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鶏の大腸菌症の病理と病理発生 誌名 誌名 鶏病研究会報 ISSN ISSN 0285709X 巻/号 巻/号 521 掲載ページ 掲載ページ p. 24-34 発行年月 発行年月 2016年5月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

鶏の大腸菌症の病理と病理発生鶏の大腸菌症の病理と病理発生 誌名 鶏病研究会報 ISSN 0285709X 巻/号 521 掲載ページ p. 24-34 発行年月 2016年5月

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Page 1: 鶏の大腸菌症の病理と病理発生鶏の大腸菌症の病理と病理発生 誌名 鶏病研究会報 ISSN 0285709X 巻/号 521 掲載ページ p. 24-34 発行年月 2016年5月

鶏の大腸菌症の病理と病理発生

誌名誌名 鶏病研究会報

ISSNISSN 0285709X

巻/号巻/号 521

掲載ページ掲載ページ p. 24-34

発行年月発行年月 2016年5月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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〈 解説 〉

鶏の大腸菌症の病理と病理発生

中村菊保

(株)新日本科学,〒104-0044東京都中央区明石町 8-1

要約

鶏の大腸菌症はブロイラー養鶏産業に損害を与える主要な疾病のひとつである。大腸菌は鶏の消化器内に

正常細菌叢として生息するために,鶏の環境から完全に排除することはむずかしい。病型としては,急性敗

血症型,亜急性紫膜炎型,大腸菌性肉芽腫型,皮膚型,腸管型に分類される。また,採卵鶏成鶏での発生も

みられるようになった。執筆者らの知見も含めて,本症の病理と病理発生を中心に解説する。

キーワード:鶏,大腸菌症,病理,病理発生

はじめに

1894年に Lignieresが世界で最初に鶏の大腸菌症の報告

をしたとされている67)。わが国では井上ら四)が採卵鶏ひな

の大腸菌症野外発生例を初めて報告した。それによると,

肉眼病変は肝臓壊死,腸の出血,腺胃・筋胃の出血,心冠

部出血,頭部頚部出血,下顎・肉垂の水腫,組織学的には,

肝臓の菌塊を伴う巣状壊死,心冠部出血,腸・腺胃・筋胃

出血,牌臓爽組織の膨化,腹鼻甲介軟骨壊死と粘膜の限局

性壊死をみとめた。細菌分離では, 088, 015, 021など

の大腸菌が純培養状に分離された。このように,肉眼所見,

組織所見については,通常大腸菌症でみられる病変と異な

り,一見家禽コレラや高病原性烏インフルエンザでみられ

るような,急性出血性壊死性病変であった。分離大腸菌

088, 015, 021の3株のうち, 088と021の度下接種試

験では,心外膜炎,肝被膜炎,腸粘膜固有層の出血,牌臓

の爽組織の膨化がみられた。これがわが国最初の鶏の“大

腸菌症"野外発生例であるとされている70)が,病変からみ

ると,はたして大腸菌症であったかという疑問も残る。な

お,その後,井上ら19)は,採卵鶏ひな (12-37日齢)にお

いて心外膜炎,肝被膜炎,気嚢炎など,大腸菌症に特徴的

な病変を有する野外症例を報告している。細菌学的には,

擢患鶏より 02大腸菌を分離している。広田ら16) は30-50

日齢のブロイラーで,尾田らω)は, 30日齢前後のブロイラー

において,心外膜炎,肝被膜炎を認めた。前者は血清型

0-2大腸菌,後者は血清型 050の大腸菌が病変部から分離

された。

当初,本症は重要な疾病ではなかったが, 1965年以降

米国からブロイラーひなが導入され,ブロイラー飼育が始

まり,ウインドウレス鶏舎内で,平飼い,密飼いで集団飼

2016年5月12日受付鶏病研報52巻 l号, 24~34 (2016)

育されるようになった近代養鶏で,大腸菌症はブロイラー

における最も重要な疾病のひとつとなっていった。

鶏の大腸菌症は基本的には敗血症であり,全身の臓器に

病変をつくることが特徴的である40)。ブロイラーにおいて,

肉眼的に心膜炎,肝被膜炎がみられた場合には大腸菌症で

ある可能性が大きい。サルモネラ症34) 緑膿菌感染22)でも

同様の肉眼病変を示すが,野外でみることはほとんどない。

よって,食鳥検査で心膜炎,肝被膜炎を確認した場合に大

腸菌症と診断している検査機関は多い。

大腸菌症の病理については Grossl4)がDiseasesof Poultry

で,臓器別の分類をし, ChevilleとArp5) は病期別の分類

をしている。また,最近では, Barnesら3)が詳細な臓器

別の分類をしている。この解説は鶏の大腸菌症の病理とそ

の病理発生について述べる。

鶏の大腸菌症に関する本会報での解説記事としては,村

瀬39)が採卵鶏成鶏の大腸菌症について解説している。また,

今回大腸菌症の皮膚型として挙げた,頭部腫脹症候群お)

蜂寓織炎お)についての解説記事もある。これらの解説記

事も参照されたい。

1. 大腸菌症の病理

(1)ブロイラーひなにおける大腸菌症の病型

長く Diseasesof Poultryで大腸菌症の執筆者であった

Grossl4)は,大腸菌性敗血症,大腸菌性肉芽種,腹膜炎,

卵管炎,関節炎,気嚢病,腰帯炎,全眼球炎匪の 8型に分

類した。急性敗血症,紫膜炎,卵管炎,眼球炎などの分類

をしていた。 ChevilleとArp5)は烏の大腸菌症を急性敗血

症,亜急性紫膜炎,慢性肝炎・牌炎・腸炎(大腸菌性肉芽

腫)の 3つに分類している。また, Barnesら3) は表2の

通り,局所感染と全身感染に大別し,更に細かく分類して

いる。しかし実際にわれわれが遭遇するのは,ほとんど

が亜急性紫膜炎型であること,あまりに細かくて,混乱す

24一

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ることなどから,野外の診断上はあまりに有益とは思われ

ない。個人的には, ChevilleとArp5)の分類が簡潔であり,

これに皮膚型や腸管型を追加するのが適当と考える(表 1)。

1)急性敗血症

本病型では,急性であるために襲膜での病変がみられな

い。組織変化は牌臓の細菌塊,線維素渉出を伴う ω)。この

病型は 1週齢までのひなでみられることが多い。急性経過

のために,大腸菌が紫膜で病変をつくる前に死亡するため

であろう。耐過すると亜急性紫膜炎へ移行する。

2)亜急性築膜炎型

ほとんどの鶏はこの病型を示す40)。襲膜系(心膜,心外

膜,肝被膜,消化管築膜など)に線維素化膿性の炎症がみ

られる。時に細菌塊を伴う。呼吸器で増殖した大腸菌が肺

の毛細血管から血液中に侵入し細菌血症あるいは敗血症

となり,全身に(心膜,心外膜,肝被膜,腸管柴膜,眼球,

髄膜,子宮,関節,臆鞘,卵黄嚢など)に波及すると考え

表1. 鶏の大腸菌症の病型 (CheviIleand Arp, 1978)5)を改変

急性敗血症型 (acutecolisepticemia)

亜急性線維素化膿性柴膜炎型 (Subacutefibrinopurulent serositis)

大腸菌性肉芽腫

皮膚型 (Skintype)

腸管型 (Intestinetype)

第 52巻 2016 年

られている叫)。免疫組織学的に接種された大腸菌は全身臓

器に確認される48)0 PiercyとWest68)は,ブロイラーひな

に大腸菌を気嚢内接種し接種後3時間で細菌血症を確認

し接種後96時間で 75%のひなの生存を認めた。大腸菌

は接種気嚢で最も高頻度に分離され,心膜液,肝臓,心血,

反対側気嚢の順に少なくなった。接種側の気嚢では,組織

病変は 3時間後,肉眼病変は 6時間後にはみられた。 72

時間までには,胸部から腹腔に病変が波及した。彼らは,

気嚢病変から腹部の心臓,肝臓の襲膜病変の波及は血行性

ではなく,気嚢病変から直接波及したと主張した。基本的

には敗血症性に病変が波及し気嚢病変が強ければ,近接

する心膜や肝被膜に直接波及することもあるかもしれない。

呼吸器病変とリンパ球減少.なお,急性敗血症型,亜急

性紫膜炎型とも共通する背景病変として,呼吸器病変のほ

かに,リンパ性器官におけるリンパ球減少がみられるω)。

これは免疫能の低下を示唆する所見であり,大腸菌感染等

に対して感受性を増加させる。伝染性フアブリキウス嚢病,

マレック病,鶏貧血ウイルスなどのウイルス感染あるいは

敗血症のストレスによるものと考えられる岨)。なお,大腸

菌による敗血症によってもリンパ器官において,急速な重

度のリンパ球減少がみられる41)。

眼球炎.眼球炎は敗血症を起こす細菌感染症でみられる。

サルモネラ症における眼球病炎がよく知られている。同様

表 2. 家禽の大腸菌症の病型 (Barnesら, 2008)3)

1. 局所感染

大腸菌隣帯炎・卵黄嚢感染 coliform omphalitis/york sac infection

大腸菌蜂禽織炎(炎症性食烏処理) coliform cellulitis (infiammatory process)

頭部腫脹症候群 swollen head sydrome

下痢病 diarrheal disease

生殖器大腸菌症(急性陸炎)venereal colibaciIlosis (acute vaginitis)

大腸菌性卵管炎・腹膜炎・卵管腹膜炎 coliform salpingitis/peritonisitis/salpinogo-peritonitis

大腸菌性精巣炎・精巣上体炎・精巣上体精巣炎 coliform orchitisl epididymitisl epididymo-orchitis

2. 全身感染

大腸菌敗血症 colisepticemia

呼吸器由来(気嚢病,慢性呼吸器病) respiratory -origin (air sac disease, choronic respiratory disease, CRD)

腸由来 Enteric-origin

出血性敗血症 hemorrhagic speticemia

新生子 neotatal

採卵鶏 layer

アヒル duck

大腸菌敗血症後遺症 colisepticemia sequelae

髄膜炎・脳炎 meningitisl encephalitis

全眼球炎 panophthalmitis

骨髄炎 osteomyelitis

脊椎炎 spondylitis

関節炎・多発性関節炎 arthritis/polyarthritis

滑膜炎・臆鞘炎 synovitis/tenosynovitis

胸骨滑液包炎 sternal bursitis

慢性線維性心膜炎 chronic fibrosing pericarditis

卵管炎(若年性) salpingitis (juvenile)

大腸菌性肉芽臆 coligranuloma

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鶏病研究会報

に大腸菌もサルモネラ症と同様の眼球炎をつくる。なお,

眼球炎のみつくることはなく,亜急性紫膜炎型の鶏にみら

れる,病変のひとつである。 実験的に大腸菌を接種鶏で

眼球病変をつくることは古くから言われてきた13)。しかし

詳細な病理学的検査はされてなかった。 Nakamuraと

Abe43)は2-10週齢の SPF気嚢内に大腸菌接種し,高頻度

に眼球病変ができることを報告した。主な眼球病変は,前

房出血,虹彩出血,前房蓄膿,角膜炎,ブドウ膜炎である。

NakamuraとAbe45)は,大腸菌の抽出物や市販LPSのSPF

鶏(免疫抑制剤処理された鶏)への接種実験から, LPS

により虹彩出血が起こり,その結果前房出血がみられるこ

とを示唆した。通常,鶏は内毒素に対して非常に抵抗性で

あり,正常な鶏では内毒素を接種しても,臨床症状,病変

等はおこらない55)。野外例での眼球炎の発生報告はほとん

どない。実験例では,死亡した鶏のほとんどに出血性ある

いは化膿性簿病変がみられることから,野外例で眼球をあ

えて検査することは少ないことを示していると思われる。

関節炎.大腸菌に起因する滑膜炎(関節炎)ついての野

外発生報告は少ない。 Grossl2)は ほとんどの関節の滑膜

炎 (2羽)示し,そのうち腎臓の膿蕩 (1羽),肝臓の膿蕩

(1羽)を示す症例において, 015大腸菌を腎臓から分離

した。この大腸菌を 5週齢の鶏に静脈内,気嚢内,筋肉内

接種した。気嚢内および筋肉内接種鶏では病変は確認でき

なかった。静脈内接種鶏 12羽では,すべての鶏で関節病

変を示した。 12羽中 5羽では,腎臓周囲に膿蕩がみられた。

腎臓病変は股関節病変から波及したものと思われた。 2羽

の鶏で,肩関節から波及したと思われる浅胸筋と深胸筋の

聞に膿蕩病変がみられた。なお,大腸菌性の滑膜炎では,

ブドウ球菌性滑膜炎と異なり,足関節, N止関節より膝関節,

腕関節,肩関節がより擢患しやすいとしている。南川らお)

は72日齢の雄のブロイラ一種鶏ひなにおいて,足関節炎

とE止痛を報告している。心臓,肝臓の病変はみとめられて

いなしミ。肝臓,牌臓,腎臓肺祉癌から 02大腸菌が分

離されている。関節部の細菌分離と病理検査は実施されな

かった。また,岡本ら61) は,ブロイラーで 6~9 週齢で足

関節炎, N止列の湾曲がみられた。足関節病変部から 078

大腸菌が分離された。組織学的には,足関節滑膜の水腫,

偽好酸球浸潤がみられた。恒吉ら73)は, 1~2 週齢のブロ

イラーひなにおいて,化膿性骨髄炎・関節炎をみとめた。

一部の鶏では,心膜の肥厚や肝被膜の線維素性渉出物の付

着がみられた。骨髄および関節部病変から,型別不能の大

腸菌が分離された。話)は化膿性関節炎を示すブロイラーの

足関節から大腸菌およびブドウ球菌を分離している。

我々も内臓病変は亜急性紫膜炎型の鶏の化膿性関節から

大腸菌分離を試みたが,分離されず,ブドウ球菌が分離さ

れた経験がある(未発表データ)。よって,大腸菌症の病

変がある鶏に関節炎があっても,必ずしも大腸菌によると

は限らない。関節炎から大腸菌を分離する必要がある。大

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腸菌性の関節炎が野外で発生しているかどうかは明らかな

報告はない。

髄膜炎.大腸菌症における髄膜炎についての野外発生報

告はほとんどない。 Nakamuraら40)は大腸菌症野外例で,

l例のみに化膿性髄膜炎をみとめている。粕谷μ)は,海外

から輸入され,検疫中に死亡した新生ひな(採卵用種鶏)

の髄膜炎を報告している。 1 日齢~3 日齢で 17.4% のひな

が死亡した。組織学的に脳脊髄の髄膜で細胞退廃物やグラ

ム陰性短梓菌を伴うマクロファージ,偽好酸球浸潤がみら

れた。脳室,脊髄中心管でも化膿性変化がみられた。小脳

分子層では軽度のグリア細胞増生がみられた。内臓では,

心外膜,消化器禁膜でグラム陰性梓菌を伴った線維素性化

膿性変化がみられた。また,卵黄嚢でもグラム陰性梓菌を

伴う巣状壊死がみられた。免疫組織学的に,大腸菌血清型

018抗原陽性であった。細菌学的には,病変部から血清型

0-18大腸菌が分離されている。

3)大腸菌性肉芽腫

家禽の大腸菌性肉芽腫は 1945年スウェーデンの Hjarre

とWrambyl7)が最初に報告し Hjarre病とも言われていた。

その後散発的に報告があったが,主に七面鳥や鶏でみられ

る。 Trylichら72)は病理学的に,肝臓,盲腸,腸管,腸間膜,

牌臓,心臓,腺胃,肺,の多発性肉芽腫が特徴的で,病変

部から大腸菌が分離された。なお,分離大腸菌を 4週齢の

鶏に筋肉内接種および静脈内接種して,再現を試みたが失

敗に終わった。本症の発生はごくまれであり,とくに問題

とならないが,烏結核,真菌性肉芽腫の肉眼所見に類似す

ることから,それらの類症鑑別として重要で、ある。

わが国では,小野臼)が鶏の腸管での大腸菌を伴う肉芽

腫を報告している。平飼飼育の 40日齢採卵鶏で, 7000羽

中130羽が食欲不振,削痩,白色下痢を示し死亡した。

空回腸下部および盲腸紫膜面に針頭大から米粒大の白色斑

が多数みられた。ファブリキウス嚢は萎縮し, PCRで伝

染性ファブリキウス嚢病ウイルス遺伝子が検出された。腸

管の粘膜上皮,粘膜固有層,筋層におよぶ肉芽腫が多数み

られた。中心の壊死性退廃物内にはグラム陰性梓菌がみら

れ,免疫組織学的には,大腸菌 0114および06抗原陽性

であった。チールネルゼンの抗酸菌染色では陰性であった。

4)皮膚型

かつては,皮膚型は大腸菌症の範障に入っていなかった

が,現在は大腸菌症の一分症と考えられている57)。大腸菌

性蜂寓織炎と頭部腫脹症候群が挙げられる。それぞれ,体

幹,頭部の皮下組織に化膿性炎症を示す病変である。主に

皮膚に常在する大腸菌 (078など)が皮下に侵入し,皮下

組織で増殖し化膿性変化を示す。とくに食烏検査時に摘

発される大腸菌性蜂寓織炎は全廃棄されるため,経済的損

失も大きい。

大腸菌性蜂寓織炎.本症は 1984年に英国の Randallら69)

が,ブロイラーの新しい皮膚病変として最初に報告した。

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蜂禽織炎 (cellulitis),炎症性食烏(inflammatoryprocess),

あるいは大腸菌が主な原因であるため,大腸菌性蜂寓織炎

(coliform cellulitis, Escherichia coli cellulitis)と呼ばれて

いる。わが国では,板倉却)が最初に本病を,渉出性深層

性皮膚炎として紹介し,大腸菌の創傷感染によるものであ

ると示唆している。大腸菌性蜂寓織炎は主に食烏検査の時

に発見される。外見上では病変は分からず,皮膚を剥離し

た後に発見される。米国では年間 4000万ドル59) ブラジ

ルでは 1000万ドル6)の損害があると推定されている。わ

が国での正確な統計は不明であるが,全廃棄となるため,

発生が多い場合には相当の損害となる。

St-HilaireとSears71)は,カナダのケベック州の食鳥検

査で 1998 年 4 月 ~200l年 4 月の 3 年間に蜂街織炎で摘発

された症例の傾向を調べた。蜂寓織炎の平均擢患率は0.94%

であった (0.84~1.03 %)。

Elfadil, ら8) は,カナダの南オンタリオ州のー箇所の食

鳥検査所で処理された 110鶏群を調べ,蜂寓織炎病変とそ

の発生要因について研究した。 295例が蜂商織炎として処

理された。それらは, 110鶏群のうち 65鶏群であった。

病変はほとんど (87%)が片側性であった。病変の大多数

(92%)は腹部であった。肉眼病変から,病変の 69%は重

度, 26%は中程度, 5%は軽度と分類された。組織学的検

査された 149病変のうち, 74%は慢性, 21 %は進行中, 5%

は軽度で急性病変と分類された。

Onderkaら63) はブロイラーの大腸菌性蜂嵩職炎につい

て,全身疾病および内臓組織病変の相関関係や剥皮方法に

ついて研究した。カナダのアルパータ州では蜂寓織炎が平

均 0.5%と最も高い。全身感染の恐れがあるので,全廃棄

としている。蜂禽織炎で処理された 102羽のうち, 83.3%

で大腸菌が分離された。心臓の 11.2%で大腸菌が分離され

た。肉眼病変は,心膜炎,卵管炎,関節炎が,それぞれ

11.2%, 6.7%, 2.9%でみられた。分離した大腸菌の血清型

別より,少なくとも半数以上で,内臓感染は蜂筒識炎とは

関連しなかった。内臓組織病変と細菌分離の聞の相関関係

はなかった。蜂禽織炎病変の大きさは 0.55~218.9cm2で

あった。

Barbieriら2) は,ブラジル南部のブロイラー鶏の重度の

蜂寓織炎から分離された 144株の大腸菌の性状を調べた。

15種類の抗微生物薬に対する感受性の解析で,テトラサ

イクリン (70%),スルホンアミド (60%)以外の薬剤で

は耐性は 30%以下であった。 34の毒力関連遺伝子の遺伝

子型別で,すべての株は付着,鉄利用,血清耐性の毒力要

因を有していた。これらは,烏病原性大腸菌 (APEC)の

特徴である。 ColVプラスミド関連遺伝子 (cvi/cva,iroN,

iss, iucD, sitD, traT, tsh) は特に高頻度でみられた (66.6%~

89.6%)。系統樹解析で,分離株はD群(47.2%),A群(27.8%),

B2群 (17.4%),B1群 (7.6%) に分類された。 B2群分離

株は最も多数の毒力関連遺伝子を含んでいた。 ARDRA法

第 52巻 2016 年

によるクローン相関関係の解析で, 57%あるいはそれ以上

に類似していた。分離株の毒力は1日齢ひなで確認された。

ほとんどの株 (72.9%) は7日以内にひなを殺し 65株

(38.1%)は 24時間以内にそれらのほとんどを殺した。毒

力慣例遺伝子と病原性スコアとの聞の有意な相関関係を調

べ, ibeA, gimB, KpsMTIIが毒力を増加に慣例していた。

picは毒力を減少させた。 ibeA, gimB and KpsMTIIは新

生子髄膜炎大腸菌 (neonatalmeningitis E. coli, NMEC)

に関連する遺伝子なので, APECのNMEC遺伝子が株の

毒力を増加させることを示唆している。

Paixaoら66)は,ポルトガルで大腸菌症のために死亡した

ブロイラー種鶏由来 66株,健康なブロイラー糞由来 61株

鳥病原性を調べた。ブロイラ一種鶏では分離大腸菌は 02,

018, 078に型別されたが, 078が最も多かった (58%)。

また,次のような 11の毒力遺伝子の存在をマルチプレック

スPCRで調べた:1)アルギニン・スルシニルフエラーゼ

A (astA) ; ii)大腸菌へム利用蛋白 A(chuA); iii)コリシン V

AIB (cvaAIB) ; iv)線毛マンノース結合 1型 (fimC);v)

鉄のエルシニアパクチン取り込み A(fyuA); vi)鉄抑制

高分子量蛋白 2(irp2) ; vii)血清生残率増加(iss); viii)大

腸菌鉄取込み系 D(iucD) ;ix)腎孟腎炎関連線毛 C(papC);

x)温度感受性血液凝集素 (tsh), and xi)空胞性自己輸

送毒素 (vat)。その結果,すべての遺伝子が病原性大腸菌

および非病原性大腸菌株にあった。鉄取込み関連遺伝子,

血清生残遺伝子が APECでより多かった。 tshおよび毒素

遺伝子を除いて,付着遺伝子も, APECでより多かったo

astAとtshを例外として, APEC株は大多数の毒力関連

遺伝子を有していたo fimCは最も多い遺伝子で, avian

faecal Escherichia coli (AFEC)とavianpathogenic Esch-

erichia coli (APEC) APECで,それぞれ96.97,88.52%に

みられた。 1つ以上の鉄伝達系の保有が APEC生残に重

要な役割を演じるように思われた。

頭部腫腹症候群.頭部腫脹症候群 (swollenhead syn-

drome, SHS)は,鶏の頭部(特に目の周囲)の腫脹を特

徴とする疾病である。主にブロイラーでみられる。本症は

1984年に MorleyとThomson37)が南アフリカで最初に報告

後,世界各地で確認された。ちょうど,この時期に七面鳥鼻

気管炎ウイルス (turkeyrhinotracheitis virus, TRT virus)

の鶏群での汚染とリンクしていたこともあり, TRTウイ

ルスによる病変と認識されるようになった。すなわち,

TRTウイルス感染により,呼吸器感染を起こしそれに

よって大腸菌が頭部皮下組織で増殖し蜂寓織炎をおこす

と考えられた。したがって,以前の教科書では, TRTウ

イルス感染症として挙げてあった。しかし TRTウイル

スの鶏への実験感染の結果弘56) TRTウイルスフリーの

米国での発生などから,最近では大腸菌症のひとつの病型

(皮膚型)として考えられている。なお,現在では TRTウ

イルスはトリメタニューモウイルス (avianmetapneumo-

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鶏病研究会報

virus) と呼ばれている。わが国では,浦本ら74)が最初に

SHSの発生を報告した。 21-35日齢のブロイラーにおいて,

顔面腫脹がみられた。組織学的には,頭部皮下の水腫,膿

蕩形成,細胞浸潤がみられた。病変部からは主に大腸菌が

分離され,ブドウ球菌も分離された。擢患群では TRTウ

イルスに対する血清抗体の上昇がみられた。 Nakamura

ら53)は,わが国でみられた SHSの病理について報告した。

眼球周囲および下顎部皮下組織の水腫が特徴的であった。

組織学的に,頭部とくに眼球周囲組織の皮下組織において,

巣状肉芽腫性病変を伴うび漫性線維素化膿性炎症が特徴的

であった。上部呼吸器病変(鼻炎,眼寓下洞炎,気管炎)

は常にみられた。このことより,鼻腔,眼寓下洞周囲から

皮下組織に大腸菌が侵入した可能性を示した。

なお, SHSは大腸菌感染によるものが大部分であるが,

採卵鶏でみられる SHSはパスツレラ菌によるものが多い。

また,ブロイラーやブロイラ一種鶏でのパスツレラ菌によ

るSHSも報告されている29)。

スペインの Majoら33) は,七面鳥鼻気管炎ウイルス

(TRTV) と大腸菌 078:K80をSPF.鶏に点眼および鼻

腔内接種し鶏の呼吸器における組織病変とウイルス抗原

を調べた。すべての接種鶏では 重度の鼻炎を示した。そ

のほか,接種5日後の 3羽中の 1羽に眼嵩周囲の水腫,線

維素性気嚢炎・心膜炎を示した。接種5,7日後で, 6羽

中3羽に頭蓋骨の airspaces内に化膿性渉出物を認めた。

TRTVは一時的な病原体であり,大腸菌の増殖を誘発す

るとした。今回みられた病変は SHSの初期病変であり,

SHSがTRTVと大腸菌の混合感染によるという仮説を示

唆するとした。

ドイツの Anungら1)は,市販ブロイラーに七面鳥由来

A亜型およびB亜型のトリメタニューモウイルスを接種

し臨床症状が誘発されるかどうかを調べた。臨床的には,

元気消失,咳,鼻汁,泡だ、った眼が接種4日後にみられ,

5日後には眼街下洞腫大が続いてみられた。 A亜型ウイル

ス接種群より B亜型接種群で,より多い鶏で臨床症状が

みられた。 aMPVに対する血清 ELISA抗体は接種後

10-11日に検出された。 B亜型群は A亜型群に比較して,

広いかっ長い組織分布を有していた。組織病理学的病変が,

aMPV接種ブロイラーの呼吸器組織,ハーダー腺,涙腺

などの副眼球腺でみられ,眼街下洞の腫大を伴うので,

aMPVがブロイラーの主な病原体であることを示唆する

と報告している。(なお,頭部の腫脹ではなく,眼筒下洞

の腫脹である)。

韓国の Kwonら30) は, 2004-2008年に鶏の口腔咽頭ス

ワブあるいは鼻甲介材料780サンプルをリアルタイム PCR

検査で, 12株の A亜型 aMPV,13株の B亜型を検出した。

2株の A亜型 aMPVがベロ細胞継代で分離された。化学

的に免疫抑制処理および未処理の 31日齢の SPF鶏に

aMPV Ck/ A/Kr/1336/06株を 104TCID50/0.l mL点眼鼻

腔内接種した。免疫抑制処理群,未処理群とも鶏では,鼻

汁がみられたが,頭部の腫脹,組織学的変化ともみられな

かった。

ヨルダンの GharaibehとShamounll)は,鶏由来B亜型

aMPVを7週齢の鶏,若いハト,スズメに接種し,病原

性を調べた。鶏ではごく軽度の気管捻髪音を示し,ハトと

スズメは無症状であった。接種後2,5日では,ウイルス

抗原は鶏の鼻腔,気管,結膜の呼吸器上皮細胞の線毛冊子

縁にみられた。ハトでは, 2, 5日後に気管のみに抗原が

みられた。スズメでは,抗原陽性細胞はみられなかった。

鶏は 21日後に接種した 15羽の鶏中 14羽に血清抗体がみ

られたが,ハトとスズメは陽転しなかった。

5)腸管型

牛,豚では大腸菌による下痢は重要な疾病である。しか

し鶏では大腸菌による下痢に関するするかどうかは明ら

かでない。牛,豚の大腸菌性下痢の分離の中で,腸管接着

性微繊毛消滅性大腸菌 (Attachingand effacing Escherichia

coli, AEEC)による下痢がある。鶏における AEEC感染

の野外報告はわが国で2例あるが,いずれもコマーシャル

鶏でなく地鶏および愛玩鶏であり,特殊な発生であり,臨

床的に下痢を確認していない。また,鶏の大腸菌症から分

離された大腸菌株では,下痢に関与するエンテロトキシン

等を産生する株は乏しく,この点でも牛,豚とも異なって

いる。

Fukuiら10) は,世界で初めて野外の 6羽の 65日齢で発

育不良,死亡を示した名古屋種ひなの腸管での AEEC大

腸菌感染を報告した。腸管の腸上皮細胞表面に多数の

0103抗原陽性のグラム陽性短梓菌を確認した。電子顕微

鏡的には,腸上皮表面に多数の短梓菌が接着し,接着部の

微繊毛は消失していた。細胞膜の一部は接着する細菌と陥

凹 (cupinvagination, )あるいは台座状突出 (pedestral-like

protrusion) を形成していた。細菌学的にも,鶏の空腸内

容から多数の血清型 0103大腸菌が分離された。マレック

病および十二指腸から空腸・回腸に Eime1旬 σceruvuli仰

寄生が併発していた。

小島ら27)は, 122日齢の愛玩鶏2羽において,コクシジ

ウムおよびクリプトスポリジウム寄生を伴う AEEC大腸

菌感染例を報告している。臨床的に下痢は確認されていな

い。組織学的に,空腸,回腸,盲腸膨大部の粘膜上皮細胞

表面に多数のグラム陽性梓菌の付着を確認し,電子顕微鏡

検査によって腸粘膜上皮表層に短梓菌が接着し,接着部の

微繊毛は消失していた。細菌検査でも糞便から血清型

0103, eaeA遺伝子 (AEEC特有の遺伝子)を保有する大

腸菌が分離された。十二指腸から空腸,回腸,盲腸におい

て,EimC1旬。ceruvulinaの重度寄生がみられた。また,フア

ブリキウス嚢,腸管,肺,気嚢にクリプトスポリジウム寄

生が確認された。

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(2)成鶏の大腸菌症

大腸菌症は通常ブロイラーで発生する。なぜなら,ブロ

イラーでは平飼いであり,敷料の上で糞便を垂れ流し,糞

便の上で生活している。よって,環境に病原体が常時いる

ことになる。一方,採卵鶏ではケージ飼育なので,糞便は

ケージを通過して,糞ベルトで運ばれる。一応,鶏と糞便

が分かれるが,厳密にはケージに糞便が付着したり,糞ベ

ルトに付着した糞が回転時に上から下へ落下することなど

から,完全には糞便の隔離はできない。 Dhi1lonと]ack7)

によって成鶏の大腸菌症が最初に報告されている。ケージ

飼育の採卵鶏の農場で 22週齢から発生し死亡率は 6.83%

と4.27%であった。別の農場の 40週齢と 110週齢の採卵

鶏では,死亡率 7.8%であった。病変としては,線維素性

心膜炎,肝被膜炎,卵墜性腹膜炎,肺のうっ血がみられた。

病変部より 085大腸菌が分離された。わが国では,兼子

らお)が採卵鶏成鶏において卵墜性腹膜炎,肝被膜炎,心

膜炎をともなって,急死した(死亡率 3.2%)症例につい

て最初に報告した。病変部から 078大腸菌が分離された。

急性敗血症型.小泉らお)はケージ飼育された 75週齢の

採卵用成鶏が急死する症例の病理を報告した。肉眼的な病

変としては,きわめて軽度の肝被膜炎以外はみられなかっ

た。組織学的に,牌臓のi慮胞と爽組織の線維素渉出を伴う

壊死,肺・肝臓等の線維素性血栓がみられた。全身臓器か

ら大腸菌 078が分離された。この症例は大腸菌症でみら

れる襲膜炎が明らかでなく,急死することより,高病原性

烏インフルエンザを疑われた。急性敗血症型を示す症例で

あった。

E急性襲膜炎. OzakiとMurase65)は,死亡数の増加し

た鶏群の 69週齢の採卵用成鶏4羽で心膜炎,心外膜炎,

気嚢炎,卵管炎がみられた。 2羽の鶏で,肉眼的に卵管粘

膜は水腫性に肥厚し,チーズ様物が付着していた。細菌学

的には. 025大腸菌あるいは型別不能大腸菌が3羽の鶏か

ら分離された。このほか,肝臓,心臓,気嚢からも 0125.

0153. 025. 型別不能大腸菌が分離された。残念ながら,

組織学的検討はされていない。

卵管炎・腹膜炎.米国の Vandekerchoveら75)は,ケー

ジ飼育採卵用成鶏の大腸菌症について報告した。通常の採

卵用成鶏の鶏群の週間死亡率は通常 0.3%であるに対して,

大腸菌症擢患鶏群では. 1.71 %であり,大腸菌症による積

算死亡率は 9.19%に達した。それらの発生は臨床症状もな

く,急性経過で起きた。腹膜炎,腹腔内の卵黄物質の沈着,

多発'性襲膜炎が主な病変で、あった。デンマークの Olsenら62)

は,採卵用成鶏で高死亡率,産卵低下,発育不良による経

済的損失を示した卵管炎および腹膜炎の発生を報告してい

る。大腸菌による死亡率増加を示す 8農場由来 322羽の採

卵鶏で. 3つの病型がみられた。すなわち,敗血症病変,

慢性卵管炎・腹膜炎,敗血症病変伴う慢性卵管炎・腹膜炎

である。異なった病型から分離された 100株の大腸菌は遺

- 29

第 52巻 2016 年

伝的性状を調べられた。 10サブミッションのうち 6では

同じクローンであった。病型に特別な系統,病原遺伝子は

なかった。最も重要な毒力遺伝子はクローン内および非ク

ローン内発生から証明され,系統および毒力遺伝子に関す

る主な相違は病型の問ではなかった。多発クローン発生で

はカンニパリズムがよりしばしば観察された。鳥病原性大

腸菌の新しい病型は病変,感染経路,プラスミド関連遺伝

子. ST95の高い頻度,系統B2に属する他の株を含む毒

力遺伝子の高い相向性に基づくことが示唆される。

米国の ChaudhariとKariyawasam4) は. 56週齢の採卵

用成鶏に 2-3mlの卵黄を腹腔内に接種し,その後 109CFU

の大腸菌 (078)の卵管内接種し,卵黄性腹膜炎を実験的

に引き起こした。組織学的には,卵巣および卵管において

単核細胞浸潤,水腫などの重度の炎症性変化を示しこの

ほか,軽度の肝被膜炎,心膜炎がみられた。腹膜,卵巣,

卵管,肝被膜,心膜から大腸菌が分離されている。

オランダの Landmanら32)は,大腸菌性腹膜炎症候群 (E.

coli peritonitis syndrome. EPS) で死亡した新鮮が骨髄

から大腸菌を分離した。大腸菌はパルスフィールドゲル電

気泳動 (PFGE)によって,遺伝子型別された。型別は疫

学的重要であり,自家ワクチンの使用を検討するなら,同

様に重要で、ある。 EPSに擢患した鶏は採卵鶏3農場,ブ

ロイラ一種鶏 1農場の内,それぞれ 1農場ずつみられた。

農場別に発生していたように思われた。 6群が検索され,

採卵鶏 1農場およびブロイラ一種鶏 I農場由来の計2鶏群

が検査された。各鶏群 9-16羽から分離された大腸菌は遺

伝市型別が調べられた。鶏内の大腸菌のクローン状態は各

鶏群の 9-14羽からの 5コロニーを使って,研究された。

大腸菌遺伝子型は合計 15あり,農場および鶏群の聞で異

なっていた。 3つの遺伝子型を共有する 2つの採卵鶏の鶏

群は例外であった。 1-5の遺伝子型は各鶏群でみられ. 1

あるいは 2つの遺伝子型が支配的であった。雌成鶏では,

大腸菌はいつもクローン化していた。同じ PFGE型のコ

ロニーは同じ多型の遺伝子配列を有していた。しかし 4

つの PFGE型は遺伝子配列 95を共有していた。 PFGE型

も多ローカス遺伝子型も EPS由来烏病原性大腸菌と必ず

しも関連がなかった。 EPSに関連する大腸菌の持続性汚

染している症例では,自家ワクチンのための選択に日常の

遺伝子型別が必要である。

林15)は,大腸菌による卵管炎を報告している。 200日齢

の1羽の採卵鶏の卵管下部がチーズ様化したピンポン大の

物質で閉塞していた。卵管狭部の粘膜に著しい偽好酸球浸

潤がみられ,卵管内のチーズ様物は細菌塊を含んだ壊死細

胞や卵黄物質の集合からなっていた。細菌学的には,卵管

内のチーズ様物から大腸菌が分離された。

(3) 最近のブロイラー幼雛の大腸菌症

最近みられる大腸菌症はブロイラー幼雛での発生が特徴

的である。早いものでは. 10-14日齢でのブロイラーひな

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鶏病研究会報

の死亡が増加し検査の結果大腸菌症であったという症例

が多い。同様の時期に死亡する疾病としては,ここ近年発

生が多くなった,鶏アデノウイルスによる封入体肝炎があ

る。いずれも,突然の死亡が臨床的にみられるので,解剖j

検査あるいは組織学的検査で初めて,どちらかであったか

が分かる。

このような日齢での死亡ともと,幼雛での発生報告はあ

るが,大部分はブロイラー中雛 (4-9週齢)での発生が主

体である。これは,移行抗体の保有が関連しているかもし

れない。通常, 2週齢頃までは母鶏からの移行抗体で大腸

菌の感染が防御されている。しかし最近のブロイラーひ

なでは移行抗体が低いのではないかというのが私の仮説で

ある。これは,大腸菌のみに限らず,鶏アデノウイルスも

鶏では常在ウイルスであるが,最近は幼雛での発生が多い。

母鶏での大腸菌や鶏アデノウイルス暴露が弱くなってきて

いるように推察している。わが国は種鶏での衛生管理が進

み,病原体の暴露が弱くなってきているのかもしれない。

このような点について,家畜保健衛生所等の現場の方に確

認するようにお願いしているところである。

2. 病理発生

(1)感染経路

ブロイラーの急性敗血症型,亜急性紫膜炎型を示す野外

症例では,呼吸器病変(気嚢炎,気管支肺炎,気管炎)が

共通してみられる40) ことから,大腸菌の感染経路は主に

呼吸器感染であると考えられる。マイコプラズマ,伝染性

気管支炎,ニューカッスル病ウイルス等が混合感染し,大

腸菌の呼吸器感染を誘発する。

Grossl2)は,成鶏の腹腔内,卵管陸部内に大腸菌のみを

あるいは大腸菌と無菌の卵黄を接種した。その結果,腹腔

内接種では,大腸菌単独接種群 (2/14) に比較し卵黄と

大腸菌接種群 (10/14)でより高率に腹膜炎がみられ,卵

管陸部内接種群でも,大腸菌単独接種群では,腹膜炎がみ

られなかったのに対して,卵黄と大腸菌接種群 (6/14)で

は,腹膜炎がみられた。これらの結果から,成鶏の腹膜炎

では,卵管陸部から上行性に大腸菌が侵入し排卵時に卵

胞が破裂して腹腔内に卵墜した卵黄に大腸菌が感染した場

合に大腸菌性の腹膜炎が起こると考えた。 OzakiとMurase白)

は,卵管炎を伴って亜急性襲膜炎型を示す成鶏からの分離

大腸菌の PFGEパターンから,全身感染から卵管に波及

する経路と総排植腔から上行性に感染する 2つの経路を示

唆した。 Landmanら31)は, 22-33週齢の採卵用成鶏に静

脈内 (84%),気管内 (80%),腹腔内 (76%),噴霧 (57%),

腫内 (49%)接種しそれぞれ括弧内に示すような割合で,

大腸菌性腹膜炎を誘発した。このことから,野外では大腸

菌性の腹膜炎は呼吸器感染および腫内感染によると結論づ

けている。

このほか,皮膚型である, SHSや大腸菌性蜂儲織炎で

は皮膚の創傷から皮下組織に感染すると考えられている。

(2)呼吸器感染

Nakamuraら49) は,伝染性気管支炎ウイルス単独,大

腸菌単独,あるいはウイルスと大腸菌を SPF鶏(line151)

の鼻腔内接種し細菌学的,ウイルス学的,病理学的に調べ

た。この使用された line151は伝染性気管支炎ウイルスに

非常に高い感受性を有する近交系の鶏の系統である。ウイ

ルスのみを接種した 17羽の鶏のうち, 1羽は線維素化膿

性柴膜炎を示して死亡した。ウイルスと大腸菌混合接種群

ではウイルス単独接種群より重度で、継続性の呼吸器病変が

みられ,気管からの大腸菌分離もより高頻度に分離された。

大腸菌単独接種群では,気管に組織病変はみられず,気管

からの大腸菌も分離されなかった。この結果から,伝染性

気管支炎ウイルスが鶏の呼吸器深部への侵入を助けている

と思われた。

Nakamuraら50) は野外で使用されている,ニューカッ

スル病・伝染性気管支炎混合ワクチンは鶏の大腸菌症の発

生を誘発することを実験液に証明した。すなわち,大腸菌

をSPF鶏に鼻腔内接種しでも気管に何ら組織病変もつく

らず,大腸菌の増殖もみられないが,混合ワクチンと大腸

菌を鼻腔内接種すると,気管で大腸菌増殖がみられ,組織

学的に気管の粘膜上皮細胞の線毛消失,上皮細胞の変性・

増殖,上皮下組織における細胞浸潤が混合ワクチン接種群

より重度であった。

Nakamuraら51)は,市販のニューカッスル病・伝染性

気管支炎混合生ワクチン,マイコプラズマ・ガリセウチカ

ム,大腸菌を 7日齢の SPF鶏に投与してそれらの相E作

用について調べた。ワクチン, MG,大腸菌を接種した鶏

の気管では,大腸菌がより重度に,より長期間,大腸菌が

分離され,組織病変もみられた。ワクチンと大腸菌接種群

では,それほど重度で、はないが同様の傾向がみられた。ワ

クチン単独, MG単独,大腸菌単独では比較的経度の効果

がみられた。このことより, MG感染を伴った鶏群での混

合生ワクチンの野外での使用が大腸菌性敗血症を誘発する

ことが示唆された。

(3)消化器感染

大腸菌が敗血症を起こすメカニズムとして,呼吸器から

行くルートのほかに NagiとMathel9)は小腸コクシジ

ウムである Eimeriabrunetti, と大腸菌を混合接種すると

死亡率が増加し,肝臓からの大腸菌分離率が増加したと報

告している。 Nakamuraら47)は盲腸コクシジウムである,E.

tenella接種後に,大腸菌を経口あるいは気嚢内接種して,

E. tenellaと大腸菌の相互作用を調べた。大腸菌を経口接

種した場合には E.tenellaとの相乗効果はなかったが,気

嚢内接種した場合には E.tenellaによる盲腸病変がより重

度であった。当初は大腸菌経口接種により ,E. tenellaに

よる盲腸病変からの大腸菌が血中に侵入し,敗血症に至る

可能性を想定したが,敗血症性病変は生じなかった。この

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Page 9: 鶏の大腸菌症の病理と病理発生鶏の大腸菌症の病理と病理発生 誌名 鶏病研究会報 ISSN 0285709X 巻/号 521 掲載ページ p. 24-34 発行年月 2016年5月

ことより,大腸菌が障害を受けた腸管から血中に侵入し

敗血症になる経路は少ないと想像された。

(4)免疫抑制

鶏では,免疫抑制を引き起こす原因としては,伝染性フア

ブリキウス嚢病ウイルス (IBDV)が重要である。このほか,

鶏貧血ウイルス,マレック病ウイルスなども知られている。

野外の大腸菌症では. IBDVが感染し,ファブリキウス嚢

のリンパ球減少をしばしばみられ40) 大腸菌症の発症には

免疫抑制が関与すると言われている。感染症に対する抵抗

性が減じた場合に鶏は敗血症におちいるとされる52)。

Nakamuraら42)は,鶏に対する免疫抑制剤(シクロフォ

スフアミド)処理は鶏における強毒大腸菌による感染を増

強し,弱毒大腸菌感染による症状を発現させることを証明

した。すなわち.4週齢の SPF鶏に免疫抑制剤処理群と

非処理群に強毒大腸菌を 105cfu気嚢内接種すると,非処

理群の死亡率が 10%であるのに対して免疫抑制剤投与群

では. 90%が死亡した。また,弱毒大腸菌を 109cfu気嚢

内接種した場合には,非処理群では死亡率 0%であるが,

免疫抑制剤処理群では死亡率 30%となった。

Nakamuraら43)は,鶏に対する伝染性ファブリキウス

嚢病ウイルス (IBDV)の強毒および弱毒大腸菌感染への

影響を実験的に調べた。1日齢で IBDVを経口接種し. 1

週齢で強毒大腸菌を 105cfu気嚢内接種した。IBDV非接

種群では,死亡率が40%であり. IBDV接種群では 90%

であった。IBDV接種群の敗血症性病変(線維素渉出を伴

う牌臓壊死)は.IBDV非接種群より有意に重度であった。

ファブリキウス嚢のリンパ球減少は. IBDVおよび大腸菌

接種群が最も重度で. IBDV単独接種群,大腸菌単独接種

群の順に軽度となった。胸腺のリンパ球減少は IBDVに

第 52巻 2016 年

よるものでなく,大腸菌感染によると思われた。これらの

ことから. IBDVが大腸菌感染による敗血症性病変に対す

る鶏の感受性を増加させていることが示唆された。

(5) 大腸菌病原因子

牛や豚の大腸菌症では,大腸菌の特定の病原因子がそ

の病原性に関与することが知られている。鶏の大腸菌症

でも過去に数多くの大腸菌の病原因子に関する報告があ

る2.9.21.32. 62.侃 75)。しかし大腸菌の鶏への病原性とこれらの

因子との関連性は明らかではない。

(6)病理発生と対策

中村52)は,ブロイラーにおける本症の病理発生につい

て考察した(図 1)。まず糞便に排世され,これらに含ま

れる大腸菌が密閉されたウインドウレス鶏舎内で鶏の呼吸

器から感染すると考察した。これらの大腸菌の呼吸器侵入

を容易にするのは,呼吸器障害を起こすウイルス(伝染性

気管支炎ウイルス,ニューカッスル病ウイルスなどであり,

弱毒のウイルスからなる生ワクチンを含む).マイコプラ

ズマなどである。障害を有する呼吸器では一旦大腸菌が侵

入すると排除するのは困難となる。更に呼吸器深部である

肺で大腸菌が増殖すると,肺内の毛細血管から血流に入り,

敗血症となる。これにより全身に波及する。特に親和性が

あるのは,肝被膜,心膜,心外膜,腹膜などの柴膜である。

急激な敗血症に陥ると,牌臓で重度の線維素渉出がみられ,

死亡する。また,伝染性ファブリキウス獲ウイルスなどの

免疫抑制を示す鶏では,大腸菌に対して感受性がより高く

なり,より死亡する鶏が多くなる。

これらの対策としては,衛生管理により,飼育環境での

大腸菌の量を減らすことである。また,呼吸器病対策とし

て,適切なワクチネーションが重要である。更に免疫機能

図l. 鶏大腸菌症病理発生

31

Page 10: 鶏の大腸菌症の病理と病理発生鶏の大腸菌症の病理と病理発生 誌名 鶏病研究会報 ISSN 0285709X 巻/号 521 掲載ページ p. 24-34 発行年月 2016年5月

鶏病研究会報

を低下させないために,伝染性ファブリキウス嚢病に対す

る適切なワクチネーションが必要である。

おわりに

大腸菌症は古くて,新しい病気である。外来から鶏に感

染する病原体は,ワクチネーション,衛生管理等によって,

かなり制御されている。今,病気として残っているのは,

病原体の変異する伝染性気管支炎ウイルス,あるいは大腸

菌のように鶏の体内に常在する大腸菌,鶏アデノウイルス

等の病原体によるものが主体である。大腸菌は鶏の体内に

常在するので,完全にフリーにすることはできない。この

ため大腸菌症の防御は難しい。最近ではいろいろな大腸菌

のワクチンが開発されてきている。

私が最初に鶏の大腸菌症に遭遇したのは,大学4年の時

(1977年),当時の病理学教室の先輩が大腸菌症の病変を

検討していたのを見た時である。確か板倉先生が心外膜炎

における著しい浸潤を示す細胞質の豊富な単核細胞に注目

し,マスト細胞かもしれないということで, トルイジンブ

ルー染色をしていたのを思い出す。結局のところ,これら

の細胞はマクロファージであったのであるが。おもしろそ

うな病気だなあと思った記憶がある。その後,農水省家畜

衛生試験場に入り,豚の大腸菌症をテーマとし,更に岐阜

の鶏病支場に転勤後は,当時被害の大きかったブロイラー

の大腸菌症をテーマとした。大腸菌症は複合感染症であり,

ウイルス,細菌,環境,育種などいろいろな要因が関与し

勉強しがいのある病気である。残念ながら,いまだに決定

的な対策はない。

謝 辞

家畜衛生試験場鶏病支場(前田稔室長,成田賓室長,湯

浅裏室長,上回久室長,谷村信彦研究員,今回忠男研究員,

今回由美子研究員,今井邦俊研究員,磯部尚研究員,今井

誠職員,阿部文彰職員),動物衛生研究所(山口成夫室長,

中津宗生室長,真瀬昌司室員,小林勝職員,嶋田恵美職員,

伊藤道男職員,安藤義路職員)時代の上司,部下,同僚お

よび海外の共同研究者(J.K.Cook博士, ].A. Frazier博士)

の皆さんの協力,助言に対して心より深謝します。また,

研究の手伝いをいただいた民聞からの研修生諸氏(佐藤克

夫,佐々木康夫,野口賢)に深謝します。

*所属および役職は研究実施当時のもの

文 献

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Pathology of Fowl Colibacillosis

Kikuyasu Nakamura

Shin Nippon Biomedical Laboraories. Ltd.. 8-1 Akashi-cho. Chuo-ku. Tokyo 104-0044

Summary

Colibacillosis is caused by Escherichia coli in chickens. This disease was reported firstly in the end of 19由 century.Since then

this disease is prevalent in chickens. especially broilers. Many infectious diseases have been controlled by vaccination and other

control measures. This article describes the pathology and pathogenesis of colibacillosis in chickens.

(J. Jpn. Soc. Poult. Dis.. 52. 24-34. 2016)

Key words : colibacillosis. pathology. chickens.

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