77
3 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告) 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関するガイドライン Guidelines for Management of Dilated Cardiomyopathy and Secondary Cardiomyopathy(JCS 2011) 合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会, 日本心臓病学会,日本心不全学会,日本内科学会,日本不整脈学会 班 長 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 班 員 泉   北里大学循環器内科学 泉   久留米大学心臓血管内科 国立循環器病研究センター不整脈科 許   東京大学重症心不全治療開発講座/ 東京都健康長寿医療センター心臓外科 石   国立循環器病研究センター小児循環 器・周産期部門小児循環器科 北海道大学循環病態内科学 九州大学循環器外科 東京大学循環器内科学 協力員 木   国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 北里大学循環器内科学 琉球大学細胞病理学 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 絹 川 弘一郎 東京大学医学部附属病院循環器内科 絹 川 真太郎 北海道大学循環病態内科学 鹿児島大学医学部心臓血管内科 田ノ上 禎 久 九州大学循環器外科 久留米大学心臓血管内科 公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 西 村   東京大学重症心不全治療開発寄附講座 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門冠疾患・血管科 長谷川 拓 也 国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 国立循環器病研究センター生活習慣 部門予防健診部 閔   国立循環器病研究センター心臓血管 内科部門心不全科 川   公益財団法人日本心臓血圧研究振興 会附属榊原記念病院 外部評価委員 北 村 惣一郎 国立循環器病研究センター 九州大学循環器内科 金沢大学医薬保健研究域医学系臓器 機能制御学・循環器内科 (構成員の所属は2012 2 月現在) 目  次 はじめに…………………………………………………………… 4 1. ガイドライン作成の背景 ……………………………… 4 2. ガイドライン作成の基本方針 ………………………… 4 Ⅰ.病態…………………………………………………………… 5 1. 定義と基本病態 ………………………………………… 5 2. 成因・疫学 ……………………………………………… 9 Ⅱ.診断……………………………………………………………12 1. 自覚症状と身体所見 ……………………………………12 2. 評価法 ……………………………………………………13 Ⅲ.病態と治療……………………………………………………31 1. 急性非代償性心不全 ……………………………………31 2. ショック・心停止 ………………………………………40 3. 収縮不全と拡張不全 ……………………………………42 4. 不整脈とペースメーカ …………………………………45

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

  • Upload
    others

  • View
    4

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

3循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告)

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドラインGuidelines for Management of Dilated Cardiomyopathy and Secondary Cardiomyopathy(JCS 2011)

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本小児循環器学会,日本心臓血管外科学会,          日本心臓病学会,日本心不全学会,日本内科学会,日本不整脈学会

班 長 友 池 仁 暢 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院

班 員 和 泉   徹 北里大学循環器内科学

今 泉   勉 久留米大学心臓血管内科

鎌 倉 史 郎 国立循環器病研究センター不整脈科

許   俊 鋭 東京大学重症心不全治療開発講座 /東京都健康長寿医療センター心臓外科

白 石   公 国立循環器病研究センター小児循環器・周産期部門小児循環器科

筒 井 裕 之 北海道大学循環病態内科学

富 永 隆 治 九州大学循環器外科

永 井 良 三 東京大学循環器内科学

協力員 天 木   誠 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科

伊 東 春 樹 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院

猪 又 孝 元 北里大学循環器内科学

加 藤 誠 也 琉球大学細胞病理学

神 崎 秀 明 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科

北 風 政 史 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科

絹 川 弘一郎 東京大学医学部附属病院循環器内科

絹 川 真太郎 北海道大学循環病態内科学

窪 薗 琢 郎 鹿児島大学医学部心臓血管内科

田ノ上 禎 久 九州大学循環器外科

田 原 宣 広 久留米大学心臓血管内科

長 山 雅 俊 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院

西 村   隆 東京大学重症心不全治療開発寄附講座

野 口 暉 夫 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門冠疾患・血管科

長谷川 拓 也 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科

宮 本 恵 宏 国立循環器病研究センター生活習慣部門予防健診部

閔   庚 徳 国立循環器病研究センター心臓血管内科部門心不全科

吉 川   勉 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院

外部評価委員

北 村 惣一郎 国立循環器病研究センター

砂 川 賢 二 九州大学循環器内科

山 岸 正 和 金沢大学医薬保健研究域医学系臓器機能制御学・循環器内科

(構成員の所属は2012年2月現在)

目  次

はじめに…………………………………………………………… 41. ガイドライン作成の背景 ……………………………… 42. ガイドライン作成の基本方針 ………………………… 4

Ⅰ.病態…………………………………………………………… 51. 定義と基本病態 ………………………………………… 52. 成因・疫学 ……………………………………………… 9

Ⅱ.診断……………………………………………………………12

1. 自覚症状と身体所見 ……………………………………122. 評価法 ……………………………………………………13

Ⅲ.病態と治療……………………………………………………311. 急性非代償性心不全 ……………………………………312. ショック・心停止 ………………………………………403. 収縮不全と拡張不全 ……………………………………424. 不整脈とペースメーカ …………………………………45

Page 2: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

4 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

はじめに

1 ガイドライン作成の背景

 我が国では,小児から成人に至るまで,学校,地域,職域で毎年健康診断が行われている.その中で,胸部レントゲン写真が必須検査として撮影されている.心陰影拡大の有無はチェック項目の1つであり,心胸郭比(car-

diothoracic ratio,CTR)が50%以上の状態を心陰影拡大としてスクリーニングしている. 心拡大は,(1)心臓形態の拡大(心房拡大,心筋肥厚,心室腔拡大),(2)心嚢液の貯留,(3)心臓以外の病変の存在のいずれかを示唆するものである.この中で拡張型心筋症の形態をとるものは,予後不良で進行性の性質のある病因に由来する場合があるので,鑑別診断を慎重に進めてゆくことになる. 心拡大に関連するガイドラインとしては,「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」,「先天性心疾患の診断,病態把握,治療選択のための検査法の選択ガイドライン」,「急性及び慢性心筋炎の診断,治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」,「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)」,「心臓血管疾患における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン」,「成人先天性心疾患治療ガイドライン(2006年改訂版)」「心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)」,「循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン(2010年改訂版)」,「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」,「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」,「心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版)」と様々の角度のものに記述されてきたが,拡張型心筋症を包括的に取り扱ったガイドラインは国内・国外にない. 特発性拡張型心筋症は,昭和60年(1985年)に特定疾患治療研究事業対象疾患の1つに取り上げられ,難病として以下の対策がとられている.(1)調査研究の推進

(難治性疾患克服研究事業),(2)医療施設等の整備(重症難病患者拠点・協力病院整備),(3)地域における保健・医療・福祉の充実・連携(難病特別対策推進事業など),(4)QOLの向上を目指した福祉施策の推進(難病患者等居宅生活支援事業),(5)医療費の自己負担の軽減(特定疾患治療研究事業)がある.このようなことから拡張型心筋症の診断と治療は,国が行う難治性疾患対策の観点からも重要な位置を占めている(難病情報センター

http://www.nanbyou.or.jp).特に拡張型心筋症の終末期医療として,2010年4月から植込み型補助人工心臓が保険診療に収載された.2009年には改正臓器移植法が成立し,翌2010年7月に施行され,重症心不全患者の治療の環境は大きく変化しつつある. このようなことから,拡張型心筋症の診断と治療のエビデンスを保険診療や難病対策との関連について再精査し,より広い視野に立ったガイドラインが求められるようになった.

2 ガイドライン作成の基本方針

 拡張型心筋症の診断と治療は「心臓移植における移植希望者(レシピエント)の適応基準(第17回移植関係学会合同委員会 平成9年(1997年)7月29日)」や前述した心不全関連のガイドラインに準拠して行われている.本稿では拡張型心筋症に焦点を当ててエビデンスを収集し,エビデンスレベルの評価を行ったが,あわせて保険診療や難病対策といった行政的視点での診断と治療の基準がどのように扱われているかについても整理した. エビデンスレベルの記載についてACC/AHAまたはこれまでの日本循環器学会のガイドラインでは,レベルA 複数の無作為介入試験またはメタ解析で

実証されたものレベルB 単一の無作為介入試験または大規模の無

作為でない介入試験で実証されたもの

5. 貧血 ………………………………………………………476. 腎機能障害 ………………………………………………497. 血栓塞栓症 ………………………………………………518. 睡眠障害 …………………………………………………519. 外科手術 …………………………………………………52

Ⅳ.付記……………………………………………………………541. その他の心筋症 …………………………………………542. 最新心不全治療の展望 …………………………………58

文 献………………………………………………………………60

(無断転載を禁ずる)

Page 3: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

5循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

Ⅰ 病態

1 定義と基本病態

1 定義

①心筋症の定義

 我が国では1970年の日本循環器学会総会で「特発性心筋症」という名称が提唱された.1974年に,厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班が発足し,1985年に「心筋症の診断の手引き」が作成され,1994年に一部改訂され,2005年に「心筋症,診断の手引きとその解説」が作成された1).この手引きで,特発性心筋症は「高血圧や冠動脈疾患などの明らかな原因を有さず,心筋に病

変の首座がある一連の疾患」と定義され,1995年のWHO/ISFC分類に基づいた分類が用いられているが,(1)拡張型心筋症,(2)肥大型心筋症,(3)拘束型心筋症,(4)不整脈源性右室心筋症,(5)家族性突然死症候群,(6)ミトコンドリア心筋症,(7)心Fabry病,(8)たこつぼ心筋障害を取り上げた独自の分類が採用された.これに対して「特定心筋症」とは,原因または全身疾患との関連が明らかな心筋疾患の総称で,WHO/ISFC分類の「特定心筋疾患」に相当する(表1)2).「特定心筋症」のうち虚血性心筋症,弁膜症性心筋症,高血圧心筋症は,それぞれの原疾患による心筋障害の程度が高度な場合をいい,通常の虚血性心疾患,弁膜症,高血圧性心筋疾患と心筋症は区別されるべきである. アメリカ心臓協会(AHA)が2006年に新たな定義と分類を提唱した(図1)3).AHA分類の定義は,「心筋症はしばしば(必ずではない)心室の肥大や拡張を示す機械的および・または電気生理学的機能異常を伴う一群の疾患である.通常遺伝子異常が原因である.心筋症は心臓原発性か全身疾患の部分症である.しばしば心臓死や

レベルC 専門家および /または小規模の臨床試験(後ろ向き試験および登録を含む)で意見が一致したもの

となっており観察研究や登録研究でしかわからない要因やリスクに関するエビデンスはすべてレベルの低いものとして扱われる.すなわち,治療法に関するものだけがエビデンスレベルが高いように勘違いされる.そこで観察研究から得られたエビデンスについてもエビデンスレベルをつけられるように工夫されたものが今回の分類である.ガイドラインの普及と啓蒙を行っている日本医療機構評価機構 医療情報サービス事業Mindsに準拠したものとした. 【エビデンスレベルと推奨グレード】1.エビデンスレベルレベル1: システマティック・レビュー /ランダム

化比較試験のメタアナリシスによるものレベル2: 1つ以上のランダム化比較試験によるも

のレベル3: 非ランダム化比較試験によるものレベル4a: 分析疫学研究コホート研究によるものレベル4b: 症例対照研究,横断研究によるものレベル5: 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)

によるもの

レベル6: 専門委員会の報告や専門家の意見によるもの

このエビデンスレベルは研究デザインによる分類である.複数の文献がある場合は最も高いレベルを採用する.なお,予後や頻度など観察研究によってしか得られないエビデンスはレベル1>4a>4b>5>6となる.2.推奨グレードグレードA: 強い科学的根拠があり,行うよう強く

勧められる.グレードB: 科学的根拠があり,行うよう勧められ

る.グレードC1: 科学的根拠はないが,行うよう勧めら

れる.グレードC2: 科学的根拠はなく,行わないよう勧め

られる.グレードD: 無効性あるいは害を示す科学的根拠が

あり,行わないよう勧められる.推奨グレードは下記の要素を勘案して総合的に判断する.(1)エビデンスのレベル,(2)エビデンスの数と数のばらつき,(3)臨床的有効性の大きさ,(4)臨床上の適用性(医師の能力,地域性,医療資源,保険制度など),(5)害やコストに関するエビデンス

Page 4: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

6 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

心不全の原因となる.」であり,病変の首座が心臓にある心臓原発性と全身疾患の心病変である二次性心筋症に大別している.心臓原発性心筋症は遺伝性,混合型(遺伝と後天性),後天性の3つに分類され,QT延長症候群やBrugada症候群などのイオンチャンネル異常症も遺伝性に含まれた. 2008年に発表された欧州心臓病学会(ESC)の分類は1995年のWHO/ISFC分類の延長上に位置するものである(図2)4).心筋症の定義は「冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・先天奇形によるものではない,構造的・機能的異常を伴う心筋疾患」とされた.二次性心筋症という概念が排除されている.この分類ではAHA分類と同様,遺伝性 /非遺伝性という概念を導入しており,形態・機能的異常をもとにした分類である. 病因,診断法の進歩は著しく,定義と分類についての見解も変化しており,日米欧それぞれの分類が一定していないのが現状である.また,用語の使用方法もまちまちである.本ガイドラインでは,我が国の手引きにおけ

る定義・分類にできるだけ準拠した.

②拡張型心筋症の定義

 2005年の特発性心筋症調査研究班の手引きでは,拡張型心筋症は,「(1)左室のびまん性収縮障害と(2)左室拡大を特徴とする疾患群」と定義される1).診断の確定には,基礎疾患ないし全身性の異常に続発し類似した病態を示す「特定心筋症」(WHO/ISFCの「特定心筋疾患」)を除外する必要がある.ESCの分類でも,拡張型心筋症は,「左室拡大と左室収縮能障害を特徴とし,びまん性の収縮障害を引き起こし得る異常な負荷状況(高血圧や弁膜症)および冠動脈疾患の合併がない疾患群」と定義されている4).

③臨床的に類似した心筋症疾患群

 AHA分類で示されているように拡張型心筋症は遺伝性と後天性の混合した疾患群であり,定義上は形態学的および機能学的な分類に基づいている.臨床的には,「左

図1 アメリカ心臓協会(AHA)による定義と分類

一次性心筋症(心筋に主な病変があるもの)

肥大型心筋症

不整脈原性右室心筋症

左室緻密化障害

糖蓄積病(PRKAG2,Danon病)

心伝導障害

ミトコンドリア心筋症

イオンチャネル病

QT延長症候群

Brugada症候群

QT短縮症候群

カテコラミン誘発性多型心室頻拍

特発性心室細動

遺伝性

炎症(心筋炎)

ストレス誘発型(タコツボ型)

産褥心筋症

頻脈誘発型

インスリン依存性糖尿病母から生まれた小児

後天性

拡張型心筋症

拘束型心筋症(左室肥大・拡大なし)

混合性

表1 特定心筋疾患(1995年WHO/ISFC)虚血性心筋疾患弁膜性心筋疾患高血圧性心筋疾患炎症性心筋疾患(心筋炎など)代謝性心筋疾患

内分泌性―甲状線中毒性,甲状線機能低下症,副腎皮質不全,褐色細胞腫,末端肥大症,糖尿病など蓄積性―ヘモクロマトーシス,グリコーゲン蓄積症(ハーラー病,ハンター病),レフスム病,ニーマン・ピック病,ハンド・シュラー・クリスチャン病,Fabry病,モルキオ・ウールリッヒ病など欠乏性―カリウム欠乏,マグネシウム欠乏,栄養失調(貧血,脚気,セレニウム欠乏),家族性地中海熱など

全身性心筋疾患―膠原病,サルコイドーシス,白血病,肺性心など筋ジストロフィ―デュシェンヌ型,ベッカー型,強直性筋萎縮症など神経・筋疾患―フリードライヒ失調症,ヌーナン症候群など過敏性,中毒性疾患―アルコール性心筋症,薬剤性,放射線性など産褥性心筋疾患

(文献2より引用)

Page 5: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

7循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

室拡大」と「左室収縮能障害」を来たす類似の疾患は多く存在する.このように,拡張型心筋症は種々の特定心筋症を除外する必要がある.また,拡張相へ移行した肥大型心筋症では拡張型心筋症と鑑別するのが難しいことがしばしば経験される.本ガイドラインでは,臨床的に類似した心筋症疾患群として,図3の15疾患を挙げた.

2 基本病態

①拡張型心筋症の基本病態

 拡張型心筋症は特発性心筋症の中で,(1)心筋収縮不全と(2)左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり,多くの場合進行性である.このため,拡張型心筋症は慢性心不全症状を特徴とし急性増悪を繰り返す予後不良の疾患である.また,致死性不整脈による突然死や動脈の血栓塞栓症を生ずることがある.

②臨床的に類似した心筋症疾患群の基本病態

1)虚血性心筋症 慢性虚血を原因とする拡張型心筋症に類似した左室の拡大と収縮機能の低下を特徴とする重症虚血性心疾患である.多くは陳旧性心筋梗塞を背景疾患とするが,狭心症を繰り返し発症することによって惹起された重症心筋虚血,貧血や睡眠時無呼吸症候群などによる心筋の低酸素状態も原因となる.症状や身体所見からは拡張型心筋症と鑑別がつかないことが多く,虚血性心筋症の確定診断には冠動脈造影が必要となる.2)高血圧性心筋症 高血圧性心疾患に特徴的な左室肥大および心筋細胞肥大,間質や血管周囲線維化などの組織学的異常とともに心機能障害として収縮不全を呈した拡張型心筋症類似の病態である.左室拡大を伴う遠心性肥大が特徴である.心不全の発症には,心臓の組織学的・機能的障害に加え,

血管,腎臓など高血圧による他の臓器障害も寄与していることが多い.3)肥大型心筋症拡張相(拡張相肥大型心筋症) 肥大型心筋症の基本病態は「左室心筋の異常な肥大に伴う左室拡張期コンプライアンスの低下」である.この肥大型心筋症のなかで,長い経過中に肥大した心筋壁厚が次第に薄くなり,左室収縮力の低下,左室内腔の拡大を来たし,拡張型心筋症に似た病態を呈するものである.4)心サルコイドーシス サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,肺,肺門リンパ節,眼,皮膚に好発する.病理組織学は,乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫,間質浮腫を伴ったリンパ球浸潤,線維化,微小血管病変と多彩な特徴を有する.初期には,肉芽腫性炎症や間質浮腫の

図2 欧州心臓病学会(ESC)の分類

心筋症

肥大型心筋症 拡張型心筋症 不整脈原性右室心筋症 拘束型心筋症 分類不能

非家族性 /非遺伝性家族性 /遺伝性

遺伝子欠損の病型

未同定遺伝子欠損

原因が明らかな病型特発性

図3 �本ガイドラインが対象とした拡張型心筋症ならびに関連する心筋症

拡張型心筋症

①虚血性心筋症

②高血圧性心筋症

③肥大型心筋症拡張相

④心サルコイドーシス

⑤アミロイドーシス

⑥心筋炎

⑦不整脈原性右室心筋症

⑧アルコール性心筋症

⑨脚気心

⑩左室緻密化障害

⑪筋ジストロフィーに伴う心筋疾患

⑫ミトコンドリア心筋症

⑬薬剤誘発性心筋症

⑭Fabry病

⑮産褥心筋症(周産期心筋症)

臨床的に類似した心筋症

Page 6: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

8 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

存在する部位に一致した心室壁肥厚を認め,次第に炎症が消褪し病変部の線維化が進むと,心室中隔基部にはしばしば特徴的な壁の菲薄化を生ずる.病変が広範に広がれば拡張型心筋症様の病態を呈する.5)アミロイドーシス 全身性アミロイドーシスは,アミロイドと呼ばれる異常な線維性蛋白が心,肺,肝,腎,脾,消化管などの諸臓器に沈着する全身疾患である.心アミロイドーシスは,心臓へのアミロイド沈着に起因する心機能障害を来たした病態である.主要病態は,アミロイドの沈着による心室壁の肥厚に伴った拡張不全とさらに病期が進行した際の収縮不全,および進行性かつ難治性の心不全である.また,刺激伝導系が障害され種々の不整脈が認められる.6)心筋炎 心筋炎の病因はウイルス感染症が大半を占める.ウイルス性心筋炎の原因ウイルスとしてはコクサッキーウイルスが最も頻度が高い.ウイルス性心筋炎が特定心筋症の原因となると考えられる根拠は,(1)臨床的に心筋炎から拡張型心筋症へ移行する例があること,(2)拡張型心筋症において心筋炎を示唆する炎症細胞浸潤が認められること,(3)拡張型心筋症において心筋炎ウイルスに対する抗体価が高いこと,(4)拡張型心筋症の心筋からウイルスゲノムが検出されるようになったことなどである.7)不整脈源性右室心筋症(Arrhythmogenic� right�ven-tricular�cardiomyopathy;ARVC) ARVCは,右室優位の心拡大と心機能低下,右室起源の重症心室性不整脈を基本病態とする.左室は正常ないし軽度異常にとどまる.病理学的には主に右室自由壁における脂肪浸潤と心筋細胞の脱落ならびに線維化を認める.右室の伝導遅延により右側前胸部誘導(V1-3誘導)のε波または限局性のQRS幅延長(>110ms)が特徴的所見である.右室起源の左脚ブロック型の心室期外収縮の頻発や心室頻拍が見られることが多い.8)アルコール性心筋症 長期かつ多量の飲酒をすることによって発生する中毒性心筋症の1つで,一般的には,1日80~90gの純エタノール換算量を5年以上にわたり摂取すると発症するとされている.初期には拡張障害,左室肥大を生じ,進行すると左室は拡大,左室壁厚は正常ないし減少し,拡張型心筋症と同様の基本病態を呈する.組織学的には,細胞内小器官の構造変化,特にミトコンドリアの大小不同・増大,心筋内の脂肪滴など特徴的所見が認められる.9)脚気心 重症のチアミン欠乏により発症する高心拍出性心不全

が基本病態である.症状の発現には3か月以上チアミン欠乏の持続が必要とされている.高カロリー輸液や成長期の偏食などでチアミン補給が不十分で欠乏を来たしやすい.チアミンはTCAサイクルの補酵素で糖代謝にかかわっており,欠乏するとピルビン酸や乳酸が蓄積し,代謝性アシドーシスを惹起し,静脈還流増大を起こす.右心不全が優位であるが両心不全を呈することが多い.劇症型は「衝心脚気」といい,低血圧,乳酸アシドーシスを伴い重症心不全を呈する.10)左室心筋緻密化障害 心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を基本病態とする.臨床症候には,(1)拡張型心筋症類似の心不全,(2)壁在血栓による塞栓症,(3)不整脈,特に致死的不整脈がある.新生児期,乳児期に重篤な心不全症状で発症し,急激な経過をとる例が多い.成人例では,心不全で発症したものが過半数を占め重症例が多く,塞栓症と心室性不整脈の頻度が高い.11)筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 筋ジストロフィーは遺伝性で進行性に筋力低下を示す疾患群であり,Duchenne型,Becker型,Emery-Dreifuss

型,肢帯型筋ジストロフィー,顔面肩甲上腕型,ミオトニー型に分類される.筋ジストロフィーは筋細胞骨格と細胞外マトリックスを構造的に結合するジストロフィン蛋白の遺伝子変異が原因となる. Duchenne型筋ジストロフィーに伴う心筋症は,心筋細胞の脂肪 /線維性置換が左室後壁基部から徐々に左室自由壁に広がるのが特徴的である.病理組織学的には心筋細胞は萎縮し,細胞質の空胞化や核の変形,間質線維化が認められる.肥大性心筋症様よりも拡張型心筋症様の表現型が多いが,肥大型心筋症から拡張型心筋症へと移行する例も認められる.ほぼ全例で僧帽弁逸脱が認められるが,その正確な原因は不明である.さらに,Duchenne型ではジストロフィン蛋白はほぼ欠損しているが,心機能異常は骨格筋力低下の程度とは相関しない.Becker型筋ジストロフィーでは,Duchenne型で特徴的な左室後壁の線維化は通常認められず,肥大型心筋症様または拡張型心筋症様の表現型,局所左室壁運動異常,心尖部血栓,僧帽弁閉鎖不全症等が認められる.初期に右室拡大を来たし,その後に左室拡大と左室収縮不全に陥るのが典型的な経過である.Emery-Dreifuss型筋ジストロフィーは,X連鎖劣性遺伝形式または常染色体優性遺伝形式をとるが,骨格筋症状は乏しいにもかかわらず,高頻度に完全房室ブロックや洞不全などの刺激伝導障害を呈するのが特徴である.また右房や左房拡大も認められる.筋緊張性ジストロフィーでは,心臓刺激伝導障害

Page 7: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

9循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

を来たすことがあるが,典型的な拡張型心筋症を呈することはまれである.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーでは,心房性不整脈の頻度が高いが,心筋症の表現型はごく軽度にとどまる.12)ミトコンドリア心筋症 ミトコンドリア心筋症は,ミトコンドリア病の1つであり,ミトコンドリアの機能障害によって,心筋症あるいは心伝導障害などの病態を呈する.心筋症のみが前景に立つ場合と,中枢神経系症状などに合併する,いわゆるミトコンドリア脳筋症の部分症として出現する場合がある.ミトコンドリア心筋症に関連すると考えられるミトコンドリア遺伝子の変異(点変異もしくは欠失)は,20種類以上が報告されており,変異の多くが,代表的なミトコンドリア病であるMELAS(mitochondrial

myopathy,encephalopathy,lactic acidosis and stroke-

like episodes),MERRF(myoclonus epilepsy associated

with ragged-red fibers),慢性進行性外眼筋麻痺症候群(chronic progressive external ophthalmoplegia; CPEO)あるいはKearns-Sayre症候群(KSS)の原因となり得,その部分症として心筋症を呈することも多い.また,呼吸鎖酵素などミトコンドリア内で機能する蛋白をコードしている核遺伝子の変異でも,ミトコンドリア心筋症が起こり得る.ミトコンドリア心筋症は,肥大型の病型をとることが多いが,拡張型や拘束型の病型を呈することもある.初期には,心筋肥厚の程度に比べて収縮能が保たれていることが多いが,病期の進行に従って急激に収縮能が低下し,拡張相肥大型心筋症となる場合や,肥大型から拡張型へ移行する場合もある.13)薬剤誘発性心筋症 薬剤によって引き起こされる心筋障害により心筋症を呈するのが薬剤性心筋症の基本病態である5).ドキソルビシン心筋症には,急性毒性と慢性(遅発性)毒性が存在する.心筋障害を来たす薬剤としては,アントラサイクリン系のドキソルビシン(アドリアマイシン)やイダルビシン(イダマイシン),アルキル化剤のサイクロフォスファミド(エンドキサン)やイホスファミド(イホマイド),代謝拮抗薬のクロファラミン,微小管阻害薬のドセタキセル(タキソテール),チロシンキナーゼ阻害薬のトラスツズマブ(ハーセプチン),スニチニブ(スーテント)などがある.心筋に対する障害が強く,広く使用されている代表的な薬剤はドキソルビシン(アドリアマイシン)である.慢性毒性は蓄積性の心毒性であり,総投与量に比例して出現する.体表面積(m2)あたりの総投与量が400 mgで3~5%,550 mgで7~26%,700 mgで18~48%の患者が顕性心不全症状を呈する.

最終投与日から10年を経過しても発症するとされているが,通常は投与後3か月を中央値とした期間内に発症することが多い.光顕では心筋細胞の変性,間質の浮腫・線維化がみられ細胞質の空胞変性,ミトコンドリアの変性が認められる.14)Fabry病 Fabry病は,細胞のリソソームに存在する加水分解酵素の1つであるα-galactosidase A蛋白をコードする遺伝子の異常により生じるα-galactosidase A酵素活性の低下に起因する.α-galactosidase A遺伝子はX染色体に存在するため,本症はX染色体劣性の遺伝形式をとる.Fabry病では,α-galactosidase Aの基質であるglobotri-

aosylceramide,galabiosylceramideなどのスフィンゴ糖脂質が進行性に全身の細胞のリソソームに蓄積し,皮膚,眼,神経,血管,腎臓,心臓など多臓器の障害が出現する.心Fabry病は,Fabry病で認める多臓器障害を欠き,心臓の細胞にスフィンゴ糖脂質が進行性に蓄積し心障害のみを呈する非典型的なFabry病である.心Fabry病では,左室肥大を主とした障害が基本病態である.左室肥大は進行性で,通常は対称性肥大を示すが,非対称性中隔肥大を呈する例もある.左室肥大が主徴である時期の病態は肥大型心筋症に類似しており,収縮機能は保たれているが拡張機能障害を認める.病期の進行に伴い左室収縮機能障害とともに肥大の退縮や左室後壁基部に限局した菲薄化が出現し,拡張相肥大型心筋症様の病態を呈する.15)産褥性心筋症(周産期心筋症) 心疾患の既往がなく,心不全を発症する原因が他に見当たらない女性が,妊娠後期から分娩後5か月以内に新たな心不全症状が出現し,拡張型心筋症様の病態を呈するものである.我が国では「産褥性心筋症」と呼ばれてきたが,妊娠後期にも発症例を認めることより,「周産期心筋症」と呼ぶことが多い.半数以上は完全治癒する.双胎妊娠や多胎妊娠に頻度が高く,その後の妊娠で再発傾向を認めることから,妊娠との関連が示唆されているが,その発症機序は不明である.

2 成因・疫学

1 病因と遺伝

①病因

 拡張型心筋症の病因は永らく不明とされてきたが,後述する遺伝的素因とともにウイルス感染と自己免疫異常

Page 8: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

10 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

が関与することが明らかとなってきた.ウイルス感染の根拠としては,拡張型心筋症患者から採取した心内膜心筋生検標本におけるPCRを用いた検討で,1/3から2/3にウイルスゲノムが検出されることが挙げられる6)-8).ウイルスがコクサッキー・アデノウイルス受容体などから細胞に侵入すると,まずToll-like receptorをはじめとする自然免疫系が活性化される.一方ではエンテロウイルスはプロテアーゼ2Aを産生することにより,細胞骨格を形成するジストロフィン蛋白を分解し,細胞膜の統合性を傷害することが明らかにされている9),10). 自然免疫系の活性化に引き続いて,獲得免疫系が活性化され,T細胞・B細胞を介する細胞障害が惹起される.急性心筋炎の場面では,ウイルス抗原が主要組織適合抗原(MHC)クラスⅠ分子上に提示され,CD8+T細胞を介して産生されたパーフォリンによる感染細胞の傷害が惹起される.引き続いて傷害された標的細胞の様々なペプチドがMHCクラスⅡ分子上に抗原提示され,CD4+T細胞を介した持続的な免疫応答が惹起される.拡張型心筋症においても様々な細胞性免疫異常が観察される.すなわち,拡張型心筋症患者血清において制御性T

細胞が減少し,代わりにヘルパーT細胞が増加していることや,心筋生検標本を用いた検討でMHCクラスⅡ分子が発現しているとの報告が見られる(表2). これに対して,拡張型心筋症患者血清には様々な抗心筋自己抗体が存在することが指摘されてきた.これらの自己抗体は急性心筋炎による心筋細胞障害の際に生じたものが血中に残存するだけであり,拡張型心筋症の病態には関与しないと考えられてきた.しかしながら,抗ミオシン抗体,β1アドレナリン受容体抗体,ムスカリン

M2受容体抗体,Na-K-ATPase自己抗体,トロポニンⅠ自己抗体をはじめとして,少なくとも一部の抗心筋自己抗体は何らかの病態生理学的意義を有することが明らかにされてきた11)-17).

②遺伝子変異と発症機序

 家族性拡張型心筋症患者の約20%に何らかの遺伝子変異が検出される(表3).多くは直接心収縮に関連するサルコメア蛋白をコードする遺伝子や心収縮力を伝達する役割を担うジストロフィン関連蛋白をコードする遺伝子である.細胞内カルシウム調節に関与する蛋白の変異も報告されている.特徴的な表現型を呈する遺伝子変異もいくつか報告されている.フォスフォランバンは筋小胞体のカルシウムATPaseを制御する蛋白であるが,PLN(R9C)変異では家族性拡張型心筋症を呈する.同変異をマウスに発現すると,拡張型心筋症様病態・早期死亡を来たすことも確認されている.同変異でカルシウムATPase活性を抑制するメカニズムとして,PLN(R9C)がプロテイン・キナーゼAを捕捉し,同酵素によるフォスフォランバンのリン酸化が抑制されることが示された18). 遺伝子変異は拡張型心筋症発症の直接の原因となるだけではなく,発症の遺伝的素地として働くこともある.その根拠は,拡張型心筋症患者において主要組織適合抗原クラスⅡ分子を介して心筋炎感染後の持続的な免疫応答に関与するヒト白血球型抗原DQ/DR/DP変異と強く関連することである19),20).このような遺伝子変異を有する場合,ウイルス感染後に持続的な自己免疫機序が作動し,拡張型心筋症に移行することが推定される.また,抗心筋自己抗体は家族性拡張型心筋症患者に多く検出されることも明らかにされている21).その一例として,家族性拡張型心筋症患者のある家系ではムスカリンM2受容体の第二細胞外ループの遺伝子変異を有し,同部位に対する自己抗体が全例にかつ高力価に検出される22).

2 罹患率と予後

①有病率

 心筋症を仮に拡張型心筋症に限っても有病率を正確に記述した報告はない.そこで,1つのアプローチとして心不全患者のうちの心筋症と記載されている割合からおおまかな患者数を割り出すことにする.しかしながら,そもそも我が国における心不全患者数の正確な報告も未だない.米国における心不全患者数の統計はここ50年間のものがあるが,年々増加しており2008年で580万

表2 �拡張型心筋症にみられる免疫異常細胞性免疫異常 CD4+T細胞/CD8+T細胞比の増加 HLA-DR陽性T細胞の増加 リンパ球 IL-2受容体の増加 心筋組織におけるMHCクラスⅡ分子の発現 心筋組織における細胞間接着分子の増加

液性免疫異常(抗心筋自己抗体) ミオシン G蛋白質関連受容体(β1アドレナリン受容体,ムスカ

リンM2受容体) Na-K-ATPase トロポニンⅠ ミトコンドリア蛋白(アデニン・ヌクレオチド・トラン

スロケーター,αケト酸デヒドロゲナーゼ) アクチン 熱ショック蛋白 筋小胞体ATPase チュブリン

Page 9: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

11循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

人であり,全人口に占める割合は約2%となっている23).この比率で行くと人口千人あたり20人の有病率となるが,我が国の人口1億2千万人で考えると約240万人の心不全患者がいることになる.我が国における様々なコホート研究24)-28)によれば,表4に示すようにおよそ20~25%が心筋症を基礎疾患としており,無症状の心筋症患者については全く分からないが,心不全症状を呈する心筋症の有病率はおよそ人口千人当たり4~5人ということになる.平成11年厚生省特発性心筋症調査研究班による全国調査29)においては全国の推計患者数17,700名,人口千人あたり0.14人となっているが,難病指定を受けるほどの比較的重症患者を対象としたものであり,一般的なコホート研究との乖離が顕著である.拡張型心筋症の定義にかかわる問題であり,非常に難しいところである.フラミンガム研究30)をはじめとして一般に発病率も心不全に関しては年齢とともに劇的に増大するが,心筋症に限ったデータはない.18歳以下の小児を対象とした登録研究31)において10万人あたり1年に1.13件の心筋症の発症をみている.同じ研究におい

て年齢については一般の心不全とむしろ逆行して1歳未満で10万人あたり1年に8.34件,1~18歳で10万人あたり1年に0.70件の発症となっている.

②予後

 心筋症の予後に関しては有病率以上に情報が少ない.様々な治療法が組み合わされて予後を改善してきているため,心不全患者についても既に自然歴は不明である.まして,心筋症に限った自然歴は調査不能と思われる.一般の心不全患者においては上記のコホート研究のうち入院患者を対象としたもので1年生存率がFukuoka

study24) 8.3 %,北里大学25) 13 %,CHART26) 7.3 %,JCARE-CARD28) 8.3%となっており,比較的最近の治療のもとで概ね8%前後で推移している.しかし,これらの研究の後に我が国において心臓再同期療法や補助人工心臓が普及してきたまたは今後普及することなどを考えると最新の治療のもとでの生存率とはいえないかもしれない.拡張型心筋症に関しては平成11年の厚生省の調査29)で5年生存率76%となっていたが,我が国におい

表3 家族性拡張型心筋症患者における遺伝子変異遺伝形式 遺伝子 タンパク 機能 表現型

常染色体優性 ACTC アクチン 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 DES デスミン ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) 骨格筋ミオパチー常染色体優性 SCCD サルコグリカン ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) 筋ジストロフィー常染色体優性 MYH7 βミオシン重鎖 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 TNNT2 トロポニンT 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 TPM1 αトロポミオシン 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 TTN タイチン 心筋細胞構造の維持常染色体優性 VCL メタビンキュリン 心筋細胞接合部介在板常染色体優性 MYBC ミオシン結合蛋白C 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 MLP/CSRP3 LIM蛋白 サルコメア伸展常染色体優性 ACTN2 αアクチニン2 アクチン蛋白の構造維持常染色体優性 PLN フォスフォランバン 筋小胞体SERCA2ポンプ機能抑制常染色体優性 ZASP/LBD3 サイファー 細胞骨格の重合常染色体優性 MYH6 αミオシン重鎖 心収縮に関与するサルコメア蛋白常染色体優性 ABCC SUR2A 内向き整流カリウム・チャネル常染色体優性 LMNA ラミンA/C 核膜の安定化 伝導障害常染色体劣性 TNN13 トロポニンⅠ 心収縮に関与するサルコメア蛋白伴性劣性 DMD ジストロフィン ジストロフィン関連蛋白(収縮力伝達) 骨格筋ミオパチー伴性劣性 TAZ/G4.5 タファジン 不明 低身長・好中球減少

表4 我が国における心不全コホート研究における拡張型心筋症の割合虚血性 拡張型心筋症 弁膜症 高血圧性 その他 報告年

Fukuoka24) 35 19 28 20 17 2000北里大学 25) 46 20 16 15 6 2002CHART26) 23 27 34 14 2 2003JCARE-GENERAL27) 30 15 26 35 17 2007JCARE-CARD28) 32 24 − 25 18 2009

Page 10: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

12 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

てβ遮断薬の慢性心不全へのガイドラインへの記載が平成12年であるし,保険適応は平成14年であるので,現在の治療のもとでの予後を反映しているとはいえない数字である.

Ⅱ 診断

 拡張型心筋症および臨床的に類似する心筋症の診断手順を図4に示す.

1 自覚症状と身体所見

①自覚症状

 自覚症状や身体所見は,拡張型心筋症による心不全の診断や重症度評価に特に重要である.拡張型心筋症の自覚症状は,心不全によるものが主要であるが,不整脈や塞栓症によるものもある.不整脈としては,洞性頻脈,心室性不整脈,心房細動が多くみられ,動悸,脈拍欠滞として自覚される.心室頻拍あるいは徐脈性不整脈は,めまいや失神をもたらし,突然死もまれではない. 心不全における症状としては,呼吸困難や浮腫などの臓器うっ血による症状と,全身倦怠感,易疲労感などの心拍出量低下にもとづく症状がある.

1)呼吸困難◦労作時および安静時呼吸困難:労作時の息切れから始まるが,重症になるとごく軽度の労作や安静時にも呼吸困難を生じるようになる.◦起坐呼吸:肺うっ血が高度になると,呼吸困難が臥位1~2分で出現するため,患者は水平に寝ることができなくなる.これには,臥位による静脈還流の増加や横隔膜の挙上が関与する.◦発作性夜間呼吸困難:夜間就寝数時間後に発症する高度の呼吸困難で,ピンク色泡沫状痰や喘鳴を伴うこともある(心臓喘息).これには,起坐呼吸と同様の機序に加えて,下肢・腹部の間質水分の静脈内への移行や,就寝中の交感神経緊張の低下,呼吸中枢の感度の低下が関与する.2)末梢浮腫 浮腫は足背や下腿に認めることが多く,体重増加を伴う.長期臥床例では,仙骨部や背部に出現する.浮腫が長期間持続すると,皮膚は光沢を帯びて硬化し,赤色の腫脹や色素沈着を伴う.3)消化器症状 腸管や肝臓などの臓器うっ血による症状として,食欲不振や悪心がみられ,腸管の浮腫が著しいと下痢や嘔吐をみる.右心不全では,肝うっ血による右季肋部ないし心窩部痛が出現することがある.4)全身倦怠感・易疲労感 心拍出量の低下に基づき,骨格筋への血流が低下する

図4 拡張型心筋症および臨床的に類似する心筋症の診断手順

症状・検診

心筋症特異的治療

確定診断

病歴聴取身体所見心電図

胸部 X線写真

拡張型心筋症と臨床的に類似する心筋症の除外診断

心不全重症度診断・治療不整脈診断・治療塞栓症予防

合併症の診断・治療

心エコー図ドプラ法

左室拡大と左室収縮能障害

血液生化学的検査CT,MRI

核医学検査,PET心臓カテーテル検査冠動脈造影

心内膜心筋生検遺伝子診断

Page 11: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

13循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

ことによる.5)尿量減少・夜間多尿 腎血流の低下は,尿量減少を引き起こす.昼間立位で活動している時は,腎血流が低下するが,夜間臥位をとり安静にすると腎血流が増加するため,夜間多尿が生ずる.

②身体所見

 身体所見も心不全によるものが主体である.1)心拡大 心拡大は,視診・触診によっておおよその見当がつく.すなわち,心尖拍動の左側外方や二肋間に及ぶ移動の場合は心拡大があると判断できる.一方で,心拡大を伴わない求心性肥大では心尖拍動の位置は偏位しない.このことから心不全の原因疾患をある程度推定可能な場合がある.2)Ⅲ音と心雑音 Ⅲ音は心尖部にて聴取される.奔馬調律(Ⅲ音ギャロップ)ともよばれ,心不全の重要徴候の1つである.これは,左室容積が増加することによって,心室拡張早期に心房から心室へ急速に血液流入が生ずるためとされ,心尖拍動の急速充満波に一致する.拡張型心筋症では,僧帽弁逆流を合併し逆流性収縮期雑音を聴取することがまれではない.3)異常呼吸音(副雑音,肺雑音,ラ音) 肺うっ血の自覚症状としての呼吸困難および胸部X

線での肺うっ血所見に伴って出現する.当初は吸気時にfine crackle(捻髪音)として肺底部に聴取されるが,心不全の進行につれ,吸気・呼気時ともにcoarse crackle(水泡音)として全肺野で聴取される.また,間質性浮腫によって細気管支浮腫が生じ,気道が狭くなると喘鳴(wheeze)を聴取することがある.4)頸静脈怒張 頸静脈が怒張し,ときに拍動も観察される.患者の体位を水平より45°の半座位とし,右心房の高さと頸静脈怒張の最上部との垂直高差から中心静脈圧を推測する.内頸静脈での怒張が基本であるが,皮膚の揺れとしてしか観察できない.頸静脈圧上昇が明らかでない場合には,肝・頸静脈逆流が有用である.患者に静かに呼吸を行わせ,45°起坐位で右季肋下の肝を手掌で約1分間静かに圧迫し,頸静脈の拍動性怒張が明瞭となるのを観察する.頸静脈怒張は,右室拡張期圧の上昇が右房圧,末梢静脈圧上昇として観察されるもので,右心不全の代表的な身体所見である.

5)肝腫大・黄疸 肝うっ血による肝腫大は右心不全の特徴的徴候であり,しばしば圧痛や体動時の右季肋部痛,心窩部痛を伴う.黄疸はうっ血肝による肝機能の障害の他,肺,脾,腎などでの反復塞栓に伴う赤血球の破壊によるビリルビン生成の亢進が関与する.6)胸水・腹水・浮腫 右心不全では,静脈圧の上昇に伴って濾出液として漿膜腔内に貯留し,胸水,腹水,心嚢液として認められる.胸水は,葉間胸膜や肋骨横隔膜角に少量の胸水貯留像として胸部X線でみられる.同様に,浮腫は一般に表面の膨張と緊満,および圧迫した後しばらく続く皮膚陥凹として認められる.7)脈拍異常 心不全では,脈拍が微弱で頻脈となり,しばしば交互脈や上室および心室性不整脈,頻脈性および徐脈性不整脈を認める.また,心房細動合併時には絶対性不整となる.脈拍が触れず失神,けいれんや意識障害があれば心停止である.8)体液量 心不全では体液量の推定が重要である.先に述べた頸静脈怒張,肝腫大,胸水・腹水・浮腫の有無とともに,舌の乾燥程度や皮膚の緊張感(turgor)で体液量を推定する.

2 評価法

1 心電図

①12誘導心電図とホルター心電図

推奨文◦12誘導心電図は病状の進行に伴った心筋の変化や不整脈を評価しうる簡易検査法として有用である(レベル4a,グレードA)◦ホルター心電図は拡張型心筋症の予後予測に必ずしも有用とはいえないが,ICDやCRT-D植込み決定や上室性頻脈の心拍数コントロールのためには必須の検査法である(レベル2,グレードB)◦加算平均心電図,TWAは単独での突然死予測法として限界がある(レベル2,グレードC1)◦運動負荷心電図は心室性不整脈と運動耐容能の評価法として有用である(レベル3,グレードB)◦拡張型心筋症では予後を予測する,または抗不整脈薬を決定する目的での臨床電気生理検査の施行意義は乏

Page 12: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

14 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

しいが,デバイス(ICD,CRT-D)の選択に際して施行が必要な場合がある(レベル2,グレードC1)

1)12誘導心電図 拡張型心筋症に特異的な心電図所見はない.しかしながら,心筋の線維化,心房心室の拡張,刺激伝導系の障害,心不全等に由来する波形変化,不整脈が認められる.特に左室の拡張,線維化が進行すると,左室高電位~左室肥大(拡大),r波減高(特にV1からV3誘導のpoor r

progression),異常Q波,QRS幅延長,左側胸部誘導におけるVAT延長,脚枝ブロック,心室内ブロック,ST-T変化などが出現する.左室の拡張がさらに進行すると,QRS幅が0.12秒を超え,左脚ブロック所見を呈するが,その波形は左室拡大を伴わない中枢性の左脚ブロックとは異なり,QRS波に複数のnotchを含むような異常な波形(末梢性の左脚ブロック)となる.また,左室の線維化が極度に進行すると,左室の起電力が低下~消失して,左側胸部誘導のR波が著明に減高し,S波が主体の胸部誘導波形を示す(右脚ブロック例を除く)とともに,四肢誘導は低電位化するようになる.一方,右室の拡大,圧負荷が生じると右側胸部誘導でT波が陰転化し,それがより著明になるとV4,V5誘導までT陰転が波及するが,同時に左室拡大が存在すると,その変化は目立たなくなる. 心房も房室弁の逆流や左室拡張末期圧の上昇に伴って拡大と線維化が生じ,P波幅の延長や左房負荷所見を呈し,心房性期外収縮,心房細動(AF)等の心房性不整脈が出現してくる.心室期外収縮も心機能の低下とともに多発するようになり,連発や多源性期外収縮も出現する. 拡張型心筋症では主として左室に病変を有するため,心室期外収縮の波形は右脚ブロックを呈することが多いが,心サルコイドーシスで中隔基部に病変を伴う場合は,右脚ブロック(または左脚ブロック)+下方軸型の期外収縮~心室頻拍(VT)が生じる. 心不全状態では概ね頻脈となるが,その際にP波形が異所性心房起源を示していたり(洞結節起源=Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ誘導でP波が陽性),睡眠中も100/分を超える洞頻脈を呈している場合は,心房頻拍や不適切洞頻脈(inappropriate sinus tachycardia)に基づく頻脈誘発性心筋症を疑う32).心筋の変性により刺激伝導系が傷害されると,Ⅰ~Ⅲ度房室ブロックを生じるが,心サルコイドーシスでは病初期から房室ブロックを伴いやすい33).(12誘導心電図:レベル4a,グレードA)2)ホルター心電図 心房性,心室性不整脈は左心機能が低下するにつれて

増加する.拡張型心筋症ではほぼ全例に心室期外収縮が,約半数に3連発以上の非持続性VTが認められ,多源性期外収縮も一般的に認められる34).拡張型心筋症では非持続性VTを含めた心室性不整脈の出現例の予後が悪いとの報告もあるが35),ホルター心電図は予後予測の指標とはならないとする考えが主流である36).しかしながら,植込み型除細動器(ICD)や再同期治療機能付き除細動器(CRT-D)植込みの適応を決定したり,上室性頻脈の心拍数コントロールのためには必須の検査法といえる(ホルター心電図:レベル3,グレードB).

②加算平均心電図とTWA

1)加算平均心電図 加算平均心電図(SAECG)は心電図のP波やQRS波を数百回加算することにより,主として波形の終末部以降に出現する微小な電位(Late potential: LP)を検出して,脱分極異常(伝導遅延)に基づく不整脈や突然死を予測する検査法である.SAECGには時系列解析法と周波数解析法があるが,通常,時系列のベクトルマグニチュード法で評価することが多い.指標としては fQRS幅,RMS40ms,LAS40μVがあり,このうち2つ以上の基準を満たす場合をLP陽性とする.一般に fQRS≧114~120ms,RMS40≦14~20μV,LAS40≧38~42msが陽性基準値となっている.SAECGは急性心筋梗塞後の突然死予測に有用とされているが,診断対象から脚ブロック例は除外されている.これはQRS幅の延長した症例の多くでは,心機能や不整脈の有無に関係なく陽性基準を満たしてしまうためであるが,拡張型心筋症では伝導障害を伴うことが多く,必然的に陽性的中率が低くなる37).実際にLP陽性例と持続性VT誘発率には強い相関はあるが,自然発症の不整脈事故はLP陰性例と有意差がなかったと報告されている38).このためSAECGを拡張型心筋症の予後予測に用いるには一定の限界があるといえる39).ただしQRS終末部を明らかに超えてLPが記録される場合は,VTの基盤となる心筋の変化が既に存在していることを示す(加算平均心電図:レベル3,グレードC1).2)TWA TWA(T-wave alternans)はT波形が1拍ごとに交代する現象を指す.TWA法とは周波数解析または時系列解析で微小なTWAを検出して,主として再分極異常に基づく突然死の予知を試みる検査法である.TWAはFFT(高速フーリエ変換)を用いて周波数スペクトル解析で検出するのが主流であり40),この手法によって得られたTWAをマイクロボルトTWA(M-TWA)と呼ぶ.

Page 13: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

15循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

M-TWA測定時にはトレッドミルや自転車エルゴメーターによる運動負荷,または心房ペーシングで規則的に心拍数を一定値(115/分以上)まで上昇させる必要がある.M-TWAでは陰性であることに意義があるため,陽性・陰性基準以外に判定不能の基準が設けられている.近年,運動負荷心電図またはホルター心電図の心電波形を時系列解析することでTWAを検出する手法(TD-TWA法)も開発され,臨床で用いられている. これまでM-TWAに関して,低心機能の心筋梗塞例を対象として種々の検討がなされ,不整脈事故や総死亡の予測に一定の意義が見いだされている41).しかしながら単独の予知指標としてのエビデンスが乏しいことが指摘されている42).拡張型心筋症や心不全例での検討でもほぼ同様な結果が得られており,予後予測に有用ではあるものの,種々の限界が指摘されている43),44).これは,低心機能例では,β遮断薬を服用していたり,洞不全,AF,多発性の期外収縮を有していたり,運動負荷不能例が多く,それらはM-TWAによる解析が困難になるという手法上の問題があるためで,さらには,陽性的中率が低いという,今ひとつの限界も指摘されている.一方,M-TWAは感度と陰性的中率が高いという特徴があり,リスクの低い例の検出に適した指標ともいえる.このため,2006年の心臓突然死の予防に関するACC/AHA/

ESCガイドライン45)では非侵襲的な心電学的予知指標の中でM-TWAのみがクラスⅡaにランクされたが,2009年に発表された心不全管理のACCF/AHAガイドライン更新版46)ではホルター心電図,SAECGとともに,ルーチン検査として推奨されていない. 以上より,心臓突然死を予測するにはTWA単独では限界があるため,脱分極異常を反映するSAECGや左室駆出率と組み合わせて陽性的中率を高める試みがなされている(TWA:レベル2,グレードC1).

③運動負荷心電図

 運動負荷検査は拡張型心筋症例では主として心室性不整脈の評価と運動耐容能の評価に用いられる.前者は主としてトレッドミル法で,後者は心肺運動負荷法(CPX)や6分間歩行法で評価されている. 運動負荷法では不整脈が運動で誘発されるか,どのような種類の不整脈が発生するか,不整脈時の心拍や血圧がどう変化するかを判断でき,また治療後の場合はその効果を判定できる.運動負荷法により重篤な不整脈が誘発された場合は,突然死につながる可能性があり,ICD

の植込み等の適切な治療を要する.特に,右脚ブロック型を呈するLown分類2~4の心室性不整脈が運動によ

り誘発された場合は,左脚ブロック型の不整脈誘発例や非誘発例に比べ有意に予後が悪いことが報告されている47)-49). CPXでは呼気ガス分析を行いながら運動負荷をかけるが,心疾患や肺疾患があると運動耐容能の指標である最高酸素摂取量と嫌気性代謝閾値が低下する.この指標はNYHA心機能分類に比べ客観性に優れ,治療効果や予後判定の評価にも使用可能だが,トレッドミル法と同様に重症の心不全例では試験そのものが施行困難,または禁忌となる場合があり,指標を測定できないという欠点がある. 6分間歩行法は特殊な装置が不要な運動負荷法であり,最大努力による6分間の歩行距離を測定して,身長,体重,年齢から設定した基準値と比較したり,治療前後での歩行距離を比較したりして,大凡の運動能力50),51)

を推定するものである.本法は重症例では予後評価に有用なこともあるが,その変化は臨床的身体状況とは一致しないこともある52)(運動負荷検査:レベル3,グレードB).

④臨床電気生理学検査

 電気生理学的検査(EPS)では,主として右室から2~3連発の早期期外刺激法,または高頻度刺激法を用いて心室性不整脈を誘発する.この際,持続性VTまたは心室細動(VF)が誘発された場合を陽性とするが,拡張型心筋症等の心不全症例の予後予測に対する本法の意義に関しては従来から否定的な見解が出されていた53),54).これは拡張型心筋症では持続性の単形性VTが誘発されにくく,非特異的な多形性VTやVFが一部の例で誘発されるにすぎないため,少数例の検討では予後比較が困難であったためである.しかしながら,その後EPSはESVEM試験55),CASCADE試験56)等の大規模試験で,突然死の一次予防における検査法としての限界が示された.低心機能の虚血性心疾患を対象としたMUSTT試験においても,3連発の早期期外刺激を用いたEPSにより抗不整脈薬を決定してその有効薬を投与されたVT群の予後が,EPSをせずにβ遮断薬とACE阻害薬のみを投与した群よりもむしろ悪い傾向にあることが示された57).さらに突然死二次予防におけるEPSの有用性を検討するために行われたMAVERIC試験58)でも,EPSで治療法が決定された群と,経験的なアミオダロン投与群とでは,生存率,不整脈再発率に差が認めれられなかった.以上より,現在では致死性不整脈の一次,二次予防のために,治療法の選択目的でEPSを行う意義はなく,経験的なアミオダロン投与か ICD治療でよ

Page 14: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

16 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

いと考えられるようになっている.ただし,心機能の良好な例では,EPSで有効な薬剤を決定する余地があるとの意見もある. このため,EPSは予後を予測したり,治療方法を決定するのではなく,アブレーション治療を前提として,持続性VTが誘発されるか否かを判定する,または除細動機能付きのデバイスを選択すべきか否かを決定する目的で施行されることが多い.この他に,2008年のデバイス治療に関するACC/AHA/HRSガイドライン59)では,原因不明の失神ではEPSで持続性VT/VFが誘発されれば ICDのクラスⅠ適応とされているため,失神を伴う拡張型心筋症例ではEPSを施行する意義があると考えられる. 一方,我が国の臨床心臓電気生理検査に関するガイドラインでの,拡張型心筋症に対するEPSの適応基準は欧米に比して緩やかであり,単形性持続性VT,wideQRS頻拍,原因不明の失神のある非持続性VT,持続性VTに対する薬効評価におけるEPSがクラスⅠであり,非持続性VTやカテーテルアブレーション後のVT

評価におけるEPSがクラスⅡaとなっている(臨床電気生理学的検査:レベル2,グレードC1,D).

2 バイオマーカー推奨文◦一般集団における心疾患合併の検出には,健常者との識別にBNP cut-off値50 pg/mLが有用である(レベル4b,グレードC1).◦一般集団において,新規非虚血性心不全発症の予測因子として,BNP測定は有用である(レベル4a,グレードC1).

◦拡張型心筋症における血中cTnT濃度の持続高値(>0.02 ng/mL)は,予後不良因子である(レベル4b,グレードC1).◦血中cTnI濃度は,慢性心不全患者では,健常者に比し有意に高値であり,虚血性心疾患と非虚血性拡張型心筋症の間で差がなく,予後不良因子としても有用である(レベル4b,グレードC1).

◦血中H-FABP濃度の高値は,心イベント発生に関連する(レベル4b,グレードC1).◦高感度CRP(hs-CRP)は冠動脈疾患や心不全イベント発症予測因子として有用である(レベル4a,グレードC1).

◦ IL-6,TNF-αは,心不全発症の予測因子として有用である(レベル4a,グレードC1).◦血中テネイシンC濃度は,拡張型心筋症患者の心不全

重症度,左室拡大の程度,収縮能と相関して上昇する(レベル4b,グレードC1).

①BNPとNT-proBNP

 ナトリウム利尿ペプチドは,ナトリウム利尿作用と血管拡張作用,さらには,交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系,バソプレッシン,エンドセリンなど種々の血管収縮因子に対し拮抗的に作用し,心不全の病態下においては代償的に心筋を保護する心臓ホルモンである.70%が心室由来で,残りは心房から分泌される.圧容量負荷に伴う心筋細胞への伸展刺激により,発現・分泌が亢進すると考えられている.心筋細胞内において,preproBNPからproBNPが産生され,さらに蛋白分解酵素である furinによって分解されると,生理活性を有するBNPと有さないNT-proBNPとなり,血液中に放出される60).BNPとNT-proBNP分泌量はほぼ同等であるが,BNPは半減期が約20分と短いため,半減期が約120分であるNT-proBNPに比し血中濃度が低くなる.BNPは血漿のみで測定可能であるが,NT-

proBNPは血清でも測定可能である. これらの血中濃度は,心不全の重症度とともに上昇し,NYHA心機能分類や各種血行動態の指標と相関する.日常診療において,心負荷を反映する心不全のバイオマーカーとして,診断,治療効果判定,管理指標,予後予測に汎用される.したがって,拡張型心筋症に心不全が合併すれば上昇する. BNP,NT-proBNPは,拡張型心筋症の診断に特異的なバイオマーカーではない.しかし,心機能異常,構造異常を検出することで,早期発見のスクリーニングとしては有用かもしれない.一般集団における心疾患合併の検出には,健常者との識別にBNP cut-off値50 pg/mLが有用であった61)(レベル4b,グレードC1).一般集団における左室収縮能低下例の検出では,BNPの有用性に対する評価は一定しないが,高度な収縮能低下例では高値を示すことが多い.また,2,754人を対象としたFramingham Heart Studyでは,新規非虚血性心不全発症の予測因子として,BNP測定は有用であった62)(レベル4a,グレードC1).一方,BNP値は疾患特異性が低いものの,虚血性心筋症と特発性拡張型心筋症を比較した検討では,心不全急性期の血漿BNP値は,虚血性心筋症でより高く(776±91 pg/mL vs. 532±85 pg/mL),予後が不良であった63)(レベル4b,グレードC1).NT-

proBNPにおいては,300 pg/mL未満では生命を脅かす心構造異常の可能性は低い64).急性の呼吸困難を呈した際の心不全診断には,年齢別に50歳未満,50歳から75歳,

Page 15: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

17循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

75歳以上で,それぞれ450,900,1,800 ng/Lがカットオフポイントとして提案されている.一方,BNPと比較し,腎機能の影響を受けやすい.

②トロポニンT,トロポニンI,H-FABP

 心筋トロポニンは,心筋アクチンフィラメント上にある構造蛋白であり,トロポニンT,I,Cおよびトロポミオシンで複合体を形成し,筋収縮に関与する.トロポニンは平滑筋に存在せず,通常心筋細胞外にも認めないため,血中への出現は高率かつ特異的に心筋細胞傷害を示唆する.心筋細胞が壊死に陥ると,トロポニンT(cardiac

troponin T,cTnT),トロポニン I(cardiac troponin I,cTnI)およびトロポニン IC複合体が血中に流出する.したがって,急性冠症候群や心筋炎では高率に上昇する.さらに,トロポニンは壊死した心筋細胞から流出するだけでなく,細胞膜透過性が障害された心筋細胞からも漏出し,微小な心筋傷害も反映するため,急性心不全や重症心不全の病態でも上昇し,予後や重症度との関連が示唆されている. cTnTに関し,約30%の拡張型心筋症例において持続的に高値(>0.02 ng/mL)を示し,進行性の左室拡張末期径の増大と左室駆出率の低下を認め,予後不良であった65)(レベル4b,グレードC1).cTnIに関しては,慢性心不全患者の血中濃度は健常者に比し有意に高値であり(0.66 ng/mL vs. 0.11 ng/mL),また,虚血性心疾患と非虚血性拡張型心筋症の間で差がなかった.慢性心不全患者では,死亡群において生存群よりも血中cTnI濃度が有意に高値であった66)(レベル4b,グレードC1).以上より,cTnTやcTnIの血中濃度の持続高値は,慢性心不全における進行性の心筋細胞死や細胞傷害を反映し,予後不良因子と考えられる.なお最近,高感度トロポニンTの測定が保険適応となった. 心筋型脂肪酸結合蛋白(heart-type fatty acid-binding

protein-FABP)は,心筋細胞内で脂肪酸のエネルギー供給と貯蔵に関与する低分子蛋白である.FABPは組織ごとにアミノ酸配列が異なり,心臓型,肝臓型,小腸型の3種類が存在する.H-FABPは心筋細胞質内に豊富に存在するが,骨格筋にもわずかながら存在する.可溶性蛋白で,心筋傷害により容易に血中に漏出するため,心筋傷害のマーカーとなる.受傷後30分から3時間で血中に逸脱し,急性冠症候群の早期診断マーカーとして汎用される.トロポニンと同様に,急性冠症候群以外の病態でも陽性となり,心不全時にも上昇する.拡張型心筋症92症例の検討では,退院時のH-FABPの血中濃度が,心イベントの予後予測因子となると報告された.血漿

BNP値とあわせて層別化すると,両者とも高値の群(H-FABP≧5.4 ng/mL,BNP≧138 pg/mL)は,最も予後不良であった.H-FABPの高値は,トロポニンと同様に心筋の持続的な傷害を反映し,心イベント発生に関連するが,退院時のcTnT濃度は予後予測因子にはならず,H-FABPの付加価値が示された67)(レベル4b,グレードC1).

③hs-CRP,テネイシンC,サイトカイン他

 心不全患者では,全身の炎症反応が亢進し,CRPや炎症性サイトカインの血中濃度が上昇する.CRPは急性相反応タンパク質の1つであり,肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応をおこすタンパク質として発見された.より微量での定量化が可能となり,高感度CRP(hs-CRP)は冠動脈疾患や心不全のイベント発症予測因子として用いられる68).炎症性サイトカインの1つである IL-6は,肝臓におけるCRPの産生を刺激し,CRP値と相関して炎症反応の程度を反映する.炎症促進性サイトカインであるTNF-αは心不全状態で活性化され高値をとるが,そ れ 自 身 も 直 接 心 筋 組 織 に 障 害 を 及 ぼ す69).Framingham Heart Studyでは,これら IL-6,TNF-αおよびCRPが心不全発症の予測因子であることが示された70)(レベル4a,グレードC1).また,拡張型心筋症患者においては,血中の IL-6およびTNF-α濃度が上昇し,かつ左室心筋で IL-6およびTNF-αの発現が報告された71),72). テネイシンCは細胞外マトリックス糖蛋白の一種で,組織発生,創傷治癒や組織再生などの組織リモデリングに伴って発現する.正常の成人における心臓での発現はほとんどないが,急性冠症候群や心筋炎などの心筋傷害に反応して間質の線維芽細胞が産生する.炎症性サイトカイン,成長因子,低酸素,アシドーシス,メカニカルストレス,アンジオテンシンⅡなどが発現を誘導する73).活動性炎症に伴って特異的に発現し,炎症の沈静化に伴って漸減し,炎症強度と相関を示す.慢性心筋炎の炎症部位74)やサルコイドーシスの肉芽腫に一致してテネイシンCの強い発現を認め,特発性拡張型心筋症の鑑別診断に有用である.一方,血中テネイシンC濃度は,心筋局所のみならず肝臓や肺などの全身の臓器で産生されるため,解釈には注意が必要である.また,テネイシンCは,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現と活性を促進し,筋線維芽細胞を動員するが,左室リモデリングのマーカーとしても注目されつつある.拡張型心筋症では,健常人に比し有意に血中テネイシンC

濃度が高値である75).左室機能障害,cTnT,プロコラ

Page 16: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

18 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

ーゲンⅢと関連し,心筋細胞傷害後の線維化を反映する.また,血中テネイシンC濃度は,拡張型心筋症患者の心不全重症度,左室拡大の程度,収縮能と相関して上昇する76)(レベル4b,グレードC1).心不全増悪入院後の退院時の値は,心事故発生予測因子となり,血漿BNP値との併用で有用性が増す77)(レベル4b,グレードC1).

3 画像診断

①心エコー図・ドプラ法

推奨文◦虚血性心筋症ではびまん性壁運動低下を示す例があり,特発性拡張型心筋症と鑑別困難な場合がある(レベル6,グレードA).◦肥大型心筋症では,経過中に心拡大および限局性またはびまん性壁運動低下を示す一群があり,肥大型心筋症拡張相と呼ばれる(レベル5,グレードA).

◦心サルコイドーシスでは,左室または右室の局所壁運動低下,壁肥厚,壁菲薄化,心室瘤を認めるが,びまん性壁運動低下を示す例もある(レベル6,グレードA).◦心アミロイドーシスでは,アミロイドの沈着により,心室および心房壁肥厚,心筋内顆粒状光輝,心嚢液貯留,心房内血栓を認めることがあり,僧帽弁流入波形は病変の進行とともに拘束型を示す(レベル6,グレードA).

◦心Fabry病では通常全周性の左室肥大を示し,病期の

進行とともに肥大の退縮,左室後壁基部の菲薄化,限局性またはびまん性左室壁運動低下を示す(レベル6,グレードA). エコー図・ドプラ法は拡張型心筋症や特定心筋症の診断の際に施行すべき検査の1つである(推奨グレードA).心エコー断層像により著明な左室拡大と左室壁運動低下を認めた場合,特発性拡張型心筋症や特定(二次性)心筋症が疑われる.1)特発性拡張型心筋症と代表的な特定(二次性)心筋症 特発性拡張型心筋症をはじめとする代表的な心筋症の心エコー所見を表5にまとめる.特発性拡張型心筋症は,著しい心室内腔の拡大と高度の収縮不全を特徴とする.一方,虚血性心筋症や二次性心筋症は,表に示すとおり壁運動低下の形態など疾患に特徴的所見もあるため,その特徴を把握しておくことは重要である.しかし,特発性拡張型心筋症との鑑別が難しい例が少なくないことも留意しなければならない.例えば,虚血性心筋症においては冠動脈支配領域に一致した局所的壁運動低下が特徴的だが,びまん性低下の場合もあり,また特発性拡張型心筋症においても不均一な壁運動低下を認めることもあるため,両者の鑑別は困難な場合も多い71)-81).高血圧性心筋症では様々な左室肥大の形態を示す82).また,病後期には左室駆出率は正常であっても拡張障害に加え収縮能低下が共存する病態,拡張心不全が存在する83).肥大型心筋症の一部が,経過中に心拡大やびまん性の壁運動低下を来たすものは肥大型心筋症拡張相とされる84)-88).心サルコイドーシスの場合は左室および右室

表5 拡張型を示す心疾患のエコー所見特発性

拡張型心筋症虚血性心筋症

高血圧性心筋症

肥大型心筋症拡張相

心サルコイドーシス 慢性心筋炎

左室壁運動

びまん性壁運動低下局所壁運動低下を示すこともあり 78)

冠動脈支配領域に一致した壁運動異常,菲薄化,輝度上昇 79),80)

びまん性のことも多く,心エコーのみで診断は困難 81)

正常(病初期)

びまん性壁運動低下 84)-88)

局所壁運動低下( 心 室 中 隔 基 部,左室後下壁,乳頭筋,左室自由壁,右室自由壁)心室瘤形成びまん性の壁運動低下例もあり89)-95)

びまん性壁運動低下 96)-98)

左室容積 拡大 拡大 狭小─軽度拡大 拡大 正常−拡大 正常─拡大左室駆出率 低下 低下 正常─低下 低下 低下 低下

左室壁厚 正常─減少 正常─減少(菲薄化)

対称性肥大

求心性リモデリング求心性肥大遠心性肥大 82)

非対称性肥大(肥大型心筋症診断当時と比較すると減少傾向)

心室中隔基部,左室後下壁の壁菲薄化,輝度上昇

病初期は壁肥厚

正常─減少

その他 機能性僧帽弁逆流の合併

虚血性(機能性)僧帽弁逆流の合併

拡張障害

病後期に収縮障害も合併拡張心不全 83)

肥大型心筋症の既往

機能性僧帽弁逆流の合併

完全房室ブロック僧帽弁逆流の合併

心サルコイドーシスと類似する場合あり 98)

Page 17: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

19循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

の局所壁運動低下,壁肥厚,壁菲薄化,心室瘤を認めるが,びまん性の壁運動低下を示す例もある89)-95).慢性心筋炎の場合,拡張型心筋症類似の所見を呈し,心エコーのみでの診断は困難である96)-98). これらの心筋症の僧帽弁流入波形や肺静脈血流波形などドプラ所見としては,特に疾患特異性はなく,左室流入障害をおこし,左房圧上昇,左心不全を合併すると僧帽弁流入波形は偽正常化,さらには拘束型のパターンを示し,肺静脈血流波形においてもS波の低下を来たす.2)その他の心筋症アミロイドーシス アミロイドの心筋間質,心内膜,心房壁,弁膜,刺激伝導系への沈着により,左室および右室壁肥厚,心筋内顆粒状光輝(granular sparkling sign),弁肥厚,両心房拡大,心房壁肥厚,心嚢液貯留,心房内血栓など認めることがある.僧帽弁流入波形は病変の進行とともに拘束型を呈する99)-104).ARVC 右室心筋の脂肪変性,線維化により右室拡大と壁運動低下を認める105),106).アルコール性心筋症 アルコール大量摂取により,病初期は拡張能障害,左室肥大を認めるのみだが,進行すると左室拡大,壁厚減少,収縮能低下を認める107)-109).脚気心 ビタミンB1不足に伴う末梢血管拡張と高心拍出性心不全が特徴.左室および右室拡大,左室の過大な壁運動を認め,高心拍出状態であるが,肺高血圧や心嚢液貯留を認める110)-112).左室緻密化障害 心筋壁が心内膜側の緻密化障害のある厚い層と心外膜側の緻密化した薄い層の二層構造を呈する.左室拡大を認め,収縮性の低下を認める113),114).筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 Duchenne型,Becker型など各筋ジストロフィーでは総じて拡張型心筋症様の壁運動低下を認めることが多い115)-119).ミトコンドリア心筋症 肥大型心筋症様所見を示すことがある.また,中には拡張型心筋症(肥大型心筋症拡張相)の形態を示すこともある118),120)-122).薬剤性心筋症 薬剤の慢性的な心毒性による拡張型心筋症類似の不可逆性心筋障害.アドリアマイシンなど抗がん剤によるものが多い.拡張能障害が収縮能障害に先行することが多

いため拡張能評価は心機能障害の早期検出に有用と考えられる123)-125).心Fabry病 心筋細胞へのスフィンゴ糖脂質蓄積により全周性の左室肥大を示し,病期の進行とともに肥大の退縮や左室後壁基部に限局した菲薄化が出現し,左室壁運動の限局性またはびまん性低下を生じる.左室,左房拡大,左室拡張障害,僧帽弁逆流を合併する126)-128).産褥心筋症 妊娠後期から分娩後数か月までに出現する心機能障害で,特発性拡張型心筋症類似の左室の拡大およびびまん性壁運動低下がみられる129),130).

②CTとMRI

 心臓MRIの役割は,(1)シネMRIによる心機能評価,(2)遅延造影MRIによる虚血性・非虚血性心筋症の鑑別診断,そして(3)重症度の評価である. CTは,MRIの遅延造影に比べて正常心筋と異常心筋とのコントラストが著しく劣ることから心筋症の診断におけるCTの役割は低い.1)MRIよる心機能評価(シネMRI) MRIによる心機能評価は(1)左室・右室駆出率,(2)心拍出量,(3)左室・右室拡張末期・収縮末期容積,(3)心筋重量がある.シネMRI検査では,右室 /左室機能や局所壁運動を正確かつ高い再現性をもって評価できる131)(レベル1,推奨グレードA).2)MRIよる心筋組織性状評価①遅延造影MRI  遅延造影MRIは,MR造影剤であるガドリニゥム(Gd)の投与10~15分以後の平衡相において,Inversion-

recovery法を用いて撮影し梗塞領域を高信号に描出するT1強調画像の1つの方法である.Gd造影剤は,ヨード造影剤と同様に心筋細胞には分布せずに細胞外液に入る性質をもつ.そのため陳旧性梗塞にみられる線維化や,急性心筋梗塞時の細胞壊死などの細胞外液腔が拡大する病態では,障害された領域が高信号領域として描出される132).この特性を生かして(1)心筋梗塞サイズの定量132),(2)心内膜下梗塞の同定133),134),(3)血行再建に必要な心筋バイアビリティーの評価135),136)に有用である(レベル2,推奨グレードB).さらに特発性拡張型心筋症と特定(二次性)心筋症の鑑別,虚血性心筋症と非虚血性心疾患の鑑別において,遅延造影の分布様式や形態が利用される132),137)-139)(レベル4b,推奨グレードB).②T2強調画像  急性心筋梗塞140)や急性心筋炎や心サルコイドーシス

Page 18: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

20 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

では炎症性浮腫の心筋はT2緩和時間が延長し,T2強調画像において心筋のシグナル強度が増加する.また,この部分は遅延造影でも組織の濃染が見られる.3)遅延造影のパターンによる虚血性心筋症と非虚血性心筋症の同定 遅延造影MRIは心筋症の原因疾患が虚血性か非虚血性かの鑑別に有用である.非虚血性心疾患のなかでの原因疾患同定に関しては,遅延造影の分布形式や形態にオーバーラップが多数あるために遅延造影MRI単独での鑑別は困難な場合が多い. 心筋梗塞による遅延造影のパターンは,以下の2つの基準を満たす.(1)心筋梗塞巣は心内膜側から心外膜側に進展するため141),遅延造影の分布も心内膜下側から貫壁性に進展する注1).(2)遅延造影の分布は冠動脈支配に一致して認められる. 特発性拡張型心筋症では,遅延造影そのものが認められない例がある.また遅延造影が存在しても冠動脈支配領域に一致しない孤立性の淡い斑状の分布や,左心室壁の中層(特に心室中隔の中層)に細く線状に縦走する遅

延造影を示す139),142)-145).表6には,特発性拡張型心筋症と類似する代表的な特定(二次性)心筋症の遅延造影MRIの特徴を示す.4)その他の心筋症高血圧性心筋症 高血圧性心筋症のMRI所見は少数例の報告のみである145).肥大型心筋症では,遅延造影が肥大心筋に80%以上の高い確率で認められるのに反して,高血圧性心筋症の遅延造影パターンは特発性拡張型心筋症に類似しており頻度も低い.MRI所見単独での診断は困難である.心アミロイドーシス 遅延造影は冠動脈支配と一致しない心内膜側に全周性に認められる場合(signet ringサイン)と,心筋全体がびまん性に造影されるパターンがある.遅延造影MRI

は,線維化または壊死した心筋を明瞭に描出するために正常心筋の存在を前提としている.このため,心筋にびまん性に沈着するアミロイドを明瞭に描出することは困難である146)-149).ARVC(Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy) 2010年にARVCの新しい診断基準が発表された150).新基準では,シネMRIによる局所的な右室壁運動消失または奇異性運動または右室の収縮同期不全に加えて,(1)右室駆出率が≦40%,(2)右室拡張末期容積 /体表面

表6 代表的な心筋症の遅延造影およびT2強調画像所見特発性

拡張型心筋症虚血性心筋症

高血圧性心筋症

肥大型心筋症拡張相 心サルコイドーシス 心筋炎

遅延造影パターン

心室中隔中層に線 状 に 縦 走 する.右室接合部の中隔に斑状に出現する.

冠動脈支配に一致して,梗塞の進展に一致して心内膜下から貫壁性に分布する

心室中隔中層に線状に縦走するパターンを呈する例もある

虚血性心筋症パターンと非虚血性心筋症パターンが混在する.肥大部分および右室左室接合部に多い

虚血性心筋症パターンと非虚血性心筋症パターンが混在する.中隔基部の右室側に認められる場合や心外膜側のみの分布が比較的特徴的.右室流出路単独に認められる場合もある

1.心室中隔の中層に縦走,2.左室側壁の心外膜側,3.心筋中層に局所的に多発する3つのパターンがある.

T2強調画像 描出されない

急性心筋梗塞では,area at riskが高輝度に描出される.陳旧性心筋梗塞は描出されない

描出されない 描出されない 炎症の活動性の高い部位に一致して高輝度に描出

壁運動の低下している炎症性浮腫に一致して高輝度に描出

その他

心サルコイドーシスや肥大型心筋症拡張相と比べ遅延造影の頻度は明らかに低い

   

遅延造影パターンは心サルコイドーシスに類似している

拡張型心筋症類似の低心機能症例では,遅延造影の分布は拡張型心筋症と比べて広範囲に認める

 

エビデンスレベル レベル4b レベル4a レベル5 レベル5 レベル4b レベル4b

推奨グレード グレードB グレードB グレードC1 グレードB グレードB グレードB

文献番号 139,142,143,144 133,135 145 144,166,

167 168−171 172−178

注釈1)左室中隔の最基部において冠動脈の潅流は心外膜側のみあるため,左室中隔の最基部の遅延造影は心外膜側のみに認められる2),50).

Page 19: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

21循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

積比が≧110mL/m2(男性),≧100mL/m2(女性)のいずれかを満たすことになっている.遅延造影は,拡張/瘤化した右室に一致して描出され,一部は左室中層に斑状に分布する場合もある(LV involvement).遅延造影の頻度は右室で60~70%,左室で30~70%である151)-155).アルコール性心筋症 本疾患の遅延造影は拡張型心筋症に類似するが,その頻度や病期との関係は不明である.脚気心(Shoshin beriberi) 本疾患に特徴的な遅延造影所見はない.左室緻密化障害 左室心尖部の評価にはシネMRIが有用であり156),非緻密化層と緻密化層の比が2.3以上であることを診断基準として提唱されている157).筋ジストロフィーに伴う心筋疾患 遅延造影は心基部の下側壁に分布し,主に心外膜側または心室中層に認められる.遅延造影の頻度は32~75%である158)-160).薬剤性心筋症◦抗がん剤のドキソルビシンによる薬剤性心筋症が多いが,本疾患に特異的な遅延造影所見はない.◦乳がん治療に使用されるトラスツズマブによる薬剤性心筋症の遅延造影は,側壁に分布し心外膜側パターンをとる場合がある.左室駆出率が40%未満の10人の報告では遅延造影出現率は100%である161).

心Fabry病 遅延造影は心基部の下側壁に分布し,貫壁性から心外膜側,心内膜側と多彩である.遅延造影の頻度は病期によって遅延造影の分布は変化すると考えられるが,31~50%である162)-164).産褥性心筋症 症例数が8人の報告では遅延造影MRIは認められていない165).

③核医学検査とPET

 拡張型心筋症は多くの病因による心筋障害の終末像である.しかしながら,病因は異なっても病態には多くの共通点が存在する.また,病因によっては,心サルコイドーシスのようにステロイド治療が有用な疾患もあり,病因や病態の診断,治療効果を評価するモダリティの開発が望まれている. 核医学検査では,最適な tracerを用いることにより細胞機能情報を映像化・定量化することができ,組織の分子挙動を把握することが可能である.本稿では,拡張型

心筋症に対する核医学,特にポジトロン断層撮影(positron emission tomography; PET)の有用性について概説する.核医学検査やPET検査において,拡張型心筋症の診断に決定的な所見はないが,病因や病態の補助診断,治療効果の判定には有用であると考えられる.1)心筋血流イメージング 塩化タリウムとテクネシウム標識製剤を用いた心筋血流シンチグラムでは,心筋の虚血部位や線維化部位に一致して血流欠損が認められる.

安静時心筋血流イメージング 201Thalliumや99mTechnetiumのいずれの核種も心筋組織への集積は生存心筋と心筋血流量に依存する.虚血性心筋症は心筋梗塞と非梗塞部を含めた心室リモデリングが主因であるが,可逆的な収縮不全心筋が存在する場合,血行再建術の有用性があり,安静時心筋血流イメージングを用いて評価される.負荷心筋血流イメージング 虚血性心筋症や高血圧性心筋症では,負荷心筋血流イメージングにおいて再分布現象や固定欠損などの血流異常所見がしばしば認められる.冠動脈病変による心筋虚血を表している場合もあるが,冠血流予備能の低下,心筋細胞の線維化や壊死など様々な病態を反映している.2)PETイメージング PETは生体組織の生化学的機能を表す画像を得ることができる.現在のところ,保険が適用されているPET

検査の tracerはブドウ糖アナログである18F標識fluorodeoxyglucose (FDG)のみで,FDG-PETはブドウ糖代謝画像として臨床応用されている.FDGは細胞膜上に発現するブドウ糖輸送体 (glucose transporter)を介してブドウ糖代謝の盛んな細胞に多く取り込まれる.そのFDG集積をPETにより画像化することでブドウ糖代謝を評価することができる.細胞内に滞留するFDG量は細胞のエネルギー需要に大きく依存する. 正常心筋では空腹時におけるエネルギー基質の約90%は遊離脂肪酸であるが,虚血心筋や不全心筋では脂肪酸代謝からブドウ糖代謝へと移行する.心筋細胞のFDG集積は心筋のブドウ糖代謝を反映するものである.心筋組織のviabilityの検出には,心筋血流シンチよりもFDG-PETの方が優れている179). 特発性拡張型心筋症において,FDG-PETにより心筋のブドウ糖代謝が保持されている場合はβ -blockerへの反応が良好であり,治療効果の予測に心筋のブドウ糖代謝の維持が重要であることが報告されている180).壊死心筋部位を外科的に切除する左室形成術には心筋組織のviabilityを正確に評価する必要があり,FDG-PETによ

Page 20: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

22 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

る評価が適していると考えられる. また,活動性炎症病変には顆粒球・リンパ球・マクロファージ等の炎症細胞が高密度に集族している.それらの細胞は大量の酸素やブドウ糖を消費していることから,FDGは活動性のある炎症病変にも集積することが知られている.FDG-PETは活動性のある炎症細胞を高感度に検出することができ,この特性を用いてサルコイドーシスの心病変を描出できることが報告されている181)-184).サルコイドーシスにおいて心病変のFDG集積程度が強く182),184),また,心臓におけるFDG集積が不均一な例ほど,心臓への波及頻度が高率であり183),184),FDG-PETによりサルコイドーシスの心病変を高感度に検出することが可能である. 心サルコイドーシスにおいて心筋傷害の程度により心筋の血流異常が生じると考えられるが,FDGの異常集積部位は必ずしも心筋の血流異常部位と一致しないことがある.この病態は,心病変に活動性のある炎症が存在するが,心筋は傷害・壊死には至っていないと考えられ,この病態でのステロイド治療が開始されることが望まれる.心サルコイドーシスにおいてガリウムシンチグラフィで心臓に集積を認める例では躊躇することなくステロイド治療を開始することができるが,ガリウムシンチグラフィによる診断感度は高くなく,ガリウムの集積を認めない場合にはステロイド治療を行うか否か治療方針の決定に苦慮することがある.FDG-PETはガリウムシンチよりもサルコイドーシスの心病変を検出する診断感度が高く182)-184),ステロイドの治療効果についても評価が可能であることが報告されている184). また,特発性拡張型心筋症と比べると,心サルコイドーシスでは心臓におけるFDG集積の不均一性が強く,FDG-PETは心サルコイドーシスと特発性拡張型心筋症との鑑別診断にも有用である可能性がある183).さらには,心筋炎の炎症部位を検出することも可能であると考えられる.現在,FDG-PETの保険適応要件は虚血性心疾患による心不全患者において,通常の心筋血流シンチグラフィでのviability診断の判定困難な場合に心筋組織のviability診断が必要とされる患者に限られており,今後の適応拡大が望まれる.

4 活動能力評価 拡張型心筋症を基礎として慢性心不全状態となると,活動能力が低下する.活動能力低下は生活の質と充実度を直接に低下させるため,活動能力の改善は慢性心不全治療の主要目標である.したがって,慢性心不全における活動能力の客観的評価が極めて重要である.活動能力

を規定する最も重要な因子は運動能力である.慢性心不全の重症度や予後推定185)だけでなく,日常活動の許容範囲,職種や業務内容の選択,手術に際してのリスクの評価などに運動能力の評価は必須である186).

①運動能力の主観的評価法

1)NYHA心機能分類(表7) 日常生活の身体活動能力に基づいた重症度分類である187).この方法は簡便であり,患者の生活の質を反映している.日本循環器学会の慢性心不全のガイドラインでNYHA心機能分類に基づいた治療選択が推奨されている188).一方,それぞれのクラスの判断基準となる具体的な日常活動レベルが曖昧であり,検者や被験者の主観に左右されやすく,定量性・客観性に乏しい点が欠点である.また,Ⅱ度およびⅢ度の幅が広く,軽中等度の心不全患者の生活指導指標には適さない.さらに,心不全の病歴が長い患者は,自らの活動を制限していることがあり,注意が必要である.2) 身体活動能力質問表(Specific�Activity�Scale;�SAS)(表8) 日常生活の具体的な活動を特定し,その運動量をmetabolic equivalents (METs)に対応させた指標がSAS

である.この指標は心不全症状が出現する最小運動量を酸素消費により定量的に判定しようとするものである.心不全治療目標の一つが患者各々の生活レベルを達成させることであるから,この指標は患者の行動様式を詳細に把握する上で非常に有用である.特に日常生活で自覚症状が出現する中等症から重症の慢性心不全の運動能力評価に有用である189),190).

表7 NYHA心機能分類Ⅰ度 心疾患を有するが,そのために身体活動が制限される

ことのない患者.通常の身体活動では,特に疲労,動悸,呼吸困難あるいは狭心症状は来たさない.

Ⅱ度 心疾患を有し,そのために身体活動が軽度制限される患者.安静時は無症状である.通常の身体活動で疲労,動悸,呼吸困難あるいは狭心症状を来たす.Ⅱ s: slight limitation of physical activity(身体活動の軽度制限)Ⅱm: moderate limitation of physical activity(身体活動の中等度制限)

Ⅲ度 心疾患を有し,そのために身体活動が高度に制限される患者.安静時は無症状であるが,通常以下の身体活動で疲労,動悸,呼吸困難あるいは狭心症状を来たす.

Ⅳ度 心疾患を有し,そのために非常に軽度の身体活動でも愁訴を来たす患者.安静時においても心不全あるいは狭心症状を示すことがある.少しの身体活動でも愁訴が増加する.

Page 21: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

23循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

②運動能力の客観的評価法

1)6分間歩行 特殊な設備が不要な簡便法として,最大努力による6分間の歩行距離を測定する最大負荷試験である.6分間歩行距離は身長と体重および年齢に関連しており,日本人の正常域(m)は[454-0.87×年齢(歳)-0.66×体重(Kg)]±82(2標準偏差)に身長(m)を乗じたものとされる51).この検査で得られた歩行距離とNYHA心機能分類や最大酸素摂取量は相関すると報告されている50).また,歩行距離と1年後の死亡率が逆相関し,独立した予後予測因子であることが知られている191).一方,再現性は低く,1人の患者の運動能の変化をみるには不適当であると考えられている192).2)心肺運動負荷検査 トレッドミルや自転車エルゴメーターを用い,呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験で客観的な運動能力を評価する193).多段階漸増運動負荷法のBruce法は,一段階ごとの負荷量の幅が大きく,第一ステージで既に約5METs相当の負荷がかかるので,心不全患者の運動能力評価には適さず,直線的漸増負荷法が用いられることが多い.心肺運動負荷検査を行う際に,自覚的運動強度(Borgスケール,表9)を確認することが重要である.客観的に得られた負荷量や酸素摂取量とBorgスケールを対比することによって,得られた結果を日常生活活動の指導に用いることができる.また労作時息切れによっ

て運動制限されている患者において,その運動制限が心不全によるものかどうかを鑑別する際に有用である194).心不全患者の最も客観的な運動能力の指標である最高酸素摂取量(peak V

4

O2)は全身の機能(心機能,肺機能,末梢機能,および肺・体循環機能)を統合した指標であり194),予後評価185),195)-197),心臓移植候補者の決定185),197)-199),重症度評価200)のための適切な方法である.

 有酸素運動単独から無酸素運動が加わるポイントである嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold; AT)も重症度の良い指標である193),194).最大運動能力のおよそ50~55%にあたり,日常の活動レベルを表す指標として用いられる193),194).ATレベルの運動は,運動に必要なエネルギーが有機的代謝で供給されるため長時間運動を継続することができ,カテコールアミンの著しい上昇がないため不整脈や著名な血圧上昇が起こりにくく,心筋酸素消費量の増加が少なく,心不全患者において安全に行うことができる.したがって,ATを知ることによって,心不全患者の運動許容範囲を設定することができ201),AT

時の酸素摂取量での運動強度をSAS表と対応させて日常生活の指導を行う.さらに,心不全患者において運動療法は予後や運動耐容能を改善する治療法であるが,運動処方はATに基づいてなされる202).また,Borgスケールの11~13に相当する運動強度は,約60%の例でATに相当することが知られており,Borgスケールだけで運動処方することも可能であるが,心肺運動負荷検査のATとBorgスケールの11~13が一致することを確認することが望ましい. 心肺運動負荷試験から得られる他の指標の中で,心不全の重症度を示し,生命予後と関連するものがある.二酸化炭素排泄量(V

4

CO2)の増加量に対する換気量(V4

E)の増加率(V

4

E vs. V4

CO2スロープ)は換気効率を表し,

表8 身体活動能力質問表(Specific�Activity�Scale;�SAS)1. 夜,楽に眠れますか(1MET以下)2. 横になっていると楽ですか(1MET以下)3. 1人で食事や洗面ができますか(1.6METs)4. トイレは1人で楽にできますか(2METs)5. 着替えが1人で楽にできますか(2METs)6. 炊事や掃除ができますか(2~3METs)7. 自分でフトンをしけますか(2~3METs)8. ぞうきんがけはできますか(3~4METs)9. シャワーをあびても平気ですか(3~4METs)10. ラジオ体操をしても平気ですか(3~4METs)11. 健康な人と同じ速度で平地を100~200m歩いても平気

ですか(3~4METs)12. 庭いじり(軽い草むしりなど)をしても平気ですか

(4METs)13. 1人で風呂に入れますか(4~5METs)14. 健康な人と同じ速度で2階まで昇っても平気ですか(5

~6METs)15. 軽い農作業(庭堀りなど)できますか(5~7METs)16. 平地を急いで200m歩いても平気ですか(6~7METs)17. 雪かきはできますか(6~7METs)18. テニス(または卓球)をしても平気ですか(6~7METs)19. ジョギング(時速8km程度)を300~400mしても平気

ですか(7~8METs)20. 水泳をしても平気ですか(7~8METs)21. なわとびをしても平気ですか(8METs以上)

表9 Borgスケール2019 非常につらい1817 かなりつらい1615 つらい1413 ややつらい1211 楽109 かなり楽87 非常に楽6

Page 22: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

24 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

心不全が重症になるほど高値を示し,高値の症例ほど生命予後が不良であることが示されている203).仕事率増加に対するV

4

O2増加の割合(⊿V4

O2/⊿WR)は運動中の心拍出量増加の程度を表し,心不全患者の生命予後を規定する因子であると報告されている204).その他には回復期酸素摂取量時定数や酸素摂取量立ち上がり時定数なども心不全の重症度と関連することが報告されている.

心不全における活動能力評価クラスⅠ◦問診:運動能力,心理的状態,認識能力,社会的環境などの把握◦心肺運動負荷試験:心移植やその他の高度な治療適応を検討するため◦心肺最大運動負荷試験:労作時呼吸困難や易疲労性が運動制限因子となっている患者で原因を鑑別するため◦最高酸素摂取量測定:予後評価のためクラスⅡa

◦心肺最大運動負荷試験:運動処方を作成するため◦心肺運動負荷試験:心房細動,ペースメーカ患者の心拍応答や至適プログラム決定,運動時の血圧,不整脈,身体活動の程度の評価,運動能力の変化と治療の評価などのため

クラスⅢ◦ルーチン検査として最大運動負荷試験

5 心臓カテーテル検査と心内膜生検推奨文

診断意義 得意領域 レベル 推奨度(グレード)

右心カテーテル

心不全の程度把握(特に LOSの場合) 2 C1

冠動脈造影

狭心痛を要し心筋虚血に介入することで改善が期待できる場合 2 A

虚血を疑う所見を有するが狭心痛がないもの 3 C2

左室造影 左室形態 regioneral asynegyの評価 3 C1

心筋生検

心拡大がない患者に新規に心不全が発症して2週間以内 2 A

2週間以内に心不全で発症し,臨床経過から心筋炎が疑われる例 3 A

心エコー図などの画像検査から心筋炎(特発性,好酸球性,自己免疫性心筋炎),サルコイドーシスやアミロイドーシスなどを疑う心不全例

3 C1

①右心カテーテルと左心系圧測定

 心不全の病態評価のためのみに,日常診療で肺動脈カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)を使用することの有用性は,証明されていない205).慢性病態である拡張型心筋症では,心エコー図や尿量,身体所見など,非侵襲的なデータに基づいた疾病管理が原則である.しかし,ショック例や薬物治療に反応が悪い場合,あるいは,前負荷減少に伴い低心拍出状態を発症する重症例での,肺動脈カテーテル管理の是非を検討した報告もまた存在しない.混合静脈血酸素含有量(SVO2)は,心拍出量の低下や組織での酸素摂取を反映し,心不全の状況や治療による改善度を見る指標として有用性が高く206),このような直接的な血行動態の評価をためらうべきでない.なお,熱希釈法による心拍出量測定は,低心拍出状態では血液が加温され過大評価される207).一方,三尖弁逆流(3度以上)の存在下では心拍出量を過大評価するという意見が多いが,過小評価するという報告もある208). 左心系では,左室機能低下に伴って左室拡張末期圧(left ventricular end-diastolic pressure,LVEDP)が上昇する.左室圧の上昇勾配の最大値であるmax+dP/dtは,左心室心筋の収縮特性を表すよい指標である.しかし,日常使用には推奨されない.拡張型心筋症における圧測定と予後については,LVEDP上昇と左室収縮期圧の低下,心係数の低下が相関する209),210).

②冠動脈造影と左室造影

 冠動脈3枝病変のような高度虚血性心疾患では,リモデリングの進行に伴い左室壁厚の減少や左室腔拡大などの形態的変化を生ずる.心筋虚血への治療介入としては,冠動脈バイパス手術や経皮的冠動脈形成術が原則である211).一方,拡張型心筋症の診断には,冠動脈造影によって虚血性病態を除外診断する必要がある.ただし,拡張型心筋症では,左室の拡張に伴い全体的に引き延ばされたような枯れ枝状の冠動脈所見を呈する場合がある.また,有意狭窄を認めなくとも,冠血流予備能(安静時から最大冠血管拡張を生じた際の冠血流増加率)が低下することが報告されている215).本来安静時には,冠循環における自動調節能が働くが,拡張型心筋症ではLVEDPの上昇や末梢冠動脈抵抗の増大や微小血管の内皮機能障害,冠微小循環障害によって冠予備能が低下する.冠血流予備能の低下は,アデノシンやジピリダモール投与を用い,冠血管拡張による最大冠血流量が低下することによって検出され215),216),予後推定の一指標となる217).

Page 23: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

25循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

 冠動脈造影の適応は,狭心痛を有し心筋虚血に対する介入によって改善が期待できる場合(レベル2,グレードA),虚血を疑う所見を有するものの狭心痛がない場合(レベル3,グレードB)がある.明らかな虚血所見を有さない拡張型心筋症患者では,ただちに冠動脈造影を行うべきとはならず(レベル3,グレードC2),まず非侵襲的検査にて診断をすすめる212)-214). 近年,薬剤抵抗性心不全の拡張型心筋症(特に心室内伝導障害を示す幅の広いQRS複合例)に対し,心臓再同期療法が行われる.この際,ペースメーカリードの先端を冠静脈洞の至適部位に留置することが,改善を導く際に重要である.このため,冠動脈造影の際には,動脈相のみでなく静脈相まで長めに撮影する. 一方,左室造影では左室容積と収縮能を評価する.左室拡張がないにもかかわらず収縮能が低下する例では,高血圧性心不全や肥大型心筋症の拡張相,さらに,心アミロイドーシスや心Fabry病などの蓄積性心筋疾患を除外しなければならない.局所的な壁運動異常を認める場合には,虚血性心疾患やサルコイドーシス,それに慢性心筋炎などとの鑑別が必要である.左室駆出率(EF:Ejection Fraction)が45%未満では,EF10%ごとに総死亡に対するハザードリスクが39%ずつ増加する218).

③心内膜心筋生検

 心内膜心筋生検は,1962年今野・榊原によってカテーテル法が開発され219),以後世界各国に広まった.心筋炎やアミロイド沈着といった確定診断には,心エコー図やMRI検査をもってしても拡張型心筋症と鑑別ができず,組織診断が必須である.また,心臓移植後の拒絶反応を見る上でも心筋生検は欠かせない検査である.さらに,Real-time PCR法を用いた心筋ウイルスゲノム検出も可能となった.拡張型心筋症例の心筋からも種々のウイルスゲノムが検出されている220). 心拡大がみられず心収縮能が正常であったにもかかわらず新規に心不全が発症した症例では,心筋生検を発症から2週間以内に施行すべきである(レベル2 グレードA)137),220).他に心筋生検の有用性が高いと考えられるのは,(1)2週間以内に心不全で発症し,臨床経過から心筋炎が疑われる例221)-223)(レベル3,グレードA),(2)心エコー図などの画像検査から心筋炎(特発性,好酸球性,自己免疫性心筋炎),サルコイドーシスやアミロイドーシスなどを疑う心不全例(レベル3,グレードC1)224),225)である. 拡張型心筋症の組織所見としては,心筋細胞の大小不同,核の不整と大小不同,心筋線維の粗しょう化,融解

像,間質の線維化を認める(図5 拡張型心筋炎の組織像:心筋線維の融解脱落像を認める.線維化が著明であるが明らかな細胞浸潤は認めない).しかし,拡張型心筋症に「特異的な病理所見」というものがあるわけではない.つまり心筋生検は,あくまでも他疾患を除外診断するための位置づけに留まる.心筋の脱落,融解像,線維化の程度が,病態の把握や予後推定の一助となるとの報告もある226). 右室からであれ,左室からであれ,心内膜心筋生検は侵襲的手技であるため,一定の合併症リスクを有する.合併症としては心室穿孔,脚ブロック,脳塞栓,血管損傷,腱索断裂による弁逆流悪化などが挙げられる.このうち最も重篤な合併症は,心室壁穿孔による心タンポナーデである.我が国では,19,964例の心臓カテーテル手技で穿孔が0.7%,死亡は0.05%と報告されている227).心エコー図によって心膜液の貯留が観察され,血圧低下,頻脈を伴う際には,速やかにエコーガイド下ドレナージ,あるいは直視下心膜切開ドレナージを行う必要がある228).左室壁穿孔では12.9%,右室壁穿孔では5.2%の死亡率である.

6 心筋症の病理

①肉眼病理所見

 特発性拡張型心筋症では,心臓の外形は大きく球状化し,壁は柔軟で重量は増加する(平均重量500~600g).四心腔の拡大が見られるが,心房に比しより顕著な左心室腔ないし両心室腔の拡大を示し,僧帽弁や三尖弁の弁口周囲径が増大する.心腔内にはしばしば壁在血栓を認め,また心筋層内の斑状の線維化や肥厚した心内膜も観察される229).壁の菲薄化に伴い網目状の肉柱形成が目立つ症例は,孤立性左室緻密化障害との鑑別が必要であるが,類似した所見は拡張型心筋症をはじめ種々の心筋症でもしばしば見られ,特異的な所見ではない230).なお高度な左室収縮力低下にもかかわらず左室拡大の目立たない症例も存在し,軽度拡張型心筋症(MDCM;

mildly dilated cardiomyopthy)として知られ注意が必要である231).心室壁における脂肪組織の増生も非特異的に観察されるが,特に右室側に目立つ症例は,ARVCが鑑別に挙がる232).一般に拡張型心筋症の病態を示す疾患,例えばアントラサイクリン系抗がん剤等による薬剤性心筋症233),産褥性心筋症234),アルコール性心筋症235)

でも特発性拡張型心筋症と同様の遠心性肥大心を示し,肉眼病理所見での鑑別は難しい.脚気心については多くは併存するアルコール性心筋障害の影響も無視できない

Page 24: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

26 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

が,やはり他の拡張型心筋症と同様の形態を示し,時に右室側優位の心拡大を呈する236).肥大型心筋症拡張相の場合も既に非対称性中隔肥厚像は失われ,特発性拡張型心筋症同様の形態を示す237),238).重症多枝病変を基盤とする虚血性心筋症でも心内膜側ないし貫壁性にびまん性の線維化と壁の菲薄化を生じ拡張型心筋症様の形態を示す.この場合,心表面を走行する冠動脈の粥状硬化も顕著である239).慢性心筋炎については組織学的な検索なしに拡張型心筋症を呈する他の疾患との鑑別は難しい240).心サルコイドーシスでも外観は他の拡張型心筋症との判別が困難である場合も少なくないが,肉芽腫性病変が黄白色ないし灰白色斑状を示し心筋内に認められる場合があり,また瘢痕化により中隔前半部に顕著な壁の菲薄化を生じる241).代謝性異常物質の蓄積による心筋症のうちヘモクロマトーシスは拡張型心筋症の形態を示すが,アミロイドーシスや心Fabry病は,求心性心肥大を示し肉眼形態ではむしろ高血圧性心臓病や肥大型心筋症との鑑別が問題となる242).Duchenne型ないしBecker型の筋ジストロフィー症においても拡張型心筋症様の心重量の増加や心腔拡大を見るが,半数以上の症例で心室壁肥厚を伴い,線維化や瘢痕化が左室後壁ないし側壁に強い点が特徴である243).

②組織病理所見

 特発性拡張型心筋症の組織所見は非特異的であるが,症例ごとに種々の程度の心筋の変性所見が観察される121),229).多くの進行した拡張型心筋症では高度な代償性心筋肥大と核変性像(核腫大,核不整,クロマチンの濃染像など)が見られ,筋原線維の減少(粗鬆化)や空胞変性を示す229).このような核の変性像を伴う高度肥大心筋は,肥大型心筋症をはじめとする種々の心筋症に共通して出現するものである244).空胞変性が高度な場合(例えばnetwork patternを示す場合)は心Fabry病等の蓄積病242)やミトコンドリア心筋症229)の鑑別が必要であり電子顕微鏡(電顕)での検索が望まれる(この場合,検体は事前に通常のホルマリンとは別の電顕用固定液で処理しておく必要がある).心筋細胞質内のリポフスチンは通常,加齢に伴い増量するが,ヘモクロマトーシスにおける鉄沈着との鑑別は必ずしも容易ではなく,時に鉄染色が必要である.線維化は,心筋線維間(間質性線維化),心筋の脱落部(置換性線維化)や血管周囲性に見られ,心内膜肥厚や脂肪組織の増生(脂肪浸潤)を伴う229).境界の明瞭な虚血性瘢痕は虚血性心筋症だけではなくmicrovascular diseaseにもよっても生じ,例えば肥大型心筋症拡張相も鑑別にあがる245).巣状の線維化は拡張型心筋症の病因,病態における心筋炎の関与を示

図5 拡張型心筋症の組織像(心筋生検組織像)

HE染色,40倍 HE染色,100倍 HE染色,200倍

MT染色,40倍 MT染色,100倍 MT染色,200倍

HE:ヘマトキシレンエオジン,MT:マッソントリクローム

Page 25: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

27循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

唆する場合があり246),またサルコイドーシスを疑うべき症例ではたとえ典型的な肉芽腫性病変を見ない例でも,瘢痕状線維化が炎症性の瘢痕である場合があり注意が必要である241).心筋間や血管周囲のアミロイド沈着が大量の場合はエオジン好性の無構造物として容易に検出できるが,少量の場合はCongo-red等の特殊染色や電顕での検索が必要となる242).逆に心内膜肥厚部の線維弾性症や血管壁の弾性線維はCongo-red等のアミロイド染色で偽陽性になり注意が必要である.拡張型心筋症では間質に種々の程度のリンパ球浸潤が観察されるが,細胞浸潤が高度な場合には慢性心筋炎が鑑別にあがる240).多核巨細胞の出現についてはサルコイドーシスをはじめとする肉芽腫性炎症,巨細胞性心筋炎や非特異的な異物反応などを鑑別する.脂肪組織の増生については肉眼所

見同様にARVCとの鑑別が重要であるが232),アルコール性心筋症においても目立つ場合がある229),235).心筋配列の乱れも種々の心筋症に見られる.錯綜配列disarray

が高度な場合は,肥大型心筋症拡張相が鑑別にあがるが,その場合は一般に間質の線維症の強い症例が多い237),238).その他,薬剤性心筋症233),産褥性心筋症234),アルコール性心筋症ないし脚気心235),247)も含め,明らかな二次性心筋症を除けば,特発性拡張型心筋症とそれ以外の拡張型心筋症を組織形態学的に判別することは困難であり,多くの場合は臨床情報を含めた総合判断ないし所見診断となる.以上のような拡張型心筋症と主な類縁疾患の病理組織学的特徴および鑑別点については表10をあわせて参照されたい.なお組織学的な変性所見の多寡と臨床所見との関連について一定した見解は得られていない

表10 病理組織学的な特徴および主な類縁疾患との鑑別点特発性拡張型

心筋症 虚血性心筋症 肥大型心筋症拡張相

心サルコイドーシス 心筋炎 ARVC その他の代謝性心筋症や

2次性心筋症など

肉眼病理所見

両心腔の拡大を伴う遠心性心肥大.しばし ば 壁 在 血栓,房室弁周径の増大が見られ,肉柱形成が明瞭化する(図6A)

拡張型心筋症様の心腔拡張を示すが,高度な冠動脈硬化症や冠動脈支配領域に一致した瘢痕形成,心室瘤の形成を伴う場合がある(図7A)

拡張型心筋症様の心腔拡張を示し,非対称性中隔肥厚所見も失われている場合が多い

拡張型心筋症様の心腔拡張を 示 し う るが,特に心室中隔前半部の菲薄化を特徴と す る( 図9A)

急性期は,うっ血,浮腫ないし炎症性腫脹を伴い心室壁は肥厚する.一方,拡張型心筋症と慢性心筋炎との鑑別は難しい

右心腔の拡張と線維脂肪組織への 置 換 が 特 徴で,右室流出路漏斗部,心尖部,下壁に強い変化が見られる.進行例は拡張型心筋症様の心腔拡張を示す場合がある

糖尿病性,アルコール性心筋症(脚気心),薬剤性心筋症,産褥性心筋症等で拡張型心筋症様の心腔拡張を示しうる.ヘモクロマトーシスでは肉眼的にも心筋が赤褐色調を呈する.アミロイドーシスが拡張型心筋症様の肉眼像を示すことはまれである

組織病理所見

典型例では,心筋の変性,脱落と代償性肥大の混在.高 度 な 間 質性,置換性の線維化を示す

(図6B)

拡張型心筋症様の所見をとり得るが,虚血 性 瘢 痕 部は,既存の心筋層と境界明瞭な分布を示す 場 合 が 多い.また心内膜直下数層の心筋は帯状に残存する(図7B).

拡張型心筋症様の所見をとり得るが,時に肥大心筋に錯綜配列が目立つ場合がある.また線維化が高度な症例が多い(図8)

壊死を伴わない類上皮性肉芽腫とラングハンス型多核巨細胞が出現

(図9B).生検等で肉芽腫を見いだせない場合は,瘢痕状の線維化やリンパ球浸潤が参考所見となり得る

急性心筋炎では,炎症細胞浸潤(通常はリンパ球であるが好酸球性の場合もある)による心 筋 の 融 解 壊 死

(近接効果)を証明する(図10A).慢性心筋炎は拡張型心筋症様の所見をとりうるが,活動性の炎症細胞浸潤の残存や巣状線維化像が手がかりとなる(図10B)

心筋の変性,脱落と線維脂肪組織への置換が特徴的であるが,種々の程度のリンパ球浸潤や肥大心筋に錯綜配列を示す場合もあり,heterogen-icな病因を反映し,他の心筋症で見られる所見がしばしば併存する(図11)

ヘモクロマトーシスでは鉄染色により心筋内の過剰な鉄沈着を確定する.アミロイド沈着の有無はCongo-red染色陽性部の緑色偏光像をもって確定し,免疫染色等によるアミロイド蛋白の同定を行う.Fabry病等の蓄積病やミトコンドリア疾患は,心筋の高度な空胞変性が手がかりとなる.糖尿病性,アルコール性心筋症(脚気心),薬剤性心筋症等の多くは特異的な組織所見を示さない

その他

病理所見は非特 異 的 で あり,臨床事項も含めた除外診断の上,確定される.軽度拡張型心筋症に代表されるように心機能と形態学的な異常所見に解離が見られる場合もある

心筋虚血に関連した臨床所見との照合が重視される

肥大型心筋症として経過観察されてこなかった症例では,拡張型心筋症との鑑別は難しく,病理所見からの推定に留まる

特徴的な臨床像と組織に肉芽腫を見いだした場合はほぼ診断は決定的.組織像のみでは,他の肉芽腫性炎症性疾患との鑑別にも留意する必要がある

心筋組織でのリンパ球浸潤は,心筋炎に特異的ではない.急性心筋炎は時にカテコラミン心筋症やタコツボ心筋症との鑑別が必要.慢性心筋炎と特発性拡張型心筋症の一部は,現時点では重複するものと思われる

心筋組織の線維脂肪組織への置換は非特異的であるが,顕著な脂肪変性を認める場合,本症が疑われる.通常は,特徴的な臨床所見とあわせて診断確定し得る

Fabry病等の蓄積病やミトコンドリア疾患では,電顕により心筋内微細構造の異常が示される.電顕はアミロイド細線維の確認にも有用である.その他の特異的な病因の可能性についても,臨床所見から「まず疑うこと」が重要であるが,病型によっては,臨床所見との照合なしには特発性拡張型心筋症と区別できないものも含まれている

Page 26: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

28 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

A;肉眼病理所見(心重量690g) B;組織病理所見(HE染色,40倍)図7 虚血性心筋症(剖検例)

A;HE染色,100倍 B;Azan染色,100倍図8 肥大型心筋症拡張相(心筋生検組織像)

図6 特発性拡張型心筋症(剖検例)A;肉眼病理所見(心重量610g) B;組織病理所見(HE染色,100倍)

Page 27: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

29循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

A;急性(劇症型)心筋炎 B;慢性心筋炎図10 心筋炎(剖検例組織像)(いずれもHE染色,100倍)�

図11 ARVC(剖検例組織像)A;HE染色,40倍 B;HE染色,200倍

図9 心サルコイドーシス(剖検例)A;肉眼病理所見(心重量330g,心体重比0.94%) B;組織病理所見(HE染色,100倍)

Page 28: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

30 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

が,心筋生検組織を用いた組織学的変性度の定量的解析248),剖検例を用いた線維化様式の分類の試み249),あるいは電顕的微細構造の検索から予後等の臨床病理相関に言及した報告250)が為されている.拡張型心筋症は我が国の心移植医療上,最も重要な対象疾患であり,平成22年の改正臓器移植法の施行に伴い我が国における移植医療も一層の展望が期待される状況にある.心移植後の経過観察には心筋生検による拒絶反応の評価が不可欠であるが,組織所見の判定法については既に刊行されている日本移植学会,日本病理学会合同によるヒト移植臓器拒絶反応の病理組織診断基準が,いわゆる取扱い規約に相当するものであり参照されたい251).

7 遺伝子検査 拡張型心筋症は,左室または両心室の拡張と収縮の低下を特徴とする疾患であり,ウイルス感染,自己免疫な

ど様々な病因が考えられているが約20~30%は家族性である.家族性拡張型心筋症の研究により病因遺伝子が判明してきている252),253). 拡張型心筋症は不均一な疾患であり,表現型が同じでも異なる様々な遺伝子の異常が病因となる.また同一の遺伝子の異常で異なる表現型が異なることもある252),253).拡張型心筋症には多数の病因遺伝子があることが判明しており,それぞれが比較的長い塩基配列を持っているため,遺伝子診断ができる施設は現在のところ,一部の研究的な施設に限られている.しかし遺伝子診断がなされた症例では予後の予測ができることより管理に有用である.また遺伝子診断がなされた家系では,適切な遺伝カウンセリングや発症前診断が可能となる.したがって拡張型心筋症の遺伝子異常を明らかにしていくことは臨床的に重要であると考えられる. 拡張型心筋症の遺伝的な病因を表11に示す254)-260).

表11 拡張型心筋症の主な病因遺伝子遺伝形式 名称 遺伝子座 遺伝子

常染色体性優性 CMD1A 1p1-q21 ラミン A/CCMD1B 9q13 ─CMD1C 10q22-q23 サイファーCMD1D 1q32 心筋トロポニンTCMD1E 3p 心筋NaチャンネルCMD1F 6q23 ─CMD1G 2q31 タイチンCMD1H 2q14-q22 ─CMD1I 2q35 デスミンCMD1J 6q23-q24 Eya4 CMD1K 6q12-q16 ─CMD1L 5q33 δサルコグリカンCMD1M 11p15.1 筋 LIM蛋白CMD1N 17q12 テレトニンCMD1O 12p12.1 KATPチャンネルCMD1P 6q22.1 フォスフォランバンCMD1Q 7q22.3-q31.1CMD1R 15q14 心筋αアクチンCMD1S 14q12 β心筋ミオシン重鎖CMD1T 12q22 ラミナ関連蛋白2CMD1U 14q24.3 プレセニリン1CMD1V 1q31-q42 プレセニリン2CMD1W 10q22-q23 メタビンキュリンCMD1X 9q31 フクチンCMD1Y 15q22.1 αトロポミオシンCMD1Z 3p21.3-p14.3 心筋トロポニンC

常染色体性劣性 CMD2A 19q13.4 心筋トロポニン ⅠX染色体性劣性 CMD3A Xq28 タファジン

CMD3B Xp21 ジストロフィンCMD3C Xp21.2 ─

CMD: cardiomyopathy, dilated.

Page 29: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

31循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

常染色体性優性遺伝を呈する家族性拡張型心筋症の大家系 の 連 鎖 解 析 な ど に よ り, 現 在 ま で にCMD

(cardiomyopathy,dilated)1Aか らCMD1Z,CMD2A,CMD3Aから3Cの遺伝子座が報告されており,ラミンA/C遺伝子をはじめ様々な遺伝子異常で拡張型心筋症の病態を呈することが明らかになっている.X染色体性劣性遺伝を呈する拡張型心筋症においてはジストロフィン遺伝子などが病因となる. ジストロフィン,アクチン,デスミンなどの細胞骨格分子の遺伝子,ラミンA/Cなどの核膜蛋白の遺伝子,さらにはサルコメア蛋白の遺伝子や心筋Naチャンネルなどのチャンネルの遺伝子など様々な遺伝子変異が拡張型心筋症の病態の原因となる.肥大型心筋症の病因遺伝子と重複するものも多く存在し,同一病因遺伝子のなかでも,その変異の部位により表現型が異なる.

遺伝子検査の推奨グレード

グレードA: 強い科学的根拠があり,行うよう強く勧められる

◦なし(エビデンスレベル6)

グレードB:科学的根拠があり,行うよう勧められる◦家族性で表現型より遺伝子型が推測できる場合(エビデンスレベル6)

 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性が高い〉 家族性でX染色体劣性遺伝形式の場合にはDystrophin

遺伝子の検索

 家族性で常染色体優性で伝導障害を伴う場合には,Lamin A/C遺伝子の検索

 遺伝子異常が確認できなかったときには,検索可能な環境の場合のみ,上記の2つの遺伝子以外の疾患遺伝子の検索が勧められる.

◦発端者の遺伝子異常が判明している家系内の拡張型心筋症の成人例(エビデンスレベル6)

グレードC1:�科学的根拠はないが,行うよう勧められ

る◦家族性であるが表現型から遺伝子型が予測できない場合(エビデンスレベル6)

◦孤発性でも表現型から遺伝子型が推測される場合(エビデンスレベル6) 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性は不確実〉

 まずdystrophin,lamin A/C,TnT遺伝子の検索を行う.比較的頻度の高い上記の3つの遺伝子でも遺伝子異常が確認できなかった場合,検索可能な環境の場合のみ,上記の3 つの遺伝子以外の疾患遺伝子の検索が勧められる.

グレードC2:�科学的根拠はなく,行わないよう勧められる

◦孤発性で表現型から遺伝子型が推測できない症例(エビデンスレベル6)

 〈遺伝子検索による遺伝子異常確定の可能性は非常に低い〉

グレードD:�無効性あるいは害を示す科学的根拠があり,行わないよう勧められる

◦なし(エビデンスレベル6)

Ⅲ 病態と治療

1 急性非代償性心不全

1 重症度分類

①Killip分類

 急性心筋梗塞直後の血行動態を身体所見により分類することにより,その重症度を表したものにKillip分類261)

がある.表12に示すようにクラスⅠからⅣに分類され,再灌流療法導入以前のこととはいえ,死亡率はクラスⅠ

表12 Killip�分類クラスⅠ ポンプ失調なし 肺野にラ音なく,Ⅲ音を聴取しないクラスⅡ 軽度~中等度の心不全 全肺野の50%未満の範囲でラ音を聴取,あるいはⅢ音を聴取するクラスⅢ 重症心不全 肺水腫,全肺野の50%以上の範囲でラ音を聴取するクラスⅣ 心原性ショック 血圧90mmHg未満,尿量減少,チアノーゼ,冷たく湿った皮膚,意識障害を伴う

Page 30: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

32 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

6%,クラスⅡ 17%,クラスⅢ 38%,クラスⅣ 81%と報告されており261),予後と相関した重症度分類と考えられる.今日では再灌流療法が一般的となり,急性心筋梗塞直後の院内死亡率は東京都CCUネットワークの報告では平均6.4%であるが262),来院時にクラスⅣであった患者の24時間以内の死亡は40%,院内死亡率は75%という報告もあり263),いまだに心原性ショックを合併した急性心筋梗塞の救命は困難を伴うことが示唆される.急性心不全一般にもこのKillip分類を適用することは可能であるが,欧米では急性冠症候群後のデータがほとんどである.我が国でのデータでKillipⅢ~Ⅳの急性冠症候群を除く急性心不全症例において院内死亡率が高いという報告がある264).

②Forrester分類

 Forrester分類265),266)も急性心筋梗塞後の血行動態の分類であるが,これは右心カテーテルを挿入して血行動態測定を施行した際に有用である.図12のように肺うっ血の有無(肺毛細管圧18 mmHg以上か以下か),心拍出量のレベル(心係数が2.2 L/min/m2以上か以下か)でⅠ~Ⅳ群に分類される.急性心筋梗塞後の院内死亡率は再灌流療法導入以前ではⅠ群2.2%,Ⅱ群10.1%,Ⅲ群22.4%,Ⅳ群55.5%と報告されており265),266),重症度と予後との相関がやはり示されているが,今日ではKillip

分類の項で述べたように予後そのものの数字は改善されている.再灌流療法を積極的に施行している現在でもKillip分類クラスⅣに類似するForrester分類Ⅳ群での死亡率はなお高いと考えられるが,明確なデータはない.急性冠症候群以外の急性心不全においてもForrester分類を適応することは可能であるが,急性心不全における予後とForrester分類との相関を示したデータはない.なお,各群において推奨される治療法が古くから併記されており,図12に挙げておく.

③Nohria-Stevenson分類

 Nohria-Stevensonらが2003年に提唱した理学的所見による急性心不全患者の分類267)である.この考え方は前述のForrester分類と比較的似ており,縦軸に心拍出量を取る代わりに低潅流所見の有無をとり,横軸に肺毛細管圧を取る代わりにうっ血所見の有無を取るものであり,ほぼ同様の分類と考えられる(図13).身体所見上重要なものを下記に列記する.1)‘Wet’(うっ血所見) 起坐呼吸,頸静脈怒張,ラ音,肝頸静脈逆流,腹水,浮腫,Ⅱ音肺動脈成分の左方向への放散,バルサルバ操作による矩形波反応.2)‘Cold’(低灌流所見) 脈圧狭小,交互脈,症候性低血圧(起立性を除く),四肢冷感,意識障害.プロファイルBとCにおいて死亡または緊急心移植をエンドポイントとしたハザード比が高いと報告されている267).

④クリニカルシナリオ

 最近提唱されてきたさらに簡便な急性心不全患者の病態分類にクリニカルシナリオ(CS)という考え方268)がある.これは基本的には来院時の血圧で病態を分類しようというものである.CS1~5に分類されるがこのうちCS4は急性冠症候群であり,CS5は右心不全なので,一般的な急性左心不全の分類はCS1~3となる.このうち,CS1は収縮期血圧140 mmHg以上で来院するもので一般には著明な肺うっ血を伴うが,末梢の浮腫は少ない.基礎疾患としては虚血や高血圧性が多く,いわゆる「電撃的肺水腫」と呼ばれる超急性の経過をたどるものが多い.治療としては酸素化と血管拡張薬がメインであり,比較的予後はよいと考えられる.Vascular failureとも呼ばれ,血管内volumeのcentral shiftが主たる病態であり,

図12 Forrester分類心係数

(L/min/㎡) Ⅰ群安静  一般療法

  Ⅱ群

2.2Ⅲ群輸液

  Ⅳ群

18

利尿薬硝酸薬心房性利尿ペプチド

カテコラミンホスホジエステラーゼ阻害薬機械的補助

肺毛細管圧(mm Hg)

図13 Nohria-Stevenson分類

なしProfile A

Dry & WarmProfile B

Wet & Warm

ありProfile L

Dry & ColdProfile C

Wet & Cold

なし ありうっ血所見

低潅流所見

Page 31: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

33循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

afterloadを軽減すればある程度のコントロールが可能な病態である.CS2は来院時収縮期血圧が100~140 mmHgの間の患者であり,比較的亜急性に徐々に浮腫や肺うっ血を生じ,全身的に体液貯留が進行した状態である.酸素化や血管拡張薬も有効であるが,多くの場合利尿薬が必要である.この病態の基礎疾患にはほとんどすべての慢性心不全を来たすものが含まれるが,心筋症の慢性期急性増悪はこのパターンを取ることも多い.日常のコンプライアンスの改善なども重要な要素になる.CS3は来院時収縮期血圧が100 mmHg以下の心不全であり,多くの場合低潅流所見を伴う.ショック状態の患者もこの中に含まれ,CS1~3の中ではもっとも予後が悪いと推定される.ForresterⅢ群やDry & Coldであれば輸液も治療のオプションになり得るが,うっ血を伴う場合には(すなわちForresterⅣ群やWet & Cold)強心薬が必要となる.多くの末期重症心不全の増悪期はこの病態であり,強心薬に反応しない場合には機械的補助や心臓移植などその患者の背景に応じてオプションを考慮する必要がある.

2 利尿剤と血管拡張剤(モルヒネ)

①利尿剤

 急性心不全の治療における利尿剤は,早期に前負荷軽減し,体液貯留過多を改善する.高血圧性緊急症や,弁膜症における著明な体液貯留を来たさない肺うっ血の場合においても,症状や酸素化改善に寄与する.また慢性期に際しても浮腫,胸水管理を改善させる.1)ループ利尿薬 肺うっ血や浮腫などの心不全症状を軽減させ,前負荷軽減,左室拡張末期圧を低下,特に静注薬の効果は即効性がある.なおループ利尿薬にサイアザイドを少量加味すると利尿がより増幅されるが,過度の利尿によってカリウム,マグネシウムなどの電解質異常に伴う不整脈やジギタリス中毒,また血液BUNや血清クレアチニン値上昇,さらには脱水,低血圧や脳血栓症の誘因となり得る269)ので副作用に留意することが大切である.急性期を改善できたら早朝時排尿後体重,胸部単純X線や血漿BNP値,さらに心エコーや各種電解質を参照し,経口剤へ切り替えて慢性期も体液管理・維持に努める.◦フロセミド 2009年に改訂されたACC/AHA心不全診療ガイドライン270)においても,症候性左室収縮不全に対し標準的治療として提示されており,通常まず 5~10 mg単回静脈内投与を試み,利尿効果をみて用量を調節する.ただ

し心不全症例では既にフロセミド等の利尿剤内服例,また腎機能障害合併例が少なくなく,治療には通常より高用量を必要とすることがある271).1回静注投与で満足な利尿効果が得られない場合には,むしろ持続静注のほうが有効である場合がある272).◦トラセミド 慢性心不全を対象とした臨床試験でフロセミド群に比べ,ループ利尿薬な利尿効果に加え抗アルドステロン効果を有するトラセミドは心臓死や心不全再入院率などが少なく,長期予後良好との報告があり273),急性心不全から慢性期管理に移行する場合の利尿薬選択の際に有用である274).ただし抗アルドステロン薬の使用時と同様腎機能障害,高カリウム血症時は慎重な使用が望まれる.2)抗アルドステロン薬 心不全の増悪因子として交感神経系やRAA系の亢進など神経体液性因子の関与が明らかになっており,抗アルドステロン薬は心不全の予後改善をもたらすことが期待される.ただし重要な副作用として高カリウム血症,腎機能の悪化が指摘されており,血清カリウムが5.0 mEq/Lを超えている例では使用せず275),276),腎機能障害例や高齢者では減量投与などが望まれる.◦スピロノラクトン 1999年慢性心不全NYHAⅣ(Ⅳを経緯したⅢ)を対象とした大規模臨床試験(RALES試験)で,スピロノラクトンが全死亡率,心不全死亡率,突然死のいずれをも減少させる長期予後改善効果が示された276).本剤がナトリウム貯留や心筋線維化を抑制したことで心不全の増悪を抑止し,心筋でのノルエピネフリンの取り込みの抑制,また血中カリウムの保持が突然死の減少をもたらしたことで総死亡の抑制効果を示したものと考えられる277).以後,現在まで心不全の慢性期標準治療薬として使用されている(レベル2,グレードA).◦エプレレノン スピロノラクトンよりも選択的な抗アルドステロン薬としてのエプレレノンは,急性心筋梗塞後に左心機能不全および心不全を合併した患者で死亡および心血管イベントの発生リスクが抑制されることが報告され(EPHESUS試験)278),さらに2010年には軽症心不全患者(NYHAⅡ)に用いることのベネフィットを明らかにした大規模臨床試験が発表された(EMPHASIS-HF試験)279)(レベル2,グレードB).今後エプレレノンの急性心不全への導入が期待される.3)バゾプレシン受容体拮抗薬(AVP�拮抗薬) アルギニンバゾプレシン(AVP)分泌亢進は腎臓集合管における水の再吸収を亢進し,口渇感を亢進するため

Page 32: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

34 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

著明な低ナトリウム血症の原因となる.低ナトリウム血症は予後規定因子の1つで,これを抑制するバソプレッシン拮抗薬は難治性心不全治療薬として期待される.バソプレッシンV1受容体は血管平滑筋,血小板などに存在し,AVPはこれを介し血管収縮,心肥大を引き起こす.バソプレッシンV2受容体は腎臓集合管に存在し,水の再吸収をもたらす.V2拮抗薬は,腎集合尿細管細胞のV2受容体に対するAVP結合を特異的に阻害し,AVPの水透過性亢進作用に拮抗する.溶質クリアランスの増加により利尿を引き起こすループ利尿薬とは作用基序が異なり,純粋な自由水クリアランスの増加による.V1/V2

拮抗薬(コニバプタンなど,未認可)やV2拮抗薬(トルバプタンなど,同)の浮腫を伴う心不全症例を対象とした臨床試験(EVEREST)が行われたが280),281),体重改善や浮腫以外に明らかな予後改善のエビデンスは未だ得られておらず,今後の有用性に対するさらなる検討が待たれる(レベル2,グレードC1).

②硝酸薬

 硝酸薬はNOを介して,血管平滑筋細胞内のグアニル酸シクラーゼを刺激し,低用量では静脈系容量血管を,高用量では動脈系抵抗血管も拡張する.これにより前負荷軽減(肺毛細管圧低下)さらに後負荷軽減(末梢血管抵抗低下に伴う心拍出量の軽度上昇)が得られる.また,冠動脈拡張作用があることから虚血性心疾患を基礎疾患とする,または虚血性心疾患を合併した急性心不全に汎用される(レベル3,グレードB). ニトログリセリンまたは硝酸イソソルビドのスプレーは初期治療法として迅速・簡便に使用でき,肺うっ血,特に著明な高血圧を伴う急性肺水腫の軽減(血圧低下がない場合)に有効である.さらなる前負荷軽減には硝酸薬の静脈内投与,また利尿剤との併用も有効である.

ただし副作用として血圧低下と肺内シャント増加に由来する動脈血酸素飽和度の低下が挙げられる.このため使用時には循環動態のモニタリングが重要である.特に過剰な血圧低下をもたらすため,シルデナフィルなどPDE-5阻害剤との併用は禁忌である270).硝酸イソソルビドは高用量でニトログリセリン同様の効果が得られるが,半減期が長く(4時間,ニトログリセリンは約5分)低血圧発症時には注意が必要である. 循環器救急の場で重症肺水腫症例を対象に実施された高用量硝酸薬静注反復投与+低用量フロセミド投与の併用と高用量フロセミド投与+低用量硝酸薬持続静注の併用の比較試験では,前者が,人工呼吸管理導入の頻度が低く AMI 発症の頻度も低いことが報告されている282).

また,比較的高用量の静注投与に伴って早期(24時間)から耐性が発現といわれており,予防としては間歇投与や投与量を減じる,またSH基を補充する(グルタチオンなど)ことなどが挙げられる.

③カルペリチド

 ANP,BNPはナトリウム利尿に加え動静脈拡張,さらにACE阻害薬やARB,または抗アルドステロン薬と似てRAA系抑制し心筋肥大抑制,心筋線維化抑制作用,また交感神経亢進抑制作用など283),多彩な薬理作用がある.拡張型心筋症における心不全の増悪因子としてRAA系や交感神経系の亢進など神経体液性因子の関与が明らかになっており,ナトリウム利尿ペプチドは急性心不全における臓器保護の概念をもたらす薬剤として注目される. カルペリチド(遺伝子組み換えhANP)は,1993年に我が国で開発されたナトリウム利尿ペプチドファミリーの1つで,1995年より我が国で急性心不全治療薬として臨床使用されている284).カルペリチドは前・後両負荷軽減に有効であり,血管拡張作用と利尿作用の両者を併せ持つため,特に肺うっ血を伴う血行動態に対して有効である.難治性心不全に対しては強心薬と併用される場合もある(レベル3,グレードB).肺毛細管圧を低下し心拍出量を増加するが他の血管拡張薬や強心薬と異なり心拍数は増加しない285),286)のは,交感神経抑制作用と考えられ心不全での有用性は高い.副作用として起こり得る投与時血圧低下のため,特に収縮期血圧が120 mmHg

以下の場合は低用量(0.0125~0.025μg/kg/min)より持続静脈内投与し,循環動態をモニターしながら投与量を増減することが望ましい.心筋症や高血圧性心疾患で有効性が高いが重篤な低血圧,心原性ショック,急性右室梗塞症例,脱水症では禁忌である. カルペリチドと類似作用を有するBNP(Nesiritide,我が国未承認)の効果と安全性をニトログリセリンと比較した米国の臨床試験(VMAC)成績が2002 年発表され,ネシリチドは速やかに,かつより肺毛細管圧を低下させることが示された287).さらにドブタミン投与に比較して短期予後は良好で催不整脈性が少ないとする報告もなされるが288),289),最近のASCEND-HFなどの大規模臨床研究ではその非劣性が証明される程度である.腎保護については動物実験でのBNP過剰発現で糸球体の肥大などの改善に寄与する290).一方,ヒト非代償性慢性心不全を対象とした試験でネシリチド投与はGFRおよび尿量を増加させず291),むしろ腎機能悪化に到ったとの報告も示されており292),293),今後カルペリチドはネシ

Page 33: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

35循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

リチドとの違いも踏まえ,適切な基礎疾患および投与量や投与期間の選択,またどの程度心腎保護作用を有するのかといったエビデンスを構築する必要がある.

④ニトロプルシドとニカルジピン

 ニトロプルシドは動脈静脈拡張作用から肺動脈楔入圧の低下,心拍出量の増加をもたらし,他の硝酸薬と比較し動脈系抵抗血管拡張作用が大きい294)-296).一酸化窒素ラジカルを介して血管平滑筋細胞内cGMPレベルを上昇させ,血管平滑筋を弛緩させ血圧低下をもたらす297).また心筋酸素消費量を低下させる作用を持つ298).2009年ACC/AHAガイドライン(クラスⅡa,レベルC)270)

において,症状を伴う低血圧がない場合には速やかに心不全症状を緩和するため利尿薬に加え,血管拡張薬の静注が提示され,2008年ESCガイドライン(クラスⅠ,レベルB)299)においても,収縮期血圧>90mmHgの急性心不全の初期治療として推奨されている.ニトロプルシドは30~40秒で効果発現がみられ,1~4分で最大効果となり,作用時間も最大で10分と短い.即効性,短時間作用性と強力な降圧効果が特徴である.初期投与量は5~10μg/分,5~15分ごとに5~400μg/分まで増量可能であり,投与期間中の持続的血圧のモニタリングおよび副作用回避のため,24時間から48時間までの使用が望ましい. 硝酸薬共通の副作用として血圧低下,反射性頻脈,肺内シャント増加があり,ニトロプルシドは血中で還元物質により代謝されシアンを遊離するため,特有の副作用としてシアン中毒が挙げられる300),301).シアン中毒は時に致死的であり,乳酸アシドーシス,意識障害を生じ,特に48時間以上の投与,腎機能障害が併存する場合には注意が必要である.また虚血が存在すると,冠盗血現象により虚血部位の拡大を起こす可能性があるため使用は避けるべきであり302),ホスホジエステラーゼⅤ阻害作用の薬剤投与中では禁忌である.適応としては,特に高血圧症,急性大動脈弁逆流症,急性僧帽弁閉鎖不全症による急性心不全ではニトロプルシドによる後負荷軽減作用が有効であり303),最近では低心拍出性の急性心不全に対しても長期予後を改善したと報告されている304)

(レベル3,グレードB). ニカルジピンは,血管平滑筋細胞へのCaイオンの取り込みを抑制することにより血管拡張作用を示し,心筋より血管平滑筋への選択性が高いため心筋抑制作用が極めて少ないことを特徴としている305).心不全症状の改善,右房圧・肺動脈楔入圧の低下,動脈拡張作用により後負荷を軽減し心拍出量増加の作用を持つ306),307)(レベ

ル3,グレードB).心不全治療としての至適投与量は1.0μg/kg/分であり,病態に応じて0.5~2.0μg/kg/分の範囲で調節と報告されているが307),308),半減期が長いため急速投与は行いにくい.副作用として血圧低下,肺内シャント増加に由来する動脈血酸素飽和度の低下が挙げられる.

⑤�ニコランジル

 ニコランジルは1984年より狭心症治療薬(経口薬)として,1993年より不安定狭心症治療薬(注射薬)として臨床使用されている.また2007年10月には注射薬において急性心不全に対する追加効能を取得した.本剤は構造中に硝酸基を有し,硝酸薬様作用とATP感受性K

チャネル開口作用を併せ持つ.NOを介しcGMP産生亢進による静脈拡張作用,冠動脈拡張作用,KATPチャネル開口による血管平滑筋弛緩作用から動脈拡張作用,さらに冠抵抗血管等の細動脈拡張効果による血流の増加,心内膜下の微小循環の改善309),310),薬理学的なプレコンディショニングによる心筋保護効果311)をもたらす.直接的な心臓に対する変力・変時・変伝導作用はないが,動静脈をバランスよく拡張させることにより前負荷軽減効果および後負荷軽減効果を発現する. 急性心不全におけるニコランジルの臨床研究での有用性の検討はまだ殆どなく,心筋症のみを対象とした臨床試験の報告はない.急性心不全患者に対し,0.2 mg/kg/5分かけて静脈内投与後0.2mg/kg/Hr持続投与によるニコランジルの効果をプラセボと比較した多施設無作為プラセボ対照二重盲検比較試験の結果では,心拍数,収縮期血圧は変えることなく,肺動脈楔入圧・全末梢血管抵抗・肺血管抵抗の有意な低下と心拍出量の有意な上昇,心不全症状の改善,Forrester分類の subsetⅡ,ⅣからⅠへの移行を認めた312).また対象例は少ないものの,実臨床においてもこの効果は容量反応性にみられ,血圧に関しては低値の場合には,それほど低下せず,血圧が高い場合には十分な降圧作用を示すことが報告されている313)-316).推奨用量としては,治験にて0.2 mg/kg/5分かけて静脈内投与後0.2mg/kg/Hr持続投与と示されているが,心疾患併用薬剤は中止した上での推奨投与量であり,実臨床において併用薬を継続した場合の持続継続量は低量での0.05~0.2 mg/kg/Hrでの使用が好ましいと考えられる316),317). 硝酸薬との相違点は,ニコランジルでは血圧低下作用が弱く,心拍数への影響や薬剤耐性が認められない318)-320).したがって過度の血圧低下をもたらす危険性が少ないため初期負荷投与および長期持続投与も可能

Page 34: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

36 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

である.現在のところニコランジルは急性心不全に有効と考えられ(レベル3,グレードB),虚血性心不全,心内膜下虚血を誘発するようなwarm and wet症例の急性心不全症例には有効であると推測される.これに対し,心原性ショック,急性右室梗塞症例,脱水症,ホスホジエステラーゼⅤ阻害作用の薬剤投与中では禁忌であり,低血圧症例では慎重に投与する. ニコランジルでは副作用として血圧低下と頭痛が挙げられる.しかし,副作用発現頻度と累積投与量との関連性は認められず,薬物血漿中濃度は個体間差が大きいことが示されている321),322).

⑥モルヒネ

 モルヒネの心不全での使用は,肺水腫による呼吸困難が強い場合,不安が強い場合,安静が保てない場合に用いる.中枢神経系では,呼吸中枢における呼吸困難の感受性低下と抗不安作用を示し,呼吸困難を緩和させる.この抗不安作用により,交感神経系の緊張を緩和し,カテコラミン産生を抑制することで後負荷を軽減する.心臓においては心筋抑制作用を示さず,比較的安全に使用できる.モルヒネはヒスタミン遊離作用を持ち,ヒスタミンがH1受容体に結合するとNOが放出される.これにより,末梢の動脈・静脈系の血管拡張を来たし,前負荷と後負荷が軽減するといわれているが,Swan-Ganzカテーテルや超音波などの検査でこれを直接立証したデータはない. 予後に関する多施設後ろ向き研究323)では,モルヒネ投与群では有意に人工呼吸の導入と入院・死亡率が増加し,モルヒネは独立した予後規定因子であることがいわれている(レベル4b,グレードC2).心不全での使用についてはエビデンスがなく,ESC 2008年のガイドラインでは注意して使用するよう記載されており324),またACC/AHA 2009年のガイドラインには記載されていない270). 使用方法は,5~10 mg/A を点滴するか,10 倍に希釈して2~5 mgをゆっくり静脈内に投与する.これを,必要に応じて15 分ごとに投与を繰り返す. 注意点としては,呼吸機能の抑制のために,アシドーシスに陥っている患者ではpHの急激な低下をもたらすことがある.また,高炭酸ガス血症が存在し,CO2感受性の低下した慢性閉塞性肺疾患の患者では,呼吸抑制によりCO2ナルコーシスを発生させるので,十分に呼吸状態をモニターする必要がある.モルヒネはヒスタミンを遊離させるため,喘息患者での使用は控える.血管拡張による過度の血圧低下にも注意する.

 モルヒネ使用により30~40%の患者で,吐気・嘔吐が出現する.これにより,交感神経系が緊張しカテコラミン産生が増加する可能性があり,制吐剤の使用も考慮する.

⑦前負荷と後負荷の管理

 心ポンプ機能は,心拍数,前負荷,後負荷および心筋の収縮性より規定される.これらの因子を客観的に把握することが,心不全の病態を把握し,治療を進めていくことにおいて重要である. Frank-Staring曲線(図14)で表されるように,心拍出量は左室拡張末期容量に依存する.左室拡張末期容量または左室拡張末期圧は前負荷の指標となり,静脈灌流(循環血液量,心房収縮など)によって規定される.左室拡張末期圧は,Swan-Ganzカテーテルで得られた肺動脈楔入圧から推測することが可能であり,心エコーでも三尖弁逆流血流速,肺動脈弁逆流血流速,左室流入血流速波,肺静脈血流速波形などから推測できる.心収縮力が低下している場合,前負荷増大に対する心拍出量の増加は少なく,また前負荷がある一定レベルを超えると,心筋の収縮性が低下し心拍出量は減少する. 後負荷は,左室壁応力,左室収縮期圧,心室容積,動脈の弾性で規定され,臨床的には体血圧,末梢血管抵抗で表現される.後負荷が増大すると,左室の収縮性が低下し心拍出量が減少する(図15)325). 利尿剤の投与は,前負荷の軽減に即効性があり効果的である.カルペリチドは利尿作用と血管拡張作用を持ち,前負荷・後負荷をともに軽減する.硝酸薬は,血管拡張作用により前負荷・後負荷をともに軽減し,肺うっ血に効果を示す.ニカルジピンは高血圧を伴う心不全に効果があり,血管拡張作用により後負荷を軽減する.PDE

Ⅲ阻害薬は,強心作用と血管拡張作用を併せ持ち,前負荷と後負荷を軽減させ,心不全を改善させる. これらに加え,前負荷・後負荷の管理には,症状や身体所見の評価も合わせて,心不全の治療方針を立てることが重要である325).肺うっ血(+)・末梢低灌流(-)の症例では前負荷の軽減が治療の主体であり,利尿剤と硝酸剤が有効である.肺うっ血(-)・組織低灌流(+)の症例では,輸液にて前負荷を増加させ心拍出量を増やし,血管拡張薬の併用により後負荷を軽減させる.肺うっ血(+)・組織低灌流(+)の症例では,カテコラミン製剤を使用し,心収縮力を増加させ末梢循環の改善を図るとともに,適宜,利尿薬や血管拡張薬を使用する.また,PDEⅢ阻害薬は,カテコラミンと異なる強心作用を持ち,ドブタミンの反応が不十分な症例やβ遮断薬

Page 35: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

37循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

内服例に有効である.治療抵抗性の場合は,大動脈内バルーンパンピング,経皮的人工心肺,左心補助循環,人工心臓などを考慮する.

3 静注強心薬と昇圧薬 静注強心薬は,収縮力低下により血圧低下や末梢循環不全,低心拍出症候群を来たし,かつ前負荷(Cardiac

filling pressure)が増した状態にある急性心不全に対して有効である.拡張型心筋症では高度な収縮力低下が見られ,慢性心不全の急性増悪時には静注強心薬の使用が血行動態の改善に不可欠なことが多い.2009年に改訂されたAHAのガイドラインでは,頸静脈怒張や肺動脈楔入圧上昇などの所見を伴う低潅流,低血圧に対しては,静注強心薬の使用が推奨されている270).臨床的には,Forrester分類のProfileⅢ・Ⅳ,もしくはNohria分類のProfile L(dry-cold)・C(wet-cold)が投与の主たる対象となる.静注強心薬の拡張型心筋症における急性心不全への有用性は直接示されてはいないが,一般に左室拡大および左室駆出率低下のある心不全患者の末梢循環不全や臓器低潅流に対しては静注強心薬の使用が推奨されている326).しかしながら静注強心薬の投与はなるべく短期間とすべきであると考えられており,持続的な強心薬の投与には注意が必要である.ADHEREレジストリの後ろ向き解析では,急性心不全の治療としてニトログリセリンもしくはBNPを用いた群に比べ,ドブタミンもしくはミルリノンを用いた群では入院中の死亡率が有意に高いと報告されている327).急性心不全に対する静注強心薬の投与にあたっては血圧や心拍数,心エコー所見などから血行動態をモニタリングし,適切な漸減・中

止を心がけるのが望ましい. 静注強心薬,昇圧薬の作用は細胞内cAMP濃度の上昇によって発揮され,その主な薬理学的機序は,cAMPの産生増加と分解抑制の2つである.ドブタミン,ドパミン,ノルエピネフリン,エピネフリンなどは,主としてβ1受容体を介しcAMPの産生を増すことで強心作用を発揮する.一方でPDEⅢ阻害薬はcAMPの分解を抑制し強心作用と血管拡張作用を示す.本稿ではこれらの薬剤に加え,血管収縮作用ならびに抗利尿作用から前負荷・後負荷を増加させるバソプレッシンについて記述する.

①ドブタミン

 ドブタミンはカテコラミン受容体に対するアゴニストで,β1,β2,α1受容体に作用するが,主たる効果はβ1刺激による.心臓での作用は主にβ1刺激によるもので,細胞内cAMP産生を増加させ,PKAのリン酸化を介した心収縮期の細胞内Ca濃度の上昇により心収縮力を増大させる.また末梢血管においてはβ2刺激により末梢血管を拡張させ,体血管・肺血管抵抗の減少を介し血行動態の改善に寄与する328),329).したがって,心拍出量が減少し,かつ前負荷の低下がない急性心不全がよい適応となる(グレードB,レベル3).ドブタミンは,ドパミンやノルエピネフリンに比べて心筋酸素消費量の増加が少なく心拍数の増加も緩やかで,不整脈や心筋虚血などを招きにくいと考えられている. しかし一方でドブタミン単独で血圧が維持できない場合は,ドパミンやノルエピネフリンの併用が必要となることが多い(グレードB,レベル4b).また既にβ遮断薬が投与されている場合や,長期カテコラミン使用によ

心拍出量(1回拍出量)

左室拡張末期圧(拡張末期容量)

正常

心不全代償期

心不全非代償期

心拍出量(1回拍出量)

後負荷

正常

心不全代償期

心不全非代償期

図14 Frank-Starlingの心機能曲線 図15 後負荷と心拍出量の関係

Page 36: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

38 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

りβ受容体のダウンレギュレーションがある場合では投与量が多くなる傾向があり,機序の異なるPDEⅢ阻害薬の併用を考慮する330).ドブタミンの効果は用量依存的で,投与は2.5~3μg/kg/minから開始し,血圧のモニタリング下に漸増する.急性期の血行動態改善には有効なことが多いが,持続投与には注意が必要である.FIRST試験のサブ解析ではドブタミン持続投与群での心事故発生率増加,6か月死亡率の上昇がしめされており331),急性心不全に対するルーチンでの使用や漫然とした長期投与は避けるべきと考えられる.血行動態の評価から離脱可能と判断されれば漸減の上で投与中止するようにする.

②ドパミン

 ドパミンはノルエピネフリンの前駆物質であり,同時に心臓交感神経終末からのノルエピネフリン分泌を亢進することで強心作用を示す.ドパミンは用量に応じて異なる薬理学的特性を示す.2μg/kg/min以下の低用量では,ドパミン受容体(D1受容体)に作用して腎動脈や腸間膜動脈の拡張を招き,特に腎血流増加作用を持つため臓器低潅流時に糸球体濾過量を確保する目的で使われる.3~10μg/kg/minの中用量からはβ1刺激作用が発現し,心拍出量と心拍数を増加させる.また用量が上がるにつれてα1受容体刺激作用も現れ,末梢の動静脈を収縮させ血圧上昇を来たす(グレードB,レベル4b).拡張型心筋症の心不全急性期のみを対象とした研究はないが,左室駆出率が24±2%の高度な収縮能低下を伴うNYHAⅢ,Ⅳ群の心不全患者13人(うち拡張型心筋症は8人)を対象にした研究では,ドパミンは少なくとも10μg/kg/minまでは腎動脈拡張作用および心拍出量増加作用を示した332).ドパミンはドブタミンと比べて心筋酸素消費量の増加と頻拍を招きやすく,不整脈や心筋虚血を来たしやすいため注意を要する.投与時には血圧モニタリング下に漸増,漸減する.

③PDEⅢ阻害薬

 PDE阻害薬はホスホジエステラーゼを選択的に阻害する.心筋にはホスホジエステラーゼは少なくとも4種類存在し,中でもホスホジエステラーゼⅢは選択的にcAMPの分解を抑制する.このため,PDEⅢ阻害薬は細胞内cAMP濃度を選択的に上昇させ,心臓では収縮力の増加を,末梢では血管拡張をもたらす.その特徴からinodilatorとも呼ばれる.末梢血管抵抗を減らしつつ心収縮力を増すため,一回拍出量の増加が見込まれ,これに比して心筋酸素消費量が上がりにくい利点があ

る333),334).またカテコラミンと比較すると肺動脈楔入圧の低下が得られやすいとされる335).血行動態の改善効果は概ね用量依存的と考えられており,硝酸薬よりも耐性が生じにくいことも特徴である.他の静注強心薬同様,心収縮能低下から心拍出量が減少し,かつ前負荷の増している急性心不全が適応となる(グレードB,レベル4b)我が国では現在ミルリノン,オルプリノンが心不全治療に対し承認されている.投与に際しては50μg/kg

を10分以上かけて静注したのち,血圧や不整脈の有無に注意しながら維持量として0.25~0.75μg/kg/minを投与する. 拡張型心筋症では慢性期からのβ遮断薬投与が推奨されており,心不全の急性増悪期においてもβ受容体がブロックされていることが多い.β遮断薬の経口投与は続行することが原則であることから,β受容体を介さずにcAMPを増加させるPDEⅢ阻害薬は,ドブタミンに比べて速やかな血行動態の改善に有効なことがある336). しかしながらPDEⅢ阻害薬による血行動態改善は,かならずしも予後を改善するとは限らないとした報告もある.左室駆出率の平均が23%の949人の慢性心不全急性増悪患者を対象にしたOPTIME-CHF試験では,急性期に48~72時間ミルリノンもしくはプラセボが投与されたが,入院中もしくは入院60日後の予後に有意差は見られず,逆に低血圧や心房性不整脈の発症が有意に多かった337).その後のサブ解析においては,冠動脈疾患を有する患者群においてプライマリーエンドポイント(入院期間)および複合エンドポイント(再入院および死亡)のおいてミルリノン投与による有意な悪化を認めたが,冠動脈疾患のない患者群でも有意な改善を認めなかった338).したがって急性心不全に対して漫然と投与することは避けるべきであり,適応の選択と適切な中止時期の判断を心がけるべきである.

④ノルアドレナリンとアドレナリン

 ノルアドレナリンは交感神経終末から分泌される内因性カテコラミンで,β1およびα刺激作用と,弱いβ2刺激作用を持つ.その作用は主に末梢におけるα刺激作用(血管収縮)と心臓におけるβ1刺激作用(心収縮力増強)であるが,臨床的には強い末梢血管収縮作用を期待して用いる.通常,心不全急性期には末梢血管抵抗は上昇しているため,ノルアドレナリンを第一選択として用いることはない.ドブタミンやドパミン,PDEⅢ阻害薬など,その他の静注強心薬を使用してもなお血圧維持が困難な場合や,敗血症を伴う心不全で末梢血管抵抗の維持が不可欠な場合にのみ用いられる.ノルアドレナ

Page 37: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

39循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

リン使用時には,収縮力の低下した心臓に対してさらに高い末梢血管抵抗を負荷することとなり,腎血流も減少するため,使用開始後に血行動態が改善されない場合には補助循環装置への移行も考慮すべきである. アドレナリンも内因性カテコラミンであるが,β1刺激作用とβ2刺激作用を同程度にもち,α1刺激作用も有す.0.01μg/kg/min以下の低用量時は血管拡張作用を示すが,0.2μg/kg/min以上の投与では血管収縮作用,心収縮力増加,心拍数増加を来たす.ノルアドレナリン同様,急性心不全治療の第一選択薬にはなり得ず,強い陽性変力作用,陽性変時作用を急速に得なければならない心肺蘇生時などに用いられる.

⑤�バゾプレッシン

 バゾプレッシンは視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される内因性ホルモンである.血行動態への作用としては,血管のV1a受容体を介した血管収縮作用と,腎臓のV2受容体を介した水再吸収増加作用があり,後負荷,前負荷をともに増加させる.我が国では合成バゾプレシッンが,下垂体性尿崩症,腸内ガスの除去,食道静脈瘤出血の緊急処置に対して適応を認められている. 近年ではその強い血管拡張作用,抗利尿作用から,特に敗血症などの血管拡張性の血圧低下に対し有用との報告が多い.心血管手術後もしくは全身性炎症症候群(Systemic Inflammatory Response Syndrome,SIRS)により0.5 μg/kg/min以上のノルエピネフリンを要する血管拡張性ショックを呈した48症例を対象としたランダム化研究では,アルギニンバソプレッシンの併用により有意に血行動態の改善が得られると報告されている339).また血管拡張性ショックの患者50例を対象にしたランダム化研究では,0.067 IU/minの高容量群のほうが,0.0333 IU/minの低用量群に比して血行動態を有意に改善し,副作用の頻度は変わらなかったと報告されている340).バソプレッシンのアナログであるTerlipressinを用いた小規模な研究報告では,敗血症性ショックにおいてTerilipressinは血行動態を改善しカテコラミンを使用せずに済んだ症例が多かったとされた.現在のところ,バゾプレッシンの効果は主に血管拡張性ショックにおいて検討されており,拡張型心筋症のような重度の収縮不全による心不全を対象にした研究はない.ドパミンやノルアドレナリンの使用にもかかわらず血圧が保持できない心不全症例において,特に末梢血管抵抗が維持できずに血行動態が悪化している際には有効である可能性があるが,その使用や有用性に関するさらなる検討が必要である341).

4 呼吸管理とその他

①酸素投与

 急性非代償性心不全の症候のうち,急性肺水腫は最も典型的かつ重症な病態の1つである.その発症には,肺毛細管圧,血漿膠質浸透圧,肺間質静水圧,肺間質膠質浸透圧,肺毛細管血管透過性,肺胞内圧,肺胞表面張力,リンパドレナージ等の因子が関連する. 正常状態では,肺間質静水圧は陰圧なので,血漿膠質浸透圧と肺胞内圧,肺胞表面活性物質のみが血漿成分を血管内に保持するように作用しているが,急性非代償性心不全では肺毛細管圧が上昇し,高度の肺うっ血,あるいは肺水腫を来たす.血漿蛋白濃度が正常な場合には肺毛細管圧が24 mmHg以上になると肺胞への血漿成分漏出が出現し,以後,圧上昇とともに直線的に肺水腫は増悪する.しかし,血漿蛋白濃度が正常の半分まで低下すると,肺毛細管圧11 mmHgのレベルから肺水腫が発症する342).肺水腫では,直面する呼吸不全と低酸素血症,末梢組織への酸素運搬を改善することが急務となる. 酸素療法としては,まず鼻カニューレ,フェースマスクなどで2~6 L/minの酸素吸入を開始する.PaO2 80 mmHg(SpO2 95%)未満,またはPaCO2 50 mmHg以上の場合,あるいは頻呼吸,努力性呼吸,起座呼吸などの臨床症状の改善が見られない,もしくは悪化する場合には,速やかにさらなる治療に移行する343).

②NIPPV(noninvasive�positive�pressure�ventilation)と気管内挿管

 酸素投与によっても前述の動脈血液ガス検査結果や臨床症状が出現する場合には,速やかにマスクや加圧バッグを用いたNIPPVを開始する.フェースマスクを密着し,リザーバーバッグと水バルブにより5~10 cmH2O

の呼気終末陽圧呼吸(positive end-expiratory pressure;

PEEP)を加えたCPAPを施行することにより動脈血液ガスや血行動態の改善(前負荷軽減による肺毛細管圧低下,心拍出量増加)が得られ,自覚症状改善に有効である.また,密着型の鼻マスクやフェースマスクを用いたCPAPやbilevel PAP(BiPAP:吸気・呼気両相に別々の陽圧を加える)などのように,非挿管で実施するNIPPVも導入され活用されており,急性心原性肺水腫に対して最初に実施すべき大事な治療法である344)-346). NIPPVおよび肺うっ血に対する処置にも治療抵抗性で,呼吸状態や動脈血液ガスの改善が認められない場合,あるいは意識障害,咳反射や喀痰排出困難な症例に対し

Page 38: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

40 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

ては,気管内挿管による人工呼吸管理の適応となる.この方法は,肺内ガス交換の改善,呼吸筋労作の軽減による自覚症状軽減,胃液逆流による誤嚥防止などに有効である.しかし,気道損傷,出血,肺過膨張による肺損傷など合併症のリスクを伴うこと,気管内挿管や人工呼吸管理において麻酔薬や筋弛緩薬など循環器系に不利な影響を与える薬剤の使用が必要になること,挿管中の栄養管理,抜管までの離脱過程に時間を要することなどの問題があることを念頭におくべきである. 通常の気管内挿管下での呼吸管理は間歇陽圧換気(intermittent positive pressure breathing; IPPB)であり,基本的な換気条件としては,1回換気量10~15 mL/kg,呼吸数10~20回 /min(PaCO2 30~40 mmHgを目標),吸気:呼気比1~1.5:2とし,動脈血液ガス分析結果を見ながら調節する.挿管直後はFiO2 1.0から始め,PaO2

80 mmHg以上に維持されるようFiO2を設定する.酸素障害の予防のためにFiO2は0.5 以下にすることが望ましく,FiO2 0.5でPaO2 60 mmHg以下の場合にはPEEPの適応と判断する.IPPVでは吸気時に陽圧をかけ,呼気時には平圧に戻るのに対して,PEEPは呼気終末を陽圧に保つことにより,呼気吸気の両相にわたって気道内圧を陽圧に保ち,血液の酸素化をより促進する.自発呼吸下に圧補助+PEEPを用いるか,機械的人工呼吸+PEEPの 持 続 陽 圧 換 気(continuous positive pressure

ventilation; CPPV)を用いる.

③電解質とアシドーシスの補正

 動脈血液ガス分析は,呼吸不全や電解質異常,アシドーシスの把握に有用である.一般的な急性心不全では動脈血酸素分圧(PaO2)は低下し,同時に動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は低下しているが,高度の肺うっ血ではPaCO2が上昇してくる.これによる呼吸性アシドーシスを呈する場合もあるが,多くの症例では末梢循環の悪化による代謝性アシドーシスとなり,乳酸アシドーシスを呈する. 乳酸はブドウ糖代謝およびアミノ酸代謝の正常な副産物であるが,酸素欠乏中にATPを産生するために,相対的虚血組織で乳酸が過剰に産生されたときに生じる.過剰産生は,組織灌流が低下している間に生じ,灌流の不十分な肝臓での乳酸代謝低下によって増悪する. 炭酸水素ナトリウムを用いたアシドーシス治療は代謝性アシドーシスが重炭酸イオンの喪失である場合においてのみ明確に適応となる.循環不全の治療に伴い,乳酸は代謝されて重炭酸イオンに戻り,過剰な外因性重炭酸イオンは逆に代謝性アルカローシスを引き起こし得る.

また,重炭酸イオンは細胞膜を通過して拡散しないので細胞内アシドーシスは修正されず,追加された重炭酸イオンの一部がCO2に変換されて細胞内に入り,加水分解されてH+およびHCO3

-になるので,逆説的に細胞内アシドーシスは増悪する可能性がある347)-349). 重炭酸イオンの経静脈的投与が推奨されるのは重度の代謝性アシドーシス(pHが7.20未満)の場合のみである.重炭酸イオンの投与量は以下の式によって求められる.必要とされるNaHCO3(mEq)=(目標[HCO3

-]-観察された[HCO3

-])×0.4×体重(kg)血清pHおよびHCO3

-濃度を投与の30分~1時間後に測定し,血管外HCO3

-と平衡させる.

2 ショック・心停止

1 救急蘇生 拡張型心筋症の急性増悪では,心原性ショック,ときに,心肺停止に陥り,的確な救急処置が要求される.心原性ショックの時は,病態に応じ,日本循環器学会の循環器病の診断と治療に関するガイドライン,急性心不全治療ガイドラインに基づいた治療を行う343).心肺停止時には,「AHA心肺蘇生と救急心血管疾患治療のためのガイドライン2005」350)に基づいた心肺蘇生を行う. 呼吸管理,薬物治療で改善の見込みのない症例では,大動脈内バルーンパンピング(Intra-aortic Balloon

Pumping; IABP)351),経皮的心肺補助装置(Percutaneous

Cardiopulmonary Support; PCPS)352), 補 助 人 工 心 臓(Ventricular Assist System; VAS)353)の機械的補助循環治療の導入を考慮する.循環動態が破綻した状態での機械的補助循環の導入は予後不良であり,導入のタイミングを逃さないよう注意する必要がある.日本循環器学会の循環器病の診断と治療に関するガイドライン,「循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン」にも詳述されている354).

2 IABPとPCPS

①IABP(Intra-aortic�Balloon�Pumping)351)

 IABPは簡便な機械的循環補助装置であり,内科的治療に抵抗する急性心不全,心原性ショックでまず試みられるべきものである.IABPの効果はカウンターパルセーションの原理に基づき,大動脈内に挿入されたバルーンを拡張期に膨張させ,収縮期に収縮させ,圧補助としての補助循環作用を発揮する.心収縮期にはバルーンの

Page 39: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

41循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

収縮による吸引効果を介した駆出量増加,および後負荷の減少による心筋酸素消費量減少(systolic unloading)を,心拡張期には拡張期圧の上昇によって冠動脈血流を増加させる(diastolic augmentation).圧補助手段であり,補助効果は自己心機能に依存しており,限界がある.効果が不十分であれば,PCPSの導入,VASへの移行を検討する. 中程度以上の大動脈弁閉鎖不全を合併する症例,大動脈解離,大動脈瘤を有する症例では禁忌である.バルーンの挿入法は外科的挿入法と経皮的挿入法があり,最近は主として経皮的挿入法が用いられる.合併症として,特にバルーン挿入側の下肢の虚血に注意する.その他,動脈損傷,神経障害,バルーンの損傷がある.離脱は,心機能の回復を確認後,バルーンの補助回数を下げてゆき,循環動態が安定していることを確認後に抜去する.バルーンの抜去は通常,圧迫止血で可能であるが,VAS

埋込後,心臓移植施行後は外科的に血管を露出し,抜去後止血する.

②PCPS(Percutaneous�Cardiopulmonary�Support)352)

 PCPSは簡易人工心肺システムとして開発された装置で,動静脈の経皮的カニュレーラと遠心ポンプ,および,膜型人工肺からなり,心臓の働きを肩代わりするポンプとしてだけでなく呼吸補助効果も兼ね備えている.IABPを用いても循環補助が不十分な症例や,心停止あるいは心原性ショック症例に対する緊急心肺蘇生に適用され,最長7日から10日間の短期間の機械的補助循環を目的に使用する.大腿静脈より脱血,酸素化血液を大腿動脈に返血することにより右室左室両心の補助を行うもので,迅速にかつ比較的簡便に導入可能で,ヘパリンコーティングシステムの普及により,出血傾向のコントロールも容易になった.抗凝固薬療法のために,ヘパリンを用いて活性凝固時間(accelerated coagulation time;

ACT)を250~300秒に維持するが,ヘパリンコーティング回路を用いる場合には,ACTを150~200秒に維持する. 動脈硬化性病変が強い症例,小体格で大腿動脈が細くカニュレーションができない症例,また両側の大腿静脈が閉塞している症例には適応が困難である.このような症例では開胸手術により,直接右心房と上行大動脈にカニュレーションする. 中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症を有する症例では,PCPSによる流量補助により左室負荷が増大し,左心機能が悪化する.左室収縮機能が極度に悪化した症例にお

いては,PCPS補助により上昇した後負荷のために,左室から,左房圧が上昇し,肺うっ血が急激に進行する.このような場合は,左室を直接減圧するために,時期を逸せずに左心補助人工心臓(LVAS)を導入する.大動脈弁閉鎖不全症を合併している場合は,大動脈弁置換術を同時に施行する.一時的な補助により状態の改善が期待できない場合は,LVAS装着までのつなぎとして用いられる. 合併症として,下肢の虚血が問題で,その予防のためには,送血カニューラの遠位側に別個にシース等を挿入し,送血管の側枝からの下肢の灌流を行うことが有効である.他に,動静脈の損傷,出血,感染症が問題となる.離脱は,心機能の回復に伴い,徐々に補助流量を減少させてゆく.補助流量が1.0~1.5 L/min以下にまで減少できれば,離脱の可否を判断する.5分間ほどの補助停止で,血圧,中心静脈圧,肺動脈楔入圧,心拍出量,血液ガス分析結果,心エコー所見などを総合的に判断し,離脱を行う.本疾患の患者は,PCPS離脱後,将来的に,再びPCPSが必要になる可能性,VAS埋込時,心臓移植時などの開心術に,大腿動静脈を送脱血路として使用する可能性を考慮し,カテーテルの抜去は,血管を露出後にカニューラを抜去し,血管形成を行うべきである.

3 低体温療法 心肺停止後,心肺蘇生が成功し,心拍が再開しても,脳機能が回復しなければ,大きな問題である.蘇生成功後の治療として,中等度低体温療法が提唱され355),2002年に多施設共同無作為試験の結果が発表され356),357),2005年にEuropean Resuscitation Councilのガイドラインが示された358).自己心拍が再開するも意識のない成人では,32~34度の冷却を開始し,12~24時間継続するべきと推奨されている.しかし,至適症例,温度,導入時期,復温時期等,未解決の問題が多く,低体温療法は普及するまでには至っていない.我が国で2005年から2009年に多施設共同登録調査(J-PULSE-

hypo: Japanese Population-based Utstein-style study with

defibrillation and basic/advanced Life Support Education

and implementation-Hypothermia)が実施され,2010年の日本循環器学会総会において中間解析結果が報告されている359).解析は進行中であり,そこから得られる治験が期待される.

Page 40: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

42 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

3 収縮不全と拡張不全

推奨文◦ACE阻害薬は,心不全症状の有無にかかわらず左室収縮不全患者の予後を改善する(レベル1,グレードA).◦ARBは,ACE阻害薬と同等の心イベント抑制効果を有する(レベル1,グレードA).

◦アルドステロン拮抗薬は,心不全症状を有する左室収縮不全患者の予後を改善する(レベル2,グレードB).

◦β遮断薬は,心不全症状の有無にかかわらず左室収縮不全患者の予後を改善する(レベル1,グレードA).◦カルベジロールは,用量依存性に予後改善効果が大きい.ただし,我が国では低用量であっても予後改善効果が認められる(レベル1,グレードA).◦ジギタリスは,心不全症状を有する左室収縮不全患者の心不全悪化による入院を減少させる(レベル2,グレードB).

◦短時間作用型カルシウム拮抗薬の長期投与は,心不全の予後を悪化させる(レベル2,グレードD).

◦経口強心薬の短期投与は,ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法に抵抗する難治症例において,自覚症状や生活の質を改善させる(レベル2,グレードC1).

 拡張型心筋症では,収縮不全と拡張不全は個別に存在する病態でなく,両者が重複して存在する.現在までに得られたエビデンスは,主に左室収縮不全に伴う慢性心不全が対象である.

1 RAA系阻害剤

①ACE阻害薬とARB

1)アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) ACE阻害薬は,多くの大規模臨床試験で左室収縮不全(左室駆出率 30~40%以下)に対する予後改善効果が実証されている.エナラプリルは,CONSENSUS試験360)ではNYHAⅣ度を対象に,SOLVD試験361),362)では軽症~中等症の慢性心不全患者を対象に,生命予後を有意に改善させた.さらに,無症状の左室収縮機能障害患者に対しても,心不全死や心不全による入院を減少させる効果がSOLVED prevention試験362)で実証された. 一方,ATLAS試験363)では,高用量群のリシノプリルが低用量群に比べて死亡や入院を抑制した.したがって,忍容性がある限り,高用量に近づけるべきである.ただ

し,低血圧例や血清クレアチニンおよびカリウム高値例では,初期投与量に注意する.2)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) ARBの臨床試験では,カンデサルタンがARCH-J試験364)において,NYHAⅡ~Ⅲ度,左室駆出率45%以下の心不全患者を対象に,心不全の進行および心血管イベントを抑制した.また,CHARM alternative試験365)において,心血管死または心不全悪化による入院を有意に減少させた. ACE阻害薬とARBの比較試験として,カプトプリル対ロサルタンの比較が行われた.ELITE-Ⅱ試験366)ではNYHAⅡ度以上,左室駆出率40%以下の心不全患者を対象に,OPTIMAAL試験367)では左心機能低下を伴う急性心筋梗塞患者を対象に行われ,いずれも生命予後や心血管イベントは両群で同等であった.ただし,咳嗽などの有害事象はロサルタンに少なく,忍容性はARBが優れていた.VARIANT試験368)では,左心機能低下を伴う急性心筋梗塞患者を対象とし,バルサルタンとカプトプリルの効果は同等と結論づけられた.Val-HeFT試験369)では,ACE阻害薬を含む標準治療を受けたNYHA

Ⅱ~Ⅳ度,左室駆出率40%以下の慢性心不全患者を対象に,バルサルタンの追加投与による効果が検討された.総死亡率に改善はなかったが,心不全症状が有意に改善し,心不全の悪化による入院が減少した.CHARM-

Added試験370)では,ACE阻害薬が投与された慢性心不全患者において,カンデサルタンの追加投与は心血管死亡と心不全による入院を減少させた. 以上より,ARBはエビデンスのレベルはACE阻害薬に劣るものの,ACE阻害薬と同等の心血管イベントの抑制効果を発揮した.また,両者の併用により,さらなるイベントの抑制効果が期待される.

 心不全症状の有無にかかわらず,左室駆出率40%以下の収縮不全に対しては,禁忌がない限りACE阻害薬を投与する(レベル1,グレードA).

ACE阻害薬に忍容性がない患者にはARBを投与する(レベル1,グレードA).

②アルドステロン拮抗薬

 スピロノラクトンはRALES試験276)において,NYHA

Ⅲ~Ⅳ度,左室駆出率35%以下の重症心不全患者を対象に,全死亡,心不全死亡,心不全による入院を有意に減少させた.また,エプレレノンはEPHESUS試験371)

において,心不全もしくは左室駆出率40%以下の急性

Page 41: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

43循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

心筋梗塞患者を対象に,生命予後を有意に改善させた.さらに,EMPHASIS-HF試験では,比較的軽症のNYHAⅡ度,左室駆出率35%以下の心不全患者を対象として,エプレレノンの追加投与により死亡および心不全による入院を有意に減少させた372).ACE阻害薬やARBとの併用投与の際には,腎機能や血清カリウム値に注意して投与する.アルドステロン受容体への選択性が高いエプレレノンでは,女性化乳房がより低頻度である.

 心不全症状を有する左室駆出率35%以下の収縮不全に対しては,高カリウム血症や著明な腎機能の悪化がない場合,少量のアルドステロン拮抗薬を追加投与する(レベル2,グレードB).

③レニン拮抗薬

 アリスキレンはALOFT試験373)において,NYHAⅡ~Ⅳ度,平均左室駆出率31%の慢性心不全患者を対象に,3か月投与で有意に血漿BNP値を低下させた.心エコー図では左室駆出率は改善しなかったが,左室拡張早期流入血流速(E),Eと拡張早期僧帽弁輪運動速度の比(E/e’),僧帽弁逆流量を減弱させた.現在,NYHAⅡ~Ⅳ,左室駆出率35%以下の慢性心不全患者を対象として,アリスキレンによる予後改善効果を検討する大規模臨床試験(ATMOSPHERE)が進行中である.

④拡張障害に対する治療効果

 心筋の拡張不全の主病態は左室肥大と線維化と考えられ,アンジオテンシンⅡと心筋細胞でのAT1受容体の活性化が大きく関与する374),375).拡張機能低下型心不全の予後を検討した臨床試験には,ARBカンデサルタンを用いたCHARM-Preserved試験376)とACE阻害薬ペリンドプリルを用いたPEP-CHF試験377)がある.いずれも死亡率に差はないものの,心不全による入院は減少した.一方,イルベサルタンを用いた I-PRESERVED試験378)

では,長期予後は改善しなかった.また,アルドステロン拮抗薬は,抗炎症作用により間質の線維化を抑制し,拡張機能を改善させるかもしれない.現在,拡張機能低下型心不全を対象とした大規模臨床試験TOPCAT379)が進行中である.

2 β遮断薬 拡張型心筋症を含む慢性心不全患者を用いた大規模臨床試験において,β遮断薬の予後改善効果が実証されてきた.US Carvedilol試験380)ではカルベジロールが,

CIBIS-Ⅱ381)ではビソプロロールが,そして,MERIT-

HF382)ではメトプロロールが,NYHAⅡ~Ⅲ度を中心とした左室駆出率40%以下の慢性心不全患者を対象にして,35~65%もの死亡率を減少させた.COPERNICUS

試験383)では,NYHAⅣ度,左室駆出率25%以下の重症心不全患者を対象に,カルベジロールが死亡率を35%減少させた.一方,NYHAⅠ度,つまり症状を有さない,左室駆出率40%以下の患者を対象にしたCAPRICORN

試験384)では,カルベジロールは死亡率を23%低下させた. 現在,慢性心不全に対する予後改善効果のエビデンスが得られているβ遮断薬は,カルベジロール,ビソプロロール,メトプロロールの3つである.我が国ではカルベジロールが保険承認され,さらに先頃,ビソプロロールも追加承認された.薬剤間での比較はCOMET385)でなされ,カルベジロール群がメトプロロール群に比し,死亡率が有意に低かった. 薬剤用量の問題に関しては,US Carvedilol試験における量設定プロトコール(MOCHA試験386))において,用量依存性に予後改善効果が大きかった.我が国で行われたMUCHA試験387)では,カルベジロール5 mg群と20 mg群とが比較され,左室駆出率改善作用は20 mg群で有意に大きく,一方で,全死亡または全心血管系の原因による入院は同等であった.低用量であってもβ遮断薬は有効であり,心拍数やBNP濃度を指標にしながら増量を試みることが推奨される. CIBISⅢ試験388)では,ACE阻害薬とβ遮断薬のどちらの投与を先行させるべきかが検討された.NYHAⅡ~Ⅲ度の慢性心不全患者を対象に,ACE阻害薬エナラプリルとβ遮断薬ビソプロロールのいずれを先に投与しても,全死亡+入院の発生率には差がなかった.ただし,死亡はβ遮断薬先行群に少なく,心不全悪化による入院はACE阻害薬先行群に少なかった.β遮断薬は,初期導入段階で心不全を悪化させたが,一方では,突然死を減少させた. β遮断薬の導入はごく少量から開始し,心不全の増悪がないことを確認しながら,徐々に増量する.自覚症状,血圧,心拍数,尿量,体重,身体所見(ギャロップリズム,頚静脈怒張,浮腫,四肢の冷感)などの変化に注意を払う.増量の過程で心拍数や血圧の低下が顕著な場合は,薬剤の一時減量を考慮する.また,Ⅱ度またはⅢ度の心ブロックが生じた場合は薬剤の減量,または中止を要する.うっ血の増悪を来たした場合は,利尿薬の増量や薬剤の一時減量にて対処する.我が国での一般的な初期投与量と目標用量はそれぞれ,カルベジロールで1.25

Page 42: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

44 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

~2.5 mgおよび10~20 mg,ビソプロロールで0.625 mgおよび5 mgである.開始の時期は体液貯留がなく,安定した時期が望ましい389).また,長期にβ遮断薬を服用中の患者がうっ血の増悪を来たした場合,利尿薬の調整にて対処し,極力β遮断薬を継続させる390).ただし,重篤なポンプ失調を来たし,強心薬の静注を要する場合には,減量または一次中止を考慮する. 拡張不全に対しては,降圧効果,肥大退縮効果とともに心拍数抑制効果にて拡張期充満を改善させるが,予後に関し確率されたエビデンスは存在しない.

 心不全症状の有無にかかわらず,左室駆出率40%以下の収縮不全に対しては禁忌がない限り,β遮断薬を投与する(レベル1,グレードA).

3 ジギタリスとカルシウム拮抗薬

①ジギタリス

 ジギタリスは古くから慢性心不全の治療薬として用いられてきた.しかし,現在は強心薬というよりも,迷走神経を活性化し,洞結節の自動能抑制や房室結節の伝導遅延による徐拍化作用,微弱ではあるが交感神経抑制作用による血管拡張作用,心不全で低下した圧受容体の感受性を改善し,さらには,活性化したRAA系を是正する作用などが期待される. DIG試験391)は,NYHAⅡ~Ⅳ度,左室駆出率45%以下の慢性心不全患者を対象に,ジゴキシン投与による予後改善効果を検討した.ジゴキシン投与群はプラセボ群に対し,総死亡や心血管死亡を減少させなかったが,心不全の悪化による入院を7.9%減少させた.さらにサブ解析392)では,ジゴキシンの血中濃度が0.5~0.8 ng/mL

で死亡率がいちばん低く,逆に1.2 ng/mL以上ではプラセボ投与群より死亡率が増加した. また,心房細動を有する左室収縮能低下を伴う不全患者には,心室レートコントロール,十分な左室充満時間のためにも,ジギタリスが良い適応である.ただし,心房細動を伴う左室収縮不全患者に限って,ジギタリスの予後効果を検討したエビデンスはない.

 利尿薬,ACE阻害薬(またはARB),β遮断薬などの標準的心不全治療を受けているにもかかわらず,心不全症状の残存する駆出率が低下した洞調律慢性心不全患者に対して,ジゴキシンの追加投与を検討する(レベル2,グレードB).

 頻脈性心房細動を有する心不全患者に,レートコントロールを目的としてジゴキシンの投与を行う(レベル1,グレードA)

②カルシウム拮抗薬

 短時間作用型カルシウム拮抗薬の長期投与は,心不全の予後を悪化させる393),394).長時間作用型のアムロジピンは,PRAISE試験395)やPRAISE2試験(学会発表のみ)において,収縮機能の低下した心不全患者の予後を少なくとも悪化させなかった. 一方,拡張不全に対する効果としては,左室肥大の退縮効果396),397)や徐拍化による拡張充満時間延長から良好な作用が期待される.長時間作用型のニフェジピンがACTION試験のサブ解析398)において,左室駆出率の保たれた安定狭心症患者の心不全の新規発症を有意に抑制した.

 狭心症,高血圧を合併していない収縮不全に対してのカルシウム拮抗薬の投与は,レベル2,グレードDである.

4 経口強心薬 慢性心不全における大規模臨床試験において,経口強心薬の投与は生命予後という観点からは否定的であった399),400).しかしながら,ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法に抵抗する難治症例に対し,自覚症状や生活の質の改善を目的とした使用,カテコラミン薬の持続静注から離脱困難時での短期併用の橋渡し的な使用,β遮断薬導入時の補助薬としての有用性が否定されたわけではない401),402). PDEⅢ阻害薬であるピモベンダンは,高用量ではCa2+

感受性増強作用を併せ持つ経口強心薬である.PICO試験403)では,ピモベンダン2.5 mg,5.0 mg/日投与群でプラセボに対し運動持続時間の延長が示されたが,総死亡率は増加した.一方,EPOCH試験404)では,左室駆出率45%以下,NYHAⅡm~Ⅲ度の306例の慢性心不全患者を対象に,ピモベンダンは予後を悪化させることなく,自覚症状や運動耐容能を有意に改善した. β1受容体刺激薬のデノパミンはドブタミンに類似し,心収縮力を増強させる.ドパルパミンはドパミンのプロドラックである.これら2剤の長期投与による生命予後を検討したデータは存在しない.

 生活の質の改善,経静脈的強心薬からの離脱を目的とした経口強心薬の短期投与は,レベル2,グレードC1

Page 43: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

45循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

である.

4 不整脈とペースメーカ

①抗不整脈薬

推奨文◦アミオダロンは低心機能例で心室性不整脈と心房細動を抑制して生命予後を延長させる(レベル1,グレードA)

◦カルべジロール,メトプロロール,ビソプロロールは心室性不整脈を抑制し,心房細動における心室拍数を低下させると共に,低心機能例の予後を改善させる(レベル1,グレードA)

◦カテーテルアブレーションにより心房細動例の洞調律が維持されれば,左心機能,運動耐容能の改善が期待できる(レベル3,グレードB)◦CRT,CRT-DはNYHAⅡ,ⅢでQRS幅の延長した拡張型心筋症の生命予後を延長させる(レベル1,グレードA)

1)心房性不整脈 拡張型心筋症では心房細動(AF),心房粗動,心房頻拍などの心房性不整脈と,心室頻拍などの心室性不整脈の両者が生じる.中でもAFは心不全例の20%に認められ,年齢,NYHA心機能分類のクラスが上がるにつれて頻度が増加する405).AFは一旦それが持続し始めると,電気的リモデリング,機械的リモデリング,構造的リモデリングが促進されてさらに持続しやすくなる.AFにより心房収縮が消失し,頻脈が生じると低心機能例では容易に心不全となるが,一方でそれによりリモデリングが進行し,ますますAFが生じやすく,持続しやすくなるという悪循環も生じ得る406).このためAFでは早く洞調律に復帰させるのがよいとする,リズムコントロール治療の必要性が強調された時期があった.しかしながらAFでは心拍数を調節するレートコントロールも重要であり,AFFIRM試験,AF-CHF試験等でリズムコントロールとレートコントロールの比較が行われた407),408).その結果,レートコントロール治療は低心機能例においても,リズムコントロールと同等に総死亡を減少させることが判明した.また当初はレートコントロールは安静時に80/分未満,6分間歩行検査時や中等度の運動時に110/分未満の心拍数を保つのがよいとされたが,安静時においても110/分を目標とする程度のコントロールでよいと報告されている409). このため,レートコントロール目的ではジギタリス薬,

β遮断薬(メトプロロール,カルベジロールなど),Ca

拮抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム),アミオダロンが用いられる.ただし,ジギタリス薬は即効性がなく,陰性変力作用を有するCa拮抗薬も心不全例に用いる場合は注意が必要である.リズムコントロール目的では心抑制作用の少ないアミオダロン,ベプリジル,アプリンジンが用いられる.特にアミオダロンは米国,欧州の心房細動管理ガイドラインでは低心機能例の第一選択薬になっている410),411).2)心室性不整脈 心室性不整脈を伴う低心機能例にⅠ群薬やd-ソタロールを投与すると,プラセボ群よりむしろ生命予後が悪化することが知られていたが,アミオダロンは,CHF-

STAT試験とGESICA試験で,低心機能の非虚血性心疾患の総死亡率を有意に減少させる,またはその傾向が見られ412),413),かつSCD-HeFT試験414)でもプラセボ群とほぼ同等の総死亡率であった.このため,アミオダロンは致死性不整脈とともにAFを抑制して生命予後を延長するとして,拡張型心筋症等の低心機能例では最もよく用いられている.またカルべジロール,メトプロロール,ビソプロロールなどのβ遮断薬も低心機能~心不全例の予後を改善することが種々の大規模臨床試験で確認されている415),416).一方,ICDの効果には劣るものの,アミオダロンとβ遮断薬とを併用すると,単独使用よりも致死性不整脈の発生が有意に低いと報告されている417).以上より,2006年の心室性不整脈患者の管理および心臓突然死の予防に関するACC/AHA/ESCガイドライン418)では,心不全例において,アミオダロン,dl-ソタロール,β遮断薬は,症候性の心室性の頻脈性不整脈を抑制するための ICDの補助療法として選択されるなら,クラス1の適応であるが,代替療法とする場合はクラス2bであるとされている.

②カテーテルアブレーション

 高周波を用いたカテーテルアブレーションは頻脈性不整脈の根治療法として1980年代後半から急速に発展し,2000年代前半までに心室細動を除くほとんどの不整脈への治療法が確立した.また,2000年頃からはCARTO,Ensiteなどの種々の3次元マッピングシステムが導入され,電位や解剖学的情報に基づいて,不整脈基質,起源,リエントリー回路,緩徐伝導路などを正確にかつ立体的に把握できるようになった.拡張型心筋症では合併するAF,心房粗動,心房頻拍と心室頻拍(VT)へのアブレーションが行われる.

Page 44: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

46 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

1)心房細動 1998年に,AFのトリガーの多くが肺静脈入口部周辺で発生する巣状興奮であることがHaissaguerreらにより報告されて以来419),種々の施設でAFに対するアブレーションが試みられている.現在ではCARTOなどを用いて,上下肺静脈を一括して隔離する解剖学的肺静脈環状隔離法が主流となっているが,この他に左房内のcomplexed fractionated atrial electrogram(CFAE)や420),左右肺静脈への通電ラインを結ぶ線状焼灼,僧帽弁峡部への線状焼灼も追加的手法として施行されている.ただし,これらが成功してAFが消失しても,数か月以内に20~50%の例にAFの再発や心房頻拍の出現が認められるため,根治には複数回のアブレーションを必要とすることが少なくない.現在肺静脈隔離法によるアブレーションでは,発作性AFを抑制できる確率は初回で60~80%,2回目で80~90%と報告されている421),422).左房拡大を伴う低心機能例や慢性AF例では初回成功率がやや低くなるが,アブレーションによる洞調律維持により,左心機能,運動耐容能の改善が期待できる423). アブレーションで治療困難な心房頻拍や心房細動例には房室結節へのアブレーションが時に施行される.しかしながら房室結節アブレーションは不可逆的で,恒久的なペースメーカ植込みが必須である上,抗凝固薬を継続して服用する必要がある.かつ低心機能例に右室ペーシングを行うと,心室の同期不全をもたらし,さらに心機能が低下する可能性がある.肺静脈隔離例と,房室結節アブレーション+両室ペースメーカ植込み例を比較したPABA-CHF試験では,肺静脈隔離群が両室ペーシング群よりも,6分間歩行距離が長く,左室駆出率が良好で,QOLも改善していた424). 現在,低心機能例のAFに対するアブレーションの有用性に関しては大規模臨床試験が進行中であるが,これまでの報告のメタ解析では,再発率はやや高いもののアブレーションにより左室駆出率(LVEF)が改善するとの結果が出ている425).2)心室頻拍 拡張型心筋症に伴うVTは,その多くがリエントリー性であるが,回路が心外膜側にある場合が少なくない.また頻拍中に血圧が容易に低下しやすく,起源や回路も変化するので,至適通電部位の同定が困難となりやすい.現在,多くの頻脈性不整脈ではカテーテルアブレーションで90%以上の根治が期待できるが,器質性VTでは,以上のような理由から基質マッピングやペースマッピングで通電部位を決定せざるを得ず,冷却機能付きカテーテルを用い,心外膜アプローチを行ったとしても不整脈

を根治できるのは一部の例に限られる426).このため,アブレーション施行後も,突然死の予防には未だ ICD

やCRT-Dに頼らざるを得ない現状がある.

③ペースメーカとCRT

 拡張型心筋症などの低心機能例では,心室内伝導障害に伴って心室の非協調的収縮が生じる.特に左脚ブロック(LBBB)をはじめとする左室の伝導障害が生じると,右室や左室中隔の興奮に比べて左室自由壁の興奮が遅延するため,収縮開始にタイミングのずれを生じる.このように心室収縮の同期性が崩れた状態を心室同期不全(ventricular dyssynchrony)という.心室同期不全には左室内同期不全と心室間同期不全があるが,これらのもたらす不均一な収縮により,LVEFが低下し,左室収縮末期容積が増加して心拍出量が低下する.一方で,前後乳頭筋の収縮時相のずれや,等容性収縮期の左室圧上昇不全などが生じて僧帽弁閉鎖が不十分になり,僧帽弁逆流が起こりやすくなる.また,PQ時間が著明に延長して房室ブロックが生じると,心房と心室の収縮の同期がとれなくなり(房室間同期不全),僧帽弁閉鎖不全や心拍出量の低下を来たす. DDDペースメーカはVVIペースメーカに比べて房室間同期不全を改善し得るため,心不全への効果が期待される.しかしながら右室ペーシングの行われる比率が高まると,心室の不同期のためかえって心不全やAFが増加することがDAVID試験やMOST試験で明らかになった427),428).また,正常のLVEFを有する例であっても,右室心尖部ペーシングを続けていると左室のリモデリングが進んでLVEFが低下すると報告されている429).さらに両室ペーシングによる再同期治療(cardiac

resynchronization therapy = CRT)を行っても,正常心室興奮に優る心機能改善効果は得られない.このため,低心機能ではあるが,房室伝導が保たれ,QRS幅の狭い例では,できるだけ右室ペーシングを避け,心房ペーシングを維持するモードが用いられている.しかしながら,一方でPQ時間が延長すると,AFのリスクが増え,死亡率もわずかながら増加する事実も認められている430). このため,収縮遅延部位である左室自由壁(左室後側壁基部)を,心室中隔側(右室心尖部)と同時にペーシングすることにより左室収縮の同期性を高めて,心機能の改善を図る治療法であるCRTが1990年代半ばから行われるようになった.CRTにより,LVEF,1回心拍出量が増加し,収縮期圧,脈圧が上昇するとともに僧帽弁逆流が減少するが,実際にMIRACLE試験,CARE-HF

試験,COMPANION試験等の大規模臨床試験において,

Page 45: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

47循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

CRTまたは再同期治療機能付き除細動器(CRT-D)は,薬物治療や植込み型除細動器(ICD)治療よりも心不全指標や生命予後を改善することが確認されている431)-433). 現在CRTの適応として広く受け入れられているのは(1)適切な内科的治療が行われているにもかかわらず,NYHAⅢ~Ⅳの症候性心不全を認め,(2)左室駆出率が35 %以下で,(3)QRS幅が130 msec(あるいは120 msec)以上で,VTを有さない症例である.また徐脈のためにペーシングが必要な低心機能例も適応と考えられる.しかしながら,NYHAⅠ~ⅡでLVEF≦40%,QRS幅≧120 msecの例を対象として施行されたREVERSE試験で,CRTをonにした際には初回入院または死亡までの時間が有意に延長し,左室のリモデリングが改善したことから434),435),より軽症例へのCRTの適応拡大をはかる動きがある.一方,QRS幅はRETHINQ試験で,120 msec未満の症例に最大酸素摂取量,QOL score,6分間歩行距離などの指標に改善が見られなかったことから,120 msec以上の症例を適応とする考えが主流である436). このようにCRTはQRS幅の延長した拡張型心筋症では有用な治療法となるが,前述の如く拡張型心筋症では心室性不整脈を合併する頻度が高いためにCRT-Dが主として植込まれている.このため,我が国でのCRT(-P)植込み数は全再同期治療数の約1/4を占めるにすぎない.

④ICDとCRT-D

 植込み型除細動器(ICD)は1980年に初めて臨床応用された致死性不整脈の治療機器で,当初は開胸手術により体内に植え込まれ,除細動機能のみを有していた.その後,小型化,軽量化,長寿命化が図られ,経静脈的な植込みが可能になっている.機能に関しては,心室性不整脈を自動的に認識して,除細動または抗頻拍ペーシングで停止させる機能,徐脈性不整脈に対するペースメーカ機能に加え,心房性不整脈の認識・停止機能,心房細動抑制機能,心不全予防機能,心不全監視機能,遠隔モニタリング機能などを備えている.これらの機能は未だ不十分なものもあるが,それを補うために,不整脈の診断・記録機能を高め,不適切作動,心室ペーシング,除細動などを減少させる様々な改善が随時加えられている. 虚血性心疾患における,心室頻拍(VT)/心室細動(VF)既往例や低心機能例に対する ICDの有用性に関しては,1997年以降に発表された種々の大規模臨床試験で,突然死一次,二次予防ともに,薬物治療より ICDが有意

に生命予後を改善するとの結果が出ている.一方,非虚血性心疾患では,二次予防において有用との結果が出ているが,一次予防ではLVEF≦35%の低心機能例を対象としたDEFINITE試験437),SCD-HeFT試験414)において,ICDが薬物治療に優る傾向が認められたにすぎない.またNYHAⅢ,ⅣでQRS幅≧120 msecの例を対象としたCOMPANION試験433)ではCRT,再同期治療機能付き除細動器(CRT-D)植込み群が薬物治療群より有意に総死亡を減少させたが,NYHA Ⅳ例に限るとその差は認められなかった438).このため,2008年のデバイス治療に関するACC/AHA/HRSガイドライン439)において,非虚血性心疾患では,NYHAⅡ,ⅢでLVEF≦35%の拡張型心筋症例と,原因不明の失神があって,EPSでVT/

VFが誘発される例はクラス1の ICD植込み適応だが,失神があり左心機能が低下している拡張型心筋症例ではクラス2aで,NYHAⅠでLVEF≦35%の例は2bとなっている. ICDに対するCRT-Dの優越性はNYHAⅢ,Ⅳ,LVEF

≦35%,QRS幅≧130 msecの例を対象としたMIRACLE-

ICD試験431)で証明されていたが,NYHAⅠ,ⅡでLVEF

≦30%,QRS幅≧130 msecの例を対象としたMADIT-

CRT試験440)でもCRT-D群は ICD群に比べ心不全による入院を減少させた.本試験では総死亡は2群間で差がなかったが,NYHAⅡ,ⅢでLVEF≦30%,QRS幅≧120 msecの例を対象としたRAFT試験441)では心不全入院,総死亡ともにCRT-D群で有意に減少していた.この他にMADIT-CRT試験のサブ解析では,(1)LBBB例でCRT-D群の心不全入院が減少するが,non-LBBBでは減少しない442).(2)CRT-D群で心房,心室の容積減少とLVEFの改善がある443).(3)冠静脈洞内に挿入されたLV

リードが心尖部側に留置されると心不全 /死亡のリスクが増大する444).等の結果も得られている. 2006年の不整脈非薬物療法のガイドライン445)におけるCRT-D適応は,十分な薬物治療を行っても改善しないNYHAⅢ,Ⅳの慢性心不全で,LVEF≦35%,QRS

幅≧130 msec以上の症例で,ICD植込み適応のクラス1,2aを満たす場合となっているが,今後CRTとCRT-D植込みにおいても,より軽症例に適応が拡大されると考えられる.

5 貧血

推奨文◦鉄欠乏性貧血を合併した心不全患者への鉄剤投与は推奨される(レベル2,グレードB).

Page 46: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

48 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

◦腎性貧血を合併した心不全患者へのエリスロポエチンは推奨される(レベル2,グレードB).◦貧血を合併した心不全患者への輸血は心不全を悪化させる可能性もあり,慎重に投与すべきである(レベル4a,グレードC1).

 拡張型心筋症の病状進行に影響を与える因子のうちの1つに貧血があげられる.大規模臨床試験での心不全患者における貧血の新規発症は年間約17%で,心不全全体の貧血合併頻度も約15~30%と報告され446),447),貧血は心不全に高頻度に合併することが知られている.慢性の貧血は,酸素運搬率を低下させ代償性に1回拍出量と心拍数を増加させ,心負荷を増大させる448).貧血の進行は左室心筋重量の増加,再入院の増加や予後の悪化などとも相関があるとされ448)-451),予後を規定する独立した危険因子である452).ヘモグロビン(Hb)が1g/

dL低下するごとに死亡率が16%も上昇するともいわれている451).また,NYHA 分類の重症度に比例して貧血の合併率が増加し,貧血の程度は心不全の重症度も反映している453),454). 心血管病における貧血には慢性腎臓病が悪影響を及ぼしていることが多く,心不全,貧血および腎機能障害は互いに悪循環を形成していることから,心腎貧血症候群(Cardio-Renal Anemia Syndrome)という概念が提唱されている453).貧血,心不全,腎障害の何れもない例の2年死亡率は7.7%に対して,貧血単独で16.6%,心不全単独で26.1%,腎障害単独で16.4%と悪化する.さらに重複すると死亡率は上昇し,貧血と腎障害では27.3%,貧血と心不全では34.6%,心不全と腎障害では38.4%,心不全,腎障害,貧血全て合併すると45.6%に及ぶと報告されている453).また,心腎貧血症候群では心不全による再入院率が高く,かつ入院日数も長い455). 心不全における貧血の原因については明らかにはされていないが,いくつかの機序が考えられている.不全心では心拍出量減少から腎血流が減少し,レニン・アンジオテンシン系が亢進する.また交感神経活性も亢進し,腎血管収縮をきたし更に腎血流は低下する.このため腎機能障害は進行し,循環血液量は増加し血液希釈の末,貧血を呈するようになる.また不全心からはTNF-αやIL-1などの炎症性サイトカインが分泌され,これが腎臓でのエリスロポエチン(EPO)産生や骨髄でのエリスロポエチン活性を阻害し,赤血球産生低下および貧血が進行するともいわれている456).そのほか,心不全患者では鉄の吸収阻害による鉄欠乏性貧血も多い457). 一方,貧血が心不全を悪化させることも知られている.

貧血患者では組織の低酸素化とそれに伴い末梢血管抵抗が低下し,代償機転として高拍出状態となる.この状態が長期間持続すると左室は拡大し,左室拡大は壁応力を増加させ心肥大を促進させ心不全を誘発する458)と考えられている. このように貧血が心不全と密接な関係を持つことは知られているが,治療に関しては十分なエビデンスがそろっているわけではない.

1 鉄剤 鉄欠乏性貧血を合併した心不全に対して,鉄剤投与により症状および心機能が改善することが報告されている.鉄欠乏性貧血を合併し収縮能の低下した安定心不全患者16例(LVEF26±13%,NYHAⅡ~Ⅲ)に経静脈的に鉄剤を投与した結果,Hbの上昇に比例して症状の改善および6分間歩行距離の延長がみられた459).また心不全患者40例(Hb<12.5 g/dL,LVEF≦35%)を経静脈的鉄剤投与群およびプラセボ投与群の2群に分け,二重盲検試験が行われた結果,鉄剤投与群はプラセボ群に比しNT-proBNP低値およびLVEF, NYHA class,運動耐容能の改善を伴い,さらに入院率も低下していた460).また,鉄欠乏性貧血(Hb<12.5 g/dL)ならびに非貧血性(12.5<Hb<14.5 g/dL)心不全患者35例(LVEF

<45%,NYHAⅡ~Ⅲ)に対し経静脈的に鉄剤投与を4か月間行い,Hbは増加しないにもかかわらずフェリチンとNYHAクラスは改善し,特に貧血群ではpeak V

4

O2も改善した461).これらの研究から心不全に対して鉄剤単独投与が有効である可能性が示された.ただしすべて少数例での研究の為,より多くの症例での検討が必要である.

2 輸血 急性心不全の患者で輸血を必要とする患者は,輸血が必要のない患者に比較して予後不良であることが知られている462),463).患者背景をマッチングさせた場合,輸血した患者のほうが,輸血しない患者より短期予後が改善されている傾向を認めていたという報告もある462)がその差は統計学的に有意ではない.また,輸血を行った重症な心疾患で,制限をかけた輸血(Hb<7g/dLで輸血,目標値Hb7~9g/dL)と十分な輸血(Hb<10g/dLで輸血,目標値Hb 10~12g/dL)では予後の差がなかったとされている464). 最近では,後ろ向き解析だが心不全患者の死亡に輸血が独立した因子で関与しているとの報告もあるため463),輸血に対しては慎重に判断すべきである.また,心不全

Page 47: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

49循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

での不全心では体液貯留による希釈性影響による見かけ上の貧血もあり,利尿剤投与のみで改善する場合もあるため,不必要な輸血を避ける注意が必要である. 重症の貧血や,消化管出血などで急速に貧血が進行した場合,早急な貧血の是正のため輸血を必要とする場合があるが,低左心機能患者で急速な輸血は容量負荷となりうっ血や肺水腫を助長する可能性があるため,血管内容量の評価を十分に行った上で,できる限り緩除に投与する必要がある.

3 エリスロポエチン 1980年代に遺伝子組み換えエリスロポエチンが開発され輸血をせずに慢性腎臓病による貧血の治療を行うことが可能となった.2002年Silverbergらは貧血を合併した心不全患者にエリスロポエチンを投与した無作為二重盲検試験を行った.結果,コントロール群(Hb10.9→

10.8g/dL)の死亡率25%に対して,エリスロポエチン製剤(epoetin alfa)と鉄剤の静注投与した治療群(Hb10.3 →12.9g/dL)では0%であったと発表した465).その後も慢性心不全患者を対象にepoetin alfaと鉄剤内服と葉酸補充群とプラセボ群を比較しHb,peak V

4

O2およびQOL

の改善が治療群で有意に良好との報告もされた466). 一方,エリスロポエチン製剤の有効性に疑問をとなえる研究も発表されている.無作為化二重盲検プラセボ対照試験により9.0<Hb<12.0 g/dLの心不全患者に対してエリスロポエチン製剤(darbepoetin alfa:長時間作用型のエリスロポエチン)の有効性を検討したところ,プラセボ群に比しdarbepoetin群でHbは有意に増加しQOLも改善したが,運動時間,peak VO

4

2,QOL,BNP

は両群に差を認めなかった467).加えて,darbepoetinと鉄剤投与はplaceboと比べてHb値は増加したが,運動時間,NYHAクラスおよびQOLなどの改善は認めなかった468). このような結果をうけて,近年心不全にエリスロポエチンを投与したランダム化比較試験12研究のメタ解析が発表された.その結果,貧血を伴った心不全患者にエリスロポエチンを投与することにより,運動耐容能は向上し,症状が改善し,臨床転機を改善すると結論づけられている468).

6 腎機能障害

推奨文◦ACE阻害薬およびARBは長期的には腎保護的に作用するため腎不全を合併した心不全の治療に投与すべき

である(レベル2,グレードB).◦経口または間歇的静脈内投与フロセミドは腎不全を合併した心不全の治療に推奨され,また効果が不十分な場合サイアザイドなどの併用も推奨される(レベル2,グレードB).◦大量の利尿剤投与は腎機能悪化させる可能性がある.◦カルペリチドには腎髄質への血流を増加させる作用があり,腎機能低下を伴う心不全症例での効果が期待されている(レベル2,グレードB).

◦腎機能低下で利尿が得られないと,静脈うっ血から腎機能を再増悪させ悪循環に陥るため,急性血液浄化が必要となる場合がある(4b,グレードC1).

◦高カリウム血症例での抗アルドステロン薬は中止すべきである(レベル3,グレードC2).

1 心不全と腎機能障害 心不全では,高血圧や糖尿病を合併した高齢者が多いため,腎機能が低下している場合が多い.腎機能障害は心不全を悪化させる一因であるだけでなく,心不全の予後を規定する独立した危険因子であると考えられている470),471).また,貧血との関連も前述したとおりである.腎機能は通常,入院時の血清クレアチニン値で評価されるが,高齢者,特に筋肉量の少ない女性では,血清クレアチニン値の割に腎機能が低下している症例が少なくない.そのため入院時には,下記のような計算式や24時間蓄尿によるクレアチニンクリアランスなどを用いて,腎機能を評価すべきである.

血清クレアチニンからのGFR推算式推算糸球体濾過量(eGFR)=194×血清クレアチニン値(mg/dL)-1.094×年齢-0.287(女性は,男性eGFR×0.739)

Cockcroft の計算式(成人男性)472)

クレアチニンクリアランス(mL/min)=〔(140-年齢)×体重(kg)〕/〔72×血清クレアチニン値(mg/dL)〕(女性は上記の式より15%減らす)

 治療に関しては,心拍出量の低下に伴う腎前性の腎障害であれば,減塩治療や水分制限などの入院安静のみで血清クレアチニン値の低下が得られる場合がある.しかし腎実質性障害を合併した症例では腎機能の改善は期待できないばかりか,心不全の治療によりむしろ腎機能を悪化させる可能性がある. カルペリチドはヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの

Page 48: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

50 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

薬理作用をもった心不全治療薬である.輸入細動脈の拡張と輸出細動脈の収縮により糸球体濾過量(GFR)を増加させ,レニンの分泌抑制,集合管でのナトリウム再吸収,およびアンジオテンシンⅡにより刺激された近位尿細管でのナトリウム水再吸収を抑制し利尿効果を表す473).心不全では心拍出量の低下に伴いGFRが低下して腎髄質の血流が低下するが,カルペリチドには腎髄質への血流を増加させる作用がある473).そのため腎臓が虚血に陥りにくいと考えられており,腎機能低下を伴う心不全症例での効果が期待されている.しかしながら,腎不全では内因性のナトリウム利尿ペプチドの血中濃度が増加していること,およびカルペリチドの腎からのクリアランスも低下して474)ことから,腎不全の程度によっては,カルペリチドの点滴静注による血圧低下や血清クレアチニン値の上昇に十分に留意して,極少量からの使用(0.0125~0.025μg/kg/minまたは場合によってはそれ以下)とすべきである. ループ利尿薬は,肺水腫を伴う重症心不全の治療には必須の薬剤であるが,高容量利尿剤投与は腎機能を悪化させる可能性もあるため,使用する際には注意が必要である.効果が不十分な場合,サイアザイド系利尿薬と併用することにより,利尿効果が増強する場合がある.また,間歇的静脈内投与で効果がない場合には,フロセミドの持続点滴投与が有効な場合がある.フロセミドの使用により貯留した体液が減少した際には,投与量を減量する.長期間連用すると神経体液性因子を亢進させ低ナトリウム血症を来たすため注意が必要である.腎機能の低下や利尿薬の長期連用により,心不全では血清ナトリウム濃度が低下する例が多い.低ナトリウム血症は,心不全の独立した危険因子であることが最近報告されているが475),心不全患者における低ナトリウム血症の補正は容易ではなく,治療に難渋する症例が多い. 近年,低ナトリウム血症をきたしにくいバソプレシンV2受容体拮抗薬が注目を集めている.利尿薬の多くは,ナトリウムと水双方の排出を促すが,トルバプタンはバソプレシンと拮抗して水の再吸収を抑制し,水分のみを体外へ排出する為ナトリウムなどの電解質量に影響を与えない.重症心不全では腎機能も低下して,ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬でも体液貯留のコントロール不良な患者に遭遇する.特に末期心不全患者では,右心不全症状が有意になり,腸管浮腫による利尿剤吸収が拒まれ,さらなる体液貯留を引き起こす悪循環となる.このような末期患者においての治療効果が期待されている.ただし急性心不全患者に対しての検討では,プラセボ群に比較してトルバプタン群で,1年後の死亡率や心

不全関連の合併症を改善しないという報告されている476).慢性期に投与した場合の効果は不明なため,今後の研究結果が待たれる.初回投与時には血清ナトリウム濃度が急激に上昇することがあり,神経障害(橋中心髄鞘崩壊症)を来す可能性がある.初回投与では入院下で投与を開始し,投与後4~6時間後,および8~12時間後に血清ナトリウム濃度を測定することが推奨されている. ACE阻害薬やアルドステロン受容体拮抗薬は,腎機能が低下した症例でも長期的には腎保護的に作用すると考えられており,少量より慎重に投与すべきである.ただし,血清カリウム値,クレアチニン値の急激な上昇を認める症例もあるため,血液検査などを観察しながら,徐々に増量する必要がある.

2 透析と持続濾過透析 心不全の急性期では,過剰な体液の貯留に伴う肺うっ血,うっ血肝や浮腫が生じ,体液除去が求められる.しかし腎機能が低下し利尿が得られないと,さらなる静脈うっ血を来たし,腎機能を再増悪させる477).このような悪循環を断ち切るために急性血液浄化が必要となる場合がある. 心不全に対する急性血液浄化法の主な目的として,(1)肺水腫の治療,(2)アシドーシスの改善,(3)電解質異常の補正,(4)輸液スペースの確保,(5)体液性の介在物質(humoral mediator)の除去などが挙げられる. 一般的な血液透析は間欠的に行われるが,心不全では血行動態への影響が少ない持続性静脈・静脈血液濾過や,簡便で濾過液を用いない体外限外濾過法(extracorporeal

ultrafiltration method:ECUM)が用いられていることが多い. 急性心不全の状態では,IL-6 や TNF-αなどのサイトカインが増加しており,これらが心不全の予後を悪化させる一因であると報告されている478).そのためサイトカインなどを除去する機能を兼ね備えている持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)が用いられる場合もある479).また最近の血液浄化装置は,スイッチ 1 つで血液透析(HD),血液濾過(HF),血液濾過透析(HDF),ECUM などの切り替えが可能であり,病態を見ながら適宜設定を変更することができるため,血行動態の変化にも対応しやすい. 血管アクセスに関しては,急性期のみの血液浄化であれば,頚静脈よりダブルルーメンカテーテルを挿入し確保する.腎不全の進行に伴い維持透析が必要とする場合,外科的に動静脈シャントを造設する必要がある.しかし

Page 49: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

51循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

低左心機能患者では動静脈シャントが,心臓への容量負荷となり血行動態を悪化させる場合があるので注意が必要である.このような患者では,長期留置型血管内カテーテルや動脈表在化などを考慮する.

7 血栓塞栓症

1 心不全と血栓塞栓症 収縮機能不全による心不全患者では,心機能低下に伴う血流速度低下480),凝固線溶系異常481),血管壁性状の変化482)により血栓形成されやすい環境ができると考えられる.一般的に心不全症例における脳卒中の発症頻度は,年間1.3~3.5%といわれている483).しかし,洞調律の左室駆出率低下症例での脳卒中の発症頻度は年間1%との報告がある484).抗凝固療法,抗血小板療法施行中には出血性合併症が起こる可能性があるため,血栓塞栓症発症のリスクが高くない場合には,発症予防目的に抗凝固療法,抗血小板療法を開始するかどうかを十分検討する必要がある.

2 予防

①ヘパリン

推奨文◦心房細動,あるいは血栓塞栓症の既往があるにもかかわらず抗凝固療法が十分でない症例に対するヘパリンの使用(レベル1,グレードA)◦長時間の床上安静を必要とする心不全急性期における,深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症を予防する目的でのヘパリンの使用(レベルb,グレードC1)

 心房細動などの併存疾患,血栓塞栓症の既往がある場合は,抗凝固療法,抗血小板療法の適応が明らかである.抗凝固療法の適応があり,急速に抗凝固作用を得たいときにヘパリンを用いて抗凝固療法を行う.急性心不全の急性期において,心腔内血栓形成の予防目的の抗凝固療法については明らかなエビデンスはない.しかし心不全増悪急性期には長時間の床上安静が必要となり,下肢静脈血栓,肺血栓塞栓症発症の可能性がある.「循環器疾患の診断と治療に関するガイドライン 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2009年改訂版)」を参考にグレードC1とした.

②抗凝固療法と抗血小板療法

推奨文◦心房細動,あるいは血栓塞栓症の既往のある症例に対するワルファリンの投与(レベル1,グレードA)◦心腔内壁在血栓を有する場合の抗凝固療法(レベル6,グレードC1)◦心房細動を有するがワルファリン禁忌である場合のアスピリン,またはアスピリン禁忌症例に対するチクロピジン(クロピドグレル)の投与(レベル6,グレードC1)◦洞調律で血栓塞栓症の既往がない症例に対する抗血小板薬および抗凝固療法(レベル2,グレードC2)

 心房細動などの併存疾患,血栓塞栓症の既往がある場合は,抗凝固療法,抗血小板療法の適応が明らかである.一方,血栓塞栓症リスクが高くない群に対して薬物療法による介入により脳卒中の発症頻度が十分抑制されるかどうかは現在のところ強力なエビデンスがない.洞調律の心不全患者における抗凝固療法による血栓塞栓症予防効果をみた無作為試験ではWASH試験485),WATCH試験486),HELAS試験487)があるが,いずれの試験においても対照群に対してワルファリン投与群が血栓塞栓症を有意に予防できなかった.特にHELAS試験は虚血性心筋症を除外して拡張型心筋症(左室駆出率<35%)症例において検討しているが,約2年間の観察期間においてワルファリンによる抗凝固療法による血栓塞栓症予防効果はなかったとしている. 我が国で用いられる主な抗血小板薬は,アスピリン,チクロピジン,クロピドグレル,シロスタゾールであるが,これまでの臨床研究では血栓塞栓症予防目的で有効性を証明されたものはない485)-487).抗凝固療法とアスピリンの血栓塞栓症予防効果をみる前向き研究であるWARCEF(Warfarin versus Aspirin in Reduced Cardiac

Ejection Fraction)は現在進行中である488).治療推奨レベルは,「循環器疾患の診断と治療に関するガイドライン 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)」を参考とした.

8 睡眠障害

推奨文◦心不全患者に対する簡易モニターによる睡眠時呼吸障害のスクリーニング(レベル6,グレードB)

Page 50: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

52 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

1 心不全と睡眠障害 睡眠呼吸障害は,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea

index: AHI)15以上を睡眠呼吸障害とすると慢性心不全患者の約50%に認められる.睡眠呼吸障害には,呼吸運動は保たれているものの,軟口蓋から舌根の間の閉塞により鼻,口の気流が停止する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と,呼吸運動そのものが停止する中枢性睡眠時無呼吸(CSA)がある.また,心不全患者ではチェーンストークス呼吸を伴う中枢性無呼吸(Central sleep

apnea with Cheyne-Stokes respiration: CSR-CSA)が出現することが多い.OSAは11~37%,CSR-CSAは29~40%に認められる489),490).OSAとCSAは単独ではなく,混在していることも少なくない.またOSA治療中にCSAが出現するようになる病態(複合型睡眠時無呼吸)もある. OSAが心不全発症,病態の進行に関係する機序として,睡眠中に繰り返される低酸素血症と中途覚醒による夜間,日中の交感神経活性の亢進,血圧の上昇,肺血管攣縮に伴う肺血管抵抗の増大,静脈還流の増大などが考えられる.OSAは他の危険因子と独立して心不全発症のリスクとなることが示されている.左室駆出率<45%の心不全患者において,AHI 15以上であることが未治療のOSAの独立した予後規定因子であった(平均観察期間2.9年)491). 心不全患者において低酸素血症,交感神経緊張などにより呼吸中枢のCO2化学感受性が亢進し,また循環時間の延長(心拍出量の低下)によりPaCO2の呼吸中枢への伝達が遅れている.これらにより呼吸調節システムが不安定化することが周期性呼吸(CSR-CSA)の原因と考えられている.このため,CSAの重症度は心不全の重症度と相関し,心不全治療によりCSAの重症度も変化する.CSAでは,OSAと異なり無呼吸中の胸腔内圧の過度の低下が生じないため前負荷,後負荷の増大を介したポンプ機能の障害は生じにくい.しかし無呼吸による低酸素血症から引き起こされる交感神経活性の亢進が起こり,慢性心不全の病態の増悪に関与すると考えられるため,CSAの改善も心機能増悪の抑制に有用であると考えられる.

2 治療推奨文◦中等度以上(AHI ≧15)のOSAを有する心不全患者に対する持続陽圧呼吸(CPAP)(レベル3,グレードB)◦中等度以上(AHI ≧15)のCSR-CSAを有する心不全

患者に対する夜間在宅酸素療法(レベル1,グレードB)◦中等度以上(AHI ≧15)のCSR-CSAを有する心不全患者に対するCPAP(レベル3,グレードB)◦中等度以上(AHI ≧15)のCSR-CSAを有する心不全患者に対する二相性気道陽圧(bi-level PAP),順応性自動制御換気(ASV)(レベル4b,グレードC1)

 OSAに対する治療は心不全の有無に関係なく確立されている.上気道の閉塞を来たす機能的要因(肥満,飲酒,睡眠薬など),器質的要因の除去,持続陽圧呼吸(continuous positive airway pressure: CPAP) で あ る.OSAを有する心不全患者においてCPAPにより,無呼吸の改善,左室駆出率の改善が報告されている492),493).ただし,OSAを合併する心不全患者におけるCPAPの長期予後に対する効果についての報告は十分ではない. これに対し,CSR-CSAを有する心不全患者に対しては,まず心不全に対する適切な薬物療法(β遮断薬,ACE阻害薬など)を行う.それにより血行動態,心機能が改善するのと平行してCSR-CSAの重症度も改善することが多いが494),495),それでもなおCSR-CSAの重症度が十分(AHI 15未満)に改善しない症例に対して酸素療法,陽圧呼吸治療を検討する.陽圧呼吸治療のうち,強制換気によって無呼吸を改善する二相性気道陽圧(bi-

level positive airway pressure: bi-level PAP),患者の呼吸に同調して陽圧をかける順応性自動制御換気(adaptive

servo-ventilation: ASV)がCSR-CSAに関しては有効であると考えられる.特にASVはCPAPよりも忍容性が高く,AHIの低下,左室駆出率の改善,QOLの改善がみられたと報告されている496),497).しかしながらこのような症例においても,ASVの長期予後に対する効果は現在のところ明らかではない.またCPAPに比して,bi-

level CPAP,ASVは費用がかかることもあり,CPAPに対する忍容性がない例,CPAPではAHIが十分に改善しない例で適応を検討するのが妥当であると考えられる. OSA,CSR-CSAに対する治療の推奨レベルは「循環器疾患の診断と治療に関するガイドライン 循環器疾患における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン」も参考とされたい.

9 外科手術

1 左室縮小手術 左室部分切除術(Partial left ventriculectomy)は,末期的心不全に対する外科的治療法として,ブラジルの

Page 51: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

53循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

Batista が始めたもので,拡張した左室心筋の一部を tear

drop型切除し,拡張した心臓のサイズを小さくすることにより,心機能の回復を図る手術である498).適応は,拡張末期径が70mm以上と著明な左室拡張と内科治療に反応しない重症心不全の存在である.術後の左室形態をより生理的な回転楕円形に保つように工夫された septal

anterior ventricular exclusion(SAVE)法499)や左室壁を切除せずに残すことを工夫したoverlapping法500)等の術式も開発されている.ほとんどの症例で,僧帽弁形成術を同時に施行される.その治療効果に関しては,疑問点もあり,限られた症例に行うべきである.また,左心補助人工心臓(left ventricular assist system; LVAS)が装着できる体制にある施設で行われることが望ましい(レベル6,グレードC2/D).

2 僧帽弁形成術 本疾患の僧帽弁閉鎖不全症は左室のリモデリングによる心拡大が原因であり,機能的なものである(functional

MR).正常より小さいリングを用いた僧帽弁輪縫縮術や後壁の拡大を縮小する乳頭筋接合術が術式として行われる.上述の左室縮小手術と同時に施行されることもある.僧帽弁の逆流を止めることで,心不全症状が改善し,左室機能障害の進行を防止することができる可能性はあるが,左心機能が高度に低下した症例では,LVASを準備した状況での手術が望ましい(レベル6,グレードC1).

3 LVASと心臓移植 補助人工心臓(ventricular assist system; VAS)は,内科的治療,IABP,PCPSによる補助を行っても改善がみられなくなった時点で施行する.循環動態が破綻した状態でのVASの導入は予後不良であり,導入のタイミングを逃さないよう注意する必要がある.

①体外設置型補助人工心臓(Paracorporeal�VAS)353)

 一時的使用を目的として開発されたVASで,我が国で,保険適応となっている体外設置型補助人工心臓として,ニプロ社製(旧東洋紡製)の国循型VASとAbiomed 社製BVS 5000がある. 国循型VASによる左心補助の場合,左室心尖に逢着したカフに脱血管を挿入し,送血管の人工血管を上行大動脈に喘側吻合する.右側左房から脱血も可能であるが,現在はほとんど用いられていない.また,右心補助では右房脱血,主肺動脈送血となる.送脱血カニューラ他端を肋骨弓下から体外へ導き,腹壁上に設置した血液ポン

プに接続する.この血液ポンプは駆動チューブにより駆動装置につながれるため,VAS装着患者の活動は制限されるが,リハビリも施行でき,長期の施行が可能で,3年以上の補助例もみられる.1台の駆動装置で左心補助,右心補助のどちらかしかできず,両心補助の場合は,2台の駆動装置が必要である.抗凝固療法は,外科的な出血のコントロール後,ヘパリンで行い,経口摂取可能となってからは,PT-INR値3.0~4.0を目標にワーファリンを投与する.血栓形成の問題でやむを得ず4.0以上にせざるを得ない場合もあるが,脳出血などリスクが高くなるので注意を要する.必要に応じ,抗血小板薬を併用する.なお,このニプロ社製VASは30日使用で製造販売承認されており,それ以上の長期使用は病院および医師の責任で行われている. BVS5000は,左心補助では右側左房脱血,上行大動脈送血,右心補助では右房脱血,主肺動脈送血で,血液ポンプを体から離れてベッドサイドに設置する.一台の駆動装置で,両心補助が可能で,通常2週間程度の補助に用いられる.今後,同Abiomed 社製AB5000が臨床使用可能になる予定である.

②植込型補助人工心臓(Implantable�VAS)353),501)-504)

 長期(数か月以上)の使用を想定して開発が進められたシステムで,ポンプを体内に設置し,ドライブラインを体外に導き,コントローラーとバッテリーに接続して使用する.在宅プログラムが可能で,体外設置型補助人工心臓と比べて,患者のQOLは極めて高いものとなる.植込型補助人工心臓の実施基準を表13に示す. 現在,我が国で開発された植込型LVASであるサンメディカル社製のEVAHEART 501)と テ ル モ 社製のDuraHeart 502)が臨床使用可能になり,今後,左室心尖部に軸流ポンプを留置するJarvik 2000 503),世界でもっとも使用されている軸流ポンプであるThoratec社製のHeartMateⅡ504)が臨床使用可能になる予定である.

③心臓移植 505)

 適応基準は,心臓移植以外に有効な治療手段がなく,患者・家族が移植治療を理解し,免疫抑制療法など移植後の治療を一生涯継続することができることである.日本循環器学会心臓移植委員会の心臓移植の適応http://

plaza.umin.ac.jp/~hearttp/に詳述されている. 患者が心臓移植を受けるためには,日本臓器移植ネットワークhttp://www.jotnw.or.jp/index.htmlに登録する必要がある.そのためには,施設内の心臓移植検討会と日本循環器学会心臓移植適応検討会との2段階審査にて,

Page 52: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

54 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

心臓移植の適応決定後に,心臓移植認定施設の日本臓器移植ネットワーク連絡係を通してネットワークに登録してはじめて移植患者待機リストに載ることになる.心臓移植レシピエントの選択基準は,ABO式血液型の一致あるいは適合,サイズ(体重差:-20~+30%),医学

的緊急度,待機期間が長い順,および,心臓の摘出から移植までの時間が4時間以内で可能なことが考慮され,選択される.医学的緊急度は(1)VASを必要とする状態,(2)IABPを必要とする状態,(3)人工呼吸を必要とする状態,もしくは,(4)ICU,CCU等の重症室に収容され,かつ,カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与が必要な状態のステータス1が優先され,我が国ではそれ以外のステータス2の緊急度で選択されることはほとんどない.拡張型心筋症の病態は進行性であるので,このような状況を踏まえ,可能な限り,患者の状態が安定している間に,心臓移植認定施設にコンサルトをすることが望ましい.

Ⅳ 付記

1 その他の心筋症

1 先天性心疾患に関連した心筋症

①病態

 近年先天性心疾患の救命率は著しく向上したが,先天性心疾患の一部の重症例では,経過中もしくは手術後遠隔期において慢性心不全から拡張型心筋症様の病態を呈することがある.この項では,先天性心疾患に関連して発症する二次性心筋障害の病態を,(1)左心収縮不全,(2)解剖学的右室(体心室)収縮不全,(3)体心室拡張不全,(4)単心室循環における心不全(Fontan手術後),に分けて記載する.詳細は,日本循環器学会「慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)」188),もしくは小児期の心不全に関する欧米のガイドラインおよび総説506)-508)を参照されたい.

②診断

1)左室収縮不全 先天性心疾患における病態として,(1)左-右短絡疾患や弁閉鎖不全による容量負荷,(2)大動脈狭窄や大動脈縮窄などによる圧負荷,(3)チアノーゼによる低酸素血症,(4)以上の組み合わせによる心機能障害,が原因となる.診断には,心電図,胸部レントゲン,断層心エコー,BNPやNT-proBNPなどの心不全バイオマーカーを中心とし(グレードA,レベル5),年長児や成人では

表13 「植込型補助人工心臓」実施基準[1. 適応基準]

対象

疾患・病態 心臓移植適応基準に準じた末期的重症心不全で,対象となる基礎疾患は,拡張型および拡張相肥大型心筋症,虚血性心筋疾患,弁膜症,先天性心疾患,心筋炎後心筋症などが含まれる.

選択基準

心機能 NYHA:クラスⅢ~Ⅳ(Ⅳの既往あり)ステージ D(重症の構造的疾患があり,最大限の内科

治療にもかかわらず,安静でも明らかな心不全症状がある患者)

薬物治療 ジキタリス・利尿薬・ACE阻害薬・ARB・硝酸塩・β遮断剤などの最大限の治療が試みられている

強心薬・補助循環

ドブタミン・ドーパミン・エピネフリン・ノルエピネフリン・PDEⅢ阻害薬などに依存,または IABP,体外設置型補助人工心臓などに依存

年齢 65歳以下が望ましい(身体能力によっては65歳以上も考慮する)

BSA システムにより個別に規定血行動態 stage D, NYHAクラスⅣの既往条件 他の治療では延命が望めず,また著しく

QOLが障害された患者で,治療に参加することで高いQOLが得られ,長期在宅治療が行え,社会復帰が期待できる患者

治療の理解 補助人工心臓の限界や併発症を理解し,家族の理解と支援が得られる

除外基準

感染症 重症感染症呼吸器疾患 重度のCOPD

高度の肺高血圧症30日以内に発症した肺動脈塞栓症

循環器疾患 開心術後早期(2週間程度)治療不可能な腹部動脈瘤や重度の末梢血管疾患胸部大動脈瘤,心室瘤,心室中隔破裂中等度以上の大動脈弁閉鎖不全症胸部大動脈に重篤な石灰化

神経障害 重度の中枢神経障害薬物中毒またはアルコール依存の既往プロトコールに従えない,あるいは理解不能と判断されるほどの精神神経障害

その他の臓器不全

重度の肝臓疾患重度の出血傾向,高度慢性腎不全,慢性腎不全による透析症例,癌などの生命予後不良な悪性疾患,膠原病などの全身性疾患,インスリン依存性重症糖尿病

妊娠 妊娠中その他 著しい肥満,輸血拒否など施設内適応委員

会が不適当と判断した症例

Page 53: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

55循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

心臓核医学検査,心肺運動負荷検査などが行われる(グレードB,レベル5).心臓カテーテル検査は,心臓大血管の構造異常や肺血管抵抗値を含む血行動態の正確な判定が必要な症例,外科手術やカテーテル治療を前提とする症例,心臓移植の適応判断が必要な症例,などを主な対象とし(グレードB,レベル6),それ以外の症例では基本的に対象としない(グレードC,レベル6).2)右室(体心室)収縮不全 完全大血管転位における心房内血流転換手術(Mustard,Senning手術)後,もしくは修正大血管転位における心室中隔欠損閉鎖術(conventional repair)後では,構造的に脆弱な右心室が体心室として機能する.このような血行動態では,三尖弁閉鎖不全や不整脈が合併すると血行動態がさらに悪化し,術後遠隔期に右心(体心室)不全に陥りやすい.1)の検査に加えて,MRI検査による右心室容積および収縮能の計測,24時間心電図,運動負荷心電図,また必要に応じて電気生理学的検査を行い,右心房負荷や右心不全に伴い出現する不整脈の正確な診断を行う(グレードB,レベル5).3)左室(もしくは体心室である右室)拡張不全 左室収縮不全の際の検査に加えて,左房径の計測,ドップラー法による左室流入血流速波形,肺静脈血流速波形,組織ドップラー法による僧帽弁輪部運動速波形など拡張機能の検査を加える(グレードB,レベル5).4)単心室循環における心不全(Fontan手術後) 一般に単心室疾患におけるFontan手術後の患者では,体循環と肺循環が直列関係となり,肺循環は中心静脈圧および吸気時の胸腔陰圧により維持される.特に内臓錯位症候群に伴った右室型単心室では,房室弁閉鎖不全,心房性不整脈,房室伝導障害,体肺側副動脈,静脈短絡血管,血栓塞栓症,胸水貯留,うっ血肝,肝硬変,糖代謝異常,蛋白漏出性胃腸症,感染性心内膜炎などを合併しやすく,先に述べた1)~3)の検査に加えて,血液凝固機能検査,肝臓超音波もしくはCT検査,肺血流シンチなどを定期的に行う(グレードB,クラス5).心機能の低下した症例,中心静脈圧の高い症例,有意な房室弁閉鎖不全を伴う症例,多数の側副動脈や静脈短絡を伴う症例などでは,心臓カテーテル検査や造影検査を含む定期的な心機能精査が必要になる(グレードB,クラス6).

③病態と治療

 表14を参照188),506)-517)

2 リウマチ性心筋障害

①病態

 リウマチ熱はA群溶血性連鎖球菌感染症(GAS)合併症で,心炎,多関節炎,小舞踏病,皮下結節,輪状紅斑を主症状とする(Jones診断基準518)).GAS細胞壁のM蛋白が心筋myosinや弁基底膜 lamininと共通抗原性を持つため,M蛋白抗体が自己心筋細胞や弁組織に炎症を惹起する519)-521).心臓病変は心筋障害,心内膜炎(弁膜炎),心外膜炎に及ぶ.急性リウマチ熱では,間質血管周囲にAschoff結節(fibrinoid壊死を中心とした組織球浸潤の肉芽腫)が心臓全層に見られ,弁尖や腱索にはfibrin疣贅が形成される519),520).再発による炎症の増悪を繰り返すと,弁尖の破壊が生じて慢性リウマチ性心病変に移行する521).

②診断

 急性リウマチ性心炎はGAS感染2~3週間後に全身倦怠,胸痛,頻脈などで発症し,急性炎症反応の持続,弁膜症による心雑音や心音異常,心電図でPR時間延長やST変化,心エコーによる僧帽弁 /大動脈弁閉鎖不全で診断される519),520).

③病態と治療

 急性期にはGAS感受性の抗生物質(PCGやAMPC)を十分に投与するとともに,心炎合併例ではアスピリンとステロイド剤の投与を行い,炎症所見が改善すれば2~3週間後より漸減する519).再発予防として日本ではペニシリンGを20~40万単位1日1回内服が推奨されている522).弁膜症を残した症例では10年,40歳まで,もしくは生涯内服が必要となる523).慢性リウマチ性心臓病の治療は成人の慢性心不全治療に準ずる519),520).

3 心内膜線維弾性症

①病態

 心室(および心房)の心内膜の弾性線維および膠原線維の増成による心内膜の肥厚により心機能障害を呈する疾患524)-526).原発性と二次性(重症先天性大動脈弁狭窄,大動脈縮窄,左心低形成,左冠動脈肺動脈起始(BWG

症候群)など)526),527)がある.成因には胎生期のウイルス感染,特にMumpsウイルスとの関連528)が示唆され,ワクチン接種の影響で近年発症が激減した526).母親のSSA/SSB抗体陽性も原因となる526).本疾患は乳児期よ

Page 54: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

56 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

表14 先天性心疾患に関連した心疾患の治療(エビデンスレベル4a-6)

先天性心疾患病態 グレード A グレード B グレード C1 グレード C2~D

2心室循環における慢性心不全

左室収縮不全

構造異常を伴わない左心不全(主に術後)

ACE阻 害 薬,ARB(Stage B以上に少量より開始,血圧低下に 注 意 し 漸 増 ),PDEⅢ阻害薬(Stage C以上)

β遮断薬(Stage C以上に少量より開始,血圧低下および心不全の増悪に注意しながら漸増)利尿薬,抗アルドステロン薬

(Stage BもしくはC以上にうっ血症状の改善を目的に使用)

ジギタリス(Stage C以上に低用量を使用.血中濃度をモニターし,徐脈や不整脈の出現に注意)経口強心薬(Stage C以上で,カテコラミンからの離脱時やβ遮断薬導入時などで使用を検討)

容量負荷を伴う左心不全

利尿薬,抗アルドステ ロ ン 薬(Stage B以上)

外科治療,カテーテル治療(血行動態の異常を伴い,治療適応のある症例に対して)

ACE阻害薬,ARB(Stage B以上に少量より開始,血圧低下に注意し漸増),PDEⅢ阻害薬

(Stage C以上)

ジギタリス(Stage C以上に低用量を使用.血中濃度をモニターし,徐脈や不整脈の出現に注意)経口強心薬(Stage C以上で,カテコラミンからの離脱時やβ遮断薬導入時などで使用を検討)

圧負荷を伴う左心不全

外科治療,カテーテル治療(血行動態の異常を伴い,治療適応のある症例に対して)

β遮断薬(左室流出路狭窄症例に対して)利尿剤,抗アルドステロン薬

(肺うっ血を伴う症例に使用)

ジギタリス,経口 強 心 薬,PDEⅢ阻害薬は左室流出路狭窄例には使用しない

構造異常を伴わない左室拡張不全(主に術後)

利尿薬,抗アルドステ ロ ン 薬(Stage B以上)

ACE阻害薬,ARB(Stage B以上に少量より開始,血圧低下に注意し漸増),PDEⅢ阻害薬

(Stage C以上)

抗血小板薬もしくは抗凝固薬(心房拡大の著しい症例における血栓形成予防に使用)

拡張不全におけるβ遮断薬およびCa2+拮抗薬の効果は十分明らかでない

解剖学的右心(体心室)収縮不全

外科治療,カテーテル治療(血行動態の異常を伴い,治療適応のある症例に対して)抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,ペースメーカー植え込み(血行動態に悪影響を及ぼす重篤な不整脈の合併例に対して)

ACE阻害薬,ARB(Stage B以上に少量より開始,血圧低下に注意し漸増),PDEⅢ阻害薬

(Stage C以上)利尿薬,抗アルドステロン薬

(Stage Bも し く はC以 上 に,うっ血症状の改善を目的に使用)

ジギタリス(Stage C以上に低用量を使用.血中濃度をモニターし,徐脈や不整脈の出現に注意)β遮断薬(Stage C以上に少量より開始し,血圧低下および心不全の増悪に注意しながら漸増.洞機能不全や房室伝導障害の患者では徐脈に注意)経口強心薬(Stage C以上で,カテコラミンからの離脱時やβ遮断薬導入時などで使用を検討)

単心室循環における慢性心不全(Fontan術後)

外科治療,カテーテル治療(重篤な血行動態の異常を伴い,治療適応のある症例に対して,心機能に十分に留意して実施する)抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,ペースメーカー植え込み(血行動態に悪影響を及ぼす重篤な不整脈の合併例に対して,心機能に十分に留意して実施する)

ACE阻害薬,ARB(Stage B以上に少量より開始,血圧低下に注意して漸増.エビデンスに乏しいが,心機能の改善が期 待 で き る ),PDEⅢ 阻 害 薬

(Stage C以上)

利尿薬,抗アルドステロン薬(Stage C以上にうっ血症状の改善を目的に使用.ループ利尿薬の長期使用はRAS系を賦活化させる可能性があり,注意する)

β遮断薬(Stage C以上に少量より開始し,血圧低下および心不全の増悪に注意しながら漸増.洞機能不全や房室伝導障害の患者では徐脈に注意.エビデンスに乏しいが,症例により心機能の改善が期待できる)経口強心薬(Stage C以上で,カテコラミンからの離脱時やβ遮断薬導入時などで使用を検討)抗血小板薬および抗凝固薬(特に心機能の低下したFontan循環において,血栓形成の予防に使用)

末梢血管収縮作用の強い強心薬の使用は,血管抵抗を増大させ,Fontan循環に悪影響を及ぼす可能性があり,注意を要する.陽圧人工換気は,肺血管抵抗上昇さ せ てFontan循環に悪影響を及ぼす可能性があり,短期間に留める努力をする.

注:1)小児ではランダム化比較試験は極めて少ないため,表のエビデンスレベルは記述研究を中心としたレベル4aから専門家の意見によるレベル6に基づく.2)抗不整脈薬,カテーテルアブレーション,心臓再同期療法(CRT)の適応は,日本循環器学会「慢性心不全治療ガイドライン(2010改訂版)」およびその他のガイドラインや文献を参考にし,各々の患者の血行動態を考慮して判断するのが望ましい.3)先天性心疾患における心臓移植の適応は,日本小児循環器学会「小児心臓移植の適応判定ガイダンス」を参考にされたい.

Page 55: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

57循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

り重度の心不全を来たし,通常予後は不良である524)-526).

②診断

 胸部X線での心拡大,心電図では左室肥大と左胸部誘導でのT波陰転,心エコー検査で左室収縮能の著名な低下と心内膜輝度の上昇が認められる.拡張型心筋症(心筋生検で診断),BWG症候群(断層心エコーもしくは冠動脈造影で左冠動脈の起始を確認する),心筋緻密化障害などとの鑑別が必要である524),526).

③病態と治療

 他の拡張型心筋症に準じ,利尿剤およびACE阻害剤やβ遮断剤などの抗心不全療法を血圧低下に注意しながら慎重に投与する.内科的治療に反応しない重症例は心臓移植の適応となる524),526),529).

4 膠原病その他 膠原病は結合組織の炎症,変性を特徴とする全身性慢性炎症性疾患である.その機序としては自己免疫機序が関与している.膠原病はしばしば臓器障害を来たし,心筋障害が進行した場合には拡張型心筋症様の病態を呈することがある.以下全身性エリテマトーデス(systemic

lupus erythematosus; SLE),強皮症(systemic sclerosis;

SSc), 多 発 性 筋 炎 /皮 膚 筋 炎(polymyositis/

dermatomyositis; PM/DM), 結 節 性 多 発 動 脈 炎(polyarteritis nodosa; PAN),Churg-Strauss症候群(CSS)およびMarfan症候群(MFS)に関して概説する. SLEは血管壁,心筋,心外膜への免疫複合体と抗核抗体の沈着を特徴とした自己免疫疾患である.心病変は50%以上に合併すると報告されている.腎炎の合併がないSLEでは心病変が主要な死因である.心外膜炎が最も頻度が高い(11~54%).SLEに合併する特徴的な心筋病変は心筋炎である.無症状のことが多く臨床的に心筋炎と診断されることはまれである(10%).過去の剖検例の検討では57%と報告されており,ステロイド治療の導入にて減少したと考えられている.免疫蛍光検査で剖検心の冠動脈壁や血管周囲組織に免疫複合体や補体の沈着を認め,これらが心筋障害の原因であると考えられている.心筋生検では間質のリンパ球浸潤,斑状の線維化,心筋細胞壊死を認める.MRI,Gaシンチグラフィは心筋における炎症の診断に有用である.心筋炎の治療には高用量のステロイドが推奨されている.弁膜炎から大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全も報告されている.冠動脈病変は6~10%に合併する.特に疾患活動性の高い若年者で血管炎から心筋梗塞発症のリスクが高

い.またステロイド長期投与,長期罹患期間が動脈硬化から心筋梗塞発症の危険因子であった.上記の心筋炎,弁膜症,心筋梗塞から拡張型心筋症様の病態を呈することが報告されている530)-532).抗リン脂質抗体症候群は20%以上に合併し,血栓傾向から,肺高血圧,流産の原因となる.また微小冠動脈塞栓から拡張型心筋症様の病態を呈したとの報告もある533). SScは皮膚や内臓のびまん性血管病変と線維化を特徴とする結合織病である.しばしば心病変を合併し,剖検症例において約80%に認めたとの報告もある.SScの心病変はたいてい無症状であるが臨床的症状が出現した場合(20~30%未満)は予後不良である.心病変としては心嚢水貯留,不整脈,伝導障害,弁膜症,虚血,心肥大などが認められる.剖検心では斑状の線維化,収縮帯の壊死が両心室に認められる.これらは主要冠動脈の支配領域と一致しない.冠動脈造影にて主要分枝に狭窄が認められない場合でも心筋血流シンチグラフィにて固定血流欠損を認め,また病理組織にて微小冠動脈の内膜肥厚を認めることから,微小冠血管攣縮による局所的な虚血の繰り返し(cardiac Raynaud`s phenomenon)が心筋線維化を来たし,結果的に不可逆性の心筋障害の原因となると考えられている.心筋の血流障害から左室の収縮能,拡張能だけでなく,右室も障害される.負荷心筋血流シンチグラフィは早期診断に有用とされている.治療としてはCa拮抗薬,ACE阻害薬等の血管拡張薬が挙げられる.心臓超音波の組織ドプラ像やMRIを用いた検討では心筋の血流障害だけでなく機能不全も改善したとの報告がある.またプロスタグランジン製剤の有用性を示唆する報告もある534)-537). PM/DMは横紋筋の全身性炎症性疾患で特に近位筋が障害される.骨格筋だけでなく心筋も障害され心不全を発症することがあるが,重症化するのはまれである.心病変を合併すると予後不良である.伝導障害,動脈硬化,冠攣縮性狭心症,ステロイド合併症,高血圧,心筋炎から心不全を発症する.病理では心筋線維化,炎症性心筋炎,血管炎を認める.治療としてはステロイド,免疫抑制剤が推奨される.診断と治療の効果判定のために心筋生検が有用である538),539). PANは全身の中等大の動脈の系統的な壊死血管炎である.心外膜下の微小冠動脈病変が認められる.その結果,うっ血性心不全,心筋梗塞,心筋炎,心膜炎が発症する539),540). CSSはアレルギー性肉芽腫性血管炎とも呼ばれ,好酸球増加,気管支喘息,壊死性肉芽腫性血管炎による多発神経炎を特徴とする疾患である.心外膜炎,心筋炎,冠

Page 56: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

58 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

動脈炎などの心病変は15~55%に合併し主要な死因である.うっ血性心不全は15~30%に発症する.好酸球の直接浸潤,肉芽腫浸潤,冠動脈炎が心筋炎を来たしうっ血性心不全の原因となる.ステロイド,免疫抑制剤は病初期には有効である540),541). MFSは骨格筋,眼球,心血管病変を合併する結合織病で,fibrillin 1 (FBN1)を原因遺伝子とした常染色体優性遺伝を呈する.心血管病変をしばしば合併し,主要な死因である.重度の大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全を合併した場合には左室の拡大,収縮不全を認める.しかしながら非常にまれではあるが心筋障害のみを認めることがある542).心筋内のFBN1の障害,大動脈壁のスティフネスの上昇による後負荷増大が原因と考えられている.最近のMRIを用いた報告では25%に左室収縮不全を認めたとされている.また左室拡大,右室機能障害も認める543).これらの心筋障害の大部分は軽度であり拡張型心筋症の基準は満たすことはまれであり,無症状であることが多い544). 以上,結合織病では原疾患により一次性に心筋障害を来たすもの,二次性に心筋障害を来たすものがあり,進行した場合には拡張型心筋症様の病態を呈すると考えられる.心筋症を合併した膠原病患者[SSc,SLE,分類不能結合織病(undifferentiated connective tissue disease,UCTD)]と特発性拡張型心筋症の間で原疾患の差異と予後の違いを比較検討したところ,特発性拡張型心筋症と比べてUCTDは有意に予後不良,またSScは予後不良の傾向を示し,SLEは予後不変であったとの報告がある.原疾患別に合併心筋症の予後が異なると考えられる545).近年の治療の進歩にかかわらず,心筋症を有する膠原病患者の予後は不良である.心筋障害による心不全が初発症状である場合もあり,拡張型心筋症の原疾患の鑑別疾患として膠原病は重要である.現時点では膠原病と心筋症に関しては報告が少なく,さらなる検討が望まれる.

2 最新心不全治療の展望

1 和温療法 和温療法は,乾式遠赤外線均等低温サウナ装置を用いた心不全に対する非薬物治療である.その方法は,60℃ の均等乾式サウナ浴を15分間施行した後,出浴後30分間の安静保温を行う546).加温により,患者の深部体温は約1.0℃上昇し,出浴後の安静保温により温熱効果が持続する.さらに,その間の心拍数の増加や体血圧の変化はわずかであり,酸素消費量の変化は0.3 METs程

度であることから,和温療法は心臓に対して負荷のない,むしろ減負荷治療法である547).また,和温療法前後に体重を測定し,体重差を発汗量とし,それに見合った量(約150~300 mL程度)の飲水をすることで,脱水の予防に努める. 和温療法の心不全に対する急性効果として,温熱性血管拡張作用により心臓に対する前・後負荷が軽減し,心拍出量が増加する.さらに,肺血管および全身静脈の拡張に伴う前負荷の軽減により,僧帽弁逆流の減少および肺動脈楔入圧の減少がもたらされる547). 和温療法の心不全に対する慢性効果として,心機能・血管内皮機能および自律神経機能の有意な改善,心不全症状の軽減,酸化ストレスや脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP)の有意な減少が認められる547)-552).また,心室性不整脈は2週間の和温療法により有意に減少する553).退院後も外来で週2回程度,和温療法を継続することにより,心不全患者の死亡や心不全による再入院を有意に減らし,予後を改善させる554).前向きの多施設共同研究により,和温療法の心不全患者に対する有用性と安全性が確認された555)(図16).

図16 和温療法(4週間)の慢性効果(多施設共同研究の結果)

和温療法前

和温療法後

血漿 BNPp<0.0001

1000

800

600

400

200

(pg/dL)

和温療法前

和温療法後

左室拡張末期径p<0.0001

65

60

55

50

(mm)

和温療法前

和温療法後

左室駆出率p<0.0001

40

35

30

25

(%)

和温療法前

和温療法後

左房径p<0.05

45

40

35

(mm)

Page 57: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

59循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

 和温療法による慢性効果発現の機序の1つとして,血管内皮における一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現亢進を介した血管内皮機能改善効果が挙げられる556). ただし,和温療法は,急性効果として心拍出量を有意に増加させるため,高度の大動脈弁狭窄症や閉塞性肥大型心筋症の重症例に対しては慎重に施行すべきである.感染症がコントロールできていない患者や高熱患者には禁忌である.

心不全に対する非薬物治療としての和温療法:(エビデンスレベル:3,推奨グレード:B)

2 免疫吸着療法 拡張型心筋症の成因の1つとして,自己免疫機序が古くから指摘されている.イムノブロット法,蛍光免疫染色法,ELISA法などを駆使すると,拡張型心筋症患者の85%に何らかの抗心筋自己抗体が検出される557),558).本自己抗体のうち少なくともいくつかは病態生理学的意義を持ち,その病態の増悪因子になることが明らかにされてきた12)-14),17).このような抗心筋自己抗体を除去する方法が免疫吸着療法である. 本治療法は拡張型心筋症による難治性心不全例を対象に,1996年以降ドイツを中心に臨床応用が始まった.小規模ながら無作為割り付け比較試験も行われ,その効果が検証されてきた.1週間に4~5回連日の免疫吸着療法あるいは4か月間にかけて反復する方法により,概ね心機能・血行動態が改善し,血中のβ1アドレナリン受容体に対する抗体価は低下するとの結果が得られた559)-562). 我が国では,2006年から重症拡張型心筋症患者を対象とする免疫吸着療法の臨床応用が始まった.16例に施行したパイロット試験の結果では,血漿BNP濃度は752±156 pg/mLから432±96 pg/mLに低下し,6分間歩行距離は延長した.左室駆出率は3か月後に有意に増加した.本治療施行前後において,血圧低下,ショック,出血,感染など重篤な有害事象を認めなかった563),564). 初期の臨床成績では心機能・血行動態の改善とともにβ1アドレナリン受容体に対する自己抗体価が低下して

いることから,単純に本自己抗体の除去が効果の発現に主たる意義を有すると信じられていた.しかしながら,この固定概念を覆すいくつかのデータが報告されつつある.吸着カラムの抽出液を用いて同自己抗体の有無を検討すると,本自己抗体陽性患者と同様に陰性患者においても免疫吸着療法による循環動態と心機能の改善が得られることがわかった.本治療法終了後の吸着カラム抽出液から IgG分画を精製し,成熟ラット心筋細胞に添加すると,細胞収縮は低下し,カルシウム・トランジエントは減弱した565).このことは,β1受容体抗体はアゴニスト様作用を有することと矛盾する結果である.免疫吸着によりβ1受容体抗体が除去されてはいるが,実は混在する何らかの自己抗体が治療効果の鍵を握っている可能性も考えられる.Staudtらはこのような未同定の抗体を“心抑制性抗体”とし,本治療法の効果を予測する上で重要な意義を有するとしている566). 海外における免疫吸着にはプロテインAカラムと抗IgGカラムが主に使われている.プロテインAは IgGサブクラス1,2,4に親和性が強いが,クラス3には親和性は低い.プロテインAカラムを用いた5日間連続の吸着療法では,IgG全体では95%の除去率であったが,IgG3に限ると除去率は61%であった.IgG3はウイルス抗原の中和,抗体による細胞傷害,補体の活性化など免疫反応において中心的役割を担い,抗ミオシン抗体など本治療の標的となる重要な自己抗体がこのサブクラスに属することが知られている.海外での成績においても,IgG3に属する抗体の除去が治療効果の鍵を握ることが明らかにされている567).我が国においては IgG3に選択性の高いトリプトファン・カラムの使用が可能である.本カラムは抗 IgGカラムのように抗原性に乏しく,安全性に富む.IgGの低下の程度が少なく済むので,終了後の免疫グロブリンの補充も不要である.現在,5回の吸着と10回の吸着の無作為割り付け比較多施設共同臨床試験(Randomized, Self- and Parallel Group-Comparative

Trial using Immunoadsorption Plasma-apheresis of Dilated

Cardiomyopathy; RESCUE-DCM; UMIN #000003106)が進行中である.

Page 58: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

60 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

文  献

1. 厚生労働省難治性疾患克服事業 特発性心筋症調査研究班.心筋症,診断の手引きとその解説.北畠顕他編.かりん舎,札幌 2005.

2. McKenna WJ, et al. Report of the 1995 World Health

Organization/International Society and Federation of

Cardiology task force on the definition and classification of

cardiomyopathies. Circulation 1996; 93: 841. 3. Maron BJ , e t a l . Contemporary def in i t ions and

classification of the cardiomyopathies. Circulation 2006; 113: 1807-1816.

4. Elliot P, et al. Classification of the cardiomyopathies: a

position from the european society of cardiology working

group on myocardial and pericardial diseases. Eur Heart J

2008; 29: 270-276. 5. Ng R, Better N, Green MD. Anticancer agent and

cardiotoxicity. Semin Oncol 2006; 33: 2-14. 6. Bowles NE, Ni J, Kearney DL, et al. Detection of viruses

in myocardial tissues by polymerase chain reaction. evidence

of adenovirus as a common cause of myocarditis in children

and adults. J Am Coll Cardiol. 2003; 42: 466-472. 7. Kühl U, Pauschinger M, Noutsias M, et al. High prevalence

of viral genomes and multiple viral infections in the

myocardium of adults with “idiopathic” left ventricular

dysfunction. Circulation 2005; 111: 887-893. 8. Ma t sumor i A . Hepa t i t i s C v i ru s i n f ec t i on and

cardiomyopathies. Circ Res 2005; 96: 144. 9. Badorff C, Lee CH, Lamphear BJ, et al. Enteroviral

protease 2A cleaves dystrophin: evidence of cytoskeletal

disruption in an acquired cardiomyopathy. Nat Med 1999; 5: 320-326.

10. Xiong D, Yajima T, Lim BK, et al. Inducible cardiac-

restricted expression of enteroviral protease 2A is sufficient to

induce dilated cardiomyopathy. Circulation 2007; 115: 94-102.

11. Lauer B, Schannwell M, Kühl U, et al. Antimyosin

autoantibodies are associated with deterioration of systolic

and diastolic left ventricular function in patients with chronic

myocarditis. J Am Coll Cardiol 2000; 35: 11-18. 12. Iwata M, Yoshikawa T, Baba A, et al. Autoimmunity

against the second extracellular loop of beta (1)-adrenergic

receptors induces beta-adrenergic receptor desensitization and

myocardial hypertrophy in vivo. Circ Res 2001; 88: 578-586. 13. Iwata M, Yoshikawa T, Baba A, et al. Autoantibodies

against the second extracellular loop of beta1-adrenergic

receptors predict ventricular tachycardia and sudden death in

patients with idiopathic dilated cardiomyopathy. J Am Coll

Cardiol 2001; 37: 418-424. 14. Baba A, Yoshikawa T, Ogawa S. Autoantibodies produced

against sarcolemmal Na-K-ATPase: possible upstream targets

of arrhythmias and sudden death in patients with dilated

cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 2002; 40: 1153-1159.

15. Okazaki T, Tanaka Y, Nishio R, et al. Autoantibodies

against cardiac troponin I are responsible for dilated

cardiomyopathy in PD-1-deficient mice. Nat Med 2003; 9: 1477-1483.

16. Fukuda Y, Miyoshi S, Tanimoto K, et al. Autoimmunity

against the second extracellular loop of beta1-adrenergic

receptors induces early afterdepolarization and decreases in

K-channel density in rabbits. J Am Coll Cardiol 2004; 43: 1090-1100.

17. Baba A, Yoshikawa T, Fukuda Y, et al. Autoantibodies

against M2-muscarinic acetylcholine receptors: new upstream

targets in atrial fibrillation in patients with dilated

cardiomyopathy. Eur Heart J 2004; 25: 1108-1115. 18. Schmitt JP, Kamisago M, Asahi M, et al. Dilated

cardiomyopathy and heart failure caused by a mutation in

phospholamban. Science 2003; 299: 1410-1413. 19. Lozano MD, Rubocki RJ, Wilson JE, et al. Human

leukocyte antigen class II associations in patients with

idiopathic dilated cardiomyopathy. Myocarditis Treatment

Trial Investigators. J Card Fail 1997; 3: 97-103. 20. Liu W, Li W, Sun N. Association of HLA-DQ with

idiopathic dilated cardiomyopathy in a northern Chinese Han

population. Cell Mol Immunol 2004; 1: 311-314. 21. Caforio AL, Mahon NG, Baig MK, et al. Prospective

familial assessment in dilated cardiomyopathy: cardiac

autoantibodies predict disease development in asymptomatic

relatives. Circulation 2007; 115: 76-83. 22. Zhang L, Hu A, Yuan H, et al. A missense mutation in the

CHRM2 gene i s assoc ia ted wi th fami l ia l d i l a ted

cardiomyopathy. Circ Res 2008; 102: 1426-1432. 23. Lloyd-Jones D, Adams RJ, Brown TM, et al. Executive

summary: Heart disease and stroke statistics--2010 update: A

report from the american heart association. Circulation 2010; 121: 948-954.

24. Tsuchihashi M, Tsutsu i H, Kodama K. Cl in ica l

characteristics and prognosis of hospitalized patients with

congestive heart failure--a study in fukuoka, japan. Jpn Circ J

2000; 64: 953-959. 25. 和泉徹.慢性心不全の臨床像と疫学.心不全治療の最前線-Ⅰ心不全の疫学と病態生理.2002(http://jams.med.

or.jp/symposium/full/122006.pdf). 26. Koseki Y, Watanabe J, Shinozaki T, et al. Characteristics

and 1-year prognosis of medically treated patients with

chronic heart failure in japan. Circ J 2003; 67: 431-436. 27. Tsutsui H, Tsuchihashi-Makaya M, Kinugawa S.

Characteristics and outcomes of patients with heart failure in

general practices and hospitals. Circ J 2007; 71: 449-454. 28. Tsuchihashi-Makaya M, Hamaguchi S, Kinugawa S, et al.

Characteristics and outcomes of hospitalized patients with

heart failure and reduced vs preserved ejection fraction.

Report from the japanese cardiac registry of heart failure in

Page 59: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

61循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

cardiology (jcare-card). Circ J 2009; 73: 1893-1900. Epub

2009 Jul 1831. 29. 難病情報センター.特発性拡張型(うっ血型)心筋症 

診断・治療指針2010(http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/075 _i.htm).

30. Ho KK, Pinsky JL, Kannel WB, et al. The epidemiology of

heart failure: The framingham study. J Am Coll Cardiol 1993; 22: 6A-13A.

31. Lipshultz SE, Sleeper LA, Towbin JA, et al. The incidence

of pediatric cardiomyopathy in two regions of the united

states. N Engl J Med 2003; 348: 1647-1655. 32. Lee RJ, Kalman JM, Fitzpatrick AP, et al. Radiofrequency

catheter modification of the sinus node for “inappropriate”

sinus tachycardia. Circulation 1995; 92: 2919-2928. 33. Lakdawala NK, Givertz MM. Dilated cardiomyopathy with

conduction disease and arrhythmia. Circulation 2010; 122: 527-534.

34. Meinertz T, Hofmann T, Kasper W, et al. Significance of

ventricular arrhythmias in idiopathic dilated cardiomyopathy.

Am J Cardiol 1984; 53: 902-907. 35. Hofmann T, Meinertz T, Kasper W, et al. Mode of death in

idiopathic dilated cardiomyopathy: a multivariate analysis of

prognostic determinants. Am Heart J 1988; 116: 1455-463. 36. Olshausen KV, Stienen U, Schwarz F, et al. Long-term

prognostic significance of ventricular arrhythmias in

idiopathic dilated cardiomyopathy. Am J Cardiol 1988; 61: 146-151.

37. Mancini DM, Wong KL, Simson MB. Prognostic value of

an abnormal signal-averaged electrocardiogram in patients

with nonischemic congestive cardiomyopathy. Circulation

1993; 87: 1083-1092. 38. Turrito G, Ahuja RK, Caref EB, et al. Risk stratification for

arrhythmic events in patients with nonischemic dilated

cardiomyopathy and nonsustained ventricular tachycardia:

role of programmed ventricular stimulation and the signal-

averaged electrocardiogram. J Am Coll Cardiol 1994; 24: 1523-1528.

39. Jessup M, Abraham WT, Casey DE, et al. 2009 focused

update: ACCF/AHA guidelines for the diagnosis and

management of heart failure in adults: a report of the

American College of Cardiology Foundation/American Heart

Association task force on practice guidelines: developed in

collaboration with the International Society for Heart and

Lung Transplantation. Circulation 2009; 119: 1977-2016. 40. Rosenbaum DS, Albrecht P, Cohen RJ. Predicting sudden

cardiac death from T wave alternans of the surface

electrocardiogram: promise and pitfalls. J Cardiovasc

Electrophysiol 1996; 7: 1095-1111. 41. Chow T, Kereiakes DJ, Onufer J, et al. MASTER Trial

Investigators:Does microvolt T-wave alternans testing predict

ventricular tachyarrhythmias in patients with ischemic

cardiomyopathy and prophylactic defibrillators? The

MASTER (Microvolt T Wave Alternans Testing for Risk

Stratification of Post-Myocardial Infarction Patients) trial. J

Am Coll Cardiol 2008; 52: 1607-1615. 42. Costantini O, Hohnloser SH, Kirk MM, et al. ABCD Trial

Investigators:The ABCD (Alternans Before Cardioverter

Defibrillator) Trial: strategies using T-wave alternans to

improve efficiency of sudden cardiac death prevention. J Am

Coll Cardiol. 2009; 53: 471-479. 43. Grimm W, Christ M, Bach J, et al. Noninvasive arrhythmia

risk stratification in idiopathic dilated cardiomyopathy: results

of the Marburg Cardiomyopathy Study. Circulation 2003; 108: 2883-2891.

44. Salerno-Uriarte JA, De Ferrari GM, Klersy C, et al.

ALPHA Study Group Investigators:Prognostic value of

T-wave alternans in patients with heart failure due to

nonischemic cardiomyopathy: results of the ALPHA Study. J

Am Coll Cardiol 2007; 50: 1896-1904. 45. Zipes DP, Camm AJ, Borggrefe M, et al. ACC/AHA/ESC

2006 Guidelines for Management of Patients With Ventricular

Arrhythmias and the Prevention of Sudden Cardiac Death: A

Report of the American College of Cardiology/American

Heart Association Task Force and the European Society of

Cardiology Committee for Practice Guidelines. Circulation

2006; 114: e385 - e484. 46. Hunt SA, Abraham WT, Chin MH, et al. 2009 Focused

Update: ACCF/AHA Guidelines for the Diagnosis and

Management of Heart Failure in Adults: A Report of the

American College of Cardiology Foundation/American Heart

Association Task Force on Practice Guidelines: Developed in

Collaboration With the International Society for Heart and

Lung Transplantation. Circulation 2009; 119: 1977-2016. 47. Yang JC, Wesley RC, Froelicher VF. Ventricular

tachycardia during routine treadmill testing. Risk and

prognosis. Arch Intern Med 1991; 151: 349-353. 48. Frolkis JP, Pothier CE, Blackstone EH, et al. Frequent

ventricular ectopy after exercise as a predictor of death. N

Engl J Med 2003; 348: 781-790. 49. Eckart RE, Field ME, Hruczkowski TW, et al. Association

of electrocardiographic morphology of exercise-induced

ventricular arrhythmia with mortality. Ann Intern Med 2008; 149: 451-460.

50. Lipkin DP, Scriven AJ, Crake T, et al. Six minute walking

test for assessing exercise capacity in chronic heart failure. Br

Med J (Clin Res Ed) 1986; 292: 653-655. 51. 大西洋三,佐藤秀幸,是恒之宏,他.6分間歩行試験の

正常値の分布とその規定因子に関する検討.Jpn Circ J

1998; 61 (Suppl III): 857. 52. Olsson LG, Swedberg K, Clark AL, et al. Six minute

corridor walk test as an outcome measure for the assessment

of treatment in randomized, blinded intervention trials of

chronic heart failure: a systematic review. Eur Heart J 2005; 26: 778-793.

53. Grimm W, Hoffmann J, Menz V et al. Programmed

ventricular stimulation for arrhythmia risk prediction in

patients with idiopathic dilated cardiomyopathy and

nonsustained ventricular tachycardia. J Am Coll Cardiol

Page 60: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

62 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

1998; 32: 739-745. 54. Mitra RL, Buxton AE. The clinical significance of

nonsustained ventricular tachycardia. J Cardiovasc

Electrophysiol 1993; 4: 490-496. 55. Mason JW, for the ESVEM Investigators. A comparison of

seven antiarrhythmic drugs in patients with venticualr

tachyarrhythmias. N Engl J Med 1993; 329: 452-458. 56. The CASCADE Investigators. Randomized anti-arrhythmic

drug therapy in survivors of cardiac arrest (the CASCADE

Study). Am J Cardiol 1993; 72: 280-287. 57. Buxton AE, Lee KL, Fisher JD, et al. A randomized study

of the prevention of sudden death in patients with coronary

artery disease. N Engl J Med 1999; 337: 1569-1575. 58. Lau EW, Griffith MJ, Pathmanathan RK, et al. The

Mid lands Tr i a l o f Empi r i ca l Amiodarone ve r sus

Electrophysiology-guided Interventions and Implantable

Cardioverter-defibrillators (MAVERIC): a multi-centre

prospective randomised clinical trial on the secondary

prevention of sudden cardiac death. Europace 2004; 6: 257-266.

59. Epstein AE, DiMarco JP, Ellenbogen KA, et al. ACC/AHA/

HRS 2008 guidelines for device-based therapy of cardiac

rhythm abnormalities.a report of the American College of

Cardiology/American Heart Association task force on practice

guidelines. Circulation 2008; 117: e350-e408. 60. Sawada Y, Suda M, Takeuchi T, et al. Stretch-induced

hypertrophic growth of cardiocytes and processing of brain-

type natriuretic peptide are controlled by proprotein-

processing endoprotease furin. J Biol Chem 1997; 272: 20545-20554.

61. Nakamura M, Tanaka F, Nagano M, et al. B-type natriuretic

peptide testing for structural heart disease screening: a general

population-based study. J Card Fail 2005; 11: 705-712. 62. Velagaleti RS, Gona P, Vasan RS, et al. Multimarker

approach for the prediction of heart failure incidence in the

community. Circulation 2010; 122: 1700-1706. 63. Miller WL, Hartman KA, Jaffe AS, et al. Troponin, B-type

natriuretic peptides and outcomes in severe heart failure:

differences between ischemic and dilated cardiomyopathies.

Clin Cardiol 2007; 30: 245-250. 64. Januzzi JL Jr, Chen-Tournoux AA, Moe GA. Amino-

terminal pro-B-type natriuretic peptide testing for the

diagnosis or exclusion of heart failure in patients with acute

symptoms. Am J Cardiol 2008; 101 (3A): 29-38. 65. Sato Y, Yamada T, Takatsu Y, et al. Persistently increased

serum concentrations of cardiac troponin t in patients with

idiopathic dilated cardiomyopathy are predictive of adverse

outcomes. Circulation 2001; 103: 369-374. 66. Nellessen U, Goder S, Tschöke S, et al. Serial analysis of

troponin I levels in patients with ischemic and nonischemic

dilated cardiomyopathy. Clin Cardiol 2006; 29: 219-224. 67. Komamura K, Sasaki T, Kitakaze M, et al. Heart-type fatty

acid binding protein is a novel prognostic marker in patients

with non-ischaemic dilated cardiomyopathy. Heart 2006; 92:

615-618. 68. Sabatine MS, Morrow DA, Braunwald E, et al. PEACE

Investigators. Prognostic significance of the Centers for

Disease Control/American Heart Association high-sensitivity

C-reactive protein cut points for cardiovascular and other

outcomes in patients with stable coronary artery disease.

Circulation 2007; 115: 1528-1536. 69. Mann DL. Inflammatory mediators and the failing heart:

past, present, and the foreseeable future. Circ Res 2002; 91: 988-998.

70. Vasan RS, Sullivan LM, D’Agostino RB, et al. Framingham

Heart Study. Inflammatory markers and risk of heart failure in

elderly subjects without prior myocardial infarction: the

Framingham Heart Study. Circulation 2003; 107: 1486-1491. 71. Mándi Y, Hogye M, Csanády M, et al. Cytokine production

and an t ibod ie s aga ins t hea t shock p ro te in 60 i n

cardiomyopathies of different origins. Pathobiology 2000; 68: 150-158.

72. Högye M, Mándi Y, Buzás K, et al. Comparison of

circulating levels of interleukin-6 and tumor necrosis factor-

alpha in hypertrophic cardiomyopathy and in idiopathic

dilated cardiomyopathy. Am J Cardiol 2004; 94: 249-251. 73. Imanaka-Yoshida K, Hiroe M, Yoshida T. Interaction

between cell and extracellular matrix in heart disease:

multiple roles of tenascin-C in tissue remodeling. Histol

Histopathol 2004; 19: 517-525. 74. Tsukada B, Terasaki F, Kitaura Y, et al. High prevalence of

chronic myocarditis in dilated cardiomyopathy referred for

left ventriculoplasty: expression of tenascin C as a possible

marker for inflammation. Hum Pathol 2009; 40: 1015-1022. 75. Aso N, Tamura A, Nasu M. Circulating tenascin-C levels in

patients with idiopathic dilated cardiomyopathy. Am J

Cardiol. 2004; 94: 1468-1470. 76. Terasaki F, Okamoto H, Kitabatake A, et al. Higher serum

tenascin-C levels reflect the severity of heart failure, left

ventricular dysfunction and remodeling in patients with

dilated cardiomyopathy. Circ J 2007; 71: 327-330. 77. Fujimoto N, Onishi K, Hiroe M, et al. Incremental

prognostic values of serum tenascin-C levels with blood

B-type natriuretic peptide testing at discharge in patients with

dilated cardiomyopathy and decompensated heart failure. J

Card Fail 2009; 15: 898-905. 78. Hare JM, et al. Ischemic cardiomyopathy: endomyocardial

biopsy and ventriculographic evaluation of patients with

congestive heart failure, dilated cardiomyopathy and coronary

artery disease. J Am Coll Cardiol 1992; 20: 1318-1325. 79. 中村仁,他.冠動脈三枝病変例と拡張型心筋症例の心エコー図所見の比較検討.J Cardiogr 1985; 15: 585-593.

80. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.慢性虚血性心疾患の診断と病態把握のための検査法の選択基準に関するガイドライン(2005年改訂版).

81. Medina R, et al. The value of echocardiography regional

wall motion abnormalities in detecting coronary artery disease

in patients with or without a dilated left ventricle. Am Heart J

Page 61: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

63循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

1985; 109: 799-803. 82. Ganau A, et al. Patterns of left ventricular hypertrophy and

geometric remodeling in essential hypertension. J Am Coll

Cardiol 1992; 19: 1550-1558. 83. Kono M, et al. Left ventricular global systolic dysfunction

has a significant role in the development of diastolic heart

failure in patients with systemic hypertension. Hypertens Res

2010; 33: 1167-1173. 84. Harris KM, et al. Prevalence, clinical profile, and

significance of left ventricular remodeling in the endstage

phase of hypertrophic cardiomyopathy. Circulation 2006; 114: 216-225.

85. ten Cate FJ, et al. Progression to left ventricular dilation in

patients with hypertrophic obstructive cardiomyopathy. Am

Heart J 97 1979: 762-765. 86. Fujiwara H, et al. Progression from hypertrophic

obstructive cardiomyopathy to typical dilated cardiomyopathy

like features in the end stage. Jpn Circ J 1984; 48: 1210-1214. 87. 大森浩二,他.拡張相肥大型心筋症とは?心拡大(読み

方) 心エコー 2008; 11: 1078-1085. 88. 田辺一明,他.特発性心筋症 臨床心エコー図学 第3

版 2008: 420-438. 89. Rober WC, et al. Sarcoidosis of the heart. Am J Med 1997; 63: 86-108.

90. Valantine H, et al. Sarcoidosis. A pattern of clinical and

morphological presentation. Br Heart J 1987; 57: 256-263. 91. Morimoto S, et al. A proposal for diagnostic criteria of

basal thinning of the interventricular septum in cardiac

sarcoidosis (CS). A multicenter study. Circ J 2005; 70 (suppl

I): 215. 92. 森本紳一郎,他.心臓サルコイドーシスの診断の手引きの改訂.呼と循 2006; 54: 955-961.

93. Kosuge H, et al. Left ventricular apical aneurysm in cardiac

sarcoidosis. Jpn heart J 2001; 42: 265-269. 94. 寺崎文生,他.拡張型心筋症を呈する心臓サルコイドーシス─左室縮小形成術(バチスタ手術)症例を中心に─.日サ会誌 2004; 24: 21-30.

95. 加藤靖周,他.心サルコイドーシスの心エコー.心エコー 2008; 6: 590-597.

96. Kawai S, et al. A morphological analysis of chronic

myocarditis. Jpn Circ J 1987; 51: 1385-1392. 97. Morimoto S, et al. Clinical and pathologic features of

chronic myocarditis: four autopsy cases presenting as dilated

cardiomyopathy in life. Am J Cardiovasc Pathol 1992; 4: 181-191.

98. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.急性および慢性心筋炎の診断・治療に関するガイドライン(2009年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_izumi_h.pdf

99. Falk RH, et al. The systemic amyloidosis. N Engl J Med

1997; 337: 898-909. 100. Falk RH. Diagnosis and management of the cardiac

amyloidoses. Circulation 2005; 112: 2047-2060. 101. Falk RH, et al. Sensitivity and specificity of the

echocardiographic features of cardiac amyloidosis. Am J

Cardiol 1987; 59: 418-422. 102. Klein AL, et al. Doppler characterization of left ventricular

diastolic function in cardiac amyloidosis. J Am Coll Cardiol

1989; 13: 1017-1026. 103. Klein AL, et al. Serial Doppler echocardiographic follow-

up of left ventricular diastolic function in cardiac amyloidosis.

J Am Coll Cardiol 1990; 16: 1135-1141. 104. Klein AL, et al. Prognostic significance of Doppler

measures of diastolic function in cardiac amyloidosis.

Circulation 1991; 83: 808-816. 105. McKenna WJ, et al. Diagnosis of arrhythmogenic right

ventricular dysplasia/cardiomyopathy. Task force of the

Working group Myocardial and Pericardial Disease of

theEuropean society of Cardiology and of the Scientific

council on Cardiomyopathies of the International Society and

Federation of Cardiology. Br Heart J 1994; 71: 215-218. 106. Yoerger DM, et al. Echocardiographic findings in patients

meeting task force criteria for arrhythmogenic right

ventricular dysplasia: new insights from the multidisciplinary

study of right ventricular dysplasia. J Am Coll Cardiol 2005; 45: 860-865.

107. Regan TJ, et al. Alcohol and the cardiovascular system.

JAMA 1990; 264: 377-381. 108. Piano MR, et al. Alcoholic cardiomyopathy: incidence,

clinical characteristics, and pathophysiology. Chest 2002; 121: 1638-1650.

109. Lazarevic AM, et al. Early changes in left ventricular

function in chronic asymptomatic alcoholics: relation to the

duration of heavy drinking. J Am Coll Cardiol 2000; 35: 1599-1606.

110. Okura H, et al. High-output heart failure as a cause of

pulmonary hypertension. Intern Med 1994; 33: 363-365. 111. Okura H, et al. Shoshin beriberi: a serial echocardiographic

assessment of its systolic and diastolic function. Jpn J Med

Ultrasonics 1997; 24: 1845-1849. 112. 大倉宏之.二次性心筋症による心不全はどう治療するか

 脚気心 新・心臓病診療プラクティス6.心不全に挑む・患者救う.筒井裕之,他.編.文光堂 2005: 411-413.

113. Jenni R, et al. Echocardiographic and pathoanatomical

characteristics of isolated left ventricular noncompaction: a

step towards classification as a distinct cardiomyopathy. Heart

2001; 86: 666-671. 114. Jenni R, et al. Isolated ventricular nonconpaction of the

myocardium in adults. Heart 2007; 93: 11-15. 115. Nigro G, e t a l . The inc idence and evolut ion of

cardiomyopathy in Duchenne muscular dystrophy. Int J

Cardiol 1990; 26: 271-277. 116. Melacini P, et al. Myocardial involvement is very frequent

among patients affected with subclinical Becker’s muscular

dystrophy. Circulation 1996; 94: 3168-3175. 117. Saito M, et al. Cardiac dysfunction with Becker muscular

dystrophy. Am Heart J 1996; 132: 642-647. 118. 三宅誠.神経・筋疾患の心血管病変の特徴.心エコー

Page 62: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

64 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

2008; 3: 212-217. 119. Bhakta D, et al . Prevalence of structural cardiac

abnormalities in patients with myotonic dystrophy type Ⅰ .

Am Heart J 2004; 147: 224-227. 120. Anan R, et al. Cardiac involvement in mitochondrial

diseases. Circulation 1995; 91: 955-961. 121. Richardson P, McKenna W, Bristow M, et al. Report of the

1995 World Health Organization/International Society and

Federation of Cardiology Task Force on the Definition and

Classification of cardiomyopathies. Circulation 1996; 93: 841-842.

122. 矢崎善一.ミトコンドリア心筋症.心筋疾患 日本臨床別冊 循環器症候群Ⅲ 2007: 266-270.

123. Singal SM, et al. Doxorubicin induced cardiomyopathy. N

Eng J Med 1998; 339: 900-905. 124. 相川大,他.二次性心筋症.臨床心エコー図学 第3版

2008: 439-457. 125. 安隆則.薬剤性心筋障害を堂診断するか?心エコー

2008; 3: 218-223. 126. Nakao S, et al. An atypical variant of Fabry’s disease in

men with left ventricular hypertrophy. N Engl J Med 1995; 333: 288-293.

127. Kawano M, et al. Significance of asymmetric basal

posterior wall thinning in patients with cardiac Fabry’s

disease. Am J Cardiol 2007; 99: 261-263. 128. Pieroni M, et al. Fabry’s disease cardiomyopathy:

Echoca rd iog raph ic de t ec t ion o f endomyoca rd i a l

glycosphingolipid compartmentalization. J Am Coll Cardiol

2006; 47: 1663-1671. 129. Demakis JG, et al. Peripartum cardiomyopathy. Circulation

1971; 44: 964-968. 130. 平沢邦彦.産褥心筋症.心筋疾患 日本臨床別冊 循環器

症候群Ⅲ 2007: 124-127. 131. Bellenger NG, Burgess MI, Ray SG, et al. Comparison of

left ventricular ejection fraction and volumes in heart failure

by echocardiography, radionuclide ventriculography and

cardiovascular magnetic resonance; are they interchangeable?

Eur Heart J 2000; 21: 1387-1396. 132. Kim RJ, Fieno DS, Parrish TB, et al. Relationship of MRI

delayed contrast enhancement to irreversible injury, infarct

age, and contractile function. Circulation 1999; 100: 1992-2002.

133. Wagner A, Mahrholdt H, Thomson L, et al. Effects of time,

dose, and inversion time for acute myocardial infarct size

measurements based on magnetic resonance imaging-delayed

contrast enhancement. J Am Coll Cardiol 2006; 47: 2027-2033.

134. Ricciardi MJ, Wu E, Davidson CJ, et al. Visualization of

discrete microinfarction after percutaneous coronary

intervention associated with mild creatine kinase-MB

elevation. Circulation 2001; 103: 2780-2783. 135. Kirn RJ, et al. The use of contrast-enhanced magnetic

Resonance imaging to identify reversible myocardial

dysfunction.N Engl J Med 2000; 343: 1445-1453.

136. Kühl HP, et al. Assessment of reversible myocardial

dysfunction in chronic ischaemic heart disease: comparison

of contrast-enhanced cardiovascular magnetic resonance and

a combined positron emission tomography-single photon

emission computed tomography imaging protocol. Eur Heart

J 2006; 27: 846-853. 137. Mahrholdt H, Goedecke C, Wagner A, et al. Cardiovascular

magnetic resonance assessment of human myocarditis: a

comparison to histology and molecular pathology. Circulation

2004; 109: 1250-1258. 138. Moon JC, Reed E, Sheppard MN, et al. The histologic basis

of late gadolinium enhancement cardiovascular magnetic

resonance in hypertrophic cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol

2004; 43: 2260-226. 139. McCrohon JA, Moon JC, Prasad SK, et al. Differentiation

of heart failure related to dilated cardiomyopathy and

coronary artery disease using gadolinium-enhanced

cardiovascular magnetic resonance. Circulation 2003; 108: 54-59.

140. Abdel-Aty H, Zagrosek A, Schulz-Menger J, et al. Delayed

enhancement and T2-weighted cardiovascular magnetic

resonance imaging differentiate acute from chronic

myocardial infarction. Circulation 2004; 109: 2411-1416 141. Reimer KA, Lowe JE, Rasmussen MM, et al. The

wavefront phenomenon of ischemic cell death. Myocardial

infarct size vs duration of coronary occlusion in dogs.

Circulation 1977; 56: 786-794. 142. Soriano CJ, Ridocci F, Estornell J, et al. Noninvasive

diagnosis of coronary artery disease in patients with heart

failure and systolic dysfunction of uncertain etiology, using

late gadolinium-enhanced cardiovascular magnetic resonance.

J Am Coll Cardiol 2005; 45: 743-748. 143. Assomull RG, Prasad SK, Lyne J, et al. Cardiovascular

magnetic resonance, fibrosis, and prognosis in dilated

cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 2006; 48: 1977-1985. 144. Matoh F, Satoh H, Shiraki K, et al. Usefulness of delayed

enhancement magnetic resonance imaging to differentiate

dilated phase of hypertrophic cardiomyopathy and dilated

cardiomyopathy. J Card Fail 2007; 13: 372-379. 145. Bohl S, Wassmuth R, Abdel-Aty H, et al. Delayed

enhancement cardiac magnetic resonance imaging reveals

typical patterns of myocardial injury in patients with various

forms of non-ischemic heart disease. Int J Cardiovasc

Imaging. 2008; 24: 597-607. 146. Maceira AM, Joshi J, Prasad SK, et al. Poole-Wilson PA,

Hawkins PN, Pennell DJ. Cardiovascular magnetic resonance

in cardiac amyloidosis. Circulation 2005; 111: 186-193. 147. Perugini E, Rapezzi C, Piva T, et al. Non-invasive

evaluation of the myocardial substrate of cardiac amyloidosis

by gadolinium cardiac magnetic resonance. Heart 2006; 92: 343-349.

148. Hosch W, Libicher M, Ley S, et al. MR imaging in cardiac

amyloidosis--morphology, function and late enhancement.

Rofo 2008; 180: 639-645.

Page 63: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

65循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

149. Vogelsberg H, Mahrholdt H, Deluigi CC, e t a l .

Cardiovascular magnetic resonance in clinically suspected

cardiac amyloidosis: noninvasive imaging compared to

endomyocardial biopsy. J Am Coll Cardiol 2008; 51: 1022-1030.

150. Marcus FI, McKenna WJ, Sherrill D, et al. Diagnosis of

arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy/dysplasia:

proposed modification of the task force criteria. Circulation

2010; 121: 1533-1541. 151. Jain A, Tandri H, Calkins H, et al. Role of cardiovascular

magnetic resonance imaging in arrhythmogenic right

ventricular dysplasia. J Cardiovasc Magn Reson 2008; 10: 32. 152. Tandri H, Castillo E, Ferrari VA, et al. Magnetic resonance

imaging of arrhythmogenic right ventricular dysplasia:

sensitivity, specificity, and observer variability of fat detection

versus functional analysis of the right ventricle. J Am Coll

Cardiol 3006; 48: 2277-2284. 153. Tandri H, Saranathan M, Rodriguez ER, et al. Noninvasive

detection of myocardial fibrosis in arrhythmogenic right

ventricular cardiomyopathy using delayed-enhancement

magnetic resonance imaging. J Am Coll Cardiol 2005; 45: 98-103.

154. Sen-Chowdhry S, Prasad SK, Syrris P, et al. Cardiovascular

magnetic resonance in arrhythmogenic right ventricular

cardiomyopathy revisited: comparison with task force criteria

and genotype. J Am Coll Cardiol 2006; 48: 2132-2140. 155. Sen-Chowdhry S, Syrris P, Ward D, et al. Clinical and

genetic characterization of families with arrhythmogenic right

ventricular dysplasia/cardiomyopathy provides novel insights

into patterns of disease expression. Circulation 2007; 115: 1710-1720.

156. McCrohon JA, Richmond DR, Pennell DJ, et al. Isolated

non-compaction of the myocardium - a rarity or missed

diagnosis? Circulation 2002; 106: e22-e23. 157. Petersen SE, Selvanayagam JB, Wiesmann F, et al. Left

ventricular non-compaction: insights from cardiovascular

magnetic resonance imaging J Am Coll Cardiol 2005; 46: 101-105.

158. Silva MC, Meira ZM, Gurgel Giannetti J, et al. Myocardial

delayed enhancement by magnetic resonance imaging in

patients with muscular dystrophy. J Am Coll Cardiol 2007; 49: 1874-1879.

159. Yilmaz A, Gdynia HJ, Baccouche H, et al. Cardiac

involvement in patients with Becker muscular dystrophy: new

diagnostic and pathophysiological insights by a CMR

approach. J Cardiovasc Magn Reson 2008; 10: 50. 160. Puchalski MD, Williams RV, Askovich B, et al. Late

gadolinium enhancement: precursor to cardiomyopathy in

Duchenne muscular dystrophy? Int J Cardiovasc Imaging

2009; 25: 57-63. 161. Fallah-Rad N, Lytwyn M, Fang T, et al. Delayed contrast

enhancement cardiac magnetic resonance imaging in

trastuzumab induced cardiomyopathy. J Cardiovasc Magn

Reson 2008; 10: 5.

162. Weidemann F, Breunig F, Beer M, et al. The variation of

morphological and functional cardiac manifestation in Fabry

disease: potential implications for the time course of the

disease. Eur Heart J 2005; 26: 1221-1227. 163. Beer M, Weidemann F, Breunig F, et al. Impact of enzyme

replacement therapy on cardiac morphology and function and

late enhancement in Fabry’s cardiomyopathy. Am J Cardiol

2006; 97: 1515-1518. 164. Moon JC, Sachdev B, Elkington AG, et al. Gadolinium

enhanced cardiovascular magnetic resonance in Anderson-

Fabry disease. Evidence for a disease specific abnormality of

the myocardial interstitium. Eur Heart J 2003; 24: 2151-2155. 165. Mouquet F, Lions C, de Groote P, et al. Characterisation of

peripartum cardiomyopathy by cardiac magnetic resonance

imaging. Eur Radiol 2008; 18: 2765-2769. 166. Matoh F, Satoh H, Shiraki K, et al. Usefulness of delayed

enhancement magnetic resonance imaging to differentiate

dilated phase of hypertrophic cardiomyopathy and dilated

cardiomyopathy. J Card Fail 2007 Jun; 13: 372-379. 167. Moon JC, McKenna WJ, McCrohon JA, et al. Toward

clinical risk assessment in hypertrophic cardiomyopathy with

gadolinium cardiovascular magnetic resonance. J Am Coll

Cardiol 2003; 41: 1561-1567. 168. Matoh F, Satoh H, Shiraki K, et al. The usefulness of

delayed enhancement magnetic resonance imaging for

diagnosis and evaluation of cardiac function in patients with

cardiac sarcoidosis. J Cardiol 2008; 51: 179-188. 169. Shimada T, Shimada K, Sakane T, et al. Diagnosis of

cardiac sarcoidosis and evaluation of the effects of steroid

therapy by gadolinium-DTPA-enhanced magnetic resonance

imaging. Am J Med 2001; 110: 520-527. 170. Smedema JP, Snoep G, van Kroonenburgh MP, et al.

Evaluation of the accuracy of gadolinium-enhanced

cardiovascular magnetic resonance in the diagnosis of cardiac

sarcoidosis. J Am Coll Cardiol 2005; 45: 1683-1690. 171. Tadamura E, Yamamuro M, Kubo S, et al. Effectiveness of

delayed enhanced MRI for identification of cardiac

sarcoidosis: comparison with radionuclide imaging. AJR Am

J Roentgenol 2005; 185: 110-115. 172. Mahrholdt H, Wagner A, Deluigi CC, et al. Presentation,

patterns of myocardial damage, and clinical course of viral

myocarditis. Circulation 2006; 114: 1581-1590. 173. Mahrholdt H, Goedecke C, Wagner A, et al. Cardiovascular

magnetic resonance assessment of human myocarditis: a

comparison to histology and molecular pathology. Circulation

2004; 109: 1250-1258. 174. Laissy JP, Hyafil F, Feldman LJ, et al. Differentiating acute

myocardial infarction from myocarditis: diagnostic value of

early- and delayed-perfusion cardiac MR imaging. Radiology

2005; 237: 75-82. 175. Yelgec NS, Dymarkowski S, Ganame J, et al. Value of MRI

in patients with a clinical suspicion of acute myocarditis. Eur

Radiol 2007; 17: 2211-2217. 176. Gutberlet M, Spors B, Thoma T, et al. Suspected chronic

Page 64: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

66 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

myocarditis at cardiac MR: diagnostic accuracy and

association with immunohistologically detected inflammation

and viral persistence. Radiology 2008; 246: 401-409. 177. Liu PP, Yan AT. Cardiovascular magnetic resonance for the

diagnosis of acute myocarditis: prospects for detecting

myocardial inflammation. J Am Coll Cardiol 2005; 45: 1823-1825.

178. Abdel-Aty H, Boye P, Zagrosek A, et al. Diagnostic

performance of cardiovascular magnetic resonance in patients

with suspected acute myocardial myocarditis: comparison of

different approaches. J Am Coll Cardiol 2005; 45: 1815-1822. 179. Schinkel AF, Bax JJ, Poldermans D, et al. Hibernating

myocardium: diagnosis and patient outcomes. Curr Probl

Cardiol 2007; 32: 375-410. 180. Hasegawa S, Kusuoka H, Maruyama K, et al. Myocardial

positron emission computed tomographic images obtained

with fluorine-18 fluoro-2-deoxyglucose predict the response

of idiopathic dilated cardiomyopathy patients to beta-

blockers. J Am Coll Cardiol 2004; 43: 224-233. 181. Yamagishi H, Shirai N, Takagi M, et al. Identification of

cardiac sarcoidosis with (13)N-NH (3)/ (18)F-FDG PET. J

Nucl Med 2003; 44: 1030-1036. 182. Okumura W, Iwasaki T, Toyama T, et al. Usefulness of

fasting 18F-FDG PET in identification of cardiac sarcoidosis.

J Nucl Med 2004; 45: 1989-1198. 183. Ishimaru S, Tsujino I, Takei T, et al. Focal uptake on

18F-fluoro-2-deoxyglucose positron emission tomography

images indicates cardiac involvement of sarcoidosis. Eur

Heart J 2005; 26: 1538-1543. 184. Tahara N, Tahara A, Nitta Y, et al. Heterogeneous

myocardial FDG uptake and the disease activity in cardiac

sarcoidosis. JACC Cardiovasc Imaging 2010; 3: 1219-1228. 185. Ito H, Taniguchi K, Koike A, et al. Evaluation of severity

of heart failure using ventilator gas analysis. Circulation

1990; 81 (1 suppl): II31-37. 186. Fleisher LA, Beckman JA, Brown KA, et al. ACC/AHA

2007 Guidelines on Perioperative Cardiovascular Evaluation

and Care for Noncardiac Surgery: Executive Summary: A

Report of the American College of Cardiology/American

Heart Association Task Force on Practice Guidelines (Writing

Committee to Revise the 2002 Guidelines on Perioperative

Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery):

Developed in Collaboration With the American Society of

Echocardiography, American Society of Nuclear Cardiology,

Hear t Rhythm Society, Society of Cardiovascular

Anesthesiologists, Society for Cardiovascular Angiography

and Interventions, Society for Vascular Medicine and Biology,

and Society for Vascular Surgery Circulation 2007; 116: 1971-1996.

187. The Criteria Committee of the New York Heart Association.

Diseases of the Heart and Blood Vessels. Nomenclasture and

Criteria of Diagnosis. 6th ed, Little, Brown, Boston 1964. 188. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.慢性心不

全治療ガイドライン(2010年改訂版).http://www.j-circ.

or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_h.pdf

189. Goldman L, Hashimoto B, Cook EF, et al. Comparative

reproducibility and validity of systems for assessing

cardiovascular functional class: advantages of a new specific

activity scale. Circulation 1981; 64: 1227-1234. 190. Sasayama S, Asanoi H, Ishizuka S. Evaluation of functional

capacity of patients with congestive heart failure in “New

Aspects in the Treatment of Failing Heart” (Yasuda H,

Kawaguchi H, eds). Springer, Berlin 1992: 113-117. 191. Bittner V, Weiner DH, Yusuf S, et al. Prediction of mortality

and morbidity with a 6-minute walk test in patients with left

ventricular dysfunction. SOLVD Investigators. JAMA 1993; 270: 1702-1707.

192. Cheetham C, Taylor R, Burke V, et al. The 6-minute walk

test does not reliably detect changes in functional capacity of

patients awaiting cardiac transplantation. J Heart Lung

Transplant 2005; 24: 848-853. 193. 谷口興一,佐藤秀幸.心肺運動負荷テストと運動療法.

南江堂 2004. 194. Wasserman K, Hansen JE, Sue D, et al. Principles of

Exercise Testing and Interpretation. Lippincott Williams &

Wilkins, 3rd, 1999. 195. Kubozono T, Itoh H, Oikawa K, et al. Peak VO (2) is more

potent than B-type natriuretic peptide as a prognostic

parameter in cardiac patients. Circ J 2008; 72: 575-581. 196. Koike A, Koyama Y, Itoh H, et al. Prognostic significance

of cardiopulmonary exercise testing for 10-year survival in

patients with mild to moderate heart failure. Jpn Circ J 2000; 64: 915-920.

197. Aaronson KD, Schwartz JS, Chen TM, et al. Development

and prospective validation of a clinical index to predict

survival in ambulatory patients referred for cardiac transplant

evaluation. Circulation 1997; 95: 2660-2667. 198. Mudge GH, Goldstein S, Addonizio LJ, et al. 24th Bethesda

conference: Cardiac transplantation. Task Force 3: Recipient

guidelines/prioritization. J Am Coll Cardiol 1993; 22: 21-31. 199. Gibbons RJ, Balady GJ, Beasley JW, et al. ACC/AHA

Guidelines for Exercise Testing. A report of the American

College of Cardiology/American Heart Association Task

Force on Practice Guidelines (Committee on Exercise

Testing). J Am Coll Cardiol 1997; 30: 260-311. 200. Matsumura N, Nishijima H, Kojima S, et al. Determination

of anaerobic threshold for assessment of functional state in

patients with chronic heart failure. Circulation 1983; 68: 360-367.

201. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.心疾患患者の学校,職域,スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン(2008年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/

guideline/pdf/JCS2008_nagashima_h.pdf

202. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2007年 改 訂 版 ).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/

JCS2007_nohara_h.pdf

203. Koike A, Itoh H, Kato M, et al. Prognostic power of

Page 65: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

67循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

ventilator responses during submaximal exercise in patients

with chronic heart disease. Chest 2002; 121: 1581-1588. 204. Koike A,Yajima T, Adachi H, et al. Evaluation of exercise

capacity using submaximal exercise at a constant work rate in

patients with cardiovascular disease. Circulation 1995; 91: 1719-1724.

205. Binanay C, Califf RM, Hasselblad V, et al. Evaluation

study of congestive heart failure and pulmonary artery

catheterization effectiveness: the ESCAPE trial. JAMA 2005; 294: 1625-1633.

206. Gonzalez J, Delafosse C, Fartoukh M, et al. Comparison of

beds ide measurement o f ca rd iac ou tpu t wi th the

thermodilution method and the Fick method in mechanically

ventilated patients. Critical Care 2003; 7: 171-178. 207. Costanzo-Nordin MR, O’Connell JB, Engelmeier RS, et al.

Dilated cardiomyopathy: functional status, hemodynamics,

arrhythmias and prognosis. Catheter Cardiovasc Diagn 1985; 11: 445-453.

208. Balik M, Pachl J, Hendl J. Effect of the degree of tricuspid

regurgi ta t ion on cardiac output measurements by

thermodilution. Intensive Care Med 2002; 28: 1117-1121. 209. Gruing E, Benz A, Mereles D, et al. Prognostic value of

serial cardiac assessment and familial screening in patients

with dilated cardiomyopathy. Eur J Heart Failure 2003; 5: 55-62.

210. Schwarz F, Mall G, Zebe H, et al. Determinants of survival

in patients with congestive cardiomyopathy: quantitative

morphologic findings and left ventricular hemodynamics.

Circulation 1984; 70: 923-928. 211. O’Connor CM, Velaaquez EJ, Gardner LH, et al .

Comparison of coronary artery bypass grafting versus medical

therapy on long term outcome in patients with ischemic

cardiomyopathy. Am J Cardiol 2002; 90: 101-107. 212. Fox KF, Cowie MR, Wood DA, et al. Coronary artery

disease as the cause of incident heart failure in the population.

Eur Heart J 2001; 22: 228-236. 213. Arques S, Ambrosi P, Gelisse R, et al. Prevalence of

angiographic coronary artery disease in patients hospitalized

for acute diastolic heart failure without clinical and

electrocardiographic evidence of myocardial ischemia on

admission. Am J Cardiol 2004; 94: 133-135. 214. Kurtz CE, Gerber Y, Weston SA, et al. Use of ejection

fraction tests and coronary angiography in patients with heart

failure. Mayo Clin Proc 2006; 81: 906-913. 215. Heuvel AFM, Veldhuisen DJ, van der Wall EE, et al.

Regional myocardial blood flow reserve impairment and

metabolic changes suggesting myocardial ischemia in patients

with idiopathic dilated cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol

2000; 35: 19-28. 216. Skalidis EI, Parthenakis FI, Patrianakos AP, et al. Regional

coronary flow and contractile reserve in patients with

idiopathic dilated cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 2004; 44: 2027-2032.

217. Neglia D, Michelassi C, Trivieri MG, et al. Prognostic role

of myocardial blood flow impairment in idiopathic left

ventricular dysfunction. Circulation 2002; 105: 186-193. 218. Solomon SD, Anavekar N, Skali H, et al. Candesartan in

heart failure reduction in mortality (CHARM) investigators.

Influence of ejection fraction on cardiovascular outcomes in a

broad spectrum of heart failure patients. Circulation 2005; 112: 3738-3744.

219. Sakakibara S, Konno S. Endomyocardial biopsy. Jpn Heart

J 1962; 3: 537-543. 220. Cooper LT, Baughman KL, Feldman AM, et al. The role of

endomyocardial biopsy in the management of cardiovascular

disease: a scientific statement from the American Heart

Association, the American College of Cardiology, and the

European Society of Cardiology. Endorsed by the Heart

Failure Society of America and the Heart Failure Association

of the European Society of Cardiology. J Am Coll Cardiol

2007; 50: 1914-1931. 221. McCarthy RE 3rd, Boehmer JP, Hruban RH, et al. Long-

term outcome of fulminant myocarditis as compared with

acute (nonfulminant) myocarditis. N Engl J Med 2000; 342: 690-695.

222. Cooper LT, Zehr KJ. Biventricular assist device placement

and immunosuppression as therapy for necrotizing

eosinophilic myocarditis. Nat Clin Pract Cardiovasc Med

2005; 2: 544-548. 223. Felker GM, Thompson RE, Hare JM, et al. Underlying

causes and long-term survival in patients with initially

unexplained cardiomyopathy. N Engl J Med 2000; 342: 1077-1084.

224. Ardehali H, Howard DL, Hariri A, et al. A positive

endomyocardial biopsy result for sarcoid is associated with

poor prognosis in patients with initially unexplained

cardiomyopathy. Am Heart J 2005; 150: 459-463. 225. Morimoto S, Kato S, Hiramitsu S, et al. Narrowing of the

left ventricular cavity associated with transient ventricular

wall thickening reduces stroke volume in patients with acute

myocarditis. Circ J 2003; 67: 490-494. 226. Wojnicz R, Wilczek K, Nowalany-Kozielska E, et al.

Usefulness of atorvastatin in patients with heart failure due to

inflammatory dilated cardiomyopathy and elevated

cholesterol levels. Am J Cardiol 2006; 97: 899-904. 227. Hiramitsu S, Hiroe M, Uemura A, et al. National survey of

the use of endomyocardial biopsy in Japan. Circ J 1998; 62: 909-912.

228. Tsang TSM, Freeman WK, Barnes ME, et al. Rescue

echocardiographically guided pericardiocentesis for cardiac

perforation complicating catheter-based procedures. The

Mayo Clinic experience. J Am Coll Cardiol 1998; 32: 1345-1350. Card Fail 2009; 15: 898-905.

229. S i l v e r M M , S i l v e r M D . C a r d i o m y o p a t h i e s . i n

Cardiovascular Pathology. 2nd. ed. Silver MD, eds. Churchill

Livingstone (New York) 1991: 743-809. 230. Paterick TE, Gerber TC, Pradhan SR, et al. Left ventricular

noncompaction cardiomyopathy: what do we know? Rev

Page 66: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

68 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

Cardiovasc Med 2010; 11: 92-99. 231. Keren A, Billingham ME, Weintraub D, et al. Mildly

dilated congestive cardiomyopathy. Circulation 1985; 72: 302-309.

232. Basso C, Corrado D, Marcus FI, et al. Arrhythmogenic

right ventricular cardiomyopathy. Lancet 2009; 373: 1289-1300.

233. Kajihara H, Yokozaki H, Yamahara M, et al. Anthracycline

induced myocardial damage. An analysis of 16 autopsy cases.

Pathol Res Pract 1986; 181: 434-441. 234. Lampert MB, Lang RM. Peripartum cardiomyopathy. Am

Heart J 1995; 130: 860-870. 235. Roberts WC, Siegel RJ, McManus BM. Idiopathic dilated

cardiomyopathy: analysis of 152 necropsy patients. Am J

Cardiol 1987; 60: 1340-1355. 236. Jones RH Jr. Beriberi heart disease. Circulation 1959; 19: 275-283.

237. Koga Y, Miyamoto T, Ohtsuki T, et al. Natural history of

hypertrophic cardiomyopathy: Japanese experience. J Cardiol

2001; 37 Suppl 1: 147-154. 238. Iida K, Yutani C, Imakita M, et al. Comparison of

percentage area of myocardial fibrosis and disarray in patients

with classical form and dilated phase of hypertrophic

cardiomyopathy. J Cardiol 1998; 32: 173-180. 239. Virmani R. Cardiomyopathy, ischemic. in Diagnostic

criteria for cardiovascular pathology. Acquired diseases.

Bloom S, eds. Lippincott-Raven (Philadelphia) 1997: 28-29. 240. Guideline for diagnosing chronic myocarditis. Japanese

Circulation Society (JCS) Task Force Committee on Chronic

Myocarditis. Jpn Circ J 1996; 60: 263-264. 241. 森本紳一郎,植村晃久,平光伸也.心臓サルコイドーシ

ス診断の手引きの改訂.呼吸と循環 2006; 54: 955-961. 242. S e w a r d J B , C a s a c l a n g - Ve r z o s a G . I n f i l t r a t i v e

cardiovascular diseases: cardiomyopathies that look alike. J

Am Coll Cardiol 2010; 55: 1769-1779. 243. 佐野壽昭,和田美智子,香川典子.筋ジストロフィー症

の心臓病理.神経内科 2005; 62: 547-552. 244. Yan SM, Finato N, Di Loreto C, et al. Nuclear size of

myocardial cells in end-stage cardiomyopathies. Anal Quant

Cytol Histol 1999; 21: 174-180. 245. Maron BJ, Wolfson JK, Epstein SE, et al. Intramural (“small

vesse l” ) coronary a r te ry d i sease in hyper t rophic

cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 1986; 8: 545-557. 246. Maehashi N, Yokota Y, Takarada A, et al. The role of

m y o c a r d i t i s a n d m y o c a r d i a l f i b r o s i s i n d i l a t e d

cardiomyopathy. Analysis of 28 necropsy cases. Jpn Heart J

1991; 32: 1-15. 247. Kawano H, Hayashi T, Koide Y, et al. Histopathological

changes of biopsied myocardium in Shoshin beriberi. Int

Heart J 2005; 46: 751-759. 248. 廣江道昭,関口守衛,土師一夫,他.心内膜心筋生検法による「心疾患の重症度」の判定について.最新医学

1977; 32: 78-90. 249. Kawai S, Okada R. A histopathological study of dilated

cardiomyopathy--with special reference to clinical and

pathological comparisons of the degeneration-predominant

type and fibrosis-predominant type. Jpn Circ J 1987; 51: 654-660.

250. 関口守衛,廣江道昭,干祖煕,他.心内膜心筋生検法による生検心筋の電顕診断基準―その定量化と研究成果 . 信州医誌 1996; 44: 85-98.

251. 日本移植学会・日本病理学会編.ヒト移植臓器拒絶反応の病理組織診断基準 鑑別診断と生検標本の取扱い 腎臓移植,肝臓移植,膵臓移植,心臓移植,および肺移植 第2版.金原出版 2009.

252. Maron BJ, Towbin JA, Thiene G, et al. Contemporary

Definitions and Classification of the Cardiomyopathies. An

American Heart Association Scientific Statement From the

Council on Clinical Cardiology, Heart Failure and

Transplantation Committee; Quality of Care and Outcomes

Research and Functional Genomics and Translational Biology

Interdisciplinary Working Groups; and Council on

Epidemiology and Prevention. Circulation 2006; 113: 1807-1816.

253. Elliot P, Anderson B, Arbustini E, et al. Classification of

the cardiomyopathies: a position from the european society of

cardiology working group on myocardial and pericardial

diseases. Eur Heart J 2008; 29: 270-276. 254. Morita H, Seidman JG, Seidman CE. Genetic causes of

human heart failure. J Clin Invest 2005; 115: 518-526. 255. Richard P, Villard E, Charron P, et al. The genetic basis of

cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 2006; 48: A79-89. 256. Ashrafian H, Watkins H. Reviews of translational medicine

and genomics in cardiovascular disease: new disease

taxonomy and therapeutic implications. J Am Coll Cardiol

2007; 49: 1251-1264. 257. 木村彰方.心筋症と遺伝.循環器専門医 2008; 16: 13-21.

258. Online Menderian Inheritance in ManTM. http://www.ncbi.

nlm.nih.gov/sites/entrez?db=omim

259. 苅部明彦,飛田渉.家族性拡張型心筋症別冊日本臨床新領域別シリーズNo6.循環器症候群(第2版)(III)─その他の循環器疾患を含めて─.日本臨床社 2008: 35-39.

260. Kimura A. Molecular basis of hereditary cardiomyopathy:

abnormalities in calcium sensitivity, strech response, stress

response and beyond. J Human Genet 2010; 55: 81-90. 261. Killip T, 3rd, Kimball JT. Treatment of myocardial

infarction in a coronary care unit. A two year experience with

250 patients. Am J Cardiol 1967; 20: 457-464. 262. 佐藤直樹,吉田伸子,高山守正.東京都ccuネットワー

ク活動状況報告.ICUとCCU 2009; 33: 841-843. 263. Jeger RV, Harkness SM, Ramanathan K, et al. Emergency

revascularization in patients with cardiogenic shock on

admission: A report from the shock trial and registry. Eur

Heart J 2006; 27: 664-670. Epub 2006 Jan 2019. 264. 酒井哲郎,佐藤直樹,原田和昌,他.et al. 2005, 6年の東京都における急性心不全の動向.ICUとCCU 2009; 33: 855-859.

Page 67: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

69循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

265. Forrester JS, Diamond G, Chatterjee K, Swan HJ. Medical

therapy of acute myocardial infarction by application of

hemodynamic subsets (first of two parts). N Engl J Med

1976; 295: 1356-1362. 266. Forrester JS, Diamond G, Chatterjee K, et al. Medical

therapy of acute myocardial infarction by application of

hemodynamic subsets (second of two parts). N Engl J Med

1976; 295: 1404-1413. 267. Nohria A, Tsang SW, Fang JC, et al. Clinical assessment

identifies hemodynamic profiles that predict outcomes in

patients admitted with heart failure. J Am Coll Cardiol 2003; 41: 1797-1804.. kokoko

268. Mebazaa A, Gheorghiade M, Pina IL, et al. Practical

recommendations for prehospital and early in-hospital

management of patients presenting with acute heart failure

syndromes. Crit Care Med 2008; 36: S129-139. 269. Tohgi H, Yamanouchi H, Murakami M, et al. Importance of

the hematocrit as a risk factor in cerebral infarction. Stroke

1978; 9: 369-374. 270. Hunt SA, Abraham WT, Chin MH, et al. 2009 focused

update incorporated into the ACC/AHA 2005 Guidelines for

the Diagnosis and Management of Heart Failure in Adults: a

report of the American College of Cardiology Foundation/

American Heart Association Task Force on Practice

Guidelines: developed in collaboration with the International

Society for Heart and Lung Transplantation. Circulation 2009; 119: e391-e479.

271. Ellison DH. Diuretic therapy and resistance in congestive

heart failure. Cardiology 2001; 96: 132-143. 272. Dormans TP, van Meyel JJ, Gerlag PG, et al. Diuretic

efficacy of high dose furosemide in severe heart failure:

bolus injection versus continuous infusion. J Am Coll Cardiol

1996; 28: 376-382. 273. Murry MD, Deer MM, Ferguson JA, et al. Open-label

randomized trial of torasemide compared with furosemide

therapy for patients with heart failure. Am J Med 2001; 111: 513-520.

274. Muller K, Gamba G, Jaquet F, et al. Torasemide vs.

furosemide in primary care patients with chronic heart failure

NYHA II to IV--efficacy and quality of life. Euro J Heart Fail

2003; 5: 793-801. 275. Juurlink DN, Mamdani MM, Lee DS, et al. Rates of

hyperkalemia after publication of the Randomized Aldactone

Evaluation Study. N Engl J Med 2004; 351: 543-551. 276. Pitt B, Zannad F, Remme WJ, et al. The effect of

spironolactone on morbidity and mortality in patients with

severe heart failure. Randomized Aldactone Evaluation Study

Investigators. N Engl J Med 1999; 341: 709-717. 277. Brown NJ. Eplerenone. cardiovascular protection.

Circulation 2003; 107: 2512-2518. 278. Pitt B, Remme W, Zannad F, et al. Eplerenone Post-Acute

Myocardial Infarction Heart Failure Efficacy and Survival

Study Investigators. Eplerenone, a selective aldosterone

blocker, in patients with left ventricular dysfunction after

myocardial infarction. N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321. 279. Zannad F, McMurray JJV, Krum H, et al., for the

EMPHASIS-HF Study Group. Eplerenone in Patients with

Systolic Heart Failure and Mild Symptoms. N Engl J Med

2011. DOI: 10.1056/NEJMoa1009492. 280. Udelson JE, Smith WB, Hendrix H, et al . Acute

hemodynamic effects of conivaptan, a dual V (1A) and V (2) vasopressin receptor antagonist, in patients with advanced

heart failure. Circulation 2001; 104: 2417-2423. 281. Konstam MA, Gheorghiade M, Burnett JC Jr, et al.,

Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure

Outcome Study With Tolvaptan (EVEREST) Investigators.

Effects of oral tolvaptan in patients hospitalized for worsening

heart failure: the EVEREST Outcome Trial. JAMA 2007; 297: 1319-1331.

282. Cotter G, Metzkor E, Kaluski E, et al. Randomized trial of

high-dose isosorbide nitrate plus low-dose furosemide versus

high-dose furosemide plus low-dose isosorbide nitrate in

severe pulmonary oedema. Lancet 1998; 351: 389-393. 283. Kasama S, Toyama T, Kumakura H, et al. Effects of

intravenous atrial natriuretic peptide on cardiac sympathetic

nerve activity in patients with decompensated congestive

heart failure. J Nuclear Med 2004; 45: 1108-1113. 284. Suwa M, Seino Y, Nomachi Y, et al . Multicenter

prospective investigation on efficacy and safety of carperitide

for acute heart failure in the ‘real world’ of therapy. Circ J

2005; 69: 283-290. 285. Saito Y, Nakao K, Nishimura K, et al. Clinical application

of atrial natriuretic polypeptide in patients with congestive

heart failure: beneficial effects on left ventricular function.

Circulation 1987; 76: 115-124. 286. Ser izawa T, Hira ta Y, Kohmoto O, e t a l . Acute

hemodynamic effects of alpha human atrial natriuretic

polypeptide in patients with congestive heart failure. Jpn

Heart J. 1988; 29: 143-149. 287. Publication Committee for the VMAC Investigators

(Vasodilatation in the Management of Acute CHF).

Intravenous nesiritide vs nitroglycerin for treatment of

decompensated congestive heart failure: a randomized

controlled trial. JAMA 2002; 287: 1531-1540. 288. Colucci WS, Elkayam U, Horton DP, et al. Intravenous

nesiritide, a natriuretic peptide, in the treatment of

decompensated heart failure. N Engl J Med. 2000; 343: 246-253.

289. Sliver MA, Horton DP, Ghali JK, et al. Effect of nesiritide

versus dobutamine on short-term outcomes in the treatment of

patients with acutely decompensated heart failure. J Am Coll

Cardiol 2002; 39: 798-803. 290. Burger AJ, Horton DP, LeJemtel T, et al. Prospective

randomized evaluation of cardiac ectopy with dobutamine

or natrecor therapy. Effect of nesiritide (B-type natriuretic

peptide) and dobutamine on ventricular arrhythmias in the

treatment of patients with acutely decompensated congestive

heart failure: the PRECEDENT study. Am Heart J 2002; 144:

Page 68: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

70 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

1102-1108. 291. Kasahara M, Mukoyama M, Sugawara A, et al. Ameliorated

Glomerular Injury in Mice Overexpressing Brain Natreuretic

Peptide with Renal Ablation. J Am Soc Nephrol 2000; 11: 1691-1701.

292. Wang DJ, Dowling TC, Meadows D, et al. Nesiritide does

not improve renal function in patients with chronic heart

failure and worsening serum creatinine. Circulation 2004; 110: 1620-1625.

293. Sackner-Bernstein JD, Skopicki HA, Aaronson KD. Risk of

worsening renal function with nesiritide in patients with

acutely decompensated heart failure. Circulation 2005; 111: 1487-1491.

294. Cohn JN, Burke LP. Nitroprusside. Ann Intern Med 1979; 91: 752-757.

295. Rossen RM, Alderman EL, Harrison DC. Circulatory

response to vasodilator therapy in congestive cardiomyopathy.

Br Heart J 1976; 38: 695-700. 296. Hamilton MA, Stevenson LW, Child JS, et al. Acute

reduction of atrial overload during vasodilator and diuretic

therapy in advanced congestive heart failure. Am J Cardiol

1990; 65: 1209-1212. 297. Archer SL, Huang JM, Hampl V, et al. Nitric oxide and

cGMP cause vasorelaxation by activation of a charybdotoxin-

sensitive K channel by cGMP-dependent protein kinase. Proc

Natl Acad Sci U S A. 1994; 91: 7583-7587. 298. Hasenfuss G, Holubarsch C, Heiss HW, et al. Myocardial

energetics in patients with dilated cardiomyopathy. Influence

of nitroprusside and enoximone. Circulation 1989; 80: 51-64. 299. Dickstein K, Cohen-Solal A, Filippatos G, et al. ESC

Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and

chronic heart failure 2008: the Task Force for the Diagnosis

and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure 2008 of

the European Society of Cardiology. Developed in

collaboration with the Heart Failure Association of the ESC

(HFA) and endorsed by the European Society of Intensive

Care Medicine (ESICM). Eur Heart J 2008; 29: 2388-2442. 300. Bencowitz HZ, LeWinter MM, Wagner PD. Effect of

sodium nitroprusside on ventilation-perfusion mismatching in

heart failure. J Am Coll Cardiol 1984; 4: 918-922. 301. Schulz V. Clinical pharmacokinetics of nitroprusside,

cyanide, thiosulphate and thiocyanate. Clin Pharmacokinet

1984; 9: 239-251. 302. Cohn JN, Franciosa JA, Francis GS, et al. Effect of short-

term infusion of sodium nitroprusside on mortality rate in

acute myocardial infarction complicated by left ventricular

failure: results of a Veterans Administration cooperative

study. N Engl J Med 1982; 306: 1129-1135. 303. Goodman DJ, Rossen RM, Holloway EL, et al. Effect of

nitroprusside on left ventricular dynamics in mitral

regurgitation. Circulation 1974; 50: 1025-1032. 304. Mullens W, Abrahams Z, Francis GS, et al. Sodium

nitroprusside for advanced low-output heart failure. J Am

Coll Cardiol 2008; 52: 200-207.

305. Bristow MR, Ginsburg R, Laser JA, et al. Tissue response

selectivity of calcium antagonists is not due to heterogeneity

of [3H]-nitrendipine binding sites. Br J Pharmacol 1984; 82: 309-320.

306. 塩酸ニカルジピン急性心不全P-3研究会.急性心不全に対する塩酸ニカルジピン注射剤の臨床的有用性に対する検討 プラセボを対照とした多施設共同二重盲検比較試験.薬理と治療 1995; 23: 375-398.

307. Hirota Y, Kawai C, Hori R, et al. Determining the optimum

dose for the intravenous administration of nicardipine in the

treatment of acute heart failure--a multicenter study. The

Nicardipine Heart Failure Study Group. Jpn Circ J 1997; 61: 367-374.

308. ニカルジピン塩酸塩注射薬(添付文書).日医工 2010. 309. Akai K, Wang Y, Sato K, et al. Vasodilatory effect of

nicorandil on coronary arterial microvessels: its dependency

on vessel size and the involvement of the ATP-sensitive

potassium channels. J Cardiovasc Pharmacol 1995; 26: 541-547.

310. Kasama S, Toyama T, Hatori T, et al. Comparative effects

of nicorandil with isosorbide mononitrate on cardiac

sympathetic nerve activity and left ventricular function in

patients with ischemic cardiomyopathy. Am Heart J 2005; 150: 477.

311. Sato T, Sasaki N, O’Rourke B, et al. A potent cardio-

protective agent, acts by opening mitochondrial ATP-

dependent potassium channels. J Am Coll Cardiol 2000; 35: 514-518.

312. 加藤和三,高野照夫,片桐敬,他.急性心不全に対するニコランジル(シグマート注)の臨床評価.急性心不全に対するニコランジル(シグマート注)のプラセボ対照二重盲検比較試験 第 III相試験.薬理と治療 2008; 36 (Suppl.1): S-65-S-78.

313. Minami Y, Nagashima M, Kajimoto K, et al. Acute efficacy

and safety of intravenous administration of nicorandil in

patients with acute heart failure syndromes: usefulness of

noninvasive echocardiographic hemodynamic evaluation. J

Cardiovasc Pharmacol 2009; 54: 335-340. 314. Tanaka K, Kato K, Takano T, et al. Acute effects of

intravenous nicorandil on hemodynamics in patients

hospitalized with acute decompensated heart failure. J Cardiol

2010; 56: 291-299. 315. Giles TD, Pina IL, Quiroz AC, et al. Hemodynamic and

neurohumoral responses to intravenous nicorandil in

congestive heart failure in humans. J Cardiovasc Pharmacol

1992; 20: 572-578. 316. Shirakabe A, Hata N, Yokoyama S, et al. Efficacy and

safety of nicorandil therapy in patients with acute heart

failure. J Cardiol 2010; 56: 339-347. 317. Kajimoto K, Shimamura K. Acute efficacy of combined

therapy of carperitide and nicorandil for acute decompensated

heart failure with left ventricular systolic dysfunction. Int J

Cardiol 2009. 318. Larsen AI, Goransson L, Aarsland T, et al. Comparison of

Page 69: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

71循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

the degree of hemodynamic tolerance during intravenous

infusion of nitroglycerin versus nicorandil in patients with

congestive heart failure. Am Heart J 1997; 134: 435-441. 319. Tsutamoto T, Kinoshita M, Nakae I, et al. Absence of

hemodynamic tolerance to nicorandil in patients with severe

congestive heart failure. Am Heart J 1994; 127 (4 Pt 1): 866-873.

320. Sakai K, Kuromaru O. Nitrate tolerance: comparison of

nicorandil, isosorbide dinitrate, and nitroglycerin in

anesthetized dogs. J Cardiovasc Pharmacol 1987; 10 Suppl 8: S17-24.

321. I i d a S , K i n o s h i t a H , H o l f o r d N H . P o p u l a t i o n

pharmacokinetic and pharmacodynamic modelling of the

effects of nicorandil in the treatment of acute heart failure. Br

J Clin Pharmacol 2008; 66: 352-365. 322. 加藤和三,高野照夫,片桐敬,他.急性心不全に対するニコランジル(シグマート注)の臨床評価.ニコランジル(シグマート注)の急性心不全に対する長時間投与における安全性および有効性の検討 第 III相試験.薬理と治療

2008; 36 (Suppl.1) : S-79-S-90. 323. Peacock WF, Hollander JE, Diercks DB, et al. Morphine

and outcomes in acute decompensated heart failure: an

ADHERE analysis. Emerg Med J 2008 ; 25: 205-209. 324. Task Force for Diagnosis and Treatment of Acute and

Chronic Heart Failure 2008 of European Society of

Cardiology, Dickstein K, Cohen-Solal A, Filippatos G, et al.,

ESC Committee for Practice Guidelines, Vahanian A, Camm

J, De Caterina R, et al. ESC Guidelines for the diagnosis and

treatment of acute and chronic heart failure 2008: the Task

Force for the Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic

Heart Failure 2008 of the European Society of Cardiology.

Developed in collaboration with the Heart Failure Association

of the ESC (HFA) and endorsed by the European Society of

Intensive Care Medicine (ESICM). Eur Heart J 2008; 29: 2388-2442.

325. Nohria A, Lewis E, Stevenson LW. Medical management

of advanced heart failure. JAMA 2002; 287: 628-40. Review.

326. Heart Failure Society Of America. Evaluation and

management of patients with acute decompensated heart

failure. J Card Fail 2006; 12: e86-e103. 327. Abraham WT, Adams KF, Fonarow GC, et al., ADHERE

Scientific Advisory Committee and Investigators; ADHERE

Study Group. In-hospital mortality in patients with acute

decompensated heart failure requiring intravenous vasoactive

medications: an analysis from the Acute Decompensated

Heart Failure National Registry (ADHERE). J Am Coll

Cardiol 2005; 46: 57-64. 328. Liang CS, Sherman LG, Doherty JU, et al. Sustained

improvement of cardiac function in patients with congestive

heart failure after short-term infusion of dobutamine.

Circulation 1984; 69: 113-119. 329. Unverferth DV, Magorien RD, Lewis RP, et al. Long-term

benefi t of dobutamine in pat ients with congest ive

cardiomyopathy. Am Heart J 1980; 100: 622-630.

330. Hasillo A, et al. Dobutamine. Cardiovascular Drug Therapy,

2nd ed, Messerl i , FH ed. WB Saunders Company,

Philadelphia 1996: 1151-1161. 331. O’Connor CM, Gattis WA, Uretsky BF, et al. Continuous

intravenous dobutamine is associated with an increased risk

of death in patients with advanced heart failure: insights from

the Flolan International Randomized Survival Trial (FIRST).

Am Heart J. 1999; 138: 78-86. 332. Elkayam U, Ng TM, Hatamizadeh P, et al. Renal

Vasodilatory Action of Dopamine in Patients With Heart

Failure: Magnitude of Effect and Site of Action. Circulation

2008; 117: 200-205. 333. Simonton CA, Chatterjee K, Cody RJ, et al. Milrinone in

congestive heart failure: acute and chronic hemodynamic and

clinical evaluation. J Am Coll Cardiol 1985; 6: 453-459. 334. Anderson JL. Hemodynamic and clinical benefits with

intravenous milrinone in severe chronic heart failure: results

of a multicenter study in the United States. Am Heart J 1991; 121 (6 Pt 2): 1956-1964.

335. Seino Y, Momomura S, Takano T, et al. Multicenter,

doubleblind study of intravenous milrinone for patients with

acute heart failure in Japan. Japan Intravenous Milrinone

Investigators. Crit Care Med 1996; 24: 1490-1497. 336. Metra M, Nodari S, D’Aloia A, et al. Beta-blocker therapy

influences the hemodynamic response to inotropic agents in

patients with heart failure: a randomized comparison of

dobutamine and enoximone before and after chronic treatment

with metoprolol or carvedilol. J Am Coll Cardiol 2002; 40: 1248-1258.

337. Cuffe MS, Califf RM, Adams KF Jr, et al. Outcomes of a

Prospective Trial of Intravenous Milrinone for Exacerbations

of Chronic Heart Failure (OPTIME-CHF) InvestigatorsShort-

term intravenous milrinone for acute exacerbation of chronic

heart failure: a randomized controlled trial. JAMA 2002; 287: 1541-1547.

338. Felker GM, Benza RL, Chandler AB, et al., OPTIME-CHF

Investigators. Heart failure etiology and response to milrinone

in decompensated heart failure: results from the OPTIME-

CHF study. J Am Coll Cardiol 2003; 41: 997-1003. 339. Dünser MW, Mayr AJ, Ulmer H, et al. Arginine vasopressin

in advanced vasodilatory shock: a prospective, randomized,

controlled study. Circulation 2003; 107: 2313-2319. 340. Torgersen C, Dünser MW, Wenzel V, et al. Comparing two

different arginine vasopressin doses in advanced vasodilatory

shock: a randomized, controlled, open-label trial. Intensive

Care Med 2010; 36: 57-65. 341. Dyke PC 2nd, Tobias JD. Vasopressin: applications in

clinical practice. J Intensive Care Med 2004; 19: 220-228. 342. Guyton AC, Lindsey AW. Effect of elevated left atrial

pressure and decreased plasma protein concentration on the

development of pulmonary edema. Circ Res 1959; 7: 649-657.

343. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版).http://www.j-circ.

Page 70: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

72 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

or.jp/guideline/pdf/JCS2006_maruyama_h.pdf

344. Masip J, Betbesé AJ, Páez J, et al. Non-invasive pressure

support ventilation versus conventional oxygen therapy in

acute cardiogenic pulmonary oedema: a randomised trial.

Lancet 2000; 356: 2126-2132. 345. Bersten AD, Holt AW, Vedig AE, et al. Treatment of severe

cardiogenic pulmonary edema with continuous positive

airway pressure delivered by face mask. N Engl J Med 1991; 325: 1825-1830.

346. Takeda S, Nejima J, Takano T, et al. Effect of nasal

continuous positive airway pressure on pulmonary edema

complicating acute myocardial infarction. Jpn Circ J 1998; 62: 553-558.

347. Katz LM, Wang Y, Rockoff S, et al. Low-dose Carbicarb

improves cerebral outcome after asphyxial cardiac arrest in

rats. Ann Emerg Med 2002; 39: 359-365. 348. Sun S, Weil MH, Tang W, et al. Effects of buffer agents on

postresuscitation myocardial dysfunction. Crit Care Med

1996; 24: 2035-2041. 349. Blecic S, De Backer D, Deleuze M, et al. Correction of

metabolic acidosis in experimental CPR: a comparative study

of sodium bicarbonate, carbicarb, and dextrose. Ann Emerg

Med 1991; 20: 235-238. 350. 2005 American Heart Association Guidelines for

C a r d i o p u l m o n a r y R e s u s c i t a t i o n a n d E m e rg e n c y

Cardiovascular Care. Circulation 2005; 112 (Suppl 24): IV1-IV203.

351. Guidelines for the evaluation and management of heart

failure. Report of the American College of Cardiology/

American Heart Association Task Force on Practice

Guidelines (Committee on Evaluation and Management of

Heart Failure). J Am Coll Cardiol 1995; 26: 1376-1398. 352. 松田暉 監修.新版経皮的心肺補助法─PCPSの最前線.秀潤社 2004.

353. 中谷武嗣.補助人工心臓.日内会誌 2005; 94: 297-304. 354. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン.Circ J 2009; 73, Suppl. III: 1361-1456.

355. Ravitch MM, Lane R, Safar P, et al. Lightning stroke.

Report of a case with recovery after cardiac massage and

prolonged artificial respiration. N Engl J Med 1961; 264: 36-38.

356. Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group. Mild

therapeutic hypothermia to improve the neurologic outcome

after cardiac arrest. N Engl J Med 2002; 346: 549-556. 357. Bernard SA, Gray TW, Buist MD, et al. Treatment of

comatose survivors of out-of-hospital cardiac arrest with

induced hypothermia. N Engl J Med 2002; 346: 557-563. 358. Nolan JP, Deakin CD, Soar J, et al. European Resuscitation

Council guidelines for resuscitation 2005. Section 4. Adult

advanced life support. Resuscitation 2005; 67 Suppl 1: S39-S86.

359. 横山広行,野々木宏.J-PULSE-Hypoから.循環器内科

2010; 68: 240-247.

360. The CONSENSUS Trial Study Group. Effects of enalapril

on mortality in severe congestive heart failure. Results of the

Cooperative North Scandinavian Enalapril Survival Study

(CONSENSUS). N Engl J Med 1987; 316: 1429-1435. 361. The SOLVD Investigators. Effect of enalapril on survival

in patients with reduced left ventricular ejection fractions and

congestive heart failure. N Engl J Med 1991; 325: 293-302. 362. The SOLVD Investigators. Effect of enalapril on mortality

and the development of heart failure in asymptomatic patients

with reduced left ventricular ejection fractions. N Engl J Med

1992; 327: 685-691. 363. Packer M, Poole-Wilson PA, Armstrong PW, et al.

Comparative effects of low and high doses of the angiotensin

converting enzyme inhibitor, lisinopril, on morbidity and

mortality in chronic heart failure. ATLAS Study Group.

Circulation 1999; 100: 2312-2318. 364. Matsumori A. Assessment of Response to Candesartan in

Heart Failure in Japan (ARCH-J) Study Investigators:

Efficacy and safety of oral candesartan cilexetil in patients

with congestive heart failure. Eur J Heart Fail 2003; 5: 669-677.

365. CHARM Investigators and Committees. Effects of

candesartan in patients with chronic heart failure and reduced

left-ventricular systolic function intolerant to angiotensin-

converting-enzyme inhibitors: the CHARM-Alternative trial.

Lancet 2003; 362: 772-776. 366. Pitt B, Poole-Wilson PA, Segal R, et al. Effect of losartan

compared with captopril on mortality in patients with

symptomatic heart failure: randomised trial--the Losartan

Heart Failure Survival Study ELITE II. Lancet 2000; 355: 1582-1587.

367. OPTIMAAL Steering Committee of the OPTIMAAL Study

Group. Effects of losartan and captopril on mortality and

morbidity in high-risk patients after acute myocardial

infarction: the OPTIMAAL randomised trial. Optimal Trial in

Myocardial Infarction with Angiotensin II Antagonist

Losartan. Lancet 2002; 360: 752-760. 368. Pfeffer MA, McMurray JJ, Velazquez EJ, et al. Valsartan in

Acute Myocardial Infarction Trial Investigators. Valsartan,

captopril, or both in myocardial infarction complicated by

heart failure, left ventricular dysfunction, or both. N Engl J

Med 2003; 349: 1893-1906. 369. Cohn JN, Tognon i G . , Va l sa r t an Hear t Fa i lu re

TrialInvestigators. A randomized trial of the angiotensin-

receptorblocker valsartan in chronic heart failure. N Engl J

Med 2001; 345: 1667-1675. 370. CHARM Investigators and Committees. Effects of

candesartan in patients with chronic heart failure and reduced

left-ventricular systolicfunction taking angiotensin-

converting-enzyme inhibitors: the CHARM-Added trial.

Lancet 2003; 362: 767-771. 371. Pitt B, Remme W, Zannad F, et al. Eplerenone, a selective

aldosterone blocker, in patients with left ventricular

dysfunction after myocardial infarction. N Engl J Med 2003;

Page 71: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

73循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

348: 1309-1321. 372. EMPHASIS-HF Study Group. Eplerenone in Patients with

Systolic Heart Failure and Mild Symptoms. November 14, 2010 (10.1056/NEJMoa1009492).

373. McMurray JJ, Pitt B, Latini R, et al. Effects of the oral

direct renin inhibitor aliskiren in patients with symptomatic

heart failure. Circ Heart Fail 2008; 1: 17-24. 374. Dahlof B, Pennert K, Hansson L. Reversal of left

ventricular hypertrophy in hypertensive patients: a meta-

analysis of 109 treatment studies. Am J Hypertens 1992; 5: 95-110.

375. Klingbeil AU, Schneider M, Martus P, et al. A meta-

analysis of the effects of treatment on left ventricular mass in

essential hypertension. Am J Med 2003; 115: 41-46. 376. CHARM Investigators and Committees. Effects of

candesartan in patients with chronic heart failure and

preserved left-ventricular ejection fraction: the CHARM-

Preserved Trial. Lancet 2003; 362: 777-781. 377. PRESERVE Investigators. Irbesartan in patients with heart

failure and preserved ejection fraction. N Engl J Med 2008; 359: 2456-2467.

378. PEP-CHF Investigators. The perindopril in elderly people

with chronic heart failure (PEP-CHF) study. Eur Heart J.

2006; 27: 2338-2345. 379. http://www.topcatstudy.com/

380. Packer M, Bristow MR, Cohn JN, et al. The Effect of

Carvedilol on Morbidity and Mortality in Patients with

Chronic Heart Failure. N Engl J Med 1996; 334: 1349-1355. 381. The Cardiac Insufficiency Bisoprolol Study II (CIBIS-II). a

randomised trial. Lancet 1999; 353: 9-13. 382. Effect of metoprolol CR/XL in chronic heart failure:

Metoprolol CR/XL Randomised Intervention Trial in

Congestive Heart Failure (MERIT-HF). Lancet 1999; 353: 2001-2007.

383. Packer M, Coats AJ, Fowler MB, et al. Carvedilol

Prospective Randomized Cumulative Survival Study Group.

Effect of carvedilol on survival in severe chronic heart failure.

N Engl J Med 2001; 344: 1651-1658. 384. Dargie HJ. Effect of carvedilol on outcome after myocardial

infarction in patients with left-ventricular dysfunction: the

CAPRICORN randomised trial. Lancet 2001; 357: 1385-1390.

385. Poole-Wilson PA, Swedberg K, Cleland JG, et al.

Carvedilol Or Metoprolol European Trial Investigators.

Comparison of carvedilol and metoprolol on clinical

outcomes in patients with chronic heart failure in the

Carvedilol Or Metoprolol European Trial (COMET):

randomised controlled trial. Lancet 2003; 362: 7-13. 386. Bristow MR, Gilbert EM, Abraham WT, et al. Carvedilol

produces dose-related improvements in left ventricular

function and survival in subjects with chronic heart failure.

MOCHA investigators. Circulation 1996; 94: 2807-2816. 387. Hori M, Sasayama S, Kitabatake A, et al. MUCHA

Investigators. Low-dose carvedilol improves left ventricular

function and reduces cardiovascular hospitalization in

Japanese patients with chronic heart failure: the Multicenter

Carvedilol Heart Failure Dose Assessment (MUCHA) trial.

Am Heart J 2004; 147: 324-330. 388. CIBIS I I I Inves t igators : Effect on survival and

hospitalization of initiating treatment for chronic heart failure

with bisoprolol followed by enalapril, as compared with the

opposite sequence: results of the randomized Cardiac

Insufficiency Bisoprolol Study (CIBIS) III. Circulation 2005; 112: 2426-2435.

389. IMPACT-HF Investigators and Coordinators. Predischarge

initiation of carvedilol in patients hospitalized for

decompensated heart failure: results of the Initiation

Management Predischarge: Process for Assessment of

Carvedilol Therapy in Heart Failure (IMPACT-HF) trial. J

Am Coll Cardiol 2004; 43: 1534-1541. 390. Gattis WA, O’Connor CM, Leimberger JD, et al. Clinical

outcomes in patients on beta-blocker therapy admitted with

worsening chronic heart failure. Am J Cardiol 2003; 91:169-174.

391. The Digitalis Investigation Group. The effect of digoxin on

mortality and morbidity in patients with heart failure. N Engl

J Med 1997; 336: 525-533. 392. Rathore SS, Curtis JP, Wang Y, et al. Association of serum

digoxin concentration and outcomes in patients with heart

failure. JAMA 2003; 289: 871-878. 393. Elkayam U, Amin J, Meha A, et al. A prospective,

randomized, double-blind, crossover study to compare the

efficacy and safety of chronic nifedipine therapy with that of

isosorbide dinitrate and their combination in the treatment of

chronic congestive heart failure. Circulation 1990; 82: 1954-1961.

394. Multicenter Diltiazem Postinfarction Trial Research Group.

The effect of diltiazem on mortality and reinfarction after

myocardial infarction. N Engl J Med 1988; 319: 385-392. 395. Packer M, O’Connor CM, Ghali JK, et al. Effect of

amlodipine on morbidity and mortality in severe chronic heart

failure. Prospective Randomized Amlodipine Survival

Evaluation Study Group. N Engl J Med 1996; 335: 1107-1114.

396. Devereux RB, Palmieri V, Sharpe N, et al. Effects of once-

daily angiotensin-converting enzyme inhibition and calcium

channel blockade-based antihypertensive treatment regimens

on left ventricular hypertrophy and diastolic filling in

hypertension: the prospective randomized enalapril study

evaluating regression of ventricular enlargement (preserve)

trial. Circulation 2001; 104: 1248-1254. 397. Terpstra WF, May JF, Smit AJ, et al. Long-term effects of

amlodipine and lisinopril on left ventricular mass and

diastol ic function in elderly, previously untreated

hypertensive patients: the ELVERA trial. J Hypertens 2001; 19: 303-309.

398. ACTION (A Coronary disease Trial Investigating Outcome

with Nifedipine GITS) investigators. The development of

Page 72: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

74 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

heart failure in patients with stable angina pectoris. Eur J

Heart Fail 2007; 9: 234-242. 399. The PROMISE Study Research Group. Effect of oral

milrinone on mortality in severe chronic heart failure. N Engl

J Med 1991; 325: 1468-1475. 400. Cohn JN, Goldstein SO, Greenberg BH, et al., for the

Vesnarinone Trial Investigators. A dose-dependent increase in

mortality with Vesnarinone among Patients with Severe Heart

Failure. N Engl J Med 1998; 339: 1810-1816. 401. Shakar SF, Abraham WT, Gilbert EM, et al. Combined oral

positive inotropic and beta-blocker therapy class Ⅳ heart

failure. J Am Coll Cardiol 1998; 31: 1336-1340. 402. Yoshikawa T, Baba A, Suzuki M, et al. Effectiveness of

carvedilol alone versus carvedilol + pimobendan on severe

congestive heart failure. Am J Cardiol 2000; 85: 1495-1497. 403. Lubsen J, Just H, Hjalmarsson AC, et al. Effect of

pimobendan on exercise capacity in patient with heart failure:

main results from the Pimobendan in Congestive Heart

Failure (PICO) trial. Heart 1996; 76: 223-231. 404. The EPOCH Study Group. Effects of Pimobendan on

Chronic Heart Failure Study (EPOCH Study). Effects of

pimobendan on adverse cardiac events and physical activities

in patients with mild to moderate chronic heart failure: the

effects of pimobendan on chronic heart failure study (EPOCH

study) Circ J 2002; 66: 149-157.ce. J Am Coll Cardiol 1998; 32: 1345-1350.Card Fail 2009; 15: 898-905.

405. De Ferrari GM, Klersy C, Ferrero P, et al., for the ALPHA

Study Group. Atrial fibrillation in heart failure patients:

prevalence in daily practice and effect on the severity of

symptoms. Data from the ALPHA study registry. Eur J Heart

Fail 2007; 9: 502-509. 406. Cha YM, Redfield MM, Shen WK, et al. Atrial fibrillation

and ventricular dysfunction: a vicious electromechanical

cycle. Circulation 2004; 109: 2839-2843. 407. Wyse DG, Waldo AL, DiMarco JP, et al. Atrial Fibrillation

Follow-up Investigation of Rhythm Management (AFFIRM)

Investigators:Comparison of rate control and rhythm control

in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2002; 347: 1825-1833.

408. Roy D, Talajic M, Nattel S, et al. Atrial Fibrillation and

Congestive Heart Failure Investigators:Rhythm control versus

rate control for atrial fibrillation and heart failure. N Engl J

Med 2008; 358: 2667-2677. 409. Van Gelder IC, Groenveld HF, Crijns HJ, et al. RACE II

Investigators:Lenient versus strict rate control in patients with

atrial fibrillation. N Engl J Med 2010; 362: 1363-1373. 410. Wann LS, Curtis AB, January CT, et al. 2011 ACCF/AHA/

HRS focused update on the management of patients with

atrial fibrillation (updating the 2006 guideline): a report of the

American College of Cardiology Foundation/American Heart

Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation

2011; 123: 104-123. 411. Camm AJ, Kirchhof P, Lip GY, et al. Guidelines for the

management of atrial fibrillation: the Task Force for the

Management of Atrial Fibrillation of the European Society of

Cardiology (ESC). Europace. 2010; 12: 1360-420. 412. Singh SN, Fletcher RD, Fisher SG, et al. Amiodarone in

patients with congestive heart failure and asymptomatic

ventricular arrhythmia.Survival Trial of Antiarrhythmic

Therapy in Congestive Heart Failure (CHF-STAT). N Engl J

Med 1995; 333: 77-82. 413. Doval HC, Nul DR, Grancelli HO, et al. randomised trial of

low-dose amiodarone in severe congestive heart failure.Grupo

de Estudio de la Sobrevida en la Insuficiencia Cardiaca en

Argentina (GESICA). Lancet 1994; 344: 493-498. 414. Bardy GH, Lee KL, Mark DB, et al. Amiodarone or an

implantable cardioverter-defibrillator for congestive heart

failure. N Engl J Med 2005; 352: 225-237. 415. MERIT-HF Study Group. Effect of metoprolol CR/XL in

chronic heart failure:metoprolol CR/XL randomised

intervention trial in congestive heart failure (MERIT-HF).

Lancet 1999; 353: 2001-2007. 416. CIBIS-Ⅱ Investigators and Committees: The cardiac

insufficiency bisoprolol studyⅡ (CIBIS-Ⅱ ): a randomised

trial. Lancet 1999; 353: 9-13. 417. Connolly SJ, Dorian P, Roberts RS, et al. Comparison of

beta-blockers, amiodarone plus beta-blockers, or sotalol for

prevention of shocks from implantable cardioverter

defibrillators: the OPTIC Study: a randomized trial. JAMA

2006; 295: 165-171. 418. Zipes DP, Camm AJ, Borggrefe M, et al. ACC/AHA/ESC

guidelines for management of patients with ventricular

arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death-

executive summary. Circulation 2006; 114: 1088-1132. 419. Haissaguerre M, Jais P, Shah DC, et al. Spontaneous

initiation of atrial fibrillation by ectopic beats originating in

the pulmonary veins. N Engl J Med 1998; 339: 659-666. 420. Nademanee K, McKenzie J, Kosar E, et al. A new approach

for catheter ablation of atrial fibrillation:mapping of the

electrophysiologic substrate. J Am Coll Cardiol 2004; 43: 2044-2053.

421. Wazni OM, Marrouche NF, Martin DO, Radiofrequency

ablation vs antiarrhythmic drugs as first-line treatment of

symptomatic atrial fibrillation:a randomized trial. JAMA

2005; 293: 2634-2640. 422. Cappato R, Calkins H, Chen SA, et al. Worldwide survey

on the methods, efficacy, and safety of catheter ablation for

human atrial fibrillation. Circulation 2005; 111: 1100-1105. 423. Hsu LF, Jais P, Sanders P, et al. Catheter Ablation for Atrial

Fibrillation in Congestive Heart Failure. N Engl J Med 2004; 351: 2373-2383.

424. Khan MN, Jais P, Cummings J, et al. Pulmonary-vein

isolation for atrial fibrillation in patients with heart failure. N

Engl J Med 2008; 359: 1778-1785. 425. Wilton SB, Fundytus A, Ghali WA, et al. Meta-analysis of

the effectiveness and safety of catheter ablation of atrial

fibrillation in patients with versus without left ventricular

systolic dysfunction. Am J Cardiol 2010; 106: 1284-1291.

Page 73: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

75循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

426. Nakahara S, Tung R, Ramirez RJ, et al. Characterization of

the arrhythmogenic substrate in ischemic and nonischemic

cardiomyopathy implications for catheter ablation of

hemodynamically unstable ventricular tachycardia. J Am Coll

Cardiol 2010; 55: 2355-2365. 427. Wilkoff BL, Cook JR, Epstein AE, et al. Dual-chamber

pacing or ventricular backup pacing in patients with an

implantable defibrillator: the Dual Chamber and VVI

Implantable Defibrillator (DAVID) Trial. JAMA 2002; 288: 3115-3123.

428. Sweeney MO, Hellkamp AS, Ellenbogen KA, et al., MOde

Selection Trial Investigators. Adverse effect of ventricular

pacing on heart failure and atrial fibrillation among patients

with normal baseline QRS duration in a clinical trial of

pacemaker therapy for sinus node dysfunction. Circulation

2003; 107: 2932-2937. 429. Yu CM, Chan JY, Zhang Q, et al. Biventricular pacing in

patients with bradycardia and normal ejection fraction. N

Engl J Med 2009; 361: 2123-2134. 430. Cheng S, Keyes MJ, Larson MG, et al. Long-term

outcomes in individuals with prolonged PR interval or first-

degree atrioventricular block. JAMA 2009; 301: 2571-2517. 431. Young JB, Abraham WT, Smith AL, et al. Combined

cardiac resynchronization and implantable cardioversion

defibrillation in advanced chronic heart failure. JAMA 2003; 289: 2685-2694.

432. Cleland JG, Daubert JC, Erdmann E, et al. Cardiac

Resynchronization-Heart Failure (CARE-HF) Study

Investigators: The effect of cardiac resynchronization on

morbidity and mortality in heart failure. N Engl J Med 2005; 352: 1539-1549.

433. Bristow MR, Saxon LA, Boehmer J, et al., Comparison of

Medical Therapy, Pacing, and Defibrillation in Heart Failure

(COMPANION) Investigators. Cardiac-resynchronization

therapy with or without an implantable defibrillator in

advanced chronic heart failure. N Engl J Med 2004; 350: 2140-2150.

434. Linde C, Abraham WT, Gold MR, et al. REVERSE

(REsynchronization reVErses Remodeling in Systolic left

vEntricular dysfunction) Study Group: Randomized trial of

cardiac resynchronization in mildly symptomatic heart failure

patients and in asymptomatic patients with left ventricular

dysfunction and previous heart failure symptoms. J Am Coll

Cardiol 2008; 52: 1834-1843. 435. Linde C, Abraham WT, Gold MR, et al. REVERSE Study

Group:Cardiac resynchronization therapy in asymptomatic or

mildly symptomatic heart failure patients in relation to

etiology: results from the REVERSE (REsynchronization

reVErses Remodeling in Systol ic Left vEntricular

Dysfunction) study. J Am Coll Cardiol 2010; 56: 1826-1831. 436. Beshai JF, Grimm RA, Nagueh SF, et al. RethinQ Study

Investigators:Cardiac-resynchronization therapy in heart

failure with narrow QRS complexes. N Engl J Med 2007; 357: 2461-2471.

437. Kadish A, Dyer A, Daubert JP, et al., Defibrillators in Non-

Ischemic Cardiomyopathy Treatment Evaluation (DEFINITE)

Investigators. Prophylactic defibrillator implantation in

patients with nonischemic dilated cardiomyopathy. N Engl J

Med 2004; 350: 2151-2158. 438. Lindenfeld J, Feldman AM, Saxon L, et al. Effects of

cardiac resynchronization therapy with or without a

defibrillator on survival and hospitalizations in patients with

New York Heart Association class IV heart failure.

Circulation 2007; 115: 204-212. 439. Epstein AE, DiMarco JP, Ellenbogen KA, et al. ACC/AHA/

HRS 2008 guidelines for device-based therapy of cardiac

rhythm abnormalities.a report of the American College of

Cardiology/American Heart Association task force on practice

guidelines. Circulation 2008; 117: e350-e408. 440. Moss AJ, Hall WJ, Cannom DS, et al. MADIT-CRT Trial

Investigators:Cardiac-resynchronization therapy for the

prevention of heart-failure events. N Engl J Med 2009; 361: 1329-1338.

441. Tang AS, Wells GA, Talajic M, et al. Resynchronization-

Defibr i l la t ion for Ambulatory Heart Fai lure Tria l

Investigators: Cardiac-resynchronization therapy for mild-to-

moderate heart failure. N Engl J Med 2010; 363: 2385-2395. 442. Zareba W, Klein H, Cygankiewicz I, et al. MADIT-CRT

Investigators: Effectiveness of Cardiac Resynchronization

Therapy by QRS Morphology in the Multicenter Automatic

Defibrillator Implantation Trial-Cardiac Resynchronization

Therapy (MADIT-CRT). Circulation 2011; 123: 1061-1072. 443. Solomon SD, Foster E, Bourgoun M, et al., MADIT-CRT

Investigators. Effect of cardiac resynchronization therapy on

reverse remodeling and relation to outcome: multicenter

automatic def ibr i l la tor implantat ion t r ia l : cardiac

resynchronization therapy. Circulation 2010; 122: 985-992. 444. Singh JP, Klein HU, Huang DT, et al. Left Ventricular Lead

Position and Clinical Outcome in the Multicenter Automatic

Defibrillator Implantation Trial-Cardiac Resynchronization

Therapy (MADIT-CRT) Trial. Circulation 2011; 123: 1159-1166.

445. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン.不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版).

446. Anand IS, Kuskowski MA, Rector TS, et al. Anemia and

change in hemoglobin over time related to mortality and

morbidity in patients with chronic heart failure: results from

Val-HeFT. Circulation 2005; 112: 1121-1127. 447. O’Meara E, Clayton T, McEntegart MB, et al. Clinical

correlates and consequences of anemia in a broad spectrum of

patients with heart failure: results of the Candesartan in Heart

Failure: Assessment of Reduction in Mortality and Morbidity

(CHARM) Program. Circulation 2006; 113: 986-994. 448. Anand I, McMurray JJ, Whitmore J, et al. Anemia and its

relationship to clinical outcome in heart failure. Circulation

2004; 110: 149-154. 449. Kosiborod M, Smith GL, Radford MJ, et al. The prognostic

importance of anemia in patients with heart failure. Am J Med

Page 74: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

76 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

2003; 114: 112-119. 450. Sharma R, Francis DP, Pitt B, et al. Haemoglobin predicts

survival in patients with chronic heart failure: a substudy of

the ELITE II trial. Eur Heart J 2004; 25: 1021-1028. 451. Horwich TB, Fonarow GC, Hamilton MA, et al. Anemia is

associated with worse symptoms, greater impairment in

functional capacity and a significant increase in mortality in

patients with advanced heart failure. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1780-1786.

452. Al-Ahmad A, Rand WM, Manjunath G, et al. Reduced

kidney function and anemia as risk factors for mortality in

patients with left ventricular dysfunction. J Am Coll Cardiol

2001; 38: 955-962. 453. Silverberg DS, Wexler D, Blum M, et al. The cardio renal

anemia syndrome: correcting anemia in patients with resistant

congestive heart failure can improve both cardiac and renal

function and reduce hospitalizations. Clin Nephrol 2003; 60 Suppl 1: S93-102.

454. Philipp S, Ollmann H, Schink T, et al. The impact of

anaemia and kidney function in congestive heart failure and

preserved systolic function. Nephrol Dial Transplant 2005; 20: 915-919.

455. Collins AJ, Li S, Gilbertson DT, et al. Chronic kidney

disease and cardiovascular disease in the Medicare

population. Kidney Int Suppl 2003: S24-31. 456. Silverberg DS, Wexler D, Iaina A. The importance of

anemia and its correction in the management of severe

congestive heart failure. Eur J Heart Fail 2002; 4: 681-686. 457. Anker SD, Chua TP, Ponikowski P, et al. Hormonal

changes and catabolic/anabolic imbalance in chronic heart

failure and their importance for cardiac cachexia. Circulation

1997; 96: 526-534. 458. Metivier F, Marchais SJ, Guerin AP, et al. Pathophysiology

of anaemia: focus on the heart and blood vessels. Nephrol

Dial Transplant 2000; 15 Suppl 3: 14-18. 459. Bolger AP, Bartlett FR, Penston HS, et al. Intravenous iron

alone for the treatment of anemia in patients with chronic

heart failure. J Am Coll Cardiol 2006; 48: 1225-1227. 460. Toblli JE, Lombrana A, Duarte P, et al. Intravenous iron

reduces NT-pro-brain natriuretic peptide in anemic patients

with chronic heart failure and renal insufficiency. J Am Coll

Cardiol 2007; 50: 1657-1665. 461. Okonko DO, Grzeslo A, Witkowski T, et al. Effect of

intravenous iron sucrose on exercise tolerance in anemic and

nonanemic patients with symptomatic chronic heart failure

and iron deficiency FERRIC-HF: a randomized, controlled,

observer-blinded trial. J Am Coll Cardiol 2008; 51: 103-112. 462. Garty M, Cohen E, Zuchenko A, et al. Blood transfusion

for acute decompensated heart failure--friend or foe? Am

Heart J 2009; 158: 653-658. 463. Kao DP, Kreso E, Fonarow GC, et al. Characteristics and

outcomes among heart failure patients with anemia and renal

insufficiency with and without blood transfusions (public

discharge data from California 2000-2006). Am J Cardiol

2011; 107: 69-73. 464. Hebert PC, Yetisir E, Martin C, et al. Is a low transfusion

threshold safe in critically ill patients with cardiovascular

diseases? Crit Care Med 2001; 29: 227-234. 465. Silverberg DS, Wexler D, Sheps D, et al. The effect of cor-

rection of mild anemia in severe, resistant congestive heart

failure using subcutaneous erythropoietin and intravenous

iron: a randomized controlled study. J Am Coll Cardiol 2001 Jun 1; 37: 1775-1780.

466. Mancini DM, Katz SD, Lang CC, et al. Effect of

erythropoietin on exercise capacity in patients with moderate

to severe chronic heart failure. Circulation 2003; 107: 294-299.

467. Ponikowski P, Anker SD, Szachniewicz J, et al. Effect of

darbepoetin alfa on exercise tolerance in anemic patients with

symptomatic chronic heart failure: a randomized, double-

blind, placebo-controlled trial. J Am Coll Cardiol 2007; 49: 753-762.

468. Ghali JK, Anand IS, Abraham WT, et al. Randomized

double-blind trial of darbepoetin alfa in patients with

symptomatic heart failure and anemia. Circulation 2008; 117: 526-535.

469. Kotecha D, Ngo K, Walters JA, et al. Erythropoietin as a

treatment of anemia in heart failure: systematic review of

randomized trials. Am Heart J 2011; 161: 822-831. 470. McAlister FA, Ezekowitz J, Tonelli M, et al. Renal

insufficiency and heart failure: prognostic and therapeutic

implications from a prospective cohort study. Circulation

2004; 109: 1004-1009. 471. Hillege HL, Nitsch D, Pfeffer MA, et al. Renal function as

a predictor of outcome in a broad spectrum of patients with

heart failure. Circulation 2006; 113: 671-678. 472. Cockcroft DW, Gault MH. Prediction of creatinine

clearance from serum creatinine. Nephron 1976; 16: 31-41. 473. Marin-Grez M, Fleming JT, Steinhausen M. Atrial

natriuretic peptide causes pre-glomerular vasodilatation and

post-glomerular vasoconstriction in rat kidney. Nature 1986; 324: 473-476.

474. Hollister AS, Rodeheffer RJ, White FJ, et al. Clearance of

atrial natriuretic factor by lung, liver, and kidney in human

subjects and the dog. J Clin Invest 1989; 83: 623-628. 475. Felker GM, Leimberger JD, Califf RM, et al. Risk

stratification after hospitalization for decompensated heart

failure. J Card Fail 2004; 10: 460-466. 476. Konstam M, Gheorghiade M, Burnett J, et al. Effects of

Oral Tolvaptan in Patients Hospitalized for Worsening Heart

Failure. JAMA 2007;297:1319-1331. 477. Mullens W, Abrahams Z, Francis GS, et al. Importance of

venous congestion for worsening of renal function in

advanced decompensated heart failure. J Am Coll Cardiol

2009; 53: 589-596. 478. Deswal A, Petersen NJ, Feldman AM, et al. Cytokines and

cytokine receptors in advanced heart failure: an analysis of

the cytokine database from the Vesnarinone trial (VEST).

Page 75: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

77循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

Circulation 2001; 103: 2055-2059. 479. Nakanishi K, Hirasawa H, Sugai T, et al. Efficacy of

continuous hemodiafiltration for patients with congestive

heart failure. Blood Purif 2002; 20: 342-348. 480. Ikeda U, Yamamoto K, Shimada K. Biochemical markers

of coagulation activation in mitral stenosis, atrial fibrillation,

and cardiomyopathy. Clin Cardiol 1997; 20: 7-10. 481. Yamamoto K, Ikeda U, Seino Y, et al. Coagulation activity

is increased in the left atrium of patients with mitral stenosis.

J Am Coll Cardiol 1995; 25: 107-112. 482. Kubo SH, Rector TS, Bank AJ, et al. Endotheliumdependent

vasodilation is attenuated in patients with heart failure.

Circulation 1991; 84: 1589-1596. 483. Pullicino PM, Halperin JL, Thompson JL. Stroke in

patients with heart failure and reduced left ventricular ejection

fraction. Neurology 2000; 54: 288-294. 484. Ahnert AM, Freudenberger RS. What do we know about

anticoagulation in patients with heart failure? Curr Opin

Cardiol 2008; 23: 228-232. 485. Cleland JGF, Findlay I, Jafri S, et al. The Warfarin/Aspirin

Study in Heart failure (WASH): A randomized trial comparing

antithrombotic strategies for patients with heart failure. Am

Heart J 2004; 148: 157-164. 486. Massie BM, et al., for the WATCH trial investigators.

Randomized trial of warfarin, aspirin, and clopidogrel in

patients with chronic heart failure: the warfarin and

antiplatelet therapy in chronic heart failure (WATCH) trial.

Circulation 2009; 119: 1616-1624. 487. Cokkinos DV, Haralabopoulos GC, Kostis JB, et al.

HELAS investigators. Efficacy of antithrombotic therapy in

chronic heart failure: the HELAS study. Eur J Heart Fail

2006; 8: 428-432. 488. Warfarin versus aspirin in reduced cardiac ejection fraction

(WARCEF) trial. (unpublished: http://clinicaltrials.gov).

489. Sin DD, Fitzgerald F, Parker JD, et al. Risk factors for

central and obstructive sleep apnea in 450 men and women

with congestive heart failure. Am J Respir Crit Care Med

1999; 160: 1101-1106. 490. Javaheri S, Parker TJ, Liming JD, et al. Sleep apnea in 81

ambulatory male patients with stable heart failure. Types and

their prevalences, consequences, and presentations.

Circulation 1998; 97: 2154-2159. 491. Wang H, Parker JD, Newton GE, et al. Influence of

obstructive sleep apnea on mortality in patients with heart

failure. J Am Coll Cardiol 2007; 49: 1625-1631. 492. Manfield DR, Golloly C, Kaye DM, et al. Controlled trial

of continuouspositive airway pressure in obstructive sleep

apnea and heart failure. Am JRespir Crit Care Med 2004; 169: 361-366.

493. Kaneko Y, Floras JS, Usui K, et al. Cardiovascular effects

of continuous positive airway pressure in patients with heart

failure and obstructive sleep apnea. N Engl J Med 2003; 348: 1233-1241.

494. Tamura A, Kawano Y, Naono S, et al. Relationship between

β -blocker treatment and the severity of central sleep apnea

in chronic heart failure. Chest 2007; 131: 130-135. 495. Tamura A, Kawano Y, Kadota J. Carvedilol reduces the

severity of central sleep apnea in chronic heart failure. Circ J

2009; 73: 295-298. 496. Philippe C, Stoica-Herman M, Drouot X, et al. Compliance

with and effectiveness of adaptive servoventilation versus

continuous positive airway pressure in the treatment of

Cheyne-Stokes respiration in heart failure over a six month

period. Heart 2006; 92: 337-342. 497. Kasai T, Narui K, Dohi T, et al. First experience of using

new adaptive servo-ventilation device for Cheyne-Stokes

respiration with central sleep apnea among Japanese patients

with congestive heart failure: report of 4 clinical cases. Circ J

2006; 70: 1148-1154. 498. Batista RJ, Santos JL, Takeshita N, et al. Partial left

ventriculectomy to improve left ventricular function in end-

stage heart disease. Journal of cardiac surgery 1996; 11: 96-98.

499. Isomura T, Suma H, Horii T, et al. Left ventricle restoration

in patients with non-ischemic dilated cardiomyopathy: risk

factors and predictors of outcome and change of mid-term

ventricular function. Eur J Cardiothorac Surg. 2001; 19: 684-689.

500. Luo B, Matsui Y, Suto Y, et al. Experimental study of a new

operative procedure for nonischemic dilated cardiomyopathy:

overlapping cardiac volume reduction operation. Surg Today

2003; 33: 264-268. 501. 山嵜健二.本邦発の次世代型補助人工心臓EVAHEART.循環制御 2008; 29: 50-55.

502. 野尻知里.植込型補助人工心臓DuraHeart.Clinical

Engineering 2008; 19: 644-653. 503. Westaby S, Banning AP, Jarvik R, et al. First permanent

implant of the Jarvik 2000 Heart. Lancet 2000; 356: 900-903. 504. Miller LW, Pagani FD, Russell SD, et al. Use of a

cont inuous-f low device in pat ients await ing heart

transplantation. N Engl J Med. 2007; 357: 885-896. 505. 日本循環器学会心臓移植委員会.心臓移植の適応.[cited;

Available from: http://plaza.umin.ac.jp/~hearttp/] 506. Rosenthal D, Chrisant MR, Edens E, et al., International

Society for Heart and Lung Transplantation. Practice

guidelines for management of heart failure in children. J

Heart Lung Transplant 2004; 23: 1313-1333. 507. Hsu DT, Pearson GD. Heart failure in children: part I:

history, etiology, and pathophysiology. Circ Heart Fail 2009; 2:63-270.

508. Hsu DT, Pearson GD. Heart failure in children: part II:

diagnosis, treatment, and future directions. Circ Heart Fail

2009; 2: 490-498. 509. Mori Y, Nakazawa M, Tomimatsu H, et al. Long-term

effect of angiotensin-converting enzyme inhibitor in volume

overloaded heart during growth: a controlled pilot study. J

Am Coll Cardiol 2000; 36: 270-275. 510. Filippo SD. Beta-adrenergic receptor antagonists and

Page 76: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

78 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009-2010 年度合同研究班報告)

chronic heart failure in children. Ther Clin Risk Manag. 2007; 3: 847-854.

511. Bajcetic M, Kokic Nikolic A, Djukic M, et al. Effects of

carvedilol on left ventricular function and oxidative stress in

infants and children with idiopathic dilated cardiomyopathy:

a 12-month, two-center, open-label study. Clin Ther 2008; 30: 702-714.

512. Petko C, Minich LL, Everitt MD, et al. Echocardiographic

evaluation of children with systemic ventricular dysfunction

treated with carvedilol. Pediatr Cardiol 2010; 31: 780-784. 513. Blume ED, Canter CE, Spicer R, et al. Prospective single-

arm protocol of carvedilol in children with ventricular

dysfunction. Pediatr Cardiol 2006; 27: 336-342. 514. Azeka E, Franchini Ramires JA, Valler C, et al. Delisting of

infants and children from the heart transplantation waiting list

after carvedilol treatment. J Am Coll Cardiol 2002; 40: 2034-2038.

515. Shaddy RE, Boucek MM, Hsu DT, et al. Pediatric

Carvedilol Study Group. Carvedilol for children and

adolescents with heart failure: a randomized controlled trial.

JAMA 2007; 298: 1171-1179. 516. Bernstein D, Naftel D, Chin C, et al., Pediatric Heart

Transplant S tudy. Outcome of l i s t ing for cardiac

transplantation for failed Fontan: a multi-institutional study.

Circulation 2006; 114: 273-80. 517. Lamour JM, Kanter KR, Naftel DC, et al. Cardiac

Transplant Registry Database; Pediatric Heart Transplant

Study. The effect of age, diagnosis, and previous surgery in

children and adults undergoing heart transplantation for

congenital heart disease. J Am Coll Cardiol 2009; 54: 160-165.

518. Guidelines for the diagnosis of rheumatic fever. Jones

Criteria, 1992 update. Special Writing Group of the

Committee on Rheumatic Fever, Endocarditis, and Kawasaki

Disease of the Council on Cardiovascular Disease in the

Young of the American Heart Association. JAMA 1992; 268: 2069-2073.

519. Mota CC, Aiello VD, Anderson RH. Rheumatic fever. In

Paediatric Cardiology. 3rd edition, eds: Anderson RH, Baker

EJ, Penny DJ, et al . Churchill Livingston, Elsevier,

Philadelphia: 1091-1114. 520. Tani L-LY. Rheumatic fever and rheumatic heart disease.

Moss and Adams’ Heart Disease in Infants, Children, and

Adolescents Including the Fetus and Young Adult. 7th edition,

eds: Allen HD, Driscoll DJ, Shaddy RE, et al. Lippincott

Wiliams & Wilkins, Philadelphia: 1256-1280. 521. Acquired mitral valve disease. in Practical Cardiovascular

Pathology. eds: Burke A and Tavora F. Lippincott Williams &

Wilkins, Philadelphia, 2011: 327-337. 522. 厚生省リウマチ熱研究班1974年報告. 523. Gerber MA, Baltimore RS, Eaton CB, et al. Prevention of

rheumatic fever and diagnosis and treatment of acute

Streptococcal pharyngitis: a scientific statement from the

American Heart Association Rheumatic Fever, Endocarditis,

and Kawasaki Disease Committee of the Council on

Cardiovascular Disease in the Young, the Interdisciplinary

Council on Functional Genomics and Translational Biology,

and the Interdisciplinary Council on Quality of Care and

Outcomes Research: endorsed by the American Academy of

Pediatrics. Circulation 2009; 119: 1541-1551. 524. 西川俊郎.原発性心内膜線維弾性症.臨床発達心臓病学(第3版).編集 : 高尾篤良,門馬和夫,中澤 誠,他.中外医学社,東京 2000: 718-723.

525. Endocardial disease. in Practical Cardiovascular Pathology.

eds:Burke A and Tavora F. Lippincott Williams & Wilkins,

Philadelphia, 2011: 227-236. 526. Lurie PR. Changing concepts of endocardial fibroelastosis.

Cardiol Young. 2010; 20: 115-123. 527. Friedman AH, Silverman NH. Congenital anomalies of the

coronary arteries. In Paediatric Cardiology. 3rd edition, eds:

Anderson RH, Baker EJ, Penny DJ, et al. Churchill

Livingston, Elsevier, Philadelphia: 933-943. 528. Ni J, Bowles NE, Kim YH, et al. Viral infection of the

myocardium in endocardial fibroelastosis. Molecular evidence

for the role of mumps virus as an etiologic agent. Circulation

1997; 95: 133-139. 529. P e d r a S R , S m a l l h o r n J F, Ry a n G , e t a l . F e t a l

cardiomyopathies: pathogenic mechanisms, hemodynamic

findings, and clinical outcome. Circulation 2002; 106: 585-591.

530. Doria A, Iaccarino L, Sarzi-Puttini P, et al. Cardiac

involvement in systemic lupus erythematosus. Lupus 2005; 14: 683-686.

531. Wijetunga M, Rockson S. Myocarditis in systemic lupus

erythematosus. Am J Med 2002; 113: 419-423. 532. Usalan C, Buyukhatipoglu H, Tiryaki O. Systemic lupus

erythematosus complicated by dilated cardiomyopathy and

severe heart failure. Clin Rheumatol 2007: 125-127. 533. Vaccaro F, Caccavo D, Roumpedaki E, et al. Dilated

cardiomyopathy due to thrombotic microangiopathy as the

only manifestation of antiphospholipid syndrome: a case

report. Int J Immunopathol Pharmacol 2008; 21: 237-241. 534. Marasini B, Massarotti M, Cossutta R. Scleroderma heart

disease. Int J Immunopathol Pharmacol 2005; 18: 609-614. 535. Belloli L, Carlo-Stella N, Ciocia G, et al. Myocardial

involvement in systemic sclerosis. Rheumatology (Oxford)

2008; 47: 1070-1072. 536. Kahan A, Allanore Y. Primary myocardial involvement in

systemic sclerosis. Rheumatology (Oxford) 2006; 45 Suppl 4: iv14-17.

537. Deswal A, Follansbee WP. Cardiac involvement in

scleroderma. Rheum Dis Clin North Am 1996; 22: 841-860. 538. Lundberg IE. Cardiac involvement in autoimmune myositis

and mixed connective tissue disease. Lupus 2005; 14: 708-712.

539. Kawai C. Specific cardiomyopathies. In: Kawai C, Doi Y,

McKenna WJ, et al. (eds). Cardiomyopathy Update. Tokyo,

Elsevier 2007: 146-168.

Page 77: 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の 診療に関する ... · 2012. 9. 4. · 循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011 5 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

79循環器病の診断と治療に関するガイドライン 2011

拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン

540. Pagnoux C, Guillevin L. Cardiac involvement in small and

medium-sized vessel vasculitides. Lupus 2005; 14: 718-722. 541. Mandell BF, Hoffman GS. Rheumatic Diseases and the

Cardiovascular Vascular System. In: Braunwald’s HEART

DISEASE. 7th ed. Saunders ELSEVIER 2005: 2101-2116. 542. Keane MG, Pyeritz RE. Medical management of Marfan

syndrome. Circulation 2008; 117: 2802-2813. 543. Alpendurada F, Wong J, Kiotsekoglou A, et al. Evidence

for Marfan cardiomyopathy. Eur J Heart Fail 2010; 12: 1085-1091.

544. Meijboom LJ, Timmermans J, van Tintelen JP, et al.

Evaluation of left ventricular dimensions and function in

Marfan’s syndrome without significant valvular regurgitation.

Am J Cardiol 2005; 95: 795-797. 545. Leyngold I, Baughman K, Kasper E, et al. Comparison of

survival among patients with connective tissue disease and

cardiomyopathy (systemic sclerosis, systemic lupus

erythematosus, and undifferentiated disease). Am J Cardiol

2007; 100: 513-517. 546. Tei C. Waon therapy: Soothing warmth therapy. J Cardiol

2007; 49: 301-304. 547. Tei C, Horikiri Y, Park JC, Jet al. Acute hemodynamic

improvement by thermal vasodilation in congestive heart

failure. Circulation 1995; 91: 2582-2590. 548. Tei C, Tanaka N. Thermal vasodilation as a treatment of

congestive heart failure: a novel approach. J Cardiol 1996; 27: 29-30.

549. Basford JR, Oh JK, Allison TG, et al. Safety, acceptance,

and physiologic effects of sauna bathing in people with

chronic heart failure: a pilot report. Archives of Physical

Medicine and Rehabilitation 2009; 90: 173-177. 550. Kihara T, Biro S, Imamura M, et al. Repeated sauna

treatment improves vascular endothelial and cardiac function

in Patients with chronic heart failure. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 754-759.

551. Kuwahata S, Miyata M, Fujita S, et al. Improvement of

autonomic nervous activity by Waon therapy in patients with

chronic heart failure. J Cardiol 2010 (in press).

552. Ikeda Y, Fujita S, Miyata M, et al. Effect of Waon therapy

on oxidative stress in chronic heart failure. Circ J 2010 (in

press).

553. Kihara T, Biro S, Ikeda Y, et al. Effects of repeated sauna

treatment on ventricular arrhythmias in patients with chronic

heart failure. Circ J 2004; 68: 1146-1151. 554. Kihara T, Miyata M, Fukudome T, Ikeda Y, et al. Waon

therapy improves the prognosis of patients with chronic heart

failure. J Cardiol 2009; 53: 214-218.

555. Miyata M, Kihara T, Kubozono T, et al. Beneficial effects

of Waon therapy on patients with chronic heart failure:

Results of a prospective multicenter study. J Cardiol 2008; 52: 79-85.

556. Ikeda Y, Biro S, Kamogawa Y, et al. l. Repeated sauna

therapy increases arterial endothelial nitric oxide synthase

expression and nitric oxide production in cardiomyopathic

hamsters. Circ J 2005; 69: 722-729. 557. Baba A, Yoshikawa T, Chino M, et al. Characterization of

anti-myocardial autoantibodies in Japanese patients with

dilated cardiomyopathy. Jpn Circ J 2001; 65: 867-873. 558. Yoshikawa T, Baba A, Nagatomo Y. Autoimmune

mechanisms underlying dilated cardiomyopathy. Circ J 2009; 73: 602-607.

559. Wallukat G, Reinke P, Dörffel WV, et al. Removal of

a u t o a n t i b o d i e s i n d i l a t e d c a r d i o m y o p a t h y b y

immunoadsorption. Int J Cardiol 1996; 54: 191-195. 560. Dörffel WV, Felix SB, Wallukat G, et al. Short-term

hemodynamic effects of immunoadsorption in dilated

cardiomyopathy. Circulation 1997; 95: 1994-1997. 561. Felix SB, Staudt A, Dörfell WV, et al. Hemodynamic

effects of immunoadsorption and subsequent immunoglobulin

substitution in dilated cardiomyopathy: three-month results

from a randomized study. J Am Coll Cardiol 2000; 35: 1590-1598.

562. Müller J, Wallukat G, Dandel M, et al. Immunoglobulin

adsorption in patients with idiopathic dilated cardiomyopathy.

Circulation 2000; 101: 385-391. 563. Baba A, Akaishi M, Shimada M, et al . Complete

elimination of cardiodepressant IgG3 autoantibodies by

immunoadsorption in patients with severe heart failure. Circ J

2010; 74: 1372-1378. 564. N a g a t o m o Y, B a b a A , I t o H , e t a l . S p e c i f i c

immunoadsorption therapy using a tryptophan column in

patients with refractory heart failure due to dilated

cardiomyopathy. J Clin Apher 2011; 26: 1-8. 565. Felix SB, Staudt A, Landsberger M, et al. Removal of

cardiodepressant antibodies in dilated cardiomyopathy by

immunoadsorption. J Am Coll Cardiol 2002; 39: 646-652. 566. Staudt A, Staudt Y, Dörr M, et al. Potential role of humoral

immunity in cardiac dysfunction of patients suffering from

dilated cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol 2004; 44: 829-836.

567. Staudt A, Böhm M, Knebel F, et al. Potential role of

autoantibodies belonging to the immunoglobulin G-3 subclass

in cardiac dysfunction among patients with dilated

cardiomyopathy. Circulation 2002; 106: 2448-2453.