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1 自動車開発における プラントモデル I/F ガイドライン 解説書 Ver.1.0 平成 29 3

自動車開発における プラントモデル I/F ガイドライ …...3 第1章 この書の目的 本解説書は、「自動車開発におけるプラントモデルI/F ガイドライン」で定める

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自動車開発における プラントモデル I/F ガイドライン

解説書

Ver.1.0

平成 29 年 3 月

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目次

この書の目的 ....................................................................................... 3 第1章

ガイドライン策定の前提について ....................................................... 3 第2章

(1) 前提 ................................................................................................... 3

(2) モデルの構成 ..................................................................................... 4

(3) 本ガイドラインの範囲 ....................................................................... 4

ガイドライン基本原則 ....................................................................... 10 第3章

1. 第一原則の説明(プラントモデル間の変数) ........................................ 11

2. 第二原則の説明(エネルギーの流れる方向) ........................................ 14

3. 第三原則の説明(変数の入出力の方向) ............................................... 16

4. 第四原則の説明(入出力の正負) .......................................................... 18

5. 第五原則の説明(単位と量記号) .......................................................... 19

基本原則の具体的事例 ....................................................................... 20 第4章

1. オルタネータの場合 ........................................................................... 20

(1) サブシステムの物理領域の定義....................................................... 20

(2) サブシステムのエネルギーソースとシンクの定義(第二原則) ......... 20

(3) アクロス変数の入出力を定義 .......................................................... 21

<参考資料> ....................................................................................................... 23

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この書の目的 第1章

本解説書は、「自動車開発におけるプラントモデル I/F ガイドライン」で定める

事項の考え方を具体的に記したものであり、理解を深めるためのものである。

ガイドライン策定の前提について 第2章

(1) 前提

自動車開発におけるモデルベース開発において、モデルの流通を考えたプ

ラントモデルの接続において、モデル同士がつながらないことがある。図 1

のように入出力の向きが違ったり、入出力の種類や単位が違ったり、エネル

ギーの流れる方向の正負の取り決めがモデルごとに違うことある。

図 1. プラントモデルの接続における困りごと

このような問題において、プラントモデル間をつなぐためのインターフェ

ース(I/F)のガイドラインがあると便利である。自動車におけるプラントモデル

は、運動・電気・熱などの様々な物理領域を考えなくてはいけない。また、

モデルが作成しやすいことや計算負荷が少なくなるように I/F を決めること、

モデル作成が実現可能であることを前提となる。そこで、以下の項目を定め

る必要がある。

①入出力変数の種類

②サブシステム間のエネルギーの流れ

③入出力の向き

④スルー変数の正負

⑤単位、量記号

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(2) モデルの構成

① プラント・制御

サブシステム内は、大きく二つに分けることが出来る。機器をコントロ

ールするものを制御とし、その制御対象をプラントとする。

図 2. プラント・制御の位置づけ

A) プラントモデル

制御対象のメカニズムを物理式や統計・計測データなどでモデル化し

たもので、ハードウェアのポテンシャルの限界性能を示すモデルである。

サブシステムとしてエネルギーを有するものである。

B) 制御モデル

ソフトウェアのアルゴリズムをモデル化としたものである。制御モデ

ルはセンサや他の制御モデルからのインプット、処理、アウトプット、

フィードバック、予測などの構造を持ち、ハードウェアの限界性能の範

囲で、アクチュエータに指示を行うものである。

(3) 本ガイドラインの範囲

①モデルの流通に際して考慮すべきこと

モデルの流通に際して、図 3 のようなプロセスがある。やりたいことに対し

て適切なモデルかどうかを理解し、そのモデルをツールへ取り込む。また、流

通されたモデルと自分のモデルを接続して、実行する。このプロセスが、スム

ーズに進むことが必要である。

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図 3. モデルを使った開発でのプロセス

上記のプロセスがスムーズに進むためには、本来、プラントモデルの I/F だけ

でなく、シミュレーション環境(図 4)などについて、モデルを流通する者同士で

ルールを決める必要があるが、本ガイドラインの範囲は、プラントモデルの接

続をスムーズに進めるための I/F 接続ガイドラインである。

図 4. シミュレーション環境の構成

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②モデルの領域について

本ガイドラインは、車両の全体最適設計(燃費など)を行うためのシミ

ュレーションのモデルを前提として、メカ、エレキ、ソフトが混在したサ

ブシステム開発におけるモデルを流通させることが目的である。

全体最適設計のため、モデルの領域は下図の 0D~1D の領域として、全

体の最適設計でのモデルを前提とする。

図 5. 設計情報時のモデルの区分

また、1D シミュレーションという定義は、3D シミュレーションのよう

に偏微分方程式を解くようなシミュレーションではなく、物理現象の計算

を常微分方程式や代数微分方程式などで記述されるシミュレーションであ

る。対応ツールでいうと、下記の表 1 のようになる。

表 1 プラントモデルの区分と対応ツール例

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③因果的/非因果的モデリングについて

1D 領域のプラントのモデリング手法は、因果的モデリングと非因果的モ

デリングがある。本ガイドラインの範囲は、因果的モデリングを対象とし

ている。因果的モデリングとは、入出力の方向が定義されたモデリングで

ある。入出力が定義されているので、計算の順序も決まる。

図 6. 因果的モデリング事例

ただし、因果的モデリングの場合、プラントモデルを記述するとき、ツ

ールの都合で、代数ループなどの本来の物理法則とは違う制約をかけられ

ることがあり、相互作用のような非因果的な物理現象が解けない場合があ

る。また、物理法則を満たすためのルールなどもモデルの開発者自身で予

め決めておかないと、うまく作成できないことがある。

非因果的モデリングとは、入出力の方向を定義しないモデリング手法で

ある。また、非因果的モデリングでのツールは、モデル言語により、アク

ロス変数やスルー変数などの物理的な入出力の組合せを決めており、モデ

ル言語やツール側が物理法則を満たせるようなルールが存在する。

また、モデルを計算するソルバが、非因果的に影響しあうモデルを解く

ことが可能である。

下記図 7 に、非因果的モデリングと因果的モデリングの事例を挙げる。

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図 7. 因果モデリングと非因果モデリングの違い

モデル再利用性については、図 8 に、バネマスダンパモデルでの入出力

が変わった場合のモデリングの違いを記す。因果的モデリングでは、モデ

ルの入出力が変わるとモデル自体を大きく変えなければならない。

モデルの再利用性を保つためには、因果的モデリングでは、入出力にお

けるある程度のルール化を行わなければ、モデルの再利用性、流通性は難

しくなる。

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図 8. 因果的モデリングと非因果的モデリングの入出力変更時のモデル構成

④ガイドラインのモデリング手法の範囲

上記より、因果的モデリングについては、モデル開発者側でプラントモ

デルを作成する際に、エネルギー保存などの条件を満たすようにモデル作

成者が考えないと、物理的に正しいモデルは作成できない。物理的な正し

さを考えるためには、エネルギーなどを意識しながらモデル化が出来るよ

うに、因果的モデリングにおけるプラントモデル間の I/F ガイドラインを設

定する。

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ガイドライン基本原則 第3章

プラントモデル間の接続における基本原則を下記の様にガイドラインにて設

定されている。

表 2. プラントモデル I/F ガイドライン基本原則

基本原則

第一 プラントモデル間はアクロス変数とスルー変数でつなぐ。

また、アクロス変数とスルー変数の向きは互いに逆向きとする。

第二 エネルギーソースからエネルギーシンクへ流れる方向をエネルギ

ーの正の向きとする。

第三 スルー量・アクロス量を蓄積する要素を基準として、全体の I/F を

考える。

第四 スルー変数の正負は、エネルギーの正の流れの向きとスルー変数の

入出力の向きが同じとき、正とし、逆の時、負とする。

第五 入出力の単位は SI 単位系、SI 組立単位系を利用する。

量記号は、JIS 規格を使用する。

上記以外の場合は、理由も含めて明記する。(サブシステム I/F 定義書活用)

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1. 第一原則の説明(プラントモデル間の変数)

プラントモデル間はアクロス変数とスルー変数でつなぐ。

また、アクロス変数とスルー変数の向きは互いに逆向きとする。

図 9. 第一原則概要

①物理量の組合せの候補の選出

プラントモデルの I/F は、物理則を考慮しながら微分方程式で記述する

ためのモデル言語の方式がいくつか存在する。その変数として、(a) アク

ロス/スルーと(b) エフォート/フローの二つの考え方がある。

本ガイドラインは、この中から決定する。

表 3. モデリング言語とその変数区分け

言語 変数の区分け

Modelica 言語

アクロス/スルー(力‐電流相似) VHDL-ams 言語

Simscape 言語

BondGraph エフォート/フロー(力‐電圧相似)

(a) アクロス/スルーと(b) エフォート/フローの違い大きく言うと、

● 運動系(並進・回転)と電気、熱系の関係が逆であること

● 熱の流れに関する変数が(a)が熱流量(W)で、(b)がエントロピー流

(J/K/s)で違うあることの二点である。

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② エネルギーを考える変数(アクロス/スルー、エフォート/フロー)

(a) アクロス/スルー

ポテンシャルを表すアクロス量(位差量)[across]とその流れを示すスル

ー量(流動量)[through]。across×through を行うと、単位時間当たりのエ

ネルギー量(J/s)となる。(熱は through の熱流量がそのまま単位時間当た

りのエネルギー量となる。)

表 4. ドメインごとのアクロス変数とスルー変数一覧

領域 横断変数(位差量) 通過変数(流動量) Domain Across Variable Through Variable

電気 電位・電圧 電流 Electrical (Voltage) (Current) 並進運動 速度 力 Translational (Velocity) (Force) 回転運動 角速度 トルク Rotational (Angular Velocity) (Torque) 熱 温度 熱流量 Heat (Temperature) (Heat flow) 流体※1 体積流量 圧力 Fluid (Volume flow) (Pressure)

※1 今回、研究会にて流体は議論していないため、参考として、表示し今後の議論とする。

電位・電圧は、電気系のポテンシャルの値であり、その時の電気の流れ

は、電流である。

速度は、運動系における位置エネルギーや運動エネルギーなどのポテン

シャルを計算できる変数であり、力やトルクは、運動系のエネルギーの向

きと同じ流れである。

熱に関しても、温度は、熱のポテンシャルエネルギーのベースであり、

熱流量は、そのエネルギーの流れを示す。

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図 10. スルー変数とアクロス変数の概念図

(b) エフォート/フロー(Bond Graph)

Bond Graph は、力[N]に関連する変数をエフォート[effort]、変化速度[1/s]

に関連する量をフロー[flow]。Effort×Flow を行うと、単位時間当たりのエ

ネルギー量(J/s)となる。 表 5. ドメインごとのエフォート変数とフロー変数一覧

※参照 SimTech ボンドグラフによるシミュレーション技術を考える

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2. 第二原則の説明(エネルギーの流れる方向)

エネルギーソースからエネルギーシンクへ流れる方向をエネルギーの正の

向きとする。

図 11. エネルギーの流れの概念図

製品の動作は、サブシステム内でエネルギーを生み出したり、貯めたり、

消費したりする性能を定義することで実現できる。エネルギーの発生源(エ

ネルギーソース)から動作対象(エネルギーシンク)のサブシステムを考え

る。

エネルギーの流れは、エネルギーの発生源からエネルギーの動作対象に流

れる方を正とする。ただし、エネルギーソースとシンクの定義は、その製品

のサブシステム全体を考えて、設定することとする。

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自動車の機械系の事例を下記に記す。燃料からトルクを算出するエンジン

がエネルギーソースとし、空気抵抗などの車両負荷に当たるところがエネル

ギーシンクとする。この向きにエネルギーが流れる方を正の方向とする。

図 12. エネルギーの流れる方向(自動車機械系の事例)

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3. 第三原則の説明(変数の入出力の方向)

スルー量・アクロス量を蓄積する要素を基準として、全体の I/F を考える。

ここでは詳細は割愛するが、モデルを解く場合には、モデル現象を微分の

方程式にならないようにモデル化する方がモデル計算としては安定する。(他

にも不安定になる要素は多くある。)

サブシステムには、エネルギーを蓄積サブシステムが存在する。(慣性質量

やバッテリなど)そのエネルギーを蓄積するサブシステムを基準として、全体

の I/F を決める。

図 13 に示すサブシステムは、前後のサブシステムからスルー変数を受け

取り、前後のサブシステムに対してアクロス変数を出力する。

図 13. エネルギー蓄積するモデル事例(アクロス変数出力)

例えば、慣性質量は、力 F(t)を入力とすると図 14 の式から、速度 v(t)を求

める式は積分となる。同様に慣性モーメントやコンデンサ、熱容量のモデル

については、スルー量を入力にする方が微分ではなく積分での方程式になる。

図 14. エネルギー蓄積モデルの事例

また、 図 15 に示すサブシステムは、例えば、バネモデルは変位が変

わるとエネルギーが変化する。つまり、速度などのアクロス変数を積分して、

その時の力などのスルー変数を算出する。つまり、前後のサブシステムから

アクロス変数を受け取り、前後のサブシステムに対してスルー変数を出力す

る方が、モデルとして安定しやすい形になる。

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図 15. エネルギー蓄積するモデル事例(スルー変数出力)

基本的に、このようなエネルギーを蓄積することを主とするサブシステム

モデルを指定して、そこのモデルからを中心にした入出力を決めることとす

る。

今回の自動車サブシステムの事例では、車両の慣性質量やエンジンのフラ

イホイール、バッテリなどを指定して、アクロス変数を出力とし、また、車

両のドライブシャフトはバネ要素として指定し、スルー変数を出力として、

それを基準にアクロス変数とスルー変数の入出力を決めるものとする。

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4. 第四原則の説明(入出力の正負)

スルー変数の正負は、エネルギーの正の流れの向きとスルー変数の入出力

の向きが同じとき、正とし、逆は負とする。

この手法は、自動車技術会の「国際標準記述によるモデル開発・流通検討委

員会」で策定している非因果的モデリングツールを用いた FMI モデル接続ガ

イドライン Ver.1.0 をベースにしている。

図 16. スルー変数の正負の向きの概要

また、この原則から、サブシステム全体で見た時、スルー変数の入出力と

エネルギーの流れの向きの関係は、同じ向きはプラス、逆向きはマイナスと

いうことと同義とする。

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5. 第五原則の説明(単位と量記号)

入出力のドメインと単位・物理量の表記

入出力の単位は SI 単位系、SI 組立単位系を利用する。

また、本ガイドラインや、モデルの要求書や仕様書などで理解しやすいよ

うに、物理の量記号を JIS 規格ベースとする。

表 6. アクロス変数スルー変数の単位

領域 Domain

横断変数(位差量) AcrossVariable

通過変数(流動量) Through Variable

量記号 単位 UNIT 量記号 単位

UNIT 電気 電位・電圧

V V 電流

(Current) I A Electrical (Voltage)

並進運動 速度 v m/s

(Force) F N

Translational (Velocity)

回転運動 角速度 ω rad/s

トルク

(Torque) M,T Nm Rotational (Angular

Velocity) 熱 温度

T K 熱流量

(Heatflow) φ W Heat (Temperature)

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基本原則の具体的事例 第4章

1. オルタネータの場合

(1) サブシステムの物理領域の定義

オルタネータにおいて、エネルギードメインを回転と電気とする。

図 17. オルタネータモデルの位置

(2) サブシステムのエネルギーソースとシンクの定義(第二原則)

オルタネータにおいて、回転のエネルギーソースは、エンジンである。

オルタネータが発電で動作させられているときをエネルギーの正とす

る。電気系では、オルタネータがエネルギーソースである。オルタネー

タが発電している時をエネルギーの正とする。

図 18. 第二原則によるオルタネータのエネルギーの方向

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(3) アクロス変数の入出力を定義

プラントモデル間の入出力を決める。

まず、第二原則より、回転系は、トルクと回転数が入出力になる。電

気系は、電圧と電流である。

次に、第三原則より、回転系では、オルタネータは、フライホイール

と接続する。フライホイールは、トルクを入力、回転数を出力とするた

め、オルタネータは、回転数(アクロス変数)を入力にし、トルク(スルー

変数)を出力する。また、電気系は、オルタネータは、バッテリとつなが

っているため、電圧を入力、電流を出力とする。

第四原則より、オルタネータの回転系は、トルクが出力のため、オル

タネータが発電に必要なトルクは負として考える。また、電気系は、電

流が出力であるため、発電しているときが電流値は正になる。(図 20)

第五原則より、単位は、回転数は rad/s・トルクは Nm である。電気系

の電圧は V であり、電流は A とする。

このようにして、プラントモデルの I/F を考えていく。

図 19. オルタネータモデルのアクロス・スルー変数の定義

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図 20. オルタネータモデルのスルー変数の正負

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<参考資料>

資料 1 自動車技術会:国際標準記述によるモデル開発・流通検討委員会 モデ

ル接続技術検討 WG: 非因果モデリングツールを用いた FMI モデル接続ガイ

ドライン Ver.1.0 (2015) http://www.jsae.or.jp/tops/topic.php?code=1241

資料 2 「2009 年度第 1 回 SICE プラントモデリング研究会

望ましい制御対象モデリング(プラントモデリング)環境

2009 年 9 月 25 日 大畠 明、伊藤 久弘 トヨタ自動車株式会社 」

資料 3 SimTech ボンドグラフによるシミュレーション技術を考える

http://simtec.jp/base/base1.html

資料 4 大富浩一 羽藤武宏 (2012) 東芝レビューVol.67 No.7:「1DCAE によるも

のづくりの革新」https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2012/07/67_07pdf/a03.pdf