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機能主義的アプローチとは
機能主義言語学
プラハ学派 機能言語学(Jones, 1979): 情報ステータスに焦点(既知情報・未知情報、主題・題術構造等)
体系機能言語学(Halliday, 1985)
様々な機能言語学的アプローチの研究(Chafe, 1971; Bates & MacWhinney, 1979; Bolinger, 1977; Givón, 1979; Klein & Perdue, 1992,1997; Slobin, 1993; Tomlin, 1983)等の様々な学派がある(Tomlin, 1990)
形式主義的アプローチ vs. 機能主義アプローチ
理論言語の形式主義的アプローチと対局をなす機能主義的アプローチ
言語研究へのアプローチの背景にある仮定 (Tomlin, 1990)
1)文法的知識の表示<->言語を運用するということ自体が文法的知識表示に影響を及ぼすのかに着目。
2)原理の‘説明’をゴールとする <-> データの‘記述’が原点
3)言語獲得における統語に限られた言語構造の解明<->談話内での言語使用に関わる広い範囲での言語のしくみ
機能主義的アプローチの特徴
L2知識のみならず、その運用にも着目。
学習者言語の特徴を描写
文脈内での言語使用(M.A.K. ハリデーの テクストとコンテクスト参照)
言語形式と意味機能の関係(form-function relationship)
ケーススタディー~>近年の研究まで
トピック連続性、名詞句習得、時制習得プロセス等
Huebner (1983), Sato (1990)Klein & Perdue (1992, 1997)
Clancy (1980) Tomlin (1990) Chaudron & Parker (1990)
Polio (1995) Bardovi-Harlig (e.g.,1998, 2008)
Yanagimachi (2000)
平高(2005) Yoshioka (2005)
Nakahama (2003, 2010, 2011,2012, in preparation)
Lumley (2013) Ryan (2015)
Huebner (1983)
• Focus last pattern
NS: Who came to Honolulu?
Ge: Keim to Honolulu isa fai familii
presupposed/topic asserted/focus
• Topic-comment structure
(69% TOPIC-COMMENT, 31% SUBJECT-PREDICATE)
Ge: Holii, bat ai sii, ai no tok
As for Hawley, I see (him), I don’t talk (to him)
Ge: Hos, ai reis
As for horses, I raised (them)
Klein & Perdue (1992, 1997) European Science Foundation (ESF) プロジェクト
欧州科学財団の補助を受けて遂行された成人移住者の第二言語習得
5か所の研究拠点で、2年半にわたる縦断調査
4~6週間に一度、絵描写、指示文(空間表現)、Modern Timesのリテリング(指示
表現)、自身のストーリーテリング(時の表現)の4つのタスク(+会話)を計3回
言語現象が母語転移によるものか、普遍的プロセスによるものかを判別するために、6つの異な
る母語の学習者(N=40)によって5つのL2を習得させるような組み合わせを考えた。
L2 英語 ドイツ語 オランダ語 フランス語 スウェーデン語
L1 パンジャブ語 イタリア語 トルコ語 アラビア語 スペイン語 フィンランド語
Klein & Perdue ESF Project 続き
Concept Oriented Approach(後にBardovi-Harlig などでも採用)
どんな発話も時間・空間・モダリティなどのコンセプトがもとになっている表現で、L2習得ではこうしたコンセプトが限られたL2言語知識を駆使してどのように表現するかが問題になる。
Basic Variety (自然状況下での成人話者のL2発話構造)
1.L1でもL2でもない比較的安定した言語体系を有するようになるが、化石化する学習者もいれば、さらにvariety(多様性)を精緻化する学習者もいる。
2.このvarietyを生かせば、大抵のコミュニケーションは満たすことができる。
3.Varietyの語彙はL2から採用されていて、変化形のない類が多い。
4.Varietyは句構造的・意味的・語用論的な制約が相互に左右しあうことによって構成されL1や目標言語に拘わらず共通である。(指示対象導入・維持、トピックーコメント構造)
5.Basic Varietyには、拘束形態素と複文構造が見られない。
K& P, Basic Variety 続き (IUOのステージ)
1.NUO (Nominal Utterance Organisation) 名詞句構造
名詞句の発話を中心とする段階。動詞の構成力に欠ける。
2.IUO (Infinite Utterance Organisation) 不定動詞構造
動詞は出現するが、不定詞、定動詞の区別がない段階。
3.FUO (Finite Utterance Organisation)定動詞構造
定動詞・不定動詞の区別がある。動名詞・分詞などとの使い分けができる段階。
Basic Varietyにみられる基本的構成原理
意味的制約 (Controller first)
語用的制約(Focus last)
日本における移住者のSLA研究
土岐(1998)の就労を目的とする外国人の日本語習得の縦断研究の一連の研究で、動詞使用が少なく名詞で代用するという結果が分かっている(谷口 1998; 平高・稲葉 1998等)
Hirataka (2001) (平高 (2005) からの引用)
土岐(1998) の縦断研究の被調査者4名+横断調査4名分の合計8名のデータを考察。追加の被調査者は来日より7ヶ月と13ヶ月、72ヶ月と75ヶ月。
対象者:日系ブラジル人に2か月に一度インタビュー・ロールプレイ・絵と写真の説明を日本語でしてもらう。
Hirataka(2001) 日本語のBV、前後の3段階
「時間性をめぐる表現」の習得のプロセス 1~3段階
1.(NUO) 時間を表す副詞的表現(時点を示す副詞句(9月、昨日)、頻度(時々、毎日)が出現。談話には、事柄の継起した時間に即して述べる,Principle of Natural Order (PNO)に従って構成され、自らTopic Time (TT)は導入できず、対話者のTTを受け入れる。(インタラクション)
2. (IUO) 時制を表すル形 BVの基本形としての機能
談話構造は1とほぼ同じだが、対比の副詞「まだ」「もう」など出現
3.(FUO) 動詞の精緻化、タ形で過去を表現、テイル形出現するが、現在・過去も表す。副詞は「ずっと」「今まで」+から で継続の表現。「は」を使用し、TTの導入、トピック維持にも努める。
Givón(1979、1995)
文法習得 = 統語化のプロセス
Givón(1979 )pragmatic mode(語用論的言語運用)からsyntactic mode(統語的言語運用)へのプロセス
Givón(1995)pre-grammatical mode (前文法的モード)-> grammatical mode(文法的モード)
統語化のプロセスとは?
1. 連続的かつ緩やかな言語発達であるとしている。
2. 語用論的言語運用の特徴
トピック-コメント構造,緩い等位接続構文,拘束形態素使用なし等
3.統語的言語運用の特徴
主語-述語構造,強固な従位接続,複雑な拘束形態素使用
**習得の初期段階では文脈に頼った意味の表示をするのに対し,習得が進み統語的言語運用モードになると,文法的要素に頼った意味表示パターンになることである。
過去形形態素の習得(Bardovi-Harlig, 2000, 2008)
L2英語の過去時制の習得のプロセス
語用論段階
1)対話相手からのキューを足場かけとして「時」を表現
2)通時的順序に従うことで「時」を表現
語彙段階
3)時間を示す副詞句、接続詞、動詞の使用で「時」を表現
形態素段階
4)形態素を用い,時制を的確に表現する
機能主義アプローチ支持者にとっての言語発達とは
Andersen’s (1984) One to One Principle & Multifunctionality Principle
初級段階:形式と意味を一対一でマッピングさせる。(一つの形式に一つの意味が対応すると認識する。)
一つの形式に複数の意味をマッピング、一つの意味に複数の形式をマッピングさせるように認識する。
学習者は未来のことについて言及する際、ほとんどが ‘will’を使い、’going to’を使わない。~ing形=Atelic (非限界)のactivity verbs(活動動詞)の進行形を一対一でマッピング
機能主義的アプローチ:概念的分析
•機能主義的アプローチでは、概念を中枢に考えた分析をする際、学習者がどのようにL2を使い、例えば「過去」というコンセプトを表現しようとしているか、ということに着目し、分析を行う。
• I goed to school yesterday.
非文ではあるが、過去の形態素を駆使し、過去の時制を表そうとする試みを重視し、「誤用」だと切り捨てない。
(Bardovi-Harlig, 2008:63)
Slobin (1991, 1993)話すための思考
人は第一言語を習得する際に,機能と形式のマッピングを通して,‘話すための思考’を獲得していく(Slobin, 1991)
言語は我々が出来事を語る際のフィルターの役目を果たしており,人が体験することはその言語に特有な観点や言語形式というフィルターを通って,言語化されていき、
このフィルターにかけるという行為は,例えば,学習者がヴォイス,時制,主題などを表す際に選択する言語形式に大きな影響を及ぼすことから,L2習得にとりわけ大事な役目を果たしているのがわかる(Berman & Slobin, 1994)。
Givón(1983)トピックの連続性
トピックの連続性・非連続性は談話の一貫性(coherence)を左右する重要な要因であり,談話内の焦点となっている最も連続性の高いトピックはゼロ照応で,新情報の最も非連続的なものは完全名詞句で表される。
非連続-ーーー-連続
日本語: 完全名詞句+がーー完全名詞句+はーーゼロ照応(Hinds, 1983)
英語: 不定冠詞+名詞句ーー定冠詞+名詞句ーー代名詞
(Chaudron & Parker, 1990)
Frog, where are you? の語りから
男の子が蛙を捕まえてきて( )それを瓶に入れました。
(数発話後)
犬が窓から飛び降りてしまいました。男の子は怒っています。()森の中へ行って()穴を探しました。
最初の文で、「男の子」が初めて言及されており、これはトピックとして最も連続性が低く、次に、通常は「は」が来るはずだが、名詞句がそのまま省略()される場合が多い。その次の文の()も主語省略。トピック性が最も高い。
トピックの連続性とストーリーの一貫性
名詞句の適切な導入・維持はストーリーの一貫性(coherence)に大きく貢献する(Chaudron & Parker, 1990; Tomlin, 1990等)
テキストの結束性(cohesion)に貢献し、ひいては一貫性にも大きく影響を及ぼす項目(cohesive devices)として、指示(reference)や省略(ellipsis)などの重要性が論じられている(Halliday, 1985; Halliday and Hasan, 1976)
トピック連続性に関するL2日本語・英語習得研究
定性マーカー(「は」や定冠詞)の習得 >非定性指標(「が」や不定冠詞)の習得(Chaudron & Parker, 1990; Doiand Yoshioka, 1990;Ryan, 2015; Nakahama, 2011; Sakamoto, 1993; Yoshioka, 2005等)
自然習得環境での「が」と「は」の習得が教室内でのそれと比較してうまく行ったようである(坂本他2008)が非用も見られた。
定性マーカーの義務的文脈以外での過剰般化が、熟達度に比例し徐々に正用が増加傾向にある (Nakahama, 2011; 遠山, 2005等)
トピック連続性に関するL2日本語・英語習得研究
ゼロ照応や代名詞を使うべき文脈で完全名詞句の過剰般化が見られ(Polio, 1995; Nakahama, 2003; 2011;Yanagimachi, 2000等)、その原因の一つが母語転移であったり(Kang, 2004; Nakahama, 2011)普遍的な傾向と解釈されたりしている(Ryan, 2015参照)。
Eckman(1985)有標性弁別仮説
ゼロ照応や代名詞は無標なので、習得しやすいはず?
1)登場人物の位置づけ(主人公/脇役)を考慮したり,2)
コミュニケーション方略の一環(明確化)のために談話のコンテクス
トに応じて学習者なりの使い分けをしていることが明らかになっている。
研究デザイン・データ収集方法について
•機能主義的アプローチは,その関心が,意味や概念がどのように言語形式を通して表出されるのか(即ち,機能と形式のマッピング)にある。
•必然的に談話レベルでの、コミュニカティブな活動やタスクがデータ収集の手段に選ばれることが多い。
コミュニケーション手段としてのストーリーテリング
Storytelling as means of communication
ストーリーテリング (ストーリーリテリング)
言葉のインタラクションを介して人が社会生活を行っていく上で、ストーリーテリングは重要な役割を果たしている。ストーリーテリングとは、話者が多くの言語的・非言語的リソースを使い、登場人物・時間軸・空間軸を駆使して伝えたい情報を聞き手に伝える、という手段である。
考察対象として、指示対象・時の表現・場所の表現などが中心になるが、どのように知識と経験が言語を介して、ストーリーとして表出されるのかが文化によって違ってくる(Cortazzi and Jin, 1994; Riessman, 1993; Slobin, 1994)ことから、ストーリー構築の際の視点の置き方も考察対象となっている。
データ収集手段:無声映画(Modern Times, Pearfilm), 絵本(Frog, where are you?)
教育的示唆L1英語話者、韓国語話者、中国語話者―>[事実志向]の語り傾向
L1日本語話者 ->[立場思考]で出来事を語る傾向
実際に話の焦点を主人公に合わせて語ってもらう練習(魏, 2010; 渡辺, 2012)
①トピックの連続性(視点を主人公に絞る)を表現するためのデバイス
やりもらい表現、受身表現、主語省略、感情表現等の表出の復習
②指導方法(明示的 vs 暗示的)
教育的示唆
③練習方法(教師主導 vs 学習者間でのインタラクション)
④タスクの真正性 (絵本などから始めてもよいが、実際の出来事の語りなどに発展させる)
⑤ゼロ照応の習得(Why is it so hard to acquire ‘nothing’?) ゼロ照応の理解・産出を助けるプログラム(ゼロチェッカー)
エクササイズ
視点を定める 手がかり (栗原・中浜 2010)
典型的な日本語母語話者の発話:
女の子がおじいさんのところにきて、(φ)本を貸してといったので、おじいさんは本を一冊貸して あげました。でも、女の子がもっと貸してほしいというので、(φ)貸して あげて、(φ)感心している様子でした。どうなったのだろう・・と(φ)思って、(φ)ちょっと様子を見に行ってみたところ、なんと女の子はリンゴをとるために(φ)本を借りに来たことが(φ)分かって、おじいさんは驚いて(φ)加えていたパイプを(φ)落としてしまいました。
来る・行く(移動の方向性)、やりもらい(ウチ・ソトの概念)、感情表現、準感情表現