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重度・重複障害の教育、訪問教育 歴史的経過と教育の実際

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重度・重複障害の教育、訪問教育

歴史的経過と教育の実際

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重度重複障害の定義

重度の知的障害と重度の肢体不自由を併せ持つ者

絶えず医療管理のもとにおかれる者 障害の状態が進行性の者 身体障害が重度ではないが、重度の知的障害と併せて自傷・他傷・異食などの問題行動がある者

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文部省研究班の分類(大島,1971)

IQ 身体障害

85以上 85~75 75~50 50~25 25以下

身体障害なし

日常生活可

軽度の障害 行動異常、盲・聾

中度の障害

高度の障害

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療育の歴史

小林提樹医師の努力(昭和20年代):乳児を日赤特別病棟で療育する

国立精神薄弱児施設設置促進運動の展開(昭和31年前後)

「秋津療育園」開設(1959):自宅で行っていた 「島田療育園」(1961):東京-医療とのかかわりで解決を図る

「びわこ学園」(1963):滋賀-精神薄弱児の発達保障

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小林堤樹:第5の医学

第1医学:保健医学 第2医学:予防医学 第3医学:治療医学 第4医学:リハビリテーション医学 第5の医学:

– 重度重複障害、老人 – 死に焦点を置いた医学:ターミナルケアにつながる考え方

資料:小林提樹

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糸賀一雄:発達保障

「できる」だけでなく内面化による人格の形成 各発達段階に固有の価値を認める 発達はすべての子供の平等の権利である 障害児への取り組みは障害児の発達の可能性の発見である。それは人間的価値の発見を社会にうち立てることである。それは社会変革である

この子らに世の光を

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その後(1963年から現在)

指定重症児施設の時代(1963~1966) – 10カ所の国立療養所に設置

施設法制化、拡大の時代(1967~1975) – 児童福祉法改正(施設が法的に位置づけ)

施設以外の処遇の模索(1976~1985) – 入所以外の処遇

処遇多様化の時代(1986~現在) – 施設機能の多様化、在宅・地域生活に関する支援体制の確立

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重心児の原因と発生率

発生時期 主要な原因 発生率(‰)

胎生期 遺伝子異常、染色体異常 脳血管障害、低酸素症 脳形成異常

0.6

周生期から 新生児期まで

低酸素脳症、脳循環障害 低血糖症、髄膜炎 高ビリルビン血症

0.4

生後5週から18週まで

脳炎、髄膜炎、脳症、 頭部外傷、後遺症

0.3

27.3%

36.3%

28.1%

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予後

1歳から15歳の10年間生存確立 – 重度ほど少ない – 寝返り不可・経管栄養(35%、余命4,8年)

死亡原因 – 肺炎、呼吸不全、心不全 – 窒息、突然死

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重症心身障害児、施設の実際

重心児の実態 施設の機能と役割

– 生命と生活を守る(24時間体制) 医師、看護師、指導員、保育士、介護福祉士

– 療育の提供(治療と教育) – QOLを考慮した生活の場 – 在宅支援

ビデオ CTスキャン画像

施設一欄 映像

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重度重複障害

Nigata Univ.-Nagasawa Labo. 12

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重心児の実態

全国の重心児者数 41.300人(2011) – 超重心児者の増加

頻度(愛知県) 0.03% 0.05%(2014) 施設数

– 183カ所、18289床(2004) – 14.300人(2011)

入所率ほぼ100% 在宅 2.7万人程度(2008)

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日課

健康管理と維持 基本的生活習慣

– ほとんど介助を要する 生活援助の基本

– 個別支援:設定活動(感覚訓練、粗大運動、視・聴・知覚訓練)

– 生活経験の拡大:行事、文化的活動 – 家族とのふれあい

毛布ブランコ、小麦粉粘土、 マッサージ、砂・豆などの感触遊び、プール、散歩、

サーキット運動、 音楽リズム、リトミック、 エアートランポリン

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超重度障害への教育内容(鈴木、2013)

注目する対象児の変化 – 動き、開瞼、筋緊張、表情、注視、呼吸、把握・操作、拒否、生理学的指標

脳機能障害の程度により、かなり異なっている – 重度:感覚入力に重点 – 軽度:運動出力に重点

感覚統合療法

(参考)

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問題と今後の課題

重症児の処遇が病院主体で進んだ:医療中心 生活上の問題:日課内容の貧しさ 障害の重度化、高齢化の問題 卒業後の問題(行き場がない) 重症心身障害児施設の入所事由の多様化 入所機能向上の必要性:超重症児への対応

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家族の負担・課題

養育負担 – 母親への負担集中。きょうだいの養育 – 福祉サービスが十分ではない

医療的ケア – 精神的肉体的、経済的負担

家族中心の連携と関係機関の支援 – 訪問看護、居宅介護事業などの支援 – 関係機関の相互連携 – 心の支え、話し合いの場

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学校における医療的ケア

医療的ケア:痰の吸引、経管栄養 学校看護師(非常勤)が医療的ケアを担当

– 教員は、看護師のもと、手伝うことができる – 校長の許可、研修、実施体制

メリット:最重度の子どもがみんなと同じ教育を受けられる

課題:看護師だけに任せていいのか?実施体制の問題

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今後の方向性

ライフステージにあった選択 – 家庭→通所→入所 – ショートステイ:短期一時保護 – レスパイトケア:介護者の休養のための保護

家族への支援 在宅の重心児へのサポート

– 訪問看護、デイサービスなど

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重度重複障害に関する研究

主観的幸福感とソーシャルサポートの満足度 調査

利用サービスの質、家族のサポート、行政サービスの質、近隣者のサポート、利用者サービスの量的側面

主観的幸福度に関する因子

阿尾(2015)特殊、52(3)

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訪問教育の歴史

法的根拠 – 学校教育法第75条第2項:「疾病により療養中の児童及び生徒に対して、特別支援学級を設け、又は教員を派遣して、教育を行うことができる」

– 学校教育法施行規則第131条第1項:重複障害や教員派遣の場合、特別の教育課程を適用できる

歴史的経過

資料1,2

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新潟県の場合(1)

病弱児教育の開始 – 三条結核病院(1953)

児童福祉施設への訪問教育 – 県立あけぼの学園(長岡市)(1955)

肢体不自由児施設への訪問教育 – 県立はまぐみ学園(1958)

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新潟県の場合(2)

礎小学校(1971) – 心臓病の児童への在宅訪問教育 – 訪問教育実現へ(病弱児2名)

国立療養所新潟病院親の会の陳情 新潟県第二次総合教育計画(1971)

– 就学猶予・免除者438名(何も措置を受けていない) – 訪問指導の施策化

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新潟県の場合(3)

柏崎市比角小学校(1972)訪問学級 – 児童5名(心臓病、水頭症、重度知的障害)

訪問教育の制度化(1979) 院内学級:難病の入院患者を対象

– 新潟市民病院(東曽野木小学校の院内学級) 新潟大学病院(白山小学校,柳都中学校の院内学級) 県立がんセンター新潟病院(鏡淵小学校,白新中学校の院内学級)

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訪問教育の現状

在宅と施設 週3回、1回2時間程度 自立活動を主とする 対象(2012年度)

– 小中学部2,228人、高等部949 人の計3,177人(在宅:施設、2:3)

2002年度から横ばい状態 – 医療的ケアの充実で教育可能者が増えている(?)

形態

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指導の実際(在宅訪問教育の例)

母親からの聞き取り・体調の確認 授業(カリキュラム:自立活動)

– 挨拶、歌、マッサージ – 機能訓練(関節曲げのばし、体位変換、座位・移動などの訓練) – 感覚遊び(砂、粘土、のり、温水など) – 運動(大玉、トランポリン、毛布ブランコ-感覚統合・前庭刺激) – 音楽(様々な音楽、楽器)、リズム – 食事指導(飲み込み、食べさせ方、スプーンの使い方) – 散歩

母親との懇談

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問題、課題

教育措置:授業時間 教育条件整備:訪問回数と時間の拡大 指導体制の充実:教師の経済的負担、危険、健康管理

超重症児への対応 – 医療的ケア

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重心児にかんする根本的な問題