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製薬業界として宇宙実験に期待すること
⽇本製薬⼯業協会研究開発委員会専⾨副委員⻑エーザイ株式会社 筑波研究所
川上 善之
AIST-JAXA研究交流会 2018.2.22
⽇本製薬⼯業協会
1968年設⽴。2017年1⽉1⽇現在、研究開発志向型製薬企業72社が加盟。製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携など多⾯的な事業を展開。政策策定と提⾔活動の強化、国際化への対応、広報体制の強化を通じて、製薬産業の健全な発展に取り組む。国際製薬団体連合会(IFPMA)の加盟協会として、地球規模で蔓延する疾患対策や発展途上国などにおける伝染病対策、医薬品アクセス問題と知的財産権、さらには偽造薬問題など世界の医療・医薬に関わる諸問題にも対応。
製薬協研究開発委員会が⽀援する先端科学1. 創薬産業構造解析コンソーシアム 製薬協加盟16社2. SPring-83. フォトンファクトリー(⾼エネ研)4. 理研-製薬協 創薬専⽤分⼦シミュレータの産学共同開発5. ⽂科省 次世代スーパーコンピュータ「京」「ポスト京」6. AMED 創薬等先端技術⽀援基盤プラットフォーム(BINDS)7. AMED 創薬⽀援ネットワーク8. 東北メディカルメガバンクほかバイオバンク事業9. 疾患特異的iPS細胞を活⽤した難病研究10.JAXA「きぼう」微⼩重⼒下蛋⽩結晶化実験11.J-PARC ほか
⽇本は世界第2の新薬創出国
医薬産業政策研究所の報告によると2016年度世界医薬品売上⾼上位100品⽬中⽇本の創出数が13品でアメリカ(48品)に次いで単独世界第2位となった。(世界で12か国のみが上位品創出)
医薬品創出企業の国籍別医薬品数
⽇本の創薬⼒の源泉
1.科学⽔準が⾼い2.研究者の質が⾼い3.最先端科学技術の利⽤が容易
(SPring-8, 京コンピュータ, J-PARC, 国際宇宙ステーション”きぼう” etc.)
4. 産学連携が活発5. バイオベンチャーとの連携が増加(ただし⽶国>⽇本)6. 特許防衛が強⼒
⽇本の製薬企業は画期的新薬創出に⻑い間取り組んで成功体験を重ねている
⽇本は基礎研究⼒が⾼い国別ノーベル賞受賞者 科学系 2001年−2017年
Item Physiology or MedicineCountry Physics Chemistry Total Rank
United States 19(7) 21(3) 19(4) 59(14) 1
United Kingdom 1(5) 2(1) 7(2) 10(8) 3
Germany 3 1(1) 1 4 5
France 2 2 3 7 4
Sweden 1 1 11
Switzerland 1 1 11
Russia 2(1) 2(1) 8
Japan 7(2) 4(1) 3 14(3) 2
Netherlands 0(2) 1 1(2)
Hong Kong 0(1) 0(1)
Canada 1(1) 1 2(1) 9
Australia 0(1) 0(1) 2(1) 2(3) 7
Israel 4 4 5
South Africa 1 1 11
Belgium 1 1 11
Norway 2 2 10
⽇本は教育を重視基礎科学研究を強⼒に推進
我々のタンパク質結晶構造解析の歴史KEK-PF 坂部プロジェクト、のちに「つくば共同体」に発展• 1994 筑波⼤TARA坂部プロジェクト申請• 1995 筑波⼤TARA坂部プロジェクト発⾜ → SBDD時代の幕開け
参加企業14社、代表 坂部知平先⽣• 1996 専⽤ビームライン完成 120時間/年/社• 1999 構造⽣物坂部プロジェクトに名称変更• 2006 つくば構造⽣物産業利⽤推進共同体に移⾏SPring-8 蛋⽩コンソ、のちに「創薬コンソ」に発展• 1999 SPring-8構造⽣物産業応⽤研究会発⾜• 2001 蛋⽩質構造解析コンソーシアム発⾜
参加企業 製薬協所属22社• 2002 専⽤ビームライン完成 144時間/年/社• 2012 理研との連携 創薬産業構造解析コンソーシアムに移⾏
創薬における構造科学の役割 SBDD(Structure-Based Drug Design)で中⼼的役割
• 標的タンパク質と薬物の複合体結晶構造解析• 分⼦シミュレーション(動的構造、ドッキング)→ 分⼦標的医薬の出現
構造プロテオミクスの勃興• 新しい標的蛋⽩の⽴体構造解明• ゲノム創薬の⼊り⼝• 放射光施設の利⽤が拡⼤
新規構造解析法• Ⅹ線⾃由電⼦レーザー• クライオ電顕
これまでのJAXAタンパク質結晶化宇宙実験の歴史
タンパク質機能・構造解析のための⾼品質タンパク質結晶⽣成プロジェクトの実施について
平成15年1月22日 宇宙開発事業団
スペースシャトルコロンビア号空中分解事故
出典:JAXA HP
第2回宇宙実験(ソユーズ宇宙船 2003年8⽉29⽇から10⽉28⽇)
出典:JAXA HP
国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」⽇本実験棟
流体実験ラック
船内実験室内部のラックの配置(イメージ)
JAXAギャラリーより
宇宙で得られた結晶
JAXAギャラリーより
これまでの宇宙実験でわかったことと課題(私⾒)• ⾼品質の結晶を宇宙にあげるとさらに品質が⾼まる 超⾼分解能結晶•地上実験を含むサービスパッケージとトライアルユースの実施が効果
地上実験が成功のカギを握っている → ⾼純度化が⼤事協⼒会社:丸和栄養⾷品、コンフォーカルサイエンス
地上で結晶化されないものは宇宙でも無理のようだ• 実験結果が研究者に占有されている→ 科学データのフィードバックでJAXAの技術開発に協⼒を
• JAXA側に研究者を配置し技術開発が活性化された• 年間2回の実験では⾜りない• 重⼒を除いて地上実験に近い環境で結晶化実験ができつつある
蒸気拡散法(地上実験はほとんどがこの⼿法)、温度設定
利⽤者のニーズに対応した複数の参加形態その意味は
データの集積
新規ユーザの獲得
JAXA技術開発に利⽤出典:JAXA HP
結晶化⼿法について
SGT法:液液拡散法の⼀種で、ゲルチューブとガラスキャピラリ,PET製の袋状のシートを⽤いて実施します。詳細は実験の⼿引きをご覧ください。
SLC法:SGT法をベースに、より内径の⼤きなキャピラリを使⽤できるように改変した⼿法です。中性⼦解析等、⼤型の結晶を必要とされる場合に有効です。
OT法(浸透チューブ法):技術実証中の⼿法です。蒸気拡散法の結晶化条件がそのまま適⽤可能です。タンパク質セルからの溶質の漏出がないため、希少な化合物等の使⽤量が従来に⽐べて⼤幅に低減できます。
透析法:技術実証中の⼿法です。キャピラリからのタンパク質の漏出がないため、結晶化時のタンパク質濃度を下げたくない場合に有効です。
出典:JAXA HP
宇宙実験への期待(私⾒)• これまで以上の超⾼分解能結晶の実現• 地上実験サービスのさらなる充実• ペプチドリーム社との戦略的なパートナーシップ契約の成果に注⽬• 実験成果を今後の実験に役⽴てるため宇宙実験をした研究者に協⼒要請• 結晶多型の検討• 中性⼦解析に供する⼤型結晶の作製• クライオ電顕に供する⼆次元結晶化法の検討(⾮常に複雑で多種類の分
⼦からなる巨⼤な⽣体分⼦複合体の構造解析)• アカデミアの利⽤を促進するため広報活動の充実• 実験サイクル(現在は年に4回打ち上げ)を短縮し⾼頻度化の効果実証• アジア諸国との連携を強化し⽇本の経験知をアジアの科学技術の発展に
貢献
ご清聴ありがとうございました引き続き宇宙実験に期待しています