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資源開発環境調査 南アフリカ共和国 Republic of South Africa

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資源開発環境調査

南アフリカ共和国

Republic of South Africa

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目 次

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情·································································1

2. 政治・経済概要···························································2

3. 鉱業概要·································································4

4. 鉱業行政·································································9

5. 鉱業関係機関····························································13

6. 投資環境································································13

7. 地質・鉱床概要··························································15

8. 鉱山概要································································18

9. 新規鉱山開発状況 ························································32

10. 探査状況·······························································33

11. 製錬所概要·····························································35

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ·························38

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造··························································39

2. 鉱床····································································43

3. 鉱床胚胎有望地域 ························································70

資料(統計、法律、文献名、URL 等)··········································72

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- 1 - 南アフリカ

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情

1-1. 面積 122万㎢

1-2. 人口 4,483万人(2003 年南ア国勢調査)、人口増加率 1.2%

1-3. 首都 プレトリア

1-4. 人種 黒人 79%、白人 9.6%、カラード(混血)8.9%、アジア系 2.5%

1-5. 公用語 英語、アフリカーンス語、バンツー諸語(ズールー語、ソト語等)の

合計 11 語が公用語

1-6. 宗教 キリスト教(人口の約 80%、ヒンズー教、イスラム教)

1-7. 地勢等

北半球の同緯度地域(台湾ー九州に相当)に比し、海流や高度の関係で温暖で乾燥(年

間平均気温:プレトリア 17.5℃、ケープタウン 17℃)。

南アの地勢はお盆を伏せた形に似ており、インド洋に面した東及び東南海岸地帯から内

陸に向かって急速に高くなって高原となっている。高原はそのまま奥地まで続き、一部は

砂漠状態となって西海岸に向かってゆるく傾斜している。このため南アの大部分は海抜

900m以上であり、国土の約 40%が 1,800m 以上の高地である。首都プレトリアは約 1,400

m、ヨハネスブルグは約 1,800m の高地にある。

出典:ARC レポート(2003)

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2. 政治・経済概要

2-1. 政体 共和制

2-2. 元首 ターボ・ムヴィエルワ・ムベキ大統領

2-3. 議会 二院制(全国州評議会 90 名、国民議会 400 名)

2-4. 政治概況

1989 年デ・クラーク大統領就任以来、アパルトヘイト撤廃に向けての改革が発展。そ

の集大成として 1994 年 4 月 2 の南ア史上初の黒人を含む全人種参加の下で総選挙(制憲

議会選挙及び州議会選挙)が実施され、5 月にはマンデラ大統領が選出された。

民主化 10 周年に当たる 2004 年 4 月に民主化達成後の 3 度目となる総選挙が実施され、

与党 ANC が前回を上回る約 70%の得票率を得て圧勝。その結果を受けて召集された国民

議会においてムベキ大統領が再任された。5 月に彼は貧困と未開発を解決するため、経済

の成長と発展による雇用の創出、貧困撲滅のための社会保障制度の構築などを軸とする所

信表明を行った。

2-5. 主要産業 農畜業:とうもろこし、柑橘類、その他の果物、小麦、砂糖、羊

毛、皮 革類

鉱工業:金、ダイヤモンド、プラチナ、ウラン、鉄鉱石、石炭、銅、ク

ロム、マンガン、石綿、食品、製鉄、科学、繊維、自動車、そ

の他各工業

2-6. GDP 1,135 億ドル 一人当たり 2,600 ドル(2002 年)

2-7. 通貨 ランド(Rand)

2-8. 為替レート 1US$=6.2095R

年末 1999 年 2000 年 2001 2002 年 2003 年

1US$= 6.15450 7.56450 12.12650 8.64000 6.64000

(International Financial Statistics 2004)

2-9. 貿易(2002 年)

輸出 377 億ドル:金、貴金属、鉱物製品、食品、繊維製品、ダイヤモンド

輸入 324 億ドル:機械、自動車類、化学製品、科学機器、繊維製品、プ

ラスティック、ゴム

2-10. 対日貿易(2003 年)

輸入 2,348 億円:輸送機械(自動車・部品)、原動機、バス、トラック

輸出 4,158 億円:プラチナ、パラジウム、合金鉄、石炭、鉄鉱、金(非貨幣用)、

木材チップ

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- 3 - 南アフリカ

2-11. 経済概況

19世紀後半にダイヤモンド、金が発見されてから、南ア経済は鉱業主導で成長し、これ

によって蓄積された資本を原資として製造業及び金融業が発展するというパターンをとっ

てきた。しかし2001年のGDP部門別内訳を見ると、第一次産業10.0%(農業4.2%、鉱業5.8%)、

第二次産業(製造業20%、エネルギー等3.4%、建設業3.1%)、第三次産業63.5%(商業13.7%、

運輸業10.9%、金融保険業19.6%)となっている。近年の傾向としては、かつての主力産業で

あった鉱業(90年の対GDP比9.7%)の比率が減少を続けている一方、金融保険(90年の対GDP比

は14.5%)の割合が拡大するなど、先進国同様、南ア経済は第三次産業にシフトしつつある。

他方、貿易構造は依然として一次産品依存型で、輸出では鉱物資源への依存が依然として

高い。なお、輸入では先進国からの機械類の比率が大きい。

1994年、南ア経済は、民間消費と民間投資の回復により上昇軌道に乗り、1993~95年に

は製造業への投資が牽引力となって3%を越える成長率を記録した。しかし1997~98年にな

ると内需縮小と世界経済の低迷によって一次産品価格が大幅に下落し、貿易収支が悪化し

た。

また、通貨当局はランド防衛のために高金利政策を維持したため、国内の投資は低迷し、

1998年第3四半期の成長率はマイナス2.5%に転じ、98年通年の成長率は0.8%まで落ち込んだ。

しかし、1999年に入ると景気は回復し始め、経済成長率は2.1%(1999年)、3.4%(2000年)、

2.2%(2001年)、3.0%(2002年)と回復基調にある。しかし、南アの経済成長は2002年に実質

3%成長を達成した後、2003年第1四半期は1.5%に低下、第2四半期は更に1.1%と四半期では

1998年第4四半期以降 も低い成長となった。2003年の経済成長は、政府予測の3.3%を下回

ることが確実となっており1%台に落ち込むとの見方が強い。2003年に入り9月末までにラン

ドがドルに対し20%上昇しており、同国製造業のコスト競争力が低下し輸出が減少している。

2002年の経済成長は輸出製造業と農業が両軸となり牽引していたが、2003年に入り両産

業ともにマイナス成長を記録している。水不足により穀物収穫高が減少しており農林水産

業の実質GDP成長率は、2003年第2四半期には年率換算季節調整済み実質成長率はマイナス

0.4%に落ち込んだ。

また製造業ではランド高により輸出競争力が低下、安価な輸入品の流入が増加している。

特に衣料・繊維、木材、電器機器製品の生産が減少している。このため2002年は4%と高い

成長を記録していた製造業は、2003年第2四半期にマイナス0.8%まで落ち込んでいる。この

他、2002年以降、上昇傾向にあった建設業では、住宅建設の需要は依然として高いものの、

金利上昇により事務所、工場建設などの建設コストが増加しているため第2四半期に入り

1.8%に成長が低下している。

国内需要は堅調であり、実質国内総支出は2003年第1四半期3.7%、第2四半期5.7%の成長

となった。実質家計支出は、2003年第1四半期、第2四半期に季節調整済み年率換算で2.5%

増加し成長を持続している。

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- 4 - 南アフリカ

国内投資は民間鉱業における白金鉱山開発への投資、国営運輸会社トランスネットが、

機関車、貨車の近代化投資を実施、また東ケープ州のクーハ産業開発区において新たな商

業港の建設が進んでいる。そのため総固定資本形成は2003年第1四半期に7.8%と高い成長を

達成した。しかし、製造業、農業では生産減に伴い投資は低下、国営企業による投資も輸

送部門を除き減少しており、第2四半期は5.7%に減速している。

経済成長の低下を受けて、2003年に入り雇用も減少している。南ア統計局の「雇用と所

得」と題する報告書によれば、2002年12月から2003年3月の間に製造業で約4,000人、鉱業

で1,000人の雇用が失われている。南アの失業率(15歳~65歳)は、2003年3月に31.2%と2002

年9月30.5%から増加した。職探しを諦めた人々を含むと失業率は42.1%に達する。ランド上

昇により鉱業、輸出製造業における生産減少から今後も雇用は更に減少すると予測される。

物価は2002年に10%を超えていたが、政府の金融引締め政策、ランド上昇、石油価格及び

輸入製品価格が下落しており2003年に入り急速にインフレは低下している。消費者物価指数

は、2002年11月に14.5%を記録した後、下落に転じ2003年8月は5.2%まで低下した。

ランドは2002年にドルに対し39.4%上昇、2003年に入り9月末までに20%上昇しており、

2001年に記録した36.3%の下落を相殺し、2003年10月1日には2000年9月以来となる1ドル:

6.9ランドまで上昇した。

3. 鉱業概要

3-1. 鉱産品目別生産量

南アフリカ共和国は、多くの鉱物資源が賦存し、金、白金族金属、クロム、マンガンに

ついては世界一の埋蔵量で、それぞれ金は 40%、白金族金属は 88%、クロムは 78%、マン

ガンは 80%のシェアを有する。また、金、白金、クロムの鉱石生産でも世界一で、金、白

金、鉄鉱石、マンガン、フェロクロム、クロム鉱石などの主要輸出国でもある。鉱業分野

は国全体の雇用の約 5%、輸出金額の約 3 分の 1 を担う。南ア GDP に占める鉱業分野の割

合は、1910 年に 28%であったが 70 年には 10%となり 02 年時点で 5%まで低下、国家税収に

対する鉱業分野の寄与率も 近では 10~15%となっている。 近、US ドルに対するランド

高の影響を強く受け、南アの 03 年、鉱業収益から得られる税金、鉱業関係収入はかなり

減少。入手可能な統計データから、一次鉱産品輸出額は、前年比 19%の減少、02 年の 1,073

億ランドから 03 年は 868 億ランドに減少したと推計されている。

主要鉱産物の産出量は第 3-1 表のとおりである。

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- 5 - 南アフリカ

第 3-1 表 南アフリカ共和国の主要非鉄金属の生産量(2003 年)

鉱 種 南ア(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

銅鉱石(千 t) 90.0 13,675.6 0.7 17

銅地金(千 t) 95.2 15,236.7 0.6 24

鉛鉱石(千 t) 40.3 2,850.5 1.4 10

鉛地金(千 t) 53.0 6,864.7 0.8 22

亜鉛鉱石(千 t) 45.6 9,167.6 0.5 20

亜鉛地金(千 t) 116.0 9,806.5 1.2 22

ニッケル鉱石(千 t) 43.7 1,284.2 3.4 9

ニッケル地金(千 t) 43.7 1,208.0 3.6 10

アルミニウム地金

(千 t) 732.7 28,001.3

2.6 9

金鉱石(t) 375.8 2,349.4 16.0 1

銀鉱石(t) 79.7 18,207.5 0.4 19

アンチモン鉱石(t) 5,023 154,538 3.3 3

ウラン鉱石(t) 819 35,372 2.3 8

クロム鉱石(千 t) 7,974.0 15,826.9 50.4 1

チタン鉱石(千 t

TiO2) 850.0 4,221.0 20.1 2

白金鉱石(t) 148.3 195.7 75.8 1

マンガン鉱石(千 t) 3,799.0 24,345.4 15.6 2

コバルト地金(t) 307 43,028 0.7 13

バナジウム(t) 15,000 60,000 25 2

出典:World Metal Statistics Yearbook 2004

Mineral Commodity Summaries 2004(バナジウム)

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- 6 - 南アフリカ

3-2. 埋蔵量

第 3-2 表 南アフリカ共和国の主要非鉄金属の埋蔵量(2003 年)

鉱 種 南ア(A) 世 界(B)

(A)/(B)

(%)

ラン

ニッケル(t) 12,000,000 140,000,000 8.6 5

金(t) 36,000 89,000 40.4 1

鉛(千 t) 700 140,000 0.5 10

アンチモン(t) 250,000 3,900,000 6.4 4

クロム(千 t) 200,000 1,800,000 11.1 2

マンガン(千 t) 4,000,000 5,000,000 80.0 1

白金族金属(kg) 70,000,000 80,000,000 87.5 1

希土類(t) 400,000 150,000,000 0.3 6

トリウム(t) 39,000 1,400,000 2.8 6

イルメナイト(千 t) 220,000 740,000 29.7 2

ルチル(千 t) 24,000 87,000 27.6 2

バナジウム(t) 12,000,000 38,000,000 31.6 2

イットリウム(t) 5,000 610,000 0.8 7

ジルコニウム(百万

tZrO2) 14 72 19.4 2

ハ フ ニ ウ ム ( 千

tHfO2) 290 110026.4 2

鉄鉱石(百万 t) 1,500 150,000 1.0 12

出典:Mineral Commodity Summaries 2004

3-3. 南アフリカ共和国から日本への主たる輸入鉱石等

我が国への南アフリカ共和国からの主要輸入鉱石は、マンガン鉱石、クロム鉱石、

バナジウム精鉱、白金族等であり、特にマンガン鉱石類、クロム鉱石類、白金族は第

1 位となっており、レアメタル等の重要な供給国となっている。

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- 7 - 南アフリカ

第 3-3 表 日本の南アフリカ共和国からの主要非鉄金属輸入実績(2003 年)

鉱 種 南ア(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

銅鉱石(千 t) 12 4,106 0.3 12

鉛鉱石(千 t) 5 184 2.7 5

アルミニウム地金(千 t) 198 2,042 9.7 4

金地金(kg) 0 49,405 0.0 25

クロム鉱石(千 t) 74 185 40.1 2

コバルト地金(t) 192 12,312 1.6 10

チタン鉱石(千 t) 8 457 1.7 7

ニッケル地金(t) 6,901 61,344 11.2 4

フェロクロム(千 t) 546 914 59.8 1

フェロバナジウム(t) 3,459 4,251 81.4 1

マンガン鉱石(千 t) 726 1,192 60.9 1

五酸化バナジウム(t) 1,962 3,810 51.5 1

白金族金属(kg) 70,693 130,526 54.2 1

金属マンガン(t) 7,659 64,184 11.9 2

金属クロム(t) 40 2,930 1.4 5

マンガン系合金鉄(千 t) 33 370 8.8 3

出典:貿易白書 2003.12

3-4. 鉱種別の生産状況

3-4-1. PGM:白金族金属

南アフリカ共和国の鉱物エネルギー省(Department of Minerals and Energy)によれば、

2002 年の PGM 生産量は総量 8 百万 oz であった。生産企業は、Anglo Platinum 社、Implats

社、Lonmin社及び Northam社の 4大生産者のほか Aquarius社が 1999年に Kroondal鉱山、

2002 年に Marikana 鉱山、Messina 社が Voorspoed 鉱山で 2002 年に生産に加わった。現在、

Anglo Platinum 社の Modikwa 鉱山、Twickenham 鉱山、Implats 社の Marula 鉱山及び

Aquarius 社の Everest South 鉱山で建設が進んでいる。また、大手・中堅企業のプロジ

ェクトとして、Anglo Platinum 社 Der Brochen、 Stydrift、Implats 社 Kennedy Vale、

Messina 社 Doornvlei、Cluff 社 Blue Ridge、Harmony Gold 社 Kalplats、Linmin 社/Anglo

Platinum 社 Pandora 及び Avmin 社/Implats 社 Two Rivers 等が企業化調査を実施。これら

のプロジェクトの多くは 2005 年生産開始を目標にしており、全プロジェクトを合計する

と、PGM 3 百万 oz が新たに南アから供給され、11 百万 oz を超える生産量となる見込みで

ある。

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- 8 - 南アフリカ

一方、こうした各社の増産傾向に対し、南アの通貨であるランドが US ドルに対して高

くなってきている影響を主因として、各社の収益は悪化している。例えば、Implats 社は

2002 年 7 月から 2003 年 6 月の白金生産量は同社史上 高で、白金価格も高かったにもか

かわらず、ランドの対 US ドルレート上昇が白金価格 11%減に相当したため、売上げが減

少、利益も 20%ほど減少させたとしている。Anglo Platinum 社も、白金生産コストが 19.6%

上昇し、収益が 20 億 9 千万ランドまで 63%減少した。減少の主因はやはりランド高で、

同社は 2 大コストである労務費 41%、在庫費 29%を中心に全体的に見直すという。また同

社は 2006 年までに白金精製量を 3.5 百万オンスに増やすことを計画していたが、 近の

ランド高等を理由に 2006 年までの精製量を 2.9 百万オンスと目標の引き下げを行ってい

る。

3-4-2. ベースメタル:銅

Rio Tinto 社が 大株主(49.2%)の Palabora Mining 社(南ア)の Palabora 銅鉱山(南ア)

では、2002 年 1 月に開始した坑内採掘は、30,000t/日の計画に対し 2003 年末においても

フル操業に到達できず、2003 年 4 四半期平均で 22,000t/日に留まり、2004 年第 1 四半期

平均でも 20,200t/日と減少。鉱石の品位が高かったこと等により銅生産量としては増加

しているものの、2004 年 2 月、3 月にコンベアベルト破断や水の浸入で生産が中断、鉱石

抜き出し口の二次破砕問題も引き続き生産のボトルネックとなっている。2003 年の同鉱

山の粗鉱破砕量は、露天採掘分が 550 万 t(前年比 17.9%減)、坑内採掘分 600 万 t(81.8%

増)であった。精鉱中銅量は 52,400t で 0.4%増、銅カソード生産量は 73,400t で 10%減で

あった。フル操業に達しないため不足した製錬用精鉱は買鉱によった。

3-4-3. 金

2002 年の金鉱業は、初期のランド安とランドによる金価格の継続的な上昇により好調

であった。これは 近の南アの金の平均回収品位を引き下げているが、売り上げに対する

3%のロイヤルティが導入されると採掘品位を上昇させ、いくつかの鉱山では鉱山寿命を短

くするといわれている。また、長期的には鉱山労働者のエイズ問題という潜在的な問題も

あり、南アの金鉱業の見通しを不透明にしている。

また、 近の傾向として大手の金生産者が、BEE 政策の影響もあり、その資産をより小

規模な生産者に売却するという傾向がみられる。Avgold はその ETC の鉱業権益を 3 億ラ

ンドで Metorex と MCI Resources (前の全国鉱山労働者組合の企業)に売却。Anglogold は

Free State 鉱山を Harmony 社と ARMgold 社(黒人経営企業)の子会社である Freegold 社に

売却した。Harmony 社と ARMgold 社は合併し、Avgold 社をその傘下に入れるという集約化

も行われている。

また 近の Anglo American 社の発表によれば、南アの金鉱山会社で世界第 4 位の金生

産量(2003 年)を誇る Gold Fields 社(GF 社)株について、同社が所有する GF 社の 20%シェ

ア相当株を Norilsk 社に売却。今後の Norilsk 社の動向が注目されている。

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- 9 - 南アフリカ

3-4-4. クロム

2004 年 2 月、Xstrata 社と SA Chrome & Alloys 社は合併を発表し、合併後の SA Chrome

社が世界 大のフェロクロム生産者となった。生産規模は年産 145 万 t となり、世界の

26%シェアを有する。今後、この共同事業者は、さらに年産 100 万 t の規模を持つ Lion フ

ェロクロム・プロジェクトの計画に参加する予定であり、第 1 段階として 12.5 億ランド

が予算化され、Xstrata 社のフェロクロム生産能力を年産 163 万 t に引き上げることにな

るとみられている。

Assmang 社は、露天掘りで Dwarsrivier から年産 60 万 t を生産、2004 年に同社のフェ

ロクロム工場は年産 100 万 t まで引き上げられる。2003~04 年度に坑内採掘をはじめ、

露天採掘は 2006 年 6 月に終了予定である。

BHP Billiton 社と Anglo American 社の 60:40 の合弁である Samancor 社は、2 つの鉱業

地域を有し、4.5 億 t を超えるクロム鉱石埋蔵量と年産 400 万 t 以上の能力を有する。一

部は鉱石・精鉱でも輸出されるが、主体はフェロクロム工場へ供給されている。2004 年 2

月末に発生した事故により同社の生産が一時的に休止し、市場のタイト感を高めている。

3-4-5. その他レアメタル:マンガン、バナジウム

マンガンは、世界的に知られた高品位のマンガン鉱床が北部ケープ州の Hotazel 近郊に

あり、主要生産者は Samancor 社と Assmang 社である、Samancor 社はそのほとんどを合金

にし、合金生産の 85% 近くを輸出している。Assmang 社は現在の年産 100 万 t の鉱山生産

能力を 200 万 t まで増強してきている。

バナジウムは、強い需要にもかかわらず、ランド高の影響を受けて、生産者の Highveld

Steel and Vanadium 社の操業は利益がない状態である。Xstrata 社の Vantech 合金プラン

ト閉鎖や豪州のフェロバナジウム工場閉鎖は過剰生産能力の削減に貢献したが十分では

なく、Highveld 社は顧客との契約による生産を求めている。

4. 鉱業行政

鉱業部門における改革は、「歴史的に不利益を被ってきた南ア人(Historically

Disadvantaged South Africans: HDSA’s)」と法律上称される黒人への鉱山会社資産(株

式)の一部(26%)の移行と管理部門への参入(40%)、休眠鉱区の開放促進、ロイヤルティ制

度の導入を主体とする。

これらの改革を行うため、政府は新鉱業法を 2002 年 10 月に国会で可決した。しかし、

ロイヤルティ法案や、鉱業権登記法等の関連法規の成立を待ち、一緒に施行するとの考え

から、まだ施行されていない。

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- 10 - 南アフリカ

4-1. 新鉱業法の概要

新鉱業法では、南アフリカ政府は、全ての資源所有権の管理人であり、探鉱権及び鉱業

権の授与者になっている。法付則では、旧法の規定する権利の保持者による新法における

権利の申請と取得の手順を規定しているが、探鉱権については申請に 2 年間を、鉱業権に

ついては 5 年間の申請期間を有している。

新鉱業法では、探鉱権や鉱業権は特定された地域において、特定された鉱物のみの権利

を有するもので、一括して全ての鉱物に授与されるものとなっていない。新法では鉱物資

源に関する権利等がうたわれており、それらは reconnaissance permission(踏査認可)、

prospecting right(探鉱権)、mining right(鉱業権)、mining permit(採掘認可)及

び retention permit(留保認可)などがある。

踏査認可は 2 年間有効で更新ができない。申請は地域責任者に対して行われ、必要事項

を満たせばこれを受理する。当該の地域責任者は必要事項が満たされていない場合、14

日以内に文書をもって通知する。申請が受け付けられ、大臣がこれを不適合とする場合は

30 日以内に不許可を文書でもって通知する。踏査認可は譲渡不可で、また、抵当に供す

ることはできない。なお、この認可を保持する者が探鉱権や鉱業権の申請もしくは授与の

資格は優先的に与えられない。

探鉱権は、地域責任者に対して定められた様式により規定の料金を添えて行われ、必要

事項を満たせばこれを受理する。探鉱権は、当該地域に該当する鉱産物に関し、他に探鉱

権、鉱業権もしくは採掘認可を所持者の無い地域に適応される。当該の地域責任者は、必

要事項が満たされていない場合は、14 日以内にそのことを通知する。受理した場合には

14 日以内に環境管理計画の提出を通知し、その他の必要事項を手配して、大臣に発送す

る。探鉱権を受理するために必要な事項は、申請者は提案されている探鉱計画を遂行する

技術と財政能力を有すること、提案される計画が再生不可能な環境インパクトを起こさな

いこと、かつ鉱業健康安全法を遂行する能力があること等が審査され大臣によって授与さ

れる。これらの全ての次項が満たされていない場合、許可が排他的な活動を引き起こす場

合、公正な競争を阻害する場合、資源の集中が申請者に起きる場合などは探鉱権の授与が

拒否される。これら場合、大臣は、30 日以内に理由を付した文書を持って通知しなけれ

ばならない。

探鉱権は、第 39 節の環境管理プログラムが認定された日に有効となる。有効期間は 5

年を超えない。探鉱活動は、権利が有効になってから 120 日以内に開始しなければならな

い。探鉱権の保持者は 3 年を超えない期間について一度だけ期間の更新を申請することが

出来る。この申請は、合理的であること、法に従っていること、かつ、活動が探鉱計画に

沿っていれば授与される。探鉱権の保持者は探鉱料を国家に支払う義務があり、また、排

他的に鉱業権への申請及び受諾の権利が与えられる。

踏査認可及び探鉱権の保持者は活動や結果の記録を保持し、これらに関する報告を地域

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- 11 - 南アフリカ

責任者に提出しなくてはならない。

鉱業権については、当該の地域において指定された鉱物の探鉱権を有する者が、排他的

に申請する権利を有している。申請書の処理は、探鉱権とほぼ同様である。

鉱業権は、鉱物は採掘計画に基づいて 適に採掘されること、申請者は技術と財政的能

力を有すること、採掘により再生不可能な環境インパクトを活動の結果生じないこと、申

請者は規定された社会プランを提供すること、鉱業健康安全法を遂行する能力があること、

申請者は法のいかなる規定にも違反しないことなどを条件に授与される。鉱業権は、環境

管理プログラムが認定された日に有効となり、 長 30 年有効となる。更新期間も 30 年あ

り、更新も 2 回以上可能である。鉱業権の保持者は、有効になってから 1 年以内に鉱業活

動を開始し、採掘計画に従って遂行する事が義務づけられている。

採掘許可は 2 年以内に 適に採掘される 1.5 ヘクタールを超えない範囲に発効され、1

年を超えない 3 期間に対して更新が可能である。保持者は国家に対しロイヤリティーの支

払い義務がある。この許可は譲渡等できないが、大臣の同意により、当該に開発にかかわ

る資金手当のための担保とすることができる。

探鉱権の留保については、対象の地域で探査及び FS 調査が完了して、鉱業を行う可能

性がある資源が存在するにもかかわらず、その時点の経済状況によって、鉱業を営むこと

が非経済的であると見なされた場合、 大で 3 年間の留保期間を得ることができる。同様

の経済状況が続いた場合 2 年間の更新が可能である。

4-2. 新鉱業法と憲章

新鉱業法(正式名称:鉱物及び石油資源開発法)は 2002 年 10 月に成立した。新鉱業法は

鉱山会社の資産の一部を黒人に移管することを要請しているが、詳細は規定されていない。

2002 年 10 月に鉱物エネルギー省、鉱山会議所、南アフリカ鉱業開発協会、鉱業労働者

全国連合の間で調印された「鉱業界のための幅広い社会経済的権限移譲憲章(以下「憲章」

と略す。)」のなかで鉱山業界は、それにより HDSA への鉱山業資産の移行について、5 年

後の目標値 15%、10 年後に 26%を黒人(HDSA)所有とすること、 初の 5 年間で総額 1,000

億ランド(約 1.6 兆円)の資金調達ができるよう援助することに同意している。

憲章の規定をどの程度鉱山会社が達成しているかの判断を容易にするためのチェック

リストとしてスコアカードが作成され、2003 年 3 月に関係者間で合意された。

4-3. 鉱業法関連法規の改正状況

鉱業法の関連法規で現在審議中ないし検討中のものとして、ロイヤルティ法案(Royalty

Bill)、鉱業権登録修正法案(Mining Titles Registration Amendment Bill 2003)、付加

価値化促進法案(Promotion of Beneficiation Bill)、移民法(Immigration Bill)がある。

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- 12 - 南アフリカ

ロイヤルティ法案は 2003 年 3 月に提出された。法案では、一部の鉱種で世界的に見て

かなり高いロイヤルティ率であること(金 3%、白金 4%、ダイヤモンド 8%、ベースメタル

2%)、鉱産物売上げ全体に課せられることから、鉱業界にとって受け入れがたく、業界は

政府と協議中である。鉱業界は少なくとも、課税は利益に対してすべきであると考えてい

る。政府は売上げへの課税方針に変更はないという報道が 近されている一方、金の 3%

ロイヤルティについては削減されるとの見通しも報道されている。なお、新鉱業法によっ

て地下資源の帰属が地表権者から国家に移行することになり、ロイヤルテイを徴収する権

利が国に発生した。地表権者の間にこれの補償を求める動きがあるが、正当な報償額の算

定が困難であること、補償には莫大な金額が必要であることから、政府補償はありえない

と言われている。

付加価値化促進法案は鉱産物の付加価値を国内でより高めることを目的とした法律で

ある。通産省(DTI)が管轄する法案で、Precious Metal Act( 旧貴金属法)を包括すること

になっている。貴金属鉱業について、現政府は金塊の輸出では満足せず、鉱山会社が宝飾

産業に進出することを望んでいる。ベースメタル等については、粗鉱・精鉱としての輸出

を抑制し、より付加価値の高い地金として輸出することを目指している。南アの総輸出額

の 35%は一次鉱産物(Primary Minerals)、25%が加工済鉱物(Processed Minerals)で合計

は 60%に達する。今回の分類では、金塊、電気銅、鉄鉱石、石炭は Primary に含まれ、宝

飾品や鉄鋼は加工済鉱物に含まれる。付加価値化促進法案では、鉱種別に段階にわけて加

工度を示される。たとえば、白金は第一段階が粗鉱、第二段階が精鉱、第三段階が 99.99%

のメタル、第四段階が加工品となる。鉱種ごとの達成度と目標を鉱業界と政府の間で議論

中である。

移民法案は鉱業法と直接関連するものではないが、鉱業界への影響が大きい。本法案は

南アの全産業に対し、外国人を雇用した場合はその給与の 2%を税として収めるというも

のである。30%を超える高い失業率対策の一環である。もっとも影響を受けるのは金鉱山

である。金鉱山で働く労働者 207,000 人のうち、40~45%がモザンビークとレソトからの

出稼ぎ熟練工である。本法案が施行された場合、鉱山はロイヤルティの他にこの 2%を支

払わなければならず、本税の導入が経営の苦しい金鉱山を閉山に追い込こむ可能性がある。

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- 13 - 南アフリカ

4-4. 今後の展望

鉱業法は、当初、ロイヤルティ法、鉱業権登記修正法、付加価値化促進法案とセットで

運用されることが予定されていた。鉱業法は 2002 年に国会で可決され、その他の法案は

2004 年春の議会で審議・採決を予定していた。2004 年 2 月初め、南ア鉱物エネルギー大

臣は新鉱業法が 5 月にも施行される計画と表明。同法が施行されれば、5 年後の適応移行

に向けて鉱山会社の対応が始まることになる。一方、同法と同時施行予定であったロイヤ

ルティ法は、財務大臣が 2004 年 2 月には予算に盛り込まれる予定としていたが、未だ第

2 草案が公表予定の段階で、鉱物エネルギー省によるこれら新法の同時施行への努力は機

能しておらず、同時施行の可能性はかなり低いとみられている。新鉱業法とその適用に関

する法規の施行は、2004 年 4 月に国会選挙があり、施行はその後の今年の後半になると

の予想があり、この場合、旧鉱業権から新鉱業権への切り替えはそれから開始され、ロイ

ヤルティ法案通りに売上に基づくロイヤルティ支払いが行われるとしても、それが可能に

なるのは、切り替え手続き( 低 5 年は必要)が完了する 2009 年であると言われている(鉱

業権の切り替え期限の 2009 年 5 月まで施行は延期されたという報道もあり)。

多くの鉱業関係企業は、草案のロイヤルティ率が高すぎることに不満を感じており、ま

た、総収入ではなく利益に賦課する事を望んでいる。専門家や投資家の間では、プロジェ

クト実行評価のためには、鉱物毎の税率や賦課ベース(収入か利益)等を知る必要があり、

導入遅延は投資決定を不能にするとの指摘もある。

南アの鉱業は、アパルトヘイト後の南アで黒人経済強化の先頭となることが期待されて

いる。その一方、現在のロイヤルティ法案と移民法案は、南ア鉱業の競争力を損ねるとの

強い反発があり、南ア政府が 終的にどのような判断を下すか注目されている

5. 鉱業関係機関

5-1. 政府機関

Department of Mineral and Energy

5-2. 関係機関

The Chamber of Mines of South Africa

6. 投資環境

6-1. 外資法

外資規制:鉱業活動には、Department of Minerals and Energy の認可が必要。

合弁企業設立の際、その出資比率に関する規制はなし

6-2. 通関

The Customs & Excise Act No.91 of 1964

一般税率、 恵国税率の複税制(日本は 恵国税率が適用される。)

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- 14 - 南アフリカ

6-3. 金融

銀行産業は6大銀行により占められ、市場シェアは総預金額で見ると ABSA が 22.4%、

スタンダード銀行が 18.9%、NEDCOR が 18.3%、FNB が 13.5%、BOE6.9%、Inveatec5.8%、

SAAMBOU2.2%、CITIBANK1.7%と成っている。2003 年には外国金融機関の進出も活発化し

ており、英国バークレー銀行は、アフリカ部門をロンドンからヨハネスブルグに移転、

Standard Chartered Bank もオンライン銀行の 20Twenty を買収して南アに進出、HSBC も

南ア銀行ライセンスを取得した。

6-4. 労働

外国人就業規制:外国人に対する職種制限はないが、原則当該職種に対し適切な南ア人

の採用が難しいことが外国人に対する労働許可発給の条件となっている。

在留許可:南アで雇用される外国人は労働許可が必要。労働許可は 大 2 年で、国内の

法務局 Department of Home Affairs にて延長可能 。2003 年 3 月 12 日より新たな「移民

法」が施行される。

南アで雇用される非居住者は労働許可が必要。労働ビザに関することは内務省が扱う。

非居住者は南アで雇用関係に入る前に、労働ビザを申請しなければならない。申請は 寄

りの南ア領事館に提出。南ア居住者が従事しないような種類の仕事であれば、労働許可の

取得は難しくはない。労働許可の期間は普通 6 ヵ月で、その後は 寄りの内務省の事務所

で更新しなればならない。

現地人雇用義務:現地人の雇用を原則としているが、その職種の適格者が国内にいない

場合や特殊技能有資格者については外国人の雇用を認め労働許可を発給する。

政府調達に関しては過去に差別を受けていた主に黒人、カラード、女性などの雇用割合も

入札時の評価に加えているほか、1998 年に雇用均等法を制定し企業に対し平等な雇用を

義務付けている。また石油産業では 2010 年までに黒人、カラード、女性などが経営する

エンパワーメント企業の参入を 25%に増加させることを定めているほか、鉱業では 2013

年までにエンパワーメント企業の参入を 26%に増加させ、マネジメントの 40%に黒人、

カラード、女性などを登用する目標を定めている。

6-5. 治安

南アフリカ共和国における犯罪は都市部及びその周辺地域に集中している。南アフリカ

共和国で発生する犯罪の特徴は、犯行時に銃器を使用する等、悪質・凶悪であること、ま

た、複数犯で広域にわたり犯行に及ぶ。銃社会であり、比較的簡単に銃が所持できるほか、

違法銃器が氾濫していることもあり、犯罪者のほとんどが銃を所持している。また、外国

人により組織された犯罪シンジケートが 230 以上あると言われており、これら犯罪シンジ

ゲートの活動や職を持たない貧困層の増加、周辺諸国からの不法移民や銃器の流入が犯罪

の温床となっている。

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- 15 - 南アフリカ

6-6. 交通

国営鉄道会社スプール・ネットは、アフリカ鉄道インフラの80%を占めるアフリカ

大の鉄道会社である。同社は、一般貨物、一般旅客鉄道、石炭・鉄鉱石輸送鉄道部門、石

炭輸送線、鉄鉱石輸送線を有している。

南アには7つの商業港があり、更にクハ港の開発が進められている。既存の港には、南

ア 大のコンテナ港であるダーバン、石炭輸出港であるリチャードベイ、ダイムラー。ク

ライスラーの輸出港となっているイーストロンドン、商業港であるポートエリザベス、ケ

ープタウン、バルク荷専用のサルダナベイ、合成石油を扱うモッセルベイがある。近年は

貨物量の増加、港設備の老朽化、生産性の水準が低く、コンテナ船の待ち時間が長く防疫

の障害になっているため、民営化を含めた港運営の改善、近代化を政府は進めている。

6-7. 電力

国営電力会社エスコムの電力料金は世界的にも安いが、現在の価格は安価な石炭への依

存と、投資を抑制し債務コストを減少させていることから達成されている。しかし、中長

期的には既存の発電設備は平均15年が経過しており、電力供給能力を増加させるために

投資が必要であり、今後価格上昇が予測される。政府は、エスコムの一部民営化、独立発

電業者の参入により電力市場を自由化することで価格上昇圧力を抑え、効果的な投資、運

営を促進する方針である。また、環境規制が高まる中石炭にかわる代替エネルギーの利用

を検討しており、天然ガスや再利用エネルギーの導入を計画している。

7. 地質・鉱床概要

南アフリカ共和国における地質の創生は 37 億年前に遡る。始生代のクラトンを核とし

て,その周辺に原生界が,さらに顕生界が成長して形成されている。その地質概略図を第

7-1 図に、地質層序図を 7-2 図に示す。

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- 16 - 南アフリカ

第 7-1 図 南アフリカ共和国の地質概略図(神谷,1994 による)

1:第四系, 2:ウィッテンヘイジ系・ズルランド系,3:カルー系,4:ケープ系,5:ケープ

花崗岩類(1~5:顕生代),6:ナミビアン系,7:ナタールーナマクワランド系,8:オリフ

ァントシェーク系・ソートパンスバーグ系,9:ブッシュフェルトコンプレックス系,

上:珪長質岩・下:苦鉄質~超苦鉄質岩,10:トランスバール系(5~10:原生代)11:

ベンダースドープ系,12:ウィットウォタースランド系,13:ウィットウォタースラン

ド系の潜在分布域,14:スワジランド系(バーバトン緑色岩系,マーチスン緑色岩

系),15:古期片麻岩類(11~15:始生代)

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- 17 - 南アフリカ

億年 地 質 時 代 岩 層 系 貫 入 岩 類

新生代

カルー系

5.7 後

ケープ累層群

マルムスバリー,ナマ

及びその他の累層群

ケープ花崗岩類

ナタール-ナマクワランド

変成岩系

ウォーターバーグ累積群

トランスバール系及び

グリクワランドウェスト系

ブッシュフェル

コンプレックス

16

25

29

35

セントラルランド層群

ウェストランド層群

ドミニオン層群

ムーディース層群

フィグトリー層群

オンバーワハト層群

古期片麻岩

コンプレック

第 7-2 図 南アフリカ共和国の地質層序

出典:神谷(1994)

ウィットウォタース ランド系

スワジランド系

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- 18 - 南アフリカ

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Atok

Noel

Haib

Sheba

Agnes

Gorob

Welkom

Pering

SelebiPhikwe

Impala

Ghanzi

Evander

Selkirk

Driekop

Lorelei

Riviera

Witvlei

Oamites

Prieska

Navachab

Uitkomst

Mooihoek

Dordabis

PutsbergGamsberg

Otjihase

Areachap

West RandEast Rand

Grasvally

Boterberg

Klein Aub

Matchless

Klerksdorp

Phaloborwa

Bushy Park

Rustenburg Onverwacht

Rosh Pinah

Pigg's Peak

Jacomynspan

Vlakfontein

Amandelbult Duitschland

Broken Hill

Selebi North

Geelkop Dome

Carletonville

Western Plats

Witwatersrand

Marinkas Kwela

Waterfall Gorge

Waterberg deposit

Makala (matsitama)

Platreef in Drenthe

Molopo Farms Complex

Atok

Noel

Haib

Sheba

Agnes

Gorob

Welkom

Pering

SelebiPhikwe

Impala

Ghanzi

Evander

Selkirk

Driekop

Lorelei

Riviera

Witvlei

Oamites

Prieska

Navachab

Uitkomst

Mooihoek

Dordabis

PutsbergGamsberg

Otjihase

Areachap

West RandEast Rand

Grasvally

Boterberg

Klein Aub

Matchless

Klerksdorp

Phaloborwa

Bushy Park

Rustenburg Onverwacht

Rosh Pinah

Pigg's Peak

Jacomynspan

Vlakfontein

Amandelbult Duitschland

Broken Hill

Selebi North

Geelkop Dome

Carletonville

Western Plats

Witwatersrand

Marinkas Kwela

Waterfall Gorge

Waterberg deposit

Makala (matsitama)

Platreef in Drenthe

Molopo Farms Complex

100 0 100 200 300 400 500 Kilometers N

EW

SMineral deposits of South Africa

GeologyArcheanArchean-PaleoproterozoicCenozoicMesoproterozoicMesoproterozoic-NeoproterozoicMesozoicMesozoic-CenozoicNeoproterozoicPaleoproterozoicPaleoproterozoic-MesoproterozoicPaleozoicPaleozoic-MesozoicPrecambrianPrecambrian-Phanerozoic

Country_border.shp#S Mineral deposit

第 7-3 図 南アフリカ共和国の主要鉱床分布図

8. 鉱山概要(操業鉱山)

8-1. 金鉱山

Beatrix 鉱山

国名/地域 :South Africa/Welkom

名前 :Beatrix

位置 :Welkom

緯度・経度 :28.06.00 S,26.58.59 E

会社名(権益比率):Gold Fields

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :77.2 百万 t, 4.900g/tAu

鉱床タイプ :砂金。層準規制

地質概要 :始生代。堆積岩を母岩とする。

採鉱法 :坑内堀

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- 19 - 南アフリカ

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 3.729 5.70 15.009

2000 3.466 6.10 15.141

2001 3.671 5.50 19.256

2002 4.115 4.90 20.628

2003 4.722 4.30 20.499

Raw Materials Data August 2004

Driefontein 鉱山

国名/地域 :South Africa/Carletonville

名前 : Driefontein

位置 : Carletonville

緯度・経度 :26.21.00S,27.30.00E

会社名(権益比率):Gold Fields

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :108.8 百万 t, 7.700g/tAu

鉱床タイプ :砂金。層準規制。

地質概要 :始生代。堆積岩を母岩とする。

採鉱法 :坑内堀

金属回収法 :Carbon in pulp

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 5.466 8.50 43.856

2000 5.608 7.80 43.715

2001 6.551 6.40 40.447

2002 6.587 6.30 41.484

2003 6.370 6.00 35.607

Raw Materials Data August 2004

Elandskraal UG 鉱山

国名/地域 :South Africa/Carletonville

名前 : Elandskraal UG

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- 20 - 南アフリカ

位置 : Carletonville

緯度・経度 :26.46.00S,27.24.06E

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :39.9 百万 t, 7.900g/t Au

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 -

2000 -

2001 2.824 5.41 12.800 e

2002 2.194 6.28 12.523

2003 1.874 5.76 10.096

Raw Materials Data August 2004

Evander UG 鉱山

国名/地域 :South Africa/Evander

名前 : Evander UG

位置 : Evander

緯度・経度 :26.28.18S,29.06.33E

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :70.6 百万 t, 7.000g/tAu

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 1.7 8.00 12.973

2000 2.079 6.12 13.013

2001 2.482 5.74 13.895

2002 2.107 6.05 11.766

2003 1.945 5.69 11.315

Raw Materials Data August 2004

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- 21 - 南アフリカ

Freegold 鉱山

国名/地域 :South Africa/Welkom

名前 : Freegold

位置 : Welkom

緯度・経度 :27.54.51S,26.39.57E

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :27.45 百万 t, 7.390g/tAu

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 -

2000 -

2001 -

2002 2.186 7.82 32.350

2003 32.516

Raw Materials Data August 2004

Great Noligwa 鉱山

国名/地域 :South Africa/Val Reefs

名前 : Great Noligwa

位置 : Val Reefs

会社名(権益比率):Anglogold

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :18.8 百万 t, 9.220g/tAu

採鉱法 :坑内堀

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- 22 - 南アフリカ

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 2.441 12.75 31.137

2000 2.5 12.32 30.204

2001 2.531 12.34 31.224

2002 2.484 11.02 27.380

2003 2.389 10.57 25.263

Raw Materials Data August 2004

Harmony FS UG 鉱山

国名/地域 :South Africa/Glen Harmony

名前 : Harmony/FS UG

位置 : Glen Harmony

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :48.2 百万 t, 4.600g/tAu

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 4.500 3.80 26.544

2000 4.3 e 3.80 24.230

2001 5.288 4.04 19.802

2002 4.305 4.32 18.248

2003 4.281 4.26 18.804

Raw Materials Data August 2004

Kloof Mine 鉱山

国名/地域 :South Africa/Westonaria

名前 : Kloof Mine

位置 : Westonaria

緯度・経度 :26.23.12S,27.36.00E

会社名(権益比率):Gold Fields

鉱種 :Au

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- 23 - 南アフリカ

埋蔵鉱量 :106.0 百万 t, 9.100g/tAu

鉱床タイプ :砂金。層準規制。

地質概要 :始生代。堆積岩を母岩とする。

採鉱法 :坑内堀

金属回収法 :Carbon in pulp

備考 :増産計画あり。

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 4.190 10.50 25.963

2000 3.936 11.00 24.000 e

2001 3.932 9.60 20.000 e

2002 4.657 7.40 34.651

2003 4.838 7.30 33.754

Raw Materials Data August 2004

Kopanang 鉱山

国名/地域 :South Africa/Val Reefs

名前 : Kopanang

位置 : Val Reefs

会社名(権益比率):Anglogold

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :23.2 百万 t, 7.150g/tAu

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 2.102 7.74 16.272

2000 2.1 7.04 14.973

2001 2.079 7.40 15.381

2002 2.195 7.23 15.874

2003 2.184 7.07 15.449

Raw Materials Data August 2004

Mponeng(South)

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- 24 - 南アフリカ

国名/地域 :South Africa/Western Levels

名前 : Mponeng(South)

位置 : Western Levels

会社名(権益比率):Anglogold

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :25.6 百万 t, 8.980g/tAu

採鉱法 :坑内堀

備考 :増産計画あり。

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 1.574 8.71 13.702

2000 1.6 8.05 12.489

2001 1.476 7.71 11.386

2002 1.679 8.63 14.498

2003 1.733 8.96 15.517

Raw Materials Data August 2004

Orkney 鉱山

国名/地域 :South Africa/

名前 : Orkney

位置 : Orkney

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 金属生産量

t Au

1999 13.658

2000 15.414

2001 14.547

2002 14.200

2003 12.500 e

Raw Materials Data August 2004

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- 25 - 南アフリカ

Randfontein UG 鉱山

国名/地域 :South Africa/ Randfontein UG

名前 : Randfontein UG

位置 : Randfontein

緯度・経度 :26.27.11S,27.45.09E

会社名(権益比率):Harmony

鉱床

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :26.4 百万 t, 4.900g/tAu

鉱床タイプ :砂金

地質概要 :始生代。堆積岩を母岩とする。

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 25.988

2000 5.5 e 5.00 26.580

2001 6.285 3.58 18.903

2002 3.270 5.06 15.523

2003 2.866 4.94 12.888

Raw Materials Data August 2004

South Deep 鉱山

国名/地域 :South Africa/Westonaria

名前 : South Deep

位置 : Westonaria

緯度・経度 :26.25.00S,27.42.00E

会社名(権益比率):JCI, Placer Dome

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :222 百万 t, 7.800g/tAu

採鉱法 :坑内堀

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- 26 - 南アフリカ

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 1.43 7.85 10.607

2000 1.218 8.50 10.117

2001 1.356 8.10 10.645

2002 1.778 7.10 12.083

2003 1.958 7.20 13.709

Raw Materials Data August 2004

Target 鉱山

国名/地域 :South Africa/Allanridge

名前 : Target

位置 : Allanridge

緯度・経度 :27.39.00S,26.43.59E

会社名(権益比率):Harmony

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :5.177 百万 t, 10.970g/tAu

採鉱法 :坑内堀

金属回収法 :Carbon in pulp

備考 :増産計画あり。

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 --

2000 0.1 e 10.00 1.200 e

2001 0.1 e 10.00 1.759

2002 0.576 10.00 7.203

2003 1.068 8.57 10.617

Raw Materials Data August 2004

Tau Lekoa 鉱山

国名/地域 :South Africa/Val Reef

名前 : Tau Lekoa

位置 : Val Reef

会社名(権益比率):Anglogold

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- 27 - 南アフリカ

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :28.0 百万 t, 4.270g/tAu

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 1.913 4.96 9.493

2000 2.0 4.98 9.783

2001 2.012 4.42 8.899

2002 2.174 4.45 9.675

2003 2.363 4.24 10.010

Raw Materials Data August 2004

Tautona 鉱山

国名/地域 :South Africa/Western Levels

名前 : Tautona

位置 : Western Levels

会社名(権益比率):Anglogold

鉱種 :Au

埋蔵鉱量 :17.9 百万t, 11.380g/tAu

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年)

年 粗鉱生産量

Mt

品位

g/tAu

金属生産量

t Au

1999 1.745 11.37 19.843

2000 1.6 11.30 18.643

2001 1.621 11.94 19.355

2002 1.716 11.66 19.997

2003 1.663 12.09 20.106

Raw Materials Data August 2004

8-2. 銅鉱山

Palabora 鉱山

国名/地域 :S.Africa/Phalaborwa

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- 28 - 南アフリカ

名前 :Palabora

位置 :Johannesburg の北西約 400Km. Phalaborwa.

緯度・経度 :23.57.00S,31.07.00E

会社名(権益比率):Palabora Mining 社(南ア)

Rio Tinto 49.2%,

Anglo American 28.6%

鉱種 :Cu,U,Fe,Ti

埋蔵鉱量 :

1) 247.0 百万t 0.64% Cu

JOGMEC 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱

物資源機構 (2004):非鉄メジャーの動向

2003

2) 坑内掘 226 百万 t 0.68%Cu

露天掘 3.0 百万 t 0.50%Cu

Raw Materials Data August 2004

鉱床タイプ :カーボナタイト鉱床

地質概要:

南北 8Km, 東西 3Km の大きさでほぼ垂直のアルカリ複合岩体が始生代の花崗岩に貫入し

ている。この中心部に 730mx400mの大きさでカーボナタイト岩体が、それを取り巻く

形で Phoscorite(燐灰石岩)が分布する。銅の鉱化は Phoscorite 中の炭酸塩鉱物の交代

作用により黄銅鉱、キューバ鉱、斑銅鉱などが生成されている。したがって銅品位の良い

部分は楕円形の断面で垂直に下部まで連続している。

鉱化作用の年代:始生代(>2,500Ma)

採鉱法 :露天掘および坑内掘(30,000t/d 計画)

選鉱法 :浮遊選鉱(坑内掘鉱石)

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- 29 - 南アフリカ

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1964 年

2002 年坑内掘、浮遊選鉱

年 粗鉱生産量

Mt

品位

% Cu

金属量

Cu t

1999 28.343 0.47 OP

UG

111,900

0

2000 25.736 0.58 OP

UG

117,000

0

2001 14.522 0.65 OP

UG

78,400

0

2003 9.933 0.63 OP

UG

32,200 e

20,000 e

2003 11.415

OP 5.5*

UG 6.00*

0.59 OP

UG

22,400 e

30,000 e

Raw Materials Data August 2004

*金属資源レポート 2004.05 Vol.34 No.1 特集号:世界の鉱業の趨勢 JOGMEC

2003年の銅カソード生産量は73,400t

8-3. 鉛・亜鉛鉱山

Aggeneys 鉱山

国名/地域 :South Africa

名前 :Aggeneys

位置 :Aggeneys

会社名(権益比率):Anglo American

鉱床 鉱種 :Pb Zn Ag

埋蔵鉱量 :15.9 百万 t 2.0%Zn 3.3%Pb Raw Materials Data August 2004

鉱床タイプ :含金石英脈

地質概要 :塩基性火山岩類。剪断帯。

鉱化作用の年代:始生代(>2500Ma)

採鉱法 :UG

副産物等 :Ag

発見の経緯 :

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1980

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- 30 - 南アフリカ

年 粗鉱生産量

Mt

品位

%

品位 金属量

t

1999 1.4 3.0

6.0

Zn

Pb

31,200

6,500 e

2000 1.3 e 3.0

6.0

Zn

Pb

27,100

6,100

2001 1.560 2.4

3.7

Zn

Pb

24,300

5,300

2002 1.554 2.6

3.5

Zn

Pb

27,600

4,100

2003 1.449 2.6

3.3

Zn

Pb

25,900

400

Raw Materials Data August 2004

Black Mountain 鉱山

国名/地域 :South Africa

名前 :Black Mountain

位置 : Aggeneys(Gamsberg の北西 22km)

緯度・経度 :29.12.32S,18.50.12E

会社名(権益比率):Anglo American

鉱種 :Zn Pb

埋蔵鉱量 :2002 年 3.1 百万t

品位 :3.30%Pb、2.02%Zn

非鉄メジャーの動向 2003 平成 16 年 3 月 JOGMEC 金属資源情報センター

採鉱法 :坑内堀

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年:1980

年 金属量

Zn t

1999 31,200

2000 27,100

2001 24,300

2002 27,600

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- 31 - 南アフリカ

Maranda 鉱山

国名/地域 :South Africa

名前 :Maranda

位置 :Letsitele

緯度・経度 :23.57.00S,30.28.00E

会社名(権益比率):Metorex

鉱床 鉱種 :Zn Cu

埋蔵鉱量・品位:0.112 百万 t 14.4%Zn Raw Materials Data August 2004

鉱床タイプ :塊状硫化物鉱床

地質概要 :グリーンストン帯

鉱化作用の年代:始生代(>2500Ma)

採鉱法 :坑内堀

選鉱法 :浮遊選鉱

副産物等 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1991

年 粗鉱生産量

Mt

品位

% Zn

金属量

Zn t

1999 0.1 18.0 15,000 e

2000 0.1 e 18.0 13,000 e

2001 0.1 e 18.0 12,500

2002 0.1 e 15.0 12,900

2003 0.1 e 15.0 11,900

Raw Materials Data August 2004

Pering 鉱山

国名/地域 :South Africa

名前 :Pering

位置 :Reivilo

緯度・経度 :27.28.00S,24.45.14

会社名(権益比率):BHP Billiton

鉱種 :Zn Pb

埋蔵鉱量 :3.89 百万 t 1.8%Zn Raw Materials Data August 2004

採鉱法 :露天堀

副産物等 :Pb

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- 32 - 南アフリカ

生産量 (直近 5 ヵ年) 生産開始年: 1986

年 粗鉱生産量

Mt

品位

金属量

Zn t

1999 1.1 2.0 20,000 e

2000 1.1 e 2.0 20,400

2001 1.3 e 2.0 21,600

2002 1.349 1.9 22,400

2003 4,300

Raw Materials Data August 2004

9. 新規鉱山開発状況

Pt に関しての新規鉱山の開発状況について以下に述べる。

Northam 社以外の主要生産者は、今後需要増が見込まれるとして、いずれも増産計画を

有している。すべての計画が実施されれば、南アの精製 Pt 生産量は 2002 年の 4.45 百万

oz から 2006 年には 6.3 百万 oz に増加する(Johnson Matthey, 2003)。

Anglo Platinum 社は現在の 2.25 百万 oz/年から 2006 年には 3.5 百万 oz/年に増やす

ことを目標にしている。主要開発プロジェクトを Table 3-2-23 に示す。Rustenburg UG-2

拡張1期プロジェクトでは粗鉱処理量が 2003 年前半に増大した。Eastern limb では

Modikwa プロジェクトの生産増が加速されつつある。しかしランドが US ドルに対して想

定以上に強くなり、同社のキャッシュフローに大きく影響していることから、Anglo

Platinum 社は 2003 年 12 月に開発計画の見直しを発表した。それによると、見直し後の

計画生産量は 2003 年が 2.3 百万 oz、2004 年が 2.45 百万 oz、2006 年が 2.9 百万 oz であ

る。見直し前は 2006 年に 3.4 百万 oz を生産する計画であり、大幅な減速となった。2003

年から 2006 年に費やす開発経費も見直し前の 153 億ランドから 110 億ランドに減額され

た。2004 年の開発経費 62 億ランドの内訳は、23 億ランドが現在の生産に対するもの、18

億ランドが生産設備の更新、18 億ランドが拡張プロジェクト、3 億ランドが金利である。

プロジェクト毎の見直しについては、Bafokeng-Rasimone と Modikwa の拡張は予定通り

進められる。Twickenham プロジェクトと Der Brochen プロジェクトは減速される。

Paschaskraal プロジェクトと Booysensdal プロジェクトは予定通りバンカブル経済性評

価が実施され、その結果を受けてその後の方針が決定される。Pandara プロジェクトはパ

ートナーの合意が得られたら減速される。Rustenburg の UG-2 プロジェクトは、より高品

位の Merensky 鉱石比率を増やすよう変更される。Rustenburg の廃さいプロジェクトの 2

期は減速される。Kroondal プロジェクトは計画通りである。Anglo Platinum 社の増産計

画見直しにより、2006 年の南アの Pt 生産量は、すべての開発プロジェクトが順調に進展

した場合でも 5.8 百万 oz となる。

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- 33 - 南アフリカ

Impala 社は製錬所を拡張し、2006 年までには買鉱・委託製錬を含めて 2 百万 oz にする

計画である。製錬能力の 1.65 百万 oz/年への拡張は完了しており、さらに 2.5 百万 oz

/年にする検討が開始された。Anglovaal Mining 社と TISO コンソーシアムとの JV であ

る Two Rivers プロジェクトは 終段階にあり、開発するかどうかの 終決定が近く行わ

れる。

Lonmin 社は精製 Pt 生産量を 2002 年の 757,450 oz から、2008 年には1百万 oz にする

計画である。その一環として、Western limb の既存鉱山の拡張を行っている。Karee 4 と

Hossy, Saffy の各立坑の掘削は計画とおりに進んだ。2002 年 10 月には月 120,000 t 処理

の選鉱場を操業開始した。そこでは当初は新たに開発した露天掘り採掘場からの鉱石を処

理し、後には Karee 鉱山の坑内鉱石と Pandra JV の鉱石を処理する計画である。2007 年

にフル操業に達したのちは UG-2 鉱石を 320,000 t/月処理し、Pt 230,000 oz/年を生産

する。

Aquarius Platinum 社の Everest South プロジェクトは 2004 年早々に建設が開始され

る予定であるが、それは資金調達状況次第である。順調にいけば 初の生産開始は1年後

の 2005 年とされている。同社の 2004 年度から 2007 年度までの計画生産目標を第 9-1 表

に示す。同社の計画では、PGM 生産量は 2004 年の 366,000 oz から 2007 年には 725,000 oz

に増加する。

SouthernEra 社は、現在開発中の Messina 鉱山につき、2 期および 3 期開発の共同開発

について FS を実施中であり、2004 年早々に完了する計画である。

第 9-1 表 Planned target production of Aquarius (Mine)

Mine 2004 2005 2006 2007

Kroondal 157,000 180,000 252,000 252,000

Marikana 144,000 151,000 145,000 151,000

Mimosa (50%) 65,000 67,000 67,000 67,000

Everest South 72,000 225,000 55,000

Sum 366,000 470,000 689,000 725,000

(after MMAJ, 2003)

10. 探査状況

10-1. Anglo Platinum 社

南アにおける Anglo Platinum 社の探鉱は、2006 年までに年産 3.5 百万 oz にするとい

う同社の目標達成の一環として行われている。そのため、グラスルートの探鉱ではなく、

Bushveld 地区の既存鉱山周辺の鉱量・資源量評価と FS に重点が置かれている。従って探

鉱プログラムは物理探査(主に空中磁気)とボーリング調査(主にダイヤモンドボーリン

グ)が中心である。2003 年には南アで 667 km の探鉱ダイヤモンドボーリングが行われた。

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- 34 - 南アフリカ

南ア以外では、カナダとロシアでの共同プロジェクトがある。カナダでは Sudbury の東

60 km にある River Valley と Agrew Lake プロジェクトを Pacific North West Capital

社と共同で行っている。River Valley の探鉱は 1999 年に始まり、83 km 以上におよぶボ

ーリングにより1百万 oz を超える Pt-Pd-Au(3E)の資源量が明らかになっている。鉱化

されている破砕岩の延長は6 km以上におよび、さらに5 km続いている可能性がある。River

Valley は Pd を主体とした鉱床であることから、今後の探鉱は Pd の価格動向による。

Sudburry の西 60 km の Agrew Lake には PGM を伴う接触交代硫化鉱体があり、2003 年には

ボーリング、地質調査および Apectrum Air multispectral AEM system よる空中探査が実

施された。2004 年には空中探査で抽出されたターゲットのボーリングが計画されている。

ロシアでのウラル砂鉱床プロジェクトでは、Tylai-Kosvinsky 地区で鉱区問題による遅

れがあったが、2004年 4月から探査を開始する予定となっている。北部中央ウラルのSosva

では、2004 年 1 月からボーリングを行う予定となっている。

10-2. Impala Platinum 社

Impala 社は 2003 年度に探鉱経費 39 百万ランド(4.3 百万 U$)を費やした。2004 年度

は 51 百万ランド(5.6 百万 U$)を見込んでいる。同社の探鉱は南アにおける Pt を主体と

したプロジェクトに集中している。

南アでは Bushveld 地区にある同社の Impala Platinum 鉱山と Marula 鉱山およびその周

辺で探鉱が行われている。Barplats 社の Kennedy’s Vale プロジェクトについて、それ

に隣接する Spitkop 鉱区を Impala 社が取得し、これを含めたプレ FS を行った。2003 年 4

月にプレ FS は完了したが、経済性に乏しいとの結論であった。同じく Barplats 社の Two

Rivers プロジェクトの近傍にある Buffelshoek 鉱区と Kalkfontein 鉱区では 初のボー

リング調査が完了し、現在評価中である。資源量評価に必要な追加作業がさらに続けられ

る予定である。

同社は南アのほかに北アメリカ大陸、オーストラリア、ブラジルに探鉱プロジェクトを

有する。Falconbridge社との提携によるNarndeeプロジェクト(オーストラリア)とCatete

プロジェクト(ブラジル)が進行中である。

Narndee はオーストラリアのパースの北東 550 km に位置する。大規模層状貫入岩体に

おける PGM-Ni プロジェクトである。詳細な空中磁気と放射能探査、地質図作成、地化学

探査により、弱い異常域が抽出された。さらに地化学探査を実施中である。今後ボーリン

グ調査を行う予定である。

Catete プロジェクトはブラジルの Carajas 地域にある。超塩基性岩の Catete suite に

て PGM を探鉱するものである。Falconbridge 社との協定により、Impala 社は 1.1 百万 C$に

て空中物理探査、土壌地化探、地質図作成を行うことになっている。このプロジェクトは

広域的なターゲット選定調査ではあるが、CVRD 社の Luanga PGM 鉱床に隣接する Sereno

プロジェクトに 初の焦点があてられている。

アメリカの Duluth 複合岩体の4地区で Franconia Minerals 社との JV による探鉱を実

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- 35 - 南アフリカ

施している。現在の調査計画は 2004 年度末に完了する予定であるが、これまでのところ

対象の絞込みに成功していない。

10-3. その他の F/S 段階にある探鉱プロジェクト

Cluff Mining 社

同社はカナダベースの探鉱ジュニアであり、主として Eastern Limb の南西端で Blue

Ridge と Sheba’s Ridge プロジェクトを実施している。

Blue Ridge West プロジェクトは、平均層厚 1.29 m、傾斜 17°の UG-2 を対象としてお

り、以下の鉱量が確認されている。

Ore Reserve Classification Mt 4E (g/t) Contained 4E Moz

Proved Ore Reserve 21.4 2.8 1.95

Probably Ore Reserve 7.5 2.8 0.67

Total Proved and Probable Ore Reserve 28.9 2.8 2.62

Sheba’s Ridge プロジェクトは Blue Ridge プロジェクトの西にあり、Anglo Platinum

との JV である。主として層厚 80 m の Platreef を対象としており、初期探鉱段階である。

Harmony Gold Mineral 社

同社は南アフリカ 大の Au の生産者であるが、PGM プロジェクトとして Kalplats プロ

ジェクトがある。ボツワナとの国境の南部に分布するグリーンストーン帯にある Stella

層状塩基性岩体の Kalgold Au 鉱山の近くで同社が周辺探鉱していたところ、たまたま Pt

に当たったもので、発見されている 7 つの鉱床のうち、Crater と Orion の 2 つについて

FS を実施中である。Crater deposit の品位は 3.0 g/t PGM である。鉱量は公表されてい

ない。2003 年にはボックスカットにより深度 40 m から採取した 500 t の鉱石を用いて選

鉱試験が実施され、73~75%の回収率を得た。50 m グリッドから 25 m グリッドでボーリ

ングを実施しており、完了は 2004 年 5 月の予定である。

11. 製錬所概要

11-1. Nababeep(O’Okiep) Copper Smelter

国名/地域 :South Africa/Cape

名前 : Nababeep(O’Okiep) Copper Smelter

位置 : Nababeep, Cape

会社名(権益比率):Metorex

主要生産金属 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年)

生産量 (金属量 千トン) 年

製錬・溶錬

1999 30.0 e

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- 36 - 南アフリカ

2000 30.0 e

2001 30.0 e

2002 30.0 e

製錬方法 :反射炉

11-2.Palabara Copper Smelter/Refinery

位置 :Transvaal

会社名(権益比率):Rio Tinto plc, Anglo American

主要生産金属 :Cu

生産量 (直近 5 ヵ年)

生産量 (金属量 千トン) 年

製錬・溶錬 精錬

1999 101.6 100.0

2000 90.7 87.7

2001 85.5 86.9

2002 82.3 81.6

2003 76.7 73.4

製錬方法 :

製錬・溶錬 :反射炉

精錬 :ELR

11-3.Springs

名前 :Springs

会社名(権益比率):Zinc Corp of South Africa (Kumba Resources)

主要生産金属 :Zn

生産量 (直近 5 ヵ年)

生産量 (金属量 千トン) 年

製錬・溶錬

1999 115.0 e

2000 103.0 e

2001 108.0 e

2002 109.0

製錬方法 :ELR

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- 37 - 南アフリカ

鉱山製錬所位置図

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- 38 - 南アフリカ

操業鉱山

Palabora Distance:400 km NE from Johannesburg

Aggeneys 100 km north-northeast of Springbok(?ENE 100Km)

Black Mountain Aggeneys 西 10Km

Maranda located in Approximately 75km W of Phalaborwa

Pering SW20Km Revilo, NE70Km Vryburg

探鉱開発

South Deep near Westonaria, approximately 42 Km SW of Johannesburg Gamsberg 精錬所

Nababeep(O’Okiep) Copper Smelter

Palabora Copper Smelter/Refinery Phalaborwa(USGS Map and Table of World Copper

Smelters による)

Springs

休廃止鉱山

O’Okiep Nabapiep, Cape

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況

実績なし

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- 39 - 南アフリカ

第2部 地質解析

1. 地質・地質構造

南アフリカ共和国の地質は始生代のクラトンを核として、その周辺に原生界が、さらに

顕生界が成長して形成されている。アフリカ大陸の南部を構成するカラハリクラトンの南

半分を占めているカープバールクラトン(Kaapvaal Claton,38.6-14 億年前)の形成史

が重要な役割を演じている。

も古いスワジアン界(Swazian Erathem)は早期始生代に相当し、その 下部の地層

は 38 億年前まで遡ることができる(Visser,1989)。それらは主にバーバトンおよびマー

チソン緑色岩帯地域によく発達している。

も古い地質単元はトーナル岩質片麻岩、花崗岩質岩等から成る片麻岩類であり、主に

バーバトン系の発達地域の南に分布し、古期片麻岩類の一部を構成し、この地域の基盤を

なしている。

バーバトンおよびマーチソン緑色岩帯はカープバールクラトンの東から北東にかけて、

東北東-西南西方向の褶曲軸をもって分布する。バーバトン緑色岩帯ではその下位から上

位に向かって、オンバーワハト、フィグトリーおよびムーディースの各層群が発達する。

これらは全て海成であり、なかでも、オンバーワハト層群はいわゆるオフィオライト層序

を示している。その下部はコマチアイトや蛇紋岩などを主とする超苦鉄質岩から成ってい

る。コマチアイトは美事なスピニフェックス組織を示す超苦鉄質岩の急冷相で、バーバト

ン地域のコマチ川(Komati riber)に産出するところからその名がある。その上位には玄

武岩質溶岩が、さらに中性~酸性の火山岩およびチャートが累重している。

フィグトリー層群はオンバーワハト層群を不整合に覆って、主に粘土質岩,チャートな

どからなり、縞状鉄鉱層(BIF)を伴う(佐藤・de Ronde,1993)。この地層からは原生生

物の棹菌や藍藻などの化石が見出だされている。

ムーディース層群はフィグトリー層群を不整合に覆う。その下部は礫岩・珪岩・ジャス

ピライトが優勢で、上部は頁岩・千枚岩・ジャスピライトおよび玄武岩溶岩から成る。

ポンゴラ系はカープバールクラトンの南東部に分布し、北西-南東方向の伸びをもつ浅

海性堆積物(礫岩・砂岩)および中~塩基性火山岩からなる。堆積の場はその後西へ移動

し、ドミニオンリーフ系の堆積が始まった。

ウィットウォータースランド系は始生代末(25 億年前)の大規模(長径 180km,短径

70km)な堆積盆にたまった浅海性の厚い堆積物で,ヨハネスバーグの南部において,北東

―南西に伸びた分布している。ウィットウォータースランド系はその後の原生界に覆われ

ているため、第 1 図では潜在する分布範囲を破線で示した。この堆積盆は世界 大の金鉱

床を胚胎することで有名である。下部層(ウェストランド層群)は有機物に富む泥岩と砂

岩の互層および礫岩からなり、化学的堆積物ならびに氷河堆積物を伴う。上部層(セント

ラルランド層群)は多くの礫岩層と砂岩の互層からなり金とウランを伴う。これらは海に

面した扇状地あるいは三角洲堆積物である。

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- 40 - 南アフリカ

ベンタースドープ系はカープバールクラトンの中央部から南西にかけて、ウィットウォ

ータースランド層群を整合的に覆って分布する。玄武岩・安山岩および流紋岩からなり、

堆積盆の中央部では礫岩・砂岩・頁岩・凝灰岩および石灰岩を伴う。

トランスバール系は始生代の花崗岩類・片麻岩類・緑色岩帯・ベンダースドープ系など

を覆ってカープバールクラトンのほぼ中央部を 1,000km 以上にわたって東北東-西南西

方向の伸びをもって分布し、主として浅海性の堆積物から構成されている。下部層の一つ

のグリクワランド層群は縞状鉄鉱層と大規模なマンガン鉱層を胚胎する。上部層のプレト

リア層群はストロマトライトを含むほかクラゲ様の動物化石も見出だされている。ブッシ

ュフェルト層状分化岩体(または,複合岩体)はプレトリア層群の構造にほぼ整合的に貫

入している。

ブッシュフェルト複合岩体は超苦鉄質岩の貫入に始まり、花崗岩質マグマの固結(20.5

億年)で終結した、世界 大の層状分化岩体であると同時に、大規模なクロム・白金族元

素・チタン・バナジンなどのレアメタル資源を伴っていることでもよく知られている。そ

の地表露出面積は 65,000km2で、九州と四国を合わせたよりやや広い。ブッシュフェルト

複合岩体はその下位から上位に向かって、以下の 5 ゾーンに分けられている。薄いノーラ

イトからなる“マージナルゾーン”、輝岩とハルツバージャイトからなり、その上部にお

いて僅かにクロム鉄鉱の薄層を伴う“下部ゾーン”、その上位には輝岩、ノーライト、斜

長岩からなり多くのクロム鉄鉱層と白金族元素を含むメレンスキーリーフと UG2(クロム

鉱床群のうちの Upper Group)を伴い資源的に も重要な“クリティカルゾーン”を胚胎

する。ノーライト,ガブロノーライトおよび斜長岩から成るがほとんど鉱床を伴わない“メ

ーンゾーン”、さらに 上部にはガブロを主とし、その上部に閃緑岩,斜長岩から成る“上

部ゾーン”は 20 枚以上の含チタン磁鉄鉱層を伴っている。ブッシュフェルト複合岩体分

布域の中央部には 末期に貫入した花崗岩類があって、スズおよび螢石鉱床を伴う。

カルー系は古生代前期から中期のケープ系と先カンブリア基盤岩を被覆して、アフリカ

南部に拡がる陸成堆積物を主とする地層である。なかでも,南アフリカ共和国の南東部で

は古生代後期~中生代前期にかけて、東西方向から北東方向へのびる大カルー盆地に氷河

堆積物をはじめとした陸成の砕屑物が堆積するとともに中生代の台地玄武岩などの火成

活動によって特徴づけられる。二畳紀のエッカ統は主に頁岩と砂岩から成り、多量の石炭

を伴う(Visser,1989)が、金属資源ポテンシャルという点から見れば,カルー系はそれ

ほど重要ではない。

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第 1-1 図 南アフリカ共和国の地質図(M.G.C.Wilson(1998))

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- 42 - 南アフリカ

億年 地 質 時 代 岩 層 系 貫 入 岩 類

新生代

カルー系

5.7

ケープ累層群

マルムスバリー,ナマ

及びその他の累層群

ケープ花崗岩類

中 期

ナタール-ナマクワランド

変成岩系

ウォーターバーグ累積群

トランスバール系及び

グリクワランドウェスト系

ブッシュフェルト

コンプレックス

16

25

29

35

セントラルランド層群

ウェストランド層群

ドミニオン層群

ムーディース層群

フィグトリー層群

オンバーワハト層群

古期片麻岩

コンプレックス

第 1-2 図 南アフリカの地質層序

ウィットウォタース ランド系

スワジランド系

出典:神谷(1994)

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- 43 - 南アフリカ

2. 鉱床

2-1. 鉱床生成区

南アフリカ共和国は鉱物資源の宝庫と言われているように、白金族・クロム・マンガン・

バナジウムなど,レアメタル資源に極めて富んでいる。 第2-1図に主要な鉱床の分布を示

した。

第2-1図 南アフリカ共和国の主要鉱物資源分布と主な鉱床生成区

出典:神谷(1994)

埋蔵鉱量でみると、世界の20%以上を占めている資源として、マンガン・白金族・クロ

ム・金・バナジウムがある。生産量でも白金族・バナジウム・マンガン・クロムなど,先

端技術産業の素材として重要なレアメタルの供給に大きな役割を果たしていることがわ

かる。

以下に、このような鉱床が、いつ、どのようにして生成されたかなどについて概説する。

鉱床生成区とは、地質時代のある期間に、同種の地質作用(堆積作用,火成作用など)

などによって形成された鉱床の分布域に対して用いられており、通常数10万㎞2~100万㎞

2規模をもっている。

2-1-1. 始生代の鉱床(~25億年)

始生代の主な鉱床としては鉄・マンガン・金・銀・鉛・亜鉛・スズ・タングステン・ウ

ラン・螢石・アスベストがある。

(1)カープバール鉱床区

主に緑色岩帯の金・銀・鉄・アスベスト鉱床が重要である。なかでも、バーバトン緑色

岩帯中には、350箇所を上回る金・銀鉱床(鉱徴地を含む)が知られ、1884年から1983年

までの100年間における生産量は金が252トン、銀が9トンである(Anhaeusser,1986)。

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- 44 - 南アフリカ

そのうち、シエバ鉱床(生産実績,65トン)、ニューコンソート鉱床(55トン)、フェア

ビュー鉱床(37トン)、アグネス鉱床(19トン)などが比較的大きい。同様な鉱床はバー

バトン地域だけでなく、スザーランドおよびマーチソン緑色岩帯にも見出だされるが,両

地域における資源ポテンシャルはバーバトン地域に比べてかなり低い。

これらの鉱床の成因については、議論のあるところではあるが、大半の鉱床は花崗岩類

などの貫入火成岩からの熱エネルギーによって、金をはじめとする多くの金属元素が濃

集・沈殿させられたと考えられている。そのほか層準規制による同成的な含金・銀鉱床も

いくつか存在している(Visser,1989;Anhaeusser,1986など)。

(2)ウィットウォータースランド鉱床区

世界 大の堆積型金-ウラン鉱床区であり,その開発(1886年)以来,これまでに生産さ

れた金量は約40,000トンに達するといわれる。1993年現在でも年産量約600トンを維持し,

世界の産金量の28%を占めている。

鉱床は後期始生代のウィットウォータースランド系中の10数枚の礫岩層に相当し、その

埋蔵鉱量は18,000トン(金量)と推定されている(Mineral Bureau, S.A., 1993)。

ウィットウォータースランド系はカープバールクラトンのほぼ中央部に、北東-南西方

向の伸びをもった堆積盆中の浅海性堆積物から成っている。その下部層(ウェストランド

層群)は、有機物に富む砂質~泥質堆積物が優勢で、礫層の発達は著しくなく、金に比べ

てウランの含有量が多い。一方,上部層(セントラルランド層群)は多数の礫岩層を挟在

し、金とウランに富む。主な堆積物はウィットウォータースランド盆地の北西後背地の古

期岩類に由来する。金は主として古期緑色岩類から、ウランは多分カリウムに富んだ花崗

岩質岩類からそれぞれもたらされたものと考えられている(例えば,Pretorius, 1981)。

2-1-2. 原生代の鉱床(6.5~25億年)

カープバールクラトンの固化後,早期原生代のトランスバール系およびグリクワランド

ウエスト系などがそのクラトンを基盤として広範囲に堆積した。ブッシュフェルト複合岩

体は早期原生代の末にトランスバール系プレトリア層群中に貫入した。これらの地質的な

出来事は、この国の鉱物資源にとって、ウィットウォータースランド系に伴う金・ウラン

鉱床の生成とともに、 も重要なイベントであったといえる。

(1)トランスバール-グリクワランド鉱床区

トランスバール鉱床亜区はカープバールクラトンの東部に位置し,金・鉛・亜鉛・鉄・

マンガン・螢石などの鉱床を生成する。金鉱床はトランスバール系下部のブラックリーフ

層群下底部の礫層に相当し、ウィットウォータースランド系中の含金礫岩層が再堆積した

ものである。大規模・低品位の螢石鉱床はごく少量の鉛・亜鉛を伴って、トランスバール

系マルマニ層群を構成するドロマイト層中の微小な空隙を充填したり、藻類ドロマイトを

交代して生じている。

グリクワランドウエスト鉱床亜区はカープバールクラトンの西部を広く覆う炭酸塩岩

や化学的堆積物によって特徴づけられる。この鉱床亜区では大規模の層状鉄-マンガン鉱

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- 45 - 南アフリカ

床、鉛・亜鉛鉱床、角閃石系アスベスト(クロシドライト)鉱床などが生成している。

縞状鉄鉱床は、ケープ州の北部、シシエン付近に位置するキャンベル層群のドロマイト

層の上に生成した巨大な高品位赤鉄鉱鉱床で、スペリオル型に属し、埋蔵鉱量10億トン以

上と推定されている(Van Schalkwyk and Beukes, 1986)。マンガン鉱床は縞状鉄鉱床と

密接に伴って堆積したもので、30億トン以上の埋蔵鉱量をもつカラハリマンガン鉱床群と

して知られている(Schissel and Aro, 1992)。また,カラハリ鉱床群の南には、ほぼ南

北に伸びる2列のマンガン鉱床が形成されている。これらは風化残留型鉱床といわれる。

このほか、キャンベル層群のドロマイト層中に、埋蔵鉱量約1,800万トン(品位3.6%Zn,

0.6%Pb)のミシシッピバレー型の鉛・亜鉛鉱床が 近見出されている(Wheatley et al.,

1986)。

角閃石系アスベスト(クロシドライトまたはブルーアスベスト)鉱床群はグリクワタウ

ン層群の縞状鉄鉱層中に生成し、南北300kmにわたって分布している。このうち、珪化作

用を受けたクロシドライトは“虎目石”として装飾用に利用されている。

(2)ブッシュフェルト鉱床区

65,000㎞2にわたる広大な層状分化岩体(Vermaak and von Gruenewaldt, 1986)は早期

原生代トランスバール系の上部に貫入、固結したラステンバーグ層状岩系とレオバ花崗岩

系などから構成される。ラステンバーグ層状岩系にはクロム・白金族・ニッケル・チタン・

バナジウム・鉄鉱を伴い、レオバ花崗岩系は錫・螢石などを伴っている。クロム鉱床と白

金族鉱床はラステンバーグ層状岩系の下部に近いクリティカルゾーンに15層が集中的に

形成されている。それらは厚さ数㎝から1.8mの鉱層で、一般に,ポイキリティック組織

を示す輝岩の下部を占める。

クロム-白金族鉱床は4地域に分布するブッシュフェルト層状分化岩体、すなわち、東

部岩体、西部岩体、北部岩体(またはポットジータースラス岩体)および西縁岩体(また

はマリコ岩体)に伴われている。

クロム鉱床は東部岩体において も優勢であり,なかでも、ウインターフェルト鉱山で

はクリティカルゾーン下部のスティールポート鉱体(厚さ,平均1m)を主として採掘し、

年間100-150万トンのクロム鉄鉱を生産してる(Ireland, 1986)。クロム鉄鉱の大半は

フェロクロム用に消費される。その品位はCr2O3 43-47%、FeO 25-26%、Cr/Feは1.5-1.6

付近に集中する。これに対して,西縁岩体中のクロム鉄鉱は他地域のものに比べてCr/Fe

比が高く、スピネル中に磁鉄鉱成分が少ないため(Vermaak, 1986)耐火物に好適な原料

として利用されている。

白金族鉱床は東部および西部両岩体中の、とくに、クリティカルゾーンの上部に位置す

るメレンスキーリーフおよびUG2リーフに含まれる。メレンスキーリーフはクリティカル

ゾーンの 上部に位置し、ポイキリティックな組織を示す輝岩の下部に生じた厚さ数10

㎝の長石に富むペグマタイト質輝岩であり、その上下には薄いクロム鉄鉱層を伴っている。

一方、UG2リーフはメレンスキーリーフの下部20-400mに位置する白金族元素に富むクロ

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- 46 - 南アフリカ

ム鉄鉱層である。メレンスキーリーフは東部および西部両岩体において、またUG2リーフ

は西部岩体南部のウエスタンプラチナム鉱山などで採掘されている。白金族元素の含有率

は両リーフで大きく異なっている。例えば、アトック鉱山におけるPt/Pd比はメレンスキ

ーリーフが2.73であるのに対し、UG2リーフは僅かに1.19である(Mossom, 1986)。ブッ

シュフェルト鉱床区における白金族元素の埋蔵鉱量は58,900トンであり,この量は世界の

88%を占める(Mineral Bureau, 1992)だけでなく、白金(Pt)含有量の多さは世界の他

の鉱床に比べてもきわだっている。

ラステンバーグコンプレックスの上部ゾーン中には21枚の含チタン磁鉄鉱層を生じて

いる。それらの厚さや拡がりはクロマイト鉱層やメレンスキーリーフのそれをはるかに凌

ぐ規模を持っている。鉱石中にはバナジウムが2%(V2O5)程度含まれるが,その品位は

上部ゾーンの下位から上位にかけてやや減少する。バナジウムの埋蔵鉱量は膨大な含チタ

ン磁鉄鉱量を反映して、世界の埋蔵鉱量の47%を占めている。現在、バナジウムは大規模

な稼行が続けられている含チタン磁鉄鉱の副産物として回収されている。

ブッシュフェルト複合岩体形成の 終ステージに、その中央部に貫入したレボワ花崗岩

系とラシュープグラノファイヤー系の熱水期に、いくつかの錫・蛍石鉱床が形成された。

また、中~低温型の小規模な金・鉛・亜鉛鉱脈鉱床も生じている。

パラボラおよびグレノファーカーボナタイト複合岩体およびプレミヤ-キンバーライ

トは前~中期原生代に,始生界の基盤岩中に貫入した。パラボラカーボナタイトはブッシ

ュフェルト複合岩体の貫入とほぼ同時期(20.3億年;Verwoerd, 1986)で、銅-ウランを

主としジルコニアを伴う大規模鉱床である。この鉱床からの銅の生産量はこの国の銅生産

量の大半を占め、ジルコニア(バデレアイト;ZrO)は世界で唯一の供給源となっている。

このほか、多量の燐灰石とバーミキュライトなどの工業原料も生産している。グレノファ

ーカーボナタイトは多量の燐灰石を埋蔵し、プレミヤ-キンバーライトパイプ(12.5億年)

は、1950年のカリナンダイヤモンド(3,106カラット)の発見でも有名である。

2-1-3. 顕生代の鉱床

古生代における鉱化作用はカルー系の初期堆積期(二畳-三畳紀)における石炭および

随伴するカオリン耐火粘土の生成を除いて、重要な鉱床は少ない。石炭の可採埋蔵鉱量は

約550億トン(Martini and Hammerbeck, 1989)で、ほとんど瀝青炭から成るが、堆積盆

の東へ向かうにつれて半無煙炭質となる。

中生代末のゴンドワナ大陸の分裂に伴う深部断裂にそって多くのキンバーライトが貫

入した。なかでも、18世紀の後半に発見されキンバーライトの名の由来となったキンバレ

ー鉱床は現在までに多量の宝石級ダイヤモンドを産出したことでも著名である。

新生代、とくに第三紀末から第四紀にかけて、基盤岩の風化・浸蝕・運搬・淘汰によっ

てナミビアから南ア共和国の海岸線およびオレンジ川下流域にかけてダイヤモンド砂鉱

床を生じた。また、イルメナイトとジルコンを主とした海浜砂鉱床はダーバン付近の東海

岸および西海岸にも形成され、稼行されている。

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- 47 - 南アフリカ

2-2. 鉱床タイプ別の特徴

2-2-1. 白金族鉱床

PGM 資源量の 80%を南アフリカの Bushveld 複合岩体が占めている。生産においても

Bushveld複合岩体は3分の2を占める。その他の主要生産地はNoril’sk-Talnakh鉱床、

Great Dike、Stillwater 複合岩体である。Sudbury 鉱床を含むその他の生産地は全体の 5%

以下に留まる。

PGM 資源量の 2%は他の塩基性-超塩基性岩体および沖積砂鉱床に産する。他の岩体は

Fiskenaesset 複合岩体(グリーンランド)、Jinchuan 複合岩体(中国)、Kambalda 地区

(オーストラリア)などである。沖積砂鉱床は Choco 地区(コロンビア)、Goodnews Bay

地区(アラスカ)などであり、一般にアラスカ型帯状超塩基性複合岩体に関連する。また

ウラル山脈にある砂鉱床は 19 世紀における世界で唯一の Pt 源であった。南アの

Witwatersrand の含 Au 礫岩は 10 ppb 以下の PGM を含み、Au 回収時のボーナスとなってい

る。

オフィオライト中の超塩基性岩で、クロム鉄鉱や硫化物が濃集しているものに PGM の濃

集が見られることがある。Zmabales オフィオライト中の Ni-Cu 硫化物採掘の副産物とし

て Pt が回収された例があるが、PGM 鉱床としての重要性は低い。

近新たに注目を浴びている PGM 元素鉱床には斑岩銅鉱床に伴う鉱床、堆積性環境にお

ける鉱床、Ni ラテライト鉱床に伴うものがある。いずれも量的には微量であるが、副産

物としての回収や高品位部の選択的採掘の可能性がある。

斑岩銅鉱床はしばしば 1 ppm を超える PGM を含有する。鉱石採掘量が大きいことから、

PGM 資源としても無視できない。PGM 含有量の高い斑岩銅鉱床は、大陸縁辺の沈み込み帯

よりは背弧環境にある斑岩銅鉱床であるように見受けられる。

堆積性環境における鉱床としては、ポーランドの含銅頁岩で相当量の PGM の含有が報告

されており、副産物として Pd が回収されている。低温における PGM と Au の沈殿には黒色

頁岩が特に好ましいようである。 近注目をあびたものには、ブラジルの Serra Pelada

鉱床、オーストラリアの Coronation Hill 鉱床がある。この鉱床の形成には酸化-還元環

境が重要であるようで、酸化還元境界に達するまで上盤を移動する天水により金属は運ば

れたと思われる。その他、中国の Zunyi と Hunan、ウズベキスタンの Muruntau、カナダの

Nick、ロシアの Sukhoi Logや Udokan等で PGM鉱化が報告されている(Wilde et al, 2003)。

近年 Ni ラテライトのブームであるが、サフロライト中でしばしば PGM 含有量が 1 ppm

を超える。ブラジルの Niquelandia 鉱床のクロム鉄鉱岩では、ラテライト化において PGM

は移動性に富み、ゲーサイト中に Ru が 40%含まれており、フィロ珪酸塩やクロム鉄鉱粒

間の鉄酸化物中に Pt-Fe 合金が発見されている。

PGM は親石ないし親銅の金属元素グループであり、自然界における濃度は、酸性―中

性組成の岩石では ppb 以下、塩基性―超塩基性組成の岩石で 1~100 ppb 程度である。経

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- 48 - 南アフリカ

済性のある鉱床は一般に PGM を 5~10 ppm 含む。PGM の異常濃集は高温のマグマ性熱水・

堆積環境から低温の熱水・堆積環境にわたって知られている。しかし大部分の PGM は超塩

基性岩に伴うマグマ的ないしマグマ熱水的鉱床から採掘されている。これまでに知られて

いる PGM 資源の 98%は以下の 2 タイプからなり、いずれも Ni-Cu 硫化物と密接に関連す

る。

・ 層状(正確には層準規制的)鉱床で、Bushveld(南アフリカ;以下「南ア」)や

Stillwater(アメリカ)、Great Dike(ジンバブエ)といった大規模層状複合岩

体中にあり、主に PGM を採掘するもの。

・ 主に Ni-Cu を採掘する Ni-Cu 硫化物鉱床で、副産物として回収可能な量の PGM を

含むもの(Sudbury(カナダ)、Noril’sk-Talnakh(ロシア)、Jinchuan(中国)、

Kambalda(オーストラリア)の各鉱床)。

層状鉱床の特徴は次のとおりである。

・ 塊状の濃集としてよりも、むしろ珪酸塩岩中の比較的弱い硫化物鉱染としての、

特定の層準ないしリーフ(reef:鉱化した岩石層で特徴的な構造および/または

鉱物組成を有するもの)における産状。

・ クロム鉄鉱と関連。塊状クロム鉄鉱層内、ないし少量のクロム鉄鉱を含む層内(鉱

化層準の上下のクロム鉄鉱を含まない層との差が大きい)。

2-2-2 南アの PGM 鉱床

第 2-2 図に南アの広域地質・主要鉱床位置図を示す。南アで生産中の PGM 鉱山は全て

Bushveld 複合岩体に胚胎する。その他に Stella および Insizwa の塩基性複合岩体に PGM

を含む鉱床が知られている。Stella は現在探鉱中である。Insizwa はかつて生産していた

ものの鉱量枯渇により現在は生産していない。以下に Bushveld、Stella、Insizwa の各鉱

床について述べる。

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- 49 - 南アフリカ

第 2-2 図 広域地質図

出典:Wilson(1998)

(1)Bushveld

a) 貫入岩体について

Bushveld 複合岩体は南アフリカの Kaapvaal クラトンに露出している。母岩は初期原

生代の Transvaal 累層群である。同累層群は厚さ 11 km に及ぶ堆積岩で4層の火山岩層

を有する。同累層群の年代は不詳であるが、 下底の岩石は 25 億年の可能性がある。

複合岩体の主な岩石タイプは以下の 3 つである。

・ 安山岩―流紋岩質の Rooiberg Felsite および Dullstroom 火山岩類

・ 超塩基性―塩基性の Rustenburg 層状岩石群

・ Bushveld 花崗岩類

第 2-3 図に地質図を示す。

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- 50 - 南アフリカ

第 2-3 図 Bushveld 複合岩体の地質概略図

出典:(財)国際鉱物資源開発協力協会(2004)

これらの岩石の固化年代は 20.6 億年に集中する。Bushveld 複合岩体の貫入は隕石の

衝突の結果であるという説があるが、隕石の衝突で生じたであろう衝突変成作用は周辺

で確認されていない。複合岩体は複数の構造線の交点に位置し、その貫入は Kaapvaal

クラトンの構造により規制されたものである可能性がある。

複合岩体の塩基性―超塩基性岩石群である Rustenburg 層状岩石群は、Western limb,

Eastern limb, Northern limb(または Potgietersrus 岩体)の 3 部分から構成される。

3 部分における岩石タイプの連続はおおまかに類似しており、マグマ組成や分別結晶作

用の条件は類似であったと思われる。3 部分のマグマは中央に位置する母マグマ溜まり

に由来したもので、同時に貫入したように見受けられる。

Rustenburg 層状岩石群の厚さは Western limb で 7.5 km、Eastern limb で 9.0 km で

あり、仮に以下の 5 ゾーンに分けられている。

上:上部ゾーン(Upper Zone)

↑ メインゾーン(Main Zone)

クリティカルゾーン(Critical Zone)

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- 51 - 南アフリカ

↓ 下部ゾーン(Lower Zone)

下:縁辺(基盤)ゾーン(Marginal (Basal) Zone)

第 2-4 図に岩石層準図を示す。

第 2-4 図 Bushveld 複合岩体の地質層序図

出典:(財)国際鉱物資源開発協力協会(2004)

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- 52 - 南アフリカ

古銅輝石と橄欖石の Mg/(Mg+Fe)の変化から、大まかに下から上に向かっての Fe 富加の

傾向が示され、分別結晶作用の考えと調和的である。しかし詳細に見ると、逆行や非系統

的組成変化が認められる部分も多い。各ゾーンやその細分ゾーンの厚さは場所により様々

であり、あるゾーンが欠落することもある。

5ゾーンのうちクリティカルゾーンにPGM鉱床が集中する。Western limbおよび Eastern

limb ではクロム鉄鉱層はクリティカルゾーンに限られる。Western limb および Eastern

limb のクロム鉄鉱層は下位グループ(LG)、中位グループ(MG)および上位グループ(UG)

の3グループに分けられる。下位グループは 大 7 層(LG-1~LG-7)からなり、中位グ

ループは 4 層(MG-1~MG-4)、上位グループは 2 層(UG-1~UG-2)からなる。重要な PGM

含有部である Merensky Reef は、硫化物を主体とするが、一般に非常に薄い(1~5 cm)2

層のクロム鉄鉱層を伴うので、UG-4 と見なすこともできる。Cr 鉱床として も重要なの

は LG-6 であるが、PGM 鉱床として重要なのは UG-2 であり、鉱石品位相当の PGM 濃集を示

す。

b) 貫入岩体の進化

貫入岩体の組成変化は、2 つの母マグマの混合によるとの説が一般的である。超塩基性

の単一鉱物の集積岩と、斜長岩質の単一鉱物の集積岩がともに相当量存在するが、これを

単一のマグマからの分別結晶作用で説明することができないからである。さらに Bushveld

複合岩体と同時期に貫入した岩床は 2 種類の異なるマグマからもたらされたと思われる

ことも 2 つの母マグマ説を支持している。2 つの母マグマは、U(Ultlamafic:超塩基性)

と A(Anorthositic:斜長岩質)と呼ばれる。U マグマは橄欖石±輝石に富む集積岩を、A

マグマは斜長石に富む集積岩をもたらしたとされる。Bushveld 複合岩体の急冷縁辺の組

成の冷却実験による晶出順序は以下のとおりであった。

U1 マグマ:橄欖石+少量のクロム鉄鉱

→斜方輝石

→斜長石

A1 マグマ:斜長石+少量のクロム鉄鉱

→橄欖石

→Ca に富む輝石

→Ca に乏しい輝石

U1 マグマの晶出順序から導かれる集積岩はダナイト質、ハルツバージャイト質、ノー

ライト質で、Bushveld 複合岩体の下部ゾーンとクリティカルゾーンの岩石に対応する。

A1 マグマの晶出順序からみちびかれる集積岩は斜長岩、トロクトライト、橄欖石斑礪岩、

両輝石斑礪岩で、クリティカルゾーンの上部サブゾーンやメインゾーンの岩石に対応する。

Bushveld 複合岩体の斜長岩とクロム鉄鉱層が U マグマへの A マグマの流入により生成さ

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- 53 - 南アフリカ

れたものであるならば、クロム鉄鉱層は斜長岩に伴って産出するはずである。実際に

Bushveld 複合岩体ではクロム鉄鉱層は斜長岩に伴っており、マグマ混合説を支持してい

る。

マグマの混合の時代ははっきりしない。クリティカルゾーンで化学組成の逆行が数回あ

ることから、A マグマの注入は複数回あったものと見られている。メインゾーンと上部ゾ

ーンの岩石は A マグマのみの分別結晶作用で導くことができる。

A マグマの起源について、U マグマから導かれたものか、それとも U マグマと別の起源

を持つものなのかについては、議論が分かれている。

c) PGM 鉱床

Bushveld 複合岩体の PGM 鉱化が見られる場所は次の 4 個所である。

・ Merensky Reef

・ UG-2 クロム鉄鉱層

・ Northern limb の Platreef

・ Eastern limb の Pt-Fe 超塩基性パイプ

UG-2 は世界の PGM 資源量の 42.3%占め、 大である。Merensky Reef と UG-2 で世界の

PGM 生産の半分以上を占めている。以下にこれらについて記載する。

Merensky Reef

Merensky Reef は地表に走行距離 250 km 以上にわたり露出しており、現在盛んに採掘

されている。1924 年に探鉱者により発見され、その責任者の名が与えられた。

Reef の厚さは 4 cm~4 m で、一般に 1 m 程度である。傾斜は 9°~27°である。地震探

査によれば、延長は露頭から 50 km(地表下 6 km)まで追跡できる。典型的な reef は粗

粒からペグマタイト様の長石質輝岩で、所により若干の橄欖石を伴う。斜長岩―

leuconorite 部を覆い、細粒の輝岩(古銅輝石)に覆われる。

PGM 鉱石ゾーンは一般に厚さ 1 m 程度で、PGM の濃集は 2 つのクロム鉄鉱層の近傍にあ

る。2 つのクロム鉄鉱層はペグマタイト部の 上部と 下部に位置する。 下部にあるク

ロム鉄鉱層は厚さ 3 mm から 3 cm で、連続性が良い。 上部のクロム鉄鉱層はわずか数

mm で、連続性が悪い。PGM 鉱石の重要部分は 上部のクロム鉄鉱層に伴う。PGM の鉱石鉱

物は Pt-Pd 硫化物が主である。その他に少量の砒素化合物、テルル化合物およびその他の

半金属相がある。Ru の硫化物(主に laurite)もクロム鉄鉱層に関連して産出する。

Merensky Reef における硫化物の濃集と PGM 品位は明らかに関連している。Reef の硫化

物濃度は 2~3%で、近傍の岩石よりも濃集している。Reef の硫化物は Ni-Cu 硫化物が一

般的であり、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、ペントランド鉱を主とし、少量の黄鉄鉱ないしキューバ

鉱、マッキーノ鉱を伴い、稀に方鉛鉱、sphakerite、sulfarsenide を伴う。硫化物は大

部分が不規則な泡状および粒間状である。Merensky reef の硫化物は近傍の硫化物に比べ

著しく Ni, Pt に富む。PGM の鉱化は上盤と下盤の岩石にもおよんでいる。

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- 54 - 南アフリカ

Reef の PGM の含有量はほぼ一定しており、層が薄い場合は品位が高く、層が厚い場合

は品位が低い。Reef が薄い場合、結晶の粒間に取り込める硫化物メルトの量が限られる

ため、硫化物メルトが上下に移動し、上下盤の PGM 鉱化をもたらしたと解釈されている。

Bushveld 複合岩体のマグマ的層準の連続性は、しばしば「ポットホール」で中断され、

効率的な採掘に障害をもたらしている。この部分は一般に採掘せずに堀残しとなっている

が、Northam Platinum 社の鉱区ではポットホールが多いため、稼行対象となっている。

ポットホールの成因には諸説があるが、マグマ中の揮発性成分含有量が部分的に高かった

ため、その部分の融点が下がり、結晶化が進まなかったとの説が有力である。

Platreef

Platreef は Northern limb にあり、延長 60 km、厚さ 大 200 mである。Western limb

と Eastern limb の Merensky reef と同じ層準に位置すると見られている。北西に走行し、

南西に 40°傾斜する。厚さは変化し、下盤とは不規則な接触面を有し、上盤との接触面

は波型である。上盤は均質な斑礪岩ノーライトで、メインゾーンに典型的な岩石である。

下盤は、Northern limb の南部では接触変成を受けた堆積岩(苦灰岩、頁岩、鉄鉱石)で

Transvaal 累層群に属する。Northern limb の北部では下盤は始生代の花崗岩類である。

Platreef 自体はいくつかの集積性輝岩ユニットからなる。一般に中央部(B reef)の PGM

品位が も高い。B reef は中粒から粗粒の輝岩(およびノーライト、メラノーライト、

蛇紋岩)で少量のクロム鉄鉱を伴い、PGM 含有量は鉱化輝岩の厚さによらず一定である。

下盤の変苦灰岩やカルク珪酸塩岩の捕獲岩がしばしば見られ、通常硫化物縁を有し、時に

Cu, Ni, PGM が濃集する。変成を受けた下盤が PGM 鉱化を受けることもある。

Platreef の PGM 鉱物は変化に富んでおり、Pt-Pd 硫化物、テルル化合物、Pt-Fe 合金、

エレクトラムから構成される。PGM 鉱化は硫化物(一般に磁硫鉄鉱-ペントランド鉱-黄

銅鉱集合物)に関連するが、PGM 品位と硫化物の量は必ずしも関連しない。硫化物―PGM

鉱化は、1) 下盤に沿った鉱染や粒として、2) 変質していない火成岩中の非経済的鉱染と

して、3) 苦灰岩捕獲岩の反応縁における濃集として、および 4) 蛇紋岩化ゾーンにおけ

る濃集として、不均質に分布する。当初の PGM―硫化物鉱化は、珪酸塩マグマから PGM に

富む硫化物メルトが液体不混和により分離したことによると考えられている。マグマが硫

黄に飽和した原因には諸説があるが、Merensky reef の生成が他のマグマの混入であった

ように、硫黄に富む他のマグマの混入が原因との説がある。

UG-2 クロム鉄鉱岩

Bushveld 複合岩体の全てのクロム鉄鉱層は、その他の集積岩よりも PGM に富んでいる。

中でも UG-2 は も連続性がよく PGM に富んでおり、Bushveld 複合岩体の PGM の 42%を占

めていて(Table 3-2-1)、1986 年に採掘を開始して以来、重要な生産鉱床となっている。

UG-2 の採掘は、MINTEK(南ア冶金研究所)の技術開発によりクロム鉄鉱岩の冶金が経済

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- 55 - 南アフリカ

的に可能になったことが契機となった。

UG-2 は Merensky reef の 15~400 m 下に位置する。Union 鉱山ではわずかに 15m しか離

れていない。厚さは 0.5~2.5 m、多くは 0.5~1.0 m で、上部クリティカルゾーンの UG-2

サイクル・ユニットの下底にある古銅輝石集積岩内にある。その上にはペグマタイト様の

長石質輝岩がある。クロム鉄鉱岩の構成は、60~90%がクロム鉄鉱、5~25%が古銅輝石、

5~15%が斜長石で、少量の単斜輝石、ベースメタル硫化物、PGM、チタン鉄鉱、磁鉄鉱、

ルチル、黒雲母を伴う。PGM 平均品位は Western Platinum 鉱山で 4.3~4.9 ppm、北西部

で 9.3 ppm、Eastern limb の Maandagshoek で 8.2 ppm である。

超塩基性パイプ

Bushveld 複合岩体では、集積後にできた、集積層を切る超塩基性岩が知られている。

その中に Pt を含む 4 つの超塩基性(ダナイト質)パイプがある。Driekop, Mroihoek,

Onverwacht, Maandagschoek がそれであり、前 3 者はかつて PGM を対象に採掘された。平

均品位は 10 ppm 以下であった。

パイプはクリティカルゾーン集積岩を垂直に切っている。パイプは下にいくにつれて細

くなるマグネシウム質ダナイトで、中核部にペグマタイト様の Fe に富むダナイトがある。

PGM 鉱化は中核部に限られる。PGM 鉱物は、Pt-Fe 合金, sperrylite, hollingworthite,

irasite 等である。

パイプと PGM 鉱化は、マグマ起源の熱水鉱液によるものと考えられている。鉱化をもた

らした高温(600℃±150℃)で塩化物や CO2に富む流体は、パイプの近傍にある UG-2 ク

ロム鉄鉱岩や Merensky reef にも影響をおよぼした可能性がある。

(2)Insizwa 岩体

厚さ 1,000 m の斑礪岩組成の分化した塩基性貫入岩体である。下盤は頁岩であり、接触

部に鉱床がある。2~3 年前に Falconbridge 社が地表からくまなくボーリングを掘削した

が、Ni 硫化物が確認できたのは waterfall 岩体のみで、その他は Ni 珪酸塩であった。品

位も高くない。Reef は下側に陥没している部分で硫化物の品位が高くなるという傾向が

見られる。

(3)Stella 複合岩体

ボツワナとの国境の南部に分布するグリーンストーン帯にある 2900Ma の貫入岩体であ

る。2050~2060Ma の Bushveld 複合岩体よりも古い地域である。Harmony Gold Mineral 社

の Kalgold 金山が近くにある。同社が周辺探鉱していたところ、たまたま Pt に当たった

もので、Harmony 社の唯一の PGM 案件である。

2-2-3. クロム鉱床

クロム鉱床の鉱石鉱物はクロム鉄鉱(chromite もしくは chromian spinel)であり、化

学式は(Mg,Fe2+)(Cr,Al,Fe3+)2O4 で表される。クロム鉱床には正マグマ性鉱床と漂砂

鉱床があるが、大部分の鉱床は塩基性-超塩基性岩体に伴う正マグマ性鉱床である。

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- 56 - 南アフリカ

通常、クロム鉄鉱が 20~30%以上濃集した岩石をクロミタイトと呼ぶが、クロム鉄鉱

の濃集度と形態から塊状クロミタイト(ほとんど全てがクロム鉄鉱からなる)と斑状クロ

ミタイト(クロム鉄鉱と他鉱物が種々の割合で混在)に分けられる。また、稼行対象と成

り得る上記のクロミタイトに対してそれぞれえ塊状鉱(massive ore)、斑状鉱

(disseminated ore)とも呼ぶ。

正マグマ性クロム鉱床はその成因と産状から、層状型クロミタイトとポディフォーム方

クロミタイトに分けられるが、埋蔵量としては前者が圧倒的に大きい。

①層状型クロミタイト(stratiform chromitite)

・連続性の良い集積岩、すなわち層状貫入岩(かんらん岩、パイロキシナイト、アノ

ーソサイト、など)に伴う。

・ほとんど全てのものは非造山帯に産する。

・主な鉱床

ブッシュフェルト(南アフリカ)、グレートダイク(ジンバブエ)、スティルウォ

ーター(アメリカ)

②ポディフォーム型クロミタイト(podiform chromitite)

・連続性が乏しく、極めて不規則にオフィオライトなあどのマントルかんらん岩中に

産する。

・造山帯に産する。

・主な鉱床

旧ソ連(カザフスタン、ウラル)、トルコ、フィリピン、日本など

ブッシュフェルト複合岩体のクロム鉱床は上述のとおり層状型の鉱床であり、埋蔵鉱量

は他の岩体と比較しても圧倒的に大きい。また、第 2-1 表には世界の主要な層状塩基性~

超塩基性貫入岩体の規模を示したが、ブッシュフェルト複合岩体は他の岩体と比べて圧倒

的にその規模が大きいことがわかる。

(1)ブッシュフェルト複合岩体のクロム鉱床

ブッシュフェルト複合岩体は、カープバール地塊の北部(トランスバール州の中央部か

ら西部)に分布する東西 480km、南北 240km の世界 大の層状塩基性-超塩基性岩体であ

る。ブッシュフェルト複合岩体の地質図を第 2-5 図に示す。ブッシュフェルト複合岩体は

原生代のトランスバール系の堆積後に活動(約 20 億年前)した。その活動は輝緑岩シル

の貫入にはじまり、フェルサイト、グラノファイアー、微花崗岩などの貫入後、大規模に

マグマが貫入し、層状分化岩体(超塩基性岩→はんれい岩→閃緑岩→花崗閃緑岩)を形成

した。花崗岩は岩体形成の 終相として貫入している。ブッシュフェルト複合岩体は大き

く 4 つの系列に分けられる(第 2-2 表)。このうち、クロムおよび白金の濃集の認められ

るのはラステンバーグ・レイヤード系列であり主クロミタイト層、メレンスキーリーフ、

主磁鉄鉱層付近でさらに 4 区分されている(第 2-6 図)。

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- 57 - 南アフリカ

第 2-1 表 世界の層状塩基性~超塩基性岩体(金属鉱業事業団,1982)

岩 体 名 面 積(km2)

Bushveld Complex, South Africa

Kunene Complex, South West Africa

Duluth Complex, U.S.A.

Great Dyke, Zimbabwe

Sudbury Complex, Canada

Insizwa Complex, South Africa

Colony Complex, Sierra Leone

Usushwana Complex, Swaziland

Stillwater Complex, U.S.A.

Skaergaard Intrusion, Greenland

Ingeli Complex, South Africa

Skye Complex, Hebrides

Ardnamurchan Complex, Scotland

Rhum Complex, Hebrides

Tabankulu Complex, South Africa

Kapalagulu Complex, Tanzania

67,311

7,767

4,712

3,261

1,341

544

492

202

194

104

83

72

62

36

36

23

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- 58 - 南アフリカ

ブッシュフェルト複合岩体はロート状構造をしているため、ラステンバーグ・レイヤード

系列が地表に認められるのは主に岩体の東部(東部岩体)と西部(西部岩体)であり、同

様にクロム鉱床も東部と西部に位置している。

クロミタイト層はラステンバーグ・レイヤード系列の中でも特に critical zone に認め

られる。クロミタイト層の代表的なものは下位より LG1~LG7(下位グループ)、MG1~MG4

(中位グループ)、UG1,UG2(上位グループ)と呼ばれている。また、UG2 の上位には白

金で有名なメレンスキーリーフとは 初(1920 年代)にこれを発見紹介した H.Merensky

にちなんだ名称である。

クロミタイトは層状で暑さ 2cm~2m程度で 100km 以上の連続が確認されている。また、

数 cm のオーダーでクロミタイトとアノーソサイトが互層していることもある。クロミタ

イトを胚胎する岩相は LG1~LG7,MG1 までがパピロキシナイトであり、MG2 から上位、メ

レンスキーリーフまではアノーソサイト、ノーライトである。このことは造山帯のポディ

フォーム型クロミタイトが超塩基性岩に伴われることと対照的である。

第 2-5 図 ブッシュフェルト複合岩体の地質図 Vermaak, C. F. AND Von, Gruenewaldt, G.(1986)を簡略化。

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- 59 - 南アフリカ

第 2-2 表ブッシュフェルト複合岩体の 4 つの系列。Vermaak C. F. and Von, Gruenewaldt, G. (1986)を簡略化。

名 称 年 代

レボア花崗岩系列

(Lebowa Granite Suite)

1670±30(U/Pb)*

2010±20(U/Pb)**

ラショップグラノファイアー系列

(Rashoop Granophyre Suite)

2000±30(U/Pb)***

ルステンバーグレイヤード系列

(Rustenburg Layered Suite)

2050±22(Rb/Sr)****

ブッシュフェルト

複合岩体

マリコ輝緑岩系列

(Marico Diabase Suite)

≧2050、≦2224、

トランスバール系

ルーイバーグフェルサイト層群

(Rooiberg Felsite Group)

No reliable data

*Coertze et al.(1978)(Makhutso Granite) **E.A.Retief(pers.comm., 1985)(Nebo Granite) ***Faure and Von Gruenewaldt(1979) ****Hamilton(1977)、recalculated with 87Rb=1.42×10-11yr-1

第 2-6 図 ラスアテンバーグレイヤード系列の柱状図。 Von, Gruenewaldt, G.Sharpe, M.R. and Hatton, C.J.(1985)を簡略化。

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- 60 - 南アフリカ

2-2-4. 金鉱床の特徴

南アフリカ共和国 大の都市ヨハネブルグといえば、金鉱山で栄えた町として有名であ

る。1886 年にヨハネブルグの近郊で初めて含金礫岩鉱石が発見されて以来、ウィットウ

ォータースランド(Witwatersrand)盆地は世界 大の金鉱床地帯として栄え、わずか一

世紀の間にこの町は南アフリカを代表する大都市へと発展した。なにしろ、ウィットウォ

ータースランド盆地がこれまでに産した金は約 4 万tに達し、これは有史以来の全世界総

産出量の約 50%に相当するから驚きである。1992 年に本地域は 29 鉱山から約 610tの金

を産し、これは世界の約 1/3 の生産量にあたる。金の埋蔵鉱量は残り約2万 t と推定され

ており、黒人労働すやの人件費上昇などによるいくつかの不安定要素はあるものの、今後

も本地域が世界の主要な金山地であり続けることはまちがいないと考えられる。本地域の

鉱床が金と共にウランを産することも忘れてはならない。ウランの確認資源量は約 40 万

t(U)と算出されており、これもまた国別で世界第 3 位の地位を占める。

ウィットウォータースランド盆地の金・ウラン鉱床はまた、地質学的に極めて特異な特

徴を有することにおいて有名である。それはこの鉱床が、無酸素(現在の 10-3 レベル)

大気の始生代後期に形成された大規模漂砂鉱床の化石とされている点である。鉱床は、金

やウラン鉱床などの重鉱物に富む黄鉄鉱質礫岩からなる。この礫岩層は通称“reef”また

は“banket”の名で呼ばれている。このタイプの鉱床はウィットウォータースランド盆地

の他に、カナダの Elliot Lake ウラン鉱床地域、ガーナーの Tarkwa の金鉱床地域および

ブラジルの Jacobina 金鉱床地域などでも知られており、これらは石英中礫礫岩型鉱床と

して区分されている(Pretorius,1981)。

(1)ウィットウォータースランド盆地の地質概要

ウィットウォータースランド盆地は南アフリカ共和国のトランスバール州とオレンジ

フリー州にかけて北東から南西方向にやや細長く分布している。現在の盆地の大きさは、

幅約 180km、長さ約 480km である(第 2-7

図)が、もともとは幅 250km、長さ 600km

以上の広さを持ち、層厚 7,000mに達す

る地層が堆積していたと考えられてい

る。盆地の堆積物はおよそ 31 億年から

27 億年前までの約 4 億年の間に堆積し

たドミニオン(Dominion)層群およびウ

ィットウォータースランド累層群から

なり(第 2-8 図)、これらは現在、ヨハ

ネブルグ近傍とフレダフォート近傍に

一部露出するが、大部分の上位のベンタ

ースドープ(Ventersdorp)累層群、ト第 2-7 図 被覆層を取り除いたウィットウォータース

ランド盆地の地質(Feather and Glatthaar, 1987)

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- 61 - 南アフリカ

ランスバール系およびカルー系の堆積層に覆われている。

本盆地の基盤岩は約 34~31 億年の年代を示す花崗岩類とグリーンストンから構成され

ている。通常始生代と前期原生代の境界は約 25 億年前とされているが、本地域では、約

31 億年前に既に大規模な楯状地(カープバールクラトンの東半分を構成するものでカー

プバール楯状地と呼ばれる)が形成されており、約 31 億年前から下部原生界に相当する

地塊内盆地堆積物が形成され始めたと考えられる。強い変成作用を被っていないこのよう

な古い堆積盆地は西オーストラリア州の Hamersley 盆地を除いて他に例を見ない。

盆地の 下部を構成するドミニオン層群は、基底部の層厚 120m以内の長石質コーツァ

イト・礫岩および層厚 1,200mまでにおよぶ中~酸性火山岩類からなる。これは伸張場に

おける初期の盆地堆積物であると考えられている。一方ウィットウォータースランド累層

群はジンバブエクラトンのカープバールクラントンへの衝突による圧縮の場において形

成された後期の盆地堆積物と考えられている(de Wit et al., 1992)。

第 2-8 図 ウィットウォータースランド地域の層序(年代のデータは de Wit et al., 1992 に基づく)

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- 62 - 南アフリカ

ウィットウォータースランド累層

群は下部(West Rand 層群)と上部

(Central Rand 層群)に区分される。

両者とも主に河川成、デルタ成、浅

海成の堆積物からなり岩相は同様で

あるが、前者が一般的に海進の環境

で形成されたのに対し、後者は盆地

北西部の繰り返し起こる隆起のため

海退の環境で形成されたより運搬力

の高い堆積相となっている。盆地の

北西縁の境界は、West Rand 層群堆

積時から Central Rand 層群堆積時ま

でに、約 60km 盆地中心部へ後退した

こ と が 明 ら か に さ れ て お り

(Pretorius, 1981;第 2-9 図)、後

に述べるように、これが Central

Rand 層群中に、より高品位の鉱床が

形成された主要因と考えられる。

West Rand 層群の 大層厚は約

7,000m、Central Rand 層群の 大層厚は約 3,500mとされている。

(2)金・ウラン鉱床の特徴

含金・ウラン礫岩層は、ウィットウォータースランド盆地の下位から上位まで全ての層

準、すなわちドミニオン層群の基底部、West Rand 層群中の 2 層準、Central Rand 層群中

の7層準に産するが、より品位の高い鉱化礫岩層は Central Rand 層群中に限られている。

Central Rand 層群は、不整合境される層厚 30~600m(平均 250m)のいくつかの堆積サ

イクルからなっており、鉱化礫岩はこのサイクルの基底部に堆積している。これらの堆積

サイクルは一般に上方への細粒化を示す。重要な鉱化礫岩層の屈曲の小さい浅い網状流チ

ャンネル堆積物であり、これらは河川扇状地に形成されたものと考えられている

(Pretorius, 1981)。それぞれの鉱化礫岩層の層厚は 2mを越えることはないが、通常

その幅は数 100m、長さは数 km のオーダーで連続する。経済性の高い主要な金・ウラン

鉱床を産する6つの扇状地システムがCentral Rand層群中に認められている(第2-9図)。

鉱化礫岩は、一般に堆積の約 70%を占める中礫とマトリックスからなる。中礫の円磨度

は良好で、そのサイズは変化に富むが一般には 2cm 前後である。中礫は主に石英脈に由来

する石英から構成されるが、チャート・コーツァイトは、主に緑色片岩相の変成作用によ

り再結晶化した二次石英、絹雲母、パイロフィライト、緑泥石などの珪酸塩鉱物と多くの

第 2-9 図 ウィットウォータースランド盆地の盆地構

造および河川扇状地の分布( Pretorius, 1981)。盆地は非対称構造を示し、金鉱床を

胚胎する 6 つの河川扇状地は盆地の縮小す

る側(北西側)に分布する。WK: Welkom Goldfield, KD: Klerksdorp Gold-field, CV: Carletonville Goldfield, WR: West Rand Goldfield, ER: East Rand Goldfield, EV: Evander Goldfield

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種類の重鉱物から構成されている。マトリックスの約 15%を占める黄鉄鉱は も主要な

重鉱物で、1)円磨度の良い砕屑性のもの、2)硫化物に富む泥質部に核をもって成長したノ

ジュール状のもの、3)堆積後の変成作用による再結晶でできたものの 3 つの産状が認めら

れる。次に主要な重鉱物である金紅石・閃ウラン鉱(およびその変質鉱物としてのブラネ

ライト)及びその他の放射性鉱物、さらに量が少い金・ジルコン・クローム鉄鉱・硫砒鉄

鉱、そしてよりまれな輝コバルト鉱・白金族鉱物(Ir、Os に富む)・燐灰石・磁鉄鉱・

ザクロ石およびダイヤモンドは全て砕屑性起源の鉱物である。自生鉱物としては、まれで

はあるが硫砒ニッケル鉱・閃亜鉛鉱・黄銅鉱・硫砒鉄ニッケル鉱などが認められている

(Feather and Glatthaar, 1987)。

ウラン鉱物は径 50~160μmの円磨度の良い閃ウラン鉱粒子が単独で産する場合とより

細粒の閃ウラン鉱粒子が藻類起源の炭化物と密接に伴って産する場合が知られている。閃

ウラン鉱のかなりの部分は砕屑粒子の形状を残したままブラネライトに変質しているこ

とが多い。金の粒子は径 5~100μmで、砕屑粒子、炭化物に伴う細粒のもの、および再

結晶したものの3種類が観察されており(Hallbauer, 1977)、形状は非常に不規則であ

る。

鉱化礫岩層の形状としては一般に 2 種類のタイプが観察されいる。ひとつは、比較的運

搬力の高い網状流河川のチャンネル削剥面(scour surface)上に形成された薄い礫層と

斜層理を示す砂岩からなる層相で、これは海退の環境にできるより一般的な漂砂型堆積相

である。もうひとつははるかにまれなケースではあるが経済的にはより重要なもので、ほ

とんど平坦な広い不整合面上に海進の環境で形成された漂砂型の鉱化作用である。これは、

扇状地の扇端から扇中(midfan)の堆積物が海進に伴う水の作用でふるいわけられながら

下位地層の表面に再堆積し、形成されたものと考えられている(Pretorius, 1981)。

鉱化礫岩層の鉱石品位は、それぞれの鉱床や、礫岩層内の位置によって変化するが、一

般的に金は 5~50gAu/t、ウランは数 10~500ppmU である。ウランの鉱化範囲は通常金よ

りも広く、特に扇端に近づくと金の品位が下がり、金に比してウランの品位が高くなる傾

向がある。U/Au 比は扇頂および扇中でおよそ 5 程度であるが、扇端で 25 にまで増加する

(Pretorius, 1981)。

(3)鉱床の成因

1886 年にウィットウォータースランド盆地の含金礫岩鉱床が発見されて以来、この特

異な鉱床の成因に関して様々な説が議論されてきた。発見当初、ある者は単なる沖積層中

の漂砂型の成因を、ある者は火山起源の成因を、またある者は海または湖底に堆積した化

学的沈殿の成因を唱えていた。このような中で、1888 年に Ballot が唱えた浜砂鉱床説、

つまり、周期的におこる大規模な洪水によって海に運ばれた堆積物が海浜で波の作用によ

ってふるいわけられ金を濃集したという説は、多くの支持を得、しばらくの間主流となっ

た。

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Ballot の浜砂鉱床説に 初に異論を唱えたのは、Mellor(1915)である。彼は本地域

で初めて系統的な層序学的調査を行うことによって、含金礫岩層が突然細粒堆積物の上に

出現することを明らかにし、このような変化を生じ得る堆積環境は河川扇状地であると結

論した。この扇状地堆積説は、引き続く堆積学的および構造学的研究によって様々な修正

や補強がなされたものの、現在 も広く受け入れられている成因論の基礎をなすものであ

る。

1900 年代に入って、鉱物学的な研究も手掛けられた。1907 年に Young は、黄鉄鉱に他

生のものと自生のものとが存在し、自生の黄鉄鉱ノジュールの表面に針状の金がコーティ

ングしているのを観察した。そして 2 つの世代の黄鉄鉱に対応して、金にもそれぞれの世

代があることを明らかにした。1923 年に、Cooper は岩金礫岩中の重鉱物の研究を行い、

初めて放射性鉱物として、閃ウラン鉱の存在を明らかにした。

堆積学的な調査研究が進み、漂砂型成因論の肉付けが進む中、Graton(1930)のあと、

1953 年に再び Davidson が熱水性成因論を提唱した。彼は地下深部のマグマ起源の鉱液が

割れ目に沿って上昇し、ウィットウォータースランド盆地堆積物中の透水性の良い礫岩中

にもたらされ、金・ウラン鉱物と共に硫化鉱物・炭化水素および二次石英を沈殿したと主

張した。一般によく観察される針状の再結晶金粒子がこの説の主な根拠である。彼の説に

は多くの矛盾があったが、彼の主張は反対者の研究意欲をかき立てるのに大いに役立った。

Liebenberg(1955)は、顕微鏡観察により、砕屑粒子としての閃ウラン鉱が砕屑粒子の外

形を残したまま変成作用または続成作用により二次ウラン鉱物に変質していることを発

見した。彼は砕屑粒子としての金はわずかしか観察しなかったが、大部分は砕屑起源の金

がその場で再結晶したものであるという結論に達した。金とウランの密接な関係から、い

ずれか一方に成り立つ成因は他方にも適用されるものでなければならないと考えたから

である。また、Viljoen(1963)は、金の 富鉱部はその他の重鉱物の濃集部と密接な関

係にあることを発見した。この発見は Liebenberg の説の正当性を裏付けるものである。

近の Minter 他(1993)による岩金礫岩中の金粒子の形状学的研究も、金が砕屑起源で

あることを示している。

Pretorius(1981)は、「過去 25 年間の膨大な堆積学的、鉱物学的および他化学的研究

はこの種の岩金ウラン鉱床が漂砂起源であることを強く支持するものである」と結論して

いる。 近の多くの研究者は Pretorius によってまとめられた成因論を支持しているもの

と思われる(Weldmüller, 1986)。以下に Pretorius(1981)の成因論の概要を紹介する。

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・West Rand 層群の堆積が始まると共に、盆地北西部の基盤岩ドームの周期的な隆起によ

って盆地は縮小を開始し、海岸に沿っていくつかの大規模な河川扇状地が形成された。ド

ーム構造は盆地長軸(NE 方向)に直交する重複褶曲に規制され、このためそれぞれの扇

状地は一定の間隔をもってドームとドームの間に形成されている(第 4 図)。全体的に盆

地の縮小が続く間にも海退-海進の小さな揺り返しは繰り返され、不整合-上方細粒化の

堆積サイクルが形成された。

・扇中(midfan)の網状流チャンネル

内に重鉱物に富む漂砂型の鉱化礫岩

層が形成された。

この鉱化礫岩層は、海退の過程で下位

の West Rand 層群を削剥しその中に含

まれていた重鉱物をも再濃集したも

のである。また扇状地の形成と前後し

て海進が進行した場合には、扇端~扇

中の堆積物が再度海岸流と波の作用

でふるいわけられ、 も経済性の高い

富鉱礫岩層を形成した(第 2-10 図)。

・鉱化礫岩層中の礫は砂粒状の重鉱物

が沈積するためのトラップとして作

用した。礫岩相を通り越してさらに下

流に運ばれたより細粒の金やウラン

の一部は扇端付近の海底に成長した

藻類(algal mat)の表面に獲えられ濃集した。閃ウラン鉱の比重は金よりも小さいため、

このタイプの濃集部では U/Au 比が高くなっている。

・金の供給源はグリーンストン、ウランのソースは始生代の花崗岩類と推定される。トラ

ンスバール州のグリーンストン帯の中にはバーバトンの金鉱床をはじめ、いくつかの金鉱

化作用が知られている。

2-2-5. カーボナタイト鉱床の特徴

(1)地質概要と構造発達史

パラボラのカーボナタイト複合岩体は、始生代の花崗岩類、片麻岩類などの分布域に、

約 20 億年前に輝岩、閃長岩、超塩基性ペグマタイトおよびカーボナタイトが次々に貫入

して形成されたものである。主要な複合岩体は、約 16km2の範囲に広がり、細長く、不規

則な形状を呈する(第 2-11 図)。

初の貫入活動は雲母質輝岩に始まった。その露出形態は腎臓形(ただし、断面で見る

とパイプ状になっている)をしており、南北に約 6km、東西に約 2.5km の広がりを持って

第 2-10 図ウィットウォータースランド盆地の河川

扇状地鉱床成因モデル図( Pretorius, 1981)。扇頂、扇中、扇端と海進時の波の

作用による再濃集帯の関係を示す。

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- 66 - 南アフリカ

いる。次いで超塩基性ペグマタイトが、雲母質輝岩内の 3 ヶ所に貫入した。そのうち中央

のものは、Loolekop 炭酸塩-フォスコライトパイプと呼ばれ、磁鉄鉱-かんらん石-燐

灰石から成る「フォスコライト(phoscorite)」と「縞状カーボナタイト」を主体として、

南北 0.8km、東西 1.4km にわたる楕円状の形態を呈する。このパイプは強い破砕作用を被

っており、それによって生じた弱線部にカーボナタイト岩体の迸入と、その活動に関係す

る炭酸塩の網状脈の発達が起こった。カーボナタイトの迸入したゾーンは、さらに繰り返

し破砕作用を受け、破砕部に沿って鉱化流体が移動して銅の硫化物を沈殿し、微細な割れ

目を充填した(エヴァンズ,1989)。

輝岩は、重力データによると少なくとも 5km の深さまで連続していることが推定され

(Habekom et al., 1965)、カーボナタイトは Palabora Mining Co.(通称:PMC)が実

施した試錐によって、深さ 1,500mまで確認されている(Eriksson, 1989)。

第 2-11 図

パラボラ・カーボナタイト複

合岩体の概略地質図

1.輝緑岩岩脈、2.カーボ

ナタイト、3.フォストライ

ト、4.かんらん石―ひる石

ペグマトイド、5.輝石―ひ

る石―かんらん石ペグマト

イド、6.雲母岩、7.輝石、

8.長石質輝石、9.閃長石、

10.古期花崗岩

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輝岩(Clinopyroxenites)

輝岩は、主要複合岩体の約 70%を占め、それらの成因はパラボラでの も重要な地質

上の問題点のひとつとなっている。この岩石は、通常、ペグマタイト様の塊状輝岩からグ

リメライト(燐灰石を伴う金雲母に富む岩石で、単斜輝石が 25%以下のもの)まで変化

する。構造・組織から判断すると、輝岩を構成する単斜輝石、金雲母、燐灰石は、マグマ

から同時に署生鉱物として結晶化したものと考えられる(Eriksson, 1989; Erikson et al.,

1985)。

フォスコライト(Phoscorite)

かんらん石・燐灰石・磁鉄鉱などの粗粒な鉱物からなり炭酸塩鉱物を伴う岩石は、この

地方ではフォスコライトと呼ばれ、Loolekop パイプに限って分布する(第 3 図)。Hanekom

et al.(1965)によれば、この岩石の平均モード組成は、燐灰石 25%、炭酸塩 18%、磁

鉄鉱 35%、蛇紋石+かんらん石+雲母 22%であるが、実際には鉱物の割合はかなり変化

し、部分的には磁鉄鉱 100%からかんらん石 100%のものまで存在する(Eriksson, 1989)。

カーボナタイトは、フォスコライト中に不規則なパッチ状、レンズ状の形態を呈して分

布する。これらは内部へ向うほど大規模になり、その数量を増す(Eriksson, 1989)。

カーボナタイト

PMC(1976)によれば、カーボナタイトは大きく分けて 2 つの時期に形成された模様で

ある(第 3 図)。前期の縞状カーボナタイトと呼ばれる磁鉄鉱に富むカーボナタイトは、

楕円形のフォスコライトの濃集帯に存在する。縞状カーボナタイト中の方解石は、MgCO3

成分を 7.5%まで含有し(Lombaard et al., 1964)、一般にドロマイトの離溶ラメラを

含んでいる(Van Rensburg, 1965)。

後期の貫入カーボナタイト(transgressive carbonatite)のメンバーは、中心部を占

め、主として N70˚W と N70˚E 方向の割れ目に沿って放射状に広がっている(第 3 図)。縞

状カーボナタイトとフォスコライトおよび輝岩中には、貫入カーボナタイトの活動に起因

する炭酸塩の細脈が一般的に見られる(Eriksson, 1989)。貫入カーボナタイトの炭酸塩

は、縞状カーボナタイトのものよりマグネシウムに富み、MgCO3 成分に換算して 高 14%

程度含まれる(Hennig-Michaeli, 1968)。貫入カーボナタイト中の主な硫化物は黄銅鉱

で、斑銅鉱やキューバ鉱の離溶ラメラを含むこともある。

縞状カーボナタイトと貫入カーボナタイトの区別は、主として組織形態と硫化物の鉱物

組成の差異に基づいている(Eriksson, 1989)。

その他の岩石類

主要複合岩体の周縁部には長石質輝岩や閃長岩などが存在し、閃長岩においては主要複

合岩体と別個の衛星岩体を形成するものも多い。

また複合岩体全体を切る様々なサイズの岩脈が存在する。これらは Hanekom et al.

(1965)が記載した Karroo 輝緑岩(dolerite)に相当し、古地磁気データによれば 19 億

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年前の活動年代を示している(Eriksson, 1989)。

(2)鉱 床

パラボラ・カーボナタイト複合岩体は、世界各地で発見されている同種の岩体に比べる

と、銅硫化物、磁鉄鉱、バデレアイト(ZrO2)、燐灰石、ウラン鉱物、およびバーミキュ

ライトなど多くの種類の鉱物を産出するという特徴がある。

パラボラには、銅・バーミキュライト・燐灰石をそれぞれ対象とした三つの露天採掘場

があり、銅鉱床とバーミキュライト鉱床が PMC によって、燐灰石鉱床が Phosphate

Development Corp.(通称:Foskor)によって開発されている。

Loolekop 炭酸塩-フォスコライトパイプの分布域では、PMC が主に銅を対象にカーボナ

タイトおよびフォスコライトの採掘を行っており、副産物として磁鉄鉱・燐灰石・金・銀・

白金族元素・バデレアイト(ZrO2)・ウラン・ニッケル硫酸塩および硫酸なども回収して

いる(第 3 図)。1965 年に粗鉱 Cu 品位 0.71%、生産量 1,327 万トン/年の規模で操業を

開始し、1992 年現在、埋蔵鉱量 4.6 億トン、粗鉱 Cu 品位 0.6%、生産量 2,900 万トン/

年の規模となった(CRU, 1993)。銅鉱化作用が認められるカーボナタイトは世界各地に

知られているが、実際に銅を商業的に生産し、その規模が斑岩銅鉱床に匹敵するのはこの

鉱山のみである。現在の露天採掘場の規模は、 大径:約 1.9km、地表からの深さ:約 800

~900mである。

銅鉱石の副産物

磁鉄鉱:磁鉄鉱は銅鉱体全体の重量比の約 25%を占め、特にフォスコライトでは 高

50%以上になる場合もある。パラボラの磁鉄鉱はチタンに富み、その TiO2 含有量は

Loolekop パイプの中心から外側へ向うほど増加し、貫入カーボナタイトでは 0.1%よりも

少なく、縞状カーボナタイトで 0.1~1%、フォスコライトでは約 4%に及ぶ。1966 年か

ら 1977 年までの間、チタン含有量の低い磁鉄鉱(Fe:66%、TiO2:1%)が製鉄用として

約 850 万トン程日本へ輸出されたこともある(Verwoerd, 1986)。

硫酸:硫黄を含有する製錬所の排ガスを除去するために 1966 年に硫酸プラントが、1975

年にガス洗浄プラントが建設された。現在、これらは二重の効果を発揮している。そのひ

とつはガス洗浄設備においてバレリー鉱を浮選し、銅の追加回収を可能にしていること、

もうひとつは重要な副産物として硫酸を肥料生産者へ供給していることである(Verwoerd,

1986)。

ジルコニウム:ジルコニウムの主要鉱物であるバデレアイト(ZrO2)は、主としてフォ

スコライトの副成分鉱物として含まれる。PMC では、この鉱物を湿式磁選による磁鉄鉱除

去後の銅の浮選廃滓から比重選鉱により回収している。製品は非常に高純度( 高(Zr,Hf)

O2:99%で Hf:約 0.5%を含有する)で、ブラジルから得られている不純物を多く含むも

のと比べると、かなり品質の良いものと云える。用途としては、研磨剤・耐火物・カラー

セラミックスタイルなどがあり、 近ではジェットエンジンや内燃エンジンにおける耐熱

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材の原料としても使用されている。バデレアイトは、Foskor でも燐灰石の廃滓から回収

されている(Verwoerd, 1986)。

ウラン:貫入カーボナタイトは、副成分鉱物としてウラン鉱物(uranothorianite)を

含んでいる。この鉱物はバデレアイトとともに重鉱物として回収され、ウラン酸化物に加

工される(Verwoerd, 1986)。

その他の副産物:1979 年以来、金・銀・白金族元素は、銅に次いで PMC の収益に貢献

している。これらの金属は鉱石中に微量に存在し、製錬所の電解スライムから回収される。

また、ニッケルが銅精鉱中に主に含ニッケル硫化物の形で存在し、ニッケル硫酸塩の水和

物として生産されている(Verwoerd, 1986)。

燐酸塩

燐灰石に富む輝岩を採掘している Foskor の露天採掘場は、PMC の銅鉱床から北北西に

約 3km はなれた所に位置する(第 2 図)。この輝岩は、世界 大のマグマ成リン酸塩鉱床

を形成し、採掘場は輝岩のごく一部をカバーするに過ぎないが、その付近だけの鉱量でも

燐灰石精鉱(P2O5:36.5%)に換算して 30 億トンと言われている(エヴァンズ,1989)。

燐灰石精鉱の生産は、1955 年に国内肥料産業への安定供給を目的として、年産 6 万ト

ンという小規模な形で始まった。その後 1969 年まで着実に生産量が増加し、国内需要の

ほぼ全量をパラボラから供給するまでになった(Fourie and Dejager, 1986; Foskor,

1993)。鉱石は燐灰石を 10~25%含む輝岩であるが、PMC から Foskor に供給されるフォ

スコライト起源の燐酸塩に富む廃石も重要な鉱石となっている。現在、年間約 2 千万トン

の粗鉱が破砕・浮選過程を経て、P2O5 で 36.5%の濃縮産物として約 350 万トン回収され

ている(Verwoerd, 1986; Foskor, 1993 から推定)。

バーミキュライト(vermiculite)

バーミキュライトは、加熱すると膨張する雲母質鉱物に与えられた名称である。バーミ

キュライトの利用の歴史は比較的新しく、戦後アメリカにおいて建材として使われたのが

初である。焼成バーミキュライトは極めて軽量で、熱と音に対して優れた性能を発揮す

ることから、その主な用途は軽量骨材、耐熱材、保温材、防音・吸音材などの原料に用い

られる。パラボラは西欧の諸国をはじめ世界各国にこのバーミキュライトを輸出しており、

特に日本における 大の供給地となっている(吉田,1992)。

バーミキュライトの露天採掘場は、銅鉱山から北北東に 2km 離れたところに位置する。

生産は 1946 年から連続して行われ、1983 年現在、PMC によりバーミキュライト 90%の製

品が年間およそ 18 万トン生産されている(PMC, 1976)。

パラボラのバーミキュライトは金雲母の変質物であり、地下水の循環によって地表から

約 50mの深さまでの部分が変質して、鉱床を形成している。しかしながら一部では、金

雲母のバーミキュライト化作用が深度 400mまで確認されている。

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3. 鉱床胚胎有望地域

南アフリカ共和国においては、始生代から新生代第四紀までの間に多種多様な鉱床が生成

され,世界的にも重要な鉱床生成区をつくりあげているが、とくに始生代から原生代にか

けての鉱床生成区が重要な鉱物資源をもたらしている。

以下の重要な鉱床生成区が鉱床胚胎の有望度が高い地域である。

(1)ウィットウォータースランド鉱床区

世界 大の堆積型金-ウラン鉱床区であり,その開発(1886年)以来,これまでに生産さ

れた金量は約40,000トンに達するといわれる。1993年現在でも年産量約600トンを維持し,

世界の産金量の28%を占めている。鉱床は後期始生代のウィットウォータースランド系中

の10数枚の礫岩層に相当し、その埋蔵鉱量は18,000トン(金量)と推定されている(Mineral

Bureau, S.A., 1993)。

(2)トランスバール-グリクワランド鉱床区

トランスバール鉱床亜区はカープバールクラトンの東部に位置し,金・鉛・亜鉛・鉄・

マンガン・螢石などの鉱床を生成する。この鉱床亜区では大規模の層状鉄-マンガン鉱床、

鉛・亜鉛鉱床などが生成している。

キャンベル層群のドロマイト層中に、埋蔵鉱量約1,800万トン(品位3.6%Zn,0.6%Pb)

のミシシッピバレー型の鉛・亜鉛鉱床が 近見出されている(Wheatley et al., 1986)。

(3)ブッシュフェルト鉱床区

65,000㎞2にわたる広大な層状分化岩体(Vermaak and von Gruenewaldt, 1986)は早期

原生代トランスバール系の上部に貫入、固結したラステンバーグ層状岩系とレオバ花崗岩

系などから構成される。ラステンバーグ層状岩系にはクロム・白金族・ニッケル・チタン・

バナジウム・鉄鉱を伴い、レオバ花崗岩系は錫・螢石などを伴っている。クロム鉱床と白

金族鉱床はラステンバーグ層状岩系の下部に近いクリティカルゾーンに15層が集中的に

形成されている。それらは厚さ数㎝から1.8mの鉱層で、一般に,ポイキリティック組織

を示す輝岩の下部を占める。

クロム-白金族鉱床は4地域に分布するブッシュフェルト層状分化岩体、すなわち、東

部岩体、西部岩体、北部岩体(またはポットジータースラス岩体)および西縁岩体(また

はマリコ岩体)に伴われている。

クロム鉱床は東部岩体において も優勢であり,なかでも、ウインターフェルト鉱山で

はクリティカルゾーン下部のスティールポート鉱体(厚さ,平均1m)を主として採掘し、

年間100-150万トンのクロム鉄鉱を生産してる(Ireland, 1986)。クロム鉄鉱の大半は

フェロクロム用に消費される。その品位はCr2O3 43-47%、FeO 25-26%、Cr/Feは1.5-1.6

付近に集中する。これに対して,西縁岩体中のクロム鉄鉱は他地域のものに比べてCr/Fe

比が高く、スピネル中に磁鉄鉱成分が少ないため(Vermaak, 1986)耐火物に好適な原料

として利用されている。

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白金族鉱床は東部および西部両岩体中の、とくに、クリティカルゾーンの上部に位置す

るメレンスキーリーフおよびUG2リーフに含まれる。メレンスキーリーフはクリティカル

ゾーンの 上部に位置し、ポイキリティックな組織を示す輝岩の下部に生じた厚さ数10

㎝の長石に富むペグマタイト質輝岩であり、その上下には薄いクロム鉄鉱層を伴っている。

一方、UG2リーフはメレンスキーリーフの下部20-400mに位置する白金族元素に富むクロ

ム鉄鉱層である。メレンスキーリーフは東部および西部両岩体において、またUG2リーフ

は西部岩体南部のウエスタンプラチナム鉱山などで採掘されている。白金族元素の含有率

は両リーフで大きく異なっている。例えば、アトック鉱山におけるPt/Pd比はメレンスキ

ーリーフが2.73であるのに対し、UG2リーフは僅かに1.19である(Mossom, 1986)。ブッ

シュフェルト鉱床区における白金族元素の埋蔵鉱量は58,900トンであり,この量は世界の

88%を占める(Mineral Bureau, 1992)だけでなく、白金(Pt)含有量の多さは世界の他

の鉱床に比べてもきわだっている。

ラステンバーグコンプレックスの上部ゾーン中には21枚の含チタン磁鉄鉱層を生じて

いる。それらの厚さや拡がりはクロマイト鉱層やメレンスキーリーフのそれをはるかに凌

ぐ規模を持っている。鉱石中にはバナジウムが2%(V2O5)程度含まれるが,その品位は

上部ゾーンの下位から上位にかけてやや減少する。バナジウムの埋蔵鉱量は膨大な含チタ

ン磁鉄鉱量を反映して、世界の埋蔵鉱量の47%を占めている。現在、バナジウムは大規模

な稼行が続けられている含チタン磁鉄鉱の副産物として回収されている。

パラボラおよびグレノファーカーボナタイト複合岩体およびプレミヤ-キンバーライ

トは前~中期原生代に,始生界の基盤岩中に貫入した。パラボラカーボナタイトはブッシ

ュフェルト複合岩体の貫入とほぼ同時期(20.3億年;Verwoerd, 1986)で、銅-ウランを

主としジルコニアを伴う大規模鉱床である。この鉱床からの銅の生産量はこの国の銅生産

量の大半を占め、ジルコニア(バデレアイト;ZrO)は世界で唯一の供給源となっている。

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