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核融合計測用 高速中性子指向性検出器の開発
富山高等専門学校 エコデザイン工学専攻2年
高田研究室 中田 直樹
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2015/09/08 廃止措置等基盤研究・人材育成プログラム 第4回 富山セミナー
核融合炉における中性子計測の役割
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核融合炉の実用化に向けて世界規模で研究がおこなわれている
ITER計画(国際熱核融合炉計画) 大型ヘリカル装置(Large Helical Device)計画
核融合実験装置において中性子源の空間的・時間的挙動を モニターすることはプラズマ制御等に利用される重要な計測項目
指向性を持った高速中性子検出器
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中性子源の空間的分布を測定するために 通常の手法ではコリメータを用いる
空間的制約がある核融合炉周辺で 巨大なコリメータ(総重量数十トン)が必要となる
問題点
解決策として、コンパクトで指向性を持った 高速中性子検出器を多数設置する方法が考えられている
Detector 指向性を持った検出器では
入射方向によって検出効率が異なる
背景と目的
シンチレーティング光ファイバー(Sci.Fi.)による
反跳陽子型高速中性子指向性検出器が開発されてきた
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既往研究では検出器の設計が十分ではなかった
核融合科学研究所LHD装置における重水素実験が予定されている
実験に向けて検出器の最適化を行う
指向性検出器の1つとして・・・
1. DT中性子(14.1MeV)に対して指向性を有する 2. γ線による波高がDT中性子の波高に比べて小さい 3. 高速応答・耐放射線性に優れる
Sci.Fi.型検出器の特徴
Sci.Fi.とは、荷電粒子が通過すると 発光する細い光ファイバー
検出器に使用しているSci.Fi.
弾性散乱による高速中性子(MeV)検出の原理
中性子ー水素原子間の弾性散乱により 散乱中性子(n1)と反跳陽子(p)が生成
入射中性子 (n0)
𝐸𝑛0 𝐸𝑝 反跳陽子 (p)
散乱中性子(n1) 𝐸𝑛1
散乱角 𝜃
検出器
A:質量数
電荷を持たない中性子を反跳陽子によって間接的に測定できる
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Sci.Fi.に基づく高速中性子指向性検出器
• 各Sci.Fi.間に反跳陽子遮蔽領域を設け、Sci.Fi.間のクロストークを防ぐ構造
• 反跳陽子発生の前方性を活かし、 信号波高値に閾値を設けることで 指向性を実現
Recoil Proton
正面入射:エネルギー付与量大→波高値大 斜め入射:エネルギー付与量小→波高値小
核融合中性子源施設FNSにおける実験
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FNS施設俯瞰図
FNS(Fusion Neutronics Source)とは・・・ ・日本原子力研究開発機構(茨城県-東海村)内の施設の1つ ・14MeV中性子に関する諸特性を実験的に評価するために建設された施設
80°ビームラインを使用した実験 (中性子コリメータ無し)
Sci.Fi.型検出器の条件 • 遮蔽材:テフロン • Sci.Fi.径:1mm 、 Sci.Fi.長:5cm , 10cm
80°ビームライン
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FNSにおけるDT中性子照射実験結果
DT中性子に起因するエッヂが明瞭に観測できた 波高分布のエッヂは10cmよりも5cmの方が明瞭
DT中性子照射時の波高分布の一例 (横軸:波高値、縦軸:波高値毎のカウント数)
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FNSにおけるDT中性子照射実験結果
実験結果、計算結果の角度依存性比較
波高分布測定結果より、一定の閾値ch以上の値を積算し、角度依存性を求めた
角度分解能は、 PHITSコードの計算結果よりも悪い結果となった
角度分解能の劣化要因
• γ線の影響 – 検出器体系内で発生する二次γ線の影響については、
PHITS計算内で扱う場合/扱わない場合の差が小 → 体系内の二次γの影響ではないと考えられる
– 考えられるとすればBGのγ線
• シンチレーション光収集過程 – 臨界角以下に発生した光子は全反射により伝搬 – 臨界角以上に発生した光子は遮蔽材の内壁で反射しながら伝搬
• 陽子のエネルギー付与位置によって収集効率が異なる • 特に0°に近い入射の場合、Sci. Fi.自身の自己遮蔽により、 入射位置に近い場所で反跳陽子が発生しやすく、 伝搬時の反射の影響を受けやすい
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Sci.Fi.による自己遮蔽の評価
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PHITSを用いて、中性子を照射した場合の陽子の発生量を計算
1 2 ・・・ DT中性子を0°方向からSci.FI.に照射した場合の陽子のFluxの計算結果
Sci.Fi.径:1mm、Sci.Fi.長さ10cm
中性子
図の左側から中性子を照射 その結果、右側では反跳陽子のFluxが少ない • イベント数 左端(ファイバー前方部分):5.91×10-5 [1/source] 右端(ファイバー後方部分):2.30×10-5 [1/source]
自己遮蔽の影響により反跳陽子の発生数が半分以下になった
光子の伝搬時の損失
―臨界角以下の光子は全反射により伝搬 ―臨界角以上の光子は遮蔽材の内壁で反射しながら伝搬
PMT
Pb Pb
137Cs
Detector
137Csを用いてγ線入射位置と伝搬時の損失の関係について測定
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・遮蔽材の内壁の状態 ・シンチレーション光の発光位置
によって効率が変化する
シンチレーション光収集過程
0cm 10cm
γ線入射位置について ・PMT側を0cm ・0.5cm~9.5cm間を 1cm刻みで変更
光子の伝搬時の損失
γ線入射位置とカウント数の関係
・1.5cmでは低波高値側のカウント数が増加 ・3.5cm以降の高波高値側のカウント数は0.5cmの1割程度
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波高分布測定結果
伝搬時の損失が大きく、自己遮蔽の影響も合わせて考えると、 現在の検出器の状態では、Sci.Fi.の長さは3cm以下がよい
γ線感度の低減について
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PHITSを用いて同じエネルギーの中性子とγ線をそれぞれ検出器正面より照射 Sci.Fi.形状を変えた場合のエネルギー付与分布を計算
14MeVのγ線を照射した場合の エネルギー付与分布
14MeVの中性子を照射した場合の エネルギー付与分布
最大付与エネルギー付近のイベント数に注目すると、 径を細くした場合:中性子は半分程度、γ線は1割以下 長さを短くした場合:中性子とγ線、どちらもイベント数はあまり変わらない
γ線感度を低減したい場合、径を細くした方が効果がある
Sci.Fi.形状と検出器性能の評価
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Sci.Fi.の径と長さを変化させた場合について、 角度分解能と検出効率を、PHITSを用いて計算
自己遮蔽、伝搬時の損失、γ線感度を考えると Sci.Fi.の径を細く、長さを短くした方が良い
検出器として一定の感度は必要
効率と角度分解能の計算結果(エネルギー閾値:13MeV) 左:径を0.5mmで固定、長さを変化 右:長さを10cmで固定、径を変化
LHD重水素実験に合わせたSci.Fi.形状の設計
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JT-60Uと同程度のトリトンが閉じこめられると仮定すると、 最大中性子発生量放電の際は105 n/cm2/s程度になると考えられる
・中性子発生量について
13MeV以上のエネルギーを付与するカウント数は次のようになる
※直径1inchの受光面を持つPMTに並べることができるSci.Fi.の本数
ただし、実際の測定時には光子伝搬の損失等により、 計数率は表の値よりも下がる
Sci.Fi.直径[mm]
Sci.Fi.長さ[cm]
0°入射時の効率最大中性子発生量放電時のSci.Fi.1本当たりの計数率[cps]
37本※のSci.Fi.で得られる計数率[cps]
0.5 3 0.001560 30.63 11330.5 5 0.002236 43.90 16240.5 10 0.004108 80.65 2984
1 3 0.004952 388.9 1.439×104
1 5 0.007898 620.3 2.295×104
1 10 0.01297 1019 3.770×104
まとめと今後の予定
計数率の計算結果とPMT等の制約からSci.Fi.の径、長さを決定する
遮蔽材の内壁を鏡面加工することで光子の伝搬時の損失を抑える
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今後の検出器の設計について
LHD重水素実験に向けてSci.Fi型検出器の最適化を行っている
核融合中性子源施設にて実験を行った結果、 いくつかの設計課題が明らかとなった
• Sci.FI.自身による自己遮蔽 ― 0°入射の場合、ファイバー後方部分での反応が少ない
• 光子の伝搬時の損失 ― 伝搬距離が4cm以上では、伝搬される光子は一割程度になる
• γ線の影響 ― Sci.Fi.径を細くすることによって低減可能
明らかとなった設計課題
まとめ