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復興だより Chugoku 特別号 平成30年7月豪雨からの 復旧・復興への歩み 被災地レポート 平成31年1月16日 中国経済産業局

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復興だより Chugoku特別号

平成30年7月豪雨からの 復旧・復興への歩み

被災地レポート

平成31年1月16日

中国経済産業局

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地域の人々の暮らしや経済に甚大な被害を及ぼした平成30年7月豪雨。

発災から約半年、復旧・復興に向けた各地の取組は、まだ緒に就いたばか

り。被災地域で形成された「中小企業等のグループ」の取組を支援する『中

小企業等グループ施設等復旧整備補助事業』をはじめとする、各種支援策を

活用して「わが町」の再興を期す、地域の姿を取材しレポートする。

目次

Chapter1 被災地域の取組

真備船穂商工会(岡山県倉敷市) ................................................... 1

井原商工会議所(岡山県井原市) ................................................... 2

高梁商工会議所(岡山県高梁市) ................................................... 3

岡山商工会議所(岡山県岡山市) ................................................... 4

三原臨空商工会(広島県三原市) ................................................... 5

呉広域商工会(広島県呉市) ......................................................... 6

呉商工会議所(広島県呉市) ......................................................... 7

東城町商工会(広島県庄原市) ...................................................... 8

Chapter2 被災事業者の取組

讃岐うどん かわはら(岡山県倉敷市) ................................................ 9

有限会社トップ(広島県呉市) ..................................................... 10

上野油業株式会社 セルフ真備 SS(岡山県倉敷市) ........................... 11

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Chapter3 自治体・支援機関の取組

岡山県グループ補助金受付センター .................................................. 12

広島県グループ補助金業務センター .................................................. 13

中小企業基盤整備機構中国本部復興支援室 岡山復興支援課 ................ 14

中国経済産業局産業部中小企業課復興推進室 .................................. 15

Chapter4 商店街の取組

総社商工会議所(岡山県総社市) ................................................ 16

備中西商工会矢掛地区(岡山県小田郡矢掛町) ............................... 17

横川商店街振興組合(広島市西区) ............................................. 18

総社商工会議所(岡山県総社市) ................................................ 19

広島市タカノ橋商店街振興組合(広島市中区) .................................. 20

協同組合落合ショッピングセンター(岡山県真庭市) ............................... 21

Chapter5 識者に聞く

株式会社 G サポート(広島市中区) ............................................... 22

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(商工会青年部の復旧作業の様子)

(吉備真備駅周辺の現在の様子)

真備船穂商工会(岡山県倉敷市)支援課 樋口 善久 課長

グループ名:竹のまち真備町復興グループ

●地域の被害は?小田川の支流が複数箇所で決壊し、浸水した地域では建屋の1階が完全に水没した。現在も真備町民の約4割が町外の仮設住宅などに避難している。被災直後は商工会の会員企業の殆どと連絡が取れず、現在も連絡が取れない企業がある。商工会本部も被災し、現在は以前使用していた旧会館を仮事務所として業務を継続している。また、県青年部連合会などの協力のもと、被災後速やかに重機や車両等の提供をいただき被災事業者の復旧支援をおこなった。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会の取組など真備町は岡山県内一のタケノコの産地。このため、竹のまち真備町を復興したといとの思いからグループ名を決めた。地域全体が一丸となって取り組むことが重要とのことから当初130もの事業者でグループを形成した(12月上旬現在で204者となっている)。復興事業計画では、飲食業・小売業・製造業などの様々な事業者が一丸となって取り組むことで地域への波及も大きいことから、2019年12月に「真備船穂復興商工まつり」を開催することを目指して取り組んでいる。商工会主催で毎月開催している朝市は、被災後中止していたが、少しでも地域を盛り上げるため2019年1月から再開する。また、被災後の真備町内で創業したいとの相談も受けており、新たな動きとして注目している。

●復興に向けた思い・意気込み今回の豪雨災害では、復旧・復興に相当な時間がかかると思う。商工会としても、限られたマンパワーではあるが、他の支援機関などと協力しながら、当面は復旧・復興への取組に注力したい。被災した事業者が事業再開したことを契機として町民が元の場所に戻ってくることを願っている。

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.11.21取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

井原商工会議所(岡山県井原市)中小企業相談所 佐藤 須賀則 所長

グループ名:井原市産業復興グループ

●地域の被害は?井原商工会議所管内は、倉敷市真備地区で大規模な浸水をもたらした小田川の上流域にあたり、今回の豪雨では、小田川に通じる用水路が1m程度オーバーフローするなど過去最大の浸水となった。このため、約80の事業所で設備など何らか直接的な被害があった。浸水が引いた翌日から被害状況の調査を実施した。中には、工場は無事でも車両が浸水地域で被災したことが後日判明した事例もあった。また、発災後20数社が一時操業を停止した。被災した部品メーカーでは、納品前の組み立てロボットが浸水し被災前の生産水準に戻っておらず、デニム加工メーカーでは、設備やデニム原反が浸水し、復旧には相当の時間がかかるところがある。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会議所の取組など井原商工会議所では、豪雨被害による相談窓口を設置し、他の商工会議所等から派遣された職員の応援をいただきながら、補助金や融資の相談に対応した。グループ補助金の前提となるグループの組成では、今回のような大規模災害は個社での対応に限界があるため、連携して取り組むことによる相乗効果を期待し、井原商工会議所が旗振り役となってとりまとめた。復興事業計画では、今回の豪雨災害を踏まえ、事業者のBCP(事業継続計画)策定に向けてのセミナー開催等に取り組む。例えば、被災した部品メーカーでは、従来から浸水対策として、過去の浸水による水位を明示し、入り口に止水板を準備するなどしていたが、想定を超える浸水で被害の拡大を招いた。また、隣接する小田川の堤防には行政が排水ポンプを設置していたが、電源の位置が低かったため浸水して使用できなかった。このように、対策を講じていても被災した状況などを踏まえ、先ずは浸水被害の原因やそのメカニズムについて理解するために専門家を招聘して取り組むこととしている。

●復興に向けた思い・意気込み有名デザイナーから、「浸水したジーンズ生地を活用して被災地支援をしたい」との申し出があったため、どの様な支援をいただけるか被災した事業者とも協議している。また、井原市では、独自支援策として被災事業者再建のための補助制度を創設いただいた。これらの支援や、井原商工会議所としての従来から取り組んでいる伴走型支援などを通じて、地域の復旧・復興に取り組んでいきたい。

(浸水被害を受けたデニム原反)

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.11.30取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(被災した市内の様子)

高梁商工会議所(岡山県高梁市)中小企業相談所長 兼 経営支援課長 山本 圭三 氏

グループ名:高梁商工会議所復興グループ

●地域の被害は?高梁商工会議所の管内では発災後の調査により、当商工会議所の会員企業をはじめ約150件の商工被害報告があった。特にJR備中広瀬駅周辺の地域では住宅団地が高梁川のはん濫により全て浸水した。また、成羽川と高梁川との合流地点では運送会社の建屋が流されるなど大きな被害が発生した。また、上水道関連の施設の被害により、約10日間の断水が発生し事業者への影響を及ぼした。現在、被災した事業者の殆どが同じ場所で事業再開をしている。観光客数は、豪雨後前年比で約7割減少したが、現在は備中松山城の雲海がシーズンの到来

もあってかなり回復してきている。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会議所の取組など高梁商工会議所では、被災した会員企業に対する支援金をとりまとめ、1社あたり最大15万円を支給し大変喜ばれた。復興事業計画のグループ形成では、国や自治体とも協議し、被災した事業者を広くとりまとめるため高梁商工会議所主体で取り組んだ。計画は、BCP策定とJR高梁駅周辺及び駅前通りの清掃・美化活動(クリーン作戦)に取り組むこととしている。BCP策定では、今回の豪雨災害を踏まえ、事業者での危機管理の継続した取組が重要であり、現在専門家を選定中である。クリーン作戦では、清掃・美化活動により地域のイメージアップを図ることで観光客や交流人口の増加に繋げるとともに、地域住民を巻き込むことにより地域活性化の気運を高めることを狙ったもので、今後具体的な取組内容を検討していく。

●復興に向けた思い・意気込み被災した事業者には、支援機関の専門家派遣などにより継続したフォローが必要であり、今後は中小機構の「復興支援アドバイザー」の活用を検討したいと思う。被害の大きかったJR備中広瀬駅近くの住宅団地には、若い世代を中心に入居していた。被災後は避難して空き家の状態のため、今後、住民が戻ってくるための支援策が重要ではないかと考える。このまま住民が戻ってこないと地域の人口減少が進み、飲食業や小売業など地域の事業者への影響が懸念される。当面はグループ補助金を活用して被災した事業者の復旧支援に注力し、被災前の賑わいを取り戻したい。

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.12.4取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(グループ補助金の説明会の様子)

岡山商工会議所(岡山県岡山市)理事 中小企業支援部長 須々木 敏彦 氏)

グループ名:岡山商工会議所復興グループ

●地域の被害は?岡山県商工会議所連合会の7月豪雨による被害のとりまとめでは、岡山県内の12の商工会議所で759件超の被害件数、169億円超の被害金額を確認している。商工会議所毎では、特に高梁川流域沿いの高梁・井原・総社・笠岡の各商工会議所管内における被害が大きい。これらの地域では、予定されていた花火大会や祭りなどのイベントも中止となった。岡山商工会議所の管轄内では、西部エリアと東部エリアの用水路のオーバーフローによる浸水被害があった。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会議所の取組など岡山県商工会議所連合会が把握したところでは、被災した事業者の約半分が操業を停止、現在は大半の事業者が操業を再開した。各商工会議所では、発災後、すぐに被害状況の調査を実施し、「特別相談窓口」を設置した。被災された事業者から、資金繰りや補助金など全体で4千件を超える相談に対応した。岡山県商工会議所連合会としても「災害対策会議」を随時開催し、各商工会議所からの被害状況や懸案事項などを情報交換し、必要に応じて事業者への支援活動に反映している。また、被害の大きかった商工会議所へは日本商工会議所を通じて県内の他の商工会議所から経営指導員等の派遣応援を行っている。さらに、自治体からの罹災証明の発行情報を活用し、被災した事業者の全体把握に取り組んでいるが、この取組が商工会議所主体のグループ補助金のグループ組成と持続化補助金等の支援に大いに役立った。岡山商工会議所が代表者である復興事業計画では、BCP策定に取り組むこととした。その際、中小企業支援等の包括協定を締結している損害保険会社の協力を得ながら取り組んでいく。また、地域防災マニュアルの策定や災害保険の利用促進などにも取り組むこととし、管内を5つの地域に分けて具体的な検討を進めていく。

●復興に向けた思い・意気込み岡山商工会議所では、①直接・間接の被害にあった企業への復旧支援、②事業停止により振り替え外注した仕事を取り戻するための取組み支援、③資金繰りの支援、④復興事業計画の実施の4つを着実に取組むことが最優先と考えている。各種支援策を活用して、1日でも早い復旧・復興ができるよう取り組みたい。

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.12.3取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(復興祈願祭の看板)

三原臨空商工会(広島県三原市)経営支援課 藤井 忠昭 課長

グループ名:オール三原 復興プロジェクト

●地域の被害は?沼田川の支流が複数箇所で決壊し、決壊した周辺では広範囲に浸水したことで甚大な被害が出た。三原市内では約200の事業者が直接被害を受けた。被災した事業者のほとんどは事業を再開しているが、事業者によっては再開しても取引先が被災しているため事業規模を縮小しているところもある。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会の取組などグループ名に象徴される「オール三原」のとおり、当商工会エリアだけでなく三原市内全域の様々な事業者に加わってもらってグループを形成している。今回の災害では地域内の事業者が一丸となって取り組まないと乗り越えられないとの思いがある。復興事業計画では、被災地域を明るくすることが地域活性化に繋がるとの思いから、取組の1つとして豪雨の影響で延期されていた三原の風物詩である「三原やっさ祭り」を復興祈願祭と位置づけて、平成30年11月3日・4日に「三原臨空商工まつり」と「三原浮城まつり」と同時開催し、約30万人の観光客で大いに盛り上がった。来年も継続して取り組んでいきたい。また、当商工会では、復興事業計画のほか、外国人材活用の取組など、地元の事業者に対する支援にも取り組んでいるところ。

●復興に向けた思い・意気込み今回の豪雨災害では、復旧・復興に相当な時間を費やすと思うので、継続した支援が大事と考える。当商工会としても、自治体などの関係機関と連携しつつ、復興事業計画などの様々な取組を通じて地域の活性化に貢献したい。5年後に地域の人たちが疲弊せず、今回の豪雨災害の思い出を語れるぐらい地域が回復してくれることを願っている。

(被災した工場の様子)

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.11.15取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

呉広域商工会(広島県呉市)盛池 尚教 事務局長経営支援課(安浦支所) 西野 正治 主任

グループ名:呉広域商工会「こと・ひと・もの」づくり復興プロジェクト

●地域の被害は?安浦支所がある地域は低地部のため、豪雨による野呂川を中心とした川の氾濫により、安浦駅周辺では3日間も水が引かず、道路や情報も寸断され、他地域と比べて復旧に時間を要した。呉広域商工会の安浦支所は浸水、川尻本所も数日間電話やネットが使えず、職員も通勤困難な状況が続いたため、約1週間は本所機能を音戸支所に移して事業者支援に注力した。商工会会員企業の約200社が被害を受け、その半数が安浦支所管轄内の事業者であった。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会の取組など周辺の道路も寸断され救援が滞っている中、商工会青年部を中心としてボランティアで復旧作業にあたった。安浦支所は7月13日に業務を再開。被災事業所の状況を早期に把握するため、事務局長以下職員総出で会員事業所を巡回し、被災状況の聞き取りを行った。また、少しでも被災者に元気をという思いから、商工会独自の取組として会員企業へ募金をお願いし、被災した会員企業へ見舞金を配布した。現在は各支所に特別相談窓口を設置し、自治体や他の支援機関の応援をいただきながら資金繰り、グループ補助金、持続化補助金などの相談に対応している。この結果、被災した事業者の内、約9割が事業再開を果たしており、被災前の状態に戻るよう取り組んでいる。グループ補助金では、商工会が中心となって呉市内の100者の事業者でグループを組成した。復興事業計画では、グループ名を『呉広域商工会「こと・ひと・もの」づくり復興プロジェクト』とし、イベント開催、事業継続のための人材育成等の支援及び観光マップ作成等による情報発信に取り組むこととしている。被災した事業者の大半は、事業再開でマンパワーが足りないなどフォローが必要なため、当面はグループ補助金や持続化補助金に関する支援に注力する。

●復興に向けた思い・意気込み今回の豪雨災害では、地元の大手スーパーが店舗再開を断念したことで地域への影響が懸念される。また、安浦で毎年11月に開催される祭りは、被災した事業者に配慮し中止になったが、地元に元気を取り戻したいという思いが強く、2月2日(土)に「安浦ゆめ花火大会」が開催されることとなった。商工会としても、地域全体が活性化することが重要と認識しているので、全力で復興支援に取り組みたい。

(浸水した安浦支所周辺の様子)

写真左:盛池事務局長写真右:西野主任

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.11.27取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(被災した事業所の様子)

呉商工会議所(広島県呉市)中野 正氣 専務理事中小企業相談部相談課 上福浦 安幸 課長

グループ名:呉商工会議所産業活力復興グループ

●地域の被害は?豪雨により呉市内の各所で土砂崩れや浸水が発生。呉市内に通じる主要道路のクレアラインをはじめ、国道31号線、国道375号線及び国道185号線の各所で通行止めとなりJR呉線も不通となった。呉商工会議所管内では、特に、天応地区の住宅地の災害が大きく、また、広範囲のエリアで断水も発生。交通網の寸断による物流が停滞したことから、幅広い業種で生産活動が滞り、消費も停滞した。観光面では、交通インフラの途絶、断水、自粛ムードなど影響し、観光客は激減した。各種イベントも軒並み中止になり、大和ミュージアムの観光施設では、7月の前年同月比で約8割の客数の落ち込む事態となった。現在、被災した事業者のほとんどが事業再開しているものの被災前の売上げの水準には戻っていないところもある。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会議所の取組など呉商工会議所では、発災後、特別相談窓口を設置。融資や補助金等、多数の相談に対応。企業への被害状況の聞き取りやアンケート調査も実施。地元企業に対しては、渋滞緩和のための車両の相乗りや、時差出勤の周知、社宅提供などを要請。呉市や地元金融機関とも連携し「グループ補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などの被災支援策の広報や活用支援を行った。グループ補助金の交付を受けるため、呉商工会議所で「呉商工会議所産業活力復興グループ」を組成。同地域に地元の金融機関や商工会が組成したグループも存在し、被災した事業者の取りこぼしがないよう連携を図った。当グループの復興事業計画は、リスク対策の対応力の必要性をあらためて認識してもらうため、企業の共通の課題であるBCPの策定をテーマとして選択した。11月20日には専門家を招いて「中小企業のためのBCPの作り方セミナー」を開催。平成31年4月までに構成員各自が、BCPを策定し導入を目指している。さらに、それぞれが地域の事業者へBCPの重要性について情報発信していくことで、緊急時における産業活力の早期復活を高めて行くことを計画している。

●復興に向けた思い・意気込み現在、当所の会頭が呉市の「復興計画検討委員会」に委員として参画しており、この委員会等を通じて、地域活性化の復旧・復興支援に取り組みたい。被災現場に入ると、あまりの被害の甚大さに未だに心が痛む。被災した事業者に寄り添った復旧・復興の支援への取り組みを続けて行きたい。

写真左:中野専務理事写真右:上福浦課長

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.12.5取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

(歳末抽選会の様子)

東城町商工会(広島県庄原市)後藤 茂行 会長

グループ名:備後東城有栖川流域復興プロジェクト●地域の被害は?東城地域の中心を流れる成羽川が大雨による増水でオーバーフローし、その両岸の周辺地域で浸水するとともに、土砂崩れなども発生した。結果、東城町商工会会員企業のうち約40社が床上浸水等の被害に遭った。東城町商工会では、水が引いた7月7日から、直ちに会員事業者の被災状況の確認にあたった。また、復旧活動に従事するボランティアの休憩場所を確保し、活動時に利用してもらうためのマスク、タオルや飲料等の確保や提供にもあたった。

●グループの強み・復興事業計画のポイント・商工会の取組など東城町商工会では、被災事業者を支援するため、義援金の募金を広く呼びかけたところ13百万を超える義援金が集まった。また、グループ補助金の活用にあたっては、個々の事業者の対応に限界があるため商工会としてグループを立ち上げることにした。8月上旬に地元で国の支援パッケージの説明会を開催した際、参加した被災事業者から「自分は関係ない」との声を聞いた。このため、被災事業者を個別に訪問し、グループ補助金の必要性を説いて回った。このことがグループ組成に大きく影響した。復興事業計画に基づき、12月に商店街の歳末抽選会を開催した。今回は、市や消防署と連携してハザードマップの配布や防災写真展を開催し、市民の防災意識を高める取組みを行った。今後、BCP策定による緊急時への対応にも取り組む予定である。また、商店街にぎわい創出事業を活用した「がんばろう東城!復興イベント」として10月29日は「長尾隼人没後400年記念行事」、11月4日は「備後お通り」を開催し、約1.7万人が来場して大いに賑わった。さらに、東城町商工会では、地域商業自立促進事業を活用して「地域しあわせ循環型ICカード整備事業」を実施している。具体的には、東城町内の地域通貨として電子マネー機能付きICカード「ほ・ろ・か」を来年4月から導入する。アプリをダウンロードすればスマートフォンでも利用が可能となる。また、ポイントを発行して平素の買い物のみならずオンラインショップ「東城ショッピングモール(仮称)」で利用することも出来る。このアプリを観光客に使ってもらうことで東城町内での買い物やオンラインショップで使ってもらうことを考えている。オンラインショップでは、ふるさと納税とも連携し、納税金額に応じたポイントを付与して、ICカードのポイントとして利用してもらうことも考えている。こうした取組が相互に連携して、東城町での観光客の周遊の促進や農産品の販路拡大など災害からの復興や地域活性化に寄与していくと考えている。

●復興に向けた思い・意気込みグループ補助金では、地域のために取り組むことが必要との使命感から、グループ組成は当初から商工会主体で取り組んだ。現在、地元の若い人により飲食店を創業する等新たな動きが見受けられる。今後、帝釈峡等への観光客を東城のまちなかへ呼び込む等の取組みを推進すると、飲食の場所や宿泊施設などハード面での取組も重要になると考える。関係者が地域活性化のための知恵を出し合って、それを具体化するための事業や支援策に取り組んでいきたい。

(ICカード「ほ・ろ・か」)

被災地域の取組 Chapter1

(‘18.12.15取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

讃岐うどん かわはら(岡山県倉敷市)店主 川原 幸男 氏

「讃岐うどん かわはら」は、創業から25周年の地元で人気の手打ちうどんのお店。豪雨災害から約3ヶ月で営業再開を果たした。

●被災等の状況は?小田川の支流の決壊により、お店の2階の床下まで浸水したため、厨房設備や備品など全てが駄目になった。自宅も被災したが、被災後1週間で店内を清掃、店内の改装では業者の素早い対応にも助けられ、同じ場所で10月7日に営業を再開した。特に厨房設備の中でも「ゆで釜」は特注品であったため、業者には当初「いつできるかわかない」と断られたが、地元のため早く再開したいとの思いを説明したところ、急いで対応してくれたことが一番大きい。

●復旧の現状など営業再開の資金調達では、セーフティネット保証制度を活用して当座の資金を確保するとともに、グループ補助金や持続化補助金を活用して店内改装や厨房設備の購入費用に充当する予定。営業再開後は、周辺に飲食店が無いことから、結果として被災前よりも多くのお客さんが来店する。お店は夫婦2人で切り盛りしていて大変だが、夜の飲み会も開催したいとの地元の声を受けて対応している。また、お店を助けるため三男が地元の復興を願って復興Tシャツを作ってくれた。今年(平成30年)は創業25年の節目に当たるため、営業再開を果たせたことは意味があることと考えている。10月27日には、地元の金融機関が主催して、お店の前の駐車場で復興イベントが開催され、当店も参加してうどんを振る舞ったところ大いに賑わった。

●復興に向けた思い・意気込み現在もお店の周りの建物の大半は空き家なので、夜になると明かりがないので真っ暗になる。被災前は娘がいる東京へ引っ越して営業することも考えたが、被災後馴染みの客さんなど多くの方から「いつ再開するのか」と聞かれて、地元に恩返しするため同じ場所で営業を再開することを決意した。お店の周りなど真備町内が被災前の日常を取り戻せることを信じてお店を続けて行きたい。

(被災した店内の様子)

(現在の店舗の様子)

被災事業者の取組 Chapter2

(‘18.11.21取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

有限会社トップ(広島県呉市)代表取締役 桑原 賢治 氏

㈲トップは、自動車部品を製造している会社。主力製品であるエンジンキーやスイッチ類は年々売上高が減少傾向なため、新たな取引先開拓に注力している。

●被災の等の状況は?7月6日に呉市の天応地区の取引先へ商品を納入するため出かけていたところ、豪雨による通行止めでやむを得ず呉市内で1泊、翌日帰社すると工場全体が床上浸水していた。幸いにも製造設備・電気系統の異常や停電もなかったことから、約2日間かけて工場内の最低限の片付けをして、従業員も何とか出社できたので工場を稼働した。特に、工場内の製造設備の電源周りは床からある程度離れた高さに設置していたことが良かった。

●復旧の現状など工場を稼働しながら9月までには工場内の片付けに目処がついた。現在、取引先にも応援をいただきながら被災前と変わらず仕事の発注をいただいている。一方、工場から取引先へ通じる主要道路は現在も寸断されているため、通常の大型トラックでの輸送が行えず、小型のトラックで道路幅の狭い迂回路を通って輸送しているため時間的・経費的に負担が増えている。被災前から主力製品であるエンジンキーやスイッチ類の生産が減少していたため、経済産業省の現地調査の際に提案いただいた事業承継補助金や持続化補助金を活用して新事業分野への開拓(大型製造設備の部品製造等)を目指して新たな設備を導入するとともに、グループ補助金は被災した車両等の購入に充てる。また、地元の商工会の協力を得ながら、経営改善に向けて経営革新計画の申請にも取り組んでいる。

●復興に向けた思い・意気込み約1年前に先代社長が亡くなって、当時は事業承継に悩んだが、その時に事業を引き継ぐことを決めた思いが、今回の豪雨災害に際しても事業再開の原動力になったと思う。被災直後の工場内で最初に明かりのスイッチを入れて灯ったことで何とかやっていけると勇気がわいたことを今でも覚えている。雇用を維持するためにも会社を終わらせることは出来ないので、行政の支援策等を積極的に活用し、事業の継続・発展に取り組んでいきたい。(工場内の現在の様子)

被災事業者の取組 Chapter2

(‘18.11.27取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

上野油業株式会社 セルフ真備SS(岡山県倉敷市)常務取締役 楠田 淳治 氏取締役ガス事業部長 上野 洋輔 氏セルフ真備所長 藤田 直親 氏

倉敷市市内を中心に、里庄、井原、矢掛など岡山県内に10店舗のサービス・ステーションを展開するほか、玉島、里庄の営業所ではプロパンガスを供給。7月豪雨では、「セルフ真備SS(倉敷市真備町)」が被災。

●被災の等の状況は?7月7日早朝、末政川が決壊し川辺地区に避難指示が出ていたが、真備サービス・ステーション付近はそれほど水が来ていなかったため、朝7時に通常どおりオープンした。その後、1時間ほどすると、見る見るうちに水が押し寄せ、辺り一面、浸水し始めた。幸いにも、オープン直後で利用客もいなかったため、すぐに店舗を閉鎖し、自家用車も置いたまま、所長・スタッフとも自宅に退避した。2日後、状況確認のため社長らと現場に入った。事務所を含め敷地全面が冠水し、POS、計量機や洗車機などの設備損傷で、とても営業できる状況にはなく、どこから手をつけていいのかわからない状況だった。浸水は最大で3.5メートル程度の高さまで達していたようだが、地下の貯蔵タンクに通じる通気口までは達していなかったのはせめてもの救い。被災した当サービス・ステーションは、平成26年3月にオープンした、当社で最も新しいSSだった。

●復旧の現状など社をあげて、土砂のかき出し作業や電気・水道・電話等ライフラインの復旧にあたり、被災した主要設備の更新が済んだ後、8月末には営業時間を短縮して、何とか再開にこぎ着けた。客足は被災前の3~4割程度に留まった。9月から通常営業に戻したが、それでも6割がやっと。以降、徐々に戻りつつあるが、11月の段階でもまだ被災前の水準までは戻っていない。住宅再建など地域で復旧作業が本格化するにつれて重機への供給のため軽油販売が増えるなど、販売状況に変化もみられる。被災した計量機やPOSについては、岡山県石油商業協同組合から紹介してもらった「石油等製品販売業早期復旧支援事業」を活用し、入れ替え・修理を行っている。事務所周りや計量機の一部については、損害保険で補償対象になった。

●復興に向けた思い・意気込み今回の災害では、幸いにして従業員に人的被害は出なかったが、緊急時にも従業員一人ひとりが適切に行動できるよう基本方針の共有や、従業員の安否確認・安全確保や事業所の稼働状況の連絡体制の仕組みなど、災害発生時の初動対応の重要性を改めて認識した。少しでも地域住民の助けになれればという思いで事業所の早期復旧に努めたが、被災後は自家用車の数が目に見えて少なくなっている。多くの地域住民が避難生活を余儀なくされ、夜も明かりが少ない状況が続いている。川辺地区にあった他社のSSはまだ事業再開していないこともあり、当地区唯一のSSとして、これからも地域住民に支持されるよう生活再建を後押しし、地域の復興にも貢献していきたい。

(真備SSの現在の様子)

左:藤田所長、中:楠田常務取締役、右:上野部長

被災事業者の取組 Chapter2

(‘18.11.16取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

岡山県産業労働部事業者復興支援室 沼本 具德 室長(岡山県岡山市)

●現状の取組や課題・今後の予定など平成30年7月豪雨により、岡山県内では多くの中小事業者等が被災し、発災直後から相談窓口の設置や戸別訪問により、被災状況の把握、支援策の説明に努めてきた。これまでに岡山県では、グループ補助金の交付の前提となる「復興事業計画」を17グループ、構成員数369者を認定した(11月30日現在)。この「復興事業計画」の認定やグループ補助金の受付・審査等の事務を行うため、9月25日に「岡山県グループ補助金受付センター」を開設した。センターでは、県職員等からなる総勢23名で対応している。また、県主催でグループ補助金の申請に係る説明会を行うとともに、地元の商工会・商工会議所等の依頼を受けて各地域での説明会や個別相談会にも出向き、補助金申請の具体的な内容や方法等の周知に取り組んでいる。被災した中小事業者等の多くは今まで補助金を活用したことがないため、商工会・商工会議所など地元の支援機関のフォローが重要だ。また、国や県、中小機構の専門家派遣制度等を積極的に活用することも必要と考えている。

●復興に向けた思い・意気込み当面は、受付けたグループ補助金の申請を速やかに交付決定出来るよう取り組んでいく。また、グループ補助金は、被災した中小事業者等の復旧のための支援であり、その後の事業継続への支援も重要と考えている。被災した事業者の方が、復旧・復興を目指す「こころ」が折れないよう、オール岡山で丁寧できめ細かい対応に心がけ、支援してまいりたい。

(岡山県グループ補助金受付センター)

自治体の取組 Chapter3

(岡山県グループ補助金受付センター内の様子)

(‘18.12.4取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

広島県商工労働局 中小企業等復興支援プロジェクト・チーム増廣 浩二 参事(復興企画マネージャー)(広島県広島市)

●復興に向けた思い・意気込み復興事業計画に参画する事業者は、グループ補助金を活用して事業再開を目指しているが、事業者によってはグループ補助金を活用せず復興事業計画の内容に賛同して自主的に参画しているケースもある。このような参画を通じて地域の絆が強まり、復旧・復興の原動力に繋がると期待している。被害のあった事業者の大半は既に事業を再開しているが、被災前の状態までの回復にまでは至っておらず、グループ補助金の支援を通じて、全力で復旧・復興に取り組みたい。

●現状の取組や課題・今後の予定など広島県では、8月のアンケート調査により、直接被害のあった事業者数が約9千者、直接・間接の被害額は約43百億円に達するとの想定となった。これを踏まえ、被災地域への支援策に係る説明会の開催などにより、グループ補助金の交付の前提となる「復興事業計画」を48グループ、構成員数971者を認定した(12月25日現在)。この「復興事業計画」の認定やグループ補助金の受付・審査等を執行するため、10月22日に「広島県グループ補助金業務センター」を開設し、県職員等総勢22名で業務を遂行している。被災した事業者の多くは補助金を活用したことがないため、開設当初はグループ補助金の制度全般への問合せが多く寄せられた。そこで、市町や商工会・商工会議所等と連携し、県内各地でグループ補助金の申請に関する説明会を開催し、周知に努めている。被災事業者のグループ認定や交付決定の具体的な補助金手続きが進み始めたことから,より浸透が進み現在でもグループ補助金などの支援策を知って初めて問い合わせる事業者もいる。このため、今後、被災した事業者へ支援策が行き届かなかったことがないよう市町や支援機関と連携して、一層の周知活動に取り組む予定である。

(広島県グループ補助金業務センター)

自治体の取組 Chapter3

(広島県グループ補助金業務センター内の様子)

(‘18.12.19取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

●復興に向けた思い・意気込み被災した中小企業者等の多くは補助金申請の経験が無い。また、限られたマンパワーで取り組んでいる地元の商工会・商工会議所からは、継続した支援を望む声が挙がっているので、「復興支援アドバイザー」の活用をより積極的に周知したい。こうした取組により、被災された中小企業者等の事業再開やその後の事業継続に向けた支援を展開し、地域の復旧・復興に少しでも貢献していきたい。

●現状の取組や課題・今後の予定など中小機構中国本部では、平成30年7月豪雨を受けて、8月以降、自治体や地元の商工会・商工会議所が主催する中小事業者等に対する支援策の説明会や個別相談会等に50回以上(平成30年12月時点)出向いて、「復興支援アドバイザー」によるグループ補助金に関してのグループ組成や復興事業計画の策定などの支援を行っている。そんな中、岡山県内で被災された中小企業・小規模事業者の事業再開・復興を支援するため、10月1日には岡山大インキュベータ内に「岡山復興支援課」を設置した。業務としては、主に被災された中小企業者等に対して「復興支援アドバイザー」を無料で派遣している。具体的には、グループ補助金等を活用して復旧・復興しようとしている中小企業者等に対して、経営や財務等の様々な分野の専門家を無料で派遣し、地元の商工会・商工会議所とも連携し、復旧・復興計画の作成やグループ補助金の活用策のアドバイスなどを行っている。また、自治体や商工会・商工会議所等の支援機関へ定期的に訪問することにより、相互の支援内容の情報共有やニーズ把握を行うなど連携を密に図っている。

(独)中小企業基盤整備機構中国本部復興支援室 岡山復興支援課 石田 悟 課長(岡山県岡山市)

(中小機構中国本部岡山復興支援課が入居する岡山大インキュベータ)

※左から杉原課長代理、石田課長

支援機関の取組 Chapter3

(‘18.12.3取材)

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平成30年7月豪雨からの復旧・復興への歩み

中国経済産業局 産業部 中小企業課復興推進室 中村 崇 室長(広島県広島市)

●復興に向けた思い・意気込み発災直後、倉敷市真備地区の避難所でクーラー設置等の物資調達の業務に従事した。この経験を通じて、被災された方が元の生活に1日でも早く戻られるよう支援活動を継続することが何より必要であると思っている。復興推進室では、『被災された事業者の皆さんに「寄り添い」、局内外の関係者としっかり「連携」し、そして被災地の復興に向けて「志高く」』を心構えとしている。今後とも、この心構えを室員一同が胸に刻みながら、日々の業務に取り組んでまいりたい。

●現状の取組や課題・今後の予定など復興推進室は、平成30年7月豪雨により被災された中小企業等の復旧支援策である「グループ補助金」の国側の審査や県への交付決定等の事務を行っている。交付決定にあたっては審査会による審査を行っているが、迅速に補助金を交付できるよう現在、審査会は2週間毎に開催している。また、被災事業者への補助金を交付する岡山県、広島県からの問い合わせや中小企業庁との調整等にもあたり、補助事業を適正に執行すべく日々対応している。一方で、被災された事業者の中には、慣れない補助金の申請に苦慮されている方も数多い。そこで、商工会・商工会議所等を通じてよろず支援拠点や中小機構の復興支援アドバイザー派遣制度の活用を促している。他にも、小規模事業者が事業再建に取り組むにあたり、商工会・商工会議所の支援を受けて経営計画を作成し、その計画に沿って取り組む際の事業費を補助する「小規模事業者持続化補助金」がある。被災された事業者の実情に応じて、支援制度を有効に活用いただくことが何よりも重要であることから、あらゆる機会を通じて支援施策の浸透を図りたい。

(復興推進室の執務室の様子)

支援機関の取組 Chapter3

(‘19.1.4取材)

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『パンわーるど総社』 総社がパンで熱くなる 岡山県内一のパンの製造出荷

額を誇り、人気のパン店も多い

という「パンの街」総社。パン

文化が根付く街で行われるパン・イベント「パンわ

ーるど総社」のため、メインとなるプレミアム・イ

ベントが開催される国民宿舎サンロード吉備路(総

社市三須)を訪ねた。

事業のスタートから2周年、日本記念日協会の認

定を受けた「パンわ

ーるどの日」制定か

ら1周年の記念事業

となる今回は、7月

豪雨災害からの復興

に向けて、地域の元

気を創出しようと総

社商工会議所が実施

した。

「7、8月はとに

かく生活再建や復旧

に向けての活動に全

力を注いだこともあ

り、イベントは軒並み中止・延期せざるをえなかっ

た」と振り返る総社商工会議所の平田 洋之指導課

長。地域の経済活動も落ち込む中で、「復興に向け

た明るい話題を」と本イベント開催を決めたとい

う。

「総社パンマルシェ」と銘打つ、限定100名の

プレミアム・イベント。競争率4倍を勝ち抜いた参

加者は、遠くは香川や広島からも。会場は、イベン

ト参加9店の自慢のパンの食べ比べ、ゲスト出演の

嘉門タツオさんのステージでは、軽妙なトークや鉄

板の替え歌ネタに

加え、オリジナル

のご当地パン・ソ

ングの初披露な

ど、ライブで盛り上がる。

7月豪雨で従業員や主要な顧客層に大きな影響を

受けた地域のパン店。今年で創業 90 年の老舗パン店

の店主は「徐々に客足も戻りつつある。多くの人に

イベントを楽しんでほし

い。こうした取組を通じ

て他店との繋がりができ

たこともありがたい」と

話す。主催者としてイベ

ント会場内を忙しく駆け

回った平田

課長は「こ

れからも復

興に向け、

全力で取り

組みたい。

復興の歩み

を広くアピールし、被災前よりも活性化した総社に

したい」と力強く語った。(’ 18.11.11 取材 )

総社商工会議所(岡山県総社市)

復興だより Chugoku 特集レポート 商店街は、いま。

岡山県・広島県全域の商店街を対象に、平成 30 年 7 月豪雨により被害を受けた商店街等が行

うイベント等、にぎわい創出のための取組を支援する『商店街にぎわい創出事業』。各地の商

店街の取組をレポートした。

1)会場入り口には、「復興

に向けてがんばろう 総社・

真備」の応援ボード 2)盛

り上がるライブステージ

3~4)各店自慢のパンを堪

能する参加者 5)法被姿の

総社商工会議所の平田さん

4 3

Chapter 4

16

Page 20: 復興だより Chugoku 特別号...復興だより Chugoku特別号 平成30年7月豪雨からの 復旧・復興への歩み 被災地レポート 平成31年1月16日 中国経済産業局

『矢掛の宿場まつり 大名行列』秋の一日、壮大な歴史絵巻を堪能 7月の豪雨で小田川の堤防が決壊し、広範囲で浸

水被害があった矢掛町。倉敷市真備町地区を走る井

原鉄道も約2ヶ月全線が運休となったが、9月から

全線復旧。運行が再開された井原鉄道で、矢掛に向

かった。矢掛駅の南方に位置、東

西900メートルに延びる矢掛商

店街を舞台に、11月11日、

「第43回矢掛の宿場まつり大名

行列」が開催され、約3万5千人

の見物客が沿道を埋め尽くす中、

往時の姿を再現し華やかな衣装を

身にまとった約80人の演者が優

雅に練り歩いた。

江戸時代には旧山陽道の宿場町

として、参勤交代の大名行列をは

じめ多くの人々が往来する、人や

物資の交流拠点として栄えた矢掛

町。近年は、こうした歴史的背景

を活かして、国指定の重要文化財となっている本

陣・脇本陣を核とした宿場町の街並みや、古民家を

活用した観光事業の展開により、観光客や買い物客

も増え、新規開業店舗も出てきているという。

矢掛町の大名行列は、1976年の台風17号に

よって大きな被害を受けた街に活気を取り戻そう

と、商工会の青年部有志が中心となり企画したのが

始まり。42年後の今年、7月の西日本豪雨によっ

て町内は広範囲で浸水し、企業、商店なども被害を

受けたが、実行委員メンバーが「原点に戻り、町の

復興に向けた機運を盛り上げよう」と開催に向け準

備を進めた。備中西商工会 経営指導員の中山 真

吾さんは「災害の影響もあり、演者や財源の確保に

苦労したが、何とか開催にこぎ着けた」と振り返

る。行列には、選考会により選ばれた姫君役・奥方

役のほか、町内企業や個人からも参加者を募り、最

近では町内に在住・勤務する外国人の姿も多く見ら

れるようになった。

「自分も親子三代

にわたって大名行列

に参加してきた」と

語るのは、備中西商

工会の堀 伸二矢掛

地区代表理事。今回、実行委員長として関わる初め

ての祭りに「先輩方から脈々と受け継がれてきた大

名行列。これからも町の復興への歩みとともに、全

国に知ってもらえるようがんばりたい」と話す。

「明日、地域づくりの取組で表彰式に出席するた

め、東京へ行く」という堀実行委員長。創意と工夫

を活かした個性的な地域づくりに顕著な功績があっ

た団体を表彰する、国土交通省の平成30年度「地

域づくり表彰」。全国で8つの団体が選ばれた。表

彰式において各賞が発表され、「矢掛の宿場まつり

大名行列実行委員会」は、「地域づくり表彰審査会

特別賞」を受賞した。(’18.11.11 取材)

備中西商工会矢掛地区(岡山県小田郡矢掛町)

2 3

Chapter 4

17

1~4)復興を願い、華やかな

衣装で練り歩く演者の皆さん

5)左から 実行委員長の堀さ

んと備中西商工会の中山さん

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『横川えびすはしご酒 2018』 平日夜も賑やかに 11月19、

20日の両日、

平日夜の飲食イ

ベントとしては

初となる『横川はしご酒祭り』が開催された、横川

商店街(広島市西区)を訪問した。

主な来街者は、近隣住民や JR 等乗り換え客の利用

が中心で、特に、平日は仕事帰りに飲食で訪れるサ

ラリーマンや OL が多く、週末は新店ショップ巡りの

若者の姿も多く見られるという。

7月豪雨では「商店街に直接被害はなかったもの

の、JR 各路線の運休

等の影響もあり、一時

期、商店街への来街者

数・売上も落ち込ん

だ」と話すのは、横川

商店街振興組合の村上

正理事長。「飲食・サ

ービスのウェイトが大

きい横川商店街では、

災害による停滞ムード

や消費マインドの冷え

込みは懸念材料」と話

す。

「下を向いてばかり

ではいられない。イベ

ントを通じて元気を出

して、地域を盛り上げ

たい」と、横川商店街では初めての「はしご酒イベ

ント」を企画。タカノ橋商店街で実績のある同イベ

ントを参考にした。ある程度集客が見込める週末や

休日を避け、平日夜の賑わい喚起を狙い、敢えて月

曜・火曜の実施とした。参加各店がチケット1枚で

お得なフードとドリンクのセットを提供する、セッ

トチケット(4枚綴り)は「想定を上回る売れ行

き」と、イベント当日も駅前で自らチケットを販売

する傍ら、すかさず訪れた客に人気店を紹介する村

上理事長。

「コンビニでのチケット販売の効果も大きく、早い

時間帯から混み合う店もあり、参加店や利用客の反

応も上々」と話す。イベントには、本通り商店街を

中心に26の飲食店が参加したが、「祭りへの参加

をきっかけに、組合への新規加入者も出てきた」と

反響の大きさに新規イベントの手応えを語った。

(’18.11.20 取材)

横川商店街振興組合(広島市西区)

2 1

Chapter 4

18

1~2)横川えびす祭りに合わせて開かれた初のイ

ベント。撮影時は「はしご酒」にはやや早い時間

帯も、徐々に人通りが増えていく。 3~4)イベ

ント当日も、駅前でチケット販売にお店の紹介

と、大忙しの横川商店街振興組合の村上さん

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『絆をつなぐ綱引き大会』 みんな集まれ!楽しそうじゃ!

総社商工会議所青年部の創立30周年事業とし

て、平成27年度から始まった「絆をつなぐ綱引き

大会」。12月1日に開催された第4回大会の取材

に、きびじアリーナ(総社市三輪)を訪れた。アリ

ーナは7月豪雨の際、多くの被災者を受け入れた避

難所だった。

今大会のテー

マは「総社を元

気に。綱引きを

通して交流を深

め、総社を楽し

もう!」

大会は、回を

重ねるごとに参

加者数も増え

「地域に根差し

たイベントに成

長してきた」と

話すのは、総社

商工会議所 指導

課の樋口 尚也

さん。綱引きに

は、小学生部門、一般女性部門、一般部門に全55

チーム、約720人が参加。常連の参加チームも出

てきて「これからも大会の認知度を上げていきた

い」と意気込む。今回は、岡山県綱引連盟から審判

員を派遣してもらい競技としての要素も取り入れつ

つ、各チームお揃いの衣装やコスプレ、ユニフォー

ムなどを纏った1チーム10人の対抗戦が繰り広げ

られた。

7月豪雨災害により、予定されていた地域イベン

トの多くが中止や延期を余儀なくされた。商工会議

所青年部では「こういう時だからこそ、地域を元気

にしたい」と豪雨災害からの復興を願い企画。併催

イベントも充実させ、やっとの思いで開催にこぎ着

けた。

大会には、特別ゲ

ストとして、真庭市

で活動し全日本綱引

選手権大会にも出場

している綱引きチー

ム「月田金太郎綱引クラブ」によるエキシビシ

ョンや、「アカネキカク(大阪府立登美丘高校

ダンス部 OG)」によるダンス・パフォーマン

スの披露のほか、フリーマーケット、グルメ・

ブース出店や人気パンの限定販売など、様々な催し

も大会を盛り上げた。(’18.12.1 取材)

総社商工会議所(岡山県総社市)

1 2

Chapter 4

19

1~2)会場は、参加チームと

来場者が一体となって盛り

上がる 3)会場外のグルメ・

ブースの様子 4)商工会議所

青年部お揃いのスタッフ・

ジャンパー姿の樋口さん

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『タカノ橋うまいものフェス』 こたつと笑顔であったまるタカノ橋の冬まつり 12月1、2日の両日、グルメイベント『こたつ

と笑顔であったまる タカノ橋の冬まつり タカノ

橋うまいものフェス』が開催された、タカノ橋商店

街(広島市中区)を訪問した。

周辺は、市役所や病院、オフィスビルやマンショ

ンが建ち並び、交通機関の利便性も高いエリア。都

心に近接し、近隣住民の日常の食料品や飲食、生活

雑貨などを取り扱う、地域密着型の商店街だ。

7月豪雨の影響もあり「商店街の客足も減った

が、被災の沈滞ムードを払拭し、少しでも賑わいを

取り戻したい」と話すのは、イベントを企画した広

島市タカノ橋商

店街振興組合の

稲葉綾子さん。

歩行者天国とな

った全長約20

0メートルのア

ーケード下に、

30分単位で予

約制のこたつ9

台とテーブル席

が並ぶ。通りに

は、焼き牡蠣を

始め、お好み焼

き、ステーキ、

オムライスな

ど、広島市内の

飲食店のほか江

津市や岩国市か

ら、全16のブース出店があり、西日本豪雨で被災

した東広島、呉、竹原など広島県の日本酒を飲み比

べる「広島の酒めぐり」ブースも設けられた。

稲葉さんは「ただのグルメイベントにしたくなか

った」と振り返る。「アーケードを利用し、レトロ

な昭和の雰囲気漂う店舗に、こたつを囲み料理やお

酒を楽しむ。他ではできない体験をしてほしい」と

意気込む。

訪問したイベント2日目の午後は、家族連れや若

者のグループが多く見られ、外国人の姿も目に付い

た。新企画のイベントだったが「狙いどお

り」と話す稲葉さん。「近隣住民だけでな

く、普段は商店街に足が向かない人や観光客

にも立ち寄ってもらうきっかけになれば」

イベント会場では、ソーラン節演舞がイベ

ントを盛り上げるほか、イベント後の 2 次会

への送客を促そうと、周辺の飲食店を紹介す

る「タカノ橋ガイドマップ」が来場者に配ら

れた。

(’18.12.2 取材 )

広島市タカノ橋商店街振興組合(広島市中区)

Chapter 4

20

1~2)アーケード下に並ぶコタツとテーブル。

美味しい料理とお酒を堪能する来場者

3)タカノ橋商店街振興組合の稲葉さん

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『地域復興感謝セール』 地域に寄り添い、コミュニティを支え続ける

岡山県内各地に甚大な被害を及ぼした平成30年7月

豪雨。真庭市内でも家屋の損壊や浸水、道路や河川、農

業施設の被害が相次いだ。

旭川と備中川が合流する落合地区に立地する共同店舗

「サンプラザ」。地元の小売事業者が中心となって設立

した協同組合落合ショッピングセンターが運営する共同

店舗は、昭和49年の

オープン以来、長年に

わたって地域住民の生

活等に不可欠な商業機

能を担ってきた。

「今ま

で経験の

ない水害

で、ここ

までの被

害になるとは考えなか

った」と振り返るの

は、協同組合落合ショ

ッピングセンターの伊

藤 忠司理事長。敷地内の駐車場を含め店舗1階が最高

で50㎝浸水した。水が引き始めてから、組合員総出で

館内の泥水のかき出しや水に浸かった物資等の搬出、清

掃などにあたった。

利用客や従業員に人的被害はなかったが、各店で多く

の設備・機器が使えなくなり、商品や在庫にも大きな被

害が出た。水道や電話も通じない中で復旧作業にあた

り、数日間の全館休業を余儀なくされたが、「皆で協力

して何とかしよう。少しでも早く再開できるものは再開

しよう」と営業に必要な最低限の設備だけで早期に営業

再開した。

冷蔵・冷凍ショーケースやレジの浸水被害があった食

品館店長の市原 孝行さんは「サンプラザはお客様のラ

イフライン。冷蔵設備がないので生鮮品は扱えないが、

それ以外の食品だけでも」との思いで再開したと話す。

小型冷蔵ケースを借りるなどして窮状を乗り切った。

協同組合の販売

促進を担当する生花店の谷本 忠恒さんは「ここでしか

買い物できない高齢者も多い。商売抜きで使命感だけだ

った」と振り返る。災害を機に「組合の自主防災の意識

も高まった」と谷本さんは続ける。水害も想定した損害

保険の見直しにも着手し、お盆の時期には、店舗や地域

の被災の様子を帰省客や地域の人

に広く知ってもらおうと、1階広

場でモニターに映像を流すなど、

地域の防災に関する啓発活動にも

取り組む。

1月2日、訪問した年始の復興

感謝イベントは、抽選会や宮坂流

津山銭太鼓保存会による銭太鼓・

傘踊りの演舞、ビンゴゲームな

ど、延べ200名弱の来場者で熱

気に包まれた。お正月らしく、家

族連れや若者の姿も多く見られ

た。「DM や各種イベントに加え、お買い得の生鮮品等

を揃えたことで、年末年始は例年よりも多くの人出とな

った」と話すのは、イベント企画を担当する衣料店の大

武 敏昭さん。「今後、ジェラートや羊羹など地域の特

産品を集めた地産地消フェアを開催したい」と意気込

む。

昨年末、協同組合を中心に10者で形成したグループ

の復興事業計画が岡山県の認定を受けた。自家発電設備

や消防設備をはじめ「これから組合や各専門店の施設・

設備の復旧整備が本格化する」と話す伊藤理事長。近

年、1階の広場は、地域の高齢者の集いの場となるな

ど、地域の交流や仲間づくりの場として期待する声が多

く聞かれるという。3階のコミュニティ・フロアには、

一昨年4月、地域子育て支援拠点として NPO 法人によ

る子育てサロンを開設。一時預かりなど、子育て中の親

と子供が安心して集える場を提供している。伊藤理事長

は「子育て支援の活動の場としての役割も果たして、他

店との差別化を図っていきたい」と話した。

(’19.1.2 取材 )

協同組合落合ショッピングセンター(岡山県真庭市) Chapter 4

21

1)初夢抽選会の様子 2)広場に集

まるビンゴ大会参加の来場者

3~4)宮坂流津山銭太鼓保存会の

皆さん 5)大武衣料店の大武さん

6)左から食品館の市原さんと谷

本生花店の谷本さん 7)理事長の

伊藤さん

Page 25: 復興だより Chugoku 特別号...復興だより Chugoku特別号 平成30年7月豪雨からの 復旧・復興への歩み 被災地レポート 平成31年1月16日 中国経済産業局

中小企業の BCP を考える

地域の人々の暮らしや経済活動に大きな打撃

を与えた、平成30年7月豪雨。各地で頻発す

る自然災害は、中小企業・小規模事業者に多大

な被害を及ぼし、事前対策としての防災・減災

対策が急務となっている。

大規模災害発生の際、企業や組織の早期事業再開の

道標となるのが事業継続計画(BCP)。

事前対策の前提となる、リスクや対策の必要性の認識

は重要な課題だが、中小企業の経営課題における災害

対策の優先度は必ずしも高くなく、事前対策の実施状

況でも、中小企業は大企業に比べて必ずしも十分では

ない。BCP 策定状況も従業員規模が小さくなるほど進

んでいない状況で、中小企業・小規模事業者の防災・

減災面の強化が重要な政策課題となっている。

そこで、中小企業の BCP 策定支援の取組等につい

て、コンサルティング企業の企業内中小企業診断士と

して活躍されている、株式会社 G サポート(広島市

中区)の添嶋 真人執行役員統括部門長に話を聞い

た。

― 様々な企業からコンサルティングの依頼があると

思うが、7月の豪雨災害後、地域企業の BCP への関

心度合いに変化は。 弊社に対して、企業や経済団体からは BCP に関す

るセミナーへの講師派遣依頼のほか、BCP 策定の相談

等、引き合いはある。特別大きな変化とまでは言わな

いが、災害を契機に BCP への意識の高まりは肌感覚

で感じるところはある。

株式会社 G サポート(広島市中区)

復興だより Chugoku 特別企画 識者に聞く! 近年、各地で頻発する自然災害は、中小企業・小規模事業者にも多大な被害を及ぼしている。

企業自らが直面するリスクを認識した上で、予め、必要な防災・減災対策の取組を整理し、平

時からそれを実践することが益々重要になっている。遅れがちな中小企業の取組をいかに後押

ししていくか、株式会社 G サポートの添嶋真人さんに聞いた。

株式会社 G サポート

執行役員統括部門長

添嶋 真人さん

会計事務所に入社、中小企業の財務会計支

援を経て、経営コンサルティング業務に専

属。’12 年より(株)G サポート。’17 年

に中小企業診断士の資格取得。

Chapter 5

22

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― 中小企業では、「スキル・ノウハウの不足」や

「人材・費用が確保できない」といった理由から、

BCP 策定が進んでいない。 7月豪雨災害では、被災中小企業等がグループで作

成する復興事業計画は、商工会・商工会議所などが中

心となって BCP 策定に取り組むケースも多いと聞

く。こうした地域に根差した経済団体単位で、セミナ

ーや研修会の実施などの普及活動が行われることによ

り、企業の BCP 策定に必要な資源をある程度補完す

ることができる。BCP 策定の地域的な広がりに期待し

たい。

協同組合の場合も、組合単位の BCP 策定を通じ

て、組合員企業間での相互支援体制や組合間での連携

体制の構築によって、組合の地位向上や組合への帰属

意識・一体感の醸成にもつながる。

― 7月豪雨災害では、取引先や同業他社が被災企業

の復旧支援に動くなど、助け合うケースもみられた。 地域内での連携体制の強化はもちろん、他地域への

工場設置や地域外事業者と緊急時に代替調達・代替生

産できるよう連携協定を結ぶなど、幅広く他社との連

携を深めることが、個々の企業の災害対応力の強化、

地域の事業継続力の向上にとって重要。

― 国においても、外部有識者からなる「中小企業強

靱化研究会」が設置され、中小企業の災害対策の強化

について検討が始まった。国が中小企業の防災・減災

対策を認定する制度を設け、補助金採択にあたっての

優遇、災害対策設備への投資減税や低利融資などの支

援策が検討される。 公的な認定制度は、中小企業の意識啓発や事前対策

を進めていくうえで、大きな原動力となり得る。公共

インフラ事業を担い、発災後に迅速な対応が求められ

る建設業分野では、中国地方整備局の BCP 認定制度

があり、災害時の事業継続力を評価・認定された事業

者を総合評価方式の入札で加点対象とするインセンテ

ィブがある。

中小企業の場合、事前対策をとりまとめるきっかけ

として、親事業者などの取引先からの要請によるもの

が多いが、取引先との取引の継続や新規取引に有効と

なるといった事業上のメリットがあるということを中

小企業の経営層に訴え、BCP の重要性の認知度を上げ

ていくことが必要だ。また、優遇金利による融資や損

害保険料の割引といった経済的なインセンティブを提

供する仕組みづくりも事前対策を後押しする重要な要

素になる。研究会の検討状況に注目していきたい。

― 多くの企業にとっても、今回のような大規模水害

は想定外の事態だったとの声が聞かれた。BCP を策定

している企業でも、従来の想定を超えるリスクへの対

応は、危機管理の課題として浮かび上がっている。 企業が想定している災害リスクは地震が主流で、別

の災害時には対応しきれない面もある。あらゆる災害

に包括的に対応できるような備えが必要だが、想定さ

れる特定のリスクを深く掘り下げることで、異なる災

害リスクにも対応可能な共通項も見えてくる。

日頃から、各地で起きた災害から教訓を学び、災害

の類型に応じてこの地域で発生したらどうなるか、創

造力を働かせて被害想定したうえで、被害軽減策や代

替策を検討することが必要だ。大雨や洪水の場合は、

生産設備や情報システム等浸水時の適切な処置や復旧

手順を定めること、建屋への浸水対策や部品の調達先

の多様化など、ハード・ソフト両面での事前対策が重

要。

― これから BCP を策定、あるいは強化・拡充する

中小企業へ、メッセージを。 自社の中核となる事業を継続あるいは早期復旧させ

るための検討は、規模の大小にかかわらず、どんな企

業・団体にとっても重要であり、経営層の意識改革は

不可欠の要素。

BCP への取組を通じて、結束力が高まり、自社の強

みや価値の再発見に繋がる。顧客の信用を維持できる

だけでなく、ステークホルダーから評価を得られる。

企業価値を高めていくためにも、平常時における効

果・価値にも目を向けて取り組んでほしい。BCP は1

度作って終わりではない。対策の定期的な見直しと訓

練等で実効性を確保していくことが大切だ。

地元広島のコンサルティング企業として、地域の中

小企業が BCP の取組の一歩を踏み出せるよう、地域

密着型の支援を通じて地域に貢献していきたい。

(’18.11.26 取材)

中小企業庁ホームページ 『中小企業 BCP 策定運用指針』 URL http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/

中小企業庁では、中小企業関係者や有識者の意見を踏まえ「中小企業

BCP 策定運用指針」を作成しています。中小企業の特性や実状に基づい

た BCP の策定及び継続的な運用の具体的方法をわかりやすく解説してい

ますので、是非、ご活用ください。

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支援策 担当窓口 電話番号

(岡山県)事業者復興支援室

086-224-8564

(広島県)中小企業等復興支援プロジェクトチーム

082-225-8511

被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助金)

(岡山県)中小機構中国本部岡山復興支援課

086-898-2310

(広島県)中小機構中国本部復興支援総括課

082-502-6311

商店街災害復旧等事業(商店街にぎわい創出事業)

※本事業の公募は既に終了しました。商店街災害復旧等事業事務局 03-6262-8116

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業(グループ補助金)

復興支援アドバイザ-

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