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錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画 平成21年2月 錦川を跨ぐ名勝錦帯橋と岩国城(岩国市)

錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画...- -4 感潮区間 写真① 葉ノ内地区 写真③ 長穂地区 写真④ 木谷川合流地点(猿飛の石庭) 写真② 大向地区

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錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画

平成21年2月

山 口 県

錦川を跨ぐ名勝錦帯橋と岩国城(岩国市)

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目 次

1.流域と河川の概要 ··················································· 1

1.1 流域の概要 ························································ 1

1.2 河川の現状と課題 ·················································· 6

(1) 治水の現状と課題 ················································· 6

(2) 利水の現状と課題 ················································ 13

(3) 河川環境の現状と課題 ············································ 15

2.河川整備計画の目標に関する事項 ····································· 23

2.1 河川整備に関する基本理念 ········································· 23

2.2 整備計画対象区間 ················································· 24

2.3 計画対象期間 ····················································· 24

2.4 河川整備計画の目標 ··············································· 26

3.河川の整備の実施に関する事項 ······································· 30

3.1 河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに

当該河川工事の施行により設置される河川管理施設の機能の概要 ········ 30

(1) 平瀬ダム建設 ···················································· 32

(2) 流下能力向上対策 ················································ 35

(3) 内水処理対策 ···················································· 44

(4) 河川環境整備 ···················································· 45

3.2 河川の維持の目的、種類及び施行の場所 ····························· 47

(1) 河川管理施設の維持管理 ·········································· 47

(2) 洪水情報の提供 ·················································· 47

3.3 その他河川の整備を総合的に行うため必要な事項 ····················· 48

(1) 河川の適切な利用・管理の推進 ···································· 48

(2) 河川整備計画の変更に関する事項 ·································· 48

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1.流域と河川の概要

1.1 流域の概要

錦にしき

川がわ

は、その源を山口県と島根県の県境に位置する莇あざみ

ヶが

岳だけ

(標高 1,004m)に発し

て南下し、周しゅう

南なん

市し

の向道こうどう

ダムを経て菅すが

野の

ダム付近から流路を北に向け、岩国市いわくにし

錦町にしきまち

出で

合あい

で寂じゃく

地ち

山地さ ん ち

に流れを発する宇佐う さ

川がわ

を合流し、再び南転します。その後、本ほん

郷ごう

川がわ

根ね

笠がさ

川がわ

、生いき

見み

川がわ

等を合わせながら東へ向きを転じ、岩国市に入り名勝「錦きん

帯たい

橋きょう

」の下

流で錦川本川(今いま

津づ

川がわ

)と門もん

前ぜん

川がわ

に分派して瀬戸内海に注ぐ、流域面積 889.8km2、幹

川流路延長 110.3 ㎞の県下 大の二級河川です。

流域には自然が多く残り、水質は極めて清澄で、名勝「錦帯橋」と相まって「清流

錦川」の名は全国に知られています。

その流域は、山口県東部に位置し、周南市、下くだ

松まつ

市し

、岩国市、島根県吉賀よ し か

町ちょう

の 3

市 1 町で構成されており、流域関連市町村人口約 34 万人(平成 17 年 国勢調査)を

抱え、岩国及び周南地域における社会、経済、文化の基盤をなしています。

流域の気候は、上流域及び宇佐川流域の内陸山間型気候と中下流域の瀬戸内海型気

候に大別されます。瀬戸内海型気候は温暖寡雨を特徴とし、中下流域の年間平均気温

は 15℃程度、年間降水量は 1,700 ㎜程度です。上流域・宇佐川流域の年間平均気温は

14℃程度ですが、日較差、年較差が大きく、概して冷涼です。年間降水量は中下流域

より多く 2,000 ㎜を越える箇所も存在しています。

錦川の源流から宇佐川合流点までの上流域は、西中国山地と周防す お う

山地さ ん ち

にあって、豊

かな森林に恵まれています。特に、木き

谷たに

川がわ

、長野山ながのやま

にはブナ原生林も見られるなど植

生上貴重な区域が存在し、その周辺の区域を木谷峡緑地環境保全地域として県が、長

野山緑地公園として周南市が指定しています。また、植生はコバノミツバツツジ-ア

カマツ群集の自然林とスギ、ヒノキの人工林が多くなっています。この区域には、こ

うした自然環境を背景に、国の特別天然記念物のオオサンショウウオのほか、ツキノ

ワグマ、グンバイトンボ、オオムラサキ等が生息しています。また、鳥類ではカッコ

ウ、ヤマセミ、カワセミ等が山林や水辺に生息しています。

錦川の宇佐川合流点からJR山陽新幹線付近までの中流域は、周防山地及び周防丘

陵に位置しています。谷底平野が乏しく、主要な集落や農耕地は狭小な山麓や高台、

山地の斜面を切り開いて点在しています。流域の植生は、コバノミツバツツジ-アカ

マツ群集及びスギ・ヒノキ等人工林が多くなっています。

JR山陽新幹線付近で谷は大きく開け、この付近より下流域となります。河道は扇

状地及びデルタ地帯を築堤河道の形態で流下し、錦川(今津川)と門前川に分派して

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瀬戸内海に至っています。沿川には岩国市街地、ハス田等の農耕地、臨海コンビナー

トが立地し、河口には広大な干潟が形成されています。また、岩国藩初代吉川きっかわ

広家ひろいえ

時代に城下町を水害から守る水防林として植林された大規模な竹林が随所に見られ

ます。

なお、錦川中下流域の横断工作物は八幡堰と牛うし

野の

谷や

堰(門前川分流堰)の 2カ所の

みで、これらは潮止め堰としても機能しており、共に魚道が設置され魚類の遡上・降

下を可能にしています。また、錦帯橋から錦川(今津川)の大正橋及び門前川の牛野

谷堰の下流には、アユの産卵場が形成されています。

大の支川宇佐川は、県内 高峰の寂じゃく

地ち

山さん

に源を発し、寂じゃく

地峡ちきょう

、深ふか

谷たに

峡きょう

等の渓谷

から清冽な水を集め、険しい谷間を流れる急流河川です。流域の山容は深く、植生を

みると、カタクリ群落、ブナ林等の特定植物群落が多いのが特徴で、上流域は西中国

山地国定公園や羅漢山県立自然公園に指定されています。動物では、豊かな森林環境

を背景にツキノワグマ、アカゲラ、モリアオガエル等の貴重種が生息しています。

なお、錦川上流域や宇佐川流域における貴重種のツキノワグマ及びゴギの分布は、

本州における分布の西端に当たっています。

錦川水系には水生動物も多く生息し、内水面漁業が盛んです。アユ、ウナギ、モク

ズガニ、アマゴ等は放流もされており、遊漁者が多数訪れています。一方で、錦川水

系においても、在来魚種を捕食する外来魚(オオクチバス等)が、流れの緩やかな箇

所等に生息しています。

近年では、錦川流域の豊かな自然環境の維持・保全、錦川を通じた地域活性化を目

指した住民活動の一環として、「みんなで守ろう!ふるさとの清流」をスローガンに、

河川愛護活動の一つである「錦川流域河川一斉清掃」が、上・中・下流の流域住民に

より毎年7月に行われています。また、平成の錦帯橋の架け替えを契機に、「感謝を

込めて古材を森に戻そう!」と源流の碑建立事業や錦川流域の豊かな自然環境の保全

をテーマにした「いきものフォーラム」、水辺での環境学習等、流域内で活動する市

民団体等の諸活動が活発化し、流域連携も図られてきています。

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図-1.1 錦 川 水 系 流 域 概 要 図

流域面積 : 889.8 km2 幹川流路延長 : 110.3 km 氾濫区域面積 : 17.7 km2 氾濫区域内人口:約 43,600 人

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写真① 葉ノ内地区

写真④ 木谷川合流地点(猿飛の石庭) 写真③ 長穂地区

写真② 大向地区

図-1.2 錦 川 水 系 現 状 写 真 位 置 図

八幡堰

牛野谷堰

感潮区間

感潮区間

牛野谷川

錦川(今津川)

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写真⑫ 錦川(今津川)八幡堰付近 写真⑪ 錦帯橋下流

写真⑩ 細利沈下橋から上流を望む 写真⑨ 生見川ダム貯水池:山代湖

写真⑧ 南桑地区 写真⑦ 宇佐川合流点(上流から)

写真⑥ 宇佐川中流域 写真⑤ 宇佐川上流域

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1.2 河川の現状と課題

(1) 治水の現状と課題

錦川の治水事業の歴史は古く、岩国藩初代藩主吉川広家が城下の安全を図るため、

西暦 1600 年代前半に堤防を構築したことに始まります。この事業によって、錦帯

橋付近の低地が居住可能となり、岩国藩城下町が発達しました。しかし、抜本的な

治水工事には、昭和に至るまで着手されていません。

昭和 5 年の洪水では、臥が

竜りょう

橋ばし

が流失するとともに岩国市内で 1,349 戸が浸水し

たため、山口県では、岩国市街地の洪水対策を目的として「錦川改良工事」に着手

しました。この工事における計画高水流量は、昭和 5年洪水の水位を元に錦川本川

で 3,250m3/s とし、これを錦川(今津川)で 1,300m3/s、門前川で 1,950m3/s を分担

させ、瀬戸内海へ流す計画でした。この工事は、昭和 7 年 11 月に着手し、6 年 5

ヶ月の歳月を要して昭和 14 年 3 月に竣工しました。

昭和 25 年 9 月のキジア台風では、錦帯橋が流失し、岩国市内で浸水家屋 1,527

戸、浸水農地 579ha と莫大な被害を受け、さらに翌年のルース台風は、これを上回

る洪水となり、岩国市内で浸水家屋 7,525 戸、浸水農地 542ha を数える被害が発生

し、臥竜橋、愛宕あたご

橋ばし

等の橋梁がことごとく流失しました。

これらの度重なる洪水被害と、周南地区の工業地域の発展にともなう用水需要の

高まりを受け、菅野ダムが昭和 41 年に完成しました。また、錦川改良工事の完成

から 30 年経過した昭和 44 年からは、錦川本川の河川改修事業に本格的に着手し、

岩国市行波ゆ か ば

を上流端として、臥竜橋地点において計画高水流量 3,250m3/s を安全に

流下できるよう事業を継続しています。さらに、支川では、昭和 46 年に生見川に

おいて生見川ダムの建設が始まり、昭和 60 年に完成しました。

また、江戸時代以来干拓によって陸化されてきた低平地を抱える下流部は、高潮

災害を受けやすいため、昭和 51 年から高潮対策として高潮堤防等の建設に着手し

ており、平成 8年に完成しました。

その後、平成 9 年には錦川水系工事実施基本計画を策定し、平成 20 年には「錦

川水系河川整備基本方針」を策定しました。河川整備基本方針では、100 年に 1 回

程度の降雨により発生する洪水に対し、基準地点「臥竜橋」における基本高水のピ

ーク流量5,300m3/sを、上流のダム群によって計画高水流量3,250m3/sに低減させ、

これを河道において安全に流下させるものとしています。

これらの計画策定や事業進捗を鋭意図っているものの、近年では、平成 11 年 9

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月の台風 18 号に続き、平成 17 年 9 月の台風 14 号では、岩国市において藤ふじ

河かわ

地区、

南桑な ぐ わ

地区をはじめとして、半壊家屋 327 戸、床上浸水 926 戸、床下浸水 573 戸を数

える甚大な被害を受けました。また、下流の低平地においては、牛野谷川流域をは

じめ、内水による被害が発生しました。

このようなことから、戦後 大洪水であった平成 17 年 9 月台風 14 号規模の洪水

に対する減災に努める等、今後もさらなる治水安全度の向上を図ることが課題とな

っています。

表-1.1 錦川の水害状況

被災内容

全壊 半壊 床上浸水 床下浸水 被害額

(戸) (戸) (戸) (戸) (百万円)

昭和5年8月12日 台風 - - - 岩国市 資料-1

昭和9年9月21日 室戸台風 24 18 30 471 3 全県 資料-2

昭和10年6月27日 梅雨前線 22 31 921 5,804 3 〃 〃

昭和11年7月23日 台風 7 13 32 292 1 〃 〃

昭和16年6月25日 梅雨前線 24 22 6,809 18 〃 〃

昭和20年9月17日 枕崎台風 1,330 2,760 12,679 18,442 277 〃 〃

昭和25年9月12日 キジア台風 5 61 285 1,242 320 田畑冠水579ha 岩国市 岩国市報

昭和26年10月13日 ルース台風 47 30 1,385 6,140 435 田畑冠水542ha 岩国市 岩国市報

昭和29年9月24日 台風15号 14 49 110 1,333 - 流域関連市町村 資料-2

昭和32年7月2日 梅雨前線 2 3 37 - 〃 〃

昭和35年7月7日 梅雨前線 22 2 435 2,558 - 〃 〃

昭和39年6月25日 梅雨前線 2 5 39 1,449 875 〃 〃

昭和40年6月18日 台風9号、梅雨前線 8 10 347 6,535 567 〃 〃

昭和44年7月7日 梅雨前線 3 1 56 2,112 1,022 〃 〃

昭和45年8月14日 台風9号 10 7 13 28 556 〃 〃

昭和46年8月4日 台風19号 3 12 8 88 906 〃 〃

昭和47年7月11日 梅雨前線 48 10 〃 〃

昭和47年8月20日 寒冷前線 190 93 〃 〃

昭和49年9月7日 台風18号 11 235 1,348 〃 〃

昭和50年8月16日 台風5号 1 2 132 1,202 〃 〃

昭和51年9月12日 台風17号 8 5 11 169 3,144 〃 〃

昭和54年6月26日 梅雨前線 1 5 415 2,242 〃 〃

昭和59年8月21日 台風10号 220 〃 〃

昭和60年6月23日 梅雨前線、台風9号 1 137 3,287 〃 〃

平成2年6月15日 梅雨前線 1 2 錦川流域 資料-3

平成7年7月2日 梅雨前線 13 15 〃 〃

平成9年5月13日 豪雨 3 1 〃 〃

平成11年9月24日 台風18号 2 3 29 94 1,310 〃 〃

平成16年8月30日 台風16号 1 29 47 〃 〃

平成17年9月6日 台風14号 327 926 573 12,472 〃 〃

資料-1:「錦川改良工事誌 S14.10 山口県」

資料-2:「山口県災異誌」

流域市町村:岩国市・美川町・美和町・錦町・鹿野町・本郷村・徳山市・下松市・熊毛町・周東町

資料-3:「水害統計」各年度版

原因年

1349

備 考

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昭和 5年 8月 13 日洪水による浸水状況(岩国市川西地区)

昭和 25 年 9 月 14 日キジア台風洪水による出水状況

(上:満水の六尺樽を置いて流失を防いでいる状況、

下:錦帯橋流失の瞬間)

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昭和 26 年 10 月ルース台風による出水状況 (岩国市保木川合流点上流付近)

昭和 35 年 7 月洪水の出水状況 (左:岩国市錦町末広橋付近、右:岩国市錦町出合橋付近)

錦川清流線

錦 川

平成 11 年 9 月台風 18 号による出水状況

(上:岩国市美川町みかわまち

南桑付近、下左:岩国市錦町出合橋付近、下右:岩国市錦帯橋付近)

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被災後の状況(藤河地区)

民家の一階を洗う濁流の様子(南桑地区)

被災後の状況(南桑地区)

流失した錦帯橋の補助橋脚

平成 17 年 9 月台風 14 号による浸水状況

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周防高潮対策事業 (門前川 L=465m S51~H8)

広域基幹河川改修事業 (門前川 L=1,400m S44~)

周防高潮対策事業 (錦川(今津川) L=753m S51~H8)

広域基幹河川改修事業 (錦川(今津川) L=1,400m S44~)

広域基幹河川改修事業 (錦川 L=16,800m S44~)

ふるさとの川整備事業 (L=8,800m H4~)

図-1.3(1) 錦川における河川改修状況(平成 18 年度現在)

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図-1.3(2) 宇佐川における河川改修状況(平成 18 年度現在)

岩国市錦町深川地区

岩国市錦町出合地区

広域基幹河川改修事業 (宇佐川L=2,220m S51~H18完了)

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(2) 利水の現状と課題

河川水の利用は、古くは農業用水中心で、17 世紀半ばに灌漑用水路の開発が行

われており、玖北地区一帯の特産品であった和紙(山代紙)の生産にも利用されて

きました。現在では、恵まれた水資源を活かしてワサビ栽培やミネラルウォータの

製造も行われています。

また、錦川の豊かな水資源の開発は、大正時代の水力発電事業に始まり、大正

13 年に錦川第 1 発電所、昭和 2 年に錦川第 2 発電所が完成しました。昭和に入っ

てからは岩国・周南地域の人口集中と工業の進展による都市用水需要の増大に対応

するため、昭和 16 年に向道ダムが完成、戦後では昭和 41 年に菅野ダム、昭和 60

年に生見川ダムが完成し、都市用水を開発しています。

現在、水道用水として日量 大約 150,000m3、工業用水として日量 大約

1,300,000m3を供給し、このうち、周南地域へ水道用水として日量 大約 70,000m3、

工業用水として日量 大約 510,000m3を分水しています。また、水力発電量は 大

42,000KW に及び、灌漑用水は約 1,600ha の農地に利用されています。このように、

錦川の水資源は、瀬戸内海工業地帯の中核をなす岩国及び周南地域の石油コンビナ

ートの発展をはじめとして、市民生活や産業活動に大きく貢献しています。

しかし、一方で、平成 6年渇水では、錦川水系から周南地区へ分水を行っている

菅野ダムにおいて厳しい取水制限が実施され、工業用水に対する 大取水制限率は

80%、水道用水も 40%に達し、市民生活、産業活動に大きな影響が出ました。

このように、錦川水系においては、今後とも水資源の安定供給と有効利用の推進

が課題となっています。

平成 6年渇水による菅野ダム(周南市)の状況

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表-1.2(1) 錦川水系の上水・工業用水の水利権

表-1.2(2) 錦川水系の農業用水の取水状況

表-1.2(3) 錦川水系の水力発電状況

種 別 件 数かんがい面積

(ha)備 考

許 可 18 776 3.185

慣 行(ため池を含む)

177 839 11.633

未 届 6 12 0.372

合 計 201 1,627 15.190

大取水量

(m3/s)

発 電 所大出力(kw)

所 管 運転開始年 備考

菅  野 14,500 山口県 昭和40年

水  越 1,300 〃 昭和40年

徳  山 6,500 〃 昭和40年 流域外(水越ダム分水)

本 郷 川 260 〃 昭和58年

生 見 川 1,800 〃 昭和59年

錦川第一 4,000 中国電力 大正13年

錦川第二 7,300 〃 昭和 2年

向  道 500 〃 昭和27年

間  上 5,600 〃 昭和16年 流域外(向道ダム分水)

合  計 41,760

*)平成 18 年 3月現在

*)「農業用水実態調査 平成 9年 中四国農政局」

*)山口県所管は平成 17 年 4月現在、中国電力所管は平成 18 年 9月現在

地点 種 別 用水名 備考

向道ダム 工 水 錦川向道工水 1.39 分水、うち日量31,200m3

は上水として利用

工 水 錦川工水 4.823 分水周南市(旧徳山市)上水 0.306 〃周南市(旧新南陽市)上水 0.151 〃

5.28平瀬ダム 上 水 錦町上水 0.005

岩国市工水 0.3306帝人 1.1134東洋紡      2.0875日本製紙 3.7714生見川工水 1.48

上 水 岩国市上水      0.9212 9.7041合計

臥竜橋工 水

取水量

(m3/s)

菅野ダム

合計

上 水

岩国市錦町上水

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(3) 河川環境の現状と課題

① 河川の自然環境

錦川の水は極めて清澄で、多くの人々から清流と認識され、下流域に至っても河

床の礫や群泳する魚の姿が橋上から視認できるほどです。また、寂地川は環境省の

名水百選に選出されています。水質環境基準でみると、B類型(錦川下流)、A類型

(錦川中・上流)、AA 類型(宇佐川)、湖沼の A 類型(菅野湖・山代湖)に指定さ

れており、近年(平成 7 年度~平成 18 年度)においては、河川の BOD75%値は基

準値を満足しており、湖沼の COD75%値は平成 15 年度以降基準値を満足していま

す。なお、菅野ダム及び生見川ダムには濁水対策としての選択取水設備や、水質保

全対策の曝ばっ

気き

施設を整備しています。

図-1.4 環境基準の類型指定状況と水質測定地点位置図

● :水質観測地点

:水質類型指定区間

(宇佐川)

(錦川下流)

(錦川中上流)

湖沼 A類型

(山代湖)

湖沼 A類型

(菅野湖) 牛野谷川

Page 18: 錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画...- -4 感潮区間 写真① 葉ノ内地区 写真③ 長穂地区 写真④ 木谷川合流地点(猿飛の石庭) 写真② 大向地区

- - 16

河川の自然環境を見ると、錦川の源流から宇佐川合流点までの上流域の河道は、

周南市莇ヶ岳を発し、田園と里山の景観が調和する渋川しぶかわ

合流点付近に位置する鹿野

盆地を抜け、向道ダム、菅野ダムにより形成された湛水域を通り、峡谷部を流下し

ています。

鹿野盆地では河岸の多くに竹林等の河畔林が見られ、水際にはツルヨシ等が繁茂

しています。河床は主に礫で覆われ、瀬と淵にはタカハヤ、カワムツ、アユ等が生

息しています。また、河川水の農水利用が盛んなため取水堰が数多くあります。

A類型(錦川中上流)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

愛宕橋 1.2 0.8 0.8 0.9 0.6 0.6 0.5 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5

市上水取水口 1.3 0.8 0.5 0.6 0.6 0.6 0.5 0.6 0.7 0.5 0.5 0.5

守内橋地点 0.8 0.8 0.5 0.6 0.7 0.6 0.5 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5

根笠橋 1.2 0.8 0.7 0.5 0.5 0.5 0.5 0.6 0.6 0.5 0.5 0.5

垂門橋 0.6 0.5 0.5 0.8 0.9 0.5 0.5 0.5

H.7 H.8 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18

環境基準 2.0mg/㍑

BOD75%値

B類型(錦川下流)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

大正橋 1.4 0.9 0.8 1.3 0.8 0.7 0.5 0.6 0.7 0.6 0.6 0.5

愛川橋 2.0 1.1 0.8 1.2 0.8 0.7 0.6 0.7 0.8 0.5 0.7 0.7

H.7 H.8 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18

環境基準 3.0mg/㍑

BOD75%値

図-1.5 水質観測地点の水質経年変化図

AA類型(宇佐川)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

出市橋 1.0 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.7 0.5 0.5 0.5 0.5

ふるえ橋 1.0 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5

H.7 H.8 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18

BOD75%値

環境基準1.0mg/㍑

湖沼A類型(菅野湖)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

菅野湖 2.9 2.3 2.7 2.2 2.1 2.0 2.0 2.3 2.3 2.0 2.0 1.9

H.7 H.8 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18

COD75%値

環境基準 3.0mg/㍑ (全層平均値)

A類型(山代湖)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

山代湖 2.3 2.3 2.7 3.3 2.8 2.3 2.5 2.3

H.7 H.8 H.9 H.10 H.11 H.12 H.13 H.14 H.15 H.16 H.17 H.18

COD75%値

環境基準 3.0mg/㍑ (全層平均値)

Page 19: 錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画...- -4 感潮区間 写真① 葉ノ内地区 写真③ 長穂地区 写真④ 木谷川合流地点(猿飛の石庭) 写真② 大向地区

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ダム湖周辺には豊かな森林が広がり、菅野ダム下流の河道周辺には、ケヤキやサ

ワグルミが川面にせり出すように繁茂しています。河床には巨石が多く変化に富ん

だ流況を呈し、魚類では、貴重種であるオヤニラミの他、アユ等が生息しています。

鳥類では、サギ類、カワセミ、セグロセキレイをはじめ多くの種類が見られます。

宇佐川合流点からJR山陽新幹線付近までの中流域の河道は、峡谷を縫うように

蛇行し、河床勾配は上流部に比べ緩やかとなり、砂礫主体の河床には露岩が点在し

ています。河岸は天然河岸の箇所も多く、キシツツジやカワラハンノキ、ネコヤナ

ギ、竹林等が河畔林を形成しています。湾曲部の外側には大きな淵、水裏部には砂

礫堆の河原が形成され、瀬・淵の連続した典型的な中流域河床を呈し、魚類では、

貴重種のオヤニラミやカジカをはじめ、アユ等が生息しています。また、南桑地区

にはカジカガエルが群生し「南桑カジカガエル生息地」として国の天然記念物に指

定されています。豊かな自然が残る河道内には、水辺を好むセキレイ類、カワセミ

等をはじめ多くの鳥類が生息しています。

JR山陽新幹線付近から下流域の河道は、その河床は主に砂礫で覆われ、流れは

ゆるやかに蛇行し、瀬と淵が形成され、アユ、カワムツ、オイカワ等が生息してい

ます。八はち

幡まん

堰ぜき

から臥竜橋下流までの湛水区間の規模の大きい中州や高水敷には、ツ

ルヨシ、オギ、ヤナギ等の植生が繁茂し、カイツブリ等が生息しています。また、

錦川(今津川)・門前川分流点河畔には県の天然記念物の「岩国市楠一丁目のクス

ノキ巨樹群及びムクノキ巨樹群」もあり、サギ等の生息場となっています。

河口部には、汽水性のボラ、スズキ、マハゼ、シロウオ等の魚類が生息し、豊富

な底生生物を背景に河口部の干潟は、貴重種のチュウサギ、ホウロクシギをはじめ

サギ類やガンカモ類等鳥類の渡来地となっています。

宇佐川は、清冽で豊富な水量と瀬・淵が小刻みに連続する河床形態を有し、多様

な動植物が生息・生育しています。水際にはネコヤナギやサワグルミ等が繁茂し、

清澄な流れには、国の特別天然記念物のオオサンショウウオが生息し、ゴギ、アマ

ゴ等の渓流魚や、アユ、アカザ等が生息しています。水辺では渓流を好むヤマセミ、

カワセミ等が見られ、ゲンジボタルも多く生息しています。

このように、恵まれた自然環境を有する錦川の現状を、維持・保全、またさらに

良好な環境として次世代に継承していくことが重要な課題と考えられます。

Page 20: 錦 川 水 系 河 川 整 備 計 画...- -4 感潮区間 写真① 葉ノ内地区 写真③ 長穂地区 写真④ 木谷川合流地点(猿飛の石庭) 写真② 大向地区

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表-1.3(1) 錦川に生育・生息する貴重種:動物

ヤマドリ 絶滅危惧ⅠB類(EN) ― 1500m以下の山地 留鳥(上・中・下流)

チュウサギ 準絶滅危惧(NT) 下流、河口干潟(河口)

シロチドリ ― 沿岸域 多くは留鳥(河口)

ホウロクシギ 絶滅危惧Ⅱ類 干潟 春秋の渡鳥(河口)

オシドリ 情報不足(DD) 生見川ダム 冬渡鳥(湖)

ノスリ ― 全域 渡(冬鳥)

チョウゲンボウ ― 冬鳥 瀬戸内の平野部(河口)

イカルチドリ ― 中流域 留鳥(上・中)

ヤマシギ ― 冬鳥 山間部(上・中)

ウミネコ ― 留鳥 沿岸(河口)

カッコウ ― 夏鳥渡鳥 高地 寂地山 羅漢山 長野山(上流・宇佐川)

ヨタカ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 夏鳥で渡来(島)

ヤマセミ ― 留鳥 内陸部の河川(上・中)

アカゲラ ― 留鳥 高い山地 寂地山 鹿野町山地(上・宇佐川)

オオアカゲラ ― 留鳥 平地~山地(上・宇佐川)

サンショウクイ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 夏鳥 山地が主 雑木林に多い(上・中・下)

カワガラス ― 留鳥 山地(上・中・下)

センダイムシクイ ― 夏鳥 山地(山・中・宇佐川)

コガラ ― 留鳥 500~2500m森林(上・宇佐川)

ヒガラ ― 留鳥 800~1000m(県内)(上・宇佐川)

ニホンリス 絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 県内では、錦町に捕獲記録があるが、1981以降確実な生息情報はない

ツキノワグマ 絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 錦川上流の西中国山地に生息

ヤマネ 絶滅危惧ⅠB類(EN) 準絶滅危惧(NT) 錦川では、錦町、鹿野町、本郷村で捕獲記録があるが、近年限定された地域での残存種になっている

ニホンモモンガ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) ― 県内では、錦町、鹿野町で捕獲記録があり、現在も生息が確認されている

サイゴクジネズミ ― 鹿野町の長野山で捕獲例がある

コモグラ ― 錦町から鹿野町の標高600mから上部山岳地域に生息している

ホンドザル 絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 東部個体群(岩国市~美川町~徳山市)の地域に深山より人家に近い里山に生息している

キュウシュウノウサギ ― 海岸近くの平野部~中国山地の稜線まで全県的に広く生息している

ホンドスミスネズミ ― 県内では、錦町寂地山標高900mより上部で採取記録がある

ホンドカヤネズミ ― 県内の平野部に広く点在するが、標高600m以上にはあまり見られない

ニホンイタチ ― 県内では生息記録が多いが、近年生息数が激減している

ニホンアナグマ ― 県内では市街地を除く地域に広く分布している

ニホンカワネズミ ― 錦川上流で目撃情報はあるが、捕獲確認に至っていない

トウホクノウサギ ― 錦町の寂地山周辺で目撃情報あり。

ドジョウ ― 生活環境が悪化している。平野部の水田・水路に広く分布する

サツキマス(降海性)、アマゴ(陸封性)

準絶滅危惧(NT) 小瀬川、錦川、佐波川で遡上が確認されている

ゴギ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 錦川・宇佐川の上流域に生息。ただ生息環境が悪化している

メダカ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 生活環境が悪化している。平野部の水田・水路に広く分布する

カジカ大卵型 準絶滅危惧(NT) 生活環境の悪化で個体数が減少している。上流域に生息する

スナヤツメ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 生息環境が悪化している

イシドジョウ 絶滅危惧ⅠB類(EN) 絶滅危惧ⅠB類(EN) 河川上流域に生息。1956年に南桑で採取。

アカザ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 河川中上流域の清流に生息するが、近年減少。

オオヤニラミ ― 絶滅危惧Ⅱ類(VU)

オオサンショウウオ 絶滅危惧ⅠA類(CR) 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 県内では、錦川の支流の限られた清流にしか確認されていない。(木谷川、根笠川、宇佐川の支流)

カジカガエル ― 清流域に生息し、大型河川の上流部の限られた場所で確認されている。錦川の南桑一帯は国の指定天然記念物となっている。

モリアオガエル ― 県内では東部山間部(宇佐川上流)の標高300~400mに局在している

ブチサンショウウオ 情報不足(DD) 準絶滅危惧(NT) 県内では、11河川で生息が確認されている。錦川では鹿野町、木谷川、根笠川、宇佐川の支流の清流域で確認されている。

ホシチャバネセセリ 絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 宇佐川

コキマダラセセリ ― 宇佐川

ヒメシジミ 準絶滅危惧(NT) 宇佐川

ヘリグロチャバネセセリ ― 宇佐川・上

クロヒカゲモドキ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 宇佐川

グンバイトンボ 準絶滅危惧(NT) 上・中

キバネセセリ ― 宇佐川・上

スジグロチャバネセセリ 準絶滅危惧(NT) 宇佐川

ギフチョウ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 中

ルリボシヤンマ ― 中・下

ネアカヨシヤンマ 準絶滅危惧(NT) 全域

ハネビロエゾトンボ 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 中・下

ウラクロシジミ ― 宇佐川

ウラキンシジミ ― 宇佐川・上

オオムラサキ 準絶滅危惧(NT) 上

貴重種の分類:①山口県カテゴリー:「レッドデータブックやまぐち」(山口県 H14.11)      :②環境省カテゴリー:「レッドリスト」(環境省 H18、H19)生息種調査文献:①昆虫、両生類、は虫類、哺乳類;「第2回自然環境保全基礎調査 山口県 S56 環境庁」       :②魚類;「H6 河川水辺の国勢調査(魚介類)山口県 錦川」,「山口のさかな 1991.3 藤岡 豊」       :③鳥類;「岩国市科学センター誌「岩国の自然」

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

鳥類

生息状況環境省カテゴリー山口県カテゴリー和名

準絶滅危惧(NT)

昆虫類

両生類

淡水産魚類

ほ乳類

絶滅危惧ⅠA類(CR)

準絶滅危惧(NT)

情報不足(DD)

絶滅危惧ⅠB類(EN)

準絶滅危惧(NT)

準絶滅危惧(NT)

絶滅危惧ⅠA類(CR)

絶滅危惧ⅠB類(EN)

絶滅危惧Ⅱ類(VU)

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表-1.3(2) 錦川に生育・生息する貴重種:植物

山口県カテゴリー 環境省カテゴリー

ヤシャビシャク 絶滅危惧ⅠA類(CR) 準絶滅危惧(NT) 木谷峡、県全域

シロバナネコノメソウ 絶滅危惧ⅠB類(EN) -鹿野町、錦町から知られる。ダム周辺に生育の可能性あり。

シギンカラマツ 絶滅危惧ⅠA類(CR) -錦町、大島町、久賀町、橘町から知られる。過去に木谷川沿いで採集されている。

トモエソウ 絶滅危惧ⅠA類(CR) -阿東町、徳地町、錦町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

アマヅル(オトコブドウ) 絶滅危惧ⅠB類(EN) -柳井市、錦町、美和町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

トウキ 絶滅危惧ⅠA類(CR) -鹿野町、錦町、美和町、本郷村で記録。ダム周辺に生育。

イナモリソウ 絶滅危惧ⅠB類(EN) -豊浦町、豊田町、長門市、秋芳町、阿東町、徳地町、鹿野町、錦町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

オオナンバンギセル 絶滅危惧ⅠA類(CR) -鹿野町、錦町、本郷村で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

キヨスミウツボ 絶滅危惧ⅠA類(CR) -長門市、旭村、錦町に知られる。ダム周辺に生育の可能性あり。

ナベナ 絶滅危惧ⅠA類(CR) - 阿東町、錦町から知られる。ダム周辺に生育。

シラン - 準絶滅危惧(NT) 平瀬ダム環境調査(現地確認)

エビネ - 準絶滅危惧(NT) 平瀬ダム環境調査(現地確認)

キンラン - 絶滅危惧Ⅱ類(VU) 平瀬ダム環境調査(現地確認)

ナツエビネ 絶滅危惧ⅠA類(CR) 絶滅危惧Ⅱ類(VU)徳地町、錦町で記録。過去に木谷川沿いで採集されている。

ジガバチソウ 絶滅危惧ⅠB類(EN) -徳地町、岩国市、美川町、錦町、美和町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

ヒトツボクロ 絶滅危惧ⅠA類(CR) -徳地町、徳山市、鹿野町、玖珂町、錦町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

ツクバスゲ(ナガミショウジョウスゲ)

絶滅危惧ⅠA類(CR) -錦町からのみ記録がある。ダム周辺に生育の可能性あり。

イワヤシダ 絶滅危惧ⅠB類(EN) -

油谷町、長門町、川上村、徳地町、鹿野町、錦町から知られる。錦町のものは現状不明。ダム周辺に生育。

クラガリシダ 絶滅危惧ⅠA類(CR) 絶滅危惧ⅠB類( EN)須佐町、徳地町、錦町で記録。ダム周辺に生育の可能性あり。

ヒロハシノブイトゴケ美東町、川上村、阿東町、旭村、山口市、徳地町、鹿野町、錦町で記録。

クマノゴケ豊北町、豊田町、秋芳町、美東町、阿東町、山口市、徳地町、鹿野町、錦町で記録。

カビゴケ 県内各地で記録。ダム周辺に生育。

ウキゴケ 県内各地で記録。ダム周辺に生育。

イチョウウキゴケ 県内各地で記録。ダム周辺に生育。

  【重要種選定基準】

  ○環境省:「レッドリスト」(環境省 H18、H19)

CR+EN:絶滅危惧Ⅰ類    NT:準絶滅危惧

CR:絶滅危惧ⅠA類 DD:情報不足

EN:絶滅危惧ⅠB類

VU:絶滅危惧Ⅱ類

  ○山口県:「レッドデータブックやまぐち」(山口県 H14.11)

CR+EN:絶滅危惧Ⅰ類   

CR:絶滅危惧ⅠA類

EN:絶滅危惧ⅠB類

VU:絶滅危惧Ⅱ類

1)「第2回自然環境保全基礎調査植生調査報告書」(1979年,山口県)および「第3回自然環境保全

調査文献及び  基礎調査植生調査報告書(1989年,環境庁)

参考資料: 2)「山口県植物誌」(1972年,(財)山口県教育財団)

3)「平瀬ダム環境調査」(平成元年~2年度現地調査)

絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN) 準絶滅危惧(NT)

ハマウツボ

ラン

ウキゴケ

種子植物

被子植物

双子葉植物

離弁花類

生育環境・生育情報等

ハイヒモゴケ

キセルゴケ

クサリゴケ

ウラボシ

メシダ

ユキノシタ

キンポウゲ

ブドウ

セリ

アカネ

カヤツリグサ

コケ植物

シダ植物

合弁花類

マツムシソウ

分類 種名

重要種選定基準

オトギリソウ

科名

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② 河川の空間環境

河川空間の利用としては、古くは江戸時代の材木運搬から舟運が開始され、流域

の恵まれた林産資源や特産の和紙を搬出したり、生活物資を輸送する重要な交通路

となっていました。この舟運は、沿川に道路が整備される大正時代まで盛んでした。

現在は、下流域を中心として、地域住民の健康、体力増進等を目的に高水敷に運

動公園が整備され、多くの人々に利用されています。また、大正 14 年(1925 年)

に名勝の指定を受けた錦帯橋周辺、臥竜橋及び牛野谷堰周辺では、夏場に子どもた

ちが川遊びする姿が多く見られます。さらに、多くの観光客が訪れる錦帯橋周辺の

河川空間は、鵜飼い、川下り、花火大会等多彩に利用されています。錦帯橋は、延

宝元年(1673 年)、岩国藩第三代藩主吉川きっかわ

広嘉ひろよし

によって創建された五連の美しいア

ーチ構造を有する木造橋で、木造橋としてはわが国 大の文化遺産です。橋桁は、

腐朽の進行具合を見ながら創建以来継続的に交換されており、近年では、平成 13

年秋から平成 16 年春にかけて、洪水の少ない秋~春季を利用して架け替えられま

した。また、JR山陽新幹線から八幡堰の区間は、周辺の歴史・文化施設との連携

を図るとともに、動植物の生息・生育環境や竹林等の良好な景観との調和を図り、

市民の憩いの場として、高水敷等の整備を進めています。

中流域は湾曲部に河原が広がり、カヌー、水浴、キャンプ等、水との直接的なふ

れあいを求めた河川利用が盛んとなっています。特に根笠~南桑の区間では、堰等

の横断構造物がないことからカヌーエリアとして利用されています。また、岩国市

行波ゆ か ば

では、国指定重要無形民俗文化財の「神かん

舞まい

」が錦川の河川敷で行われているほ

か、正月行事の「どんど焼き」も流域各地の河原等で行われています。

上流域及び宇佐川流域では、木谷峡、寂地峡、深谷峡等の渓谷美が訪れる人々を

魅了し、アユ釣りのほか、アマゴ、ゴギが生息することから、渓流釣りに多くの人

が訪れます。

また、錦川の豊かな流れは、水産資源の生産にも大きく寄与しています。漁業活

動をみると、第 5種共同漁業権が 4つの内水面漁業協同組合に免許され、アユ、ウ

ナギ、マス、コイ、カニ、ハヤ、フナが漁獲されているほか、錦川の河川水が流入

する河口周辺海域では、海面漁業として第 1種共同漁業権に基づくあさり漁業、わ

かめ漁業等のほか、第 1 種区画漁業権に基づくのり養殖が営まれています。また、

四手網よつであみ

によるシロウオ漁や錦帯橋の鵜飼は、季節の風物詩として地元住民に親しま

れています。

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このように、地域住民に愛され親しまれている錦川の現状の河川空間を、今後と

も維持・保全していくことが課題と考えられます。

錦川のカヌー下り

(根笠~南桑付近)

錦帯橋周辺の河川空間利用状況

(左:花見、中:花火大会、右:鵜飼)

宇佐川の早瀬でアユ釣りを楽しむ人

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図-1.6 錦川水系の内水面漁業権の設定状況

向道ダム

内共第4号(三須さ ん す

) 内共第3号(錦川・玖く

北ほ く

・三須さ ん す

内共

第5号

(錦川

上流)

牛野谷川

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2.河川整備計画の目標に関する事項 2.1 河川整備に関する基本理念

錦川水系の河川整備にあたっては、以下のような基本理念の下で進めていきます。

~ 清流・錦川 その美しさを安らぎの生活とともに ~

1.安全で安心できる生活環境を育む川づくり

普段は美しい流れを見せる錦川ですが、その洪水では過去幾多の被害を流

域にもたらし、渇水時には水利用の一部に支障をきたすこともありました。こ

のため、流域住民が安心して生活できる安全な川をめざします。

2.豊かな自然環境を後世に継承できる川づくり

錦川は、ゲンジボタルやキシツツジ、カジカガエルなど住民にうるおいを

もたらす豊かな自然環境に恵まれています。これらを次世代の子どもたちに継

承していくことは重要です。このため、これらを維持・保全できる川をめざし

ます。

3.地域に根ざした文化を育む川づくり

錦帯橋周辺はかつて城下町として栄え、鵜飼などの伝統行事も数多く行わ

れています。また、行波の「神舞」や、流域各地では正月行事の「どんど焼き」

なども河川を舞台として繰り広げられています。このため、このような地域に

根ざした文化を絶やすことのない、親しみやすい川づくりをめざします。

錦川水系河川整備計画の基本理念

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2.2 整備計画対象区間

本河川整備計画は、表-2.1 に示す錦川水系における山口県知事管理河川の全ての区

間を計画対象区間とします。

表-2.1 錦川水系の山口県知事管理河川一覧

2.3 計画対象期間

本河川整備計画は、錦川水系河川整備基本方針に基づいた河川整備の当面の目標で

あり、その対象期間は概ね 30 年とします。

流路延長 流路延長

(km) (km)

錦川 1 錦 川に し き が わ

110.3 錦川 21 延ヶ原川のべがはらがわ

0.7

同派川 2 門 前 川も ん ぜ ん が わ

4.7 同支川 22 宇 佐 川う さ が わ

26.5

同支川 3 御 庄 川み し ょ う が わ

7.4 23 府 谷 川ふ の た に が わ

5.0

4 古 宿 川ふるじゅくがわ

2.2 24 木 積 川こ づ も り が わ

3.0

5 保 木 川ほ ぎ が わ

5.6 25 大 野 川お お の が わ

2.0

6 竹 安 川た け や す か わ

3.4 26 宗 津 川そ う づ が わ

2.7

7 近 延 川ち か の ぶ が わ

2.9 27 大 原 川お お は ら が わ

4.8

8 生 見 川い き み が わ

25.9 28 寂 地 川じ ゃ く ち が わ

0.5

9 下 畑 川し も は た が わ

10.0 29 大 谷 川お た に が わ

2.8

10 渋 前 川し ぶ く ま が わ

3.8 30 桜 木 川さ く ら ぎ が わ

4.5

11 伊 田 川い だ が わ

4.5 31 有仏谷川おぶつだにがわ

2.5

12 根 笠 川ね が さ が わ

10.7 32 木 谷 川き だ に が わ

3.1

13 野 谷 川の た に が わ

5.9 33 金 峰 川み た け が わ

8.0

14 本 郷 川ほ ん ご う が わ

17.9 34 長 谷 川な が た に が わ

2.3

15 赤 瀬 川あ か せ が わ

1.5 35 阿 田 川あ だ が わ

4.9

16 小 杉こ す ぎ

川がわ

1.4 36 須々万川す す ま が わ

5.6

17 渋 谷 川し ぶ た に が わ

2.1 37 田 代 川た し ろ が わ

2.0

18 宇 塚 川う づ か が わ

2.0 38 坂 根 川さ か ね が わ

4.3

19 本 谷 川ほ ん た に が わ

5.5 39 渋 川し ぶ か わ

13.5

20 岡之迫川おかのさこがわ

1.5 40 牛野う し の

谷川や が わ

0.1注)今津川は錦川に含まれる。資料:「河川海岸表 H.15.1.1現在 山口県土木建築部河川課」

水系名 水系名河川名 河川名

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- - 25

図-2.1 対象区間位置図

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- - 26

2.4 河川整備計画の目標

2.4.1 洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する目標

本計画の上位計画である錦川水系河川整備基本方針では、100 年に 1 回程度発生す

る洪水に対し、基本高水のピーク流量を基準地点“臥竜橋”において 5,300m3/s とし、

流域内の洪水調節施設により 2,050m3/s を調節し、河道への流量配分を 3,250m3/s とし

ています。

この計画における洪水を安全に流下させる河川整備を実現するためには、膨大な事

業費と期間を要します。したがって、錦川の当面の河川整備の内容を定める河川整備

計画においては、過去の水害の発生状況、流域内の資産状況、河川整備の進捗状況、

及び投資規模等の社会的・現実的な諸条件等を総合的に勘案し、戦後第 3 位で、錦帯

橋を流失させたことで知られる昭和 25 年 9 月キジア台風洪水規模の出水を目標とし、

浸水被害の軽減に努めます。

このため、既設の菅野ダム・生見川ダムと新設の平瀬ダムによって洪水調節を行い、

名勝である錦帯橋地点で安全に流下できる流量である 2,450m3/s を同地点の河道の目

標流量とします。

しかしながら、錦帯橋地点より下流区間については、高度な土地利用がなされ資産

も集中しており、築堤区間であることから洪水被害が甚大化する恐れがあります。こ

のことから、基準点“臥竜橋”における目標流量については、下流の横断工作物に支

障のない範囲で流下能力の向上に努め、2,450 m3/s を 2,800m3/s として洪水の安全な

流下を図ります。

なお、戦後最大であった平成 17 年 9 月台風 14 号洪水規模の出水に対しては、浸水

被害の軽減に努めます。

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- - 27

表-2.2 目標とする整備規模および流量

河 川 名 地 点 整備計画の

規 模

整備計画の

目標流量 計画高水位

錦にしき

川がわ

臥が

竜りょう

橋ばし

昭和 25 年 9 月

キジア台風洪水 2,800 m3/s 注 2) T.P.+7.587m 注 1)

錦帯橋きんたいきょう

昭和 25 年 9 月

キジア台風洪水 2,450 m3/s T.P.+9.000m 注 1)

注 1)T.P.:東京湾中等潮位(2000 年以前の測地結果による表示)

注 2)臥竜橋地点においては、沿川の資産状況等から目標流量を引き上げ

図-2.2 河道整備における目標流量

・2,800

〔5,300〕 (3,250)

平瀬ダム

生見川

ダム 錦帯橋

門 前

(今 津 川)

菅野ダム

既設ダム

建設ダム

本郷川

宇佐川

生見川

単位:m3/s

:整備計画目標流量 〔 〕:基本高水ピーク流量(1/100) ( ) :計画高水流量(1/100)

・ 2,450

基準地点

“臥竜橋”

錦 川

錦 川

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- - 28

2.4.2 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する目標

(1)河川水の適正な利用

錦川の流水は、周南地域への分水を含め、水道用水をはじめ、工業用水、かんがい

用水など、市民の生活や経済活動に必要な水利使用のほか、舟運(鵜飼舟)や景観、

河川に関わる生態系の基盤であり、河川及び海面における漁業に対しても重要な役割

を担っています。したがって、水質の監視や水量の管理は、公共の安全を保持し、か

つ、公共の福祉を増進するために重要な事項となります。

このため、流域内における農地面積の増減や人口動態等による水利用の変化に応じ、

適正な水利用がなされるよう管理していきます。

(2)流水の正常な機能の維持

流水の正常な機能を維持するため必要な流量については、河川整備基本方針におい

て、動植物の生息・生育環境の保護、漁業、景観、水質などの河川維持流量及び水利

流量を確保する観点から、基準地点“臥竜橋”において概ね 12m3/s としています。

河川整備計画においては、既設ダム群を適切に運用するとともに、新たに岩国市錦

町広瀬地内に平瀬ダムを建設し、渇水被害の軽減に努めます。

また、平成 6年渇水のような異常渇水においても被害を最小限に抑えるため、河川

管理者と水利権者相互の情報交換を行い、緊急時における水融通の円滑化を図るなど

関係機関との連携強化に努めます。

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- - 29

2.4.3 河川環境の整備と保全に関する目標

錦川の現状の自然環境や利用状況を踏まえ、河川環境の整備と保全に関しては、以

下の目標にもとづいて進めていきます。

(1)動植物の生息・生育環境

水域においては、多様な動植物が見られることから、瀬や淵等の維持・保全に努める

とともに、動植物の生息・生育環境に配慮します。あわせて、動植物の生息・生育に適

した水量及び水質の維持・保全に努めます。また、陸域においては、さまざまな生物の

すみかとなっている植生等の維持・保全に努め、水際からの緑の連続性を確保します。

(2)水質

錦川の水は、水道原水・各種用水として利用されており、現状の水質は環境基準を満

足しています。このため、水質の保全については、関係機関と連携して、水質事故に

対する被害の軽減体制を確立するとともに水質等、現況の把握に努めます。

(3)景観

錦川の美しい四季の変化は、豊かな自然環境と相まって良好な景観を生み出しており、

流域の人々にとってもかけがえのないものとなっています。特に、名勝「錦帯橋」周辺

の河川景観は、多くの人々の目を楽しませています。このため、関係機関と調整を行い、

良好な景観の維持に努めます。

(4)河川利用

錦川は、流域内外のカヌー愛好家に人気の高い河川の一つであるほか、アユ釣りも盛

んで鵜飼や川下り等も行われており、水面利用は活発です。また、高水敷空間も貴重

なオープンスペースとして多方面に利用されています。

このような状況から、整備にあたっては、河川の利用に関する多様なニーズに配慮す

る必要性が高いと言えます。

このため、レクリェーションやスポーツ、交流拠点となる場の維持・形成を図り、心

身の健康の増進に寄与できるようにするとともに、環境教育の普及や福祉の充実を図

るため、人と自然が触れあえる空間として川に学ぶ自然学習の場を提供する等、親水

性の確保に努めます。また、川への関心を高めるための啓発活動や流域連携活動を支

援します。

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- - 30

3.河川整備の実施に関する事項 3.1 河川工事の目的、種類及び施行の場所並びに当該河川工事の施行により

設置される河川管理施設の機能の概要

錦川水系において河川整備計画の目標を達成するために、以下の内容の河川整備を実

施します。

① 洪水調節により河道に流れる流量を低減するとともに、岩国市錦町の水道用水の確

保、既得用水の安定化及び動植物の保護等に必要な流量の一部を確保するため、錦

川本川に平瀬ダムの建設を行います。 ② 流下能力が整備計画目標流量に対して不足する区間については、洪水による被害を

防止または軽減するため、河床掘削、河道拡幅、築堤により、流下断面の拡大を図

ります。 ③ 内水被害の軽減のため、排水機場の整備を行います。 ④ 水辺にふれあえる空間及び豊かな自然環境の保全に努めるとともに、河川利用の利

便性や沿川住民の川への親水性を高めるため、高水敷整備や遊歩道設置等の河川環

境整備を行います。

なお、河川整備の実施にあたっては、自然環境や周辺環境に十分配慮し、岩国市・周

南市、学識経験者、農業・漁業関係者及び地域住民等の関係機関と調整を行います。

整備計画で実施する工事箇所については、表-3.1 に工事対象区間、図-3.1 に工事対

象区間位置を示します。

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- - 31

表-3.1 錦川水系の河川整備計画における工事対象区間

記号 河 川 名 種 別 対 象 区 間

A 錦にしき

川がわ

ダム建設 岩国市錦町広瀬

ひ ろ せ

(平瀬ダム)

B 錦にしき

川がわ

(今いま

津川づ が わ

) 河道整備 錦川(今津川)八幡堰

はちまんぜき

上流から行波ゆ か ば

付近(保木川の支川処理区間含む)

C 錦にしき

川がわ

河道整備 岩国市美川町南桑な ぐ わ

付近

D 牛うし

野の

谷や

川がわ

排水機場整備 岩国市牛野谷付近

図-3.1 工事対象区間位置図

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(1)平瀬ダム建設

① 目 的

錦川流域では、過去、昭和 25 年キジア台風洪水、昭和 26 年ルース台風洪水をはじ

め、近年では平成 11 年台風 18 号洪水及び平成 17 年台風 14 号洪水で大きな被害を受

けています。

これらの洪水を河道改修のみで防ごうとすると、宇佐川合流点から下流の山間狭隘

区間では沿川に集落が点在し、さらに下流の岩国市街地では堤防のそばまで家屋が立

地していることから、現在以上に川幅を拡げることは、投資規模や住民生活に与える

影響の面からも現実的ではありません。

一方、平成 6年には渇水被害も発生している他、岩国市錦町では、上下水道の整備

により水需要の増加が見込まれています。

平瀬ダムは、このような課題を踏まえ、洪水や渇水の被害を軽減し、水道用水を確

保することを目的として建設します。

② 施工場所

施工場所を図-3.2 に示します。

表-3.2 平瀬ダムの建設概要

平瀬ダム

0 2.0km 1.0km

位 置:左岸 山口県岩国市錦町広瀬地先

右岸 同 上

型 式:重力式コンクリートダム

堤 高:約 73 m

堤 頂 長:約 300 m

総貯水容量: 29,500,000 m3

湛 水 面 積 :約 1.3 km2

設 置 目 的 :洪水調節、流水の正常な機能の維

持、水道用水の確保、発電

図-3.2 平瀬ダム施工場所位置図

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- - 33

③ 河川管理施設の機能の概要

1) 洪水調節容量の確保

梅雨や台風などの大雨によって発生する洪水を調節するため、洪水調節容量

24,300,000m3を確保し、ダム下流地域の洪水被害の軽減を図ります。

2) 流水の正常な機能の維持

ダム下流の既得の農業用水、生活用水、工業用水の安定取水、動植物の生息・生

育環境の保全、河川景観の保持などのため、10 年に1回程度発生すると考えられ

る渇水時にも岩国市錦町広瀬地点において概ね1.5m3/sの流量を確保するとともに、

ダム下流区間における渇水被害の軽減を図ります。

この目的のため、利水容量 3,160,000m3を確保します。

3) 水道用水の開発

岩国市錦町の水道用水として、新たに 1 日 400m3の取水を可能にするため、利水

容量 40,000m3を確保します。

4) 発電

流水の正常な機能の維持のための用水や水道用水等としてダムから放流する水

を利用し、最大出力 1,200 キロワットの発電を行います。

5) 施工時における環境への配慮事項

平瀬ダム建設に当たっては、法面緑化対策等を施すほか、騒音・振動を極力抑え

ることや濁水を下流へ流さない等の対策を取ることにより、河川環境、漁業等への

影響を低減します。

また、工事の実施による動植物の生息・生育環境への影響を、最小限に抑えるよ

う努めます。

平瀬ダムの横断面図及び貯水池容量配分図を図-3.3(1)~(2)に示します。

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- - 34

表-3.3 平瀬ダム諸元

最低水位 EL 118.0m

常時満水位 EL 128.1m

サーチャージ水位 EL 158.1m

80

100

120

140

160

180 EL.(m)

ダム高 約

73 m

洪水調節容量 24,300,000m3

利水容量 3,200,000m3

流水の正常な 機能の維持 3,160,000m3 水道用水 40,000m3

発電 (3,200,000m3)

利水容量 3,200,000m3

堆砂容量 2,000,000m3

総貯水容量 29,500,000m3

有効貯水容量 27,500,000m3

図-3.3 平瀬ダム横断面図及び貯水池容量配分図

ダム名 平瀬ダム

位置 山口県岩国市錦町広瀬地先

ダム諸元

形式 重力式コンクリートダム

堤高 約73m

堤頂長 約300m

貯水池諸元

総貯水容量 29,500,000m3

有効貯水容量 27,500,000m3

洪水調節容量 24,300,000m3

利水容量 3,200,000m3

堆砂量 2,000,000m3

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- - 35

(2) 流下能力向上対策

① 目的

流下能力の向上対策は、各地域の資産状況や土地利用状況、これまでの被災履歴、

流域内の治水安全度の上下流バランス等を総合的に判断し、以下の各区間において実

施します。なお、図-3.4 に整備計画目標流量配分図を示します。

1)錦川(今津川)八幡堰上流~行波

錦川(今津川)八幡堰上流~行波付近までの錦川下流区間約 17,700m については、

全体的に流下能力が不足していることから、資産の集中する山陽新幹線橋梁付近より

下流区間においては目標流量を安全に流下させる河道、その上流区間については浸水

被害の軽減を図れる河道を確保します。

なお、あわせて支川保木川については、錦川本川からの逆流による浸水被害の軽減

を図れる河道を確保します。

また、平成 17 年台風 14 号洪水規模の出水に対しては、岩国市藤河地区において再

度災害の防止を図るとともに、その他の地域においても浸水被害の軽減に努めます。

2)錦川(南桑地区)

南桑地区は、山間狭隘河道区間であるとともに、行波~宇佐川合流点区間において

最も流下能力が不足しており洪水被害を最も受けやすい地区となっています。このた

め、約 2,700m の区間において目標流量を安全に流下させる河道を確保するとともに、

平成 17 年台風 14 号洪水規模の出水に対し、再度災害の防止に努めます。

・2,800

平瀬ダム

生見川

ダム 錦帯橋

門 前

・1,050

根笠川

菅野ダム

・2,300

既設ダム

建設ダム 臥竜橋■

保木川

御庄川

本郷川

宇佐川

生見川

流下能力向上区間 L=約 17,700m 単位:m3/s

南桑

流下能力向上区間 L=約 2,700m

・1,950 ・2,200 ・2,450

山陽新幹線

(今 津 川)

錦 川

図-3.4 整備計画目標流量配分図

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- 36 -

図-3.5(1) 錦川流下能力図(錦川(今津川)河口~宇佐川合流点)

注)本図は 200m 間隔の測点の流下能力表示であるため、その他の地点(臥竜橋・錦帯橋等)における流下能力を表示したものではない。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

No

0

No

5

No 1

0

No 1

5

No 2

0

No 2

5

No 3

0

No 3

5

No 4

0

No 4

5

No 5

0

No 5

5

No 6

0

No 6

5

No 7

0

No 7

5

No 8

0

No 8

5

No 9

0

No 9

5

No 10

0

No 10

5

No 11

0

No 11

5

No 12

0

No 12

5

No 13

0

No 13

5

No 14

0

No 14

5

No 15

0

No 15

5

No 16

0

No 16

5

No 17

0

No 17

5

No 18

0

No 18

5

No 19

0

流下

能力

(m3/s)

Q=1,050m3/s

2,300m3/s

今津川 錦川

流点

竜橋

帯橋

庄川

御木

見川

生 笠川

根郷

本 佐川

楠町

牛野谷

錦見

川西

横山

藤河

御庄

田原

守内

行波

荒瀬

天尾

松ヶ

二鹿谷

椋野

根笠

渡里

柳瀬

出合

南桑

南河内

2,800m3/s

2,450m3/s

1,300m3/s

1,600m3/s

1,950m3/s

2,200m3/s

陽新

幹線

八幡堰流下能力向上対策区間  L=約17,700m

№107

№144 №157

流下能力向上対策区間(南桑)

L=約2,700m

凡例

:現状流下能力

:目標流量

錦川(今津川)

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- - 37

凡 例

:現状流下能力

:目標流量

図-3.5(2) 門前川流下能力図 注)本図は 200m 間隔の測点の流下能力表示であるため、その他の地点

における流下能力を表示したものではない。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

No -23

No -22

No -21

No -20

No -19

No -18

No -17

No -16

No -15

No -14

No -13

No -12

No -11

No -10

No -9

No -8

No -7

No -6

No -5

No -4

No -3

No -2

No -1

流下能力(m

3/s)

J R山陽本線橋

川橋愛

前橋門

流点

分野谷

門前川

尾津

楠町

中津

門前

Q=1,750m3/s

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- - 38

② 施工場所

本整備計画で実施する流下能力向上対策箇所は、表-3.4 及び図-3.6 に示す区

間とします。

表-3.4 流下能力向上対策区間

河川名 整備区間

整備計画の

目標流量

(m3/s)

延 長

(m) 実施内容

錦川

(今津川)

岩国市山手町 4丁目地先~ 門前川分派点 1,050 約 930

・河床掘削 ・護岸 ・築堤

錦川 門前川分派点~行波付近 2,800~2,200 約 16,800

錦川 岩国市美川町南桑付近 1,950 約 2,700

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- 39

図-3.6(1) 流下能力向上対策区間(その1)

錦 川(分流点~行波付近)L=約 16,800m 錦川(今津川)

(八幡堰上流~分流点) L=約 930m

門前川

錦川

No.26 (愛宕橋附近)

No.34 (臥竜橋下流)

No.44 (横山)

No.52 (藤河)

No.87 (南河内) No.74

(守内)

錦川(今津川)

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- - 40

図-3.6(2) 流下能力向上対策区間(その2)

錦 川 (岩国市美川町南桑付近)L=約 2,700m

No.153 (南桑)

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- - 41

③ 河川管理施設の機能の概要 洪水被害の軽減のため、河床掘削・築堤によって流下能力の拡大を図るととも

に、必要に応じて護岸を施工します。河床掘削においては、現在の河床状況を大

きく改変しないよう河床の上下流の連続性を確保し、瀬や淵などの保全に努める

とともに、多様な動植物の生息・生育環境に配慮します。護岸についても、多様

な動植物の生息・生育環境に配慮した構造とします。 また、地域住民による河川空間の積極的な利用や自主的な活動が行われている

ことなどを考慮して、景観や親水性に十分配慮します。 なお、工事の実施にあたっては関係機関及び地域住民の方々と十分な調整を図

り、合意形成に努めます。 以下に流下能力向上対策による河道の横断的イメージを示します。なお、これ

らは、現地の地形状況等により断面や護岸の形状を変更することがあります。

-–––

1.2m

図-3.7(1) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市愛宕橋付近:錦川・№26)

図-3.7(2) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市臥竜橋下流:錦川・№34)

寄州が発達し河積を阻害しており、流下能力の向上のため、寄州と河床の一部

を掘削します。掘削に当たっては、動植物の生息・生育環境に配慮します。

天端幅 5.0m 川幅約 200m

天端幅 5.0m

発達した中州は河積を阻害しており、上流区間の流下能力の向上のため、中州の掘削と合わせ繁茂する樹木を除去します。掘削に当たっては、動植物の生息・生育環境に配慮します。

天端幅 5.0m 天端幅 5.0m 川幅約 360m

余裕高 1.2m

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- - 42

図-3.7(3) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市横山付近:錦川・№44)

図-3.7(4) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市藤河付近:錦川・№52)

低水路を拡幅し、護岸を設置します。護岸は環境保全型護岸などにより、動植物の生息・生育環境に配慮します。

掘削に当たっては、動植物の生息・生育環境に配慮します。

図-3.7(5) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市守内付近:錦川・№74)

護岸を設置します。護岸は環境保全型護岸などにより、動植物の生息・生育環境に配慮します。

低水路を拡幅し、護岸を設置します。護岸は環境保全型護岸などにより、動植物の生息・生育環境に配慮します。

天端幅 5.0m 川幅約 220m 天端幅 5.0m

余裕高 1.2m

築堤及び護岸を設置します。護岸は環境保全型護岸などにより、動植物の生育・生息環境に配慮します。

掘削に当たっては、動植物の生息・生育環境に配慮します。

天端幅 5.0m 川幅約 140m

余裕高 1.2m

天端幅 5.0m

天端幅 5.0m 川幅約 210m 天端幅 5.0m

余裕高 1.2m

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図-3.7(7) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市南桑付近:錦川・№153)

景観に配慮した護岸を設置します。下流部の河床掘削に当たっては、カジカガエルなど動植物の生息・生育環境に配慮します。

川幅約 80m

図-3.7(6) 流下能力向上対策の横断的イメージ(岩国市南河内付近:錦川・№87)

築堤及び護岸を設置します。護岸は環境保全型護岸などにより、動植物の生息・生育環境に配慮します。

余裕高 1.2m

川幅約 150m 天端幅 5.0m 天端幅 5.0m

余裕高 1.2m

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(3) 内水処理対策

① 目 的

平成 17 年 9 月台風 14 号洪水では、錦川下流域の右岸地域において内水被害が

発生しました。このうち、二級河川流域である牛野谷川流域の内水対策として、

2m3/s の排水ポンプを設置して浸水被害の軽減を図ります。

② 施工場所

図-3.8 牛野谷排水機場設置位置

排水ポンプ場設置位置

牛野谷地区排水流域

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(4) 河川環境整備

① 目的

錦川の現状水質は良好で清澄な状態が保たれています。また、アユ・カジカガエ

ル・竹林等、多種多様な動植物の生息・生育環境も保たれています。さらに、名勝

錦帯橋をとりまく風景等は、流域住民に深く親しまれています。

したがって、河川工事等にあたっては、これらの自然環境の保全や水と緑の調和

した河川景観の維持等に配慮して整備を行います。

また、錦川の現状の利用状況を踏まえ、錦川(今津川)八幡堰上流~新幹線橋梁

までの区間においては、高水敷等の整備を実施するとともに、その他の区間につい

ても、必要に応じ河川利用や親水性を高めるため、遊歩道等の設置を行い、地域に

根ざした文化を創造する場の提供に努めます。

なお、工事の実施にあたっては関係機関及び地域住民の方々と十分な調整を図り、

合意形成に努めます。

錦川(今津川)八幡堰上流~新幹線橋梁までの区間の整備箇所は、図-3.8 に示す

箇所とし、図-3.9 に河川環境整備のイメージ図を示します。なお、これは整備イメ

ージであり、現地の地形状況等により整備内容を変更することがあります。

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図-3.9 環境整備実施箇所位置図

図-3.10 河川環境整備のイメージ図

② 施工場所

河川環境整備の対象区間

八幡堰 新幹線

橋梁

(他の機関による整備内容も含む)

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3.2 河川の維持の目的、種類及び施行の場所

河川の維持管理は、地域の特性を踏まえつつ、洪水による被害の防止、河川の適

正な利用、流水の正常な機能の維持、河川環境の整備と保全等、河川の機能が維持

されるよう、県が管理する河川全域において総合的に行います。また、多様な動植

物の生息・生育環境の維持保全にも努めます。

(1) 河川管理施設の維持管理

河川管理施設については、その機能を十分に発揮させることを目的として、施設

の異常について早期発見に努めるとともに、河川管理上の支障となる場合は、適切

な処置を行います。また、土砂の堆積により洪水の流下の阻害となり治水上支障と

なる場合は、環境面に配慮した掘削等必要な対策を行います。

また、平常時の河川巡視等において、許可工作物の状況を把握し、維持管理上の

支障となることが予想される場合は、許可工作物の管理者に速やかに点検、修繕等

を実施するよう指導監督します。

さらには、ダム建設後は、貯水池の水質保全に努めます。

(2) 洪水情報の提供

洪水情報の提供は、計画規模を上回る洪水や、河川の整備途上段階における施設

能力以上の洪水が発生した場合に、被害を最小限に抑えるための方策として極めて

重要です。 このため、洪水時には、「山口県土木防災情報システム」により河川情報を収集・

提供し、水防警報を発令する等、防災関係機関等と連携して水防体制の維持・強化

を図ります。 また、平成 14 年 9 月及び平成 20 年 9 月に策定された洪水ハザードマップを有効

に活用します。 さらに、錦川は平成 15 年 6 月に洪水予報河川に指定されており、下関地方気象台

と共同し迅速な洪水予報の発令を行い、洪水被害の未然防止及び軽減を図ります。

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3.3 その他河川の整備を総合的に行うために必要な事項

錦川の河川整備をより円滑かつ効果的に推進していくためには、山口県及び関係

自治体はもとより、沿川の地域住民の理解と協力を得ることが必要不可欠です。

このためには、錦川に関する河川情報を、地域住民へ積極的に提供し、錦川が地

域共有の財産であるという認識のもとに、河川整備、河川の利用並びに河川環境に

関する地域の意見・要望を十分に把握することが重要です。

そこで、関係機関、地域と十分な調整や協力を行いながら河川整備を推進するに

あたっては、以下の事項に特段の配慮を行うものとします。

(1) 河川の適切な利用・管理の推進

錦川を常に安全で適切に利用・管理する気運を高め、より良い河川環境を地域ぐ

るみで積極的に創り出すことを目的とした河川愛護の普及を図るため、河川管理者

として収集した情報や河川利用に関する情報等について、ホームページ、パンフレ

ット、広報誌等を通じて提供します。

錦川流域では、流域住民が主体となって毎年 7 月に実施される「錦川流域河川一

斉清掃」が定着しているほか、平成 14 年には、錦川流域内でさまざまな活動を繰

り広げる住民団体等が集まって「錦川流域ネット交流会(通称 NR ネット)」が発

足しました。同交流会は、流域内の活動団体同士の連携の下、「錦川流域源流の碑

建立」等、「みんなで守ろう!ふるさとの清流」をスローガンとする環境保全活動

を行っています。

このような錦川の地域住民の自主的な活動に対しては、多数の地域住民が安全に

参加できるよう、これらの活動に必要となる河川情報を積極的に提供し、また、河

川環境の保全活動を行っている団体間の連携強化に対する支援を行います。

(2) 河川整備計画の変更に関する事項

本計画は、今後概ね 30 年間の河川整備の計画であり、期間中に社会情勢の変化や

災害の発生、自然環境の変化、新たな知見、技術の進歩等により、計画の見直しの

必要が生じた場合は適宜変更するものとします。