコントロール- 電気・電子部品を非搭載 →高い耐放射線性

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基本原理: 中空シャフトアクチュエータ(専攻研究)

編組チューブ

ポリウレタンチューブ

凹型ローラゴムチューブ

(Wakana, et al., IEEE ICRA2013)

スライダケース

加圧

内部構造

動作原理

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提案アクチュエータの構造

2個のスライダの距離変化を利用してブレーキベルトを展開する.

ブレーキベルト

圧縮ばね

スライダ

ローラ

平常時

展開時

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𝑃1

圧力差による動作生成

前後圧力室の圧力差により3種類の動作を生成.

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𝑃1𝑃2

(𝑃1= 𝑃2)

𝑃1𝑃2

(𝑃1> 𝑃2)

Impellent motion (I-motion)

Holding motion (H-motion) Impellent & Holding motion(IH-motion)

片方の圧力室のみ加圧

両方の圧力室を等圧加圧 各圧力室を異なる圧力で加圧

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保持力測定実験

ベルトの保持力とばね圧縮長との関係を明らかにするとともに,配管内で十分な保持力が発生可能なことを確認する.

鋼管中のスライダユニットの圧縮長を治具により任意に変化させ,フォースゲージで牽引して張力を記録.

目的

実験方法

牽引方向

スライダユニット

50 mm鋼管(固定)フォースゲージ

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- 鋼管内径:50mm

- 牽引速度: 0.5 mm/s

- 圧縮長: 1 mm ~ 20 mm

- 試行回数:各3回

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一部接触 全接触 座屈

保持力測定実験

最大13.8 N の保持力を発生可能

垂直配管で自重を支えるのに最低限必要な力は2 N

自重保持に十分な保持力を発生可能

実験結果

最大13.8 N

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自重保持に最低限必要な力

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押出し力測定実験

圧力差が生じた時の押出し力の挙動を理解する.

スライダユニットを平面上に固定.発生した押出し力を可動ステージ上のフォースゲージで記録する.

目的

実験方法

加圧

ステージ移動方向

フォースゲージ アクリル製ガイドパイプ

スライダユニット(固定)

押出し力発生方向

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- 可動ステージの作動条件:

- ステージ停止状態 (0 mm/s)

- ステージ移動状態 (3 mm/s).

- 試行回数:各3回

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最大18.9 N 最大14.7 N

押出し力測定実験

ステージ速度: 3 mm/sステージ速度: 0 mm/s

最大18.9 Nの押出し力を発生可能

- 差圧に応じて押出し力は線形に増加する- スライダが移動する際,ローラの転がり抵抗によって押し出し力は低下

実験結果

押し出し力低下

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アウトライン16

1. 研究の背景と目的

2. 配管内高速推進機構の提案2.1 柔軟空気圧アクチュエータの提案2.2 スライド・インチワーム運動による配管内推進

3. 廃炉作業における運用イメージ

4. 結論と今後の展望

Page 17: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

スライド・インチワーム運動による配管内推進(1)

[2ステップパターン] 交互に押し出し → 高速な推進

2つ以上のアクチュエータを連結し,それぞれのアクチュエータに対して3

種類の動作を生成することで前進.

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: I-Motion :H-Motion : IH-Motion

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スライド・インチワーム運動による配管内推進(2)

[3ステップパターン] 順番に動作 → 安定した推進

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: I-Motion :H-Motion : IH-Motion

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50A(内径53 mm)配管内の推進実験

2ステップパターン:平均速度 100 mm/s

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垂直配管:平均速度 40 mm/s

ベンド管(曲管):平均速度 11 mm/s

従来配管検査ロボットに比べて飛躍的に高速な推進を実現

1周期あたりの推進距離や動作の高速化で更に高速推進が見込める

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アウトライン20

1. 研究の背景と目的

2. 配管内高速推進機構の提案2.1 柔軟空気圧アクチュエータの提案2.2 スライド・インチワーム運動による配管内推進

3. 廃炉作業における運用イメージ

4. 結論と今後の展望

Page 21: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

廃炉作業における運用イメージ 1

汚染配管の破損箇所の特定

小径配管・曲管内部を高速で点検

操縦者カメラによる破損状態の確認

原発設備や汚染水処理設備等に発生した配管破損箇所を特定.

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廃炉作業における運用イメージ 2

操縦者

小径配管からアクセス

姿勢の推定・湾曲生成による障害物の回避

配管内走行フェーズ格納容器内走行フェーズ

圧力容器

狭隘部や瓦礫内での調査作業

格納容器内部の調査格納容器に接続した配管より進入し,内部の破損状況や溶融燃料の状態を確認.

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アウトライン23

1. 研究の背景と目的

2. 配管内高速推進機構の提案2.1 柔軟空気圧アクチュエータの提案2.2 スライド・インチワーム運動による配管内推進

3. 廃炉作業における運用イメージ

4. 結論と今後の展望

Page 24: 空気圧アクチュエータを用いた 配管内高速推進ロボットの開発 · 兼ね備えた配管検査ロボットの開発 - 柔軟かつ高速な小径空気圧アクチュエータを開発

まとめ

- さらなる小径化 (<30 mm ) と走行性能の向上- 制御方法の確立と長尺化による速度低下の抑制- 耐久性・信頼性の向上- 配管外走行の検討

- 小径高速な空圧アクチュエータ- 保持力と押出し力を圧力差によりコントロール- 高い耐放射線性

- スライド・インチワーム運動による配管推進を実現- 1周期の推進距離が長く高速な運動動作- 水平:平均 100 mm/s,垂直:平均 40 mm/s,ベンド管通過可

本発表のまとめ

今後の展望

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内径53 mm水平配管(2ステップパターン)平均速度 100 mm/s

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内径53 mm垂直配管(3ステップパターン)平均速度 40 mm/s

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内径53 mm水平ベンド管(3ステップパターン)平均速度 11 mm/s