Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
注と参考文献
本書の執筆に際して参考とし、あるいは一部を引用した資料のリストを以下に掲げる。多
くの読者がご存じの通り、インターネット上の資料は長く残らない場合も多い。ここに記
したアドレスは、本書執筆の時点で有用だったものである。もし私が、医学における興味
深い、あるいは重要なトピックスについて見過ごしており、十分に評価していないと感じ
られた読者は、私のウェブサイト(pickover.com)をご覧の上、そのトピックスおよびそ
の医学への影響についてe-mailにてお知らせいただきたい。
<全般>
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
Craft, N., The Little Book of Medical Breakthroughs, NY: Metro Books, 2010.
DeJauregui, R., 100 Medical Milestones that Shaped World History, San Mateo, CA: Blue Wood
Books, 1998.
Ellis, H., Operations that Made History, London: Greenwich Medical Media, 1996.
Loudon, I., Western Medicine, NY: Oxford University Press, 1997.
Porter, R., ed., Cambridge Illustrated History of Medicine, NY: Cambridge University Press, 2009.
Porter, R., Timetables of Medicine, NY: Black Dog & Leventhal, 2000.
Simmons, J., Doctors & Discoveries, Boston: Houghton Mifflin, 2002.
Straus, E., Straus, A., Medical Marvels, Amherst, NY: Prometheus, 2006.
Wikipedia Encyclopedia, wikipedia.org.
<はじめに>
Cunningham, A., The Anatomist Anatomis’d, Surrey, UK: Ashgate, 2010.
Kemp, M., Wallace, M., Spectacular Bodies, Berkeley, CA: University of California Press, 2000.
Lenzer, J., Brownlee, S., tinyurl.com/5wbnlsw.
Simmons, J., Doctors & Discoveries, Boston: Houghton Mifflin, 2002.
The Great Courses, tinyurl.com/4f5asmc.
<紀元前1万年 魔術医>
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
Krippner, S., in The Complete Idiot’s Guide to Shamanism, Scott, G., NY: Alpha, 2002.
Porter, R., ed., Cambridge Illustrated History of Medicine, NY: Cambridge University Press, 2009.
<紀元前6500年 穿頭>
Finger, S., Origins of Neuroscience, NY: Oxford University Press, 1994.
<紀元前4000年 尿検査>
Armstrong, J., Kidney Intl. 71:384; 2007.
<紀元前3000年 縫合糸>
Kirkup, J. The Evolution of Surgical Instruments, Novato, CA: Norman, 2006.
<紀元前2400年 割礼>
Bryk, F., Circumcision in Man and Woman, Honolulu, HI: University Press, 2001.
Gollaher, D., Circumcision, NY: Basic Books, 2001.
<紀元前2000年 アーユルヴェーダ医学>
Magner, L., A History of Medicine, NY: Marcel Dekker, 1992.
<紀元前1500年 瀉血>
1800年代、奇妙な「機械ヒル」が用いられた。このバネ仕掛けの装置は、ヒルの食いつき
を真似たものである。
<紀元前1000年 グレヴィル・チェスター母趾>
四肢の切断に対する補綴の歴史は、エジプト、ギリシャ、インド、ローマ、ペルーなどの
古代文明にまで遡る。
Poland, H., tinyurl.com/47g7avl.
<紀元前600年 眼科手術>
バウアー写本(4世紀)がスシュルタの著作を含む現存する最古の文献である。
James, P., Thorpe, N., Ancient Inventions, NY: Ballantine, 1995.
Koelbing, M., Klin. Monatsbl. Augenheilkd. 168:103; 1976.
<紀元前600年 下水道システム>
IN.gov, tinyurl.com/482p73f.
<紀元前400年 ヒポクラテスの誓い>
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
<紀元前300年 『黄帝内経』>
Unschuld, P., Huang Di Nei Jing Su Wen,
Berkeley, CA: University of California Press, 2003.
<紀元前100年 ミトリダティウムとテリアカ>
Griffin, J., Br. J. Clin. Pharmacol. 58:317; 2004.
<70年 妊娠中絶>
RU-486は、卵子の子宮への着床を防ぐ、あるいは妊娠9週目まで流産を起こす作用をも
つ。胎動を感じた後の人工流産を違法とする米国で最初の法律が1821年コネチカット州で
制定された。「人工流産は、非合法国よりも合法国で、より頻繁に起こるわけではない」
という調査結果もある。
Guenin, L., Science 292:1659; 2001.
<70年 ディオスコリデスの『デ・マテリア・メディカ』>
Mann, J., Murder, Magic, and Medicine, NY: Oxford University Press, 2000.
<1025年 アヴィセンナの『医学典範』>
Conrad, L., in Companion Encyclopedia of the History of Medicine, vol. 1, Bynum, W., Porter, R.,
eds., NY: Routledge, 1997.
<1161年 ユダヤ人医師の迫害>
Lerner, B., tinyurl.com/qq67hz.
Prager, D., Telushkin, J., Why the Jews?, NY: Touchtone, 2003.
TIME, tinyurl.com/y9ej6dw.
<1242年 アル=ナフィスの肺循環>
後に肺循環について論じた研究者としてはM. セルベトゥス、R. コロンブス(コロンボ)
らがいる。
<1284年 眼鏡>
1268年、R. ベーコンは、科学的な原理に基づいて、レンズが視力の矯正に有用であること
を示した。
Magner, L., A History of the Life Sciences, NY: Marcel Dekker, 1979.
<1346年 生物兵器>
World Medical Association, tinyurl.com/4gvudq8.
<1510年 レオナルドの解剖図>
Lambert, K., tinyurl.com/4rhujfg.
Museum of Science, tinyurl.com/4zyjzw4.
<1527年 パラケルスス、医学書を焼く>
パラケルススは、以下の文章にもみられるように、態度が横柄であることで有名だった。
「教えてあげよう。我が毛髪の一本は、お前たち全員よりも多くを知っており、わが靴の
留め金は、ガレンやアヴィセンナよりも博識である」。パラケルススは、病気は星から来
る毒で起こると感じていた。C. ユングは、彼を「海。もっと不寛容な言い方をするなら
ば、カオス、あるいは人、神、悪魔が奇妙な液体を注ぎ込む錬金術のるつぼのようなも
の」と評している。
Ball, P., The Devil’s Doctor, NY: Farrar, Straus and Giroux, 2006.
Crone, H., Paracelsus, Melbourne: Albarello, 2004.
<1543年 ヴェサリウスの『ファブリカ』>
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
Saunders, J., O’Malley, C., The Illustrations from the Works of Andreas
Vesalius of Brussels, NY: Dover, 1973.
<1545年 パレの「合理的外科手術」>
Keynes, G., The Apologie and Treatise of Ambroise PareÅL, London: Falcon, 1951.
<1552年 戻ってきたエウスタキの名作群>
Cunningham, A., The Anatomist Anatomis’d, Surrey, UK: Ashgate, 2010.
Enersen, O., tinyurl.com/4l47wdf.
<1563年 悪魔の仕業>
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
Mora, G., in History of Psychiatry and Medical Psychology, Wallace, E., Gach, J., eds., NY:
Springer; 2008.
<1580年 産科鉗子>
Epstein, R., Get Me Out, Norton, 2010.
Vickers, R., Medicine, Chicago: Heinemann Raintree, 2010.
<1597年 組織移植>
移植に適した組織としては、皮膚、骨、腱、角膜などがある。1823年、ドイツの外科医C.
ブンガーは、鼻を再建するために皮膚移植を行った。
<1618年 ピエトロ・ダ・コルトーナの図>
Norman, J., in The Anatomical Plates of Pietro da Cortona, NY: Dover, 1986.
<1628年 循環器系>
ウナギなどの冷血動物の心臓は、ハーヴェイにとって有用だった。哺乳動物の心臓よりも
拍動が遅く、観察しやすかったからである。ハーヴェイは、脈が動脈自体の動きではな
く、心臓の収縮によって生ずる圧力に応じた受動的な応答であることを示した。血液循環
を唱えた他の研究者としては、M. セルヴェトゥス、R. コロンブス(コロンボ)、A. セ
サルピーノなどが知られている。
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
<1642年 殺人とウィルスング管>
Howard, J., Hess, W., History of the Pancreas, NY: Springer, 2002.
<1652年 リンパ系>
血液の循環系とは異なり、リンパ系にはポンプ器官がない。
Weissmann, D., tinyurl.com/4s8a9x5.
<1665年 『顕微鏡図譜』>
Westfall, R., Dictionary of Scientific Biography, Gillispie, C., ed., NY: Scribner, 1970.
<1678年 精子の発見>
一部の信心深い人々は、なぜ神が、ホムンクルスのような(すなわち、多くの人間が死ん
で行くような)浪費的なものを作ったのだろうかと、不思議に思った。
<1687年 疥癬虫の発見>
Ramos-e-Silva, M., Intl. J. Dermatology 37:625; 1998.
<1689年 結合双生児の分離>
Overall, C., in Feminist Ethics and Social and Political Philosophy, Tessman, L., ed., NY: Springer,
2009.
<1707年 脈拍時計>
Clendening, L., Source Book of Medical History, NY: Dover, 1960.
Gibbs, D., Med. Hist. 15:187; 1971.
<1726年 メアリー・トフトのウサギ>
Pickover, C., The Girl Who Gave Birth to Rabbits, Amherst, NY: Prometheus, 2000.
<1733年 チェセルデンの『オステオグラフィア』>
Kemp, M., Wallace, M., Spectacular Bodies, Berkeley, CA: University of California Press, 2000.
Neher, A., Med. Hist. 54:517; 2010.
<1747年 アルビヌスの人体図>
Cunningham, A., The Anatomist Anatomis’d, Surrey, UK: Ashgate, 2010.
Schiebinger, L., in The Making of the Modern Body, Gallagher, C., Laqueur, T., eds., Berkeley, CA:
University of California Press, 1987.
<1753年 壊血病の研究>
Bown, S., Scurvy, NY: St. Martin’s, 2005.
<1761年 剖検>
米国では、監察医は医師であるが、検死官は医師の資格を必要としない。検死官には、遺
体を同定し、親族に知らせ、死亡証明書に署名する義務がある。
<1761年 がんの原因>
Bloom, J., Texas Monthly 6:175; 1978.
<1761年 モルガニーの「病める臓器の叫び」>
Simmons, J., Doctors & Discoveries, Boston: Houghton Mifflin, 2002.
<1772年 迷路(内耳)の探索>
Bainbridge, D., Beyond the Zonules of Zinn, Cambridge, MA: Harvard University Press, 2010.
<1784年 病院>
Selzer, R., Taking the World in for Repairs, East Lansing, MI: Michigan State University Press,
1994.
<1784年 ラヴォアジエの呼吸>
Minet, C., Nature 86:95; 1911.
<1785年 ジギタリス>
Major, R., Classic Descriptions of Disease, Springfield, IL: Charles C. Thomas, 1978.
Panda, H., Hand Book on Herbal Drugs and Its Plant Sources, Delhi: National Institute of Industrial
Research, 2004.
<1792年 救急車>
Bell, R., The Ambulance, Jefferson, NC: McFarland, 2008.
<1796年 代替療法>
Rosenfield, A., foreword to Traditional, Complementary and Alternative Medicine, Bodeker, G.,
Burford, G., eds., Hackensack, NJ: World Scientific, 2006.
<1798年 種痘>
ジェンナーは、その成功にもかかわらず、白血球の関与する細胞性免疫機構については知
らなかった。最初、彼の仕事は攻撃され嘲笑された。
Mulcahy, R., Diseases, Minneapolis, MN: Oliver Press, 1996.
Riedel, S., Proc. Bayl. Univ. Med. Cent. 18:21; 2005.
<1816年 聴診器>
1850年代初頭、A. リアードとG. P. カマンは、両耳聴診器を発明した。膜が硬いとその固
有振動数が高いため、高音領域で効率よく働く。チェストピースの集音力は、ほぼその径
に比例する。径が大きいと低音を拾う効率も上がる。管が長過ぎると高音域が減弱する。
聴診器の物理学的原理については、次の図書参照:
Constant, J., Bedside Cardiology, NY: Lippincott Williams & Wilkins, 1999.
Porter, R., The Greatest Benefit to Mankind, NY: Norton, 1999.
<1829年 輸血>
Hurt, R., The History of Cardiothoracic Surgery, Pearl River, NY: Parthenon, 1996.
<1830年 医学の専門領域化>
Asimov, I., I. Asimov, NY: Bantam, 1995.
Weisz, G., Divide and Conquer, NY: Oxford University Press, 2006.
<1832年 1832年解剖法>
この犯罪により、バークは有罪判決を受け、処刑され、解剖された。
<1832年 輸液>
生理食塩水は、9gの塩化ナトリウムを1Lの水に解かしたもので、血液と同じ浸透圧(溶
質濃度)をもつ。
<1842年 全身麻酔>
1842年、学生 W. クラークは、エーテルで抜歯の苦痛を和らげた。麻酔の厳密な分子効果
については、未だ研究が続けられているが、脳や脊髄に影響を与えるものと考えられてい
る。
<1842年 イギリスの労働者の衛生状態>
Winslow, C., Science 51:23; 1920.
<1846年 パヌムの「フェロー諸島の麻疹」>
フェロー諸島の伝染病は、コペンハーゲンから旅してきた、麻疹に罹った家具職人から始
まった。
<1847年 ゼンメルヴァイスの手洗い>
敗血症を起こす致死的な細菌である連鎖球菌(Streptococcus)は、出産によって脆弱化し
露出した子宮に侵入する可能性がある。ゼンメルヴァイスはこの病原体を「死体微粒子」
と呼んだ。アメリカの医師O. W. ホームズ1世もまた、産褥熱が医師を介して患者から患者
へと広がることを指摘し、器具を清浄化するよう助言した。
Carter, K., Carter, B., Childbed Fever, New Brunswick, NJ: Transaction Publishers, 2005.
<1848年 虫垂切除>
Craft, N., The Little Book of Medical Breakthroughs, NY: Metro Books, 2010.
<1850年 検眼鏡>
1847年、イギリスの発明家C. バベッジは、フォン・ヘルムホルツが開発し推奨したものと
似た検眼鏡を創作した。網膜変性は、糖尿病、梅毒、白血病、脳疾患、腎疾患などに伴っ
て起こることがある。
McKendrick, J., Hermann Ludwig Ferdinand Von Helmholtz, NY: Longmans, 1899.
<1853年 皮下注射器>
Duce, A., HernaÅLndez, F., Hernia 3:103; 1999.
<1854年 ブロード通りのポンプハンドル>
Guynup, S., tinyurl.com/2fu6z.
<1854年 看護>
Henderson, V., ICN Basic Principles of Nursing Care, Geneva, Switzerland: International Council of
Nurses, 2004.
<1855年 細胞分裂>
R. レマックも、新たな細胞が既存細胞の分裂によって生ずることを発見した。F. ラスパ
イユは「omnis cellula e cellula」という言葉をつくった。
Simmons, J., The Scientific 100, NY: Kensington, 1996.
<1857年 てんかん治療>
てんかんの診断には脳磁図(MEG)も使われる。J. ジャクソンは、てんかんの解明につい
て、初期の重要な貢献をしている。
<1858年 グレイ解剖学>
最近の版では、レントゲン写真、電子顕微鏡写真なども含まれており、章立ても臓器系ご
とではなく、身体の部位ごとになっている。
<1861年 大脳における機能局在>
右利き男性の95%以上が、言語および発話を脳左半球で処理している。D. フェリエは、
様々な動物の脳について感覚野と運動野の位置を決定した。大脳における機能局在に関す
る歴史的に重要な研究者として、他に F. ドュ・プティ、J. ジャクソン、C. ウェルニッケ
らがいる。
<1862年 微生物病因説>
パスツールのワクチンの特筆すべき点は、弱毒株を用いて作られたという点である。E. ジ
ェンナーの場合には、牛痘を用いて天然痘に対する交叉免疫を誘導した。パスツールの仕
事は、消毒法により術中感染を減らそうというJ. リスターの考えに影響を与えた。
<1865年 消毒薬>
リステリン洗口液は、リスターに因んだ名称である。1862年頃、医師G. ティチェナーが
傷の消毒にアルコールを用いた。
Clark, F., Med. Libr. & Hist. J. 5:145; 1907.
<1866年 体温計>
1654年、F. デ・メディチ二世は、密封管型で気圧の影響を受けない温度計を作った。体温
計は、開拓時代のアメリカ西部では普及が遅れた。医師が鞍につけて運ぶカバンの中では
簡単に壊れてしまうようなデザインだったからである。
<1873年 らい病の原因>
Mycobacterium lepromatosis もまた、らい病(ハンセン病)を起こす。
<1879年 近代的脳手術>
Fox, M., Lucky Man, NY: Hyperion, 2002.
<1882年 帝王切開>
Sewell, J., tinyurl.com/4plwedj.
<1882年 コッホの結核講義>
骨格資料は、結核が先史時代から流行していたことを示している。2008年、約130万人が
結核で死亡している。
Nobelprize.org, tinyurl.com/4rv5vak.
<1883年 卵管切除>
Ellis, H., in Schein’s Common Sense Emergency Abdominal Surgery, Schein, M., Rogers, P.,
Assalia, A., eds., NY: Springer, 2010.
<1884年 局所麻酔薬としてのコカイン>
Hardy, T., Hardy, F., Thomas Hardy, Hertfordshire, UK: Wordsworth, 2007 (originally published in
1928).
<1890年 抗毒素>
Linton, D., Emil von Behring, Philadelphia: American Philosophical Society, 2005.
<1891年 ニューロン説>
Shepherd, G., Foundations of the Neuron Doctrine, NY: Oxford University Press, 1991.
<1892年 ウイルスの発見>
1901年、W. リードらは、最初のヒト・ウイルスである黄熱病ウイルスを発見した。
Adler, R., Medical Firsts, Hoboken, NJ: Wiley, 2004.
<1893年 アドレナリンの発見>
J. アーベルは、高峰の発見よりも前に、アドレナリンのベンゾイル化誘導体を単離した。
後日、高峰のアドレナリンは、おそらく純粋なものではなく、アドレナリンとノルアドレ
ナリン(ノルエピネフリン)の混合物だったことが判明した。交感神経系がアドレナリン
前駆体の合成を誘発する。1904年頃、F. シュトルツは、動物の抽出物を用いずにアドレナ
リンを合成し、これが人工合成ホルモン第一号となった。他のホルモンは、甲状腺、卵
巣、前立腺などからも産生される。ホルモンの中には、成長、代謝、食欲などを制御する
ものもある。
Carmichael, S., tinyurl.com/64v45a4.
<1894年 腺ペストの原因>
最初のペストの大流行は1330年代前半に中国で起こっており、1347年にはコンスタンチノ
ープルでも起こっている。
Cantor, N., In the Wake of the Plague, NY: Free Press, 2001.
Marriott, E., Plague, NY: Holt, 2003.
Moote, L., Moote, D., The Great Plague, Baltimore, MD: Johns Hopkins University Press, 2004.
<1895年 D. D. パーマーとカイロプラクティック>
Schneider, E., Hirschman, L., What Your Doctor Hasn’t Told You and the Health-Store Clerk
Doesn’t Know, NY: Penguin, 2006.
<1895年 X 線>
レントゲンの発見の前に、N. テスラがX線(まだ、そういう名前では呼ばれていなかった
が)に関する観察を始めていた。
Haven, K., 100 Greatest Science Inventions of All Time, Westport, CT: Libraries Unlimited, 2005.
<1897年 マラリアの原因>
G. グラッシらは、アノフェレス蚊だけがヒトにその病気を伝搬できることを示してい
た。マラリアは、赤血球の付着性を増し血管閉塞を起こす。マラリアの治療や予防にはク
ロロキンも使われる。
Poser, C., Bruyn, G., An Illustrated History of Malaria, Pearl River, NY: Parthenon, 1999.
Rosenberg, C., foreword to The Making of a Tropical Disease, Packard, R., Baltimore, MD: Johns
Hopkins University Press, 2007.
<1899年 アスピリン>
Shorter, E., in Cambridge Illustrated History of Medicine, Porter, R., ed., NY: Cambridge University
Press, 2009.
<1899年 除細動器>
1956年、P. ゾルは、除細動は開胸することなく適用できることを示した。M. ミロウスキ
ーらは、最初のICDsを開発した。除細動の歴史において重要な他の研究者としては、C.
カイト、N. グールビッチ、B. ロウン、C. ウィガーズ、W. クーウェンホーベンなどが知
られている。
<1899年 補聴器>
1700年代、補聴椅子が使われた。これは、空洞の肘掛けが共鳴器として働き、腰掛けた人
の耳元に開いた穴に音を届ける仕組みだった。
<1899年 精神分析>
C. ユング、A. アドラー、S. フロイトらが現代心理学の主な創始者とみなされている。哲
学者K. ポパーは「精神分析は偽科学である」と批判した。心理療法の効果は、プラシー
ボ効果と差がないという複数の研究結果もある。精神分析という言葉は、1896年に初めて
使用例がある。フロイトはJ. ブロイアーとの共著「ヒステリーの研究」の中で初めてこの
アイデアについて論じた。
Hart, M., The 100, NY: Kensington, 1992.
Reef, C., Sigmund Freud, NY: Clarion Books, 2001.
Storr, A., Feet of Clay, NY: The Free Press, 1996.
<1902年 遺伝の染色体説>
今日、生物の染色体数はさまざまであることがわかっている。ヒトは46本、チンパンジー
は48本、ウマは64本、マイマイガは62本といった具合である。
<1902年 睡眠病の原因>
Petersen, M., Our Daily Meds, NY: Farrar, Straus and Giroux, 2008.
<1902年 血管の吻合>
カレルは、ルルドの宗教施設での治療を目撃し、ある種の治癒は科学では説明できないと
述べ、一部の研究者の尊敬を失った。彼の優生学に関する意見も物議をかもした。
<1903年 心電計>
アイントーベンの細針は、矢に取り付けた水晶から作られた。水晶を熱し、弓でその矢を
射放つと、水晶が驚くほど細い糸へと引き延ばされる。この時、水晶の輝点が、印画紙上
に軌跡を残した。
<1903年 放射線治療>
フランスの写真家A. サン・ヴィクトールも放射活性を発見した。腫瘍中に存在する酸素
量を高めることにより、より多くの損傷性フリーラジカルが生ずる。定位放射線治療で
は、放射線ビームを標的に命中させるために極めて正確な方法を用いる。一般に、一つの
がんに様々な角度から照射するために、複数のビームを用いる。プロトンは、その飛程の
終点で大部分のエネルギーを放出するため、周囲の健康な組織にあまり傷害を与えないで
済む。ガンマ線が放射線治療に用いられることもあるが、これは、コバルト60などの放射
性同位元素の崩壊あるいはリニア加速器によって作られる。
<1905年 角膜移植>
V. フィラトフは、死体角膜を移植に用いる方法を普及させた。
<1906年 「 分析的な」ビタミンの発見>
当初、エイクマンは、玄米の外皮が脚気を治すと考え、ある化合物の不足が脚気を起こす
とは考えなかった。1912年、C. ファンクは、欠乏している物質がビタミンB1であることを
同定した。古代の中国、ギリシャ、エジプトでは、特定の食物が特定の病気を治すことが
知られていた。例えば、複数の古代文明において、鳥目の治療にレバーが推奨されてい
た。
Combs, G., The Vitamins, Burlington, MA: Elsevier Academic Press, 2007.
Haven, K., 100 Greatest Science Discoveries of All Time, Westport, CT: Libraries Unlimited, 2007.
<1906年 アルツハイマー病>
早期発症型アルツハイマー病の約半数が、遺伝子変異を親から受け継いでいる。AB前駆体
タンパク質の遺伝子は染色体21番上にあり、この染色体を余分に持っているダウン症候
群の患者のほとんど全てが40歳までにアルツハイマー病を発症する。コーヒーを多量に飲
む人は認知症となるリスクが下がるという研究結果がある。医療用マリファナもアルツハ
イマー病の進行を遅らせる可能性がある。頭部外傷がアルツハイマー病リスクを高めると
いう研究結果もある。アルツハイマー病研究における初期の発見者としては、O. フィッ
シャー、F. ボンフィグリオ、G. ペルシーニ、S. フラーらがいる。
<1907年 「 チフスのメアリー」の幽閉>
医師たちは、胆嚢を除去すれば病気が治ると考えていたため、マロンに手術の同意を求め
たが、自分を殺そうとしているのではないかと疑った彼女はその手術を拒んだ。
<1910年 水の塩素消毒>
Darnall Army Medical Center, tinyurl.com/48evjwo.
<1910年 エールリッヒの魔法の弾丸>
Simmons, J., The Scientific 100, NY: Kensington, 1996.
<1914年 フッ素入り歯磨き粉>
コロラド褐色斑は、非常に若い頃(2〜3歳)からフッ素を過剰に摂取した時に起こる。
フッ素は、発達期の歯を強化するとともに、口腔内に生え出た後の歯を保護する働きをも
つ。
<1914年 神経伝達物質>
一個のニューロンは、複数の神経伝達物質を分泌できる。一種類の神経伝達物質は、存在
する受容体によって興奮性にも抑制性にも働きうる[例、アセチルコリン受容体]。神経
伝達物質がある種の受容体(イオンチャネル型受容体)に結合すると、チャネルが開きイ
オンの流れが促進される。別の種類の受容体(代謝調節型受容体)では、細胞内シグナル
伝達経路を介して神経活動の変化が引き起こされる。
<1921年 ヒト成長ホルモン>
下垂体は、視床下部からHGH分泌ホルモンの刺激を受けるとHGHを放出する。HGH放出
は、ストレスや飢餓によっても誘導される。HGHは、体内の他の分泌腺も制御する。死体
から採った下垂体の一部が患者にクロイツフェルト=ヤコブ脳症を起こすという悲劇も起
こった。
Angier, N., tinyurl.com/4mafjag.
<1922年 くる病の撲滅>
ビタミンDの過多や過少は、早老症の原因となる。ビタミンDは、細胞増殖を制御し、ある
種の自己免疫疾患やがんを抑制する。
<1922年 インスリンの製造>
N. ポーレスクは、最初にインスリンを発見したが、不純物を含んだ彼の標品が患者に使
われることはなかった。インスリン発見にまつわる話は嫉妬と悪意に彩られている。バン
ティングとJ. J. R. マクロードがインスリン発見に対してノーベル賞を受賞した時、「ベス
トは不当に受賞から除外された」と考えたバンティングは、ベストに賞金の一部を分け与
えた。J. コリップは、インスリン抽出物の精製を手伝った。糖尿病は、心臓病や網膜障害
を起こすことがある。自己免疫による攻撃は、I型糖尿病(若年性糖尿病とも呼ばれる)の
主な原因の一つである。インスリンは、筋肉や肝臓でグルコースからグリコーゲンへの変
換を制御する。古代には、尿中の糖を口で味わうことによって診断されていた。
Welbourn, R., in Companion Encyclopedia of the History of Medicine, vol. 1, Bynum, W., Porter,
R., eds., NY: Routledge, 1997.
<1922年 自白剤>
Rejali, D., Torture and Democracy, Princeton, NJ: Princeton University Press, 2007.
<1924年 人間の脳波図>
Bear, M., Connors, B., Paradiso, M., Neuroscience, NY: Lippincott, 2006.
<1925年 近代的な助産術>
Hanson, K., in Images of Pastoral Care, Dykstra, R., ed., St. Louis, MO: Chalice Press, 2005.
Sullivan, N., tinyurl.com/4gf6qwt.
<1926年 レバー療法>
患者の血液が大型で未熟な赤血球を含む場合、悪性貧血が原因の一つとして考えられる。
治療法としてはB12補充がある。赤血球が古くなって死ぬと脾臓で分解されるが、そこで放
出された鉄は、血液に戻され、骨髄に運ばれて新たな赤血球の産生に使われる。悪性貧血
は、神経損傷を引き起こすこともある。
<1928年 鉄の肺>
DeJauregui, R., 100 Medical Milestones that Shaped World History, San Mateo, CA: Blue Wood
Books, 1998.
Eiben, R., in Polio, Daniel, T., Robbins, F., Rochester, NY: University of Rochester Press, 1999.
<1928年 ペニシリン>
抗生物質は、自然界で細菌やカビが他の地中微生物と競合する際に優位性を与えるもので
あるという説がある。しかし、アメリカの生化学者S. ワックスマンは、これらの微生物生
産物は「純粋に偶然の産物」であると示唆している。
<1929年 IUD>
IUDは、子宮内膜を刺激し、受精卵の着床を困難にする。IUDから膣に垂れた糸は、使用
者や医師がIUDが正しい位置に装着されていることを確かめること、そして、医師がそれ
を外すことを容易にしている。IUDが性病の伝染を防ぐことはない。
<1929年 医療自己実験>
Freed, D., Lancet 330:746; 1987.
<1935年 スタンリーの結晶化病原体>
Creager, A., The Life of a Virus, Chicago: University of Chicago Press, 2001.
<1935年 サルファ剤>
ペニシリンはサルファ剤よりも前に発見されたが、臨床応用されたのはサルファ剤よりも
後である。また、P. エールリッヒらは、ヒ素が梅毒の治療に使えることを早い時期に発見
していたが、100%有効ではなかった。
Grundmann, E., Gerhard Domagk, Munster: Lit Verlag, 2005.
<1937年 抗ヒスタミン剤>
H2受容体は、胃酸分泌を阻害するシメチジン(タガメット)などの薬剤の標的である。H1
抗ヒスタミン剤は、吐き気や乗り物酔いの薬として使える。
Healy, D., The Creation of Psychopharmacology, Cambridge, MA: Harvard University Press, 2002.
<1937年 黄熱病の原因>
Crosby, M., The American Plague, NY: Berkley, 2007.
<1938年 電気けいれん療法>
Cody, B., tinyurl.com/4hv3kh4.
Hartmann, C., Psychiatr. Serv. 53: 413; 2002.
<1943年 透析>
腹膜透析では、透析液を腹腔内に注入し、毒素が腹膜を通して透析液中に希釈された後に
液を取り除く。
Maher, J., Replacement of Renal Function by Dialysis, Dordrecht, Netherlands: Editor Kluwer,
1989.
<1944年 BT シャント術>
Nuland, S., Doctors, NY: Black Dog & Leventhal, 2008.
<1946年 経眼窩式ロボトミー>
フリーマンは、しばしば電気ショックでロボトミー患者に麻酔をかけた。ロボトミーは男
性に比べ女性の方が二倍多かった。
Enersen, O., tinyurl.com/4gk77wa.
<1947年 インフォームド・コンセント>
ヘルシンキ宣言ではもともと、治療研究(患者の利益となる可能性のあるもの)と非治療
研究(患者の利益にはならないが、医学的知識を得るためのもの)を区別していた。
<1948年 ランダム化比較試験>
比較有効性研究(comparative effectiveness research)は、電子カルテを用いた大規模な多施
設共同研究の場合、有用なこともある。
Enkin, M., preface to Randomized Controlled Trials, Jadad, A., Enkin, M., Malden, MA: BMJ
Books, 2007.
<1949年 鎌状赤血球貧血の原因>
鎌状赤血球症患者は西アフリカで多い。その地域ではマラリアの流行がみられるが、鎌状
赤血球症患者はマラリアへの抵抗性を示すためである。鎌状赤血球症モデル・マウスを用
いた研究では、ヘム(ヘモグロビンの成分)の血漿中濃度が、マラリア病原体が病気を起
こせるか否かの決定要因の一つであることが示唆されている。また、こうしたマウスで
は、一酸化炭素濃度が高いことがヘモグロビンの安定化をもたらし、病的免疫状態の緩和
につながるという可能性も示唆されている。
<1949年 マンモグラフィー>
化学療法は、がん細胞においてDNA損傷を起こすが、速く増えている正常細胞においても
DNA損傷を起こす。マンモグラフィーの歴史における重要な研究者としては、S. ワレ
ン、J. ガーション=コーエンらがいる。
<1950年 抗精神病薬>
抗精神病薬によって、患者の「頭の中の声」は消え去らないかもしれないが、軽減され、
さほど厄介でなくなる。歴史の浅い薬剤は、しばしば非定型薬と呼ばれる。クロザピン
は、極端な体重増加をもたらすことがある。全ての抗精神病薬は痙攣発作を引き起こす可
能性が高い。J. ハモンは、クロルプロマジンに関する初期の研究を行った。
Graedon, J., Graedon, T., tinyurl.com/4f3z6b7.
Turner, T., Brit. Med. J. 334:7; 2007.
<1951年 HeLa 細胞>
Skloot, R., The Immortal Life of Henrietta Lacks, NY: Crown, 2010.
Skloot, R., tinyurl.com/y8h5trq.
<1951年 喫煙とがん>
喫煙と発がんに関する初期の、他の重要な研究としては、アメリカ人E. L. ワインダー、E.
A. グラハムらの研究、1939年のドイツでの研究などがある。
Wolfson, M., The Fight Against Big Tobacco, Hawthorne, NY: Aldine Transaction, 2001.
<1952年 羊水検査>
医療が進むと、こうした技術がより多く用いられ、発育中の胎児の病気を治す機会が増
え、結果的に人工中絶を考える必要性が低くなるかもしれない。臍帯細胞の状態を知るた
めに、胎児の血液採取が行われることがある。
Magill, F., Great Events from History, Hackensack, NJ: Salem Press, 1991.
<1952年 人工心臓弁>
人工心臓弁の歴史における他の重要人物として、A. カーパンティエ、N. スター=ブラウ
ンウォルト、D. ハーケンらがいる。
<1953年 DNA の構造>
DNAは、一部の病気の遺伝的なリスクを調べるために用いられることもある。ヒト細胞に
健康な遺伝子を挿入する遺伝子治療の研究が続けられている。遺伝子の活性調節機構の解
明は、DNAの機能を知る上で重要である。
Ridley, M., jacket flap for DNA, Krude, T., ed., NY: Cambridge University Press, 2004.
<1953年 人工心肺>
Stanley, A., Mothers and Daughters of Invention, Piscataway, NJ: Rutgers University Press, 1995.
<1954年 内視鏡>
Fanu, J., The Rise and Fall of Modern Medicine, NY: Carroll & Graf, 2000.
<1955年 経口避妊薬>
プロゲスチンのみを含むミニピルは、1970年代初頭に開発された。これは、単に子宮頸部
や子宮の状態を変化させ、妊娠の確率を減らすに過ぎなかった。ピル開発に関わった他の
重要な科学者としては、J. ロック、M. C. チャンらがいる。
<1955年 プラシーボ効果>
胃潰瘍に対するプラシーボの効果は、しばしば胃酸分泌阻害剤と同等であることが内視鏡
観察で確認されている。抗うつ剤に関する最近の多くの臨床治験では、糖の錠剤(プラシ
ーボ)にも同様の緩和効果があることが示されている。
Shapiro, A., Shapiro, E., in The Placebo Effect, Harrington, A., ed., Cambridge, MA: Harvard
University Press, 1999.
<1955年 ポリオワクチン>
H. コプロウスキーはポリオ研究における重要人物の一人である。多くのワクチンが複数
回の接種を必要とする。1955年、カッター・ラボラトリーズが生きたポリオ・ウイルスで
汚染されたワクチンを生産し、約260例のポリオ感染が起こった。OPVの一つの利点は、
滅菌した注射針を必要としないことである。
Offit, P., The Cutter Incident, New Haven, CT: Yale University Press, 2005.
<1956年 骨髄移植>
骨髄移植(血液幹細胞移植)によって治療される他の病気としては、鎌状赤血球貧血症、
リンパ腫、多発性骨髄腫などがある。幹細胞は表面に抗原を持ち、他の移植臓器と同様に
拒絶を受ける。移植片対宿主病を抑えるために、レシピエントは免疫抑制剤を服用する必
要がある。ドナー細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血などから得られる。患者(レシピエン
ト)から骨髄を抜く場合、悪性細胞が残らないように骨髄細胞を一掃してから移植する。
骨髄移植は、幹細胞移植の最初の例である。
Carrier, E., Ledingham, G., 100 Questions & Answers about Bone Marrow and Stem Cell
Transplantation, Sudbury, MA: Jones & Bartlett Learning, 2004.
<1956年 心肺蘇生法>
胸部圧迫のみによる蘇生は、小児では大人ほど有効でない。
<1957年 パーキンソン病治療薬レボドパ>
ドーパミンは血液脳関門を通過しない。1967年、G. コジアスが効果のあるレボドパ治療
を開発した。パーキンソン病の診断にはPETスキャンが有用である。
<1957年 医用超音波>
周波数の高い音波ほど、鮮明な画像を与えるが、体内深くまで到達することができない。
超音波の発信には圧電材料が用いられる。反射される波の量は、境界面における組織の相
対密度に依存する。他にも多くの医師や技術者が、医用超音波の開発に貢献した。
Khurana, A., in Donald’s Practical Obstetric Problem, Misra, R., ed., New Delhi: Edward Arnold
Publishers, 2009.
<1958年 股関節置換>
1960年、S. バウが象牙製の骨盤部品を使い始めた。
Neary quoted in Elliott, J., tinyurl.com/4d3nrqw.
<1958年 松果体>
Strassman, R., DMT, Rochester, VT: Park Street Press, 2000.
<1959年 抗体の構造>
ある種のがんを認識するモノクローナル抗体(単一の免疫細胞に由来する抗体)が見出さ
れている。
<1960年 レーザー>
Hecht, J., Understanding Lasers, Piscataway, NJ: IEEE Press, 2008.
<1961年 胸腺>
Marks, G., Encyclopedia of Jewish Food, Hackensack, NJ: Wiley, 2010.
<1962年 人体冷凍保存>
1970年代、研究者たちは、-20˙Cで数年間保存したネコの脳の電気活動を記録している。
Alam, H., tinyurl.com/4h3kku2.
<1962年 サリドマイド薬禍>
TIME, tinyurl.com/yg5y8m7.
<1963年 認知行動療法>
数学者J. ナッシュは「「自分が下している結論が現実にはありそうもない」ということを
自分自身に説得する推論過程を通して、統合失調症をかなりの程度克服できた」と述べた
ことで有名である。幻覚と幻聴についても、それらに慣れることで、支配される程度を減
らすことができたという。
<1964年 βブロッカー>
プロプラノロールはインデラルという商品名で売られた。
<1964年 手の移植>
手の移植を受けるレシピエントは、その免疫系を「再教育」し拒絶を軽減するために、同
じドナーから骨髄移植を同時に受ける場合もある。
<1966年 膵臓移植>
ドナーの膵臓から産生された消化酵素は患者の腸や膀胱へと排出される。移植によりイン
スリン注射が不要となり、糖尿病の合併症を軽減することができる。
<1967年 CT スキャン>
数学者J. ラドンは、CT画像を再構築するための基本アルゴリズムを考案した。
<1967年 心臓移植>
Fitzpatrick, L., tinyurl.com/ylrlnmp.
<1970年 逆転写酵素とエイズ>
レトロウイルスRNAのDNAコピーが宿主DNAに組込まれると、この結果生じた「プロウイ
ルス」は、感染細胞ゲノムの永続的な一部となる。残念ながら、レトロウイルスの阻害薬
は、その標的であるプロテアーゼや逆転写酵素が急速な変異により耐性となるため、効力
を失いやすい。抗ウイルス剤は、組み合わせて用いられる。最初に活発に研究されたレト
ロウイルスは、1911年にP. ラウスによって単離されたトリの腫瘍ウイルスだった。[訳
注:京都大学の藤浪鑑も、ラウスとほぼ同時期にトリ肉腫ウイルスを発見している。]
1979年、R. ギャロは、最初のヒトのレトロウイルスHTLV-1を発見した。[訳注:HTLVの
発見と解析には、高月清、日沼頼夫、三好勇夫、吉田光昭ら日本の研究者の貢献が大き
い。] ある種の前立腺がんにレトロウイルスが関与するという説もある。
<1972年 シクロスポリン>
サンド社(現ノバルティス社)に在籍していた微生物学者J. F. ボレルも、シクロスポリン
の発見に貢献した。1967年、最初の心臓移植の成功に世界は熱狂したが、その患者は18
日しか生存せず、他の患者たちも自分自身の免疫系の犠牲となった[訳注:移植した心臓が
拒絶された結果、死亡した]。
Hollingham, R., Blood and Guts, NY: Thomas Dunne Books, 2009.
Werth, B., The Billion-Dollar Molecule, NY: Simon & Schuster, 1995.
<1973年 スタチン>
血中コレステロールの多くは、食物由来ではなく肝臓で合成されたものである。コレステ
ロールは、膜の重要な構成要素であり、ホルモン類の合成にも使われる。HDL(高比重リ
ポタンパク質)は、コレステロールを肝臓に運び戻す。遠藤は、カビが細菌(細胞壁にコ
レステロールを含む)に対抗する手段として、コレステロール産生酵素の阻害物質を産生
するのであろうと推理した。興味深いことに、血中コレステロール濃度が高くない人にも
動脈硬化性プラークは生じうる。
Landers, P., tinyurl.com/4drujob.
<1976年 がん遺伝子>
普通、がんは多段階の過程を経て生ずる。すなわち、細胞は、数個の変異を受け、がん原
遺伝子の機能亢進とがん抑制遺伝子の機能低下を来す。
<1977年 人工内耳>
人工内耳は正常な聴力を回復させるわけではない。人工内耳の装着後、患者は新たな音へ
の適応を助ける治療を受けなければならない。W. ハウスも人工内耳の歴史において重要
な役割を演じている。今日では、人工内耳は両耳に対して装着される。
<1977年 核磁気共鳴画像法(MRI)>
NMR(核磁気共鳴)は、1937年、物理学者 I. ラビによって報告された。1945年、物理学
者F. ブロッホとE. パーセルがその技術を改良した。1966年、R. エルンストがフーリエ変
換スペクトル解析法を開発し、振動数の関数としてNMRシグナルのスペクトルを作る上で
RFパルスがいかに有用であるかを示した。P. ラウターバーとP. マンスフィールドは、磁
磁気共鳴スキャンから画像を作り出す技術への貢献によってノーベル賞を受賞した。心臓
ペースメーカーや金属製の移植物をもつ患者は、磁気の影響が大きいためスキャンを受け
ることができない。
<1978年 初の試験管ベビー>
TIME, tinyurl.com/ye3zju7.
<1981年 胎児手術>
Camosy, P., quoted in The Making of the Unborn Patient, Caspar, M., Piscataway, NJ: Rutgers
University Press, 1998.
<1981年 腹腔鏡手術>
内視鏡を用いた胸部の手術を「胸腔鏡手術」と呼ぶことがある。C. ネザットはビデオ内視
鏡の開発に重要な貢献をした。
Spaner S., Warnock, G., J. Laparoendosc. Adv. Surg. Tech. A., 7:369; 1997.
<1982年 プリオン>
ガイダシェックは、クールー病を霊長類に感染させ、発病には数年の潜伏期間を要するこ
とを示した。1980年代、スクレイピーを持った羊の一部を食べた牛が「狂牛」となった。
スクレイピーにかかった羊は体から毛を擦り落としてしまう。危険なPrP-Scは自然に生ず
る場合もあると言われている。
<1984年 テロメレース>
テロメレースは、一本鎖RNAを鋳型として一本鎖DNAを合成する逆転写酵素である。J. シ
ョスタクもテロメレースの発見に関与した。テロメアの短縮は、アルツハイマー病、心臓
血管疾患、糖尿病、がん、小児期の心的外傷、長期のうつなどとも関連付けられている。
Greider, C., Blackburn, E., Scien. Amer. 274:92; 1996.
<1991年 延命措置を望まない>
Woodruff, W., The Army Lawyer, 4: 6; 1989.
<1998年 RNA 干渉>
RNAiは、細胞をトランスポゾン(細胞DNAに損傷を与える転移性遺伝物質)から守るた
めにも役立っている。RNAiを治療に用いる場合の困難の一つとして、望ましくないオフタ
ーゲット効果(似た配列を含む別のmRNAを阻害してしまう現象)がある。RNAiは、クロ
マチン構造変化やDNAメチル化促進などにも関わる。RNAiは、線虫では数世代にわたっ
て伝達される場合がある。
Arney, K., in Defining Moments in Science, Steer, M., Birch, H., Impney, A., eds., NY: Sterling,
2008.
<2000年 ロボット手術>
ロボット手術は、人工部品(例えば股関節)のコンピューターによる加工にも使われてい
る。
Drehle, D., tinyurl.com/2ee7njs.
<2001年 遠隔手術>
遠隔診断では、米国で行ったMRIスキャンを電子的に海外の画像診断医に送り、所見を迅
速に返してもらうことができる。拡張現実を用いることによって、外科医の見ている術野
の上に画像を重ねて見ることもできる。例えば、ある臓器の表面に内部構造が「見える」
ようにすることもできる。
<2003年 ヒトゲノムプロジェクト>
Donovan, A., Green, R., The Human Genome Project in College Curriculum, Lebanon, NH:
Dartmouth, 2008.
<2005年 顔面移植>
顔面移植は、美容的な意義があるだけでなく、患者が口から食べたり飲んだりできるよう
にするために行う場合もある。拒絶抑制薬は、レシピエントの発がんリスクを高める。
<2006年 臓器を育てる>
型(足場)は複数の材料で構築することもあり、生物分解を受けて溶解するものもある。
人工尿道は、管状メッシュの内部に筋肉細胞、外側に内皮細胞を加えることによって作る
ことができる。細胞は患者の膀胱から採取される。
Andrews, W., tinyurl.com/37z4wf.
<2008年 ヒト・クローニング>
生殖的クローニングにおいては、クローンは厳密に同等ではない。体細胞のDNAは変異や
特定のメチル化パターンを持っている可能性があるためである。また、ミトコンドリア
DNAはドナーの卵に由来する。子宮や卵の環境が胎児の発達に影響を与え、その特徴の一
部を決める。植物の場合は、単にその一部を切り取ることでクローンが得られる。今日ワ
イン作りに使われているぶどうは、2000年ほど前に生じたぶどうのクローンである。研究
においては、クローニングで同じ遺伝的設計図をもつ動物を作ることにより、実験中に起
こる多くの変数(不確定要素)を除外することができる。応用分野としては、アルツハイ
マー病、パーキンソン病などの組織変性疾患の治療法開発などが考えられる。研究者たち
は、血液や皮膚の細胞からiPS細胞を作り、これらを心筋や脳・脊髄神経へと分化誘導させ
ている。こうした細胞は、損傷した組織の修復に使えるかもしれない。正常な心臓細胞を
クローニングし、心臓の損傷部位に注入することによりある種の心臓病は改善できるかも
しれない。SCNTの後、核と卵の合体物は、電気刺激によって細胞分裂を誘導される。
Bailey, R., foreword to Gralla, J., Gralla, P., Complete Idiot’s Guide to Understanding Cloning, NY:
Alpha, 2004.