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図1 RA患者におけるDMARDs使用状況 図2 RA患者における疾患活動性の推移
山中 寿. 日本内科学会雑誌. 100(9)2447(2011)山中 寿. 日本内科学会雑誌. 100(9)2447(2011)2000 2002 2004 2006 20102008
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(%) (mg) (点)NSAIDsMTX生物学的製剤ステロイド
2000 2002 2004 2006 20102008
9.0
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MTX dose(mg/week)PSL dose(mg/day)
DAS28JHAQ(機能障害度)
2000 2002 2004 2006 20102008
4.5
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3.5
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関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis:RA)は全身の関節に炎症を来す慢性炎症性疾患であり、全人口の0.5~1%が罹患するといわれている。コントロール不良になると、軟骨や骨の破壊による日常生活動作の制限や生活の質の低下が問題となる。 近年、RA治療に生物学的製剤が広く用いられるようになり、これまでの除痛を目的とした“Care”から寛解を目的とした“Cure”へと、RA治療はパラダイムシフトした。現在では、メトトレキサート(MTX)による積極的な治療、早期からの生物学的製剤の使用がグローバルスタンダードとなっている。RAの薬物療法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・ステロイド薬(プレドニゾロン:PSLなど)・抗リウマチ薬(Disease Modifying Antirheumatic Drugs:DMARDs)に大別される。NSAIDsやステロイド薬は除痛効果を有するが、関節破壊の抑制効果はなく対症療法として用いられる。DMARDsはRA
の疾患活動性を抑制し、予後を改善し得る薬剤であり、MTXや生物学的製剤がその代表である(表1)。特に生物学的製剤は、関節破壊の進行抑制に効果を示し、発症早期からMTXと併用することで、薬物療法終了後の寛解維持にも寄与することが報告されている1)。 我 は々、当センター通院中のRA患者を対象とした前方視的コホート研究を実施しており、2000年10月にJ-ARAMIS(Japanese Arthritis Rheumatism and Aging Medical Information System)を開始し、その後2006年4月からIORRA(Institute of Rheumatology,Rheumatoid Arthritis)と改称し、患者情報・医師評価・臨床検査値に基づくデータベースを構築している。 IORRAコホートより、2000年から2010年までのRA治療薬の変遷を示す(図1)2)。MTXの使用頻度は2000年から2010年にかけて約30%から約70%にまで急増している。生物学的製剤は年々使用頻度が増加しており、2010年には12%以上の患者に使用されている。この10年間でRAの疾患活動性を示すDAS28(Disease Activity Score)は順調に低下しており(図2)2)、MTXや生物学的製剤の使用頻度の増加によってRA治療が向上しつつあることが示唆された。
MTXや生物学的製剤はRA治療に有用である一方、免疫抑制作用を有するため日和見感染症の合併が懸念される
RA患者の帯状疱疹罹患率
関節リウマチの薬物療法の変遷
浦野 和子 先生 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 准講師
基礎疾患(医原性含む)と帯状疱疹Session 3
関節リウマチと帯状疱疹
表1 RA治療に用いられる主な生物学的製剤
● 抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤 〈インフリキシマブ,アダリムマブ,ゴリムマブ〉● 完全ヒト型 可溶性 TNFα/LTαレセプター製剤 〈エタネルセプト〉● ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体製剤 〈トシリズマブ〉● T細胞選択的共刺激調節剤 〈アバタセプト〉
6
我々は以前、当センターのRA患者の観察研究コホートを用いて日本人RA患者の帯状疱疹発症の危険因子を検討した3)*1。2000年4月から2006年9月に当センター通院中のRA患者1,276名中、帯状疱疹を発症した103名(平均年齢63.2歳)を対象とした。時間依存型ハザードモデルで解析した結果、加齢とMTX内服が帯状疱疹発症の危険因子となることが明らかとなった(表3)*1。しかし、PSL内服やJHAQ*2
(Japanese version of Health Assessment Questionnaire)を指標としたRAの疾患活動性などについては、帯状疱疹の発症と有意な関連は認めなかった。ドイツで実施されたRA患者における帯状疱疹発症の危険因子を検討した報告6)
では、加齢、エントリー時の疾患活動性、PSL10 mg/日以上の投与に加えて、インフリキシマブとアダリムマブの投与が帯状疱疹発症の危険因子であることが示されている。
今後もIORRAコホートを用いてさらに症例を集積し、疾患活動性やPSL内服、そして生物学的製剤の使用が帯状疱疹の発症に与える影響について検討する必要がある。
(表2)。中でも結核、ニューモシスチス肺炎を合併すると予後不良となる。また、日和見感染症の中では帯状疱疹は発症頻度が高く、重症化する症例や帯状疱疹後神経痛に移行する症例があり問題となっている。 後述の2000年から2006年に我々が当センターでRA患者の帯状疱疹発症の危険因子を検討したコホート研究では、RA患者1,276名中103名に帯状疱疹の発症を認めた3)*1。本邦の一般人口での帯状疱疹発症動向の把握を目的に宮崎県で実施された大規模疫学調査「宮崎スタディ」4)における帯状疱疹罹患率は4.33/1,000人年(以下、罹患率の/1,000人年は略)であった。今後は、症例を集積してRA患者における帯状疱疹の罹患率を解析する必要があると考えられた。 海外では、2007年に英国と米国におけるRA患者群と非RA患者群の帯状疱疹罹患率が報告されている5)。英国での調査ではRA患者での帯状疱疹発症率は10.60で、非RA患者では4.10とRA患者で有意に高くなっていた〔補正ハザード比:1.65(95% CI;1.57- 1.75)、Cox比例ハザードモデル〕。また、米国でもRA患者群の罹患率は9.83、非RA患者群では3.71であり、RA患者で有意に高かった〔補正ハザード比:1.91(95% CI;1.80- 2.03)、Cox比例ハザードモデル〕。このように海外においても、RA患者の帯状疱疹発症リスクは一般人口よりも明らかに高いと考えられる。
RA患者における帯状疱疹の発症リスクは一般人口よりも高く、さらに、RA治療に用いられるMTXの投与が発症の危険因子となることが明らかとなった。また、RAの疾患活動性、PSLや生物学的製剤の投与も危険因子になり得ると考えられ、RAを診療する上で、帯状疱疹の発症には十分に注意しなければならない。現在では生物学的製剤の使用頻度が増加しており、今後も継続してRA治療薬の帯状疱疹発症リスクについて検討する必要があると考える。
まとめ
RA患者における帯状疱疹発症の危険因子
1) Lie E et al. Ann Rheum Dis. 70(12)2103(2011)2) 山中 寿. 日本内科学会雑誌. 100(9)2447(2011)3) 浦野和子,谷口敦夫. リウマチ科. 42(1)39(2009) 4) 外山 望. 宮崎県医師会医学会誌. 35(1)7(2011)5) Smitten AL et al. Arthritis Rheum. 57(8)1431(2007)6) Strangfeld A et al. JAMA. 301(7)737(2009)
表3 RA症例における帯状疱疹の危険因子
*1 講演時に発表したデータは論文投稿中のため、公表済みの中間報告をもとに記載している。
*2 JHAQ:衣類着脱や身支度「起床」「食事」「歩行」など8つのカテゴリーからなる全20問で、動作がどのくらい困難かを「何の困難もない(0点)」から「できない(3点)」まで4段階で患者さんに回答してもらい、その結果をスコアで表したもの。
ハザード比
1.54
11.642.122.93
11.221.56
11.4711.05
11.321.141.21.610.77
1.410.781.27
0.17
-0.20.0510.041
-0.480.085
-0.170.990.9
-0.350.680.250.0290.23
0.380.210.45
p値因子
*3 IL-10遺伝子多型:ー1082(A/G),ー819(T/C),ー592(A/C)で構成
表2 RAに合併する日和見感染症の例
● 結核● 非結核性抗酸菌症● ニューモシスチス肺炎
● サイトメガロウイルス感染症● アスペルギルス感染症● 帯状疱疹
女性年齢 <45 45~59 60~74 75~JHAQスコア <0.25 0.25~0.99 1.00~CRP(mg/dL) <0.2 0.2~0.5 0.6~1.4 1.5~血沈(mm/h) <20 20~31.9 32~50.4 50.5~MTX内服PSL内服>5mg/日IL-10haplotype*3
ATA ACC GCC
浦野和子,谷口敦夫. リウマチ科. 42(1)39(2009)