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技術課題解決促進事業テーマ 「耐圧・軽量ロボット筐体の検討・試作」 1 1. 背景 原⼦炉内溶接部の検査や炉内構造物の変形の確認など、液体のナトリウム(以下、「Na」 という)中で使⽤する検査装置の研究開発を⾏っている。検査時の Na 温度約 200℃のな か、検査装置を検査部位まで運ぶ Na 中のドローンのような、遊泳ロボットが必要になっ てくる。このため、液体⾦属 Na中を⾃在に遊泳するロボットの開発過程で、必要となる各 種要素技術の検討および試作を実施したい。本テーマでは、遊泳ロボットの筐体の構造を 検討し、試作を⾏うことを⽬的とする。 図1 Na 中検査装置の概要 2. 課題の整理 遊泳ロボットの筐体は、⾼温Na環境に耐えるために、ステンレス材の使⽤が⼀般であり、 耐圧などを考慮すると、厚⾁になってしまう。厚⾁になると、筐体の重量が増え、それを 補うためには浮⼒を⼤きくする必要性が⽣じるので、筐体を⼤きくすることにつながる。 これでは、原⼦炉容器内を⾃在に遊泳するロボットとは、相反することになってしまう。 以上より、軽量でありながら耐圧性能に優れた筐体、特に形状の⼯夫による効果を期待し たい。

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Page 1: 技術課題解決促進事業テーマ 「耐圧・軽量ロボット筐体の検 …技術課題解決促進事業テーマ 「耐圧・軽量ロボット筐体の検討・試作」

技術課題解決促進事業テーマ

「耐圧・軽量ロボット筐体の検討・試作」

1

1. 背景 原⼦炉内溶接部の検査や炉内構造物の変形の確認など、液体のナトリウム(以下、「Na」

という)中で使⽤する検査装置の研究開発を⾏っている。検査時の Na 温度約 200℃のなか、検査装置を検査部位まで運ぶ Na 中のドローンのような、遊泳ロボットが必要になってくる。このため、液体⾦属 Na 中を⾃在に遊泳するロボットの開発過程で、必要となる各種要素技術の検討および試作を実施したい。本テーマでは、遊泳ロボットの筐体の構造を検討し、試作を⾏うことを⽬的とする。

図1 Na 中検査装置の概要

2. 課題の整理

遊泳ロボットの筐体は、⾼温 Na 環境に耐えるために、ステンレス材の使⽤が⼀般であり、耐圧などを考慮すると、厚⾁になってしまう。厚⾁になると、筐体の重量が増え、それを補うためには浮⼒を⼤きくする必要性が⽣じるので、筐体を⼤きくすることにつながる。これでは、原⼦炉容器内を⾃在に遊泳するロボットとは、相反することになってしまう。以上より、軽量でありながら耐圧性能に優れた筐体、特に形状の⼯夫による効果を期待したい。

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課題(⽬標)は下記の通りである。 ① ⾼温(200℃程度)の液体 Na 中で使⽤できること ② 遊泳ロボットの筐体は、可能な限り軽量(薄⾁構造)であること ③ 耐圧性能を確保(0.2Mpa を⽬標とする)、例えば多⾯構造やプレス加⼯等の採⽤ ④ スラスタや有線ケーブルの取り付け強度と開⼝部等のシール性の確保

3. 試作の概要 遊泳ロボットの筐体は、内部のフレーム、外装形状および、スラスタ等の取り付け部の形

状等に主眼を置き、軽量かつ薄⾁構造としつつ、耐圧性能(0.2Mpa を⽬標とする)に優れた構造を検討することとする。耐圧性能を確保するために、フレームを多く組み⼊れると重量が増えることが懸念される。そのため外装を多⾯構造にすることやプレス加⼯等も取り⼊れることで回避させることを多⾓的に検討すること。

検査⽤のセンサや 6 基程度のスラスタ(サイズ等は別途打合わせ等にて)が筐体に取り付くことを前提に設計を検討し、まずは、基本概念として、筐体の全体の設計を⾏うこととし、実施の試作は⼀部分(ハーフカットモデル等)でも良いとする。材質は、Na 中での使⽤を考慮し、チタンやステンレスなどの⾦属を基本とする。検査装置やモータ等の搭載、また遊泳等を考慮すると筐体は、例えば樽型形状を想定する。

図2 遊泳ロボット筐体のイメージ

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今回の事業では、可能な限り軽量で耐圧性の⾼い筐体を試作することを⽬的に、筐体の材料および形状を検討し、設計することとする。遊泳ロボットには、少なくともスラスタを⽔平⽅向:2〜4 個、垂直⽅向:2 個程度を搭載する必要があり、取り付け部分のフレーム形状や剛性の確保などを⼯夫するとともに軽量化を期待したい。また、筐体の外装⾯は鋭利な部分を無くすこと。また軽量化のために、ステンレスよりも、チタン合⾦を主とすることなど材料の選定も⼗分考慮すること。さらにメンテナンスのために開⼝部は必要となることから開⼝部の形状にも注意し、重量増加とならないようにかつシール性能も⾼い構造を検討すること。

試作筐体の性能確認(試験)⽅法としては、気中または⽔中での耐圧試験を⾏い、筐体の変形がないことを確認できれば良いと考えるが、詳細の試験⽅法は、別途協議で決定したい。

参考までに遊泳ロボット筐体のイメージを図3に⽰す。この筐体には、検査⽤センサと有線ケーブルが取り付くとともに、推進機構であるスラスタも 6 個程度搭載することとなる。搭載箇所では、筐体内のモータの動⼒を磁気カップリング(図4)などを介して筐体外のスクリューに伝達することになり、それに応じた形状や加⼯などの対応が必要となる。

図3 遊泳ロボット筐体のイメージ図

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図4 スラスタのイメージ図(ロボット筐体に 6 個程度取り付くことを想定)

以下にスラスタの開発後の Na 中遊泳ロボットの今後の展望を⽰す。遊泳ロボットの筐体の検討と試作は、各種要素技術開発の主項⽬の1つであり、初期の段階での検討が必要と考えている。

図 5 今後の展望 4. 留意事項その他

特記事項なし 以上