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野菜の硝酸態窒素低減方法
(公)大阪市立大学
大学院理学研究科
教授 平澤栄次
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無農薬で育てた野菜でも・・・
(写真は農水省HPより)
摂取量によっては体に有害な成分があります。
そのひとつが硝酸態窒素です。
3
硝酸態窒素は、植物の成長に必須の、肥料に欠かせない成分です。
水耕栽培液の例: (塩類の濃度はmg/l)
収穫後の野菜にも、この硝酸態窒素は含まれ
ています。
処方例 硝酸カリウム硝酸
カルシウム
硫酸
マグネシウム
リン酸二水素
アンモニウム
園試処方
(カイワレ)808 944 492 152
山崎処方
(レタス)404 236 123 57
山崎処方
(トマト)404 354 246 76
4
硝酸濃度の低い野菜を作ろうとする動きが加速しています。
安全基準値を設ける動きがあります。
(ヨーロッパでは3000ppm以下とされています。
研究室では、無機肥料で育てたかいわれ大根の測定値は3800ppm前後で、この基準値はかなり厳しいものです)
各地の農業試験場などでは、土壌中の硝酸濃度を分析したり、
肥料として与える硝酸態窒素の量を制限した
栽培法を開発し、マニュアル化しています。
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硝酸態窒素の健康への影響
硝酸は、一部が体内で亜硝酸に変換され、血液中のヘモグロビンに結合するので、酸素の運搬を低下させます。 ひいては、呼吸障害を引き起こします。
亜硝酸は、体内でアミンと反応するとニトロソアミンとなり、強いアルキル化剤としてDNAに作用します。これは、変異原性のある物質で、食道がん、肝臓がんなどのリスクが高くなる危険性があります。
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従来の硝酸低減マニュアルは、複雑で面倒なものがほとんどでした。
各地の研究機関の発表している硝酸低減法の
多くは、まず土壌分析をし、必要最少量の窒素
肥料を算出して、かつ適期に施すというもので、
複雑で手間もかかります。
これからご紹介する硝酸低減法は、
既存の栽培法に適用できる簡便な方法でありな
がら、多くの栽培植物・栽培法の多様化にも対応
しています。
7
私たちの新しい方法は・・・
野菜の収穫前後に有機栄養液を与えることによ
り、植物自身の生理学的な作用で硝酸含量が
減少します。
この有機栄養液は安全・安価な成分で出来てい
ます。
土壌診断や肥培管理の手間を減らし、
安全な野菜を提供できます。
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0
1
2
3
4
5
3 4 5 6
かいわれ大根の硝酸含量
普通の栽培法でのかいわれ大根の硝酸濃度は、約3800ppm
播種後の日数 (収穫期)
9
暗期 明期(40µmol photon・m-2•s-1 )
1日 2日 3日 4日 5日
14h 10h
播種
サンプリング硝酸濃度などの分析
無機栄養液 有機栄養液
温度25℃
硝酸低減実験に用いた
かいわれ大根の栽培方法
10
スクロース処理によるかいわれ大根の胚軸中の硝酸とスクロース
0
2.0
2.5
3.0
3.5
0
0.25
0.3
0.35
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5
0.40
スクロース濃度(%)
収穫前に3%前後のスクロースを与えた
かいわれ大根は、硝酸濃度が低下します
11
クエン酸処理によるかいわれ大根下胚軸中の硝酸含量
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
3 4 5 6 8水
クエン酸(mM)
収穫前のかいわれ大根に、クエン酸溶液を与えると、
硝酸濃度の低下に著しい効果があります
12
クエン酸処理時間によるかいわれ大根の下胚軸中硝酸塩含量変化
0
1
2
3
4
5
0 24 36 48 60 72
処理時間(h)
クエン酸を与える時間は、24時間で効果を発揮します。
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クエン酸・糖処理による、かいわれ大根下胚軸の硝酸含量
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
グルコース3%
スクロース3%
グルコース3%
クエン酸5mM
スクロース3%
クエン酸5mM
水 クエン酸5mM
3.0
5mMクエン酸は、糖と組み合わせるより、クエン酸単独のほうが効果的です。
14
有機酸処理によるかいわれ大根下胚軸中の硝酸含量
コハク酸5mM
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
クエン酸5mM
乳酸5mM
酢酸5mM
水
様々な有機酸を含む栄養液を検討していますが
現在クエン酸が最も有望です
15
有機酸‧アミノ酸処理によるかいわれ大根中の硝酸還元酵素活性
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
水 クエン酸5mM
酢酸5mM
グルタミン酸
5mMグリシン5mM
下胚軸
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
水 クエン酸5mM
子葉
クエン酸処理したかいわれ大根の下胚軸では
硝酸を還元する酵素の活性が高いです
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実験結果のまとめ
1.食用植物に含まれる硝酸の低減効果は有機酸>アミノ酸>糖処理の順でした。
有機酸の中でクエン酸の効果が最も高いです。
2. クエン酸処理による硝酸含量減少は硝酸還元酵素活性の増大が一因と考えられます。
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野菜類の硝酸態窒素低減方法
簡単で安価な有機栄養液処理により、野菜類の
硝酸含量を大幅に低減できる画期的な方法です。
収穫前の短期間で処理できます。
面倒な土壌診断や、肥培管理が不要です。
安全基準値・規制に対応できます。
安全・安心野菜として消費者にアピールできます。
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「安心野菜」の潜在市場規模
野菜の市場規模は、約5000億円超と言われています。 (キュウリ、ほうれん草、キャベツ、レタス、白菜、
小松菜、ブロッコリーの平成17年度の産出額の合計(農水省統計))
食の安全性に対する消費者意識が今後、
ますます強まり、国内でも野菜に残留している
硝酸の規制が実施されれば、新しい栽培法に
よる安全・安心野菜のシェアは早期に10%を
超えると予想されます。
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実用化にむけて
有機栄養液の組成、処理方法については、
既にほぼ確立しており、特許を取得します。
現在、より多くの食用植物について、最適な
処理条件を決定するための実験を進めています。
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実用化にむけて
大規模な野菜生産の場で実用化するためには、
有機栄養液処理の装置開発が不可欠です。
現在、共同開発もしくはライセンス契約による
開発の提携先を希望しています。
野菜の生産に携わる、JA、農業法人、植物工場運営企業の皆さんに、興味をもっていただけたら
と考えています。
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特許の概要
•発明の名称 : 硝酸濃度低減方法
•特許番号 :特願2010-048467
•出願日 : 2010年 3月 4日
•出願人 :公立大学法人大阪市立大学
•発明者 :平澤栄次教授
(理学部代謝調節機能学研究室)他
•内容 :
食用植物を有機栄養液で処理することによる硝酸濃度低減方法
および食用植物の硝酸濃度を低減させる有機栄養液
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特許性
• 類似特許調査(NRIを使用)
– 検索条件:(A01G_1/00 + A01G_7/00)*硝酸*(低減+低下+減
少)* (有機酸+アミノ酸+糖)
– 検索結果:11件
– 食用植物を既成の肥料等で栽培した後、有機酸、アミノ酸または糖
からなる有機栄養液で処理して該食用植物の硝酸態窒素を低減す
ることをクレームしている特許は見出せなかった。
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契約条件
ライセンス条件:通常実施権許諾
共同研究:可
技術指導:可
対価:応相談(一時金+定率実施料)
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(公)大阪市立大学産学連携推進本部
新産業創生センター
コーディネーター ・ 渡辺敏郎
電話:06-69605-3469 ファクス:06-6605-3552E-mail:[email protected]
大阪府立特許情報センター
特許流通アドバイザー ・ 板倉正
電話:06-6772-0704 ファクス:06-6772-0627E-mail:[email protected]
ご興味のある方は下記にご連絡下さい