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1
高性能・高機能な新規両親媒性イオン液体の開発
奈良女子大学
研究院自然科学系化学領域
教授 吉村 倫一
平成30年9月27日
2
研究内容 イオン液体
従来のイオン液体の性能の向上や機能性の発現
を目指した 『両親媒性イオン液体』の開発
反応溶剤・電解質・DDS・ミセル触媒
有機カチオン
アニオン
イオン液体
融点 : 100 ºC以下
不揮発性・不燃性高い導電性・熱安定性
“Green solvents”
イオンの組み合わせによって物性を自由に変えることができる。
融点・密度・粘度・極性・疎水性
+–
BF
F
FF
F3CS O
O
O
N
R
N NR1 R2
+ R2N+
R3
R1
R4
SO
OSO
ON CF3F3C
NTf2OTfBF4
–
+
ピリジニウム系 イミダゾリウム系 アンモニウム系
代表的なイオン液体の構造
3
両親媒性イオン液体
カチオンとアニオンから成るイオン液体にアルキル
鎖を導入した 『両親媒性イオン液体』に着目
アルキル鎖
CnmimX (n = 10, 12)
N NH2n+1Cn
X一般の界面活性剤と同様に水溶液中でミセル形成
+–
疎水基親水基
イオン液体
『両親媒性イオン液体』
4
両親媒性イオン液体の開発
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
(2)トリメリック型両親媒性イオン液体
(3)アダマンタン型両親媒性イオン液体
以下の3種類の 『四級アンモニウム塩系両親媒性
イオン液体』の開発に関する新技術を紹介する。
5
界面活性剤
界面活性剤は、界面吸着と会合体形成により、
乳化や分散、可溶化などの各種機能を発現する。
6
ジェミニ型界面活性剤
ジェミニ型界面活性剤は、従来型と比べて、優れ
た性能と機能性を有する。
従来型界面活性剤(単鎖・1鎖1親水基)
ジェミニ型(2鎖2親水基)
連結基で繋ぐ
異種親水基 異種疎水基 非対称構造
次世代界面活性剤
・ 低いCMC、高い表面張力低下能・ 低濃度で高い粘性 (短い連結基)
・ 低濃度でプレミセル、ベシクル形成 (長い鎖長)
・ 多種多様な構造が分子設計可能
7
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
「イオン液体」と「界面活性剤」の両特性を併せもつ
『ジェミニ型両親媒性イオン液体』の開発を行った。
ジェミニ型両親媒性イオン液体
ジェミニ型イオン液体に関する報告はほとんどない。
+–
両親媒性イオン液体
ジェミニ型界面活性剤
8
四級アンモニウム塩系のジェミニ型両親媒性イオ
ン液体の開発を行った。
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
m, n = 2, 4, 6, 8, 10 (n ≤ m)X = BF4, PF6, OTf, FSA, NTf2
n = 2, 4, 6, 8, 10X = BF4, PF6, OTf, FSA, NTf2
Cm-2-Cn X Cn X
N N
CH3
CH3
CnH2n+1
H3CH3C
CmH2m+1
2X
N
CH3
CH3
CnH2n+1
X
H3C
対イオン X
BF
F
FF
FP
F
F
F
FFF3C
S O
O
O
OTfBF4 PF6
S
O
O
S
O
ON CF3F3C
NTf2
S
O
O
S
O
ON FF
FSAジェミニ型 単鎖型
9
融点と対イオンの関係
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
0
50
100
150
200
250C8-2-Cn X
n = 2n = 4n = 6n = 8
Mel
ting
poin
t /o C
BF4Br PF6 OTf FSA NTf2
Ionic liquid
BF
F
FF F3C S O
O
O
イオン半径増大
Br
嵩高い構造/電荷の非局在化
SO
OSO
ON FF
SO
O
SO
ON CF3F3CF
PF
F
F
FF
10
イオン液体を媒体としたEO系界面活性剤の曇点
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
Solvent Cloud point /˚CC12EO6 C12EO8 C16EO6
water 52 78 32
bmimBF4 88 115
C4FSA, C8FSAC4NTf2, C6-2-C4NTf2
C10-2-C4FSA100˚C <
非イオン界面活性剤 CxEOy
CxH2x+1O (CH2CH2O)y H
OHH
水素結合
水
δ–
δ+
高温でも溶解可能
水素結合を形成しない
CnX
NFSA
・水素結合可能な数
・イオン液体とCxEOyのアルキル鎖の相互作用
NNBF4
H
HH
bmimBF4
δ+
曇点の上昇
アルキル鎖間の相互作用
11
イオン液体とEO系界面活性剤が作る層構造
(1)ジェミニ型両親媒性イオン液体
250~750 mM 1000 mM
C12EO6 in C6-2-C4NTf2
C6-2-C4NTf2 イオン液体は媒体として作用
1.67 nmd = 3.63 nm
アルキル鎖によるドメイン形成
1000 mM
C12EO6 in C10-2-C4FSA
C10-2-C4FSA1.67 nm
イオン液体はC12EO6と
ともに分子集合体を形成
d = 3.14 nm
12
(2)トリメリック型両親媒性イオン液体
「ジェミニ型両親媒性イオン液体」の構造を延長した
『トリメリック型両親媒性イオン液体』を開発した。
n = 8, 10, 12, 14X = NTf2
N(CH3)2(H3C)2N N
CnH2n+1 CnH2n+1 CnH2n+1
3XCH3
3Cnlin-3-Q Xn = 8, 10, 12, 14, s = 2, 3X = PF6, OTf, FSA, NTf2
3Cntris-s-Q X
N
N(CH3)2
(H3C)2N
N(CH3)2
CnH2n+1
CnH2n+1
CnH2n+1
3X
ss
sS
O
O
S
O
ON FF
FSA
対イオン X
FP
F
F
F
FF
PF6−
F3C S O
O
OOTf−
S
O
O
S
O
ON CF3F3C
NTf2
星状構造 直鎖状構造
13
(2)トリメリック型両親媒性イオン液体
Ionic liquid Tm /°C κ /mS m−1 a) η0 /Pa s a) ρ /g cm−3 b)
3C8tris-2-Q NTf2 −c) −c) −c) 1.34
3C10tris-2-Q NTf2 50.1 1.18 13.9 1.28
3C12tris-2-Q NTf2 4.9 1.01 11.8 1.24
3C8tris-3-Q NTf2 −0.7 1.75 5.17 1.33
3C10tris-3-Q NTf2 0.6 1.53 5.49 1.29
3C12tris-3-Q NTf2 −3.8 1.30 6.73 1.24
3C8lin-3-Q NTf2 −19.9 0.624 17.7 1.33
3C10lin-3-Q NTf2 −5.2 0.560 13.9 1.28
3C12lin-3-Q NTf2 46.6 0.493 15.7 1.24
a) 50 ˚C, b) 25 ˚C, c) not measured
融点・電導度・粘度・密度
星状
星状
直鎖状
14
(3)アダマンタン型両親媒性イオン液体
分子内に「アダマンタン」構造を有する
『アダマンタン型両親媒性イオン液体』を開発した。
・ 炭素骨格がダイヤモンドと同じ構造の飽和炭化水素
アダマンタン
⇒ひずみ小・対称性高
医療用原料・香粧品材料・ディスプレイ材料
半導体用フォトレジスト・高分子材料・潤滑油
C10H16
・ 大きな炭素密度、弱い格子間力
⇒透明性・剛直性・疎水性昇華性・耐熱性・潤滑性
親水部
疎水部
−
アダマンタン構造をもつ両親媒性のイオン液体に関する報告はない。
アダマンタン型イオン液体
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(3)アダマンタン型両親媒性イオン液体
融点とアルキル鎖長
0
50
100
150
200
250
300
0 2 4 6 8 10 12
Mel
ting
poin
t /o C
n
FSA
NTf2
BrBF4
PF6
OTf
n = 2 4 6 8
n = 2 4 6 8
FSA
NTf2
16
(3)アダマンタン型両親媒性イオン液体
融点・電導度・粘度・表面張力
Ionic liquid mp /°C κ /mS m−1
η×103
/m Pasγ
/mN m−1
C6AdANTf2 < 5 4.83 2.12 25.6
C8AdANTf2 < 30 2.94 2.33 26.2
C6NTf2 ≅ 25 91.5 0.123 23.2C8NTf2 < 5 45.0 0.189 23.7
ファンデルワールス力
粘度 増加N
CH3H3C
NTf2
CnH2n+1
CnAdA NTf2
NCH3
CH3
NTf2H3C
CnH2n+1
Cn NTf2 電導度 低下 嵩高いアダマンタン構造によりカチオン分子のサイズの増大
運動性の低下
17
従来技術とその問題点
イオン液体には、イミダゾリウム系やプロトン性の構造がほとんどであり、アミノ酸イオン液体や磁性イオン液体なども近年開発されているが、
・大量生産する際のコストが高い
・溶液の粘度が高い
等の問題があり、広く利用されるまでには至っていない。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 「イオン液体」と「界面活性剤」の両方の特徴を併せもつ四級アンモニウム塩系のジェミニ型、トリメリック型、アダマンタン型の新規両親媒性イオン液体の開発に成功した。
• 両親媒性イオン液体のアルキル鎖長や骨格構造を変えることで融点を制御できることを明らかにした。
• 両親媒性イオン液体に非イオン界面活性剤を添加すると、層構造を形成することを見出した。
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想定される用途
• 各種工業分野• イオン液体を使用する分野• 界面活性剤を使用する分野
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実用化に向けた課題
• 各種両親媒性イオン液体の合成面において、開発に向けた低コストの問題がある。
• 実用化を目指した応用研究が課題である。• 四級アンモニウム塩だけでなく、プロトン性の新規両親媒性イオン液体の開発にも着手する。
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企業への期待以下の点ついて、企業との共同研究を希望
• 当研究室で開発した新規両親媒性イオン液体の実用化へ向けた応用研究。
• 各種産業分野での目的に応じた新規両親媒性イオン液体の分子設計と合成、物性評価。
• 企業が開発した両親媒性化合物の詳細な物性評価。
• X線(中性子)小角散乱を用いた、両親媒性化合物が形成する分子集合体のナノ構造解析。
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産学連携の経歴
• 2012年- (株)テクノーブル
• 2013年-2014年 アクア化学(株)
• 2013年-2016年 東ソー(株)
• 2015年- 日産化学(株)
• 2015年- 日油(株)
• 2015年- 三洋化成工業(株)
• 2015年- (株)コスモステクニカルセンター
• 2016年- (株)ニイタカ