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介護施設の職場研修 青見 健志 1 介護施設のリスク管理 リスクマネジメント

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介護施設の職場研修

青見 健志 1

介護施設のリスク管理リスクマネジメント

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1.はじめに

リスク管理(リスクマネジメント)を行うにあたり、何がリスクであるのかを理解していることは、重要なポイントである。

2青見 健志

トラブルが発生する

原因:リスクを把握していないから

リスクの把握と予測は、経験若しくは知識としてリスクの原因と要因を理解していることが重要である。何も知らなければ、気がつくことも防ぐこともできない。介護施設では、個人情報保護、プライバシーの保護、虐待防止、介護事故防止、防犯、防火、災害対策等の様々なリスクマネジメントが必要とされている。事件、事故、トラブルを未然に防ぐために、職員研修を行う必要がある。

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2.リスクに対する認識のズレ

3青見 健志

富士山に登る準備をしたときに、山に登った経験がある人とない人の違いを考える

富士山に登ると言われたら、みんな高い山だと知っているので、知識や経験が無くても、それなりの装備が必要なことは理解できる。リスクや準備の手間を考えると、登らないという選択も生まれる。知識と経験がない人が登山に向けて準備をすれば、正しい準備ができるとは言えない。インターネット検索で、それぞれが違った情報源を選択すれば、不要な持ち物を準備したり、必要以上に重装備だったりとバラバラの結果を生むことになる。

みんなが知っているとても高い山

富士は日本一の山

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2.リスクに対する認識のズレ

4青見 健志

そこそこ苦労する山に登る準備をしたときに、山に登った経験がある人とない人の違いを考える

山に登るときに、季節・高さ・山道の整備状況などにより、どれくらいの時間がかかり、どれだけの準備と装備が必要なのかは、かなり違ってくる。道中どこに危険があり、どこで迷う可能性があるのか、全員が初めて登るのか、素人なのか、一人でも経験者がいるのか、その状況により登山に関わるリスクの認識は大きく違ってくる。経験者がいれば事故が発生する危険性は低くなるが、ゼロにはならない。頂上にたどり着くことより、最終的に全員が無事に帰ってくることの方が重要である。

未経験の人にとっては、登山のイメージがわきにくい

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3.登山におけるリスクマネジメントのポイント

5青見 健志

《登頂という目標を達成するためのマネジメント》

・山の高さや登山ルートを調べ、必要な装備の準備を行う・登山当日に向けて体力づくりや健康管理に気をつける・登山の基礎知識を調べたり、低い山に登って練習を行う

《登山におけるリスクマネジメントの最大目的》 無事に下山すること

《登山におけるリスクマネジメント》

・当日の天候や気象予報を調べ、登山中止の判断を決めておく・一人で登らない、素人であれば、登山経験者に必ず同行してもらう・予定表の作成、予定通りに行かなかったときの判断を決めておく・危険があれば、無理して登るより、引き返すことを優先する・怪我の治療や遭難捜索費用に対応できる損害保険に加入する・アクシデント発生時に助けを呼ぶ方法を検討しておく・怪我をした場合の応急処置方法を学んでおく・迷った場合の対処方法を登山経験者と事前に検討しておく・その他

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4.介護施設のリスクマネジメントとは

組織運営に影響を及ぼす損失を、組織的に回避、若しくは最小にとどめることを意味している。

6青見 健志

・介護施設のリスクマネジメントが意味するところ

最大リスク 経営破綻・倒産・指定取り消し・大規模災害・死亡・殺人

中規リスク

最小リスク

刑罰・損害賠償請求・行政執行・障害が残る怪我不正請求・重大事故・強盗・火災

運営停止・赤字経営・人員基準違反・風評被害・健康被害中等度の怪我・食中毒・感染・個人情報流出・監査指導

クレーム・不満・規律違反・連携不足・記録忘れ・報告漏れ職員教育不足・介護技能が低い・無点検・無確認

軽微な事故・紛失・盗難・労働トラブル・利用者トラブル軽い怪我・健康管理・人間関係の悪化・人手不足・過誤請求

低い

高い

ポイント:小さなリスクの発生率が高く、大きなリスクの発生率は低い

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5.リスクマネジメントのポイント

7青見 健志

リスクは管理すれば限りなくゼロに近づくが、無くなることはない。

《リスクマネジメントの心構え》

リスクマネジメントとは、リスクを無くすことだけではなく、事故発生時の損失を最大限に抑えることである。

どれだけ事故防止や安全管理に力を入れていても、たった一つの事故が一番望んでいない結果に繋がることがある。

組織運営に影響を及ぼすリスクとは、事故だけではなく、顧客満足・職員満足度など、経営の質も含んでいる。

内部のリスク管理を徹底していても、不良品の納入・強盗・災害・貰い事故など外部要因による回避できないことも発生する。

リスクマネジメントは企業の信用を表している

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6.介護施設に関わるリスクマネジメントのポイント

8青見 健志

《介護におけるリスクマネジメントの最大目的》

要介護高齢者の求める安心安全な介護サービスを、介護事業所が継続的に提供することが目的である。

安心安全な介護サービスを提供できる施設では、健全な経営に取り組み、職員教育や必要書類の作成・管理がなされており、トラブルや事故発生が少ない。万が一の事態にも誠意に保障対応が行われ、信頼の出来る事業所として、職員・利用者・家族・行政等の関係者すべてに信用されている。

介護施設のリスクマネジメントでは、高齢者の事故防止に注目しがちであるが、リスクマネジメントの目的は、組織の信用を高め継続的な運営を行っていくことである。

利用者や家族は、安心や安全が守られているという信用からサービスの利用を決める。事故が発生すれば、利用者介護に関わる関係者との信用は崩れてしまうため、事業者は信用を取り戻すための対応や対策を行うことが求められる。事業者が信用出来るか出来ないかを決めるのは、利用者の介護に関わるすべての関係者である。事業者が信用出来なければ、利用者はいなくなり、介護施設の経営を続けることが困難となる。

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7.若者の転倒が重大事故に繋がる可能性

9青見 健志

若者の転倒事故

無傷

擦り傷

切り傷・打撲

骨折

硬膜下出血

死亡

若者が1回転倒したときに発生する事故について考えてみると、まれに打ち所が悪く骨折したり、場合によっては死亡につながることもあるが、怪我が軽いことが多い。

低い高い発生する確率

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8.若者の転倒が重大事故に繋がる可能性

10青見 健志

リスクマネジメントに積極的に取り組み、事故防止に対する安全配慮が行えていても、必ずしも最悪の結果を回避出来るわけではない。日頃事故を起こすことのない事業所でも、1回の事故が重大な事態に繋がれば、結果に対する責任追求は免れない。日頃から事故防止に対する意識が低く、安全管理をなおざりにしていれば、軽微な事故が増え、重大な事態に繋がる確率が高くなり、「やっぱりそうなった」と言われる結果になる。

1回転倒して死ぬこともあれば10回転倒しても怪我しないこともある100回転倒したら何かしらの大きな怪我をするだろう

人が転倒することを減らすことはできても、無くすことはできない。

転倒回数が少なくても、ごくまれに運が悪ければ大事故に繋がる可能性がある。しかし、確率的に考えると転倒回数が少ない方が安全であることは誰もが理解できる。日頃転倒しないように安全配慮に気をつけ、もしもの事態に備えた対応策として、傷害保険に加入したり、緊急代表者連絡シートを持ち歩いたり、遺書を残すなどしておくといかなるリスクにも対応ができる。

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9.リスク発生度合い

11青見 健志

リスクマネジメントが出来ていない事業所ほど、軽微な事故が多くなり、やがて重大な事故に繋がっていく。

最大リスク

中等度リスク

最小リスク

低い

高い

リスクマネジメント できている できていない

白:軽傷 赤:重傷 黒:重体

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切り傷・打撲

10.高齢者の転倒が重大事故に繋がる可能性

12青見 健志

高齢者の転倒事故

無傷

擦り傷

骨折

硬膜下出血

死亡

高齢者が1回転倒したときに発生する事故について考えてみると、運が良ければ、無

傷や軽い擦り傷で済むことがあが、体も硬く骨も弱いため重い怪我になることが多く、場合によっては死亡に繋がることもある。

低い高い発生する確率

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10.高齢者の転倒が重大事故に繋がる可能性

13青見 健志

転倒する可能性が高いと予見しているのに、転倒事故が発生したときに、認知症だから仕方ない、いつも危ないと言っているのに聞いてもらえない、介護する側にも限界があると後付けで責任転換する行為は、無責任であると判断される。

本当に安全が守れないのなら、必要な対応を家族を含め検討し、要介護高齢者の人権が最大限守られ、家族が納得する対応を決める必要がある。

在宅での日常生活動作に危険があるため、介護サービスを利用するのだから、介護施設は安全であると家族が考えることは当たり前である。

1回転倒したら、運が良ければ軽い怪我ですむだろう10回転倒すれば、必ず骨折し、運が悪ければ死亡事故に繋がる100回転倒したら、それはもう事件としか言えない

高齢者は必ず転倒する、転倒予防の取り組みは必須である。

要介護高齢者の場合、転倒する危険性があるため介護施設を利用しているのだから、転倒予防に対する安全配慮義務が最初から発生している。高齢者の身体拘束は禁止されているため、認知症や判断力の低下により、転倒のリスクを理解してもらえない状況下で、安全面を確保しながら日常業務をこなさないといけない。

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11.高齢者施設のリスク発生度合い

14青見 健志

要介護高齢者のリスクマネジメントが出来ていない事業所ほど、日頃から事故が多発し、重大な事故の発生に繋がる。

最大リスク

中等度リスク

最小リスク

低い

高い

リスクマネジメント できている できていない

白:軽傷 赤:重傷 黒:重体

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12.ヒヤリハット事例について

15青見 健志

・職員によってヒヤリ!ハット!思う感覚は異なる。

重大事故に繋がる可能性がある状況に出くわしたとき

職員Aさんは、このままでは危ないと感じヒヤリハット報告を行う職員Bさんは、少し危ないけど大丈夫だろうと考える職員Cさんは、何も思わない

① 職員Aさんが気が付き対応したことで、事故を未然に防ぐことが出来た。

② 職員Bさん、Cさんは何も対応しなかったが事故は発生しなかった。

① 職員Bさん少し危ないけど、大丈夫だと考え対応しなかったら事故が発生した。

② 職員Cさんは事故が起こって初めて気が付いた。

無事故 事故発生

事故を未然に防ぐためには、職員の認識を統一することで、運良く無事故になっている状況を減らしていく必要がある。

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13.ヒヤリハット・事故報告書について

16青見 健志

・ヒヤリハット・事故報告の活用があまり出来ていない

職員が事故防止のためにヒヤリハット・事故報告書を沢山作成しているが、いっこうに事故は減らないし、同じ事故を繰り返す。

・報告書がどれくらい活用されているか、確認しなければならない

ヒヤリハット・事故報告は作成することがゴールではなく、活用することで事故を減らすことがゴールである。作成した書類をひとまとめに束ねておくだけでは、後から見直したりすることが難しい。また、人の記憶はすぐに忘れたり曖昧になるため、報告書の確認だけでは、時間の経過と共に忘れてしまう。

ヒヤリハット報告、事故報告が提出された利用者の報告書は、後からでもすぐに確認できるような工夫が必要である。情報量が増えていくため、ITを活用するなど情報の紐づけができるような体制の構築が必要となる。

事故防止委員会では、危険度のレベル分けや、その情報がどれだけ職員に認知されているのか調査しておく必要がある。

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14.報告書の書き方や内容

17青見 健志

・事故報告書を箇条書きすると、読み手はイメージがつかめない。

事故報告は誰が,いつ,どこで,誰と,どのように対応したという経過報告に加え、その判断に至った理由まで記載しておかないと、後で記録を読み返しても、ストーリーやイメージがつかめない。

事故報告書の内容を確認すると、突然事故が発生して、怪我を見つけて、処置対応を行い、終了というような起こったことを時系列に箇条書きにしている内容が見受けられる。

その時にできる最善の対応をとっていたはずだったのに、時間がたってから事故に対する責任を家族から追及されたときに、状況や対応した記憶があいまいになり、納得のいく説明ができなければ不審に思われ、裁判ではマイナスに働く結果になる。事故報告はメモ書きでもよいので、その場で可能な限り記録を残し、時間をかけずに情報収集と報告書の作成を行っておく。

・事故の対応をしっかり行っていた証明には、記録(証拠)を残すしかない

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15.契約書や同意書の説明と理解

18青見 健志

・説明同意は相手から同意を得たらゴールではない。

家族は自分の両親を施設にどのような想いやイメージを抱いて預けているのか、施設での生活をどう想像しているのか、身体状況や安全面、急な体調変化に対してどれだけ知識があり、施設での対応はどこまでできると考えているのかを確認する必要がある。

・家族と施設の情報の非対称性に注意しなければならない。

人手不足の影響もあり、施設が個別に対応できることには限界があり、優先順位が低ければ他の利用者を優先することがある。身体状況が厳しければ、家族の到着を待たずに搬送したり、急死することもある。認知症が進めば、今の施設では対応が困難となる場合もある。

家族が持っている介護のイメージと知識は、施設職員が考えている内容と大きな開きがある。契約や同意をもらう最終的な目的は、家族と施設の情報の開きを修正し、同じ考えや認識の下でサービスを提供していくことである。

《利用者・家族》

《介護施設》

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16.同意を得ても訴訟は起こる

19青見 健志

1年前に面会に訪れた家族が、親がまだまだ見守りで歩行している姿を確認し、1

年後に転倒を理由に寝たきりになり、認知症も発症すれば、そのギャップに驚き、施設の提供する介護サービスに不信感を抱く可能性がある。

転倒や急変のリスクについて家族へ同意を得ても、発生した事柄に家族が納得がいかなければ、訴訟に繋がる可能性がある。

家族が施設に要介護利用者の介護すべてを任せきりになるのではなく、家族もケアチームの一員として情報を共有したり、行事への参加協力を促し、日常的な関わりを多く持ってもらうような取り組みは必要である。また、利用者家族は近くに住むキーパーソン以外に、遠くに住む兄弟姉妹も含まれる。

《ポイント》

・家族とのコミュニケーションが不足し、関係の構築ができないと

・たまに面会に来る人は、前回の様子と比べその差に驚く

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17.施設の防犯に関するリスクマネジメント

20青見 健志

転倒事故が、骨折、後遺症の残る怪我、死亡に繋がることは理解できるが、弱い高齢者を狙った傷害事件が発生すれば、もしかすると転倒による事故よりも沢山の高齢者が被害に遭うかもしれない。

暴力に対するリスクマネジメントは出来ていますか?

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18.防犯意識について考えてみよう

21青見 健志

日本は安全で秩序が守られているため、犯罪に巻き込まれる確率は低い。だから、自分の働く施設が事件に巻き込まれるはずはないと考えてよいのだろうか?

犯罪を減らすことはできても、無くすことはできない!

障害者虐待防止法が施工され、虐待を防止するための体制の整備が必要となっている。組織的な防犯に対する対応方法が検討・確立されておらず、無防備な状況が証明されると、管理責任を問われる可能性がある。

施設の障害者・高齢者がターゲットになる傷害事件は多発しており、犯人は通り魔的な部外者もいれば、施設に関係のある職員等が虐待を行うケースも多発している。

もし、自分が夜勤の時に、施設に侵入した強盗、若しくは激しい暴力行為に出くわしたら、自分の命を守り被害を最小限にとどめる方法はどのような対応だろうか?

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18.防犯意識について考えてみよう

22青見 健志

家を留守にするときに鍵を掛けて、泥棒への備えを行うが、施設は不特定多数の人が出入りする為、常に人の目があり、物が取られることがないという認識は正しいか?

・泥棒、盗難、窃盗について

狙われているのは金品に限らず、個人情報等のデータも含まれる!

病院や福祉施設に居れば、安心・安全だと考えるのは日本人の常識で、海外では不特定多数の知らない人が集まる場所では、何が起こるかわからないので、危険であるという認識を持っている。自分の持ち物がなくならないという保証などない。

小学校で物がなくなるという事は子どもでも知っている。では、集団生活をする病院・介護施設は安全であるという認識は正しいのか?

日本の大手販売店では、主に少額の品物(サプライ品)が盗まれ、その金額は想像を超える被害となっている。客による万引き意外に、従業員による窃盗もかなりの被害金額となっている。

会社で支給された少額の消耗品(ボールペン等)を持って帰る行為はどう定義する?

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19.災害・火災避難訓練の必要性

23青見 健志

災害・火災が発生し、逃げ遅れれば沢山の犠牲が出るこことは誰もが知っている。

施設で火災が発生した時に、要介護高齢者は支援がないと逃げ遅れるということは誰もが理解できる。責任を持って支援をする仕事をしているのは施設で働く職員である。

もし、あなたが出勤した日に火災が発生したら、何人助けられるだろうか?一緒に出勤している職員は、いざというときに頼りになるだろうか?必要措置を講じず自分だけ真っ先に逃げたら、多くの人が犠牲になり、その後の調査で責任を放棄したことを追及されるかもしれない。

火災・震災は突然発生し、行動一つで命が助かるか否か極限の状態に追い込まれる。発生初期に協力して消火、避難誘導が成功すれば犠牲は防げるが、それぞれがパニックを起こせば、逃げ遅れ、多くの犠牲者を出す結果になる。

介護施設の消防訓練は義務であり、防災マニュアルの作成も必要である。施設で働く職員は、必要な防災訓練を受けているはずなので、いざというときは利用者の安全を守る責任がある。

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20.個人情報の保護・管理

24青見 健志

・個人情報が漏洩すると、どんな問題が起き、誰が困るのか?

病院が抱える個人情報を管理するため、業務上の取り扱いについてマニュアルが作成され、日々厳しく管理されている。しかし、個人情報を取り扱っているスタッフに、実際に漏れた先に何が起こるのか尋ねると、病院の信用低下や法的な罰則を受ける等の理解しかない。

・病院や介護事業所が持つ個人情報は非常に精度が高い

病院にある個人情報はデータに誤りや偽りが少なく、情報の更新頻度も高い。他の業種が管理している個人情報を盗み出すよりも、病院が保有する個人情報の方が極めて有益で魅力的である。そのため、患者情報は常に狙われていると想定して、セキュリティを強化する必要がある。

一般企業が漏洩する個人情報に比べ、病院の個人情報が漏洩した場合、規模を問わず、個人に与える被害は最も大きくなる可能性がある。

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21.個人情報の保護・管理

25青見 健志

・膨大にたまる情報を削除する取り決めも必要

日々の記録を行うことで、情報は日に日に増えていく、気がつけばパソコンの中には膨大な記録がデータとして保存されており、何年も前の必要のないデータも残っている。データを紛失したり、盗難にあったりしたときのダメージは、情報量が多ければ多いほど大きくなる。不必要なデータを削除する取り組みは遅れている。

・個人情報は正確であるほど高額で取引されている

個人情報の入手先が病院・介護施設の場合、その情報を買い取り、販売してはいけないルールがある。しかし、入手先の情報を消すなど加工することで、大手企業やコンサルティング会社、地方の学習塾、宝石販売会社など様々な企業に販売されている。

悪い輩は、寝たきり要介護高齢者の名前、住所、独居か同居、資産額、理解力低下等の情報を手に入れれば、簡単に詐欺、泥棒、強盗を働くことが出来ると考える。

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22.インターネットの利用と管理

26青見 健志

・ネットやSNSを利用した情報発信に関して

インターネットを利用しアクセスすることにより、ウイルスに感染すれば、パソコンの中に入っている情報がすべて流出する可能性がる。一度流出した情報は削除することができない。

また、検索で得た情報が正しいとは限らない。自分に都合の良い情報だけを選択したり、間違った情報を信じたりしやすい。間違った情報を信じて行動すれば、違法、問題行為に繋がることもある。

・インターネットを利用し、検索することで情報を得ることが簡単になった。

ネットを活用した情報発信は、多くの人に施設のことを知らせることが出来るメリットがある。しかし、誤った内容の記載、受取手の誤解を生めば、世界中に拡散され、それを正そうとする人の手により、大量のクレーム電話、いやがらせ等の攻撃、行政への通報、風評被害の拡大など大変な事態になる。情報をアップする前に、部外者も含めた多くの目で内容を確認すべきである。

ネット配信者・施設が悪となり、ネット利用者が正義という構図になれば多勢に無勢

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23.職員満足度と利用者満足度

27青見 健志

・職員満足度が低いと、利用者満足度も低い、その理由は沢山ある

① 職場に不満があると、サービスの質が低下し、利用者満足度も下がる② 職員の意識が低下すれば、職場の環境を良くしようとは働かない③ 不満があれば規則やルールは無視され、職員はそれぞれ身勝手に動く④ 職員間のコミュニーケーションが減り、人間関係の悪化に繋がる⑤ 発生した問題を隠すようになり、報告・連絡・相談は機能しなくなる⑥ ミスやトラブルが多発し、クレームや事故が多くなる⑦ 職員離職率が高くなり、新人職員が増えればサービスの質が低下する。

⑧ 職員の確保が出来なくなり、必要な注意指導が出来なくなりサービスの質が低下する

⑨ その他

職員の満足度が低いと、職場を良くしようという意識が低下する。人間関係が悪化し、離職率が増え、統制がとれなくなればまともなサービスは提供できない。さらに顧客に対して、自分の職場の悪口を言ったり、悪ふざけをしたりして、経営状況がさらに悪化する要因にもなる。職員とは、会社にとって内部顧客という位置づけであり、良い職場に出来るように共に協力していかなければならない。

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24.利用者満足度を測る指標

28青見 健志

・利用者の満足度を測る指標はもっていますか?

近隣の介護事業所と比べ、自分の施設が提供している介護サービスの質は良いのか、悪いのかを調べ、把握しているのか?

自分の施設が提供している介護サービスの質は、利用者にとって質の高いサービスであるか、質が低いのか、そのことを職員は知っているのか?

サービスの質を高めるために必要な取り組みについて、どのような職員研修が必要であるか把握しているか?

取り組みの結果、利用者の満足度を正確に把握し、改善が出来ているのか検証ができているか?

《サービスの質と改善の必要性を、正確に把握できなければ良くはならない》

利用者満足度を高めるために、サービスの質がどれくらいのレベルにあり、どのような改善が必要なのか正確に把握できなければ、結果に繋げることはできない。

利用者満足度調査の結果をどのように受け止め、取り扱うか、組織としての取り決めが必要である。

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25.食中毒・感染等マニュアルについて

29青見 健志

・作成されたマニュアルは本当に機能しているか

感染予防や食中毒のマニュアルは、厚生労働省やインターネットから得られる資料を活用して、作成されていることが多い。

作成されたマニュアルは、それぞれの事業所にとって本当に使えるのか検証されているか?実際に食中毒・感染が発生してからマニュアルが使えないものであると気がついても遅い。

現場の介護職員はマニュアルの存在、マニュアルに沿った行動の重要性を理解できるのか?新人職員やベテラン職員、事務員などがマニュアルを見たときに本当に内容が一定のレベルで理解できるのか検証し、必要に応じて加筆修正しなければならない。

読んで理解できないものは、説明書やマニュアルとは言えない。

内容を読んでもらいどれくらい内容を理解できたのか確認する必要がある。認識のズレは必ず生じるため、模擬訓練など実際に検証を行い、事業所にとって使えるマニュアルにカスタマイズしていく必要がある。

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26.介護保険法の理解

30青見 健志

・介護保険法や基準を理解せず営業する事は危険である

人員基準を正確に把握していない人が勤務表を作成すれば、急なスタッフの休みやシフト変更が発生したときに、人員基準の違反に気が付かずに営業し、そのまま算定してしまうかもしれない。

介護事業所の取り消し事例でも人員基準違反が多く、現場の職員自体人員基準について把握していないケースが多い。管理職や経営者が人員基準の違反を知りつつ不正に請求するケースもあり、それに現場の職員は気が付かない。健全な運営に努める為には、現場職員も含め組織全体で法律を理解し、誤った方向に進まないようにそれぞれが意識を持つ必要がある。

・介護保険の目的を理解する

要介護高齢者の介護をすることだけが介護保険の目的ではない。要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資すること、総合的かつ効率的にサービスが提供されること、自立した日常生活が最大限持続するように配慮したサービスを提供することも介護保険の目的である。国民全体の負担で維持されているため、要介護高齢者の自立を低下させるようなサービスの提供は望ましくない。

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27.介護技能の習得や法律の理解

31青見 健志

ルールも知らない、技能も持たない職員が働く介護の職場を表現するなら

素人集団が集まり、テニスの試合をしている状態

・プレイヤーが素人だとラリーは続かない・まともにテニスボールをラケットで打つこともできない・審判が素人だと、正しい判断は出来ない・ポイントの数え方や勝ち負けの判定ができない・試合をしているプレイヤーも審判も楽しくない

ゲームは成立しないし、お金を払って試合を見ようとは思わない。

テニスの試合を続け、観客に見てもらうためには

・観客が見る価値がある技術をプレイヤーが持っている・白熱したラリーが続き、ぎりぎりの所にボールを打つ・審判が規則(ルール)に則り試合を進行・成立させる・プレイヤーの勝ち負けがはっきりと決まる

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27.介護技能の習得や法律の理解

32青見 健志

・ルールも知らない、技能も持たない職員が働く施設で介護を受ける

・接遇マナーが悪くクレームが発生する・職場環境や人間関係が悪化し、それが利用者介護に波及する・離職率が高く、適切な職員教育が行えない・介護事故が絶えず、虐待や身体拘束も日常的に発生する・ルールや規則は無視され、違法状態になっても誰も気にしない・その他

家族や利用者が、施設の運営管理がどうなっているかを知ることは難しい

・介護職員は介護の技能や法律を知っているプロであると考える・素人が介護している施設に要介護高齢者を預ける可能性はある・質の低い介護でも、施設には一律の利用費と保険料が支払われる・素人が介護を提供した結果、転倒や誤嚥により状態が悪化する・トラブルの発生は、家族の信頼を裏切った結果である

まともな運営管理が出来ていない事業所に要介護高齢者を預ける状態

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27.介護技能の習得や法律の理解

33青見 健志

ルールも知らない、技能も持たない職員が働く施設で介護を受けると

利用者事故、トラブル、紛争が発生する

被害者が生まれ、精神的苦痛、傷害や後遺症による遺失利益が発生

被害者への補償と責任を問われる

加害者は法的な罰則を受け、被害者へ保障を支払わなければならないそして、行政の指導により、認可の有無を判断される。

介護技術向上や法律理解もリスクマネジメントである

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28.関連法律の理解と遵守

34青見 健志

・送迎や職員の通勤に自動車の使用について

送迎中や通勤中に職員が事故を起こし、利用者や歩行者が怪我をすれば、事故を起こした責任は本人にあるかもしれないが、施設は管理者としての責任を問われる。業務として自動車を使わ必要があれば、安全管理の仕事は整備点検に始まり、運転手の体調管理、法律の周知徹底や運転マナーの向上などに渡る。介護事故も交通事故も被害者は発生するため、リスクに対するマネジメントが必要である。

・労働基準法や権利擁護の周知と徹底

職員は労働時間や安全衛生管理など、労働に関する法律を守り、働く職場のルールを守り、そして、介護保険法を守り介護業務に従事しなければならい。

介護保険法が守られていても、職場の秩序や労働基準法が守られていなければ、違法な介護事業所であると認識される。

また、職場のハラスメントや利用者虐待や身体拘束に関する知識と対応を学び、安心して働き、介護を受けることが出来る職場作りを行わなければならない。

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29.事件・事故発生後のリスクマネジメント

35青見 健志

・実際に事件事故が発生した場合のリスクマネジメントまで考えておく

① 利用者や家族への初期対応を誤れば、状況は悪化し、施設への不信感が増すことで、解決への道筋が厳しくなる

② 対応の記録や方法が適切に残され、適切であったと証明されなければ、適切な対応を取っていないと判断されても仕方がない

③ 職員間の意識や認識の統一をはかり、説明会見を行う内容と流れを短時間の間に検討し、間違えることなく実施しなければならない

④ 行政やマスコミへの対応に失敗し、不信感を持たれれば、厳しい批判を受け、根も葉もない風評被害が生まれ拡大していく可能性がある

⑤ 内部で働く職員の精神的なケアが必要となり、施設としての状況説明や今後に向けての方針を説明しなければならない

初期対応を誤れば、被害の拡大に繋がる初期対応に成功していても、その後の処理を誤れば、解決への道筋は厳しくなる

事件事故という被害(証拠)へ、最善の対応をした証明をしなければならない

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30.生産性の向上について

36青見 健志

・少子高齢化による社会保障費の増大の影響

労働人口の減少による医療・介護の財源は減る一方であるが、要介護・認知症高齢者は増え続け、社会保障費は増える一方である。限りある財源をいかに効果・効率的に使い、生産性の高い介護サービスを提供できるかが問われる時代に突入している。

介護事業所に求められることは、多くの要介護利用者介護を低いコストで、質の高いサービスを提供していくことである。コスト削減のためには、知識と技能を持つ職員が協力し、無駄を削減したり、ITを活用したり、介護に関わる生産性の向上を図っていく必要がある。

・離職率の高さは、現場の効率を低下させる要因

離職率が高いと、介護職員の利用者対応力が低下し、日々の業務は回らなくなる。介護職員の経験年数が長ければ長いほど職場に与える影響力は大きくなる。知識、技能、対応力に優れたベテラン職員が、率先して職場の効率化(改革)を図ることで、大きな効果を発揮することができる。

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31.生産性が低下すれば

37青見 健志

・事業所は時代の波に飲まれ消えていく

離職率が高く人手不足に陥れば、利用者に介護サービスを提供することが困難となる。サービスが提供できなければ、介護報酬は得られないので、事業の継続は出来なくなり、閉鎖の道をたどるしかない。

・介護職員も数字を意識しないと良くはならない

生産性を向上していくためには、経営に関わる数字を把握しなければならない。社会保障費の増加により、介護報酬は下げざるを得ない。低い報酬で効率的に経営を行い、職員の給与を払い、利益を出していくためには、個々の職員が様々な数字を意識し働いていく必要がある。財源が減れば減るほど、多くの利用者に介護サービスを提供し、経費の無駄を減らすため紙一枚、ボールペン一本を大切に使い、運営していかないと、生き残りは難しい。

リスクマネジメントの最終目的は、会社が未来に必要とされ続け生き残ることである。

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32.まとめ

38青見 健志

・介護施設のリスクマネジメントとは

リスクは危険という意味で、要介護高齢者に関わる事故の防止について目が行きがちである。転倒リスクの高い高齢者が自立した生活を得るために、積極的な活動を促せばリスクは高くなるため、動かさない方が安全であるという消極的な考え方も生まれる。リスクマネジメントにより、介護サービスの質が低下してしまうことは本末転倒である。

リスクマネジメントの本当の目的とは、事業所のサービスの質が低下することで信用が下がり、事業の継続が危ぶまれる事態を予防することである。

質の高いサービスを提供できる施設では、事故が限りなく少なく、事故後の保障や対応もしっかりと行える。さらに、介護職員の知識や技能も高く、利用者・職員満足度が高い。経営も安定しており、地域の社会基盤を支える一事業所として信用されている。