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高感度尿蛋白質定量装置の開発
文京学院大学 保健医療技術学部
臨床検査学科
教 授 芝紀代子
いつでもどこでも健康診断
2008年12月19日(金)
アイリス愛知・名古屋
研究背景
・尿は血液成分がろ過・吸収されたものだから、豊富な医療情報が得られる
・尿は非侵襲性であるから、検査材料として貴重
・尿の微量な蛋白から得られる情報を見逃している
・尿蛋白を精密分画すれば将来腎生検に替われるのではないか
50ml コニカルチューブ(コーニング社)
芝が開発した銀染色液をキット化芝が開発した銀染色液をキット化
①0.25 % Tween20 液 12mL
②25 mM 硫酸第1鉄液(FeSO4・7H2O)
15mL
③280 mM クエン酸ナトリウム液
(Na3citrate・2H2O)5mL
①,②,③液を順次入れて
その都度転倒混和
④350mM硝酸銀液 1mL直ちに上下に激しく3回振る
⑤15%酢酸液 2mL 転倒混和
調製法
(使用直前に調製)
高感度銀染色法高感度銀染色法
特許特許3518746:3518746:銀染色による高感度微量蛋白定量法銀染色による高感度微量蛋白定量法
従来技術とその問題点従来技術とその問題点
尿蛋白定性法:尿蛋白試験紙尿蛋白定性法:尿蛋白試験紙
問題点:尿中のアルブミンのみを検出、
尿蛋白 (-)、(+)30mg/dl、(2+)100mg/dl、 (3+)300mg/dl
尿蛋白定量法:色素結合法尿蛋白定量法:色素結合法
問題点:セルなどの器具に色素が付着、アルブミンに対しての反応性が高すぎる
CBB法(トネインTP、大塚アッセイ研究所)
ピロガロールレッド法(マイクロTP 和光純薬工業)がすでにキット化されている
尿中蛋白はアルブミンだけではなく、
低分子蛋白も存在する
尿中蛋白の生理・病態生理尿中蛋白の生理・病態生理
蛋白尿の鑑別・分類蛋白尿の鑑別・分類
標準液、尿検体を各3μL点着
↓
銀染色:微量蛋白質高感度
銀染色キット (常光)
↓
吸光度から濃度を計算
デンシトメーター:CS9000
(島津製作所)
U1U2
U3 U4 U5
S3S1 S6S4 S5S2 S7 S8 S9
(支持体:セパラックスSP(富士写真フイルム))
S1-S9:アルブミン標準液
S1:生理食塩水、S2:1.25mg/L、S3:2.5mg/L、
S4:5.0mg/L、S5:10mg/L、S6:50mg/L、
S7:100mg/L、S8:150mg/L、S9:200mg/L
U1-U52:尿検体
尿蛋白測定法の確立(銀染色・ドットブロット法)
尿中蛋白をすべて検出できる方法である
銀染色・ドットブロット法の特徴
• 微量蛋白濃度(2.5~300mg/L)を検出
• 原尿3μLで測定
• 操作が簡便(30分で終了)
• 同時再現性及び日差再現性ともに良好
• 蛋白種に対する反応性が類似
銀染色・ドットブロット法銀染色・ドットブロット法 ニグロシン染色・ドットブロット法
同時再現性同時再現性
2.2~~5.7%5.7%日差再現性日差再現性
4.44.4~~12.1%12.1%
同時再現性同時再現性
1.21.2~~4.2%4.2%日差再現性日差再現性
3.23.2~~5.9%5.9%
S1-S9:アルブミン標準液S1:生理食塩水、S2:1.25mg/L、S3:2.5mg/L、S4:5.0mg/L、
S5:10mg/L、S6:50mg/L、S7:100mg/L、S8:150mg/L、S9:200mg/L
a
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0 50 100 150 200 250
Alb level (mg/L)
Abs
(500 n
m)
0
0.1
0.2
0.3
0 5 10
b
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0.35
0 50 100 150 200 250
Alb level (mg/L)
Abs
(650nm
)
0
0.1
0.2
0.3
0 50 100
銀染色・ドットブロット法 ニグロシン染色・ドットブロット法
標準曲線標準曲線
小検出感度:2.5mg/L 小検出感度:50mg/L
高感度尿蛋白質定量装置の開発高感度尿蛋白質定量装置の開発
高感度尿蛋白高感度尿蛋白質定量装置質定量装置
セルロースアセテート膜サンプラー
塗布用チップ
染色脱色箱
用手法では普及しないので、自動装置の開発を手がけた
銀染色・ドットブロット法で測定した
尿中総蛋白濃度銀染色・ドットブロット法で測定した
尿中総蛋白濃度
例 数 (例)
小値 (mg/dl)
大値 (mg/dl)
平均値 (mg/dl)
S D
尿試験紙定性
(-)検体
37
1
17
6.5
4.1
47
21.3
10.7
尿試験紙定性
(±)検体
68
5
尿蛋白(-)検体 尿蛋白(±)検体
患者検体の尿蛋白分画
Albα1-G
γ-G
β-Gα2-G
希釈血清1 2 4 5 6 7 8 93
Albα1-G
β-Gγ-G
α2-G
1 2 3 4 5 6 7 8 9 希釈血清
超微量な蛋白濃度でも、患者尿では健常人と違うバンドが出現することが判明
微量尿蛋白定量の意味がある
新技術の特徴・従来技術との比較
特徴:多数の尿検体中の蛋白質を測定する場合、用手法で行うと、時間がかかり、労力が非常にかかる。 さらに蛋白量のバラツキが出るが、本技術が本装置で自動化することで、これらが解決され、尿中の蛋白質の高感度自動測定が達成される。
比較:従来の方法ではアルブミンとの反応が主
だが、本法では全ての蛋白を捕らえられる。
想定される用途想定される用途
• 尿検体中の蛋白質量を高感度に検出することは現在あまり行われていないが,本装置があれば各病院の検査部、検査センター、健診センター、保健所などで実施されるようになるであろう。
• 本技術が実用化されることで、各種腎疾患を早期に発見し、早期診断ができることと、腎疾患診断で現在行われている腎生検検査を大幅に減らせることが期待される。
想定される業界
• 想定されるユーザー各病院の検査部、検査センター、健診センター、保健所など
• 想定される市場規模
本技術及び装置の開発は、国内・国外でも初めてであり、この装置が完成した場合の市場規模は、全国の病院、検査センター、健診センターなど以外にも海外の病院、検査センター等にも及ぶと思われる。
→予想される売上:10億円(国内で5000施設が採用したとして)
実用化に向けた課題
• 現在、本技術について自動で尿を点着し、自動で銀染色し定量可能なところまで開発済み。
しかし、尿を点着する際に、均一にドットされるべきだが均一にならないことがあり、再現性に欠ける点が未解決である。
• 実用化に向けて、今後、自動点着する際の検体特性と機械によるバラツキの影響の検討し、ドットの大小不同や歪みの解消を行う。同じ尿でもバラツキが出ないように精密度5%以下を目指す。
ドットの歪みの改善
通常は、バットの上で直接キャピラリーが下りてきて点着
この板をバットに入れ、その上にセア膜を乗せてから、点着することで、セア膜が浮いた状態で点着でき、歪みがほとんどみられなくなった。
歪み
セア膜の洗浄の検討
攪拌速度を約2倍に上げることと、攪拌中の水の流れを変えることで、染色後の膜のバックグラウンドが低くなった。
プラスチック板を置いた
攪拌時の水の流れが変わる。
検討前
汚れ
サンプルトレイ
バットの中の水の流れ
プラスチック板
攪拌速度2倍
支持体にセパラックスSP膜 を用いた時とセレカVSP膜を用いた時の比較
セパラックスSP膜とセレカVSP膜との相関をとったところ、r=0.995と良好な相関が得られた。
セパラックスSP OD換算
10 19 38 75 150 300 mg/L
セパラックスSP
セレカVSP
セレカVSP
OD換算
検討前後での各濃度における同時再現性の比較
(CV%)
濃度mg/L
(支持体:セレカVSP)
CV10%ライン
検討とは、ドットの歪み改善と膜の洗浄方法の検討
検討前に比べ、再現性が良くなり、CVが10%以内
に収まりました。
支持体をセレカVSP膜とした時の本装置における検出感度
10~300mg/Lの範囲で直線性があった。本装置を用いたときの検出感度は2.5mg/Lだった。
濃度
OD換算
10 19 38 75 150 300 mg/L
セレカVSP
mg/L
mg/L
企業への期待
高感度尿蛋白質定量装置の性能向上については、銀染色液の試薬の特性と医療機器開発または製造の技術を活かし、克服できると考えています。
試薬開発及び医療機器開発の技術を持つ、企業との共同研究を希望しています。
本技術に関する知的財産権本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :銀染色による微量蛋白質
定量装置
• 出願番号 :特開2003-215130• 出願人 :株式会社常光、芝紀代子
• 発明者 :千葉智仁
お問い合わせ先
科学技術振興機構
技術移転促進部 シーズ展開課
技術移転プランナー 井上 治郎
電話: 03-5214 - 7519
e-mail:j2inoue@ jst.go.jp
あいち健康長寿産業クラスター推進協議会
(財)科学技術交流財団
クラスター・マネージャー 小坂 岑雄(こさか みねお)
電話:052-231-1477
e-mail:[email protected]