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黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト診断マニュアル 独立行政法人 家畜改良センター 鳥取牧場 平成 28 12

黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

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Page 1: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

黒毛和種繁殖雌牛における

代謝プロファイルテスト診断マニュアル

独立行政法人 家畜改良センター

鳥取牧場

平成 28 年 12 月

Page 2: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

本文中の略号について

TDN: Total digestible nutrients 可消化養分総量

CP: Crude protein 粗蛋白質

DMI: Dry matter intake 乾物摂取量

NFC: Non-fibrous carbohydrate 非繊維性炭水化物 (主にデンプン)

ADF: Acid detergent fiber 酸性デタージェント繊維

NDF: Neutral detergent fiber 中性デタージェント繊維

TMR (mixer): Total mixing ration (mixer) ティーエムアール (ミキサー)

飼料攪拌機

MPT: Metabolic profile test 代謝プロファイルテスト

VFA: Volatile fatty acid 揮発性脂肪酸

Glu: Glucose 血糖・ブドウ糖

FFA: Free faty acid 遊離脂肪酸

BHB: ß-hydroxy butyric acid ß-ヒドロキシ酪酸

BUN: Blood urea nitrogen (血液)尿素窒素

Alb: Albumin アルブミン

T-cho: Total cholesterol 総コレステロール

AST: Asparate aminotransferase アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ

GGT: γ-Glutamyltranspeptidase γ-グルタミルトランスペプチダーゼ

Ca: Calcium カルシウム

NH3: Ammonia アンモニア

ACAC: Acetoacetic acid アセト酢酸

PL: Phospholipid リン脂質

LA: Lactic acid 乳酸

BCS: Body condition score ボディ・コンディション・スコア

RS: Rumen size ルーメンサイズ

DG: Daily gain 日増体量 (kg/日)

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はじめに

牛の繁殖を担当したことがある獣医師や人工授精師の多くは、農場や時期により人

工授精 (AI)や受精卵移植 (ET)の受胎率が違うことを経験します。これは受胎率や繁

殖性は AI・ET 技術そのものだけでなく、様々な要因の影響を受けているためと考え

られます。その中でも毎日の栄養管理を含む飼養管理は繁殖性に大きな影響があると

考えられます。しかし、肉用牛繁殖雌牛では牛群の栄養状態をモニタリングする手法

が少なく、農場の飼養管理や牛群の栄養状態が適切かどうかを客観的に評価する基準

がほとんどありません。そこで、家畜改良センター鳥取牧場 (以下、鳥取牧場)では、

乳用牛群の栄養状態のモニタリングに利用されている代謝プロファイルテスト

(MPT)を黒毛和種繁殖雌牛群に利用し、飼養管理の改善を行いました。その結果、受

胎率の向上がみられたほか、子牛の損耗率が減少しました。このことから、肉用牛繁

殖雌牛群における飼養管理のモニタリング手法として、MPT は有効であると考えら

れます。

MPT は対象となる農場と同じ地域の優良農場との相対評価により診断することも

可能ですが、肉用牛繁殖雌牛の MPT はまだ実施事例が少なく、比較対象となる血液

データの報告も少ないのが現状です。そこで鳥取牧場では、場内において繁殖性や子

牛損耗率の良好な牛群から回収した MPT データを用いて、繁殖ステージ(妊娠末期、

泌乳前期、泌乳後期、乾乳期)、各血液生化学検査項目毎の適正範囲を設定し、MPT

診断の基準とし、自場の牛群はもちろん、他の農場の診断にも利用し、栄養状態や繁

殖性との関連を検証してきました。そして、一定の成果が得られたことから飼養管理

方法、MPT の適正範囲や診断事例をとりまとめ、平成 27 年に「多頭飼養における黒

毛和種繁殖雌牛生産性向上のための代謝プロファイルテストを用いた飼養管理マニュ

アル」としてマニュアル化しました。今回のマニュアルは、この 27 年のマニュアル

を元に MPT 診断を中心としたものに再編集するとともに、平成 27 年以降に得られた

知見なども追加しました。

本マニュアルが国内の肉用牛繁殖雌牛の生産性向上や増頭に貢献できれば幸いです。

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●代謝プロファイルテストとは

代謝プロファイルテスト (MPT)は、主に乳用牛で実施されている血液生化学検査を

主体とした牛群の栄養モニタリング手法です。摂取栄養量と維持および生産のための

栄養量のアンバランスに由来する生産病 (主に周産期病)について、血液生化学検査値

から代謝が破綻を起こす前に異常をとらえて改善させることを目的としています。近

年ではボディ・コンディション・スコア (BCS)等も併せて調査することで、牛群の栄

養状態をより正確に把握し、飼料設計等の改善に活用しています。

消化吸収 血液

蓄積動員

乳生産繁殖

摂取飼料(栄養)

維持・増体・生産(牛乳、子牛)

代謝プロファイルテスト(MPT)の概念

配合飼料

粗飼料

●肉用牛繁殖雌牛における代謝プロファイルテストの考え方

MPT は牛群の栄養状態を把握するとともにバランスを崩している場合の要因を推

測することが可能です。栄養状態の適正化がなされていない牛群は、体内の代謝活動

を正常に維持するために様々な器官に負荷がかかり、このことが生産性低下の大きな

要因となっていることも考えられます。乳用牛では主に周産期病の予防に MPT が利

用されていますが、肉用牛繁殖雌牛の場合、周産期病はそれほど多く発生しないため、

肉用牛繁殖雌牛の MPT では牛群の栄養状態を適正化し、体内の栄養的な負荷やスト

レスの低減、代謝活動の正常化を図ることにより、繁殖性の向上や高位安定 (発情微

弱や無発情の防止、受胎率の高位持続)、子牛の疾病予防や損耗率の低下 (虚弱子牛の

低減、泌乳中における哺乳子牛の下痢 (白痢)防止)を目指します。

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●代謝プロファイルテストの評価方法

MPT には様々な評価方法がありますが、大きく分けると相対評価と基準値評価に

分類されます。相対評価は主に地域ぐるみで MPT を実施する場合に用いられ、地域

の中の複数農場で同時に血液生化学検査や BCS を調査し、優良農場のデータを基準

値として調査対象農場と比較する方法です。この方法は同一地域内の農場間比較にな

るため、飼養管理パターンが似ていることが多く (例えば粗飼料基盤が同じ等)、どの

ような改善が必要なのかポイントをつかみやすいことが利点としてあげられます。し

かし、比較対象となる優良農家の成績が高位安定していることが求められ、優良農場

の選定が重要となります。

一方、基準値評価は優良農場の多数のデータから MPT の適正範囲 (=基準値)を設

定して比較する方法です。この方法はあらかじめ適正範囲が設定されているため、調

査対象農場のみの血液生化学検査値や BCS 等を調べるだけで診断が可能です。

ただし、基準値を設定した農場と調査対象農場では給与飼料の成分や給与方法が大

きく異なる可能性があるため、これらを考慮した診断が必要です。

本マニュアルでは、鳥取牧場で作成した適正範囲を利用した基準値評価での診断を

ご紹介しますが、実際の診断では、基準値評価を用いる場合に牛群内の繁殖ステージ

(泌乳期、乾乳 (妊娠維持)期、妊娠末期)間で比較することでより牛群の状態が正確に

判断できる場合があります。

代謝プロファイルテストの診断方法相対評価

基準値評価

0

5

10

15

20

-60 0 60 120 180

BUN (mg/dL)

分娩後日数

適正範囲は優良農場の多数のデータを元にあらかじめ設定し、適正範囲と要改善農家のMPTデータを比較

優良農場 要改善農場

比較

同一地域内の優良農場のと要改善農場のMPTデータを比較

同一地域内

適正範囲(基準値)

要改善農場

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0

5

10

15

20

-60 0 60 120 180

BUN (mg/dL)

分娩後日数

0

5

10

15

20

-60 0 60 120 180

BUN(mg/dL)

分娩後日数

生産性の良い牛群の血液データを回収(上図は血中尿素窒素の例)

各項目について適正範囲を設定

・調査対象農場の牛群についてMPTを実施・適正範囲から外れている繁殖ステージおよび検査項目を確認

・MPT値が適正となるように飼養管理を改善(左図の場合、乾乳期の牛群が粗蛋白質摂取過剰)

MPTによる飼養管理の改善イメージ(基準値評価)

各プロットが個々の牛データ

複数項目

0

5

10

15

20

-60 0 60 120 180

BUN(mg/dL)

分娩後日数

適正範囲

1.代謝プロファイルテスト実施前の確認事項等

(1)調査対象農場の客観的なデータの把握

MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

客観的データとは牛群の平均空胎日数や受胎率といった繁殖成績、子牛の治療件数お

よび損耗率 (死亡率)等です。農場のどこに問題が生じているかを数値に基づいて把握

することができるため、MPT を実施する際には事前にこれらデータを調査しておく

ことが重要です。

また、MPT は血液生化学検査の結果をもとに牛群の栄養状態を改善させる手法で

あることから、MPT 実施後は必要に応じて飼料設計の修正を行う必要があり、給与

している飼料成分や飼料給与量、栄養充足率 (日本飼養標準 2008)を事前に把握して

おくことも重要です。

①具体的な確認事項

ア、生産性

・平均空胎日数や周年繁殖の有無、受胎率、繁殖障害 (子宮内膜炎、卵胞のう腫等)

発生率、発情の状況 (発情発見率、発情行動の明瞭さ等)

・子牛 (特に自然哺育牛)の治療履歴や損耗率

イ、飼養管理体系

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肉用牛繁殖農場では飼養管理に様々なパターンがあります。特に泌乳期間につい

ては農場毎に離乳時期が異なりますし、人工哺乳を行い早期離乳をしている農場も

あります。また、泌乳期と乾乳 (妊娠維持)期では繁殖雌牛が必要とする飼料の質

や量が異なるため、きちんと増飼を行っているかどうかも確認します。MPT を利

用して牛群の栄養状態をより正確に診断するためには、飼養管理体系の確認が重要

となります。

・採材の時期 (泌乳期、乾乳期、妊娠末期)

・自然哺乳、人工哺乳の別

・離乳時期

・放牧の有無

ウ、給与飼料

・給与飼料の種類、成分、量

・増飼の時期および量

(2)MPT 対象牛の選定

①臨床的に異常がないことが必須です。

②泌乳期、乾乳 (妊娠維持)期、妊娠末期毎に無作為に抽出します。

③検査頭数は牛群のうち 1~2 割の牛を対象とします。

④選定牛各個体に必要なデータ

・分娩後日数 (分娩予定日まで 100 日以内であればマイナスで表記します)

・哺乳の有無 (分娩後日数が同じでも、人工哺乳している場合があります)

・繋養している牛舎 (牛舎により飼料設計や飼養管理者が異なる場合は必須です)

(3)データのグラフ化

MPT のデータはグラフ化して視覚的にとらえる方法が効果的です。グラフ化の方

法は大きく分けて 2 種類あります。一つ目はグラフの横軸に分娩後日数、縦軸を血液

生化学検査値等とするグラフです。このようなグラフは、農場の飼養管理パターンや

牛群の繁殖ステージ (泌乳期、乾乳(妊娠維持)期、妊娠末期)毎の栄養管理の良否を評

価する場合に有効です。もう一つはグラフの横軸に飼養管理の異なる牛群、縦軸は血

液生化学検査値等とするグラフです。例えば人工哺乳を行い繁殖ステージ毎の飼養給

与がほぼ一定で、体格や BCS で群分けして飼養給与を変えている農場では、栄養状

態を繁殖ステージで比較するよりも牛群別にみた方が診断精度が向上します。

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下の図は人工哺乳をしている牛群の同じデータです (Glu:グルコース)。左のグラ

フは横軸を分娩後日数にして作成したグラフです。このグラフだと、Glu は全体的に

適正範囲から逸脱していると判断してしまいます。しかし、右のグラフのように分娩

後日数を無視して牛舎ごとにデータを振り分けてみると、適正範囲から外れている牛

群は特定の牛舎に偏っていることが明確となってきます。このように、牛舎により給

与飼料や給与量が異なるような農場では、飼養形態別の見方が必要になる場合があり

ます。

分娩後日数によるグラフ 牛舎別 (飼養管理別)グラフ

2.代謝プロファイルテスト用血液サンプル採取時の注意点

・採血時間:朝の給餌後 4 時間目が目安です。

・ストレス:ストレスにより値が大きく変わる項目があることからできるだけ興奮

させないように採血します。

・血液の分析:常時検査を行っている機関に依頼するのが賢明です。

3.代謝プロファイルテストの診断手順

(1)農場の状況確認 (前述)

(2)採血、BCS およびルーメンサイズの測定

(3)血液処理 (詳細については先に発行された本マニュアルを参照)

(4)血液の分析(検査機関へ依頼))

(5)血液生化学検査値および BCS のグラフ化

①前述の通り、横軸を分娩後日数とし、縦軸を血中濃度等にしたグラフが最も一般的

なグラフ化の方法です。このグラフに適正範囲 (赤い点線)と農場のデータ (青いプ

ロット)を併せて表示することで適正範囲とのかい離状況を視覚的に把握します。

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

A牛舎 B牛舎 C牛舎 D牛舎

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なお、当マニュアルで例示している上記のような分娩後日数を横軸としたグラフで

は、分娩後 300 日以上経過している個体はグラフ内に表示されません。このような場

合は、横軸の 300 のところに値をプロットします。

また、当マニュアルでは離乳時期を 120 日として自然哺乳牛群の適正範囲を下記左

図のように定めています。このため、当該値を用いて基準値評価を行う場合は、調査

対象農場の離乳時期に合わせ下図右のように離乳時期を左右にずらして利用する必要

があります。

自然哺乳牛群の適正範囲 離乳日が分娩後 90 日の適正範囲

②同一地域内において優良農場と評価対象農場を比較する場合、同一グラフ内に多数

の農場データを表示すると相対評価がしやすくなります。ただし、このような場合

でも、適正範囲を記載したほうが理解や比較が容易になります。

4550556065707580

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

検 査 項 目

(単位)

血液生化学

検査値等

分娩日

離乳日(120 日齢)

農場の MPT データ

適正範囲

分娩後日数

(分娩予定日は

マイナスで表示)

120 日 90 日

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③大規模農場で牛舎ごとに飼養管理が異なる場合は、横軸を牛舎にし、牛舎ごとに

データを区分したり色分けして表示することも有効です。特に BCS の調整等を目

的として、牛舎ごとに大きく飼料設計を変更している場合は必須です。必要に応

じて、分娩後日数のグラフと両方を作成して多面的に診断します。

*上記グラフの適正範囲は人工哺乳時

*上記グラフの適正範囲は自然哺乳牛群

*自然哺乳牛群において牛舎ごとの比較をしたい場合、分娩日を無視して牛舎ごとにプ

ロットを横並びにしてしまうと、適正範囲がずれてしまいます (繁殖ステージによる

適正範囲の変動があるため)。このため、牛舎ごとにデータのプロットの色を変えると

35

45

55

65

75

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

A牛舎 B牛舎 C牛舎 D牛舎

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

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牛舎毎、繁殖ステージ毎の診断に有効です。

4.各血液生化学検査値の診断方法

MPT は各血液生化学検査値単独で診断するのではなく、関連する複数の血液生化

学検査値から牛群の代謝活動等を評価した後、総合的に栄養状態を診断します。

評価する代謝活動等は、大きく分けてエネルギー代謝、タンパク質代謝、脂質代謝、

肝障害、ミネラルに加え、BCS について行います。

なお、本マニュアルの評価事例では、理解しやすくするため代表的な 2~3 の関連

する血液生化学検査値等をもとに代謝活動等を診断していますが、本来は更に多くの

検査値から牛群がどのような状態にあるのかを総合的に判断する必要があります (な

お、事例の診断時、血液生化学検査項目の説明が止むを得ず一部前後する場合があり

ます。ご了承ください)

(1)エネルギー代謝の評価項目

動物は栄養物を摂取してエネルギーに変換し、生命活動の維持や生産 (体温保持

や様々な行動等)をしています。このため、必要なエネルギー量に対して不足・適

正・過剰を判断し、エネルギー代謝が良好な状態にあるのかを診断することは非常

に重要になります。

評価に用いる血液生化学検査項目:血糖 、遊離脂肪酸、β-ヒドロキシ酪酸

①血糖 (Glu、グルコ-ス)

Glu の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

(注) 適正範囲繁殖ステージ毎に牛の状態や必要とする養分量も大きく変わるため、

本マニュアルでは 4 つの区分 (妊娠末期:-60-0 日、泌乳前期:分娩後 0-60 日、泌

乳後期:分娩後 60-120 日、乾乳期:分娩後 120 日-)に繁殖ステージを分け適正範

囲を設定しています (以下の適正範囲のグラフは全て同じです)。

40

50

60

70

80

90

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

40

50

60

70

80

90

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

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臓で作られます

りません

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

つながる

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物

<参考>

ため、

Glu

臓で作られます

りません

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

つながる

最重要

Glu

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物

<参考>

牛で

酵)、生産された

ため、

②遊離脂肪酸

FFA

Glu は

臓で作られます

りません

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

つながる

重要です

Glu が

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物

<参考>

牛で

、生産された

ため、Glu

遊離脂肪酸

FFA

は体各部位

臓で作られます

りません。

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

つながることが多い

です

が高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物

<参考>

牛では摂取した飼料は

、生産された

Glu

遊離脂肪酸

FFA の適正範囲

体各部位

臓で作られます

。Glu

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

ことが多い

です。

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物

摂取した飼料は

、生産された

Glu の

遊離脂肪酸

の適正範囲

体各部位

臓で作られます

Glu

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下

から外れることが多

モン放出ホルモン

ことが多い

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

維性炭水化物)飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料は

、生産された

の不足は摂取飼料

遊離脂肪酸

の適正範囲

体各部位

臓で作られます (

Glu は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

性化すると低下します

から外れることが多

モン放出ホルモン

ことが多い

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料は

、生産されたプロピオン酸が

不足は摂取飼料

遊離脂肪酸 (FFA

の適正範囲

体各部位 (

(糖新生

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

します

から外れることが多

モン放出ホルモン)の分泌が抑制され

ことが多い

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料は

プロピオン酸が

不足は摂取飼料

FFA

の適正範囲

(特に脳の活動

糖新生

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

します

から外れることが多くなります

の分泌が抑制され

ことが多いため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料は

プロピオン酸が

不足は摂取飼料

FFA)

の適正範囲

特に脳の活動

糖新生)

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

します。飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

くなります

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料は

プロピオン酸が

不足は摂取飼料

)

特に脳の活動

)。肉用

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

くなります

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

摂取した飼料はルーメン

プロピオン酸が

不足は摂取飼料

特に脳の活動

。肉用

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

くなります

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

ルーメン

プロピオン酸が

不足は摂取飼料

特に脳の活動

。肉用牛

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

くなります。

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

ルーメン

プロピオン酸が

(栄養

特に脳の活動)の重要な

牛繁殖

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

。Glu

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

ルーメン

プロピオン酸が肝臓で

栄養

の重要な

繁殖

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

Glu

の分泌が抑制され

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

ルーメン (

肝臓で

栄養)の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

の重要な

繁殖雌

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

Glu の低下は

の分泌が抑制され発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

第一胃

肝臓で糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

10

の重要な

雌牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

の低下は

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

第一胃

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

10

の重要なエネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

エネルギー不足の初期には脂肪の燃焼に併せて

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

の低下は

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

第一胃)

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

併せて

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

の低下は視床下部からの

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあ

)内で微生物により

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

併せて上昇

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

飼料の多給でも上昇することがあります

内で微生物により

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

上昇

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレス

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります

ります

内で微生物により

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

上昇します

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

発情微弱や無発情

ため、この値を適正範囲に収めるのが

高い場合はエネルギー不足の初期やストレスが考えられますが

一定期間エネルギー不足等があった可能性があります。

ります

内で微生物により

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

します

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

発情微弱や無発情が生じ

ため、この値を適正範囲に収めるのが

が考えられますが

。また、

ります。

内で微生物により

糖新生に利用され

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

します

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

が生じ

ため、この値を適正範囲に収めるのが牛群の生産性向上のために

が考えられますが

また、

内で微生物により

糖新生に利用され Glu

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

しますが、エネルギー不足が慢

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの

が生じ

牛群の生産性向上のために

が考えられますが

また、

内で微生物により

Glu

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目

が、エネルギー不足が慢

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

視床下部からの Gn

が生じるなど

牛群の生産性向上のために

が考えられますが

また、デンプン

内で微生物により分解され

Glu に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

は恒常性が高いため、基本的に変化が少ない項目です

が、エネルギー不足が慢

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では

Gn-

るなど

牛群の生産性向上のために

が考えられますが

デンプン

分解され

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

です。

が、エネルギー不足が慢

飼料設計に大きな問題を抱えている牛群では Glu

-RH

るなど繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

が考えられますが

デンプン

分解され

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

エネルギー源となっており、ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

が、エネルギー不足が慢

Glu

RH(性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

が考えられますが、

デンプン

分解され

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

が、エネルギー不足が慢

Glu が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

、低い場合は

(NFC

分解され(ル-メン発

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

が、エネルギー不足が慢

が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

低い場合は

NFC

ル-メン発

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

が、エネルギー不足が慢

が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

低い場合は

NFC:非繊

ル-メン発

に変換されます。

の不足かルーメン発酵不良が疑われます。

ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きく

が、エネルギー不足が慢

が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

低い場合は

:非繊

ル-メン発

に変換されます。この

ほとんどが肝

牛では、繁殖ステージによる変動は大きくあ

が、エネルギー不足が慢

が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

低い場合は

:非繊

ル-メン発

この

ほとんどが肝

が、エネルギー不足が慢

が適正範囲

性腺刺激ホル

繁殖性の低下に

牛群の生産性向上のために

低い場合は

:非繊

ル-メン発

この

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11

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

FFA は主に体脂肪をエネルギーに変換する過程で生じる成分です。1食抜いても値

が上昇するほどエネルギー不足に鋭敏に反応します。エネルギー不足の初期には高い

値になり、さらにエネルギー不足が続くとその後低下します。また、ストレスでも上

昇します。

一方、エネルギー不足が慢性化すると低下することから、Glu や脂肪代謝の過程で

生じるケトン体の評価項目 (β-ヒドロキシ酪酸(BHB)、アセト酢酸(ACAC))と併せて

診断する必要があります。FFA をエネルギーに変換するためには肝臓が利用されるた

め、FFA が高い場合は肝機能に過度の負荷をかけていないかを注意する必要がありま

す。

なお、FFA が低すぎる牛群でも繁殖性が良くないことがあり、Alb (アルブミン)が

低い牛群でよくみられます。FFA は慢性的なエネルギー不足では低下する傾向がある

ため、FFA が極端に低い牛群も注意が必要です。また、FFA は給与する飼料によっ

てはルーメン内 VFA (酢酸、プロピオン酸、酪酸)と相関がみられる場合もあることか

ら、FFA が極端に低い牛群はルーメン発酵不良の可能性があることにも留意します。

③β-ヒドロキシ酪酸 (BHB)

BHB の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

050

100150200250300350400

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

050

100150200250300350400

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

150

350

550

750

950

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

150

350

550

750

950

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

Page 14: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

12

ルーメン発酵産物である VFA のうち、酪酸がルーメン壁から吸収され血液中に入

ると BHB になります。また、エネルギー不足により脂肪が燃焼しても BHB となり

ます。このように BHB はルーメン発酵産物と脂肪の代謝産物という両面があること

から、診断がやや難しい項目です。なお、泌乳期や分娩前では濃厚飼料の増飼により

ルーメン発酵が盛んになりグラフ中の適正範囲が高くなっていると考えられます。

分娩後の牛で BHB が高い牛群において、低 Glu を伴うと潜在性子宮内膜炎等を発

症し分娩後の発情回帰が遅れ、子宮の回復も遅延する傾向があります。また、泌乳し

ている場合、子牛が下痢を発症しやすくなる傾向がみられます。

なお、酪酸発酵してしまった低品質サイレージの摂取で高くなったり (食餌性ケト

ーシス)、双子妊娠牛の妊娠末期など多くのエネルギーが必要となる場合非常に高くな

ることがあります。

その他、乾草や低水分サイレージ主体で粗飼料の切断長が長い場合、ルーメン内で

は酢酸型発酵が持続するため相対的に VFA の酪酸比率が低くなり、これに伴い BHB

が低くなる場合があります。このため一見ルーメン発酵不良のように思われますが、

総 VFA 量は変わりないことからルーメン発酵不良とはいえず、生産性も高いケース

がみられます。

中性脂肪

(TG)

エネルギー不足時の脂肪の利用

肝臓

コレステロール

中性脂肪

アポ蛋白

リン脂質

ケトン体生産�アセトン

�アセト酢酸(ACAC)

�β-ヒドロキシ酪酸(BHB)

エネルギー不足

血管

Glu低下

脂肪酸

アセチルCoA

TCA回路エネルギー

回すのに糖質が必要

遊離脂肪酸(FFA)

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13

④エネルギー代謝の診断事例

●事例 1

この事例は FFA が分娩 120 日前後に極端に高くなっています。この牛群では分娩

後 120 日を目安に離乳していますが、離乳前に配合飼料の給与量を極端に減らしてい

たため泌乳牛がエネルギー不足になったと考えられます。Glu もややバラツキがみら

れることから、エネルギー不足の初期と考えられます。離乳時の飼料給与方法を検討

する必要があります。

●事例 2

0

200

400

600

800

1,000

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

エネルギー不足

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

エネルギー不足

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー不足

150

650

1150

1650

2150

2650

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

ケトーシス

020406080

100120

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

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14

妊娠末期の牛群について、FFA が高いことや Glu も高低のバラツキがみられるこ

とからエネルギー不足が疑われるほか、BHB が高い個体もいることからケトーシス

になりかけている (まる印の 1 頭はケトーシス)と考えられます。AST (AST は後述)

が高いため肝障害も考えられます。また、乾乳期の牛群も同様の傾向がみられるため

エネルギー不足の初期と考えられます。ルーメンサイズが低いことから、原因は給与

飼料の不足が考えられます (ルーメンサイズは後述)。このような例では、全体的に飼

料給与量を増やすとともに、分娩末期の増飼を適切に行う必要があります。

●事例 3

この事例では泌乳牛において BHB が高く、Glu は低下していますが FFA は高くな

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

乾物摂取量(DMI)不足

40

50

60

70

80

90

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー不足

0

100

200

300

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

150

650

1150

1650

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

潜在性

ケトーシス

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15

っていません。エネルギー不足の初期では FFA が高くなりますが、この事例ではそ

のような状態を過ぎてしまい FFA が低下していると考えられます。また、この状態

に至るまでの FFA 代謝などにより肝機能が低下したため、わずかな FFA も肝臓で代

謝 (処理)できず BHB が増加していると考えられます。つまり、肝機能低下による潜

在性ケトーシスが疑われます。このような牛群では、分娩後の子宮回復が遅く、受胎

率の低下がみられるほか、乳質低下により授乳子牛に下痢が多発し、発育に悪影響を

与えている可能性があります。

この事例では分娩後のエネルギー不足の可能性が高いですが、分娩前の飼養管理の

失敗による肝機能低下が原因の可能性もあるため、分娩前後の栄養充足率の確認が必

要です。

また、泌乳牛の BHB の値が総じて高いことから食餌性ケトーシスの可能性も考え

られるため、給与飼料がサイレージの場合は、サイレージの発酵品質を確認する必要

があります。サイレージの品質が悪い場合は、給与を中止するか他の粗飼料と併用す

る等の対策が必要です。

なお、黒毛和種繁殖雌牛群ではこのような潜在性ケトーシスが比較的多く見受けら

れます。しかし、潜在性ケトーシスは牛自体に臨床症状が出ないことが多いため、肝

障害に関する項目と併せて診断します。

●事例 4

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

TDN充足率

90%

TDN充足率

100%

050

100150200250300350

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

エネルギー不足

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グラフに記載してあ

トが

および

潜在性ケトーシスです。

(ケトン体

FFA

うな牛群では

90%

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

1150

110

この事例は

グラフに記載してあ

トが

および

潜在性ケトーシスです。

ケトン体

FFA

うな牛群では

90%

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

なお、

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

<参考

150

350

550

750

950

1150

30

50

70

90

110

この事例は

グラフに記載してあ

トが TDN

および

潜在性ケトーシスです。

ケトン体

FFA は

うな牛群では

90%の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

なお、

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

参考>

150

350

550

750

950

1150

-100

30

50

70

90

110

0

この事例は

グラフに記載してあ

TDN

および BHB

潜在性ケトーシスです。

ケトン体

は高くなった後に低下し、

うな牛群では

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

なお、BUN

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

100

0

この事例は

グラフに記載してあ

TDN 充足率

BHB

潜在性ケトーシスです。

ケトン体)が適正

高くなった後に低下し、

うな牛群では

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

BUN

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

この事例は分娩後の栄養充足率が

グラフに記載してあ

充足率

BHB が適正範囲内ですが、

潜在性ケトーシスです。

が適正

高くなった後に低下し、

うな牛群では乳質低下

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

BUN

と考えられます

較的早く現れる傾向があります。

Glu (mg/dL)

移動前

分娩後の栄養充足率が

グラフに記載してあ

充足率

が適正範囲内ですが、

潜在性ケトーシスです。

が適正

高くなった後に低下し、

乳質低下

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

BUN は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

と考えられます(BUN

較的早く現れる傾向があります。

0

BHB (µmol/L)

Glu (mg/dL)

移動前

分娩後の栄養充足率が

グラフに記載してあ

充足率 90%

が適正範囲内ですが、

潜在性ケトーシスです。

が適正範囲内

高くなった後に低下し、

乳質低下

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

(BUN

較的早く現れる傾向があります。

BHB (µmol/L)

1

Glu (mg/dL)

移動前

分娩後の栄養充足率が

グラフに記載してあるように

90%

が適正範囲内ですが、

潜在性ケトーシスです。

範囲内

高くなった後に低下し、

乳質低下

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

(BUN

較的早く現れる傾向があります。

100

BHB (µmol/L)

Glu (mg/dL)

分娩後の栄養充足率が

るように

90%で飼料設計

が適正範囲内ですが、

潜在性ケトーシスです。なお、

範囲内だったことから

高くなった後に低下し、

乳質低下による

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

(BUN については後述

較的早く現れる傾向があります。

100

BHB (µmol/L)

潜在性

ケトーシス

Glu (mg/dL)

分娩後の栄養充足率が

るように

で飼料設計

が適正範囲内ですが、

なお、

だったことから

高くなった後に低下し、

による

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述

較的早く現れる傾向があります。

BHB (µmol/L)

潜在性

ケトーシス

Glu (mg/dL)

移動後

分娩後の栄養充足率が

るように、左側のプロットが

で飼料設計

が適正範囲内ですが、

なお、

だったことから

高くなった後に低下し、

による授乳

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述

較的早く現れる傾向があります。

BHB (µmol/L)

潜在性

ケトーシス

2

Glu (mg/dL)

移動後

分娩後の栄養充足率が

、左側のプロットが

で飼料設計

が適正範囲内ですが、

なお、TDN

だったことから

高くなった後に低下し、

授乳

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述

較的早く現れる傾向があります。

200

BHB (µmol/L)

潜在性

ケトーシス

移動後

分娩後の栄養充足率が

、左側のプロットが

で飼料設計をし

が適正範囲内ですが、TDN

TDN

だったことから

高くなった後に低下し、BHB

授乳子牛の

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述

較的早く現れる傾向があります。

200

ケトーシス

移動後

分娩後の栄養充足率が異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

をし

TDN

TDN 充足率

だったことから

BHB

子牛の

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

をしています

TDN

充足率

だったことから

BHB が高くなっ

子牛の

の牛群が適正範囲から逸脱している

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

については後述)。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

300

3

16

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

ています

TDN 充足率

充足率

だったことから、

が高くなっ

子牛の白痢が発生しやすく

の牛群が適正範囲から逸脱している原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

300

3

16

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

ています

充足率

充足率 90%

、この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

が高くなっ

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

0

5

10

15

20

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

ています。

充足率 90%

90%の

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

が高くなっ

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

0

5

10

15

20

-100

0

100

200

300

400

500

600

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが

。TDN

90%

の牛群のうち

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

が高くなっている状態と

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

100

0

100

200

300

400

500

600

0

異なる飼料給与をした牛群のデータ

、左側のプロットが TDN

TDN

90%の牛群は

牛群のうち

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

0

異なる飼料給与をした牛群のデータ

TDN

TDN 充足率

の牛群は

牛群のうち

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

異なる飼料給与をした牛群のデータ

TDN 充足率

充足率

の牛群は

牛群のうち

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

を高めてエネルギー不足を解消させる必要があります。

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

0

FFA

移動前

異なる飼料給与をした牛群のデータ

充足率

充足率

の牛群は

牛群のうち

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と

白痢が発生しやすく

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

BUN (mg/dL)

FFA

移動前

異なる飼料給与をした牛群のデータ

充足率

充足率 100%

の牛群は BHB

牛群のうち FFA

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と

白痢が発生しやすくなります

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

BUN (mg/dL)

1

FFA

移動前

異なる飼料給与をした牛群のデータ

充足率 100%

100%

BHB

FFA

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

ている状態と考えられます。このよ

なります

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

100

BUN (mg/dL)

FFA (µEq/L)

移動前

異なる飼料給与をした牛群のデータ

100%

100%の牛群は

BHB が高い個体が多く、

FFA の高い

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

なります

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

100

BUN (mg/dL)

(µEq/L)

異なる飼料給与をした牛群のデータ

100%、右側のプロッ

の牛群は

が高い個体が多く、

の高い

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

なります

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

BUN (mg/dL)

(µEq/L)

異なる飼料給与をした牛群のデータです。

、右側のプロッ

の牛群は

が高い個体が多く、

の高い

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

なります。

原因はエネルギー不足ですので、

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

200

BUN (mg/dL)

2

(µEq/L)

移動後

です。

、右側のプロッ

の牛群は

が高い個体が多く、

の高い 1

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

。TDN

原因はエネルギー不足ですので、TDN

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

200

BUN (mg/dL)

移動後

です。

、右側のプロッ

の牛群は Glu

が高い個体が多く、

1 頭は

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

TDN

TDN

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

200

移動後

です。Glu

、右側のプロッ

Glu、

が高い個体が多く、

頭は

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

TDN 充足率

TDN 充足率

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

移動後

Glu

、右側のプロッ

、FFA

が高い個体が多く、

頭は BHB

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

充足率

充足率

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

300

3

Glu の

、右側のプロッ

FFA

が高い個体が多く、

BHB

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

充足率

充足率

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

300

3

、右側のプロッ

FFA

が高い個体が多く、

BHB

この牛群は分娩後エネルギー不足となり、

考えられます。このよ

充足率

充足率

は適正範囲内のため飼料設計や群内の乾物摂取量が均一化されている

。このような牛群は、飼養管理改善の効果が比

Page 19: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

ように

い診断をするためには

(2)

るかを診断することは非常に重要となります。

料中

タンパク

きます

10

15

上記例は牛をトラックで

ように

い診断をするためには

う十分

(2)

タンパク

等、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

料中

タンパク

きます

0

5

10

15

上記例は牛をトラックで

ように

い診断をするためには

十分な

(2)タンパク

タンパク

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

料中タンパク

タンパク

きます。

0

上記例は牛をトラックで

ように Glu

い診断をするためには

な注意が必要です。

タンパク

タンパク

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

タンパク

タンパク質

上記例は牛をトラックで

Glu、

い診断をするためには

注意が必要です。

タンパク

タンパク質は

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

タンパク

質に再構成され

上記例は牛をトラックで

、FFA

い診断をするためには

注意が必要です。

飼料的ストレス

・・・

タンパク

質は

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

タンパク質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成され

移動前

上記例は牛をトラックで

FFA

い診断をするためには

注意が必要です。

生物的ストレス

・病気、怪我・蹄

飼料的ストレス

・空腹・栄養バランス・ビタミン、ミネラル不足

タンパク質代謝

質は体の

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成され

1

LA (mg/dL)

移動前

上記例は牛をトラックで

FFA や乳酸

い診断をするためには

注意が必要です。

生物的ストレス

・病気、怪我蹄

飼料的ストレス

空腹栄養バランスビタミン、ミネラル不足

質代謝

体の

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成され

1

LA (mg/dL)

移動前

上記例は牛をトラックで

や乳酸

い診断をするためには

注意が必要です。

生物的ストレス

・病気、怪我

飼料的ストレス

空腹栄養バランスビタミン、ミネラル不足

質代謝

体の主要

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成され

LA (mg/dL)

上記例は牛をトラックで

や乳酸

い診断をするためには採血作業時の保定

注意が必要です。

生物的ストレス

・病気、怪我

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

飼料的ストレス

栄養バランスビタミン、ミネラル不足

質代謝および

主要

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成され

LA (mg/dL)

上記例は牛をトラックで

や乳酸 (LA)

採血作業時の保定

注意が必要です。

生物的ストレス

・病気、怪我

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

飼料的ストレス

栄養バランスビタミン、ミネラル不足

および

主要な成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

に再構成された後

LA (mg/dL)

移動後

上記例は牛をトラックで 20

(LA)

採血作業時の保定

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

栄養バランスビタミン、ミネラル不足

および肝障害

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

た後、

2

LA (mg/dL)

移動後

20 分

(LA)は

採血作業時の保定

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

ビタミン、ミネラル不足

肝障害

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

、吸収されることから

移動後

分間の運搬をする前

はストレス

採血作業時の保定

牛にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

ビタミン、ミネラル不足

肝障害

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

間の運搬をする前

ストレス

採血作業時の保定

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

ビタミン、ミネラル不足

肝障害の評価

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

間の運搬をする前

ストレス

採血作業時の保定

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

の評価

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

3

17

間の運搬をする前

ストレス

採血作業時の保定や採血

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

の評価

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

17

間の運搬をする前

ストレスに敏感に反応します。このため、

や採血

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

の評価項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

間の運搬をする前

に敏感に反応します。このため、

や採血

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。

質がルーメン内で微生物発酵を受

吸収されることから

間の運搬をする前

に敏感に反応します。このため、

や採血等で牛に大きなストレスを与えないよ

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、

るかを診断することは非常に重要となります。特に

質がルーメン内で微生物発酵を受けて

吸収されることから

間の運搬をする前と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

、生命現象の本質的な役割を果たしているため、タンパク

特に牛のような

てアンモニアに

吸収されることから、

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

タンパク

牛のような

アンモニアに

、ルーメン

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

精神的ストレス

・群内の順位・密飼・緊張、(人からの

にかかるストレス

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

タンパク

牛のような

アンモニアに

ルーメン

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度・

化学的ストレス

精神的ストレス

・群内の順位密飼緊張、人からの

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

タンパク

牛のような

アンモニアに

ルーメン

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度・牛床

化学的ストレス

・悪臭

精神的ストレス

・群内の順位密飼緊張、人からの

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

タンパク質代謝が良好な状態であ

牛のような

アンモニアに

ルーメン

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度牛床

化学的ストレス

悪臭

精神的ストレス

・群内の順位

緊張、恐怖人からの

ストレスコントロールは重要な飼養管理項目

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

牛のような反芻動物は摂取した飼

アンモニアに

ルーメンの

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度牛床

化学的ストレス

悪臭

精神的ストレス

・群内の順位

恐怖人からの扱い等)

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

アンモニアに分解され、

の環境

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度

化学的ストレス

精神的ストレス

・群内の順位

扱い等)

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

分解され、

環境診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

物理的ストレス

・気温、湿度

化学的ストレス

扱い等)

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

分解され、

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、

で牛に大きなストレスを与えないよ

扱い等)

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

分解され、

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

に敏感に反応します。このため、精度の高

で牛に大きなストレスを与えないよ

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

分解され、微生物態

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

精度の高

で牛に大きなストレスを与えないよ

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

微生物態

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

精度の高

で牛に大きなストレスを与えないよ

成分となっているほか、各種ホルモンや抗体等を構成する

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

微生物態

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

精度の高

で牛に大きなストレスを与えないよ

する

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

微生物態

診断にも利用で

と運搬した後のデータです。この

精度の高

で牛に大きなストレスを与えないよ

する

質代謝が良好な状態であ

反芻動物は摂取した飼

微生物態

診断にも利用で

Page 20: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

18

また、エネルギーや摂取タンパク質の過不足によるルーメン環境の悪化は肝機能低

下につながり、肝障害を引き起こすこともあることから、肝障害の評価も併せて行い

ます。

評価 (タンパク質代謝)に用いる血液生化学検査項目:尿素窒素、アルブミン

評価 (肝障害)に用いる血液生化学検査項目:アスパラギン酸アミノトランスフェ

ラーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダ-ゼ

①尿素窒素 (BUN)

BUN の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

摂取された飼料中のタンパク質はルーメン内でアンモニア(NH3)に分解され微生物

に利用されますが、NH3 が過度に発生した場合、肝臓で分解され BUN が生成されま

す。このため、粗タンパク質 (CP)摂取量や CP 充足率と正の相関があり、短期的なタ

ンパク質代謝の指標となります。また、一定の CP 含量飼料を摂取している場合、乾

物摂取量の指標にもなります。

なお、飼料中の CP と NFC のバランスが悪い場合、ルーメン発酵が不良となり BUN

が適正範囲から外れることから、BUN はバラツキが少なくかつ適正範囲内に収まっ

ていることが重要です。BUN は飼料の摂取量や品質の影響を受けやすいため、変動

やバラツキが大きい項目ですが、逆にこの値が範囲内に収まっていれば、飼養管理が

牛群に行き届いていると考えられます。

高 BUN 牛群ではル-メン発酵不良によりエネルギー不足となり卵胞のう腫の発生

等により受胎率が低下するほか、流産率が高くなる傾向があります。このため、Glu、

ケトン体、肝機能の値に注意が必要です。

BUN は高くても低くても繁殖性が低下するとの報告もありますが、我々の経験で

は高い時の方の弊害が大きいことを経験しています。逆に適正範囲より低い場合は、

長期的に CP が不足している可能性があるため、Alb (後述)の値を確認します。

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

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19

ルーメン

ペプチド、アミノ酸、 アンモニアアンモニア

ウシのタンパク質代謝

非繊維性炭水化物(NFC)

肝臓

ルーメンをアルカリ化

分解性タンパク質(DIP) …ルーメン内で分解される

粗タンパク質(CP)

非分解性タンパク蛋白質(UIP) …ルーメンをバイパスする

ルーメンを酸性化

微生物タンパク質として下部消化管で消化・吸収

尿素窒素(BUN)として

血液を通り腎臓へ

高BUN、エネルギー不足(低Glu、高ケトン)、肝機能低下

飼料中の粗タンパク質(CP)が過剰で非繊維性炭水化物(NFC)が不足している場合ルーメン内アンモニアが過剰となって発酵がうまくいかないだけでなく、アンモニアがオーバーフローして肝機能の低下を招く

<参考>

*各グラフの横軸は飼料設計変更日を 0 日とした経過日数(変更前はマイナスで表

示)、縦軸は血中濃度。

*グラフ内の異符号間に有意差あり(a,b:p<0.01)

上記グラフは 0 日 (横軸)に飼料設計を変更し、CP 充足率を 95%から 250%まで上

げた事例です。BUN は CP 充足率変更の翌日から上昇し、高い値を維持していますが、

アンモニア (NH3)は 3 日目以降下降しています。このことからも BUN は NH3 より

も CP 充足率を的確に反映していると考えられます。

a

b

b b b bb

0

10

20

30

-4 -2 0 2 4 6 8 10 12

BUN (mg/dL)

a

b

b

-50

50

150

250

350

-4 -2 0 2 4 6 8 10 12

NH3 (µg/dL)

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20

②アルブミン (Alb)

Alb の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

Alb は血液中の重要なタンパク質であり、半減期が長いため (約 2 週間)比較的安定

した血液生化学成分です。このため、Alb が低い場合は長期のタンパク質不足が疑わ

れるほか、Alb は主に肝臓で作られるため肝機能低下の指標にもなります。また、エ

ネルギー不足で糖原性アミノ酸が消費された場合も低下するといわれています。

Alb が高い場合は脱水を疑います。なお、肉用牛繁殖雌牛ではまれですがルーメン

アシドーシスによる脱水でも Alb は高くなるため、Alb が高い場合は飲水施設の確認

や水槽の汚れの他、飼料中の NFC 濃度も確認します。一方、長期の CP 不足や肝機

能低下、ルーメンアシドーシスで Alb が低下していても、脱水が起こっている場合は

値が適正範囲内になることがあるため注意が必要です。

③アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST)

AST の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

AST は肝細胞、心筋、骨格筋等に存在し、これらの細胞が破壊されると血液中に流

出することから、肝臓の実質障害の目安として用いられます。泌乳期で適正範囲が高

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

0

20

40

60

80

100

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

0

20

40

60

80

100

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

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21

いのは、泌乳や増飼により肝臓に一定の負荷がかかっているためと考えられます。

エネルギー不足や過肥、高 CP 飼料摂取等、不適切な飼養管理が長期間続いた場合

には、群全体が高い AST 値を示します。また、毒草等の摂取でも高くなります。

④γ-グルタミルトランスペプチダ-ゼ (GGT)

GGT の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

GGT は主に胆管系から出現する酵素で肝細胞が破壊されると血液中に流出します。

ASTと同様に長期間の不適切な飼養管理 (高CP飼料の長期間摂取や過肥)で高くなり

ます。また、肝蛭症でも高くなります。泌乳期で適正範囲が高いのは、泌乳や増飼に

より肝臓に一定の負荷がかかっているためと考えられます。

肝機能が低下して T-cho(T-cho は後述)や Alb 等が低下しても AST や GGT が上昇

しないケースがあります。AST や GGT は上述したように肝細胞が破壊された際に上

昇するため、必ずしも肝機能が低下した際に同時に上昇するわけではありません (逆

に肝細胞の一部が破壊されていても、残りの細胞でフォローできる場合は、肝機能低

下の値を示しません)。

⑤タンパク質代謝および肝障害の診断事例

●事例 1

0

10

20

30

40

-100 0 100 200 300

GGT (IU/L)

0

10

20

30

40

-100 0 100 200 300

GGT (IU/L)

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー

不足02468

10121416182022

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

CP過剰

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22

牛群の Glu が低い場合、その原因を探すことが重要です。単純な栄養不足であれば、

飼料給与量を増やせば良いのですが、ルーメン発酵不良等による低 Glu の場合は飼料

設計の根本的な見直しをする必要があります。そのためには、Glu のみで判断せず他

の項目と併せて判断する必要があります。

上記事例の牛群は分娩前後を中心に低Gluがみられていることからエネルギー不足

と考えられますが、牛群の繁殖ステージ毎の TDN 充足率は 120%と高かったことか

ら、単純な飼料給与量不足ではないと考えられます。一方、BUN はかなり高い値で

あったことから、CP の過剰摂取によるルーメン発酵不良 (NH3 が過剰に発生する)

がエネルギー不足の原因と考えられます。このような状態が長期間続いているため、

Alb が低くなっていると考えられます。

上記事例では飼料の CP の過剰摂取により高 NH3 となることが主な原因と考えら

れるため、飼料設計で調整が可能であれば CP 充足率を下げる必要があります。フス

マや大豆粕のような CP が比較的高い飼料を給与している場合は中止または減量しま

す。また、粗飼料の CP が高い場合、低 CP の粗飼料と併せて給与する必要がありま

す。粗飼料が高 CP のものしかない場合は、TDN 充足率に注意しながらトウモロコシ

のような低 CP かつ高 NFC 飼料を同時に給与することで、BUN を抑える必要があり

ます。

●事例 2

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能

低下

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

CP不足

バラツキ

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

Page 25: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

23

この事例は BUN が高い個体がいるものの全体的に低い傾向があり、加えてバラツ

キが大きい傾向があります。このことから、CP 不足と飼料摂取量の均一化ができて

いないことが考えられます。また、Alb が低いことから長期的な CP 不足に加え、AST

も高いことから肝機能低下が疑われます。BCS も泌乳期に低くなる傾向があることか

ら、泌乳期のエネルギー不足も重なっている可能性があります。上記事例では、CP

不足だけでなくエネルギー不足の可能性も高いことから、牛群全体の飼料給与量や泌

乳期の増飼量のほか、群飼であればスタンチョン利用の有無など、個々の牛が均一に

飼料を摂取できる環境にあるかを確認する必要があります。このように、BUN は飼

養環境を判断する目安になることもあります。

<参考>

乾物摂取量の均一化:せっかく飼料設計をして給与するので、同じ牛群の各個体には

同じ量の飼料を食べさせることが重要です。強い牛が弱い牛の飼料をとらないように

飼料給与時にはスタンチョンを利用したり、飼槽に飼料を均一に給与するなど全頭が

同じ量の飼料を摂れるようにします。良い飼料も食べすぎや思うように食べられない

個体が多ければ意味がありません。

スタンチョン等を利用して飼料摂取量を均一化する

群はなるべく同じ大きさの牛にして、給与量は基本的に平等にする

飼料給与とは設計した飼料の栄養素を牛に伝える事

どんなに良い飼料も設計も牛に伝わらなければ意味がない

0

20

40

60

80

100

120

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

削痩

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24

●事例 3

この牛群は、日中はパドックで運動させていましたが、パドックに飲水施設がなか

ったため脱水傾向がみられた事例です。一時的な運動場の場合でも、飲水施設の設置

が必要です。

●事例 4

牛群中に AST や GGT が高い個体がいることや調査牛全体的に Albが低いことから

肝障害による肝機能低下が疑われますが、GGT の値が異常に高いことから、このよう

な場合には肝蛭症も疑います。放牧の有無や飼養環境、摂取飼料の確認が必要です。

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)脱水

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能低下

0

100

200

300

400

-100 0 100 200 300

GGT (IU/L)

肝障害

020406080

100120140160180200

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

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25

(3)脂質代謝の評価項目(総コレステロール(T-cho))

T-cho の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

T-cho はエネルギー充足の指標になります (粗飼料主体の肉用牛繁殖雌牛では乾物

摂取量と相関が高い場合もあります)。また、T-cho は主に肝臓で合成されるため、摂

取エネルギーに対して T-cho が高いあるいは低い場合は肝機能の低下を疑います。な

お、飼料中の油脂が多い場合に値は高くなります (脂肪酸カルシウム、米ぬか等)。

コレステロールはステロイドホルモンの材料ですので、低下すると繁殖性に影響を

与えるといわれており、発情がダラダラ続いたり、排卵遅延が生じる場合があります。

●事例1

0 20 40 60 80

100 120 140 160

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)

0 20 40 60 80

100 120 140 160

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)

0 40 80

120 160 200 240

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)

乾乳期にもかかわらず泌

乳期と同程度または高い 2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能低下の

可能性

150

350

550

750

950

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

ルーメン発酵不

良の可能性

020

40

60

80

100120

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

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26

この事例は米ぬかの給与により T-cho が高くなっているケースです。通常であれば

群全体で T-cho が高いことから肝機能の異常が疑われますが、肝機能の指標となる

Alb や肝障害の指標となる AST は群全体に異常がほとんどみられません。このため、

飼料中の油脂 (粗脂肪)が高くなっている可能性が考えられ、実際に調査した農場では

米ぬかを給与していました。このようなケースでは、本マニュアルで示した適正範囲

と単純に比較しても適正な診断はできませんので、前出のように群内での相対評価を

しつつ診断します (牛群全体が必ずしも異常とは考えません)。

なお、飼料由来による高 T-cho の場合は生産性に影響が無いケースもみられますが、

油脂の過剰な給与はルーメン発酵不良となる可能性があり、当事例でも BHB が低く

なっているので他の評価項目と併せて診断する必要があります。

T-cho は他の項目が適正範囲に収まっていれば、極端に高値や低値になりにくい傾

向があります。牛における T-cho の制御については不明な点も多いのですが、バラツ

キが大きい牛群は飼養管理に問題を抱えていることが多いようです。

(4)ミネラルの診断項目(カルシウム(Ca))

Ca の適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

自然哺乳牛群と早期離乳牛群でも適正範囲はほとんど変わらず、繁殖ステージでも

変動が見られないように、Ca は恒常性が非常に強く変動が少ない項目です。従って、

安定してバラツキが少ないことが重要です。Ca 給与量の不足やリンの過剰給与で減

少するといわれているほか、ルーメン環境不良でも Ca が低くなることがあります。

また、Ca は Alb と複合体を形成しているため、Alb が低い牛群で低くなる傾向があり

ます。このことから、Ca は CP 充足率や BUN、肝機能評価項目と併せて診断します。

低 Ca は難産や後産停滞、繁殖性低下と関連があるといわれています。

7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

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27

●事例 1

●事例 2

どちらの事例も Ca と Alb が同じような分布をしています。Ca の一部は Alb と結合

しているため、一定の条件下では同じような分布となります。このような事例では、

単純な Ca 不足を疑いつつも Alb の値の改善対策であるルーメン環境の適正化と肝機

能の改善を優先させるべきと考えられます。上記のような状況で単純に Ca を増給す

るとマグネシウム (Mg)の吸収低下をもたらす等、良い結果が得られない可能性が高

くなります。Ca レベルの是正は必ず飼料設計と併せて行うようにします。

(5)ボディ・コンディション・スコア(BCS)とル-メンサイズの評価項目

血液成分では内分泌的な牛体の状況から栄養状態を評価しますが、実際それらの影

響を受け、体各部位にどのような変化を起こしているのかを診断するのが BCS やル

ーメンサイズになります。

BCS 等の評価項目:体表 BCS、尾根部 BCS、ルーメンサイズ

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能

低下 7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能

低下 7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

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28

BCS の測定方法

ルーメンサイズ

生産獣医療システム乳牛編3 岡田先生らの図に加筆

体表BCS

尾根部BCS

BCS とルーメンサイズの適正範囲

自然哺乳牛群用 人工哺乳牛群用

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

Page 31: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

29

BCS は血液生化学検査と併せて実施すると効果的であり、牛群の栄養状態や農場の

飼養管理の特徴が視覚で把握できることから、農場指導を行う場合、問題意識の共有

が可能となるため重要な項目です。BCS は調べる手間はかかりますがコストはかから

ないため、是非実施してほしい項目です。BCS のとり方は様々ありますが、客観性が

あればどの方法でも問題はありません。肉用牛繁殖雌牛の場合、泌乳量が多くないた

め妊娠末期、泌乳期、乾乳期で変動が無いことが重要です。

BCS の調整、特に BCS を下げる場合、妊娠末期や泌乳期等の必要とする栄養量が

多い時期に給与量を減らせば簡単に実現できますが、この時期の BCS 低下は子牛へ

の影響が大きいことから実施すべきではありません。BCS を下げる必要が生じた場

合、妊娠の安定期に少しずつ下げることが重要です。なお、BCS を上げる場合はどの

時期でも問題はありませんが、妊娠末期は乾物摂取量が低下しやすい時期 (特に若い

牛)のため、飼料を摂取できているかよく確認し、母体や子牛への悪影響を少なくする

必要があります。

BCS 調整に当たっては飼料設計による飼料給与量と牛の飼料摂取量が一致してい

なくては意味がないため、スタンチョン等の活用が欠かせません。

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

尾根部BCS

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

尾根部BCS

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

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30

●事例 1

FFA や Glu からエネルギー不足の個体が散見される事例です。ルーメンサイズから

乾物摂取量の均一化ができていない可能性があります。体表 BCS は全体的にやや低

めですが、泌乳後期に体表および尾根部の BCS の低下が顕著です。尾根部 BCS は特

に泌乳期ではエネルギー不足の初期に低下する傾向があり、エネルギー不足の初期段

階を知る手がかりになります。この事例では、分娩前後、特に泌乳期のルーメンサイ

ズが低いことやエネルギー不足であることから、泌乳期の飼料給与量を確認する必要

があります。

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー

不足

0

100

200

300

400

500

600

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

エネルギー

不足

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

DMI不足

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

尾根部BCS

Page 33: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

31

●事例 2

この事例は特に妊娠末期でエネルギー不足の牛群です。ルーメンサイズが低いこと

から乾物摂取量を確認する必要があります。

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー不足

0

200

400

600

800

1,000

1,200

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

エネルギー不足

150

650

1150

1650

2150

2650

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

ケトーシス

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

DMI不足

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32

5. 農場毎の診断事例

●事例1

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー不足0

100

200

300

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

150

650

1150

1650

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

潜在性ケトーシス

020406080

100120140160

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)

肝機能低下

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能低下

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

020406080

100120140

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

1.52.02.53.03.54.04.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

Page 35: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

33

エネルギー代謝の評価項目については分娩前後および泌乳期にエネルギー不足の傾

向がみられます。ただし、FFA や Glu の値は分娩直後ストレスの影響を強く受けて

いる可能性があるため、正確な評価は困難です (通常の MPT では分娩直前・直後の

個体は対象から外した方が賢明です)。一方、泌乳期は潜在性ケトーシスの傾向があり、

高 BHB、低 Glu、低 Alb の傾向があります。特に Alb は全体的に低く、極端に低い

個体も存在しています。MPT には臨床的に問題が無い個体を抽出して実施している

にもかかわらず、このような値を示す個体が存在することは、群内でも同様な傾向が

予想されます。このため、重点的に飼養管理の見直しを図る必要があります。なお、

泌乳期の潜在性ケトーシスは食餌性の可能性もあることから、摂取飼料の種類 (サイ

レージか乾草か)や品質を確認する必要があります。ただし、BUN は適性範囲内であ

りバラツキも少ないことから、乾物摂取量の均一化は意識されている農場と考えられ

ます。このような農場は、問題点を認識すれば改善が早い傾向があります。

改善策としては、分娩前後から泌乳期の TDN 充足率を確認し、必要に応じて TDN

充足率を高める必要があります。また、泌乳期の牛群に給与している飼料の量、品質

の確認が必要です。

エネルギー不足時の血液の動き

Glu↓

体脂肪の動員(FFA↑)

Glu↑

肝臓で代謝

エネルギー生産

肝臓への脂肪の蓄積

ケトン体産生

ケトーシスBHB↑

脂肪肝

Glu↓

肝機能低下肝障害

AST↑T-cho↑↓Alb↓

はMPTでみることができる項目

Page 36: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

34

●事例2

0

50

100

150

200

250

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

エネルギー不足

150

650

1150

1650

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

潜在性ケトーシス

020406080

100120140160

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)肝機能低下or

DMI量の増加

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

高CP飼料摂取

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

肝機能低下

0

20

40

60

80

100

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

Alb低下による

Page 37: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

35

典型的な高 CP 飼料給与の例です。全ての繁殖ステージにおいて高 BUN、低 Glu

から CP 摂取量の過剰によるルーメン発酵不良が疑われます。その結果、肝機能低下

により低 Alb、高 T-cho となり、AST が高くなり始めています。まだ、AST の上昇が

顕著ではありませんが、既に FFA が低値で Glu はかなり低下していることから、こ

のような状態が一定期間続いていると考えられるため早急な対応が必要です。同様な

事例は高 CP 粗飼料給与や牧草地での放牧でよくみられます。

飼料の CP 濃度および CP 充足率を確認する必要があります。改善策としては、高

CP 飼料の給与量を減らすとともに、CP 充足率を確認しつつ高 NFC 低 CP の飼料を

同時に給与する等です。放牧の場合は事前に放牧草の飼料成分を分析する必要があり

ます。

高CP飼料摂取時の血液の動き

BUN↑ルーメン発酵不良

アンモニアを肝臓で代謝

肝臓への脂肪の蓄積

ケトン体産生

ケトーシスBHB↑

脂肪肝Glu↓

肝機能低下肝障害

AST↑T-cho↑↓Alb↓

はMPTでみることができる項目

高CP飼料摂取

エネルギー不足

Ca↓

1.52.02.53.03.54.04.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

Page 38: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

36

●事例3

35

45

55

65

75

85

-100 0 100 200 300

Glu (mg/dL)

ややエネルギー不足

0

100

200

300

-100 0 100 200 300

FFA (µEq/L)

ややエネルギー不足

150

350

550

750

950

-100 0 100 200 300

BHB (µmol/L)

020406080

100120140160180

-100 0 100 200 300

T-cho (mg/dL)

肝機能低下

0

4

8

12

16

20

-100 0 100 200 300

BUN (mg/dL)

CP不足2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

-100 0 100 200 300

Alb (g/dL)

CP不足

0

20

40

60

80

100

120

-100 0 100 200 300

AST (IU/L)

肝障害

0

10

20

30

40

-100 0 100 200 300

GGT (IU/L)

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37

上記事例は鳥取牧場の例です。鳥取牧場は年 2 回、各 2 ヶ月間の季節交配を行って

いるため、交配期間の前に MPT を実施し、その結果を基に飼料設計を調整してから

交配期間に入るようにしています。

Glu および FFA から泌乳牛および乾乳牛でややエネルギー不足の傾向があり、泌

乳牛の一部で T-cho や AST が高い個体がみられますが、適正範囲から大きく外れて

いません。ただし、BUN が全体的に低く、Alb も低いことから CP 不足の傾向があり

ます。また、ルーメンサイズが全体的に低いことから DMI 不足が疑われます。この

ような場合、CP の高い飼料を補助的に給与すべきと考えがちですが、CP 不足はわず

かであること、高 CP 飼料の給与は逆に高 BUN を引き起こすリスクがあること、ル

ーメンサイズが低いことを考慮すると、現在給与している飼料の量を多くすることで

対応できると考えられます。また、各血液データにバラツキが少ないことは、現在の

飼料設計が牛各個体に伝わっていることになります。このような牛群では、飼料設計

に多少の問題があったとしても、修正した後には改善されやすい傾向があります。

なお、上記事例では飼料給与量 (粗飼料)を少し増やしてから胚移植を実施した結

果、繁殖供用率は 100% (61/61)、体内新鮮・凍結胚の受胎率は 75.0% (57/76)と良好

でした。

7

8

9

10

11

-100 0 100 200 300

Ca (mg/dL)

低Albの影響

1.52.02.53.03.54.04.5

-100 0 100 200 300

体表BCS

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-100 0 100 200 300

ルーメンサイズ

DMI不足

Page 40: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

38

6.まとめ

Page 41: 黒毛和種繁殖雌牛における 代謝プロファイルテスト …...MPT を実施する前に農場の事前情報、すなわち客観的データが重要となります。

39

<参考>

MPT はグラフを作成して適正範囲と比較するため、適正範囲の数値が必要になり

ます。そこで、当マニュアル上の各血液生化学検査項目毎の適正範囲の数値を以下に

示しておきます。

Glu (mg/dL) 62 ± 7* 61 ± 6 64 ± 5 62 ± 7

FFA (µEq/L) 104 ± 57 92 ± 41 115 ± 56 158 ± 79

BHB (µmol/L) 608 ± 177 592 ± 167 439 ± 104 594 ± 156

ACAC (µmol/L) 25 ± 12 23 ± 10 16 ± 5 20 ± 8

BUN (mg/dL) 12 ± 2 12 ± 2 11 ± 2 10 ± 2

Alb (g/dL) 3.8 ± 0.2 3.9 ± 0.2 3.8 ± 0.2 3.6 ± 0.2

NH3 (µg/dL) 66 ± 18 63 ± 13 62 ± 15 59 ± 11

T-cho (mg/dL) 102 ± 23 113 ± 27 89 ± 18 92 ± 14

AST (IU/L) 66 ± 11 69 ± 15 57 ± 9 54 ± 9

GGT (IU/L) 21 ± 6 23 ± 9 19 ± 5 17 ± 5

Ca (mg/dL) 9.4 ± 0.6 9.4 ± 0.5 9.5 ± 0.5 9.6 ± 0.4

LA (mg/dL) 5.9 ± 4.5 5.2 ± 3.5 5.8 ± 3.8 5.9 ± 3.2

3.1 ± 0.3 3.0 ± 0.3 3.0 ± 0.3 3.1 ± 0.3

3.1 ± 0.3 3.1 ± 0.3 3.1 ± 0.2 3.1 ± 0.2

3.3 ± 0.2 3.2 ± 0.3 3.2 ± 0.2 3.3 ± 0.2

体重 (kg) 490 ± 61 476 ± 56 472 ± 48 498 ± 53

*: 平均 ± 標準偏差

ルーメンサイズ

妊娠末期

体表BCS

尾根部BCS

泌乳前期:分娩後0-60日、泌乳後期:分娩後61-120日、

乾乳期:分娩後120日から分娩予定日の61日前、妊娠末期:分娩予定日の60-0日前

測定項目 泌乳前期 泌乳後期 乾乳期

繁殖ステージ

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おわりに

鳥取牧場では、MPT を利用した飼養管理の改善により繁殖性や子牛生産性が向上

しました。このことから MPT は肉用繁殖牛においても生産性向上のツールとなり得

ると考えられます。しかし、MPT は飼養管理の評価方法に過ぎず、基本となる毎日

の飼養管理や牛群の観察が重要であることはいうまでもありません。このことを念頭

において本マニュアルを利用していただければと思います。本マニュアルが国内の肉

用牛繁殖雌牛の生産性向上に、少しでもお役に立てば幸いです。

なお、本マニュアルは繁殖和牛の MPT 診断を中心にまとめてありますので、飼養

管理全般のマニュアルにつきましては家畜改良センター鳥取牧場のホームページ上の

「多頭飼養における黒毛和種繁殖雌牛生産性向上のための代謝プロファイルテストを

用いた飼養管理マニュアル」を参照してください。

http://www.nlbc.go.jp/tottori/

★謝辞

本マニュアルを作成する上で、貴重な MPT データの提供および調査協力をしてい

ただきました熊本県農林水産部生産局畜産課参事 前淵耕平氏、農研機構西日本農業

研究センター畜産・鳥獣害研究領域長 山本直幸氏および業務課の皆様、長崎県農林

技術開発センター畜産研究部門 大家畜研究室 山崎邦隆氏およびなんこう ET 研究

会の皆様、家畜改良センター熊本牧場、宮崎牧場、鳥取牧場の皆様に深謝いたします。

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の急激な変更が黒毛和種繁殖牛の血液生化学検査値におよぼす影響.肉用牛研究会報

(印刷中)

渡邉貴之・熊谷周一郎・野口浩正・前田昌稔・小西一之.2016.黒毛和種繁殖雌牛に

おけるルーメン内揮発性脂肪酸濃度と血液生化学検査値の関係 (投稿中)