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金子 恒太郎2).pdf1-3 震災復興マスタープランと現状 昨年8月、農林水産省は東日本大震災からの復興の基本方針として、農業・農村の復興マス

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財 団 法 人 油 脂 工 業 会 館

第 4 4 回 表 彰

油 脂 産 業 優 秀 論 文

かねこ こうたろう

ミ ヨ シ 油 脂 株 式 会 社

優 秀 賞

東日本大震災からの復興に貢献する油脂産業

油糧植物の水耕栽培による被災地復興

金子 恒太郎

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目 次

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第1章 東日本大震災の被害と復興の現状

1-1 東日本大震災の被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1-2 塩害・放射能汚染による農業被害・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1-3 震災復興マスタープランと現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

第2章 水耕栽培の農地復旧への可能性

2-1 水耕栽培技術の特徴・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

2-2 塩害農地再生における水耕栽培の利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

2-3 放射能汚染土壌の除染・浄化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

第3章 油糧植物の水耕栽培

3-1 油糧植物の選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

3-2 ケナフの特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

3-3 ケナフの水耕栽培技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

3-4 ケナフ種子から獲得できる油脂資源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

3-5 ケナフのバイオマス原料としての活用・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

第4章 ケナフ水耕栽培のシミュレーション

4-1 南相馬市の農業復旧計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

4-2 南相馬市におけるケナフ水耕栽培のシミュレーション・・・・・・・・・・・9

第5章 ケナフ水耕栽培プロジェクトの創設と被災地復興

5-1 3つの復興プロジェクトの創設と推進・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

5-2 塩害農地再生プロジェクト及び

低放射能汚染農地再生プロジェクトの運営・・・・・・・・・・・・・・・10

5-3 高放射能汚染農地再生プロジェクトの運営・・・・・・・・・・・・・・・11

おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

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はじめに

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生から早1年半が過ぎようとしている。

国内観測史上最大となるM9.0の巨大地震の発生により、東北から関東に至る太平洋沿岸

の広範囲に津波が押し寄せ、場所によっては最大遡上高40mにも及ぶ大津波となり、多く

の尊い生命や日常生活を一瞬にして奪い去った。さらに、この地震と津波により、福島第一

原子力発電所においては、過去最大レベルの原子力事故が発生した。大量に放出された放射

性物質による放射能汚染は東日本全体に及び、汚染地域の除染には、1世紀以上の時間が必

要との途方も無い試算もされている。この東日本大震災と命名された大規模地震災害は、こ

れまで私たちが経験したことのない甚大な被害をもたらし、直接的な被災住民の生活はもち

ろんのこと、東日本全域の多くの人々の生活をも一変させた。そして、人々が失った生活基

盤の回復に向けた震災復興への活動は、未だ緒に就いたばかりという状況である。 この震災復興を一刻も早く成し遂げるには、国や地方自治体の対策を頼りにするだけでな

く、産業界全体の英知を結集し、対処していかなければならない。これまで様々な難局に向

き合い、人々の暮らしに貢献してきた油脂産業は、今こそ被災地の復興に向け、これまで培

ってきた技術を結集し、この難局を打開するために行動すべき時ではないだろうか。筆者も、

油脂産業に携わる者として、被災地復興に向けて何が出来るのかを模索、提案し、その一助

を果たしたい。 以下、本論文では、油糧植物としてのケナフに着目し、その特性を活用した三つの「水耕

栽培プロジェクト」を提案して、塩害農地や放射能汚染土壌の除染、得られる油脂資源やバ

イオマス資源の有効活用について提案する。 第1章 東日本大震災の被害と復興の現状

1-1 東日本大震災の被害

東日本大震災による地震は、過去最大規模の南北500km、東西200kmの震源域によ

って引き起こされた巨大なものであった。この地震に伴って発生した津波は、東北から関東の

太平洋沿岸へ押し寄せ、冠水した面積は青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の被災6県の合

計で561km2にも及び、人々の生活基盤を奪うとともに、あらゆる産業に壊滅的な被害を

もたらした。 さらに、福島第一原子力発電所で発生した原発事故では、大量の放射性物質の放出や放射能

汚染水の漏出が問題となった。大気中に放出された放射性物質は、気流に乗って拡散し雨や雪

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とともに地上に落下し、また、放射能汚染水は、地下や海洋へ浸透、拡散し、汚染は広範囲に

広がった(図-1)1)。平成24年7月末現在、放射能汚染地域は5つの区域に区分けされ、

各区域に応じた立ち入り制限規制が行われており、この地域の人々の暮らしは全く成り行かな

い状況におかれている(図-2)2)。 1-2 塩害・放射能汚染による農業被害

東日本大震災の被害はあらゆる産業に及んだが、中でも大きな被害を受けたのが、東北地方

の主要産業とも言える農業である。津波による塩害被害を受けた農地面積は、水田が20,1

51ha、畑が3,449ha、合計で23,600haに達した。これは被災6県の耕地面

積の2.6%に相当する(表-1)3)。さらに、津波の被害は農地への直接的な被害だけでは

なく、農業の担い手の減少といった二次的な問題へも波及し、将来的には広大な耕作放棄地の

発生が懸念される。

農業被害で特に深刻なものが、半減期が約30年の放射性セシウム(137)による汚染だ。

地表面に沈着した放射性セシウムによって水や土壌が汚染されると、米などの農作物も汚染さ

れるため、人々の健康にも大きな影響を及ぼす恐れがある。昨年、農林水産省が原発立地県で

ある福島県を中心に6県の579地点で調査を実施したところ、福島県では実に40地点にお

いてコメの作付け禁止基準を上回る放射能汚染が確認され、その面積は8,300haに及ん

だ4)。今年もコメの作付けを見送る自治体が相次いでおり、津波にも襲われた沿岸部では、放

射能と塩害の二重苦に陥っている。こうした諸問題は復興への大きな障害であり、一刻も早い

対応が望まれる。 1-3 震災復興マスタープランと現状

昨年8月、農林水産省は東日本大震災からの復興の基本方針として、農業・農村の復興マス

タープランを策定した。そのプランによれば、岩手県及び宮城県において被害を受けた農地面

積は15,070haであるが、その内ヘドロ等が薄く部分的に堆積している約5割の農地は

平成24年度まで、ヘドロが厚く広範囲に堆積している約4割の農地は平成25年度まで、そ

してヘドロの堆積のみならず地盤沈下等の甚大な被害を受けた約1割の農地は、平成26年度

までに営農再開を見込んでいる5)。しかし、福島県においては、平成24年度までに営農再開

が可能と見込まれる農地は、原子力災害の影響のため、被災農地面積5,460haの約2割

程度に留まっている5)。 こうしたマスタープランが描かれてはいるが、深刻な塩害農地では、その復旧は決してたや

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すいものではなく、まして高い放射能汚染農地への対策は、このプランから除外されており、

被害農地の復旧が必ずしも円滑に進むとは思えない。 第2章 水耕栽培の農地復旧への可能性

2-1 水耕栽培技術の特徴

最近、植物の栽培方法の一つとして、水耕栽培が注目されている。水耕栽培は、植物種を適性

に選択すれば、通常の土壌栽培に比べて害虫の被害を受け難く、生育スピードが速く計画的に安

定した栽培が可能なため、収穫量を何倍にも増加させることができるという特長がある6)。水

耕栽培では、養液を循環して利用する循環方式(湛液型水耕栽培、NFT等)、かけ流しによる

非循環方式(ロックウール栽培等)、植物自身の力で養液を吸収させるパッシブ(受動型)方式

などが行われている6),7)。中でもパッシブ方式は、養液や酸素の供給装置が不要なため、比較

的低コストでの栽培が可能となるため、筆者はこの方式よる水耕栽培を推奨する(図-3)7)。 2-2 塩害農地再生における水耕栽培の利用

塩害農地では、その復旧のため、ガレキの撤去およびヘドロの除去の後、土壌洗浄による

塩分の除去、あるいは客土が行われる8)。しかし、この方法を膨大な塩害農地に適用した場

合、長期にわたる土木工事が必要となり、多額の費用が必要となる。 一方、植物による塩害農地の復旧という方法も考えられる。古来より、干拓地の最初の作

物としてアオイ科の綿花が植えられてきた9)。この種の植物は、特に塩害に強く、水分とと

もに塩分を強力に吸収するため、試みとして被災地の塩害農地の一部では綿花の栽培が行わ

れている9)。また、被災地のある高校において、同じくアオイ科のケナフを試植したところ、

土壌中のナトリウムや塩化物、硝酸イオンが7割も減少したと報告されている(図-4)10)。

従って、こうしたアオイ科の植物の栽培に水耕栽培を応用すれば、土壌中の塩害物質を多量

に水へ溶解でき、植物への吸収効率も飛躍的に高まることが期待できる。つまり、水耕栽培

は塩害農地の再生において、非常に有効な手段になりえる。 2-3 放射能汚染土壌の除染・浄化

原発事故で放出された放射性セシウムは、アルカリ金属に分類され、水中では1価の陽イオ

ンとして存在する。土壌中では負に荷電している粘土鉱物や有機物の表面に強く吸着されてい

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る11),12)。こうした汚染土壌の浄化には、土壌洗浄が試みられるが、汚染が広範囲に渡る場

合は、大量の放射能汚染水が発生し、その処分方法が問題となる。一方、低放射能汚染農地で

は、植物がカリウムを優先的に吸収する性質を利用して、カリウム系肥料(石灰など)の施用

により放射性物質の作物への移行を防ぐ手立てが講じられている13)。しかし、この方法は根

本的な土壌からの放射性物質の除去にはならず、また、高濃度汚染農地への適用も難しい。 放射能汚染土壌の抜本的な浄化が期待される手法としてよく知られているものに、ファイト

レメディエーションがある。これは、土壌に含まれる有害物質を植物に吸収させ、土壌から除

去する方法である(図-5)14),15)。ある種の植物類はセシウムを吸収することが知られて

いるが、 放射性セシウムについても同様に吸収すると考えられている14)。セシウムを吸収す

る植物は数十種類確認されており(表-2)、油脂産業との関わりの深い油糧植物であるヒマ

ワリ、アブラナ、ケナフが高いセシウム吸収能力を有している16)。 このような根拠から、実際に福島県飯舘村においてヒマワリによるファイトレメディエーシ

ョン効果の確認実験が行われたが、その効果は期待された程では無かった。効果的なファイト

レメディエーションを行うためには、植物種や栽培方法の選択、土壌の改質、土質や水質の制

御等の様々な要因の最適化が不可欠である。その点水耕栽培では、土壌栽培に比べ、こうした

要因の制御が比較的容易に行えることから、筆者は油糧植物の水耕栽培を利用したファイトレ

メディエーションが有効な除染手段になりえると考える。実際に、水耕栽培を利用したファイ

トレメディエーションは、リゾフィルトレーションと言われ、最近注目され始めている。過去

の報告でも、4週間齢のヒマワリをセシウム200μg/Lを含む試験液で水栽培を行った結

果、24時間後に、水中のセシウムがほぼすべてヒマワリに吸収されている11)。こうした結

果は、如何に土壌から放射性セシウムを水に溶出させうるか、このことが植物への吸収の成否

の鍵を握ることを示している。 土壌中の放射性セシウムを効率よく水中に溶出させる手法として、アンモニウムイオンの活

用がある。アンモニウムイオンは、土壌に保持された放射性セシウムを追い出す力が強く、一

定濃度を保つことでその効果を発揮する11)。一般的に水耕栽培用の肥料として、硫酸アンモ

ニウムが使用されていることから、このアンモニウムイオンの供給は、水耕栽培に用いる養液

を介して行うことができる。従って、水耕栽培はこれまでのファイトレメディエーションの効

果を飛躍的に向上させる手法となる可能性を有している(図-6)。

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第3章 油糧植物の水耕栽培

3-1 油糧植物の選定

代表的な油糧植物としてよく知られているものに、パームやヤシがある17)。しかし、これ

らはいずれも熱帯性の大型樹木であり、日本における栽培には向いていない。また、単に水耕

栽培への適性という視点に立てば、葉菜類、キュウリ、トマト及びイチゴといった草本系の植

物が挙げられるが、これらは油糧植物ではない。

被災地である東北地方における水耕栽培が可能で、油脂やバイオマス資源の収穫量が高く、

塩害農地の再生や放射性セシウムの除去効果も期待できる油糧植物として、アブラナ科のアブ

ラナ、キク科のヒマワリ、そして、アオイ科のケナフが挙げられる。とりわけケナフは、水耕

栽培適性に優れ、成長も著しく、単位面積あたりの油脂やバイオマス資源の収穫量が非常に高

く、それに比例してセシウムの吸収量も多くなることが期待される。従って、本論文の水耕栽

培における油糧植物としては、次節で述べる特性からケナフを選定する。

3-2 ケナフの特性

二酸化炭素による地球温暖化防止対策の一環として、一時期、世界各地でケナフ栽培のブー

ムが巻き起こった18)。成長力の強いケナフの栽培は、管理が行き届かない土地での野生化、

外来種がための生態系の破壊といった懸念から、そのブームは沈静化した。しかし最近になっ

て、適正な管理下での栽培を前提とした水質浄化の研究、バイオマスの用途開発の拡大、種子

から得られる油脂資源の有効利用等の試みが盛んに行われるようになり、ケナフの栽培が見直

されている19),20),21)。

ケナフはアフリカ原産のアオイ科フヨウ属の植物である。旺盛な成長力を持つため、多様な

栽培環境に適応でき、東北地方の春から秋にかけての気候でも生育は十分可能である。約4カ

月で生育し、熱帯多雨林と同等の二酸化炭素固定能力を有し、収穫後の乾燥重量は10t/h

aに及ぶ22)。

収穫したケナフは、大別して3つの部分に分けられる。1つは種子の部分で、収穫後の乾燥

ケナフの重量に占める割合は約7%である。ケナフの種子は紫がかった黒色で、長さ6mm、

幅4mm程度の角張った形状である。種子からの油抽出率は20%程度であり、その脂肪酸組

成は、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸から成り、綿実油や大豆油と

類似しているため、特に食用油としての利用が期待される(表-3)21)。2つめの部分は、

靭皮といわれる長くて丈夫な茎の外側の繊維部分で、約20%を占め、繊維やパルプ原料、バ

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イオマスエネルギー資源として利用できる23)。3つめの部分は、茎の中心部の木質部(芯材)、

葉他の部分で70%強を占める。繊維質が強くパルプ原料には不向きではあるが、バイオマス

エネルギー資源として利用できる23)。

3-3 ケナフの水耕栽培技術

ケナフの水耕栽培の方法としてはパッシブ方式を採用する。まず始めに、農地に水を張り、

代掻きを行って土と水をよく混合し静置する。この状態は、やや水の多い水田のイメージで

ある。次に、ケナフ栽培の架台となるフレームやボックスを作成する。架台部分には、ケナ

フの栽培サイトを入れるため、一定間隔の穴を設ける。続いて、ケナフの苗を栽培する。栽

培サイトには土を用い、水で流れないようにネット等で囲い、養分を吸収する根を伸ばす。

そして、成長した苗をケナフ栽培の架台に設けた穴に入れることで、パッシブ方式による水

耕栽培がスタートする。養液には硫酸アンモニウム等の無機肥料を溶解したものを用い、ケ

ナフの根の部分が常にこの養液で満たされるよう液量を調節する(図-7)24)。このパッ

シブ方式による水耕栽培技術は、植物本来の能力を活かした方式なので、栽培管理も容易で

あり、植物工場のような高コスト設備の必要が無い。ケナフは、養液移動量が極めて大きい

ため、このような水耕栽培を行うことで、土壌の除塩や、放射性セシウムの除去に大きく貢

献する。 3-4 ケナフ種子から獲得できる油脂資源

ケナフの乾燥収穫重量10t/haは、マレーシアでの土壌栽培の事例であるが、ケナフの

水耕栽培に関する釜野らの実験によれば、pH4.5に調整して水耕栽培を行うことで、土壌

栽培の20倍に近い188t/haものケナフを収穫することを可能としている(表-4)2

2)。この水耕栽培での収穫量を基に種子部の割合を7%として試算すると、種子量は約13t

/ha、獲得油脂量は2.6t/ha(種子量の20%相当)となる。一般的に1.5t/h

aの油脂量が実現できれば、有益な油脂資源としての展開が可能とされており、ケナフの水耕

栽培は、有益な油脂資源を産む。 次に、被災6県の農地において、ケナフを水耕栽培した場合の獲得油脂量を試算する。被

災農地面積は、塩害農地が23,600ha、耕作放棄地が50,000ha(震災による

増加分を含む)、合計73,600haである。年2回の水耕栽培を行うとすると、ケナフ

総生産量は年間約2,800万t、種子量は200万t、得られる油脂量は40万tとなる。

これは、油脂産業の年間植物油供給量の約16%に相当し、国内の大豆油生産量に匹敵する

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量である(表-5)25)。 ケナフの水耕栽培によって吸収した放射性セシウムは、種子には移行せず、葉や茎に吸収

される。実際に、福島県の実験農地で栽培されたヒマワリの種子から抽出した油脂からは、

セシウムは検出されておらず、また、チェルノブイリ原発事故で汚染されたウクライナやベ

ラルーシでは、汚染農地で栽培した菜種油を産業化する取り組みが現実に行われている26)。

従って、放射能汚染土壌で水耕栽培したケナフの種子も同様に、有益な油脂資源として活用

できるものと考える。 食用以外のケナフ油の利用方法として、産業用ディーゼルエンジン等に使用できるバイオ

燃料への応用が期待できる。近年、植物油直焚きによる発電への応用27)、植物油をディー

ゼル発電機や船舶エンジンに利用する燃料製造装置の開発など28)、現在のバイオディーゼ

ル燃料と比較して、コスト的に有利な植物油の直接燃料化技術の開発が盛んに行われている。

この直接燃料化技術に欠かせないのが、植物油脂燃料のエマルジョン化である。油脂産業が

持つ優れた乳化分散技術を応用して、ケナフ油を用いたバイオエマルジョン燃料を開発し、

運搬車両や船舶のディーゼル燃料、各種ボイラー、発電設備などのエネルギー源として利用

する。また、この技術は、被災地復興における循環型社会の構築というシンボリックな事業

展開に留めることなく、ヤトロファ油などの非可食性油脂への応用展開を図れば、メチルエ

ステル化工程を経由しないため、コスト的に極めて優位な新たなバイオ燃料技術の実用化に

繋がる。 3-5 ケナフのバイオマス原料としての活用

収穫したケナフは、放射能レベルに応じた管理を徹底する。放射能レベルが高いケナフは、

種子部を除き焼却することでバイオマスのエネルギー源として活用する。焼却処理により放

射性セシウムは飛灰に凝縮することができるため、飛灰は放射性特別管理廃棄物として厳重

に管理、保管する。低汚染農地から得られたケナフや農地の除染が進んだ段階で得られたケ

ナフは、放射能レベルが基準以下であることを確認の上、製紙原料やバイオマス原料として

活用する。 ケナフの靭皮は、良質な製紙原料として利用できる。前節で算出した水耕栽培による収穫

量からケナフの本数に換算すると、約134億本が収穫できる。製紙原料として試算した場

合、一般的にケナフ1本の靭皮からは、ハガキ換算でおよそ30枚に相当する30gの紙が

得られるので、全体として約40万トンの紙が得られる。これは、200~300万人の年

間紙使用量に相当する22)、23)。 また、ケナフの70%強を占める木質部分(芯材)は、バイオマス原料として利用できる。

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主要成分はセルロース50%、リグニン25%とセルロース系木質バイオマスの成分に酷似

しているため23)、セルロースの抽出、精製、誘導体化、微生物処理といった一連の木質バ

イオエタノール変換技術を活用し、バイオエタノールを製造することができる。実際に、現

技術レベルをもとにしたバイオエタノール生産量を試算した。被災農地合計73,600h

aから得られるケナフ総生産量が年間2,800万tとした場合、その70%にあたる約2,

000万tがケナフ木質部となる。セルロース量が多くエタノール原料となる茎部分はその

半分の約1,000万tであり、ここからおよそ280万kLのバイオエタノールが得られ

る29)。この量は年間ガソリン消費量5,700万tの5%に相当する。さらに直近の研究

によれば、マリアナ海溝の世界最深部に生息する超深海性ヨコエビから、セルロースのグル

コース変換能力が非常に高い酵素が発見され、今後、こうした酵素の利用開発が進めば、バ

イオエタノールの更なる収量アップが見込まれる30)。 このように、水耕栽培のケナフは、その種子からは新たな国産油脂資源が獲得でき、靭皮

や木質部からは製紙原料やバイオマス原料が獲得できる極めて有用な植物である(図-8)。

第4章 ケナフ水耕栽培のシミュレーション

4-1 南相馬市の農業復旧計画

ケナフ水耕栽培による塩害、放射能汚染農地の復旧シミュレーションとして、福島県南相馬

市をモデルとした試算を行った。 耕作農地面積が8,400haと広大な農地を有する南相馬市は、津波によって、約2,7

00haの農地が被害を受けた31)。これは、震災で被害を受けた市町村の中で最も広い面積

である(図-9)3)。現在、自治体が主体となり、マスタープランや復興計画等おける各種工

程の調整を図りながら、早期の復旧に努めている。しかし、原発被害が激しく、避難指示解除

準備区域に指定された市南部の約1,300haの農地は復旧計画対象外である。こうした地

域を除いた農地の再開予定は、平成25年度に約610ha、平成26年度に約700haと

し、概ね6年以内の合計は、およそ1,410haの復旧に留まるものとみられる5),32)。

ただ、現時点における農地復旧に向けた進展は決して順調なものとは言えず、昨年に続き今年

も市内全域でコメの作付けは見送られており33)、この先も南相馬市の農地復旧への道のりは、

決して平坦なものではない。

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4-2 南相馬市におけるケナフ水耕栽培のシミュレーション

ケナフの水耕栽培は、塩害、低放射能汚染を受けた市内全域の農地2,700haで行う。

パッシブ方式を採用し、4月から7月、8月から11月の年2回の水耕栽培を実施し、農地

の復旧を目指す。この水耕栽培による放射能汚染の浄化にかかる期間は、ケナフのファイト

レメディエーション能力や、汚染濃度などから推測すると、おおよそ5年から10年が目安

と考える。 2,700ha農地でケナフの水耕栽培を行った場合、収穫量は年間約103万tとなる。

種子部は7.3万tであり、そこから1.5万tの油脂が得られ、食用や工業用等の油脂産

業原料や新たなバイオ燃料資源として活用する。また、96万tのケナフの靭皮や木質部は、

前述のように放射能汚染レベルの厳しい管理のもとで、製紙原料やバイオマス原料として的

確に活用する。 第5章 ケナフ水耕栽培プロジェクトの創設と被災地復興

5-1 3つの復興プロジェクトの創設と推進

早期の復旧を目指した復興プロジェクトの創設と推進にあたり、被災農地における塩害や

放射能汚染のレベルに応じたプロジェクトの設置が重要であると考え、以下の3つの復興プ

ロジェクトを提案する。 ① 塩害農地再生プロジェクト

放射能汚染は無いが、塩害被害が激しく復旧計画に沿った営農再開が困難な農地の復旧

を目指すプロジェクト活動。 ② 低放射能汚染農地再生プロジェクト

立ち入りが制限されていないが、低レベルの放射能汚染によって、コメ、農作物の作付

けが見送られている農地を、震災前同様に農業が可能な農地へ復旧させる。 ③ 高放射能汚染農地再生プロジェクト

高放射能汚染農地での活動は国との連携が必要である。「農地土壌等における放射性物質

除去技術の開発」に参画し、油糧植物の水耕栽培による農地復旧を目指す。

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5-2 塩害農地再生プロジェクト及び低放射能汚染農地再生プロジェクトの運営

この2つのプロジェクトでは、複数の被災農家を一つのグループとし、そのグループと農

業協同組合(JA)及び油脂産業界の三者の枠組みでプロジェクトの運営計画の立案や策定

を行い、地方自治体の承認を得る。 プロジェクトの運営に必要な資金は、東日本大震災復興交付金、地方自治体独自の交付金

や低利融資制度を利用して調達する。東日本大震災復興交付金は、農林水産省をはじめとす

る5省が認定した40の復興事業種を対象としており、地方自治体が承認・申請した復興プ

ランやプロジェクトに対し交付される34)。本プロジェクトは、この復興交付金対象事業の

中でも、農林水産省が定める被災地域農業復興総合支援事業に該当し、水耕栽培施設等の農

業施設整備拡充のための資金援助を受けることができる35)。さらに資金が必要な場合は、

地方自治体独自の交付金や低利融資制度を利用するが、地方自治体は、地方税の減免等、税

制上の優遇措置が受けられる制度の拡充を図る。 JAは、これまでの組合活動の実績から、被災農家個々の様々な情報を活用し、プロジェ

クトの計画段階においては、被災農家個々の意向の調整、農地の状況把握、農業従事者や今

後の後継者情報の集約に尽力する。また、実際の運営段階においては、水耕栽培技術の指導

や必要な資材や機材の調達、グループ内の農家個々のモチベーションの維持や情報共有化の

ためのコミュニケーションの場の提供、被災地全体を励ます意味からの情報発信活動を行っ

ていく。 油脂産業界は、ケナフの収穫時期に合わせケナフ種子を受け入れ、搾油や精製を行い、油脂

を生産する。得られた油脂は、食用や工業用等の原料として活用するため、油脂産業界が長年

築いてきた流通網を活かして全国に販売する。被災地復興の象徴となるケナフ油やそれを利用

した様々な製品は、油脂産業界が認定し、被災地復興プレミアムブランドとして流通させる。

このブランドとして認定された製品から得られた利益の一部は、被災地へ還元される仕組みを

油脂産業界が構築する。また当然のことながら、油脂産業界はこれまで培ってきた油脂化学の

技術も活かし、新たな高付加価値商品の開発や、3章で触れたエマルジョン化による直接燃焼

技術の研究などを含めたバイオ燃料資源への応用研究を推進し、油脂の消費拡大を図る。 このようなプロジェクトの運営により、農地が復旧した暁には、農家はこれまで通りケナフ

の水耕栽培を継続するか、あるいは新たな農業経営を展開するか、それは農家自身の選択に委

ねる(図-10)。

10

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5-3 高放射能汚染農地再生プロジェクトの運営

本プロジェクトにおいても、前述の塩害農地や低放射能汚染農地再生プロジェクトと同様

の三者が、現在、高放射能汚染地域の管理と除染活動を行っている国とタイアップして、水

耕栽培プロジェクトの導入と運営にあたる。 高放射能汚染地域を対象としたこのプロジェクトにおいては、ケナフの水耕栽培開始当初

からある期間までは、高濃度の放射性セシウムがケナフに移行していくことが予測される。

従って、汚染農地や収穫ケナフの放射能レベルのモニタリング体制が必要不可欠となる。ま

た、放射能レベルの高いケナフは一律焼却処分とするが、焼却施設や焼却飛灰の管理・保管

体制の構築も極めて重要となる。 現在、農林水産省が中心となり産官学で「農地土壌等における放射性物質除去技術」の開

発に取り組んでいる。その活動の中の「ふるさとへの帰還に向けた取組」では、福島県飯舘

村と川俣町において除染技術の開発が進められている36)。昨年9月の農林水産省の報告に

よれば、ヒマワリを用いたファイトレメディエーションによる放射能除染に関しては、実用

的な効果は得られなかったとしている35)。しかし、この結果は、基本的に土壌栽培による

ものであり、しかも栽培植物種はケナフではない。よって、成長が著しく、単位面積あたり

の収穫量も非常に高く、水耕栽培適性に優れたケナフの水耕栽培を用いる本プロジェクトは、

放射能の除染において効果的に作用するものと考える。また、上述の農林水産省の報告では

効果が認められなかったヒマワリ、チェルノブイリで注目されたアブラナ等の油糧植物種に

ついて、新たに本提案の水耕栽培を試みることは放射能の除染効果の再評価に繋がり、有意

義なことと考える。 本プロジェクトは、高放射能汚染農地が対象であり、まずはケナフ水耕栽培の除染効果に

主眼を置き運営することとなるが、十分な除染効果が確認できた後は、前述の2つのプロジ

ェクトと同様に運営し、被災地の復旧を図る。 おわりに

本論文では、油脂産業が参画する油糧植物の水耕栽培を通じ、震災復興を図るという提案

を行った。ここで提案したプロジェクトを推進することにより、東北地方の農業の再生、地

域コミュニティーの復活、新規産業や雇用の創出等の効果が生まれ、震災前にも増して被災

地の発展が期待できる。さらには、震災以降、原子力発電の是非が問われている中、低価格

で環境に優しい実用的なバイオエネルギーの開発という側面で、我が国のエネルギー構造の

転換にも一定の役割を果たすことも期待できる。しかし、復興への道のりは決して平坦なも

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のではなく、多くの困難を伴うものとなろう。 東日本大震災から早1年半もの時が過ぎようとしている。今こそ、真の復興に向け、地に

足のついた対策が迅速且つ的確に展開されることが重要である。油脂産業に携わる我々は、

被災しながらも辛抱強くこの難局に立ち向かってきた人々と共に手を携え、新たな決意と信

念のもと、震災からの復興を成し遂げなければならない。

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参 考 文 献

1) 「福島原発事故による土壌の放射能汚染対策」 関勝寿/経営論集 2) 経済産業省ホームページ 3) 農林水産省ホームページ 4) 産経新聞 平成23年8月29日 5) 「農業・農林の復興マスタープラン」 農林水産省 6) 「溶液栽培の新マニュアル」 社団法人日本施設園芸協会編/誠文堂新光社 7) 「養液栽培における培養液処理の手引き」 山口県農業試験場 8) 「農地の除塩マニュアル」 農林水産省 9) 「被災地の塩害をコットンで克服」 greenz jp ホームページ 10) 三陸新報 平成23年12月7日 11) 「土壌-植物系における放射性セシウムの挙動とその変動要因 山口紀子ら 12) 一般社団法人日本土壌肥料学会ホームページ 13) 群馬県ホームページ 14) 「植物による土壌浄化の可能性と課題」 渡部敏 15) 「ファイトレメディエーションの現状と課題」 吉田 光毅ら 16) 「レアメタル濃縮植物の探索」 松本英之ら 17) 「油脂原料をどうする」 財団法人油脂工業会館 18) 「ケナフの絵本」千葉浩三/農文協 19) 「公益価値を加味したケナフの環境浄化機能の評価」 青井透 20) 「ケナフによる水質浄化の可能性」 青井透 21) 「ケナフ種子油の化学組成」 古賀民穂ら 22) 「ケナフには熱帯雨林を救える力がある」 釜野憲明/ユニ出版 23) 「ケナフで環境を考える」 釜野憲明/文芸社 24) ランド新商品研究所ホームページ 25) 「2011年8月増刊油脂産業年鑑」 幸書房 26) 朝日新聞 平成24年1月25日 27) 日立造船株式会社ホームページ 28) 日経産業新聞 平成23年10月19日 29) 「図解バイオエタノール最前線」 大聖泰弘、三井物産編/工業調査会 30) 独立行政法人海洋研究開発機構プレスリリース 平成24年8月16日 31) 「東日本大震災による南相馬市の被害」 農林水産省

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参考資料:「福島原発事故による土壌の放射能汚染対策」をもとに作成

図-1 福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散

(福島原発事故による土壌の放射能汚染対策をもとに作成)

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平成24年7月31日現在

図-2 福島第一原子力発電所事故による避難指示区域と警戒区域

(経済産業省ホームページ 避難指示区域と警戒区域の概念図より引用)

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湛液型水耕栽培 NFT

ロックウール栽培 パッシブ栽培

 

植物 水耕栽培

塩害土壌NaCl、NaNO3など

塩害物質を吸収

土壌の再生

図-4 水耕栽培による塩害農地再生のメカニズム

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図-3 主な水耕栽培の種類

(溶液栽培における培養液処理の手引き、福岡農総試研報をもとに作成)

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図-5 ファイトレメディエーションの流れ

(ファイトレメディエーションの現状と課題より引用)

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水中のCs+をケナフが吸収

土壌pH=4~5

セシウム汚染土壌 NH4+によってCs+を土壌から水中へ移行

(NH4)2SO4

水耕栽培肥料

Cs+ nnnmkk

NH4+

水中

土壌

ケナフ乾燥

↓セシウム回収

Cs+

Cs+ Cs+

nnnmkk

NH4+

Cs+

Cs+

nnnmkk

NH4+ nnnmk

kNH4

+

図-6 アンモニウムイオンによる放射性セシウムの溶出と水耕栽培

ケナフ

ボックスにあけた穴

ボックス

吸収する根

 水耕栽培溶液

 土壌

栽培サイト(土など)

図-7 パッシブ法によるケナフの水耕栽培方法

(ランド新商品研究所ホームページをもとに作成)

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 栽培農地  塩害農地:23600ha 耕作放棄地:50000ha 合計:73600haとしたときの試算

水耕栽培による油脂原料生産と副産物の利用

ケナフ2800万トン

(年2回水耕栽培)

7%

ケナフ種子200万トン

油脂抽出20%

20%

物質量100%

ケナフ靭皮560万トン

73%ケナフ芯材2040万トン

油脂原料獲得

食用・工業用バイオ燃料等

へ利用

バイオマスエネルギー

年間ガソリン使用量5%に相当

獲得資源

ケナフ油40万トン

製紙原料

約300万人分年間使用量に相当

製紙材料40万トン

バイオマス燃料

木質部1040万トン

バイオエタノール280万トン

図-8 ケナフの水耕栽培による獲得資源量の試算

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図-9 津波による流失・冠水等の被害を受けた農地の推定面積(市町村別)

(農林水産省統計部農村振興局データをもとに作成)

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復興交付金 交付金出資

交付金申請

   農業指導

   農業設備建設

復興プロジェクトプランの作成

放射能汚染土壌

被災農地の復興

油脂業界

地方自治体

JA

被災農家

   公的復興支援

   資金融資

種子

ケナフ水耕栽培靭皮・木質部

ケナフ油脂の販売

バイオ燃料の開発

高付加価値商品の開発

バイオマスエネルギー原料

製紙原料

図-10 塩害農地再生プロジェクト及び低放射能汚染農地再生プロジェクトの運営図

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表-1 津波により流失・冠水等の被害を受けた推定農地面積

(農林水産省統計部農村振興局データをもとに作成)

推定面積 被害面積率(%) 田耕地面積 畑耕地面積

青森県 156,800 79 0.1% 76 3

岩手県 153,900 1,838 1.2% 1,172 666

宮城県 136,300 15,002 11.0% 12,685 2,317

福島県 149,900 5,923 4.0% 5,588 335

茨城県 175,200 531 0.3% 525 6

千葉県 128,800 227 0.2% 105 122

合計 900,900 23,600 2.6% 20,151 3,449

耕地面積(平成22年)

県名流出・冠水等被害 推定面積の内訳

(単位:ヘクタール)

表-2 植物栽培試験による各植物中のセシウム濃度

(レアメタル濃縮植物の探索をもとに作成)

オクラ アオイ科トロロアオイ属 68.0

ケナフ アオイ科フヨウ属 79.2

カラシナ(アブラナ) アブラナ科アブラナ属 96.0

クレソン アブラナ科オランダガラシ属 123.8

トウモロコシ イネ科トウモロコシ属 52.3

ヒマワリ キク科ヒマワリ属 58.6

ヨモギ キク科ヨモギ属 60.3

アオジソ シソ科シソ属 68.3

ミツバ セリ科ミツバ属 103.1

植物種 分類科・属Cs濃度

(mg/kg-DW)

表-3 ケナフ油の脂肪酸組成

(ケナフ種子油の化学組成をもとに作成)

慣用名 数値表記 ケナフ油 綿実油 大豆油

パルミチン酸 16-0 10.1 20.0 10.3

パルミトレイン酸 16-1 0.6 0.6 0.1

ステアリン酸 18-0 2.6 2.4 3.8

オレイン酸 18-1 28.0 18.4 24.3

リノール酸 18-2 44.9 56.9 52.7

リノレン酸 18-3 0.5 0.5 7.9

アラギジン酸 20-1 0.5 0.2 0.3

ベヘン酸 22-0 0.4 0.1 0.1

リグノセリン酸 24-0 0.2 0.1 0.4

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0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

4.5 5.5 6.5 7.5 土壌

重量

(t)

/ha

水耕栽培栽培pH

表-5 年間の植物油供給量(2010年度)

(2011年油脂産業年鑑より引用)

(単位 1,000トン)

種類 数量

ナタネ油 993.0

大豆油 467.7

コーン油 84.4

コメ油 61.0

ゴマ油 45.7

綿実油 4.3

アマニ油 2.3

その他 0.7

国内計 1659.1

輸入量 884.6

総供給量 2543.7

23

表-4 水耕栽培における1ヘクタール辺りのケナフの平均収穫量

(ケナフは熱帯雨林を救える力があるをもとに作成)

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平成25年 2 月21日 〒103-0027 東京都中央区日本橋 3-13-11

財 団 法 人 油 脂 工 業 会 館

東京03(3271)4307(代表) h t t p : / / w w w. y u s h i k a i k a n . o r. j p