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国際課税関係の改正 目    次 一 関連者等に係る純支払利子等の課税の 特例(過大支払利子税制)の改正 ��� 565 ㈠ 改正前の制度の概要 ������� 565 ㈡ 改正の背景・趣旨等 ������� 565 ㈢ 改正の内容 ����������� 566 1  対象純支払利子等の額の損金不算 ��������������� 566 2  超過利子額(損金不算入額の繰越 額)の損金算入 ��������� 580 3  内国法人の外国関係会社に係る所 得の課税の特例との調整 ����� 582 4  連結納税における過大支払利子税 ��������������� 582 5  適用関係 ����������� 583 二 国外関連者との取引に係る課税の特例 (移転価格税制)の改正 ������� 583 ㈠ 改正前の制度の概要 ������� 583 ㈡ 改正の内容 ����������� 591 1  改正の背景等 ��������� 591 2  価格算定方法の整備(DCF 法の 追加) ������������� 592 3  特定無形資産国外関連取引に係る 価格調整措置の創設 ������� 594 4  移転価格税制における無形資産の 定義 �������������� 599 5  移転価格税制に係る更正期間制限 の特例等 ������������ 599 6  差異調整方法の見直し ����� 600 7  推定課税制度の見直し ����� 601 8  価格算定文書の同時文書化制度 � 602 9  関連制度の見直し ������� 602 ㈢ 適用関係 ������������ 603 三 外国関係会社に係る所得等の課税の特 例の改正 �������������� 603 Ⅰ 内国法人の外国関係会社に係る所得 の課税の特例(外国子会社合算税制) の改正 �������������� 603 Ⅱ 居住者の外国関係会社に係る所得の 課税の特例(外国子会社合算税制)の 改正 ��������������� 654 Ⅲ 特殊関係株主等である内国法人等に 係る外国関係法人に係る所得の課税の 特例(コーポレート・インバージョン 対策合算税制)の改正 ������� 655 四 令和 2 年に開催される東京オリンピッ ク競技大会又は東京パラリンピック競技 大会に参加等をする非居住者及び外国法 人に係る課税の特例の創設 ������ 655 五 台湾との間での金融口座情報の自動的 な提供のための報告制度等の整備 ��� 661 Ⅰ 台湾との間での金融口座情報の自動 的な提供のための報告制度の整備 �� 661 Ⅱ 国別報告事項の提供制度の整備 �� 670 六 その他�������������� 672 Ⅰ 特定外国法人が特定金融機関等との 間で行う債券現先取引に係る利子等の 非課税措置の改正��������� 672 Ⅱ 振替社債等の利子等の課税の特例等 の改正 �������������� 679 Ⅲ 集団投資信託の収益の分配等に係る 二重課税調整の改正 �������� 680 Ⅳ 特定目的会社の利益の配当等に係る 源泉徴収等の特例の改正 ������ 683 Ⅴ 組織再編税制の見直しへの対応 �� 687 Ⅵ 外国税額控除の改正 ������� 695 Ⅶ 租税条約の実施のための国内法の整 ���������������� 700 Ⅷ 外国普通法人となった旨の届出書等 に関する改正 ����������� 710 ─563─

国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

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国際課税関係の改正目    次

一 関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(過大支払利子税制)の改正���� 565㈠ 改正前の制度の概要�������� 565㈡ 改正の背景・趣旨等�������� 565㈢ 改正の内容������������ 5661  対象純支払利子等の額の損金不算入���������������� 5662  超過利子額(損金不算入額の繰越額)の損金算入���������� 5803  内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例との調整������ 5824  連結納税における過大支払利子税制���������������� 5825  適用関係������������ 583

二 国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)の改正�������� 583㈠ 改正前の制度の概要�������� 583㈡ 改正の内容������������ 5911  改正の背景等���������� 5912  価格算定方法の整備(DCF法の追加)�������������� 5923  特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の創設�������� 5944  移転価格税制における無形資産の定義��������������� 5995  移転価格税制に係る更正期間制限の特例等������������� 5996  差異調整方法の見直し������ 6007  推定課税制度の見直し������ 6018  価格算定文書の同時文書化制度�� 6029  関連制度の見直し�������� 602

㈢ 適用関係������������� 603三 外国関係会社に係る所得等の課税の特例の改正��������������� 603

Ⅰ 内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正��������������� 603Ⅱ 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正���������������� 654Ⅲ 特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正�������� 655

四 令和 2年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例の創設������� 655五 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度等の整備���� 661Ⅰ 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度の整備��� 661

Ⅱ 国別報告事項の提供制度の整備��� 670六 その他�������������� 672Ⅰ 特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置の改正���������� 672

Ⅱ 振替社債等の利子等の課税の特例等の改正��������������� 679Ⅲ 集団投資信託の収益の分配等に係る二重課税調整の改正��������� 680Ⅳ 特定目的会社の利益の配当等に係る源泉徴収等の特例の改正������� 683Ⅴ 組織再編税制の見直しへの対応��� 687Ⅵ 外国税額控除の改正�������� 695Ⅶ 租税条約の実施のための国内法の整備����������������� 700Ⅷ 外国普通法人となった旨の届出書等に関する改正������������ 710

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はじめに

 国際課税制度においては、従来、国際的二重課税の調整が重視されてきましたが、経済のグローバル化が進展する中、近年、一部の多国籍企業グループが各国の税制の隙間や抜け穴を利用して租税回避を行っているとの批判が高まり、二重非課税等への対応が重要な課題となっています。国際的な租税回避等に対応し、公平な競争条件をグローバルに整えるためには、国際社会が協調し、世界経済及び企業行動の実態を踏まえた国際課税ルールの再構築に取り組む必要があります。 このような問題意識により、多国間協調による国際課税ルールの再構築を通じて BEPS(Base�Erosion�and�Profit�Shifting:税源浸食・利益移転)� に対応することを目指した OECD・G20「BEPS�プロジェクト」は、15の行動を含む最終報告書を平成27年(2015年)10月に公表し、現在、合意事項の実施段階に入っています。BEPS の合意事項については、タックス・プランニングの機会をできるだけ減じるよう、その国際的に一貫した実施が重要であり、G20議長国である我が国は、これをG20の国際租税分野における重要課題の一つと位置付けています。この点は、本年6月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議における共同声明でも明記されました。BEPS プロジェクトの取りまとめに当たり主導的役割を果たした我が国としては、引き続き、日本企業の健全な海外展開を支えつつ国際的租税回避に効果的に対応するため、変化する経済実態や諸外国における取組も踏まえながら、BEPS プロジェクトにおける国際合意に則った制度整備を着実に進めていく必要があります。 こうした背景の下、令和元年度税制改正においては、過大支払利子税制について、通常の経済活動に与える影響に配慮しつつ、BEPS リスクにより的確に対応できるよう、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 4「利子控除制限ルール(Lim­iting�Base�Erosion� Involving� Interest�Deduc­tions�and�Other�Financial�Payments)」)の勧告

を踏まえた見直しを行っています。 具体的には、対象となる支払利子の範囲について第三者への支払利子を含めるよう拡大するほか、損金算入限度額の計算の基礎となる調整所得金額から国内外の受取配当益金不算入額を除外するとともに、調整所得金額に乗じる「基準値」を20%に引き下げる等の改正が行われました。 また、移転価格税制について、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8-10「移転価格税制と価 値 創 造 の 一 致(Aligning�Transfer�Pricing�Outcomes�with�Value�Creation)」)の内容及びそれらを反映したOECD移転価格ガイドラインの規定等を踏まえ、我が国の移転価格税制を国際スタンダードに合わせる等の見直しを行っています。 具体的には、独立企業間価格の算定方法としてディスカウント・キャッシュ・フロー法を加えるとともに、評価困難な無形資産取引(特定無形資産取引)に係る価格調整措置を導入する等の改正が行われています。 これらの改正を含む国際課税の改正は、次の法令により行われています。(法律)・ 所得税法等の一部を改正する法律(平成31. 3 .29法律第 6号)

(政令)・ 所得税法施行令の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第95号)・ 法人税法施行令等の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第96号)・ 地方法人税法施行令の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第97号)・ 租税特別措置法施行令等の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第102号)・ 外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第103号)・ 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令等の一部を改正する政令(平成31. 3 .29政令第104号)

(省令)

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――国際課税関係の改正――

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・ 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(平成30.12.28総務省・財務省令第 7号)・ 外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成31. 3 .29総務省・財務省令第 5号)・ 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(平成31. 3 .29総務省・財務省令第 6号)・ 所得税法施行規則等の一部を改正する省令(平成31. 3 .29財務省令第 6号)・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令(平

成31. 3 .29財務省令第 7号)・ 租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(平成31. 3 .29財務省令第14号)・ 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律に基づく租税条約に基づく認定に関する省令の一部を改正する省令(平成31. 3 .29財務省令第17号)・ 国税質問検査章規則の一部を改正する省令(平成31. 3 .29財務省令第23号)・ 法人税法施行規則の一部を改正する省令(平成31. 4 .12財務省令第31号)(申告書別表関係)・ 地方法人税法施行規則の一部を改正する省令(平成31. 4 .12財務省令第32号)(申告書別表関係)

一� 関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(過大支払利子税制)の改正

㈠ 改正前の制度の概要

 本制度は、関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える場合には、その超える部分の金額を当期の損金の額に算入しない制度とされています。ここで「関連者純支払利子等の額」とは、関連者等への支払利子等の額の合計額からこれに対応する受取利子等の額を控除した残額とされます。また、調整所得金額とは、当期の所得金額に、関連者純支払利子等の額、減価償却費の額及び受取配当等の益金不算入額等を加算する等の調整を行った金額とされます。

㈡ 改正の背景・趣旨等

 BEPS プロジェクトにおいて、支払利子の控除について租税回避との関係で議論がなされ、利子はタックスプランニングに利用できる最も簡単な手法の一つであること、それを多国籍企業グループが活用することによって、国内企業との競争上のゆがみや税収等への影響が生じるのではないかといったこと、その際に関連者間の取引だけでは

なく、第三者からの借入れを使った場合でも多国籍企業グループにおいて、あえて税率の高い国の企業が借入れを行い、これをより税率の低い国の企業に出資すること等により、税率の高い国から低い国へ税源流出が生ずる可能性について指摘されました。 こうしたことを受けて、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 4「利子控除制限ルール(Limi­ting�Base�Erosion�Involving�Interest�Deductions�and�Other�Financial�Payments)」)において第三者への支払利子も含めて、企業が損金算入可能な利子の額を所得の一定割合に制限する、利子控除制限制度の導入を勧告がされました。 日本の過大支払利子税制は、基本的に BEPSプロジェクトの最終報告書の勧告と同様の考え方に基づくものですが、勧告内容と比べ制限対象となる支払利子の範囲が狭い等の相違がありました。 このため、今般、通常の経済活動に与える影響に配慮しつつ、より的確に BEPS リスクに対応できるよう、勧告を踏まえた見直しが行われました。

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――国際課税関係の改正――

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㈢ 改正の内容

1 対象純支払利子等の額の損金不算入

⑴ 対象となる純支払利子等の額① 改正前の制度の概要イ 関連者純支払利子等の額 関連者純支払利子等の額とは、関連者支払利子等の額の合計額から控除対象受取利子等合計額を控除した残額をいいます(旧措法66の 5 の 2 ①)。ロ 関連者支払利子等の額 関連者支払利子等の額とは、関連者等に対する支払利子等の額で、その支払利子等を受ける関連者等の課税対象所得に含まれないものから、下記ハの特定債券現先取引等に係る利子を除いた金額をいいます。イ 関連者等

 関連者等とは、関連者(直接・間接の持株割合50%以上の関係又は実質支配・被支配関係にある者)及び一定の第三者(これらの関連者による債務保証を受けて資金を供与する等の第三者)とされています(旧措法66の 5 の 2 ②)。ロ 課税対象所得 課税対象所得とは、法人から支払利子等を受ける関連者等の次の区分に応じた所得をいいます(旧措法66の 5 の 2 ②、旧措令39の13の 2 ④)。ⅰ 居住者 所得税法第 2条第 1項第21号に規定する各種所得(所得税に関する法令の規定により所得税を課さないこととされる所得を除きます。)ⅱ 非居住者 所得税法第164条第 1 項各号に掲げる非居住者のいずれに該当するかに応じその非居住者のその各号

■ BEPS最終報告書では、支払利子の損金算入を制限する制度の導入を勧告。利子は、国際的なタックス・プランニングで利用できる利益移転技術のうち、最も簡単なものの一つ。利子を用いた税源浸食・利益移転が生ずる場合として、関連者間借入を用いて過大な利子の損金算入を生じさせるケースや、企業グループ内の高課税法人に第三者借入を集めるケースなどが挙げられる。上記の問題に対抗するため、企業の、第三者への支払も含めた純支払利子について、その損金算入を調整所得の 10 ~ 30%に制限する、利子控除制限制度の導入を勧告。

■ 日本の「過大支払利子税制」は、勧告と同様の考え方に基づく制度であるが、①対象とする利子、②調整所得の定義、③基準値について勧告内容と異なっている。

■ 通常の経済活動に与える影響(国内銀行からの借入等)に配慮しつつ、BEPS(税源浸食・利益移転)リスクに的確に対応できるよう、勧告を踏まえた見直しを行う。

過大支払利子税制の概要(改正後)

②調整所得利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算)

①対象とする利子関連者純支払利子等のみ(受領者において日本の課税所得に含まれる利子等は対象外)

③基準値50%

適用除外関連者純支払利子等の額が1,000 万円以下関連者への支払利子等の額が総支払利子等の額の 50%以下

純支払利子等(第三者を含む)(受領者において日本の課税所得に含まれる利子等は対象外)

利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算しない)

20%

純支払利子等の額が 2,000 万円以下国内企業グループ(持株割合50%超)の合算純支払利子等の額が合算調整所得の 20%以下

過大支払利子税制の主な見直し内容

改正前 改正後

見直し内容

BEPS行動 4最終報告書のポイント

調整所得(②)

当期の課税所得金額

その他(減価償却費等)

純支払利子等の額(①)

損金算入限度額

調整所得×

20%(③)損金算入可

損金不算入(※)

施行:令和 2年 4月

※受領者において日本の課税所得に含まれる利子等は対象外

※損金不算入とされた支払利子等の額は、7年間繰り越して損金算入可能

過大支払利子税制の見直し

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――国際課税関係の改正――

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に定める国内源泉所得(所得税に関する法令の規定により所得税を課さないこととされ、又は租税条約の規定により所得税を免除することとされる所得を除きます。)ⅲ 内国法人 各事業年度の所得又は各連結事業年度の連結所得(法人税に関する法令の規定により法人税を課さないこととされる所得を除きます。)ⅳ 外国法人 法人税法第141条各号に掲げる外国法人のいずれに該当するかに応じその外国法人のその各号に定める国内源泉所得(法人税に関する法令の規定により法人税を課さないこととされ、又は租税条約の規定により法人税を免除することとされる所得を除きます。)

ハ 支払利子等の額から除かれる債券現先取引等に係る利子 債券現先取引等に係る利子のうち、貸付けと借入れとの間に対応関係があると認められるものについては、関連者支払利子等の額から除くこととされています。 具体的には、除外対象特定債券現先取引等に係る支払利子等の額に、その除外対象特定債券現先取引等に係る調整後平均負債残高を、その除外対象特定債券現先取引等に係る負債に係る平均負債残高(その事業年度のその負債の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額をいいます。)で除して得た割合を乗じて計算した金額が、貸付けと借入れとの間に対応関係があると認められる債券現先取引等に係る利子とされています(旧措法66の 5 の 2 ②、旧措令39の13の 2 ⑤)。 「除外対象特定債券現先取引等」などの用語の意義は、以下のとおりとされています。ⅰ 除外対象特定債券現先取引等

 除外対象特定債券現先取引等とは、関連者等との間で行う特定債券現先取引等で、その特定債券現先取引等に係る支払利子等の額がその支払を受ける関連者等の課税対象所得に含まれないものをいいます(旧措令39の13の 2 ⑤)。 ここで「特定債券現先取引等」とは、現金担保付債券貸借取引で借り入れた債券又は債券現先取引で購入した債券を、別の現金担保付債券貸借取引で貸し付ける場合又は別の債券現先取引で譲渡する場合のその別の現金担保付債券貸借取引又はその別の債券現先取引をいいます(旧措法66の 5 の 2 ②)。ⅱ 調整後平均負債残高 調整後平均負債残高とは、除外対象特定債券現先取引等に係る負債に係る平均負債残高(その平均負債残高がその除外対象特定債券現先取引等に係る対応債券現先取引等に係る資産に係る平均資産残高(その事業年度のその資産の帳簿価額の平均的な残高として合理的な方法により計算した金額をいいます。)を超える場合には、その平均資産残高)をいいます(旧措令39の13の 2 ⑥)。 ここで「対応債券現先取引等」とは、現金担保付債券貸借取引で借り入れた債券又は債券現先取引で購入した債券を、別の現金担保付債券貸借取引で貸し付ける場合又は別の債券現先取引で譲渡する場合のその借り入れた債券に係る現金担保付債券貸借取引又は購入した債券に係る債券現先取引をいいます(旧措令39の13の 2 ⑥)。

ハ 控除対象受取利子等合計額 控除対象受取利子等合計額とは、法人の事業年度の受取利子等の額の合計額をその事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のその事業年度の支払利子等の額の合計額

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――国際課税関係の改正――

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に対する割合で按分した金額として計算した金額をいいます(旧措法66の 5 の 2 ③、旧措令39の13の 2 ⑯)。

② 改正の内容 今回の改正では、本制度の対象となる支払利子等の範囲及び控除される受取利子等の範囲についてそれぞれ次の見直しが行われました。イ 対象となる純支払利子等の額 その事業年度における対象支払利子等の額(支払利子等の額のうち対象外支払利子等の額以外の金額をいいます。以下同じです。)の合計額(以下「対象支払利子等合計額」といいます。)からこれに対応するものとして計算した受取利子等の額の合計額(以下「控除対象受取利子等合計額」といいます。)を控除した残額(以下「対象純支払利子等の額」といいます。)が本制度の対象とされました(措法66の 5 の 2 ①)。 改正前は関連者等への支払利子を本制度の対象としていましたが、BEPS プロジェクトの最終報告書において、第三者に対する支払利子についても、多国籍企業グループにおいて、あえて税率の高い国の企業が借入れを行い、これを税率の低い国の企業に出資すること等により税率の高い国の税源浸食(税率の低い国への流出)が生じ得ることを指摘し、第三者への支払利子、関連者への支払利子を問わず、制限対象とすべきと勧告していることを踏まえ、第三者への支払利子も本制度の対象とすることとされたものです。なお、「支払利子等に準ずるもの」及び「支払利子等に含まれるもの」の範囲については、基本的に改正前と同様とされています。 また、第三者に対する支払利子も本制度の対象とされたことに伴い、改正前の「関連者等」の範囲から一定の第三者を除いた者を「関連者」と定義されています。ロ 対象外支払利子等の額

 上記イのとおり、第三者への支払利子も本制度の対象とされましたが、他方で、受領者側において我が国の課税対象所得に含まれる支払利子については、我が国の税源浸食リスクが小さく、また、これらを対象とした場合には、通常の経済活動にも影響を及ぼしかねないことを総合勘案して、本制度の対象となる支払利子から除外することとされました。 具体的には、本制度の対象となる支払利子から除外される「対象外支払利子等の額」は、次に掲げる支払利子等(注)の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされました(措法66の 5 の 2 ②三)。(注) 次に掲げる支払利子等は、実質的に国

内で課税されない者への支払利子等と変

わることがないことから除かれています

(措法66の 5 の 2 ②三、措令39の13の 2 ④

⑤)。なお、国内の関連者を介在させるケ

ースについては、その関連者側において、

国内の関連者から受ける受取利子等につ

いて控除対象受取利子等合計額への算入

を制限する措置が現行制度においても設

けられていることから、今回の見直しに

おいては、国内の非関連者を介在させる

ケースに限って対策が講じられています。

イ� 法人に係る関連者(その法人から受

ける支払利子等があったとした場合に

その支払利子等がその関連者の課税対

象所得に含まれるものを除きます。)が

非関連者(その法人から受ける支払利

子等がその非関連者の課税対象所得に

含まれるものに限ります。)を通じてそ

の法人に対して資金を供与したと認め

られる場合におけるその非関連者に対

する支払利子等

ロ� 非関連者(その法人から受ける支払

利子等がその非関連者の課税対象所得

に含まれるものに限ります。)が有する

債権(その法人から受ける支払利子等

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――国際課税関係の改正――

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に係るものに限ります。)に係る経済的

利益を受ける権利が貸出参加契約その

他により他の非関連者(その法人から

受ける支払利子等があったとした場合

にその支払利子等が当該他の非関連者

の課税対象所得に含まれるものを除き

ます。)に移転されることがあらかじめ

定まっている場合におけるその非関連

者に対する支払利子等

イ 支払利子等を受ける者の課税対象所得(注)に含まれる支払利子等(ニに掲げる支払利子等を除きます。イにおいて同じです。) その課税対象所得に含まれる支払利子等の額(措法66の 5 の 2 ②三イ)(注) 課税対象所得は、法人から支払利子

等を受ける者の区分に応じた所得とさ

れ、その所得の範囲は改正前と同様と

されています(措令39の13の 2 ⑥)。

ロ 一定の公共法人(注)に対する支払利子等(ニに掲げる支払利子等を除きます。

ロにおいて同じです。) その公共法人に対する支払利子等の額(措法66の 5 の 2②三ロ)(注) 一定の公共法人は、一般の金融機関

が行う金融を補完すること等に鑑みて、

沖縄振興開発金融公庫、株式会社国際

協力銀行、株式会社日本政策金融公庫、

独立行政法人奄美群島振興開発基金及

び年金積立金管理運用独立行政法人と

されています(措令39の13の 2 ⑦、措

規22の10の 7 ②)。

ハ 特定債券現先取引等に係る支払利子等

対象外支払利子等の額とならない支払利子等の額

法人 非関連者 他の非関連者

資金

<日本 > <外国 >

法人 非関連者 関連者資金

資金

<日本 > <外国 >

利子

対象外支払利子等の額とならない。

対象外支払利子等の額とならない。

利子

○ 次のいずれかに該当する支払利子等の額は対象外支払利子等の額とならない。

概 要

⑴ 法人に係る関連者(注)(その法人から受ける支払利子等があったとした場合にその支払利子等がその関連者の課税対象所得に含まれるものを除く。)が非関連者(その法人から受ける支払利子等がその非関連者の課税対象所得に含まれるものに限る。)を通じてその法人に対して資金を供与したと認められる場合におけるその非関連者に対する支払利子等の額(注)連結グループ内の他の連結法人を除く。

⑵ 非関連者(その法人から受ける支払利子等がその非関連者の課税対象所得に含まれるものに限る。)が有する債権(その法人から受ける支払利子等に係るものに限る。)に係る経済的利益を受ける権利が他の非関連者(その法人から受ける支払利子等があったとした場合にその支払利子等が当該他の非関連者の課税対象所得に含まれるものを除く。)に移転されることがあらかじめ定まっている場合におけるその非関連者に対する支払利子等の額

経済的利益を受ける権利の移転

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――国際課税関係の改正――

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(ロ及びニに掲げる支払利子等を除きます。ハにおいて同じです。) 除外対象特定債券現先取引等(注)に係る支払利子等の額に、その除外対象特定債券現先取引等に係る調整後平均負債残高をその除外対象特定債券現先取引等に係る負債に係る平均負債残高で除して得た割合を乗じて計算した金額(措法66の 5 の 2 ②三ハ、措令39の13の 2 ⑨)(注) 除外対象特定債券現先取引等とは、

特定債券現先取引等で、その特定債券

現先取引等に係る支払利子等の額がそ

の支払を受ける者の課税対象所得に含

まれないものとされています(措令39

の13の 2 ⑧)。

ニ 法人が発行した債券(その取得をした者が実質的に多数でないもの(注 1)を除きます。)に係る支払利子等で非関連者に対するもの(以下「特定債券利子等」といいます。) 債券の銘柄ごとに次に掲げるいずれかの金額(措法66の 5 の2 ②三ニ)ⅰ その支払若しくは交付の際、その特定債券利子等について所得税法その他所得税に関する法令の規定により所得税の徴収が行われ(注 2)、又は特定債券利子等を受ける者の課税対象所得に含まれる特定債券利子等の額とロの一定の公共法人に対する特定債券利子等(その支払又は交付の際、所得税法その他所得税に関する法令の規定により所得税の徴収が行われるものを除きます。)の額との合計額ⅱ 次の債券の区分に応じそれぞれ次に定める金額(措令39の13の 2 ⑭)⒤ 国内において発行された債券 特定債券利子等の額の合計額の95%に相当する金額ⅱ 国外において発行された債券 特定債券利子等の額の合計額の25%に

相当する金額(注 1)� その取得をした者が実質的に多数

でない債券とは、債券を発行した日

において、その債券を取得した者の

全部がその債券を取得した者の一人

(以下「判定対象取得者」といいま

す。)及び次に掲げる者である場合に

おけるその債券とされています(措

令39の13の 2 ⑫)。

ⅰ� 次に掲げる個人

⒤� その判定対象取得者の親族

ⅱ� その判定対象取得者と婚姻の

届出をしていないが事実上婚姻

関係と同様の事情にある者

ⅲ� その判定対象取得者の使用人

ⅳ� ⒤からⅲまでに掲げる者以外

の者でその判定対象取得者から

受ける金銭その他の資産によっ

て生計を維持しているもの

ⅴ� ⅱからⅳまでに掲げる者と生

計を一にするこれらの者の親族

ⅱ� その判定対象取得者と他の者と

の間にいずれか一方の者(その者

が個人である場合には、これと法

人税法施行令第 4 条第 1 項に規定

する特殊の関係のある個人を含み

ます。)が他方の者(法人に限りま

す。)を直接又は間接に支配する関

係がある場合における当該他の者

ⅲ� その判定対象取得者と他の者

(法人に限ります。)との間に同一

の者(その者が個人である場合に

は、これと法人税法施行令第 4 条

第 1 項に規定する特殊の関係のあ

る個人を含みます。)がその判定対

象取得者及び当該他の者を直接又

は間接に支配する関係がある場合

における当該他の者

 ここで、上記ⅱ又はⅲの直接又は

間接に支配する関係とは、一方の者

─�570�─

――国際課税関係の改正――

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と他方の者との間にその他方の者が

次に掲げる法人に該当する関係があ

る場合におけるその関係をいいます

(措令39の13の 2 ⑬)。

ⅰ� その一方の者が法人を支配して

いる場合(法人税法施行令第14条

の 2 第 2 項第 1 号に規定する法人

を支配している場合をいいます。)

におけるその法人

ⅱ� 上記ⅰ若しくは下記ⅲに掲げる

法人又はその一方の者及び上記ⅰ

若しくは下記ⅲに掲げる法人が他

の法人を支配している場合(法人

税法施行令第14条の 2 第 2 項第 2

号に規定する他の法人を支配して

いる場合をいいます。)における当

該他の法人

ⅲ� 上記ⅱに掲げる法人又はその一

方の者及び上記ⅱに掲げる法人が

他の法人を支配している場合(法

人税法施行令第14条の 2 第 2 項第

3 号に規定する他の法人を支配し

ている場合をいいます。)における

当該他の法人(注 2) 実際に源泉徴収が行われるかどう

かで判定を行いますので、所得税法

その他所得税に関する法令の規定に

より源泉徴収の対象となる特定債券

利子等の額であっても、租税条約の

規定により免税とされる場合には、

所得税の徴収が行われるものには該

当しません。

 債券については、保有者が大勢になり、転々流通するため、債券発行会社において利子受領者の課税関係を判断することが困難な場合があることから、上記ⅰ(原則法)のとおり、利子等を受ける者の課税対象所得に含まれている場合に加え、利子等の支払等の際に源泉徴収が行われる場合にも本制度の対象外とされました。 さらに、債券の発行会社において、源泉徴収の有無を把握することが困難であったり、一部可能であっても事務負担が重かったりすることから、上記ⅱ(簡便法)のとおり、国内発行債券と国外発行債券について、それぞれ、統計上、通常日本で課税されていると考えられる主体がどの程度保有しているかを参照して定められた一定の割合に基づいて計算することができることとされました。 なお、上記ⅰ(原則法)とⅱ(簡便法)について優先関係は設けられていませんので、債券の銘柄ごとにいずれかを選択することとなります。

─�571�─

――国際課税関係の改正――

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債券の銘柄(注 5 )ごとにいずれかの方法により判定

対象支払利子等の額その他の支払利子等の額 特定債券利子等(注1)の額

支払利子等の額

対象外支払利子等の額(注 2) 対象外支払利子等の額(原則法)(注 2)

対象外支払利子等の額(簡便法)(注 2)

・ 支払利子等を受ける者の課税対象所得(注 3 )に含まれる支払利子等の額

・ 一定の公共法人(注 4 )に対する支払利子等の額・ 借入れと貸付けの対応関係が明らかな債券現先取引等

に係る支払利子等の額(連結納税の場合)・ 連結グループ内の他の連結法人に対する支払利子等の

債券の銘柄ごとに次に掲げる金額の合計額・ その支払若しくは交付の時に源泉徴収が行われ、又はそ

の特定債券利子等を受ける者の課税対象所得に含まれる特定債券利子等の額

・ 一定の公共法人(注 4)に対する特定債券利子等(その支払又は交付の時に源泉徴収が行われるものを除く。)の額

 次に掲げる債券の区分に応じ、その銘柄ごとにそれぞれ次に定める金額・ 国内で発行された債券 特定債券利子等の額の合計額

の 95%に相当する金額・ 国外で発行された債券 特定債券利子等の額の合計額

の 25%に相当する金額

(注 1 )法人が発行した債券(その取得をした者が実質的に多数でないものを除く。)に係る支払利子等で非関連者に対するものをいう。(注 2 )関連者が非関連者を通じてその法人に資金を供与したと認められる場合におけるその非関連者に対する支払利子等の額等は対象外支払利子

等の額とならない。(注 3 )課税対象所得とは、その支払利子等を受ける者が法人であれば法人税の課税対象とされる所得を、支払利子等を受ける者が個人であれば所

得税(源泉所得税を含む。)の課税対象とされる所得をいう。(注 4 )沖縄振興開発金融公庫、株式会社国際協力銀行、株式会社日本政策金融公庫、独立行政法人奄美群島振興開発基金及び年金積立金管理運用

独立行政法人(注 5 )発行日、利率、償還の方法及び期限、発行地等が同じ債券

対象支払利子等の額のイメージ

特定債券利子等に係る対象外支払利子等の額の判定(イメージ)

銘柄 発行年月日 発行地 発行

総額発行価額

償還期限 利率 判定

方法社債保有者

特定債券利子等の額

備考対象外支払利子等の額

第 1回社債

20X1/10/ 1 国内 10,000 2,500 20X3/

10/ 1 4 % 原則法

A 100 Aの課税対象所得に含まれる

300(A、B、C)

B 100 Bへの支払の際に源泉徴収あり

C 100 Cは一定の公共法人

D 100

Dは非居住者(我が国の課税対象所得に含まれない&源泉徴収なし)

第 2回社債

20X1/11/ 1 国外 10,000 2,500 20X3/

11/ 1 4 % 簡便法

E 100

400×25%=100 100F 100

G 100

H 100

※A~Hは社債発行会社の関連者に該当しない者とする。

─�572�─

――国際課税関係の改正――

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ハ 控除対象受取利子等合計額 控除対象受取利子等合計額とは、法人の事業年度の受取利子等の額の合計額をその事業年度の対象支払利子等合計額のその事業年度の支払利子等の額の合計額に対する割合で按分した金額として次の算式により計算した金額とされました(措法66の 5 の2 ②六、措令39の13の 2 �)。《算式》

法人が非国内関連者から受ける受取利子等の額(注 1、2)

法人が国内関連者から受ける受取利子等の額(注1、2)と法人の事業年度の期間と同一の期間において国内関連者が非国内関連者から受けた受取利子等の額とのうちいずれか少ない金額

×対象支払利子等合計額

法人の支払利子等の額の合計額(注 3)

(注 1) 法人との間に連結完全支配関係があ

る連結法人からの受取利子等の額を除

きます。(注 2) 除外対象特定債券現先取引等に係る

対応債券現先取引等に係る受取利子等

の額を控除します。(注 3) 上記ロハの除外対象特定債券現先取

引等に係る利子の額を除外します。(注 4) 国内関連者とは、その法人に係る関

連者のうち居住者、内国法人、恒久的

施設を有する非居住者又は恒久的施設

を有する外国法人をいい、非国内関連

者とは、「その法人とその法人に係る他

の国内関連者」以外の者をいいます。

⑵ 調整所得金額① 改正前の制度の概要 調整所得金額の計算にあたっては、下記イに掲げる規定を適用せず、かつ、その事業年度において支出した寄附金の全額を損金の額に算入して計算した場合のその事業年度の所得の金額に、下記ロに掲げる金額を加算した金額から、下記ハに掲げる金額を減算して計

算することとされています(旧措法66の 5 の2 ①、旧措令39の13の 2 ①)。(注) 計算された調整所得金額がマイナスの金

額となる場合には、当期の調整所得金額は

ゼロとして、本制度を適用することとなり

ます。

イ 調整所得金額の計算上適用しないこととする規定イ 租税特別措置法第52条の 3第 5項及び第 6項(準備金方式による特別償却)ロ 租税特別措置法第57条の 7第 1項(関西国際空港用地整備準備金)ハ 租税特別措置法第57条の 7の 2第 1項(中部国際空港整備準備金)ニ 租税特別措置法第59条第 1項及び第 2項(新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除)ホ 租税特別措置法第59条の 2第 1項及び第 5項(対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例)ヘ 租税特別措置法第60条第 1項及び第 2項(沖縄の認定法人の課税の特例)ト 租税特別措置法第61条第 1項(国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例)チ 租税特別措置法第61条の 2第 1項(農業経営基盤強化準備金)リ 租税特別措置法第61条の 3第 1項(農用地等を取得した場合の課税の特例)ヌ 租税特別措置法第66条の 5第 1項(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)ル 租税特別措置法第66条の 5の 2第 1項(関連者等に係る支払利子等の損金不算入)ヲ 租税特別措置法第66条の 5の 3第 1項及び第 2項(超過利子額の損金算入)ワ 租税特別措置法第66条の 7第 3項(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)

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――国際課税関係の改正――

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カ 租税特別措置法第66条の 9の 3第 3項(特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例)ヨ 租税特別措置法第67条の12第 1 項及び第 2項(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)タ 租税特別措置法第67条の13第 1 項及び第 2項(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)レ 租税特別措置法第67条の14第 1 項(特定目的会社に係る課税の特例)ソ 租税特別措置法第67条の15第 1 項(投資法人に係る課税の特例)ツ 租税特別措置法第68条の 3の 2第 1項(特定目的信託に係る受託法人の課税の特例)ネ 租税特別措置法第68条の 3の 3第 1項(特定投資信託に係る受託法人の課税の特例)ナ 法人税法第23条(受取配当等の益金不算入)ラ 法人税法第23条の 2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)ム 法人税法第27条(中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入)ウ 法人税法第33条第 2項(法人税法施行令第68条第 1項各号に掲げる資産につきその各号に定める事実が生じたものに適用される場合に限ります。)(資産の評価損の損金不算入等)ヰ 法人税法第40条(法人税額から控除する所得税額の損金不算入)ノ 法人税法第41条(法人税額から控除する外国税額の損金不算入)オ 法人税法第41条の 2(分配時調整外国税相当額の損金不算入)ク 法人税法第57条第 1項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)ヤ 法人税法第58条第 1項(青色申告書を

提出しなかつた事業年度の災害による損失金の繰越し)マ 法人税法第59条第 1項から第 3項まで(会社更生等による債務免除等あった場合の欠損金の損金算入)ケ 法人税法第62条の 5第 5項(現物分配による資産の譲渡)フ 法人税法第142条の 4 第 1 項(恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入)コ 法人税法施行令第112条第20項(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)エ 法人税法施行令の一部を改正する政令(昭和42年政令第106号)附則第 5条第 1項及び第 2項(契約者配当に関する経過規定)

ロ 加算する金額イ その事業年度の関連者純支払利子等の額、減価償却資産に係る償却費の額(損金経理(法人税法第72条第 1 項第 1 号(仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等)に掲げる金額を計算する場合にあっては、同項に規定する期間に係る決算において費用又は損失として経理することをいいます。)の方法又はその事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てた金額を含みます。)でその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額ロ 金銭債権の貸倒れによる損失の額でその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額

ハ 減算する金額 本制度と内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)との調整措置の対象となる外国関係会社に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額

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――国際課税関係の改正――

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(注) 特殊関係株主等である内国法人に係る

外国関係法人に係る所得の課税の特例

(コーポレート・インバージョン対策合算

税制)に係る外国関係法人の課税対象金

額、部分課税対象金額又は金融関係法人

部分課税対象金額を含みます。

② 改正の内容 調整所得金額は、いわゆる「利払前所得」として、税務上の課税所得に純支払利子等の額を加えたものをベースとしつつ、受取配当等の益金不算入額や繰越欠損金の当期控除額その他既存の税務上の特別の取扱いにより益金の額又は損金の額に加減算されるものにつき、当該加減算額を「繰り戻す」形で、かかる税務上の特別の取扱いを捨象した金額とされています。 こうした考えのもとで、調整所得金額の計算上、法人税法第23条及び第23条の 2の規定は適用しないことにより、国内外の受取配当等の益金不算入額を、所得金額に足し戻していましたが、前述のとおり、BEPS プロジェクトの最終報告書の勧告においては、税率の高い国の企業が借入れを行い、これを税率の低い国の子会社等に出資することで、税率の高い国において、損金算入可能な支払利子と、益金不算入となる受取配当を得ることへの懸念や、課税所得を増やさずに損金算入限度額

を引き上げるといった操作可能性を高めることへの懸念から、調整所得金額に、非課税となる受取配当を加算すべきではないと勧告しており、これを踏まえ、国内外の受取配当等の益金不算入額を足し戻さないこととされました(措令39の13の 2 ①)。 また、改正前の調整所得金額は、源泉所得税額を損金不算入としない金額、つまり源泉所得税額の控除後の金額とされていました。他方で、調整所得金額は、法人税額を控除しない金額となっているところ、源泉所得税額は、所得税額控除を行う場合には、法人税の前取りと考えることもできることから、法人税法第40条の規定を適用しない規定から除くことで、法人税額と同様に控除しない金額とされました。 また、匿名組合契約の営業者の支払分配金については、特定目的会社等の支払配当の損金算入の扱いとのバランスを考慮し、調整所得金額に加算する金額に匿名組合契約等により匿名組合員に分配すべき利益の額でその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される金額が、減算する金額に匿名組合契約等により匿名組合員に負担させるべき損失の額でその事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される金額が、それぞれ追加されました。

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――国際課税関係の改正――

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⑶ 損金不算入額 支払利子等の損金算入限度額について、改正前は、調整所得金額の50%とされていましたが、BEPS プロジェクトの最終報告書において、通常の経済活動に係る支払利子の損金算入を妨げない水準として、調整所得金額の10%~30%に制限する旨を勧告していることを踏まえ、改正後は、この基準値が20%に引き下げられました(措法66の 5 の 2 ①)。

⑷ 適用免除基準① 改正前の制度の概要 法人が次のいずれかに該当する場合には、本制度の適用はないこととされています(旧措法66の 5 の 2 ④)。イ 法人の事業年度の関連者純支払利子等の額が1,000万円以下であるとき。ロ 法人の事業年度の関連者支払利子等の額の合計額がその事業年度の支払利子等の額(その法人との間に連結完全支配関係があ

る連結法人に対する支払利子等の額及びその法人に係る関連者等に対する支払利子等の額でその関連者等の課税対象所得に含まれるものを除きます。)の合計額の50%以下であるとき。

② 改正の内容 上記①イについてはその事業年度の関連者純支払利子等の額が1,000万円以下からその事業年度の対象純支払利子等の額が2,000万円以下に改正されました。 また、上記①ロは、人為的な操作により関連者間の利子を増加させた可能性が少ないという観点で設けられていましたが、改正後の過大支払利子税制は第三者への利子も対象とすることから、制度趣旨に沿わなくなったため、廃止され、新たに企業グループ単位の純支払利子額の調整所得金額に対する割合による適用免除基準が設けられました。 具体的には、法人が次のいずれかに該当する場合には、本制度の適用はないこととされ

対象純支払利子 + 対象となるネット支払利子額

欠損金関係 + 繰越欠損金等の当期控除額

減価償却費 + 当期に損金算入された減価償却費(特別償却を含む。)- 特別償却準備金の取崩し益

受取配当等の益金不算入 + 受取配当の益金不算入額+ 外国子会社配当等の益金不算入額

特別の損失 + 著しく価値が下落した資産の評価損 ・ 法人税法施行令第 68 条第 1項各号に掲げるものに限る+ 税務上損金算入された貸倒損失

その他 - 法人税額から控除する所得税額の損金不算入額- 法人税額から控除する外国税額の損金不算入額+ 租特法上の所得の特別控除額+ 特定目的会社等の支払配当の損金算入額± 匿名組合契約の営業者の支払分配金の損金算入額等± その他(計算の循環を防止するための技術的調整等)

[調整項目]

【改正事項】当期の所得金額に加算する項目から除外

【改正事項】当期の所得金額から減算する項目から除外

【改正事項】当期の所得金額に加減算する項目に追加

過大支払利子税制において、当期の対象純支払利子の額が過大であるかどうかの判定の基礎となる所得の金額(調整所得金額)は、当期の所得金額を基礎として、対象純支払利子、欠損金の当期控除額、減価償却費及び特別の損失その他について調整を行った金額とされている。

調整所得金額の計算方法の見直し

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――国際課税関係の改正――

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ました(措法66の 5 の 2 ③、措令39の13の 2㉓~㉗)。イ 法人の事業年度の対象純支払利子等の額が2,000万円以下であるとき。ロ 内国法人及びその内国法人との間に特定資本関係(注 1)のある他の内国法人(その事業年度開始の日及び終了の日がそれぞれその開始の日を含むその内国法人の事業年度開始の日及び終了の日であるものに限ります。)のその事業年度におけるイに掲げる金額がロに掲げる金額の20%に相当する金額を超えないこと。イ 対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額(控除対象受取利子等合計額から対象支払利子等合計額を控除した残額をいいます。)の合計額を控除した残額ロ 調整所得金額の合計額から調整損失金額(調整所得金額の計算において零を下回る金額が算出される場合のその零を下回る金額をいいます。)の合計額を控除した残額

(注 1) 上記ロの特定資本関係とは、次の関

係をいいます(措令39の13の 2 ㉓~㉕)。

ⅰ� 一の内国法人の他の内国法人に係

る直接保有の株式等の保有割合(そ

の一の内国法人の有する当該他の内

国法人の株式等の数又は金額が当該

他の内国法人の発行済株式等の総数

又は総額のうちに占める割合をいい

ます。)とその一の内国法人の当該他

の内国法人に係る間接保有の株式等

の保有割合とを合計した割合が50%

を超える場合におけるその一の内国

法人と当該他の内国法人との間の関

係(ⅱにおいて「当事者間の特定資

本関係」といいます。)

ⅱ� 一の内国法人との間に当事者間の

特定資本関係がある内国法人相互の

関係

 上記ⅰにおいて、「間接保有の株式

等の保有割合」とは、次の区分に応

じたそれぞれの割合(いずれにも該

当する場合には、その定める割合の

合計割合)をいいます。

ⅰ� 他の内国法人の株主等である内

国法人の発行済株式等の50%を超

える数又は金額の株式等が一の内

国法人により所有されている場合 

その株主等である内国法人の有す

る当該他の内国法人の株式等の数

又は金額が当該他の内国法人の発

行済株式等のうちに占める割合

(その株主等である内国法人が二以

上ある場合には、その二以上の株

主等である内国法人につきそれぞ

れ計算した割合の合計割合)

ⅱ� 他の内国法人の株主等である内

国法人(上記ⅰに掲げる場合に該

当する株主等である内国法人を除

きます。)と一の内国法人との間に

これらの者と発行済株式等の所有

を通じて連鎖関係にある一又は二

以上の内国法人(ⅱにおいて「出

資関連法人」といいます。)が介在

している場合(出資関連法人及び

その株主等である内国法人がそれ

ぞれその発行済株式等の50%を超

える数又は金額の株式等をその一

の内国法人又は出資関連法人(そ

の発行済株式等の50%を超える数

又は金額の株式等がその一の内国

法人又は他の出資関連法人によっ

て所有されているものに限りま

す。)によって所有されている場合

に限ります。) その株主等である

内国法人の有する当該他の内国法

人の株式等の数又は金額が当該他

の内国法人の発行済株式等のうち

に占める割合(その株主等である

─�577�─

――国際課税関係の改正――

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内国法人が二以上ある場合には、

その二以上の株主等である内国法

人につきそれぞれ計算した割合の

合計割合)

 上記ロの基準は、国内の企業グループを全体として見れば経済規模に比較して適正な範囲の支払利子額であり、国外への不適切な所得移転が生じていないと考えられるにもかかわらず、個々の企業の所得や支払利子額をみると、支払利子額が過大に見えてしまうケース(注 2)があることを考慮し、企業グループ単位の純支払利子額の調整所得金額に対する割合による適用免除基準として設けられたものです。(注 2) 例えば、国内の持株会社が、国内子会

社のために資金調達を行い、その資金を

国内子会社に出資により提供する場合に

は、その持株会社の主要な収入源である

受取配当は、今回の改正によって調整所

得金額にカウントされなくなったことか

ら、必然的に調整所得金額に対する支払

利子額の割合が大きくなり得ます。しか

し、この場合、持株会社の所得が支払利

子により圧縮されるとしても、国内子会

社においては利子費用が減少することに

なるので、日本の税源浸食が生じていな

いことから、これをBEPS対策として制限

することは適当でないと考えられます。

 なお、上記ロロの調整所得金額の合計額及び調整損失金額の合計額は、内国法人及びその内国法人との間に特定資本関係のある他の内国法人の確定申告書に記載された所得(欠損)金額を基礎として計算した(注 3)調整所得(損失)金額の合計額となります。また、内国法人及びその内国法人との間に特定資本関係のある他の内国法人のうちいずれかの法人の所得(欠損)金額が修正申告や更正により変更された場合には、その変更後の事業年度の所得(欠損)の金額を基礎としてその調整所得(損失)金額の合計額を計算することとなります。その結果、上記ロの適用免除基準に該当しないこととなり、遡って過大支払利子税制の適用を受けることもあり得ます(上記ロイの対象純支払利子等の額の合計額又は対象純受取利子等の額の合計額が、修正申告や更正により変更された場合も同様です。)。(注 3) 内国法人の申告時点において、他の内

国法人が申告期限の延長の特例の適用を

受けていることにより、当該他の内国法

人の確定申告書に記載された所得(欠損)

金額がない場合には、当該他の内国法人

が後日提出する確定申告書に記載すべき

所得(欠損)金額を基礎として計算する

ことになります。

─�578�─

――国際課税関係の改正――

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○ 次のいずれかに該当する場合には過大支払利子税制は適用されない。 (1) その事業年度の関連者純支払利子等の額が 1,000 万円以下であるとき (2) その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額が総支払利子等の額(注)の合計額の 50%以下であるとき

(注)連結グループ内の他の連結法人への支払利子等の額及び関連者等の課税対象所得に含まれる支払利子等の額を除く。

改正前

○ 次のいずれかに該当する場合には過大支払利子税制は適用されない。 (1) その事業年度の対象純支払利子等の額が 2,000 万円以下であるとき (2) 内国法人及びその内国法人との間に特定資本関係(注 1)のある他の内国法人(注 2)のその事業年度に係るイ  に掲げる金額がロに掲げる金額の 20%に相当する金額を超えないとき  イ 対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額(注 3)の合計額を控除した残額  ロ イに掲げる金額と比較するための基準とすべき所得の金額として計算した金額(注 4)

改正後

(注 1) 一の内国法人が他の内国法人の発行済株式等の総数若しくは総額の 50%を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間   接に保有する関係(当事者間の特定資本関係)又は一の内国法人との間に当事者間の特定資本関係がある内国法人相互の関係をいう。(注2) その事業年度開始の日及び終了の日がそれぞれその開始の日を含むその内国法人の事業年度開始の日及び終了の日であるものに限る。(注3) その事業年度の控除対象受取利子等合計額から対象支払利子等合計額を控除した残額をいう。(注4) その事業年度の調整所得金額の合計額から調整損失金額(調整所得金額の計算において零を下回る金額が算出される場合のその下回る   額)の合計額を控除した残額をいう。(注5) 連結納税においては、上記⑵の適用免除基準は設けられていない。

適用免除基準の見直し

適用免除基準における特定資本関係

○ 特定資本関係とは、①当事者間の特定資本関係又は②一の内国法人との間に当事者間の特定資本関係がある内国法人相互の関係をいう。○ 当事者間の特定資本関係とは、一の内国法人が他の内国法人の発行済株式等の総数又は総額の 50%を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する場合におけるその一の内国法人と他の内国法人との間の関係をいう。

内国法人

内国法人

内国法人内国法人

内国法人

50%超

50%超

一の内国法人との間に当事者間の特定資本関係がある内国法人相互の関係

一の内国法人との間に当事者間の特定資本関係がある内国法人相互の関係

50%超

50%超

内国法人

内国法人

50%超

50%超

当事者間の特定資本関係

内国法人

当事者間の特定資本関係

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――国際課税関係の改正――

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2  超過利子額(損金不算入額の繰越額)の損金算入

⑴ 改正前の制度の概要① 超過利子額の損金算入 法人の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度において本制度により損金の額に算入されなかった金額(この措置及び本制度に係る超過利子額と外国子会社合算税制との適用調整によりその各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたものを除きます。)(以下「超過利子額」といいます。)がある場合には、その超過利子額(本制度に係る超過利子額と外国子会社合算税制との適用調整により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものを除きます。)に相当する金額は、その法人の各事業年度の調整所得金額の50%に相当する金額から関連者純支払利子等の額を控除した残額に相当する金額を限度として、その法人のその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされています(旧措法66の 5 の 3 ①)。② 適用要件 上記①の措置は、次の要件を満たす場合に適用を受けることができることとされています(旧措法66の 5 の 3 ⑧)。イ 超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書にその超過利子額に関する明細書の添付ロ 適用を受けようとする事業年度の確定申告書(中間申告書を含みます。⑵②及び 5⑵において「確定申告書等」といいます。)に、適用を受ける金額の申告の記載及びその計算に関する明細書の添付 この場合において、この措置の適用を受ける金額は、その申告に係るその適用を受けるべき金額に限られます。

⑵ 改正の内容① 超過利子額の損金算入 法人の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度において超過利子額がある場合には、その超過利子額(本制度に係る超過利子額と外国子会社合算税制との適用調整により各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものを除きます。)に相当する金額は、その法人の各事業年度の調整所得金額の20%に相当する金額から対象純支払利子等の額を控除した残額に相当する金額を限度として、その法人のその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされました(措法66の 5 の 3 ①)。 なお、改正前の制度で損金不算入となった超過利子額の損金算入についても、改正後の調整所得金額の20%に相当する金額から対象純支払利子等の額を控除した残額に相当する金額を限度として、その法人のその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされました。② 適用要件 上記⑴②イの要件については、超過利子額に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の確定申告書の連続提出要件とされ、上記⑴②ロの要件については、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書への損金の額に算入される金額等を記載した書類の添付要件とされました(措法66の 5 の 3 ⑧)。 また、この措置により損金の額に算入される金額の計算の基礎となる超過利子額は、その書類に記載された超過利子額を限度とすることとされました。 改正前は、修正申告又は更正処分によって過大支払利子税制の適用による損金不算入額(超過利子額)が発生した場合には、修正申告又は更正処分のあった事業年度について、確定申告書への超過利子額に関する明細書の添付要件を満たすことができないことから、翌期以後に超過利子額を損金算入することが

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――国際課税関係の改正――

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できず、また、修正申告又は更正処分によって調整所得金額が増加し、超過利子額の損金算入額が新たに発生した場合であっても、当初の確定申告で超過利子額の損金算入を行っていなかったときには、事後に超過利子額の損金算入の適用を受ける機会がなく、調整所得金額の増加に連動して超過利子額の損金算入額を増加させることもできないこととされていました。 今回の改正によって、修正申告又は更正処分によって超過利子額が発生した場合にも、翌期以後繰越しの機会が設けられるとともに、当初の確定申告だけでなく、修正申告や更正の請求で超過利子額の損金算入が適用できることになり、また、修正申告又は更正処分で調整所得金額が増加した場合には、これに連動して超過利子額の損金算入額を増加させることが可能となりました。 上記⑴②のとおり、当初の確定申告で本制度の適用があることを超過利子額の損金算入の適用要件として求めていたことは、租税回避

防止措置である本制度の適切な適用を担保するという意味合いがあったものと考えられます。 他方で、超過利子額の損金算入の仕組みは、過大支払利子税制の適用の有無の判断の基礎となる事業年度の所得水準及び支払利子の水準が、短期的な市況のほか、創業期又は事業再構築期にあるのか否か等、その企業を取り巻く様々な要因により大きく変動する要素であることから、その変動による影響を緩和するため、単年度の状況だけでなく、事後の一定期間( 7年間)の状況を踏まえて、過大な支払利子か否かの判断ができるようにするために設けられたものであること、また、BEPS プロジェクトの最終報告書においても、純支払利子の損金算入を企業の EBITDAのレベルにリンクさせるアプローチに基づく重要な問題は、企業が支払利子を損金算入する能力に影響を及ぼす収益の変動にいかに対処するかであると述べられていること等を踏まえ、今回の過大支払利子税制の全般的な見直しの中で改正が行われたものです。

50損 金 算 入

【 30 】

超過利子額 50 を翌期以降繰越

損金不算入

調整所得金額 × 20% 【 20 】

(注) 改正前において生じた超過利子額についても、上記と同様に、対象純支払利子等の額と調整所得金額の 20%に相当する金額との 差額を限度として、損金の額に算入する。

調整所得金額 × 20% 【 100 】

対象純支払利子等の額 【 70 】

超過利子額 【 80 】

対象純支払利子等の額 【 100 】

≪ 前 期 ≫ ≪ 当 期 ≫

当期の対象純支払利子等の額が調整所得金額の 20%(改正前:50%)に満たない場合において、前 7 年以内に開始した事業年度に本制度の適用により損金不算入とされた金額(超過利子額)があるときは、その対象純支払利子等の額と調整所得金額の 20%(改正前:50%)に相当する金額との差額を限度として、当該超過利子額に相当する金額を当期の損金の額に算入する。

超過利子額の損金算入の見直し

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――国際課税関係の改正――

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3  内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例との調整

 外国子会社合算税制の適用の対象となる外国関係会社に支払う利子を有する法人において、本制度により損金不算入とされる金額がある場合には、その利子の支払を受けた外国関係会社の所得相当額が外国子会社合算税制による合算課税の対象となり、かつ、法人が支払う利子について損金算入が認められないこととなり、二重課税の状態が生じるものと考えられることから調整措置が設けられていますが、本制度の対象となる支払利子等の範囲の改正に伴う所要の整備が行われました(措法66の 5 の 2 ⑦、66の 5 の 3 ②、措令39の13の 2�、39の13の 3 ③)。 また、本制度に係る超過利子額と外国子会社合算税制との適用調整について、上記 2 ⑵②と同様の適用要件の見直しが行われました(措法66の 5の 3 ⑧)。(参考) 本制度とコーポレート・インバージョン

対策合算税制との調整についても、上記と

同様の整備が行われました。

4  連結納税における過大支払利子税制

⑴ 改正前の制度の概要 連結納税における過大支払利子税制は、連結グループ全体の関連者純支払利子等の額と連結グループ全体の連結調整所得を比較して、損金不算入額の計算等を行うこととされています(旧措法68の89の 2 ①)。連結超過利子額(連結親法人の各連結事業年度開始の日前 7年以内に開始した連結事業年度において本制度により損金の額に算入されなかった金額(過年度において本制度により損金の額に算入されたものを除きます。)をいいます。)がある場合の損金算入額の計算においても同様です(旧措法68の89の3 ①)。 また、連結超過利子額はグループ全体のものとして管理されるため、連結子法人の連結グループへの加入・離脱等に伴う調整を行う必要か

ら、連結納税固有の取扱いが措置されています。

⑵ 改正の内容 連結納税における過大支払利子税制についても、上記 1~ 3の改正と同様の改正が行われました。以下では、連結納税固有の取扱いについて解説を行います。① 対象外支払利子等の額 対象外支払利子等の額の意義は、原則として単体納税の場合と同様とされていますが、連結納税においては、上記 1 ⑴②ロイからニまでに掲げる支払利子等の額に加えて連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人に対する支払利子等の額が対象外支払利子等の額とされました(措法68の89の 2 ②三ハ)。 また、上記 1 ⑴②ロ(注)イにおける関連者の範囲から連結法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人は除くこととされました(措令39の113の 2 ④)。

② 適用免除基準 各連結法人の連結事業年度の対象純支払利子等の額(注)が2,000万円以下であるときは本制度の適用はないこととされました(措法68の89の 2 ③)。(注) 対象純支払利子等の額は、各連結法人の

対象支払利子等の額の合計額から控除対象

受取利子等合計額を控除した残額とされて

いることから(措法68の89の 2 ①)、連結グ

ループ全体の金額であり、連結法人ごとの

金額ではない点に留意する必要があります。

 なお、連結納税においては連結グループ全体の対象純支払利子等の額と連結グループ全体の連結調整所得金額を比較して損金不算入額の計算を行うことから、単体納税において設けられている上記 1 ⑷②ロの企業グループ単位の純支払利子額の調整所得金額に対する割合による適用免除基準と同様の基準は設けられていません。③ 連結超過利子控除額のうち各連結法人に帰

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――国際課税関係の改正――

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せられる金額 改正前は、連結超過利子控除額のうち各連結法人に帰せられる金額は、次の算式により計算した金額とされています(旧措令39の113の 3 ⑪)。《算式》

連結超過利子控除額 ×

その連結法人のその連結事業年度における関連者支払利子等の額各連結法人のその連結事業年度における関連者支払利子等の額の合計額

 改正前の制度では、前 7年連結事業年度の連結超過利子個別帰属額を有さない連結法人にも連結超過利子控除額が割り振られてしまうため、翌期繰越額が不整合となる場合があったことから、今回の改正では、連結超過利子控除額のうち各連結法人に帰せられる金額は、次の算式により計算した金額とされました(措令39の113の 3 ⑪)。《算式》

連結超過利子控除額 ×

その連結法人のその連結事業年度開始の日前 7年以内に開始した連結事業年度において生じた連結超過利子個別帰属額各連結法人のその連結事業年度開始の日前 7年以内に開始した連結事業年度において生じた連結超過利子個別帰属額の合計額

5  適用関係

⑴ 上記 1 ~ 3( 2 ⑵②及び 3 の後段を除きます。)の改正は、法人の令和 2 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度分の法人税については従前どおりとされています(改正法附則57①)。⑵ 上記 2 ⑵②及び 3の後段の改正は、令和 2年4月 1日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税について適用し、同日前に確定申告書等の提出期限が到来した法人税については従前どおりとされています(改正法附則第57②)。⑶ 上記 4の改正は、連結法人の連結親法人事業年度が令和 2年 4月 1日以後に開始する連結事業年度分の法人税について適用し、連結法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した連結事業年度分の法人税については従前どおりとされています(改正法附則74①)。

二� 国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)の改正

㈠ 改正前の制度の概要

 我が国の移転価格税制は、国外関連者との取引を通じた所得の海外移転に対処し、諸外国と共通の基盤に立って、適正な国際課税を実現することを目的として、当時のOECD移転価格ガイドラインや諸外国の制度を参考にしつつ、昭和61年度税制改正において創設されました。その後も、

OECD 移転価格ガイドラインは、国際的に継続して行われてきた議論の内容を踏まえ、随時改訂が行われてきました。現在では、移転価格に関する国際スタンダードとしての地位を確立しています。そのため、我が国では、これまでも OECD移転価格ガイドラインの改訂を踏まえ、適宜その改正を行ってきたところです。

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――国際課税関係の改正――

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⑴ 制度の概要 法人と国外関連者(注 1)との間の取引(以下「国外関連取引」といいます。)を独立企業間価格に比して低価又は高価で行ったことにより、その法人の所得が減少する場合には、その取引が独立企業間価格で行われたものとみなして法人税の課税所得を計算することとされています(旧措法66の 4 ①)。(注 1) 「国外関連者」とは、その法人との間に50

%以上の株式の保有関係等の特殊の関係の

ある外国法人をいいます(旧措法66の 4 ①、

措令39の12①)。(注 2) 国外関連者との取引に係る課税の特例に

ついては、連結法人の各連結事業年度の連

結所得に対する法人税についても、同様の

措置が講じられています(措法68の88)が、

基本的な制度の仕組みは、上記と同様とさ

れていますので、説明は省略します。

⑵ 独立企業間価格の算定方法 独立企業間価格は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める方法のうち、個々の国外関連取引の内容及び国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して、国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合に国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法により算定することとされています(旧措法66の 4 ②、旧措令39の12⑥~⑧)① 国外関連取引が棚卸資産の販売又は購入である場合イ 独立価格比準法 独立価格比準法とは、特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産をその国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(その同種の棚卸資産を国外関連取引と取引段階、取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において、その差異によ

り生じる対価の額の差を調整できるときは、その調整を行った後の対価の額を含みます。)に相当する金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法とされています(旧措法66の 4 ②一イ)。ロ 再販売価格基準法 再販売価格基準法とは、国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対してその棚卸資産を販売した対価の額(ロにおいて「再販売価格」といいます。)から通常の利潤の額を控除して計算した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法とされています(措法66の 4 ②一ロ)。 ここでいう通常の利潤の額とは、再販売価格に、国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を特殊の関係にない者(以下「非関連者」といいます。)から購入した者(以下「再販売者」といいます。)がその同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引(ロにおいて「比較対象取引」といいます。)に係る再販売者の売上総利益の額の収入金額の合計額に対する割合を乗じて計算した金額とされています(旧措令39の12⑥)。 ただし、比較対象取引と国外関連取引に係る棚卸資産の買手がその棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。ハ 原価基準法 原価基準法とは、国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額を加算して計算した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法とされています(措法66の 4 ②一ハ)。 ここでいう通常の利潤の額とは、原価の額に、国外関連取引に係る棚卸資産と同種

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又は類似の棚卸資産を、購入(非関連者からの購入に限ります。)、製造その他の行為により取得した者(以下「販売者」といいます。)がその同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引(ハにおいて「比較対象取引」といいます。)に係る販売者の売上総利益の額の原価の額の合計額に対する割合を乗じて計算した金額とされています(旧措令39の12⑦)。 ただし、比較対象取引と国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。ニ イからハまでの算定方法に準ずる方法(措法66の 4 ②一ニ)ホ その他の方法イ 利益分割法 利益分割法とは、国外関連取引に係る棚卸資産の法人及びその法人に係る国外関連者による購入、製造その他の行為による取得及び販売(イにおいて「販売等」といいます。)に係る所得が、次に掲げる方法によりこれらの者に帰属するものとして計算した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法とされています(措令39の12⑧一)。ⅰ 比較利益分割法 比較利益分割法とは、国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産の非関連者による販売等(ⅰにおいて「比較対象取引」といいます。)に係る所得の配分に関する割合に応じて法人及びその国外関連者に帰属するものとして計算する方法とされています(旧措令39の12⑧一イ)。 なお、比較対象取引と国外関連取引に係る棚卸資産の法人及びその国外関連者による販売等とが当事者の果たす機能その他において差異がある場合に

は、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。ⅱ 寄与度利益分割法 寄与度利益分割法とは、国外関連取引に係る棚卸資産の法人及びその国外関連者による販売等に係る所得の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算する方法とされています(措令39の12⑧一ロ)。ⅲ 残余利益分割法 残余利益分割法とは、ⅰ及びⅱに掲げる金額につき法人及びその国外関連者ごとに合計した金額がこれらの者に帰属するものとして計算する方法とされています(旧措令39の12⑧一ハ)。ⅰ 国外関連取引に係る棚卸資産の法人及びその国外関連者による販売等に係る所得が、その棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産の非関連者による販売等(ⅰにおいて「比較対象取引」といいます。)に係る割合に基づき法人及びその国外関連者に帰属するものとして計算した金額(注) 「比較対象取引に係る割合」とは、

再販売価格基準法、原価基準法又

は取引単位営業利益法を選定して

独立企業間価格を算定する際に用

いるこれらの方法に係る割合につ

いて必要な調整を加えないものと

した場合のこれらの方法に係る割

合(比較対象取引と国外関連取引

に係る棚卸資産の法人及びその国

外関連者による販売等とが当事者

の果たす機能その他において差異

がある場合には、その差異(国外

関連取引に係る棚卸資産の販売等

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――国際課税関係の改正――

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に関し法人及びその国外関連者に

独自の機能が存在することによる

差異を除きます。)により生ずる

割合の差につき必要な調整を加え

た後の割合)をいいます。

ⅱ 国外関連取引に係る棚卸資産の法人及びその国外関連者による販売等に係る所得の金額とⅰに掲げる金額の合計額との差額(ⅱにおいて「残余利益等」といいます。)が、その残余利益等の発生に寄与した程度を推測するに足りるこれらの者が支出した費用の額、使用した固定資産の価額その他これらの者に係る要因に応じてこれらの者に帰属するものとして計算した金額

ロ 取引単位営業利益法 取引単位営業利益法とは、再販売価格基準法及び原価基準法が比較対象取引に係る売上総利益を基に国外関連取引に係る対価の額を算出する方法であるのに対して、比較対象取引に係る営業利益を基にして国外関連取引に係る対価の額を算出する方法をいい、具体的には次に掲げる方法とされています。ⅰ 国外関連取引に係る棚卸資産の買手が非関連者に対してその棚卸資産を販売した対価の額(ⅰ及びⅲにおいて「再販売価格」といいます。)から、その再販売価格にⅰに掲げる金額のⅱに掲げる金額に対する割合を乗じて計算した金額に国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額を加算した金額を控除した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法(旧措令39の12⑧二)ⅰ 比較対象取引(再販売者が国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引をいいます。ⅰにおいて

同じです。)に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額ⅱ 比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額 なお、比較対象取引と国外関連取引に係る棚卸資産の買手がその棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。ⅱ 国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額(ⅱにおいて「取得原価の額」といいます。)に、ⅰに掲げる金額にⅱに掲げる金額のⅲに掲げる金額に対する割合を乗じて計算した金額及びⅰbに掲げる金額の合計額を加算した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法(旧措令39の12⑧三)ⅰ 次に掲げる金額の合計額a 取得原価の額b 国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額

ⅱ 比較対象取引(販売者が国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引をいいます。ⅱにおいて同じです。)に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額ⅲ 比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額からⅱに掲げる金額を控除した金額 なお、比較対象取引と国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。

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――国際課税関係の改正――

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ⅲ 国外関連取引に係る棚卸資産の再販売価格から、その国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額にⅰに掲げる金額とⅱに掲げる金額との合計額のⅱに掲げる金額に対する割合を乗じて計算した金額を控除した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法(旧措令39の12⑧四)ⅰ 比較対象取引(再販売者が国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引をいいます。ⅲにおいて同じです。)に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額ⅱ 比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額 なお、比較対象取引と国外関連取引に係る棚卸資産の買手がその棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。ⅳ 国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入その他の行為による取得の原価の額に、その国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額にⅰに掲げる金額とⅱに掲げる金額との合計額のⅱに掲げる金額に対する割合を乗じて計算した金額を加算した金額をもって国外関連取引の対価の額とする方法(旧措令39の12⑧五)ⅰ 比較対象取引(国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を、購入(非関連者からの購入に限ります。)その他の行為により取得した者がその同種又は類似の棚卸

資産を非関連者に対して販売した取引をいいます。ⅳにおいて同じです。)に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額ⅱ 比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額 なお、比較対象取引と国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合を用いることとされています。

ハ 上記イ及びロの算定方法に準ずる方法(旧措令39の12⑧六)

② 国外関連取引が棚卸資産の販売又は購入以外の取引である場合 上記①イからホまでの算定方法と同等の方法(措法66の 4 ②二)

⑶ 同時文書化義務 法人が、事業年度において、国外関連者との間で国外関連取引を行った場合には、その国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合におけるその電磁的記録を含みます。⑶において同じです。)を、当該事業年度の確定申告書の提出期限までに作成し、又は取得し、その確定申告書の提出期限の翌日から、 7年間(欠損金額が生じた事業年度に係る書類にあっては、10年間)、納税地又はその法人の国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならないこととされています(措法66の 4 ⑥、旧措規22の10③④)。(注) 法人が当該事業年度の前事業年度等におい

て一の国外関連者との間で行った国外関連取

引が次の①及び②のいずれにも該当する場合

又はその法人が前事業年度等においてその一

の国外関連者との間で行った国外関連取引が

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――国際課税関係の改正――

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ない場合には、その法人が当該事業年度にお

いてその一の国外関連者との間で行った国外

関連取引に係る独立企業間価格を算定するた

めに必要と認められる書類については、当該

事業年度の確定申告書の提出期限までに作成、

取得、保存する義務(以下「同時文書化義務」

といいます。)を免除することとされています

(旧措法66の 4 ⑦、旧措規22の10⑤)。

①� 一の国外関連者との間で行った国外関連

取引につき、その一の国外関連者から支払

を受ける対価の額及びその一の国外関連者

に支払う対価の額の合計額が50億円未満で

あること。

②� 一の国外関連者との間で行った国外関連

取引(特許権、実用新案権等の無形固定資

産その他の無形資産の譲渡若しくは貸付け

又はこれらに類する取引に限ります。)につ

き、その一の国外関連者から支払を受ける

対価の額及びその一の国外関連者に支払う

対価の額の合計額が 3億円未満であること。

 なお、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類とは、次の①及び②に掲げる書類とされています(旧措規22の10②)。① 国外関連取引の内容を記載した書類(旧措規22の10②一)イ 国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容を記載した書類ロ 国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能並びにその国外関連取引においてその法人及びその国外関連者が負担するリスク(為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因によるその国外関連取引に係る利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれをいいます。ロにおいて同じです。)に係る事項(その法人又はその国外関連者の事業再編(合併、分割、事業の譲渡、事業上の重要な資産の譲渡その他の事由による事業の構造の変更をいいます。ロにおいて同じです。)によりその国外関連取引においてその法人若し

くはその国外関連者が果たす機能又はその国外関連取引においてその法人若しくはその国外関連者が負担するリスクに変更があった場合には、その事業再編の内容並びにその機能及びリスクの変更の内容を含みます。)を記載した書類ハ 法人又は国外関連者が国外関連取引において使用した無形固定資産その他の無形資産の内容を記載した書類ニ 国外関連取引に係る契約書又は契約の内容を記載した書類ホ 法人が、国外関連取引において国外関連者から支払を受ける対価の額又はその国外関連者に支払う対価の額の明細、その支払を受ける対価の額又はその支払う対価の額の設定の方法及びその設定に係る交渉の内容を記載した書類並びにその支払を受ける対価の額又はその支払う対価の額に係る独立企業間価格の算定の方法及びその国外関連取引(その国外関連取引と密接に関連する他の取引を含みます。)に関する事項についての我が国以外の国又は地域の権限ある当局による確認がある場合(その法人の納税地を所轄する国税局長又は税務署長による確認がある場合を除きます。)におけるその確認の内容を記載した書類ヘ 法人及び国外関連者の国外関連取引に係る損益の明細並びにその損益の額の計算の過程を記載した書類ト 国外関連取引に係る資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引に係る市場に関する分析(その市場の特性がその国外関連取引に係る対価の額又は損益の額に与える影響に関する分析を含みます。)その他その市場に関する事項を記載した書類チ 法人及び国外関連者の事業の内容、事業の方針及び組織の系統を記載した書類リ 国外関連取引と密接に関連する他の取引の有無及びその取引の内容並びにその取引がその国外関連取引と密接に関連する事情

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――国際課税関係の改正――

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を記載した書類② 独立企業間価格を算定するための書類(旧措規22の10②二)イ 法人が選定した独立企業間価格の算定の方法、その選定に係る重要な前提条件及びその選定の理由を記載した書類その他その法人が独立企業間価格を算定するに当たり作成した書類(ロからホまでに掲げる書類を除きます。)ロ 法人が採用した国外関連取引に係る比較対象取引等の選定に係る事項及びその比較対象取引等の明細(その比較対象取引等の財務情報を含みます。)を記載した書類ハ 法人が利益分割法又はこれに準ずる方法を選定した場合におけるこれらの方法によりその法人及び国外関連者に帰属するものとして計算した金額を算出するための書類(ロ及びホに掲げる書類を除きます。)ニ 法人が複数の国外関連取引を一の取引として独立企業間価格の算定を行った場合のその理由及び各取引の内容を記載した書類ホ 比較対象取引等について差異調整等を行った場合のその理由及びその差異調整等の方法を記載した書類

⑷ 推定による課税① 同時文書化対象国外関連取引に係る推定課税 国税庁、国税局又は税務署の当該職員が、法人に各事業年度における同時文書化対象国外関連取引(上記⑶(注)により同時文書化義務が免除される国外関連取引以外の国外関連取引をいいます。①において同じです。)に係る上記⑶による同時文書化義務が課されている書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合におけるその電磁的記録を含みます。①において同じです。)若しくはその写しの提示若しくは提出を求めた場合においてその提示若しくは提出を求めた日から45日を超えない範囲内

においてその求めた書類若しくはその写しの提示若しくは提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにこれらの提示若しくは提出がなかったとき、又は法人に各事業年度における同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類(注)(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合におけるその電磁的記録を含みます。①において同じです。)若しくはその写しの提示若しくは提出を求めた場合においてその提示若しくは提出を求めた日から60日を超えない範囲内においてその求めた書類若しくはその写しの提示若しくは提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにこれらの提示若しくは提出がなかったときは、税務署長は、次のイ又はロに掲げる方法(ロに掲げる方法はイに掲げる方法を用いることができない場合に限り、用いることができます。)により算定した金額を独立企業間価格と推定して、更正又は決定をすることができることとされています(旧措法66の 4 ⑧、旧措令39の12⑬⑭)。(注) 独立企業間価格を算定するために重要と

認められる書類は、上記⑶①及び②に掲げ

る書類に記載された内容の基礎となる事項

を記載した書類、上記⑶①及び②に掲げる

書類に記載された内容に関連する事項を記

載した書類その他同時文書化対象国外関連

取引に係る独立企業間価格を算定する場合

に重要と認められる書類とされています(旧

措規22の10⑥)

イ 国外関連取引に係る事業と同種の事業を営む法人で事業規模その他の事業の内容が類似するもののその事業に係る売上総利益率若しくはこれに準ずる割合を基礎とした再販売基準法若しくは原価基準法又はこれらと同等の方法ロ 法人及び国外関連者の属する企業集団の財産及び損益の状況を連結して記載した計

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――国際課税関係の改正――

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算書類による国外関連取引に係る事業に係る所得を基礎とした利益分割法又は国外関連取引に係る事業と同種若しくは類似の事業を営む法人で事業規模その他の事業の内容が類似するもののその事業に係る棚卸資産の販売による営業利益の額を基礎とした取引単位営業利益法(準ずる方法を含みます。)若しくはこれと同等の方法

② 同時文書化免除国外関連取引に係る推定課税 国税庁、国税局又は税務署の当該職員が、法人に各事業年度における同時文書化免除国外関連取引(上記⑶(注)により同時文書化義務が免除される国外関連取引をいいます。②において同じです。)に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類(注)(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合におけるその電磁的記録を含みます。②において同じです。)又はその写しの提示又は提出を求めた場合において、その提示又は提出を求めた日から60日を超えない範囲内においてその求めた書類又はその写しの提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにこれらの提示又は提出がなかったときは、税務署長は、上記①イ又はロに掲げる方法(ロに掲げる方法はイに掲げる方法を用いることができない場合に限り、用いることができます。)により算定した金額を独立企業間価格と推定して、更正又は決定をすることができることとされています(旧措法66の 4 ⑨)。(注) 独立企業間価格を算定するために重要と

認められる書類は、上記⑶①及び②に掲げ

る書類に相当する書類、その相当する書類

に記載された内容の基礎となる事項を記載

した書類、その相当する書類に記載された

内容に関連する事項を記載した書類その他

同時文書化免除国外関連取引に係る独立企

業間価格を算定する場合に重要と認められ

る書類とされています(旧措規22の10⑦)。

⑸ 移転価格税制の適用に係る更正の請求期間の特例等① 更正の請求期間の特例 法人がその法人に係る国外関連者との間で行った取引につき移転価格税制の適用があった場合において、その適用に関し更正の請求事由が生じたときにおける更正の請求期間は6年とされています(旧措法66の 4 ⑳)。

② 更正決定等の期間制限の特例 次の更正若しくは決定又は賦課決定については、それぞれ次の期限又は日から 6年間行うことができることとされています(旧措法66の 4 �)。イ 法人がその法人に係る国外関連者との取引を独立企業間価格と異なる対価の額で行った事実に基づいてする法人税に係る更正決定又はその更正決定に伴い課税標準等若しくは税額等に異動を生ずべき法人税に係る更正決定 これらの更正決定に係る法人税の法定申告期限(還付請求申告書(期限後に提出されたものをいいます。)に係る更正については、その還付請求申告書を提出した日)ロ 上記イに規定する事実に基づいてする法人税に係る更正決定若しくは納税申告書(期限内申告書を除きます。②において同じです。)の提出又はその更正決定若しくはその納税申告書の提出に伴い上記イに規定する異動を生ずべき法人税に係る更正決定若しくは納税申告書の提出に伴いこれらの法人税に係る加算税についてする賦課決定 その納税義務の成立の日ハ 上記イに掲げる更正決定に伴い課税標準等又は税額等に異動を生ずべき地方法人税に係る更正決定 その更正決定に係る地方法人税の法定申告期限(還付請求申告書(期限後に提出されたものをいいます。)に係る更正である場合には、その還付請求申

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――国際課税関係の改正――

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告書を提出した日)ニ 上記イに掲げる更正決定又は上記イに規定する事実に基づいてする法人税に係る納税申告書の提出若しくは上記イに規定する異動を生ずべき法人税に係る納税申告書の提出に伴い課税標準等又は税額等に異動を生ずべき地方法人税に係る更正決定又は納税申告書の提出に伴いその地方法人税に係る加算税についてする賦課決定 その納税義務の成立の日

③ 国税の徴収権の消滅時効の特例 法人がその法人に係る国外関連者との取引を独立企業間価格と異なる対価で行ったことに伴い納付すべき税額が過少となり、又は還付金の額が過大となった法人税及び地方法人税に係る国税(加算税も含まれます。)の徴収権の時効は、その法人税及び地方法人税の法定納期限から最長 1年は進行しないものとされています。したがって、国税の徴収権は、実質的に 6年間行使できることとされています(旧措法66の 4 �)。

㈡ 改正の内容

1 改正の背景等

 平成24年(2012年)以降、G20/ OECD によって進められてきた「税源浸食と利益移転(Base�Erosion�and�Profit�Shifting : BEPS)プロジェクト」は、国際的な租税回避等に対応し公平な競争条件をグローバルに整えるため、多国間協調による国際課税ルールの再構築を目指して15の行動計画を策定し、各行動計画に基づく勧告を盛り込んだ最終報告書を平成27年(2015年)10月に公表しました。BEPS プロジェクトでは、移転価格税制についても広範な議論が行われましたが、このうち行動 8は、無形資産等を不十分な対価で移転すること等により、多国籍企業が所得とそれを生み出す経済活動を切り離し、所得を軽課税環境に移転させることが可能となっているとの問題意識の

下、関連者間の無形資産の移転により生じるBEPS を防止するための移転価格ルールを策定することを行動計画として掲げました。具体的には、広範かつ明確に線引きされた無形資産の定義を採用することや、評価困難な無形資産(Hard­to­value�intangibles : HTVI)の移転に関する移転価格ルール又は特別措置を策定すること等が掲げられました。この取組の結果は、後述の「評価困難な無形資産アプローチ」(HTVI アプローチ)の採用を含め、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8 -10「移転価格税制と価値創造の一致(Aligning�Transfer� Pricing�Outcomes�with�Value�Creation)」)として取りまとめられました。また、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8-10)の内容は平成28年(2016年) 5 月の OECD理事会の承認によりOECD移転価格ガイドラインに取り込まれました(改訂版移転価格ガイドラインは、平成29年(2017年) 7月に公表されました。)。 なお、HTVI アプローチについては、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8 -10)において、HTVI アプローチの適用に関する税務当局向けガイダンスを策定することが要求されていたことから、OECD 租税委員会は関連作業を継続し、平成29年 5 月のパブリック・コンサルテーションの実施等を経て、平成30年(2018年) 6 月にHTVIガイダンス(Guidance�for�Tax�Administrations�on� the� Application� of� the� Hard­To­Value�Intangibles�Approach)を公表しました。このHTVI ガイダンスについても、OECD 移転価格ガイドライン第 6章の付属文書として位置付けられました。 こうした背景の下、今回の改正においては、国際スタンダードとの整合性を確保し、海外への所得移転リスクに対してより効果的に対応する観点から、BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8-10)の勧告内容及びそれらを反映したOECD移転価格ガイドラインの規定等を踏まえ、以下のとおり移転価格税制の見直しが行われました。

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――国際課税関係の改正――

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2  価格算定方法の整備(DCF法の追加)

⑴ OECD移転価格ガイドラインの概要 従前の2010年 OECD 移転価格ガイドラインでは、無形資産の価値を評価する場合には困難を伴うことが多いことから、無形資産取引には特に注意が必要であるとの認識が示されていました(2010年移転価格ガイドライン・パラグラフ6.1)。そのうえで、取引時の無形資産の価値を評価することが困難な場合における一つの解決策として、予測収益を基に取引時における無形資産の価値を評価することによって独立企業間価格を算定することができる可能性の存在が認められていました。すなわち、無形資産の評価テクニックの一つであるディスカウント・キャッシュ・フロー法(以下「DCF 法」といいます。)を価格算定方法(独立企業間価格を算定するための方法をいいます。以下同じです。)の一つとして用いる可能性について容認されていたといえます(2010年移転価格ガイドライン・パラグラフ6.29)。 BEPS プロジェクトの最終報告書(行動8 -10)による改訂後のOECD移転価格ガイドラインでは、特に評価テクニックを価格算定方法として用いる場合の適切な利用を目的として無形資産の評価テクニックに関するガイダンスがさらに拡充されました。 具体的には、評価テクニックの使用に際し重要となる要素(財務予測、成長率、割引率、無形資産の耐用年数等)について詳細な説明が追加されました。また、評価テクニックについてはその有用性が認められる場合がある反面、これを支える上記の要素におけるわずかな違いが最終的な評価額に大きな影響を及ぼし得る点に留意が必要であることも説明されています(移転価格ガイドライン・パラグラフ6.158~6.180)。

⑵ 改正の内容① 概要 上述のとおりOECD移転価格ガイドライ

ンでは従前から価格算定方法としてDCF法が容認されてきたものと考えられますが、我が国の移転価格税制においてはその取扱いが不明確な状態にありました。そこで、今回の改正において、OECD 移転価格ガイドラインの内容に沿ったDCF法を我が国の移転価格税制における価格算定方法の一つとして追加することとされました。改正後は、既存の価格算定方法にDCF法を加えたところで、その国外関連取引に対する最適な価格算定方法を選定することになります。 なお、OECD 移転価格ガイドラインでは、信頼できる比較対象取引が選定できないなど一定の場合においてDCF法は有用であるとされています。他方、DCF 法の適用については、独立企業間価格の算定の基礎となる事項(予測期間、予測利益、割引率等)が予測に基づいて算出されることから、不確実な要素が内在していることも事実です。このことから、国外関連取引に対する最適な価格算定方法を選定する場合において、DCF 法以外の価格算定方法を用いて適切に独立企業間価格の算定を行うことができるときは、DCF法以外の価格算定方法が最適な価格算定方法に該当する可能性が高いものと考えられます。 また、上述のように一定の無形資産取引に対してDCF法は有用であることがOECD移転価格ガイドラインで明らかにされているものの、必ずしも無形資産取引にその適用が限定されているわけではありません。そのため、我が国の移転価格税制においても、DCF 法を用いた独立企業間価格の算定は、無形資産取引に限定されていません。例えば、事業再編における独立企業間価格の算定の場面では、無形資産取引と同様に比較対象取引の選定が困難を伴うケースが想定されます。このような場合には、再編の対象となった事業に係る予測利益を事業再編時の現在価値に割り引く方法が最適な価格算定方法に該当し得るとも考えられます。

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② 具体的な計算方法 DCF 法は「国外関連取引に係る棚卸資産の販売又は購入の時に当該棚卸資産の使用その他の行為による利益(これに準ずるものを含みます。)が生ずることが予測される期間内の日を含む各事業年度の当該利益の額として当該販売又は購入の時に予測される金額を合理的と認められる割引率を用いて当該棚卸資産の販売又は購入の時の現在価値として割り引いた金額の合計額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法」とされています(措令39の12⑧六)。 評価テクニックを用いた一般的な実務において資産の割引現在価値を算出する場合には、各事案に応じた様々な調整が行われることが多いといわれています。これを踏まえ、法令上では、DCF 法を用いて独立企業間価格の算定を行う場合に欠くことのできない計算要素(予測期間、予測利益、割引率)のみを定めることとしました。したがって、法令上定められたこれらの計算要素以外の要素(例えば、国外関連取引に係る資産の貢献により予測期間を超えて利益が継続発生する場合のその資産の最終価値)について各取引に応じた適切な調整が行われる場合には、それを無条件に許容しないものではありません。 なお、DCF 法は棚卸資産取引をベースに法令上規定されています。これは現行の価格算定方法が全て棚卸資産取引をベースに規定されているためです。したがって、国外関連取引が比較対象取引の選定が困難な無形資産

取引である場合は、無形資産取引は一般的に棚卸資産取引以外の取引に該当するケースが多いと考えられるため、最適な価格算定方法を検討する際には主に「DCF 法と同等の方法」又は「DCF 法に準ずる方法と同等の方法」が用いられることが想定されるところです。イ 予測利益 無形資産の使用等による利益は、基本的には対象法人又は国外関連者のいずれかあるいはその双方において生ずることが想定されますが、これら以外の者においても生ずることが想定されます。例えば、国外関連者との間で譲渡された無形資産が第三者に対して譲渡することが予定されている場合には、その無形資産の譲渡を受けた第三者によるその無形資産の使用等により生ずることが予測される利益についても国外関連取引の対価を検討する場合には勘案する必要があると考えられます。そのため、予測利益の帰属については法令上言及することとはしていません。ロ 割引率 DCF 法を用いて独立企業間価格の算定を行う場合において適切と認められる割引率は一定の計算式によって導かれるのではなく、各取引の事情に応じて様々な調整が行われることが想定されます。そのため、法令上は合理的な割引率とのみ規定され、具体的な計算方法は定められていません。

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――国際課税関係の改正――

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DCF法の適用(イメージ)

法人(研究・開発)

国外関連者(製造・販売)

無形資産取引

予測値予測期間

X1年 X2年 X3年 ・・・・・ Xn 年無形資産の使用等による予測売上 100 80 60 ××

無形資産の使用等による予測費用 50 40 30 △△

無形資産の使用等による予測利益 50 40 30 ○○

独立企業間価格

= 予測利益の割引現在価値の合計額

= + + + ・・・ +(1+r1) (1+r1)(1+r2) (1+r1)(1+r2)(1+r3) (1+r1)(1+r2)・・・(1+rn)

50 40 30 ○○

rn=割引率:無形資産を使用する事業に係るリスク、期待利回り等を勘案して決定される利率など

予測値を用いて算定

比較対象取引なし

3  特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の創設

⑴ BEPSプロジェクトの最終報告書における評価困難な無形資産アプローチの概要 BEPS プロジェクトの最終報告書(行動8 -10)による改訂後のOECD移転価格ガイドラインでは、移転価格税制の対象となる無形資産のうち一定の要件(移転価格ガイドライン・パラグラフ6.189)を満たすものを評価困難な無形資産として位置付けたうえで、その評価困難な無形資産に係る移転価格の適切性を税務当局が検証しようとする場合には、納税者は当該取引に関する広範な知識・情報を有しているのに対し、税務当局は納税者が提供する情報等に依存せざるを得ないという納税者と税務当局との間の情報の非対称性という問題の存在を指摘しています。そして、この情報の非対称性を基因とした移転価格リスクに対する懸念が示されています(移転価格ガイドライン・パラグラフ6.186)。 この問題への対応策として、OECD 移転価格ガイドラインでは、評価困難な無形資産に係る移転価格の算定に用いた事前の予測と事後の結果に相違があり、それが予見不能な事象等によるものではない場合には、その相違は当初の

移転価格が適切に算定されていなかったという推定証拠として税務当局が事後の結果及び取引時に納税者が知り得た又は知るべきであった関連情報等を勘案して当初の移転価格を評価することを認める「評価困難な無形資産アプローチ」(HTVI アプローチ)の導入を勧告しています(移転価格ガイドライン・パラグラフ6.187、HTVI ガイダンス・パラグラフ 6~ 8)。 なお、取引時点における実際の収益等の発生の可能性について考慮することなく、実際の収益等を基礎として移転価格の算定を行うことは不適切であることも明らかにされています(HTVI ガイダンス・パラグラフ 6)。 我が国においても BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8 -10)において指摘された情報の非対称性の問題に対応するため、今回の改正において、当該報告書で勧告された内容に沿って、HTVI アプローチに相当する制度を移転価格税制における一つの仕組み(当局の処分権限)として導入することとしました。

⑵ 制度の概要 法人が行った特定無形資産国外関連取引について、当該特定無形資産国外関連取引の対価の額を算定するための前提となった事項(当該特定無形資産国外関連取引を行った時に当該法人

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が予測したものに限ります。)についてその内容と相違する事実が判明した場合には、税務署長はその相違する事実及びその相違することとなった事由(以下「相違事由」といいます。)の発生の可能性を勘案して算出した金額を独立企業間価格とみなして、法人の所得の金額又は欠損金額につき更正又は決定をすることができることとされました(措法66の 4 ⑧本文)。 具体的には、全ての価格算定方法のうち、当該特定無形資産国外関連取引の内容及び当該特定無形資産国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情(その相違する事実及び相違事由の発生の可能性を含みます。)を勘案して、当該特定無形資産国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合に当該特定無形資産国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正又は決定を行うことになります。(注 1) 上述のとおり、特定無形資産国外関連取

引の対価の額を算定するための前提となっ

た事項は当該特定無形資産国外関連取引を

行った時に法人が予測したものに限られま

すが、法人が当該特定無形資産国外関連取

引の対価の額を算定するために実際に用い

た予測に限定されるわけではありません。

 例えば、法人が特定無形資産国外関連取

引を行った時に「この無形資産はユニーク

な価値を有するものではないだろう」と判

断し、予測を用いない他の価格算定方法を

選定した場合におけるその判断も当該特定

無形資産国外関連取引の対価の額を算定す

るための前提となった事項に該当します。

したがって、当該特定無形資産国外関連取

引に係る特定無形資産について事後に多額

の利益が生じることとなった場合には、特

定無形資産国外関連取引の対価の額を算定

するための前提となった事項の内容が相違

することになります。(注 2) 法人がDCF法以外の価格算定方法を用い

て取引価格を算定していた場合において税

務当局が通常のDCF法を用いて更正処分を

行うときは、税務当局は、法人が取引時に

おいて用いるべきであった予測の内容を立

証し、それに基づき独立企業間価格を算定

する必要があります。すなわち、国外関連

取引が行われた後の事後の結果を用いて更

正処分を行うことはできません。他方、本

価格調整措置により更正処分を行う場合は、

国外関連取引時における価格算定の前提と

なった事項についてその内容と相違する事

実(事後の結果)及びその相違事由の発生

の可能性を勘案して独立企業間価格を算定

することができることに違いが生じること

になります。

① 特定無形資産の定義 移転価格税制の対象となる無形資産取引は様々なものが存在しますが、上述のとおりBEPS プロジェクトの最終報告書(行動8 -10)では HTVI アプローチの対象となる無形資産を「評価困難な無形資産」に限定することとされています。我が国においても、本価格調整措置は税務当局が事後の結果等を勘案して取引価格の適切性を評価する制度であることから、その対象となる無形資産を「特定無形資産」として位置付け、同様にその範囲を限定することとしました。具体的には、次の要件の全てを満たす無形資産をいいます(措令39の12⑭)。イ 固有の特性を有し、かつ、高い付加価値を創出するために使用されるものであること(要件 1)ロ 無形資産に係る予測利益の額(国外関連取引を行った時に無形資産の使用その他の行為による利益(これに準ずるものを含みます。)が生ずることが予測される期間内の日を含む各事業年度の当該利益の額として当該無形資産に係る国外関連取引を行った時に予測される金額をいいます。ロ及びハにおいて同じです。)を基礎としてその

─�595�─

――国際課税関係の改正――

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独立企業間価格を算定するものであること(要件 2)(注) 本価格調整措置は、予測利益の額を用

いた独立企業間価格の算定に対するバッ

クストップとしての役割を有しているた

め、本要件が設けられています。なお、

法人が独立企業間価格の算定に予測利益

の額を用いていない場合であっても、予

測利益の額を用いる方法が最適な価格算

定方法であると認められるときは、この

要件を満たすことになります。

ハ 無形資産に係る予測利益の額その他の独立企業間価格を算定するための前提となる事項(当該無形資産に係る国外関連取引を行った時に予測されるものに限ります。)の内容が著しく不確実な要素を有していると認められるものであること(要件 3)(注) 例えば、類似する無形資産の把握が困

難であることから価格算定の参考とする

開発・使用実績がない場合や、無形資産

の譲渡時においてその無形資産が開発途

中であった場合には、この要件を満たす

ものと考えられます。

② 特定無形資産国外関連取引の定義 特定無形資産国外関連取引とは、国外関連取引のうち、特定無形資産の譲渡若しくは貸付け(特定無形資産に係る権利の設定その他他の者に特定無形資産を使用させる一切の行為を含みます。)又はこれらに類似する取引をいいます(措法66の 4 ⑧本文、措令39の12⑭)。③ 相違事由の発生の可能性 上述のとおり BEPS プロジェクトの最終報告書(行動 8 -10)では、税務当局がHTVI アプローチを用いる場合には、取引時点で実際の収益等が獲得される可能性を考慮することが必要であることが明らかにされています。すなわち、実際に生じた収益等のみを基礎として取引価格を算定することは許容

されていません。 我が国の制度もこれに沿ったものとするため、本価格調整措置により取引価格を算定する場合には、相違事由の発生の可能性(次の要件を満たすものに限ります。)を勘案することが必要とされています(措法66の 4 ⑧本文、措令39の12⑮)。イ 特定無形資産国外関連取引を行った時における客観的な事実に基づいて計算されたものであること。ロ 通常用いられる方法により計算されたものであること。

④ 発動基準 本価格調整措置を適用したならば独立企業間価格とみなされる金額と当初の取引価格との乖離が一定の範囲内に収まっている場合、本価格調整措置により防止する必要があると認められる移転価格リスクは低いものとして本価格調整措置は適用しないこととされています。具体的には、次に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ次に定める場合に該当するときは、本価格調整措置は適用されません(措法66の 4 ⑧ただし書、措令39の12⑯)。イ 特定無形資産国外関連取引の対価の額の支払を受ける法人 本価格調整措置を適用したならば独立企業間価格とみなされる金額が当該特定無形資産国外関連取引の対価の額に120%を乗じて計算した金額を超えない場合ロ 特定無形資産国外関連取引の対価の額を支払う法人 本価格調整措置を適用したならば独立企業間価格とみなされる金額が当該特定無形資産国外関連取引の対価の額に80% を乗じて計算した金額を下回らない場合

(注) 適用免除基準(下記⑶を参照)とは異な

り、この発動基準を満たさないことを証明

する義務を納税者が法令上負うわけではあ

りません。

─�596�─

――国際課税関係の改正――

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⑶ 適用免除基準 法人が、①又は②の要件を満たす場合には、本価格調整措置は適用されません。これらの適用免除を受けるためには、法人が特定無形資産国外関連取引を行った事業年度の確定申告書に、当該特定無形資産国外関連取引に係る所定の事項を記載した法人税申告書別表17⑷を添付していることが必要です(措法66の 4 ⑨⑩)。 なお、国税庁、国税局又は税務署の当該職員が、①又は②の要件を満たすことを明らかにする書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含みます。⑶において同じ。)又はその写しの提示又は提出を求めた場合において、その提示又は提出を求めた日から60日(その求めた書類又はその写しが同時文書化義務の対象となる書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含みます。)又はその写しに該当する場合には、その提示又は提出を求めた日から45日)を超えない範囲内においてその求めた書類又はその写しの提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにこれらの提示又は提出がない場合には、これらの適用免除の適用はないことに留意が必要です(措法66の 4 ⑪)。(注) HTVIガイダンスでは、税務当局は可能な限

り早期に評価困難な無形資産取引を特定し、

対応する必要があるとされています(HTVIガ

イダンス・パラグラフ10)。他国に比べて更正

等の期間制限が短い我が国で適正な移転価格

税制の執行を確保するためには、税務当局が

特定無形資産国外関連取引が行われた事実を

早期に把握することが特に重要です。

 そのための仕組みとして、適用免除を受け

るために、国外関連取引が行われた事業年度

の確定申告書に添付されている法人税申告書

別表17⑷に当該国外関連取引に関する事項の

記載があることが要件として設けられていま

す。

① 文書化要件 法人が特定無形資産国外関連取引に係る次に掲げる事項の全てを記載した書類(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含みます。)を作成し、又は取得していること(措法66の 4⑨)。イ 特定無形資産国外関連取引を行った時に法人が予測した次に掲げる事項(措法66の4 ⑨一、措規22の10⑩)。イ 予測利益の額(当該特定無形資産国外関連取引を行った時に特定無形資産の使用その他の行為による利益(これに準ずるものを含みます。)が生ずることが予測される期間内の日を含む各事業年度の当該利益の額として当該特定無形資産国外関連取引を行った時に予測される金額)及びその計算の基礎となった事項(ロを除きます。)ロ 当該特定無形資産国外関連取引に係るリスク(為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因による当該特定無形資産国外関連取引に係る利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれをいいます。)に係る事項ハ イ及びロに掲げるもののほか、当該特定無形資産国外関連取引の対価の額を算定するための前提となった事項

(注) これらの書類は、法人が取引価格を設

定した際に作成した資料等を念頭におい

ており、事後に新たな作成を求めるなど

法人に過重な負担を強いるものではあり

ません。

ロ 特定無形資産国外関連取引の対価の額を算定するための前提となった事項についてその内容と相違する事実が判明した場合におけるその相違事由に関する次に掲げる事項(措法66の 4 ⑨二、措令39の12⑰)イ 相違事由が災害その他これに類するものであるために当該特定無形資産国外関

─�597�─

――国際課税関係の改正――

Page 36: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

連取引を行った時に法人がその発生を予測することが困難であったこと。ロ 相違事由の発生の可能性(次に掲げる要件を満たすものに限ります。)を勘案して法人が当該特定無形資産国外関連取引の対価の額を算定していたこと。ⅰ 特定無形資産国外関連取引を行った時における客観的な事実に基づいて計算されたものであること。ⅱ 通常用いられる方法により計算されたものであること。

② 収益乖離要件 次に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ次に掲げる場合に該当すること(措法66の 4 ⑩、措令39の12⑱)。イ 法人が特定無形資産国外関連取引の対価の額の支払を受ける場合 当該特定無形資産国外関連取引に係る判定期間に当該特定無形資産国外関連取引に係る特定無形資産の使用その他の行為により生じた利益の額が当該特定無形資産国外関連取引を行った時において当該判定期間に当該特定無形資産の使用その他の行為により生ずることが予測された利益の額に120%を乗じて計算した金額を超えない場合ロ 法人が特定無形資産国外関連取引の対価の額を支払う場合 当該特定無形資産国外関連取引に係る判定期間に当該特定無形資産国外関連取引に係る特定無形資産の使用その他の行為により生じた利益の額が当該特定無形資産国外関連取引を行った時において当該判定期間に当該特定無形資産の使用その他の行為により生ずることが予測された利益の額に80% を乗じて計算した金額を下回らない場合(注 1) 収益乖離要件の対象となる特定無形

資産国外関連取引は、その対価の額に

つき、その特定無形資産国外関連取引

を行った時に当該特定無形資産国外関

連取引に係る特定無形資産の使用その

他の行為による利益(これに準ずるも

のを含みます。)が生ずることが予測さ

れた期間内の日を含む各事業年度の当

該利益の額として当該特定無形資産国

外関連取引を行った時に予測された金

額を基礎として算定しているものに限

られています。これは、イ又はロの要

件を満たす場合には国外関連取引時に

おいて法人が算出した予測利益が一定

の信頼性を有すると認められることに

着眼して、法人が本価格調整措置の適

用リスクに長期間さらされることのな

いよう、判定期間を経過する日後にお

いては本価格調整措置を不適用とする

ために収益乖離要件が設けられている

ためです。(注 2) 上記の「判定期間」とは、法人と特

殊の関係にない者又は当該法人との間

で当該特定無形資産国外関連取引を行

った国外関連者と特殊の関係にない者

から受ける特定無形資産の使用その他

の行為による収入が最初に生じた日

(その日が当該特定無形資産国外関連取

引が行われた日前である場合には、当

該特定無形資産国外関連取引が行われ

た日)を含む事業年度(当該最初に生

じた日を含む事業年度が連結事業年度

に該当する場合には、当該連結事業年

度)開始の日から 5 年を経過する日ま

での期間をいいます。(注 3) 収益乖離要件を満たす場合には、本

価格調整措置は判定期間を経過する日

後から適用されないこととされます。

─�598�─

――国際課税関係の改正――

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適用免除基準(収益乖離要件)のイメージ

法人(研究開発)【譲渡人】

国外関連者(製造販売)【譲受人】

特許等 特許等

非関連者【消費者】

製造製品特許等

対価

X1年(譲渡年) X2年 X3 年 X4 年 X5 年 X6 年 X7 年

予測利益 0 100 300 350 350 350 350

実際利益 0 200 300 400 400 400 400

実際利益計 ≦ 予測利益計 × 120% を満たす場合は適用免除

1,700 ≦ 1,450 × 120% 適用免除

判定期間( 5年)

≪予測利益と実際利益≫

≪適用免除の判定(対価の額の支払を受ける場合の例)≫

4  移転価格税制における無形資産の定義

 BEPS プロジェクトの最終報告書(行動8 -10)によりOECD移転価格ガイドラインにおける移転価格税制上の無形資産の定義について改訂が行われました。また、我が国の移転価格税制に特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置を導入することに伴い、その対象範囲を明確にするために法令において移転価格税制上の無形資産を定義する必要が生じました。そのため、今回の改正において、OECD 移転価格ガイドラインに沿った移転価格税制上の無形資産の定義を我が国の法令に規定することとされました。 具体的には次の全ての要件を満たす資産をいいます(措法66の 4 ⑦二、措令39の12⑬、措規22の10⑨)。① 特許権、実用新案権その他の資産で、次に掲げる資産以外の資産であること。イ 有形資産(ロに掲げるものを除きます。)ロ 金融資産(次に掲げるもの)・ 現金・ 預貯金、売掛金、貸付金その他の金銭

債権・ 有価証券・ 法人税法第61条の 5第 1項に規定するデリバティブ取引に係る権利・ 上記の資産に類するもの

② 上記①の要件を満たす資産の譲渡若しくは貸付け(資産に係る権利の設定その他他の者に資産を使用させる一切の行為を含みます。)又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額が支払われるべきものであること。

5  移転価格税制に係る更正期間制限の特例等

 今回の改正によってDCF法が価格算定方法の一つとして位置付けられました(上記 2参照)が、DCF法を用いて独立企業間価格の算定を行う場合には、移転価格税制における更正決定等の期間制限を超えた予測期間にわたる予測利益に基づき独立企業間価格を算定するケースも想定されます。このような場合には、取引時点で設定した予測利

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――国際課税関係の改正――

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益等の予測に基づく評価指標の不確実性が高まります。そのため、その予測が適切であるかどうか検証を行うためには、理論的には、当該予測期間にわたって事後の結果を分析・検討する必要があるといえます。 また、近年、国外関連取引の複雑化や国外関連者が果たす機能の高度化に伴い移転価格調査の更なる困難化が見受けられるところです。このような状況も踏まえ、我が国の他の制度における更正決定等の期間制限の特例等を参考に、移転価格税制における更正決定等の期間制限を 7 年(改正前: 6年)に延長するとともに、移転価格税制の適用に係る更正の請求期間及び国税の徴収権の消滅時効についても 7年(改正前: 6年)へと延長することとされました(措法66の 4 ㉖~㉘)。

6  差異調整方法の見直し

⑴ 概要 国外関連取引と比較対象取引に差異(以下「調整対象差異」といいます。)がある場合には、その調整対象差異により生ずる利益率等の割合の差について必要な調整を加えることとされています。改正前の制度では、仮にこの必要な調整を加えることができない場合には比較対象取引として独立企業間価格の算定に用いることができませんでした。 今回の改正では、その割合の差について必要な調整を加えることができない場合であっても、その割合の差を定量的に把握することが困難な差異が、その差異以外の調整対象差異につき必要な調整を加えるものとした場合に計算される割合(以下「調整済割合」といいます。)に及ぼす影響が軽微と認められるときには、統計的手法(いわゆる四分位法)を用いた差異調整により算出した割合に基づいて独立企業間価格を算定することができることとされました(措令

39の12⑥~⑧、措規22の10②~⑤)。 これにより、納税者及び税務当局の差異調整に対する負担が緩和され、移転価格税制全体に対する法的安定性が向上することが期待されます。

⑵ 統計的手法 統計的手法を用いた差異調整により算出した割合とは、 4以上の比較対象取引に係る調整済割合につき最も小さいものから順次その順位を付し、その順位を付した調整済割合の個数の25%に相当する順位の割合から当該順位を付した調整済割合の個数の75%に相当する順位の割合までの間にある当該 4以上の比較対象取引に係る調整済割合の中央値をいいます。(注 1) 我が国の移転価格税制は、独立企業間価

格がポイントとして算定される仕組みを有

しています。今回の改正において導入され

た統計的手法を用いた差異調整により利益

率等の割合を算出し、その割合を用いて独

立企業間価格を算定する場合であっても、

法令上はポイントとして独立企業間価格が

算定されることに変わりはありません。また、

統計的手法を用いた差異調整を行う場合で

あっても、選定される比較対象取引は上記

⑴のとおり厳格な要件を満たす必要があり

ます。そのため、結果として算出された統

計的手法に係る四分位幅(25/100に相当す

る順位の割合から75/100に相当する順位の

割合までの幅)は一定の信頼性が存在する

ものと認められます。(注 2) 調整対象差異につき必要な調整を加える

ことができる場合は、従前どおりその比較

対象取引に係る利益率等の割合を独立企業

間価格の算定に用いることとされています。

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――国際課税関係の改正――

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7  推定課税制度の見直し

① DCF法の追加に伴う対応 価格算定方法にDCF法が追加されたことに伴い、推定課税における独立企業間価格の算定方法においても、DCF 法に対応する方法が追加されました(措令39の12⑳六)。イ DCF法に対応する方法 DCF 法に対応する方法とは「国外関連取引に係る棚卸資産の販売又は購入の時に国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署若しくは所轄国税局の当該職員が知り得る状態にあつた情報に基づき、当該棚卸資産の販売又は購入の時に当該棚卸資産の使用その他の行為による利益(これに準ずるものを含みます。)が生ずることが予測される期間内の日を含む各事業年度の当該利益の額として当該販売又は購入の時に予測される金額を合理的と認められる割引率を用いて当該棚卸資産の販売又は購入の時の現在価値として割り引いた金額の合計額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法」とされました。 推定課税の適用が検討される場面では、独立企業間価格の算定に必要な資料等の提供について法人の協力を得ることができな

い状態であることから、通常の価格算定方法を用いた場合に求められる比較可能性の水準を満たした比較対象取引の選定を税務当局に求めたのでは適正公平な執行を担保することが困難となります。そのため、推定課税における独立企業間価格の算定方法においては、比較可能性の水準が一部引き下げられるなど、通常の価格算定方法に比べてその内容が緩和されています。 今回新たに措置されたDCF法に対応する方法においても、同様に通常のDCF法において求められる計算方法に比べてその内容が緩和されています。具体的には取引時に税務当局が知り得る状態にあった情報のみを用いて独立企業間価格の算定を行うことが認められています。したがって、例えば、取引時に法人や国外関連者のみが知り得た情報は、その価格算定に用いる必要はありません。ロ 適用順序 DCF 法に対応する方法が追加されたことに伴い、推定課税における独立企業間価格の算定方法は、次の順序によることとされました。なお、第二順位の方法は第一順位の方法を用いることができない場合に限り、第三順位の方法は第一順位及び第二順

統計的手法(いわゆる四分位法)を用いた差異調整方法(イメージ)

定量化できない差異が残る比較対象取引A(※)の調整済割合 ○

数値の幅

数値の幅

独立企業間価格の算定に使用

中央値

(※)定量的に把握することが困難な差異が調整済割合に及ぼす影響が軽微であると認められるものに限る。

定量化できない差異が残る比較対象取引B(※)の調整済割合

定量化できない差異が残る比較対象取引C(※)の調整済割合

定量化できない差異が残る比較対象取引D(※)の調整済割合

四以上の比較対象取引の選定 四分位法の適用 信頼性のある利益率等の算定

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――国際課税関係の改正――

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位の方法を用いることができない場合に限り、用いることができます(措令39の12⑳柱書)。《第一順位》・ 再販売価格基準法に対応する方法又はこれに準ずる方法(これらの方法と同等の方法を含みます。)・ 原価基準法に対応する方法又はこれに準ずる方法(これらの方法と同等の方法を含みます。)

《第二順位》・ 利益分割法に対応する方法・ 取引単位営業利益法に対応する方法又はこれに準ずる方法(これらの方法と同等の方法を含みます。)

《第三順位》・ DCF 法に対応する方法又はこれに準ずる方法(これらの方法と同等の方法を含みます。)

② 特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の創設に伴う対応 特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の創設に伴い、推定課税規定は、通常の価格算定方法による独立企業間価格の算定及び本価格調整措置による独立企業間価格の算定に必要な価格算定文書(同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類及び当該独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類並びに同時文書化免除国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類をいいます。以下同じです。)の提出がない場合に、適用することができることとされました(措法66の 4 ⑫本文・⑭本文、措規22の10⑪⑫)。ただし、本価格調整措置の適用がある場合又は本価格調整措置に係る適用免除基準(文書化要件)を満たす場合には、推定課税規定の適用はないこととされ(措法66の 4 ⑫ただし書・⑭ただし書)、本価格調整措置に係る適用免除基準(収益乖

離要件)を満たす場合には、収益乖離要件における判定期間を経過する日後から推定課税規定の適用はないこととされています(措法66の 4 ⑬⑮)。

8  価格算定文書の同時文書化制度

 価格算定方法にDCF法が追加されたことに伴い、価格算定文書の同時文書化制度(確定申告書の提出期限までに同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)の作成等を義務付け)について、次の改正が行われました。① 法人が国外関連取引に係る最適な価格算定方法としてDCF法を選定した場合には、当該国外関連取引を行った時の現在価値として割り引いた金額の合計額を算出することになります。そこで、この金額を算出するための書類について、同時文書化制度の対象とすることとされました(措規22の10⑥二ニ)。② 法人がDCF法を選定しない場合であっても、独立企業間価格の算定に予測を用いる場合も想定されます。そのような予測の内容や予測の方法等を記載した書類についても、同時文書化制度の対象とすることとされました(措規22の10⑥二ホ)。

9  関連制度の見直し

 連結納税制度における移転価格税制(措法68の88)、外国法人等の内部取引に係る課税の特例(措法40の 3 の 3 、66の 4 の 3 )及び内国法人等の国外所得金額の計算の特例(措法41の19の 5 、67の18、68の107の 2 )について、上記 2から 8までと同様の改正が行われました。 なお、次に掲げるとおり、各制度の内容に応じた取扱いが定められています。

⑴ 連結納税制度における移転価格税制 連結納税制度における特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の適用免除基準を満たすためには、当該特定無形資産国外関連取引を

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――国際課税関係の改正――

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行った時の連結確定申告書及び個別帰属額の届出に、当該特定無形資産国外関連取引に係る所定の事項を記載した法人税申告書別表17⑷を添付していることが必要とされています(措法68の88⑨)。

⑵ 非居住者の内部取引に係る課税の特例及び居住者の国外所得金額の計算の特例 これらの制度では、内部取引が行われた場合の当該内部取引に係る事項に関する確定申告書への書類添付義務が課されていません。そのため、確定申告書に特定の書類を添付せずとも、特定無形資産内部取引に係る価格調整措置の適用免除の対象となります。

⑶ 内国法人の国外所得金額の計算の特例及び連結法人の連結国外所得金額の計算の特例 これらの制度では、内部取引が行われた場合の当該内部取引に係る事項に関する確定申告書への書類添付義務が課されていません。そのため、確定申告書に特定の書類を添付せずとも、

特定無形資産内部取引に係る価格調整措置の適用免除の対象となります。

㈢ 適用関係

1  上記㈡ 2及び 4から 8までの改正は、法人の令和 2年 4月 1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度分の法人税については、従前どおりとされています(改正法附則56①)。2 上記㈡ 3の改正は、法人の令和 2年 4月 1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用することとされています(改正法附則56②)。3 上記㈡ 9の改正は、令和 2年 4月 1日以後に開始する事業年度分の法人税若しくは連結事業年度分の法人税又は令和 3年分以後の所得税について適用し、同日前に開始した事業年度分の法人税若しくは連結事業年度分の法人税又は令和 2年分以前の所得税については、従前どおりとされています(改正法附則42、45、56③、61、73、77)。

三 外国関係会社に係る所得等の課税の特例の改正

Ⅰ� 内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正

㈠ 改正前の制度の概要

 外国子会社合算税制は、外国子会社等を利用した租税回避を抑制するため、一定の要件に該当する外国子会社等の所得に相当する金額について、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。 外国関係会社(注 1)がペーパー・カンパニー等である場合(特定外国関係会社)又は経済活動基準(注 2)のいずれかを満たさない場合(対象外国関係会社)には、その外国関係会社の所得に相当する金額について、内国法人等の所得とみなして、課税することとされています(会社単位の

合算課税)。(注 1) 上記の「外国関係会社」とは、居住者・内

国法人等が直接又は間接に50%を超える持分

を有する外国法人又は居住者・内国法人が外

国法人の残余財産のおおむね全部について分

配を請求することができるなど会社財産に対

する支配関係がある場合のその外国法人をい

います。以下同じです。(注 2) 上記の「経済活動基準」とは以下の基準を

いいます。

①� 事業基準(主たる事業が株式の保有等の

一定の事業でないこと)

②� 実体基準(本店所在地国に主たる事業に

─�603�─

――国際課税関係の改正――

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必要な事務所等を有すること)

③� 管理支配基準(本店所在地国において事

業の管理、支配及び運営を自ら行っている

こと)

④� 次のいずれかの基準

イ� 所在地国基準(主として本店所在地国

で事業を行っていること)

※� 下記以外の業種に適用

ロ� 非関連者基準(主として関連者以外の

者と取引を行っていること)

※� 卸売業、銀行業、信託業、金融商品

取引業、保険業、水運業、航空運送業、

航空機貸付業に適用

 また、外国関係会社が経済活動基準を全て満たす場合(部分対象外国関係会社)であっても、配当、利子等の一定の受動的所得については、内国法人等の所得とみなして、課税することとされています(受動的所得の合算課税)。 ただし、外国関係会社の租税負担割合が一定(特定外国関係会社は30%、それ以外の外国関係会社は20%)以上の場合には、合算課税の適用を免除することとされています。 内国法人が合算課税の対象となる場合には、その内国法人に係る外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額のうち合算課税の対象となる金額に対応する額は、内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして外国税額控除の規定が適用されることとされています。 内国法人が合算課税の適用を受けた外国関係会社から一定の配当等を受けた場合、その受けた配

当等に対する課税とその配当等の原資である外国関係会社の所得に対する合算課税の二重課税が生じるため、その配当等については一定の金額を限度として益金不算入とする等の調整規定が設けられています。

㈡ 改正の内容

1 改正の概要

 今回の改正では、米国の連邦法人税率の引下げを契機として、海外のビジネス上、一般的に用いられる実態があり、かつ租税回避リスクが限定的であると考えられる一定の外国関係会社についてペーパー・カンパニーに該当しないこととされたほか、現地で連結納税やパススルー課税が行われる外国関係会社の適用対象金額等の計算方法について整備が行われました。また、グループ内の再保険取引に関する非関連者基準の適用、保険におけるリスクの移転や分散といった重要な機能を果たしていると考えにくい外国関係会社の事実上のキャッシュ・ボックスへの追加、部分合算課税の対象となる特定所得への保険所得の追加といった改正が行われました。(注) 連結法人の各連結事業年度の連結所得に対す

る法人税についても内国法人の外国関係会社に

係る所得の課税の特例と同様の制度が設けられ

ていますが、これらの制度の基本的な仕組みは

内国法人についての特例と同様ですので、説明

は省略します(旧措法68の90~68の92)。

─�604�─

――国際課税関係の改正――

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2  制度の適用を受ける内国法人(納税義務者)

⑴ 改正前の制度の概要 納税義務者となる内国法人は、具体的には、次に掲げる内国法人とされています(旧措法66の 6 ①一~四)。① 内国法人の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが10%以上である場合におけるその内国法人イ その有する外国関係会社の株式等の数又は金額(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の株式等の数又は金額(注)の合計数又は合計額がその外国関係会社の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合(注) 上記イの「間接に有する外国関係会社

の株式等の数又は金額」は、外国関係会

社の発行済株式等に、次に掲げる場合の

区分に応じ次に定める割合(次に掲げる

場合のいずれにも該当する場合には、次

に定める割合の合計割合)を乗じて計算

した株式等の数又は金額とされています

(措令39の14③)。

イ� その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(以下イにおいて「他の外

国法人」といいます。)の発行済株式等

の全部又は一部が内国法人等(内国法

人又はその内国法人との間に実質支配

関係がある外国法人をいいます。以下

イ及びロにおいて同じです。)により保

有されている場合��その内国法人等

の当該他の外国法人に係る持株割合

(発行法人と居住者又は内国法人との間

に実質支配関係がある場合には、零と

します。)に当該他の外国法人のその外

国関係会社に係る持株割合を乗じて計

算した割合(当該他の外国法人が二以

上ある場合には、二以上の当該他の外

国法人につきそれぞれ計算した割合の

令和元年度改正における外国子会社合算税制の主な改正事項

B 実体基準 本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を有すること

C 管理支配基準 本店所在地国において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること

D 所在地国基準(下記以外の業種)主として本店所在地国で事業を行っていること

又は非関連者基準(卸売業など 8 業種)

主として関連者以外の者と取引を行っていること

・ 事実上のキャッシュ・ボックスに関連者からの保 険料収入が大宗を占める等の要件に該当する外国 関係会社を追加

・ ペーパー・カンパニーの範囲から、持株会社である一定の外国関係 会社、不動産保有に係る一定の外国関係会社及び資源開発等プロジェ クトに係る一定の外国関係会社を除外・ 保険委託者特例等における一の内国保険会社による 100%保有要件の 見直し(経済活動基準、金融機関特例の判定においても同様)

・ 現地で連結納税等 を適用している外 国関係会社の租税 負担割合及び適用 対象金額等の計算 方法の整備

同族株主グループ

・ 現地で連結納税等を 適用している外国関 係会社の外国税額控 除の計算方法の整備・ 外国関係会社からの 配当等を受けた場合 の二重課税調整に係 る適用要件の改正

・ 特定所得の金額に 保険所得を追加

◆ 納税義務者の範囲イ 直接及び間接の保有割合が 10%以上である居住者・内国 法人株主ロ 直接及び間接の保有割合が 10%以上である同族株主グル ープに属する居住者・内国法 人株主ハ 実質支配関係がある居住者 ・内国法人等

A 事業基準 主たる事業が株式の保有、無形資産の提供、船舶・航空機リース等でないこと

(※)一定の要件を満たす統括会社、金融持株会 社及び航空機リース会社は除外

・ 同族株主グループに属する内国法人に 係る納税義務者の判定方法に係る改正

・ 保険業における非関連者収入割合 の計算上、一定の再保険取引を関 連者取引から除外

経済活動基準

全てを満たす

いずれかを満たさない

ペーパー・カンパニー/事実上のキャッシュ・ボックス/ブラック・リスト国所在のもの [特定外国関係会社]

租税負担割合

租税負担割合

20%未満

20%未満

20%未満

30%未満

租税負担割合

租税負担割合

外国金融

子会社等

受動的所得

の合算課税

受動的所得

の合算課税

一般事業

子会社

会社単位の合算課税

対 象 外 国

﹇部分対象外国関係会社﹈

外  国  関  係  会  社

居住者・内国法人等が合計で50%超を直接及び

間接に保有又は実質的に支配

居住者又は

内国法人

居住者又は

内国法人

特殊関係者

(個人・法人)

─�605�─

――国際課税関係の改正――

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合計割合)

ロ� その外国関係会社と他の外国法人

(その発行済株式等の全部又は一部が内

国法人等により保有されているものに

限ります。以下ロにおいて「他の外国

法人」といいます。)との間に一又は二

以上の外国法人(以下ロにおいて「出

資関連外国法人」といいます。)が介在

している場合であって、その内国法人

等、当該他の外国法人、出資関連外国

法人及びその外国関係会社が株式等の

保有を通じて連鎖関係にある場合��

その内国法人等の当該他の外国法人に

係る持株割合、当該他の外国法人の出

資関連外国法人に係る持株割合、出資

関連外国法人の他の出資関連外国法人

に係る持株割合及び出資関連外国法人

のその外国関係会社に係る持株割合を

順次乗じて計算した割合(その連鎖関

係が二以上ある場合には、その二以上

の連鎖関係につきそれぞれ計算した割

合の合計割合)

ロ その有する外国関係会社の議決権(剰余金の配当等に関する決議に係るものに限ります。以下ロにおいて同じです。)の数(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の議決権の数(注)の合計数がその外国関係会社の議決権の総数のうちに占める割合(注) 上記ロの「間接に有するその外国関係

会社の議決権の数」は、上記イの間接に

有する外国関係会社の株式等の数又は金

額に準じて計算することとされています

(措令39の14④)。

 具体的には、間接に有する外国関係会

社の議決権の数は、外国関係会社の議決

権の総数に、次に掲げる場合の区分に応

じ次に定める割合(次に掲げる場合のい

ずれにも該当する場合には、次に定める

割合の合計割合)を乗じて計算した議決

権の数とされています。

イ� その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(以下イにおいて「他の外

国法人」といいます。)の議決権の全部

又は一部が内国法人等(内国法人又は

その内国法人との間に実質支配関係が

ある外国法人をいいます。以下イ及び

ロにおいて同じです。)により保有され

ている場合��その内国法人等の当該

他の外国法人に係る議決権割合(その

株主等の有する議決権の数がその総数

のうちに占める割合をいい、その議決

権に係る法人と居住者又は内国法人と

の間に実質支配関係がある場合には、

零とします。)に当該他の外国法人のそ

の外国関係会社に係る議決権割合を乗

じて計算した割合(当該他の外国法人

が二以上ある場合には、二以上の当該

他の外国法人につきそれぞれ計算した

割合の合計割合)

ロ� その外国関係会社と他の外国法人

(その議決権の全部又は一部が内国法人

等により保有されているものに限りま

す。以下ロにおいて「他の外国法人」

といいます。)との間に一又は二以上の

外国法人(以下ロにおいて「出資関連

外国法人」といいます。)が介在してい

る場合であって、その内国法人等、当

該他の外国法人、出資関連外国法人及

びその外国関係会社が議決権の保有を

通じて連鎖関係にある場合��その内

国法人等の当該他の外国法人に係る議

決権割合、当該他の外国法人の出資関

連外国法人に係る議決権割合、出資関

連外国法人の他の出資関連外国法人に

係る議決権割合及び出資関連外国法人

のその外国関係会社に係る議決権割合

を順次乗じて計算した割合(その連鎖

─�606�─

――国際課税関係の改正――

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関係が二以上ある場合には、その二以

上の連鎖関係につきそれぞれ計算した

割合の合計割合)

ハ その有する外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(その外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するその外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(注)の合計額がその外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の総額のうちに占める割合(注) 上記ハの「間接に有する外国関係会社

の株式等の請求権に基づき受けることが

できる剰余金の配当等の額」は、上記イ

の間接に有する外国関係会社の株式等の

数又は金額に準じて計算することとされ

ています(措令39の14⑤)。

 具体的には、間接に有する外国関係会

社の株式等の請求権に基づき受けること

ができる剰余金の配当等の額は、外国関

係会社の株式等の請求権に基づき受ける

ことができる剰余金の配当等の総額に、

次に掲げる場合の区分に応じ次に定める

割合(次に掲げる場合のいずれにも該当

する場合には、次に定める割合の合計割

合)を乗じて計算した剰余金の配当等の

額とされています。

イ� その外国関係会社の株主等である他

の外国法人(以下イにおいて「他の外

国法人」といいます。)の株式等の請求

権の全部又は一部が内国法人等(内国

法人又はその内国法人との間に実質支

配関係がある外国法人をいいます。以

下イ及びロにおいて同じです。)により

保有されている場合��その内国法人

等の当該他の外国法人に係る請求権割

合(その株主等の有する株式等の請求

権に基づき受けることができる剰余金

の配当等の額がその総額のうちに占め

る割合をいい、その請求権に係る株式

等の発行法人と居住者又は内国法人と

の間に実質支配関係がある場合には、

零とします。)に当該他の外国法人のそ

の外国関係会社に係る請求権割合を乗

じて計算した割合(当該他の外国法人

が二以上ある場合には、二以上の当該

他の外国法人につきそれぞれ計算した

割合の合計割合)

ロ� その外国関係会社と他の外国法人

(その株式等の請求権の全部又は一部が

内国法人等により保有されているもの

に限ります。ロにおいて「他の外国法

人」といいます。)との間に一又は二以

上の外国法人(ロにおいて「出資関連

外国法人」といいます。)が介在してい

る場合であって、その内国法人等、当

該他の外国法人、出資関連外国法人及

びその外国関係会社が株式等の請求権

の保有を通じて連鎖関係にある場合

��その内国法人等の当該他の外国法

人に係る請求権割合、当該他の外国法

人の出資関連外国法人に係る請求権割

合、出資関連外国法人の他の出資関連

外国法人に係る請求権割合及び出資関

連外国法人のその外国関係会社に係る

請求権割合を順次乗じて計算した割合

(その連鎖関係が二以上ある場合には、

その二以上の連鎖関係につきそれぞれ

計算した割合の合計割合)

② 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人③ 内国法人との間に実質支配関係がある外国関係会社の他の外国関係会社に係る直接及び間接の持株割合等が10%以上である場合のその内国法人 具体的には、外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限ります。)

─�607�─

――国際課税関係の改正――

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の他の外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが10%以上である場合におけるその内国法人(上記①に掲げる内国法人を除きます。)とされています。④ 直接及び間接の持株割合等が10%以上である一の同族株主グループに属する内国法人 具体的には、外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが10%以上である一の同族株主グループ(注)に属する内国法人(外国関係会社に係る上記①イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限るものとし、上記①及び③に掲げる内国法人を除きます。)とされています。(注) 同族株主グループとは、外国関係会社の

株式等を直接又は間接に有する者及びその

株式等を直接又は間接に有する者との間に

実質支配関係がある者(その株式等を直接

又は間接に有する者を除きます。)のうち、

一の居住者又は内国法人、その一の居住者

又は内国法人との間に実質支配関係がある

者及びその一の居住者又は内国法人と特殊

の関係のある者(外国法人を除きます。)を

いいます(旧措法66の 6 ①四)。

⑵ 改正の内容 今回の改正では、上記⑴④に掲げる内国法人については、外国関係会社に係る上記⑴①イからハまでに掲げる割合又は他の外国関係会社(内国法人との間に実質支配関係があるものに限ります。)の外国関係会社に係る上記⑴①イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限ることとされました。 改正前の制度においては、上記⑴④に掲げる内国法人については、外国関係会社に係る上記⑴①イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限ることとされていましたが、これは、内国法人が他の内国法人等との間に実質支配関係がある被支配外国法人を通じて外国関係会社の持分を保有している場合にはその内国法人のその外国関係会社に係るこれらの割合

は零とされることから、このような内国法人を上記⑴④における納税義務者の範囲から除外するためのものです。 しかしながら、内国法人がその内国法人との間に実質支配関係がある被支配外国法人を通じて外国関係会社の持分を保有している場合についてもその内国法人のその外国関係会社に係るこれらの割合は零とされるため、このような内国法人についてまで納税義務者の範囲から除外されてしまう可能性がありました。 そこで、今回の改正では内国法人がその内国法人との間に実質支配関係がある被支配外国法人を通じて外国関係会社の持分を有する場合には、上記⑴④においてこれらの割合が零を超えるかどうかの判定は、その内国法人の外国関係会社に係る上記⑴①イからハまでに掲げる割合ではなく、その内国法人に係るその被支配外国法人の外国関係会社に係るこれらの割合が零を超えるかどうかによって行われることとされました(措法66の 6 ①四)。(注) 例えば、下の図のイメージの④でいうと、

改正前の制度においては、内国法人〔X〕が

他の内国法人等〔A〕との間に実質支配関係

がある被支配外国法人〔B〕を通じて外国関

係会社〔C〕の持分を保有している場合、そ

の内国法人〔X〕のその外国関係会社〔C〕

に係る直接・間接の持分割合は零〔 0 %×f

%〕とされ、納税義務者から除外されます。

一方で、内国法人〔A〕についても、外国関

係会社〔C〕に対する間接の持分割合は零〔 0

%×f%〕とされるため、その内国法人〔A〕

は納税義務者から除外されることとなります。

 改正後の制度においては、内国法人がその

内国法人との間に実質支配関係がある被支配

外国法人を通じて外国関係会社の持分を有す

る場合には、その内国法人〔A〕に係るその

被支配外国法人〔B〕の外国関係会社〔C〕

に係る直接・間接の持分割合〔f%〕が零を

超えるかどうかによって判定されることとな

ります。

─�608�─

――国際課税関係の改正――

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3  会社単位の合算課税制度

⑴ 特定外国関係会社① 改正前の制度の概要 特定外国関係会社は、次のイからハまでに掲げる外国関係会社とされています。イ 事務所等の実体がなく、かつ、事業の管理支配等を自ら行っていない外国関係会社 いわゆるペーパー・カンパニーが該当し、具体的には、次のイ及びロのいずれにも該当しない外国関係会社とされています(旧措法66の 6 ②二イ)。イ その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している外国関係会社(注)(注) 次のⅰ及びⅱに掲げる外国関係会社

を含むものとされています(措法66の

6 ②二イ⑴、旧措令39の14の 3 ①)。

ⅰ 一の内国法人によってその発行済

株式等の全部を直接又は間接に保有

されている外国関係会社で保険業法

第219条第 1項に規定する引受社員に

該当するもの(以下「特定保険外国

子会社等」といいます。)に係る特定

保険協議者(特定保険外国子会社等

が行う保険の引受けについて保険契

約の内容を確定するための協議を行

う者で次に掲げる要件を満たすもの

をいいます。以下同じです。)がその

本店所在地国においてその主たる事

業を行うに必要と認められる事務所、

店舗その他の固定施設を有している

場合におけるその特定保険協議者に

係るその特定保険外国子会社等に該

当する外国関係会社

ⅰ その一の内国法人によってその

発行済株式等の全部を直接又は間

接に保有されている外国関係会社

に該当すること。ⅱ その特定保険外国子会社等の本

店所在地国と同一の国又は地域に

本店又は主たる事務所が所在する

【改正前】① 内国法人の外国関係会社に係る直接・間接の持分割合が 10%以上である場合における内国法人【措法 66 の6①一】② 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人【措法 66 の6①二】③ 内国法人との間に実質支配関係がある外国関係会社の他の外国関係会社に係る直接・間接の持分割合が 10%以上である場合におけるその内国法人(①に掲

げる内国法人を除く。)【措法 66 の6①三】④ 外国関係会社に係る直接・間接の持分割合が 10%以上である一の同族株主グループに属する内国法人(外国関係会社に係る直接・間接の持分割合が零を超

えるものに限り、①及び③に掲げる内国法人を除く。)【措法 66 の6①四】

≪納税義務者の範囲のイメージ≫

① ② ③ ④内国法人

(納税義務者)内国法人

(納税義務者)

外国関係会社

10%以上

外国法人

外国関係会社

外国法人

a% 保有

c% 保有

b% 保有

a%×b%×c% ≧10%

内国法人(納税義務者)

外国関係会社

実質支配

内国法人(納税義務者)

内国法人(納税義務者)

外国関係会社

外国法人(外国関係会社)

実質支配

10%以上

外国法人(外国関係会社)

外国関係会社

外国法人

実質支配

d% 保有

e% 保有

内国法人(納税義務者) 個人

外国法人外国法人(外国関係会社)

外国関係会社

株式保有 g% 保有

h% 保有f% 保有

f%+(g%×h%) ≧10%d%×e% ≧10%

同族株主グループ

特殊の関係

は「直接・間接の持分割合」の判定に用いる持分割合

【改正後】 内国法人が当該内国法人との間に実質支配関係がある被支配外国法人を通じて外国関係会社の持分を有する場合には、当該内国法人〔A〕に係る当該被支配外国法人〔B〕の外国関係会社〔C〕に対する直接・間接の持分割合〔f%〕とする。

(被支配外国法人)

(被支配外国法人)

(被支配外国法人)

(被支配外国法人)

内国法人

実質支配

同族株主グループに属する内国法人に係る納税義務者の判定方法の改正

─�609�─

――国際課税関係の改正――

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こと。

ⅱ 一の内国法人(保険業を主たる事

業とするものに限ります。ⅰにおい

て同じです。)によってその発行済株

式等の全部を直接又は間接に保有さ

れている外国関係会社でその本店所

在地国の法令の規定によりその本店

所在地国において保険業の免許(免

許に類する許可、登録その他の行政

処分を含みます。以下ⅱにおいて同

じです。)を受けているもの(以下

「特定保険委託者」といいます。)に

係る特定保険受託者(特定保険委託

者がその法令の規定によりその本店

所在地国において保険業の免許の申

請をする際又はその法令の規定によ

り保険業を営むために必要な事項の

届出をする際にその保険業に関する

業務を委託するものとして申請又は

届出をされた者で次に掲げる要件を

満たすものをいいます。以下同じで

す。)がその本店所在地国においてそ

の主たる事業を行うに必要と認めら

れる事務所、店舗その他の固定施設

を有している場合におけるその特定

保険受託者に係るその特定保険委託

者に該当する外国関係会社

ⅰ その一の内国法人によってその

発行済株式等の全部を直接又は間

接に保有されている外国関係会社

に該当すること。

ⅱ その特定保険委託者の本店所在

地国と同一の国又は地域に本店又

は主たる事務所が所在すること。

ロ その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている外国関係会社(注)(注) 次に掲げる外国関係会社を含むもの

とされています(措法66の 6 ②二イ⑵、

旧措令39の14の 3 ②)。

ⅰ 外国関係会社(特定保険外国子会

社等に該当するものに限ります。以

下ⅰにおいて同じです。)に係る特定

保険協議者がその本店所在地国にお

いてその事業の管理、支配及び運営

を自ら行っている場合におけるその

外国関係会社

ⅱ 外国関係会社(特定保険委託者に

該当するものに限ります。以下ⅱに

おいて同じです。)に係る特定保険受

託者がその本店所在地国においてそ

の事業の管理、支配及び運営を自ら

行っている場合におけるその外国関

係会社

 なお、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、内国法人に係る外国関係会社が上記イ又はロに該当するかどうかを判定するために必要があるときは、その内国法人に対し、期間を定めて、その外国関係会社が上記イ又ロに該当することを明らかにする書類その他の資料の提示又は提出を求めることができることとされています(旧措法66の 6 ③)。 この場合において、その書類その他の資料の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は上記イ又はロに該当しないものと推定することとされています(旧措法66の 6 ③)。ロ 受動的所得の割合が一定以上の外国関係会社(事実上のキャッシュ・ボックス) 事実上のキャッシュ・ボックスに分類される外国関係会社は、その総資産額に対する旧租税特別措置法第66条の 6第 6項第 1号から第10号までに掲げる金額の合計額、つまり、部分合算課税の対象となる各種所得の金額から異常所得の金額を除いた金額の合計額に相当する金額の割合が30%を超える外国関係会社とされています(旧措法66の 6 ②二ロ)。 ただし、セーフ・ハーバーとして、総資

─�610�─

――国際課税関係の改正――

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産額に対する有価証券、貸付金、固定資産(無形資産等(租税特別措置法第66条の 6第 6項第 9号に規定する無形資産等をいいます。以下ロにおいて同じです。)を除くものとし、貸付けの用に供しているものに限ります。)及び無形資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社に限られることとなっています。 なお、外国関係会社が外国金融子会社等に相当する者である場合には、上記の判定基準に代えて、その総資産額に対する租税特別措置法第66条の 6第 8項第 1号に掲げる金額に相当する金額又は同項第 2号から第 4号までに掲げる金額に相当する金額の合計額のうちいずれか多い金額の割合が30%を超えるものとされています(旧措法66の 6 ②二ロ)。また、セーフ・ハーバーとしての総資産額に対する有価証券等の額の割合が50%を超えるかどうかの判定は、上記と同様となっています。ハ 情報交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域(ブラック・リスト国)に所在する外国関係会社 租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域を財務大臣が指定し、その国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社については、特定外国関係会社に該当することとされています(旧措法66の 6 ②二ハ)。

② 改正の内容イ ペーパー・カンパニーの判定における保険特例の改正イ 一の内国法人による100%保有要件の改正 上記①イイ(注)ⅰの特定保険外国子会社等及び特定保険協議者並びに同ⅱの特定保険委託者及び特定保険受託者に係る一の内国法人による100%保有要件について、リスクマネジメント等の観点か

ら本邦保険持株会社が直接外国保険子会社を100%保有するケースや、本邦保険グループ内の現地事業の統合により一の本邦保険持株会社の傘下の複数の本邦保険会社が外国保険子会社を100%保有するケースがあることを踏まえ、一の内国法人等(一の内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社(注1)に限ります。)及びその一の内国法人との間に特定資本関係(注 2)のある内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社(注 1)に限ります。)をいいます。以下イにおいて同じです。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている(注 3)外国関係会社である旨の要件に改正されました(措令39の14の 3 ①一二)。(注 1) 上記の「保険持株会社」とは、保

険業法第 2 条第16項に規定する保険

持株会社をいいます。(注 2) 上記の「特定資本関係」とは、次

に掲げる関係をいいます(措令39の

17④)。

ⅰ 二の法人のいずれか一方の法人

が他方の法人の発行済株式等の全

部を直接又は間接に保有する関係

ⅱ 二の法人が同一の者によってそ

れぞれその発行済株式等の全部を

直接又は間接に保有される場合に

おけるその二の法人の関係(ⅰに

掲げる関係に該当するものを除き

ます。)(注 3) 一の内国法人等によってその発行

済株式等の全部を保有されているか

どうかの判定は、一の内国法人等の

外国関係会社に係る直接保有株式等

保有割合(その一の内国法人等の有

する外国法人の株式等の数又は金額

がその外国法人の発行済株式等のう

─�611�─

――国際課税関係の改正――

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ちに占める割合をいいます。)とその

一の内国法人等のその外国関係会社

に係る間接保有株式等保有割合とを

合計した割合により行うものとされ

ています(措令39の14の 3 ②)。

 また、上記の間接保有株式等保有

割合は、次に掲げる場合の区分に応

じⅰ又はⅱに定める割合(ⅰ又はⅱ

のいずれにも該当する場合には、ⅰ

及びⅱに定める割合の合計割合)と

されています(措令39の14の 3 ③、

39の17⑦)。

ⅰ 外国関係会社の株主等である外

国法人の発行済株式等の全部が一

の内国法人等によって保有されて

いる場合��その株主等である外

国法人の有するその外国関係会社

の株式等の数又は金額がその発行

済株式等のうちに占める割合(そ

の株主等である外国法人が二以上

ある場合には、その二以上の株主

等である外国法人につきそれぞれ

計算した割合の合計割合)

ⅱ 外国関係会社の株主等である外

国法人(ⅰに掲げる場合に該当す

るⅰの株主等である外国法人を除

きます。)と一の内国法人等との間

にこれらの者と株式等の保有を通

じて連鎖関係にある一又は二以上

の外国法人(以下ⅱにおいて「出

資関連外国法人」といいます。)が

介在している場合(出資関連外国

法人及びその株主等である外国法

人がそれぞれその発行済株式等の

全部を一の内国法人等又は出資関

連外国法人(その発行済株式等の

全部が一の内国法人等又は他の出

資関連外国法人によって保有され

ているものに限ります。)によって

保有されている場合に限ります。)

��その株主等である外国法人の

有するその外国関係会社の株式等

の数又は金額がその発行済株式等

のうちに占める割合(その株主等

である外国法人が二以上ある場合

には、その二以上の株主等である

外国法人につきそれぞれ計算した

割合の合計割合)

ロ 特定保険協議者及び特定保険受託者の要件の改正 保険引受子会社と管理運営子会社を別会社とした上で、これらを一体として実体ある保険業が営まれる場合があることを踏まえ、ペーパー・カンパニーの判定において保険特例が設けられているところです。今回の改正では、この趣旨をより適切に要件に反映させる観点から、管理運営子会社である特定保険協議者及び特定保険受託者の要件に、その役員又は使用人がその本店所在地国において保険業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していることが追加されました(措令39の14の 3 ①一ハ・二ハ)。

─�612�─

――国際課税関係の改正――

Page 51: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ハ 特定保険受託者の範囲の改正 上記①イイ(注)ⅱのとおり、特定保険受託者は、特定保険委託者がその本店所在地国の法令の規定によりその本店所在地国において保険業の免許の申請をする際又はその法令の規定により保険業を営むために必要な事項の届出をする際にその保険業に関する業務を委託するものとして申請又は届出をされた者で一定の要件を満たすものとされていますが、現地当局の規制等により、再保険会社が出再元の保険会社に業務委託を行い、さらにその出再元の保険会社が他の者に業務委託を行う場合があることから、このような場合に対応するための改正が行われました。 すなわち、特定保険委託者に保険業務の委託をされた者がその一の内国法人等に係る他の特定保険委託者に該当する場合には、当該他の特定保険委託者がその

法令の規定により本店所在地国において保険業の免許の申請をする際又はその法令の規定により保険業を営むために必要な事項の届出をする際にその保険業に関する業務を委託する者として申請又は届出をされた者で次に掲げる要件の全てを満たすものが、その特定保険委託者に係る特定保険受託者に含まれることとされました(措令39の14の 3 ①二)。ⅰ その一の内国法人等によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている外国関係会社に該当すること。ⅱ その特定保険委託者の本店所在地国と同一の国又は地域に本店又は主たる事務所が所在すること。ⅲ その役員又は使用人がその本店所在地国において保険業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること。

特定保険委託者(保険引受会社)

特定保険受託者(管理運営会社)

100%100%

50%

100%

50%外国日本

外国保険持株会社

100%資本関係(特定資本関係)

保険持株会社

保険会社

合計 100%改正事項②

【改正後】通常必要業務従事要件の追加

改正事項①【改正前】一の保険会社が直接又は外国法人を通じて間接に発行済株式等の全てを保有しているもの

【改正後】100%資本関係のある保険会社及び保険持株会社が直接又は外国法人を通じて間接に発行済株式等の全てを保有しているもの

※ロイズ特例 〔特定保険協議者〕

※ロイズ特例 〔特定保険外国子会社等〕

ペーパー・カンパニーの判定におけるロイズ特例及び保険委託者特例の対象となる外国関係会社に関して、【改正前】

「一の内国法人(保険業を主たる事業とするものに限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件について、

【改正後】① 「一の内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)及び当該一の内国法人との間に 100%の資本関係  のある

内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件に改正。(注)二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係又は二の法人が同一の者によってそれぞれその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有される場合における当該二の法人の関係(特定資本関係)。

② また、特定保険受託者(特定保険協議者)の要件に、その役員又は使用人がその本店所在地国において保険業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事している旨の要件(通常必要業務従事要件)を追加。※上記の改正は対象外国関係会社の判定及び部分対象外国関係会社である外国金融機関の判定についても同様。

(注)

複数の保険会社又は保険持株会社に保有されている外国保険子会社に係るロイズ特例及び保険委託者特例の改正

─�613�─

――国際課税関係の改正――

Page 52: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ロ ペーパー・カンパニーの範囲の改正 外国子会社合算税制は、内国法人が実質的活動を伴わない外国子会社を利用する等により、我が国の税負担を軽減・回避する行為に対処するため、こうした外国子会社の所得を内国法人の所得に合算して課税する制度です。 こうした観点から、事業に必要な固定施設がなく、かつ、事業の管理支配等を自ら行っていないいわゆるペーパー・カンパニーについて、特に租税回避リスクが高いものとして、租税負担割合が30%以上でない限り、会社単位の合算課税の対象とされています。 今般、米国の連邦法人税率が35%から21%に引き下げられたことを一つの契機として、改めて米国等におけるビジネスの実態を見ると、倒産隔離や不動産登記等の事務コストの軽減等の事業上の理由から、固定施設や人員を有さない法人を活用する実務が一般的に行われており、こうした法人について、常に租税回避リスクが高いものとみなすことは必ずしも適当ではないと考え

られたところです。 このため、こうした法人のうち、合算対象とならない子会社配当等が収益の大宗である外国関係会社や、実体のあるビジネスに関して用いられている本店所在地国の不動産や資源等を源泉とするものが収益の大宗である外国関係会社など、一定の要件の下で、租税回避リスクが限定的であると考えられるものについては、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされました。(注) なお、ペーパー・カンパニーに該当し

ないこととされる場合であっても、経済

活動基準を満たさない外国関係会社につ

いては、対象外国関係会社に該当するこ

ととなり、その租税負担割合が20%以上

でない限り会社単位の合算課税の対象と

なります。つまり、今回の改正は、あく

まで、特定の類型の外国関係会社につい

て、特に租税回避リスクが高いペーパ

ー・カンパニーに該当しないとするにと

どまり、その外国関係会社を個々に見て、

経済活動基準を満たさないと判定される

場合は、会社単位で合算課税の対象とす

外国日本

内国保険会社

保険持株会社A

保険会社B 再保険会社C

業務委託

出再

業務委託

保険契約者

保険契約

CはBに業務委託(届出等)を行い、更にBはAに業務委託を行う。

Bに係る特定保険受託者

他の特定保険委託者特定保険委託者

Cから受託した業務も業務委託

【改正前】BはCの特定保険受託者の要件を満たさない→保険委託者特例の適用なし

実体あり

ペーパー・カンパニー

ペーパー・カンパニー

【改正後】Aは、Cに係る特定保険受託者にも該当することとする。

【改正前】保険会社グループ内の再保険会社Cが、当該グループ内の保険持株会社Aに保険業務の委託を行う場合、出再元Bに業務委託(届出等)を行い、更にその出再元Bから当該保険持株会社Aに業務委託を行う場合がある。しかし、出再元Bがペーパー・カンパニーの場合、事務所等の固定施設を有さず(実体基準)、自ら管理支配等を行っていない(管理支配基準)ため、当該再保険会社Cは保険委託者特例の適用を受けることができない。

【改正後】特定保険委託者Cに保険業務の委託(届出等)をされた者Bが他の特定保険委託者に該当する場合には、当該他の特定保険委託者Bに業務委託(届出等)をされた者で一定の要件を満たすものAは当該特定保険委託者Cに係る特定保険受託者の範囲に含まれる。

保険委託者特例における特定保険受託者の範囲の改正

─�614�─

――国際課税関係の改正――

Page 53: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

るとの外国子会社合算税制の基本的な仕

組みを変えるものではありません。

 今回の改正によってペーパー・カンパニーに該当しないこととされた外国関係会社は、具体的には次のとおりです(措法66の6 ②二イ⑶~⑸、措令39の14の 3 ⑤~⑨、措規22の11②~⑱)。イ 外国子会社の株式等の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社 外国子会社(注 1)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その収入金額のうちに占めるその株式等に係る剰余金の配当等の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの(措法66の 6 ②二イ⑶) 外国子会社合算税制においては外国関係会社が得る持株割合25%以上等の子会社からの剰余金の配当等について、合算課税の対象としないこととしており、この合算対象とならない剰余金の配当等が収入のほとんどである外国関係会社については、租税回避リスクが少ないと考えられることから、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされたものです。(注 1) 上記の「外国子会社」とは、外国

法人(外国関係会社とその本店所在

地国を同じくするものに限ります。

以下(注 1)において同じです。)の

発行済株式等のうちにその外国関係

会社が保有しているその株式等の数

若しくは金額の占める割合又はその

外国法人の発行済株式等のうちの議

決権のある株式等の数若しくは金額

のうちにその外国関係会社が保有し

ているその議決権のある株式等の数

若しくは金額の占める割合のいずれ

かが25%以上であり、かつ、その状

態がその外国関係会社がその外国法

人から受ける剰余金の配当等(租税

特別措置法第66条の 6 第 1 項に規定

する剰余金の配当等をいいます。以

下Ⅰにおいて同じです。)の額の支払

義務が確定する日(その剰余金の配

当等の額が法人税法第24条第 1 項に

規定する事由に係る一定の剰余金の

配当等の額(注 2)である場合には、

同日の前日。以下(注 1)において

同じです。)以前 6月以上(その外国

法人がその確定する日以前 6 月以内

に設立された外国法人である場合に

は、その設立の日からその確定する

日まで)継続している場合のその外

国法人をいいます(措令39の14の 3

⑤)。以下イにおいて同じです。(注 2) 上記の「一定の剰余金の配当等の

額」は、法人税法第24条第 1 項(同

項第 2 号に掲げる分割型分割、同項

第 3 号に掲げる株式分配又は同項第

4 号に規定する資本の払戻しに係る

部分を除きます。)の規定の例による

ものとした場合に同法第23条第 1 項

第 1 号又は第 2 号に掲げる金額とみ

なされる金額に相当する金額とされ

ています(措規22の11②)。

 具体的には、外国子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で次の要件の全てに該当する外国関係会社とされています(措令39の14の 3 ⑥、措規22の11③④)。ⅰ その事業年度の収入金額の合計額(注)のうちに占める外国子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその外国子会社の本店所在地国の法令においてその外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)及び外国関係会社の行う主たる事業に係る業務の

─�615�─

――国際課税関係の改正――

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通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額の合計額の割合が95%を超えていること。(注) 上記の「収入金額の合計額」は、

グロスの収入金額の合計額をいいま

す。以下ロにおいて同じです。

ⅱ その事業年度終了の時における貸借対照表(これに準ずるもの(注)を含みます。以下ロにおいて同じです。)に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる資産の帳簿価額の合計額の割合が95%を超えていること。(注) 貸借対照表に準ずるものとは、現

地の法令上、外国関係会社の貸借対

照表の作成が求められていないよう

な場合における、貸借対照表に代替

すべき会計書類が想定されています。

ⅰ 外国子会社の株式等の帳簿価額ⅱ 未収金(次に掲げる金額に係るものに限ります。)の帳簿価額a 外国子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその外国子会社の本店所在地国の法令においてその外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。ⅲにおいて同じです。)b 上記ⅰの預金又は貯金の利子の額

ⅲ 現金、預金及び貯金(以下ロにおいて「現預金」といいます。)の帳簿価額(外国子会社から剰余金の配当等の額を受けた日を含む事業年度にあってはその事業年度において受けたその剰余金の配当等の額に相当する金額を限度とし、同日を含む事

業年度以外の事業年度にあっては零とします。)

ロ 特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社 特定子会社(注)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その本店所在地国を同じくする管理支配会社(租税特別措置法第66条の 6 第 1 項各号に掲げる内国法人に係る他の外国関係会社のうち、部分対象外国関係会社に該当するもので、その本店所在地国において、その役員又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものをいいます。以下ロ及びハにおいて同じです。)によってその事業の管理、支配及び運営が行われていること、その管理支配会社がその本店所在地国で行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること、その収入金額のうちに占めるその株式等に係る剰余金の配当等の額及びその株式等の譲渡に係る対価の額の割合が著しく高いこと等の一定の要件に該当するもの(措法66の 6 ②二イ⑷) これは、一定の持株会社に子会社株式の譲渡益が生じた場合であっても、現地の経済活動実体のある会社と一体となって活動する会社であり、その経済活動実体のある会社の事業にとって必要不可欠な機能を果たすものと認められるなど一定の要件を満たすものについて、ペーパー・カンパニーに該当しないこととしているものです。 すなわち、一定の持株会社については、剰余金の配当がその収入のほとんどである等の要件を満たす場合には、上記イによりペーパー・カンパニーに該当しないこととされましたが、現地で行う事業から退出する等の場合には、持株会社が子会社株式を譲渡し、その譲渡益を得るケ

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――国際課税関係の改正――

Page 55: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ースが生じうることになります。こうした場合に、ペーパー・カンパニーとして合算対象となれば、安定性を欠き、事業活動に支障が生ずる可能性が考えられます。 しかしながら、単純に子会社株式の譲渡所得を有する外国関係会社をペーパー・カンパニーに該当しないこととすれば、日本の親会社が直接に有する子会社株式を譲渡した場合には、その譲渡益は日本で課税される一方、単純に現地に持株会社を置き、子会社株式を保有させるだけで日本での課税を逃れることができてしまいます。 このため、その持株会社が、現地の経済活動実体のある会社と一体となって活動し、その経済活動実体のある会社の事業にとって必要不可欠な機能を果たすものと認められ(すなわち、現地の経済活動実体のあるビジネスの一部であると認められ)、保有する資産や生ずる所得の状況から、租税回避リスクが限定的であると考えられるものに限ってペーパー・カンパニーに該当しないこととされたものです。(注) 上記の「特定子会社」とは、租税特

別措置法第66条の 6 第 1 項各号に掲げ

る内国法人に係る他の外国関係会社

(管理支配会社とその本店所在地国を同

じくするものに限ります。)で、部分対

象外国関係会社に該当するものをいい

ます(措令39の14の 3 ⑦)。

 具体的には、次に掲げる外国関係会社とされています(措令39の14の 3 ⑧、措規22の11⑤~⑧)。ⅰ 特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で次に掲げる要件の全てに該当するもの(措令39の14の 3 ⑧、措規22の11⑦⑧)。ⅰ その事業の管理、支配及び運営が

管理支配会社によって行われていること。ⅱ 管理支配会社の行う事業(その管理支配会社の本店所在地国において行うものに限ります。)の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。ⅲ その事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てが、その本店所在地国において、管理支配会社の役員又は使用人によって行われていること。ⅳ その本店所在地国を管理支配会社の本店所在地国と同じくすること。ⅴ 次に掲げる外国関係会社の区分に応じそれぞれ次に定める要件に該当すること。a 下記bに掲げる外国関係会社以外の外国関係会社 その本店所在地国の法令においてその外国関係会社の所得(その外国関係会社の属する企業集団の所得を含みます。)に対して外国法人税(法人税法第69条第 1項に規定する外国法人税をいいます。以下同じです。)を課されるものとされていること。b その本店所在地国の法令において、その外国関係会社の所得がその株主等である者の所得として取り扱われる外国関係会社 その本店所在地国の法令において、その株主等である者(租税特別措置法第66条の 6第 1項各号に掲げる内国法人に係る他の外国関係会社に該当するものに限ります。)の所得として取り扱われる所得に対して外国法人税を課されるものとされていること。

ⅵ その事業年度の収入金額の合計額

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――国際課税関係の改正――

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のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。a その事業年度の特定子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその特定子会社の本店所在地国の法令においてその特定子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)b 特定子会社の株式等の譲渡(その外国関係会社に係る関連者(租税特別措置法第66条の 6第 2項第2号ハ⑴に規定する関連者をいいます。以下ロにおいて同じです。)以外の者への譲渡に限るものとし、その株式等の取得の日から一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合のその譲渡及びその譲渡を受けた株式等をその外国関係会社又はその外国関係会社に係る関連者に移転することが見込まれる場合のその譲渡を除きます。)に係る対価の額c その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

ⅶ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる資産の帳簿価額の合計額の割合が95%を超えていること。a 特定子会社の株式等の帳簿価額b 未収金(上記ⅵaからcまでに掲げる金額に係るものに限ります。)の帳簿価額c 現預金の帳簿価額(上記ⅵa又はbに掲げる金額が生じた日を含

む事業年度にあってはその事業年度に係る上記ⅵa及びbに掲げる金額の合計額に相当する金額を限度とし、同日を含む事業年度以外の事業年度にあっては零とします。)

ⅱ 被管理支配会社(注 1)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で次に掲げる要件の全てに該当するもの(注 2)(措規22の11⑤) これは、被管理支配会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、上記ⅰⅰからⅶまでに掲げる要件と同様の要件を満たすものについても、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされたものです。(注 1) 上記の「被管理支配会社」とは、

特定子会社の株式等の保有を主た

る事業とする外国関係会社で、上

記ⅰⅰからⅶまでに掲げる要件の

全てに該当するものをいいます。

以下ⅱにおいて同じです。(注 2) 他の被管理支配会社(被管理支

配会社の株式等の保有を主たる事

業とする外国関係会社で次に掲げ

る要件の全てに該当するものをい

います。)と租税特別措置法第66

条の 6 第 1 項各号に掲げる内国法

人との間にこれらの者と株式等の

保有を通じて連鎖関係にある一又

は二以上の外国関係会社で、他の

被管理支配会社に準ずるものを含

みます(措規22の11⑥)。

ⅰ その事業の管理、支配及び運営が管理支配会社によって行われていること。ⅱ 管理支配会社の行う事業(その管理支配会社の本店所在地国において行うものに限ります。)の遂行上欠くことのできない機能を果たしてい

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――国際課税関係の改正――

Page 57: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ること。ⅲ その事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てが、その本店所在地国において、管理支配会社の役員又は使用人によって行われていること。ⅳ その本店所在地国を管理支配会社の本店所在地国と同じくすること。ⅴ 上記ⅰⅴに掲げる要件に該当すること。ⅵ その事業年度の収入金額の合計額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。a 被管理支配会社又は特定子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその被管理支配会社の本店所在地国の法令においてその被管理支配会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額及びその受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその特定子会社の本店所在地国の法令においてその特定子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)b 被管理支配会社の株式等の譲渡

(その外国関係会社に係る関連者以外の者への譲渡に限るものとし、その取得の日から一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合のその譲渡及びその譲渡を受けた株式等をその外国関係会社又はその外国関係会社に係る関連者に移転することが見込まれる場合のその譲渡を除きます。以下bにおいて同じです。)及び特定子会社の株式等の譲渡に係る対価の額c その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

ⅶ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。a 被管理支配会社の株式等及び特定子会社の株式等の帳簿価額b 未収金(上記ⅵaからcまでに掲げる金額に係るものに限ります。)の帳簿価額c 現預金の帳簿価額(上記ⅵa又はbに掲げる金額が生じた日を含む事業年度にあってはその事業年度に係る上記ⅵa又はbに掲げる金額の合計額に相当する金額を限度とし、同日を含む事業年度以外の事業年度にあっては零とします。)

─�619�─

――国際課税関係の改正――

Page 58: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ハ 不動産の保有、石油等の天然資源の探鉱等又は社会資本の整備に関する事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしている等の一定の外国関係会社 具体的には、次に掲げる外国関係会社とされています(措法66の 6 ②二イ⑸、措令39の14の 3 ⑨、措規22の11⑨~⑱)。ⅰ 不動産保有に係る一定の外国関係会社ⅰ 特定不動産(注 1)の保有を主たる事業とする外国関係会社で次に掲げる要件の全てに該当するもの(措令39の14の 3 ⑨一、措規22の11⑨~⑫) 米国等のビジネスにおいては、登記移転等のコストや事務負担を避ける観点や、資金調達・リスク管理上の便宜等から、企業が不動産を保有する場合に、直接不動産を保有するのではなく、それを保有するだけの機能を有する一定の不動産保有会社

を通じて保有することが一般的に行われているとされ、これらの不動産保有会社を全て租税回避リスクの高いペーパー・カンパニーとして合算対象とすれば、ビジネスの実態に合わず、事業活動に支障が生ずる可能性が考えられます。 しかしながら、単純に不動産保有会社をペーパー・カンパニーに該当しないこととすれば、日本の親会社が直接に保有する現地不動産の譲渡益や賃貸料は日本で課税される一方、単純に現地にペーパー・カンパニーを置き、不動産を保有させるだけで日本での課税を逃れることができてしまいます。 このため、その不動産保有会社が、現地の経済活動実体のある不動産会社と一体となって活動し、その経済活動実体のある不動産会社の事業の遂行上欠くことのできない機能を果

外国子会社の株式等の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社

特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社

【事業要件】特定子会社株式等の保有

【不可欠機能要件】管理支配会社(※1)の行う事業の遂行上

不可欠な機能【被管理支配要件】・管理支配会社による管理・支配・運営・管理支配会社の役員又は使用人による通常必要業務従事

【所在地国要件】管理支配会社と同一国に所在

【課税要件】その所得がその本店所在地国で課税対象

とされていること【収入割合要件】・特定子会社配当・特定子会社株式等譲渡対価(※2)

・一定の預金利子総収入金額

【資産割合要件】・特定子会社株式等・特定子会社に係る未収配当・特定子会社株式等に係る未収譲渡対価

・一定の預金に係る未収利子・一定の現預金

総資産簿価

【事業要件】外国子会社株式等の保有

【収入割合要件】・外国子会社配当・一定の預金利子総収入金額

【資産割合要件】・外国子会社株式等・外国子会社に係る未収配当・一定の預金に係る未収利子・一定の現預金

総資産簿価

>95%

>95%

>95%

※ 1 経済活動基準を満たす外国関係会社で、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの。

※ 2 関連者以外の者への譲渡に限るものとし、一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合の当該譲渡及びその譲渡を受けた株式等を譲渡元の外国関係会社又は関連者に移転することが見込まれる場合の当該譲渡を除く。

外国関係会社

25%以上

外国子会社

内国法人

配当

A

B

>95%

内国法人

特定子会社

外国関係会社(他の被管理支配会社)

経済活動実体あり

被管理支配会社の株式等の保有を主たる事業とするものでCと同等のもの

管理支配等

外国関係会社(被管理支配会社)

A

B

C

D

管理支配会社の事業遂行上不可欠な機能を果たしている

経済活動実体あり

【特定子会社要件】同一国所在の部分対象外国関係会社

【外国子会社要件】・同一国所在・持分割合 25%以上・6ヶ月以上保有

外国関係会社(管理支配会社)

・配当・株式等譲渡対価

ペーパー・カンパニーの範囲から除外される一定の外国関係会社(① 持株会社である一定の外国関係会社)

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――国際課税関係の改正――

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たし(すなわち、現地の経済活動実体のあるビジネスの一部であり)、その経済活動実体のある不動産会社の事業にとって必要不可欠な現地の不動産を保有するものと認められる場合であって、その不動産から生ずる譲渡益・賃貸料等がその収益のほとんどを占めるなど、租税回避リスクが限定的と認められる場合に限り、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされました(注 2)。(注 1)� 上記の「特定不動産」とは、

その本店所在地国にある不動産

(不動産の上に存する権利を含

みます。以下同じです。)で、

その外国関係会社に係る管理支

配会社の事業の遂行上欠くこと

のできないものをいいます。以

下ⅰにおいて同じです。(注 2)� 外国関係会社の本店所在地国

と同一国内にある不動産から生

ずる譲渡益・賃貸料等の所得に

ついては、その本店所在地国以

外の国又は地域からの所得移転

リスクが相対的に低いと考えら

れます。

a 管理支配会社の行う事業(その管理支配会社の本店所在地国において行うもので不動産業に限ります。)の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。b 上記ロⅰⅰ及びⅲからⅴまでに掲げる要件の全てに該当すること。c その事業年度の収入金額の合計額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 特定不動産の譲渡に係る対価の額⒝ 特定不動産の貸付け(特定不

動産を使用させる行為を含みます。)による対価の額⒞ その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

d その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに次に掲げる資産の帳簿価額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 特定不動産の帳簿価額⒝ 未収金、前払費用その他これらに類する資産(特定不動産に係るものに限ります。)の帳簿価額⒞ その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる現預金の帳簿価額

ⅱ 被管理支配会社(注 1)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で次に掲げる要件の全てに該当するもの(注 2)(措規22の11⑨) これは、被管理支配会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、上記ⅰaからdまでに掲げる要件と同様の要件を満たすものについても、ペーパー・カンパニーに該当しないこととするものです。(注 1) 上記の「被管理支配会社」と

は、特定不動産の保有を主たる

事業とする外国関係会社で、上

記ⅰaからdまでに掲げる要件

の全てに該当するものをいいま

す。以下ⅱにおいて同じです。(注 2) 他の被管理支配会社(被管理

支配会社の株式等の保有を主た

る事業とする外国関係会社で次

に掲げる要件の全てに該当する

ものをいいます。以下(注 2)

において同じです。)と租税特

─�621�─

――国際課税関係の改正――

Page 60: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

別措置法第66条の 6 第 1 項各号

に掲げる内国法人との間にこれ

らの者と株式等の保有を通じて

連鎖関係にある一又は二以上の

外国関係会社で、他の被管理支

配会社に準ずるものを含みます

(措規22の11⑩)。

a 管理支配会社の行う事業(その管理支配会社の本店所在地国において行うもので、不動産業に限ります。)の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。b 上記ロⅱⅰ及びⅲからⅴまでに掲げる要件の全てに該当すること。c その事業年度の収入金額の合計額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 被管理支配会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその被管理支配会社の本店所在地国の法令においてその被管理支配会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)⒝ 被管理支配会社の株式等の譲渡(その外国関係会社に係る関連者以外の者への譲渡に限るものとし、その取得の日から 1年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合のその譲渡及びその譲渡を受けた株式等をその外国関係会社又はその外国関係会社に係る関連者に移転することが見込まれる場合のその譲渡を除きます。)に係る対価の

額⒞ 特定不動産の譲渡に係る対価の額⒟ 特定不動産の貸付け(特定不動産を使用させる行為を含みます。)による対価の額⒠ その行う事業(被管理支配会社の株式等の保有又は特定不動産の保有に限ります。下記d⒠において同じです。)に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

d その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 被管理支配会社の株式等の帳簿価額⒝ 未収金(上記c⒜から⒠までに掲げる金額に係るものに限ります。)の帳簿価額⒞ 特定不動産の帳簿価額⒟ 未収金、前払費用その他これらに類する資産(特定不動産に係るものに限ります。)の帳簿価額(⒝に掲げる金額を除きます。)⒠ その行う事業に係る業務の通常の過程において生ずる現預金の帳簿価額

ⅱ 管理支配会社が自ら使用する不動産を保有する一定の外国関係会社 特定不動産(注)の保有を主たる事業とする外国関係会社で、次に掲げる要件の全てに該当するもの(措令39の14の 3 ⑨二、措規22の11⑬⑭) これは、現地の経済活動実体のある事業活動を行う会社が自ら使用する自社ビルをその子会社が保有するような

─�622�─

――国際課税関係の改正――

Page 61: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

場合のその子会社が、収入割合要件や資産割合要件等の一定の要件を満たす場合にも、同様に、ペーパー・カンパニーに該当しないこととするものです。(注) 上記の「特定不動産」とは、その

本店所在地国にある不動産で、その

外国関係会社に係る管理支配会社が

自ら使用するものをいいます。以下

ⅱにおいて同じです。

ⅰ 上記ロⅰⅰからⅴまでに掲げる要件の全てに該当すること。ⅱ その事業年度の収入金額の合計額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。a 特定不動産の譲渡に係る対価の額b 特定不動産の貸付け(特定不動

産を使用させる行為を含みます。)による対価の額c その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

ⅲ その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる資産の帳簿価額の合計額の割合が95%を超えていること。a 特定不動産の帳簿価額b 未収金、前払費用その他これらに類する資産(特定不動産に係るものに限ります。)の帳簿価額c その行う主たる事業に係る業務の通常の過程において生ずる現預金の帳簿価額

ⅲ 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社(措令39の14の 3 ⑨三、措規22の11⑮~⑱) 現地の資源開発やインフラ投資とい

ったビジネスにおいては、投資規模が巨額にのぼることや許認可等の観点から、一般的に、現地企業等とのジョイント・ベンチャー(JV)による進出

管理支配会社が自ら使用する不動産の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社

不動産会社である管理支配会社の事業に必要な不動産の保有を主たる事業とする等の一定の外国関係会社

外国関係会社(被管理支配会社)

【事業要件】特定不動産(※1)の保有

【不可欠機能要件】管理支配会社の行う事業(不動産業に

限る。)の遂行上不可欠な機能【被管理支配要件】・管理支配会社による管理・支配・運営・管理支配会社の役員または使用人による通常必要業務従事

【所在地国要件】管理支配会社と同一国に所在

【課税要件】その所得がその本店所在地国で課税対

象とされていること【収入割合要件】・特定不動産譲渡対価・特定不動産貸付対価・一定の預金利子

総収入金額【資産割合要件】・特定不動産・特定不動産に係る未収金 等の一定の資産・一定の現預金

総資産簿価

>95%

【事業要件】特定不動産(※2)の保有

【不可欠機能要件】管理支配会社の行う事業の遂行上不

可欠な機能【被管理支配要件】・管理支配会社による管理・支配・運営

・管理支配会社の役員または使用人による通常必要業務従事

【所在地国要件】管理支配会社と同一国に所在

【課税要件】その所得がその本店所在地国で課税

対象とされていること【収入割合要件】・特定不動産譲渡対価・特定不動産貸付対価・一定の預金利子

総収入金額【資産割合要件】・特定不動産・特定不動産に係る未収金 等の一定の資産・一定の現預金

総資産簿価

>95%

>95%

外国関係会社(他の被管理支配会社)

・経済活動実体あり・不動産業を行う

内国法人

外国関係会社(被管理支配会社)

特定不動産

A

B

C特定不動産を保有

被管理支配会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社でCと同等のもの

管理支配等

外国関係会社(管理支配会社)

>95%

外国関係会社(管理支配会社)

内国法人

A

B特定不動産を保有

管理支配等

経済活動実体あり

※ 1 同一国所在の不動産(不動産の上に存する権利を含む。)で管理支配会社の事業の  遂行上欠くことのできないもの。

※ 2 同一国所在の不動産で管理支配会社が自ら使用するもの。

特定不動産

ペーパー・カンパニーの範囲から除外される一定の外国関係会社(② 不動産保有に係る一定の外国関係会社)

─�623�─

――国際課税関係の改正――

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が行われているところ、こうした事業への進出の際には、リスク管理やノンリコース・ローンによる資金調達、また、JVを組む相手方企業との出資関係を整理する観点等から、一定の持株会社等が設立されることが一般的であるとされ、こうした持株会社等を全て租税回避リスクの高いペーパー・カンパニーとして合算対象とすれば、ビジネスの実態に合わず、事業活動に支障が生ずる可能性が考えられます。 このため、現地の資源開発等プロジェクト(注 1)に能動的に関与する経済活動実体のある会社と一体となって活動し、その資源開発等プロジェクトの遂行上必要不可欠な機能を果たすと認められる場合であって、その収入のほとんどが同一国内の資源開発等プロジェクトから生ずる収益であるなど、租税回避リスクが限定的であると認められるものに限り、ペーパー・カンパニーに該当しないこととされました(注 2・ 3)。(注 1) 上記の「資源開発等プロジェク

ト」とは、管理支配会社等(注

4)の本店所在地国において行う

石油その他の天然資源の探鉱、開

発若しくは採取の事業(採取した

天然資源に密接に関連する事業を

含みます。)又はその本店所在地

国の社会資本の整備に関する事業

をいいます(措令39の14の 3 ⑨三

イ⑴ⅱ)。以下ⅲにおいて同じです。

 これらは、投資規模が巨額にの

ぼることや許認可等の観点から一

般的に JV 形態による進出が行わ

れ、かつ、物理的に現地に密接な

関係を有するプロジェクトが念頭

に置かれたものです。

 また、社会資本の整備に関する

事業とは、概ね、道路、港湾、鉄

道、通信、電力、水道、都市開発

などの社会的共通資本の整備に関

する事業が想定されています。管

理支配会社等の本店所在地国の社

会資本という限定がなされている

ので、こうした社会資本が物理的

にその本店所在地国と密接な関係

を有し、その対象となる資産の外

国への移転が困難であるようなも

のが対象になります。(注 2) こうした持株会社等は、現地企

業等とのJVで資源開発等プロジェ

クトに投資していくものである関

係上、必ずしもその所得は合算所

得とならない子会社配当(持株割

合25%以上等)に限らず、合算所

得とされる持株割合25%未満等の

配当や、出資が認められない中で

資金注入するための子会社への劣

後ローン等に係る受取利子が生じ

得ることになります。そのため、

上記イ及びロの持株会社の特例や、

上記ⅰ及びⅱの不動産保有会社の

特例ではカバーできず、資源開発

等プロジェクトに係る特例が必要

となるものです。(注 3) こうした同一国内の資源開発等

プロジェクトから生ずる所得につ

いては、外国関係会社の本店所在

地国以外の国又は地域からの所得

移転リスクが相対的に低いと考え

られます。(注 4) 上記の「管理支配会社等」とは、

租税特別措置法第66条の 6 第 1 項

各号に掲げる内国法人に係る他の

外国関係会社のうち、部分対象外

国関係会社に該当するもので、そ

の本店所在地国において、その役

員又は使用人がその本店所在地国

─�624�─

――国際課税関係の改正――

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(その本店所在地国に係る租税特

別措置法施行令第39条の14の 3 第

31項に規定する水域を含みます。)

において行う資源開発等プロジェ

クトを的確に遂行するために通常

必要と認められる業務の全てに従

事しているものをいい、その内国

法人に係る他の外国関係会社のう

ち部分対象外国関係会社に該当す

るものの役員又は使用人とその本

店所在地国を同じくする他の外国

法人の役員又は使用人がその本店

所在地国において共同で資源開発

等プロジェクトを的確に遂行する

ために通常必要と認められる業務

の全てに従事している場合の当該

他の外国関係会社及び当該他の外

国法人を含みます(措令39の14の 3 ⑨三イ⑴ⅱ)。以下ⅲにおいて同じです。

ⅰ 次の要件の全てに該当する外国関係会社(措令39の14の 3 ⑨三、措規22の11⑰⑱)a その主たる事業が次のいずれかに該当すること。⒜ 特定子会社(注)の株式等の保有(注) 上記の「特定子会社」とは、

その外国関係会社とその本店

所在地国を同じくする外国法

人で、次に掲げる要件の全て

に該当するものをいいます。

以下ⅲにおいて同じです。

・� その外国関係会社のその事業年度開始の時又は終了の時において、その発行済株式等のうちにその外国関係会社が有するその株式等の数若しくは金額の占める割合又はその発行済株式等

のうちの議決権のある株式等の数若しくは金額のうちにその外国関係会社が有するその議決権のある株式等の数若しくは金額の占める割合のいずれかが10%以上となっていること。・� 管理支配会社等の行う資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。

⒝ その外国関係会社に係る関連者以外の者からの資源開発等プロジェクトの遂行のための資金の調達及び特定子会社に対して行うその資金の提供⒞ 特定不動産(その本店所在地国にある不動産で、資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たしているものをいいます。以下ⅲにおいて同じです。)の保有

b その事業の管理、支配及び運営が管理支配会社等によって行われていること。c 管理支配会社等の行う資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。d その事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てが、その本店所在地国において、管理支配会社等の役員又は使用人によって行われていること。e その本店所在地国を管理支配会社等の本店所在地国と同じくすること。f 上記ロⅰⅴに掲げる要件に該当すること。g その事業年度の収入金額の合計

─�625�─

――国際課税関係の改正――

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額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 特定子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその特定子会社の本店所在地国の法令においてその特定子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)⒝ 特定子会社の株式等の譲渡(その外国関係会社に係る関連者以外の者への譲渡に限るものとし、その株式等の取得の日から一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合のその譲渡及びその譲渡を受けた株式等をその外国関係会社又はその外国関係会社に係る関連者に移転することが見込まれる場合のその譲渡を除きます。)に係る対価の額⒞ 特定子会社に対する貸付金(資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできないものに限ります。h⒝において同じです。)に係る利子の額⒟ 特定不動産の譲渡に係る対価の額⒠ 特定不動産の貸付け(特定不動産を使用させる行為を含みます。)による対価の額⒡ 資源開発等プロジェクトに係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

h その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資

産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる資産の帳簿価額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 特定子会社の株式等の帳簿価額⒝ 特定子会社に対する貸付金の帳簿価額⒞ 特定不動産の帳簿価額⒟ 未収金(上記g⒜から⒡までに係るものに限ります。)の帳簿価額⒠ 未収金、前払費用その他これらに類する資産(特定不動産に係るものに限ります。)の帳簿価額(⒟に掲げる金額を除きます。)⒡ 資源開発等プロジェクトに係る業務の通常の過程において生ずる現預金の帳簿価額

ⅱ その関連者以外の者からの資源開発等プロジェクトの遂行のための資金の調達及び被管理支配会社(注1)に係る特定子会社に対して行うその資金の提供を主たる事業とする外国関係会社で、次に掲げる要件の全てに該当するもの(注 2・ 3)(措規22の11⑮) これは、その関連者以外の者からの資金調達及び被管理支配会社に係る特定子会社への資金提供を主たる事業とする外国関係会社で、上記ⅰbからhまでの要件と同様の要件を満たすものについても、ペーパー・カンパニーに該当しないこととするものです。(注 1) 上記の「被管理支配会社」と

は、上記ⅰa⒜から⒞までに掲

げる事業のいずれかを主たる事

業とする外国関係会社で、ⅰb

からhまでに掲げる要件の全て

─�626�─

――国際課税関係の改正――

Page 65: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

に該当するものをいいます。以

下ⅱにおいて同じです。(注 2) 上記ⅰの外国関係会社のうち

ⅰa⒝に掲げる事業を主たる事

業とするものは、その株式等を

直接有する一定の外国法人(特

定子会社)(後掲の「ペーパー・

カンパニーの範囲から除外され

る一定の外国関係会社(③資源

開発等プロジェクトに係る一定

の外国関係会社)」の図のE)

に対する資金の提供を行う外国

関係会社(同図のD)が想定さ

れています。一方で、このⅱの

外国関係会社(同図のC)は、

株式等の直接的な保有関係はな

いけれども株式等の保有を通じ

て連鎖関係にある一定の外国法

人に対する資金の提供を行う外

国関係会社に対応したものです。

すなわち、外国関係会社(同図

のC)が、その被管理支配会社

(同図のD)に係る特定子会社

(同図のE)に対して資金の提

供を行うものが想定されていま

す。

 なお、上記ⅰの外国関係会社

のうちⅰa⒜又は⒞に掲げる事

業を主たる事業とするものにつ

いては、それぞれ特定子会社の

株式等又は特定不動産について

直接的な保有関係のみがあるこ

とを前提としている上記ⅰの外

国関係会社で対応が可能である

ことから、これと同様の特例は

設けられていません。(注 3) 他の被管理支配会社(ⅱに掲

げる外国関係会社をいいます。

以下(注 3)において同じで

す。)と租税特別措置法第66条

の 6 第 1 項各号に掲げる内国法

人との間にこれらの者と株式等

の保有を通じて連鎖関係にある

一又は二以上の外国関係会社で、

他の被管理支配会社に準ずるも

のを含むものとされています

(措規22の11⑯)。

a その事業の管理、支配及び運営が管理支配会社等によって行われていること。b 管理支配会社等の行う資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たしていること。c その事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てが、その本店所在地国において、管理支配会社等の役員又は使用人によって行われていること。d その本店所在地国を管理支配会社等の本店所在地国と同じくすること。e 上記ロⅱⅴに掲げる要件に該当すること。f その事業年度の収入金額の合計額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 被管理支配会社又は特定子会社から受ける剰余金の配当等の額(その受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部がその被管理支配会社の本店所在地国の法令においてその被管理支配会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額及びその受ける剰余金の配当等の額の全部又は一部

─�627�─

――国際課税関係の改正――

Page 66: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

がその特定子会社の本店所在地国の法令においてその特定子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその受ける剰余金の配当等の額を除きます。)⒝ 被管理支配会社の株式等の譲渡(その外国関係会社に係る関連者以外の者への譲渡に限るものとし、その取得の日から一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合のその譲渡及びその譲渡を受けた株式等をその外国関係会社又はその外国関係会社に係る関連者に移転することが見込まれる場合のその譲渡を除きます。以下⒝において同じです。)及び特定子会社の株式等の譲渡に係る対価の額⒞ 被管理支配会社又は被管理支配会社に係る特定子会社に対する貸付金(資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできないものに限ります。g⒝において同じです。)に係る利子の額⒟ 特定不動産の譲渡に係る対価の額⒠ 特定不動産の貸付け(特定不

動産を使用させる行為を含みます。)による対価の額⒡ 資源開発等プロジェクトに係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額

g その事業年度終了の時における貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに占める次に掲げる金額の合計額の割合が95%を超えていること。⒜ 被管理支配会社の株式等及び被管理支配会社に係る特定子会社の株式等の帳簿価額⒝ 被管理支配会社又は被管理支配会社に係る特定子会社に対する貸付金の帳簿価額⒞ 未収金(上記f⒜から⒡までに掲げる金額に係るものに限ります。)の帳簿価額⒟ 特定不動産の帳簿価額⒠ 未収金、前払費用その他これらに類する資産(特定不動産に係るものに限ります。)の帳簿価額(⒞に掲げる金額を除きます。)⒡ 資源開発等プロジェクトに係る業務の通常の過程において生ずる現預金の帳簿価額

─�628�─

――国際課税関係の改正――

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 なお、上記のペーパー・カンパニーの範囲の改正に伴い、国税庁、国税局又は税務署の当該職員がこれらの外国関係会社のいずれかに該当するかを判定するために必要があるときにこれらに該当することを明らかにする書類の提示等を求めることができる等の規定についても併せて改正が行われました。 すなわち、改正前の規定に加えて、国税庁、国税局又は税務署の当該職員が、内国法人に係る外国関係会社が上記イからハまでのいずれかに該当するかどうかを判定するために必要があるときは、その内国法人に対し、期間を定めて、その外国関係会社が上記イからハまでに該当することを明らかにする書類その他の資料の提示又は提出を求めることができることとされました。

この場合において、その書類その他の資料の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は上記イからハまでに該当しないものと推定されます(措法66の 6 ③)。ハ 事実上のキャッシュ・ボックスの範囲の改正 外国子会社合算税制においては、特に租税回避リスクが高い特定外国関係会社として、相当程度の受動的所得を稼得する法人を事実上のキャッシュ・ボックスとして会社単位の合算課税の対象としているころです。 今回の改正では、グループ内の再保険に関する非関連者基準をはじめとする保険関係の本税制の改正の一つとして、関連者からの収入保険料が大部分を占めているためにその引き受ける保険リスクの大部分が関

外国関係会社(他の被管理支配会社)

外国関係会社(被管理支配会社)

【収入割合要件】・特定子会社配当・特定子会社株式等譲渡対価(※4)・特定子会社に対する貸付金(※5)利子・特定不動産譲渡対価・特定不動産貸付対価・一定の預金利子

総収入金額【資産割合要件】・特定子会社株式等・特定子会社に対する貸付金・特定不動産・特定子会社に係る未収配当・特定子会社株式等に係る未収譲渡対価・特定子会社に対する貸付金に係る未収利子・特定不動産に係る未収譲渡対価・一定の預金に係る未収利子・特定不動産に係る未収金等の一定の資産・一定の現預金

総資産簿価

>95%

>95%

特定子会社

内国法人

Bと共同で管理支配等

Aと共同で管理支配等

D

管理支配会社等

Aと同一国に所在

(※ 1) 同一国所在の不動産(不動産の上に存する権利を含む。)で資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たすもの。(※ 2) 経済活動基準を満たす外国関係会社で、その本店所在地国において、その役員又は使用人が資源開発等プロジェクトを的確に遂行するために通常必要と認め

られる業務の全てに従事しているもの(その本店所在地国と同一国に所在する他の外国法人の役員又は使用人と共同で当該業務の全てに従事している場合の当該他の外国法人を含む。)。

(※ 3) その本店所在地国で行う石油その他の天然資源の探鉱、開発若しくは採取の事業(採取した天然資源に密接に関連する事業を含む。)又はその本店所在地国の社会資本の整備に関する事業。

(※ 4) 関連者以外の者への譲渡に限るものとし、一年以内に譲渡が行われることが見込まれていた場合の当該譲渡及びその譲渡を受けた株式等を譲渡元の外国関係会社又は関連者に移転することが見込まれる場合の当該譲渡を除く。

(※ 5) 資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない貸付金に係るものに限る。(※ 6) 資源開発等プロジェクトに係る業務の通常の過程で生ずるものに限る。

【事業要件(次のいずれか)】・特定子会社株式等の保有・非関連者からの資金調達及び特定子会社への資金提供・特定不動産(※1)の保有

【不可欠機能要件】管理支配会社等(※2)の行う資源開発等プロジェクト(※3)の遂行上不

可欠な機能【被管理支配要件】・管理支配会社等による管理・支配・運営・管理支配会社等の役員又は使用人による通常必要業務従事

【所在地国要件】管理支配会社等と同一国に所在

【課税要件】その所得がその本店所在地国で課税対象とされていること

【特定子会社要件】・同一国所在・持株割合 10%以上・資源開発等プロジェクトの遂行上不可欠な機能

10%以上

BC

外国関係会社(管理支配会社等)A

管理支配等

非関連者からの資金調達及び被管理支配会社に係る特定子会社Eへの資金提供を主たる事業とするもので

Dと同等のもの

資源開発等プロジェクト

配当等

・経済活動実体あり・同一国内の資源開発等 プロジェクトを行う

ペーパー・カンパニーの範囲から除外される一定の外国関係会社(③ 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社)

─�629�─

――国際課税関係の改正――

Page 68: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

連者の有するリスクであり、かつ、引き受けた保険リスクの多くを自ら抱え込んでいるために、保険におけるリスクの移転や分散といった重要な機能を果たしていると考えにくいような外国関係会社について、特に租税回避リスクが高い事実上のキャッシュ・ボックスとして、会社単位の合算課税の対象とされました。具体的には、次に掲げる要件のいずれにも該当する外国関係会社とされています。イ 外国関係会社の各事業年度の非関連者等収入保険料(注 1)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合として計算した割合(注 2)が10%未満であること(措法66の 6 ②二ハ⑴)。(注 1) 上記の「非関連者等収入保険料」

とは、関連者(注 3)以外の者から

収入する収入保険料をいい(措法66

の 6 ②二ハ⑴)、具体的には、次に掲

げる収入保険料とされています(措

令39の14の 3 ⑬)。

a 外国関係会社に係る関連者以外

の者から収入する収入保険料(そ

の収入保険料が再保険に係るもの

である場合には、関連者以外の者

が有する資産又は関連者以外の者

が負う損害賠償責任を保険の目的

とする保険に係る収入保険料に限

ります。)

b 特定保険委託者に該当する外国

関係会社がその特定保険委託者に

係る特定保険受託者又はその特定

保険委託者と特定保険受託者を同

じくする他の特定保険委託者から

収入する収入保険料(注 4)及び

特定保険受託者に該当する外国関

係会社がその特定保険受託者に係

る特定保険委託者から収入する収

入保険料(注 4)(注 2) 上記の割合は、外国関係会社の各

事業年度の非関連者等収入保険料の

合計額をその各事業年度の収入保険

料の合計額で除して計算した割合と

されています(措令39の14の 3 ⑭)。

 基本的には保険業を主たる事業と

する外国関係会社に係る非関連者基

準の判定(措令39の14の 3 ㉘五)と

同様の計算式となっていますが、こ

の事実上のキャッシュ・ボックスの

判定対象となる外国関係会社は、保

険業を主たる事業とする外国関係会

社に限られていません。

 また、非関連者基準の判定におい

ては収入保険料の範囲に一定の保険

事務委託手数料を含めることとされ

ていますが(措令39の14の 3 ㉘五)、

この事実上のキャッシュ・ボックス

の判定においては収入保険料の範囲

にこうした保険事務委託手数料を含

めないこととされています。こうし

た保険事務委託手数料は、保険リス

クの引受けに直接関係するものでは

なく、また、再保険として出再する

ような性質のものではないことから、

保険に係る事実上のキャッシュ・ボ

ックスの改正の趣旨を踏まえ、収入

保険料の範囲に含めないこととされ

ているものです。保険業に係る非関

連者基準の改正については、下記⑵

②ロをご参照ください。(注 3) 上記の「関連者」とは、外国関係

会社にとっての非関連者基準におけ

る関連者(その主たる事業が非関連

者基準の適用されない業種である外

国関係会社にあっては、非関連者基

準が適用されるものとして読み替え

た場合の関連者)をいいます(措令

39の14の 3 ⑫)。以下⑴において同じ

です。(注 4) 下記⑵②ロロⅰからⅲまでに掲げ

─�630�─

――国際課税関係の改正――

Page 69: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

る要件の全てに該当する再保険に係

る収入保険料に限ることとされてい

ます(措令39の14の 3 ⑬二)。

ロ 外国関係会社の各事業年度の非関連者等支払再保険料合計額(注 1)の関連者等収入保険料の合計額に対する割合として計算した割合(注 2)が50%未満であること(措法66の 6 ②二ハ⑵)。(注 1) 上記の「非関連者等支払再保険料

合計額」とは、関連者以外の者に支

払う再保険料の合計額を関連者等収

入保険料(非関連者等収入保険料以

外の収入保険料をいいます。)の合計

額の収入保険料の合計額に対する割

合で按分した金額をいい(措法66の

6 ②二ハ⑵)、具体的にはaに掲げる

金額にbに掲げる割合を乗じて計算

した金額とされています(措令39の

14の 3 ⑮)。

a 外国関係会社が各事業年度にお

いてその外国関係会社に係る関連

者以外の者に支払う再保険料(特

定保険委託者に該当する外国関係

会社がその特定保険委託者に係る

特定保険受託者又はその特定保険

委託者と特定保険受託者を同じく

する他の特定保険委託者に支払う

再保険料及び特定保険受託者に該

当する外国関係会社がその特定保

険受託者に係る特定保険委託者に

支払う再保険料を含みます。)の合

計額

b 外国関係会社の各事業年度の関

連者等収入保険料の合計額の収入

保険料の合計額に対する割合(注 2) 具体的には、外国関係会社の各事

業年度の非関連者等支払再保険料合

計額をその各事業年度の関連者等収

入保険料の合計額で除して計算した

割合とされています(措令39の14の

3 ⑯)。

 なお、上記ロについては、これらの計算式をまとめると関連者等収入保険料が約分され、以下の計算式によって求めることもできます。《算式》

関連者以外の者に対して支払う再保険料の合計額

< 50%収入保険料の合計額

 また、保険所得については今回の改正で追加された事実上のキャッシュ・ボックスの該当性の判定対象とされるため、従来の事実上のキャッシュ・ボックスの該当性の判定対象となる一定の受動的所得の範囲には、今回の改正で部分合算課税制度における特定所得の範囲に追加された保険所得は含まれないこととされています(措法66の6 ②二ロ)。特定所得の範囲に係る改正については、下記 4 ⑴②をご参照ください。

─�631�─

――国際課税関係の改正――

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A E

FB

C

D

収入保険料 支払再保険料

再(々)保険会社関連者保険料

(引受) 関連者再(々)保険料(出再)

関連者再保険料(受再)

非関連者再(々)保険料(出再)

非関連者再保険料(受再)

非関連者保険料(引受)

<10%非関連者等収入保険料の合計額(C+D)収入保険料の合計額(A ~D)

<50%非関連者等支払再保険料合計額(F)関連者等収入保険料の合計額(A+B)

かつ事実上のキャッシュ・ボックスに該当

元受保険が関連者リスクに係る再保険

関連者

外国関係会社

非関連者

(注) イ) 特定保険委託者に係る特定保険受託者及び特定保険受託者を同じくする他の特定保険委託者   ロ) 特定保険受託者に係る特定保険委託者

再保険

再保険

再保険

一定の関連者(注)

関連者

非関連者

一定の関連者(注)

○  関連者からの保険料収入が保険料の大宗を占め、グループ内で抱え込むようなケースについて、保険におけるリスクの移転や分散という重要な機能を果たしていると考えにくい外国関係会社について、特に租税回避リスクが高いキャッシュ・ボックスと整理。

保険に係る事実上のキャッシュ・ボックスの判定

事実上のキャッシュ・ボックス⑴ 総資産の額に対する一定の受動的所得(※)の割合が 30%を超える外国関係会社  ただし、総資産の額に対する一定の資産の額の割合が 50%を超えるものに限る。

(※) 一定の受動的所得の範囲

【改正事項】以下の外国関係会社を追加する。⑵ 次のいずれにも該当する外国関係会社

イ 非関連者等収入保険料(※)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が 10%未満  (※)非関連者等から収入する一定の収入保険料ロ 非関連者等支払再保険料合計額(※)の関連者等収入保険料(非関連者等収入保険料以外の収入保険料)の合計額に対する割合が 50%未満  (※)非関連者等に支払う再保険料の合計額を関連者等収入保険料の合計額の収入保険料の合計額に対する割合で按分した金額

<10%非関連者等収入保険料の合計額

収入保険料の合計額<50%非関連者等支払再保険料合計額

関連者等収入保険料の合計額かつ

≪計算式のイメージ≫

受取配当等

受取利子等

有価証券貸付対価

有価証券譲渡損益

デリバティブ

取引損益外国為替差損益

その他の金融所得 保険所得 固定資産

貸付対価無形資産等

使用料無形資産等譲渡損益

異常所得

事業会社 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ ○ ○ ×清算外国金融子会社等相当 ○ ○ ○ ×

外国金融子会社等相当

○(異常資本に係る所得) ○ ○ ○ ×

(特定清算事業年度においては特定金融所得金額がないものとして計算)

いずれか多い金額

【改正事項】令和元年度改正で受動的所得に追加された保険所得は含まれないこととする

(注)各受動的所得の金額は、部分合算対象所得を計算するとした場合の部分合算対象所得。例えば、受取配当等については、持株割合 25%以上の配当等を除外した金額。

【改正事項】令和元年度改正で受動的所得に追加された保険所得は含まれないこととする

事実上のキャッシュ・ボックスの範囲に関する改正

─�632�─

――国際課税関係の改正――

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⑵ 対象外国関係会社① 改正前の制度の概要 対象外国関係会社とは、次のイからニまでに掲げる要件(経済活動基準)のいずれかに該当しない外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除きます。)とされています(旧措法66の 6 ②三)。イ 事業基準 株式等若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含みます。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含みます。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業とするものでないこと(措法66の 6 ②三イ)。 これらの事業を主たる事業とする外国関係会社であっても、次の外国関係会社は除かれます。イ 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうちその外国関係会社が他の法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務(ロにおいて「統括業務」といいます。)を行う場合における他の法人の株式等の保有を行う一定のもの(措法66の 6 ②三イ⑴、旧措令39の14の 3 ⑤~⑩)ロ 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうち部分対象外国関係会社であるとした場合に外国金融子会社等に該当することとなるもの(外国金融機関に該当することとなるもの及びイに掲げるものを除きます。)(措法66の 6 ②三イ⑵)ハ 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうちその役員又は使用人がその本店所在地国において航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること

等の一定の要件を満たすもの(旧措法66の 6 ②三イ⑶、旧措令39の14の 3 ⑪)

ロ 実体基準 その本店所在地国においてその主たる事業(上記イイに掲げる外国関係会社にあっては統括業務とし、上記イロに掲げる外国関係会社にあっては一定の経営管理とされています。ニにおいて同じです。)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること(注)(措法66の 6 ②三ロ)。(注) 次の状況にあることを含むものとされ

ています(措法66の 6 ②三ロ、旧措令39

の14の 3 ⑬)。

イ 外国関係会社(特定保険外国子会社

等に該当するものに限ります。)に係る

特定保険協議者がその本店所在地国に

おいてその主たる事業を行うに必要と

認められる事務所、店舗その他の固定

施設を有している状況

ロ 外国関係会社(特定保険委託者に該

当するものに限ります。)に係る特定保

険受託者がその本店所在地国において

その主たる事業を行うに必要と認めら

れる事務所、店舗その他の固定施設を

有している状況

ハ 管理支配基準 その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(注)(措法66の 6 ②三ロ)。(注) 次の状況にあることを含むものとされ

ています(措法66の 6 ②三ロ、旧措令39

の14の 3 ⑭)。

イ 外国関係会社(特定保険外国子会社

等に該当するものに限ります。)に係る

特定保険協議者がその本店所在地国に

おいてその事業の管理、支配及び運営

を自ら行っている状況

ロ 外国関係会社(特定保険委託者に該

当するものに限ります。)に係る特定保

─�633�─

――国際課税関係の改正――

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険受託者がその本店所在地国において

その事業の管理、支配及び運営を自ら

行っている状況

ニ 非関連者基準又は所在地国基準 各事業年度においてその行う主たる事業の区分に応じそれぞれ次に定める場合に該当すること(旧措法66の 6 ②三ハ)。イ 非関連者基準 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は物品賃貸業(航空機の貸付けを主たる事業とするものに限ります。) その事業を主として外国関係会社に係る関連者以外の者との間で行っている場合(注)(旧措法66の 6 ②三ハ⑴)(注) 保険業を主たる事業とする外国関係

会社に係る非関連者基準の判定につい

ては、特定保険外国子会社等と特定保

険協議者との間又は特定保険委託者と

特定保険受託者との間で一体として保

険業を営む場合にこれらを一体として

非関連者基準の判定を行うこととする

措置が設けられています(旧措令39の

14の 3 ⑲)。

ロ 所在地国基準 上記イに掲げるの事業以外の事業 その事業を主としてその本店所在地国(本店所在地国に係る一定の水域を含みます。)において行っている場合(措法66の 6 ②三ハ⑵)

② 改正の内容イ 実体基準・管理支配基準 特定保険外国子会社等、特定保険協議者、特定保険委託者及び特定保険受託者に該当する外国関係会社の範囲について上記⑴②イのとおり改正が行われています。これに伴い、上記①ロの(注)及びハの(注)に掲げられている状況についても、それぞれ改正後の範囲による特定保険外国子会社等、特定保険協議者、特定保険委託者及び特定保

険受託者により判定されることとなります(措令39の14の 3 ㉕㉖)。ロ 非関連者基準 現地で保険業を営む外国関係会社が、グループの資本の効率化等の観点から、グループ内再保険取引を通じて引き受けたリスクの再配分を行うことがあります。他方でグループ内の再保険取引については、保険引受けによる所得を保険リスクの所在地国から別の国に容易に移転できるという意味で、租税回避リスクが高いという側面があります。これらを踏まえ、一定の要件を満たす再保険取引に係る再保険料に限り、関連者から収入する保険料に該当しないこととする等、保険業を主たる事業とする外国関係会社に係る非関連者基準の適用について改正が行われました。具体的には、次のとおりです。イ 関連者の範囲 改正前は、非関連者基準の適用上、特定保険協議者に係る特定保険外国子会社等及び特定保険受託者に係る特定保険委託者は関連者に含まないものとされていましたが、今回の改正では、この取扱いが廃止され(旧措令39の14の 3 ⑲)、関連者に該当することとされました。 その上で、下記ロのとおり、特定保険委託者又は特定保険受託者が行う一定の再保険取引に係る再保険料について関連者から収入する保険料に該当しないこととされ、また、下記ハのとおり、特定保険協議者が特定保険外国子会社等から受ける一定の手数料及び特定保険受託者が特定保険委託者から受ける一定の手数料について、関連者から収入する保険料に該当しないこととされました。ロ 一定の再保険料の扱い 特定保険受託者又は特定保険委託者が受ける次の全ての要件を満たす再保険に係る保険料について、関連者から収入す

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――国際課税関係の改正――

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る保険料に該当しないこととされました(措令39の14の 3 ㉘五ロ)。ⅰ 特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険又は特定保険委託者とその特定保険委託者と特定保険受託者を同じくする他の特定保険委託者との間で行われる再保険であること。 つまり、同一国内で実体ある保険事業が一体経営されている保険グループ内での再保険取引ということです。ⅱ 再保険の引受けに係る保険(注)に係る収入保険料の合計額のうちに関連者以外の者(その外国関係会社の本店所在地国と同一の国又は地域に住所を有する個人又は本店若しくは主たる事務所を有する法人に限ります。)を被保険者とする保険に係るものの占める割合が95%以上であること。 つまり、保険引受けによる所得を保険リスクの所在地国から別の国に移転する可能性が相対的に低いということです。(注) 上記の「再保険の引受けに係る保

険」とは、その再保険に係る原保険

をいいます。また、その引き受けた

再保険が再々保険である場合には、

その直前の再保険ではなく当初の原

保険をいうこととなります。

ⅲ 特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険にあってはその再保険を行うことによりその特定保険委託者及びその特定保険受託者の資本の効率的な

使用と収益性の向上に資することとなると認められ、特定保険委託者とその特定保険委託者と特定保険受託者を同じくする他の特定保険委託者との間で行われる再保険にあってはその再保険を行うことによりこれらの特定保険委託者の資本の効率的な使用と収益性の向上に資することとなると認められること。 つまり、引き受けたリスクに見合う資本を保有することを求める資本規制があることを前提に、引き受けたリスクを、グループ内再保険を通じて再配分することで、必要以上の資本の計上を避け、再保険の当事者全体の資本に対する利益率(再保険の当事者全体のROE)の向上が図られることになるということです。

ハ 一定の保険事務手数料の扱い 次に掲げる手数料の額については、関連者から収入する保険料に該当しないこととされました(措令39の14の 3 ㉘五ハ)。ⅰ 特定保険協議者に該当する外国関係会社がその特定保険協議者に係る特定保険外国子会社等が行う保険の引受けについて保険契約の内容を確定するための協議その他の業務に係る対価としてその特定保険外国子会社等から支払を受ける手数料の額ⅱ 特定保険受託者に該当する外国関係会社がその特定保険受託者に係る特定保険委託者から受託した保険業に関する業務に係る対価としてその特定保険委託者から支払を受ける手数料の額

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――国際課税関係の改正――

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⑶ 基準所得金額 基準所得金額は、特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき本邦法令基準又は現地法令基準によって計算した金額とされています(措法66の6 ②四、旧措令39の15①②)。 外国子会社合算税制は外国関係会社ごとに適用されることから、その合算対象所得、租税負担割合、外国税額控除等の計算については外国関係会社ごとに行うのが基本的な枠組みです。一方で、外国関係会社について現地で連結納税やパススルー課税が行われている場合には、現地税法による所得金額が外国関係会社ごとに計算されていないことから、今回の改正では、上記の基本的な枠組みを踏まえ、そのような場合における現地法令基準による基準所得金額の計算方法について、本店所在地国の法令の規定のうち企業集団等所得課税規定を適用しないものとして計算することとする等の改正が行われました。

 なお、本邦法令基準によって基準所得金額を計算する場合については、特段の改正は行われておらず、従来どおりとなります。① 企業集団等所得課税規定 「企業集団等所得課税規定」とは、次に掲げる規定とされています(措令39の15⑥)。イ 本店所在地国における連結納税規定 外国法人の属する企業集団の所得に対して法人所得税を課することとし、かつ、その企業集団に属する一の外国法人のみがその法人所得税に係る納税申告書(国税通則法第 2条第 6号に規定する納税申告書をいいます。ロにおいて同じです。)に相当する申告書を提出することとするその外国法人の本店所在地国の法令の規定(措令39の15⑥一) なお、国税通則法第 2条第 6号に規定する「納税申告書」は申告納税方式による税に係る申告書をいいますが、上記の「納税申告書に相当する申告書」には、賦課課税

【改正前】○ 保険業を主たる事業とする外国関係会社に係る非関連者基準の要件は次の算式に該当することとされている。

当該収入保険料で非関連者から収入するもの/各事業年度の収入保険料の総額>50%○ 上記の計算上、特定保険受託者に係る特定保険委託者は関連者に含まないものとされる。【改正事項】

外国保険持株会社

100%

100%100%

外国

日本

特定保険受託者A(管理運営会社)※保険会社

100% 100%

保険持株会社

一定の再保険料

イメージ

特定保険委託者B(保険会社)

特定保険委託者D(保険会社)

特定保険委託者C(保険会社)

業務委託手数料

同一の特定保険受託者に係るグループ

通常必要業務従事要件

【改正事項 3 .】関連者収入に該当しない。

【改正事項 1 .】特定保険受託者Aに係る関連者に該当する。

一定の再保険料【改正事項 2.】関連者収入に該当しない。

1.特定保険受託者に係る特定保険委託者は関連者に含まれないものとはしない(関連者に該当する)こととする。2.特定保険委託者又は特定保険受託者が収入する一定の再保険料(注)について、関連者から収入する保険料に該当しないこととする。(注)次の全ての要件を満たす再保険に係る再保険料とする。

3 .特定保険受託者が特定保険委託者から受ける業務委託手数料の額について、関連者から収入する保険料に該当しないこととする。※ロイズ市場における保険引受子会社と管理運営子会社についても上記の改正事項 1.及び 3.と同様とする。

⑴ その特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険又は同一の特定保険受託者に係る特定保険委託者間で行われる再 保険であること。⑵ その再保険に係る原保険に係る収入保険料の95%以上が本店所在地国に所在する非関連者のリスクに係るものであること。⑶ 資本の効率化に資するものであること。

保険業を主たる事業とする外国関係会社に係る非関連者基準の改正

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――国際課税関係の改正――

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方式による税について賦課課税の前提となる所得の金額を申告する場合の申告書も含まれることになります。 また、その企業集団に属する一の外国法人のみがその法人所得税に係る納税申告書に相当する申告書を提出する旨の要件が設けられているので、個々のメンバーが申告書を提出することとされている英国のグループ・リリーフは、この対象に含まれないものと考えられます。ドイツのオルガンシャフトもこれと同様と考えられます。ロ 第三国における連結納税規定 外国法人(法人の所得に対して課される税が存在しない国若しくは地域に本店若しくは主たる事務所を有するもの又はその外国法人の本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定によりその外国法人の所得の全部につき法人所得税を課さないこととされるものに限ります。)の属する企業集団の所得に対して法人所得税を課することとし、かつ、その企業集団に属する一の外国法人のみがその法人所得税に係る納税申告書に相当する申告書を提出することとするその外国法人の本店所在地国以外の国又は地域の法令の規定(措令39の15⑥二) 第三国における連結納税規定は、例えば、無税国であるバミューダを本店所在地国とする子会社について、米国税法上、米国子会社として扱った上で、米国における連結納税の対象とするような場合の米国の連結納税規定が該当します。 外国法人の範囲を法人の所得に対して課

される税が存在しない国若しくは地域に本店等を有するもの又はその外国法人の本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定によりその外国法人の所得の全部につき法人所得税を課さないこととされるものに限定しているのは、このような子会社については、その本店所在地国で課される法人所得税がないことから、その本店所在地国の法令の計算と第三国の法令の計算との間でいわゆる仮定計算の重複が生じないためです。ハ パススルー課税規定 外国法人の所得をその外国法人の株主等である者の所得として取り扱うこととするその外国法人の本店所在地国の法令の規定(措令39の15⑥三) すなわち、我が国の税法では外国法人と認識される事業体がその事業体の本店所在地国ではパススルー課税事業体(その稼得する所得が事業体段階では課税対象とされず、その構成員段階で課税対象とされる構成員課税事業体)として認識される場合におけるその事業体の本店所在地国におけるパススルー課税に関する規定をいいます。 なお、外国法人の所得をその株主等である者の所得として取り扱う「本店所在地国以外の国又は地域」の法令の規定、つまり本店所在地国以外の国又は地域のパススルー課税規定は、ハイブリッド・ミスマッチを利用した外国子会社合算税制のループホールを生じさせる可能性があることから、企業集団等所得課税規定とされていません。

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――国際課税関係の改正――

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② 現地法令基準による基準所得金額の計算 現地法令基準による基準所得金額は、外国関係会社の決算に基づく所得の金額につき、その外国関係会社の本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額にその所得の金額に係る調整を加えた金額とされています(措令39の15②)。 この「本店所在地国の法令の規定」とは、その本店所在地国の法人所得税に関する法令(法人所得税に関する法令が二以上ある場合には、そのうち主たる法人所得税に関する法令)の規定(企業集団等所得課税規定を除きます。)をいいます。 すなわち、「本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」は、その本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定から企業集団等所得課税規定を除いた規定により計算した所得の金額とされていることから、その法令の規定から、企業集団の所得に対して課税するといった要素や、外国関係会社の株主等である者の所得として取り扱うといった

要素がないものとした場合に外国関係会社ごとに計算される所得の金額となります。 また、企業集団等所得課税規定以外のその他の要素について調整すべき旨は規定されていないことから、その法令の中に任意にその適用を選択できる規定がある場合には、原則として、外国関係会社の所得に係る実際の連結納税又はパススルー課税における申告において行われた選択と同じ選択を行ったものとして上記の所得の金額の計算を行うものと考えられます。 この基準所得金額は、上記の本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額にその所得の金額に係るイからワまでに掲げる金額の合計額を加算した金額からその所得の金額に係るカからソまでに掲げる金額の合計額を控除した残額(その計算した金額が欠損の金額となる場合には、その計算した金額に係るイからワまでに掲げる金額の合計額からその欠損の金額にその計算した金額に係るカからソまでに掲げる金額の合計額を加算した金

外国関係会社(株主等)

外国関係会社(パススルー事業体)

内国法人

外国関係会社(連結親法人)

外国関係会社(連結子法人)

内国法人

100%

連結納税

日本

外国

【申告・納付】所得 300

税 60

日本

外国

所得の金額   500外国法人税の額 100

所得の金額 ▲200外国法人税の額 0

※ パススルー事業体の所得等を含まない

現地で連結納税 現地でパススルー課税

企業集団の所得に対して課税

パススルー事業体の所得がその株主等の所得として取り扱われる

所得の金額 500外国法人税の額 100

所得の金額 ▲200外国法人税の額 0

パススルー

【申告・納付】所得 300

税 60

◯ 外国子会社合算税制は外国関係会社ごとに適用されることから、その適用対象金額、租税負担割合及び外国税額控除等の計算については、外国関係会社ごとに行うのが基本的枠組み。

◯ この枠組みを踏まえ、現地で連結納税又はパススルー課税が行われている外国関係会社の適用対象金額、租税負担割合及び外国税額控除等の計算について、現地の法令の規定のうち企業集団等所得課税規定(連結納税・パススルーとして取り扱われる規定)を適用しないものとして各社別に計算される金額を用いて計算するものとして整備。

【改正後】企業集団等所得課税規定

(連結納税・パススルーとして取り扱われる規定)を適用しないで計算した所得金額及び税額を基礎として、適用対象金額、租税負担割合、外国税額控除等の計算を行う。

100%

現地で連結納税等を行う外国関係会社の適用対象金額等の計算方法の整備

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――国際課税関係の改正――

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額を控除した残額)とされています(注 1)(措令39の15②)。イ 非課税所得金額ロ 支払配当等の額の損金算入額ハ 超過償却額ニ 資産評価損の損金算入超過額ホ 過大役員給与の額ヘ 過大使用人給与の額ト 寄附金の損金算入超過額チ 納付する法人所得税の額の損金算入額(注 2)

リ 繰越欠損金額の損金算入額ヌ 保険準備金繰入限度超過額ル 保険準備金取崩不足額ヲ 交際費等の損金算入超過額ワ 組合等損失額の損金算入超過額カ 過年度の組合等損失超過額繰入額ヨ 還付を受ける法人所得税の額の益金算入額(注 3)タ 資産評価益の益金算入超過額レ 子会社配当等の額ソ 特定部分対象外国関係会社株式等の特定譲渡に係る譲渡利益額

(注 1) これらの金額は、上記の「本店所在地

国の法令の規定により計算した所得の金

額」に係る金額とされていることから、

原則としていずれも企業集団等所得課税

規定を除いた法令の規定により計算され

ることとなります。(注 2) 法人所得税に関する法令に企業集団等

所得課税規定がある場合のその法人所得

税にあっては、実際に納付した額ではな

く、企業集団等所得課税規定の適用がな

いものとした場合に納付するものとして

計算される法人所得税の額(⑷②におい

て「個別計算納付法人所得税額」といい

ます。)でその各事業年度の損金の額に算

入している金額とされています(措令39

の15②八)。個別計算納付法人所得税額は、

企業集団等所得課税規定の適用がないも

のとした場合の所得金額を基礎として、

企業集団等所得課税規定の適用がないも

のとした場合の法人所得税に関する法令

に基づいて納付するものとして計算され

る金額となります。(注 3) 法人所得税に関する法令に企業集団等

所得課税規定がある場合のその法人所得

税にあっては、実際に還付を受けた額で

はなく、企業集団等所得課税規定の適用

がないものとした場合に還付を受けるも

のとして計算される法人所得税の額(⑷

②において「個別計算還付法人所得税額」

といいます。)でその各事業年度の益金の

額に算入している金額とされています(措

令39の15②十五)。個別計算還付法人所得

税額は、企業集団等所得課税規定の適用

がないものとした場合の所得金額を基礎

として、企業集団等所得課税規定の適用

がないものとした場合の法人所得税に関

する法令に基づいて還付を受けるものと

して計算される金額となります。

⑷ 適用対象金額 適用対象金額は、基準所得金額に繰越欠損金額及び納付法人所得税の額に関する調整を加えた金額とされています。今回の改正では、この繰越欠損金額の計算及び納付法人所得税の額について企業集団等所得課税規定に対応した整備が行われました(措令39の15⑤)。① 適用対象金額の計算上控除される過去の欠損金額 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度開始の日前 7年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額(注)について、適用対象金額の計算上控除することとされています(措令39の15⑤一)。(注) 特定外国関係会社又は対象外国関係会社

に該当しなかった事業年度及び合算課税の

適用免除となる事業年度において生じた欠

損金額については、控除の対象から除くこ

─�639�─

――国際課税関係の改正――

Page 78: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

ととされています(措令39の15⑤一)。

 上記の「欠損金額」とは、外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額について基準所得金額の計算の規定を適用した場合に計算される欠損の金額をいいます(措令39の15⑦)。したがって、現地法令基準により基準所得金額を計算している外国関係会社にあっては、上記⑶②と同様に企業集団等所得課税規定を除いた法令の規定により計算することとなります。② 適用対象金額の計算上控除される納付法人所得税の額 改正前の適用対象金額の計算上控除される納付法人所得税の額は、特定外国関係会社又

は対象外国関係会社が各事業年度において納付をすることとなる法人所得税の額(その各事業年度において還付を受けることとなる法人所得税の額がある場合には、その還付を受けることとなる法人所得税の額を控除した金額)とされています(旧措令39の15⑤二)。 今回の改正では、法人所得税に関する法令に企業集団等所得課税規定がある場合のその法人所得税にあっては、上記の「納付をすることとなる法人所得税の額」及び「還付を受けることとなる法人所得税の額」について、それぞれ個別計算納付法人所得税額及び個別計算還付法人所得税額により計算することとされました(措令39の15⑤二)。

4  部分合算課税制度

⑴ 特定所得の金額① デリバティブ取引損益 特定所得の金額として掲げられているデリバティブ取引損益の額は、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除

きます。以下 4において同じです。)が行うデリバティブ取引(法人税法第61条の 5第 1項(デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)に規定するデリバティブ取引をいいます。以下①において同じです。)に係る利益の額又は損失の額とされ、具体的には、デリバティブ取引に

特定外国関係会社又は対象外国関係会社の決算に基づく所得の金額(当期利益)

子会社から受ける配当等

その他

基準所得金額(措法 66 の 6②四)

適用対象金額(措法 66 の 6②四)

繰越欠損金額(措令 39 の 15⑤一)

納付法人所得税の額(措令 39 の 15⑤二)

持株割合等 課税対象金額

いずれかを選択して継続適用

我が国の税法に基づく計算(本邦法令基準)(措令 39 の 15①)

【改正後】企業集団等所得課税規定の適用がないものとして計算

【改正後】企業集団等所得課税規定の適用がないものとして計算(現地法令基準で計算する場合)

特定外国関係会社又は対象外国関係会社の本店所在地国の税法に基づく計算

(現地法令基準)(措令 39 の 15②)

【改正後】企業集団等所得課税規定の適用がないものとして計算

特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額等の計算の概要

─�640�─

――国際課税関係の改正――

Page 79: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

係る利益の額又は損失の額につき同条の規定その他法人税に関する法令の規定(同法第61条の 6(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ)を除きます。)の例に準じて計算した場合に算出される金額とされています(措法66の 6 ⑥五、旧措規22の11⑫)。 一方で、短期売買商品の価額の変動に伴って生ずるおそれのある損失を減少させるために行われるデリバティブ取引に係る損益については、短期売買商品の譲渡損益や時価評価損益が部分合算課税の対象とされていないことから、部分合算課税の対象から除外されています(措法66の 6 ⑥五、旧措規22の11⑰⑱)。 今回の法人税法の改正において、仮想通貨の譲渡損益や時価評価損益について、短期売買商品と同様の規定が設けられましたが、これらの損益は、部分合算課税の対象とされないことから、仮想通貨の価額の変動に伴って生ずるおそれのある損失を減少させるために行われるデリバティブ取引に係る損益についても、同様に部分合算課税の対象から除外することとされました(措規22の11��)。② 保険所得 BEPS プロジェクトの最終報告書(行動3「外国子会社合算税制の強化(Designing�Effective� Controlled� Foreign� Company�Rules)」においては、保険所得も配当や利子と同様に BEPS リスクの高い所得類型とされており、諸外国の外国子会社合算税制においても基本的に合算対象所得とされていることを踏まえ、今回、外国子会社合算税制における保険の取扱いについて全般的に改正を行う中で、保険所得が部分合算課税の対象に追加されました。

 部分対象外国関係会社に係る特定所得の金額に追加された保険所得の金額は、各事業年度の収入保険料から支払再保険料を控除した正味の収入保険料と、支払保険金から収入した再保険金を控除した正味の支払再保険金の額との差額に相当する金額とされており(措法66の 6 ⑥七の二)、具体的には、部分対象外国関係会社のイに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額とされています(措令39の17の 3 ⑰⑱)。イ その事業年度において収入した、又は収入すべきことの確定した収入保険料(その収入保険料のうちに払い戻した、又は払い戻すべきものがある場合には、その金額を控除した残額)及び再保険返戻金の合計額からその事業年度において支払った、又は支払うべきことの確定した再保険料及び解約返戻金の合計額を控除した残額ロ その事業年度において支払った、又は支払うべきことの確定した支払保険金の額の合計額からその事業年度において収入した、又は収入すべきことの確定した再保険金の額の合計額を控除した残額

(注) 上記のイ及びロの金額は、それぞれ、そ

の事業年度の金額とされていることから、

イの収入保険料とロの支払保険金の間の対

応関係は求められていません。

 なお、部分対象外国関係会社が外国金融子会社等に該当する場合(すなわち、下記 5 ⑴①の法令準拠要件及び通常必要業務従事要件のいずれにも該当する等の場合)には、利子や配当等の金融所得と同様に、この保険所得は、部分合算課税の対象とされていません。

─�641�─

――国際課税関係の改正――

Page 80: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

③ 異常所得 外国関係会社の資産規模や人員等の経済実態に照らせば、その事業から通常生じ得ず、発生する根拠がないと考えられる所得について、異常所得として部分合算課税の対象とされています。改正前の異常所得の範囲は、受動的所得として掲げられている所得類型の金額がないものとした場合のその各事業年度の決算に基づく所得の金額(すなわちこれらの所得類型の金額がないものとした場合の会計上の税引後当期利益の額)から、その各事業年度に係る所得控除の金額を控除した残額とされています(旧措法66の 6 ⑥十一、旧措令39の17の 3 ㉕~�)。 今回の改正では、特定所得の金額に保険所得の金額が追加されたことに対応し、上記の異常所得の計算上ないものとして計算される受動的所得の所得類型の金額に保険所得を追加する整備が行われました。具体的には、上記②で特定所得として追加された金額と同じ金額がこの対象となります(措法66の 6 ⑥十一チ)。

⑵ 部分適用対象金額 部分適用対象金額は、次に掲げる金額の合計

額とされています(措法66の 6 ⑦)。① 部分対象外国関係会社の各事業年度の非損益通算グループ所得の金額(注)(注) 上記の「非損益通算グループ所得の金額」

とは、部分対象外国関係会社に係る特定所

得の金額として掲げられている金額のうち、

旧租税特別措置法第66条の 6 第 6 項第 1 号

から第 3 号まで、第 8 号、第 9 号及び第11

号に掲げられている剰余金の配当等、受取

利子等、有価証券の貸付対価、固定資産の

貸付対価、無形資産等の使用料及び異常所

得の金額をいいます。

② 各事業年度の損益通算グループ所得の金額(注 1)の合計額(その合計額が零を下回る場合には零となります。)を基礎として各事業年度開始の日前 7年以内に開始した各事業年度において生じた損益通算グループ所得の金額の合計額が零を下回る部分の金額につき調整を加えた金額(注 2)(注 1) 上記の「損益通算グループ所得の金額」

とは、部分対象外国関係会社に係る特定

所得の金額として掲げられている金額の

うち、非損益通算グループ所得の金額以

外の金額をいいます。(注 2) この調整を加えた金額とは、具体的に

【イメージ】

X 社 Y 社

再保険会社

収入保険料 支払った再保険料

支払保険金の額 収入した再保険金の額

A B

C D

部分対象外国関係会社

(外国金融子会社等に該当するものを除く。)

【計算式】

保険所得の金額 = ①( A - B ) - ②( C - D )

◯ ①に掲げる金額から②に掲げる金額を減算した金額について、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除く。)に係る部分合算課税の対象となる特定所得の金額に追加。① 収入保険料の合計額(A)から支払った再保険料の合計額(B)を控除した残額に相当する金額② 支払保険金の額の合計額(C)から収入した再保険金の額の合計額(D)を控除した残額に相当する金額

部分合算課税の対象となる所得の範囲(保険所得の追加)

─�642�─

――国際課税関係の改正――

Page 81: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

は、部分対象外国関係会社の各事業年度

の損益通算グループ所得の金額の合計額

(零を下回る場合には零となります。)か

ら部分対象外国関係会社のその各事業年

度開始の日前 7 年以内に開始した事業年

度(平成30年 4 月 1 日前に開始した事業

年度、部分対象外国関係会社に該当しな

かった事業年度及び租税負担割合が20%

以上であった事業年度を除きます。)にお

いて生じた部分適用対象損失額(損益通

算グループ所得の金額が零を下回る場合

のその下回る金額をいい、その各事業年

度前の事業年度において控除されたもの

を除きます。)の合計額に相当する金額を

控除した残額とされています(旧措令39

の17の 3 �)。

 今回の改正では、上記⑴②のとおり、特定所得の金額に保険所得の金額が追加されたことに伴い、部分適用対象金額の計算について、保険所得の金額が上記の損益通算グループ所得の金額に追加されました(措法66の 6 ⑦、措令39の17の 3 �)。

5  外国金融子会社等に係る部分合算課税制度

⑴ 改正前の制度の概要 外国金融子会社等に係る部分合算課税制度の対象となる外国金融子会社等は、次の部分対象外国関係会社とされています(措法66の 6 ②七、旧措令39の17)。① 外国金融機関

 本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業(金融商品取引法第28条第 1項に規定する第一種金融商品取引業と同種類の業務に限ります。)又は保険業を行う部分対象外国関係会社(注 1)(法令準拠要件)でその本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの(注 2)(通常必要業務従事要件)

適用免除マイナスとなった金額(部分適用対象損失額)は 7年繰越可

損益通算グループ所得

前7年以内の

部分適用対象損失額

の繰越控除

×

持株割合等

非損益通算

グループ所得

合計額がマイナスの

場合には0

剰余金の配当等(一)

受取利子等(二)

異常所得(十一)

外国為替差損益(六)

固定資産の貸付けの対価(八)

無形資産等の使用料(九)

有価証券の貸付けの対価(三)

有価証券の譲渡損益(四)

デリバティブ取引に係る損益(五)

無形資産等の譲渡損益(十)

その他の金融所得(七)

保険所得(七の二)

【改正事項】保険所得を追加

部分適用対象金額

部分課税対象金額

少額判定

部分適用対象金額が税引前当期利益の 5%以下又は 2,000 万円以下

部分課税対象金額の計算の改正

─�643�─

――国際課税関係の改正――

Page 82: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

(注 1) これらの事業を行う部分対象外国関係

会社と同様の状況にあるものとして次に

掲げる部分対象外国関係会社を含むもの

とされています(措法66の 6 ②七、措令

39の17①)。

イ 部分対象外国関係会社(特定保険外

国子会社等に該当するものに限りま

す。)に係る特定保険協議者がその本店

所在地国の法令に準拠して保険業を行

う場合におけるその部分対象外国関係

会社

ロ 部分対象外国関係会社(特定保険受

託者に該当するものに限ります。)に係

る特定保険委託者がその本店所在地国

の法令に準拠して保険業を行う場合に

おけるその部分対象外国関係会社(注 2) その本店所在地国においてその役員又

は使用人がその業務の全てに従事してい

る部分対象外国関係会社と同様の状況に

あるものとして次に掲げる部分対象外国

関係会社を含むものとされています(措

法66の 6 ②七、旧措令39の17②)。

イ 部分対象外国関係会社(特定保険外

国子会社等に該当するものに限りま

す。)に係る特定保険協議者の役員又は

使用人が保険業を的確に遂行するため

に通常必要と認められる業務の全てに

従事している場合におけるその部分対

象外国関係会社

ロ 部分対象外国関係会社(特定保険委

託者に該当するものに限ります。)に係

る特定保険受託者の役員又は使用人が

保険業を的確に遂行するために通常必

要と認められる業務の全てに従事して

いる場合におけるその部分対象外国関

係会社

② 外国金融持株会社等 部分対象外国関係会社のうち、その有する外国金融機関の経営管理等を行う等の一定の要件を満たすもの(一の内国法人等(注)によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されているものに限ります。)(注) 上記の「一の内国法人等」とは、一の内

国法人及びその一の内国法人との間に特定

資本関係のある内国法人をいいます。特定

資本関係の意義等については、上記 3 ⑴②

イイ(注 2・ 3)をご参照ください。

⑵ 改正の内容 今回の改正では、上記 3 ⑴②イロの改正に対応して、上記⑴①(注 2)において外国金融機関に含むものとされる部分対象外国関係会社に係る通常必要業務従事要件について規定の整備が行われました。 具体的には、上記 3 ⑴②イロの改正によって、特定保険協議者又は特定保険受託者について、それぞれに該当するかどうかを判定するための要件の 1つとして通常必要業務従事要件が追加されたことに伴い(措令39の14の 3 ①一ハ・二ハ)、この定義された特定保険協議者又は特定保険受託者を引用することとされました(措令39の17②)。その結果、この外国金融機関に含むものとされる部分対象外国関係会社の要件として設けられていた特定保険協議者又は特定保険受託者に係る通常必要業務従事要件(旧措令39の17②)は不要となり、削除されました。

6  租税負担割合の計算

⑴ 改正前の制度の概要 外国関係会社の租税負担割合は、次に掲げる区分に応じそれぞれ次の算式により計算することとされています(旧措令39の17の 2 )。

─�644�─

――国際課税関係の改正――

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① ②に掲げる外国関係会社以外の外国関係会社《算式》

本店所在地国において課される外国法人税 + 本店所在地国以外の国・地域において課される外国法人税

本店所在地国の法令に基づく所得

+本店所在地国の法令で非課税とされる所得(受取配当を除く)

+ 損金算入支払配当 +損金算入外国法人税 +

損金算入されない保険準備金

+益金算入すべき保険準備金

- 還付外国法人税

② 無税国に本店等を有する外国関係会社(注)《算式》

本店所在地国以外の国・地域において課される外国法人税決算に基づく所得(会計上の利益)

+ 費用計上している支払配当 +費用計上している外国法人税

+損金算入されない保険準備金

+ 益金算入すべき保険準備金 - 受取配当 -還付外国法人税

(注) 上記の「無税国に本店等を有する外国関係会社」とは、法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域(無税国)に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社をいいます。

 なお、その本店所在地国の外国法人税の税率が所得の額に応じて高くなる場合には、上記の算式の外国法人税の額は、これらの税率をこれらの税率のうち最も高い税率であるものとして算定した外国法人税の額とすることができることとされています(旧措令39の17の 2 ②三)。 また、所得の金額がない場合又は欠損の金額となる場合には、上記①に掲げる外国関係会社の租税負担割合については、その主たる事業に係る収入金額から所得が生じたとした場合にその所得に対して適用される本店所在地国の外国法人税の税率に相当する割合とされ、上記②に掲げる外国関係会社については零とされています(旧措令39の17の 2 ②四)。

⑵ 改正の内容 租税負担割合の計算について、次のとおり企業集団等所得課税規定に対応した改正が行われました。① 所得の金額 無税国に所在する外国関係会社以外の外国関係会社に係る所得の金額の計算について、上記 3 ⑶の現地法令基準による基準所得金額の計算の改正と同様に、その本店所在地国の外国法人税に関する法令(外国法人税に関す

る法令が二以上ある場合には、そのうち主たる外国法人税に関する法令)の規定のうち企業集団等所得課税規定を適用しないものとして計算された金額を用いて計算することとする等の改正が行われました(措令39の17の 2②一)。 租税負担割合の計算における所得の金額は、外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、その外国関係会社の本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額にその所得の金額に係る調整を加えた金額とされています(措令39の17の 2 ②一イ)。 具体的には、上記で計算した所得の金額にその所得の金額に係るイからホまでに掲げる金額の合計額を加算した金額からその所得の金額に係るヘに掲げる金額の合計額を控除した残額とされています(注 1)(措令39の17の 2 ②一イ)。イ 非課税所得金額(支払を受ける配当等の額を除きます。)ロ 支払配当等の額の損金算入額ハ 納付する外国法人税の額の損金算入額(注 2)

ニ 保険準備金繰入限度超過額ホ 保険準備金取崩不足額ヘ 還付を受ける外国法人税の額の益金算入

─�645�─

――国際課税関係の改正――

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額(注 3)(注 1) これらの金額は、原則として上記の

「本店所在地国の法令の規定」により計

算した所得の金額に係る金額とされて

いることから、いずれも企業集団等所

得課税規定を除いた法令の規定により

計算されることとなります。(注 2) 外国法人税に関する法令に企業集団

等所得課税規定がある場合のその外国

法人税にあっては、実際に納付した額

ではなく、企業集団等所得課税規定の

適用がないものとした場合に納付する

ものとして計算される外国法人税の額

でその各事業年度の損金の額に算入し

ている金額とされています(措令39の

17の 2 ②一イ⑶)。この外国法人税の額

は、企業集団等所得課税規定の適用が

ないものとした場合の所得金額を基礎

として、企業集団等所得課税規定の適

用がないものとした場合の外国法人税

に関する法令に基づいて納付するもの

として計算される金額となります。(注 3) 外国法人税に関する法令に企業集団

等所得課税規定がある場合のその外国

法人税にあっては、実際に還付を受け

た額ではなく、企業集団等所得課税規

定の適用がないものとした場合に還付

を受けるものとして計算される外国法

人税の額でその各事業年度の益金の額

に算入している金額とされています

(措令39の17の 2 ②一イ⑹)。この外国

法人税の額は、企業集団等所得課税規

定の適用がないものとした場合の所得

金額を基礎として、企業集団等所得課

税規定の適用がないものとした場合の

外国法人税に関する法令に基づいて還

付を受けるものとして計算される金額

となります。

 なお、無税国に本店等を有する外国関係会社に係る租税負担割合の計算上の所得の金額

は、従来どおり、その外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額(すなわち会計上の当期損益額)に一定の加減算の調整を加えた金額とされています(措令39の17の 2②一ロ)。したがって、例えば、無税国であるバミューダを本店所在地国とする外国関係会社が米国における連結納税の対象となっているような場合には、その外国関係会社に係る租税負担割合の計算上の所得の金額は、米国税法の規定による計算が行われない点、留意する必要があります。② 租税の額 租税負担割合の計算の分子となる租税の額の計算についても、所得の金額と同様に、企業集団等所得課税規定に対応した改正が行われました。 具体的には、租税の額は、外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、その本店所在地国又は本店所在地国以外の国若しくは地域において課される外国法人税の額(外国法人税に関する法令に企業集団等所得課税規定がある場合のその外国法人税にあっては、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される外国法人税の額)とされました(措令39の17の 2 ②二)。企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される外国法人税の額は、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合の所得金額を基礎として、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合の外国法人税に関する法令に基づいて計算される金額となります。 企業集団等所得課税規定は、上記 3 ⑶①のとおり、外国関係会社の本店所在地国の連結納税規定及びパススルー課税規定とされており(措令39の15⑥一・三)、無税国に本店等を有する外国関係会社及び本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定によりその所得の全部につき法人所得税を課さないこととされる外国関係会社にあっては、本店所在地国

─�646�─

――国際課税関係の改正――

Page 85: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

以外の連結納税規定とされています(措令39の15⑥二)。 したがって、この租税負担割合の計算における租税の額において、次に掲げる外国関係会社の区分に応じそれぞれ次に定める外国法人税の額は、その外国法人税に関する法令に企業集団等所得課税規定がないものとした場合に計算される外国法人税の額となります。イ 下記ロ以外の外国関係会社��次に掲げる外国関係会社の区分に応じそれぞれ次に定める外国法人税の額イ 下記ロ以外の外国関係会社��その本店所在地国において課される外国法人税の額ロ 本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定によりその所得の全部につき法人所得税を課さないものとされる外国関係会社��その本店所在地国以外の国又は地域において課される外国法人税の額

(その本店所在地国以外の国又は地域においてその外国関係会社の属する企業集団の所得に対して課されるものに限ります。)

ロ 無税国に本店等を有する外国関係会社��その本店所在地国以外の国又は地域において課される外国法人税の額(その本店所在地国以外の国又は地域においてその外国関係会社の属する企業集団の所得に対して課されるものに限ります。) なお、州税等の地方税についても、外国法人税に該当する場合には企業集団等所得課税規定がないものとして計算することとなります。ただし、国税だけで適用免除要件である税率(外国関係会社の区分に応じて20%又は30%)以上となることが明らかな場合には、地方税の額を計算する実益がないので、殊更計算する必要はないと考えられます。

S2社

≪租税負担割合の計算式≫

還付外国法人税

「本店所在地国以外の国・地域」で課される外国法人税

-決算に基づく所得(会計上の利益)

受取配当

-費用計上している支払配当

費用計上している外国法人税

損金算入されない保険準備金

+ + +益金算入すべき保険準備金

【改正事項】企業集団等所得課税規定がないものとして計算。

【改正事項】第三国(A国)における企業集団等所得課税規定がないものとして計算。

A国法令に基づき、A国で連結納税

A国

B国(無税国)

日本

【無税国に本店等を有する外国関係会社(S2社)の場合】【税法令がある国に本店等を有する外国関係会社の場合】

決算に基づく所得につき本店所在地国の法令の規定により計算した所得

本店所在地国の法令の規定により非課税とされる所得(受取配当を除く)

損金算入支払配当

損金算入外国法人税

損金算入されない保険準備金

益金算入すべき保険準備金

還付外国法人税

「外国関係会社の本店所在地国」又は「本店所在地国以外の国・地域」で課される外国法人税

+ + + + + -

租税負担割合 = 租税負担割合 =

【改正事項】企業集団等所得課税規定がないものとして計算。

P社

S1社

現地で連結納税等を行う外国関係会社に係る租税負担割合の計算方法の整備

─�647�─

――国際課税関係の改正――

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7  添付対象外国関係会社に係る財務諸表等の添付

⑴ 改正前の制度の概要 租税負担割合が一定割合未満の外国関係会社(特定外国関係会社にあっては30%未満、それ以外の外国関係会社にあっては20%未満)(以下 7において「添付対象外国関係会社」といいます。)に対する持株割合が10%以上等である内国法人は、その添付対象外国関係会社につき合算課税の適用があるか否かにかかわらず、その添付対象外国関係会社の各事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の書類を、その添付対象外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から二月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の確定申告書に添付しなければならないこととされています(措法66の 6 ⑪)。 確定申告書に添付すべき書類は添付対象外国関係会社に係る次の書類とされています(旧措規22の11㉖)。① 貸借対照表及び損益計算書② 株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書その他これらに類するもの③ 貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目内訳明細書④ 本店所在地国の法令により課される税に関する申告書の写し⑤ 株主等の氏名・住所等及びその有する株式等の数又は金額を記載した書類⑥ 出資関連外国法人等の株主等の氏名・住所等及びその有する株式等の数又は金額を記載した書類⑦ その他参考となるべき事項を記載した書類

⑵ 改正の内容 企業集団等所得課税規定に関する改正に対応して、次の改正が行われました。すなわち、内国法人の各事業年度の確定申告書に添付すべき書類について、上記⑴①の財務諸表についてこれに準ずるものを含むこととされるとともに

(措規22の11㊸一)、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される法人所得税の額に関する計算の明細を記載した書類及びその法人所得税の額に関する計算の基礎となる書類で各事業年度に係るものが追加されました(措規22の11㊸五)。 なお、添付対象外国関係会社がその法人所得税の法令において企業集団等所得課税規定の適用がない場合、すなわち連結納税、パススルー課税等が行われていない場合には、上記の「企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される法人所得税の額に関する計算の明細を記載した書類及びその法人所得税の額に関する計算の基礎となる書類で各事業年度に係るもの」を添付する必要はありません。

8  二重課税調整

⑴ 外国子会社合算税制の適用に係る外国税額の控除① 改正前の制度の概要 内国法人が外国子会社合算税制の適用を受ける場合に、内国法人に係る外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額があるときは、その外国法人税の額のうち、その外国関係会社の課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に対応する部分の金額をその内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして、法人税法第69条及び地方法人税法第12条の規定を適用することとされています(旧措法66の 7 ①②)。 内国法人が上記の外国税額控除の規定の適用を受ける場合には、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に、控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類並びに控除対象外国法人税の額の計算に関する明細を記載した書類に加えて、次の書類の添付がある場合等に限り適用することとされています(法法69⑮、旧法規29の 3 ①四・八)。イ 租税特別措置法第66条の 7第 1項の規定を受けようとする外国の法令により課され

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――国際課税関係の改正――

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る税が外国法人税に該当することについての説明及び同項の規定による控除対象外国法人税の額とみなされる計算に関する明細を記載した書類(旧法規29の 3 ①四)ロ 上記イの税を課されたことを証するその税に係る申告書の写し又はこれに代わるべきその税に係る書類及びその税が既に納付されている場合にはその納付を証する書類(旧法規29の 3 ①八)

② 改正の内容 内国法人に係る外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額のうち、その内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなされる金額等について、外国関係会社が本店所在地国で連結納税やパススルー課税を適用している場合等に対応した計算方法について整備が行われました。具体的な改正の内容は次のとおりです。イ 外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額 内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなされる金額の算定の基礎となる外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額について、外国関係会社の外国法人税に関する法令に企業集団等所得課税規定がある場合のその外国法人税にあっては、その企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合にその外国法人税に関する法令の規定により計算される外国法人税の額(以下⑴において「個別計算外国法人税額」といいます。)とされました(措法66の 7 ①、措令39の18①)。個別計算外国法人税額は、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合の所得金額を基礎として、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合の外国法人税に関する法令に基づいて計算される金額となります。ロ 個別計算外国法人税額が課されるものとみなされる日

 個別計算外国法人税額は、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合にその個別計算外国法人税額に係る外国法人税に関する法令の規定によりその個別計算外国法人税額を納付すべきものとされる期限の日に課されるものとして、外国関係会社の課税対象金額等に係る外国法人税額の計算等に関する規定を適用することとされました(措令39の18②)。 個別計算外国法人税額を納付すべきものとされる期限の日とは、外国税額控除制度において外国法人税を納付することとなる日が外国法人税について具体的にその納付すべき租税債務が確定した日と解されていることと同様に、個別計算外国法人税額に係る外国法人税に関する法令の規定により、外国法人税について具体的に納付すべき税額が確定するものとされる期限の日になるものと考えられます。したがって、例えば、我が国の法人税のような申告納税方式による税額については、その法定申告期限の日になるものと考えられます。また、賦課課税方式による税額については、決定通知が行われる期限の日になるものと考えられますが、納税者が課税標準等を記載した申告書を提出し、これに基づいて税務当局が税額を決定するような場合には、その課税標準等を記載した申告書の提出期限の日としても差し支えないと考えられます。ハ 適用要件 上記①イの書類に個別計算外国法人税額に関する計算の明細を記載した書類が、上記①ロの書類に個別計算外国法人税額に関する計算の基礎となる書類が、それぞれ追加されました(法規29の 3 ①四・八)。

⑵ 外国関係会社からの配当等に係る二重課税調整の適用要件① 改正前の制度の概要 内国法人が合算課税の適用を受けた外国関

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――国際課税関係の改正――

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係会社から一定の配当等を受けた場合、その受けた配当等に対する課税とその配当等の原資である外国関係会社の所得に対する合算課税の二重課税が生じるため、その配当等については特定課税対象金額(注)を限度として益金不算入とする等の調整規定が設けられています(旧措法66の 8 )。(注) 上記の「特定課税対象金額」とは、内国

法人が配当等を受ける日を含む事業年度に

合算対象とされた金額及び課税済金額(前

10年以内の各事業年度に合算対象とされた

金額(その外国関係会社から受ける既に益

金不算入とされた配当等の額がある場合に

は、その配当等の額に相当する額を控除し

た残額)をいいます。イにおいて同じで

す。)の合計額をいいます(措法66の 8 ④)。

 この調整規定は、次の要件を満たす場合に適用を受けることができることとされています(旧措法66の 8 ⑭)。イ 課税済金額等に係る事業年度のうち最も

古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、課税済金額等に関する明細書を添付ロ 適用を受けようとする事業年度の確定申告書に、適用を受ける旨を記載するとともに、適用を受ける金額の計算に関する明細書を添付

② 改正の内容 今回の改正では、上記①イの要件については、課税済金額等に係る事業年度のうち最も古い事業年度以後の各事業年度の確定申告書の連続提出要件とされ、また、上記①ロの要件については、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付要件とされました(措法66の 8 ⑭)。 この改正により、当初の確定申告で合算課税の適用がなく、事後の修正申告又は更正で合算課税が適用されることとなった場合にも、配当等に係る二重課税調整規定の適用ができることとなりました。

当初申告で合算課税適用なし→X1年分の税務調査による更正処分により合算課税

内国法人X1年 X2 年 X3 年

〔例〕 当初申告で合算課税がなく、事後の税務調査による更正処分により合算課税が行われた場合

適用を受ける金額等に関する明細書

課税済金額等に関する明細書

配当

※ 当初申告に添付なし

※ 当初申告に添付なし

【改正前】○ 内国法人が合算課税の適用を受けた外国関係会社から一定の配当等を受けた場合、その受けた配当等に対する課税とその配当等の原資である外国関係会社の所得に対する合算課税の二重課税が生じるため、その配当等については特定課税対象金額(※)を限度として益金不算入とする等の調整規定が設けられている。

※内国法人が配当等を受ける日を含む事業年度及び前 10 年以内の各事業年度に合算対象とされた金額の合計額(措法 66 の 8④)○ この二重課税の調整規定は、次の要件を満たす場合に適用を受けることができる。① 合算課税が生じた事業年度以後の各事業年度の確定申告書に、課税済金額等に関する明細書を添付② 適用を受けようとする事業年度の確定申告書に、適用を受ける旨を記載するとともに、適用を受ける金額の計算に関する明細書を添付

【改正事項】上記①の明細書添付要件を確定申告書の連続提出要件とするとともに、上記②の要件について、修正申告書又は更正請求書にその適用を

受ける金額等を記載した書類の添付がある場合にもその適用を受けることができることとする等の見直しを行う。

【改正前】益金不算入措置の適用なし⑴ X1年分の確定申告書に課税済金額等に関する明細書の添付がないため、益金不算入の適用要件①を満たさない。

⑵ X2年分の確定申告書に益金不算入の適用に関する明細書の添付がないため、益金不算入の適用要件②を満たさない。

【改正後】益金不算入措置の適用可能⑴ 過年度の確定申告書への課税済金額等に関する明細書添付要件を確定申告書の連続提出要件に改める。

⑵ X2年分の更正請求書等に適用金額の明細書の添付がある場合にも適用可能とする。

外国関係会社から受ける配当等の二重課税調整に係る適用要件の改正

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――国際課税関係の改正――

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㈢ 適用関係

1  上記㈡ 2、 3(⑴②ハを除きます。)、 5及び6の改正は、内国法人の平成31年 4 月 1 日以後に終了する事業年度に係る課税対象金額等(課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額をいい、その内国法人に係る外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始した事業年度に係るものに限ります。)を計算する場合について適用し、内国法人の平成31年4 月 1 日前に終了した事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合については従前どおりとされています(改正法附則58①、改正措令附則26)。 すなわち、ペーパー・カンパニーの範囲の改正など平成29年度税制改正の円滑な実施に資するものについては、可能な限り、その適用開始に間に合うよう、適用関係が整理されたものです。(注) 次に掲げる金額の計算に係る適用関係につ

いては、上記の適用関係を踏まえ、次のとお

りとなります。

⑴� 適用対象金額の計算上控除される過去の

欠損金額(措令39の15⑤一)

 適用対象金額の計算上控除される外国関

係会社の各事業年度開始の日前 7 年以内に

開始した事業年度において生じた欠損金額

(措令39の15⑤一)について、この欠損金額

は、外国関係会社の各事業年度の決算に基

づく所得の金額について基準所得金額の計

算に関する規定を適用した場合において計

算される欠損の金額をいいます(措令39の

15⑦)。今回の改正により企業集団等所得課

税規定に対応した基準所得金額は、内国法

人の平成31年 4 月 1 日以後に終了する事業

年度に係る課税対象金額(その内国法人に

係る外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後

に開始した事業年度に係るものに限りま

す。)を計算する場合について適用されるた

め(改正措令附則26)、適用対象金額の計算

上の控除の対象となる欠損金額で今回の改

正による企業集団等所得課税規定に対応し

た計算が行われるのは、外国関係会社の平

成30年 4 月 1 日以後に開始した事業年度に

おいて生じた欠損金額(内国法人の平成31

年 4 月 1 日以後に終了する事業年度に係る

課税対象金額の計算に係るものに限りま

す。)からとなります。

⑵� 基準所得金額及び適用対象金額の計算に

おける個別計算納付法人所得税額(措令39

の15②八、⑤二)及び個別計算還付法人所

得税額(措令39の15②十五、⑤二)を計算

する場合のその計算の基礎となる所得金額

の計算上、控除される繰越欠損金額

 基準所得金額及び適用対象金額の計算に

おける個別計算納付法人所得税額(個別計

算還付法人所得税額)は、上記㈡ 3⑶②(注

2・ 3)のとおり、企業集団等所得課税規

定の適用がないものとした場合に納付する

(還付を受ける)ものとして計算される法人

所得税の額をいい、企業集団等所得課税規

定の適用がないものとした場合の所得金額

を基礎として計算されることとなります。

今回の改正で新たに設けられた個別計算納

付法人所得税(個別計算還付法人所得税額)

は、内国法人の平成31年 4 月 1 日以後に終

了する事業年度の課税対象金額(その内国

法人に係る外国関係会社の平成30年 4 月 1

日以後に開始した事業年度に係るものに限

ります。)を計算する場合について適用され

るため(改正措令附則26)、個別計算納付法

人所得税額(個別計算還付法人所得税額)

の計算の基礎となる企業集団等所得課税規

定の適用がないものとした場合の所得金額

の計算上控除する繰越欠損金は、外国関係

会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始した事

業年度において生じた欠損金額に限られる

こととなります。

⑶� 租税負担割合の計算における分母の納付

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――国際課税関係の改正――

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する外国法人税額(措令39の17の 2 ②一イ

⑶)及び還付を受ける外国法人税額(措令

39の17の 2 ②一イ⑹)並びに分子の外国法

人税の額(措令39の17の 2 ②二)の計算の

基礎となる所得金額の計算上、控除される

繰越欠損金額

 租税負担割合の計算における分母の納付

する外国法人税額(還付を受ける外国法人

税額)は上記㈡ 6 ⑵①(注 2・ 3)のとお

り企業集団等所得課税規定の適用がないも

のとした場合に納付する(還付を受ける)

ものとして計算される外国法人税の額をい

い、分子の外国法人税の額は上記㈡ 6 ⑵②

のとおり企業集団等所得課税規定の適用が

ないものとした場合に計算される外国法人

税の額をいい、それぞれ企業集団等所得課

税規定の適用がないものとした場合の所得

金額を基礎として計算されることとなりま

す。今回の改正後の租税負担割合の規定(措

令39の17の 2 )は、内国法人の平成31年 4

月 1 日以後に終了する事業年度の課税対象

金額等(その内国法人に係る外国関係会社

の平成30年 4 月 1 日以後に開始した事業年

度に係るものに限ります。)を計算する場合

について適用されるため(改正措令附則26)、

納付する外国法人税額(還付を受ける外国

法人税額)及び外国法人税の額の計算の基

礎となる企業集団等所得課税規定の適用が

ないものとした場合の所得金額の計算上控

除する繰越欠損金は、外国関係会社の平成

30年 4 月 1 日以後に開始した事業年度にお

いて生じた欠損金額に限られることになり

ます。

2 上記㈡ 3⑴②ハ及び 4の改正は、外国関係会社の平成31年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及びその金融子会社等部分適用対象金額に係る金融子会社等部

分課税対象金額について適用し、外国関係会社の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及びその適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及びその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及びその金融子会社等部分適用対象金額に係る金融子会社等部分課税対象金額については従前どおりとされています(改正法附則58②、改正措規附則12①)。 すなわち、事実上のキャッシュ・ボックスの範囲の改正や部分合算課税における保険所得の追加などの改正については、外国子会社合算税制の改正に関する通常の適用関係である外国関係会社の事業年度開始ベースでの適用とされています。3 上記㈡ 7の改正は、内国法人の平成31年 4 月1 日以後に終了する事業年度に係る書類(その内国法人に係る外国関係会社の平成30年 4 月 1日以後に開始した事業年度に係るものに限ります。)について適用し、内国法人の平成31年 4月 1 日前に終了した事業年度に係る書類については従前どおりとされています(改正措規附則12②)。4 上記㈡ 8⑴の改正は、内国法人の平成31年 4月 1 日以後に終了する事業年度の課税対象金額等(課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額をいい、その内国法人に係る外国関係会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始した事業年度に係るものに限ります。)に係る外国法人税の額について適用し、内国法人の平成31年 4 月 1 日前に終了した事業年度の課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に係る外国法人税の額については従前どおりとされています(改正法附則58③)。(注) 外国税額控除における個別計算外国法人税

額(措令39の18①)の計算の基礎となる所得

金額の計算上、控除される繰越欠損金額の計

算についてもこの適用関係を踏まえて計算さ

れることとなります。

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――国際課税関係の改正――

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 すなわち、外国税額控除における個別計算

外国法人税額は、上記㈡ 8 ⑴②イのとおり、

企業集団等所得課税規定の適用がないものと

した場合に計算される外国法人税の額をいい、

企業集団等所得課税規定の適用がないものと

した場合の所得金額を基礎として計算される

こととなります。今回の改正で新たに設けら

れた個別計算外国法人税額は、内国法人の平

成31年 4 月 1 日以後に終了する事業年度の課

税対象金額等(その内国法人に係る外国関係

会社の平成30年 4 月 1 日以後に開始した事業

年度に係るものに限ります。)に係る外国法人

税の額について適用されるため(改正法附則

58③)、個別計算外国法人税額の計算の基礎と

なる企業集団等所得課税規定の適用がないも

のとした場合の所得金額の計算上控除する繰

越欠損金は、外国関係会社の平成30年 4 月 1

日以後に開始した事業年度において生じた欠

損金額に限られることになります。

5 上記㈡ 8⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に確定申告書等(期限後申告書を除きます。以下 5 において同じです。)の提出期限が到来する法人税について適用し、同日前に確定申告書等の提出期限が到来した法人税については従前どおりとされています(改正法附則58④)。

H31.1.1 R2.1.1 R3.1.1 R4.1.1H31.4.1

H30.1.1

H30.12 期 R1.12 期 R2.12 期

H31.3 期 R2.3 期 R3.3 期 R4.3 期内国法人の事業年度( 3 月決算)

合算

外国関係会社の事業年度(12 月決算)

H30.4.1以後開始事業年度

2 ヶ月

合算

6 ヶ月6 ヶ月6 ヶ月 6 ヶ月

2 ヶ月2 ヶ月

・R1.12 期の所得を合算・H30.12 期の外国法人税を控除

※法定納期限:6ヶ月後2 ヶ月

合算

H30.12 期分税額確定

R1.12 期分税額確定

R2.12 期分税額確定

R3.12 期分税額確定

H29.12 期分税額確定

・R2.12 期の所得を合算・R1.12 期の外国法人税を控除

・R3.12 期の所得を合算・R2.12 期の外国法人税を控除

(事例)・内国法人が 3 月決算(1年決算)・外国関係会社(連結法人)が 12 月決算( 1 年決算)・外国法人税の確定が事業年度終了後 6 ヶ月の場合

H31.4.1以後終了事業年度

H30.4.1

内国法人の事業年度 H31.3 期 R2.3 期 R3.3 期 R4.3 期合算所得の計算 改正前 改正後 改正後 改正後外国税額控除 改正前 改正前 改正後 改正後

≪適用関係≫

合算

外税控除

外税控除

外税控除

外税控除

外税控除

〇 改正後の合算所得の計算(注)の規定及び租税負担割合の計算の規定は、内国法人の平成 31 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度に係る課税対象金額等  (外国関係会社の平成 30 年 4 月 1 日以後に開始した事業年度に係るものに限る。)を計算する場合について適用(改正法附則 58①、改正措令附則 26)。

(注)基準所得金額の計算上加減算する法人所得税の額及び適用対象金額の計算上控除する法人所得税の額の計算を含む。〇 改正後の外国税額控除の規定は、内国法人の平成 31 年 4 月 1 日以後に終了する事業年度の課税対象金額等(外国関係会社の平成 30 年4月1日以後に開始  した事業年度に係るものに限る。)に係る外国法人税の額について適用(改正法附則 58③)。

合算

・H30.12 期の所得を合算・H29.12 期の外国法人税を控除

R3.12 期

外国子会社合算税制の改正に係る適用関係

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――国際課税関係の改正――

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Ⅱ�� 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の改正

 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例についても、上記Ⅰの内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例の改正と同趣旨の改正が行われました(措法40の 4 、40の 5 、措令25の19、25の19の 3 、25の20、25の22の 2 、25の22の 3 、措規18の20)。(注) 改正後の制度についても、基本的な仕組みは

内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特

例(措法66の 6 ~66の 8 )と同様とされている

ことから、以下では、内国法人についての特例

と異なる事項について記載することとします。

1  二重課税調整

⑴ 改正前の制度の概要 居住者が合算課税の適用を受けた外国関係会社から一定の配当等を受けた場合、その受けた配当等については居住者が配当等を受ける日を含む年分に合算対象とされた金額及び課税済金額(前 3年以内の各年分に合算対象とされた金額(その外国関係会社から受ける既に配当所得の金額の計算上控除された配当等の額がある場合には、その配当等の額に相当する金額を控除した残額)をいいます。①において同じです。)の合計額を限度としてその外国関係会社から受ける配当等の額に係る配当所得の金額の計算上控除する等の調整規定が設けられています(措法40の 5 ①②)。 この調整規定は、次の要件を満たす場合に適用を受けることができることとされています(旧措法40の 5 ③)。① 課税済金額等に係る年のうち最も古い年以後の各年分の確定申告書を連続して提出している場合であって、その各年分の確定申告書に課税済金額等に関する明細書を添付② 適用を受けようとする年分の確定申告書に、控除を受ける金額についてその控除に関する

記載をするとともに、控除を受ける金額及び剰余金の配当等の額に係る配当所得の金額の計算に関する明細書を添付

⑵ 改正の内容 今回の改正では、上記⑴①の確定申告書の連続提出要件に係る年分について、確定申告書を提出しなければならない年分(注)に限ることとされるとともに、上記⑴②の控除に関する記載要件並びに控除を受ける金額及び剰余金の配当等の金額に係る配当所得の金額の計算に関する明細書の添付要件について、上記Ⅰの内国法人の特例における要件と合わせる観点から、控除を受ける配当等の額及びその計算に関する明細書の添付要件とする規定の整備が行われました(措法40の 5 ③)。(注) 具体的には、所得税法第120条第 1 項、第

124条第 1 項(同法第125条第 5 項において準

用する場合を含みます。)、第125条第 1 項、第

126条第 1 項又は第127条第 1 項の規定による

申告書を提出しなければならない場合の各年

分に限ります。

2  適用関係

 上記 1の改正は、居住者の令和元年分(平成31年 1 月 1 日から令和元年12月31日までの期間に係る年分をいいます。)以後の所得税について適用し、平成30年分以前の所得税については従前どおりとされています(改正法附則28)。 このほか、今回の居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例の改正のうち、内国法人についての特例と同様の改正が行われた点については、内国法人についての特例と同様の適用関係とされています(改正法附則43①②、改正措令附則12、改正措規附則 7①②)。

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――国際課税関係の改正――

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Ⅲ� 特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正

1  改正の内容

 コーポレート・インバージョン対策合算税制は、内国法人が、その経済実態や実質的な株主構成を変えずに、外国法人の子会社となるような事象をコーポレート・インバージョンとして捉え、このような外国法人の所得を合算課税の対象にする制度です。このコーポレート・インバージョン対策合算税制について、外国子会社合算税制と同様の

改正が行われました(措法40の 7 、40の 8 、66の9 の 2 ~66の 9 の 4 、68の93の 2 ~68の93の 4 等)。

2  適用関係

 今回のコーポレート・インバージョン対策合算税制の改正は、外国子会社合算税制と同様の適用関係とされています(改正法附則43③④、58⑤~⑦、75⑤~⑦、改正措令附則13、27、37、改正措規附則 7③、12③、16③)。

四� 令和 2年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例の創設

1  制度創設の経緯及び趣旨

 平成25年 9 月 7 日、ブエノスアイレス(アルゼンチン)で開催された第125次国際オリンピック委 員 会(International�Olympic�Committee:IOC)総会にて、2020年のオリンピック競技大会・パラリンピック競技大会の開催都市が東京に決定されました。 オリンピック競技大会�・パラリンピック競技大会は世界最大の平和の祭典であり、その開催は、国際的な相互理解や友好関係を増進させるものとされています(「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」(平成27年11月27日閣議決定))。 東京オリンピック競技大会(第32回オリンピック競技大会:Games�of�the�XXXII�Olympiad)は、令和 2年 7月24日から 8月 9日までの日程で開催され、33の競技が行われ、また、東京パラリンピック競技大会(東京2020パラリンピック競技大会:Tokyo�2020�Paralympic�Games)は、同年 8月25日から 9月 6日までの日程で開催され、22の競技が行われることとされており、これらの大会

に参加し、又はこれらの大会の準備・運営に関する業務を行うために相当数の非居住者・外国法人が来日することが予想されます。 今般の改正においては、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が、大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技大会と位置付けられており、その円滑な準備及び運営に万全を期す必要があること、また、近年のオリンピック競技大会・パラリンピック競技大会においては、開催国において同様の非課税措置が講じられることが通例になっていること等を踏まえ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の参加選手等の非居住者、IOC 等の外国法人に係る所得税及び法人税の非課税措置を創設することとされました。(参考) 平成32年東京オリンピック競技大会・東

京パラリンピック競技大会特別措置法(平

成27年法律第33号)(抄)

(趣旨)

第 1 条 この法律は、平成32年に開催される

東京オリンピック競技大会及び東京パラリ

ンピック競技大会(以下「大会」と総称す

る。)が大規模かつ国家的に特に重要なスポ

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――国際課税関係の改正――

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ーツの競技会であることに鑑み、大会の円

滑な準備及び運営に資するため、東京オリ

ンピック競技大会・東京パラリンピック競

技大会推進本部の設置及び基本方針の策定

等について定めるとともに、国有財産の無

償使用等の特別の措置を講ずるものとする。

2  制度の内容

⑴ 大会に参加等をする非居住者の給与等に対する所得税の非課税措置① 措置の概要 令和 2年に開催される東京オリンピック競技大会若しくは東京パラリンピック競技大会(以下「大会」といいます。)に参加をし、又は大会関連業務(大会の円滑な準備又は運営に関する業務をいいます。以下同じです。)に係る勤務その他の人的役務の提供を行う一定の非居住者の一定の国内源泉所得(平成31年 4 月 1 日から令和 2年12月31日までの間におけるその参加又はその提供に係るものに限ります。)については、所得税を課さないこととされました(措法41の23①)。② 非課税の対象となる者及び所得 非課税の対象となる非居住者は非居住者で次に掲げる者とされ、非課税の対象となる所得は非居住者で次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に定める国内源泉所得(④及び⑤において「大会関連所得」といいます。)とされています(措令26の33①)。イ 大会において実施される競技に参加する選手��所得税法第161条第 1 項第12号イ又は第17号⦅国内源泉所得⦆に掲げる国内源泉所得のうち、その競技への参加(その参加のために必要な国内における訓練その他の準備行為を含みます。)又はその競技において収めた成績に基因するもの(措令26の33①一)ロ 大会に参加する選手団に属する者(上記イに掲げる者を除きます。)��給与等(所得税法第161条第 1項第12号イに掲げる

国内源泉所得をいいます。②において同じです。)のうち、その選手団に属する上記イに掲げる者(その大会において実施される競技に参加(その参加のために必要な国内における訓練その他の準備行為を含みます。ロにおいて同じです。)をするものに限ります。)に対する国内における指導又は支援(その参加に係るものに限ります。)に基因するもの(措令26の33①二)ハ 大会において実施される競技の審判員��給与等のうち、その競技の審判(その審判のために必要な国内における訓練その他の準備行為を含みます。)に基因するもの(措令26の33①三)ニ 次に掲げる外国法人から給与(所得税法第161条第 1 項第12号イに掲げる給与をいいます。②において同じです。)の支払を受ける者��その給与のうち、その外国法人が国内において行う令和 2年に開催される東京オリンピック競技大会(以下「東京オリンピック競技大会」といいます。)の円滑な準備又は運営に関する業務(以下「東京オリンピック競技大会関連業務」といいます。)に係る勤務に基因するもの(措令26の33①四)イ 東京オリンピック競技大会を主催する外国法人(IOC)ロ 大会に関する映像又は音声を放送する権利の管理を行う外国法人(IOC との間に特殊の関係のあるものに限ります。)(注) 上記の「特殊の関係」とは、IOCと

他の外国法人(その発行済株式等の全

部が一の外国法人(IOCにより設立さ

れたものに限ります。)により保有され

ているものに限ります。)との間の関係

をいいます(措規19の14の 2 ①)。

ハ IOC が主催した全てのオリンピック競技大会に関する物品を保管し、又は展示する施設を運営する外国法人(IOCにより設立されたものに限ります。)

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――国際課税関係の改正――

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ニ 東京オリンピック競技大会に係るスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律第 2条第 3項⦅定義⦆に規定する禁止物質の使用等に係る検査に関する計画の立案を行う外国法人

(参考) スポーツにおけるドーピングの防止活動

の推進に関する法律(平成30年法律第58号)

(抄)

(定義)

第 2 条 この法律において「国際競技大会等

出場スポーツ選手」とは、国際競技大会等

(オリンピック競技大会、パラリンピック競

技大会その他の国際的な規模のスポーツの

競技会及び全国的な規模のスポーツの競技

会をいう。第15条第 1 項において同じ。)に

出場し、又は出場しようとするスポーツ選

手(プロスポーツの選手を含む。)をいう。

2 省 略

3  この法律において「スポーツにおけるド

ーピング」とは、禁止物質(スポーツ選手

の競技に関する能力を不当に向上させる効

果を有するためスポーツにおける使用を禁

止すべき物質として文部科学省令で定める

物質をいう。)の国際競技大会等出場スポー

ツ選手に対する使用その他の国際競技大会

等出場スポーツ選手の競技に関する能力を

不当に向上させると認められる行為(以下

この項において「禁止物質の使用等」とい

う。)、禁止物質の使用等の目的でこれに用

いられる薬品その他の物品を所持する行為、

ドーピングの検査(禁止物質の使用等に係

る検査に関する計画の立案、国際競技大会

等出場スポーツ選手からの検体の採取、当

該検体の保管及び当該検体の輸送を含む。

以下同じ。)を妨げる行為その他の国際規約

に違反する行為として文部科学省令で定め

る行為をいう。

4 省 略

ホ 令和 2年に開催される東京パラリンピッ

ク競技大会(以下「東京パラリンピック競技大会」といいます。)を主催する外国法人(International� Paralympic�Commit­tee:IPC)から給与の支払を受ける者��その給与のうち、IPC が国内において行う東京パラリンピック競技大会の円滑な準備又は運営に関する業務(以下「東京パラリンピック競技大会関連業務」といいます。)に係る勤務に基因するもの(措令26の33①五)ヘ 大会に関する映像又は音声の制作及びその制作の統括管理を行う外国法人(IOCとの間に特殊の関係のあるものに限ります。ヘにおいて同じです。)から給与等の支払を受ける者��その給与等のうち、その外国法人が国内において行う大会関連業務に係る勤務その他の人的役務の提供に基因するもの(措令26の33①六)(注) 上記の「特殊の関係」とは、IOCと他

の外国法人(その発行済株式等の全部が

一の外国法人(その発行済株式等の全部

がIOCにより設立された他の一の外国法

人により保有されているものに限りま

す。)により保有されているものに限りま

す。)との間の関係をいいます(措規22の

19の 3 の 2 ①)。

ト インターネットを利用する方法により東京オリンピック競技大会に関する映像又は音声の提供を行う外国法人(IOC との間に特殊の関係のあるものに限ります。トにおいて同じです。)から給与等の支払を受ける者��その給与等のうち、その外国法人が国内において行う東京オリンピック競技大会関連業務に係る勤務その他の人的役務の提供に基因するもの(措令26の33①七)(注) 上記の「特殊の関係」の意義について

は、上記ヘ(注)をご参照ください。

チ 次に掲げる外国法人から給与の支払を受ける者��その給与のうち、その外国法人

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――国際課税関係の改正――

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が国内において行う大会関連業務に係る勤務に基因するもの(措令26の33①八)イ 大会において実施される競技に係る時間の測定、その競技に係る結果の集計及びその競技の会場内におけるその結果の表示を行う外国法人ロ 大会に関する紛争の仲裁及び調停を行う外国法人ハ 上記イに掲げる外国法人が行う大会において実施される競技に係る時間の測定に係る情報の IOC 、IPC 並びに下記ヌイ及びロに掲げる外国法人への提供を行う外国法人ニ 大会において上記イに掲げる者から採取された検体(その大会に係るスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律第 2条第 3項に規定するドーピングの検査に係るものに限ります。)の分析を行う内国法人の認証を行う外国法人

リ 次に掲げる外国法人から給与の支払を受ける者��その給与のうち、その外国法人が国内において行う大会関連業務(その外国法人が行うイ又はロの派遣に係る大会に関するものに限ります。)に係る勤務に基因するもの(措令26の33①九)イ 大会に参加する選手団のその大会への派遣及びその選手団の支援を行う外国法人ロ 大会において実施される競技の審判員のその大会への派遣を行う外国法人

ヌ 次に掲げる外国法人から給与等の支払を受ける者��その給与等のうち、その外国法人が国内において行う大会関連業務(イに掲げる外国法人にあってはその有する大会に関する映像又は音声を放送する権利(ヌにおいて「大会放送権」といいます。)に係る大会に関するものに、ロに掲げる外国法人にあってはその外国法人に係るイに掲げる外国法人の有する大会放送権に係る

大会に関するものに、それぞれ限ります。)に係る勤務その他の人的役務の提供に基因するもの(措令26の33①十)イ 大会放送権保有法人(IOC 又は IPCとの契約に基づき大会放送権を有する外国法人をいいます。下記ロ(注)において同じです。)ロ 外国関連法人(注) 上記の「外国関連法人」とは、大会

放送権保有法人の属する企業集団の連

結財務諸表(一般に公正妥当と認めら

れる会計処理の基準に従ってその企業

集団の財産及び損益の状況を連結して

記載した計算書類をいいます。)にそ

の財産及び損益の状況が連結して記載

される外国法人(その大会放送権保有

法人との間に次に掲げる関係があるも

のに限ります。)で、IOC又はIPC及び

その大会放送権保有法人との大会放送

権に関する契約においてその大会放送

権に係る大会においてその大会放送権

保有法人の行う業務(その大会に関す

るものに限ります。)と同様の業務(そ

の大会に関するものに限ります。)を

行うことができる旨が定められている

ものをいいます(措規22の19の 3 の 2

②)。

ⅰ 一方の外国法人が他方の外国法人

の株式又は出資を直接又は間接に保

有する関係(いわゆる親子関係)

ⅱ 二の外国法人が同一の者によって

それぞれその株式又は出資を直接又

は間接に保有される場合における当

該二の外国法人の関係(上記ⅰに掲

げる関係に該当するものを除きま

す。)(いわゆる兄弟関係)

ル 上記イからヌまでに掲げるもののほか、大会関連業務を行う外国法人として文部科学大臣が財務大臣と協議して指定するものから給与等の支払を受ける者��その給与

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――国際課税関係の改正――

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等のうち、その外国法人が国内において行うその大会関連業務に係る勤務その他の人的役務の提供に基因するもの(措令26の33①十一)(注) 文部科学大臣は、上記により大会関連

業務を行う外国法人を指定したときは、

これを告示することとされています(措

令26の33④)。

③ 非課税の対象となる所得に係る損失の取扱い 上記②のとおり非居住者につき国内源泉所得に対する所得税が非課税とされることの対称的な取扱いとして、非居住者で上記②イからハまで、ヘ、ト、ヌ及びルに掲げる者のその年分のそれぞれ上記②イからハまで、ヘ、ト、ヌ及びルに定める国内源泉所得に係る次に掲げる金額は、所得税法その他所得税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなすこととされています(措法41の23②、措令26の33②)。イ 事業所得の金額及び雑所得の金額の計算上生じた損失の金額に相当する金額ロ 一時所得に係る総収入金額に算入すべき金額がその一時所得に係る支出した金額(所法34②)に算入すべき金額の合計額に満たない場合におけるその満たない部分の金額に相当する金額

④ 本措置の適用期限 本措置は、平成31年 4 月 1 日から令和 2年12月31日までの間における大会関連所得の基因となる活動に限って適用することとされています(措法41の23①)。⑤ 本措置の適用がある場合の特例 本措置の適用がある場合には、大会関連所得が非課税となることを踏まえ、所得税に関する法令の一定の規定について、所要の特例措置が講じられています(措法41の23④、措規19の14の 2 ②)。

⑵ 大会関連業務を行う外国法人が支払を受ける使用料に対する所得税の非課税措置① 措置の概要 大会関連業務を行う一定の外国法人が支払を受ける一定の使用料(平成31年 4 月 1 日から令和 2年12月31日までの間において行われる一定の業務に係るものに限ります。)については、所得税を課さないこととされました(措法41の23③)。② 非課税の対象となる者及び所得 非課税の対象となる外国法人は次に掲げる外国法人とされ、非課税の対象となる使用料は次に掲げる外国法人の区分に応じそれぞれ次に定める使用料(所得税法第161条第 1 項第11号に掲げる使用料をいいます。②及び③において同じです。)とされています(措令26の33③)。イ IOC��国内において東京オリンピック競技大会関連業務を行う法人(人格のない社団等を含みます。②において同じです。)から支払を受ける使用料でその東京オリンピック競技大会関連業務に係るもの(措令26の33③一)ロ IPC��国内において東京パラリンピック競技大会関連業務を行う法人から支払を受ける使用料でその東京パラリンピック競技大会関連業務に係るもの(措令26の33③二)ハ 上記⑴②チハに掲げる外国法人��国内において大会関連業務を行う法人から支払を受ける使用料でその大会関連業務に係るもの(措令26の33③三)ニ 上記イからハまでに掲げるもののほか、大会関連業務を行う外国法人として文部科学大臣が財務大臣と協議して指定するもの��国内においてその大会関連業務を行う個人又は法人から支払を受ける使用料でその大会関連業務に係るもの(措令26の33③四)(注) 文部科学大臣は、上記により大会関連

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――国際課税関係の改正――

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業務を行う外国法人を指定したときは、

これを告示することとされています(措

令26の33④)。

③ 本措置の適用期限 本措置は、平成31年 4 月 1 日から令和 2年12月31日までの間において行われる上記②イからニまでに定める使用料の基因となる大会関連業務に限って適用することとされています(措法41の23③)。

⑶ 大会関連業務を行う外国法人の恒久的施設帰属所得に対する法人税の非課税措置① 措置の概要 恒久的施設を有する外国法人のうち、大会関連業務を行う一定の外国法人の平成31年 4月 1 日から令和 2年12月31日までの間に開始する各事業年度の一定の恒久的施設帰属所得(法法138①一)については、法人税を課さないこととされました(措法67の16の 2 ①)。② 非課税の対象となる者及び所得 非課税の対象となる外国法人は次に掲げる外国法人とされ、非課税の対象となる所得は恒久的施設帰属所得で次に掲げる外国法人の区分に応じそれぞれ次に定める業務として行う事業に係るもの(以下「大会関連所得」といいます。)とされています(措令39の33の3 ①)。イ 次に掲げる外国法人��東京オリンピック競技大会関連業務(措令39の33の 3 ①一)イ IOCロ 上記⑴②トに規定する外国法人ロ IPC��東京パラリンピック競技大会関連業務(措令39の33の 3 ①二)ハ 次に掲げる外国法人��大会関連業務(措令39の33の 3 ①三)イ 上記⑴②ヘに規定する外国法人ロ 上記⑴②チイからハまでに掲げる外国法人

ニ 次に掲げる外国法人��次に掲げる外国

法人の区分に応じそれぞれ次に定める大会関連業務(措令39の33の 3 ①四)イ 上記⑴②リイ又はロに掲げる外国法人��上記⑴②リに規定する大会関連業務ロ 上記⑴②ヌイ又はロに掲げる外国法人��上記⑴②ヌに規定する大会関連業務

ホ 上記イからニまでに掲げるもののほか、大会関連業務を行う外国法人として文部科学大臣が財務大臣と協議して指定するもの��その大会関連業務(措令39の33の 3 ①五)(注) 文部科学大臣は、上記により大会関連

業務を行う外国法人を指定したときは、

これを告示することとされています(措

令39の33の 3 ④)。

③ 非課税の対象となる所得に係る損失の取扱い 上記②のとおり外国法人につき恒久的施設帰属所得に対する法人税が非課税とされることの対称的な取扱いとして、上記②イからホまでに掲げる外国法人の大会関連所得に係る所得の金額の計算上損金の額に算入すべき金額が益金の額に算入すべき金額を超える場合におけるその超える部分の金額に相当する金額は、法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については、ないものとみなすこととされています(措法67の16の 2 ②、措令39の33の 3 ②)。④ 本措置の適用期限 本措置は、平成31年 4 月 1 日から令和 2年12月31日までの間に開始する各事業年度の大会関連所得に限って適用することとされています(措法67の16の 2 ①②)。⑤ 本措置の適用がある場合の特例 本措置の適用がある場合には、大会関連所得が非課税となることを踏まえ、恒久的施設を有する外国法人に係る確定申告書の提出を要しない場合(法法144の 6 ①)及び外国普通法人となった旨の届出書の提出を要しない場合(法法149①)における非課税規定(法

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――国際課税関係の改正――

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令203①、211①)の対象に、本措置を加えることとされています(措法67の16の 2 ④、措令39の33の 3 ③)。したがって、例えば、上記②イからホまでに掲げる外国法人が大会関連所得のみを有するような場合には、外国普通法人となった旨の届出書及び確定申告書の提出は不要となります。 上記のほか、本措置の適用がある場合には、

法人税法及び租税特別措置法の一定の規定について所要の特例措置が講じられています(措法67の16の 2 ③、措規22の19の 3 の 2 ③)。

3  適用関係

 上記 2の改正は、平成31年 4 月 1 日から施行されています(改正法附則 1)。

五� 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための�報告制度等の整備

Ⅰ 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度の整備

1  制度整備の背景・趣旨等

 海外の金融機関を利用した国際的な脱税・租税回避に対処するための税に関する自動的情報交換(Automatic�Exchange�of�Information)における国際的な取組みとして、OECD が平成26年に策定・公表し、G20が承認した「共通報告基準(Common�Reporting�Standard:CRS)」に従った税務当局間での非居住者に係る金融口座情報の自動的交換があり、100を超える国・地域がこれに参加することを表明しています。 我が国においても、平成27年度税制改正において、この CRS に従った自動的情交換を実施する観点から、租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(以下「租税条約等実施特例法」といいます。)の一部改正により、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度(実特法10の 5 ~10の 9 )が整備され、平成29年から金融機関による対象口座の特定手続を行い、平成30年に平成29年分の報告を金融機関から受け、租税条約等に基づき、CRS に従った税務当局間の自動的情報交換が開始されています。(注) 平成29年分の報告として、租税条約等に基づき、

我が国から89,672件の非居住者・外国法人に係る

金融口座情報が58か国・地域に提供され、また、

64か国・地域から550,705件の居住者・内国法人

に係る金融口座情報が我が国に提供されていま

す(平成30年10月31日現在)。

 また、平成28年度税制改正において、日台双方の民間窓口機関である公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)との間で取り結ばれた「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(以下「日台民間租税取決め」といいます。)の内容を日本国内で実施するための国内法が整備され、台湾との間で租税条約に相当する枠組みが構築されました。これにより、台湾の税務当局に対し、日本の税務当局が保有する租税情報の提供が可能となっています。(注) 日台民間租税取決めは、公益財団法人交流協

会と亜東関係協会との間で作成された民間取決

めであり、我が国では国際約束としての効力は

ありません。他方、台湾では日台民間租税取決

めの内容が台湾の所得税法等に優先して実施さ

れることから、日台民間租税取決め第25条(情

報の交換)の規定に基づき、我が国に対して台

湾の税務当局が保有する租税情報が提供される

ものと考えられます。なお、平成29年 1 月 1 日

から「公益財団法人交流協会」は「公益財団法

人日本台湾交流協会」へ、同年 5月17日から「亜

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――国際課税関係の改正――

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東関係協会」は「台湾日本関係協会」へ、それ

ぞれ名称変更がなされています。

 そして、台湾においては、平成29年に、令和 2年から CRS に基づく金融口座情報に相当する情報の提供を可能とする国内法改正が実施され、その後、日台民間租税取決め第25条に規定されている「情報の交換」に関し、両協会との間で自動的情報交換の実施に向けた調整が行われてきたところ、平成30年11月30日、その実施手続について両協会間で合意がなされたところです。(注) 上記の合意は、税務当局間においてCRSに基

づく情報等を含む自動的情報交換の重要性が高

まっていることを踏まえ、両協会間における具

体的な実施手続を規定したものとされています。

 このような状況の下、我が国としては、経済関係が緊密である台湾との間での金融口座情報の自動的な提供を実施することによって、海外の金融機関を利用した国際的な租税回避・脱税に対処することがより可能となることから、これを早期に開始することが重要です。 そこで、今般の改正において、「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律」(以下「外国居住者等所得相互免除法」といいます。)の一部を改正し、台湾を居住地国とする者(台湾居住者)の口座情報について、金融機関による報告制度を整備することとされました。 これにより、台湾との間で CRS に従った税務当局間の自動的情報交換に相当する枠組みが構築され、令和 2年に令和元年分の報告を開始することが可能となります。なお、国税庁から、一定の条件を満たすことを前提に、令和元年分以降のCRS に従った金融口座情報に相当する情報を台湾に提供する旨の方針が公表されています。また、この場合、台湾から我が国に対しても、一定の条件を満たすことを前提に、令和元年分以降のCRS に従った金融口座情報に相当する情報が提供されることになります。

2  制度の内容

⑴ 制度の概要① 報告金融機関等による報告事項の提供 報告金融機関等は、その年の12月31日において、その報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者が報告対象契約を締結している場合には、その報告対象契約ごとに、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地及び特定居住地国、その報告対象契約に係る資産の価額、その資産の運用、保有又は譲渡による収入金額その他一定の事項(②及び③において「報告事項」といいます。)を、その年の翌年 4 月30日までに、その報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされました。(注) 非居住者に係る金融口座情報の自動的交

換のための報告制度における居住地国の特

定手続(実特法10の 5 )においては、いわ

ゆるWider�Approachが採用されており、特

定取引を行う者の居住地国が同制度におけ

る報告対象国(実特法10の 6 ②一)に該当

するか否かに関わらず、居住地国の特定手

続を実施することとされています。したが

って、本制度における報告事項の提供義務

を負っている報告金融機関等は、特定取引

を行う者の居住地国が台湾である場合、非

居住者に係る金融口座情報の自動的交換の

ための報告制度において台湾を居住地国と

して特定済みであることから、本制度にお

いては居住地国の特定手続は設けられてい

ません。

② 報告金融機関等による記録の作成及び保存 報告金融機関等は、上記①により報告事項の提供を行った場合には、その報告事項に関する事項等の一定の事項に関する記録を文書等により作成し、保存しなければならないこととされました。③ その他

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――国際課税関係の改正――

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イ 税務職員は、報告事項の提供に関する調査について必要があるときは、その報告事項の提供をする義務がある者に質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件(その写しを含みます。)の提示若しく

は提出を求めることができることとされました。ロ 報告事項の提供義務に対する違反行為等について所要の罰則を規定することとされました。

⑵ 報告金融機関等による報告事項の提供 報告金融機関等は、その年の12月31日において、その報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者(一定の者を除きます。)が報告対象契約を締結している場合には、その報告対象契約ごとに、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地及び特定居住地国、その報告対象契約に係る資産の価額、その資産の運用、保有又は譲渡による収入金額等一定の事項(以下「報告事項」といいます。)を、その年の翌年 4 月30日までに、電子情報処理組織(e­Tax)を使用して送付する方法又はその報告事項を記録した光ディスク等を提出する方法のいずれかの方

法により、所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(所得相互免除法41の2 ①)。(注) 上記の「報告金融機関等」、「営業所等」、「特

定取引」、「特定対象者」及び「特定居住者国」

の意義は、非居住者に係る金融口座情報の自

動的交換のための報告制度における意義と同

様とされており(所得相互免除法41の 2 ①)、

具体的には、それぞれ、租税条約等実施特例

法第10条の 5 第 7 項第 1 号⦅特定取引を行う

者の届出書の提出等⦆に規定する報告金融機

関等、同項第 2 号に規定する営業所等、同項

第 3 号に規定する特定取引、同条第 1 項に規

定する特定対象者及び租税条約等実施特例法

[令和 2 年に初回の情報提供(予定)]

[令和 2 年に令和元年(平成 31 年)分を報告(予定)]

【台湾】【日本】

国税庁 台湾の税務当局

X国居住者口座…

④ 台湾の税務当局に対して情報提供  【所得相互免除法 41】

日本居住者口座(報告対象外)

台湾居住者

台湾居住者口座

① 新規口座開設者(=新規特定取引を行う者)に  よる氏名・住所、居住地国、外国の納税者番号  等の届出【実特法 10 の 5 】

② 口座保有者(=既存特定取  引を行った者)の居住地国  を特定【実特法 10 の 5 】

[平成 29 年から金融機関による手続開始]

③ 口座保有者(=台湾居住者)   の氏名・住所、台湾の納税者  番号、口座残高、利子・配当  等の年間受取総額等を報告   【所得相互免除法 41 の 2 】

A 国居住者口座

日本の金融機関

台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度(イメージ)

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――国際課税関係の改正――

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第10条の 6 第 1 項⦅報告金融機関等による報

告事項の提供⦆に規定する特定居住地国をい

います。以下同じです。

① 報告対象外となる者の範囲 本制度による報告の対象外とされる「一定の者」は、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における意義と同様とされており(所得相互免除法41の 2 ①)、具体的には、次に掲げる者をいいます(実特令 6の12①)。イ その発行する株式が外国金融商品取引所又は金融商品取引所において上場されている法人ロ 上記イに掲げる法人(ロにおいて「上場法人」といいます。)と他の法人との間に次に掲げる関係がある場合における当該他の法人イ いずれか一方の法人が他方の法人を直接又は間接に支配する一定の関係ロ 同一の者がその上場法人及び当該他の法人を直接又は間接に支配する一定の関係

ハ 国、地方公共団体若しくは日本銀行又は外国政府、外国の地方公共団体、外国の中央銀行若しくは我が国が加盟している国際機関ニ 外国の法令に準拠して設立された法人(外国報告金融機関等を除きます。)で外国報告金融機関等以外のものに類するもの及び外国報告金融機関等(これらのうち外国(報告対象国を除きます。)の法令に準拠して設立された CRS 上の「投資事業体」に相当する法人に類するものを除きます。)(注 1) 上記の「外国報告金融機関等」とは、

報告金融機関等(法人に限ります。)で、

外国の法令に準拠して設立された法人

であるものをいいます(実特令 6 の 8

①六)。(注 2) 上記の「報告対象国」とは、非居住

者に係る金融口座情報の自動的交換の

ための報告制度における報告対象国

(実特法10の 6 ②一)をいい、平成30年

12月31日現在、88か国・地域が定めら

れています(実特規16の12⑧、別表)。

なお、報告対象国である88か国・地域

の具体的な国名・地域名については、

後述「六 その他」の「Ⅶ 租税条約

の実施のための国内法の整備」の「 4 

非居住者に係る金融口座情報の自動的

交換のための報告制度の改正」の⑵を

ご参照ください。(注 3) 上記の「CRS上の『投資事業体』に

相当する法人」とは、次に掲げる法人

(その財産の運用を金融商品取引業者等

(金融商品取引法第34条⦅特定投資家へ

の告知義務⦆に規定する金融商品取引

業者等をいいます。下記③ホ(注)に

おいて同じです。)又は同法第63条第 5

項⦅適格機関投資家等特例業務⦆に規

定する特例業務届出者が同法第28条第

4 項各号⦅総則⦆に掲げる行為(下記

③ホ(注)において「投資運用業」と

いいます。)として行う場合に限ります。

(注 3)において同じです。)をいいま

す(実特令 6の 6 ①四)。ただし、次に

掲げる法人のうち報告金融機関等とさ

れるのは、平成23年 1 月 1 日以後に開

始するその法人に係る事業年度のうち

連続する 3 事業年度において、その法

人の収入金額の合計額のうちに有価証

券又はデリバティブ取引(金融商品取

引法第 2 条第20項⦅定義⦆に規定する

デリバティブ取引をいいます。下記③

(注 2)ハにおいて同じです。)に係る

権利に対する投資に係る収入金額の合

計額の占める割合が50%以上であるも

のに限られます(実特規16の 7 ①二)。

イ 資産の流動化に関する法律第 2 条

第 3 項⦅定義⦆に規定する特定目的

会社

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――国際課税関係の改正――

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ロ 投資信託及び投資法人に関する法

律第 2 条第12項⦅定義⦆に規定する

投資法人

ハ 株式会社、合名会社、合資会社又

は合同会社

ニ 外国の法令に準拠して設立された

法人で上記イからハまでに掲げる法

人に類するもの

② 報告対象契約の意義 「報告対象契約」とは、特定取引に係る契約のうち次に掲げるものをいいます(所得相互免除法41の 2 ②)。イ 特定居住地国が報告対象国である者(特定居住地国が報告対象国である組合契約によって成立する組合の特定組合員を含みます。)が締結しているものロ 特定居住地国が報告対象国以外の国又は地域である特定法人で、その特定法人に係る実質的支配者の特定居住地国が報告対象国である特定法人が締結しているもの

(注 1) 上記の「報告対象国」とは、報告事項

に相当する事項(居住者及び内国法人に

係るものを含みます。)の提供を求めるた

めに必要な措置が講じられている外国と

して総務省令、財務省令で定めるものと

されています(所得相互免除法41の 2 ②

一)。以下同じです。

 なお、台湾において CRS に従った我が

国の居住者及び内国法人に係る金融口座

情報に相当する情報の提供を求めるため

に必要な措置が講じられていることが確

認された後に、省令において「台湾」を

規定することとなります。したがって、

令和元年12月31日までに台湾が報告対象

国に指定された場合、令和 2 年 4 月30日

までに令和元年分の報告として、報告金

融機関等から報告事項の提供を受けるこ

とになります。(注 2) 上記の「組合契約」、「特定組合員」、「特

定法人」及び「実質的支配者」の意義は、

非居住者に係る金融口座情報の自動的交

換のための報告制度における意義と同様

とされており(所得相互免除法41の 2 ②

各号)、具体的には、それぞれ、租税条約

等実施特例法第10条の 5 第 7 項第 7 号に

規定する組合契約、同項第 6 号に規定す

る特定組合員、同項第 4 号に規定する特

定法人及び同項第 5 号に規定する実質的

支配者をいいます。以下同じです。

③ 報告事項の範囲 報告金融機関等が提供すべき報告事項は、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における報告事項と同様とされており、具体的には、次に掲げる事項とされています(所得相互免除規21①による準用後の実特規16の12①)。イ 報告対象契約に係る特定取引を行った者(特定取引を行った者が特定組合員である場合にあっては、その特定取引をその業務として行うその特定組合員が締結している組合契約によって成立する組合。ロ及びハにおいて同じです。)の氏名、住所及び生年月日又は名称及び本店若しくは主たる事務所の所在地(報告金融機関等が保有している場合に限ります。)ロ 報告対象契約に係る特定取引を行った者の特定居住地国の名称及びその者がその特定居住地国(外国に限ります。)において納税者番号を有する場合には、その納税者番号(報告金融機関等が保有している場合に限ります。)ハ 報告対象契約に係る特定取引を行った者が特定法人である場合において、実質的支配者(特定居住地国が報告対象国である者に限ります。)があるときは、その実質的支配者に係る上記イ及びロに掲げる事項ニ 上記ハの場合において、特定法人が内国法人であるときは、その特定法人の法人番号(その特定法人が法人番号を有する場合に限ります。)

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――国際課税関係の改正――

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ホ 報告対象契約に係る特定取引が信託に係る契約(金銭及び有価証券以外の財産のみを信託財産とする定めのあるものを除きます。)の締結である場合には、その信託の受益者(特定居住地国が報告対象国である者に限ります。)に係る上記イ及びロに掲げる事項(注) 上記の「信託」からは、信託(委託者

のみが受益者である信託以外の信託に限

り、かつ、その信託財産の運用を金融商

品取引業者等又は特例業務届出者が投資

運用業として行う場合に限ります。)を除

くこととされています(実特令 6 の 6 ①

六、 6の 7一ト)。

ヘ 報告金融機関等が報告対象契約を識別するために用いる番号、記号その他の符号ト その年の12月31日における報告対象契約に係る資産の価額チ その年における報告対象契約に係る資産の運用、保有又は譲渡による収入金額及びその種別リ 上記ト及びチに掲げる事項の金額を表示する通貨の種類ヌ その他参考となるべき事項(注 1) 上記トの報告対象契約に係る資産の価

額及び上記チの資産の運用、保有又は譲

渡による収入金額は、外国通貨で表示さ

れたものにあっては、外国通貨で表示さ

れた金額又は外国通貨で表示された金額

を本邦通貨表示に換算した金額とされて

います。なお、外国通貨の本邦通貨への

換算は、その年の12月31日(上記チの資

産の運用、保有又は譲渡による収入金額

にあっては、その年の12月31日又はその

支払の確定した日)における外国為替の

売買相場により行うものとされています

(所得相互免除規21①による準用後の実特

規16の12④)。(注 2) 上記チの資産の運用、保有又は譲渡に

よる収入金額の種別は、次に掲げるもの

とされています(所得相互免除規21①に

よる準用後の実特規16の12③)。

イ 利子所得(所法23①)に係る収入金

ロ 配当所得(所法24①)に係る収入金

ハ 有価証券又はデリバティブ取引に係

る権利の譲渡による所得に係る収入金

ニ 上記イからハまでに掲げるもの以外

の収入金額

④ 報告事項の提供先 報告金融機関等が提供すべき報告事項の提供先は、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における報告事項の提供先と同様とされており、具体的には、報告金融機関等は、その報告金融機関等の次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める場所の所轄税務署長に報告事項を提供する必要があります(所得相互免除法41の 2 ①、実特令 6の12②)。イ 報告金融機関等が国内に本店又は主たる事務所の所在地を有する場合��本店又は主たる事務所の所在地ロ 報告金融機関等が国内に本店又は主たる事務所を有しない場合��国内に有するその事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(④において「事務所等」といいます。)の所在地(その事務所等が 2以上ある場合には、主たるものの所在地。ハロにおいて同じです。)ハ 報告金融機関等が次に掲げる者である場合��次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に定める場所イ 次に掲げる者��次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に掲げる契約によって成立する組合の主たる事務所の所在地ⅰ 民法第667条第 1 項⦅組合契約⦆に規定する組合契約によって成立する組合の業務を執行する組合員��その組

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――国際課税関係の改正――

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合契約ⅱ 匿名組合契約(これに準ずる契約を含みます。ⅱにおいて同じです。)に基づいて出資を受ける者��その匿名組合契約(注) 上記の「匿名組合契約に準ずる契

約」とは、当事者の一方が相手方の

事業のために出資をし、相手方がそ

の事業から生ずる利益を分配するこ

とを約する契約をいいます(実特令

6の 9①)。

ⅲ 投資事業有限責任組合契約に関する法律第 3条第 1項⦅投資事業有限責任組合契約⦆に規定する投資事業有限責任組合契約によって成立する同法第 2条第 2項⦅定義⦆に規定する投資事業有限責任組合の業務を執行する無限責任組合員��その投資事業有限責任組合契約ⅳ 有限責任事業組合契約に関する法律第 3 条第 1 項⦅有限責任事業組合契約⦆に規定する有限責任事業組合契約によって成立する同法第 2条⦅定義⦆に規定する有限責任事業組合の業務を執行する同法第29条第 3項⦅会計帳簿の作成及び保存⦆に規定する組合員��その有限責任事業組合契約

ロ 外国における上記イⅰからⅳまでに定める契約に類する契約によって成立する団体に係る上記イⅰからⅳまでに掲げる者に類する者��その契約によって成立する団体の国内に有する事務所等の所在地

⑤ 報告事項の提供方法 本制度の報告の対象となる報告事項の提供方法については、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における報告事項の提供方法と同様とされており、具体的には、次のいずれかの方法により報告事項を提供しなければならないこととされていま

す(所得相互免除法41の 2 ①各号)。イ 電子情報処理組織(e­Tax)を使用して報告事項を送信する方法 この方法により報告事項の提供を行うためには、以下の手続により行う必要があります。イ 電子情報処理組織を使用して記載事項の提供をしようとする報告金融機関等は、その名称及び所在地、電子情報処理組織を利用して申請事項の提供を行う旨、その他参考となるべき事項を税務署長に届け出なければならないなど、あらかじめ、国税関係法令による行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令第 4条⦅事前届出⦆の定めに従って手続を行う必要があります(所得相互免除規21①による準用後の実特規16の12⑤)。ロ 報告金融機関等がその所轄税務署長に確認事項を送信する場合には、識別符号及び暗証番号を入力して記載事項の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明と併せてこれらを送信するなど、国税関係法令による行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令第 5条第 1項⦅電子情報処理組織による申請等⦆の定めに従って送信する必要があります(所得相互免除規21①による準用後の実特規16の12⑥)。

ロ 報告事項を記録した光ディスク、磁気テープ又は磁気ディスクを提出する方法(所得相互免除規21①による準用後の実特規16の12⑦)(注) この方法により報告事項の提供を行う

場合には、税務署長の承認を受ける必要

はありません。

⑥ 報告対象契約が終了した場合の報告事項の提供の特例 報告金融機関等は、その年中に、その報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者(上記①の報告対象外とな

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る者を除きます。)の締結していた報告対象契約が終了した場合には、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度と同様に、その報告対象契約ごとに、次に掲げる事項を、その年の翌年 4月30日までに、上記⑤イ又はロのいずれかの方法により所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(所得相互免除法41の 2 ⑤、所得相互免除令33の 2 ①、所得相互免除規21①による準用後の実特規16の12②)。イ 上記③イからヘまで及びチからヌまでに掲げる事項ロ 報告対象契約の終了の事実

⑶ 報告金融機関等による記録の作成及び保存 報告金融機関等は、上記⑵により報告事項を提供した場合には、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度における報告事項を提供した場合と同様に、その報告事項に関する記録を、文書、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいいます。下記⑷①(注 1)において同じです。)又はマイクロフィルムを用いて作成しなければならないこととされています(所得相互免除法41の 2 ③、所得相互免除規21②による準用後の実特規16の13①)。 また、報告金融機関等は、その作成した記録を、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度と同様に、その記録に係る特定取引に係る契約が終了した日等一定の日の属する年の翌年から 5年間、保存しなければならないこととされています(所得相互免除法41の2 ④)。① 記録事項の範囲 報告金融機関等が記録すべき事項は、次に掲げる事項とされています(所得相互免除規21②による準用後の実特規16の13②)。イ 報告事項を提供した年月日及びその報告

事項ロ その他参考となるべき事項② 記録の保存期間 報告金融機関等は、その作成した記録を、次に掲げる特定取引の区分に応じそれぞれ次に定める日の属する年の翌年から 5年間、保存しなければならないこととされています(所得相互免除規21②による準用後の実特規16の13③)。イ 下記ロに掲げる特定取引以外の特定取引��その特定取引に係る契約が終了した日ロ 次に掲げる特定取引��その特定取引が行われた日イ 無尽業法第 1条に規定する無尽に係る契約の締結ロ 保険契約又は共済に係る契約に基づく年金(人の生存を事由として支払が行われるものに限ります。)、満期保険金、満期返戻金、解約返戻金又は満期共済金の受取

⑷ その他① 報告金融機関等の報告事項の提供に係る税務職員の質問検査権 国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度と同様に、報告事項の提供に関する調査について必要があるときは、その報告事項の提供をする義務がある者に質問し、その者の報告対象契約に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件(その写しを含みます。)の提示若しくは提出を求めることができるほか、報告事項の提供に関する調査について必要があるときは、その調査において提出された物件を留め置くことができることとされています(所得相互免除法41の2 ⑥⑦⑩、所得相互免除令33の 2 ②)。(注 1) 上記の「帳簿書類」には、その作成又

は保存に代えて電磁的記録の作成又は保

存がされている場合におけるその電磁的

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――国際課税関係の改正――

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記録を含むこととされています。下記②

イハにおいて同じです。(注 2) この質問又は検査の権限は、犯罪捜査

のために認められたものと解してはなら

ないこととされています(所得相互免除

法41の 2 ⑧)。

 その際、国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、質問、検査又は提示若しくは提出の要求をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならないこととされています(所得相互免除法41の 2 ⑨、国税質問検査章規則 2⑥、別表第六)。② 罰則イ 報告金融機関等の報告事項の提供義務違反等に対する罰則 報告事項の提供等に関しては、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度と同様に、本制度の実効性を担保するため、次のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金を科することとされています(所得相互免除法47①)。イ 報告事項をその提供の期限までに上記⑵⑤イ若しくはロに掲げる方法により税務署長に提供せず、又は上記⑵⑤イ若しくはロに掲げる方法により偽りの事項を税務署長に提供した者ロ 上記①の当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は上記①の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者ハ 上記①の物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、

又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含みます。)を提示し、若しくは提出した者

ロ 税務職員の守秘義務違反(秘密漏洩)に対する罰則 国税の調査若しくは租税条約等実施特例法の規定に基づいて行う情報の提供のための調査又は国税の徴収等に関する事務に従事している者又は従事していた者による守秘義務違反については、国税通則法において統一的な罰則規定( 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が設けられています(旧通法127)。 上記①のとおり、外国居住者等所得相互免除法において、新たに報告金融機関等の報告事項の提供に係る税務職員の質問検査権に関する規定が設けられることに伴い、税務職員の守秘義務違反に対する罰則の対象範囲に、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度と同様に、外国居住者等所得相互免除法の規定に基づいて行う情報の提供のための調査(報告事項の提供に関する調査)を加えることとされました(通法127)。

3  適用関係

⑴ 上記 2(⑴③ロ及び⑷②を除きます。)の改正は、平成31年 4 月 1 日から施行されています(改正法附則 1、改正所得相互免除令附則①、改正所得相互免除規附則)。⑵ 上記 2 ⑴③ロ及び⑷②の改正は、平成31年4 月 1 日以後にした違反行為について適用されます(改正法附則 1、115)。

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Ⅱ 国別報告事項の提供制度の整備

1  改正前の制度の概要

⑴ 最終親会社等又は代理親会社等による国別報告事項の提供 特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人(最終親会社等又は代理親会社等に該当するものに限ります。)は、その特定多国籍企業グループの各最終親会計年度に係る国別報告事項を、その各最終親会計年度終了の日の翌日から 1年以内に、特定電子情報処理組織を使用する方法(e­Tax)により、その内国法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(措法66の 4 の 4 ①)。 なお、この⑴による提供方式により提供された特定多国籍企業グループの国別報告事項は、租税条約等の情報交換の仕組みを通じて、その特定多国籍企業グループの事業が行われる国又は地域の税務当局へ提供されることになります(この方式を「条約方式」による国別報告事項の提供といいます。)。

⑵ 最終親会社等及び代理親会社等以外の構成会社等による国別報告事項の提供 特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人(最終親会社等又は代理親会社等に該当するものを除きます。⑵において同じです。)又はその構成会社等である恒久的施設を有する外国法人は、その特定多国籍企業グループの最終親会社等(代理親会社等を指定した場合には、代理親会社等。⑵において「最終親会社等」といいます。)の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報の提供を我が国に対して行うことができないと認められる場合に該当するときは、その特定多国籍企業グループの各最終親会計年度に係る国別報告事項を、その各最終親会計年度終了の日の翌日から 1年以内に、特

定電子情報処理組織を使用する方法(e­Tax)により、その内国法人にあってはその本店又は主たる事務所の所在地、その外国法人にあってはその恒久的施設を通じて行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(これらが二以上ある場合には、主たるものの所在地)の所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(この方式を「子会社方式」による国別報告事項の提供といいます。)(措法66の 4 の 4 ②)。 ここで、「最終親会社等の居住地国の税務当局が国別報告事項に相当する情報の提供を我が国に対して行うことができないと認められる場合」とは、次の①から③までに掲げる場合のいずれかに該当する場合とされています(旧措令39の12の 4 ①)。① 特定多国籍企業グループの最終親会社等の居住地国(租税条約その他の我が国が締結した国際約束(租税の賦課及び徴収に関する情報を相互に提供することを定める規定を有するものに限ります。)の我が国以外の締約国又は締約者に限ります。②及び③において同じです。)において、対象となる各最終親会計年度に係る国別報告事項に相当する事項の提供を求めるために必要な措置が講じられていない場合② 財務大臣と特定多国籍企業グループの最終親会社等の居住地国の権限ある当局との間の適格当局間合意(注)がない場合(注) 「適格当局間合意」とは、国別報告事項又

はこれに相当する情報((注)において「国

別報告事項等」といいます。)を相互に提供

するための財務大臣と我が国以外の国又は

地域の権限ある当局との間の国別報告事項

等の提供時期、提供方法その他の細目に関

する合意(③において「当局間合意」とい

います。)で、対象となる各最終親会計年度

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終了の日の翌日から 1 年を経過する日にお

いて現に効力を有するものをいいます。

③ 対象となる各最終親会計年度終了の日において、特定多国籍企業グループの最終親会社等の居住地国が、我が国が行う国別報告事項の提供に相当する情報の提供を我が国に対して行うことができないと認められる場合(財務大臣とその居住地国の権限ある当局との間の当局間合意がない場合を除きます。)におけるその国又は地域として国税庁長官が指定する国又は地域に該当する場合

2  改正の内容

 平成27年11月26日に日本と台湾双方の民間窓口機関である公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(台湾側)との間で「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(日台民間租税取決め)が取り結ばれており、その取決め第25条に規定されている「情報の交換」に関し、両協会間で自動的情報交換の実施に向けた調整が行われてきたところ、平成30年11月30日、その実施手続について両協会間で合意されました。 そして、国税庁から、台湾において我が国に対して国別報告事項に相当する情報を提供するためのその提供時期、提供方法その他の細目が整備されていることを前提に、平成29年 1 月 1 日以後に開始する最終親会計年度に係る国別報告事項を台湾に提供する方針が公表されています。また、台湾から我が国に対しても、平成29年 1 月 1 日以後に開始する最終親会計年度に係る国別報告事項に相当する情報が提供されることになります。 これに伴い、台湾が我が国に対して国別報告事項に相当する情報の提供を行うことができない(体系的な不履行がある)と認められる場合には、台湾法人の日本子会社等に対して国別報告事項の

提供を義務付ける「子会社方式」の適用を可能とする改正が行われました。 具体的には、改正前の制度における子会社方式の適用に係る特定多国籍企業グループの最終親会社等の居住地国は、「租税条約その他の我が国が締結した国際約束(租税の賦課及び徴収に関する情報を相互に提供することを定める規定を有するものに限ります。)の我が国以外の締約国又は締約者」に限られていたため台湾は対象とされていませんでしたが、今回の改正ではその居住地国の範囲に「外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律第 2条第 3号に規定する外国」が追加されたことにより、台湾が我が国に対して国別報告事項に相当する情報の提供を行うことができないと認められる場合には、その最終親会社等の居住地国が台湾である特定多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又はその構成会社等である恒久的施設を有する外国法人は、その特定多国籍企業グループの国別報告事項を、各最終親会計年度終了の日の翌日から 1年以内に、所轄税務署長に提供しなければならないこととされました(措令39の12の 4 ①)。 なお、台湾において我が国に対して国別報告事項に相当する情報を提供するためのその提供時期、提供方法その他の細目が整備されていることを踏まえ、子会社方式の発動要件のうち「財務大臣と特定多国籍企業グループの最終親会社等の居住地国の権限ある当局との間の適格当局間合意がない場合」については、最終親会社等の居住地国が台湾である場合には適用しないこととしています。

3  適用関係

 上記の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に開始する最終親会計年度に係る国別報告事項について適用し、同日前に開始した最終親会計年度に係る国別報告事項については従前どおりとされています(改正措令附則24)。

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――国際課税関係の改正――

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六 その他

Ⅰ� 特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置の改正

1  改正前の制度の概要

⑴ 制度の概要 特定外国法人が、平成29年 4 月 1 日から平成31年 3 月31日までの間に開始する振替国債を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものにつき、特定金融機関等から支払を受ける利子及び差益については、一定の要件の下、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされています(旧措法42の 2 ③、67の17⑨)。ただし、特定外国法人が適用除外とされる特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、非課税とされません(旧措法42の 2 ④、67の17⑩)。また、適用除外とされない場合であっても、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける利

子及び差益で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(旧措法42の 2 ⑤、67の17⑫)。

⑵ 非課税の対象となる者 非課税の対象となる者は、外国金融機関等以外の外国法人(条約相手国等の法人に限ります。以下「特定外国法人」といいます。)とされています(旧措法42の 2 ③)。(注) 上記の「条約相手国等の法人」には、人格

のない社団等が含まれます(措法42の 2 ②一)。

⑶ 非課税の対象となる所得① 所得税の非課税の対象となる利子 所得税の非課税の対象となる利子は、振替

【日本】 【台湾】

日本の税務当局 台湾の税務当局

国別報告事項

≪特定多国籍企業グループ≫

国別報告事項

   【改正事項】台湾法人の日本子会社等に対して「子会社方式」の適用を可能とする。

【子会社方式】 特定多国籍企業グループの日本子会社等は、最終親会社等の居住地国(租税条約等の相手国等に限る。)の税務当局が国別報告事項に相当する情報の提供を我が国に対して行うことができないと認められる場合には、国別報告事項を、報告対象となる会計年度終了の日の翌日から 1年以内に、所轄税務署長に提供しなければならない。

【改正事項】 台湾は租税条約等の相手国等に該当しないため、「子会社方式」の適用対象とされていなかったが、「子会社方式」の適用に係る最終親会社等の居住地国に台湾を追加する等の整備を行い、台湾が我が国に対して国別報告事項に相当する情報の提供を行うことができない(体系的な不履行がある)と認められる場合には、台湾法人の日本子会社等に対して国別報告事項の提供を義務付ける、「子会社方式」の適用が可能とされた。

体系的不履行のために日本に国別報告事項が提供されない事態が発生

内国法人(日本子会社)PE

最終親会社等代理親会社等

台湾との間の国別報告事項の自動的な提供の開始に伴う整備

─�672�─

――国際課税関係の改正――

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国債に係る特定債券現先取引につき、特定金融機関等から支払を受ける所得税法第161条第 1項第10号⦅国内源泉所得⦆に掲げる利子とされています(旧措法42の 2 ③)。ただし、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける利子で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(旧措法42の 2 ⑤)。イ 振替国債に係る特定債券現先取引の意義 「振替国債に係る特定債券現先取引」とは、振替国債に係る債券現先取引(振替国債を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものをいいます。以下同じです。)で特定外国法人と特定金融機関等との間で行われるものをいいます(旧措法42の 2 ③)。ロ 非課税の対象となる振替国債に係る債券現先取引の要件 非課税の対象となる振替国債を用いて行う債券現先取引は、本措置が租税回避の手段として濫用されることを防止する等の観点から、次に掲げる全ての要件を満たすものに限定することとされています(旧措法42の 2 ③)。イ 債券現先取引において債券の譲渡の日又は購入の日からその債券の買戻しの日又は売戻しの日までの期間が 3月を超えないこと(旧措令27の 2 ⑨一)。ロ 債券現先取引に関し、次に掲げる約定をしていること。ⅰ 金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律第 3条⦅一括清算と破産手続等との関係⦆に規定する一括清算の約定(旧措令27の 2 ⑨二、旧措規19の15④)ⅱ 債券現先取引に係る債券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険を減少させるための次に掲げる約定(旧措令27の 2 ⑨二、旧措規19の15⑤)ⅰ ヘア・カットに関する約定(措規19の15②一)

ⅱ 次に掲げるいずれかの約定a マージン・コールに関する約定(措規19の15②二イ)b リプライシングに関する約定(措規19の15②二ロ)

ハ 債券現先取引に係る債券のその債券現先取引の約定をした日における価額がその債券現先取引につき約定をした価格の75%以上であること(旧措令27の 2 ⑨三)。ニ 債券現先取引に係る利率が、次の算式により得た率以下であること(旧措令27の 2 ⑨四、旧措規19の15⑥)。《算式》債券現先取引の約定日の前日以前 3 月間の無担保コールO/N物レートの加重平均値

× 2 + 1%

ホ 特定金融機関等(国内金融商品取引清算機関を除きます。)の行った債券現先取引・債券貸借取引に係る総残高に占める特定外国法人との間の債券現先取引に係る残高の割合が50%以下であること(旧措令27の 2 ⑨五イ)。(注) 特定外国法人が特定金融機関等(国

内金融商品取引清算機関に限ります。)

との間で債券現先取引を行う場合につ

いても、上記と同様の要件が定められ

ています(旧措令27の 2 ⑨五ロ)。

② 法人税の非課税の対象となる差益 法人税の非課税の対象となる差益は、振替国債に係る特定債券現先取引につき、特定金融機関等から支払を受ける債券現先取引から生ずる差益とされています(旧措法67の17⑨)。ただし、恒久的施設を有する特定外国法人が支払を受ける差益で、恒久的施設帰属所得に該当するものについては、非課税とされません(旧措法67の17⑫)。(注) 上記の「差益」とは、特定外国法人が特

定金融機関等との間で行う債券現先取引に

おいて、債券を譲渡する際のその譲渡に係

─�673�─

――国際課税関係の改正――

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る対価の額がその債券と同種・同量の債券

を買い戻す際のその買戻しに係る対価の額

を上回る場合におけるその譲渡に係る対価

の額からその買戻しに係る対価の額を控除

した金額に相当する差益をいいます(旧措

法67の17⑨、旧措令39の33の 3 ⑦)。

⑷ 適用除外とされる特定外国法人 本措置においては、特定金融機関等と特定外国法人との間に親子会社関係などの支配・被支配関係を利用した租税回避行為を防止する観点から、特定金融機関等の関連者である特定外国法人が債券現先取引につき支払を受ける利子及び差益については、非課税の対象外とされています。 具体的には、本措置は、振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子又は差益の支払を受ける特定外国法人が、その利子又は差益を支払う特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、適用しないこととされています(旧措法42の 2 ④、67の17⑩)。

⑸ 非課税適用手続等① 非課税適用申告書の提出 所得税の非課税の適用を受けようとする特定外国法人は、非課税適用申告書を、最初に振替国債に係る特定債券現先取引に係る利子の支払を受けるべき日の前日までに、その利子の支払をする者を経由してその支払をする者のその利子に係る所得税法第17条⦅源泉徴収に係る所得税の納税地⦆の規定による納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(旧措法42の 2 ⑦、旧措令27の 2 ⑰、旧措規19の15⑦⑧)。(注) 所得税の非課税の適用を受けようとする

特定外国法人は、その特定外国法人に対し

振替国債に係る特定債券現先取引に係る利

子の支払をする特定金融機関等の帳簿にお

いて、各人別に、その者に関する記載又は

記録を受けていないときは、上記のとおり、

非課税適用申告書を所轄税務署長に提出し

なければなりません(旧措令27の 2 ⑱)。

② 本人確認手続 非課税適用申告書の提出をする特定外国法人は、その提出をする際、その経由する特定金融機関等の営業所等の長にその提出をする特定外国法人の本人確認書類を提示しなければならないものとされ、その特定金融機関等の営業所等の長は、その非課税適用申告書に記載されている名称及び本店又は主たる事務所の所在地をその本人確認書類により確認しなければならないものとされています(旧措法42の 2 ⑨、旧措令27の 2 ⑳)。(注) 非課税適用申告書の提出をする特定外国

法人は、法人番号を有する場合には、その

提出をする際、その経由する特定金融機関

等の事務所等の長にその提出をする特定外

国法人の番号確認書類を提示しなければな

らないものとされ、その特定金融機関等の

事務所等の長は、その非課税適用申告書に

記載されている名称、本店又は主たる事務

所の所在地及び法人番号をその番号確認書

類により確認しなければならないものとさ

れています(旧措令27の 2 �、旧措規19の

15⑮⑯)。なお、非課税適用申告書を受理し

た特定金融機関等の事務所等の長は、その

非課税適用申告書に、その特定金融機関等

の事務所等に係る特定金融機関等の法人番

号を付記するものとされています(旧措規

19の15⑰)。

⑹ 特定金融機関等による帳簿の作成・保存 特定金融機関等は、非課税適用申告書の提出をした特定外国法人がその特定金融機関等から支払を受ける利子に係る振替国債に係る特定債券現先取引につき帳簿を備え、その提出をした特定外国法人との間で債券現先取引に係る契約等が締結されたとき又はその提出をした特定外国法人から異動申告書の提出があったときは、その都度、各人別に、所定の事項を帳簿に記載

─�674�─

――国際課税関係の改正――

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し、又は記録し、かつ、その帳簿を、その帳簿の閉鎖の日を含む事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日から 5年間保存しなければならないこととされています(旧措法42の 2 ⑫、旧措令27の 2 ㉓、旧措規19の15⑱⑲)。

2  改正の内容

⑴ 非課税の対象となる債券現先取引の範囲の拡充① 改正の概要 平成29年度税制改正において、外国の金融機関以外の外国法人が行う振替国債を用いて行う債券現先取引の利子等について、一定の要件の下、非課税とすることとされましたが、今般の改正においては、引き続き、国内の金融機関の短期資金の調達の円滑化を更に徹底する観点から、非課税の対象となる債券現先取引の範囲に、一定の特定金融機関等との間で行われる外国債券を用いて行う債券現先取引で一定の要件を満たすものを加えることとされました(措法42の 2 ③)。② 非課税の対象となる外国債券の意義 非課税の対象となる「外国債券」とは、次に掲げる債券をいいます(措法42の 2 ③二・三、措令27の 2 ⑪⑫、措規19の15⑧)。イ 外国が発行し、又は保証する一定の債券 具体的には、外国(次に掲げるものに限ります。②において同じです。)が発行し、又は保証する債券(次に掲げる外国の区分に応じそれぞれ次に定める外国通貨で表示されるものに限ります。②において同じです。)をいいます。イ アメリカ合衆国��アメリカ合衆国通貨ロ 英国��英国通貨ハ 欧州経済通貨統合参加国��欧州経済通貨統合参加国通貨(注) 上記の「欧州経済通貨統合参加国」

とは欧州連合(EU)加盟国のうち欧州

統一通貨「ユーロ」を法定通貨として

いる国を意味し、上記の「欧州経済通

貨統合参加国通貨」とはユーロを意味

します。平成31年 4 月 1 日現在、19か

国(アイルランド、イタリア、エスト

ニア、オーストリア、オランダ、キプ

ロス、ギリシャ、スペイン、スロバキ

ア、スロベニア、ドイツ、フィンラン

ド、フランス、ベルギー、ポルトガル、

マルタ、ラトビア、リトアニア、ルク

センブルク)がユーロを法定通貨とし

ています。

ニ オーストラリア��オーストラリア通貨

ロ 外国法人が発行する一定の債券 具体的には、外国の特別の法令の規定に基づき設立された外国法人で、その業務がその外国の政府の管理の下に運営されているものが発行する債券(上記イに掲げるものを除きます。)をいいます。

③ 非課税の対象となる外国債券に係る債券現先取引の要件 非課税の対象となる外国債券を用いて行う債券現先取引は、本措置が租税回避の手段として濫用されることを防止する等の観点から、非課税の対象となる振替国債を用いて行う債券現先取引の要件と同等の要件を満たすものに限定されており、具体的には、次に掲げる要件の全てを満たすものに限定することとされています(措法42の 2 ③)。イ 上記 1 ⑶①ロイからハまで及びホに掲げる要件(措令27の 2 ⑨一~三、五)ロ 債券現先取引に係る利率が、その債券現先取引の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める率以下であること(措令27の 2 ⑨四ロ、措規19の15⑦)。イ 外国債券(アメリカ合衆国に係るもので、かつ、アメリカ合衆国通貨で表示されるものに限ります。)に係る債券現先取引��次の算式により得た率

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――国際課税関係の改正――

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《算式》債券現先取引の約定日の前日以前 3 月間のアメリカ合衆国通貨に係る利率

× 2 + 1%

ロ 外国債券(英国に係るもので、かつ、英国通貨で表示されるものに限ります。)に係る債券現先取引��次の算式により得た率《算式》債券現先取引の約定日の前日以前 3 月間の英国通貨に係る利率

× 2 + 1%

ハ 外国債券(欧州経済通貨統合参加国に係るもので、かつ、欧州経済通貨統合参加国通貨で表示されるものに限ります。)に係る債券現先取引��次の算式により得た率《算式》債券現先取引の約定日の前日以前 3 月間の�欧州経済通貨統合参加国通貨に係る利率

× 2 + 1%

ニ 外国債券(オーストラリアに係るもので、かつ、オーストラリア通貨で表示されるものに限ります。)に係る債券現先取引��次の算式により得た率《算式》債券現先取引の約定日の前日以前 3 月間の�オーストラリア通貨に係る利率

× 2 + 1%

(注) 上記イからニまでの算式の「債券現先

取引の約定日の前日以前3月間の外国通貨

に係る利率」とは、債券現先取引の約定

をした日の前日以前3月間において、外国

通貨に係る利率のうち、最も高い利率

(その利率が零を下回る場合には、零)を

いいます。

 ここで、「外国通貨に係る利率」とは、

外国通貨に係る外国における、日本銀行

が公表する日本円のリスク・フリー・レ

ートとして特定されている無担保コール

O /N物レートの加重平均値に相当する

利率として内閣総理大臣が財務大臣と協

議して定める利率として公表されたもの

をいい(措規19の15⑦)、具体的には、次

に掲げる外国通貨の区分に応じそれぞれ

次に定める利率が定められています(租

税特別措置法施行規則第19条の15第7項の

規定に基づき内閣総理大臣が財務大臣と

協議して定める利率を定める件(平成31

年4月内閣府告示第30号)①、別表)。

ⅰ アメリカ合衆国通貨��ニューヨー

ク連邦準備銀行が公表する Secured�

Overnight�Financing�Rate

ⅱ 英国通貨��イングランド銀行が公表

するSterling�Overnight�Index�Average

ⅲ 欧州経済通貨統合参加国通貨��欧

州マネーマーケット協会(European�

Money�Markets�Institute)が公表する

Euro�OverNight�Index�Average

ⅳ オーストラリア通貨��オーストラ

リア準備銀行が公表する Interbank�

Overnight�Cash�Rate

 なお、上記ⅰからⅳまでに定める利率

を公表する機関に変更が生じた場合には、

その変更時期と告示の改正時期にタイム

ラグが生じ得ることを踏まえ、本措置の

適用関係を明確にする観点から、その変

更後の機関が公表するその利率は、上記

の「外国通貨に係る利率」として取り扱

うこととされています(租税特別措置法

施行規則第19条の15第7項の規定に基づき

内閣総理大臣が財務大臣と協議して定め

る利率を定める件②)。

④ 非課税の対象となる債券現先取引の相手方 非課税の適用を受ける特定外国法人が行う外国債券を用いて行う債券現先取引の相手方は、次に掲げる特定金融機関等に限定することとされています(措法42の 2 ③)。イ 租税特別措置法第 8条第 1項⦅金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の

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――国際課税関係の改正――

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不適用⦆に規定する金融機関ロ 租税特別措置法第 8条第 2項に規定する金融商品取引業者等ハ 金融商品取引法施行令第 1条の 9第 5号⦅金融機関の範囲⦆に掲げるもの(いわゆる短資会社)

⑵ 所得税の非課税の対象となる利子の範囲の拡充① 改正の概要 本措置の対象となる者は、上記 1 ⑵のとおり、一定の外国法人に限定されており、例えば、海外の証券投資信託については、いわゆる会社型の外国証券投資信託については外国法人として本措置の適用を受けることができましたが、いわゆる契約型の証券投資信託については、その対象とされていませんでした。 そこで、今般の改正においては、こうした事情を勘案し、引き続き、我が国国債市場の流動性の確保や国内の金融機関の短期資金の調達の円滑化を更に徹底する観点から、外国投資信託の受託者である特定外国法人がその外国投資信託の信託財産につき支払を受ける債券現先取引に係る利子については、その外国投資信託が適格外国証券投資信託である場合に限り、一定の要件の下に、所得税の非課税の対象とすることとされました(措法42の2 ⑤)。

② 適格外国証券投資信託の意義 非課税の対象となる「適格外国証券投資信託」は、振替国債等の利子の課税の特例(措法 5の 2)における適格外国証券投資信託と同様とされています(措法42の 2 ④)。 具体的には、「適格外国証券投資信託」とは、証券投資信託又は公社債等運用投資信託に該当し、かつ、次に掲げる要件のいずれかを満たす外国投資信託をいいます(措法 5の2②)。イ 次に掲げる要件イ 外国投資信託の設定に係る受益権の国

外における募集が公募により行われたものであり、かつ、その外国投資信託の目論見書(金商法 2⑩)その他これに類する書類に公募である旨の記載がなされて行われていること。(注) 上記の「公募」とは、金融商品取引

法第 2 条第 3 項⦅定義⦆に規定する取

得勧誘のうち同項第 1 号に掲げる場合

に該当するものに相当するものをいい

ます。下記ロⅰにおいて同じです。

ロ 外国投資信託の設定に係る受益権の募集が国内においても行われる場合には、次に掲げる要件を満たすこと。ⅰ 外国投資信託の設定に係る受益権の国内における募集が公募により行われたものであること。ⅱ 上記ⅰの募集が行われたその受益権に係る収益の分配が国内における支払の取扱者(措法 3の 3①、 8の 3①)を通じて交付されること。ⅲ 外国投資信託の目論見書その他これに類する書類にその募集及び収益の分配が上記ⅰ及びⅱに従って行われる旨の記載がなされていること。

ロ 外国投資信託の受益権の全てが他の適格外国証券投資信託(上記イに掲げる要件を満たすものを含みます。ロにおいて同じです。)の信託財産として取得されたものであり、かつ、その外国投資信託の目論見書その他これに類する書類にその受益権の全てが他の適格外国証券投資信託の信託財産として取得されるものである旨の記載がなされていること。

③ 適用除外とされる特定外国法人 適格外国証券投資信託の受託者である特定外国法人がその適格外国証券投資信託の信託財産につきその利子の支払を受ける場合におけるその特定外国法人は、振替社債等の利子等の課税の特例(措法 5の 3)における適格外国証券投資信託と同様に、適用除外とされ

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――国際課税関係の改正――

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る特定外国法人から除かれることとされています(措法42の 2 ④)。④ 非課税適用手続等イ 非課税適用申告書の提出 適格外国証券投資信託の受託者である特定外国法人が、その適格外国証券投資信託の信託財産につき支払を受ける債券現先取引に係る利子について所得税の非課税の適用を受けようとする場合には、上記 1 ⑸①のとおり、非課税適用申告書を所轄税務署長に提出する必要がありますが、その特定外国法人の受託した適格外国証券投資信託の別に提出しなければならないこととされています(措法42の 2 ⑧、措令27の 2 �)。(注 1) 所得税の非課税の適用を受けようと

する特定外国法人が適格外国証券投資

信託の受託者である場合には、その特

定外国法人に対し振替国債等に係る特

定債券現先取引に係る利子の支払をす

る特定金融機関等の帳簿において、各

人別及びその受託した適格外国証券投

資信託の別に記載又は記録を受けてい

ないときは、上記 1 ⑸①のとおり、非

課税適用申告書を所轄税務署長に提出

しなければならないこととされていま

す(措令27の 2 ⑳)。(注 2) 上記のほか、非課税適用申告書及び

異動申告書の記載事項についても所要

の措置が講じられています(措規19の

15⑩⑯)。

ロ 本人確認手続 適格外国証券投資信託の受託者である特定外国法人が、その適格外国証券投資信託の信託託財産につき非課税適用申告書を提出する場合には、その特定外国法人の本人確認書類に加え、その適格外国証券投資信託の目論見書その他これに類するもの(その特定外国法人の名称及び所在地等並びにその適格外国証券投資信託の名称の記載のあるものに限ります。)を提示しなければ

ならないこととされています。また、その提示を受けた特定金融機関等の営業所等の長は、その非課税適用申告書に記載されている受託者である特定外国法人の名称及び本店等所在地に加え、その適格外国証券投資信託の名称及びその適格外国証券投資信託に係る上記②イイ若しくはロⅲ又はロの記載をこれらの書類により確認しなければならないこととされています(措法42の 2⑩、措令27の 2 ㉓、措規19の15⑪⑫)。(注) 上記のほか、法人番号の確認の際に提

示すべき番号確認書類及び異動申告書提

出の際の本人確認手続についても所要の

措置が講じられています(措法42の 2 ⑫、

措規19の15⑱)。

⑤ 特定金融機関等による帳簿の作成・保存 特定金融機関等は、非課税適用申告書の提出をした特定外国法人が適格外国証券投資信託の受託者である場合には、その特定外国法人から異動申告書の提出があったとき等の一定の事由が生じたときは、その受託者の各人別及びその受託した適格外国証券投資信託の別に、上記 1 ⑹のとおり、所定の事項を帳簿に記載し、保存しなければならないこととされています(措令27の 2 ㉖)。(注) 上記のほか、帳簿の記載事項についても

所要の措置が講じられています(措規19の

15�)。

⑶ 適用期限の延長 引き続き市場のニーズや政策効果等を見極める必要があることから、本措置の適用期限(平成31年 3 月31日)を令和 3年 3月31日まで 2年延長することとされました(措法42の 2 ③、67の17⑨)。

3  適用関係

⑴ 上記 2 ⑴の改正は、特定外国法人が平成31年 4 月 1 日以後に開始する外国債券に係る特定債券現先取引につき支払を受ける利子及び

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――国際課税関係の改正――

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差益について適用されます(改正法附則47①、60)。⑵ 上記 2 ⑵の改正は、適格外国証券投資信託の受託者である特定外国法人が平成31年 4 月1 日以後に開始する振替国債等に係る特定債

券現先取引につき支払を受ける利子について適用されます(改正法附則47②)。⑶ 上記 2 ⑶の改正は、平成31年 4 月 1 日から施行されています(改正法附則 1)。

Ⅱ 振替社債等の利子等の課税の特例等の改正

1  振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものの剰余金の配当等の非課税措置の適用期限の延長

⑴ 改正前の制度の概要① 特定振替社債等の利子等の非課税 非居住者又は外国法人が、特定振替社債等で特定振替機関等又は適格外国仲介業者から開設を受けている口座において特定振替機関等の営業所等又は適格外国仲介業者の特定国外営業所等を通じて振替記載等を受けているものにつき支払を受ける利子又は剰余金の配当(以下「利子等」といいます。)については、一定の要件の下、所得税を課さないこととされています(措法 5の 3①)。 上記の「特定振替社債等」とは、振替社債等のうちその利子等の額がその発行者又はその発行者の特殊関係者の事業に係る利益の額等の指標を基礎として算定されるもの(下記2 ⑴において「利益連動債」といいます。)以外のものをいい、平成31年 3 月31日までに発行された振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するもの等を含みます(旧措法 5の 3④七、措令 3の 2⑪)。(注 1) 特定振替社債等の発行者の特殊関係者

である非居住者又は外国法人が支払を受

ける特定振替社債等の利子等については、

非課税の対象外とされています(措法 5

の 3②)。(注 2) 恒久的施設を有する非居住者が支払を

受ける特定振替社債等の利子等で恒久的

施設帰属所得に該当するものについては、

一定の要件の下、源泉徴収に関する規定

(所法212、措法 9 の 3 の 2)を適用しな

いこととされています(措法 5の 3③)。

② 特定振替社債等の償還差益の非課税 非居住者又は外国法人が、特定振替社債等(割引債に該当するものを除きます。)につき支払を受ける償還差益でその特定振替社債等の発行者の特殊関係者でないものが支払を受けるものについては、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされています(措法41の13②、67の17②)。 また、特定振替社債等の償還差益が非課税とされることとの対称的な取扱いとして、非居住者又は外国法人が有する特定振替社債等の償還により生ずる損失の額は、所得税及び法人税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなすこととされています(措法41の13④、67の17⑪)。(注) 上記の償還差益又は損失の額のうち、恒

久的施設を有する非居住者若しくは外国法

人が支払を受けるもの又は恒久的施設を有

する非居住者若しくは外国法人につき生ず

るもので恒久的施設帰属所得に該当するも

のについては、上記の所得税及び法人税を

非課税とする取扱い並びに損失の額をない

ものとする取扱いは適用しないこととされ

ています(措法41の13⑤、67の17⑫)。

⑵ 改正の内容 引き続き市場のニーズや政策効果を見極める

─�679�─

――国際課税関係の改正――

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必要があることから、本措置の対象となる振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものの発行期限を令和 4年 3月31日まで 3年延長することとされました(措法 5の 3④七ホ)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日から施行されます(改正法附則 1)。

2  特定地方公共団体との間に完全支配関係がある法人の発行する振替社債等に関する特例の廃止

⑴ 廃止前の制度の概要 特定地方公共団体との間にその特定地方公共団体による完全支配関係がある内国法人が平成31年 3 月31日までに発行する振替社債等(利益連動債(その振替社債等に係る債務について地方公共団体が保証契約を締結していないものに限ります。)に該当するものに限ります。⑶において同じです。)については、特定振替社債等に該当するものとして、その利子等及び償還差益並びにその償還により生ずる損失の額につき、上記 1 ⑴①及び②の措置を適用することとされています(旧震災税特法10)。

(注 1) 「特定地方公共団体」とは、その全部又は

一部の区域が東日本大震災に際し災害救助

法が適用された同法第 2 条⦅救助の対象⦆

に規定する市町村の区域(一定の区域を除

きます。)又は特定被災区域である地方公共

団体をいいます(東日本大震災復興特別区

域法 4①)。(注 2) 「完全支配関係」とは、法人税法第 2 条第

12号の 7 の 6⦅定義⦆に規定する完全支配

関係をいいます。

⑵ 改正の内容 本特例は、東日本大震災による被害が未曾有のものであることに鑑み、復旧・復興の状況等を踏まえた更なる措置として平成24年度税制改正において創設されましたが、現下の発行ニーズ等を踏まえ、適用期限(平成31年 3 月31日)の到来をもって廃止することとされました(旧震災税特法10)。

⑶ 適用関係 平成31年 4 月 1 日前に発行された振替社債等に係る上記 1 ⑴①及び②の措置の適用については、従前どおりとされています(改正法附則87)。

Ⅲ 集団投資信託の収益の分配等に係る二重課税調整の改正

1  受託者が外国法人である場合の信託財産に係る利子等の課税の特例

⑴ 改正前の制度の概要 外国法人が引き受けた集団投資信託の信託財産について納付した所得税(外国の法令により課される源泉所得税に相当する税(以下「外国源泉所得税」といいます。)を含みます。)の額は、その集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除することとされています(旧所法180の 2 ③)。また、この分配時にお

ける二重課税調整を行う場合においてその控除すべき所得税の額は、その集団投資信託の収益の分配の額の計算上、その収益の分配の額に加算しなければなりません(所法180の 2 ④)。(注 1) 上記の控除の対象となる「外国源泉所得

税」は、その外国源泉所得税の課せられた

収益を分配するとした場合に、その収益の

分配につき源泉徴収が行われるものに対応

する部分に限られます(旧所令300①)。(注 2) 外国法人が集団投資信託の信託財産につ

いて納付した復興特別所得税についても、

─�680�─

――国際課税関係の改正――

Page 119: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

この控除の対象となります。また、集団投

資信託の信託財産について納付した所得税、

復興特別所得税及び外国源泉所得税は、そ

の集団投資信託の収益の分配に係る復興特

別所得税からも控除することとされ、その

控除すべき復興特別所得税の額は、その集

団投資信託の収益の分配の額の計算上、そ

の収益の分配の額に加算しなければなりま

せん(復興財確法33①による読替後の旧所

法180の 2 ③④)。

⑵ 改正の内容 今回の改正において、受託者が内国法人である場合の信託財産に係る利子等の課税の特例(所法176、所令300)における改正と同様に、集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税及び復興特別所得税の額の合計額から控除することとされている外国法人が引き受けた集団投資信託の信託財産について納付した所得税及び復興特別所得税の額の合計額について、その所得税の課せられた収益を分配するとしたならばその収益の分配につき源泉徴収所得税を課されるべきこととなるものに対応する部分(特別分配金のみに対応する部分を除きます。)の額に限ることとされた(所法180の 2 ③、復興財確法33①)ほか、分配時における二重課税調整が行われた収益の分配の支払を受ける個人が確定申告書に記載するその収益の分配に係る源泉徴収税額から控除する控除外国所得税の額(所令306の 2 ②)及び集団投資信託を引き受けた外国法人(準支払者を含みます。)がその集団投資信託の収益の分配の支払を受けた者に対し通知しなければならないこととされる通知外国所得税の額(所令306の 2 ⑦)等について改正が行われました(詳細は前掲「所得税法等の改正」の「第二 金融・証券税制の改正」の「一 信託財産に係る利子等の課税の特例の改正」をご参照ください。)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、令和 2年 1月 1日以後に支払われる収益の分配について適用し、同日前に支払われた収益の分配については従前どおりとされています(改正法附則 9②)。

2  分配時調整外国税相当額の控除制度

⑴ 改正前の制度の概要 居住者が各年において集団投資信託の収益の分配の支払を受ける場合において、その収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除することによる二重課税調整(所得税法第176条第 3項又は第180条の 2 第 3 項)が行われた外国源泉所得税の額があるときは、その収益の分配に係る分配時調整外国税相当額は、その年分の所得税の額から控除することとされています(所法93①)。(注) 本制度は、確定申告書、修正申告書又は更

正請求書に本制度による控除の対象となる分

配時調整外国税相当額、控除を受ける金額及

びその金額の計算に関する明細を記載した書

類並びに集団投資信託の受託者である法人が

発行する通知書等の分配時調整外国税相当額

を証する書類の添付がある場合に限り、適用

することとされています。この場合において、

本制度により控除される金額は、その明細を

記載した書類に分配時調整外国税相当額とし

て記載された金額を限度とすることとされて

います(所法93②、旧所規40の10の 2 )。

 分配時調整外国税相当額は、次の算式 1及び算式 2により計算した金額の合計額とされています(旧所令220の 2 )。《算式 1》所得税法第176条第3項の規定により集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除された外国源泉所得税の額(注 1)

×

支払を受ける集団投資信託の収益の分配の額集団投資信託の収益の分配の額の総額

─�681�─

――国際課税関係の改正――

Page 120: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

《算式 2》所得税法第180条の2第3項の規定により集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除された外国源泉所得税の額(注 1)

×

支払を受ける集団投資信託の収益の分配の額集団投資信託の収益の分配の額の総額

(注 1) 復興特別所得税の額から控除された外国

源泉所得税の額も含むこととされています

(旧復興特別所令13①による読替後の旧所令

220の 2 各号)。(注 2) これらの算式の分母及び分子の集団投資

信託の収益の分配は、源泉徴収所得税を課

されるべきこととなる部分に限ることとさ

れています。

 なお、これらの算式により計算した金額がその支払を受ける収益の分配につき徴収された又は徴収されるべき所得税の額を超える場合には、その所得税の額を限度とすることとされています(旧所令220各号)。(参考) 恒久的施設を有する非居住者、内国法人、

連結法人及び恒久的施設を有する外国法人

についても、上記と同様の制度が措置され

ています(所法165の 5 の 3 、法法69の 2 、

81の15の 2 、144の 2 の 2 )が、これらの制

度の基本的な仕組みは居住者に係る分配時

調整外国税相当額の控除制度(所法93)と

同様ですので、説明は省略します。ただし、

個人が分配時調整外国税相当額の控除制度

の適用を受ける場合には、確定申告書、修

正申告書又は更正請求書に集団投資信託の

受託者である法人が発行する通知書等を添

付する必要がありますが、法人については

その添付が適用要件とされているわけでは

ありません。

⑵ 改正の内容 集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収の特例において分配時における二重課税調整(所得税法第176条第 3項又は第180条の 2第 3項)の見直しが行われたことを踏まえ、その分配時

における二重課税調整を適切に精算するための制度である分配時調整外国税相当額の控除制度における分配時調整外国税相当額についても改正が行われました。具体的には、分配時調整外国税相当額とは、次の算式 1及び算式 2により計算した金額の合計額をいうこととされました(所令220の 2 )。《算式 1》所得税法第176条第3項の規定により集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除すべき外国源泉所得税の額(注 1)

×

支払を受ける集団投資信託の収益の分配の額集団投資信託の収益の分配の額の総額

《算式 2》所得税法第180条の2第3項の規定により集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除すべき外国源泉所得税の額(注 1)

×

支払を受ける集団投資信託の収益の分配の額集団投資信託の収益の分配の額の総額

(注 1) 復興特別所得税の額から控除すべき外国

源泉所得税の額も含むこととされています

(復興特別所令13①による読替後の所令220

の 2 各号)。(注 2) これらの算式の分母及び分子の集団投資

信託の収益の分配は、源泉徴収所得税を課

されるべきこととなる部分(特別分配金の

みに対応する部分を除きます。)に限ること

とされています。

 これらの算式により計算した金額が、分配時における二重課税調整の規定による控除をしないで計算した場合の収益の分配(上記算式の分母及び分子の集団投資信託の収益の分配をいいます。)に係る所得税の額にその収益の分配の計算期間の末日において計算したその収益の分配に係る集団投資信託の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を超える場合には、その外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度とすることとされました(所令220の 2 各号)。(注) 「外貨建資産割合」とは、集団投資信託の信

託財産において運用する外貨建資産(外国通

─�682�─

――国際課税関係の改正――

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貨で表示される株式、債券その他の資産をい

います。)の額がその信託財産の総額のうちに

占める割合をいいます(所令220の 2 各号、

300⑨、306の 2 ⑦)。

 また、居住者が本制度の適用を受ける場合に確定申告書、修正申告書又は更正請求書に添付しなければならないこととされる分配時調整外国税相当額を証する書類のうち、次に掲げるものについては添付を不要とすることとされ、それ以外のものについては配当所得の申告不要の特例(措法 8の 5)の対象となる租税特別措置法施行令第 4条の 3第 3項第 2号に掲げる利子等又は配当等(上場株式等の配当等・特定公社債の利子)のみが記載されている場合には添付を不要とすることとされました(所規40の10の2 )。① 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例(措法37の11の 3 )に係る特定口座年間取引報告書(措法37の11の 3 ⑦⑨ただし書)② 未成年者口座内の少額上場株式等に係る譲

渡所得等の非課税(措法37の14の 2 )に係る未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書(旧措令25の13の 8 ㉖㉗ただし書)

(参考) 恒久的施設を有する非居住者に係る分配

時調整外国税相当額の控除制度並びに内国

法人に係る分配時調整外国税相当額の控除

制度、連結法人に係る分配時調整外国税相

当額の控除制度及び恒久的施設を有する外

国法人に係る分配時調整外国税相当額の控

除制度における分配時調整外国税相当額に

ついても改正が行われています(所令292の

6 の 2 ①、法令148①、155の36①、201の 2

①)が、居住者に係る分配時調整外国税相

当額の控除制度と同様の改正ですので、説

明は省略します。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、令和 2年 1月 1日から施行されます(改正所令附則 1二、改正所規附則 1一)。

Ⅳ 特定目的会社の利益の配当等に係る源泉徴収等の特例の改正

1  改正前の制度の概要

⑴ 外国法人税の額の控除 特定目的会社が納付した外国法人税の額は、特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額にその特定目的会社の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度として計算した外国法人税の額(以下「控除外国法人税の額」といいます。)を、その源泉徴収所得税の額から控除することとされています(旧措法 9の 6①、旧措令 4 の 9 ①)。また、特定目的会社が納付した外国法人税の額は、その特定目的会社の利益の配当に係る復興特別所得税の額からも控除することとされています(復興財確法33①、旧措法 9の 6①)。

(注) 「外貨建資産割合」とは、特定目的会社の事

業年度終了の時の貸借対照表に計上されてい

る外貨建資産(外国通貨で表示される株式、

債券その他の資産をいいます。)の帳簿価額の

その特定目的会社のその事業年度終了の時の

貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価

額に対する割合をいいます(旧措令 4の 9①)。

 なお、控除外国法人税の額は、①又は②に掲げる場合の区分に応じてそれぞれ計算した金額とされています(旧措令 4の 9①)。① 特定目的会社が納付した外国法人税の額がその特定目的会社の利益の配当に係る控除限度額以下である場合 利益の配当の支払を受ける者のイからハまでのステータスに応じて、そのステータスご

─�683�─

――国際課税関係の改正――

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との算式により計算した金額を合計した金額に、その特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その金額がその外国法人税の額を超える場合には、その外国法人税の額)イ 居住者

支払を受ける利益の配当の額

外国法人税の額

×

各居住者の控除限度額

×

所得税法第 182 条第 2号に規定する税率

控除限度額

ロ 内国法人

支払を受ける利益の配当の額

外国法人税の額

×

各内国法人の控除限度額

×

所得税法第 213 条第 2項第2号に規定する税率

控除限度額

ハ 非居住者又は外国法人

支払を受ける利益の配当の額

外国法人税の額

×

各非居住者又は各外国法人の控除限度額

×

所得税法第 213 条第 1項第1号に規定する税率

控除限度額

② 特定目的会社が納付した外国法人税の額がその特定目的会社の利益の配当に係る控除限度額を超える場合 利益の配当の支払を受ける者のイからハまでのステータスに応じて、そのステータスごとの算式により計算した金額を合計した金額に、その特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額イ 居住者支払を受ける利益の配当の額

+各居住者の控除限度額 ×所得税法第182条第 2号に規定する税率

ロ 内国法人支払を受ける利益の配当の額

+各内国法人の控除限度額

×所得税法第213条第 2項第 2号に規定する税率

ハ 非居住者又は外国法人

支払を受ける利益の配当の額

各非居住者又は各外国法人の控除限度額

×所得税法第213条第 1項第 1号に規定する税率

③ 控除限度額 上記①及び②の控除限度額は、特定目的会社の利益の配当の支払を受ける者のイからハまでのステータスに応じて、そのステータスごとの算式により計算した金額を合計した金額とされています(旧措令 4の 9②)。イ 居住者

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1 -所得税法第182条第 2 号に規定する税率

ロ 内国法人

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1 -所得税法第213条第 2 項第 2号に規定する税率

ハ 非居住者又は外国法人

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1 -所得税法第213条第 1 項第 1号に規定する税率

⑵ 特定目的会社分配時調整外国税相当額の控除 特定目的会社分配時調整外国税相当額は、集団投資信託の収益の分配に係る分配時調整外国税相当額に含めることによって、分配時調整外国税相当額の控除制度によりその年分の所得税の額又はその事業年度の所得に対する法人税の額若しくはその連結事業年度の連結所得に対する法人税の額から控除することとされています(措法 9の 6③④)。 なお、特定目的会社分配時調整外国税相当額は、次の算式により計算した金額とされていま

─�684�─

――国際課税関係の改正――

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す(旧措令 4の 9⑥一・⑦一)。《算式》特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額から控除された控除外国法人税の額

×

各居住者又は各内国法人の控除限度額控除限度額

 恒久的施設を有する非居住者又は恒久的施設を有する外国法人が支払を受ける特定目的会社の利益の配当に係る特定目的会社分配時調整外国税相当額は、その利益の配当のうち恒久的施設帰属所得に該当するものにつき上記と同様の算式により計算した金額とされています(旧措令 4の 9⑥二・⑦二)。

⑶ 通知外国法人税相当額の通知制度 特定目的会社(準支払者(業務に関連して他人のために名義人として支払を受ける者等をいいます。以下同じです。)を含みます。)は、その特定目的会社の利益の配当の支払をする場合に、その支払の確定した利益の配当に係る通知外国法人税相当額があるときは、その支払の確定した日から 1月以内(準支払者が通知する場合には、45日以内)に、その利益の配当の支払を受ける者に対して、その通知外国法人税相当額その他一定の事項を書面により通知しなければならないこととされています(措令 4の 9⑪⑬、旧措規 5の 4の 2③)。 なお、通知外国法人税相当額は、次の算式により計算した金額とされています(旧措令 4の9⑭)。《算式》特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額から控除された控除外国法人税の額

×

利益の配当の支払を受ける者ごとの控除限度額

控除限度額

(参考) 投資法人、特定目的信託に係る受託法人

及び特定投資信託に係る受託法人について

も、上記と同様の制度が措置されています

(措法 9 の 6 の 2、 9 の 6 の 3、 9 の 6 の

4)が、これらの制度の基本的な仕組みは

特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収

等の特例と同様ですので、説明は省略します。

2  改正の内容

⑴ 外国法人税の額の控除 改正前の制度では、控除外国法人税の額は、特定目的会社が納付した外国法人税の額を上限として、その特定目的会社の利益の配当の支払を受ける者のステータスごとに定められた算式により計算した金額の合計額にその特定目的会社の外貨建資産割合を乗じて計算した金額とされていましたが、今回の改正において、平成30年度税制改正において見直しが行われた本制度を円滑に施行させるためにその計算方法の見直しが行われ、特定目的会社の利益の配当の支払を受ける者の①から③までのステータスに応じて、そのステータスごとに定める次の金額を合計した金額を控除外国法人税の額ということとされました(措令 4の 9①)。(注) 「外国法人税の額」とは、法人税法第69条第

1 項(外国税額の控除)に規定する控除対象

外国法人税の額をいいます(措法 9の 6①)。

① 居住者 居住者控除限度額(イ及びロに掲げる金額の合計額に所得税法第182条第 2 号(徴収税額)に規定する税率を乗じて計算した金額をいいます(措令 4の 9②一)。)に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額がロに掲げる金額を超える場合には、ロに掲げる金額)イ 居住者が支払を受ける利益の配当の額ロ 次の算式により計算した金額

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1- 所得税法第182条第 2 号に規定する税率

(注) この算式により計算した金額が、特定

目的会社が納付した外国法人税の額に、

その外国法人税の額に係るその特定目的

会社の利益の配当の額の総額のうちに居

住者が支払を受けるその利益の配当の額

─�685�─

――国際課税関係の改正――

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の占める割合を乗じて計算した金額を超

える場合には、その乗じて計算した金額

を限度とすることとされています(措令

4の 9②一ロ、措規 5の 4の 2①)。

② 内国法人 内国法人控除限度額(イ及びロに掲げる金額の合計額に所得税法第213条第 2 項第 2 号(徴収税額)に規定する税率を乗じて計算した金額をいいます(措令 4の 9②二)。)に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額がロに掲げる金額を超える場合には、ロに掲げる金額)イ 内国法人が支払を受ける利益の配当の額ロ 次の算式により計算した金額

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1- 所得税法第213条第 2 項第 2号に規定する税率

(注) この算式により計算した金額が、特定

目的会社が納付した外国法人税の額に、

その外国法人税の額に係るその特定目的

会社の利益の配当の額の総額のうちに内

国法人が支払を受けるその利益の配当の

額の占める割合を乗じて計算した金額を

超える場合には、その乗じて計算した金

額を限度とすることとされています(措

令 4の 9②二ロ、措規 5の 4の 2②)。

③ 非居住者又は外国法人 非居住者等控除限度額(イ及びロに掲げる金額の合計額に所得税法第213条第 1 項第 1号(徴収税額)に規定する税率を乗じて計算した金額をいいます(措令 4の 9②三)。)に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額がロに掲げる金額を超える場合には、ロに掲げる金額)イ 非居住者又は外国法人が支払を受ける利益の配当の額ロ 次の算式により計算した金額

-支払を受ける利益の配当の額

支払を受ける利益の配当の額

1 -所得税法第213条第 1 項第 1号に規定する税率

(注) この算式により計算した金額が、特定

目的会社が納付した外国法人税の額に、

その外国法人税の額に係るその特定目的

会社の利益の配当の額の総額のうちに非

居住者又は外国法人が支払を受けるその

利益の配当の額の占める割合を乗じて計

算した金額を超える場合には、その乗じ

て計算した金額を限度とすることとされ

ています(措令 4 の 9 ②三ロ、措規 5 の

4の 2②)。

⑵ 特定目的会社分配時調整外国税相当額の控除 特定目的会社分配時調整外国税相当額は、特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額から控除された控除外国法人税の額に、その利益の配当に係る控除限度額のうちにその利益の配当の支払を受ける者のステータスに応じて計算した金額の占める割合を乗じて計算した金額とされていましたが、今回の改正における控除外国法人税の額の計算方法の見直しに伴い、特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収所得税の額から控除された控除外国法人税の額のうち、その利益の配当の支払を受ける者の①から③までのステータスに応じて、そのステータスごとに定める次の金額をいうこととされました(措令 4の 9⑥⑦)。① 居住者 居住者が支払を受ける利益の配当に係る居住者控除限度額に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額が上記⑴①ロに掲げる金額を超える場合には、上記⑴①ロに掲げる金額)② 内国法人 内国法人が支払を受ける利益の配当に係る内国法人控除限度額に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額が上記⑴②ロに掲げる金

─�686�─

――国際課税関係の改正――

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額を超える場合には、上記⑴②ロに掲げる金額)③ 恒久的施設を有する非居住者又は外国法人 恒久的施設を有する非居住者又は外国法人が支払を受ける利益の配当に係る非居住者等控除限度額に特定目的会社の各事業年度の外貨建資産割合を乗じて計算した金額(その計算した金額が上記⑴③ロに掲げる金額を超える場合には、上記⑴③ロに掲げる金額) なお、通知外国法人税相当額の通知制度における通知外国法人税相当額についても、控除外国法人税の額の計算方法の見直しに伴い、特定目的会社分配時調整外国税相当額と同様の改正

が行われています(措令 4の 9⑭)。(注) 投資法人の配当等に係る源泉徴収等の特例、

特定目的信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等

の特例及び特定投資信託の剰余金の配当に係る

源泉徴収等の特例についても改正が行われてい

ますが、特定目的会社の利益の配当に係る源泉

徴収等の特例と同様の改正ですので、説明は省

略します。

3  適用関係

 上記 2の改正は、令和 2年 1月 1日から施行されます(改正措令附則 1四)。

Ⅴ 組織再編税制の見直しへの対応

 合併、分割及び株式交換に係る適格要件並びに被合併法人等の株主における旧株又は所有株式の譲渡損益の計上を繰り延べる要件のうち、対価に関する要件について、対象となる合併等の対価に合併法人等の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の株式が追加されたことに対応して、クロスボーダーの組織再編成に関する制度について、必要な整備が行われました。(注) 組織再編成に関する法人税法の改正の詳細に

ついては、前掲「法人税法等の改正」の「一 

組織再編税制」をご参照ください。

1  合併等により外国親法人株式の交付を受ける場合の課税

⑴ 改正前の制度の概要 恒久的施設を有する非居住者が、その有する株式を発行した内国法人の行う特定合併(注1)又は特定分割型分割(注 2)により合併の直前に合併法人の発行済株式等の全部を直接に保有する関係がある外国法人の株式(⑴及び 3⑴において「外国合併親法人株式」といいます。)又は分割型分割の直前に分割承継法人の

発行済株式等の全部を直接に保有する関係がある外国法人の株式(⑴及び 3 ⑴において「外国分割承継親法人株式」といいます。)の交付を受ける場合には、その交付を受ける株式が特定軽課税外国法人(注 3)の株式に該当するもの及び恒久的施設管理株式に対応して交付を受けた恒久的施設管理親法人株式(合併の場合は恒久的施設理外国合併親法人株式、分割型分割の場合は恒久的施設管理外国分割承継親法人株式といいます。⑵において同じです。)を除き、その交付を受ける外国合併親法人株式又は外国分割承継親法人株式の価額に相当する金額を、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされています(旧措法37の14の 3 ①②)。 また、恒久的施設を有する非居住者が、その有する株式(旧株)を発行した内国法人の行う特定株式交換(注 4)により株式交換完全親法人に対しその旧株の譲渡をし、かつ、株式交換の直前に株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接に保有する関係がある外国法人の株式(⑴及び 3 ⑴において「外国株式交換完全支配親法人株式」といいます。)の交付を受けた

─�687�─

――国際課税関係の改正――

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場合において、その交付を受けた株式が特定軽課税外国法人(注 3)の株式に該当するもの及び恒久的施設管理株式に対応して交付を受けた恒久的施設管理親法人株式(株式交換の場合は恒久的施設管理外国株式交換完全支配親法人株式といいます。⑵において同じです。)を除き、その旧株の譲渡については、株式交換等に係る譲渡所得等の特例(一定の株式交換等の場合に旧株の譲渡がなかったものとみなす特例(旧所法57の 4 ))の適用はなく、旧株の譲渡に係る譲渡所得等について課税することとされています(旧措法37の14の 3 ④)。 恒久的施設を有しない非居住者についても、その有する株式につき上記と同様の組織再編成が行われた場合において、その所得が国内源泉所得に該当するときは、上記の非居住者株主と同様に課税することとされています。(旧措法37の14の 3 ⑧)。(注 1) 特定合併とは、合併で、被合併法人の株

主等に外国合併親法人株式以外の資産(株

主等に対する剰余金の配当等として交付さ

れる金銭その他の資産及び合併に反対する

株主等に対する買取請求に基づく対価とし

て交付される金銭その他の資産を除きま

す。)が交付されなかったものをいいます

(旧措法37の14の 3 ⑥一)。(注 2) 特定分割型分割とは、分割型分割で、分

割法人の株主等に外国分割承継親法人株式

以外の資産が交付されなかったもの(その

外国分割承継親法人株式が分割法人の発行

済株式等の総数又は総額のうちに占めるそ

の分割法人の各株主等の有するその分割法

人の株式の数又は金額に応じて交付された

ものに限ります。)をいいます(旧措法37の

14の 3 ⑥三)。(注 3) 「特定軽課税外国法人」の用語の意義につ

いては下記 2 ⑴②をご参照ください。(注 4) 特定株式交換とは、株式交換で、株式交

換完全子法人の株主等に外国株式交換完全

支配親法人株式以外の資産(株主等に対す

る剰余金の配当等として交付される金銭そ

の他の資産及び株式交換に反対する株主に

対する買取請求に基づく対価として交付さ

れる金銭その他の資産を除きます。)が交付

されなかったものをいいます(旧措法37の

14の 3 ⑥七)。

⑵ 改正の内容 今回の改正では、恒久的施設を有する非居住者が、その有する株式を発行した内国法人の行う特定合併(注 1)又は特定分割型分割(注2)により合併の直前に合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係(合併の直前に合併法人とその合併法人以外の法人との間にその法人による完全支配関係がある場合のその完全支配関係をいいます。)がある外国法人(⑵及び 3 ⑵において「外国合併親法人」といいます。)の株式又は分割型分割の直前に分割承継法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係(分割型分割の直前に分割承継法人とその分割承継法人以外の法人との間にその法人による完全支配関係がある場合のその完全支配関係をいいます。)がある外国法人(⑵及び 3 ⑵において「外国分割承継親法人」といいます。)の株式の交付を受ける場合には、その交付を受ける株式が特定軽課税外国法人等(注 3)の株式に該当するもの及び恒久的施設管理株式に対応して交付を受けた恒久的施設管理親法人株式を除き、その交付を受ける株式の価額に相当する金額を、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされました(措法37の14の 3 ①②)。 また、恒久的施設を有する非居住者が、その有する株式(旧株)を発行した内国法人の行う特定株式交換(注 4)により株式交換完全親法人に対しその旧株の譲渡をし、かつ、株式交換の直前に株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係(株式交換の直前に株式交換完全親法人とその株式交換完全親法人以外の法人との間にその法人による完

─�688�─

――国際課税関係の改正――

Page 127: 国際課税関係の改正...国際課税ルールの再構築を通じてBEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移 転) に対応することを目指したOE

全支配関係がある場合のその完全支配関係をいいます。)がある外国法人(⑵及び 3 ⑵において「外国株式交換完全支配親法人」といいます。)の株式の交付を受けた場合において、その交付を受けた株式が特定軽課税外国法人等(注 3)の株式に該当するもの及び恒久的施設管理株式に対応して交付を受けた恒久的施設管理親法人株式を除き、その旧株の譲渡については、株式交換等に係る譲渡所得等の特例(所法57の 4 )の適用はなく、旧株の譲渡に係る譲渡所得等について課税することとされました(措法37の14の 3 ③)。 恒久的施設を有しない非居住者についても、その有する株式につき上記と同様の組織再編成が行われた場合において、その所得が国内源泉所得に該当するときは、上記の非居住者株主と同様に課税することとされました(措法37の14の 3 ⑧)。(注 1) 特定合併とは、合併で、被合併法人の株

主等に外国合併親法人のうちいずれか一の

外国法人の株式以外の資産(株主等に対す

る剰余金の配当等として交付される金銭そ

の他の資産及び合併に反対する株主等に対

する買取請求に基づく対価として交付され

る金銭その他の資産を除きます。)が交付さ

れなかったものとされました(措法37の14

の 3 ⑥一)。(注 2) 特定分割型分割とは、分割型分割で、分

割法人の株主等に外国分割承継親法人のう

ちいずれか一の外国法人の株式以外の資産

が交付されなかったもの(その株式が分割

法人の発行済株式等の総数又は総額のうち

に占めるその分割法人の各株主等の有する

その分割法人の株式の数又は金額に応じて

交付されたものに限ります。)とされました

(措法37の14の 3 ⑥三)。(注 3) 「特定軽課税外国法人等」の用語の意義に

ついては下記 2 ⑵②をご参照ください。(注 4) 特定株式交換とは、株式交換で、株式交

換完全子法人の株主等に外国株式交換完全

支配親法人のうちいずれか一の外国法人の

株式以外の資産(株主等に対する剰余金の

配当等として交付される金銭その他の資産

及び株式交換に反対する株主に対する買取

請求に基づく対価として交付される金銭そ

の他の資産を除きます。)が交付されなかっ

たものとされました(措法37の14の 3 ⑥七)。(注 5) 外国法人株主が旧株又は所有株式を発行

した内国法人の行った合併、分割型分割又

は株式交換により外国法人の株式(合併、

分割型分割又は株式交換の直前に合併法人、

分割承継法人又は株式交換完全親法人の発

行済株式等の全部を直接又は間接に保有す

る関係がある外国法人の株式に限ります。)

の交付を受けた場合には、旧株又は所有株

式の譲渡については簿価譲渡を認めず、譲

渡損益を認識することとされました(法令

184①十九、④⑤)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に合併、分割又は株式交換が行われる場合について適用し、同日前に合併、分割又は株式交換が行われた場合については、従前どおりとされています(改正法附則39)。

─�689�─

――国際課税関係の改正――

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2  適格合併等の範囲に関する特例

⑴ 改正前の制度の概要 三角合併を利用することにより、内国法人をその経済実態や株主構成を変えずに、外国法人の子会社とすること(いわゆる「コーポレート・インバージョン」)が容易になります。このような組織再編成により、内国法人の株主が軽課税国にある実体のない外国法人を通じて内国法人を所有する形態を作り出せば、外国子会社合算税制の適用を免れるなど、国際的な租税回避を行うことが容易になると考えられます。このような濫用的な組織再編成に対応し、国際的な租税回避を防止するため、企業グループ内の内国法人間で行われる一定の三角合併のうち、軽課税国に所在する外国親法人の株式を対価とするもの(特定グループ内合併)について、適格合併に該当しないこととされています。 この特定グループ内合併とは、次の①及び②のいずれにも該当する合併をいいます。① 被合併法人と合併法人との間に特定支配関

係(合併、分割又は株式交換の直前に二の内国法人のいずれか一方の内国法人が他方の内国法人の発行済株式等の50%超を直接又は間接に保有する等の関係をいいます。以下同じです。)があること。② 被合併法人の株主等に特定軽課税外国法人(次のイ又はロの外国法人をいいます。以下同じです。)に該当する親法人(合併法人との間にその合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係がある法人に限ります。)の株式が交付されること。イ 法人の所得に対して課される税が存在しない国に本店等を有する外国法人ロ 合併、分割、株式交換又は現物出資が行われる日を含むその外国法人の事業年度開始の日前 2年以内に開始した各事業年度のうちいずれかの事業年度において、その事業年度の所得に対して課される租税の額がその所得の金額の20%未満であった外国法人

(注) ただし、上記イ又はロに該当する外国法

※ 下線部が改正事項

外国

日本

被合併法人(消滅会社)

被合併法人の株主

外国親会社株式の交付

資産の移転

外国親会社の 株主になる

合併等に係る適格要件及び被合併法人等の株主における旧株又は所有株式の譲渡損益の計上を繰り延べる要件の改正に伴う改正

⑴ 外国親法人の株式の交付を受けた非居住者・外国法人株主の課税  非居住者・外国法人株主が合併等により合併法人等の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国 法人の株式の交付を受けた場合には、旧株又は所有株式の譲渡損益を計上。

親会社の株主

【改正事項】間接親会社の株式を追加

外国親会社 (間接の親会社)

外国親会社 (直接の親会社)

合併法人 (存続会社)

合併等に係る対価要件の改正への対応⑴

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――国際課税関係の改正――

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人であっても、その外国法人が外国子会社

合算税制の経済活動要件と同様の要件(①

事業基準、②実体基準、③管理支配基準及

び④非関連者基準又は所在地国基準)に該

当する場合には、特定軽課税外国法人に該

当しないこととされています(措令39の34

の 3 ⑦)。

 なお、その合併が次のすべての要件(適用除外要件)を満たす場合には、適格性否認の対象とされる特定グループ内合併から除外されます(旧措法68の 2 の 3 ①、措令39の34の 3 ①)。① 被合併法人の合併前に営む主要な事業のうちのいずれかの事業と合併法人の合併前に営む事業のうちのいずれかの事業とが相互に関連すること。② 合併法人が合併前に継続して営む事業に係る売上金額等の合計額が、被合併法人が合併前に継続して営む事業に係る売上金額等の合計額のおおむね 2分の 1を下回るものでないこと。③ 合併法人の合併前に営む主たる事業が株式・債券の保有、工業所有権・著作権等の提供のいずれにも該当しないこと。④ 合併法人が合併前に我が国においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること。⑤ 合併法人の合併前の社長等の特定役員の過半数が被合併法人の役員又は使用人を兼務している者等でないこと。 また、三角分割及び三角株式交換についても、上記の合併と同様の適格性否認の措置が設けられています(旧措法68の 2 の 3 ②③、措令39の34の 3 ②④)。なお、三角分割については、①分割法人と分割承継法人との間に特定支配関係があること、②特定軽課税外国法人に該当する親法人の株式の交付という要件に加え、③分割法人の資産及び負債のほとんどすべての移転という 3要件に該当するものが、特定グループ内分割として適格性否認の対象とされています

(旧措法68の 2 の 3 ②一、措令39の34の 3 ③)。

⑵ 改正の内容 組織再編税制の見直しにおいて、合併に係る適格要件のうち、対価に関する要件について、対象となる合併の対価に合併法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の株式が追加されました。これに伴い、対価として交付される株式の発行法人(合併法人の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人に限ります。⑵において「株式発行法人」といいます。)、合併法人の直接親法人又は合併法人と株式発行法人との間に介在する法人のいずれかが特定軽課税外国法人に該当する場合には、内国法人の株主が軽課税国にある実体のない外国法人を通じてその内国法人を所有する形態を作り出すことにより国際的な租税回避を行うことが容易になることから、法人税法その他の法令の規定の適用については、適格合併に該当しないこととされました。 具体的には、特定グループ内合併は、次の①及び②のいずれにも該当する合併とされました(措法68の 2 の 3 ①)。① 被合併法人と合併法人との間に特定支配関係があること。② 被合併法人の株主等に特定軽課税外国法人等(特定軽課税外国法人及び合併、分割又は株式交換(②において「合併等」といいます。)の直前において特定軽課税外国法人(その合併等の直前において合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有するものに限ります。)の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する外国法人(特定軽課税外国法人に該当するものを除きます。)をいいます。)に該当する親法人の株式が交付されること。 また、三角分割及び三角株式交換についても、上記の合併と同様の適格性否認の要件の見直し

─�691�─

――国際課税関係の改正――

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が行われました(措法68の 2 の 3 ②③)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に行われる合併、分割又は株式交換について適用し、同日前に行われた合併、分割又は株式交換については、従前どおりとされています(改正法附則63)。

3  特定の合併等が行われた場合の株主等の課税の特例

⑴ 改正前の制度の概要① 個人株主の課税 居住者又は恒久的施設を有する非居住者(以下「居住者等」といいます。)が、その有する株式を発行した内国法人の行う特定非適格合併(注 1)又は特定非適格分割型分割(注 2)により外国合併親法人株式又は外国分割承継親法人株式の交付を受ける場合において、その外国合併親法人株式又は外国分割承継親法人株式が特定軽課税外国法人(注3)の株式に該当するときは、その交付を受ける外国合併親法人株式又は外国分割承継親法人株式の価額に相当する金額を、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされています(旧措法37の14の4 ①②)。 また、居住者等が、その有する株式(旧株)を発行した内国法人の行う特定非適格株式交換(注 4)により株式交換完全親法人に対しその旧株の譲渡をし、かつ、外国株式交換完全支配親法人株式の交付を受けた場合において、その外国株式交換完全支配親法人株式が特定軽課税外国法人の株式に該当するときは、旧株の譲渡については、株式交換等に係る譲渡所得等の課税の特例(一定の株式交換等の場合に旧株の譲渡がなかったものとみなす特例(旧所法57の 4 ))の適用はなく、旧株の譲渡に係る譲渡所得等について課税することとされています(旧措法37の14の 3 ③)。

 恒久的施設を有しない非居住者についても、その有する株式につき上記の要件に該当する組織再編成が行われた場合において、その所得が国内源泉所得に該当するときは、居住者等と同様に課税することとされています(旧措法37の14の 3 ⑤)。(注 1) 特定非適格合併とは、合併で、被合併

法人の株主等に外国合併親法人株式以外

の資産(株主等に対する剰余金の配当等

として交付される金銭その他の資産及び

反対株主等に対する買取請求に基づく対

価として交付される金銭その他の資産を

除きます。)が交付されなかったもののう

ち、適格合併に該当しないものをいいま

す(旧措法37の14の 4 ①、37の14の 3 ⑥

一)。(注 2) 特定非適格分割型分割とは、分割型分

割で、分割法人の株主等に外国分割承継

親法人株式以外の資産が交付されなかっ

たもの(その外国分割承継親法人株式が

分割法人の発行済株式等の総数又は総額

のうちに占めるその分割法人の各株主等

の有するその分割法人の株式の数又は金

額に応じて交付されたものに限ります。)

のうち、適格分割型分割に該当しないも

のをいいます(旧措法37の14の 4 ②、37

の14の 3 ⑥三)。(注 3) 「特定軽課税外国法人」の用語の意義に

ついては上記 2 ⑴②をご参照ください。(注 4) 特定非適格株式交換とは、株式交換で、

株式交換完全子法人の株主等に外国株式

交換完全支配親法人株式以外の資産(株

主等に対する剰余金の配当等として交付

される金銭その他の資産及び反対株主に

対する買取請求に基づく対価として交付

される金銭その他の資産を除きます。)が

交付されなかったもののうち、適格株式

交換に該当しないものをいいます(旧措

法37の14の 4 ③、37の14の 3 ⑥七)。

─�692�─

――国際課税関係の改正――

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② 法人株主の課税 法人が旧株又は所有株式を発行した内国法人の行った合併、分割型分割又は株式交換(いずれも適格合併、適格分割型分割又は適格株式交換に該当しないものに限ります。)により外国法人の株式(合併、分割型分割又は株式交換の直前に合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接に保有する関係がある外国法人の株式に限ります。)の交付を受けた場合において、その外国法人の株式が特定軽課税外国法人の株式に該当するときは、旧株又は所有株式の譲渡については簿価譲渡による譲渡損益の計上の繰延べを認めず、旧株又は所有株式の時価による譲渡を行ったものとして譲渡損益の計上を行うこととされています(旧措法68の 3 ①~③、旧法法61の 2 ②④⑨、142)。

⑵ 改正の内容 組織再編税制の見直しにより、合併、分割及び株式交換に係る被合併法人等の株主における旧株又は所有株式の譲渡損益の計上を繰り延べる要件のうち、対価に関する要件について、対象となる合併等の対価に合併法人等の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人の株式以外の資産が交付されない場合のその法人の株式が追加されました。これに伴い、対価として交付される株式の発行法人(合併法人等の発行済株式等の全部を間接に保有する関係がある法人に限ります。⑵において「株式発行法人」といいます。)、合併法人等の直接親法人又は合併法人等と株式発行法人との間に介在する法人のいずれかが特定軽課税外国法人に該当する場合には、内国法人の株主が軽課税国にある実体のない外国法人を通じてその内国法人を所有する形態を作り出すことにより国際的な租税回避を行うことが容易になることから、旧株又は所有株式の譲渡損益の計上の繰延べを認めず、被合併法人の株主に課税することとされました。① 個人株主の課税

 居住者等が、その有する株式を発行した内国法人の行う特定非適格合併(注 1)又は特定非適格分割型分割(注 2)により外国合併親法人の株式又は外国分割承継親法人の株式の交付を受ける場合において、その株式が特定軽課税外国法人等(注 3)の株式に該当するときは、その交付を受ける株式の価額に相当する金額を、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなして課税することとされました(措法37の14の 4 ①②)。 また、居住者等が、その有する株式(旧株)を発行した内国法人の行う特定非適格株式交換(注 4)により株式交換完全親法人に対しその旧株の譲渡をし、かつ、外国株式交換完全支配親法人の株式の交付を受けた場合において、その株式が特定軽課税外国法人等の株式に該当するときは、旧株の譲渡については、株式交換等に係る譲渡所得等の課税の特例(所法57の 4 )の適用はなく、旧株の譲渡に係る譲渡所得等について課税することとされました(措法37の14の 4 ③)。 恒久的施設を有しない非居住者についても、その有する株式につき上記の要件に該当する組織再編成が行われた場合において、その所得が国内源泉所得に該当するときは、居住者等と同様に課税することとされました(措法37の14の 4 ⑤)。(注 1) 特定非適格合併とは、合併で、被合併

法人の株主等に外国合併親法人のうちい

ずれか一の外国法人の株式以外の資産(株

主等に対する剰余金の配当等として交付

される金銭その他の資産及び反対株主等

に対する買取請求に基づく対価として交

付される金銭その他の資産を除きます。)

が交付されなかったもののうち、適格合

併に該当しないものとされました(措法

37の14の 4 ①、37の14の 3 ⑥一)。(注 2) 特定非適格分割型分割とは、分割型分

割で、分割法人の株主等に外国分割承継

親法人のうちいずれか一の外国法人の株

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――国際課税関係の改正――

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式以外の資産が交付されなかったもの(そ

の株式が分割法人の発行済株式等の総数

又は総額のうちに占めるその分割法人の

各株主等の有するその分割法人の株式の

数又は金額に応じて交付されたものに限

ります。)のうち、適格分割型分割に該当

しないものとされました(措法37の14の

4 ②、37の14の 3 ⑥三)。(注 3) 「特定軽課税外国法人等」の用語の意義

については上記 2 ⑵②をご参照ください。(注 4) 特定非適格株式交換とは、株式交換で、

株式交換完全子法人の株主等に外国株式

交換完全支配親法人のうちいずれか一の

外国法人の株式以外の資産(株主等に対

する剰余金の配当等として交付される金

銭その他の資産及び反対株主に対する買

取請求に基づく対価として交付される金

銭その他の資産を除きます。)が交付され

なかったもののうち、適格株式交換に該

当しないものとされました(措法37の14

の 4 ③、37の14の 3 ⑥七)。

② 法人株主の課税 法人が旧株又は所有株式を発行した内国法

人の行った合併、分割型分割又は株式交換(いずれも適格合併、適格分割型分割又は適格株式交換に該当しないものに限ります。)により外国法人の株式(合併、分割型分割又は株式交換の直前に合併法人、分割承継法人又は株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人の株式に限ります。)の交付を受けた場合において、その外国法人の株式が特定軽課税外国法人等の株式に該当するときは、旧株又は所有株式の譲渡については簿価譲渡による譲渡損益の計上の繰延べを認めず、旧株又は所有株式の時価による譲渡を行ったものとして譲渡損益の計上を行うこととされました(措法68の 3 ①~③、法法61の 2 ②④⑨、142)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に合併、分割又は株式交換が行われる場合について適用し、同日前に合併、分割又は株式交換が行われた場合については、従前どおりとされています(改正法附則39、64)。

─�694�─

――国際課税関係の改正――

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4  その他の改正

⑴ 改正の内容 上記 1~ 3のほか、組織再編税制の見直しに伴い、内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行うその内国法人の株式等の譲渡による所得について、その内国法人の分割型分割により分割承継法人の株式その他の資産の交付を受け

た場合の譲渡年における課税要件の整備が行われました(所令281⑦一)。

⑵ 適用関係 上記⑴の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に行われる分割型分割について適用し、同日前に行われた分割型分割については、従前どおりとされています(改正所令附則 7)。

Ⅵ 外国税額控除の改正

1  控除対象外国法人税の額の範囲の見直し

⑴ 改正前の制度の概要① 制度の概要 我が国の税制においては、内国法人の外国

支店等で生じた所得を含むその内国法人の全世界所得を課税標準として法人税が課されることとされています。しかし、外国支店等で生じた所得については、通常、所在地国においても課税されることとなるため、同一の所得に対して我が国と外国の双方で課税される

合併等に係る対価要件の改正への対応⑵

株主

内国法人(被合併法人)

内国法人(合併法人)

吸収合併

100%100%

株式を交付

【再編前】

【再編後】

<日本>

直接親会社

100%

株主内国法人(合併法人)

100%

直接親会社

100%

特定軽課税外国法人の場合は非適格とし、株主の旧株の譲渡益に課税

株主

内国法人(被合併法人)

内国法人(合併法人)

吸収合併

100%

100%

【再編前】

<日本>

間接親会社

100%

株主

内国法人(被合併法人)

内国法人(合併法人)

吸収合併

100% 100%

株式を交付

<日本>

間接親会社

100%

直接親会社

株主内国法人(合併法人)

100% 間接親会社

100%

直接親会社

間接親会社

直接親会社

100% 100%

100%

100%

株主内国法人

(合併法人)

100%

100%

間接親会社

間接親会社

直接親会社 100% 100%

【再編後】

株式を交付

⑵ クロスボーダーの組織再編成に伴う租税回避防止策の改正○ 適格性の否認 企業グループ内の一定の内国法人間で行われる合併等のうち、合併法人等の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人(特定軽課税外国法人又は特定軽課税外国法人の親法人である外国法人に限る。)の株式を対価とするものは、適格要件を満たさない。○ 株主に係る課税 個人又は法人が、適格合併等に該当しない合併等により合併法人等の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある外国法人(特定軽課税外国法人又は特定軽課税外国法人の親法人である外国法人に限る。)の株式の交付を受けた場合には、旧株又は所有株式の譲渡損益を計上する。 ※ 下線部が改正事項

【改正事項】特定軽課税外国法人又は特定軽課税外国法人の親法人の場合は非適格とし、株主の旧株の譲渡益に課税

①改正前 ②改正後

【改正事項】特定軽課税外国法人又は特定軽課税外国法人の親法人の場合は非適格とし、株主の旧株の譲渡益に課税

─�695�─

――国際課税関係の改正――

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こととなり、国際的な二重課税が生ずることとなります。そこで、内国法人が各事業年度において外国法人税を納付することとなる場合には、原則として、次の算式により計算した金額(以下「控除限度額」といいます。)を限度として、その外国法人税の額(外国法人税のうちその所得に対する負担が高率な部分の額、通常行われる取引と認められない取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額その他一定の外国法人税の額を除きます。以下「控除対象外国法人税の額」といいます。)をその事業年度の所得に対する法人税の額から控除することとされています(法法69①)。《算式》

控除限度額 =各事業年度の所得に対する法人税の額

×

当該事業年度の調整国外所得金額当該事業年度の所得金額

(注) 連結法人の各連結事業年度の連結所得に

対する法人税及び居住者の各年分の所得に

対する所得税についても同様の制度が設け

られています。これらの制度の基本的な仕

組みは内国法人に係る外国税額控除と同様

ですので、以下では内国法人に係る外国税

額控除について記載することとします。

② 外国税額控除の対象とならない外国法人税の額 次に掲げる外国法人税の額については、我が国の法人税の課税対象とならない金額を課税標準として課される外国法人税の額として外国税額控除の対象とならないこととされています(法令142の 2 ⑦)。イ みなし配当(法法24①)の基因となる事由により交付を受ける金銭の額又はその他の資産の価額に対して課される外国法人税の額(当該金銭等の交付の基因となった株式の取得価額を超える部分に対して課される部分を除きます。)ロ 移転価格課税の第二次調整として課され

るみなし配当課税ハ 外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当(同制度の対象から除外される部分を除きます。)に係る外国源泉税等ニ 国外事業所等と本店等との間の内部取引等につき課される外国法人税の額

⑵ 改正の内容 我が国で所得と認識されない金額に対して課されるものとして上記⑴②に列挙された外国法人税は、国際的二重課税の排除という制度趣旨に鑑みて、外国税額控除の対象から除外することとされています。しかし、上記⑴②に列挙されたもの以外にも、我が国の法人税の課税対象とならない金額を課税標準として課されると認められる外国法人税が把握されており、制度的な対応が必要と考えられることから、今回の改正では、外国税額控除の対象とならない外国法人税の額として、新たに内国法人に対する配当等の支払があったものとみなして課される一定の外国法人税の額が追加されました。 具体的には、内国法人が有する株式又は出資を発行した外国法人の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の法令に基づき、その外国法人に係る租税の課税標準等又は税額等につき更正又は決定に相当する処分(注)があった場合において、その処分が行われたことにより増額されたその外国法人の所得の金額に相当する金額に対し、これを配当等とみなして課される外国法人税の額は、外国税額控除の対象とならないこととされました(法令142の 2 ⑦五)。(注) その内国法人との間の取引に係るものを除

きます。したがって、その内国法人との間の

取引につき行われた移転価格課税は除かれま

す。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、内国法人の平成31年 4 月 1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、内国法人の同日前に開始し

─�696�─

――国際課税関係の改正――

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た事業年度の所得に対する法人税については、 従前どおりとされています(改正法令附則12)。

2  個人の外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる調整国外所得金額の見直し

⑴ 年の中途において非居住者から非永住者となった場合の外国税額控除① 改正前の制度の概要 年の中途において非居住者から居住者となった場合のように、その年において非居住者であった期間(⑴において「非居住者期間」といいます。)を有する居住者については、所得税の額の計算の特例が定められています。 具体的には、その年12月31日(その年の中途において死亡した場合には、その死亡の日)において居住者である者でその年におい

て非居住者期間を有するもの又はその年の中途において出国をする居住者でその年 1月 1日からその出国の日までの間に非居住者期間を有するものに対して課する所得税の額は、所得税法第 2編第 2章及び第 3章⦅課税標準及び税額の計算⦆の規定により計算した所得税の額によらず、所定の順序により計算した所得税の額とすることとされており(所法102、所令258①)、この場合の外国税額控除については、非居住者期間内に生じた恒久的施設帰属所得がある場合には、次の算式により計算した金額(⑴において「控除限度額」といいます。)を限度として行うこととされています(旧所令258④)。

【概要】○ 日本で所得と認識されない金額に対して課されるものとして列挙された一定の外国法人税は、国際的二重課税の 排除という制度趣旨に鑑みて、外国税額控除の対象から除外することとされている。 ○ 他方で、列挙されたもの以外にも、日本で所得と認識されない金額に対して課されると認められる外国法人税が 把握されており、制度的な対応が必要。

【改正事項】○ 日本で所得と認識されない金額に対して課されるものとして外国税額控除の対象から除外される外国法人税の額 に、内国法人に対する配当等の支払があったものとみなして課される一定の外国法人税の額を加える。

内国親法人

A 国関連会社

A 国子会社

低廉譲渡(利益過少)

A 国当局

資産の譲渡

<A 国>

※A国当局によって配当があったものと認定

<日本>

課税

日本で所得と認識されないため、二重課税になっていない。

(内容)  内国法人の A 国子会社が、A 国関連会社に行った資産の譲渡が低廉譲渡に当たるとし、 A 国当局が、適正額との差額について A 国子会社に対して課税するとともに、当該差額について A 国子会社から内国法人に配当があったものと認定して、内国法人に対して課税したケース

外国税額控除における控除対象外国法人税の額の範囲の改正

─�697�─

――国際課税関係の改正――

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《算式》

控除限度額 =

(居住者期間内に生じた所得+非居住者期間内に生じた恒久的施設帰属所得)に係るその年分の所得税の額

×

その年分の調整国外所得金額居住者期間内に生じた国外源泉所得に係る純損失・雑損失の繰越控除前の国外所得金額

非居住者期間内に生じた国外源泉所得に係る純損失・雑損失の繰越控除前の国外所得金額

その年分の所得総額(居住者期間内に生じた所得+非居住者期間内に生じた恒久的施設帰属所得)に係る純損失・雑損失の繰越控除前の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額

② 改正の内容 我が国の所得税において、居住者であっても我が国における滞在期間が短いなどの者については「非永住者」として区分され、居住者に対する全世界所得課税の原則の例外として、課税所得の範囲が、①国外源泉所得以外の所得及び②国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたものに限定されています(所法 7①二)。(注) 「非永住者」とは、居住者のうち、日本の

国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内

において国内に住所又は居所を有していた

期間の合計が 5 年以下である個人をいいま

す(所法 2①四)。

 非永住者の課税所得の範囲については、上記のとおり、①国外源泉所得以外の所得及び②国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたものに限定されていることから、その年において非居住者期間を有さない非永住者の外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる調整国外所得金額については、純損失の繰越控除(所法70①②)又は雑損失の繰越控除(所法71)の規定を適用しないで計算した場合のその年分の国外所

得金額のうち、国内において支払われ、又は国外から送金された国外源泉所得に係る部分に限ることとされています(所令222③)。 しかしながら、年の中途において非居住者から非永住者となった場合の外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる調整国外所得金額については、上記①の算式のとおり、特段の制限が設けられておらず、控除限度額が過大に算出される可能性がありました。 そこで、今般の改正において、年の中途において非居住者から非永住者となった場合の外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる調整国外所得金額についても、その年において非居住者期間を有さない非永住者の場合と同様に、純損失の繰越控除又は雑損失の繰越控除の規定を適用しないで計算した場合の非永住者期間内において生じた国外所得金額のうち、国内において支払われ、又は国外から送金された国外源泉所得に係る部分に限ることとされました(所令258④一ロ)。③ 適用関係 上記②の改正は、令和 2年分以後の所得税について適用し、令和元年分(平成31年 1 月1 日から令和元年12月31日までの期間に係る年分をいいます。以下同じです。)以前の所得税については、従前どおりとされています(改正所令附則 5)。

⑵ 租税特別措置法上の損失の繰越控除制度の適用がある場合の外国税額控除① 改正前の制度の概要 上場株式等の譲渡損失の繰越控除(措法37の12の 2 ⑤)の適用がある場合の外国税額控除については、次の算式により計算した金額(⑵において「控除限度額」といいます。)を限度として行うこととされています(旧措令25の11の 2 ⑳による読替適用後の所令221の3 ②、221の 6 ①、222②)。

─�698�─

――国際課税関係の改正――

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《算式》

控除限度額 =

その年分の所得税の額

×

その年分の調整国外所得金額純損失・雑損失の繰越控除前の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額に係る国外所得金額

上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除後の上場株式等に係る配当所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額に係る国外所得金額

その年分の所得総額純損失・雑損失の繰越控除前の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額

上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除前の上場株式等に係る配当所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額

(注) 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡

損失の繰越控除(措法37の13の 2 ⑦)及び

先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控

除(措法41の15)の適用がある場合の外国

税額控除についても、上記の算式と同様の

算式により計算した金額を限度として行う

こととされています(旧措令25の12の 2 �

による読替適用後の所令221の 3 ②、221の

6 ①、222②、旧措令26の26⑪による読替適

用後の所令221の 3 ②、221の 6 ①、222②)。

② 改正の内容 所得税法上、外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる「その年分の所得総額(分母)」及び「その年分の調整国外所得金額(分子)」は、純損失の繰越控除(所法70①②)又は雑損失の繰越控除(所法71)を適用しないで計算することとされています(所令222②③)。 他方、上記①の算式のとおり、上場株式等の譲渡損失の繰越控除の適用がある場合の外

国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる「上場株式等に係る配当所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額に係る国外所得金額(分子)」については、上場株式等の譲渡損失の繰越控除の適用後の金額とされていました。このため、上場株式等の譲渡損失の繰越控除の適用がある場合の外国税額控除に係る控除限度額が過少に算出される可能性がありました。 そこで、今般の改正において、上場株式等の譲渡損失の繰越控除の適用がある場合の外国税額控除に係る控除限度額の計算の基礎となる「上場株式等に係る配当所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額に係る国外所得金額(分子)」についても、控除限度額の計算が所得税額のうち国外に源泉がある所得に対応する部分を求める計算であることを踏まえ、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額に係る国外所得金額と同様に過去の損失の金額を控除しないことが適当であるものと考えられることから、上場株式等の譲渡損失の繰越控除を適用しないで計算した場合の国外所得金額とすることとされました(措令25の11の 2 ⑳による読替適用後の所令221の 3 ②、221の 6 ①)。(注) 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡

損失の繰越控除及び先物取引の差金等決済

に係る損失の繰越控除の適用がある場合の

外国税額控除についても、上記と同趣旨の

改正が行われています(措令25の12の 2 �

による読替適用後の所令221の 3 ②、221の

6 ①、措令26の26⑪による読替適用後の所

令221の 3 ②、221の 6 ①)。

③ 適用関係 上記②の改正は、令和元年分以後の所得税について適用し、平成30年分以前の所得税については従前どおりとされています(改正法附則 7①、 8①、15)。

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――国際課税関係の改正――

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Ⅶ 租税条約の実施のための国内法の整備

1  相手国等転出時課税の規定の適用を受けた場合の所得税の課税の特例の創設

⑴ 制度創設の経緯及び趣旨 平成30年10月16日にマドリードにおいて署名が行われた「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約」(以下「日スペイン新租税条約」といいます。)において、国外転出時課税に係る対応的調整に関する規定が定められました(日スペイン新租税条約13⑦)。(注) 日スペイン新租税条約第13条 7 に定める「国

外転出時課税に係る対応的調整」の詳細につ

いては、後掲「租税条約等の締結・改正」の

「第一 日本・スペイン租税条約の全面改正」

の十三 2⑺をご参照ください。 我が国の国内法においては、平成27年度税制改正において、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例(所法60の 2 )が創設されたことを踏まえ、国外転出元の国における国外転出時の課税に伴う二重課税調整措置として、外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例(所法60の 4 )が創設されていますが、同特例の対象となる「外国転出時課税の規定」は国外転出をする場合の譲渡所得等の特例に相当する外国の法令の規定に限定され、また、その対象となる「資産」も金融商品取引法上の有価証券等の一定の資産に限定されています。 そこで、日スペイン新租税条約第13条 7 のような国外転出時課税に係る対応的調整に関する規定を定める租税条約を実施するため、相手国等転出時課税の規定の適用を受けた場合の所得税の課税の特例を創設することとされました。(参考) 所得に対する租税に関する二重課税の除

去並びに脱税及び租税回避の防止のための

日本国とスペイン王国との間の条約第13条

7(譲渡収益)

7  一方の締約国の居住者でなくなった個人

が他方の締約国の居住者となった場合にお

いて、当該個人の財産の未実現の価値の上

昇に対して、当該個人が当該一方の締約国

の居住者でなくなる直前に当該一方の締約

国において租税を課されたときは、当該他

方の締約国は、当該財産の価値の上昇に対

する両締約国間の二重課税を除去するため

に必要な範囲に限り、当該個人が当該財産

の譲渡によって取得する収益に対して当該

他方の締約国において課された租税の課税

標準又は租税の額について適当な調整を行

う。

⑵ 改正の内容① 制度の概要 相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者が、その適用に係る資産又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済をした場合において、その相手国等との間の租税条約の規定においてその譲渡又は決済による所得について課する所得税の課税標準又は所得税の額の計算に当たってその適用を受けたことを考慮するものとされているときは、その資産又は未決済デリバティブ取引等に係る事業所得の金額等の計算については、その相手国等転出時課税の規定により課される外国所得税の額の計算において収入金額に算入することとされた金額をその資産の取得に要した金額とし、又は未決済デリバティブ取引等の決済損益額からその外国所得税の額の計算において算出された利益の額の減算等をすることとされました(実特法 5の 2①)。② 本特例の対象となる者 本特例による二重課税調整の対象となる者は、相手国等の相手国等転出時課税の規定の

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――国際課税関係の改正――

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適用を受けた居住者とされています(実特法5 の 2 ①)。このように、本特例は、実際に相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた者に限って適用することとされています。③ 相手国等転出時課税の規定の意義 「相手国等転出時課税の規定」とは、相手国等における国外転出に相当する事由その他の事由によりその相手国等に係る相手国居住者等でなくなった場合にその相手国等の法令の規定によりその有している資産の譲渡による所得又はその契約を締結している未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の決済による所得に相当する所得について外国所得税(外国税額控除(所法95①)の対象となる外国所得税をいいます。以下同じです。)を課することとされているときにおけるその相手国等の法令の規定をいいます(実特法 5の 2②)。(注 1) 上記の「国外転出」とは、国内に住所

及び居所を有しないこととなることをい

います(所法60の 2 ①)。(注 2) 上記の「譲渡」の範囲には、資産の一

般的な譲渡のほかに、株式等につき法人

の合併・分割型分割、資本の払戻し、残

余財産の分配、出資の消却、法人からの

退社・脱退等の事由が生じたことにより

その株式等の譲渡の対価とみなされる金

額が生ずる場合(措法37の10③④、37の

11④)におけるこれらの事由によるその

株式等のその譲渡の対価の額とみなされ

る金額に対応する部分の権利の移転又は

消滅も含まれます(所法60の 2 ④)。(注 3) 上記の「未決済信用取引等」及び「未

決済デリバティブ取引」の意義について

は、それぞれ下記④ロ及びハをご参照く

ださい。

④ 本特例の対象となる資産等の範囲 二重課税調整の対象となる資産等は、相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用対象

とされた次に掲げるものに限定されています(実特法 5の 2①)。イ 資産ロ 未決済信用取引等(未決済の次の取引をいい(所法60の 2 ②、所規37の 2 ①)、相手国等におけるこれに相当するものを含みます。以下同じです。)イ 金融商品取引法第156条の24第 1 項⦅免許及び免許の申請⦆に規定する信用取引ロ 金融商品取引法第161条の 2 に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令第 1条第 2項⦅定義⦆に規定する発行日取引

ハ 未決済デリバティブ取引(未決済の金融商品取引法第 2条第20項⦅定義⦆に規定するデリバティブ取引をいい(所法60の 2③)、相手国等におけるこれに相当するものを含みます。以下同じです。)

⑤ 二重課税調整の要件 本特例による二重課税調整は、相手国等との間の租税条約の規定において、その相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用に係る資産の譲渡又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の決済による所得について課する我が国の所得税の課税標準又は所得税の額の計算に当たって、その相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けたことを考慮するものとされている場合に行われることとされています(実特法 5 の 2 ①)。このように、本特例は、我が国が締結した租税条約の規定に、上記の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた場合の二重課税調整の定めがある場合に限り、適用することとされています。⑥ 二重課税調整の方法 二重課税調整の方法については、日スペイン新租税条約第13条 7 において「租税の課税標準又は租税の額について適当な調整を行う」と規定されていることからすると、相手

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――国際課税関係の改正――

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国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその適用によりその相手国等の外国所得税に係る所得金額の計算上収入金額に算入された金額を我が国の所得税に係る所得金額の計算上収入金額から控除する方法(所得調整)と、相手国等の相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその相手国等において課された外国所得税の額を我が国の所得税の額から控除する方法(税額調整)とが考えられますが、我が国においては、外国転出時課税の規定の適用を受けた場合の譲渡所得等の特例の二重課税調整方法と同様に、前者の方法を採用して二重課税を調整することとされています。具体的な二重課税の調整方法は、以下のとおりとされています。イ 相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその適用に係る資産の譲渡をした場合 相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその適用に係る資産の譲渡をした場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その相手国等転出時課税の規定により課される外国所得税の額の計算においてその資産による所得に相当する所得の金額の計算上収入金額に算入することとされた金額をもって、その資産の取得に要した金額とすることとされています(実特法 5 の 2 ①による読替適用後の所法60の 4 ①)。ロ 相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその適用に係る未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引の決済をした場合 相手国等転出時課税の規定の適用を受けた居住者がその適用に係る未決済信用取引等又は未決済デリバティブ取引の決済をした場合における事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その決済によって生じた利益の額若しくは損失の額(ロに

おいて「決済損益額」といいます。)からその相手国等転出時課税の規定により課される外国所得税の額の計算においてその未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引の決済による利益の額に相当する金額として算出された金額に相当する金額を減算し、又はその決済損益額にその外国所得税の額の計算においてその決済による損失の額に相当する金額として算出された金額に相当する金額を加算することとされています(実特法 5の 2①による読替適用後の所法60の 4 ②)。

⑦ 相手国等転出時課税の規定により資産の譲渡に係る収入金額に算入することとされた金額等の円換算方法 上記⑥イ及びロのとおり、相手国等転出時課税の規定の適用を受けた場合に生じる二重課税については、その相手国等転出時課税の規定により外国所得税の額の計算において資産の譲渡に係る所得の金額の計算上収入金額に算入することとされた金額等を基礎として、我が国における所得計算上調整することとされていますが、この基礎となる金額は、通常、外国通貨で表示されているものと考えられます。 そこで、上記の基礎となる金額の円換算額は、相手国等転出時課税の規定が適用される要件とされる国外転出に相当する事由その他の事由により相手国等に係る相手国居住者等でなくなった時における外国為替の売買相場により換算した金額とすることとされています。 具体的には、上記⑥イ又はロの適用がある場合には、上記⑥イの収入金額に算入することとされた金額及び上記⑥ロの利益の額に相当する金額として算出された金額に相当する金額又は損失の額に相当する金額として算出された金額に相当する金額の円換算額は、国外転出に相当する事由その他の事由により相手国等に係る相手国居住者等でなくなった時

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――国際課税関係の改正――

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における外国為替の売買相場により換算した金額とすることとされています(実特令 4の2による読替適用後の所令170の 3 ①)。(注) 上記の「円換算額」とは、外国通貨で表

示された金額を本邦通貨表示の金額に換算

した金額をいいます(所法57の 3 ①)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、居住者が平成31年 4 月 1 日以後に譲渡又は決済をする資産又は未決済信用取引等若しくは未決済デリバティブ取引について適用されます(改正法附則85⑤)。

2  配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例等の改正

⑴ 改正前の制度の概要① 相手国居住者等が支払を受ける相手国居住者等配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例 相手国居住者等が支払を受ける配当等(租税条約に規定する配当、利子若しくは使用料(その租税条約においてこれらに準ずる取扱いを受けるものを含みます。)又はその他の所得で、所得税法の施行地にその源泉があるものをいいます。以下同じです。)のうち、その相手国居住者等に係る相手国等との間の租税条約の規定において、その相手国等においてその法令に基づきその相手国居住者等の所得として取り扱われる(すなわち、その相手国居住者等の居住地国においても、その配当等についてその相手国居住者等に納税義務があることとされている)ものとされるもの(以下「相手国居住者等配当等」といいます。)については、次のような措置が講じられています。イ 相手国居住者等配当等で限度税率を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その相手国居住者等配当等に対する所得税の税率及び源泉徴収税率が租税条約により適用される限度税率によることとさ

れています(実特法 3の 2①)。ロ 相手国居住者等配当等で所得税の免除を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その相手国居住者等配当等に係る所得税の納税義務及び源泉徴収義務はないものとされています(実特法 3の 2②)。

② 非居住者又は外国法人が支払を受ける相手国団体配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例 非居住者又は外国法人が支払を受ける配当等のうち、その非居住者又は外国法人に係る相手国等との間の租税条約の規定において、その相手国等においてその法令に基づきその非居住者又は外国法人が構成員となっているその相手国等の団体の所得として取り扱われる(すなわち、その非居住者又は外国法人の居住地国において、その配当等についてはその相手国等の団体に納税義務があることとされている)ものとされるもの(以下「相手国団体配当等」といいます。)については、次のような措置が講じられています。イ 相手国団体配当等で限度税率を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その相手国団体配当等に係る所得税の税率及び源泉徴収税率が租税条約により適用される限度税率によるものとされています(実特法 3の 2⑤)。ロ 相手国団体配当等で所得税の免除を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その相手国団体配当等に係る所得税の納税義務及び源泉徴収義務はないものとされています(実特法 3の 2⑥)。

③ 非居住者又は外国法人が支払を受ける第三国団体配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例 非居住者又は外国法人が支払を受ける配当等のうち、その非居住者又は外国法人に係る国以外の相手国等との間の租税条約の規定において、その相手国等においてその法令に基づきその非居住者又は外国法人が構成員とな

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――国際課税関係の改正――

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っているその相手国等の団体の所得として取り扱われる(すなわち、その相手国等の団体の居住地国において、その配当等についてはその相手国等の団体に納税義務があることとされている)ものとされるもの(以下「第三国団体配当等」といいます。)については、次のような措置が講じられています。イ 第三国団体配当等で限度税率を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その第三国団体配当等に対する所得税の源泉徴収税率が租税条約により適用される限度税率によるものとされています(実特法3の 2⑦)。

ロ 第三国団体配当等で所得税の免除を定める租税条約の規定の適用があるものについては、その第三国団体配当等に係る所得税の源泉徴収義務がないものとされています(実特法 3の 2⑧)。

④ 居住者又は内国法人が支払を受ける特定配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例 居住者又は内国法人が支払を受ける配当等のうち、租税条約の規定において、その租税条約の相手国等においてその法令に基づきその居住者又は内国法人が構成員となっているその相手国等の団体の所得として取り扱われる(すなわち、その相手国等において、その配当等についてはその相手国等の団体に納税義務があることとされている)ものとされるもの(以下「特定配当等」といいます。)については、次のような措置が講じられています。イ 特定配当等で限度税率を定めるその租税条約の規定の適用があるものについては、その特定配当等に対する所得税の源泉徴収税率及び内国法人の所得税の税率が租税条約により適用される限度税率によるものとされています(実特法 3の 2⑨)。ロ 居住者又は内国法人が支払を受ける特定配当等で所得税の免除を定める租税条約の

規定の適用があるものについては、その特定配当等に係る所得税の源泉徴収義務及び内国法人の所得税の納税義務がないものとされています(実特法 3の 2⑪)。

⑵ 改正の内容① 譲渡収益に対する限度税率の適用に関する措置 平成30年12月19日に東京において署名が行われた「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約」(以下「日コロンビア租税条約」といいます。)において、一方の締約国の居住者のいわゆる事業譲渡類似の株式等の譲渡収益に対し、その株式等を発行した法人の居住地国である他方の締約国において10%を超えない額の租税を課することができることとされました(日コロンビア租税条約13⑤)。 このように、譲渡収益に対する課税については、一定の率(10%)を超えないこととされたことから、相手国居住者等配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例の対象となる配当等の範囲に、譲渡収益を加えるなど、租税条約の規定の適用により、源泉徴収の対象となる「譲渡収益」に対して限度税率が適用される場合の手続を整備することとされました。

(参考) 所得に対する租税に関する二重課税の除

去並びに脱税及び租税回避の防止のための

日本国とコロンビア共和国との間の条約第

13条 5(譲渡収益)

5   2 及び 4 の規定が適用される場合を除く

ほか、一方の締約国の居住者が株式、同等

の持分その他の権利の譲渡によって取得す

る収益に対しては、譲渡者が、当該譲渡に

先立つ365日の期間のいずれかの時点におい

て、他方の締約国の居住者である法人の資

本の10%以上に相当する株式、同等の持分

その他の権利を直接又は間接に所有してい

─�704�─

――国際課税関係の改正――

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た場合には、当該他方の締約国において租

税を課することができる。ただし、その租

税の額は、当該収益の額の10%を超えない

ものとする。この 5 の規定は、次の収益に

ついては、適用しない。

⒜ 当該法人の合併、分割その他の組織再

編成の直接の結果として行われる所有の

変更から生ずる収益

⒝ 当該一方の締約国の公認の年金基金(コ

ロンビアについては、義務的年金基金で

あるものに限る。)が取得する収益

イ 相手国居住者等が支払を受ける相手国居住者等配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例の対象となる配当等の範囲の拡充 相手国居住者等が支払を受ける相手国居住者等配当等に対する源泉徴収に係る所得税の税率の特例の対象となる配当等の範囲に、譲渡収益を加えることとされました(実特法 3の 2①)。(注) 上記の「譲渡収益」とは、資産の譲渡

により生ずる収益で所得税法の施行地に

その源泉があるもの(配当等に含まれる

ものを除きます。)をいいます(実特法 3

の 2 ①)。なお、「譲渡収益」の意義は、

配当等又は譲渡収益に対する申告納税に

係る所得税等の軽減等(実特法 4)の対

象となる譲渡収益と同様とされています

(旧実特法 4①)。

 また、上記の改正に併せて、本特例の対象となる源泉徴収義務に関する規定に、特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等に対する源泉徴収等の特例(措法37の11の 4 ①)が加えられています(実特法 3の2①②)。

ロ 条約届出書に関する整備 相手国居住者等配当等である株式又は出資の譲渡収益の支払を受ける相手国居住者等が提出する条約届出書の記載事項として、その株式又は出資の銘柄、種類及び数量並

びにその取得の日を加えることとされました(実特規 2①五ヘ)。

② 両国で課税上の取扱いが異なる事業体に対する租税条約の適用に関する措置の拡充 我が国が締結している租税条約においては、両国で課税上の取扱いが異なる事業体が源泉地国において取得する所得については、その居住地国における課税上の取扱いを基にして、その源泉地国における課税にも一定の範囲で租税条約の特典が及ぶよう、租税条約の適用関係が定められており(日米租税条約 4 ⑥等)、これを受けて、上記⑴①から④までの特例等、このような事業体に対する租税条約の適用に当たっての国内法令上の措置が設けられています(実特法 3、 3の 2、 3の 3、4、 6の 2)。 日コロンビア租税条約において、租税を課されるべきものとされない公認の年金基金又は退職金基金よって又はこれらを通じて取得される所得は、「一方の締約国の居住者」の所得とみなすことが規定されており(日コロンビア租税条約議定書 2)、これにより、このような公認の年金基金又は退職金基金は、両締約国における課税上の取扱いにかかわらず、日コロンビア租税条約の特典を受けることができることになります。(注) 日コロンビア租税条約議定書 2 に定める

「租税を課されるべきものとされない公認の

年金基金又は退職金基金の取扱い」の詳細

については、後掲「租税条約等の締結・改

正」の「第三 日本・コロンビア租税条約

の締結」の三十二 2をご参照ください。 そこで、今般の改正において、日コロンビア租税条約議定書 2のような租税を課されるべきものとされない事業体に対する租税条約の適用に当たって、①このような事業体が我が国において納税主体とされるケース、②我が国においてこのような事業体の構成員が納税主体とされるケースについて、国内法令上の措置を設けることとされました。

─�705�─

――国際課税関係の改正――

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 具体的には、相手国居住者等配当等の意義における「相手国等においてその法令に基づき��ものとされる」との要件を削除することにより、両国で課税上の取扱いが異なる事業体に対する租税条約の適用に関する措置の対象となる相手国居住者等配当等の範囲は、相手国居住者等に係る相手国等との間の租税条約の規定においてその相手国居住者等の所得として取り扱われる範囲とすると共に、同措置の対象となる相手国団体配当等、第三国団体配当等及び特定配当等についても同趣旨の改正を行うこととされました(実特法 3の2①⑤⑦⑨)。(注) 割引債の償還差益に係る所得税の還付(実

特法 3 の 3)の対象となる償還差益、配当

等又は譲渡収益に対する申告納税に係る所

得税等の軽減等(実特法 4)の対象となる

相手国居住者等所得及び相手国団体所得並

びに租税条約に基づく認定(実特法 6の 2)

の対象となる相手国団体所得、第三国団体

所得及び特定所得の意義についても上記と

同趣旨の改正が行われています(実特法 3

の 3①、 4①⑤、 6の 2③~⑤)。

 なお、相手国等において外国法人の株主

等が納税主体とされるケースが規定されて

いる租税条約等実施特例法の各規定(実特

法 3 ①、 3 の 2 ③、 3 の 3 ②、 4 ③、 6 の

2 ②)についても、これまでと同様に、租

税条約等実施特例法上の両国で課税上の取

扱いが異なる事業体に対する租税条約の適

用に関する措置につき統一的な規定振りと

する観点から、上記と同様の改正が行われ

ています。(参考) 所得に対する租税に関する二重課税の除

去並びに脱税及び租税回避の防止のための

日本国とコロンビア共和国との間の条約議

定書 2

2  条約第 1 条 2 の規定にかかわらず、条約

の適用上、一方の締約国の公認の年金基金

若しくは退職金基金であって、当該一方の

締約国において租税を課されるべきものと

されないものによって又はこれらを通じて

取得される所得は、当該一方の締約国の居

住者の所得とみなす。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に相手国居住者等、外国法人、非居住者、居住者又は内国法人が支払を受けるべき相手国居住者等配当等、相手国団体配当等、第三国団体配当等又は特定配当等について適用され、相手国居住者等、外国法人、非居住者、居住者又は内国法人が同日前に支払を受けるべき相手国居住者等配当等、相手国団体配当等、第三国団体配当等又は特定配当等については従前どおりとされています(改正法附則85②)。

3  国際運輸の用に供される船舶又は航空機において行う勤務により受ける給与に対する租税条約の適用手続に関する規定の整備

⑴ 制度整備の経緯及び趣旨 国際運輸の用に供される船舶又は航空機において行う勤務により受ける給与に関しては、日米租税条約を始めとする我が国が締結している租税条約において、特別な取扱いが規定されており、具体的には、船舶又は航空機を国際運輸に運用する企業の居住地国にその勤務により受ける給与に対する課税を認容することとされています(日米租税条約14③等)。また、租税条約の国際標準となる「OECDモデル租税条約」においても特別な取扱いが規定されているところです(2017年改訂前の OECD モデル租税条約15③)。(参考) 2017年改訂前のOECDモデル租税条約第

15条 3(給与所得)(仮訳)

3   1 及び 2 の規定にかかわらず、国際運輸

に運用する船舶若しくは航空機内又は内陸

水路運輸に従事する船舶内において行われ

る勤務に係る報酬に対しては、企業の実質

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――国際課税関係の改正――

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的管理の場所が存在する締約国において租

税を課することができる。

 平成29年11月、OECD モデル租税条約が改訂され、国際運輸の用に供される船舶又は航空機において勤務する乗組員の居住地国のみ、その勤務により受ける給与に対して課税することができることとされ、我が国が締結した最新の二国間租税条約においても、改訂後の OECDモデル租税条約に沿った規定が採用されています。(注) 平成31年 4 月 1 日現在、OECDモデル租税

条約に沿った規定が採用されているものとし

ては、日スペイン新租税条約(2018年10月署

名・未発効)、日クロアチア租税協定(2018年

10月署名・未発効)、日コロンビア租税条約

(2018年12月署名・未発効)及び日エクアドル

租税条約(2019年 1 月署名・未発効)があり

ます。(参考) OECDモデル租税条約第15条 3(給与所

得)(仮訳)

3   1 及び 2 の規定にかかわらず、一方の締

約国の居住者が、船舶又は航空機の通常の

乗組員の一員として、国際運輸に運用され

る船舶内又は航空機内において行われる勤

務(他方の締約国内においてのみ運用され

る船舶内又は航空機内において行われる勤

務を除く。)について取得する報酬に対して

は、当該一方の締約国においてのみ租税を

課することができる。

 そこで、今般の改正において、国際運輸の用に供される船舶又は航空機において行う勤務により受ける給与に対する租税条約の適用手続に関する規定を整備することとされました。

⑵ 改正の内容① 租税条約に関する届出書の提出 相手国居住者等である個人は、その支払を受ける給与である国内源泉所得(所法161①十二イ)につき源泉徴収の適用がある場合において、その給与につき国際運輸の用に供さ

れる船舶又は航空機において行う勤務に基因するものであることを要件とする租税の免除を定める租税条約の規定の適用を受けようとするときは、その給与に係る源泉徴収義務者ごとに、下記②イからトまでに掲げる事項を記載した届出書を、その租税条約の効力発生の日以後最初にその支払を受ける日の前日までに、その源泉徴収義務者を経由して、その源泉徴収義務者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされました(実特規 4④)。(注 1) 上記の「国際運輸」とは、租税条約に

規定する国際運輸をいい(実特規 4④)、

具体的には、「船舶又は航空機による運送

(当該船舶又は航空機が一方の締約国内の

地点の間においてのみ運用され、かつ、

当該船舶又は航空機を運用する企業が当

該一方の締約国の企業でない場合におけ

る運送を除く。)をいう。」とされていま

す(日スペイン新租税条約 3 ①⒣、日ク

ロアチア租税条約 3 ①⒣、日コロンビア

租税条約 3 ①⒣、日エクアドル租税条約

3①⒢)。下記②において同じです。(注 2) なお、上記の相手国居住者等である個

人が、非居住者又は外国法人で国内にお

いて人的役務提供事業(所法161①六)を

行うものから給与の支払を受ける場合(そ

の人的役務提供事業の対価でその給与に

係るものにつき源泉徴収の適用がある場

合に限ります。)には、上記の届出書に代

えて、下記②イからトまでに掲げる事項

に準ずる事項を記載した届出書を、その

非居住者又は外国法人が租税条約の効力

発生の日以後最初にその対価の支払を受

ける日の前日までに、その非居住者又は

外国法人及びその対価の支払者を経由し

て、その対価の支払者の納税地の所轄税

務署長に提出しなければならないことと

されています(実特規 4⑤)。

② 租税条約に関する届出書の記載事項

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――国際課税関係の改正――

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 国際運輸の用に供される船舶又は航空機において行う勤務により受ける給与に対する租税条約に関する届出書の記載事項は、次に掲げる事項とされています(実特規 4④各号)。イ その給与の支払を受ける者の氏名、国籍、住所及び国内における居所(個人番号を有する者にあっては、氏名、国籍、住所、国内における居所及び個人番号)ロ その給与の支払を受ける者のその給与に係る租税条約の相手国等における納税地及びその支払を受ける者がその相手国等において納税者番号を有する場合には、その納税者番号ハ その給与につき租税条約の規定に基づき所得税の免除を受けることができる事情の詳細ニ その給与の種類、金額、支払方法、支払期日及び支払の基因となった契約の内容ホ その給与の支払者の氏名及び住所若しくは居所又は名称及び本店若しくは主たる事務所の所在地ヘ その給与の支払を受ける者が納税管理人の届出(通法117②)をしている場合には、その納税管理人の氏名及び住所又は居所ト その他参考となるべき事項③ その他 上記①の届出書の提出手続のほか、上記①の届出書の記載事項に異動があった場合の異動届出書の提出手続、還付請求手続等に関する規定についても整備されています(実特規4⑥~⑪⑯)。

⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成31年 4 月 1 日から施行されています(改正実特規附則①)。

4  非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の改正

⑴ 改正前の制度の概要① 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換

のための報告制度の概要 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度(実特法10の 5 ~10の 9 )は、租税条約等に基づき、「共通報告基準(Common�Reporting�Standard:CRS)」 に従った自動的情報交換を実施する観点から設けられています。 我が国においては、平成29年から金融機関による対象口座の特定手続を行い、平成30年に平成29年分の報告を金融機関から受け、租税条約等に基づき、CRS に従った税務当局間の自動的情報交換が開始されています。(注) 平成29年分の報告として、租税条約等に

基づき、我が国から89,672件の非居住者・外

国法人に係る金融口座情報が58か国・地域

に提供され、また、64か国・地域から

550,705件の居住者・内国法人に係る金融口

座情報が我が国に提供されています(平成

30年10月31日現在)。

② 報告金融機関等による報告事項の提供 報告金融機関等は、その年の12月31日において、その報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者が報告対象契約を締結している場合には、その報告対象契約ごとに、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地、特定居住地国及びその報告対象契約に係る資産の価額、その資産の運用、保有又は譲渡による収入金額等を、その年の翌年 4 月30日(令和元年にあっては、 5 月 7 日)までに、その報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされています(実特法10の 6 ①)。(注 1) 上記の「特定取引を行った者」から次

に掲げる者は除外され、報告対象外とさ

れています(実特令 6の12①)。

イ� その発行する株式が外国金融商品取

引所又は金融商品取引所において上場

されている法人(実特令 6の 8①一)

ロ� 上記イに掲げる法人と他の法人との

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――国際課税関係の改正――

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間に一定の支配関係がある場合におけ

る当該他の法人(実特令 6 の 8 ①二、

②③)

ハ� 国、地方公共団体若しくは日本銀行

又は外国政府、外国の地方公共団体、

外国の中央銀行若しくは我が国が加盟

している国際機関(実特令 6 �の 8 ①三)

ニ� 次に掲げる法人(外国(報告対象国

を除きます。)の法令に準拠して設立さ

れた報告金融機関等に該当する特定目

的会社等(実特令 6 の 6 ①四)に類す

るものを除きます。)(実特令 6 の 8 ①

七)

イ� 外国の法令に準拠して設立された

法人(外国報告金融機関等を除きま

す。)で、外国金融機関等以外の報告

金融機関等に類するもの

ロ� 外国報告金融機関等(注 2) 上記の「特定居住地国」とは、次に掲

げる国又は地域をいいます(実特法10の

6 ①)。

イ� 新規届出書等(実特法10の 5 ①③④)

に特定対象者の居住地国として記載さ

れた国又は地域

ロ� 報告金融機関等による特定対象者の

住所等所在地国と認められる国又は地

域の(再)特定手続(実特法10の 5 ②

⑥)により、特定対象者の住所等所在

地国と認められる国又は地域として特

定された国又は地域

③ 報告対象契約の意義 「報告対象契約」とは、特定取引に係る契約のうち次に掲げるものをいいます(実特法10の 6 ②、実特令 6の12③)。イ 特定居住地国が報告対象国である者(特定居住地国が報告対象国である組合契約に

よって成立する組合の特定組合員を含みます。)が締結しているものロ 特定居住地国が報告対象国以外の国又は地域である特定法人で、その特定法人に係る実質的支配者の特定居住地国が報告対象国である特定法人が締結しているものハ 上記イ及びロに掲げるもののほか、報告金融機関等による報告が必要なものとして一定のもの

④ 報告対象国の意義 「報告対象国」とは、租税条約等の相手国等のうち一定の国又は地域をいい(実特法10の 6 ②一)、具体的には、83か国・地域が定められています(旧実特規16の12⑧、別表)。(注) なお、「報告対象国」は、個人既存特定取

引契約者の住所等所在地国と認められる国

又は地域の特定手続の免除に関する特例(実

特令 6 の 3 ⑮)の定義においても引用され

ています。

⑵ 改正の内容 「報告対象国」の範囲に、次の租税条約等の相手国等を加えることとされました(実特規別表六・七・二十六・五十三・五十九)。① アンティグア・バーブーダ② アンドラ③ グレナダ④ ナイジェリア⑤ バヌアツ これにより、我が国においては、令和元年 5月 7日までに報告金融機関等から平成30年分として88か国・地域の非居住者に係る金融口座情報の提供を受けることが可能となり、租税条約等に基づき、共通報告基準に従った税務当局間の自動的情報交換が行われることとなります。

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――国際課税関係の改正――

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⑶ 適用関係 上記⑵の改正は、平成30年12月28日から施行

されています(平成30年12月改正実特規附則)。

Ⅷ 外国普通法人となった旨の届出書等に関する改正

1  改正前の制度の概要

⑴ 外国普通法人となった旨の届出書 恒久的施設を有しない外国法人である普通法人が恒久的施設を有することとなった場合又は恒久的施設を有しない外国法人である普通法人が法人税法第138条第 1 項第 4 号(国内源泉所得)に規定する事業(国内において行う人的役務提供を主たる内容とする事業)を国内において開始し、若しくは同法第141条第 2 号(課税標準)に定める国内源泉所得で同項第 4号に掲げる対価(国内において行う人的役務提供の対価)以外のものを有することとなった場合には、その外国法人である普通法人は、その恒久的施設を有することとなった等の日以後 2月以内に、

その納税地、国内源泉所得に係る事業等の経営又は管理の責任者の氏名、国内源泉所得に係る事業の目的等及び国内源泉所得に係る事業を開始した日等を記載した届出書(以下「外国普通法人となった旨の届出書」といいます。)に、次に掲げる書類を添付して、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(旧法法149①、旧法規64①)(注)。① 法人税法第149条第 1 項に規定するその恒久的施設を有することとなった時又はその開始した時若しくはその対価以外のものを有することとなった時における貸借対照表② 定款、寄附行為、規則若しくは規約又はこれらに準ずるものの和訳文③ 国内にある事務所、事業所その他これらに

① アイスランド② アイルランド③ アゼルバイジャン④ アルゼンチン⑤ アルバ⑥ アンティグア・バーブーダ⑦ アンドラ⑧ イスラエル⑨ イタリア⑩ インド⑪ インドネシア⑫ ウルグアイ⑬ 英国⑭ エストニア⑮ オーストラリア⑯ オーストリア⑰ オランダ⑱ ガーナ⑲ ガーンジー⑳ カナダ� キプロス� キュラソー

㉓ ギリシャ� クック㉕ グリーンランド㉖ グレナダ㉗ クロアチア㉘ コスタリカ� コロンビア� サウジアラビア� サモア� サンマリノ� ジブラルタル� ジャージー� シンガポール� スイス� スウェーデン� スペイン� スロバキア� スロベニア� セーシェル� セントクリストファー・ネービス㊸ セントビンセント� セントマーチン

� セントルシア� 大韓民国� チェコ� 中華人民共和国� チリ� デンマーク� ドイツ� トルコ� ナイジェリア� ニウエ� ニュージーランド� ノルウェー� パキスタン� パナマ� バヌアツ� バルバドス� ハンガリー� フィンランド� フェロー諸島� ブラジル� フランス� ブルガリア

� ブルネイ� ベリーズ� ベルギー� ポーランド� ポルトガル� 香港� マカオ� マルタ� マレーシア� マン島� 南アフリカ共和国� メキシコ� モーリシャス� モナコ� モントセラト� ラトビア� リトアニア� リヒテンシュタイン� ルーマニア� ルクセンブルク� レバノン� ロシア

CRSに従った自動的情報交換の「報告対象国」一覧表(平成30年12月31日現在)

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――国際課税関係の改正――

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準ずるものの名称及び所在地を記載した書類④ 法人税法第149条第 1 項に規定するその恒久的施設を有することとなった時又はその開始した時若しくはその対価以外のものを有することとなった時における同法第141条各号(課税標準)に定める国内源泉所得に係る事業又は資産に係る貸借対照表及び財産目録⑤ 法人税法第141条各号に定める国内源泉所得に係る事業の概要を記載した書類

(注) 恒久的施設を有することとなった外国法人

である普通法人の国内源泉所得に係る所得の

金額の全部につき租税条約等の規定により法

人税を課さないこととされる等の場合に該当

し、上記の届出書の提出を要しないこととさ

れた外国法人が、租税条約等の規定により法

人税を課さないこととされる国内源泉所得以

外の国内源泉所得を有することとなった場合

には、その国内源泉所得を有することとなっ

た日以後 2 月以内に、その届出書に上記の書

類を添付し、納税地の所轄税務署長に提出し

なければならないこととされています(旧法

法149②、旧法規64②)。

⑵ 人格のない社団等の収益事業の開始の届出 外国法人(人格のない社団等に限ります。)は、法人税法第141条各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に定める国内源泉所得のうち収益事業から生ずるもの((注)において「特定国内源泉所得」といいます。)を有することとなった場合には、その有することとなった日以後 2月以内に、その納税地、その事業の目的、その収益事業の種類及びその収益事業を開始した日を記載した届出書(以下「収益事業開始届出書」といいます。)に、次の書類を添付して、これを納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(法法150③、旧法規65③)(注)。① その有することとなった時における収益事

業に係る貸借対照表② 国内にある事務所、事業所その他これらに準ずるものの名称及び所在地を記載した書類並びにその収益事業の経営の責任者の氏名その他その収益事業の概要を記載した書類

(注) 外国法人の特定国内源泉所得に係る所得の

金額の全部につき租税条約等の規定により法

人税を課さないこととされる場合に該当し、

上記の届出書を提出することを要しないこと

とされた外国法人が租税条約等の規定により

法人税を課さないこととされる特定国内源泉

所得以外の特定国内源泉所得を有することと

なった場合には、その有することとなった日

以後 2 月以内に、上記に掲げる事項に準ずる

事項を記載した届出書に上記の①又は②に準

ずる書類を添付し、これを納税地の所轄税務

署長に提出しなければならないこととされて

います(法法150④、法規65④)。

2  改正の内容

 上記 1の届出書に添付することとされている書類について、次のとおりとされました。⑴ 外国普通法人となった旨の届出書��上記 1⑴①及び③から⑤までの書類の添付が不要とされました(法法149①②、法規64)。すなわち、定款等の和訳文以外の書類の添付が不要とされました。⑵ 収益事業開始届出書��上記 1 ⑵②の書類の添付が不要とされました(法規65③④)。 本改正の趣旨については、前掲「法人税法等の改正」の「四 その他」の「 8 設立等の届出書の添付書類の簡素化」をご参照ください。

3  適用関係

 上記 2の改正は、平成31年 4 月 1 日以後に提出する届出書について適用し、同日前に提出した届出書については、従前どおりとされています(改正法附則22②、改正法規附則 5)。

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――国際課税関係の改正――