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超高感度バイオ/ガスセンサ
東京農工大学 大学院工学研究院
先端電気電子部門
准教授 清水 大雅
2017年6月27日
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・対象分野:
バイオ・創薬(ウィルス)
環境分野(有害物質、温室効果ガス)新エネルギー(燃料電池)周辺技術(水素ガス漏洩)
等における液体・気体の有無の検知、濃度の定量化
・技術的要求事項:高感度、小型、定量性、オンチップ化(多点測定、光源との位置合わせ不要)・実用化されているセンサ:
光センサ(プラズモン、光吸収)、ガスクロマトグラフィー、半導体ガスセンサ、生物の嗅覚の利用
バイオ/ガスセンサへの需要
背景
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光センサ
光吸収の利用:キャビティリングダウン分光法 CO2 数ppm / 装置が大型、高価
プラズモンの利用: 癌の診断、タンパク質マーカー~0.1 mg/L体液中のホルモン ~1mg/mL / さらなる高感度化・小型化が必要。
ガスクロマトグラフィー: 数ppm~数ppb / 装置が大型、高価半導体ガスセンサ:還元性ガスで0.05~10ppm / 還元性ガス限定生物の嗅覚:
一長一短があり。
センサの検出限界 /従来技術とその問題点背景
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• 従来のプラズモンセンサの問題点であった、検出感度を100倍以上改善することに成功した。
• 従来は検出感度の点で液体を対象とする分析に限られていたが、感度を100倍向上できたため、液体だけでなく、気体を分析することが可能となった。
• 本技術の適用により、大型分析装置で高価な他の方式でしか実現できなかったセンサを代替でき、コストを1/10程度まで削減されることが期待される。
新技術の特徴・従来技術との比較
基板
Ag(100 nm)Fe(20 nm) 磁化
方向
SiO2 (0~50 nm)
空間(分析物を流す層)
SiO2分析物質(液体・気体)
t [nm]
物理的支持(接着)物体
ksppkspp → kspp + Δk
表面プラズモンセンサ 磁気プラズモンセンサ(本技術)
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• 本技術は、ガスの検出に適用することで高感度化のメリットを活かせると考えられる(燃料電池使用時の水素検出、環境ガスモニタリング等)。
• 上記以外に、液体の分析時の高感度化も期待される。• また、達成されたプラズモンセンサに着目すると、オンチップ化・小型化・集積化・多点計測・高空間分解能での測定といった分野や用途に展開することも可能と思われる。
想定される用途
化石燃料由来のCO2 (57%)
フロンガス(1%)亜酸化窒素(8%)
メタン(14%)
森林伐採によるCO2 (17%)
その他のCO2(3%)
人為的活動による温室効果ガスの種類と割合出典:国連 IPCC報告書 (2002).
燃料電池使用時の水素ガス漏洩検出
水素ガスボンベ
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光を使ったバイオ/ガスセンサにおける測定対象と指標
・測定対象の例:
物質(液体・気体)固有の屈折率nの変化を物質の有無・濃度の検知に利用
液体:水 n~1.333, エタノール n~1.3618気体:真空 n=1,
酸素 n~1.000272,窒素 n~1.000297,空気(酸素~20%+窒素~80%) n~1.000292,水素 n~1.000132
*大気中に1%の水素が含まれる場合:屈折率は10-8変化。
**温度、圧力に依存
光センサ
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報告されているバイオ/ガスセンサの例光を用いたセンサの例
光センサ
センサの感度S=物質の有無、濃度の変化=屈折率が変化(Dn)した時の測定指標の変化(DA)を観測
参考文献:[1] Jacob T. Robinson ,Opt. Express,16,4297,( 2008) [2] Ian M. White and Xudong Fan, Opt. Express,16, No. 2., (2008).
測定指標A:従来は光の反射率R
屈折率を変えた(分析物質の濃度変化等)時に大きく変わる指標Aを利用。⇒感度を向上できる
S = DA /Dn
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従来の表面プラズモンセンサ①
ndnd + Δn
G. Armelles et al., Adv. Opt. Mater. 1, 10 (2013).
kspp
SPR: Surface Plasmon Resonance: 表面プラズモン共鳴=SPPを外部光で励起(共鳴)すること。
kspp → kspp + Δk
A. Brolo, Nat. Photonics 6, 709 (2012).
Au
ATR curve従来のSPRセンサ
反射率の変化⇒屈折率の変化推定⇒センサ
SPP: Surface Plasmon Polariton表面プラズモンポラリトン
=金属と誘電体界面に光が集まる形態。
感度S = DR /Dn: ~1 (指標A=反射率R)屈折率変化~10-4
大気中の水素:数10%の変動の検知に相当。
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従来の表面プラズモンセンサ
B.Sepulveda, L.G. Carrascosa, D.Regatos, M.A ..Otte, D.Farina and L.M.Lechuga“Surface Plasmon Resonance Biosensors for highly sensitive detection in real samples”Proc. SPIE 7397, Biosensing II, 73970Y (August 20, 2009); doi:10.1117/12.827062
実用化されている全自動バイオセンサの例
検知物質の入出力部
光学的検知部
評価例癌の診断、タンパク質マーカー~0.1 mg/L体液中のホルモン ~1mg/mL
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磁気プラズモンを用いた従来のセンサ③
従来のSPRセンサATR curve
MO-SPR センサ反射率Rと比べて鋭く変化→ 高感度
p p p
p p p
R R M R MR R M R M
MO effect ↑@SPRReflection ↓@SPR
G. Armelles et al., Adv. Opt. Mater. 1, 10 (2013).
金属の一部に強磁性金属に(磁気プラズモン, Mageto-Optic SPR; MO-SPR)。磁気的作用により、磁化反転時に反射率が変化(DRpp)。光に及ぼす磁気的作用DRpp / Rppをセンサに応用。
感度S = (DRp/Rp) /Dn: ~10(指標A=DRp/Rp)屈折率変化~10-5
大気中の水素:数%の変動の検知に相当。
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磁気プラズモンを用いた従来のセンサ③
D. Regatos et al., J. Appl. Phys. 108, 54502 (2010). D. Regatos et al., Opt. Express 19, 8336(2011).
λ =660 nm λ =632 nm
~14% ~1%
過去の報告例~ 0.1–20 %p p p
p p p
R R M R MR R M R M
磁気プラズモンを用いたバイオセンサの構造と指標DRpp / Rppの変化
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SPP構造の変更金属の表面⇒金属と誘電体の隙間の利用
金属の一部に強磁性金属を挿入
• 構造の変更と強磁性金属の採用⇒感度S 100倍向上
本技術の磁気プラズモンセンサ
貴金属(Au)
高屈折率誘電体
低屈折率誘電体
強磁性金属
厚さ t [nm]+M −M
基板 / プリズム
±H従来:金属表面にSPPを励起。Rp: 小さくできるが、0にはならない。
本技術:強磁性金属と誘電体の隙間にSPPを励起。厚さtを最適化することでRp = 0を実現。
V. Zayets et al., Materials 5, 857 (2012).
SPP
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本技術の実施例 (実験結果)(隙間部分:SiO2)
∆Rp/R
p
Wavelength λ [nm]
●: θinc = 55.3o
△: 55o
★: 56o
□: 56.5o○: 55.4o
~100 %
p p p
p p p
R R M R MR R M R M
01
0p
p
R MR M
測定波長可変かつ高感度センサ
高屈折率誘電体/プリズム:Al2O3隙間部分:SiO2膜厚 t = 586 nm強磁性金属:Fe
SiO2/Fe界面に光が閉じ込められ伝搬するSPPモードと高屈折率層(Al2O3)へ放射するモードがSiO2層膜厚t = 586nmを境に切り替わる。⇒反射率Rp=0。
~100 %測定波長を変えることも可能。
T. Kaihara, H. Shimizu, A. Cebollada, and G. Armelles, “Magnetic field control and wavelength tunability of SPP excitations using Al2O3/SiO2/Fe structures,” Appl. Phys. Lett. 109, 111102 (2016).
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高屈折率誘電体/プリズム:Al2O3隙間部分:SiO2膜厚 t強磁性金属:Fe
基板
Ag(100 nm)Fe(20 nm) 磁化方向
SiO2 (0~50 nm)
空間(分析物を流す層)
SiO2分析物質(液体・気体)
t [nm]
物理的支持(接着)物体
高屈折率誘電体/プリズム:SiO2低屈折率誘電体:空間 膜厚 t強磁性金属と貴金属の積層構造:Au またはAg (t1 [nm]) / Fe (t2 [nm]) / Au またはAg (t3 [nm])
本技術の実施例
低屈折率誘電体を空間(n=1)にして分析物質を流す
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・強磁性金属と貴金属を組み合わせることで入射角の変化に対して指標DRpp / Rppが急峻に変わる。⇒高感度化を実現。
本技術の実施例(シミュレーション結果)
45.5 45.6 45.7 45.8 45.9 46.0 46.1 46.2 46.31.0
0.5
0.0
0.5
1.0
入射角度度
反射率差反射率比
DR p
p /R
pp
MO-SPRセンサ③(実験結果)
本技術の磁気プラズモンセンサ・隙間部分(分析物質を流す層)の厚さt = 1092 nm, 波長l = 1550 nm (tとlの組み合わせを材料に応じて設計)
感度S = (DRp/Rp) /Dn: ~100 (指標A=DRp/Rp)屈折率変化~10-6 ,大気中の水素: ~1%の変動の検知に相当。
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センサ感度の比較SPRバイオセンサ(既に製品化)
磁気プラズモンバイオセンサ(従来)
磁気プラズモンバイオセンサ(本研究)
材料 貴金属(Au, Ag) 貴金属(Au, Ag)と強磁性金属(Fe, Co)の組み合わせ
高屈折率誘電体(Al2O3)誘電体、低屈折率誘電体(SiO2, 水、空気)、強磁性金属(Fe, Co)と貴金属(Au, Ag)の組み合わせ
分析物質の位置 金属の表面または2層の金属の間(空間)
金属の表面 金属と誘電体の間の隙間
指標 A 反射率R 磁化反転時の反射率変化DRpp / Rpp
磁化反転時の反射率変化DRpp / Rpp
感度S = DA /Dn ~1(大気中水素 数10%)
~10(大気中水素 数%)
~100(大気中水素 ~1%)
特長 製品化 プラズモンに磁気的作用を付加して高感度化を実現
高感度
対象物質の感度に応じて測定波長を可変
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• 現在、磁気プラズモンセンサの原理実験を完了(DRpp / Rppは理論上の最高値1を実現)。分析物質を流す隙間構造も設計済み。設計したセンサ構造の製造、データ取得が未解決。
• 今後、センサ構造を製造し、分析物質を流して実験データを取得し、センサに適用していく場合の条件設定を行っていく。
• 実用化に向けて、反射率測定時の入射・反射角度の精度を0.1度から0.01度以下まで向上できるよう技術を確立する必要もあり。
実用化に向けた課題
T. Kaihara, H. Shimizu, A. Cebollada, and G. Armelles, “Magnetic field control and wavelength tunability of SPP excitations using Al2O3/SiO2/Fe structures,” Appl. Phys. Lett. 109, 111102 (2016).
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• 未解決の分析物質を流す空間構造を含むセンサ構造の製造については、接着技術により克服できると考えている。
• プラズモンセンサ、エリプソメータ、MEMS等光分析機器の開発技術を持つ企業との共同研究を希望。
• 精密ゴニオメータ、波長可変レーザ光源、高感度光検出器などの光部品の開発技術を持つ企業との共同研究を希望。
• また、バイオセンサ、ガスセンサを開発中の企業、光部品のセンサ応用への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
企業への期待
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :センサおよびセンサの製造方法
• 出願番号 :特許出願準備中
• 出願人 :国立大工法人東京農工大学
• 発明者 :清水大雅