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導入障壁の低いセンチメートル精度 衛星測位インフラの構築 静岡大学 学術院 情報学領域 情報科学系列 准教授 木谷友哉 [email protected] 2018/12/13 JST新技術説明会 2018/12/13

導入障壁の低いセンチメートル精度 衛星測位インフ …...(バイアス誤差)を測定し配信 オフセット誤差については,単独測位でも誤差モデルを用いて補正して

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Page 1: 導入障壁の低いセンチメートル精度 衛星測位インフ …...(バイアス誤差)を測定し配信 オフセット誤差については,単独測位でも誤差モデルを用いて補正して

導入障壁の低いセンチメートル精度衛星測位インフラの構築

静岡大学学術院情報学領域情報科学系列

准教授 木谷友哉

[email protected]

2018/12/13JST新技術説明会2018/12/13

Page 2: 導入障壁の低いセンチメートル精度 衛星測位インフ …...(バイアス誤差)を測定し配信 オフセット誤差については,単独測位でも誤差モデルを用いて補正して

2概要

何ができるようになったのか

廉価なサーバ型 RTK-GNSS 測位システム

おおむね空が広い屋外,基準局とネットワーク通信できる

環境が対象

リアルタイム(1秒以内)に数センチメートル精度の位置

情報を取得

どこが他の技術と違うのか

高精度測位演算成功率と拡張性の向上

サーバ側で測位演算することによる追加情報利用や並

列演算,アルゴリズムの随時更新

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3背景:マルチGNSS時代の幕開け

GNSS(Global Navigation Satellite Systems)

いろんな国の GNSS

GPS(米国,運用中,32機)

GLONASS(ロシア,運用中,24機)

Galileo(欧州連合,運用中,現在24機)

COMPASS(中国,RNSS ”北斗” として運用中,現在25機)

最近は複数 GNSS に対応したマルチ GNSS 受信機も登場

RNSS(Regional NSS;地域衛星測位システム)

NavIC(インド,運用中,現在5機)

準天頂衛星システム QZSS(日本,運用中,現在4機)

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2018/12/13背景:GNSS測位誤差要因

衛星時計誤差 10−9~10−13

受信機時計誤差 10−6

受信機の熱雑音

対流圏遅延電離層遅延

マルチパス

ランダムノイズ

軌道情報からのずれバイアスノイズ

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2018/12/13背景:マルチGNSSを活用した誤差低減

GPS

捕捉可能衛星数:通常4~8衛星(最大12衛星)

測位精度:実際は5~10m程度

マルチ GNSS

捕捉可能衛星数:現時点でも15衛星以上

2035年に北米上空で30衛星,アジア上空で60衛星に

測位精度:数cm

現時点の機材でも数cm精度を達成可能(10衛星以上,

RTK 測位)

RTK-GNSSでは,基準局を用いて測量に準じる手法で測位

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2018/12/13背景:衛星測位演算の種類

単独測位

(絶対)単独測位

ディファレンシャル測位(D-GPS)

干渉測位(複数の受信機を利用)

スタティック測位

キネマティック測位(RTK-GNSS)

相対測位

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2018/12/13背景:D-GPS (Differential-GPS)

地理的に近い,位置が既知な基準局が各衛星のオフセット誤差

(バイアス誤差)を測定し配信

オフセット誤差については,単独測位でも誤差モデルを用いて補正して

いるが,ディファレンシャル測位の補正精度の方が高い

単独測位で昔は10~20mの精度,D-GPSで数十cm~数mの精度

対流圏遅延

電離層遅延

衛星時計誤差,衛星位置誤差

誤差情報

オフセット情報を通信

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基準局

ユーザ局

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2018/12/13背景:RTK-GNSS

衛星との距離を従来のように C/A コードのビット列

(1.023M回/秒)のズレから求めるのではなく,搬送波

(1.575GHz)の波数のズレから求める

1波長は 19cm.波の位相を100分割ぐらいで計測で

きるので,擬似距離の精度は 1.9mm!

ただし,衛星からの波長数の小数部分は分かっても,

整数部分(バイアス値)は不確定(整数値アンビ

ギュイティ)

この整数値の決定のために,基準局が必要

波長は 19cm なので尤もらしい値は多数

全ての可視衛星のペアについての連立方程式から,

整数値バイアスを求める

距離差

基線ベクトル(長くなると整数値バイアスが解きにく

くなる)

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基準局ユーザ局

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2018/12/13背景:RTK測位はなぜ難しい

RTK 測位では十分な数の衛星から直接波を受信しないとダメ

基本的に屋外で空が開けていないと使えない

衛星数はマルチGNSS時代で増えた(リアルタイム測位のためには

十分な捕捉衛星数が必要)

近い基準局(~10km)のデータを受信して補正が必要

リアルタイム測位のためには基準局もリアルタイムで補正情報の

配信が必要

ターゲットがセンチメートル精度なので,測位演算がうまくい

かないときとの落差が激しい

低い可用性だとサービスとして使いにくい

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10従来技術:サーバ型RTK測位

サーバ型RTK-GNSSサービス

基準局情報の管理と測位演算をサーバで行う

ユーザ局の計算負荷のカットで機器の簡素化

ユーザ局で行うより高信頼に測位演算が可能

基準点の自動選定,VRS(仮想基準点)の生成

従来は主に測量向け

公共測量を想定した高い位置精度(~2cm)(料金は月1万円以上)

基準点(局)は国内では国土地理院(1台数百万円)のものを利用しているも

のが多い

衛星までの測距情報を送信

基準局 ユーザ局

演算結果を受信

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11新技術:廉価なサーバ型RTKシステム

新モビリティ(自動運転,パーソナルモビリティ)社会に向けた,廉

価なサーバ型RTKシステムの構築

対象:公共測量ほどではないが,それに準じる精度(数cm)をリ

アルタイムに実現

廉価な基準点網とサーバ型測位演算システムの構築

安価になってきたユーザ局用モジュール(1台数万円)を用いた

ユーザ参加型基準局網の実現

基準局位置のメンテナンス,信頼度の算出,演算用基準局の選定

基準局 ユーザ局

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12高精度衛星測位新時代

準天頂衛星「みちびき」による高精度測位(2018年11月サービスイン)

L1S:サブメートル級ディファレンシャル情報配信,従来と同じL1信号のアンテ

ナで受信可

CLAS:独自のL6信号による国内のセンチメートル級精度用補正情報の配信

MADOCA:国外でも広域に使える高精度の衛星航法データの配信(L6信号)

グローバル測位サービス株式会社(GPAS)(2017年設立)

日系メーカによる設立

2020年度を目処にMADOCAの技術をサービス化

対象:自動車、建機、農機の自動運転、海洋および気象観測等のグローバル展開

Sapcorda Services社(2017年設立)

車両部品大手 Bosch,GNSSモジュール大手 u-blox を中心に設立

グローバルに利用可能なセンチメータ級 GNSS 測位サービスをインターネット配

信及び衛星配信を通じて提供予定

対象:自動車・産業用・コンシューマ向け市場

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13想定される用途

一般消費者のモビリティ向け高精度測位利用

サービス

業務向け生産管理サービス

車両管理

管理車両が屋外駐車場のどこにあるか駐車スロッ

ト単位で確実に特定

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14実用化に向けた課題

基準点網の拡大

廉価なモジュールを用いた基準局網のプロトタイ

プは浜松市で実験中

静岡大学浜松基準局(高性能モジュール,木谷研運

営)および国土地理院の基準点網を使って検証中

より高確率で高精度(~数cm)の位置情報を得るた

めの測位演算アルゴリズム開発

都心部や車内車載での精度安定化の研究開発中

事前に位置精度を予測する仕組みを研究開発中

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15企業への期待

高精度衛星測位利用サービス需要が先に起きれば,基準局網

整備も同時に行える

1地域に1台の基準点と配信システムでよい

後続のサービスはその基準点が利用可能となり,単独で整

備するよりもコストを抑えられる

ベストエフォート型の位置情報サービス需要の発掘

高精度衛星測位は常に高精度で位置が取れる訳ではない

可能な限り確率を上げることはできるが絶対はない

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本技術に関する知的財産権

発明の名称 :衛星測位システム

出願番号 :特願2018-086930

出願人 :静岡大学

発明者 :木谷友哉

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産学連携の経歴

2015年度~

自動車関連会社等と共同研究実施

2018年2月

大学発ベンチャー

ライドマティクステクノロジー株式会社 設立

設立目的

高精度衛星測位応用サービスの研究開発

自動二輪車向けを中心とした高度交通システムの研究開発

現在の事業内容

自動車関連会社等からの受託研究,受託開発

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お問い合わせ先

静岡大学イノベーション社会連携推進機構

コーディネータ 山口 昌志

TEL: 053-478-1702

FAX: 053-478-1711

e-mail: sangakucd@cjr.shizuoka.ac.jp

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