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1 経管栄養の適応と管理 仙台厚生病院 栄養サポートチーム(NST中堀 昌人 平成23年6月20日(月) 臨床研修医勉強会 栄養管理法の種類 栄養管理の選択アルゴリズム 静脈経腸栄養ガイドライン:推奨度A(強く推奨する) 経腸栄養法の長所 経静脈栄養法に比べると、 ① より生理的である。 腸管の蛋白合成能を維持・促進する。 栄養素が門脈を介して直接肝臓へ流入 するため高濃度の栄養素が肝臓へ注ぎ 込まれる。 ② 管理が容易である。 ③ 低コスト 経静脈栄養法の1/21/3 経腸栄養法の短所は? ① 消化管の機能が必要。 ② 経鼻栄養法は患者に苦痛を与える。 ③ 経鼻栄養法は嚥下訓練がしにくい。 ④ 胃瘻・腸瘻は侵襲的処置・合併症の 問題点がある。 長期間、消化管を使わないと・・・ ① 腸管粘膜の萎縮による bacterial translocation の可能性 ② 吸収機能の低下や消化機能の低下 ③ 免疫能の低下 ④ 胆汁鬱滞・脂肪肝

栄養管理法の種類 栄養管理の選択アルゴリズム...1 経管栄養の適応と管理 仙台厚生病院 栄養サポートチーム(NST) 中堀昌人 平成23年6月20日(月)

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経管栄養の適応と管理

仙台厚生病院

栄養サポートチーム(NST)

中堀 昌人

平成23年6月20日(月)

臨床研修医勉強会

栄養管理法の種類 栄養管理の選択アルゴリズム

静脈経腸栄養ガイドライン:推奨度A(強く推奨する)

経腸栄養法の長所

経静脈栄養法に比べると、

①より生理的である。腸管の蛋白合成能を維持・促進する。栄養素が門脈を介して直接肝臓へ流入するため高濃度の栄養素が肝臓へ注ぎ込まれる。

②管理が容易である。③低コスト

経静脈栄養法の1/2~1/3

経腸栄養法の短所は?

①消化管の機能が必要。

②経鼻栄養法は患者に苦痛を与える。

③経鼻栄養法は嚥下訓練がしにくい。

④胃瘻・腸瘻は侵襲的処置・合併症の

問題点がある。

長期間、消化管を使わないと・・・ ☆

①腸管粘膜の萎縮によるbacterial

translocation の可能性

②吸収機能の低下や消化機能の低下

③免疫能の低下

④胆汁鬱滞・脂肪肝

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経腸栄養のルート

経鼻経管栄養

胃内留置、十二指腸・空腸留置

消化管瘻

経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG)

経皮内視鏡的空腸瘻造設術(PEJ)

経胃瘻的空腸栄養チューブ(PEG-J )

経皮経食道胃管挿入術(PTEG)

外科的消化管瘻

胃内投与と十二指腸・空腸投与の比較

胃内投与アクセス比較的容易。より生理的で分割(間欠的)投与が可能。嘔吐・誤嚥、肺炎を起こすことがある。

十二指腸・空腸投与アクセスは容易ではない。少量投与からはじめ、時間かけて注入する必要あり(注入用ポンプの必要性)嘔吐の危険性少ない。下痢をきたしやすい。

経鼻栄養カテーテルの管理

経鼻栄養カテーテル

ニュートリフローフィーディングチューブ(日本シャーウッド)当院では今はENカテーテル(ゼオン)使用中

通常は8-12Fr.程度

挿入留置の長さの目安成人の場合:45~55cm

挿入時は患者を座位またはファーラー位 45‐60度

嘔吐予防のため)

カテーテル挿入方向は→で比較的水平方向

経鼻胃管チュ-ブの先端位置の確認

X線撮影(最も信頼性が高い!)

胃内容物の吸引

通気法による聴診(最も信頼性が低い!)

○○県立○○病院で医療ミス 栄養チューブを気管に誤挿入20○○年○月○日

○○県立○○病院(同県○○市)は18日、同市内の○○代の女性患者の気管内に栄養補給用チューブを誤って挿入し、死亡させる医療ミスがあったと発表した。医療事故として県警○○署に届け出ており、同署は業務上過失致死の疑いで、誤挿入した男性研修医(○○歳)らから事情を聴いている。 同病院によると、女性は今年○月に脳梗(こう)塞(そく)の治療のため入院。○月○日に手術を受けた後、鼻から食道を通じて胃に栄養補給用チューブ(直径2ミリ)を挿入したが、同○日午後1時頃、チューブが抜けているのに気づいた研修医が再挿入した後、翌○日に容体が急変した。 レントゲン撮影で確認したところ、食道ではなく気管にチューブが挿入され、肺を突き破って栄養剤が注入されていたことが判明。女性は○日午前○時○分ごろ、心不全と呼吸不全を引き起こし死亡した。 同病院の○○院長は「今後はチューブ挿入時にレントゲン撮影を義務づけるよう病院内のマニュアルを改訂する」としている。

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経鼻栄養カテーテルの固定法

エレファント・ノーズ型栄養カテーテル固定法鼻腔栄養チューブは、鼻翼のびらん・潰瘍防止のため、下方に向けて鼻翼

にカテ―テルが接しないよう固定し、時々固定位置をずらす。

経鼻経管栄養カテーテルの管理

カテーテルは8-12Fr. 体位はファーラー位

カテーテル固定に注意(鼻翼潰瘍予防)

時々固定位置をずらす

カテーテル先端の留置確認(X線が確実)

詰まりに注意:30cc微温湯フラッシュなど

(チューブ内を10%の酢水の充填:殺菌・洗浄効果)

詰まり・劣化・感染などの点で2週間程度で入れ替え

消化管瘻のカテーテル管理

P E EPercutaneous 経 皮

Endoscopic 内 視 鏡 的Enterostomy 消化管瘻造設術

PEG (percutaneous endoscopic gastorostomy

経皮内視鏡的胃瘻造設術)

PEJ/Direct PEJ (percutaneous endoscopic

jejunostomy: 経皮内視鏡的空腸瘻造設術)

PEG-J /TGJ tube (経胃瘻的空腸栄養チューブ)

PEE以外:PTEG (percutaneous trans esophageal gastrotubing:

経皮経食道胃管挿入術)

外科的胃瘻、腸瘻

PEGの適応症例 Ⅰ

経腸栄養のアクセスとしての胃瘻造設

・ 脳血管障害、痴呆などのため、自発的に

摂食できない例・ 神経筋疾患などのため、嚥下不能または

困難な例・ 頭部・顔面外傷や頭頸部手術のため摂食困難な例・ 咽喉頭、食道、胃噴門部狭窄例・ 食道穿孔例・ 成分栄養に依存しているクローン病症例

PEGの適応症例 Ⅱ

誤嚥性肺炎を繰り返す例・ 摂食できてもしばしば誤嚥する例・ 経鼻胃管留置に伴う誤嚥

減圧ドレナージ目的・ 幽門狭窄・ 上部小腸閉塞

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P E G適応

1ヶ月以上の生命予後が期待できる経管

栄養や薬剤投与が目的となる症例

消化管悪性腫瘍による消化管閉塞(イレ

ウス状態)の減圧目的となる症例

倫理的・社会的適応は!?

P E G の利 点

施行に要する時間が短時間

外科的方法に比べて侵襲が少ない

内視鏡室で比較的安全に行える

合併症が少なく、経過も良好

誤嚥を繰り返す患者には改善も見られる

入院医療から在宅医療に変えることが可能

在宅管理、施設管理が楽

患者さんのQOL向上

造設方法

Pull/Push法 : カテーテルが口腔内通過

(ニュートレックス)(ワンステップボタン)など

Introducer法 : カテーテルが口腔内不通過

Introducer原法

Introducer変法

(カンガルーセルジンガーPEGキット)

(ダイレクトイディアルPEGキット)

HEQ研究会:学術用語委員会

Pull / Push法

経皮的に挿入したガイドワイヤーを内視鏡下で把持し、経口的に体外へ出す

そのガイドワイヤーを利用し胃瘻カテーテルを経口的に挿入する

Pull法

Push法

Pull法①

造設部位の確認 穿刺してワイヤーの挿入と

スネアの把持

内視鏡でワイヤーを引いてくる

口からワイヤーを

引っ張り出す

提供:メディコン

1 2

3 4

Pull法②ワイヤーにカテーテルを

結ぶ

ワイヤーを引っ張りカテーテルを胃内に引き込む

内視鏡を再度挿入し位置、

出血の有無など確認

外部ストッパーの装着

提供:メディコン

1 2

3 4

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Introducer原法

内視鏡観察下でトロカール針を経皮的に胃内へ穿刺、内筒を抜去する

留置した外筒シースの内腔を通しバルーン型カテーテルを胃内へ挿入する

胃壁固定の併用が必須

バルンカテーテル

注射器

トラカール外筒

胃壁腹壁固定

Introducer 原法

穿刺用トロカール針

鮒田式胃壁固定具

細径バルーン型カテーテル(最大15Fr)

クリエートメディック社製

Introducer 原法カンガルーセルジンガーPEGキット

【STEP 1】 造設準備キット 【STEP 2】 造設ボタンキット

その他鮒田式胃壁固定具、縫合糸、、ペアン(クーパー)を準備

Introducer変法

胃壁固定後穿刺、GW挿入

GWに沿ってダイレーターで拡張

エクステンダーで伸ばしたカテーテルを挿入

Introducer変法 内視鏡像 表2 各PEG造設法の利点と欠点

Pull/Push法 Introducer原法 Introducer変法

利点

太い径(16-24Fr)のカテーテルが挿入可能

事故(自己)抜去のリスクは少なめ

穿刺針が細い

創感染リスクが少ない

内視鏡挿入は1回

(経鼻内視鏡で可能)

創感染リスクが少ない

内視鏡挿入は1回

(経鼻内視鏡で可能)

太い径(20-24Fr)のカテーテルが挿入可能

事故(自己)抜去のリスクは少なめ

穿刺針が細い

欠点

カテーテルが口腔内を通過するため創感染のリスクが高い

内視鏡挿入が原則的に2回必要

バルーン型カテーテルのため、事故(自己)抜去・早期破損のリスクがある

カテーテル径が細い

穿刺針が太い

穿刺・ガイドワイヤー挿入、ダイレーターによる拡張など手技がやや煩雑

腹壁の厚い症例は造設不可

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PEGが困難な場合の経腸ルート☆

経鼻経管栄養

胃内留置、十二指腸・空腸留置

消化管瘻

経皮経食道胃管挿入術(PTEG)

経皮内視鏡的空腸瘻造設術(Direct PEJ)

外科的消化管瘻(胃瘻、腸瘻)

P T E G 造 設法 P E G 合 併 症

PEG施行に伴う合併症

他臓器の誤穿刺(結腸・肝臓など)

出血(刺入部・胃内・腹腔内など)

消化管損傷(胃噴門部・食道など)

鎮静(sedation)に伴うトラブル

PEG施行後早期の合併症

瘻孔部感染

事故(自己)抜去

PEGカテーテルの種類と交換

PEGカテーテルの種類

交換時にはメーカー名、口径やシャフト長を把握しておく

カテーテル交換時におけるバルーン型とバンパー型の比較

バルーン型 バンパー型

利点

交換時の苦痛は

少ない

交換手技は容易で

比較的安全

耐久性が高い

(交換時期 4-6ヶ月)

事故抜去が少なめ

欠点

耐久性が低い

事故抜去が多め

(交換時期1-2ヶ月)

交換時の苦痛がある

交換手技がやや煩雑で交換時に内視鏡・透視などのチェックが必要な場合がある

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PEGカテーテルの選び方

在宅交換、ADL良好 在宅交換、ADL不良、老老介護

ADL良好

自己抜去リスク高い症例

ADL不良、老老介護

自己抜去リスク高い症例

チューブ型カテーテルの構造

HEQ研究会:学術用語委員会

ボタン型には必ず弁と接続チューブがある

交 換 時 期

バンパー型

バルーン型

4〜6ヶ月毎を目安とする。

1〜2ヶ月毎を目安とする。

カテーテルに問題が生ずれば随時交換する。

カテーテル誤挿入(腹腔内挿入)

誤挿入は許容できるが、栄養剤の誤注入は

重篤な事態を招く → 留置確認が大事

カテーテル留置の確認方法

入れ替えたカテーテルが胃内に確実に挿入されていることを必ず確認しなければいけない。

確実な方法は内視鏡・透視(造影)

確認方法の例として、胃内容物の吸引、あらかじめ注入しておいた色素の吸引、Air・水の注入・吸引などが行われるが確実とは言い切れない

胃内容物が吸引されないような場合は内視鏡あるいは透視下などで確認するべきである。

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カテーテルトラブル

カテーテル閉塞

事故(自己)抜去

バンパー埋没症候群

胃潰瘍

事故(自己)抜去の対応

瘻孔の確保

可及的速やかに、フォーレ、ネラトンカテーテル

(20Frの胃瘻カテーテルであれば16Fr程度)など

で瘻孔がふさがらないように内腔をキープ。

その後担当医に連絡する。

その後の処置で胃内に挿入されていることを確認できるまでは栄養剤の注入はしない。

医療機関を受診の際は抜けたカテーテルを持参する。

バンパー埋没症候群

内部バンパーは完全に埋没している

バンパー埋没症候群 完全埋没例

瘻孔周囲の潰瘍ストッパーのしめすぎなどが原因となる場合がある

瘻孔対側の潰瘍バルーンカテーテル先端の突出に起因する場合がある

カテーテルに起因する胃潰瘍

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バルーン対側の胃潰瘍(出血) バルーン水量と形状

A:カンガルーミニボタン(推奨充填量:7〜10ml)B :バラードMICKEY (推奨充填量:5ml)

3ml 7ml

5mlA B A B A B

A

A

AB

B

B

先端突出

スキントラブル

不良肉芽もれに伴う皮膚炎瘻孔 (創)感染

不良肉芽

瘻孔周辺に発生

赤く湿潤した小突起

浸出液、出血

対 処

硝酸銀液による処置

外科的切除

カテーテルを垂直に保つ

外部ストッパーの適度な緩み

ステロイド軟こう

もれに伴う皮膚炎

対 処

もれ防止対策

皮膚の洗浄

皮膚の保護

栄養剤のもれが持続

皮膚が常時湿潤

皮膚炎の発生

少量のもれにはこよりティッシュ

瘻孔開大・栄養剤のもれに対する対策

半日間程度カテーテルを抜去し放置して瘻孔を収縮してから再挿入する

垂直に立てて管理する

カテーテルを交換してみる(バンパータイプからバルーンタイプに変更、ラテックス素材のカテーテルの場合はシリコン製・またはポリウレタン製に)

注入時に右側臥位の半座位などの体位変換

胃腸蠕動促進薬の投与

栄養剤の半固形化

経胃瘻的空腸チューブ(PEG-Jチューブ)

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瘻孔 (創)感染

定 義

排膿・膿瘍がある場合は

確定。

また、発赤・腫脹・硬結・

疼痛等があり、抗菌剤投与

や局所の処置、栄養剤使用

の中止や延期を行った場合。

最近ではJainの基準が用い

られることが多い

消化器トラブル

下痢

便秘

胃食道逆流

下痢の成因と原因

栄養剤投与の状況

注入速度が速い、温度が低い

栄養剤、注入バッグ、チューブ等の細菌感染

高浸透圧栄養剤(エレンタール、エンテルード、ツインライン等)の投与。乳糖不耐症

薬物投与の状況

抗生剤、合成抗菌薬の長期投与

胃酸分泌抑制剤、消化管運動改善薬、マグネシウム含有薬剤や制酸剤の投与

感染性腸炎

下痢の対策

栄養剤の投与浸透圧の低い栄養剤に変更しゆっくり投与する

半固形化栄養剤の投与

抗生剤の投与糞便にてCD toxinが陽性であれば栄養剤・抗生剤投与を中止し、バンコマイシンを内服投与する

吸収不良小腸の吸収能力が回復するまで消化態栄養剤と経静脈栄養を併用する

GFO(グルタミン・ファイバー・オリゴ糖)で

腸内細菌叢の正常化

胃食道逆流の機序と原因

高脂肪栄養剤の使用

栄養剤の注入速度が速い

胃排出能の低下

食道裂孔ヘルニア

肥満、脊柱の弯曲

咳や悪心

一過性LES弛緩

LES圧低下

腹圧上昇

胃食道逆流は誤嚥性肺炎の原因として注意を要する

胃食道逆流の対策

※上記で改善しなければ、経胃瘻的腸瘻(PEG-J)を考慮

栄養剤注入前に胃内容を吸引する

栄養剤注入時の体位を半座位(約30or90度)とする

消化管運動機能改善を投与する

(プリンペラン・ガスモチン・エリスロマイシンなど)

胃排出能

脂肪成分を減らす

注入速度を100mL/時以下にする

半固形化を試みる

栄養剤

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液体経腸栄養剤の問題点

胃瘻孔からの栄養剤の漏れ現象

嘔吐や嚥下性肺炎の原因となる

胃食道逆流

栄養剤リーク

投与速度が早いと下痢を発症

下 痢

半固形化経腸栄養剤

2007年栄養材形状機能研究会で液状栄養剤に対して、固形化・半固形化・ゲル化・増粘化・粘度増強など形状を変化させた栄養剤をひっくるめて、半固形化栄養剤と称することになった。

寒天による固形化

市販されている栄養剤(ハイネゼリー、テルミールPGソフト、

メディエフ・プッシュケア)

REF‐P1(増粘剤)

イージーゲル(ゲル化剤)など

半固形化経腸栄養剤の特徴

栄養剤半固形化 胃-食道逆流が減少

一度に注入ができる嚥下性呼吸器感染症の減少

座位保持が不要介護者の負担が軽減

体位変換の継続

褥瘡悪化の予防

栄養剤胃内停滞時間延長

下痢の予防瘻孔からの栄養剤

リークの改善

市販の半固形化栄養剤と水分

栄 養 管 理持続投与法

投与開始第1日目 濃度 1.0kcal/ml

速度 20kcal/20ml/hr

エネルギー 480kcal/日

その後状態に応じて投与速度を20kcal/20ml

ずつ増量

投与開始後5、6日目 約2000kcal/日

間欠的投与法

投与量 100ml‐200ml /1時間以上

経管栄養投与スケジュール

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栄養剤の選択

半消化態栄養剤・濃厚流動食

消化器の安静を必要としない

消化態栄養剤・成分栄養剤

上部消化管で吸収、消化管の負担が小さい

特定成分強化免疫増強成分強化

微量栄養素強化

病態別呼吸不全 腎不全肝不全

耐糖能低下

経管栄養

糖代謝疾患用

食品 食品 食品

<アボット>グルセルナEx

250kcal/250ml

糖質を制限し、脂質におきかえた。

<テルモ>タピオンα

200kcal/200ml

砂糖を使わず、糖質50%以下に抑えている。糖質にタピオカデキストリンを使用。

<明治>インスロー400kcal/400ml

糖質にパラチノースを使用し、糖質の吸収に配慮。

肝疾患用

<味の素>ヘパンED

310kcal/300ml

BCAAを中心に、さまざまなビタミンやミネラルを配合。

食品

<アクトケア>ヘパスⅡ150kcal/125ml

BCAAの他、EPA・DHAなども配合。

<大塚>アミノレバンEN210kcal/200ml

BCAAを中心に、さまざまなビタミンやミネラルを配合。

医薬品医薬品

腎疾患用

食品

<明治>リーナレンMP

400kcal/250ml

少量・高エネルギー。蛋白質・カリウム・リン・ナトリウムを控え、糖質の吸収にも配慮。

食品

<テルモ>レナウェルA

200kcal/150ml

少量・高エネルギー。蛋白質・カリウム・リン・ナトリウムを控えている。食物繊維・鉄・水溶性ビタミンを強化。

リーナレンLPレナウェル3

呼吸器疾患用

<アボット>プルモケアEx

350kcal/240ml

低糖質で、呼吸商に配慮。

<コーワ>ライフロンQL200kcal/150ml

低糖質。コエンザイムQ10を配合。

<アボット>オキシーパ375kcal/250ml

低糖質で、呼吸商に配慮。消炎作用のEPAなどを強化。

食品

食品

食品

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<テルモ>テルミール2.0α

400kcal/200ml

少量・高エネルギー

<ネスレ>アイソカル2K

400kcal/200ml

少量・高エネルギー

水分制限疾患用

食品食品

<アボット>エンシュア・H375kcal/250ml

少量・高エネルギー

医薬品

免疫強化用

<大塚>アノム200kcal/200ml

核酸DNA・EPA・DHA・アルギニン・グルタミンを含む。抗酸化成分ポリフェノールなども配合。

食品 食品

<味の素>インパクト250kcal/250ml

核酸RNA・EPA・DHA・アルギニンを含む。

創傷・褥瘡用

<アボット>アバンド79kcal/24g

HMB・グルタミン・アルギニンを強化。

食品

<ネスレ>アイソカルアルジネード

100kcal/125ml

アルギニン強化。

<ニュートリー>ブイクレス80kcal/125ml

一日摂取基準の2~3倍のビタミン類を含有、微量元素・コエンザイムQ10も強化。

食品 食品

半固形化栄養剤半固形化栄養剤

大塚製薬

ハイネゼリーアクア容量250g

水分202g

熱量200kcal

粘度6000mPa・S

①誤嚥性肺炎の原因になりうる逆流が起こりにくい。②注入時間が短くてすむ。③胃の蠕動運動がおこりやすい。

半固形化栄養剤

(粘度調整食品による半固形化)

ジャネフ REF-P1カルシウムイオンと反応してゲル化。

カルシウム含量の多い流動食(栄養剤)を胃の中でトロリとさせる。

~経鼻胃管でも注入できる~

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メイバランスR《特徴》

水分・ナトリウム含量が多い(水分補給不要)

GREEN BLUE YELLOW

熱量:300kcal

水分:400ml

ナトリウム:1.5g

内容量:447ml

熱量:300kcal

水分:500ml

ナトリウム:1.9g

内容量:547ml

熱量:400kcal

水分:500ml

ナトリウム:1.9g

内容量:562ml

熱量:300kcal

水分:400ml

食塩相当量:1.5g

メディエフバック

メイバランスRGREEN

熱量:300kcal

水分:251ml

食塩相当量:1.4g

朝 昼 夕 合計

熱量

1パック

300kcal

1パック

300kcal

2パック

600kcal

1200

kcal

水分

251ml

白湯

200ml

251ml

白湯

200ml

502ml

白湯

100ml

1504

ml

朝 昼 夕 合計

熱量

1パック

300kcal

1パック

300kcal

2パック

600kcal

1200

kcal

水分

400ml

白湯

0ml

400ml

白湯

0ml

800ml

白湯

0ml

1600

ml