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国際コンクリート連合シンポジウム(fib Symposium PRAGUE 2011)参加報告 田口 史雄 1.はじめに 平成23年6月8日から10日までの3日間、チェコ共 和国のプラハ(図-1)において、国際コンクリート連 合のシンポジウム(fib Symposium PRAGUE 2011)が 開催されました。寒地土木研究所から、耐寒材料チー ムの田口が参加しましたので、ここに報告します。 2.fib fib は、国際コンクリート連合(International Federa- tion for Structural Concrete,fédération internationale du béton)の略です。現在39 ヶ国のグループ等で構成 され、コンクリート建設における技術、経済、景観配 慮そして環境性能に関する科学的、実用的研究の国際 レベルでの発展を目指しています。fib は、1998年に 欧州国際コンクリート委員会CEB(Euro-International Concrete Committee,Comité Euro-Internationale du Béton)と国際プレストレストコンクリート連合 FIP (International Federation for Prestressing, Fédération Internationale de la Précontrainte)が合併し て出来た国際組織です。当研究所の魚本理事長も、 Scientific Committee のメンバーです。日本では、2002 年に大阪でコングレスが開催されています。 今回のシンポジウムは、プラハ9地区にある Clarion Congress Hotel Prague(写真-1)で行われ ました。主催者発表によると、50 ヶ国400件を超える 概要の提出がなされ、最終的には200数十編のフルペ ーパーが登録されました。 3.発表 シンポジウムの主なテーマは、 ・New Model Code – expected impacts and practice of use ・Concrete and construction technology – transfer of experience ・Modelling and design of outstanding and innovative structures ・Structures integrated into environment in a balanced way ・Combination of structural concrete with other materials です。 図-1 プラハの位置 写真-1 会場(Clarion Congress Hotel Prague) 報 告 52 寒地土木研究所月報 №700 2011年9月

国際コンクリート連合シンポジウム(fib …国際コンクリート連合シンポジウム(fib Symposium PRAGUE 2011)参加報告 田口 史雄* 1.はじめに

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国際コンクリート連合シンポジウム(fib Symposium PRAGUE 2011)参加報告

田口 史雄*

1.はじめに

 平成23年6月8日から10日までの3日間、チェコ共和国のプラハ(図-1)において、国際コンクリート連合のシンポジウム(fib Symposium PRAGUE 2011)が開催されました。寒地土木研究所から、耐寒材料チームの田口が参加しましたので、ここに報告します。

2.fib

 fib は、国際コンクリート連合(International Federa-tion for Structural Concrete,fédération internationale du béton)の略です。現在39 ヶ国のグループ等で構成され、コンクリート建設における技術、経済、景観配慮そして環境性能に関する科学的、実用的研究の国際レベルでの発展を目指しています。fib は、1998年に欧州国際コンクリート委員会 CEB(Euro-International Concrete Committee,Comité Euro-Internationale du Béton)と国際プレストレストコンクリート連合 FIP

(International Federation for Prestressing,Fédération Internationale de la Précontrainte)が合併して出来た国際組織です。当研究所の魚本理事長も、Scientific Committee のメンバーです。日本では、2002年に大阪でコングレスが開催されています。 今回のシンポジウムは、プラハ9地区にあるClarion Congress Hotel Prague(写真-1)で行われました。主催者発表によると、50 ヶ国400件を超える概要の提出がなされ、最終的には200数十編のフルペーパーが登録されました。

3.発表

 シンポジウムの主なテーマは、 ・New Model Code – expected impacts and

practice of use ・Concrete and construction technology – transfer

of experience ・Modelling and design of outstanding and

innovative structures ・Structures integrated into environment in a

balanced way ・Combination of structural concrete with other

materialsです。

図-1 プラハの位置

写真-1 会場(Clarion Congress Hotel Prague)

報 告

52 寒地土木研究所月報 №700 2011年9月

 さて、シンポジウムの開会では、チェココンクリート協会 Milan Kalný 会長の歓迎挨拶、チェコの紹介(写

真-2 バイオリン演奏とマルチメディアショウ)、György L.Balázs fib 会長のシンポジウム開会挨拶、授与式、そして基調講演と続きました 。 基調講演では、ドイツのドレスデン工科大学のManfred Curbach 教 授 が、「CONCRETE LIGHT-POSSIBLITIES AND VISIONS(コンクリートの軽量化-可能性とビジョン)」と題しての基調講演を行いました。講演内容は、当研究チームにおいて開発、普及を促進している技術「スマートショット工法(連続繊維メッシュと短繊維混入吹付けコンクリートを併用した補修補強工法)」と似かよった工法で、「TRC

(textile reinforced concrete)strengthening layer by spraying (連続繊維を補強材としてかつ短繊維コンクリート吹付けで固定する工法)」(写真-3)と呼ばれ、桁や柱、ビルの屋根の補強用として使用されている事例が紹介されました。この様に、海外においても同じような問題点を抱え、似たような発想で、技術開発や普及がなされて来ていることを実感しました。さ

らに、これらの textile reinforced concrete を利用したプレハブのセグメントを、軸方向のプレストレスで連結させて、TRC 歩道橋として軽量化を図った事例も紹介され、この様な応用方法も考えられるのだと非常に参考になった講演でした。 また、日本からは三井住友建設(株)の春日昭夫博士が、「Construction of arch bridges in Japan(日本におけるアーチ橋の建設)」と題して、基調講演を行い、著名な日本のアーチ橋の数々を紹介しておられました。 シンポジウムの主なテーマ毎の各セッションでの発表では、北海道から北海道大学の上田多門教授がModelling and design of outstanding and innovative structures のセッションで「New simple connection for hybrid structures and its load-carrying capacities

(複合構造における新しい単純結合とその耐荷性能)」と題して、支柱と梁を連結部材として、新たに開発した CFSB 構造(concrete-filled steel box structure)の耐荷性能の評価と札幌市内の高速道路への適応事例を紹介しておられました(写真-4)。 さすがに数々の国際委員会のメンバーを歴任されており、聴講者を魅了するご発表は、興味のある授業を受けている感じで惹き付けられ「素晴らしい」の一言に尽きました。  田 口 は、 最 終 日 の8:15 ~ 10:15の「Construction Technology」のセッションで、「Shear load-carrying capacity for RC cantilever beams mixed with polyvinyl alcohol short fiber(ビニロン短繊維混入RC 片持ち梁のせん断耐荷力)」と題して発表を行いました。発表概要は、短繊維混入した鉄筋コンクリート片持ち梁のせん断耐荷力向上効果を、スターラップによってせん断補強された鉄筋コンクリート片持ち梁と比較して、短繊維による効果を評価し、その効果を落橋防止のための変位制限構造に利用することにより、過密鉄筋配置を避け、経済的な RC 構造の変位制限構造の適用範囲が拡大出来るという主旨です。パワーポイントで具体的な現地施工の実施例も紹介しながら説明を行いました。本セッションの特徴は、梁や版のせん断に関する研究内容が発表の大部分占め、開催場所の関係もあるのでしょうが、オタンダ、スペイン、ギリシャ、スウェーデン、ポルトガルなどのヨーロッパ の 研 究 者 が 多 い 発 表 で し た 。 座 長 の VINCI CONSTRUCTION の L. Boutillon 氏( 写真-5)は、終始にこやかな表情で発表者や会場の緊張を解いてくれていたのが印象的でした。

写真-2 チェコの紹介

写真-3 Manfred Curbach 教授の発表

- TRC for strengthening -

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5.プラハ

 プラハは、チェコ共和国の首都で、人口は約120万人です。ヴルタヴァ川が市内中心部を流れ、古い街並み・建物・土木構造物が数多くあり、観光地でも有名です。写真-6はキリスト教の聖者像30体が並んでいること等で有名なカレル橋の遠景です。建設開始は1357年カレル4世の時代で、全長516m、幅10m の16連アーチの石橋で、後日の調べではフランシスコ・ザビエル像もあったようでした。 さてプラハへの経路は、新千歳空港からは乗継ぎの少ない方法として、韓国仁川空港を経由し、プラハのルズィニエ国際空港に行くことができます。またプラハ市内公共交通は充実しており、地下鉄には Line A,B,C があり 、 それを補完するようにトラムやバス等が走行しています 。 空港から市中心部へはタクシー、ミニバス、エアポートバス ・・・ と色々ありますが、市

写真-4 上田教授(北海道大学)の発表

写真-5 座長 L.Boutillon 氏

(VINCI CONSTRUCTION の科学研究開発取締役)

写真-6 カレル橋

写真-7 悩みの種の石畳達

バスでデイヴィツカ(Dejvická)かズリチーン(Zlicín)行き、それぞれ地下鉄 A,B 路線に乗換るのが安くて早くて便利のようです。私は B 路線上にある会場最寄り駅(ヴィソチャンスカー(Vysocanská)から4駅手前クジジーコヴァ(Križíkova)に、ホテルを確保したのでズリチーン経由としました。ルート選定は良く順調にたどり着くであろうと思っていましたが、思わぬ相手に苦慮しました。景観上は非常に美しい石畳達です。元々石畳を考慮してスーツケースのキャスターの車輪は、大きなサイズにしておりましたが、それでも石畳の段差 ・ 隙間(写真-7)に悩まされ、真っ直ぐ進めず、オマケに挟まるは、全くスムーズに進みません

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6.おわりに

 今回のシンポジウム論文集である、Proceedings(Vol .1 ,Vol2)「fib Symposium PRAGUE 2011 CONCRETE ENGINEERING FOR EXCELLENCE AND EFFICIENCY」は寒地土木技術情報センターで閲覧することが出来ますので、興味のある方は是非利用してください。最後に今回の出張に際してお世話になりました関係各位に対して御礼を申し上げます。

(今回の石畳は本当に手ごわく、滞在中は、腰痛で大きな湿布を貼っていました)。それとエスカレータのスピードが日本の倍程の早さなので、乗り降り時に勇気を要します。慣れてしまえば平気ですが、最初は戸惑いました。余談ですが、通貨はコルナ(CZK)で、日本では両替できる個所が限られているのと、レートが悪いので、現在のレートでは少額両替にして、ユーロを持参することをお勧めします。

田口 史雄*

Fumio TAGUCHI

寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ耐寒材料チーム上席研究員博士(工学)技術士(建設)

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